———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS下でセグメントを一つずつ挿入していく.通常は,無縫合で手術を終了する.?本法の利点角膜リング移植術は角膜中央部に侵襲を加えない手術である.低矯正や過矯正が生じたときは,厚みの異なるセグメントに変更が可能である.セグメントをすべて抜去した場合,角膜形状はほぼ元の状態に戻るため,「後戻り」のできる手術でもある.コンタクトレンズ不耐症などの円錐角膜症例に対し,完全に裸眼で生活できるようになるとは限らないものの,装用時間の延長や眼鏡矯正視力の向上をはかるものである.長期にわたって安定した効果が得られ,角膜移植術の必要性を軽減させると新しい治療と検査シリーズ(67)?バックグラウンド角膜リング移植術とは,PMMA(ポリメタクリレート)製のリングを半分に分割したもの(セグメント)を角膜周辺部実質内に挿入する手術であり,角膜形状を整えることにより円錐角膜を治療する(図1).現在,表1に示すように製品の違いにより直径の異なる3種類のものが使用可能であり,それぞれについて複数の厚みが選択できる.セグメントは厚いほど,そして直径が小さいほど角膜をフラット化する効果が強く現れると同時に,セグメント同士の間隙を結ぶ軸方向(図1の症例の場合は90?方向)におけるフラット化の効果が強くなる.角膜リングはもともと近視矯正手術用として開発された歴史があるが,1997年からColinが円錐角膜への応用を試みた1).角膜を削らずに屈折矯正を行うだけではなく,その構造を強化すると期待されるため,性格上,円錐角膜治療によくマッチしているといえる.前述した,セグメントの存在しない軸方向におけるフラット化は,近視矯正時には乱視の惹起という弱点と認識されたが,円錐角膜治療時には挿入軸をうまく選べば乱視に対する治療効果を発揮する.特に直径の最も小さいケラリングはこの特徴を最大限に利用するものである2).?実際の手術法セグメントを挿入するための角膜切開および実質内のトンネルは,これまではダイアモンドメスと専用器具によりマニュアルで作製する方法が用いられ,やや煩雑であったが,近年フェムトセカンドレーザー(FS60,AMO社製)の登場により,角膜リング専用プログラムを用いて片眼約10秒で可能になった.特に角膜の薄い症例が多い円錐角膜の治療において,トンネルの深さが均一で精度の高いフェムトセカンドレーザーの使用は安全面からも有効である.実質内トンネル作製後は手術用顕微鏡173.円錐角膜に対する角膜リング移植プレゼンテーション:伊藤光登志品川近視クリニックコメント:水流忠彦自治医科大学移植・再生医療センター,眼科学講座表1角膜リングの種類と特徴製品名インタクスインタクスSKケラリング内径/外径(mm)6.8/8.16.0/6.84.7/5.3厚み(mm)0.21~0.450.40,0.450.15~0.35メーカーAdditionTechnology社AdditionTechnology社Mediphacos社図1角膜リング(ケラリング)手術後の前眼部写真———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.7,2007考えられる3).また円錐角膜以外に,ペルーシド角膜変性症4),角膜屈折矯正手術後のエクタジアへの応用も試みられ5),良好な成績が得られている.文献1)ColinJ,CochenerB,SavaryGetal:Correctingkeratoco-nuswithintracornealrings.???????????????????????26:1117-1122,20002)KwitkoS,SeveroNS:Ferraraintracornealringsegmentsforkeratoconus.???????????????????????30:812-820,20043)KymionisGD,SiganosCS,TsiklisNSetal:Long-termfollow-upofIntacsinkeratoconus.???????????????143:236-244,20074)ErtanA,BahadirM:Intrastromalringsegmentinsertionusingafemtosecondlasertocorrectpellucidmarginalcornealdegeneration.???????????????????????32:1710-1716,20065)KymionisGD,TsiklisNS,PallikarisAIetal:Long-termfollow-upofIntacsforpost-LASIKcornealectasia.??????????????113:1909-1917,2006(68)?本方法に対するコメント?円錐角膜は角膜中央部の実質の菲薄化ならびに前方への突出を特徴とする原因不明の非炎症性・進行性疾患である.現在のところ円錐角膜の発症や進行を防止する確実な治療法はなく,疾患の進行状況に応じて眼鏡矯正,ハードコンタクトレンズ処方,角膜熱形成術などが行われ,無効の場合には最終的に角膜移植を行うより他ないのが現状である.角膜リングは角膜実質にPMMA製のリングセグメントを挿入し,角膜形状を機械的に補正するもので,角膜実質を構造的に補強する効果が期待できる.本法は,円錐角膜で最も脆弱な角膜中央部に侵襲を加えることがなく,抜去可能な可逆性の手術で,手術時間も比較的短時間であり患者への負担が少ないことが特徴である.円錐角膜のどの時期に挿入すれば最も有効であるかや長期的な予後については,今後多数例での長期的な臨床評価が必要である.その結果によっては本法は円錐角膜に対する画期的な治療法となりうる.また,円錐角膜では実質コラーゲン線維やプロテオグリカンの代謝異常も指摘されていることから,将来的には本法のような構造的治療法と生化学的な治療法との組み合わせも検討する必要があると思われる.☆☆☆