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眼科医のための先端医療76.緑内障視神経障害評価のこれから

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに現在,緑内障診療では神経障害の評価を,視神経乳頭所見,神経線維層所見,視野所見などの客観的所見と主観的所見から総合的に行い,目標眼圧の設定や治療の適正性の評価に用いることが主流となっています.緑内障神経障害の発症や進行を早期に発見することが緑内障診療においても最も重要ですが,主観的検査や定性的検査は信頼性が乏しい,小児や一部の高齢者では検査が困難な場合もある,検者間で評価に誤差が生じやすいなどの問題点があります.近年,これらの問題に対応するために,他覚的,定量的検査をキーワードとしていくつかの検査法が開発されています.新しい定量的計測機器:網膜神経節細胞(RGC)数測定の時代へこれまでの形態解析装置は解像力の限界などから,乳頭径乳頭陥凹比,乳頭辺縁容積,神経線維層厚など,視神経乳頭もしくは神経線維をマクロに評価してきました.最近光干渉断層装置(opticalcoherenttomogra-phy:OCT)などの測定機器の発達は目覚しいものがあります.市販されている機種では縦方向の解像力は10?m程度ですが,次世代機であるhigh-resolutionOCTは2~3?m程度と非常に高い解像力をもっています1).RGCの細胞直径が5~8?m程度であることを考えると,網膜内においてRGCが個々に測定できる可能性があります.実際最近,豚眼でRGCの個数を測定したことも報告されています2).今後の緑内障診療に非常に期待される検査ですが,網膜におけるRGCは分布密度が少なく部位によりばらつきが大きいため,面や小範囲での解析ではRGC数の測定誤差が大きいことが危惧されるため,ある程度の広さをカバーした三次元的解析が必要と考えられます.これまで主流のOCTの測定原理であるタイムドメイン方式のOCTでは,その測定理論から三次元構築は必ずしも容易ではありませんでしたが,フーリエドメイン方式のOCTではより詳細で広範な三次元解析が可能です.これにより,ある体積中のRGC数が測定できる可能性も考えられ,限局的なRGCの障害の評価などには非常に有効であると考えられます.ただし,測定に際し測定位置の再現性や患者の測定協力などの物理的な困難が予測されます.網膜神経線維厚(nerve?berlayerthickness:NFLT)の測定は乳頭周囲の限定的範囲を測定することで,短時間で安定したRGC数を測定することができ,その有用性は高いと考えられます.NFLTの定量的測定には組織の複屈折性を利用した計測法とOCTがおもに用いられていますが,複屈折性原理の場合,角膜のもつ複屈折性の影響をいかに除外するかが問題であり,測定精度に関してもさらなる改善が必要と考えられます.一方,次世代型OCTの場合,かなり高い精度でNFLTの測定が可能と考えられます(図1).しかしながら,これらの方法は基本的に網膜神経線維構造が形態的には正常眼と同等であるという前提に基づいて評価している測定方法です.最近の報告では,軸索構造は緑内障眼では正常眼と異なる可能性があり,これらの変化に軸索の骨格蛋白である微小管やニューロフィラメントが関与しているとの報告もあります3~5).測定精度が高まるほど病的な神経線維と正常な神経線維の構造的差異が測定結果に影響する可能性が危惧されますが,もし機能障害別にRGCを評価できたら非常に有用であると考えられます.機能的評価法の重要性定量的測定機器は以前に比べ,非常に進歩していますが,定量的結果と機能評価が必ずしも一致しないことから,今後定量的評価と同時に機能評価が重要になると考えられます.緑内障視野障害は感度低下点を中心に障害が拡大することが多く,軽微な変化を捉えるには,通常の視野計の活用に加え,すでに存在する感度低下点付近をより詳細に観察することが可能な微小視野計(マイクロペリメトリー)が有用であると考えられます.従来のマイクロペリメトリーは走査レーザーを用いたものが主流でやや臨床使用には難がありましたが,最近開発されたダイオードレーザーを用いたマイクロペリメトリーはより簡便に任意の点を測定することが可能となりまし(67)◆シリーズ第76回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊柏木賢治(山梨大学医学部眼科)緑内障視神経障害評価のこれから———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007た.さらに定量的測定結果と視野結果をリンクさせた視野検査の開発が検討されています6).自覚的機能検査では測定不能例が存在するため,OCTと網膜電位図を組み合わせ初期緑内障眼の検出力を高めた研究も報告されており7),今後他覚的機能検査の発展が待たれます.視覚中枢への障害評価緑内障神経障害はRGCに止まらず,上位のリレーニューロンや視覚中枢への影響を与えることが実験動物やヒト緑内障眼で報告されています8).神経保護治療や将来の再生医療を考えるうえで,これら中枢性の神経障害の評価は今後重要になってくると考えられます.すでに高性能MRI(磁気共鳴画像)や機能性MRIなどの方法を用いた中枢機能評価が検討されており9),これらは今後緑内障診療に活用されてくると考えられます.まとめ最近の疾患定義では緑内障は神経障害が必須となっており,その障害程度の評価が適切な診療にとって不可欠です.特に日本人患者に多い正常眼圧緑内障の場合,眼圧測定の有用性は眼圧上昇型緑内障に比べて低く,形態的や機能的な神経障害の検出や評価が非常に重要です.(68)210mm0.50mm1.20mm0.60mm図1OCTによる神経線維層厚,視神経乳頭の定量評価(1)左に示す市販型OCTによる網膜断面図に比べ,右の次世代型OCTでは神経線維層を含めより詳細に網膜各部の構造が判定できる.(2)市販型OCTによる乳頭部解析では6本の断面画像から乳頭形態を評価しているのに対し,(3)の次世代型OCTではより詳細な三次元解析が可能となっている.(文献10より改変)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???5)KashiwagiK,OuB,NakamuraSetal:Increaseindephosphorylationoftheheavyneuro?lamentsubunitinthemonkeychronicglaucomamodel.?????????????????????????44:145-159,20036)ShahNN,BowdC,MedeirosFAetal:Combiningstruc-turalandfunctionaltestingfordetectionofglaucoma.?????????????113:1593-1602,20067)VenturaLM,SorokacN,DeLosSantosRetal:Therela-tionshipbetweenretinalganglioncellfunctionandretinalnerve?berthicknessinearlyglaucoma.??????????????????????????47:3904-3911,20068)GuptaN,AngLC,NoeldeTillyLetal:Humanglaucomaandneuraldegenerationinintracranialopticnerve,lateralgeniculatenucleus,andvisualcortex.???????????????90:674-678,20069)DuncanRO,SamplePA,WeinrebRNetal:Retinotopicorganizationofprimaryvisualcortexinglaucoma:Com-paringfMRImeasurementsofcorticalfunctionwithvisual?eldloss.??????????????????26:38-56,200710)WojtkowskiM,SrinivasanV,FujimotoJGetal:Three-dimensionalretinalimagingwithhigh-speedultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.?????????????112:1734-1746,2005細胞個体レベルまで達しようとしている形態評価に関しては,一定の到達点に近づいているともいえますが,機能的評価,特に客観性の高い機能評価法に関しては,いまだ不十分で,今後この領域のさらなる進歩と形態評価と連携した評価法が進むことが期待されます.文献1)DrexlerW,MorgnerU,GhantaRKetal:Ultrahigh-reso-lutionophthalmicopticalcoherencetomography.???????7:502-507,20012)HangaiM,AkibaM,ChanKPetal:Retinalganglioncellimagingbyultrahighresolution,full-?eldopticalcoher-encetomographyinpigeyes.ARVOabstract,p160,20063)PavlidisM,StuppT,NaskarRetal:Retinalganglioncellsresistanttoadvancedglaucoma:apostmortemstudyofhumanretinaswiththecarbocyaninedyeDiI.?????????????????????????44:5196-5205,20034)HuangXR,KnightonRW:Microtubulescontributetothebirefringenceoftheretinalnerve?berlayer.??????????????????????????46:4588-4593,2005(69)■「緑内障視神経障害評価のこれから」を読んで■今回は柏木賢治先生により,highresolutionOCTなどの新しい診断機器を用いることで,今まで不可能であった病態の解析ができるようになったことが述べられています.実際の患眼における網膜神経節細胞の直接解析などということは,数年前には夢物語でしたが,近い将来に臨床現場で行われることになるでしょう.これらの詳細は,本文ならびに多くの眼科関連誌に書かれていますので,私は別の観点から,新しい検査機器の出現がもたらすインパクトについて述べます.一般に,ある事柄が科学・学問として発展してゆくには,知識や情報が正確かつ広く共有されることが必要です.たとえば,ある疾患を正確に診断する良い方法があっても,それがむずかしい方法であれば,その方法は広くは用いられません.また,簡単な方法であっても,検者によって異なる結果が出るようなもの,言い換えれば主観によって異なるものも同じです.視神経乳頭の評価法や,隅角の角度におけるSha?er分類法などは,わかりやすいものですが,結果が検者の主観や習熟度の影響を受けるので,正確な情報という点では不十分でした.つまり,科学的なデータとは言い切れなかったのです.情報を共有するために,科学の世界では厳密なターミノロジーが求められています.しかし,いくらターミノロジーを厳密にしても,データの取り方がむずかしく,そこに主観が入るのであれば,正確な情報の共有はできません.いわゆる名人芸というものであれば,優れた情報も狭い範囲に留まり,つぎの段階への飛躍的進歩をとげる礎となることは不可能です.今回紹介された新しい診断機器には,新しい解析ができるという利点があります.しかし,より重要なのは,新しい診断機器のおかげで,初心者にもベテランにも,同じように客観的なデータが取れるという点です.客観的なデータが多くの人に共有されたとき,それを元にした新しい考え方や飛躍的治療法が必ず生まれます.その意味から,新しい検査機器の出現は,診断向上のみでなく学問としての眼科学の発展に大きなインパクトを与え続けるものと信じます.鹿児島大学医学部眼科坂本泰二

眼感染症:メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS表皮ブドウ球菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌群(coagulasenegative?????????????:CNS,コアグラーゼを産生する黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌を総括した呼称)の代表的な菌種であり,臨床材料から分離されるCNSの多くは表皮ブドウ球菌である.表皮ブドウ球菌はヒトの表皮や粘膜部(鼻腔,結膜?など)の常在菌であり,通常は非病原性であるが,損傷を受けた粘膜部や外科的人工留置物(眼内レンズ,血管内留置カテーテル,人工関節など)が本菌により汚染された際には感染症をひき起こすことがある.表皮ブドウ球菌は異物に対する付着性やスライム産生性が高く,汚染の機会も多いことから,人工留置物に関連するバイオフィルム感染症を起こしやすい(図1).メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(methicillin-resistant??????????????????????????:MRSE)は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant?????????????????????:MRSA)と同一の耐性機序により,既存のすべてのb-ラクタム系薬に耐性を獲得した表皮ブドウ球菌である.それゆえMRSE感染症の治療にはb-ラクタム系薬以外の抗菌薬を用いる必要があり,術後眼内炎などの重篤なMRSE感染症においてはバンコマイシンなどの抗MRSA薬による治療が基本となる.なお,MRSEは健常人の鼻腔からも30%程度(MRSAは5%以下)の頻度で検出されることから,入院歴のない健常人であっても術後眼内炎が発生した際にはMRSEの関与を想定し診断・治療を進める必要がある.■塗抹鏡検での見方とコツ眼科材料は極微量であることが多いため,検査室に依頼する場合であっても塗抹スライドは眼科医みずからが(63)47.メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)眼感染症セミナー─クライシスコントロール講座─●連載?監修=浅利誠志井上幸次大橋裕一豊川真弘浅利誠志大阪大学医学部附属病院臨床検査部メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と同一の薬剤耐性因子を獲得した表皮ブドウ球菌である.それゆえ術後眼内炎などの重篤なMRSE感染症の抗菌薬治療は抗MRSA薬が基本となる.さらに,MRSEは抗菌薬のみでは治療困難なバイオフィルム感染症をひき起こすことが多いため,このような症例においては眼内レンズなどの人工留置物の除去を考慮する必要がある.図1IVHカテーテル表面に付着した表皮ブドウ球菌とバイオフィルム(電子顕微鏡,2,500倍)バイオフィルムは細菌が産生する粘液状の多糖体成分(スライムあるいはグライコカリクスとよばれる)によって形成された生物膜である.多くの抗菌薬はバイオフィルム内の細菌に作用できないため,生体内においていったんバイオフィルムが形成されると抗菌薬のみでは治療困難な慢性持続性感染症となる.バイオフィルムは,多くの場合,カテーテルや眼内レンズなどの人工留置物に形成されるが,損傷を受けた粘膜部位にも形成されることがある.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007作製・固定することが望ましい(回収ロスを大幅に軽減することができる).ブドウ球菌による急性感染症では,通常は好中球浸潤ならびに好中球によるグラム陽性ブドウの房状球菌の貪食像が認められるので,グラム染色では細胞成分(炎症細胞,上皮細胞)および貪食像を中心に観察する.ただし,眼内レンズに起因するバイオフィルム感染症では好中球の浸潤が乏しいことがあるため,細胞外に存在する菌体成分も注意深く観察する必要がある.また,硝子体液や前房水のグラム染色では上皮細胞由来の色素顆粒がブドウ球菌様にみえることがあるため注意を要する(色素顆粒は大小不同の正円形を示すのでこの点を鑑別に利用する).なお,黄色ブドウ球菌を含むすべてのブドウ球菌は同一の形態を示すため,形態学的に菌種を推定するのは困難である.■材料採取における注意事項材料採取にあたっては,滅菌生理食塩水による洗浄や表層部消毒後の切開排膿などにより,常在菌の汚染がないよう十分注意を払う.また,常在菌の汚染が避けられない材料(眼脂,結膜)から分離培養検査のみにて表皮ブドウ球菌が検出された場合には起因性の判断が困難となるため,可能なかぎり塗抹鏡検を併用する.■分離菌株のメチシリン耐性判定法ブドウ球菌のメチシリン耐性判定法を表1に示したが,ほとんどの微生物検査室では薬剤感受性測定法を採用している(表皮ブドウ球菌は表中CNSの判定基準を用いる).これらの方法にて“メチシリン耐性=耐性因子保有株”と判定された場合には,表皮ブドウ球菌であってもすべてのb-ラクタム系薬(カルバペネム系薬を含む)に耐性と判定する.■基本的な治療薬剤●角膜炎1):感受性を有するニューキノロン系点眼薬あるいはバンコマイシン溶液(50mg/m?に自家調整)を15~60分おきに24~72時間続け,以後徐々に減量する.●術後眼内炎(早期の急性発症)2):バンコマイシン溶液(64)表1ブドウ球菌のメチシリン耐性判定法検出法測定法使用薬剤対象判定基準(CLSI法)薬剤含有量単位備考R(耐性)I(中間)S(感性)薬剤感受性測定法ディスク拡散法オキサシリン?????????のみ≦1011~12≧131?g阻止円mm米国CLSI標準法CNS≦17─≧18メチシリン?????????のみ≦910~13≧145?gセフォキシチン?????????,??????????????≦19─≧2030?gCNS≦24─≧25希釈法(2%NaCl添加MH培地)オキサシリン?????????,??????????????≧4≦2MIC?g/m?米国CLSI標準法日本化学療法学会標準法CNS≧0.5≦0.25メチシリン?????????のみ≧16≦8スクリーニング法オキサシリン?????????のみ6?g/m?4%NaCl耐性因子検出法(PBP-2?)ラテックス凝集法市販試薬(デンカ生研)耐性遺伝子検出法(???A)PCR法市販試薬(日本ロシュ)CLSI:米国臨床検査標準化委員会,PCR:polymerasechainreaction,CNS:コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,MIC:最小発育阻止濃度.注)CNSの判定基準は,??????????????においてはメチリシン耐性遺伝子(???A)保有の有無と相関する.これらの判定基準は?????????????????など,ほかのCNSを偽耐性と判定する可能性がある.??????????????以外のCNSによる重篤な感染症においては,MIC値が0.5~2?g/m?を示す場合,???AまたはPBP-2?の確認試験を行うことが重要である.最も正確なメチシリン耐性判定法は耐性因子あるいは耐性遺伝子を検出する方法であるが,ほとんどの微生物検査室では安価な薬剤感受性測定法にて判定している(“メチシリン耐性”を判定するのであるが,通常は検査精度の高いオキサシリンを用いる).なお,薬剤感受性測定法を用いる場合には菌種により判定基準が異なるので注意が必要である.検査を依頼している検査室(外注検査センター)において正しい検査法・判定基準が採用されているか否かを確認しておくことが望ましい.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???(1mg/0.1m?)を硝子体内ワンショット投与,改善が認められない場合には2~3日後にもう一度投与する.●術後眼内炎(軽症,慢性発症)2):抗菌薬投与は急性発症に準ずる.眼内レンズの除去を要するかもしれない.参考までにMRSEおよびMRSAに対する各種抗菌薬の薬剤感受性率を表2に示した.文献1)サンフォード感染症治療ガイド2006(GilbertDNほか編).p25-27,ライフサイエンス出版,20062)HanscomTA:Postoperativeendophthalmitis.???????????????38:542-546,2004(65)表2MRSEおよびMRSAに対する各種抗菌薬の薬剤感受性率MRSE(93株)MRSA(121株)MIC90*(?g/m?)感受性率(%)MIC90*(?g/m?)感受性率(%)経口薬ミノサイクリンレボフロキサシンガチフロキサシンモキシフロキサシンクラリスロマイシンアジスロマイシン抗MRSA注射薬バンコマイシンテイコプラニンアルベカシンリネゾリド抗VRE注射薬キヌプリスチン/ダルフォプリスチン81622>64>64232120.259234344128261008110010010016──64──22240.521──3──10010095100100VRE:バンコマイシン耐性腸球菌.*:測定対象株の90%以上を抑制する最小発育阻止濃度(MIC).(藤村享滋ほか:日本化学療法学会雑誌54:330-354,2006より抜粋し作成)b-ラクタム系薬以外の抗菌薬の感受性率はMRSEとMRSAでは多少異なる.ミノサイクリンおよびニューキノロン系経口薬はほとんどのMRSAに無効であるが,MRSEに対してはそれぞれ92%および30~40%の感受性率が認められる.一方,バンコマイシンなどの抗MRSA注射薬はMRSEおよびMRSAのいずれに対しても高い感受性率を保持しているが,近年,MRSEに対するテイコプラニンならびにMRSAに対するアルベカシンの感受性率は若干低下傾向にある.なお,新規抗MRSA/VRE抗菌薬であるリネゾリドはMRSAおよびMRSEに対し優れた抗菌力を有しており,さらに,組織内移行性が高いという利点を有することから,今後は眼科領域においても有用性評価が期待される抗菌薬である.◎検査室から眼科医へ◎表皮ブドウ球菌を含むCNSは結膜?の常在菌であることから,検査材料種別(無菌材料;硝子体液,眼内レンズ,汚染を回避し採取した角膜擦過物/常在菌の汚染が避けられない検査材料;眼脂・結膜擦過物)によって検査法および検査の進め方が異なります.このため眼科医は常在菌の汚染を可能な限り回避した材料採取を行うとともに検査室(検査センター)へ材料種別や患者情報などを伝える必要があります.また,検査室ではどのように検査を進めているのか(無菌材料の増菌培養は何日行っているか?CNSが検出された場合にはどのような基準で検査を進めているか?など)について話し合いの場をもつことが望ましいと考えます.これらは検査室とのトラブル回避はもちろんのこと臨床と検査室の双方のレベルアップにも役立ちます.◎眼科医から検査室へ◎単に機械的に検査を行うのでなく,検査室と常に情報を交換していくことは,臨床に有用な情報を得るうえで大変大事なことだと思います.MRSEについては,眼科では点眼という他科にはない治療法が駆使できるので,点眼で利用でき,MRSEへの効果の期待できるクロラムフェニコールやゲンタマイシン・トブラマイシン・ミクロノマイシンなどのアミノグリコシド系薬の感受性についての情報があればありがたいと思います.また,バイオフィルムをつくるスライム産生能を知る指針として,???遺伝子についての情報があれば,その臨床的病態を考えるうえで役立つと思います.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次☆☆

光線力学的療法(PDT):Predominantly classic CNVに対する光線力学的療法

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS●PredominantlyclassicCNVとは滲出型加齢黄斑変性(AMD)に伴う脈絡膜新生血管(CNV)のうち,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)所見上,典型的な造影所見を示すclassicCNVが全病巣の半分以上を占める場合にpredominantlyclassicCNVと称する.ここでいう病巣とは,漿液性色素上皮?離,蛍光ブロック,瘢痕のすべてを含んだものであり,病巣にoccultCNVが含まれるかどうかは問わない.Pre-dominantlyclassicCNVに分類される症例には,狭義AMDだけではなくポリープ状脈絡膜血管症(PCV)や網膜内血管腫状増殖(RAP)などが含まれるが,本稿では狭義AMDのためにpredominantlyclassicCNV所見を呈しているAMDについて述べる.●PredominantlyclassicCNVに対する光線力学的療法(PDT)の効果欧米ではPDT施行の際にFAによるCNV分類が重要視されている.TreatmentofAge-relatedMacularDegenerationwithPhotodynamicTherapy(TAP)investigationによってpredominantlyclassicCNVでは病変サイズ,術前視力によらずPDTの有効性が示され,PDTが推奨される.これは,病巣の大きさや,病状の進行度によりPDT適応に制限のあるminimallyclassicCNVやoccultwithnoclassicCNVと対照的である.すなわち,predominantlyclassicCNVはPDTの最もよい適応とされている1).欧米ではpredominantlyclassicCNVはminimallyclassicCNVよりは再治療率が低い2)が,occultwithnoclassicCNV3)よりは再治療率が高いと報告されている.また,日本人を対象にしたJapaneseAge-relatedMac-ularDegenerationTrialではclassicCNVは,occultCNVよりも閉塞率が低いことが報告されている4).●症例提示〔症例1〕PDT単独.72歳,女性.4年前にAMDを指摘され,経瞳孔温熱療法を一度施行されておりCNVは沈静化していたが,2005年3月頃からCNV再燃が認められた(図1a~c).治療前の矯正視力は0.1であった.経過:FAにて中心窩領域にclassicCNVを認める(61)柳靖雄東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座眼科学光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子7.PredominantlyclassicCNVに対する光線力学的療法PredominantlyclassicCNVはoccultwithnoclassicCNVと比較して光線力学的療法(PDT)による閉塞が得られにくく,長期間くり返しPDTを行う必要があることが多い.また,治療後は線維性瘢痕を残すことが多く,視力障害の原因となることがある.トリアムシノロン併用PDTを行うと,CNVの高い閉塞率が得られる可能性があり,本症の治療の併用薬剤として有効である.提供図1症例1:PDT単独(72歳,女性)治療前;a:眼底写真,b:OCT,c:左よりFA早期,後期,IA.治療後;d:眼底写真,e:OCT,f:左よりFA早期,後期,IA.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(図1c).2005年3月,病変最大径(GLD)1,240?m,照射径2,240?mで初回PDTを施行した.以降3カ月ごとに二度PDTを施行したところ,治療開始から1年目に滲出性変化の軽減を認めたため,PDTは行わずトリアムシノロン(TA)を後部Tenon?下に単独投与した.一度,脈絡膜新生血管は沈静し,矯正視力0.1を保っていた.その後,2006年6月頃より,再度新生血管が活動してきたが,治療を望まなかったため,追加のPDTは施行せず,現在に至る.CNVは依然として活動しており(図1d~f),矯正視力は0.08である.〔症例2〕TA併用PDT.67歳,男性.2005年11月の初診時,矯正視力0.15.2006年1月の治療前は,矯正視力0.04であった(図2a~c).経過:FAにて中心窩領域にclassicCNVを認めた(図2c).PDT単独療法とTA併用PDTについて説明し,インフォームド・コンセント取得のうえ,2006年1月,GLD3,200?m,照射径4,200?mで初回のTA併用PDTを行った.TAは後部Tenon?下にPDT治療(62)の前日に投与した.治療後3カ月目にはCNVの活動性が依然として残存していたため二度目のTA併用PDTを行った.その後,CNVは線維化し,最終治療から9カ月経過する現在まで病状は安定している(図2d~f).線維性瘢痕が中心窩に残存し,矯正視力は0.04に留まっている.●解説PredominantlyclassicCNVに対してはPDTが有効である.しかしながら,CNVの閉塞をきたすまでには治療回数が多くなる.また,治療後は,線維性組織が網膜下に残存することが多く,視力障害の一因となることがある.TA併用PDTは,PDT単独施行と比較して治療回数が少なくて済むとされる.また,TAを併用したPDTではPDT単独療法に比較して視力予後が良いとする報告も多数存在する.したがって,CNVの閉塞が得られにくいpredominantlyclassicに対してはTAの併用を検討してもよいと考えられる.投与経路は,欧米での報告は硝子体内投与が主流であるが,わが国では合併症を危惧して後部Tenon?下注射が好まれる傾向にある.いずれの投与方法でもTA併用による白内障の進行促進,眼圧上昇などの合併症のリスクがありうるので,投与前には十分な説明を行い,投与後の経過観察が重要となる.文献1)Guidelinesforusingvertepor?n(Visudyne)inphotody-namictherapyforchoroidalneovascularizationduetoage-relatedmaculardegenerationandothercauses:update.??????25:119-134,20052)BresslerNM,ArnoldJ,BenchabouneMetal:Vertepor?ntherapyofsubfovealchoroidalneovascularizationinpatientswithage-relatedmaculardegeneration:addition-alinformationregardingbaselinelesioncomposition?simpactonvisionoutcomes─TAPreportNo.3.????????????????120:1443-1454,20023)Vertepor?ntherapyofsubfovealchoroidalneovasculariza-tioninage-relatedmaculardegeneration:two-yearresultsofarandomizedclinicaltrialincludinglesionswithoccultwithnoclassicchoroidalneovascularization─Vertepor?ninphotodynamictherapyreport2.????????????????131:541-560,20014)JapaneseAge-relatedMacularDegenerationTrial:1-yearresultsofphotodynamictherapywithvertepor?ninJapanesepatientswithsubfovealchoroidalneovasculariza-tionsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.???????????????136:1049-1061,2003図2症例2:TA併用PDT(67歳,男性)治療前;a:眼底写真,b:OCT,c:左よりFA早期,後期,IA.治療後;d:眼底写真,e:OCT,f:左よりFA早期,後期,IA.

緑内障:プロスタノイド受容体と眼圧下降

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS●プロスタグランジン系眼圧下降薬とプロスタノイド受容体プロスタグランジン(PG)シクロオキシゲナーゼ系のおもな代謝物はPGD2,PGE2,PGF2a,PGI2,TXA2である.それぞれに特異性の高い受容体はプロスタノイド受容体とよばれ,DP,EP1~4,FP,IP,TPと分類されているが,実際には生体内のPGは1種以上の受容体に交叉結合しうるので,各々の薬理作用は広い.PGの眼での最初の報告は1955年にAmbacheがirinと名付けた瞳孔収縮作用のある物質を虹彩から抽出したことに始まり,それはおもにPGF2aとPGE2であることが判明している.1970年代になり低用量のPGF2aがウサギで眼圧下降を示すことがわかり,その後多くのPGE2,PGF2aとその関連物質が試され,角膜透過性に優れたPGF2a-isopropylesterから,現在のラタノプロスト,ウノプロストン,トラボプロスト,ビマトプロストの開発に至り,前2者が国内で,後者が海外で使用されている.国内ではタフルプロストも開発され治験中である(図1).ビマトプロスト以外はカルボキシル基末端がエステル化されてprodrugとなっており,角膜でesteraseにより代謝されてacid体となり受容体に結合する.ビマトプロストはアミド基が結合している点が他4剤と異なるが,角膜でamidaseにより代謝されて眼内ではacid体として働くと考えられる.図2に5種のPG系眼圧下降薬の受容体への親和性を示した.ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト,ビマトプロストacid体はFP受容体への結合力が強いことが特徴であるが,ビマトプロストは当初代謝されず作用する可能性も示されていた.ウノプロストンはどの受容体にも結合が弱く作用機序が不明とされていた.FPアゴニスト作用の強い4薬剤は受容体レベルでの特異性が非常に高いので,本来のPGF2aより作用も絞り込まれた結果,FP以外の受容体を介した副作用が分離されて強い眼圧下降作用を示しているのが大きな特徴であるといえる.ウノプロストンは受容体結合能が弱いことを反映して眼圧下降効果に劣る.(59)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄82.プロスタノイド受容体と眼圧下降相原一東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座眼科学プロスタノイド受容体は8種DP,EP1,EP2,EP3,EP4,FP,IP,TPが存在し,そのうちFP受容体が現在上市されている4種および開発中のプロスタグランジン系薬剤による眼圧下降に必須であることが受容体欠損マウスを用いた実験により証明された.また,EP受容体サブタイプも眼圧下降に関与している可能性があり,今後の新しい眼圧下降薬の開発が期待される.図1PG系眼圧下降薬ウノプロストン,ラタノプロスト,トラボプロスト,ビマトプロスト,タフルプロストの化学式と基本骨格のPGF2a-IEおよび17-phenyltrinor-PGF2a-IEの比較.赤丸で示したところが各薬剤の特徴.IE:isopropylester.esteraseesteraseesteraseesteraseesteraseesteraseamidaseHC(HCOOC3)2HOHOO31417151ronirtlynehp-71EI-lonetsorpulFronirtlynehp-71FGP2α-edimalyhteenotsorponUenotsorponU%21.0%21.0tsorpovarT%400.0tsorpotamiB%30.0tsorpulfaTHC(HCOOC3)2HOHO3141516171HOHC(HCOOC3)2HOHOOF314171FFHOHC(HCOOC3)2HOHOFFOHC(HCOOC3)2HOHO314171HOHC(HCOOC3)2HOHO71HOFGP2α-EIFGP2α-EIHOHONOCC2H4HOH314171HOtsorponataLtsorponataL%500.0%500.0———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007●FP受容体欠損マウスにおける眼圧下降眼圧下降効果はFP特異性が高いほど強い傾向にあることから,FP受容体が眼圧下降作用の主たるシグナル開始点である可能性が示唆され,筆者らは5種の薬剤によるFP受容体欠損マウスにおける眼圧下降効果を検討した1,2)(図3).野生型マウスとFP受容体欠損マウスの片眼に市販濃度の5種のPG系眼圧下降薬を3??点眼後,僚眼を対象として3時間での眼圧下降率を検討したところ,図3のように野生型マウスではいずれも有意な眼圧下降効果が得られたが,FP受容体欠損マウスではほとんど眼圧下降効果が得られなかった.したがって,現在のPG系眼圧下降薬はいずれもFP受容体を介して眼圧下降効果を示すことが判明した.FP受容体欠損マウスの日中夜間の眼圧は野生型マウスと同様であり,FP受容体自体は眼圧維持や日内変動には影響しないことも判明した.●EP受容体アゴニストにおける眼圧下降すでにサル眼を用いたPGE2の眼圧下降効果が示されているが,EP受容体は4つのサブタイプがあるため,眼圧下降に対する特異性が異なる可能性がある.そこで,EP1~4の各受容体のアゴニストを用いた眼圧下降効果を検討した.興味深いことにEP2およびEP4受容体アゴニストによる眼圧下降効果が得られ,EP1およびEP3受容体ではまったく眼圧下降効果が得られなかった(2005ARVO発表).EP2およびEP4受容体の細胞内シグナルはともにcAMPの上昇を介することが判明しているので,線維柱帯,毛様体でのcAMP上昇が眼圧下降作用に関与している可能性がある.●将来の展望作用機序が不明のままに開発されたPGF2a系の薬剤から,現在はプロスタノイド受容体レベルでの眼圧下降効果が検討できるようになってきた.FP受容体が眼圧下降作用の大きな役割をはたしていることは相違ないが,その他にEP受容体,DP,IP,TP受容体も関与している可能性がある.今後は受容体特異性の高い薬剤を開発することにより,さらに作用,副作用を分離し,眼圧下降効果が高い薬剤の開発につなげる必要がある.また,受容体レベル以下のシグナル伝達と細胞外出力をさらに検討して眼圧下降機序のよりいっそうの解明が期待される.文献1)OtaT,AiharaM,NarumiyaSetal:Thee?ectsofprosta-glandinanaloguesonIOPinprostanoidFP-receptor-de?-cientmice.?????????????????????????46:4159-4163,20052)OtaT,AiharaM,SaekiTetal:TheIOP-loweringe?ectsandmechanismofactionofta?uprostinprostanoidrecep-tor-de?cientmice.???????????????2006,inpress(60)図2PG系薬剤(acid体)のプロスタノイド受容体に対する親和性グラフの外側ほどその受容体に対する親和性が強いことを示す.Unoprostoneacid以外はFPに強い親和性を有するが,FP以外にはそれぞれ異なる特性を示す.全薬剤同一の親和性試験は行われていないので,薬剤間での比較はできないことに注意.enotsorponUenotsorponUdicadica011-014-017-0101-PF1PE2PE3PE4PEPDPIPT011-014-017-0101-PF1PE2PE3PE4PEPDPIPTtsorpulfaTtsorpulfaTdicadicatsorpotamiBtsorpotamiBdicadica011-014-017-0101-PF1PE2PE3PE4PEPDPIPTtsorpotamiBtsorpotamiB011-014-017-0101-PF1PE2PE3PE4PEPDPIPTtsorpovarTtsorpovarTdicadicatsorponataLtsorponataLdicadica011-014-017-0101-PF1PE2PE3PE4PEPDPIPT図3FP受容体欠損マウスにおける眼圧下降野生型(WT)およびFP受容体欠損マウス(FP)眼に夜間点眼後3時間での眼圧下降率(%)を示す(平均±SD).FP受容体欠損により各薬剤ともに眼圧下降効果が消失する.*:p<0.01.(文献1より)LatanoprostTravoprostBimatoprostTa?uprostUnoprostone-100102030*****WTFPWTFPWTFPWTFPWTFP眼圧下降率(%)

屈折矯正手術:屈折矯正手術はチームワーク-スタッフ教育について-

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS●患者体験をしてみて昨年,筆者自身もlaser???????keratomileusis(LASIK)を受けてたみた.信頼できる術者とスタッフに囲まれて,安心して手術をできたことは幸運であった(図1).もし,誰も知らないような施設で手術を受けるとしたらどうだろうか.術者が信頼できる人間であるかどうか,手術のシステムは?検査の精度は?滅菌処理は?などなど,眼科医療にかかわっている人間が患者であれば疑問はつきないように思われる.しかし,手術ベッドに横たわれば,患者としてはすべてを信頼してまかせるしかないわけだから,いかにリスクが低い手術とはいえ,どのような施設で手術を受けるかは慎重でありたい.手術自体は自分自身が何回も行っている手技ではあったが,患者になってみると,今まで気がつかなかった部分がみえてくることがある.点眼麻酔が十分効いていれば,LASIKは無痛手術で,固視標をみることもまったく問題ない.ただ,わずかではあるが痛みを感じると,どうしても眼をつぶりたくなってしまう.開瞼器をつけた状態で眼をつぶると,眼球は上転してレーザー照射が中断されてしまう.点眼麻酔を十分効かせることはこの手術の大切なポイントかもしれない.ただ,筆者らの施設では点眼麻酔をするのは術者ではなく,待合室でスタッフが行う.このスタッフがしっかり点眼してくれな(57)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男83.屈折矯正手術はチームワーク─スタッフ教育について─稗田牧バプテスト眼科クリニックLaser???????keratomileusis(LASIK)をはじめとする屈折矯正手術は,近視や乱視を矯正するだけではなく,患者が受けた手術に満足していただかなくてはならない.術者のみならずスタッフ全員が,患者の満足度向上という目標に向かって何が必要であるか常に考え続けることが大切である.図1患者が安心して手術を受けられる環境が大切である(患者は筆者)勤めているクリニックであれば安心である.図2(筆者の)LASIK術翌日の所見向かって左が右眼で右が左眼.左はフラップエッジに出血があるが,視力は良好.出血は1カ月で吸収した.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007ければ,点眼麻酔を効かせることはできない.また,開瞼器を急に開きすぎると痛みを感じてしまう原因となる.筆者らの施設では開瞼器をかけるのは術者ではなく,手術助手が行う.手術助手がゆっくり丁寧に瞼を開けないと,痛みを感じてしまうことがあるかもしれない.いずれにせよ,一度痛みを感じればそれが恐怖となり,短い手術は大変恐ろしい時間に変わる.自分自身手術時に片眼のLASIKが,少し点眼麻酔の効きが悪かったのか,軽い痛みを感じた.点眼麻酔の効きが十分でなかったといって,視力が良くなっても不満を訴える患者の気持ちもわからないではないのである.幸いに自身のLASIK術後経過は,翌日(図2)からは外来診療が問題なく行えて,翌週からは眼科手術が問題なく行えた.視力回復の速さがLASIKの特徴ではあるが,自身で体験することでそれが本当に理解できた気がする.しかし何といっても,点眼麻酔の重要性は身にしみて感じられたのである.●LASIKを精確に行うためにチームとは,ある目的を達成するために集まった2人以上の集まりという定義らしい.ある目的というのは,屈折矯正手術の場合,患者の屈折異常を矯正するということである.LASIKの精度は±1.0D以内に95%,±0.5D以内に90%が入る手術であり,もし全員正視ねらいだとすると9割方正視になる手術である.もちろん,これには精確で安定性のある検査がなされており,レーザーのキャリブレーションが正しくなされており,レーザー室の温度湿度が管理され,マイクロケラトームのセッティングが正しく行われていることが前提条件で,かつ手術が安全に行われた場合である.それらのいずれも,術者もしくは医師が行っている施設は存在しないのではないだろうか?医師以外の看護師,視能訓練士,事務職員などがいずれかの仕事を受け持ち,そのいずれもがしっかりと行われていて初めて精度の高い屈折矯正手術ができるのである.従来の眼科手術にもそのような側面はあったものの,屈折矯正手術のなかでもLASIKは医師以外の役割が比較的大きい手術ではないかと思われる.●チームワークは生成されるもの?筆者らの施設ではつい最近まで,LASIKの説明は医師がすべて行っていた(図3).しかし,患者の理解をより十分得るには,医師でないスタッフにLASIKのことを十分理解してもらい,それを説明したほうが,よりわかりやすいのではないかと考えるようになった.LASIKのことを知っているようで,他人に説明できるほどよく理解しているスタッフは,LASIK専門施設でもなければなかなかいないものである.医師の負担軽減という効果ももちろんあるが,それよりもスタッフの一人でも多くにLASIKのことを理解してもらうことは重要と考えている.なぜなら,そのことが,医師以外の立場からみた現在のシステムの盲点を明らかにすることも多いからである.LASIKの満足度に影響しているものは,精確な屈折矯正以外にも,痛みがなく,待ち時間も少なく,患者一人ひとりを尊重して対応し,十分安全性に留意するなど,さまざまな要素がある.医師の手術手技が問題なければそれですべてがうまくいくというような単純なものではない.医師のみならず医師以外のスタッフもLASIKに関心をもち,さまざまな角度から現時点の問題点を指摘しあい,患者の満足度をより向上するためのアイデアを出していけるような環境をととのえていかなくてはならないと感じている.(58)☆☆☆図3患者への説明(説明しているのは筆者)最初は医師のみで行っていたが,今は事務職員も説明ができるようになった.

眼内レンズ:シリコーン眼内レンズの石灰化

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS石灰化は起こらないとされているシリコーン眼内レンズに表面石灰化を認めた症例を報告する1).症例は70歳,男性.1999年7月左眼超音波白内障乳化吸引術,シリコーン眼内レンズ挿入術を行った.術前視力0.4(矯正不能),術後視力0.2(矯正1.0)と視力改善を認めたが,2年後術眼の霧視を自覚した.視力に大きな低下はなかった(矯正1.0)が,レンズ後面の混濁を認め,後発白内障の診断のもと,レーザー後?切開術を施行された.しかし,混濁は後?ではなくレンズの後面に付着していたため除去できず,主訴の改善も認めなかった.混濁は後?切開窓の範囲に一致するように存在した(図1).手術による沈着物の除去,またはレンズの交換が必要と判断され,2003年5月,国立病院機構大阪医療センターに混濁除去と硝子体手術のため紹介受診の運びとなった.混濁は手術機器での擦過でも除去できずレンズを摘出し,アクリル眼内レンズを挿入した.術後矯正視力は術前と同様であった(1.0×sph-2.0D)が,主訴の改善を認めた.摘出したレンズは,鑷子で把持したところのみ,混濁が外れているのが観察され(図2),何らかの物質の付着(55)渕端睦*1斉藤喜博*2*1行岡病院眼科*2国立病院機構大阪医療センター眼科眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎248.シリコーン眼内レンズの石灰化海外でも数例の報告しかない,シリコーン眼内レンズにみられた石灰化の1例を経験した.星状硝子体症が関与していると考えられ,その臨床経過と発症機序について検討した.同様の症例の発生に注意を払う必要があると同時に,星状硝子体症の起こりやすい糖尿病患者にはシリコーンレンズの使用は禁忌であると結論された.図1細隙灯顕微鏡写真眼内レンズの後面に白色の混濁を認める.混濁はレーザー切開窓に一致して認められている.図2手術中写真レンズ後面の混濁を手術中に擦過したが,混濁は除去できなかった.流水で洗浄しても混濁は残存,摘出の際にレンズ鑷子で把持したところのみ,混濁が外れていた.図3摘出した眼内レンズ光学部の走査型電子顕微鏡写真レンズ表層に膜状の付着物が存在している.成分分析の結果,付着物には,リン(P)とカルシウム(Ca)が,レンズ中央部の混濁のないところと比べて多いことがわかった.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(00)であると考えられた.レンズ表層を電子顕微鏡で構造解析したところ膜状の付着物が存在していた(図3).付着物の成分分析ではリン(P)と,カルシウム(Ca)が多く含まれており,リン酸カルシウムが主成分であることが判明した.海外と今回の症例を合わせ,シリコーン眼内レンズに混濁をきたした6症例を検討したが,いずれも共通して手術眼または僚眼に星状硝子体症がみられており,後?切開術を施行後,沈着物が増加し,レンズの摘出をするに至った,という経過も共通していた.どの報告においても混濁の主成分はリン酸カルシウムであった.疎水性であり,生物学的に不活性というシリコーンの性質を考えると,生体にとって異物である眼内レンズに対し,異物性巨細胞(マクロファージ,多核巨細胞など)の接着が起こり,硝子体中のリン酸カルシウムを引き付けて,表面石灰化が起こった可能性が高い.異物性巨細胞は血液房水柵の破綻,慢性の術後炎症を反映するものと考えられている.本症例には血液房水柵の破綻をきたす糖尿病などの基礎疾患はなく,細隙灯による術後所見では,炎症の遷延もみられなかったが,6症例のなかには基礎疾患に糖尿病のある症例も,半数みられていた2~4).星状硝子体は高齢者の硝子体内にみられる白色の構造物であり,主成分はリン酸とカルシウムである.発生原因として加齢や後部硝子体?離が考えられ,基礎疾患として糖尿病が隠れているという意見もある.本症例では右眼に星状硝子体症を認めており,硝子体内のリン酸カルシウムが結晶化しやすいという素因が眼内レンズの石灰化を発生させた可能性が考えられる.また,後?切開を行うことで,さらにレンズが硝子体内のリン酸やカルシウムと接触するため,沈着物の増加をきたすと考えられた.星状硝子体症は硝子体液のイオンバランスやコラーゲン線維の変化,血管透過性の増加によって発生するといわれており,片眼に星状硝子体がみられる場合,顕微鏡下では所見がなくとも,他眼でもカルシウムイオン,リン酸イオンの濃度が高いあるいは血管透過性が高いといった理由で,将来星状硝子体が発生する可能性がある.眼内レンズ石灰化の正確な機序は不明であるが,星状硝子体症が関与している可能性は非常に高い.また星状硝子体症の起こりやすい糖尿病などの基礎疾患をもつ患者には,レンズの選択は慎重に行う必要があると考えられた.文献1)渕端睦,斉藤喜博,北口善之ほか:シリコーン眼内レンズに石灰化が発生した星状硝子体症の1例.日眼会誌110:736-740,20062)WackernagelW,EttingerK,WeitgasserUetal:Opaci?-cationofasiliconeintraocularlenscausedbycalciumdepositsontheoptic.???????????????????????30:517-520,20043)FootL,WernerL,GrillsJPetal:Surfacecalci?cationofsiliconeplateintraocularlensesinpatientswithasteroidhyalosis.???????????????137:979-987,20044)WernerL,KollaritsCR,MamalisNetal:Surfacecalci?ca-tionofa3-piecesiliconeintraocularlensinapatientwithasteroidhyalosis:aclinicopathologiccasereport.??????????????112:447-452,2005

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ装用上の点眼薬(1)

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSコンタクトレンズ(CL)を装用しているときに,点眼薬を使用する必要がなければ,それにこしたことはないが,ドライアイ,アレルギー,白内障,緑内障などの疾患を有する患者は点眼薬の使用を余儀なくされる.当院において平成9年1月~12月の1年間にCLを処方した1,232人を対象に,点眼薬使用の有無と点眼薬による角結膜障害について調査したことがある1).点眼薬使用者は244人(19.8%)であった.対象疾患としては,アレルギーが42.3%,ドライアイが28.2%と大半を占めていたが,点状表層角膜症,虹彩炎,霰粒腫,慢性結膜炎,白内障,緑内障などの疾患も含まれていた.経過観察中,明らかに点眼薬によると思われる角結膜障害は認められなかったが,本稿では,コンタクトレンズ装用上の点眼薬使用の危険性と注意点について解説する.●点眼薬による副作用点眼薬には有効となる主薬剤のほかに,等張化剤,緩衝剤,可溶化剤,安定化剤,粘稠化剤,防腐剤などが含まれている.このような成分はいずれもアレルギー反応などによる角結膜障害をひき起こす可能性があるが,ここでは主薬剤と防腐剤についてのみ触れる.主薬剤による副作用としては,やはり緑内障治療用単眼薬によるものが代表であろう.全身的な副作用としては,b-遮断薬の循環機能障害(不整脈・徐脈)や呼吸障害(喘息),ピロカルピンの消化器障害(悪心・嘔吐),ジピベフリンやエピネフリンの循環器障害(心悸亢進),ラタノプロストの呼吸器機能障害(喘息),ドルゾラミドの悪心・頭痛,イソプロピルウノプロストの頭痛・悪心・動悸などがある.眼局所的副作用としては,プロスタグランジン製剤,b-遮断薬の角膜障害,ジピベフリンやエピネフリンの結膜障害,ピロカルピンの近視化・暗黒感,エピネフリンやプロスタグランジン製剤の黄斑症などがある.白内障術後に使用されるプロスタグランジン生合成阻害薬であるインドメタシンやジクロフェナ(53)小玉裕司小玉眼科医院コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS274.コンタクトレンズ装用上の点眼薬(1)図2ジクロフェナクによる角膜上皮障害角膜混濁と不正乱視が残り,自己角膜回転移植を施行した.図1塩化ベンザルコニウムによる角膜上皮障害広範囲に角膜びらんが生じ,中央部には遷延性角膜上皮欠損が認められる.表1点眼薬に含まれる防腐剤の種類?パラオキシ安息香酸エステル類メチルパラベン,エチルパラベン,プロピルパラベン,ブチルパラベン?逆性石?類塩化ベンザルコニウム,塩化ベンゼトニウム,グルコン酸クロルヘキシジン?アルコール類クロロブタノール,フェニルエチルアルコール?有機酸類デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸,ソルビン酸ナトリウム———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(00)クによる角膜上皮障害も報告されている2~5)(図1).多くの点眼薬のなかには,防腐剤として塩化ベンザルコニウムやパラベン類などが含まれている(表1).これらの防腐剤が角膜上皮に障害をもたらすことは,臨床研究や基礎研究により数多く報告されている.特に塩化ベンザルコニウムは,わが国において認可市販されている点眼薬の60%に用いられており6),その毒性の高さからも最も注目を浴びている(図2).●CL装用上の点眼薬使用上述したように,CL装用上でなくとも,点眼薬を使用することによって,さまざまな全身症状や眼局所症状がひき起こされる可能性がある.このような副作用が,CL装用上において点眼薬を使用することで,より強く生じるのであろうか.ハードコンタクトレンズ(HCL)においてもソフトコンタクトレンズ(SCL)においても,レンズ下の涙液中に点眼薬が通常より長い時間存在すること,レンズの材質によっては薬剤を吸着する可能性があること,またSCLにおいてはレンズ内への薬剤の貯留や蓄積が生じる可能性があることなどから,点眼薬の副作用が通常より強く生じる危険性を考慮に入れて使用しなければならない.点眼薬によるレンズ材質の変性や着色,レンズ形状の変化などによる角結膜障害,懸濁液においてはレンズ下の薬剤による機械的刺激による角結膜障害も危惧されるところである.次回のセミナーでは,CL装用上の点眼薬使用の安全性と危険性について,また点眼薬の使用上の注意点などについて,さらに具体的に解説する.文献1)小玉裕司,北浦孝一:コンタクトレンズ装用上における点眼使用の安全性について.あたらしい眼科17:267-271,20002)土屋忠久:インドメロール点眼液による角膜上皮障害.???2:189-194,19883)山田昌和,坪田一男ほか:白内障術後のインドメサシン点眼が角膜上皮に及ぼす影響.臨眼44:455-459,19904)山田昌和,坪田一男:白内障術後のジクロフェナック点眼が角膜上皮に及ぼす影響.あたらしい眼科9:1583-1587,19925)小玉裕司:ジクロフェナックによる角膜上皮障害.あたらしい眼科13:383-384,19966)中村雅胤,西田輝夫:防腐剤の功罪.眼科NewInsight②,点眼薬─常識と非常識─(大橋裕一編),p36-43,メジカルビュ-社,1994

写真:シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズとマルチパーパスソリューションとの組み合わせで発生しうる角膜上皮障害とその考察

2007年4月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS(51)丸山邦夫横井則彦京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦275.シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズとマルチパーパスソリューションとの組み合わせで発生しうる角膜上皮障害とその考察図1PHMBを含むMPSに12時間浸漬した新品のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ(seno?lconA)を,2時間装用した際にみられた角膜上皮障害(28歳,女性)図3新品のシリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズ(seno?lconA)を1日終日装用し,図1と同じMPSで,洗浄,すすぎ,保存(12時間)を行って,翌朝,装用2時間後に観察したときの角膜観察所見図1に比べて,角膜上皮障害は軽度であることがわかる(図1と同じボランティア眼).図4図3のシェーマ極軽度のびまん性の点状表層角膜症の観察所見.図2図1のシェーマ中等度のびまん性の点状表層角膜症の観察所見.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(00)マルチパーパスソリューション(MPS)は,ソフトコンタクトレンズ(SCL)の洗浄,消毒,保存を1液で行うケア用品であるが,ときとして,MPS特有の角膜上皮障害が発生する1,2).この角膜上皮障害は,消毒成分として配合されているポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)が原因と考えられており1),MPSとSCLとの組み合わせにより,その発生率は異なる1,3).また,MPSに一晩(12時間以上)浸漬した新品のSCLを装用すると,角膜上皮障害は装用2時間後に最も強くなり,6時間後には消失することが知られている4,5).近年,シリコーンハイドロゲルSCL(SHSCL)が普及しはじめ,PHMBを含むMPSとの組み合わせで角膜上皮障害が発生しやすいものがある3).この上皮障害は,レンズ装用中にSHSCLに吸着したPHMBが涙液中に放出されることが原因と考えられている4).図1,2に,PHMBを含むMPSに12時間浸漬した新品のSHSCL(seno?lconA)を2時間装用したときの典型的な角膜上皮障害を示すが,この障害は装用6時間後には自然に消失しうるため,臨床上問題となるか否かについては意見の分かれるところである.一方,筆者らは,同一のボランティア眼において,新品のSHSCL(seno?lconA)を1日装用した後に,図1,2の場合と同じMPSに12時間浸漬し,翌朝,装用2時間後に観察した結果,角膜上皮障害が明らかに軽度(図3,4)であることを経験した.そこで症例を増やし,上記と同一のSHSCLとMPSを用いて,8名8眼(男性3名,女性5名,平均年齢31.4±4.4歳)で検討したところ,新品のSHSCLをMPSに12時間浸漬したときの角膜上皮障害(AD分類)が,area2.8±0.5,density1.0±0.0であったのに対し,1日装用後にMPSに浸漬したときはarea1.4±1.2,density0.9±0.6と,areaが有意に減少していた(p<0.05).筆者らは,これまでの報告とは異なるこの結果をつぎのように考えている.1日装用したSHSCLは,レンズ表面に常在菌や涙液成分が付着し,PHMBがこれらと接触することで活性が低下し,障害性が軽減したため,角膜ステイニングの程度が軽度であったと推察する.つまり,これまでに報告されている装用2時間後の角膜上皮障害は,新品のSCLを用いた試験系であり,実際の使用とは異なると考えている.しかし,PHMBとの関連が強く疑われる角膜上皮障害を実際にみた場合は,PHMBを含有していないMPS(消毒成分として塩酸ポリドロニウムを配合)5)やPHMBがSCLに吸着しないように工夫されたMPS6)(グリコール酸でSCLへのPHMBの吸着を予防)への変更や,SCLメーカーが推奨するMPSを使用することで,眼表面へのPHMBの悪影響を回避することが必要である.MPSは,近年SCLユーザーに急速に普及しているが,眼表面に障害が発生することもありうる.レンズを処方する側は,レンズの知識のみならず,MPSとの相性についても十分な知識をもち,定期検査では,レンズをはずして前眼部障害を観察する習慣を身につけることが大切である.文献1)LebowKA,SchachetJL:Evaluationofcornealstainingandpatientpreferencewithuseofthreemulti-purposesolutionsandtwobrandsofsoftcontactlenses.?????????????????29:213-220,20032)JonesL,MacDougallN,SorbaraLG:Asymptomaticcor-nealstainingassociatedwiththeuseofbala?lconsilicone-hydro-gelcontactlensesdisinfectedwithapolyminopro-pylbiguanide-preservedcareregimen.?????????????79:753-761,20023)http://www.staininggrid.com4)GarofaloRJ,DassanayakeN,CareyCetal:Cornealstain-ingandsubjectivesymptomswithmultipurposesolutionsasafunctionoftime.????????????????31:166-174,20055)工藤昌之,糸井素純:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと消毒剤との相性.あたらしい眼科22:1349-1355,20056)Santodomingo-RubioJ:Thecomparativeclinicalperfor-manceofanewpolyhexamethylenebiganide-vsapoly-quad-basedcontactlenscareregimewithtwosiliconehydrogelcontactlenses.???????????????????27:168-173,2007

時の人

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS広島大学大学院医・歯・薬学総合研究科視覚病態学教室の歴史を簡単にひも解くと,昭和23年4月に赤木五郎先生(専門は緑内障)によって開講された.その後,百々次夫先生(網膜・硝子体),調枝寛治先生(網膜・硝子体),三嶋弘先生(緑内障)と引き継がれ,そして平成18年8月に木内良明先生が第5代目教授として就任された.木内先生の専門分野も緑内障であり,広島大学眼科は緑内障と網膜疾患の治療と研究を看板としてきたことになる.*木内良明先生は,昭和58年に広島大学を卒業され,広島大学および関連施設で研修後,緑内障の研究をスタートさせ,三嶋前教授の下で家兎毛様体における細胞内情報伝達系の研究で学位を得られた.その後,平成2年から2年間,米国エール大学で眼圧の日内変動の研究をされた.米国から帰国されたときはちょうどラタノプロスト(キサラタン?)の臨床開発が行われている最中で,臨床にたずさわりながらキサラタン?の房水循環動態や眼圧日内変動に及ぼす影響などを楽しみながら調べられていたという.しかし,平成9年からは三嶋前教授,大阪大学の田野保雄教授のご配慮で大阪大学眼科の関連施設である国立大阪病院で勤務できることになり,そこから臨床三昧の生活が始まったといわれる.国立大阪病院時代には糖尿病網膜症やぶどう膜炎に続発した緑内障の患者さんを診療する機会を多数得られたそうである.また,平成15年8月から国家公務員共済連合会の大手前病院に転勤され,「角膜移植や屈折矯正手術を経験するとともに前眼部疾患に続発した緑内障患者の治療経験を深めることができる幸運にも恵まれた.おかげで網膜疾患も緑内障も角膜前眼部疾患もかなり深い世界を見ることができたと思います.」と話された.木内先生が平成8年に勤務されていた広島赤十字・原爆病院は700床以上あるいわゆる大病院である.それでも眼科医は定員3名で毎日午前中が外来で,火曜日と木曜日の午後から手術を行われていたが,整形外科や,外科の先生方は朝から1日中手術室で働いておられたという.整形外科の先生からにはそんなに良いものではないと言われたが,手術的な治療が好きな木内先生は,「一度でよいから朝から晩まで手術ばっかりしてみたいとあこがれたものです.国立大阪病院,大手前病院では朝から晩まで1日中手術ができました.大手前病院に異動したころから急速に患者さんが増えてシステムが追いつかなかったこともあり,朝の9時から終電車がなくなる時刻まで手術室にいる生活が続きましたが,本当に良いものではありませんでした.おかげで手術技術は上達し,現在の眼科学の限界もみえました.その関係で緑内障の薬物治療,手術治療の発展に興味がありますが,今のところそこまで手が回りません.」と話された.*現在の教室のスタッフは若く,木内先生が赴任されたときは平成7年卒業の先生が医局長で最年長,助教授も講師もいない状態であったという.そこで,すでに医局を離れていた昭和63年卒業の高松倫也先生に,助教授として大学に戻ってもらったとのことである.現在は,広島大学が「21世紀COEプログラム」の拠点として採択された,「超速ハイパーヒューマン技術が開く新世界」の中で見えないものを見えるようにして緑内障の診断に役立てる技術の確立,および放射能影響研究所と共同して行う「被曝線量と緑内障」の研究に時間を割いておられる.そのほか,教室では三嶋前教授が確立されたシステムの中で,神経節細胞保護,網膜疾患におけるプロテオミクス解析などが行われており,その中心として活躍されている.木内先生は,信条,信念などは特にないが,しいて言えば「患者さんのためにできるだけのことをする,逃げない」,ことを心がけておられるという.(49)人の時広島大学大学院医・歯・薬学総合研究科視覚病態学・教授木?内??良??明??先生

眼表面サーモグラフィー

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———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSの結果から,炎症性疾患や眼循環障害の評価におけるサーモグラフィーの将来性が期待されたが,その後はドライアイなどの眼表面疾患の病態解析の検討3,4)が散見されるにとどまっている.III通常のサーモグラフィーによる測定経験眼科臨床の現場では,サーモグラフィーはほとんど馴染みがない.この理由として,正確な測定に室内環境が一定に保たれた専用のスペースが必要なため,心電図やX線検査あるいはCT(コンピュータ断層撮影)検査などと同程度のややハードルの高い検査とみなされている点があげられる.しかし,サーモグラフィー装置(NECSanei社製サーモトレーサー:TH1106)(図1)を実際に使用してみると,機器の扱いは簡単で,画質も眼表面の解剖が十分にわかる解像度(図2)を有しており,使Iサーモグラフィーとは?サーモグラフィーとは,物体から放射されている電磁波の一種である赤外線を検知し,それを温度に変換することにより,物体の表面温度を測定できる装置である.近年,機器の改良に伴い医療用としても普及し,末?循環障害の診断などに広く利用されている.撮影は非接触のまま数秒以内に行えるほか,特殊な技術は不要で,人体に有害な副作用もない.測定結果は簡便なカラーマップとして表示されるため理解しやすく,きわめて有用な生理学的検査の一つといえる.II眼科領域でのサーモグラフィー研究表1に示すように,1957年にサーモグラフィー機器が開発され,1970年ごろから本格的に眼科領域で応用されはじめ,1980年代には蒲山ら1)が精力的な研究を行っている.その一部を紹介すると,正常者120眼の検討から角膜中央温度は平均34.6±0.5℃であること,さらに持続開瞼では,角膜中央温度は開瞼開始後40秒で0.5℃下降し,120秒後には約0.7℃下降する一定のパターンをとるという基礎データを示している1).また,冷却負荷試験を用いた検討で,白内障術後の炎症は術後13日目で術前状態に回復することや開放隅角緑内障眼の飲水負荷後(平均5mmHg上昇)は飲水前に比べて温度回復が著しく遅れることなども示している2).これら(41)???*ShiroKawasaki,MasahikoYamaguchi,ShiroMizoue,TakashiSuzuki&YuichiOhashi:愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野〔別刷請求先〕川﨑史朗:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻高次機能制御部門感覚機能医学講座視機能外科学分野特集●前眼部四次元検査(前眼部キネティックアナリシス)あたらしい眼科24(4):439~446,2007眼表面サーモグラフィー???????????????????????????川?史朗*山口昌彦*溝上志朗*鈴木崇*大橋裕一*表1眼科領域へのサーモグラフィーの応用1957年1960年↓1970年↓1980年↓1990年↓サーモグラフィーが開発される眼科領域への応用が始まるわが国でも眼科応用が始まる1,2)・正常者の研究(角膜中央温度:34.6±0.5℃)・眼疾患の研究(炎症性疾患の温度上昇など)ドライアイなどの眼表面疾患の病態解析の検討3,4)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007用感は,眼科での検査にたとえれば,角膜トポグラフィーの撮影に近いものである.試しに,持続開瞼のまま,健常者とドライアイ患者の眼表面を連続撮影すると,健常者では開瞼後も表面温度は下がりにくい(図3上)が,ドライアイ患者では開瞼後から徐々に角膜表面が冷却されていく様子がわかる(図3下).これはMorganらの報告3)と一致した所見であり,眼表面疾患,特にドライアイの病態解析に今後応用できる可能性を示唆している.(42)図1一般医療用サーモグラフィー装置(NECSanei社製サーモトレーサー:TH1106)図2一般医療用サーモグラフィー装置で得られた眼部サーモグラフィー15101510図3一般医療用サーモグラフィー装置で撮影した健常者(上)とドライアイ患者(下)の持続開瞼のサーモグラフィー健常者に比べて,ドライアイ患者は時間経過とともに冷却されやすい.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???また,最近,筆者らはトラベクレクトミー術後の濾過胞の機能評価にサーモグラフィーを応用し,興味深い知見を得ている5).たとえば,細隙灯顕微鏡所見上ではほぼ同様の形態を示す無血管性濾過胞を対象に,眼圧コントロール良好例(無治療で13mmHg)と眼圧コントロール不良例(眼圧下降薬を使用して24mmHg)のサーモグラフィー所見を比較したところ,図4(上)に示すように,前者の濾過胞表面温度は周辺結膜に比べて低い,低温エリアとして表示されるのに対し,図4(下)のように,後者の濾過胞表面温度は周辺結膜とほぼ同程度であった.この温度差は,おそらく濾過胞における房水の灌流効率を表していると筆者らは考えている.すなわち,図5のように,毛様体の無色素上皮細胞で産生された房水は,後房から前房へ移動し,前房に留まる間に角膜面より冷却され低下していく.よって,機能良好な濾過胞においては,冷却された房水が結膜下を常に灌流しているため,周辺結膜温度よりも相対的に低温となる勘定である.サーモグラフィーで捉えられた濾過胞の低温エリアは実際の房水灌流域を反映しており,生理学的な意味での濾過胞と考えている.このようにサーモグラフィーは,細隙灯顕微鏡では捉えることのできない生理学的所見をわれわれに提供してくれる有用なツールである.新たな視点からの機能評価法として眼科領域における価値が再評価されるべきであるが,それには,より精度が高く,効率的に測定可能な‘眼科用サーモグラフィー装置’の開発が必要であろう.(43)図4眼圧コントロール良好例(上)と不良例(下)の濾過胞サーモグラフィー良好例の濾過胞は周辺結膜と比べて低温となり,不良例は差がない.図5機能良好な濾過胞眼での房水動態の考察濾過胞には冷却された房水が灌流する.冷却角膜濾過胞外気温体温———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007IVOcularSurfaceThermographer?の開発そこで,愛媛大学は,株式会社トーメーコーポレーションと共同で,眼部に特化した眼表面サーモグラフィー装置(図6)の開発に取り組んでいる.本装置は角膜トポグラフィーの撮影と同じような感覚で使用できるように設計されているため,眼科医にも馴染みやすいと思われる.開発上特記すべき点として,第一に,同じ角度のサーモグラフィーと前眼部写真をほぼ同時に記録できるようになった点があげられる.従来は,サーモグラフィーと前眼部写真を別々に記録し,後にパソコン上で重ね合わせることにより位置情報を得ていたが,回転ミラーを用いて0.25秒ごとにカメラを切り替え,サーモグラフィーと前眼部写真を同軸で記録撮(44)図7可視光観察時(A)と温度観察時(B)のサーモグラフィー装置の光学配置状態(回転ミラー方式)可視光検出器赤外線検出器赤外線検出器赤外線レンズ赤外線レンズ可視光反射ミラー被写体AB被写体可視光反射ミラー可視光レンズ回転図8OcularSurfaceThermographer?で撮影した前眼部写真とサーモグラフィー前眼部写真・サーモグラフィーともに精度の高い画像が同時に撮影され,位置情報のリンクも容易かつ正確である.図6OcularSurfaceThermographer?愛媛大学と(株)トーメーで共同開発中の眼表面サーモグラフィー装置.角膜トポグラフィーを撮る要領で,眼表面サーモグラフィーの撮影ができる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???(45)影することで(図7),位置情報へのリンクが容易かつ正確となった.光学系も眼球接写の位置で最高の解像度が得られるように設計している.図8は実際にOcularSurfaceThermographerTMで撮影した翼状片症例であるが,前眼部写真・サーモグラフィーともに精度の高い画像を同時に得ることができる.そのほか,計測開始直前に装置内での熱放射の影響を特製のシャッターで自動的に温度補正できるシステムも備えている.持続開瞼負荷試験に対応できるように,時系列に並べたデータをリアルタイムで供覧(図9)・解析(図10上)できるソフトウェアや,サーモグラフィーの3D表示(図10下),角膜部分の平均温度の経時的変化の表示機能も開発中である.VOcularSurfaceThermographer?の実際ここで,現在までに得られている臨床データの一部を紹介し,今後の応用の可能性について解説したい.1.角膜表面温度ドライアイに対する有用性の検討を,健常者およびSj?gren症候群患者を対象に行った5).開瞼直後では両群の眼表面温度に差はみられなかったが,10秒間持続開瞼させると,健常者(図11上)に比較しSj?gren症候群患者(図11下)では,角膜中央の表面温度が有意図9OcularSurfaceThermographer?撮影のモニター画面健常者の持続開瞼での前眼部写真とサーモグラフィーを10秒間連続記録した結果がリアルタイムで表示され,記録される.———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(46)に低下していた.OcularSurfaceThermographerTMによる測定と記録は簡便であり,今後,スクリーニング検査として期待できるのではないかと思われた.細菌性角膜炎の1例(図12)では,炎症期の感染巣が周辺の角膜に比べてやや高温となり(図12上),持続開瞼しても冷却されにくく,炎症の消退とともに周辺角膜と同様の温度となった(図12下).虹彩炎症例を対象とした過去の報告2)でも,角膜中央は冷却されにくく,正常者と比べて高温を示しており,炎症という観点からは傾向は合致していた.角膜感染症などの炎症性疾患の臨床経過を細隙灯顕微鏡所見だけから判断するには,相当の知識や経験を要するが,サーモグラフィーを使用することで,客観的に炎症の程度を評価できる可能性がある.2.濾過胞表面温度OcularSurfaceThermographerTMによる測定を濾過胞についても試みた.たとえば,同一症例において,眼圧コントロール良好時と眼圧が再上昇して再手術を受ける直前を比較すると,眼圧コントロール良好時の濾過胞の表面温度は開瞼直後から低温であり,持続開瞼にてさらに冷えていくが,再上昇時には開瞼直後は低温ではな図10OcularSurfaceThermographer?で撮影した図9の症例の解析サーモグラフィー上をマウスで指した点での10秒間の経時的温度変化が表示できる(上).サーモグラフィーの3D画像も容易に作製できる(低温が凸で高温が凹と設定)(下).———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007???(47)543210109876543210109876図11健常者例(上)とSj?gren症候群患者例(下)の10秒間持続開瞼サーモグラフィー健常者では眼表面の温度低下はほとんどないが,Sj?gren症候群例では約1.1℃低下した.0011223300112233図12細菌性角膜炎症例:炎症期(上)と終息期(下)炎症期には感染巣が周辺の角膜に比べてやや高温となり,持続開瞼しても冷却されにくく,炎症の消退とともに周辺角膜と同様の温度となった.4321043210図13同一症例における眼圧コントロール良好時(上)と再上昇時(下)の持続開瞼による濾過胞表面温度の比較眼圧良好時は濾過胞は低温エリアで,持続開瞼により冷却されやすいが,再上昇時は開瞼直後からは低温とならず,冷却されにくい傾向がみられた.———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.24,No.4,2007(48)く,持続開瞼にても冷えにくい傾向がみられた(図13).別の眼圧コントロール良好例の濾過胞のサーモグラフィーを3D表示(図14)でみると,細隙灯顕微鏡所見とは違った形態の濾過胞が見える.このように,時間要素や温度域の概念が加われば,より詳細な濾過胞機能評価ができる可能性がある.おわりにOcularSurfaceThermographerTMを用いれば,簡便に眼表面の温度変化を捉えることができる.今後,多くの症例を積み重ねれば,種々の疾患の病態理解に有用な情報が得られると期待される.文献1)蒲山俊夫:眼科サーモグラフィの研究(第2報).日眼会誌84:375-382,19802)蒲山俊夫,大木孝太郎:眼科サーモグラフィの研究(第3報・その2).日眼会誌86:116-126,19823)MorganPB,TulloAB,EfronN:Infraredthermographyofthetear?lmindryeye.???9:615-618,19954)MoriA,OguchiY,OkusawaYetal:Useofhigh-speed,high-resolutionthermographytoevaluatethetear?lmlayer.???????????????124:729-735,19975)川﨑史朗,溝上志朗,山口昌彦ほか:サーモグラフィーによる濾過胞機能評価.第60回日本臨床眼科学会,20066)山口昌彦,川﨑史朗,溝上志朗ほか:オキュラーサーモグラフィーTMを用いたドライアイにおける経時的な眼表面温度変化の解析.第60回日本臨床眼科学会,2006図14眼圧コントロール良好例の細隙灯顕微鏡所見と濾過胞のサーモグラフィー3D画像