———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSために眼鏡レンズで得た矯正度数をCL度数に換算して処方する必要ある.この換算を角膜頂点間距離補正といい,±4.00D未満の場合にはレンズ度数で0.25D未満であるため換算の必要はないが,±4.00D以上ではこの補正が必要である.頂間距離補正値(Dcl)は,眼鏡レンズ度数をDsp,角膜頂点間距離をdとすると,Dcl=Dsp/(1d・Dsp)………………………(1)で算出される(次頁の図を参考).一般にはCLフィッティングマニュアルの裏表紙あたりに換算表が掲載されている.この補正を忘れると,近視眼では過矯正に,遠視眼では低矯正になる.2.像の拡大・縮小効果眼鏡レンズは角膜から12mm離れた距離に配置されるため,角膜表面に接触して配置されるCLとは,網膜はじめに眼精疲労のほとんどは眼の筋疲労によってひき起こされている.眼に関する筋肉には調節をコントロールする毛様体筋(内眼筋)と眼球運動をコントロールする外眼筋が存在する.眼鏡を使用中には異常がなかったが,コンタクトレンズ(CL)に変更して眼精疲労が発症した,あるいは増悪したと訴える症例は非常に多い.CLによる矯正を行うときには,眼鏡レンズとCLの光学特性を熟知し,内眼筋および外眼筋にかかる負担に配慮する必要がある.I眼鏡レンズとの違いCLは角膜に接していることから,眼鏡レンズとは異なった光学特性を有する.この特性を知らないと眼精疲労の原因を特定できない.おもな違いは,角膜頂点間距離,像の拡大・縮小効果,調節量,プリズム効果および掛け外しの難易である.1.角膜頂点間距離補正眼の屈折値は眼鏡レンズによって定められている.すなわち,角膜から12mm離れた位置にある度数の眼鏡レンズを置いたときに,正視眼と同じように無限遠にピントが合う場合,その眼の屈折値をそのレンズの度数で表示すると定義されている(図1).CLではレンズが角膜に接しているために,眼鏡レンズよりも焦点距離が12mm短い屈折力のレンズで同じ矯正ができる.この(45)949眼100023334眼特集●コンタクトレンズ・ここが知りたいあたらしい眼科25(7):949953,2008コンタクトレンズと眼精疲労AsthenopiaandContactLenses梶田雅義*-3.00D∞例眼前12mmの位置に-3.00Dの球面レンズを置いたときに,平行光束が網膜面上で収束する眼の屈折値は-3.00Dである.図1屈折値の定義調節休止状態にある眼に,ある光学レンズを眼前12mmに置いたときに,無限遠から発した光束が網膜面で収束する場合,その眼の屈折値をその光学レンズの屈折力(度数)で示す.マイナス符号は近視,プラス符号は遠視を示す.———————————————————————-Page2950あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(46)3.調節力これも眼鏡レンズでは角膜から離れて配置されているための変化であるが,近くにピント合わせをする際に要する調節力が,CLによる矯正時とは異なる.これを見かけの調節力という.正視眼が発揮できる調節力をAとするとき,それと同じ調節力をもつ屈折異常眼が,レンズで完全矯正したときに発揮できる見かけの調節力(B)は,B=A/(1+2d・D)d:角膜頂点間距離,D:レンズ度数.で計算される.眼鏡レンズで矯正した場合,近視眼では近くにピントを合わせるときに,実際の距離にピントを合わせるよりも小さい調節量でピントが合い,遠視眼では反対に大きな調節量を必要とする(図3).眼鏡からCL矯正に変更したときに,近視眼では眼鏡で矯正していたときよりも大きな調節量を発揮しないと近くにピントが合わないと感じ,遠視眼では眼鏡装用時よりも少ない調節量で近くにピントが合うようになったと感じる.4.プリズム効果眼鏡レンズによるプリズム効果は遠方視時の瞳孔間距離で眼鏡が作製されている場合,近くを見るときには,眼鏡レンズのプリズム基底が,近視眼では内側に位置に投影される像の大きさが異なる.像の拡大縮小率(M)はレンズ度数をDとすると,M=1/(1d・D)で計算される.CLでは拡大縮小率が小さいため,眼鏡から変えたときに,近視眼では大きく見えると感じ,遠視眼では小さく見えると感じる(図2).したがって,近視眼では眼鏡よりも大きく見えるために,より高い矯正視力値が得られ,遠視眼ではかえって矯正視力が低下することがある.540302010-10-20-30-20-15-10-5+50+10+15(%)眼鏡レンズ屈折力(D)頂間距離12mm頂間距離9mm頂間距離6mm図2眼鏡レンズの増倍率像の大きさは,眼鏡凸レンズでは拡大し,眼鏡凹レンズは縮小する.0246810121416182022242601020304050607080見かけの調節力(D)年(歳)-20-15-10-50+5+10+15+20図3眼鏡による見かけの調節力近視眼では眼鏡による見かけの調節力は増加し,遠視眼では減少する.焦点焦点距離Lsp眼鏡レンズ度数Dsp頂間距離d焦点距離Lclコンタクトレンズの度数DclLspDspLclDspDclLcl====11111DDsp-d-dDcl=Dsp1-d・Dsp参考図:角膜頂点間補正の求め方———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008951(47)1.70Dの過矯正であることがわかる.対処:SCL屈折力をR)S9.50D,L)S10.00Dに変更した.結果:処方後オーバーレフ値はR)S0.75DC0.25180°,L)S0.50DC0.50180°.視力はVD=1.2×SCL(n.c.),VS=1.2×SCL(n.c.).眼の奥の痛みは消退し,視力にも不満はない.筆者コメント:オートレフの値そのままで作製された眼鏡レンズを装用しており,オートレフの値そのままで処方されたSCL度数が眼精疲労の原因になっていた.装用していたSCLを用いた同時雲霧法による結果を考慮すれば,新しく処方したSCLのオーバーレフ値はまだマイナスの値を呈しており,依然と調節緊張は残っていると考えた.今回の処方ではこれより0.50D低いSCL度数では不満が出たが,調節緊張が緩めば,さらにSCLや眼鏡の度数を下げられる可能性があり,さらに快適な矯正を提供できると考える.近視眼の過矯正による眼精疲労をつくらないためには,快適に装用できる眼鏡の頂間補正値よりも低い値のCL度数を提供することを絶対に忘れてはならない.〔症例2〕72歳,男性,自営業.主訴:視力低下,頭痛.現病歴:1週間前にCLの処方を受けたが,その後,視力が低下して,頭痛がするようになった.8年前に白内障手術を受けたが,眼の質が悪くて眼内レンズが入らなかった.その後は眼鏡を用いてきたが,家族に勧められて,CL装用に挑戦した.何とか出し入れができるようになった.現症:視力VD=0.4×SCL(n.c.),VS=0.4×SCL(n.c.).オーバーレフ値はR)S+0.25DC1.0010°,L)S+0.25DC0.75180°.所持眼鏡レンズ屈折力はR)S+13.00D,L)S+13.50.装用中のSCL屈折力はR)S+16.00D,L)S+16.50D.前眼部に異常なし.無水晶体眼で前房中に硝子体脱出を認め,両眼底に軽度の黄斑変性を認めた.所持眼鏡による矯正視力はVD=0.7×OG(n.c.),VS=0.7×OG(n.c.)であった.問題点:眼鏡レンズ度数とCL度数は頂間補正されていて,矯正度数には問題がない.無水晶体眼で強度の凸レンズで矯正していたため,眼鏡レンズの像の拡大効果し,遠視眼では外側に位置する(図4)ことによって発生する.このため,眼鏡を装用して近方を見たときに,近視眼では実際の目標物を両眼視する輻湊量よりも少ない輻湊量で両眼視ができており,遠視眼では実際の輻湊量よりも多く輻湊しなければならない.眼鏡からCL装用に変更すると,近視眼では輻湊の負担が大きくなり,遠視眼では輻湊の負担が小さくなる.IICLで眼精疲労を訴えた実症例〔症例1〕28歳,女性,事務職.主訴:眼の奥の痛み.現病歴:2週間前から眼の奥の痛みが出てきた.1カ月前にCLの処方を受けたが,CL装用には問題はないといわれている.現症:視力VD=1.5×SCL(n.c.),VS=1.5×SCL(n.c.).オーバーレフ値(CLを装用した状態でのオートレフラクトメータの値)はR)S+0.00DC0.50170°,L)S+0.25DC0.50170°.所持眼鏡レンズ屈折力はR)S11.00D,L)S11.75.装用中のSCL屈折力はR)S11.00D,L)S12.00D.前眼部,中間透光体および眼底に異常なし.両眼同時雲霧法1)の結果,Vbl=1.5×SCL[R:+1.50D,L:+2.00D].問題点:眼鏡レンズ度数とCL度数がほぼ同じ.頂間距離補正が考慮されていない.眼鏡レンズ度数の頂間補正値は(1)式で算出すると,右眼9.72D,左眼10.30Dである.眼鏡レンズに比べて,右眼1.28D,左眼図4眼鏡レンズのプリズム効果光はプリズム基底方向に屈折するので,近方視標を両眼視するときの輻湊負荷は眼鏡凸レンズでは大きく,眼鏡凹レンズでは小さい.凸レンズ凹レンズ———————————————————————-Page4952あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(48)SCL.VDT作業中の眼の奥の痛みや頭痛は起こらなくなった.眼鏡よりもよく見えるので,視力にもまったく不満はない.筆者コメント:調節力や生活環境をまったく無視して,矯正視力だけを見て処方されたSCLに問題があったと考える.25歳を過ぎてはじめてCL処方を希望する症例には,特に調節力への配慮が必要である.〔症例4〕14歳,女性,学生.主訴:CLを装用すると頭痛,複視,気分が悪くなる.現病歴:2週前にCLを使用しはじめたが,CLを装用すると二重に見えて頭痛が起こる.CLには問題はないといわれている.現症:視力はVD=1.5×SCL(n.c.),VS=1.2×SCL(n.c.).オーバーレフ値はR)S+0.25DC0.50D180°,L)S+0.25DC0.25D180°.裸眼のオートレフ値はR)S+4.50DC0.50D180°,L)S+4.50DC0.50D180°.所持眼鏡レンズ屈折力はR)S+6.00D,L)S+6.00D.所持眼鏡レンズによる矯正視力はVD=0.6×OG(1.5×OG=1.00D),VS=0.7×OG(1.5×OG=1.00D).装用中のSCL屈折力はR)S+4.75D,L)S+4.75D.前眼部,中間透光体および眼底に異常なし.1mの距離で検査したSCL装用状態での眼位は6Δの内斜であり,眼鏡装用による眼位は2Δの内斜であった.問題点:強度の遠視眼で内斜を認める症例である.眼鏡では遠方矯正視力が不十分なため,遠方視で開散運動が誘発されず,近方視では内斜の状態のまま両眼視が可能な状態であったと考えられる.CL矯正は遠方視力が良好になったために,開散を行わないと複視が生じ,近方視でさえ,開散しないと両眼視ができず,眼精疲労の原因になっていたと考える.対処:SCLを装用したまま,右眼=2ΔBaseOut,左眼=2ΔBaseOutの眼鏡を装用した.結果:複視も頭痛も起こらなくなった.遠視だけの眼鏡よりもよく見えるし,眼鏡レンズも薄いので,快適に装用できる.筆者コメント:視力補正のみを見ていたため,眼位異常に気付かれなかった症例である.このほかにも外斜位のために輻湊調節が介入して,過矯正になっていた近視によって,外界の像は網膜面に拡大して結像していた.CL装用によって,像の拡大効果が得られなくなったため,矯正視力が低下した.低下した視力でなおよく見ようとする努力が眼の疲労を誘発していた可能性がある.対処:SCLの装用を中止して,眼鏡装用に戻した.結果:SCL装用前の状態に回復し,問題はなくなった.筆者コメント:矯正視力が不良な強度遠視眼に起こりやすい事象である.強度屈折異常眼の場合には像の拡大縮小効果は無視できないことがある.〔症例3〕26歳,男性,事務職.主訴:VDT作業中の眼の奥の痛み,頭痛.現病歴:3カ月前にCLを使用しはじめたが,その後から眼の奥の痛みと頭痛が出てきて,仕事ができない.CL装用には問題はないといわれている.現症:視力VD=1.5×SCL(n.c.),VS=1.5×SCL(n.c.).オーバーレフ値はR)S+0.25DC0.25D90°,L)S+0.25DC0.50D80°.裸眼のオートレフ値はR)S10.25DC0.50D10°,L)S11.50DC0.75D170°.所持眼鏡レンズ屈折力はR)S9.00D,L)S10.50D.所持眼鏡レンズによる矯正視力はVD=0.8×OG(1.2×OG=1.00D),VS=0.8×OG(1.2×OG=1.00D).装用中のSCL屈折力はR)S9.50D,L)S10.50D.前眼部,中間透光体および眼底に異常なし.SCL装用状態での両眼同時雲霧法の結果,Vbl=1.5×SCL[R:±0.00D,L:±0.00D].問題点:所持眼鏡レンズ度数はわずかに低矯正であるが,処方されたSCLはほぼ完全矯正である.近視眼を眼鏡で矯正しているときには,近くを見るために必要な実際の調節量よりも少ない調節量ですむが,CL矯正では実際の調節量をそのまま発揮しなければならない.さらに,本症例では眼鏡がわずかに低矯正状態であることから,VDT作業中には眼鏡で矯正していたときに比べて,強い調節量を必要とするようになったためである.対処:SCL屈折力をR)S7.50D,L)S8.5Dに変更した.結果:処方後オーバーレフ値はR)S1.25DC0.25180°,L)S1.00DC0.50180°.視力はVD=0.9×SCL,VS=0.8×SCL.両眼SCL視力はVbl=1.0×———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008953(49)オケージョナル装用*で快適に装用できる.筆者コメント:軽度中等度の近視眼が裸眼で近業を行うことは,強度近視眼の見かけの調節力以上に調節に関して負担が少なくなっている.眼鏡を掛けたり外したりしている症例は,調節にかかる負担を考慮して,CLの処方と装用指導を行う必要がある.*オケージョナル装用:CLを普段は装用しないで,外出時やスポーツなどを行うときのみに装用するCL使用方法をいう.パートタイム装用ともいう.おわりにCL装用者で眼精疲労を訴える症例は非常に多く,増加の一途にあるように感じる.視力補正だけを考えた安易な処方が原因のように思われる.合わないCLが処方されたために,原因不明の眼精疲労と診断され,多くの医療機関を転々と受診している症例に遭遇することが多々ある.CLの処方には視機能全体を見据えて矯正できる知識が必要不可欠であると考える.文献1)梶田雅義,山田文子,伊藤説子ほか:両眼同時雲霧法の評価.視覚の科学(日本眼光学学会誌)20:11-14,1999眼など,眼位異常が関係した眼精疲労は多い.〔症例5〕33歳,女性,事務職.主訴:眼の疲れ,頭痛,肩こり.現病歴:1カ月前からCLを使用しはじめた.2週間前頃から眼の疲れがひどくなってきた.現症:視力はVD=1.2×SCL(n.c.),VS=1.2×SCL(n.c.).オーバーレフ値はR)S0.50DC0.2580°,L)S0.25DC0.50110°.所持眼鏡レンズ屈折力はR)S1.50D,L)S1.75D.装用中のSCL屈折力はR)S1.50D,L)S1.75D.前眼部,中間透光体および眼底に異常なし.両眼同時雲霧法の結果,Vbl=1.5×SCL[R:0.25D,L:0.25D].SCL作製前は,眼鏡の使用は通勤や外出時のみで,VDT作業中は裸眼で行っていた.問題点:軽度の近視眼で,VDT作業中は裸眼で過ごしていたため,作業中に調節量をほとんど発揮していなかったと考えられる.これをCLで矯正したために,VDT作業中に常に一定の調節量を維持しなければならなくなったことが,眼精疲労の原因と考えられる.対処:SCLを1日使い捨てレンズに変更し,休日のみの装用に改めた.結果:ウィークデーはCLを使用せず,作業中はこれまでどおり,裸眼で行ったほうが快適である.SCLは