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眼底OCT技術の進歩

2007年1月31日 水曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSer)ドメインOCTである.以上の製品化の流れは,多くの眼科医の経験してきたところであるが,ここにきて「タイムドメインOCTの限界」や「次世代OCTとしてのフーリエドメインOCT」などと難解な光学技術用語が出てくるに至り,多くの眼科医の先生方の思考は麻痺するのではないか.「OCTの進歩」を考えるとき,計測技術としてのOCT技術の研究の背景を知ることにより,むしろ今後のOCTの理解が容易になると思われる.ここでは,「OCT=OCT2000またはOCT3000」という経験上の固定概念を崩し,「OCTは光により物の断層像を描出する技術の一つ」という原点に立ち返り,それにより,OCT2000の登場は序章にすぎなかったこと,今後OCT装置に大きな展開があるという理解を共有したい.IOCTという技術の成り立ち光は粒子であるとともに波の性質も有する.生体を通過あるいは反射した光波は,生体組織の多重散乱などの影響で乱雑な波面を形成する.この光が生体から受ける乱れのなかにこそ,実は生体組織の豊富な情報が詰まっている.生体組織の影響を受けた光波面を直接検出し画像化する(イメージング)ことができれば,生体組織のさまざまな情報が得られると期待されるが,残念ながら現存する検出器(detector)の速度が幾桁も不足し,現時点でも近未来にも「光の直接イメージング」は見込みが立たない.その代わりに,光のもつコヒーレンス(可はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,眼科診療にかなり浸透したといえるが,その歴史はコンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像(MRI)に比べるとまだ浅い.国内では1997年にHumphrey社(現在CarlZeissMeditec)から最初のモデルOCT2000が発売された.群馬大学の岸らが,第1号機を購入し,OCTの臨床的意義を広めたことは記憶に新しい.OCT2000は,網膜断層を内層・外層が議論できる程度に可視化し,さまざまな病変の断層イメージを提供し,眼底疾患の診断に革命的進展をもたらした.特に,網膜硝子体界面と中心窩病変の描出により黄斑円孔の病態解明と病期決定において疾患概念を変える知見をもたらした.また,実際の臨床においては,黄斑円孔手術後の円孔閉鎖の有無を容易に確認できるようになり,網膜厚計測とマッピングにより糖尿病黄斑症や網膜静脈閉塞症における黄斑浮腫の治療効果の評価にも不可欠となった.2002年に発売となったStratusOCT(OCT3000)は,深さ分解能(axialresolution)が10?mへ向上したが,技術的にはマイナーチェンジであり,眼科診療に変革をもたらすほどではなく,発売から10年が経過し,計測精度,病変描出力,撮影速度などにおいて限界が指摘されるようになった1).これは,従来のOCT製品が用いていたOCT技術であるタイムドメインOCT(timedomainOCT)の技術的限界でもある.そして,現在次世代のOCTとして注目されているのがフーリエ(Fouri-(3)?*MasanoriHangai:京都大学大学院医学研究科運動感覚系外科学眼科学〔別刷請求先〕板谷正紀:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科運動感覚系外科学眼科学特集●最新の網膜硝子体検査あたらしい眼科24(1):3~13,2007眼底OCT技術の進歩??????????????????????????????????????????????????????????板谷正紀*———————————————————————-Page2?あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007干渉性)という波の性質に着目し,組織からの反射光(後方散乱光)と参照光の時間領域の干渉を検出し,後方散乱光が有する生体情報を間接的に検出し画像化する技術,いわば「光の間接イメージング」が,opticalcoherencetomographyである2,3).この原理を最初に提案したのが山形大学の丹野らであり,1990年のことであった(表1)4).続いて1991年にマサチューセッツ工科大学(MIT)のFujimotoらにより画像化が実現された5).IIOCTの検出原理の研究の流れ1991年に,最初に画像化に成功したOCTはタイムドメイン(timedomain)とよばれる検出方式を取る.一方,2003年に,OpticsExpressやOpticsLetterなどの光学系ジャーナルに高速かつ鮮明な網膜の画像化が相ついで報告されはじめたのが,フーリエドメイン(Fourierdomain)とよばれる別の検出方式である(表1).タイムドメインOCTは,光波の干渉を実空間(時間(4)表1光干渉断層計(OCT)技術研究および製品化の流れ年代研究製品上市国内国外1990・山形大・丹野ら,国内特許出願1991・MITのFujimoto,国際特許出願・MITのFujimoto,ScienceにOCT画像を発表1993・Fujimotoら,OpticsLetterに眼底断層像掲載1995・FD-OCTの原理についての報告が掲載され始める1997・CZM社,OCT2000発売(群馬大・岸ら1号機購入)2000・筑波大・安野らによりFD-OCTのシステムが報告される2001・MITのDrexler,Fujimotoら,NatureMedicineに網膜のUHR-OCT画像を発表2002・CZM社OCT3000発売2003・FD-OCTの画像化成功が相つぐ2004・JST「生体計測用超高速フーリエ光レーダー顕微鏡」(筑波大・谷田貝)・MT社「EGスキャナー」発売・NIDEK社「OCTOphthalmoscopeC7」発売2005・JST先端計測分析技術・機器開発事業「生体計測用・超深達度光断層撮影技術」(北里大・大林)・NEDO「生活習慣病超早期診断眼底イメージング」(PL京都大・吉村)2006・トプコン社「3DOCT-1000」発売表中敬称略.MIT:MassachusettsInstituteofTechnology,FD-OCT:Fourierdomainopticalcoherencetomography,UHR-OCT:Ultrahighresolutionopticalcoherencetomography,CZM社:CarlZeissMeditec社,MT社:MicroTomography社(マイクロトモグラフィー社),PL:Projectleader.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007?領域)で行う.これに対し,フーリエドメインOCTは,光波の干渉をフーリエ空間(周波数領域または波長領域)で行う.別名,スペクトラルドメイン(spectraldomain)OCTまたはフリーケンシードメイン(frequen-cydomain)OCTともよばれる.眼科医が理解しておくとよいのは,フーリエドメインOCTがタイムドメインOCTよりも桁違いに高速撮影ができることである.高速化を可能にする大きな違いは,深さ方向への機械的走査の必要性の有無にある.タイムドメインOCTは,1回の計測により,試料の三次元構造の1点の情報を得る方式であるため,二次元の断層画像を構成するためには,横方向に加えて深さ方向(axialscan)の機械的走査を要する.フーリエドメインOCTは,深さ方向の情報が1回の計測で取得できる.すなわち,深さ方向の機械的走査を必要とせず,横方向の走査のみで二次元の断層画像を構成できる.したがって,深さ方向の機械的走査に要する時間だけ,フーリエドメインOCTは,タイムドメインOCTより高速になる.文献上では25~100倍速くなる6).さらに,光源の波長を高速に変化させることにより光波の干渉を同じくフーリエ空間で行う方式の波長走査型OCT(sweptsourceOCT:SS-OCT)の画像化も報告されているが,これもフーリエドメインOCTの一つであり,高速撮影が可能である.筑波大学計算光学グループ(ComputationalOpticsGroup:COG)が前眼部のSS-OCTによる高速撮影に成功している.開発される光源の性能次第では,将来のOCTの主流になる潜在力をもつ技術である.IIIしのぎを削るOCTの研究開発【フェーズ1】タイムドメインOCTの高分解能化OCTの深さ方向の分解能は,光源の波長の広さ(波長帯域)に依存する.OCT2000もOCT3000も,中心波長830nmで波長帯域20nmのスーパールミネッセント・ダイオード(superluminescentdiode:SLD)を使用するため,限界深さ分解能は,10?m程度である.2001年,MITのFujimotoとDrexler(現ImperialCol-lege)は165nmの広い波長帯域をもつフェムト秒レーザー(femtosecondlaser;別名,チタン・サファイアレーザー:titanium-sapphirelaser)を光源として用い,深さ分解能3?mの網膜断層画像を報告した7).超高分解能OCT(ultrahighresolutionOCT:UHR-OCT)とよばれる.以来,眼科英文メジャージャーナルにUHR-OCTの臨床報告が相ついでいる(図1)8~10).分解能が(5)図1超高分解能光干渉断層計(UltrahighresolutionOCT:UHR-OCT)の正常眼における断層像例中心波長815nm,波長幅125nmのtitanium:sapphirefemtosecondlaserを光源に用い,分解能3?mを得ている.水平Aスキャン数3,000である.商用タイムドメインOCTに比べ,網膜層構造が明瞭になり,特に外境界膜が可視化され,色素上皮層の高反射ラインの内方にもう1本の高反射ラインが観察される.A:黄斑断層像,B:Aの中心窩の拡大.INL:内顆粒層,IPL:内網状層,OPL:外網状層,RPE:網膜色素上皮,ELM:外境界膜,GCL:神経節細胞層,NFL:網膜神経線維層,ONL:外顆粒層,IS/OSjunction:視細胞内節外節境界部.(KoTH,WitkinAJ,FujimotoJGetal:Ultrahigh-resolutionopticalcoherencetomographyofsurgicallyclosedmacularholes.???????????????124:827-836,2006より)500μm250μmAB———————————————————————-Page4?あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007向上したが,撮影速度が遅くなったのが,実用性として問題である.高分解能化により眼底OCT画像の何が変わるだろうか?①網膜層構造のコントラストの向上:病変がどの層に存在するかが描出される(図1).②外境界膜と視細胞層の可視化:OCT3000では視細胞の外節内節境界部(photoreceptorinnerandoutersegmentjunction:IS/OS)と色素上皮層が高反射な二重ラインを成す(図1).一方,UHR-OCTではIS/OSの内側に外境界膜(ELM)が描出され,色素上皮層のラインが2つのラインに分離される.つまり四重ラインをなす.外境界膜の可視化は,視細胞層の病変(肥厚や菲薄化)を観察可能とし,黄斑円孔,黄斑浮腫,黄斑上膜などさまざまな黄斑疾患の視力障害と中心窩視細胞層の病変との関係を研究可能とする8~10).また,視細胞層の描出力も向上する.OCT3000では円孔部の視細胞は破壊されてなくなっているかのようにしか見えないが,UHR-OCTで観察すると円孔部のIS/OSの後方反射は光学的に減弱化しているものの低反射な視細胞層は観察され前方に吊り上げられている様子が理解できる9).手術後に円孔が閉鎖するとIS/OSが復元される.黄斑円孔でなぜ視力が改善するかが理解できる.③オカルト型脈絡膜新生血管(occultCNV)の可視化:色素上皮?離やoccultCNVにおいて網膜色素上皮の太い高反射ラインのすぐ外方に高反射な細い直線的なラインが観察される8).Bruch膜の外層と見なせるが,もしこれが正しければ,occultCNVは新生血管がBruch膜内部に存在することが示唆される.【フェーズ2】フーリエドメインOCTの画像化成功で火がついたOCT研究フーリエドメインOCTは,深さ方向への機械的走査が不要な技術であるため,二桁以上三桁未満高速に画像を得ることができるようになったことは前述した6).これに加え,フーリエドメインOCTはプローブ光の利用効率が高い検出法であるため,タイムドメインOCTと比べ信号雑音比(signal/noise)が高い,すなわち高感度であることが,理論的に予想され,実験的に実証されてきた.この2つの特性が,注目されていたが画像化にはもっと年月を要すると考えられていた.ところが,CCDなどの周辺ハードウエアの高機能化やFujimotoやDrexlerらを中心とするOCT研究者層の増大を背景に,フーリエドメインOCTの画像化が,特に眼底において一気に進んだ.2003年の光学系ジャーナルに,フーリエドメインOCTによる高速網膜断層撮影の成功の発表が相ついだ.わが国でも筑波大学COGの安野・谷田貝らが,フーリエドメインOCTによる網膜の画像化に成功し,(株)トプコンがCOGのシステムを基に3DOCT-1000を上市したことはご承知のことである.筆者は,2005年1月のBiomedicalOptics(BiOS)に参加し,FujimotoやDrexlerの超高分解能化された(ultra-high-resolution)フーリエドメインOCTの美しい網膜断層像を目の当たりにし驚愕したことが記憶に新しい.フーリエドメインOCTの成功とともに,BiOSにおけるOCTの発表が爆発的に増え,2006年のARVO(AssociationforResearchinVisionandOphthalmolo-gy)のフーリエドメインOCT関連発表の爆発的増加に波及した.IVOCTの将来「多様化するOCT」1.高深達OCT現行OCTでは,網膜色素上皮下の画像が急に不鮮明になる.原因は現行OCT光源の中心波長が800nm前後であるため多くが色素上皮で吸収されてしまうことにある.そこで,OCTの光源の波長を長くする研究が行われてきた.波長が長くなるほど組織の吸収が減り深達性が向上するが,逆に水への吸収が増えるため眼底へ届く光量が減るというジレンマがある.できるだけ長波長で水の吸収の谷間として注目されるのが1,040nm前後の光源である11).1,040nm前後の光源を用いると脈絡膜の描出が著しく改善する(図2).現在,OCT用の1,040nm前後光源の開発が行われてきており,将来の眼底用OCTは1,040nm前後の光源へ変わると予想される.色素上皮下や篩状板の病変の観察が向上すること(6)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007?が期待される.2.Full?eldOCT特殊なタイムドメインOCTであり,三次元的に最も高い分解能を実現でき細胞の可視化が期待される夢のOCT技術である.わが国の(財)山形県産業技術振興機構の陳,秋葉ら,フランスのBoccaraらにより研究開発されている.生摘出豚眼においては,角膜の上皮細胞,ケラチノサイト,内皮細胞が可視化され12),網膜神経節細胞が可視化されている.生きたヒト眼への応用には幾つかのハードルがあるが,現在克服に向けた研究が進行中である.わが国では,新エネルギー・産業技術総(7)図2高深達光干渉断層計(OCT)の原理:800nm光源と1,040nm光源のOCT像比較1,040nmは光の吸収が少ない谷間であるため長波長でありながら十分な光量が眼底へ到達する.長波長の特性として色素上皮の吸収が比較的少なく,色素上皮下の画像信号が十分得られる.実際,眼底を深く明らかに脈絡膜血管の構築の描出が改善している.眼底用OCTの理想的な波長である.NFL:網膜神経線維層,IPL:内網状層,OPL:外網状層,IS/OS:視細胞内節外節境界部,RPE:網膜色素上皮.(UnterhuberAetal:Invivoretinalopticalcoherencetomographyat1040nm-enhancedpenetrationintothecho-roids.??????????????13;3252-3258,2005より)200μm50μm:800nm:1,040nm1.51.00.50.0log.Intensit[a.u.]0100200300400500Depth[μm]OPLIS/OSRPEIPLNFLsubretinalvessels———————————————————————-Page6?あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007合開発機構(NEDO,プロジェクトリーダー京都大学・吉村長久)が助成している.OCTの深さ分解能は光源の波長帯域(波長の幅)で決まるが,横方向(X-Y面)の分解能は,対物レンズの開口により決まる.通常のタイムドメインOCTもフーリエドメインOCTも細く絞った光ビームを眼底に入射し,かつビームを横方向に走査する必要があるため,対物レンズの開口を大きくできないため,横方向の分解能が20?m程度である.Full?eldOCTはサンプルのX-Y断層画像を非走査で測定する技術であるため,光ビームの走査を必要とせず,サンプルのX-Y面と二次元センサーの間で結像関係を保つため対物レンズの開口を十分に活用することができ,高精細なCCDカメラを用いることで高い横方向分解能を成しうる.本技術がヒトの眼底に応用可能となれば,細胞レベルの病的異常に基づくまったく新しい次元の眼底疾患・緑内障の医療が始まる可能性がある.3.補償光学OCT(adaptiveopticsOCT:AO-OCT)眼底撮像において角膜・水晶体の波面(ウェーブフロント;wavefront)の収差が,分解能劣化の最大の原因であることは周知である.計測した波面収差をレーザーにより除去しクリアなvisionを得ようというのがwave-frontLASIK(laser????????keratomileusis)である.一方,波面収差を除去しクリアな像を得る学問を補償光学と言い,元は軍事技術として始まった.大気圏の波面収差を補償して人工衛星から敵国の軍事施設を偵察しようというわけである.実際には,補償光学は天文学の分野で実用化され,天体望遠鏡観察において大気圏の波面収差を除去しクリアな星々の像が得られている.日本では(8)10μmdepth10μm10μm10μm10μm10μm10μm10μm0μm1.5μm3μm4.5μm6μm7.5μm9μm10μmdepth10μm10μm10μm10μm10μm10μm10μm0μm1.5μm3μm4.5μm6μm7.5μm9μm図3補償光学光干渉断層計(adaptiveopticsopticalcoherencetomography:AO-OCT)超高分解能光干渉断層計(ultrahighresolutionOCT:UHR-OCT)に前眼部の波面収差を除去する目的の波面制御デバイスを融合した装置による視細胞画像.鉛直断面像(enface画像=Cスキャン画像)が7枚示されている.外顆粒層?外境界膜?外節を1.5?mずつ連続して示されている.1個1個の視細胞の断層が可視化されている.(FernandezEJetal:Three-dimensionaladaptiveopticsultrahigh-resolutionopticalcoherencetomographyusingaliquidcrystalspatiallightmodulator.??????????45:3432-3444,2005より)10μmdepth10μm10μm10μm10μm10μm10μm10μm0μm1.5μm3μm4.5μm6μm7.5μm9μm———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007?すばる顕微鏡に補償光学用の可変鏡が搭載されている.1997年に,Rochester大学のWilliamsらが眼底カメラに補償光学を適用し視細胞の撮影に成功したと報告した.続いて当時Houston大学(現カリフォルニア大学バークレー校)のRoordaが,SLOに補償光学を適用し白血球流の動画撮影に成功した(http://vision.berkeley.edu/roordalab/).そして,補償光学は,OCTにも適用が試みられ,感度の向上や視細胞の可視化が報告されている(図3;AO-OCT)13).まだ,ラボの装置だが,眼底の神経細胞のその場観察に基づく医療の可能性が示された.4.機能OCT(functionalOCT)―形態から機能へ生体を通過あるいは反射した光波は,ドップラー(Doppler)シフト,物性依存吸収スペクトル,偏光(polarization)など形態以外の機能的情報を豊富に有する.単に形態を描出する診断機器から網膜・視神経乳頭の機能を立体的に解析するためのfunctionalOCTの研究が行われている.①ドップラーOCT:観測者との相対的な速度によって波の周波数が異なって観測される現象をドップラー効果という.網膜血管の血流を求める技術として,眼底レーザードップラー装置が開発されている.ドップラーシフト量は血管の光軸に対する角度により補正してはじめて血流の絶対値に変換できる.製品としては,唯一キヤノン製CanonLaserBloodFlowmeter100は眼球トラッキングと2軸レーザー光を用いて血管の角度を考慮し,血管角度を反映して網膜の血流を計測できる優れた装置であったが,撮影に熟練を要し,残念ながら販売中止となっている.OCTは三次元情報を有するためドップラーOCT法は,網膜血流の絶対値を求める潜在的に最も優れた技術である14).レーザードップラーに対するアドバンテージは,血管の中の血流分布を(9)図4網膜のドップラーOCTの例京都大学プロトタイプFD-OCTによる網膜動脈のドップラーシフト量解析による網膜血流解析の例.筑波大学ComputationalOpticsGroupのプログラムを基に当科坂本らが改変した.血管内の血流分布が可視化され定量可能である.———————————————————————-Page8??あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007(10)可視化できることである(図4).血管の中心と血管壁の近くの血流の差を計測可能とし,糖尿病や高血圧など生活習慣病診断に資するきわめて有用な情報をもたらすことが期待できる.②偏光OCT:偏光は分子が一定方向に配列する組織において生じる.眼底においては網膜神経線維とコラーゲンを含む篩状板,血管壁,強膜などが偏光を示す.わが国では,筑波大学COGの安野・山成らが視神経乳頭の偏光OCT画像を報告しているが,篩状板や強膜輪の偏光が可視化されている.われわれ眼科医に馴染みがあるGDxは,網膜神経線維の偏光の一つである複屈折性(birefringence)を計測し,神経線維量を計測している.GDxは計測値を内部のデータベースに対してニューラルネットワークを用いて統計的に解析し神経線維厚を推定しているため統計誤差が含まれる.偏光OCTの利点は深さ方向の複屈折分布が計測できることである.すなわち,偏光としての神経線維量と形態情報としての神経線維厚を計測し分けることが可能になると考えられる.③分光OCT:分光とは,物質がもつ光の吸収特性からその物質の量を求める技術である.われわれ眼科医が手術のときに使用する末?血酸素飽和度をモニターするパルスオキシメータは,実用化された分光医療機器である.酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの光の吸収特性の差を利用して血中の酸素飽和度を求める装置である.他にもグルコース,中性脂肪,蛋白質,コレステロール,尿素などが分光計測の研究対象であるが,精度の問題などで普及に至っていない.眼底においては,イスラエルのAppliedSpectralImaging社が眼底酸素飽和度を求める装置を試作し埼玉医科大学の米谷らにより臨床研究が報告されているが,実用化には至っていない.眼底カメラや走査レーザー検眼鏡(SLO)では,網膜と脈絡膜の情報が分離できない問題があるが,OCTは深さ方向の情報をもつため分光OCTは,網膜と脈絡膜の情報が分離できる.しかし,OCTは,深さ情報と分光波長解析力にはトレードオフ(trade-o?)が存在する.糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症,緑内障(特に正常眼圧緑内障)において酸素計測そのものの臨床的意義は高く,山積する技術的問題を解決し信頼性の高い検査機器が開発されることが期待される.わが国では,山形大学の山下(医),湯浅(工)らが分光OCTによる酸素飽和度三次元断層分布測定装置を提案している.V今後のOCT診断装置のスタンダードになる3D-OCT「3D-OCT」は,フーリエドメインOCT技術により高速化した結果生まれる臨床的特性の観点からの診断装置概念である.すなわち,高速になったため一気に三次元OCT情報を取得できるようになったことにより,3Dという新しい診断装置概念が生まれる15~18).現時点では,3D-OCT=フーリエドメインOCTであるが,将来,高速なsweptsourceOCT技術が実用化されれば,それも3D-OCTという診断装置を構成するはずである.診断装置としての3D-OCTの特性は,つぎの3つのスパイスにより構成される.[3つのスパイス]【高速】→【三次元情報】:後述するように,数秒で三次元空間のOCT情報を取得することが可能となり,三次元の形態情報を扱う新しい検査法へ発展した.【高感度】+【高分解能】→【微細な病変の可視化】:感度が上がるほど,ノイズに隠れて認識がむずかしい真の形態情報が,認識可能な画像として表出する.網膜の層構造がより明瞭になり,内網状層,内顆粒層,外網状層,外顆粒層,視細胞層の境界が同定可能になる(図5).これは,網膜厚だけではなく層ごとに厚み計測ができるポテンシャルのある画像である.特に重要なことは,視力に関係が深い中心窩視細胞層の外境界膜と視細胞層内節外節境界部(IS/OS)に相当する2本の高反射ラインが描出されることである(図5).この2本のラインは,描出される眼底疾患の活動期および治癒後の中心窩病変を読み解く鍵になる.[3D-OCTの撮影法]中心窩を含む3~6mm平方の領域に水平Aスキャン256本からなるBスキャンを垂直方向に256枚一定間———————————————————————-Page9(11)あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007??隔で連続撮影する.言い換えると,256×256の格子状のAスキャンを行う(図6).このスキャンのデザインをラスタスキャンプロトコール(rasterscanprotocol)という.[3D-OCTにより生まれる新しい臨床アプローチ]①三次元観察:得られた三次元OCTデータをボリュームレンダリング法を用いて3D画像を得る(図7,8).3D画像は,黄斑円孔の網膜硝子体界面の観察に威力がある(図8).しかし,3D画像では,網膜内部の病変を観察できないため,やはり断層画像の観察が基本となる.断層画像は,これまでBスキャン像とよんできた断層像(crosssec-tion)と,3D画像の切断面としての立体断面(sec-tionedvolume)の2通りの観察法がある.そして,従来のOCTとは異なる3D-OCTの利点の一つは,水平方向,垂直方向,鉛直断面方向(いわゆるCスキャン方向)をはじめとする任意の面で切り取った断層像および立体断面を観察できることである(図7,8).さらには,これら断層および断面像は,ランダムに存在するのではない.水平方向なら,12~24?mおきの断層像が連続して並んでいるため,映画のコマ送りのように病変の網膜接線方向の広がりを観察することが可能となる(図7).②眼底カメラ系画像との照合:そして,さらに重要なことは,三次元情報は病変の深さ方向のみならず横方向の位置情報をもっていることである.われわれが日常見慣れている検眼鏡眼底像や眼底カメラタイプのベーシックな検査データ(カラー眼底写真,蛍光眼底造影写真,SLO,マイクロペリメトリーなど)は病変を光軸へ直交する面(Cスキャン面)への広がりとして認識しているわけであるが,3D-OCTは同様の形態情報の広がりを有する.同様の広がりをこの網膜の任意の深さのCスキャン像として観察することも可能になる(図7,8).OCTは3D-OCTになって眼底カメラ系画像と照合可能となった.図5フーリエドメイン光干渉断層計(Fourierdomainopticalcoherencetomography:FD-OCT)による正常網膜断層像例京都大学プロトタイプFD-OCTによる画像例.中心波長830nm,波長幅50nmのスーパールミネッセントダイオードを使用し空気中の分解能は6.1?m.超高分解能光干渉断層計(ultrahighresolutionOCT:UHR-OCT)に比べると分解能は低いが,感度が高いため,UHR-OCTに匹敵して,中心窩の4本の高反射ラインが観察される.IS/OS:photoreceptorinnerandoutersegmentjunction,視細胞内節外節境界部,VM:Verhoe??smembrane.(板谷正紀:3DOCTによる網膜病変の三次元観察.眼科手術19:501-505,2006より)神経節細胞層内網状層内顆粒層外網状層外顆粒層視細胞内節視細胞外節脈絡膜図6ラスタスキャンプロトコールの1例三次元OCTデータ取得を目的としたAスキャンの分配パターンをラスタスキャンプロトコール(Rasterscanprotocol)という.撮影範囲と水平および垂直方向に行うAスキャン数を決める.図は,3mm×3mmの正方形の範囲に,水平方向256本,垂直方向256本で格子状にAスキャン(赤矢印群)を行うラスタスキャンプロトコールの実例である.ラスタスキャンプロトコールにより得た三次元OCTデータを,LabVIEW7.1(NationalInstrumentsCorporatio,Austin,TX,USA)で変換し,三次元画像解析ソフトAmira3.1(MercuryComputerSystemsInc.,Chelmsford,MA,USA)によりボリュームレンダリングを行い三次元OCT像を構築した.(板谷正紀:3DOCTによる網膜病変の三次元観察.眼科手術19:501-505,2006より)———————————————————————-Page10??あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007(12)図7正常網膜三次元OCT画像の観察パターン三次元OCT画像は緻密な三次元形態情報を有するが,網膜内部の三次元構造を一目で観察することはむずかしい.ここに列挙するような多彩な観察法で,緻密な観察を行い形態と病変の三次元的広がりを理解することが重要である.A:3D外観,B:水平断層像,C:水平立体断面像,D:プロジェクション画像(projectionimage),E:Enface断層像,F:Enface立体断面像,G:約12?mごとの連続した断層像を映画のコマ送りのように1枚1枚観察し病変の緻密な変化の三次元の広がりを観察する.H:あらゆる方向の断層像を観察できる.(板谷正紀:3DOCTによる網膜病変の三次元観察.眼科手術19:501-505,2006より)図8黄斑円孔三次元OCT画像の観察パターンステージ3黄斑円孔症例を例に取り,3DOCTの観察法の実例を示す.ここに列挙するような多彩な観察法で,緻密な観察を行い病変の三次元的広がりを理解することが重要である.A:3D外観,B:水平断層像,C:水平立体断面像,D:3D画像におけるB,C,E,F,H,Iの観察面.E:垂直断層像,F:垂直立体断面,G:あらゆる方向の断層像を観察することが可能,H:Enface断層像,I:Enface立体断面像.(HangaiMetal:Three-dimensionalimagingofmacularholeswithhigh-speedopticalcoherencetomography.Ophthalmology,inpressより改変)———————————————————————-Page11(13)あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007??おわりにわれわれ医師は,医療メーカーを通して,診断装置を知る.装置,ひいては技術の研究開発に精力を傾ける工学研究者の姿や研究の歴史に触れる機会は少なかった.しかし,OCTの分野では,ARVOや国内眼科学会でも工学研究者の発表を目にする機会が増えてきた.実は,OCTは世界的に見ても,医工連携がきわめてうまく機能している分野であり,逆に言うと医工の連携なくして良質な仕事が生まれない分野である.わが国では,丹野らがOCTの原理を世界に最初に提案し,岸らによりOCT装置の臨床的意義を世界に発信したことからわかるように,OCTの工学および医学の両サイドに胸を張れる実績を有する.現在では,筑波大学が台風の目になりOCTの医工連携が活性化している.(株)トプコン社の3DOCT-1000が世界で最初にわが国で発売になったこの時期に,3D-OCTの臨床的意義を明らかにし世界に発信することは,眼科臨床医に期待される仕事である.その意味で,これからも続くOCT技術の進歩をダイナミックに理解し,その行方を学会などで注視することは,今後の臨床に役に立つと考える.謝辞:・FD-OCTの説明に使用しました画像は,筑波大学ComputationalOpticsGroupと(株)トプコンの協力により京都大学附属病院に設置したFD-OCTプロトタイプによる(ヘルシンキ宣言遵守,京都大学医学研究科「医の倫理委員会」の承認取得,インフォームド・コンセント取得).ご指導をいただきました諸氏に深謝します.筑波大学ComputationalOpticsGroup:安野嘉晃先生,巻田修一様,山成正宏様,谷田貝豊彦先生.(株)トプコン:福間康文様,大塚浩之様,木川勉様塚田央様.京都大学画像外来の先生方.・本稿のご高閲をいただきました吉村長久教授に深謝します.文献1)SaddaSR,WuZ,WalshACetal:Errorsinretinalthick-nessmeasurementsobtainedbyopticalcoherencetomog-raphy.?????????????113:285-293,20062)丹野直弘,岸章治:光コヒーレンス断層画像化法と臨床診断.??????????????????????????17:3-10,19993)陳建培,丹野直弘:光波コヒーレンス断層画像化法.???17:8-14,20034)丹野直弘,市村勉,佐伯昭雄:光波反射像測定装置,日本特許第2010042号(出願1990)5)HuangD,SwansonEA,Lin,CPetal:Opticalcoherencetomography.???????254:1178-1181,19956)伊藤雅英,安野嘉晃,谷田貝豊彦:フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィ.視覚の科学26:50-56,20057)DrexlerW,MorgnerU,GhantaRKetal:Ultrahigh-reso-lutionophthalmicopticalcoherencetomography.???????7:502-507,20018)DrexlerW,SattmannH,HermannBetal:Enhancedvisualizationofmacularpathologywiththeuseofultra-high-resolutionopticalcoherencetomography.????????????????121:695-706,20039)KoTH,FujimotoJG,DukerJSetal:Comparisonofultra-high-andstandard-resolutionopticalcoherencetomogra-phyforimagingmacularholepathologyandrepair.??????????????111:2033-2043,200410)SchocketLS,WitkinAJ,FujimotoJGetal:Ultrahigh-res-olutionopticalcoherencetomographyinpatientswithdecreasedvisualacuityafterretinaldetachmentrepair.?????????????113:666-672,200611)UnterhuberA,Pova?ayB,HermannBetal:Invivoreti-nalopticalcoherencetomographyat1040nm-enhancedpenetrationintothechoroids.??????????????13:3252-3258,200512)GrieveK,PaquesM,DuboisAetal:Oculartissueimag-ingusingultrahigh-resolution,full-?eldopticalcoherencetomography.?????????????????????????45:4126-4131,200413)FernandezEJ,PovazayB,HermannBetal:Three-dimensionaladaptiveopticsultrahigh-resolutionopticalcoherencetomographyusingaliquidcrystalspatiallightmodulator.??????????45:3432-3444,200514)YazdanfarS,RollinsAM,IzattJA:Invivoimagingofhumanretinal?owdynamicsbycolorDoppleropticalcoherencetomography.???????????????121:235-239,200315)WojtkowskiM,SrinivasanV,FujimotoJGetal:Three-dimensionalretinalimagingwithhigh-speedultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.?????????????112:1734-1746,200516)Schmidt-ErfurthU,LeitgebRA,MichelsSetal:Three-dimensionalultrahigh-resolutionopticalcoherencetomog-raphyofmaculardiseases.?????????????????????????46:3393-3402,200517)AlamS,ZawadzkiRJ,ChoiSetal:ClinicalapplicationofrapidserialFourier-domainopticalcoherencetomographyformacularimaging.?????????????113:1425-1431,200618)HangaiM,OjimaY,GotohNetal:Three-dimensionalimagingofmacularholeswithhigh-speedopticalcoher-encetomography.?????????????,inpress

序説:最新の網膜硝子体検査

2007年1月31日 水曜日

———————————————————————-Page1(1)?網膜硝子体疾患の治療法として,網膜光凝固,硝子体手術,ステロイド薬やanti-VEGF(抗血管内皮増殖因子)などの薬物治療など多くの方法が臨床応用され,きわめて良好な治療効果が得られるようになってきている.これらの治療法をさらに有効なものとするためには網膜硝子体疾患の病態研究の進歩,個々の患者における病態・病像の把握により最も適切な治療法を行うことが重要となってきている.本特集では,非侵襲的に病態・病像を形態学,機能的な面から把握するために近年開発され日常診療の現場に応用されてきた検査法の最新情報をお届けする.近年の画像診断の進歩としては,以下の点があげられる.1)病理学的な病態・病像把握を企図するもの種々の眼循環異常による網膜浮腫,黄斑円孔,硝子体による網膜牽引などについての形態学的な状態把握においては,従来のタイムドメインOCT(光干渉断層計)に加えて新しいFourierドメインOCT,OCT-SLO(走査レーザー検眼鏡),さらに次世代のOCTが開発され,臨床現場でも利用することができるようになってきた.これにより,新しい疾患概念,治療法の選択などができるようになる可能性がある(板谷正紀先生,加藤祐司先生・石子智士先生・吉田晃敏先生の項).2)眼循環の評価法HRA2(HeidelbergRetinaAngiograph2),超音波Doppler法による診断法の進歩により,眼循環異常の評価,疾患の病態理解がきわめて精密に行えるようになってきた.この進歩により,診断,種々の治療法の評価が進化し,ひいては治療の進歩につながると考えられる(白神千恵子先生・白神史雄先生先生,加藤聡先生の項).さらに広い意味では眼循環の病態評価として網膜における酸素飽和度のマップを作成することができれば,網膜疾患の病態・病像の把握は新しい局面を迎え,治療法の開発と治療の評価が可能になる(米谷新先生の項).この意欲的な研究成果を本特集で紹介できたことは大変意義深いことと考える.3)網膜硝子体循環異常以外の疾患の診断についての進歩緑内障,網脈絡膜腫瘍の診断の進歩についても今回の特集では取り上げてスペシャリストに紹介していただいた.緑内障の疾患概念として視神経の障害を正しく把握することの重要性が増してきた.これを近年進歩してきた画像診断法〔HRTII(Heidel-bergRetinaTomographⅡ),OCT〕により精密,定量的に行うことを研究してこられた杉山和久先生の業績を同教室の大久保真司先生と共著でわかりやすく解析していただいた.検査法の進歩により緑内障の診療が今後,変わっていくことが考えられる.また,眼科領域の腫瘍の診断は困難なことが多いが,日常診療で利用できる磁気共鳴画像(MRI)検0910-1810/07/\100/頁/JCLS*HidetoshiYamashita&TeikoYamamoto:山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野●序説あたらしい眼科24(1):1~2,2007最新の網膜硝子体検査?????????????????????????????????????????????????????????:???????????山下英俊*山本禎子*———————————————————————-Page2?あたらしい眼科Vol.24,No.1,2007(2)査が有用であることを高村浩先生にpracticalに示していただいた.明日の診療から応用可能である.4)網膜硝子体手術における眼底観察法野田徹先生が長年取り組んでこられた,網膜硝子体手術時の眼底観察法の進歩により,いかに手術がやりやすくなったかが詳細に解説されている.これまで名人芸でしか乗り越えられなかった症例を多くの術者が乗り越えられるようになるのはこのような進歩によると考えられる.以上のように,本特集では網膜,硝子体の領域の種々の疾患の画像診断について,それぞれの分野の第一人者に解説をしていただくことができ,現時点での最新の情報をお届けできると自負している.今後の診療に少しでも役立ていただければ望外の幸せである.年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2007Vol.20■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

眼科医にすすめる100冊の本-12月の推薦図書-

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS本書は,有名な本なので,読まれた方も多いと思います.私が留学から帰り,日本とアメリカの違いを漠然と考えていた頃に読んだ本です.日本とアメリカの物事の考え方の違いを明確に教えてくれたもので,印象深かったことを覚えております.さて,戦争というのは,国の総力を挙げて行う行為であり,当該国の思考法,哲学が色濃く反映されます.アメリカと戦った第二次世界大戦は,日本の存亡をかけた戦いであったため,日本人の思考法がはっきりと現れた戦いでした.そして,その思考法は,形を変えて現在にも脈々と流れています.三野正洋氏は,本書で日本軍の失敗を取り上げていますが,失敗の原因は単なる物量の差よりも,日本人の思考法であったことを述べています.●名人芸に頼る日本と平易化するアメリカ私が特に興味深かったのは,日本軍は名人芸を重んじたが,アメリカ軍は平易化(一般人が実行可能な技術を開発すること)を重んじたという点です.たとえば,日本軍は大砲の命中精度を上げるために,兵隊に厳しい訓練を課して名人になることを求めました.一方,アメリカ軍は,優秀な照準器を開発することで,普通の兵隊でも標準以上の能力が発揮できるようにしました.その結果,日本軍では戦争の経過とともに戦闘力が極端に低下したのに比べ,アメリカ軍は常に圧倒的な戦闘力を有することになりました.そこには,人間を鍛えれば未誤謬の域まで達することができるはずという日本と,人間の能力には限界があるので,それを補う方法を考案するほうが実際的だというアメリカの,人間に対する考え方の違いが現れています.どちらが合理的であるかは,自明でした.そして,この差は兵隊の教育方法にも現れていました.第二次世界大戦の頃は,車の運転技術は特殊技能であり軍隊入隊時に運転できる人はごくわずかでした.日本では運転技術を教えるのに,専門用語で書かれた本を用い,車の各部名称を完全に暗記するまで,一切運転させないという教え方でした.まさに歪んだ名人育成主義と言えます.一方,アメリカでは最初から車を運転させ,教則本にも漫画が用いられていました.部品の名称をすべて覚える必要などありませんでした.これは,運転さえできれば,その他のことはどうでもよいという合理的な考えです.その結果,日本軍では運転できるようになった兵はわずかであったのに比べ,アメリカ軍では,ほとんどすべての兵が運転できるようになっていました.戦争末期の東南アジアでは,日本軍は物資の欠乏で敗れたとされていましたが,実はトラックや燃料が豊富な状況でも,運用できなかったということを知り,驚きました.これらは本書の一部の例ですが,アメリカ軍は常に状況を冷静に分析しました.その結果,「人間の能力には限界があり失敗をするものである」という当たり前の結論が導き出され,限界を補う器械の開発や,効果的な教育法,失敗した場合の対処法が考案されました.一方,わが国では,「人間は鍛えれば名人になり,名人は失敗するはずがない」という,根拠のない思い込みに基づいて作戦計画を立てたため,有効な対処法が考案されずに悲惨な結末を迎えました.アメリカのB29爆撃機には,被弾した場合(失敗時)に備え二重三重の消火設備がありましたが,日本の戦闘機ゼロ戦に被弾(失敗時)に備えて装甲板を装着しようとしたところ,軍の上層部から「卑怯者」と一喝され装着されなかったという本書の記載をみると,「日本の名人芸とは,人間に過酷な要求を(81)■12月の推薦図書■日本軍の小失敗の研究─現代に生かせる太平洋戦争の教訓三野正洋著(光人社NF文庫)シリーズ─69◆坂本泰二鹿児島大学医学部眼科———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006するものだ」と感じ入りました.ここまで酷くはありませんが,現代の眼科でも似たような例があります.私が,硝子体手術を始めた頃,網膜表面組織が視認できないので,ベテラン術者に,どうすればできるようになるのか尋ねたところ,「手術症例を積み重ねれば見えるようになる」と言われました.しかし,症例を積み重ねても(この言葉も曖昧ですが),たいして視認できるようにはなりませんでした.当然のことながら,自分自身が教える立場になっても,「経験を積めばできるようになる」という指導しかできませんでした.私の経験がまだまだ足りないせいもあるでしょうが,そこには問題点を正確に把握する努力をせずに,やみくもに訓練で乗り越えようという思考法があります.つまり,名人芸を要求することにおいては,旧日本軍と同じであり,彼らを嗤うことはできないのです.兵隊ではなく新人医師に過酷なだけです.これは,日本人のDNAなのでしょうか.その意味で,硝子体手術における内境界膜?離のために,インドシアニングリーン(ICG)染色をすると発表された際には,二重に衝撃を受けました.一つはアイデアの斬新さ,もう一つは日本人からアイデアが出されたという点です.「人間の視認力には限界がある」という,きわめて当然の事実に基づき,目標物(内境界膜)に着色することで,私が克服できなかった視認性の問題を解決しました.この方法は,先述した大砲の照準器の開発問題と同じ思考法によっており,私のような平凡な術者も,かつての名人に近い手術成績を残すことを可能としました.そして,このことは日本人(堀口正之先生,門之園一明先生)が考案したのです.三野氏は,名人芸に頼ろうとするのは日本人の性癖かもしれないと書いています.たぶん,そうでしょう.しかし,それは本質的な問題解決を避けているにすぎないことが多いのも事実です.名人になるための訓練,修行,…勇ましい言葉ではありますが,問題から逃げているように感じます.逆に,問題を平易化することは,問題の本質をつかみ,それに対処する必要がありますから,より難しい仕事です.しかし,平易化された場合,そのメリットは計り知れません.われわれの進むべき道がどちらであるかは,明らかです.本書は,そのことを教えてくれます.(82)☆☆☆

私が思うこと2. 留学して感じたこと

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????私が思うこと●シリーズ②(77)はじめに私の偉大なる師の一人である故J.W.Streilein教授に心より感謝し,ご冥福を祈りたいと思います.今回,九州大学・園田康平先生からバトンを頂き,このシリーズの2回目を担当させていただくことになりました.私は園田先生と同じ研究施設であるBoston・HarvardMedicalSchool関連のSchepensEyeResearchInstituteへ2003年から3年間留学しておりました.前回,園田先生がBostonやSchepensについて詳しく書かれておりましたので,今回は留学で体験できたことを中心に書いて見ようと思います.私は3年間で3つのラボを移動するという日本人では数少ない経験をもっておりまして,それぞれまったく個性の違うラボを体験しましたので,そのこともおりまぜて書かせていただきたいと思います.私の留学体験は,一言で言えば波瀾万丈でした.留学前から世間ではいろいろなことが起きておりました.すでに遠い昔に感じられる方も少なくないと思いますが,イラク戦争の開戦,SARSの流行などがあり,周りからは留学に行くことに反対されておりました.しかし,私にとって留学は長年の夢でしたので,戦争やSARSよりも,早く留学したいという気持ちが強く,留学を延期しようと思う気持ちはまったくありませんでした.後で述べますが,延期せずに早く留学しておいてよかったと今も思うことがあり,やはり夢を追いかけることは大事だとこの留学期間でつくづく思いました.第一のラボと発見私の第一の留学先はJ.W.Streilein教授のラボでした.彼のラボは眼の免疫を中心に研究していて,特にぶどう膜炎や角膜移植後拒絶反応についての治療の基礎となる研究で世界的に有名なラボでした.そのため多くの国から彼の下へ勉強をしにやってくる研究者が跡を絶たたず,多くの日本人の先生方も研究をしに来られておりました.このラボで一番印象に残ったことは“日本人とドイツ人はよく働き,仕事が正確で結果を出し,実はアメリカのラボを支えているのは日本人とドイツ人”と言っても過言ではないということでした.ただ,英語圏の人と違い海外で日本人が損をしているのはcommunica-tionの部分であり(実はこれが最も研究では重要であり),このcommunicationの壁をなくすことができるのなら日本人の研究者が多くの分野において世界でトップになることができるということを日本人の先生方と終始話しておりました.私はいつもこのcommunicationの壁に悩まされずに世界に挑む方法を日々考えておりまして,その一つの方法がcollaboration(共同研究)であり,上手にcollaborationすれば良い研究成果を生み出すことができることがわかりました.Collaborationはposi-tiveでもnegativeでも結果をすぐに出すことが大切であり(もちろんpositiveならより良いのですが),この結果を早く出す行動こそがcollaboratorから信頼を得る方法だと思っています.今も私はBostonで培った人脈をもとに,日本だけでなく,アメリカ・ヨーロッパの人たちとcollaborationを進めています.このようにcol-laborationを作ることも留学の醍醐味ではないかと思っています.突然の別れ,そして第二のラボ皆さんもご存じかと思いますが,私のボスであったJ.W.Streilein先生は2004年3月15日に68歳という若0910-1810/06/\100/頁/JCLS丸山和一(?????????????????)京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学講座1973年大阪府生まれ.趣味はサッカー,スキー.明るく楽しい実験をモットーに現在も眼科領域ではあまり知られていないリンパ管の研究を続けている.体育会系の研究好き人間.(丸山)留学して感じたこと———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006さで他界されました.今でもあの時の様子は思い出すだけで辛く切なくなります.ボスが突然いなくなる状況など考えたこともなく,生まれて初めて路頭に迷うという体験をしました.あの時に人の優しさ,むごさなどを見る機会があり,本当に何回か辛い状況に追い込まれました.その時に支えてくれたのがStreilein先生の教え(諦めず最後まで仕事を仕上げる),木下茂教授が私に下さった言葉(継続は力なり),友人たちの励ましの言葉,そして陰になり日向になり私を精神的に支えてくれた妻の存在でした.私はボスが他界した後,彼の妻であったJoan-SteinStreilein先生の下で研究を再開しました.その後,彼女の援助もあり約9カ月はJ.W.Streilein先生と行った仕事をもとに研究を続けさせてもらい,その結果,実験は終了することができました.このラボで一番学んだことは自分の意見をしっかりもち,発言することで道は切り開けることがわかったことでした.これから留学する人にはぜひ,自分の考えを積極的に発言し,その考えを行動に移してもらいたいと思っています.第三のラボ・これぞアメリカンドリームボストンで最も嬉しかったことは2年目の11月下旬に突如起こりました.それは,Streilein教授が他界されてから,私の面倒を陰ながら見てくださっていたPatri-ciaA.D?Amore教授からの突然のメールでした.彼女は血管新生の分野では世界的に有名で,ボストンにおいてはその分野では知らない人はいないくらいでした.私の研究は血管・リンパ管新生と免疫を複合させた研究でしたので,Streiline教授が亡くなってからは,毎週彼女のラボミーティングに出て勉強をさせていただき,彼女は1カ月に一度個人面談もしてくださっていました.その彼女から突然以下のようなメールを頂きました.HiKazu-IhavebeenwonderingifyouwouldconsiderstayingonanotheryearortwoatSchepensasapostdocinmylab.Sinceyourworkisnowsomuchinmyareaandsinceyouknowmeandmylab,Ithoughtyoumightconsiderthisagoodopportunity.IfyouarenotinterestedbecauseofyourunpleasantinteractionswithotherSERIpeopleIwouldde?nitelyunderstandandIwouldnotbeo?endedinanyway.Let?stalkaboutittomorrow.Patこのメールを頂いたときは,仕事を続けていて良かったと本当に思いました.自分で努力し,売り込んでおけば必ず何かチャンスが来る,これぞアメリカンドリームと肌で感じました.研究を続けることはもちろん留学では大事です.しかし自分を売り込む力を身につけることも忘れてはいけないと思います.日本人はシャイなので,言いたいことを言えないことが多いのですが,思ったことは思い切って言ってみるべきです.そしていろいろな人と話すべきだと思います.実験を進めることで,一番大事なことはラボメンバーを大切にすることが重要です.ラボメンバーを大切にすることで仕事が何倍もやりやすくなります.たとえば,実験に使用するものが緊急で欲しいときにすぐに彼らが手伝ってくれ,手に入れてくれます.また実験をするとき(78)▲J.W.Streilein教授との思い出─Streilein教授と日本人研究員(とその奥様方)▲Pat?sLabの送別会─左から2人目がD?Amore教授,左端はリンパ管研究で有名なChildren?sHospital,BostonのKaipainen先生———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????にそれぞれに得意分野がありますので,その道のプロに任せることが一番正確で確実ですので(もちろん自分で行うことは大切ですが,私は正確性,スピードをそれよりも大切にしていますので実験の分業化を推奨しています),その時にも彼らは楽しみながら実験してくれます.実験は一人の人がデータを出し,論文をまとめるよりも,何人かで集まり,それぞれの人が実験を理解しているほうが論文作成の時に議論もできますし,何よりも正確なデータを出すことができると思います.私のボストン最後のラボはこれぞ究極のラボのあり方だと感じました.このラボスタイルはボスの推奨する形であり,何度も助けられました.日本に帰国した今でも毎日メールをして,彼女たちからサンプルなどを頂き助けてもらっています.留学での大事なこと最後に留学での大事なことについて述べたいと思います.一つは先にも挙げました沢山の仕事をこなすことももちろん大事なのですが,私は人間関係も大事にしようと思っていました.留学では外国人はもちろんですが,多くの日本人とも知り合う機会があります.留学は眼科に限らず多くの分野の人と知り合いになることができる機会だと思います.私はパーティー(飲み会)に呼んでいただければいつも喜んで参加していました.飲み会はストレス発散の場所にもなりますし,何よりも情報交換ができる場所でした.それぞれのラボのスタイルやどのような実験をしているのかなどをも知る機会でしたので,これから留学される人はぜひ参加していただきたいと思います.そこで必ず何かしら新しい発見があります.妻もそのような場所で友人作りや情報交換ができ,参加するのをとても楽しみにしていましたので,一緒に留学される奥様や子供さんにもとても有意義なものだと(79)思います.もう一つはストレス発散方法を見つけることです.私はその一つとして園田先生も第一回で述べられておりましたが,旅行というストレス発散方法をみつけました.大きな声では言えませんが,私は旅行へ行きまくりました.いくら良い環境で働いていても,働くということでストレスを感じています.旅行先では必ず心に余裕ができますので,そういう時に,ストレスが発散され,思い詰めていたことに対しても良い考えが浮かぶことが多々あります.旅行は「いろいろなことを考える時間」だと思いますので,ぜひお出かけください.もう一つは留学したら留学先のその国にある何かに深くはまってください(ちなみに私はアメリカのプロスポーツにはまりました).これもストレス発散になります.仕事とは違う何かに没頭する時間も一日のうちで大事だと思っています.たくさんのことを書きすぎましたが,留学は本当に素晴らしいものだと思います.これから機会のある人は決して逃がさないでください.これを読んでくださった皆さんのなかから将来留学し,このコラムが少しでもお役に立てることを心から願っております.☆☆☆丸山和一(まるやま・かずいち)1998年金沢医科大学卒業,京都第二赤十字病院,宇治徳洲会病院を経て,2001年に京都府立医科大学視覚機能再生外科学大学院入学.2003年から3年間HarvardMedicalSchool,SchepensEyeResearchInstituteに留学,2006年3月に京都府立医科大学視覚機能再生外科学大学院卒業,同年4月より京都府立医科大学視覚機能再生外科学講座後期専攻医,AdjunctAssistantScientist,DepartmentofOpthalmology,HarvardMedicalSchool,SchepensEyeResearchInstituteとなる.kmaruyam@ophth.kpu-m.ac.jp

よくわかる医療情報のお話4.年々進化するクリニカルパス

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSクリニカルパスあるいはクリティカルパス(以後パスと略します)は1980年代,カレン・ザンダー氏がボストンのニューイングランド・メディカルセンター病院において,産業現場における工程管理法を医療に応用したところから始まります.わが国に導入されたのは1990年代であり,歴史的にはごく浅いものです.元来は,米国におけるDRG/PPS(疾患別関連群/包括支払い方式)への対応が背景にあったわけですが,パスは医療介入のプロセス構築を行うものであるがために,従来,「医師の指示待ち」であった医療形態をすっかり変えてしまう結果となりました.パスの発展経緯や複雑な患者状態に対する適応のむずかしさなどから,パスを毛嫌いする医療者が存在することは事実ですが,パスに含まれる医療の質の向上,標準化,効率化,開示性などといった導入意義は今日の医療に求められている姿勢そのものであり,わが国においては独自のDPC(定額支払い方式)が拡大していくなかで,すでに,現在の医療には欠くことのできない手法となっています.わが国にパスが導入され始めた当初,パスは作成しやすい外科系の疾患がほとんどであり,パスにとって重要なアウトカムの設定をどのようにすればよいのか,バリアンスコードの作成や分析をどのように行えばよいのかなどは,それぞれの施設が手探りの状態で試行錯誤を行っていました.ところが,その後のパスの進歩には著しいものがあり,フォーマットもよく見かけるオーバービュー式のほかに,オールインワン式,日めくり式,などが開発され,施設ごとの書式や用語の統一,シート作成におけるevidence-basedmedicin(EBM)の検討なども行われるようになってきました.アウトカムに関してはクリニカルインディケーター(影響の大きいアウトカム)に関するベンチマーキングの実施(施設間比較),バリアンスに関しては収集方式のシステム化,バリアンス分析手法の確立などがなされてきました.パスの対象疾患も外科系から内科系へと拡大するとともに,日数を設定する従来型のパスのほかに,プチパス(部分的なパス),フェーズ別パス(日数設定が困難な疾患対象のパス),アルゴリズムパス(患者状態適応型パス)が作成されるようになってきています.また,現在でもほとんどのパスは入院疾患が対象ですが,近年は外来や救急にも適応されています.医療システムとの関連で言えば,独自に稼働するパスのシステム,オーダリング機能にリンクしたパスのシステムなどが登場し,最近では電子カルテ上で稼働するパスのシステムが最先端となっています.ただ,電子カルテ自体の導入もかなりの努力が必要ですが,パスを電子カルテ上で稼働させるにはさらに努力と工夫が必要で,いまだ紙ベースでパスを運用している施設が大多数というのが現状です.1999年に相次いで設立された日本クリニカルパス学会,医療マネージメント学会はわが国におけるパスの発展に大きな役割を果たしてきています.(75)よくわかる医療情報のお話●連載(隔月)④若宮俊司*年々進化するクリニカルパス*ShunjiWakamiya:川崎医科大学眼科学教室/川崎医療福祉大学感覚矯正学科/同医療情報学科/名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学教室クリニカルパスの一例

硝子体手術のワンポイントアドバイス43.糖尿病性牽引性偽視神経萎縮に対する硝子体手術

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSはじめに増殖糖尿病網膜症の増殖膜が視神経乳頭近傍(特に鼻側)に存在する例では,後部硝子体?離の進行に伴い乳頭周囲の血管が増殖膜によって牽引され,視神経乳頭(特に耳側)が蒼白となり,視力低下および中心視野障害をきたすことがある.Krollらはこのような症例をtractinalopticnervepseudoatophyindiabeticretinop-athyと命名し,早期に硝子体手術を施行して視神経乳頭への牽引を解除することで視力改善が得られる可能性を報告した1).●硝子体手術による視神経乳頭循環の改善筆者らも過去に,同様の症例に対して硝子体手術を施行し,術前後にレーザースペックルで視神経乳頭周囲の血流を測定し,視野の改善とともに乳頭耳側の循環状態(73)が改善した症例を報告した2).硝子体手術後,視神経乳頭の色調は若干改善し(図1),Goldmann視野検査では術前の中心暗点は消失した(図2).レーザースペックル検査でも,術後に視神経乳頭の耳側の血流の改善をみた(図3).●手術適応の決定視神経乳頭周囲に増殖膜が存在し,黄斑部の変化を認めないにもかかわらず進行性に中心視力低下をきたす症例では,まず視野検査を施行することで本症を疑う.中心暗点が生じて長期間経過している症例では不可逆性の視神経萎縮が生じているので手術適応はないと考えられるが,進行性の場合には硝子体手術により視機能の改善が得られる可能性がある.文献1)KrollP,WiegandW,SchmidtJ:Vitreopapillarytractioninproliferativediabeticvitreoretinopathy.????????????????83:261-264,19992)佐藤孝樹,杉山哲也,池田恒彦ほか:硝子体手術を施行した糖尿病性牽引性偽視神経萎縮の2例.眼紀52:33-37,2001硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?43糖尿病性牽引性偽視神経萎縮に対する硝子体手術池田恒彦大阪医科大学眼科ab図1糖尿病性牽引性偽視神経萎縮に対して硝子体手術を施行した症例a:術前眼底写真,b:術後眼底写真.ab図2Goldmann視野検査所見a:術前,b:術後.図3レーザースペックル検査所見(数値は四角内のSBR値)a:術前,b:術後.12.811.4a11.419.8b

眼科医のための先端医療72.虹彩の“動き”が瞳孔膜の消退を誘導する-虹彩のもうひとつの機能

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS瞳孔膜とは瞳孔膜は胎生9週頃から8カ月頃までの間に一過性に水晶体の前表面にみられる血管膜です1).「膜」という名がついていますが,組織学的には血管とわずかなコラーゲン線維で構成されており,大虹彩動脈輪の分枝血管が水晶体前表面に接着し血管網を形成しています2,3).その機能は毛様体で房水産生が始まるまでの水晶体上皮細胞の栄養であると考えられています.瞳孔膜消退という不思議な現象良好な視機能を獲得するためには,発達期に中間透光体が透明であることが必要です.視機能発達のために透明でなくてはならない光路上の水晶体に不透明な“膜”を張り,眼内に光が入射するまでにそれを完全に消すというプロセスは,その“膜”が遺残してしまう可能性を考えると,瞳孔膜が水晶体形成において如何に重要な機能を果たしているとしても,眼球にとって危険性が高い選択であったといわざるを得ません.しかし一方で,視機能の発達を障害するような重度の瞳孔膜遺残例に遭遇することはきわめてまれであり,健常成人のほとんどにおいて瞳孔膜は問題なく消退していることも事実です.このことから,瞳孔膜の消退は非常に効率的かつ安定したメカニズムによって誘導され,瞳孔膜遺残というリスクは巧妙に回避されているのであろうということが想像されます.これまでの研究から1994年にLangらによって瞳孔膜の消退の本態は血管のアポトーシスであることが明らかにされました4).その後瞳孔膜のアポトーシスを誘導する因子について多くの検討がなされており,これまでに瞳孔膜を取り巻く環境,すなわち水晶体,房水そして血流由来のアポトーシス誘導因子(マクロファージ,活性酸素種,骨形成蛋白)の増加および血管新生促進因子(血管内皮細胞増殖因子,塩基性線維芽細胞増殖因子)の減少が瞳孔膜消退に重要な役割を担うことが報告されています4~9).これらによれば,瞳孔膜の消退には実にさまざまな因子が関与しその経路は複数存在することになります.しかし,これらの因子・経路を眼球形成後期にほぼ個体差なく機能させ,瞳孔膜消退をひき起こすトリガーが何であるかということについては解明されていませんでした.虹彩の“動き”に伴って瞳孔膜の血流動態が大きく変化する筆者らはラット眼(ヒトとは異なり生後2週間で瞳孔膜の消退が完了する)において瞳孔膜の消退と虹彩の運(69)◆シリーズ第72回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊森實祐基*1,2毛利聡*2〔*1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学*2同システム循環生理学〕虹彩の“動き”が瞳孔膜の消退を誘導する─虹彩のもうひとつの機能─図1瞳孔膜消退の時間経過(a)および虹彩の運動能発達の時間経過(b)a:生後各日数における瞳孔膜血管の分岐点数.生後8日目から瞳孔膜の消退が顕著となり14日目には完全に消退する.b:点眼薬によって交感神経を刺激し副交感神経を抑制した場合の瞳孔径(○)および副交感神経を刺激し交感神経を抑制した場合の瞳孔径(■).交感神経と副交感神経をともに抑制した場合の瞳孔径を100として表示.自律神経刺激に対する虹彩の反応は生後8日目頃からみられる.ba01002003004021214108604060801001201402040212141086生後日数(日)生後日数(日)瞳孔膜血管の分岐点数瞳孔径(自律神経抑制時に対する%)———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006動能(縮瞳能・散瞳能)の発達が同期的に進行することに着目し(図1),虹彩の“動き(縮瞳・散瞳)”が瞳孔膜のアポトーシスを誘導する引き金ではないかと仮説を立てました.そこで,独自に開発した生体ビデオ顕微鏡(空間解像度0.5?m)を用いて虹彩運動に伴う瞳孔膜の血流動態の変化を可視化・観察しました.その結果,虹彩の動きに伴って瞳孔膜の形態は大きく変化し,さらに縮瞳時には瞳孔膜の血流が停止し,散瞳時には血流が再開することが明らかになりました(図2)10,11).虹彩の“動き”を抑制すると瞳孔膜が遺残する血流の停止(虚血)や間欠的な停止(虚血再灌流)は活性酸素種や種々のアポトーシスリガンドの産生,shearstressの減少などを介して血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することが明らかにされています12~15).筆者らは虹彩の動きが瞳孔膜の血流動態に変化をもたらし,アポトーシスを誘導するのではないかと考えました.そこで,虹彩の動きを持続的に抑制し瞳孔膜の血流動態の変動が起こらないようにすれば,瞳孔膜の消退が抑制されるかどうか検討しました.その結果,生後12日目まで虹彩運動を持続的に抑制すると,瞳孔膜血管内皮細胞のアポトーシスがコントロール群に比べて有意に抑制され瞳孔膜が遺残しました(図3).また,瞳孔膜消退を誘導する重要な因子の一つと考えられているマクロファージの遊走も有意に抑制されました.以上の結果から,虹彩の動きが瞳孔膜に血流動態の変化を起こし,それがマクロファージなどのアポトーシス誘導因子を活性化することによって瞳孔膜消退を誘導すると結論しました.研究の意義と今後の課題本検討では,虹彩?瞳孔膜?水晶体の相互関係によって瞳孔膜の消退が誘導されることが明らかになりました.この結果は,これまで遺伝子によってプログラムされた細胞死であると考えられてきた器官形成期のアポトーシスにおいて,組織間の生理的な相互作用がその誘導に重(70)図2虹彩の動きに伴う瞳孔膜血流の停止・再開(生後12日目)コントロール(自律神経抑制)状態(a),縮瞳時(b),散瞳時(c)における瞳孔膜の形態変化(上段,Bar:1mm),血流動態の変化(中段,Bar:100?m),虹彩?瞳孔膜?水晶体の相互関係模式図(下段).縮瞳時,虹彩によって瞳孔膜血管は瞳孔領中央に寄せ集められた(b上段の白矢印).その際,瞳孔膜は水晶体表面に接着しているため,瞳孔膜血管は強く屈曲し(b下段の*)血流が停止した(b中段の黒矢印).散瞳時には虹彩によって瞳孔膜血管は伸展され(c上段の白矢印)血流が再開した(c中段の黒矢印).*bac血流再開散瞳時縮瞳時血流停止*水晶体虹彩瞳孔膜図3虹彩の動きを抑制することでみられた瞳孔膜の遺残a:コントロール群の生後14日目.生後4時間ごとに生理食塩水を点眼した.瞳孔膜はほぼ完全に消退した.b:虹彩の動きを抑制した群の生後14日目.生後4時間ごとに1%アトロピンを点眼し虹彩運動を抑制した.その結果,瞳孔膜が遺残した(白矢印).遺残した瞳孔膜では血流が保たれていた.a.コントロール群b.虹彩の動きを抑制した群———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????5)LangRA,BishopJM:Macrophagesarerequiredforcelldeathandtissueremodelinginthedevelopingmouseeye.????74:453-462,19936)MeesonA,PalmerM,CalfonMetal:Arelationshipbetweenapoptosisand?owduringprogrammedcapillaryregressionisrevealedbyvitalanalysis.???????????122:3929-3938,19967)MeesonAP,ArgillaM,KoKetal:VEGFdeprivation-inducedapoptosisisacomponentofprogrammedcapil-laryregression.???????????126:1407-1415,19998)YanagawaT,MatsuoT,MatsuoN:Aqueousvascularendothelialgrowthfactorandbasic?broblastgrowthfac-tordecreaseduringregressionofrabbitpupillarymem-brane.????????????????42:157-161,19989)KiyonoM,ShibuyaM:Bonemorphogeneticprotein4mediatesapoptosisofcapillaryendothelialcellsduringratpupillarymembraneregression.?????????????23:4627-4636,200310)MorizaneY,MohriS,KosakaJetal:Irismovementmediatesvascularapoptosisduringratpupillarymem-braneregression.??????????????????????????????????????290:R819-825,200611)HinesPJ:Deathintheblinkofaniris.???????310:747-749,200512)DaemenMA,deVriesB,BuurmanWA:Apoptosisandin?ammationinrenalreperfusioninjury.???????????????73:1693-1700,200213)HouST,MacManusJP:Molecularmechanismsofcere-bralischemia-inducedneuronaldeath.??????????????221:93-148,200214)KrijnenPA,NijmeijerR,MeijerCJetal:Apoptosisinmyocardialischaemiaandinfarction.?????????????55:801-811,200215)ScarabelliT,StephanouA,RaymentNetal:Apoptosisofendothelialcellsprecedesmyocytecellapoptosisinisch-emia/reperfusioninjury.???????????104:253-256,2001要な役割を果たしていることを示した一例であるといえます.また眼科学的には,これまで知られていなかった虹彩の新たな機能を示唆する結果といえるのではないかと考えています.本検討はあくまでラットでの結果であり,そのままヒトに外挿することはできませんが,従来考えられてきた虹彩の機能─眼球に入る光量の調節,光学収差の減少,焦点深度の調節─に加えて,虹彩は光が眼球内に入る以前にも“瞳孔膜を消す”という機能を果たしている可能性があると考えます.今後,虹彩の動きとさまざまなアポトーシス誘導因子との関わりについて検討を進めるとともに,眼球形成期にみられる他の眼内血管(硝子体動脈,水晶体血管膜)の消退機構についても検討を進めたいと思います.そうすれば,不明な点が多い眼球形成の仕組みについてさらに解明が進むのではないかと考えます.文献1)BeebeDC:Adler?sPhysiologyoftheEye,10ed,p117-158,Mosby,StLouis,20032)MatsuoN,SmelserGK:Electronmicroscopicstudiesonthepupillarymembrane:the?nestructureofthewhitestrandsofthedisappearingstageofthismembrane.?????????????????10:108-119,19713)LatkerCH,KuwabaraT:Regressionofthetunicavascu-losalentisinthepostnatalrat.??????????????????????????21:689-699,19814)LangR,LustigM,FrancoisFetal:Apoptosisduringmacrophage-dependentoculartissueremodelling.????????????120:3395-3403,1994(71)■「虹彩の動きが瞳孔膜の消退を誘導する─虹彩のもうひとつの機能─」を読んで■医学に限らず,科学は新しいアイデアや,革命的コンセプトにより飛躍的に進歩します.研究設備が整った組織に属するのは,ある程度予測可能な結果を出すためには有利ですが,学問を飛躍的に進歩させるようなコンセプトを創造するためには,必ずしも有利とはいえません.なぜなら,新しいコンセプトは研究者のイマジネーションによってのみ創造されるものであり,イマジネーションは研究者の頭のなかにあるからです.頭のなかは,研究者が所属する機関の研究設備や資源には無関係です.それゆえ,新しいコンセプトを創造した研究者はよりいっそう賞賛されるのです.さて,今回の森實祐基先生の研究は,この新しいコンセプトを創造したものといえます.網膜の虚血・再灌流動物は,血管障害を擬した病変のモデルとして,さまざまな医学研究分野で使われてきました.眼科領域でいえば,このモデルを用いることで,網膜血管障害の後の網膜障害発生のメカニズムが,分子レベルで解明されるようになりました.たとえば,虚血・再灌流が起こるとアポトーシスがひき起こされますが,それはさらなる炎症を誘導し,最終的にはきわめて重篤な網膜の障害をひき起こします.多くの研究者は,虚血・再灌流という概念から,網膜静脈閉塞などの病態を思い浮かべるだけでした.ところが森實先生たちは,虚血・再灌流という概念をまったく違う視点からとらえました.本文にあるように,虚血・再灌流という現象が,発生における組織形成に重要な働きをして———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006(72)いるという仮説を立て,発生における瞳孔膜の消退現象を解析しました.特に,発生の過程で,瞳孔膜が瞳孔部分だけ綺麗に抜け落ちる理由は長く謎でしたが(多くの人はこのことを疑問にすら思いませんでした),その理由は,瞳孔膜血管の虚血・再灌流によるアポトーシスであり,アポトーシスの誘因が虹彩の動きであるために瞳孔部分だけが選択的に抜け落ちるからであると見事に証明しました.これは,誰も考え付かなかった考え方で,この考え方を応用することで,さまざまな生体現象が説明できるようになります.まさに,今後の研究を大きく発展させる新しいコンセプトといえます.このコンセプトの重要さは,この論文がScience誌の編集長による重要論文欄で取り上げられた1)ことからもわかります.このような新しく見事なコンセプトが出されると,コンセプトの内容よりも,どうしてこんなことを思いついたのか森實先生に聞きたくなるのは,私だけでしょうか.文献1)HinesPJ:Deathintheblinkofaniris.???????310:747-749,2005鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆

新しい治療と検査シリーズ167.フーリエドメイン光干渉断層計

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS?バックグラウンド1991年に国際特許が取得され,1997年にHumphrey社(現在CarlZeissMeditec)から製品化された光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,網膜の断層像を内層・外層が議論できる程度に可視化し,眼底疾患の診断に革命的進展をもたらした1).黄斑円孔の病態解明と病期決定においては疾患概念へ影響をもたらし,糖尿病黄斑浮腫や網膜静脈閉塞症における黄斑網膜厚定量化により治療効果の判定にも不可欠となった.一方,乳頭周囲神経線維層厚計測が可能となり,緑内障早期診断の診断機器の一翼としても注目されてきた.2002年には,深さ分解能が10?mへ向上したが,マイナーチェンジであり,眼科診療に変革をもたらすほどではなく,発売から10年近く経過し,計測精度,病変描出力,撮影速度などの限界が指摘され,古くなった感は否めない2).従来のOCTのもう一つの問題は,網膜に垂直なOCT断層像を,眼底写真や蛍光眼底造影などベーシックな検査データへ対応させることがむずかしいことがあげられる.?新しい検査法従来のOCTはタイムドメインOCT(timedomainOCT:TD-OCT)とよばれ,光波の干渉を実空間(時間領域)で行うため,深さ方向へ機械的スキャンを要する.このため撮影の高速化が困難とされる.これに対し,フーリエドメインOCT(FourierdomainOCT:FD-OCT)は,光波の干渉を虚空間(周波数領域)で行うため,深さ方向の機械的スキャンが不要となり2桁以上3桁未満高速に画像を取得できる.さらにフーリエドメインOCTはプーブ光の使用効率が高いため,タイムドメインOCTと比べ信号雑音比が高い,すなわち高感度である(表1).桁違いに高速であるため,単に断層像のみならず数秒で三次元OCT情報を取得することが可能となり,三次元の形態情報を扱う新しい検査法へ発展した3~5).?実際の検査法従来の撮影と同様に病変部を狙いBスキャン断層像を撮影する方法①と病変を含む3~6mm平方を格子状にスキャンして三次元情報を取得する方法②がある.①は,たとえばAスキャン500本なら40枚/秒,Aスキャン1,000本なら20枚/秒程度の速度で撮影できる.②は,たとえば,3mm平方の領域に水平Aスキャン256本からなるBスキャンを垂直方向に256枚一定間隔で連続撮影する.言い換えると,256×256の格子状のAスキャンを行う(図1).すると,眼底は3mm×3mm×2~4mmの直方体に切り取られ,その中に三次元情報が詰まって取得される.撮影後に三次元解析用ソフトウエア上で,この直方体を,三次元像として観察することも可能であるが,より実用性の高い観察法は,水平方向,垂直方向,鉛直断面方向(いわゆるCスキャン方向)をはじめとする任意の面で切り取った断面像を観察できることである(図2).さらには,各面方向で約12?mごとの連続した断層像を1枚1枚観察し,病変の三次元方向の広がりを観察できる3~5).?本方法の良い点2桁以上3桁未満高速であるということは,文句なしに良い点である.通常のBスキャンが,リアルタイム新しい治療と検査シリーズ(67)167.フーリエドメイン光干渉断層計プレゼンテーション:板谷正紀京都大学大学院医学研究科眼科学教室コメント:不二門尚大阪大学大学院医学研究科感覚機能形成学教室表1タイムドメインOCT(TD-OCT)とフーリエドメインOCT(FD-OCT)の比較TD-OCT(StratusOCT)FD-OCT(京大プロトタイプ)スキャン速度400Aスキャン/秒18,700Aスキャン/秒感度約85dB約98dB———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006に撮れるため,固視微動によるアーチファクトを無視できる.つぎに三次元OCT情報が得られることにより,単に三次元に連続した緻密な病変観察が可能になっただけではなく,従来の眼底カメラタイプのベーシックな検査データ(カラー眼底写真,蛍光眼底写真,走査レーザー検眼鏡,マイクロペリメトリーなど)とOCT所見を重ね合わせて比較することが可能になった.眼底病変の形態と機能を三次元的に比較統合できる時代に入ったといっても過言ではない.文献1)板谷正紀:眼底の画像診断装置の現状と未来「より速く,より深く,より高精細に」.眼科48:923-936,20062)SaddaSR,WuZ,WalshACetal:Errorsinretinalthick-nessmeasurementsobtainedbyopticalcoherencetomog-raphy.?????????????113:285-293,20063)WojtkowskiM,SrinivasanV,FujimotoJGetal:Three-dimensionalretinalimagingwithhigh-speedultrahigh-resolutionopticalcoherencetomography.?????????????112:1734-1746,20054)Schmidt-ErfurthU,LeitgebRA,MichelsSetal:Three-dimensionalultrahigh-resolutionopticalcoherencetomog-raphyofmaculardiseases.?????????????????????????46:3393-3402,20055)HangaiM,OjimaY,GotohNetal:Three-dimensionalimagingofmacularholeswithhigh-speedopticalcoher-encetomography.?????????????,inpress(68)?本方法に対するコメント?3D-OCTは,従来の2D-OCTと比較して,三次元情報が得られる点がすぐれている.TimedomainのC-scan方式による3D-OCTはすでに実用化されており,臨床的にも強度近視眼の網膜血管の三次元的描出に有効性が示されている(Ikunoetal,AJO,2005).しかしながら,画像取得に時間がかかるため,三次元の精細な画像を得ることは困難であった.Fourierdomainの3D-OCTは画像の取得時間が短く,分解能の高い画像が得られる点が有利な点である.一方,6mmのscanを行うためには3秒以上かかり,角膜の乾燥や固視微動の影響が避けられない点がハードの問題として残っており,また膨大なデータのなかから効率よく有用な情報を抽出し,これをいかに保管するかというソフト面での改良が,真に臨床的に有用な器機となるために必要なステップである.図1ラスタスキャンプロトコールの1例ラスタスキャンプロトコール(rasterscanprotocol)とは,三次元OCTデータ取得を目的としたAスキャンの格子状分配パターンをいう.具体的には,どの撮影範囲で,どのようにAスキャンを分配するかということである.図には,3mm×3mmの正方形の範囲に,水平方向256本,垂直方向256本で格子状にAスキャンを分配するラスタスキャンプロトコールを示す.実際は,水平方向に256本のAスキャンを行い等間隔おきに256枚のBスキャンを取得する.ラスタスキャンプロトコールにより得た三次元OCTデータを三次元ソフトによりボリュームレンダリングを行い三次元OCT像を構築できる.(板谷正紀:眼科手術19:501-505,2006より転載)図2三次元OCT画像の観察方法三次元OCT画像は包括的な形態情報を有するが,ヒトの眼と頭脳は一目で三次元情報を理解できない.ここに列挙するような多彩な観察法で,緻密な観察を行うことが重要である.観察方法にA:3D外観,B:水平断層像,C:水平立体断面像,D:プロジェクション画像(projectionimage),E:Enface断層像,F:Enface立体断面像,G:約12?mごとの連続した断層像を1枚1枚観察し病変の緻密な変化の三次元の広がりを観察可能,H:あらゆる方向の断層像を観察することが可能.(板谷正紀:眼科手術19:501-505,2006より転載)

眼感染症:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSポリメラーゼ連鎖反応(polymerasechainreac-tion;PCR)は1971年Khoranaら1)により考案され,1986年にMullisらのグループ2)が実証して以来,生命科学の発展を支えてきた.このPCRは長いDNAのうち,狙った1カ所だけをくり返しコピー増幅させることで,解析できる程度の量にまでDNAを増やすための反応である.鋳型DNA,プライマー,耐熱性のDNAポリメレースである???酵素をバッファー中で混合させ(図1),3ステップからなる温度変化を30回程度くり返すことでDNAを増幅させる.●鋳型DNA純度の高いDNAにまで精製しなくとも,よほど多くの夾雑物がないかぎり涙液,眼脂,眼組織片などでも直接チューブに入れるだけで反応可能である.病原微生物の特異的な塩基配列を含む配列で後述するプライマーを設計する.●プライマー鋳型二本鎖DNAのうち目的とする領域を挟む形で,センスとアンチセンスの互いに向き合った1対のプライマーを設計する.目的とするDNAの前後(5?側と3?側)に設定する.特異性が高い配列(17~35塩基),適切なGC含量(GCcontent).鋳型鎖に結合(annealing)する温度(meltingtemperature:Tm)を一致させる.互いに相補性がないこと(primerdimerを形成するため).自身の配列内に回文構造がない(分子内高次構造を形成するため).これらに注意して設計する.プライマー設計するソフトウエアを用いれば,いくつかの候補を出力できる.プライマー合成会社に注文すると3日でプライマーが手に入るが,時間制約がある臨床現場では,眼感染症をひき起こすウイルス,細菌,原虫,真菌などのプライマー3)はあらかじめ用意しておく.●酵素?????????????????由来の????DNA合成酵素(????polymerase)は米国のイエローストーン国立公園の源泉から発見された耐熱性細菌の酵素である.カリフォルニアの山岳地帯をドライブしているときにPCR法を考えついたMullisら2)は1993年にノーベル化学賞を受賞している.現在ではさまざまな特性をもつ???が市販されている.エンテロウイルスなどのRNAウイルスの場合は逆転写酵素(reversetranscriptase:RT)を用いたRT-PCRを行う.●PCRサイクル上述のようにPCRのサイクルは高温(通常95~98℃)でのDNAの変性(denaturation),低温(プライマーのTm値よりやや低温)におけるプライマーのアニーリング(annealing),???DNA合成酵素至適温度(72℃)で(65)43.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=大橋裕一井上幸次藤巻拓郎木村泰朗順天堂大学医学部眼科ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は鋳型DNA,プライマー,???酵素をバッファー中で混合させ加温冷却をくり返し,目的とするDNA領域を増幅させる方法である.眼感染症をひき起こすウイルス,細菌,原虫,真菌などを高感度で迅速に検出できる半面,病原体が絞り込めない場合は工夫が必要である.図1PCR溶液を混合させる作業台中央は50??のPCR専用チューブ.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006の伸長反応(extension),の3ステップを30回程度くり返すのが一般的である.通常50??のPCR専用チューブにマイクロピペットとチップを用いて各溶液を混合し(図1),サーマルサイクラーとよばれる機器(図2)にて加温冷却をくり返し,目的とするDNA領域を増幅させる.設定温度にもよるが,装置を作動させると2~3時間程度で反応は終了し,確認のためアガロースゲルにて産物を電気泳動させることでPCR産物を確認する(図3).●さまざまなPCR1.ReversetranscriptionPCR(RT-PCR)上述したエンテロウイルスなどのRNAウイルスの場合は逆転写酵素(reversetranscriptase)を用いたRT-PCRを行う.各社から1本のチューブでRNAをcDNAに変換しPCRを行うRT-PCR反応を,1本のチューブ内で連続的にonestepで行うキットが発売されている.2.NestedPCR(secondaryPCR)サンプルに不純物が多い場合やDNA量が少ない場合で,初回PCRでうまく増幅できなかったときに,最初のPCR産物をもとにさらに内側のプライマー対を用いることで2回目のPCRを行う.3.MultiplexPCR病原体が絞り込めない場合はいちどに複数のプライマー対を混合することで,多種類のターゲットのいずれかを同時に,あるいは1種類のみを検出できるPCR法がある4).プライマーのTm値を一定に揃えることと,各標的のPCR産物の長さを変えることが重要である.いずれの場合にも共通するが,予想された長さに相当するPCR産物ができても,目的の領域かどうかは塩基配列を確認するまでわからない.特に医療現場では時間的な制約があっても,確実な診断のためには塩基配列決定まで行うべきである.以上,PCR法の概要を記述したが,正しい方法で行えばPCRは感染症診断に際し非常に有効な検査である.文献1)KleppeK,OhtsukaE,KleppeRetal:XCVI.Repairrepli-cationofshortsyntheticDNA?sascatalyzedbyDNApolymerases.??????????56:341-361,19712)MullisK,FaloonaF,ScharfSetal:Speci?cenzymaticampli?cationofDNAinvitro:thepolymerasechainreac-tion.????????????????????????????????51,263-273,19863)伊藤典彦:眼科におけるウイルス学検査の実際─PCR法の種類と方法.NEWMOOK眼科,2.眼のウイルス感染症,p179-197,金原出版,20024)ZhangY,KimuraT,FujikiKetal:Multiplexpolymerasechainreactionfordetectionofherpessimplexvirustype1,type2,cytomegalovirus,andvaricella-zostervirusinocularviralinfections.????????????????47:260-264,2003(66)図2各種サーマルサイクラー■コメント■PCRは臨床診断にきわめて有用な方法であり,特にウイルス感染症の診断法としては定着した感がある.最近は感度の高いnestedPCRや一つのサンプルで複数の病原体を検索するmultiplexPCR,そして定量が可能なreal-timePCRなどさまざまな方法が考案されている.ヘルペスウイルス属については人体に潜伏感染しているため,単にPCR陽性のみでは診断につながらない,臨床所見や抗ウイルス薬に対する反応性,そしてウイルスDNAの量を勘案して診断すべきであろう.鳥取大学医学部視覚病態学井上幸次図3PCR産物の電気泳動写真レーン1は100bpマーカー.レーン2矢印はPCR産物.12500bp

光線力学的療法(PDT):光線力学的療法の適応・非適応

2006年12月31日 日曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)が認可されてから2年以上経過した.日本でのPDT治療の基準となる「眼科PDTガイドライン」は,現在,日本PDT研究会によって作成中である.今回は,現時点におけるPDTの適応・非適応について紹介する.ベルテポルフィン(ビスダイン?),の添付文書の効能・効果には,「中心窩下脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)を伴う加齢黄斑変性症(age-relatedmaculardegeneration:AMD)」と明記されている1).ここでのAMDとは広義AMDとして解釈され,CNVを有する狭義AMDはもちろんのこと,広義AMDに含まれるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV),網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)についても,PDTの適応と考えられる.●視力わが国のPDT臨床治験,JAT(JapaneseAge-Relat-edMacularDegenerationTrial)Studyに従えば,小数視力に換算して,0.1~0.5が適応とされる2).視力が0.1未満であっても,最近の視力低下例であれば適応と考え,0.1未満が6カ月以上持続しているような慢性例では適応がないと考えられる.0.6以上の視力であれば,急激な視力低下を生じる可能性があるとの報告もあるが,急激な視力低下が予想される活動性の高いCNV例では,視力が0.6以上であっても適応と考える場合もある.●病変の位置・大きさ中心窩下にCNVが存在する症例のみがPDTの適応であり,傍中心窩・中心窩外に存在するCNVは現在のところ適応外である.しかし,傍中心窩CNVであっても,レーザー光凝固瘢が中心窩無血管野の中央までかかってしまう場合には,PDTの適応であるとする意見もある.照射サイズは病変の最大径(greatestlineardimension:GLD)に1,000?mを加算した値で決定される.視神経乳頭への照射を避けるため乳頭から200?m離す必要があり,視神経乳頭の辺縁から病変までの大きさが700?m以上離れている必要がある.GLDが小さいものほどPDTの効果が期待できる.JATStudyの基準に従えば,GLDが5,400?m以下の症例が適応であり,大きい病変では治療効果を期待しにくい.しかし,治療で用いるレンズの倍率次第で,さらに大きな病変を治療することは可能である.●病型欧米ではpredominantlyclassicCNVは良い適応とされているが,minimallyclassicCNVやoccultwithno(63)沢美喜大阪大学大学院医学系研究科眼科学視覚科学光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子3.光線力学的療法の適応・非適応光線力学的療法の適応は,中心窩下に脈絡膜新生血管を有する広義の加齢黄斑変性である.最近,視力低下が進行し,漿液性網膜?離を伴い,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)で旺盛な蛍光漏出を認め,視力0.1~0.5の症例は適応である.視力変化に乏しく,線維化が進行し,FAで蛍光漏出がなく,活動性のない症例は非適応である.提供図1フルオレセイン眼底造影所見a:PredominantlyclassicCNV.b:MinimallyclassicCNV.c:OccultwithnoclassicCNV.acb———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.12,2006(00)classicCNVも適応である(図1).わが国に多いPCVは,狭義AMDよりも良い治療成績が報告されている(図2)3).RAPに関しては,ビスダイン?の添付文書には慎重投与と明記されている.●活動性数カ月以内の視力低下・網膜下出血・漿液性網膜?離・フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)での旺盛な蛍光漏出がみられれば,活動性の高い病変と考え,PDTの適応と判断される.ClassicCNVは急激な視力低下を自覚することが多く,PCVでも漿液性網膜?離が生じると急激な視力低下を伴うことが多く,これらの状態はPDTの良い適応となる.一方,活動性の低い状態として,視力低下の進行がみられず,検眼鏡的に線維増殖がみられ,FAではCNVの組織染がほとんどで蛍光漏出が少ない場合には,非適応と考えられる.網膜断層撮影(OCT)で中心窩の?胞様黄斑変性がみられる場合には,適応外と判断できる(図3).出血が多い症例では,PDTでの十分な効果が得られないとして,臨床治験では適応外とされ,現在でもその適応は順守されている.しかし,中心窩の網膜下出血が薄い症例では,適応としてよい場合もある.大きな網膜色素上皮?離がみられる症例では,治療効果が期待できにくい場合もあり,慎重に適応を判断しなければならない.おわりに現段階では強度近視や網膜色素線条に合併した血管新生黄斑症,特発性脈絡膜新生血管は適応外である.強度近視に合併した加齢黄斑変性では,将来起こりうる周囲の萎縮拡大を考慮して,慎重に対応していく必要がある.文献1)ビスダイン?静注用15mg添付文書2)Japaneseage-relatedmaculardegenerationtrial:1-yearresultsofphotodynamictherapywithvertepor?ninJapa-nesepatientswithsubfovealchoroidalneovascularizationsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.???????????????136:1049-1061,20033)ChanWM,LamDS,LaiTYetal:Photodynamictherapywithvertepor?nforsymptomaticpolypoidalchoroidalvas-culopathy:one-yearresultsofaprospectivecaseseries.?????????????111:1576-1584,2004図2ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の症例a:橙赤色隆起病巣と漿液性網膜?離を認める.b:インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)ではポリープ状病巣(大矢印)と異常血管網(小矢印)がみられる.c:OCT所見では,ポリープ状病巣による隆起と漿液性網膜?離を認める.このようなPCVは良い適応である.abc図3OccultCNVの陳旧例a:FAでは軽度の蛍光漏出を認めるも,組織染が主体である.b:OCTでは?胞様黄斑変性をきたしており,このような慢性例では非適応と考えられる.ab