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ステロイド:Anecortave Acetate(RetaaneR)

2007年3月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSナルの阻害から血管新生抑制効果をもつが,眼圧上昇や白内障といった副作用をもつ.このようなステロイド薬特有の副作用をもたずに,血管新生抑制作用を有するステロイド“angiostaticsteroid”として開発されたのが,anecortaveacetate(Retaane?)である.その作用機序は十分に解明されていないが,多様な動物種の異なる新生血管モデルに対して広く血管新生抑制効果を示すため,多種多様な血管新生メカニズムにより生じる病的血管新生に対しての抑制効果が期待されている.6カ月ごとに後部Tenon?下に2回の薬剤投与を行い,1年間経過観察を行った米国での臨床試験の結果1)では,anecortaveacetate15mgを後部Tenon?下に投与した群では,プラセボ投与群と比較して,視力維持率が有意に高く,重度の視力悪化率が有意に低かったと報告されている.II化学的性質グルココルチコイド活性をまったくもたないように設計合成された血管新生阻害薬であり,分子式はC23H30O5,分子量は386.48である.物理的・化学的性質および組成を表1に,構造式を図1に示す.原薬は白色粉末で,クロロホルムにやや溶けやすく,水にほとんど溶けない.製剤は,眼科用無菌水性懸濁性注射剤であり,その性状は白色~やや微黄色がかった均一な懸濁液である.室温で冷凍を避けて保存するとき,少なくとも24カ月は安定であることが確認されている.はじめに加齢黄斑変性症(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は,従来欧米の白人に多い疾患であるとされていたが,近年わが国においても高齢化などにより患者数が急速に増えつつある.医学の進歩により,以前は経過観察するしかなかった症例においても,その治療法はいくつか選択できるようになってきた.観血的治療として脈絡膜新生血管抜去術や黄斑移動術などの手術療法,非観血的治療として,レーザー光凝固・経瞳孔的温熱療法(transpupillarythermotherapy:TTT)・光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)・放射線療法・抗血管新生薬物療法などがあげられる.どの治療も,一部の患者にとっては視力維持に有効であることが示されているが,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の存在する位置(subfoveal/juxtafoveal/extrafo-veal)・タイプ(classic/occult)・病変の大きさなどにより,治療の適応がある程度決まってくるものが多い.抗血管新生薬による薬物治療は有効なCNVの病型が多様であり,外科的治療法に比べ反復または継続投与を行いやすく,患者の身体的負担が少ないなどの利点を有し,近年めざましく進展している.本稿では,血管新生阻害薬の一つであるanecortaveacetateについて述べる.I概要ステロイドは,サイトカインの産生抑制や細胞内シグ(21)???*SeijoYamaoka:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕山岡青女:〒181-8611東京都三鷹市新川6-20-2杏林大学医学部眼科学教室特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):287~290,2007ステロイド:AnecortaveAcetate(Retaane?)???????:??????????????????(????????)山岡青女*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007III薬理作用異なる原因により誘発されたさまざまな動物種や組織での新生血管形成阻害作用が認められた.最初に鶏卵漿尿膜試験2)において検討され有意な血管新生阻害を示した.塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)で脈絡膜血管新生を誘発させたウサギでは,本剤0.5~10mgのTenon?下(後部強膜上)投与により50~60%の新生血管形成阻害が示された.また,酸素誘発性網膜症のモデル(新生児ラットおよびネコ)における新生血管形成や,眼内腫瘍の増殖および血管形成を有意に阻害した.マウス眼内腫瘍モデルにおいては,点眼投与のみで眼内の腫瘍増大抑制効果を示した.本剤が新生血管を抑制するメカニズムは,????????試験の結果から,血管形成における蛋白分解カスケードの抑制や血管内皮細胞増殖を阻害することにより血管新生を阻害している可能性や,plasminogenactivatorinhibi-tor1の抑制効果に関連する可能性が動物実験上示唆されているが,まだ十分に確認されたとはいえない.また,サルを用いた薬物動態試験の結果からは,本剤の懸濁液をTenon?下の後部強膜上に投与することにより,血管新生阻害作用を発揮するのに十分な標的組織(網膜,脈絡膜)中の薬物濃度が投与6カ月後まで維持されることが推定された.さらに,本剤はステロイド骨格を有するものの,糖質コルチコイド(グルココルチコイド)に特有な抗炎症作用は示さず,グルココルチコイドによりひき起こされる眼局所による副作用である眼圧上昇作用や後?下白内障などを呈さないことが示された.IV投与方法仰臥位で被験眼を消毒後,点眼麻酔下にてlimbusより8mm上耳側のところから,弯曲カニューレを用いてTenon?下投与を施行する(図2a~d).カニューレの先端が挿入できる程度のわずかな切開を結膜およびTenon?につくり,眼球壁に沿ってゆっくりカニューレを挿入し,薬剤を確実に後部強膜上(Tenon?下)に投与する.薬剤投与後は,カニューレ挿入部位より薬剤が逆流しないように,cottonswabにて挿入部位を少し圧迫しながらカニューレをゆっくり抜去する.表2に示したように,当院で臨床試験を施行した血管新生阻害薬は,anecortaveacetateを含めて全部で3種類あるが,他の2剤が硝子体内投与に対して本剤のみがTenon?下投与である理由は,投与後の安全性と,Tenon?と強膜の間にanecortaveacetateのデポ(懸濁性の薬剤貯留)が形成されることがターゲット組織(強膜を経由して脈絡膜)への薬物移行にとって重要であり,効果持続につながることを重視したからである.しかし,実際に本剤の硝子体内投与とTenon?下(後部(22)表1物理的・化学的性質および組成一般名酢酸アネコルタブ(anecortaveacetate)化学式17,21-dihydroxypregna-4,9(11)-diene-3,20-dione21acetate分子式C23H30O5分子量386.48性状原薬白色粉末製剤白色~やや微黄色がかった均一な懸濁液貯法室温保存(冷凍を避ける)安定性製剤は少なくとも24カ月は安定表2代表的な血管新生阻害薬の投与方法および間隔薬剤名投与方法投与間隔Anecortaveacetate(Retaane?)血管新生阻害コルチコステロイド後部Tenon?下投与6カ月Pegaptanib(Macugen?)抗VEGFアプタマー硝子体内注射6週間Ranibizumab(Lucentis?)抗VEGFモノクロナール抗体硝子体内注射4週間図1Anecortaveacetateの構造式OCH3CH3CH3HOHOOOH———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???強膜上)投与を比較した非臨床および臨床データはない.V効果と副作用視力20/40~20/320の滲出型AMD症例128例に対して,6カ月ごとに後部Tenon?下に2回の本剤投与を行い,1年間経過観察を行った米国での臨床試験の結果1)では,15mg投与群ではプラセボまたは3mg投与群と比較して,視力維持率が有意に高く,平均視力悪化および6段階以上の視力悪化の出現頻度が有意に少なかったと報告された.一方,30mg投与群では以上の効果は認められなかった.副作用に関しては,トリアムシノロン(triamcinoloneacetonide)とは異なり,眼圧上昇および白内障進展を含めて,対象群との有意差を認めなかった.Tenon?下投与に関連して眼瞼下垂または眼痛を認めたが,軽度かつ一時的なものであった.以上より,anecortaveacetateは,少ない反復投与回数にて,滲出型AMD症例の進展を抑制する効果を示し,高い安全性が示唆された.臨床試験上15mg投与群に認められた有効性が30mg投与群では認められていないが,その理由については今後の検討を要する.PDTとの比較試験3)では,anecortaveacetate15mgのTenon?下単独投与は1年間の経過観察においてはPDTと同等の視力維持効果があることが示された.PDTと効果が同じであるならば,術後の日光遮断やわが国で初回治療時に義務づけられている入院の必要性もないanecortaveacetateの局所投与のほうが簡易であり,反復投与の期間や回数の面からみても,高齢の患者にとっては身体的にも経済的にも負担が少ないと思われる.最近では,特発性傍中心窩網膜血管拡張症(idiopathic(23)図2後部強膜上(Tenon?下)投与方法(a~d)(AlconResearch,Ltd.の許可を得て転載)abcd———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007perifovealtelangiectasia)や網膜血管腫様増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)に対し,本剤のTenon?下投与を行った報告もされている.特発性傍中心窩網膜血管拡張症においては,少数例の報告4)ではあるが,網膜および網膜下の透過性は減少し,CNVを伴った症例も含め,2年間の観察期間においては視力が維持されている.RAPに対しては,3種類の濃度(30mg,15mg,3mg)のanecortaveacetateをTenon?下投与し,1年間経過観察を行った結果,滲出性網膜?離や網膜色素上皮?離はすべての症例において改善したが,CNVの進展はすべての症例において進行し,視力も悪化したと報告された.本剤の単独投与では効果がないことを示している5).おわりにAMDなど対象患者の大部分が高齢者であることを考えるとanecortaveacetateは,投与経路がTenon?下であること,反復投与間隔が半年であること,眼圧上昇や白内障などの合併症を起こさないことなどは大きな利点であると思われる.しかし,さまざまな臨床報告からは,本剤の単独投与のみでは他の血管新生抑制薬に比べるとその効果は弱い印象をうける.網脈絡膜毛細血管の透過性亢進状態の改善には有用であるので,PDTとの併用や逆にCNVを伴わず,単に毛細血管の透過性に異常をきたしている他の疾患のほうが有用なのかもしれない.個人的な見解であるが,どんな疾患に対しても治療を受ける患者背景はさまざまであり,治療の選択肢は沢山あるにこしたことはない.近年,短期間の間に次々と新しい治療法や治療薬が開発され,最近の学会でのトピックは,ほとんど抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)抗体であるranibizumab(Lucentis?)やbevacizumab(Avas-tin?)であるが,何年か後には,また違う治療法や治療薬が話題を集めていることと思う.単独投与では効果が弱いと思われる薬剤でも,他の治療法との併用や,本来治療の対象としていなかった疾患に対して有効である可能性が示唆された場合,欧米のように,もう少し臨床応用しやすくなることが望まれる.文献1)TheAnecortaveAcetateClinicalStudyGroup:Anecor-taveacetateasmonotherapyfortreatmentofsubfovealneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration:twelve-monthclinicaloutcomes.?????????????110:2372-2383,20032)McNattLG,WeimerL,YanniJetal:AngiostaticactivityofsteroidsinthechickembryoCAMandrabbitcorneamodelsofneovascularization.?????????????????????15:413-423,19993)SlakterJS,BochowTW,D?AmicoDJetal:Anecortaveacetate(15milligrams)versusphotodynamictherapyfortreatmentofsubfovealneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration.?????????????113:3-13,20064)EandiCM,OberMD,FreundKBetal:Anecortaveace-tateforthetreatmentofidiopathicperifovealtelangiecta-sia:apilotstudy.??????26:780-785,20065)KlaisCM,EandiCM,OberMDetal:Anecortaveacetatetreatmentforretinalangiomatousproliferation:apilotstudy.??????26:773-779,2006(24)

抗 VEGF抗体:Bevacizumab(AvastinR)

2007年3月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS癌および直腸癌に対する医薬品としてFDA(食品医薬品局)により認可された.サリドマイドも血管新生阻害作用で癌治療に使用されているが,癌治療に正式に認可されているわけではないので,癌治療薬としてFDAの承認を得た初めての血管新生阻害薬である.したがってbevacizumabは眼科疾患に対して開発されたものではない.その点,加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管に対して開発されたranibizumabとは異なる.当薬剤は,前述のように眼科的疾患の治療を目的に開発された薬剤ではないが,加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管をはじめ,その発生,進展にVEGFが主要な役割を担っていると考えられる眼科的疾患に対する効はじめにBevacizumab(Avastin?,Genentech,Inc)とは,vascularendothelialgrowthfactor(VEGF:血管内皮細胞増殖因子)に対するヒト型のモノクローナル抗体製剤(anti-VEGF)である(図1).ここでいうヒト型のモノクローナル抗体とは,IgG(免疫グロブリンG)モノクローナル抗体の一部をヒト配列に変化させ,生体適合性を向上させた,いわゆるヒト化抗体というものである(図2).抗体の全長を用いており,分子量は約150kDである.VEGFのすべてのアイソフォームをターゲットとし,それらの効果を抑制する.同じく抗VEGF抗体製剤(同様にすべてのアイソフォームをターゲットとする)であるranibizumab(Lucentis?)(別項)は,anti-bodybindingsite(Fab)を中心とした分子量48kD程度の比較的小さなものである(図2).Bevacizumabは米国で開発され,2004年2月に結腸(15)???*HirokazuSakaguchi:大阪大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕坂口裕和:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):281~286,2007抗VEGF抗体:Bevacizumab(Avastin?)????-?????????????:???????????(????????)坂口裕和*図1抗VEGF抗体bevacizumab(Avastin?)図2抗VEGF抗体bevacizumab(Avastin?)とranibizumab(Lucentis?)の比較(RyanSJ,HindonDR,SchatAPetal:Retna,4thed,p1230-Fig.65-15,ElsevierMosby,2006より一部改変)RhuFab2Fab(50,000daltonsea.)lgG(150,000daltons)Ft(50,000daltons)Ranibizumab(Lucentis?)Bevacizumab(Avastin?)PapainCleavage———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007果が期待され,すでに実際に使用されており,近年,それらの治療効果が続々報告され始めている.本稿では,特に加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管への使用について述べたい.IBevacizumabの眼科的適応Bevacizumabは,すでに米国をはじめ各国において加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管を始め,多くの疾患に対する治療に用いられている.しかしながら,米国においてFDAの認可が得られているのは結腸癌および直腸癌に対する全身投与のみである.また米国では認可されているが,日本では,未認可の薬剤である.したがって,bevacizumabの眼科疾患に対する使用はすべて適応外使用であり,使用されている各国における方法も,治験などを施行して決定されたものではなく,最適な投与量,投与間隔,適応疾患などの検討はなされていない.適応外使用で現在当院にて治療対象となっている眼科疾患は,大きく分けて眼内血管新生と網膜浮腫の2つである1~8).眼内血管新生には,加齢黄斑変性,近視性血管新生黄斑症などの脈絡膜新生血管,あるいは,増殖糖尿病網膜症などに併発する網膜新生血管,虹彩新生血管,血管新生緑内障などがある.網膜浮腫としては網膜中心静脈閉塞症,糖尿病網膜症などの疾患に併発するものがある.これらの対象疾患に対してbevacizumabを使用しているが,適応外使用ということで,各施設の倫理委員会またはそれに類する機関において承認を得ること,本人(または代諾者)に対して,当薬剤が適応外使用であること,他の代替治療法の有無,使用方法,合併症などについての十分な説明を行ったうえで,承諾を得ることが前提となる.当院においては,近視性血管新生黄斑症,特発性血管新生黄斑症など,代替治療に認可されている方法がない対象に対しては,インフォームド・コンセントを得たうえで使用しているが,加齢黄斑変性に併発する中心窩脈絡膜新生血管で病変の大きさが5,400?mを超えないものに対しては,主としてすでに日本において認可を受けている光線力学的療法を施行している.したがって当院において加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管で現在bevacizumabを投与しているのは,病変が乳頭に近い,病変が5,400?mを超えるなど,なんらかの理由があり,光線力学的療法が施行できない症例がほとんどである.今後bevacizumab硝子体内投与の安全性,有効性がより確実になった場合,加齢黄斑変性に併発するその大きさが5,400?mを超えないような中心窩脈絡膜新生血管に対しても施行する可能性がある.IIBevacizumabの眼科疾患に対する使用方法Bevacizumabが眼科疾患に対して最初に用いられた投与方法は,全身投与であった1).加齢黄斑変性に併発した脈絡膜新生血管を有する患者に全身投与され効果があったと報告された.当時,bevacizumabは硝子体内投与をしても,網膜下まで浸透しないと考えられていたが,その後,実際には硝子体内投与でも効果が認められたため,より全身的に影響が少なく,より安全と考えられる硝子体内投与が主として施行されるようになった2~4).当院においても全身投与ではなく,硝子体内投与が施行され,最初の報告にあった1mg/40??を,角膜輪部より3.5~4.0mmの位置から29ゲージあるいは30ゲージ針を用いて注入している.IIIBevacizumab硝子体内投与の効果加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管に対してbevacizumab硝子体内投与の奏効したとする最初の発表が2005年にあり,その後同様の報告が相ついでいる.2006年Averyら3)は加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管に対して当薬剤の硝子体内投与を施行した症例について報告した.4週経過を追えた81眼中30眼(37.0%)に,また8週経過を追えた51眼中25眼(49.0%)に,網膜浮腫,網膜下液,網膜色素上皮?離の完全な消退を認め,平均視力も施行前20/200から8週後20/80に改善したと報告している.彼らの症例の多くは光線力学的療法や,pegaptanibsodium(Macugen?)による治療効果がなかった症例であった.Spaideら4)も加齢黄斑変性に対するbevacizumab硝子体内投与の治療効果について報告した.施行後3カ月で平均網膜厚が340?mから213?mに減少し,141症例のうち,54症例(38.3(16)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???%)で2段階以上の視力改善を認めたとしている.筆者らの施設では前述のように光線力学的療法の適応のある症例には光線力学的療法を,光線力学的療法の適応のない症例,またはなんらかの理由で光線力学的療法を施行しなかった症例のうち,インフォームド・コンセントが得られた症例に対しては,bevacizumab硝子体内投与を施行している.大血管が病変上にあり,レーザー照射できない症例(図3),病変が大きく光線力学的療法が施行できない症例(図4,5),などに対し硝子体内投与を施行し,症例によっては形態学的および機能的に改善を認めている.IVBevacizumabの合併症は?Bevacizumabの全身投与による一般的な副作用として,倦怠感,腹痛,頭痛,血圧上昇,蛋白尿,出血,下痢,心不全,胃腸の穿孔などが報告されている.全身投与により脈絡膜新生血管の退縮を認めたとの報告があるが,全身投与には上記のような副作用の問題がある.硝子体内投与は眼球内局所投与であり,また1回の投与量が全身投与量の約400分の1と極少量であるため,全身投与により生じうる合併症が硝子体内投与で発生する可能性は低いと考えられる.(17)図3大血管が病変上にあり,レーザー照射できない症例A:網膜下出血を伴う脈絡膜新生血管を認め血管膜上を大血管が通過している.B:Aと同症例のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)写真.C:Bevacizumab硝子体内投与後2カ月の眼底写真.D:Cと同日のFA結果.脈絡膜新生血管の縮小を認める.ACBD———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007しかしながら最近の報告では,眼局所はもとより全身に対しても少なからず影響があるとする報告がある.Fungら9)の7,113例における合併症の報告によると,薬剤によると考えられる眼合併症にはぶどう膜炎,白内障進行,急激な視力低下,網膜中心動脈閉塞症,網膜下出血,網膜色素上皮?離など,全身合併症には血圧上昇,深部静脈塞栓,脳梗塞などがあり,死亡例も2例ある.手技そのものによると思われる合併症は角膜障害,水晶体障害,眼内炎,網膜?離などである.加齢黄斑変性は高齢者に発症することから,前述の全身合併症とbevacizumab硝子体内投与との直接の因果関係を確定するのはむずかしいが,可能性はあるため,それら重篤な合併症についての説明は不可欠であると考えられる.V加齢黄斑変性の治療としてのbevacizumabの今後Bevacizumab硝子体内投与の効果について今後検討されるべきことは抗VEGF抗体ranibizumab(Lucentis?)(別項),光線力学的療法との効果の比較,単独投与と他の治療方法との併用による効果の比較など多岐にわたる.他の治療方法で再発する症例に対しての有効性も検討されるべきである(図6).また最適投与間隔,投与数などについても検討されるべきである.Bevacizumabが抗体そのもの(分子量約150kD)であるのに対し,ranibizumabはantibodybindingsite(Fab)部分を中心とした分子量48kD程度の比較的小さなものである.したがって網膜下への浸透性という点から考えるとranibizumabのほうが優れており,網膜下の新生血管に対しては効果的に作用するかもしれな(18)図4病変が大きく光線力学的療法が施行できない症例A:広範囲の病巣を有する加齢黄斑変性の眼底写真.網膜浮腫を広範囲に認める.B:Aと同症例のOCT所見.網膜浮腫を認める.C:初回投与から約1年後の眼底写真.再発に対して2度bevacizumab硝子体内投与を施行している.D:Bevacizumab硝子体内投与後1カ月のOCT所見.網膜浮腫の減退を認める.ACBD———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???(19)い.光線力学的療法とranibizumab硝子体内投与を比較した臨床研究では,ranibizumab硝子体内投与による結果が有意に良好であった10).今後,加齢黄斑変性に併発する脈絡膜新生血管の治療のうち,抗VEGF抗体の硝子体内投与が注目されることは間違いないが,そのなかでbevacizumabを使用し図5光線力学的療法後,病変が大きくなった症例A:光線力学的療法を施行したが効果がなく,病巣が広範囲に至った症例の眼底写真.B:Aと同症例のOCT像.網膜浮腫を認める.一部?胞様浮腫を形成している.C:Bevacizumab硝子体内投与後1.5カ月の眼底写真.浮腫の減少を認める.D:Cと同日のOCT所見.網膜浮腫が減少している.ACBD図6光線力学的療法後,再発を認めた症例A:光線力学的療法前の眼底写真.網膜下出血を伴った脈絡膜新生血管膜を認める.B:光線力学的療法後,脈絡膜新生血管は線維化していたが,初回光線力学的療法2年半後鼻側に新たな新生血管膜を認めた.C:Bevacizumab硝子体内投与後4カ月の眼底写真.新しい新生血管膜は消退している.ABC———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007(20)続けるべきか否かは今後の結果をみて検討していきたい.また,他の疾患に対する使用についても同様である.脈絡膜新生血管,網膜,虹彩新生血管に対してはある程度の効果があると思われるが,各種網膜浮腫に対しては現在のところ強い持続的な効果はないような印象がある.いまだ私見の域を超えないが,今後さらに症例検討し,加齢黄斑変性に対するのと同様に,使用を続けるべきか否か検討を重ねたい.文献1)MichelsS,RosenfeldPJ,Pulia?toCAetal:Systemicbev-acizumab(Avastin)therapyforneovascularage-relatedmaculardegenerationtwelve-weekresultsofanuncon-trolledopen-labelclinicalstudy.?????????????112:1035-1047,20052)RosenfeldPJ,MoshfeghiAA,Pulia?toCA:Opticalcoher-encetomography?ndingsafteranintravitrealinjectionofbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.??????????????????????????????36:331-335,20053)AveryRL,PieramiciDJ,RabenaMDetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)forneovascularage-relatedmacu-lardegeneration.?????????????113:363-372,20064)SpaideRF,LaudK,FineHFetal:Intravitrealbevaci-zumabtreatmentofchoroidalneovascularizationsecond-arytoage-relatedmaculardegeneration.??????26:383-390,20065)SakaguchiH,IkunoY,GomiFetal:Intravitrealinjectionofbevacizumabforchoroidalneovascularizationcausedbypathologicalmyopia.???????????????91:161-165,20076)OshimaY,SakaguchiH,GomiF:Regressionofirisneo-vascularizationafterintravitrealinjectionofbevacizumabinpatientswithproliferativediabeticretinopathy.???????????????142:155-158,20067)GomiF,NishidaK,OshimaYetal:Intravitrealbevaci-zumabforidiopathicchoroidalneovascularizationafterpreviousinjectionwithposteriorsubtenontriamcinolone.???????????????143:507-509,20078)RosenfeldPJ,FungAE,Pulia?toCA:Opticalcoherencetomography?ndingsafteranintravitrealinjectionofbev-acizumab(Avastin)formacularedemafromcentralretinalveinocclusion.??????????????????????????????36:336-339,20059)FungAE,RosenfeldPJ,ReichelE:TheinternationalBev-acizumabSafetySurvey:usingtheinternettoassessdrugsafetyworldwide.???????????????90:1344-1349,200610)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:ANCHORStudyGroup.Ranibizumabversusvertepor?nforneovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1432-1444,2006

抗 VEGF抗体:Ranibizumab(LucentisR)

2007年3月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSムのVEGFを阻害する.さらに,アミノ酸配列を少し変えているため,VEGFへの親和性はbevacizumabよりも高い.現在ranibizumabの適応は中心窩下にCNVを伴った滲出型AMDということになる(図2).IIRanibizumabの使い方Ranibizumabは硝子体内注入することにより用いられる.現在,硝子体内注射は,海外では外来で行われることが多いが,日本では入院で行われることが比較的多い.麻酔は点眼麻酔で十分である.消毒の後,有水晶体眼では角膜輪部から4mm,無水晶体眼,偽水晶体眼では3.5mm後方から30ゲージ針で注入する(図3).感染予防のため投与前後には抗生物質の点眼をするほうが安全である.投与量は50??であるので,前房穿刺をすIRanibizumab(Lucentis?)とはこれまでの報告から滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)における脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の発症には血管内皮細胞増殖因子(vascularendothelialgrowthfac-tor:VEGF)が強く関与していると考えられている.そこで,このVEGFを阻害することで,CNVの治療を行おうというのは自然な試みである.VEGFを標的に眼科で最初に臨床応用された薬剤がpegaptanib(Macugen?)であり,2004年10月にアメリカFDA(FoodandDrugAdministration)の認可を受け,日本でも治験が行われている.Pegaptanibはアプタマーとよばれるオリゴヌクレオチド製剤であり,VEGFアイソフォームに対する特異性がある.VEGF165には結合するが,VEGF121には結合しないため,生体に対して安全であろうと推測されている1).一方,bevacizumab(Avastin?)はマウス由来の抗ヒトVEGF中和抗体として転移性大腸癌・結腸癌に対してFDAの承認を受け,アメリカでは臨床応用されている.しかし,全長の抗VEGF中和抗体bevacizumabは硝子体内注入した場合の網膜内移行性が悪いと考えられている.そこで,抗VEGF中和抗体のFabフラグメントから作られたより小さな分子量の誘導体としてranibizumabが開発された(図1)2,3).VEGFアイソフォームに対する特異性はなく,すべてのアイソフォー(9)???*AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科視覚病態学〔別刷請求先〕辻川明孝:〒606-8507京都市左京区聖護院河原54京都大学大学院医学研究科視覚病態学特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):275~280,2007抗VEGF抗体:Ranibizumab(Lucentis?)????-?????????????:???????????(?????????)辻川明孝*図1Ranibizumab(Lucentis?)の構造(文献3から一部改変),OO,LightchainHeavychainHumanizedFabフラグメントHumanizedFabフラグメント全長Humanized抗体(約149kD)Humanized抗体フラグメント(48kD)Humanized抗体の合成選択的結合能の向上FcFcBevacizumab(Avastin?)Ranibizumab(Lucentis?)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,20071.MARINA(MinimallyClassic/OccultTrialoftheAnti-VEGFAntibodyRanibizumabintheTreatmentofNeovascularAge-relatedMacularDegeneration)Study2006年10月,MARINAStudyの2年の結果が公表された(表1)4).この多施設無作為プラセボ対照二重盲検試験では,中心窩下にminimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVを伴ったAMDの患者を対象として行われた.これは,その時点で最も有効と考えられていた光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)の効果がpredominantlyclassicCNVに比べて,minimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVでは効果が低いためである.対象のAMD症例716眼に対して,238眼に0mg(sham),238眼に0.3mg,240眼に0.5mgのranibizumabが月1回24カ月間投与された.Sham群,0.3mg投与群,0.5mg投与群とを比較すると,24カ月後の視力変化はそれぞれ14.9字低下,5.4字上昇,6.6字上昇と薬剤投与群で有意(p<0.001)に良好であった(図4).また,視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ52.9%,92.0%と90.0%であり,薬剤投与により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15る必要はまずない.海外での治験では月1回の反復投与が行われたが,実際にどの程度の頻度,投与期間が必要かは不明である.III海外の臨床試験の結果中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMDに対する日本人を対象としたranibizumabの第I/II相臨床試験は現在行われている最中であり,日本人に対する安全性,有効性のデータは存在しない.そのため,データは海外で行われた臨床試験の結果から推測せざるをえない.これまでに,ranibizumabの中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMDに対する3つの臨床試験の結果が報告されている.(10)図2中心窩下に脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性Ranibizumab(Lucentis?)の適応と考えられる.図3有水晶体眼では角膜輪部から4mm,無水晶体眼,偽水晶体眼では3.5mm後方から30ゲージ針で注入———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???字以上)はsham群で3.8%,0.3mg群で26.1%,0.5mg群で33.3%であり.薬剤投与により有意(p<0.001)に視力改善が得られる結果となった.2.FOCUS(RhuFabV2OculartreatmentCombin-ingtheUseofVisudynetoEvaluateSafety)Study2006年10月,ranibizumabとPDT併用試験のデータとしてFOCUSStudyの1年後の結果が発表された(表2)5).この第I/II相多施設無作為単盲検試験ではGLD(病変最大直径)5,400?m以下の中心窩下にpre-dominantlyclassicCNVを伴ったAMD症例を対象として行われた.Day0にPDTを施行し,1週間後に,PDT単独群(PDT+sham)にはshaminjectionを,ranibizumab併用群にはranibizumab0.5mgの投与を行った.PDTは通常のPDTと同様に3カ月ごとにフルオレセイン蛍光眼底造影を施行し,蛍光漏出がみられれば再治療を行った.また,shamもしくはranibizum-ab0.5mgの硝子体内注入は月1回12カ月行われた.治療開始後1年の経過では,PDT単独群(56眼)と(11)表1MARINAStudyの結果MinimallyClassic/OccultTrialoftheAnti-VEGFAntibodyRanibizumabintheTreatmentofNeovascularAge-RelatedMacularDegenerationStudyDesign:第III相多施設無作為プラセボ対照二重盲検試験対象:minimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVを中心窩下に伴った加齢黄斑変性ShamRanibizumab(0.3mg)Ranibizumab(0.5mg)割付238眼238眼240眼24カ月後に15字未満の視力低下52.9%92.0%*90.0%*24カ月後に15字以上の視力上昇3.8%26.1%*33.3%*24カ月後に20/40以上の視力5.9%34.5%*42.1%*24カ月後に20/200以下の視力47.9%14.7%*15.0%*24カ月後の平均視力変化-14.9文字+5.4文字*+6.6文字**p<0.001(sham群と比較して)(文献4から一部改変)表2FOCUSStudyの結果RhuFabV2OcularTreatmentCombiningtheUseofVisudynetoEvaluateSafetyStudyDesign:第I/II相多施設無作為単盲検試験対象:GLD5,400?m以下のpredominantlyclassicCNVを中心窩下に伴った加齢黄斑変性PDT単独Ranibizumab(0.5mg)+PDT割付56眼106眼12カ月後に15字未満の視力低下67.9%90.5%a12カ月後に15字以上の視力上昇5.4%23.8%b12カ月後に30字以上の視力低下8.9%1.0%d12カ月後に20/40以上の視力7.1%20.0%a12カ月後に20/200以下の視力46.4%29.5%c12カ月後の平均視力変化-8.2文字+4.9文字a再治療の割合91.1%27.6%aap<0.001,bp=0.003,cp=0.006,dp=0.01(PDT単独群と比較して)(文献5から一部改変)図4MARINAStudyでの視力変化の結果(文献4から一部改変)期間(月):Rabinizumab(0.5mg):Rabinizumab(0.3mg):Sham視力変化(文字)036912151821241050-5-10-15期間(月)Rabinizumab+PDT視力変化(文字)7d1245367891210111050-5-10PDT-8.2+4.9図5FOCUSStudyでの視力変化の結果(文献5から一部改変)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007ranibizumab併用群(105眼)とを比較すると,12カ月後の平均視力変化はそれぞれ8.2字低下,4.9字上昇と,ranibizumab併用群で有意(p<0.001)に良好であった(図5).視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ67.9%,92.5%であり,ranibizumab併用群により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15字以上)はPDT単独群で5.4%,ranibi-zumab併用群で23.8%であり,ranibizumab併用により有意(p=0.003)に視力改善が得られた.また,再治療を要した割合は,PDT単独群で91.1%,ranibizumab併用群で27.6%であり,ranibizumab併用により有意(p<0.001)に再治療を必要としなくなった.3.ANCHOR(Anti-VEGFAntibodyfortheTreat-mentofPredominantlyClassicChoroidalNeo-vascularizationforAge-relatedMacularDegen-eration)Study2006年11月,PDTとranibizumabの効果の比較試験のデータとしてANCHORStudyの1年後の結果が発表された(表3)6).この第III相多施設無作為単盲検試験ではGLD5,400?m以下の中心窩下CNVを伴ったAMD症例を対象として行われた.Shaminjectionまたはranibizumab(0.3mg)またはranibizumab(0.5mg)の硝子体内注入を1カ月おきに1年間施行した.また,shaminjection群にはPDTを施行し,ranibizumab投与群にはshamPDTを施行した.PDT(shamPDT)は通常のPDTと同様に3カ月ごとにフルオレセイン蛍光眼底造影を施行し,再治療の必要が認められれば再治療を行った.治療開始後1年の経過では,PDT群(143眼)とranibizumab0.3mg群(140眼)とranibizumab0.5mg群(140眼)を比較すると,12カ月後の平均視力変化はそれぞれ9.5字の低下,8.5字上昇,11.3字上昇と,ranibizumab併用群で有意(p<0.001)に良好であった(図6).視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ64.3%,94.3%,96.4%であり,ranibi-zumab併用群により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15字以上)はPDT群で5.6%,ranibizumab0.3mg群で35.7%,ranibizumab0.5mg群で40.3%であり,ranibizumab併用により有意(p<0.001)に視力改善が得られた.また,治療回数は,PDT群で2.8回,ranibizumab群でそれぞれ1.7回であった.中心窩下にCNVを伴ったAMDに対する治療としては光凝固が長い間エビデンスに基づく唯一の方法であった.しかし,治療直後から高度で恒久的な視力低下が伴(12)期間(月):Rabinizumab(0.5mg):Rabinizumab(0.3mg):PDT視力変化(文字)0453336789101112151050-5-10-15図6ANCHORStudyでの視力変化の結果(文献6から一部改変)表3ANCHORStudyの結果Anti-VEGFAntibodyfortheTreatmentofPredominantlyClassicChoroidalNeovascularizationforAge-relatedMacularDegenerationStudyDesign:第III相多施設無作為二重盲検試験対象:GLD5,400?m以下のCNVを伴ったAMDPDTRanibizumab(0.3mg)Ranibizumab(0.5mg)割付143眼140眼140眼12カ月後に15字未満の視力低下64.3%94.3%*96.4%*12カ月後に15字以上の視力上昇5.6%35.7%*40.3%*12カ月後に20/40以上の視力2.8%31.4%*38.6%*12カ月後に20/200以下の視力60.1%22.1%*16.4%*12カ月後に30字以上の視力低下13.3%0%*0%*24カ月後の平均視力変化-9.5文字+8.5文字*+11.3文字*治療回数2.8回1.7回1.7回*p<0.001(PDT群と比較して)(文献6から一部改変)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???うことが多いため,feedervessel凝固などの応用がなされてきた.その後,PDTが鳴り物入りで導入され,広く施行されるようになったが,それでも,術後の平均視力は低下しており,高度な視力低下のリスクを減らすという目的の意味合いが強かった.その後,薬物治療としてpegaptanibが導入された.しかし,studyの結果でも平均視力は低下していた.そういう意味で,MARINAStudy4)で示されたようにranibizumabは治療により平均視力が上昇する,視力改善の可能性がある治療法として注目を集めている.IV安全性Ranibizumabの硝子体内投与に伴う眼局所のadverseeventとしては,眼内炎症,水晶体損傷,網膜?離などがあげられる.先に紹介したMARINAStudy4)ではranibizumab投与群477眼中,眼内炎を疑わせる症例が5眼(1.0%),ぶどう膜炎6眼(1.3%),網膜裂孔2眼(0.4%),硝子体出血2眼(0.4%),水晶体損傷1眼(0.2%)が報告されている.また,眼内炎症は軽度の症例を含めると32眼(6.7%)に報告されている.しかし,Studyではほぼ全例外来で注射されていると考えられる.しかし,入院で施行する場合の安全性については不明であるが,より安全であることが予測される.Study期間中の全身的なadverseeventとしては種々報告されているが,ほとんどはshaminjection群と大きな差はないようである.脳梗塞はshaminjection群で0.8%であるのに対して,ranibizumab(0.3mg)群,ranibizumab(0.5mg)群でそれぞれ,1.3%,2.5%であった.硝子体内に投与されたranibizumabは少量ではあるが血中に入る.しかし,全身的な合併症を起こすかどうかは不明である.V日本人に対しては?わが国での治療効果は現在治験中であり,不明である.わが国では広義AMD中のポリープ状脈絡膜血管症の割合が高いことが知られている.ポリープ状脈絡膜血管症は狭義AMDよりも視力予後が良く,治療に対する反応性も異なる可能性がある.PDTの欧米のデータでは治療を行っても平均視力は低下するが,日本での治験であるJAT(JapaneseAge-relatedMacularDegenera-tionTrial)Studyでは視力維持効果があることが示されている.また,わが国での認可後の各施設からの報告でもPDTは明らかに欧米人に対するよりも良好な結果が報告されている.では,ranibizumabの場合はどうであろう?結論としては不明であり,治験の結果を待たざるをえない.PDTの場合と同様に効果が良好な可能性はある.しかし,全長の抗体であるbevacizumabのポリープ状脈絡膜血管症への治療効果は低いという報告もある.また,bevacizumabとranibizumabの反応性が同じともかぎらない.いずれにせよ,海外のデータが日本人にそのまま当てはまらない可能性は十分にありうる.おわりに昨年のAAO(AmericanAcademyofOphthalmology)はbevacizumab一色であった.もちろん,ranibizumabも有効性が示され,脚光を浴びていた.何が違うかというと,その価格である3).アメリカではLucentis?は1回当たり$1,950ある.一方,Avastin?は1バイアル100mgで$550である.1バイアルから何本とるかによるが$17から$50程度と試算されている.O?label使用なので,リスクはあるが,需要があるのも確かである.あるポスターではLucentis?が$4,000だったらAvastin?を使うが,$100だったらLucentis?を使うと書かれていた.もちろん,日本は事情が違う.国民皆保険で,誰もが安全で有効な治療を受けることができる.安易なo?label使用には問題が大きいことは間違いない.文献1)石田晋,山城健児:血管新生治療薬(VEGF阻害薬─PegaptanibとRanibizumab─).眼科48:187-192,20062)ChenY,WiesmannC,FuhGetal:Selectionandanalysisofanoptimizedanti-VEGFantibody:crystalstructureofana?nity-maturedFabincomplexwithantigen.??????????293:865-881,19993)SteinbrookR:Thepriceofsight─ranibizumab,bevaci-zumab,andthetreatmentofmaculardegeneration.????????????355:1409-1412,20064)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabfor(13)———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007neovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1419-1431,20065)HeierJS,BoyerDS,CiullaTAetal:Ranibizumabcom-binedwithvertepor?nphotodynamictherapyinneovas-cularage-relatedmaculardegeneration:year1resultsof(14)theFOCUSStudy.???????????????124:1532-1542,20066)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:Ranibizumabversusvertepor?nforneovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1432-1444,2006

VEGF アプタマー:Pegaptanib Sodium(MacugenR)

2007年3月31日 土曜日

———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSIアプタマーとは?アプタマー(aptamer)は核酸分子が連なって一本鎖を形成し,標的蛋白質と特異的に結合する能力をもった核酸分子で,蛋白質の機能を阻害,または促進する働きをもつ.アプタマーには増殖因子,酵素,受容体,膜蛋白質,ウイルス,金属イオンなどと結合するものもあることがわかっている.このようにアプタマーは結合する対象に制約がないだけではなく,抗体では実現できなかった分子量の小さな分子やわずかに配列の異なる蛋白質や,立体構造のみが異なる分子も区別できることが明らかになっている.アプタマーを得るにはSELEX法(systematicevolu-tionofligandsbyexponentialenrichment:試験管内人工進化法)2)という方法を通常用いる.まずランダム配列をもつRNAプールのなかからターゲットに結合する配列をもつものを選択し,逆転写,PCR(polymerasechainreaction)での増幅を行う.それを転写したもののなかから再び結合する配列を選択するというサイクルをくり返すのだが,それぞれのサイクルにおいて選択の際に蛋白質とRNAプールの濃度比を変えたり,競合剤を加えたりすることで結合条件を厳しくすることによって結合特異性の高い配列を得ることができるのである.アプタマーには大量の合成が容易,作用機序が単純といった利点もあり,構造プロテオミクス,ターゲット解析,創薬などの分野で強力なツールとして期待されていはじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する治療として現在国内において数種類の薬物の臨床試験が行われている.本稿ではそのなかの一つであるpegaptanibsodium(Macugen?)について紹介する.Pegaptanibsodiumは血管内皮細胞増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)に対するアプタマーで,2006年6月時点で,42カ国注1)で承認または市販されている.アメリカでは2004年12月に,EUでは2006年2月に承認され,実際に多くのAMD症例に投与されている.P?zer社の2006年9月11日のプレスリリース1)によるとpegaptanibsodiumはアメリカで2005年に7万人以上の滲出型AMD患者に投与されたそうである.本稿では読者の一番疑問な点であろうと思われる「アプタマーって何?」ということからpegaptanibsodiumの作用や海外の臨床試験の結果などを紹介する.注1)2006年6月時点でpegaptanibsodiumが承認または市販されている国:アルゼンチン,オーストリア,ベルギー,ブラジル,イギリス,カナダ,キプロス,チェコ,コロンビア,デンマーク,エストニア,フィンランド,フランス,ドイツ,ギリシア,ハンガリー,アイスランド,インド,アイルランド,イタリア,ラトビア,リトアニア,ルクセンブルク,マルタ,メキシコ,オランダ,ノルウェー,パキスタン,ペルー,フィリピン,ポーランド,ポルトガル,シンガポール,スロバキア,スロヴェニア,スペイン,スウェーデン,スイス,タイ,トルコ,アメリカ,ベネズエラ.(3)???*YoshihiroNoda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕野田佳宏:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):269~273,2007VEGFアプタマー:PegaptanibSodium(Macugen?)????????????:?????????????????(????????)野田佳宏*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007る.そして今回この技術の結晶というべきpegaptanibsodiumが世に出ることになったのは非常に感慨深いことなのである.IIPegaptanibsodiumとはPegaptanibsodiumはVEGFアイソフォームの一つであるVEGF165を阻害するアプタマーとよばれるRNA分子で,VEGF165分子に結合しVEGF受容体との結合を阻害する(図1).一般的にRNAはDNAに比して安定が悪く,通常は核酸分解酵素によって短時間で分解されてしまうが,pegaptanibsodiumは核酸分解酵素による分解を抑えるためにポリエチレングリコールな(4)図2Pegaptanibsodiumの構造式(アメリカMacugen?添付文書より)WhereRisandnisapproximately450.図1Pegaptanibsodium(Macugen?)の作用イメージPegaptanibsodiumはVEGF165分子に結合しVEGF受容体との結合を阻害する.(P?zer社資料より許可を得て掲載,一部改変)Macugen?Macugen?bindstoVEGF165VEGF165blockedfrombindingtoreceptors———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???どの修飾が加えられ,硝子体中での半減期を延長するよう工夫されている(構造式を図2に示す).VEGF165の165はアミノ酸数を表しており,ヒトのVEGFのアイソフォームには,ほかにもVEGF121,VEGF145,VEGF189,VEGF206などが報告されている.VEGF165はほかのアイソフォームとの違いは,生物活性が高くVEGFR-2(KDR)やVEGF165の特異的受容体であるニューロピリン(neuropilin)-1を介した病的血管新生との関係が深いことがあげられる3,4).AMDや糖尿病網膜症などのVEGF濃度の上昇した血管新生が優勢な環境ではVEGFの過剰な働きを抑制することが病態を改善することは多くの研究者の意見が一致するところであるが,一方VEGFには生理的な役割ももつことを忘れてはならない.VEGF遺伝子は1アレルの欠損でも胎生致死になることから胎生期において重要であることは言うまでもないが,創傷治癒,血管狭窄や閉塞の際の虚血の改善にもVEGFが重要な役割を果たしている.虚血網膜症モデルラットにpegaptanibsodiumを投与すると生理的血管新生を温存しながら病的血管新生は抑制したという報告もある5).このことからVEGFすべてを抑制するより特に過剰な働きをするVEGF165を治療のターゲットとすることはVEGFの生理的役割に配慮した理にかなった方法であるといえる.III使用方法Pegaptanibsodiumの海外での1回投与量は0.3mg/90??である.日本での臨床試験においては0.3mgと1.0mgの2用量が使用されている.Pegaptanibsodiumの溶液は注射針付きのガラス製プレフィルド・シリンジ中に封入されており,1回で全量を使い切るようになっている(図3に海外での製剤写真を示す).投与は6週間に1回のペースで硝子体内注射によって行われており,国内および海外の臨床試験では9回投与して効果を判定している.IV海外の臨床試験結果国内の臨床試験は原稿執筆時にはまだ発表前であり,症例や治療成績について呈示することができない(自験例ではpegaptanibsodiumはかなり有効であったという印象であることのみ記しておく).そこで本稿では,pegaptanibsodiumに関する海外の臨床試験の結果について紹介する.VISION(VEGFInhibitionStudyinOcularNeovas-cularization)ClinicalTrial(以下,VISION試験)6)はアメリカ,カナダ,ヨーロッパ,イスラエル,オーストラリア,南アメリカの117施設,1,186人に対して行われたランダム化比較試験である.視力が20/320から20/50(小数視力で0.06から0.5)の間のAMD患者を無作為に4群に分け,3群にはpegaptanibsodiumの投(5)図3Pegaptanibsodium(Macugen?)の製剤写真Pegaptanibsodiumの溶液は注射針付きのガラス製プレフィルド・シリンジ中に封入されており,1回で全量を使い切るようになっている.(P?zer社資料より許可を得て掲載)図4VISION試験1年目の平均視力の推移Pegaptanibsodiumを投与群は非投与群に比して視力低下の度合いが小さい.(P?zer社資料より許可を得て掲載):0.3mg(n=286):1.0mg(n=292):3.0mg(n=286):Sham/Usualcare(n=291)47%Bene?tp<0.01061218243036424854Time(weeks)0-2-4-6-8-10-12-14-16-18MeanChangeinVA(Letters)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007与をそれぞれ0.3mg,1.0mg,3.0mg,残りの1群には擬似注射(sham群)を,6週ごとに9回行い54週間経過をみている.54週間後に視力を維持した症例注2)はsham群で55%に留まったのに対しpegaptanibsodiumを0.3mg,1.0mg,3.0mg投与した場合はそれぞれ70%(p<0.001),71%(p<0.001),65%(p=0.03)であった.54週後の平均視力はsham群に比してpegap-tanibsodiumを投与した3群のほうが良好な結果であり,0.3mg群と1.0mg群がほぼ同等で3.0mg群がやや劣るというものであった(図4).治療前のフルオレセイン蛍光眼底造影により母集団をpredominantlyclassic,minimallyclassic,occultwithnoclassicの3型に層別しても3型ともにほぼ同様の効果が認められた.治療前の視力,病変サイズで層別した場合同様に薬効が認められた.病変サイズが小さく,治療前の視力がよく,以前に治療を受けておらず,萎縮や瘢痕のない早期のAMD,またはoccultwithnoclassicで脂質の沈着がなく僚眼の視力の良い早期のAMDでは無治療または光線力学的療法より成績が良く,視力悪化率が無治療または光線力学的療法が23~29%であるのに対しpegaptanibsodium0.3mg反復投与群では3~10%であった.15文字以上の視力改善も同様に0~4%に対して12~20%とpegap-tanibsodium群で良い成績であった7).VISION試験の2年目8)では54週(1年)終了後に再ランダム化を行い治療継続と無治療の比較もしているがpegaptanibsodium0.3mgを2年間投与した群は1年間で治療を中止した群に比して視力維持率が高いという結果であった.注2)視力を維持した症例:ETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)チャート(文字数で判定,5文字で1段階相当)による視力低下が15文字(3段階相当)未満の症例.V有害事象・副作用VISION試験においての重大な合併症としてはまず眼内炎があげられ,その頻度は54週(1年),9回の投与で1.3%,硝子体注射1回当たりの発生率は0.16%であった.水晶体の損傷は年間0.6%,注射1回当たり0.07%,網膜?離は年間0.7%,注射1回当たり0.08%の頻度であった.そのうち30文字(6段階)以上の視力低下がみられたのは眼内炎で全体の0.1%,水晶体損傷で0.1%,網膜?離では0%であったと報告されている6).試験眼に対する有害事象のおもなものとして眼痛(34%),硝子体内浮遊物(33%),点状角膜炎(32%),白内障(20%),硝子体混濁(18%),前房内炎症(14%),視覚異常(13%),角膜浮腫(10%),眼脂(9%)が報告されている.そのうちpegaptanibsodium投与群とsham群の間に差があったのは硝子体浮遊物,硝子体混濁,前房内炎症であった.そのほかの有害事象の多くは手技によるものの割合が高いことが考えられる.全身性の有害事象では高血圧,血管透過性異常,出血性のイベント,血栓性塞栓のイベントなどの発生が報告されているが,pegaptanibsodium投与群とsham群の間に明らかに差があるものはなかった.薬剤の安全性という点では大きな問題はないようであるが,投与手技による有害事象・合併症の発生確率が高いという印象である.年間9回も硝子体内注射を行うことを考えると眼内炎,水晶体の損傷,網膜?離には薬剤投与時および経過観察時において細心の注意を払う必要があり,その点はvertepor?nを用いた光線力学的療法に比してリスクが大きいため,硝子体手術が可能な医療施設においてpegaptanibsodiumが投与されることが望ましいと筆者は考える.VI今後の展開1.光線力学的療法との併用加齢黄斑変性に対してpegaptanibsodiumと光線力学的療法の併用療法はあまり有効だという報告がみられないが,pegaptanibsodiumの1回投与量の値段設定が日本円で10万円以上することに関係があるかもしれない.2.合併症低減薬剤の半減期を延ばすためにpegaptanibsodiumの徐放剤をPRPharmaceuticals社が開発中とのプレスリリースが出ている9).投与回数が減れば年間の合併症発生率も下がることが予想されるため早期の開発・発売が期待されるが,Eyetech社を買収したOSIPharmaceu-(6)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???ticals社が眼科部門からの撤退を検討しているとのことで,今後の動きによっては開発に大きな影響がある可能性がある10).3.糖尿病黄斑浮腫・網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫への応用加齢黄斑変性だけではなく,糖尿病黄斑浮腫11,12)や網膜中心静脈閉塞症13)に対する臨床試験も行われており,良好な成績が報告されている.おわりに抗VEGFアプタマーであるpegaptanibsodiumの臨床試験における効果や問題点について述べた.分子生物学の結晶である本薬剤がわが国でも認可されれば治療の有力な選択肢となり,患者にとって大きな福音となることであろう.文献1)P?zer社プレスリリース(日本語版)http://www.p?zer.co.jp/p?zer/company/press/2006/2006_09_19.html2)TuerkC,GoldL:Systematicevolutionofligandsbyexponentialenrichment:RNAligandstobacteriophageT4DNApolymerase.???????249:505-510,19903)SokerS,Gollamudi-PayneS,FidderHetal:Inhibitionofvascularendothelialgrowthfactor(VEGF)-inducedendo-thelialcellproliferationbyapeptidecorrespondingtotheexon7-encodeddomainofVEGF165.???????????272:31582-31588,19974)SokerS,TakashimaS,MiaoHQetal:Neuropilin-1is(7)expressedbyendothelialandtumorcellsasanisoform-speci?creceptorforvascularendothelialgrowthfactor.?????92:735-745,19985)IshidaS,UsuiT,YamashiroKetal:VEGF164-mediatedin?ammationisrequiredforpathological,butnotphysio-logical,ischemia-inducedretinalneovascularization.?????????198:483-489,20036)GragoudasES,AdamisAP,CunninghamETJretal:Pegaptanibforneovascularage-relatedmaculardegenera-tion.????????????351:2805-2816,20047)GonzalesCR:Enhancede?cacyassociatedwithearlytreatmentofneovascularage-relatedmaculardegenera-tionwithpegaptanibsodium:anexploratoryanalysis.??????25:815-827,20058)ChakravarthyU,AdamisAP,CunninghamETJretal:Year2e?cacyresultsof2randomizedcontrolledclinicaltrialsofpegaptanibforneovascularage-relatedmaculardegeneration.?????????????113:1508.e1-1508.25,20069)PRPharmaceuticals社プレスリリースhttp://www.prpharm.com/news.asp?id=10310)OSIPharmaceuticals社プレスリリースhttp://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=70584&p=irol-newsArticle&ID=927532&highlight=11)CunninghamETJr,AdamisAP,AltaweelMetal:AphaseIIrandomizeddouble-maskedtrialofpegaptanib,ananti-vascularendothelialgrowthfactoraptamer,fordiabeticmacularedema.?????????????112:1747-1757,200512)AdamisAP,AltaweelM,BresslerNMetal:Changesinretinalneovascularizationafterpegaptanib(Macugen)therapyindiabeticindividuals.?????????????113:23-28,200613)OSIPharmaceuticals社プレスリリースhttp://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=70584&p=irol-newsArticle&ID=862675&highlight=

序説:加齢黄斑変性に対する最新の治療 ─薬物治療の現状と未来─

2007年3月31日 土曜日

———————————————————————-Page1(1)???本号の特集として,「加齢黄斑変性(AMD)の薬物治療」を企画した.AMDはかつて老人性円盤状黄斑変性症(SDMD)などとよばれ,予後不良,治療法皆無の疾患であった.唯一認められていたのがレーザー光凝固術であった.しかし,当然のことながら,黄斑を凝固すると直後から視力は急激に低下する.国際学会のパネルディスカッションで,症例が提示され,治療法は光凝固で全員意見が一致したが,座長が「もし自分が患者だったら光凝固を受けますか」と訊くと,パネリスト全員がNoと言った,という笑えない話もある.その後1990年代半ば頃より,重症例に対する外科的治療が始まった.重篤な合併症である網膜下出血に対する血腫除去術や,脈絡膜新生血管抜去術,さらには黄斑移動術といった黄斑下手術が一世を風靡した.それまでの治療では考えられないくらい良好な術後視力を得る症例が存在したものの,広く施行されるには至らなかった.その理由は,手術対象の多くがすでに病巣の拡大している進行例であり,視力成績が全体として期待されるほどには至らなかったことと,術後の脈絡膜新生血管の再発・拡大やその他合併症で,術後一旦改善された視力が再低下するのを食い止めることができなかったことにある.1990年代後半になり登場したのが,経瞳孔温熱療法(TTT)と光線力学的療法(PDT)である.外科的治療法に比べ,侵襲が少なく,患者負担が軽いので,世界的に広く行われており,PDTは現在のAMD治療の主流である.しかし,治療成績は視力維持,もしくは,無治療に比べ視力低下が抑制された,というものであり,患者の期待する視力改善は達成できていない.適応を早め,病巣が小さく視力の良好な初期症例に施行すれば,日常生活に必要な良好な視力の維持が可能と予想される.しかし,治療直後には照射範囲の脈絡膜血管が健常部も含めて閉塞することから,組織侵襲は無視できず,また,少数ではあるが照射後に出血などのため急激に視力低下をきたす症例もあるので,早期適応の是非には議論の余地が残っている.そして,今世紀に入りスポットライトを浴びているのが本特集で取り上げる薬物療法である.2004年に米国においてpegaptanib(Macugen?)が,AMDの薬物治療として初めて認可された.新生血管の発症・伸展に重要な役割を果たしている血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の作用を抑制することにより,脈絡膜新生血管を抑えようという治療法である.Pegaptanibは標的蛋白質(この場合VEGF)に結合することのできる核酸分子である.同様の目的で,VEGFに対する抗体が開発された.Ranibi-zumab(Lucentis?)とbevacizumab(Avastin?)がそれである.現在わが国ではpegaptanibとranibi-zumabが臨床治験中(エントリーは終了)であり,0910-1810/07/\100/頁/JCLS*MotohiroKamei:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室●序説あたらしい眼科24(3):267~268,2007加齢黄斑変性に対する最新の治療─薬物治療の現状と未来─???????????????????????????-????????????????????????????─????????????????????????????????????─瓶井資弘*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007(2)数年以内に使用可能となると思われる.しかし,現在使用は不可能であるので,脚光を浴びているのがbevacizumabである.欧米では大腸癌に対する薬剤として認可されているが,わが国では未承認薬であり,しかも,眼科使用は適応外である.倫理的観点から,使用に際しては法的手続きを要し,かつ,慎重な使用が望まれるが,現在わが国で唯一使用可能な抗VEGF薬である.海外からはこれら抗VEGF薬の単独,もしくはPDTと組み合わせた治療法に関する,前向き臨床試験の結果が報告されている.その結果を含め,野田佳宏先生にpegap-tanib(Macugen?),辻川明孝先生にranibizumab(Lucentis?),坂口裕和先生にbevacizumab(Avas-tin?)の解説をお願いした.また,以前よりステロイド薬には血管新生抑制作用があることが知られている.抗VEGF薬より早く,1990年代半ばにはAMDに対するtriamcino-lone硝子体内投与の効果が検討され,その後副作用を抑えたanecortaveacetateも開発された.Tri-amcinolone硝子体内投与は黄斑浮腫に対する治療法としては欧米で広く行われており,応用が容易であったと考えられる.しかし,臨床試験の結果,やや効果が弱いと考えられ,今後はPDTなどとのカクテル療法に使用されることになると予想される.大久保明子先生にはtriamcinoloneの治療経験を含めた解説をお願いし,山岡青女先生にはanecor-taveacetateについて執筆していただいた.上述のごとく,AMDに対する治療は,めまぐるしく変化している.侵襲のある治療法から,患者負担も少ない薬物治療へ移行してきているといえる.広い視野からみると,この薬物治療の隆盛はきわめて望ましいものであり,さらには,予防医学が望ましい.そういう観点から,森隆三郎先生にサプリメントについて解説していただいた.臨床現場では,すでに片眼が進行したAMD患者から,「まだ発症していないほうの眼をどうやって守っていったらいいか」との質問を受けることも多いので,その対応の一助になれば幸いである.最後に,安川力先生にAMDの発症メカニズムを踏まえた新しい薬物療法の可能性の解説をお願いした.本特集に目を通している若い世代が,AMD治療をさらに発展させてくれることを期待したい.

眼科医にすすめる100冊の本-2月の推薦図書-

2007年2月28日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS「失敗学」の勧めで有名な畑村洋太郎先生が技術を正しく,発展するように伝えていくためにはどうするかを体系的にわかりやすく解説したすばらしい本です.われわれ眼科医は眼科という一種の技術を発展させていくことにより国民の視覚をまもることが仕事の使命です.この際に大切なことは次世代を育成し,われわれが解決できなかった問題を解決していってくれるシステムを構築することです.時代は厚生労働省が新臨床研修制度を導入して,新しい眼科医をどのようにして育成していくかに大きな関心が高まっています.本書ではおもに伝える側の視点にたって,どのようにして伝えるべきものを正しく伝えていくかを豊富な事例と多角的な視点からわかりやすく解説しています.伝えるべき技術は,眼科でいうと白内障の手術のやり方とか,網膜光凝固のやり方といった狭い範囲のものではなく(これは技能に属するとしています),「知識やシステムを使い,他の人と関係しながら全体を作り上げていくやり方」と定義しています.伝えるべきはそれぞれの知識を有機的な意義を考えられる能力を指しているように捉えました.畑村先生は回転ドアの事例を出しておられます.回転ドアに子供さんが挾まれて亡くなるという痛ましい事故の経緯を調べると,「回転ドアは軽くなければ危ない」という大切な知識が伝わらず,とぎれたまま設計がなされたそうです.軽いドアであれば挾まれても軽い怪我ですみます.その意味づけがうまく伝わらなかった.眼科学を含む臨床医学でも多くの知識が蓄積されていますが,その多くに意義,意味があるはずです.それを理解して新しい診断,治療の技術を開発することが臨床医学の進歩ということになります.進歩を支えるのも技術の正しい伝達ということになります.われわれが新人を教育するときには上記の文章「知識やシステムを使い,云々」の上に「眼科学の」とつければいいことになります.うまく技術が伝わるうえで一番大切なことは受け入れる側にその素地をつくること,受け入れの動機づけがうまくできていることと畑村先生は説きます.そのために大切なポイントとして5項目をあげておられます.1)まず体験させろ2)はじめに全体を見せろ3)やらせたことの結果を必ず確認しろ4)一度に全部を伝える必要はない5)個はそれぞれ違うことを認めろです.一つひとつが腑に落ちる内容のある言葉です.動機づけの観点からいいますと,まずは体験させ,失敗の体験を含めて今後の眼科医としての向上のやる気につなげてやります.失敗といってももちろん患者さんに迷惑を絶対にかけないように指導医が入念にチェックしつつ,ある部門での仕事を責任をもってやらせることが大切であるということです.そして,全体像を見せることで,眼科学の面白さ,難しさ,一生をかける価値のある学問であり仕事であることを示すことができます.あとの3項目についてはそれぞれ読んで字のごとくです.このような教育の場での理想的な環境として「でき上がった形をそのまま伝えるのではなく,欲しい人が自分でむしり取る」のが大切と述べられています.臨床医学の教育で指導医について一日中診療をみながら1対1での教育をしていることも多いと考えますが,それがこれにあたると考えます.ただ,むしり取る側の意欲は特に大切ということに変わりはありません.最後にこのような教育の現場となる組織について『とくに伝達することを意識していないものの,すべての活動を通じて自然に伝わったり,伝わってほしいものもあ(81)■2月の推薦図書■組織を強くする技術の伝え方畑村洋太郎著(講談社現代新書)シリーズ─70◆山下英俊山形大学医学部視覚病態学———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007ります.それは「価値観」や「信頼感」「責任感」といった「企業文化」「気」です』という記述があります.これは眼科を含めて臨床医学におけるまさに医局の果たしてきた役割ではないかと考えます.多くの優れた先輩が営々として築き上げてきた大切な価値観(「責任感」や「信頼感」)を伝えていく母体が必要です.これは上記の1対1の人間関係でもできる場合と不幸にしてできない場合があるでしょう.それをかなりの確率で伝達可能にしていく場が教育の安定的な継続を生み出し,これが優秀な医師を陸続として世の中に送り出す教育機関が存在し続ける礎になると考えます.本書は指導的な立場にたつ眼科医が読むと必ず自分の教育について深く考え,検証して今後の指導に役立つと考えます.また,これから指導を受ける眼科医もどのような方針で教育をうけるかという,自分のうける教育のチェックポイントを教えられたようなものなので,ぜひ読んでみては如何でしょうか?指導を受ける側も必ず指導する側に回ります.その際によりよい教育をしてすぐれた医師を育てるときの大きな参考になるでしょう.(82)☆☆☆眼科領域に関する症候群のすべてを収録したわが国で初の辞典の増補改訂版!〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544メディカル葵出版株式会社A5判美装・堅牢総360頁収録項目数:509症候群定価6,930円(本体6,600円+税)眼科症候群辞典<増補改訂版>内田幸男(東京女子医科大学名誉教授)【監修】堀貞夫(東京女子医科大学教授・眼科)本書は眼科に関連した症候群の,単なる眼症状の羅列ではなく,疾患自体の概要や全身症状について簡潔にのべてあり,また一部には原因,治療,予後などの解説が加えられている.比較的珍しい名前の症候群や疾患のみならず,著名な疾患の場合でも,その概要や眼症状などを知ろうとして文献や教科書を探索すると,意外に手間のかかるものである.あらたに追補したのは95項目で,Medlineや医学中央雑誌から拾いあげた.執筆に当たっては,眼科系の雑誌や教科書とともに,内科系の症候群辞典も参考にさせていただいた.本書が第1版発行の時と同じように,多くの眼科医に携えられることを期待する.(改訂版への序文より)1.眼科領域で扱われている症候群をアルファベット順にすべて収録(総509症候群).2.各症候群の「眼所見」については,重点的に解説.3.他科の実地医家にも十分役立つよう歴史・由来・全身症状・治療法など,広範な解説.4.各症候群に関する最新の,入手可能な文献をも収載.■本書の特色■

私が思うこと3. 涙液とマイアミビーチ

2007年2月28日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???私が思うこと●シリーズ③(77)はじめにこのコーナーは好きなことを書いてよいということでしたが,あまり眼科に関係ないことを書いても,今後「あたらしい眼科」から永遠に執筆依頼がこないような状況も予想され,やはり眼科に関係のあることで私が思うことを書かせていただこうと思います.私は,2000年8月にマイアミ大学バスコムパルマー眼科研究所に留学させていただきました.指導教授はSCGTseng先生で,当時東京歯科大学の坪田一男先生の親友というご縁で話がまとまりました.Tseng先生とコンタクトをとらせていただいたのはその2年くらい前で,坪田先生の命により,学会で日本を訪れたTseng先生を成田にお迎えにあがったのが最初でした.東京までの車中1時間ほど,私がほとんど英語をしゃべれない状態であったため,かなりつらい状況が予想され,事実まったくそうでしたが,Tseng先生の,わかりやすい英語での,「英語なんて通じなくても心配ない!研究なんて今の段階でできなくてもまったく問題ない!!」という力強いメッセージ,お人柄に引き込まれTseng先生の下で勉強したいと強く思うようになりました.そしていよいよ留学させていただくことになったわけですが,「英語が通じなくても心配ない!」ということは実際には間違いであると気づかされました.さらに日常生活ではスペイン語がちょっとできないと買い物などで困ったりもしました.しかし親切な人が多く,ありがたいことに言葉が通じなくてもなんとか仲間に入れてもらうことができました.そして少しずつ生活のセットアップをしつつ研究室での生活が始まることになりましたが,「研究なんてできなくてもまったく問題ない!!」ということもやはり誤りでした.当時Tseng先生のラボは,羊膜・角膜幹細胞研究に非常に力を入れており,先任のproductiveな研究者たちに追いつくのは至難のことと思われました.おもにヨーロッパ,イスラエルや南米からきていた仲間ですが皆,素晴らしい友人です.そこで私は何をしていたかというと,最初の1年は朝から深夜までラボにいるにはいましたが,なにも生産的なものはなかったような気分になり非常に落ち込んでいました.土地柄でしょうか,臨床系の医師やproductiveな研究者たちも,「暗くなると0910-1810/07/\100/頁/JCLS後藤英樹(?????????)鶴見大学歯学部眼科学講座角膜カンファランスの雰囲気に惹かれて臨床・研究を続けています.涙液とマイアミビーチが大好きです.ちなみに私が育った藤沢市はマイアミビーチ市と姉妹都市で,鵠沼海岸は東洋のマイアミビーチとよばれています!?(後藤)涙液とマイアミビーチ図1バスコムパルマーでのTseng教授とFellowたちとのひとこま昔の写真を引っ張り出してきました.懐かしい!感慨を覚えます.バスコムパルマーではよくこのような会が催されておりました.この頃は,私の思い込みによるものか,不完全な英語習得によるものか,とにかく勘違いで,アメリカでは相手を?rstnameで呼ばなければ失礼にあたると強く思いこんでおり,Tseng教授を“Sche?er”と呼んでしまっていたり,Tseng先生と坪田先生が一緒にいらっしゃるところでは,こともあろうに坪田先生を“Kazuo”と呼ばせていただいてしまったりして,英語ってヘンな言語だなと思っておりました.後にヘンなのはぼくの英語であることが判明して焦りました.(マイアミでは床屋さんに苦労し,この頃とても長髪になっています.)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007危ない!」といって夕方には帰宅していましたが,そうした状況のなかでも日曜日にはFMann先生のラボ仲間(邱彗先生など)とミニサッカーをしたり,Martin先生と格安ゴルフに行ったりしました.そのうち残念ながら,私は足を患いスポーツはあまりできなくなってしまいました.その後,それまでは単身留学でしたが,現静岡赤十字病院医長の許斐健二先生の結婚式に招かれ帰国したときに,今度は家族を伴って再びマイアミに戻りました.そこでゴージャスなNorthBeachのコンドミニアムから,ショボいSouthBeachのアパートに移りました.家族に評判は悪かったのですが,これがマイアミの生活を楽しむうえでなかなかよかったのです.マイアミビーチマイアミビーチ市はマイアミ本土から橋を渡ったところにある島です.ARVO(AssociationforResearchinVisionandOphthalmology)が毎年開催されるFortLauderdaleからは車で南に1時間ほどであり,ARVOに行かれる際には足を伸ばしてみることをお勧めします.表参道,六本木,江ノ島を足して3で割ったようなイメージの町です.ラテンアメリカ,ヨーロッパ,北米のテイストが混ざっています.OceanDriveとLincolnRoad(ここに住んでいました)が中心街です.ラボとの往復に明け暮れていた私もせっかく留学したマイアミの雰囲気を楽しもうというムードが盛り上がってきました.残念なことに,危険なところとのイメージが強いせいか,日本人はあまり住んでいませんでした(少なくとも最近は,気をつければあまり危険でないと思います).ここで生活スタイルを少し変えてみました.夕食を家族と食べることにしたのです.これは非常に新鮮でよい習慣でした.そして,夕食後家族でLincolnRoadに散歩がてらコーヒーでも飲みに行くことにしたのでした.コーヒーはアイスクリームでもいいわけですが,とにかくoutgoingな変化であり,SouthBeachの雰囲気を満喫できました.CubanCaf?によくいっていましたが,ラジオでかかっていたサルサと,あのCafeconLecheの味は忘れられません.そしてさらなる生活の変化としては,8時ごろ家族を家に送って行き,私は再び夜のビーチに旅立つのです.マイアミビーチではあちこちのカフェで勉強している人が結構いるのです.ScienceCaf?どころの騒ぎではありません.電源がとれて,BGMがうるさくないお店を探します.コーヒー一杯で粘ります.机にある程度長い時間座っているという状態が,良くも悪くも臨床漬けであった日本での状況とギャップが大きく,新鮮でした.眼科の患者さんや研究のこともいろいろ考えましたし,帰国したらどのような構想で自分のアイデアを実現していこうか?などの夢想をする時間ももてました.今だから白状いたしますが,ほとんど読んだことのなかった英語の論文もなんとか通読できるようになりました(大学の眼科図書館の司書のおばさま,お姉様方にも感謝!).ほとんど物書きをしたことがなかった私も少しずつ書くことに慣れていったようです.Tseng先生はいつも唱えておられました.Writeeveryday!またThink,otherwiseyouare?nish!とも.細かい指示はよく理解できなかったこともありましたが,これらのストレートなメッセージはうなされるほど強烈でした.昼食時などには留学生仲間といつもTseng先生のものまね大会で盛り上がりました.用法としては,“Let?sgoouttoArgentinaRestaurant,OTHERWISEYOUAREFINISH!”などです.子供が地元のナーサリースクールに通っていたため,家族にはそれなりにお友達ができていたようで,町で会うと楽しそうにしていました.公園などでも仲良くしてもらっていました.はっきりいってジモティー度は私より高く,少しうらやましかったくらいです.マイアミ大学に勤務・留学されていた日本人の先生方,企業駐在員の方々との交流も楽しかった日々として思い出されます.(78)図2マイアミビーチの風景SouthBeach,LincolnRoadのVanDykeCaf?です.いい雰囲気です.日本でも今後もぜひoutgoingしていきたいと思います.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???訪ねてきてくれて行方不明になったり,ダウンタウンで迷子になったりした人騒がせな学友たちにも,夢にまで見たメーヤウのおみやげカレーを持ってきてくれたので感謝でした.Tseng先生宅でのホームパーティーや,連れていっていただいた在マイアミの台湾系の方々のクリスマスパーティーも忘れ得ぬ思い出です.マイアミの奇跡“マイアミの奇跡”は,一般的には,1996年アトランタオリンピック・男子サッカー第一次リーグにおいて,日本代表がブラジル代表を1対0で下した試合の日本における通称ですが,私たちの間ではマイアミに留学して無事に帰国すると“奇跡”だと称してふざけあっています.バスコムパルマー眼科研究所が眼科界では世界的に有名な施設であるため,私たちの身近でも多くの先生が留学されています.最近では私のほかに吉野健一先生,大高功先生,川北哲也先生,松本幸裕先生などがいらっしゃっています.大抵ちょっとしたトラブルを経験しているようですが,皆“奇跡的”に無事に帰ってきたと,集まると大概そういう話題になって盛り上がります.NeuroanatomicIntegrationofOcularSurface;眼表面の神経解剖学的統合話は急にかわりますが,眼の乾きとは,涙の供給が足りないか,喪失の過剰により,潤い不足である状態と思われます.これらが眼の乾き症状をひき起こし,病気になるとドライアイとよばれています.ドライアイにはさまざまな病態があり,その病態にアプローチする方法はいくつかあると思います.個人的に最もピンときているのがTseng先生の“neuroanatomicintegrationofocu-larsurface”の説明です.この説明では,この眼の湿潤を維持するシステムを,compositionalfactor(構成要(79)素:涙液の3層構造構成要素である脂質,水成分,ムチン,それぞれの分泌組織,分泌刺激,神経伝達,大本の神経刺激)とhydrodynamicfactor(動的要素:瞬目,閉瞼それぞれの神経伝達,大本の神経刺激)の双方から考えるものであり,眼の乾燥がある場合,どこが障害されているかを考える助けとなるものです.ドライアイおよび眼の乾きの病因,原因を探るのに非常に有用な考え方だと思っております.この考え方と,東京歯科大学で坪田先生を中心に教えていただいたドライアイに対しての考え方が合わさって,今の私の考え方の基礎をなしていると思っております.現在,涙液油層,涙液メニスカスともに非侵襲的な評価方法が発展してきており,ムチンに関してもブレークスルーが期待されています.評価が発展すれば,治療にも新しいアイデアが反映されることとなり,ドライアイ診療のさらなる発展が期待される今日このごろです.まとめマイアミビーチと涙液はあまり関係ありません.しかしマイアミで涙液専門の偉大な先生に指導していただき大変勉強になりました!後藤英樹(ごとう・えいき)1970年生まれ1994年慶應義塾大学医学部卒業,眼科学教室入局1996年東京歯科大学市川総合病院眼科2000年マイアミ大学バスコムパルマー眼科研究所留学(SCGTseng教授)2002年OcularSurfaceResearchandEducationFoundation(SCGTseng先生)・マイアミ大学バスコムパルマー眼科研究所(JMParel教授)2003年飯田橋眼科クリニック2004年慶應義塾大学医学部眼科学教室2006年鶴見大学歯学部眼科学講座現在に至る☆☆☆

よくわかる医療情報のお話5.医療者が作成する医療用ソフトウェアの世界

2007年2月28日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS一般的には医療用のシステムやソフトウェアはプロのエンジニアが開発するものと思われているかもしれません.しかしながら,多くの医療現場では医療者が作成したソフトウェアが用いられているということも事実です.ここで言うソフトウェアとは限られた部内あるいは個人が用いる種類のものではなく,施設全体にわたって稼働する業務システムを意味しています.実例としては,松波総合病院や神鋼加古川病院など,多数のシステムが知られています.筆者も紙ベースクリニカルパスの管理システム,病院業務の支援システム,職員検診システムなどを浜松労災病院や川崎医科大学附属病院に導入した経験があります.本来,実用化されているシステムであれば作成者は問題ではなく,施設独自に作成するということが本質であり,ベンダー開発のものとは異なる特徴があります.導入費用が安価であることは言うまでもありませんが,コンテンツの変更に柔軟な対応ができること,作成したソフトウェアに含まれるワークフローや医療知識が適切に抽出されたものであることなどが指摘されています.ベンダーに委託して導入されたシステムは変更希望があっても費用の点やベンダーの対応という点で十分な対応がなされないといったことは身近によくあることです.他方,施設独自に作成した場合はシステムの管理が問題で,多くの事例では独自に管理者を養成していますが,なかには商品化により解決を図っているものもあります.医療者は現場でどのようなシステムが必要なのかの具体的なプランを有していますが,それを実現する手段をもっていません.逆に,医療をターゲットとするエンジニアはそうしたプランを実現する手段は有していますが,医療に固有の知識に乏しいのが通常です.ベンダーに委託する場合,エンジニアとコミュニケーションを図ることは基本的なことでありながら,現実には容易なことではありません.また,導入あるいはカスタマイズに要する費用負担も軽くはありません.そのために,ベンダーに委託するシステムを医療現場に最適なものにすることはむずかしいという現実があります.ソフトウェアとしては稚拙であっても細部にまで手の届くシステムが医療者の手で作成され,現場で使用される理由にはこうした背景があります.これまでのところ,医療者によって作成・実用化され,発表されてきたソフトウェアに対する評価は,ベンダーによって開発されるソフトウェアと同じものさしで行われているように感じられますが,このことは医療者がソフトウェアを作成する意義と価値が正しく理解されているとはいえないと言い換えることもできます.2005年12月に日本クリニカルパス学会において「医療者が作成する医療用ソフトウェアの現状と将来性」というシンポジウムが行われましたが,これは特に「医療者作成」に焦点を当てたものであり,わが国における初めての議論の場となりました.シンポジウムでは,医療者が作成するソフトウェアが病院情報システムとの連携を図って構築しうること,さらにベンダーへの提案あるいは共同開発にまで至る可能性があることが示唆されています.医療者が作成するソフトウェアの分野はやっと全国的なレベルで活動が始まったところですが,今後,ますます大切な分野になってゆくものと思われます.(75)よくわかる医療情報のお話●連載(隔月)⑤若宮俊司*医療者が作成する医療用ソフトウェアの世界*ShunjiWakamiya:川崎医科大学眼科学教室/川崎医療福祉大学感覚矯正学科/同医療情報学科/名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学教室医療者によるコーディング(VC++)

硝子体手術のワンポイントアドバイス45.水晶体を温存した周辺部硝子体切除のコツ(中級編)

2007年2月28日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSはじめに周辺部の硝子体を十分に切除するためには,水晶体を摘出したほうが有利なのは明白だが,混濁のない若年者の水晶体は可能なかぎり温存したいものである.眼底周辺部に増殖性病変を有する症例,あるいは水晶体を切除しないと十分な牽引の解除ができない裂孔原性網膜?離などでは,水晶体は切除すべきであるが,最近の学会報告を聞いていると,やや安易に水晶体を摘出しすぎているといった印象がある.筆者は,以前から顕微鏡同軸照明下で強膜圧迫を行いながら,水晶体を温存したまま可能なかぎり周辺部の硝子体を切除する方法を適宜行っている1).もちろん,水晶体を摘出した場合と比較して残存硝子体量は多くなるが,慣れれば結構周辺部まで切除できるものである.●水晶体を温存した周辺部硝子体切除のコツ硝子体カッターを動かして無理に周辺部の硝子体を切除しようとすると,水晶体を損傷してしまうので,カッターの位置は極力固定したまま,強膜を圧迫しながら,切除したい部位の硝子体をカッターに近づけていく(図1).このとき,硝子体切除する象限の方向へ眼球をやや傾けるのがコツである.耳側,鼻側,上方は比較的楽に周辺まで硝子体を切除できる.特に上耳側と上鼻側の硝子体は慣れれば硝子体基底部の後縁まで切除することが可能である(図2).切除がややむずかしいのは下方である.まず,少し後極寄りの強膜を圧迫し(図3a,b),その後はやや角膜寄りの強膜を圧迫して,残った硝子体を硝子体カッターの吸引口に近づける(図4a,b).おわりに水晶体摘出を併用した硝子体手術に慣れてしまうと,ついつい安易に水晶体を摘出する癖がついてしまう.上記の方法に普段から慣れていれば,結構抵抗なく水晶体が温存できるので,硝子体手術を専門にしている術者(73)は,ぜひとも習得しておきたい手技である.文献1)池田恒彦:最近の網膜硝子体手術特殊手技の適応と実際.あたらしい眼科11:1337-1344,1994硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?45水晶体を温存した周辺部硝子体切除のコツ(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図2上耳側周辺部の硝子体切除慣れれば上耳側と上鼻側の硝子体は基底部の後縁まで切除することが可能である.図3下方の硝子体切除(その1)a:まず,少し後極寄りの強膜を圧迫する.b:シェーマ.aba図4下方の硝子体切除(その2)a:ついで,やや角膜寄りの強膜を圧迫して,残った硝子体を硝子体カッターの吸引口に近づける.b:シェーマ.b図1周辺部硝子体切除のコツカッターの位置は極力固定したまま,強膜を圧迫しながら,切除したい部位の硝子体をカッターに近づけていく.この角度は一定に

眼科医のための先端医療74.網膜疾患におけるレドックス制御-チオレドキシンの関与-

2007年2月28日 水曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLSレドックスレドックスとは還元(reduction)と酸化(oxidation)の合成語であり,酸化還元反応を介した細胞機能の制御をレドックス制御とよびます.生体は細菌・ウイルス感染や種々の有害物質などのストレスに曝露されています.通常,細胞内に発生した活性酸素種(reactiveoxy-genspecies:ROS)はそれ自身がセカンドメッセンジャーとしてさまざまな細胞機能を調節していますが,酸化ストレスにより過剰に産生されたROSは蛋白質,脂質,核酸などを酸化し障害をもたらします.生体内には制御機構としてレドックス反応による活性酸素消去系が存在していますが,この制御機構はおもに蛋白質のシステイン残基上のチオール基の可逆的構造変化による遺伝子発現,細胞増殖,分化,細胞死の制御など多様な生命現象にも深く関与しています.チオレドキシン(TRX)レドックス制御にはグルタチオン系とチオレドキシン(TRX)系が知られています.TRXは原核生物からヒトまで保存されている活性部位(-Cys-Gly-Pro-Cys-)を有する分子量約12kDaの蛋白質です.2つのシステイン残基の間でジスルフィド(S-S)結合をつくる酸化型と-SH-SHの還元型が存在し,還元型は基質蛋白質を還元し自ら酸化型となります(図1).酸化型TRXはNADPH(reducednicotinamideadeninedinucleotidephosphate)とTRX還元酵素により還元型に還元されます.TRXの細胞内濃度はグルタチオンと比較して約1/1,000程度ですが,TRXノックアウトマウスは胎生致死に至るためグルタチオン系では補完できない必須の役割を果たしていると考えられます1).種々のストレス(紫外線,放射線,酸化剤,ウイルス感染,虚血再灌流障害など)により誘導されることが知られており,単独で一重項酸素やヒドロキシラジカルを消去するほか,ペルオキシレドキシンとの協調作用によりROSを消去する抗酸化物質として生体内で働きます.TRXは種々のストレスにより誘導されることから,酸化ストレスのマーカーとして血清中のTRX値を測定し種々の疾患予後に利用できることが報告されています.慢性心不全の程度と血清TRX値が正の相関を示し治療効果判定の指標になることや,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症やC型肝炎などの慢性感染症でも上昇し疾患予後の指(69)◆シリーズ第74回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊猪俣泰也(国家公務員共済組合連合会熊本中央病院眼科)網膜疾患におけるレドックス制御─チオレドキシンの関与─OxidativestressGlutamate-inducedneurotoxicityIschemicinjuryetc.還元型TRX酸化型TRXASK-1ASK-1ASK-1p38/JNKApoptosis核細胞質NADPHNADPS-SS-STRXTrxRS-STRXTRXSHSHTRXSHSHSHSH基質(還元型)基質(酸化型)H2OMKKsH2O2Peroxiredoxin蛋白質蛋白質図1虚血やグルタミン酸興奮毒性に対するTRXの作用(仮説)酸化ストレスで発生する過酸化水素は還元型TRXとperoxiredoxinの協調作用により水に還元される.還元型TRXはASK-1に結合し活性化を抑制しているが,酸化ストレスにより酸化型TRXへ変換するとASK-1と結合がはずれ,ASK-1が活性化する.p38の活性化も直接制御していると考えられている.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007標となることが報告されています.TRXは抗炎症作用を有することも知られており間質性肺炎,肝障害,脳や腎での虚血再灌流障害などで細胞保護効果を示すことより,製剤としての臨床医薬への応用が期待されています.網膜疾患でのチオレドキシン眼は光を感受するという臓器特異性により,眼組織は生涯にわたり光に曝露されており活性酸素の発生が生じやすい環境下にあります.各組織にて過度の光や紫外線照射にて酸化ストレスに起因する細胞障害を生じますが,TRXは生体防御機構の一部として働いています.水晶体内にもTRX,チオレドキシン還元酵素(TrxR)が発現しており,光に対するラジカル消去機構として働いていることが示唆されています2).網膜において加齢黄斑変性症は酸化ストレスに加え遺伝的因子,環境因子などが発症機序へ関与しており,緑内障に関しても酸化ストレスとの関連が報告されています3).動物実験では光照射による網膜障害モデルにて,TRX投与により障害抑制効果を認め4),さらにGGA(geranylgeranylace-tone)5)などのチオレドキシン誘導物質でも,同様の障害抑制効果を認めています.グルタミン酸興奮毒性6)や虚血再灌流モデル7)にてもTRXによる網膜神経節細胞への細胞保護効果を認めています.NMDA(?-methyl-D-aspartate)による網膜障害モデルにおいては,NMDAにより網膜内にフリーラジカルが産生され,ROS依存的なMAPKs(p38,JNK)およびMAPKkinase(MKKs)の活性化,caspase-3,-9の活性化が生じますがTRXにより抑制され,その効果にはTRXの活性部位が必須であることが確認されております6).MKKK(MAPKkinasekinase)ファミリーに属するASK-1(apoptosissignal-regulatingkinase1)はTRXと結合しその活性を制御しておりますが,ASK-1のノックアウトマウスでは,網膜虚血による神経細胞死が軽減される報告もあり8),酸化ストレスに対するASK-1-JNK/p38-caspase経路に対する細胞死に対しTRXは抑制的に作用することが予想されます.今後の展望TRXは生体内に存在する酸化ストレスに対する防御因子ですが,外的投与にてもさまざまなストレスに関する細胞保護効果を認めることから,現在臨床応用(製剤化)にむけた研究がなされており,眼疾患への臨床応用も十分期待できると考えられます.今回紹介しませんでしたが,ASK-1以外にもTRXが標的とする物質も同定(TBP2/VDUP1)されており,糖,脂質代謝や癌化,老化との関連がすでに報告されています.今後眼疾患においてもTRXと関連分子のさらなる分子機構の解明が期待されます.文献1)MatsuiM,OshimaM,OshimaHetal:Earlyembryoniclethalitycausedbytargeteddisruptionofthemousethio-redoxingene.????????178:179-185,19962)LouMF:Redoxregulationinthelens.??????????????????22:657-682,20033)TezelG:Oxidativestressinglaucomatousneurodegener-ation:mechanismsandconsequences.??????????????????25:490-513,20064)TanitoM,MasutaniH,NakamuraHetal:Cytoprotectivee?ectofthioredoxinagainstretinalphoticinjuryinmice.?????????????????????????43:1162-1167,20035)TanitoM,KwonYW,KondoNetal:Cytoprotectivee?ectsofgeranylgeranylacetoneagainstretinalphotooxi-dativedamage.??????????25:2396-2404,20056)InomataY,NakamuraH,TanitoMetal:ThioredoxininhibitsNMDA-inducedneurotoxicityintheratretina.???????????98:372-385,20067)ShibukiH,KataiN,YodoiJetal:Protectivee?ectofadultT-cellleukemia-derivedfactoronretinalischemia-reperfusioninjuryintherat.??????????????????????????39:1470-1477,19988)HaradaC,NakamuraK,NamekataKetal:Roleofapop-tosissignal-regulatingkinase1instress-inducedneuralcellapoptosisinvivo.???????????168:261-269,2006(70)■「網膜疾患におけるレドックス制御─チオレドキシンの関与─」を読んで■今回は,猪俣泰也先生による酸化ストレス制御の面からの疾患病態制御のお話です.広く知られるようになったことですが,種々の疾患に酸化ストレスが関与します.本総説を拝読すると,酸化還元反応を介した細胞機能の制御=レドックス制御は生命現象の根本に位置していることがわかります.細胞が生きて活動する際に必要なエネルギー代謝によりROS(本文参照)が発症することによる障害を抑制し,かつ,外界からの酸化ストレスによる攻撃からも生命をまもっている機構ということになります.レ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.2,2007???(71)ドックス制御に重要な酸化還元反応での電子の受け渡しの主体となる分子としてグルタチオン系とチオレドキシン(TRX)系があることが示され,そのうちTRXに今回はフォーカスを合わせて解説されています.眼疾患に関連することが体系だってまとめられており,網膜疾患,白内障,緑内障など日常診療で遭遇する多くの疾患に関連することがわかります.最後の項目でTRXを治療薬として応用する可能性が述べられております.われわれ臨床医としてはその開発を待ち望んでいます.たとえば,加齢黄斑変性は進行した脈絡膜血管新生を伴った病的組織の治療としては,光線力学的療法(PDT),抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体などのVEGF制御薬などが臨床応用されつつあり,治療が有効に行えるようになった現在,加齢黄斑変性の予防ないしは軽症例の進展阻止のための治療法の開発が急務です.TRX製剤による酸化ストレス制御はいい候補ではないかと考えます.ただ,酸化ストレス制御のメカニズムで薬効が認められた薬剤で網膜疾患が適応になっている薬剤はありません.生体が自らの防御機構としてもっているシステムを強化するという治療戦略での治療薬開発はサイトカインの臨床応用にも似ていますが,breakthroughとして一つの薬物が効果,安全性が確認されて承認されるという実績をつくることが大切のように感じます.今回の総説は論理的に整理され今後の研究の方針を考えるために大変役立つ解説になると考えます.山形大学医学部視覚病態学山下英俊☆☆☆