———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSナルの阻害から血管新生抑制効果をもつが,眼圧上昇や白内障といった副作用をもつ.このようなステロイド薬特有の副作用をもたずに,血管新生抑制作用を有するステロイド“angiostaticsteroid”として開発されたのが,anecortaveacetate(Retaane?)である.その作用機序は十分に解明されていないが,多様な動物種の異なる新生血管モデルに対して広く血管新生抑制効果を示すため,多種多様な血管新生メカニズムにより生じる病的血管新生に対しての抑制効果が期待されている.6カ月ごとに後部Tenon?下に2回の薬剤投与を行い,1年間経過観察を行った米国での臨床試験の結果1)では,anecortaveacetate15mgを後部Tenon?下に投与した群では,プラセボ投与群と比較して,視力維持率が有意に高く,重度の視力悪化率が有意に低かったと報告されている.II化学的性質グルココルチコイド活性をまったくもたないように設計合成された血管新生阻害薬であり,分子式はC23H30O5,分子量は386.48である.物理的・化学的性質および組成を表1に,構造式を図1に示す.原薬は白色粉末で,クロロホルムにやや溶けやすく,水にほとんど溶けない.製剤は,眼科用無菌水性懸濁性注射剤であり,その性状は白色~やや微黄色がかった均一な懸濁液である.室温で冷凍を避けて保存するとき,少なくとも24カ月は安定であることが確認されている.はじめに加齢黄斑変性症(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は,従来欧米の白人に多い疾患であるとされていたが,近年わが国においても高齢化などにより患者数が急速に増えつつある.医学の進歩により,以前は経過観察するしかなかった症例においても,その治療法はいくつか選択できるようになってきた.観血的治療として脈絡膜新生血管抜去術や黄斑移動術などの手術療法,非観血的治療として,レーザー光凝固・経瞳孔的温熱療法(transpupillarythermotherapy:TTT)・光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)・放射線療法・抗血管新生薬物療法などがあげられる.どの治療も,一部の患者にとっては視力維持に有効であることが示されているが,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の存在する位置(subfoveal/juxtafoveal/extrafo-veal)・タイプ(classic/occult)・病変の大きさなどにより,治療の適応がある程度決まってくるものが多い.抗血管新生薬による薬物治療は有効なCNVの病型が多様であり,外科的治療法に比べ反復または継続投与を行いやすく,患者の身体的負担が少ないなどの利点を有し,近年めざましく進展している.本稿では,血管新生阻害薬の一つであるanecortaveacetateについて述べる.I概要ステロイドは,サイトカインの産生抑制や細胞内シグ(21)???*SeijoYamaoka:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕山岡青女:〒181-8611東京都三鷹市新川6-20-2杏林大学医学部眼科学教室特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):287~290,2007ステロイド:AnecortaveAcetate(Retaane?)???????:??????????????????(????????)山岡青女*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007III薬理作用異なる原因により誘発されたさまざまな動物種や組織での新生血管形成阻害作用が認められた.最初に鶏卵漿尿膜試験2)において検討され有意な血管新生阻害を示した.塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)で脈絡膜血管新生を誘発させたウサギでは,本剤0.5~10mgのTenon?下(後部強膜上)投与により50~60%の新生血管形成阻害が示された.また,酸素誘発性網膜症のモデル(新生児ラットおよびネコ)における新生血管形成や,眼内腫瘍の増殖および血管形成を有意に阻害した.マウス眼内腫瘍モデルにおいては,点眼投与のみで眼内の腫瘍増大抑制効果を示した.本剤が新生血管を抑制するメカニズムは,????????試験の結果から,血管形成における蛋白分解カスケードの抑制や血管内皮細胞増殖を阻害することにより血管新生を阻害している可能性や,plasminogenactivatorinhibi-tor1の抑制効果に関連する可能性が動物実験上示唆されているが,まだ十分に確認されたとはいえない.また,サルを用いた薬物動態試験の結果からは,本剤の懸濁液をTenon?下の後部強膜上に投与することにより,血管新生阻害作用を発揮するのに十分な標的組織(網膜,脈絡膜)中の薬物濃度が投与6カ月後まで維持されることが推定された.さらに,本剤はステロイド骨格を有するものの,糖質コルチコイド(グルココルチコイド)に特有な抗炎症作用は示さず,グルココルチコイドによりひき起こされる眼局所による副作用である眼圧上昇作用や後?下白内障などを呈さないことが示された.IV投与方法仰臥位で被験眼を消毒後,点眼麻酔下にてlimbusより8mm上耳側のところから,弯曲カニューレを用いてTenon?下投与を施行する(図2a~d).カニューレの先端が挿入できる程度のわずかな切開を結膜およびTenon?につくり,眼球壁に沿ってゆっくりカニューレを挿入し,薬剤を確実に後部強膜上(Tenon?下)に投与する.薬剤投与後は,カニューレ挿入部位より薬剤が逆流しないように,cottonswabにて挿入部位を少し圧迫しながらカニューレをゆっくり抜去する.表2に示したように,当院で臨床試験を施行した血管新生阻害薬は,anecortaveacetateを含めて全部で3種類あるが,他の2剤が硝子体内投与に対して本剤のみがTenon?下投与である理由は,投与後の安全性と,Tenon?と強膜の間にanecortaveacetateのデポ(懸濁性の薬剤貯留)が形成されることがターゲット組織(強膜を経由して脈絡膜)への薬物移行にとって重要であり,効果持続につながることを重視したからである.しかし,実際に本剤の硝子体内投与とTenon?下(後部(22)表1物理的・化学的性質および組成一般名酢酸アネコルタブ(anecortaveacetate)化学式17,21-dihydroxypregna-4,9(11)-diene-3,20-dione21acetate分子式C23H30O5分子量386.48性状原薬白色粉末製剤白色~やや微黄色がかった均一な懸濁液貯法室温保存(冷凍を避ける)安定性製剤は少なくとも24カ月は安定表2代表的な血管新生阻害薬の投与方法および間隔薬剤名投与方法投与間隔Anecortaveacetate(Retaane?)血管新生阻害コルチコステロイド後部Tenon?下投与6カ月Pegaptanib(Macugen?)抗VEGFアプタマー硝子体内注射6週間Ranibizumab(Lucentis?)抗VEGFモノクロナール抗体硝子体内注射4週間図1Anecortaveacetateの構造式OCH3CH3CH3HOHOOOH———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???強膜上)投与を比較した非臨床および臨床データはない.V効果と副作用視力20/40~20/320の滲出型AMD症例128例に対して,6カ月ごとに後部Tenon?下に2回の本剤投与を行い,1年間経過観察を行った米国での臨床試験の結果1)では,15mg投与群ではプラセボまたは3mg投与群と比較して,視力維持率が有意に高く,平均視力悪化および6段階以上の視力悪化の出現頻度が有意に少なかったと報告された.一方,30mg投与群では以上の効果は認められなかった.副作用に関しては,トリアムシノロン(triamcinoloneacetonide)とは異なり,眼圧上昇および白内障進展を含めて,対象群との有意差を認めなかった.Tenon?下投与に関連して眼瞼下垂または眼痛を認めたが,軽度かつ一時的なものであった.以上より,anecortaveacetateは,少ない反復投与回数にて,滲出型AMD症例の進展を抑制する効果を示し,高い安全性が示唆された.臨床試験上15mg投与群に認められた有効性が30mg投与群では認められていないが,その理由については今後の検討を要する.PDTとの比較試験3)では,anecortaveacetate15mgのTenon?下単独投与は1年間の経過観察においてはPDTと同等の視力維持効果があることが示された.PDTと効果が同じであるならば,術後の日光遮断やわが国で初回治療時に義務づけられている入院の必要性もないanecortaveacetateの局所投与のほうが簡易であり,反復投与の期間や回数の面からみても,高齢の患者にとっては身体的にも経済的にも負担が少ないと思われる.最近では,特発性傍中心窩網膜血管拡張症(idiopathic(23)図2後部強膜上(Tenon?下)投与方法(a~d)(AlconResearch,Ltd.の許可を得て転載)abcd———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007perifovealtelangiectasia)や網膜血管腫様増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)に対し,本剤のTenon?下投与を行った報告もされている.特発性傍中心窩網膜血管拡張症においては,少数例の報告4)ではあるが,網膜および網膜下の透過性は減少し,CNVを伴った症例も含め,2年間の観察期間においては視力が維持されている.RAPに対しては,3種類の濃度(30mg,15mg,3mg)のanecortaveacetateをTenon?下投与し,1年間経過観察を行った結果,滲出性網膜?離や網膜色素上皮?離はすべての症例において改善したが,CNVの進展はすべての症例において進行し,視力も悪化したと報告された.本剤の単独投与では効果がないことを示している5).おわりにAMDなど対象患者の大部分が高齢者であることを考えるとanecortaveacetateは,投与経路がTenon?下であること,反復投与間隔が半年であること,眼圧上昇や白内障などの合併症を起こさないことなどは大きな利点であると思われる.しかし,さまざまな臨床報告からは,本剤の単独投与のみでは他の血管新生抑制薬に比べるとその効果は弱い印象をうける.網脈絡膜毛細血管の透過性亢進状態の改善には有用であるので,PDTとの併用や逆にCNVを伴わず,単に毛細血管の透過性に異常をきたしている他の疾患のほうが有用なのかもしれない.個人的な見解であるが,どんな疾患に対しても治療を受ける患者背景はさまざまであり,治療の選択肢は沢山あるにこしたことはない.近年,短期間の間に次々と新しい治療法や治療薬が開発され,最近の学会でのトピックは,ほとんど抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)抗体であるranibizumab(Lucentis?)やbevacizumab(Avas-tin?)であるが,何年か後には,また違う治療法や治療薬が話題を集めていることと思う.単独投与では効果が弱いと思われる薬剤でも,他の治療法との併用や,本来治療の対象としていなかった疾患に対して有効である可能性が示唆された場合,欧米のように,もう少し臨床応用しやすくなることが望まれる.文献1)TheAnecortaveAcetateClinicalStudyGroup:Anecor-taveacetateasmonotherapyfortreatmentofsubfovealneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration:twelve-monthclinicaloutcomes.?????????????110:2372-2383,20032)McNattLG,WeimerL,YanniJetal:AngiostaticactivityofsteroidsinthechickembryoCAMandrabbitcorneamodelsofneovascularization.?????????????????????15:413-423,19993)SlakterJS,BochowTW,D?AmicoDJetal:Anecortaveacetate(15milligrams)versusphotodynamictherapyfortreatmentofsubfovealneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration.?????????????113:3-13,20064)EandiCM,OberMD,FreundKBetal:Anecortaveace-tateforthetreatmentofidiopathicperifovealtelangiecta-sia:apilotstudy.??????26:780-785,20065)KlaisCM,EandiCM,OberMDetal:Anecortaveacetatetreatmentforretinalangiomatousproliferation:apilotstudy.??????26:773-779,2006(24)