———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSきるだけ予防するような工夫がなされたワンデーDSCLのノウハウを紹介するとともに,その効果について考えてみたい.I乾燥防止効果を謳ったワンデーDSCLMPSにおいては名称に「モイスト」,「モイスチャー」なるものが使われて,潤い効果,つまり乾燥防止効果を謳ったものが市販されたわけであるが,ワンデーDSCLにおいても「モイスト」あるいは「アクア」という名称を付けて,乾燥防止効果を謳ったものが市販されている.1.ワンデーアキュビュー?モイストTM(図8)ワンデーアキュビュー?モイストTMにはジョンソン・エンド・ジョンソン社が独自に開発した「ラクリオン・テクノロジー」を採用し,親水性高分子であるポリビニルピロリドン(PVP)をポリマーマトリックス内に物理的な方法で閉じこめており,レンズの保湿力を長時間持続できるような工夫がなされている.ワンデーアキュビュー?モイストTMでは保存液中のPVPがレンズ内に閉じこめられており,アキュビュー?アドバンスTMやアキュビュー?オアシスTMでは製造過程においてPVPはシリコーンポリマーと混ぜてから重合されているという違いがある.はじめにソフトコンタクトレンズ(SCL)の他覚的眼障害としては,スマイルマーク点状表層角膜症(SPK,図1),ピグメンテッド・スライド(図2),エピセリアルスプリッティング(図3),周辺部角膜浸潤(図4),角膜潰瘍(図5),角膜内血管新生(図6),巨大乳頭結膜炎(図7)などがある1)が,自覚的訴えとしては乾燥感が最も多く2),マルチパーパスソリューション(MPS)も乾燥感対策としての工夫を凝らしている.乾燥感のなかには,実際にコンタクトレンズ(CL)を装用することによってドライアイ症状がひき起こされて生じるもの3),レンズの汚れによって生じるもの,レンズの収縮・変形によって生じるもの,レンズの張り付きによって生じるものなどがあり,これらが単独あるいは幾つか組み合わさってCL装用者は乾燥感を覚えるものと考えられる.よって単純に乾燥感を訴えるからといって,含水率の低いレンズに替えれば解消するというものではない.乾燥感を訴える2週間頻回交換SCL(FRCL)装用者に対して,同程度の含水率を有したワンデーSCLに変更することで解消できるケースも,実際の臨床の場ではよく経験することである.ワンデー使い捨てコンタクトレンズ(ワンデーDSCL)はMPSなどのケアを必要としない.つまり,乾燥予防をケア用品には頼ることができないわけである.そこで,各社はワンデーDSCLによる乾燥感を解消すべくさまざまな努力をしている.今回は乾燥感をで(23)???*YujiKodama:小玉眼科医院〔別刷請求先〕小玉裕司:〒610-0121京都府城陽市寺田水度坂15-459小玉眼科医院特集●コンタクトレンズの流れを読むあたらしい眼科24(6):717~721,2007乾燥予防ワンデー使い捨てコンタクトレンズ????????????????????????????????????????????????小玉裕司*———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007(24)図1スマイルマーク点状表層角膜症図2ピグメンテッド・スライド図3エピセリアルスプリッティング図4周辺部角膜浸潤図5角膜潰瘍図6角膜内血管新生———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???2.フォーカス?デイリーズ?アクア(図9)フォーカス?デイリーズ?アクアにはチバビジョン社が独自に開発した「ライトストリーム・テクノロジー」が採用されている.これは原材料の精製工程を改善し高純度なポリビニルアルコール(PVA)素材を実現するとともに,写真製版を応用したマスキング・テクニックで,原材料であるPVAの架橋結合を誘発する紫外線照射をコントロールして精密かつ均一なコンフォートエッジを形成することができる.このような新しいテクノロジーを採用してレンズの質を向上させることによって,素材の保水効果を最大限に引き出し乾燥予防を図っている.IIその他のワンデーDSCL前2製品のように「モイスト」あるいは「アクア」などという名称を付けないまでも,各社はワンデーDSCLの乾燥予防効果に工夫を凝らしている.ボシュロム社のメダリストワンデープラス(図10)やクーパービジョン社のワンデーバイオメディックス(図11)では,レンズデザインに工夫を凝らしたり,保湿成分の入った保存液(ポロキサミンなどの界面活性剤を使用)を採用して乾燥予防を図っている.III乾燥予防ワンデーDSCLの効果臨床上における乾燥予防ワンデーDSCLの評価は比較的高い.ワンデーアキュビュー?とメニコンワンデー(ワンデーバイオメディックスのOEM:OriginalEquip-mentManufacturer)比較検討を行った報告4)では,自覚的な乾燥感,SCL上の涙液の干渉像のgrade,SCL上の涙液のNIBUT(non-invasivebreakuptime)のいずれにおいてもメニコンワンデーのほうが乾燥予防といった面では優れていたとしている.筆者もワンデーアキュビュー?モイストTM,フォーカス?デイリーズ?アクア,メダリストワンデープラス,ワンデーバイオメディックスをモニター12名に対して装用させ,装用直後,4時間後,8時間後に装用感,乾燥感,見え方の鮮明さについてアンケート調査を行い,それぞれの時間におけるSCL上の涙液の干渉像の(25)図7巨大乳頭結膜炎図8ワンデーアキュビュー?モイストTM図9フォーカス?デイリーズ?アクア図10メダリストワンデープラス図11ワンデーバイオメディックス———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007grade,SCL上の涙液のNIBUTを測定してみた.どのレンズにおいても4時間後,8時間後と装用感は悪くなり,乾燥感も増大してきた(図12).SCL上の涙液の干渉像のgradeについては,ワンデーアキュビュー?モイストTM,メダリストワンデープラス,ワンデーバイオメディックスは,やはり4時間後,8時間後と高くなる傾向を示したが,フォーカス?デイリーズ?アクアのみ低くなる傾向を示した(図13).SCL上の涙液のNIBUTについては,ワンデーアキュビュー?モイストTMとワンデーバイオメディックスは4時間後に短くなり8時間後に長くなるという傾向,メダリストワンデープラスは4時間後に長くなり8時間までそのまま,フォーカス?デイリーズ?アクアは4時間後,8時間後と次第に長くなる傾向を示した(図14).SCL上の涙液の干渉像のgrade,SCL上の涙液のNIBUTの結果から判断すれば,どのワンデーDSCLもそれなりに乾燥予防効果がありそうである.しかし,自覚的には装用感,乾燥感ともに,時間経過によって悪くなっているというのは,やはり乾燥感というものは前述したようにさまざまな要素が加わって生じる可能性を示(26)図12アンケート調査結果(図12~14ともにCVJ:ワンデーバイオメディックス,AC:ワンデーアキュビュー?モイストTM,B&L:メダリストワンデープラス,DL:フォーカス?デイリーズ?アクア.)快適度(点)10.09.59.08.58.07.57.06.56.05.55.00hr4hr8hrOverall0hr4hr8hrOverall0hr4hr8hrOverall装用感乾燥感見え方の鮮明さ:CVJ:AC:B&L:DL図13SCL上の涙液の干渉像のgrade2.92.72.52.32.11.91.71.510min4hrs8hrsTear?lmgrade:AC:B&L:CVJ:DL図14SCL上の涙液のNIBUT3.53.33.12.92.72.52.32.11.91.71.510min4hrs8hrsNIBUT:AC:B&L:CVJ:DL———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???唆しているものと思われる.おわりにガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)装用者に比べて,SCL装用者における乾燥感の訴えは多いとされている2).SCL装用者におけるCL-induceddryeye3)の発症にはSCL上の涙液層の菲薄化5,6),SCL上の涙液油層の欠如7~9),SCL表面からの涙液の蒸発亢進10,11),SCL上の涙液の不安定化12)などの関与が示されている4)とのことである.ワンデーDSCLの乾燥感軽減のために,各社はレンズの材質,デザイン,PVPのレンズ内への閉じ込め,保存液中への保湿成分の添加などさまざまな工夫を凝らしている.筆者の実験は正常者をモニターとして採用しており,自覚症状と他覚検査の結果に不一致があったが,乾燥感を訴えるSCL装用者に乾燥予防ワンデーDSCLを処方すると臨床的には効果が認められる.新しい素材を使用したシリコーンハイドロゲルCLが各社から定期交換レンズ,頻回交換レンズ,連続装用レンズとして続々と市販されてきているが,将来的にはワンデーDSCLとしてシリコーンハイドロゲルCLが登場してくるかもしれない.乾燥感を訴える多くのSCL装用者に,その訴えをさらに解決できるレンズの登場が待たれる次第であり,ワンデーDSCLとしてのシリコーンハイドロゲルCLは,その可能性を秘めたレンズということができよう.文献1)小玉裕司:ソフトコンタクトレンズと眼障害.日コレ誌45補遺:S2-S5,20032)濱野孝,小谷摂子,光永サチ子:コンタクトレンズ装用と乾燥感.臨眼53:1053-1056,19993)LempMA:ReportoftheNationalEyeInstitute/Industryworkshoponclinicaltrialsindryeyes.??????21:221-232,19954)丸山邦夫,横井則彦,木下茂ほか:乾燥感の軽減を目的とした1日使い捨てソフトコンタクトレンズの比較検討.日コレ誌48:20-25,20065)濱野孝:コンタクトレンズと涙液のインターアクション.日コレ誌36:21-23,19946)NicholsJJ,King-SmithPE:Thicknessofthepre-andpost-contactlenstear?lmmeasuredinvivobyinterfer-ometry.?????????????????????????44:68-77,20037)丸山邦夫,横井則彦:コンタクトレンズ装用眼とティアダイナミクス.日コレ誌45:60-65,20038)HamanoH:Thechangeofpre-cornealtear?lmbytheapplicationofcontactlenses.????????????????????????????7:205-209,19819)GuillonJP:Tear?lmstructureoncontactlens.ThePre-ocularTearFilminHealth,Disease,andContactLensWear(edbyHollyFJ),p914-916.DryEyeInstitute,Lub-bock,Texas,198610)濱野光:Evaporimeterの眼科領域への応用.日コレ誌22:101-107,198011)Cedarsta?TH,TomlinsonA:Acomparativestudyoftearevaporationratesandwatercontentofsoftcontactlenses.??????????????????????60:167-174,198312)濱野孝:涙液とコンタクトレンズ.あたらしい眼科8:1707-1713,1991(27)