———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSムのVEGFを阻害する.さらに,アミノ酸配列を少し変えているため,VEGFへの親和性はbevacizumabよりも高い.現在ranibizumabの適応は中心窩下にCNVを伴った滲出型AMDということになる(図2).IIRanibizumabの使い方Ranibizumabは硝子体内注入することにより用いられる.現在,硝子体内注射は,海外では外来で行われることが多いが,日本では入院で行われることが比較的多い.麻酔は点眼麻酔で十分である.消毒の後,有水晶体眼では角膜輪部から4mm,無水晶体眼,偽水晶体眼では3.5mm後方から30ゲージ針で注入する(図3).感染予防のため投与前後には抗生物質の点眼をするほうが安全である.投与量は50??であるので,前房穿刺をすIRanibizumab(Lucentis?)とはこれまでの報告から滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)における脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の発症には血管内皮細胞増殖因子(vascularendothelialgrowthfac-tor:VEGF)が強く関与していると考えられている.そこで,このVEGFを阻害することで,CNVの治療を行おうというのは自然な試みである.VEGFを標的に眼科で最初に臨床応用された薬剤がpegaptanib(Macugen?)であり,2004年10月にアメリカFDA(FoodandDrugAdministration)の認可を受け,日本でも治験が行われている.Pegaptanibはアプタマーとよばれるオリゴヌクレオチド製剤であり,VEGFアイソフォームに対する特異性がある.VEGF165には結合するが,VEGF121には結合しないため,生体に対して安全であろうと推測されている1).一方,bevacizumab(Avastin?)はマウス由来の抗ヒトVEGF中和抗体として転移性大腸癌・結腸癌に対してFDAの承認を受け,アメリカでは臨床応用されている.しかし,全長の抗VEGF中和抗体bevacizumabは硝子体内注入した場合の網膜内移行性が悪いと考えられている.そこで,抗VEGF中和抗体のFabフラグメントから作られたより小さな分子量の誘導体としてranibizumabが開発された(図1)2,3).VEGFアイソフォームに対する特異性はなく,すべてのアイソフォー(9)???*AkitakaTsujikawa:京都大学大学院医学研究科視覚病態学〔別刷請求先〕辻川明孝:〒606-8507京都市左京区聖護院河原54京都大学大学院医学研究科視覚病態学特集●加齢黄斑変性の薬物治療あたらしい眼科24(3):275~280,2007抗VEGF抗体:Ranibizumab(Lucentis?)????-?????????????:???????????(?????????)辻川明孝*図1Ranibizumab(Lucentis?)の構造(文献3から一部改変),OO,LightchainHeavychainHumanizedFabフラグメントHumanizedFabフラグメント全長Humanized抗体(約149kD)Humanized抗体フラグメント(48kD)Humanized抗体の合成選択的結合能の向上FcFcBevacizumab(Avastin?)Ranibizumab(Lucentis?)———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.3,20071.MARINA(MinimallyClassic/OccultTrialoftheAnti-VEGFAntibodyRanibizumabintheTreatmentofNeovascularAge-relatedMacularDegeneration)Study2006年10月,MARINAStudyの2年の結果が公表された(表1)4).この多施設無作為プラセボ対照二重盲検試験では,中心窩下にminimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVを伴ったAMDの患者を対象として行われた.これは,その時点で最も有効と考えられていた光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)の効果がpredominantlyclassicCNVに比べて,minimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVでは効果が低いためである.対象のAMD症例716眼に対して,238眼に0mg(sham),238眼に0.3mg,240眼に0.5mgのranibizumabが月1回24カ月間投与された.Sham群,0.3mg投与群,0.5mg投与群とを比較すると,24カ月後の視力変化はそれぞれ14.9字低下,5.4字上昇,6.6字上昇と薬剤投与群で有意(p<0.001)に良好であった(図4).また,視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ52.9%,92.0%と90.0%であり,薬剤投与により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15る必要はまずない.海外での治験では月1回の反復投与が行われたが,実際にどの程度の頻度,投与期間が必要かは不明である.III海外の臨床試験の結果中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMDに対する日本人を対象としたranibizumabの第I/II相臨床試験は現在行われている最中であり,日本人に対する安全性,有効性のデータは存在しない.そのため,データは海外で行われた臨床試験の結果から推測せざるをえない.これまでに,ranibizumabの中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMDに対する3つの臨床試験の結果が報告されている.(10)図2中心窩下に脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性Ranibizumab(Lucentis?)の適応と考えられる.図3有水晶体眼では角膜輪部から4mm,無水晶体眼,偽水晶体眼では3.5mm後方から30ゲージ針で注入———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???字以上)はsham群で3.8%,0.3mg群で26.1%,0.5mg群で33.3%であり.薬剤投与により有意(p<0.001)に視力改善が得られる結果となった.2.FOCUS(RhuFabV2OculartreatmentCombin-ingtheUseofVisudynetoEvaluateSafety)Study2006年10月,ranibizumabとPDT併用試験のデータとしてFOCUSStudyの1年後の結果が発表された(表2)5).この第I/II相多施設無作為単盲検試験ではGLD(病変最大直径)5,400?m以下の中心窩下にpre-dominantlyclassicCNVを伴ったAMD症例を対象として行われた.Day0にPDTを施行し,1週間後に,PDT単独群(PDT+sham)にはshaminjectionを,ranibizumab併用群にはranibizumab0.5mgの投与を行った.PDTは通常のPDTと同様に3カ月ごとにフルオレセイン蛍光眼底造影を施行し,蛍光漏出がみられれば再治療を行った.また,shamもしくはranibizum-ab0.5mgの硝子体内注入は月1回12カ月行われた.治療開始後1年の経過では,PDT単独群(56眼)と(11)表1MARINAStudyの結果MinimallyClassic/OccultTrialoftheAnti-VEGFAntibodyRanibizumabintheTreatmentofNeovascularAge-RelatedMacularDegenerationStudyDesign:第III相多施設無作為プラセボ対照二重盲検試験対象:minimallyclassicCNVまたはoccultwithnoclassicCNVを中心窩下に伴った加齢黄斑変性ShamRanibizumab(0.3mg)Ranibizumab(0.5mg)割付238眼238眼240眼24カ月後に15字未満の視力低下52.9%92.0%*90.0%*24カ月後に15字以上の視力上昇3.8%26.1%*33.3%*24カ月後に20/40以上の視力5.9%34.5%*42.1%*24カ月後に20/200以下の視力47.9%14.7%*15.0%*24カ月後の平均視力変化-14.9文字+5.4文字*+6.6文字**p<0.001(sham群と比較して)(文献4から一部改変)表2FOCUSStudyの結果RhuFabV2OcularTreatmentCombiningtheUseofVisudynetoEvaluateSafetyStudyDesign:第I/II相多施設無作為単盲検試験対象:GLD5,400?m以下のpredominantlyclassicCNVを中心窩下に伴った加齢黄斑変性PDT単独Ranibizumab(0.5mg)+PDT割付56眼106眼12カ月後に15字未満の視力低下67.9%90.5%a12カ月後に15字以上の視力上昇5.4%23.8%b12カ月後に30字以上の視力低下8.9%1.0%d12カ月後に20/40以上の視力7.1%20.0%a12カ月後に20/200以下の視力46.4%29.5%c12カ月後の平均視力変化-8.2文字+4.9文字a再治療の割合91.1%27.6%aap<0.001,bp=0.003,cp=0.006,dp=0.01(PDT単独群と比較して)(文献5から一部改変)図4MARINAStudyでの視力変化の結果(文献4から一部改変)期間(月):Rabinizumab(0.5mg):Rabinizumab(0.3mg):Sham視力変化(文字)036912151821241050-5-10-15期間(月)Rabinizumab+PDT視力変化(文字)7d1245367891210111050-5-10PDT-8.2+4.9図5FOCUSStudyでの視力変化の結果(文献5から一部改変)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007ranibizumab併用群(105眼)とを比較すると,12カ月後の平均視力変化はそれぞれ8.2字低下,4.9字上昇と,ranibizumab併用群で有意(p<0.001)に良好であった(図5).視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ67.9%,92.5%であり,ranibizumab併用群により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15字以上)はPDT単独群で5.4%,ranibi-zumab併用群で23.8%であり,ranibizumab併用により有意(p=0.003)に視力改善が得られた.また,再治療を要した割合は,PDT単独群で91.1%,ranibizumab併用群で27.6%であり,ranibizumab併用により有意(p<0.001)に再治療を必要としなくなった.3.ANCHOR(Anti-VEGFAntibodyfortheTreat-mentofPredominantlyClassicChoroidalNeo-vascularizationforAge-relatedMacularDegen-eration)Study2006年11月,PDTとranibizumabの効果の比較試験のデータとしてANCHORStudyの1年後の結果が発表された(表3)6).この第III相多施設無作為単盲検試験ではGLD5,400?m以下の中心窩下CNVを伴ったAMD症例を対象として行われた.Shaminjectionまたはranibizumab(0.3mg)またはranibizumab(0.5mg)の硝子体内注入を1カ月おきに1年間施行した.また,shaminjection群にはPDTを施行し,ranibizumab投与群にはshamPDTを施行した.PDT(shamPDT)は通常のPDTと同様に3カ月ごとにフルオレセイン蛍光眼底造影を施行し,再治療の必要が認められれば再治療を行った.治療開始後1年の経過では,PDT群(143眼)とranibizumab0.3mg群(140眼)とranibizumab0.5mg群(140眼)を比較すると,12カ月後の平均視力変化はそれぞれ9.5字の低下,8.5字上昇,11.3字上昇と,ranibizumab併用群で有意(p<0.001)に良好であった(図6).視力の改善または安定(15字未満の視力低下)はそれぞれ64.3%,94.3%,96.4%であり,ranibi-zumab併用群により有意(p<0.001)に視力低下が抑制された.また,視力改善(15字以上)はPDT群で5.6%,ranibizumab0.3mg群で35.7%,ranibizumab0.5mg群で40.3%であり,ranibizumab併用により有意(p<0.001)に視力改善が得られた.また,治療回数は,PDT群で2.8回,ranibizumab群でそれぞれ1.7回であった.中心窩下にCNVを伴ったAMDに対する治療としては光凝固が長い間エビデンスに基づく唯一の方法であった.しかし,治療直後から高度で恒久的な視力低下が伴(12)期間(月):Rabinizumab(0.5mg):Rabinizumab(0.3mg):PDT視力変化(文字)0453336789101112151050-5-10-15図6ANCHORStudyでの視力変化の結果(文献6から一部改変)表3ANCHORStudyの結果Anti-VEGFAntibodyfortheTreatmentofPredominantlyClassicChoroidalNeovascularizationforAge-relatedMacularDegenerationStudyDesign:第III相多施設無作為二重盲検試験対象:GLD5,400?m以下のCNVを伴ったAMDPDTRanibizumab(0.3mg)Ranibizumab(0.5mg)割付143眼140眼140眼12カ月後に15字未満の視力低下64.3%94.3%*96.4%*12カ月後に15字以上の視力上昇5.6%35.7%*40.3%*12カ月後に20/40以上の視力2.8%31.4%*38.6%*12カ月後に20/200以下の視力60.1%22.1%*16.4%*12カ月後に30字以上の視力低下13.3%0%*0%*24カ月後の平均視力変化-9.5文字+8.5文字*+11.3文字*治療回数2.8回1.7回1.7回*p<0.001(PDT群と比較して)(文献6から一部改変)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007???うことが多いため,feedervessel凝固などの応用がなされてきた.その後,PDTが鳴り物入りで導入され,広く施行されるようになったが,それでも,術後の平均視力は低下しており,高度な視力低下のリスクを減らすという目的の意味合いが強かった.その後,薬物治療としてpegaptanibが導入された.しかし,studyの結果でも平均視力は低下していた.そういう意味で,MARINAStudy4)で示されたようにranibizumabは治療により平均視力が上昇する,視力改善の可能性がある治療法として注目を集めている.IV安全性Ranibizumabの硝子体内投与に伴う眼局所のadverseeventとしては,眼内炎症,水晶体損傷,網膜?離などがあげられる.先に紹介したMARINAStudy4)ではranibizumab投与群477眼中,眼内炎を疑わせる症例が5眼(1.0%),ぶどう膜炎6眼(1.3%),網膜裂孔2眼(0.4%),硝子体出血2眼(0.4%),水晶体損傷1眼(0.2%)が報告されている.また,眼内炎症は軽度の症例を含めると32眼(6.7%)に報告されている.しかし,Studyではほぼ全例外来で注射されていると考えられる.しかし,入院で施行する場合の安全性については不明であるが,より安全であることが予測される.Study期間中の全身的なadverseeventとしては種々報告されているが,ほとんどはshaminjection群と大きな差はないようである.脳梗塞はshaminjection群で0.8%であるのに対して,ranibizumab(0.3mg)群,ranibizumab(0.5mg)群でそれぞれ,1.3%,2.5%であった.硝子体内に投与されたranibizumabは少量ではあるが血中に入る.しかし,全身的な合併症を起こすかどうかは不明である.V日本人に対しては?わが国での治療効果は現在治験中であり,不明である.わが国では広義AMD中のポリープ状脈絡膜血管症の割合が高いことが知られている.ポリープ状脈絡膜血管症は狭義AMDよりも視力予後が良く,治療に対する反応性も異なる可能性がある.PDTの欧米のデータでは治療を行っても平均視力は低下するが,日本での治験であるJAT(JapaneseAge-relatedMacularDegenera-tionTrial)Studyでは視力維持効果があることが示されている.また,わが国での認可後の各施設からの報告でもPDTは明らかに欧米人に対するよりも良好な結果が報告されている.では,ranibizumabの場合はどうであろう?結論としては不明であり,治験の結果を待たざるをえない.PDTの場合と同様に効果が良好な可能性はある.しかし,全長の抗体であるbevacizumabのポリープ状脈絡膜血管症への治療効果は低いという報告もある.また,bevacizumabとranibizumabの反応性が同じともかぎらない.いずれにせよ,海外のデータが日本人にそのまま当てはまらない可能性は十分にありうる.おわりに昨年のAAO(AmericanAcademyofOphthalmology)はbevacizumab一色であった.もちろん,ranibizumabも有効性が示され,脚光を浴びていた.何が違うかというと,その価格である3).アメリカではLucentis?は1回当たり$1,950ある.一方,Avastin?は1バイアル100mgで$550である.1バイアルから何本とるかによるが$17から$50程度と試算されている.O?label使用なので,リスクはあるが,需要があるのも確かである.あるポスターではLucentis?が$4,000だったらAvastin?を使うが,$100だったらLucentis?を使うと書かれていた.もちろん,日本は事情が違う.国民皆保険で,誰もが安全で有効な治療を受けることができる.安易なo?label使用には問題が大きいことは間違いない.文献1)石田晋,山城健児:血管新生治療薬(VEGF阻害薬─PegaptanibとRanibizumab─).眼科48:187-192,20062)ChenY,WiesmannC,FuhGetal:Selectionandanalysisofanoptimizedanti-VEGFantibody:crystalstructureofana?nity-maturedFabincomplexwithantigen.??????????293:865-881,19993)SteinbrookR:Thepriceofsight─ranibizumab,bevaci-zumab,andthetreatmentofmaculardegeneration.????????????355:1409-1412,20064)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabfor(13)———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.3,2007neovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1419-1431,20065)HeierJS,BoyerDS,CiullaTAetal:Ranibizumabcom-binedwithvertepor?nphotodynamictherapyinneovas-cularage-relatedmaculardegeneration:year1resultsof(14)theFOCUSStudy.???????????????124:1532-1542,20066)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:Ranibizumabversusvertepor?nforneovascularage-relatedmaculardegeneration.????????????355:1432-1444,2006