———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS用である.本稿では,黄斑ジストロフィ,硝子体網膜ジストロフィ,Bruch膜ジストロフィのうち代表的な遺伝性網脈絡膜疾患とその原因遺伝子について概説する.I黄斑ジストロフィ黄斑ジストロフィとは,黄斑に進行性の変性がみられる遺伝性疾患の総称である.1.錐体(杆体)ジストロフィ錐体ジストロフィ(conedystrophy:COD)や錐体杆体ジストロフィ(cone-roddystrophy:CORD)は早期の錐体視細胞の変性による視力低下,色覚異常や中心暗点を特徴とする遺伝性網脈絡膜変性疾患の一つである.進行すると,錐体視細胞の変性に続き杆体視細胞の変性はじめに遺伝性網脈絡膜疾患は致死性でないものが大部分であり,各形質は子孫に伝えられるため,その数は多い.このことは,遺伝性疾患のオンラインデータベースであるOnlineMendelianInheritanceinMan(OMIM)のうち約4分の1が遺伝性眼疾患であることからもわかる.近年のヒトゲノムの解読により,染色体上の位置,構造,機能,個体差などの正確な情報が加速度的に蓄積されている1,2).その結果,疾患遺伝子座が位置する染色体領域を抽出すれば原因遺伝子を解明することが容易になったため(位置的候補遺伝子アプローチ),現在では大部分の単因子性の遺伝性網脈絡膜疾患の原因遺伝子が同定されている(表1).遺伝性網脈絡膜疾患のゲノム解析を行うことは,病態のより深い理解や診断の確定などに有(3)????*ShigeoYoshida&YokoYamaji:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕吉田茂生:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野特集●網脈絡膜変性疾患のアップデートあたらしい眼科23(9):1113~1123,2006遺伝性網脈絡膜疾患の遺伝子解析??????????????????????????????????????????????????????????????吉田茂生*山地陽子*表1遺伝性網脈絡膜疾患と原因遺伝子臨床像原因遺伝子黄斑ジストロフィ????????????????????????????????錐体ジストロフィ?????????????????????????????????????????????????????????硝子体網膜ジストロフィ?????????????????????????????????????????????????????網膜色素変性???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????先天夜盲????????????????????????????????????????????????????????Bruch膜ジストロフィ?????脈絡膜ジストロフィ?????????遺伝性視神経萎縮???????????ミトコンドリア(11,778,14,484,3,460番塩基など)色覚異常???????????????????———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006が起こり,夜盲や周辺視野欠損などをひき起こす3~5).眼底像は多彩であり,非定型的黄斑変性,標的黄斑症(図1)や,異常のないものもある.網膜電図が診断の決め手となり,典型例では錐体系の反応が高度に減弱している(図1).CODやCORDの遺伝形式は多様で,これまでに優性,劣性,X連鎖性が報告されている.遺伝的異質性も高く,常染色体優性CORDでは???,??????,?????,??????,?????,??????が,常染色体劣性CORDでは?????,????が,X連鎖性CORDでは????が明らかになっている6)が,原因遺伝子を同定できない症例も少なくない.CORD遺伝子変異同定はその高い遺伝的異質性のため,まだ一般臨床で広く用いられるには至っていない.したがって,さまざまな候補となる遺伝子から迅速,効率的な原因遺伝子の同定法の確立が望まれる.筆者らは遺伝子型タイピングチップによる変異スクリーニングを行ったところ,変異同定には至らなかったが,チップスクリーニングシステム自体の再現性は高いと考えてよいことを確認した.したがって,適切な変異部位を網羅した遺伝子型タイピングチップを作成すれば,疾患原因遺伝子変異と疾患修飾遺伝子を同時にスクリーニングでき(4)AB図1錐体ジストロフィA:眼底写真.典型的な標的黄斑病巣(bull?seyemaculopathy)を認める.B:蛍光眼底造影写真.黄斑部の萎縮部位に一致して顆粒状の過蛍光を認める.C:網膜電図(ERG).錐体系の反応がほぼ消失している.ScotopicFlickerPhotopicSingle-?ash10ms100?V10ms100?V20ms100?V20ms100?Vononononononコントロール錐体ジストロフィC———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????る可能性があると考えている7).2.卵黄様黄斑ジストロフィ特徴的な卵黄様の黄斑所見からその病名がつけられた疾患で,1905年Bestにより初めて報告された8).遺伝形式は常染色体優性で,浸透率は高くない.眼底所見は病期によって変化し,卵黄様病巣期(図2),偽前房蓄膿期,いり卵期,萎縮期に分けられる.通常保因者でも5歳から10歳ごろまで正常眼底を示す.患者では病期にかかわらず眼球電図で明極大と暗極小の比(L/D比)の減少がみられる9,10).網膜電図は通常正常である.病理組織学的には病巣部より広範囲にわたって網膜色素上皮層のメラニン顆粒の増加や,異常なリポフスチン顆粒の細胞内蓄積,病巣部では視細胞層にも変性がみられる11).さらにBruch膜が断裂し,脈絡膜血管新生の報告もある12).原因遺伝子としてvitelliformmaculardystrophy2(????)が報告されている13).????のコードするbestrophin蛋白は網膜色素上皮のbasolateralmem-braneに存在するカルシウム感受性クロライドチャネルで14),????の遺伝子変異により網膜色素上皮細胞の膜電流が抑制され,眼球電図(EOG)の平坦化およびリポフスチンの沈着が生じると考えられる15).近年,????変異の公のデータベースが充実してきており,変異同定が容易になっている(図3)16).3.Stargardt黄斑ジストロフィ1909年にStargardtによって報告された常染色体劣性の疾患である17).通常小児期に両眼性の視力低下で発症する.眼底所見は多彩で,初期に認められる所見は中心窩反射の消失であり,ついで網膜深層に帯黄灰白色の斑点が現れる.進行期になると,黄斑部を中心に比較的境界明瞭な金属粉状の反射(beaten-metalappearance)が多数みられるようになり,ときには色素斑も出現する.病理組織所見として,後極部網膜の網膜色素上皮細胞の大きさの不揃い,メラニン顆粒の減少,さらに異常リポフスチン顆粒と思われるPAS陽性物質の色素上皮細胞内蓄積がみられる18).このため蛍光眼底造影で背景蛍光が暗くなるdarkchoroidという特徴的な所見が認められる.網膜電図は病変の進行度によって変化する19).原因遺伝子であるATP-bindingcassette,sub-familyA,member4(?????)20)はアデノシン三リン酸結合カセット(???)ファミリーの一つで,分子を細胞の内外へ輸送する膜蛋白質をコードしている.?????は視細胞外節円板に存在し,ビタミンA誘導体の再生過程に関与する.?????の異常では,その輸送活性が障害され,細胞障害性をもつ全トランス型レチナールが杆体,錐体に蓄積し,網膜色素上皮や視細胞の変性と,リポフスチンの異常な蓄積が起こると考えられている21,22).黄斑変性が軽度で黄色斑のみがみられる場合は黄色斑(5)図2卵黄様黄斑ジストロフィの眼底A:眼底写真.黄斑部に特徴的な卵黄様病変を認める.B:光干渉断層像(OCT3).視細胞層とRPE層の間に紡錘形の高反射体を認める.AB———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006眼底と診断されるが,遺伝学的には同一の疾患である.Stargardt病と黄色斑眼底を合わせて以下の4型に分類される23).Ⅰ群:黄斑萎縮巣のみ,Ⅱ群:黄斑萎縮巣とその周囲の黄色斑,Ⅲ群:黄斑萎縮巣と,広範に散在する黄色斑,Ⅳ群:広範に散在する黄色斑.?????の変異により,錐体杆体ジストロフィや網膜色素変性を生ずることも報告されているが,この疾患多様性は,変異分布の差異による正常?????蛋白の残存活性の程度によると考えられている24,25).II硝子体網膜ジストロフィ硝子体網膜ジストロフィとは,硝子体の変化および異常な網膜硝子体癒着や変性など網膜硝子体に異常を生じる遺伝性疾患である.1.X連鎖性網膜分離症X連鎖性遺伝を示す硝子体網膜ジストロフィである.車軸状?胞様の黄斑部網膜分離症(図4),周辺部網膜分離症,周辺網膜の金箔様反射,網膜電図での陰性b波などを特徴とする.病理組織学的にM?ller細胞の障害が示唆され,分離は網膜神経線維層で起こる(図4).黄斑部の加齢に伴い,?胞様変化は非定型的な変性巣に変化したり,周辺の網膜分離が消失し,網膜色素変性様の所見を示す場合があるなど,病像が変化する5).このため,診断確定に原因遺伝子であるretinoschisis1(???)26)の遺伝子解析が有用である場合がある.???は網膜発生過程から水平細胞以外の網膜神経細胞に発現し,網膜の分化や細胞接着に関与すると考えられる27,28).後部硝子体?離があると進行しないことから(6)図3VMD2変異のインターネット上のデータベース(http://www.uniwuerzburg.de/humangenetics/vmd2.htmlより)これまで報告された変異がまとめられている.自験例では既知の変異を同定しデータベース照合が有効であった.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006???????の変異で網膜層間の接着が脆弱になり,後部硝子体未?離眼では硝子体の牽引により,層間分離を助長する可能性がある.2.Stickler(STL)硝子体ジストロフィ網膜と硝子体の変性および高度近視を伴う常染色体優性遺伝の疾患である.高度近視,硝子体網膜変性や網膜?離を特徴とし,関節変性,顔面低形成,難聴などの眼外症状を合併する.1965年Sticklerらにより報告された29).現在まで眼科的に広く受け入れられている診断基準はないが,欧米では近年,分子遺伝学的に膜型硝子体を伴うSTL硝子体ジストロフィⅠ型(collagen,typeⅡ,alpha1;??????遺伝子異常),ビーズ型硝子体を伴うSTLⅡ型(collagen,typeXI,alpha1;???????異常),眼症状を伴わないⅢ型(collagen,typeXI,alpha2;???????異常)に分類されている30).Ⅰ型は眼限局型(??????のエクソン2の異常)と眼外症状合併型に細分類される(図5)31,32)が,エクソン2以外の変異でも眼に限局した病変が生じうると報告され33),今後の検討を要する.筆者らも,両眼に膜型の硝子体を伴う日本人の網膜?離患者に対し,??????の遺伝子解析を行ったところ,??????のエクソン2に変異を認め,わが国にも眼限局型STLⅠ型が存在するのを確認している34)(図6).眼限局型STLI型は眼外症状を伴わないため見落とされているかWagner病などと混同されている可能性があり(表2),??????遺伝子の解析が,STL硝子体ジストロフィの診断確定や診断基準の確立に有用であると考えている35).(7)表2Stickler硝子体ジストロフィとWagner病の比較Stickler硝子体ジストロフィWagner病遺伝形式屈折異常硝子体異常網膜?離網脈絡膜異常夜盲眼外症状原因遺伝子常染色体優性強度近視+約50%+-±???????????????常染色体優性中等度近視+まれ++-?????図4X連鎖性若年性網膜分離症A:眼底写真.黄斑部に車軸上の網膜分離を認める.B:光干渉断層像(OCT3).網膜の中間層に網膜分離がみられる.分離した網膜内外層はM?ller細胞によりつながっている.AB図5II型コラーゲンのアイソフォーム??????は選択的スプライシングによりエクソン2を含むⅡA型コラーゲンと含まないⅡB型コラーゲンのアイソフォームを生じる.ⅡA型は硝子体に,ⅡB型は軟骨に優位に発現している.現在のところ,??????のエクソン2の変異で眼限局型の表現型が,エクソン2以外の変異で全身症状合併型のStickler症候群を生じると考えられている.134N452134N452134N45??????遺伝子選択的スプライシングⅡA型コラーゲン硝子体優位に発現ⅡB型コラーゲン軟骨優位に発現———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.9,20063.Wagner病1938年Wagnerによって硝子体の液化(発達不全)と網膜色素変性,白内障などの異常を伴う疾患として報告された常染色体優性遺伝の網膜硝子体ジストロフィである36).STL硝子体ジストロフィとしばしば混同されているが,網膜?離の頻度は低く,近視の程度は中等度で,全身異常は合併しない.Erosivevitreoretinopathyとともに5番染色体長腕に連鎖し37,38),分子遺伝学的にStickler症候群と異なった疾患であることが明らかになっている.Chondroitinsulfateproteoglycan2(?????)が原因遺伝子である可能性が示唆されている38~40).?????は硝子体中でヒアルロン酸およびⅡ型コラーゲンと結合し,硝子体の安定化に寄与していると考えられる39).4.家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)周辺部網膜血管の発育不全により未熟児網膜症類似の病変を示す遺伝性疾患である.1969年Criswick,Schepensによって初めて報告された41).若年性網膜?離の原因として重要である.網膜硝子体病変は,周辺網膜無血管野のみのものから,続発する血管新生や鎌状網膜?離などを伴うものまで多彩である.無血管野への光(8)図6眼限局型Stickler症候群I型の硝子体所見A:25歳女性の右眼の前眼部写真.B:B-モードエコー(水平断).膜型の硝子体がみられる.C:??????遺伝子のダイレクトシークエンスで新規の第237グアニンの欠失変異(矢印)をヘテロ接合で同定した.(文献34より)ABC———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????凝固は進行予防に効果がある.現在まで確立した診断基準はないが,網膜血管走行異常があり,未熟児,酸素投与の既往がないことが必須とされている.近年,原因遺伝子が相次いで報告されている.FEVRには遺伝的異質性があり,遺伝形式として常染色体優性(frizzledhomolog4:????遺伝子異常,lowdensitylipoproteinreceptorrelatedprotein5:????遺伝子異常),常染色体劣性(????),X連鎖性劣性遺伝(Norriedisease:???遺伝子異常)が報告されている42~45).????,???,????ともにWntシグナル伝達系に関与していることが明らかになっている46)(図7).Wntシグナリングはショウジョウバエからヒトに至るまで普遍的に保存されるシグナル伝達機構で,発生分化に重要な役割を演じており,ヒト周辺網膜血管の成熟にも関与していることが示唆される.FEVRの病変は生涯にわたって変化する可能性があり,早期の診断と適切な時期の治療が必須である47).鑑別疾患である第一次硝子体過形成遺残と誤診されることもあり48),診断確定には遺伝子診断が有用である場合がある.筆者らも,約10年間の経過観察中に内斜視,滲出性網膜?離,網膜円孔など多彩な眼底所見を呈した日本人FEVR患者に新規の????遺伝子変異を同定した49)(9)図7家族性滲出性硝子体網膜症A:13歳女児の右眼の眼底写真.牽引乳頭と耳側血管の直線化がみられる.B:同一症例の左眼底周辺網膜.無血管野があり,網膜円孔,網膜硝子体癒着(矢印)を生じている.C:????遺伝子のダイレクトシークエンス.595番目のアデニン(A)からグアニン(G)へのミスセンス変異をヘテロ接合で同定した.D:Wnt受容体複合体の模式図.7回膜貫通型受容体であるfrizzledhomolog4(????),lowdensitylipoproteinreceptorrelatedprotein5(????),Norriedisease(???)はWnt受容体複合体を形成し,周辺部網膜血管形成を制御していると考えられる.(文献49より)ABWnt???????????CD———————————————————————-Page8????あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006(図7).IIIBruch膜ジストロフィ網膜色素線条網膜色素線条(angioidstreaks)はBruch膜の断裂により特徴的な線条が眼底にみられる常染色体劣性の疾患である.皮膚の屈側に弾性線維性仮性黄色腫(pseudo-xanthomaelasticum)を伴うことが多く,眼と皮膚の症状を合わせてGronblad-Strandberg症候群とよばれている50).線条は通常赤黒褐色で,乳頭を囲む輪状の部分とそこから放射状に伸びる部分からなる.線条の両側には灰白色の帯を伴い,乳頭周囲では線条を取り囲むヒトデ様の外観を呈する.さらに,後極部の眼底は萎びたミカンの皮(peaud?orange)類似の色調を示し,わが国では梨子地眼底とよぶ51).線条が黄斑に及ぶと,視力障害や変視などが生じる.ごく軽い外傷でも黄斑に出血を起こすことがある.視力障害の主因は,網膜下血管新生,網膜色素上皮?離および黄斑変性で,加齢黄斑変性と類似の病像を示す(図8).蛍光眼底造影検査では,線条部は動脈期から著明な過蛍光を示す.病理組織学的観察ではBruch膜は肥厚,断裂し,弾性線維にカルシウムの沈着がみられる.Bruch膜の断裂部の網膜色素上皮細胞は菲薄化し,線条の両側では網膜色素上皮細胞が変性萎縮する52).原因遺伝子は,???ファミリーに属するATP-bind-(10)図8網膜色素線条A:48歳男性の左眼の眼底写真.視神経乳頭からのびる網膜色素線条を認める.黄斑部に網膜下出血,脈絡膜新生血管を生じている.B:ATP-bindingcassette,sub-familyC,member6(?????)遺伝子のダイレクトーシークエンス.1,026番目のシトシン(C)からチミン(T)へのミスセンス変異をホモ接合で同定した.C:?????蛋白の構造.3つの膜貫通ドメインと2つのATP結合ドメインから成る.(文献54より)ABNH2COOHATP結合部位ATP結合部位細胞外細胞膜細胞内C———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.23,No.9,2006????ingcassette,sub-familyC,member6(?????)で,網膜の有核細胞で発現している53,54)(図8).筆者らも網膜下新生血管を生じた網膜色素線条患者に新規の変異を同定している54)(図8).その輸送基質はまだ明らかでないが,軟部組織のミネラルの代謝制御を介して,弾性線維の恒常性維持に重要な役割を演じていると考えられ,網膜色素線条の根本原因は代謝異常病であることが示唆される55,56).?????とともに,網膜の機能維持における???ファミリーの重要な役割が推察される.おわりに21世紀は,遺伝子診療の時代といわれている.現在も,さまざまな生物のゲノム情報がすでに確立した塩基配列決定法を基盤に集積され続けており,ゲノム情報がこれからも眼科臨床にインパクトを与え続けることは確実である.今後,DNAチップなどを用いた疾患原因遺伝子や修飾遺伝子の包括的かつ迅速なゲノム解析システムが確立していけば57),非定型的な臨床所見を示す遺伝性網脈絡膜疾患の診断確定や,病勢の予測診断がより容易になる可能性があり,遺伝カウンセリングにも有用となるだろう.また,疾患概念があいまいなFEVRなどでは,遺伝子型によるより確かな診断基準の確立がなされていくかもしれない.さらに,生命の設計図であるゲノムレベルでの病因把握を続行し,これを基盤にして発症の分子機序を明らかにできれば,病態の新しい理解や,確実な治療の分子標的の創出につながっていくことが期待される.文献1)InternationalHumanGenomeSequencingConsortium:Finishingtheeuchromaticsequenceofthehumangenome.??????431:931-945,20042)AltshulerD,BrooksLD,ChakravartiAetal:Ahaplo-typemapofthehumangenome.??????437:1299-1320,20053)MooreAT:Coneandcone-roddystrophies.???????????29:289-290,19924)RabbMF,TsoMO,FishmanGA:Cone-roddystrophy.Aclinicalandhistopathologicreport.?????????????93:1443-1451,19865)三宅養三:黄斑ジストロフィ.日眼会誌107:229-241,20036)ItoS,NakamuraM,NunoYetal:NovelcomplexGUCY2DmutationinJapanesefamilywithcone-roddys-trophy.?????????????????????????45:1480-1485,20047)YoshidaS,YamajiY,YoshiokaAetal:Noveltriplemis-sensemutationsofGUCY2DgeneinJapanesefamilywithcone-roddystrophy:Possibleuseofgenotypingmicroar-ray.???????(inpress)8)GodelV,ChaineG,RegenbogenLetal:Hereditaryvitel-liformmaculardystrophy.????????????????????14:221-228,19869)ArdenGB:Alterationsinthestandingpotentialoftheeyeassociatedwithretinaldisease.???????????????????????82:63-72,196210)CrossHE,BardL:Electro-oculographyinBest?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