———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLS示した.1.血管年齢血管年齢の評価方法には加速度脈波法3)と脈波伝播速度(PWV)法4)がある.前者は脈波の形が何歳くらいの人の脈波に相当するかを調べるもの,後者は脈波が血管壁を伝わる速度が動脈硬化の程度を反映するという性質を利用している.両者を中立な立場で比較検討した成績が待たれる.血管年齢の検査結果はあくまで指標にすぎず,治療上大切なのは動脈硬化の危険因子の是正であIアンチエイジング医学老化だ,アンチエイジングだといったところで人の老化の仕方はさまざま,老化を促進する危険因子もさまざまである1).同様に眼の老化の仕方は個々により異なる.それぞれの状況に応じたアンチエイジング指導と治療が必要である.眼の老化は全身の老化と深く関わるので,眼から全身へ,全身から眼へと,全人的観点からのアンチエイジング医学はこれからの眼科医にきわめて有用となろう.アンチエイジングを実践する医療機関は増えつつあるが,それぞれが勝手気ままな検査をやっている状況が続くと,受診者は困惑するばかりでアンチエイジング医学の健全な発展は望めない.ここではある程度絞り込んだうえで,老化度を評価するためのいくつかの検査方法を紹介する.II老化度評価のための検査項目医療機関では,老化度を筋年齢・血管年齢・神経年齢・ホルモン年齢・骨年齢として評価すると良い.受診者は自分の機能年齢に興味をもつことが多く,骨年齢やホルモン年齢というような機能年齢として表現するとわかりやすい2).また老化危険因子として免疫機能・酸化ストレス・心身ストレス・生活習慣・代謝機能(解毒を含む)についても評価する.老化度と老化危険因子の代表的測定方法・バイオマーカーについては図1,表1に(13)????*YoshikazuYonei&YokoTakahashi:同志社大学アンチエイジングリサーチセンター〔別刷請求先〕米井嘉一:〒602-8580京都市上京区今出川烏丸東入同志社大学アンチエイジングリサーチセンター特集●眼科におけるアンチエイジング医学の流れあたらしい眼科23(10):1255~1261,2006アンチエイジング医学で行う検査項目?????????????????????????-????????????????????米井嘉一*高橋洋子*筋年齢骨年齢ホルモン年齢神経年齢血管年齢老化度免疫機能代謝機能生活習慣心身ストレス酸化ストレス老化危険因子図1老化度と老化危険因子———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006る.危険因子とはタバコ・糖尿病・高血圧・高脂血症の古典的因子とインスリン・アディポネクチン・コルチゾル(ストレスホルモン)・炎症反応〔高感度CRP(C反応蛋白)〕・酸化ストレス・ホモシステインである.頸動脈エコーでは頸動脈壁の中膜肥厚の有無を確認するが,眼科クリニックには不用であろう.内科では「眼底は血管を観察する窓」として動脈硬化の診断に重視している.眼科においても網膜静脈閉塞症,糖尿病網膜症,眼底出血など血管年齢と関連深い疾患がある.加速度脈波法の手技は「指先を数秒間端子に入れる」だけの簡便で安価な方法なので,眼底所見,抗加齢QOL(qualityoflife)共通問診票(後述)とセット検査を実施するなど,眼から全身へ,全身から眼へと,全人的診療をして欲しい.臨床経験を積めば眼底を診るだけで血管年齢を推定できるかもしれない.2.神経年齢高次脳機能には注意力,前頭葉機能,視知覚機能,認知知能,記銘力,精神機能全般が含まれる.障害が起こると,運動障害,感覚障害,意識障害といった要素的障害では説明できない言語,動作,認知,記憶,注意力の障害が現れる.高次脳機能の定量的評価法は確立されたわけではないが,日本脳ドック学会ガイドラインでは日本語版WisconsinCardSortingTest(http://cvddb.shimane-med.ac.jp/user/wisconsin.htmよりダウンロード可能)を推奨している5).パソコンに対面してゲーム感覚でできる5~10分の簡単かつ無侵襲の検査である(図2).基本検査により神経年齢の推定評価ができる.後述するAgingCheck?6)では自験例に基づいて反応時間などを加味したアルゴリズムを作成,より詳細な神経年齢が算出可能となっている.神経系のアンチエイジングとしては,神経は使わないと機能が衰えるので「まず使うこと」が鉄則となる.全身運動と細かい作業の組み合わせがよく,なにか報酬があると成果があがる.会話は,相手の目を見て,耳で聞いて,頭で考え,口を動かすといった一連の神経活動の集大成である.視神経・動眼神経・滑車神経・外転神経など脳神経のうち眼球の関連する割合は高く,視神経からの情報は大脳皮質内の広い領域で処理される.鑑賞(眼の保養)や眼球運動のような適度に眼を使う行為は神経系アンチエイジングに貢献するであろう.新たな機(14)表1老化度と老化危険因子の検査方法老化度?血管年齢:加速度脈波,脈波伝播速度(PWV),頸動脈エコー?神経年齢:高次脳機能検査(WisconsinCardSortingTest),抗加齢QOL共通問診票(http://www.yonei-labo.comより入手可能)?ホルモン年齢:IGF-1,DHEA-s,総テストステロン?骨年齢:骨密度(DEXA法)?筋年齢:握力,除脂肪筋肉量(インピーダンス法)老化危険因子?免疫力:NK細胞活性,DHEA-s?酸化ストレス:8-OHdG,イソプラスタン,LPO(過酸化脂質)?心身ストレス:コルチゾル,DHEA-s,DHEA-s/コルチゾル比?代謝機能(解毒):TSH,T3,T4,インスリン,アディポネクチン,ウエスト/ヒップ比,毛髪検査(有害金属)?生活習慣:睡眠時間,飲酒量,タバコ,運動量,水分摂取量図2日本語版WisconsinCardSortingTest———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????能訓練法・インターベンション・サプリメント療法を実践する際には,眼科領域のパラメータに神経年齢や抗加齢QOL共通問診票(後述)を加えて評価するとよいだろう.3.ホルモン年齢はじめに加齢とともに低下するホルモンのうち若さと健康を保つために重要なものをあげる1).a.成長ホルモン(GH:growthhormone)/IGF-1(insulin-likegrowthfactor-1)GHやIGF-1レベルは30歳前後から低下し,生命予後やQOLの低下の予測因子となっている.若さと健康を保つためには,GH/IGF-1分泌の低下を防ぎ,最適値(オプティマル値)を維持する努力が必要である.GH/IGF-1分泌の刺激因子と抑制因子を図3に示した.ホルモン分泌が生活習慣の影響を受けることがよくわかる.GH/IGF-1分泌を改善させるためにはGH補充よりも生活習慣の是正が重要である.b.DHEA-s(dehydroepiandrosterone-sulfate)DHEAは体内で最も豊富に存在するステロイド系ホルモンで,これを源に性ホルモンや蛋白同化ホルモンなど,50種類以上のホルモンが作られる.DHEAは免疫力やストレスに対する抵抗性を維持し,糖尿病,高脂血症,高血圧,骨粗鬆症などの生活習慣病に対して予防的に作用する.検査では安定型のDHEA-sを測定する.オプティマル値に達しない場合は,運動,食事療法,体重の適正化,DHEA補充(医師であればダグラスラボラトリーズ,ピッツバーグ,http://www.douglasjap.comより入手可能)を考慮する.c.女性ホルモンエストロゲンなどの女性ホルモンは閉経期前(40代後半)から急激に減少し,のぼせ・いらつき・動悸をひき起こす.長期的には,骨粗鬆症や動脈硬化,Alzhei-mer病の発症率にも影響する.更年期障害の診断には,単に症状のみではなく,血中ホルモンの測定をすべきである.不足するホルモンを見きわめオプティマル値を治療目標にするが,近年の大規模介入試験の結果ではデメリットもあることが指摘されている.d.男性ホルモンテストステロンなどの男性ホルモンは40代頃より徐々に低下し,性的能力の低下,抑うつ気分,骨密度の低下,筋肉量の低下に関与する.特に男性更年期症状が現れる時期は,男性ホルモンが急激に下がる40代後半からである.テストステロン単独因子のみで説明がつかないこと,DHEA(-s)やGH/IGF-1分泌低下など加齢に伴うさまざまな因子が,個々において複雑に関与することから,診断にあたっては十分な診察とホルモン系の測定が大切である.ジヒドロテストステロンは前立腺肥大,前立腺癌,脱毛・禿げに関与するテストステロンの代謝産物である.ほとんどの抗うつ剤には副作用として性的衝動の低下があるが,唯一テストステロンのみが性的衝動に対してポジティブに作用する抗うつ剤である.e.メラトニンメラトニンは,脳の松果体から夜間に分泌されるホルモンで,睡眠と覚醒の周期をつかさどる.また,それ自体に抗酸化作用があり脳血液関門を通過することから,睡眠中に脳神経細胞を酸化ストレスによる傷害から防御する役割があるともいわれる7).メラトニンの分泌量は,成長期の子供の頃が最も高く,その後20歳代になると急速に低下する.メラトニン処方は抗加齢医療の一つの方法である(医師であればhttp://www.douglasjap.comにて入手可能).ホルモン年齢はIGF-1・DHEA-s・総テストステロンの血中濃度が指標とし,自験例データより高次回帰曲線を作成し算出した.エストラジオールなどの女性ホルモ(15)視床下部脳下垂体ソマトスタチン(抑制)成長ホルモン成長ホルモン筋・骨・皮膚心・肺消化器生殖器・泌尿器成長ホルモンGH放出ホルモン(抑制)肝臓IGF-1産生GHGHGHGH分泌刺激因子運動高蛋白食・アミノ酸質の高い睡眠抑制因子運動不足・睡眠不足・ストレス糖質摂取過剰コルチゾル経口エストロゲン製剤図3GHとIGF-1の分泌調節機構———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006ンは,①閉経前は月経周期により大きく変化すること,②閉経後は検出感度以下まで低下する例が多いこと,③40歳以上の男性では年齢と相関を示さないことから指標より除外した.男性ホルモンについては,遊離型テストステロンが,①女性で検出感度以下になる例が多いこと,②再現性にやや問題があることから,総テストステロンを指標に含めた.ホルモン年齢の改善には,①自己ホルモンの分泌を生活療法によって刺激する方法,②ホルモン補充療法がある1).成長ホルモン/IGF-1刺激には,①運動,②質の高い睡眠,③適量の蛋白質・アミノ酸摂取を実践する(図3).メラトニン刺激には,①真っ暗にして眠る,②朝に光を浴びる,を実践する7).DHEA分泌機構は不明な点も多いが,フリーラジカルにより生じた過酸化脂質が副腎に蓄積して分泌低下につながるので,抗酸化療法は有用と思われる.一般に眼科クリニックで採血検査を行わないので,実測値からホルモン年齢の算出は困難であろう.抗加齢QOL共通問診票とAgingCheck?6)によりホルモン年齢の推定評価が可能となっている.4.骨年齢骨年齢は骨密度より算出される.精度と再現性は超音波法より二重エネルギーX線吸収法(DEXA:DualenergyX-rayabsorptiometry)のほうが優れている.腰椎2~4番の計測が一般的だが,腰椎圧迫骨折と変形性腰椎症の有無について確認を要する.骨年齢など日本人男女別の基準加齢曲線が既報告8)のものはそれを利用して骨年齢を算出する.骨のアンチエイジングは骨粗鬆症の治療が中心になる.健常な骨代謝を保つためにビタミン(D・B・C・E・K)・ミネラル(Ca・Mg・Fe・Zn・Mnなど)・蛋白質といった栄養素が十分であることと骨端に刺激を与える運動負荷が欠かせない.眼科クリニックでは骨密度など測定しないだろうから,共通問診票から骨年齢の推定評価を行う.メディカルモールなどいくつかクリニックがあるところではAgingCheck?6)を共同で用いても良いだろう.5.筋年齢筋年齢は握力・除脂肪筋肉量から算出している.一般の体組成計は,身体に電流が流れたときの電気抵抗を基準に除脂肪筋肉量を求める(生体電気インピーダンス法).近年,MRI(磁気共鳴画像)による身体断面データから得た筋体積(MRI法)との相関性が高い機種が開発されている(フィジオン社,京都,http://www.physion.jp)9).筋年齢を補正するための指導は筋肉負荷トレーニングが中心になる.筋トレ・ダンベル体操はこれに含まれ,最近では加圧トレーニングが注目されている10,11).蛋白質およびアミノ酸は筋肉の重要な構成要素である.1日当たり適正量の蛋白質摂取が望ましい.目安は標準体重60kgで70~100g.摂取不足の際には食後2時間(例:午前10時,午後3時または就寝前)を目安にアミノ酸サプリメント(3~10g/日)を補うと,血中アミノ酸濃度が上昇して,筋肉・骨などの末?組織で有効利用される.眼球運動筋の筋力低下に対しても適切なアミノ酸補給は好影響をもたらす.III眼科医師の関わりと酸化ストレス眼科領域においても酸化ストレスが注目されはじめている.白内障においては,紫外線に曝露した際に眼球内の光増感物質によって生じる一重項酸素・スーパーオキシドラジカルなどの活性酸素やこれらにより二次的に生成される過酸化脂質が,水晶体の白濁に深く関わっている.日本人の大きな失明要因となっている加齢黄斑変性の発症と進展の過程でも活性酸素やフリーラジカルが関与し,抗酸化物質を主体とするサプリメントが疾患の進展予防に有効とされる.抗酸化能を発揮するために体内には抗酸化ネットワークが発達している12).抗酸化ネットワークにはさまざまな抗酸化物質が関与し,それらは予防型,フリーラジカル捕捉型,修復・再生型に分類される(図4).予防型抗酸化物質とは,スーパーオキシドディスムターゼ(SOD:superoxidedismutase)やグルタチオンペルオキシダーゼ,カタラーゼといったフリーラジカルを除去する働きのある抗酸化酵素群である.適度な有酸素運動は,運動時に生じる微量フリーラジカルの刺激に(16)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????よってこれらの抗酸化酵素活性を高め,その効果は数日間持続する.結果として自己の抗酸化能が高まる.反対に高血糖状態ではSOD活性が抑制されるので抗酸化能は減弱する.フリーラジカル捕捉型抗酸化物質とは,フリーラジカルと反応して無毒化する作用を発揮しやすい成分である.ラジカルに対し電子を供給しやすく,それ自体は酸化されても無害であるいう一般的特徴をもつ.ビタミンA・C・E,コエンザイムQ10(ユビキノン),aリポ酸がその代表で,ほかにも食物中にはさまざまな抗酸化物質が含まれる.たとえばトマトのリコピン,ブルーベリーのアントシアニジン,緑茶のカテキン,サケのアスタキサンチン,ブドウ・小豆のポリフェノールである.修復・再生型抗酸化物質は酸化による組織障害を修復する作用を有する.DNAが損傷を受けるとDNA修復酵素によって修復されるが,DNA損傷は加齢とともに蓄積される.蛋白質の損傷にはプロテアーゼやトランスフェラーゼが,脂質損傷にはホスホリパーゼが関与する.細胞がフリーラジカルによる刺激を受けると,ホスホリパーゼが細胞膜のリン脂質に結合しているアラキドン酸を加水分解して,プロスタグランジン,トロンボキサン,ロイコトリエンなどの生理活性物質に変換する.これらのメディエーターは本来細胞の機能調節および修復に関与するが,破綻をきたすとさまざまな病態が惹起される.これらの抗酸化物質は体内で単独で作用しているのではなく,互いに補完しあっている.すなわち,一つの成分が減少しても他の物質でカバーし特定の反応産物が過剰にならずに,全体としてうまく機能を発揮するシステムである.たとえば,ビタミンEがラジカルと反応してビタミンEラジカルを生成すると,それが過剰にならないようコエンザイムQ10やビタミンCなど他の抗酸化物質によって速やかに還元される.しかし他の抗酸化物質が枯渇した状態ではビタミンEラジカル過剰となり,脂質ペルオキシルラジカルを介して連鎖的反応を起こし過酸化脂質が生成する.IV老化危険因子の評価酸化ストレス以外にも老化を促進させる危険因子として,免疫機能・心身ストレス・生活習慣・代謝機能(解毒を含む)をここにあげ,それぞれの検査方法を示した.1.免疫機能免疫機能の定量的評価マーカーは十分に確立されていない.DHEA-sは免疫機能と相関するといわれている.NK細胞活性は採血された血液の鮮度維持と煩雑さが問題となる.一般的に眼球周囲は涙液をはじめ強力な免疫システムに防御されている.2.酸化ストレス酸化ストレスは老化危険因子のなかで大きな位置を占め,抗酸化ネットワークの機能評価のためさまざまなバイオマーカーが提唱されている(図4)12).再現性・精度・データの蓄積の観点から8-OHdG(8-hydroxy-deoxyguanosine)・イソプラスタン尿中生成速度,血中過酸化脂質・ユビキノン(コエンザイムQ10)を基本指標とするのが良いと考えている.8-OHdGはDNA損傷を,イソプラスタンと過酸化脂質は脂質の酸化損傷を示すマーカーである.ユビキノンは酸化型と還元型の総血中濃度,酸化率(酸化型/酸化型+還元型)を評価する.詳細な検討のためには脂溶性抗酸化物質(ビタミンA・Eなど)・水溶性抗酸化物質(ビタミンCなど)・酸化前駆物質(Fe・コレステロールなど)についても評価する.これにより個々の結果に基づいた抗酸化物質の処方が可能となる.(17)(抗酸化ネットワーク)予防型フリーラジカル捕捉型修復・再生型SODカタラーゼペロキシダーゼ(酸化ストレスの評価)酸化前駆物質水溶性抗酸化物質脂溶性抗酸化物質遺伝子の傷害脂質の傷害コエンザイムQ10aリポ酸ビタミンAビタミンCビタミンEホスホリパーゼプロテアーゼトランスフェラーゼDNA修復酵素図4抗酸化ネットワークと酸化ストレスの評価———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006眼科クリニックで採血を実施するには抵抗もあるだろう.早朝第一尿の自宅での採取が可能なら,最終排尿時間,採取時間,尿量の情報と合わせて8-OHdG生成速度・イソプラスタン生成速度が測定できる(日本老化制御研究所,静岡,http://www.jaica.comにて測定可能).これらの酸化ストレス障害マーカーが高値の場合,①運動により抗酸化能を高める,②抗酸化物質の摂取といったフリーラジカル対策が必要である.3.心身ストレスコルチゾルとDHEA-s/コルチゾル比が心身ストレスのマーカーとして妥当であるか,抗加齢QOL共通問診票のどの項目と相関性があるか,現在検討中である.DHEA-s/コルチゾル比(同一単位のとき)が20以上となるよう指導している.加齢に伴いストレス抵抗性が脆弱化するメカニズムについてはすべて解明されたわけではないが,DHEA-sとコルチゾルのバランス(DHEA-s/コルチゾル比)が重要視されている.この比を改善させるためには,分母のストレス自体を減らすか,DHEAを補って分子を増やすか,どちらかである.ストレス対策としてダメージを受けたら,休養と睡眠によって十分にダメージから回復してからつぎのストレスに立ち向かうように指導する.ストレスの原因が既知の場合はできるだけ避ける.人間関係など精神的なストレスは自分だけで抱え込まずに家族・友人・同僚・医師に相談する.くよくよしたらまず歩く.ストレス負荷が大きくなると睡眠の質が低下し,ダメージからの回復が遅れるという悪循環に陥るのでこれを避ける.心身ストレスと眼科疾患の関連についてはあまり知られていない.アレルギーはストレスにより増強するのでアレルギー性結膜炎との関連はどうだろうか.4.生活習慣睡眠時間・飲酒量・喫煙量・運動量・水分摂取量・VDT作業時間が他の項目とどのような関連があるか興味深い.これらの項目は抗加齢QOL共通問診票に含まれる(http://www.yonei-labo.comよりダウンロード可能).抗加齢QOL共通問診票は,(NPO)日本抗加齢協会が推奨する問診票であり,人間ドック・企業における労働衛生管理(企業検診)・地域健診のみならず,サプリメント・健康食品・運動機器の臨床試験,スポーツ医学や東洋医学の分野で,広く内外にて使用されている.生活習慣と関連深い眼科疾患はドライアイ・仮性近視・糖尿病網膜症・網膜?離・眼底出血・飛蚊症・白内障・加齢黄斑変性など多岐にわたる.共通問診票を使用するだけでも眼から全身へ,全身から眼への診療のかけ橋となる.5.代謝機能代謝機能は,エネルギー・糖・脂質・蛋白質(アミノ酸)・毒物の代謝に関わる機能の総称である.代謝に関わるホルモンとしてインスリン・アディポネクチン・DHEA-s・甲状腺ホルモンがある.ホモシステインはアミノ酸の一種であるメチオニン代謝に関与し,また動脈硬化の危険因子でもある.毛髪中有害重金属(図5)13)は解毒機能の一つのマーカーである(らべるびぃ予防医学研究所,東京,http://www.lbv.jpにて測定可能).V眼科における老化度診断眼科においても水晶体の老化,網膜の老化,角膜の老化,涙腺分泌機能の老化,眼球運動機能の老化,虹彩の老化など老化の仕方には個人差がある.眼科のアンチエイジング,すなわちこれらの変化を早期に診断し,予防することは,発症後に治療を始めるよりも意義深い.眼科領域の老化度診断システムは慶應義塾大学医学部坪田一男教授を中心に現在研究開発中である.(18):男:女01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,0000~1516~1920~2930~3940~4950~5960~年齢(歳)Level(ppb)図5日本人の毛髪中水銀含有量(文献13より)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????文献1)米井嘉一:抗加齢医学入門.慶應義塾大学出版会,20042)YoneiY,MizunoY:Thehumandockoftomorrow─Annualhealthcheckupforanti-aging─.???????????19:5-8,20053)高沢謙二,会沢彰,喜納峰子ほか:加速度脈波による血管年齢の測定と臨床的有用性.臨牀と研究82:1032-1036,20054)VaitkeviciusPV,FlegJL,EngelJHetal:E?ectsofageandaerobiccapacityonarterialsti?nessinhealthyadults.???????????88:1456-1462,19935)加藤元一郎:前頭葉損傷における概念の形成と変換について─新修正WisconsinCardSortingTestを用いた検討─.慶應医学65:861-885,19886)伊藤光:アンチエイジングドック支援システムAgingCheck?の使用経験.モダンフィジシャン26:605-608,20067)服部淳彦:生体リズムを整える注目のホルモン脳内物質メラトニン.朝日出版社,1996(19)8)折茂肇,林泰史,福永仁夫ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準.日本骨代謝学会誌18:76-82,20009)IshiguroN,KanehisaH,MiyataniMetal:Applicabilityofsegmentalbioelectricalimpedanceanalysisforpredictingtrunkskeletalmusclevolume.??????????????100:572-578,200610)井上浩一,佐藤義昭,石井直方:21世紀のスポーツ医学治療─加圧筋力トレーニング法のリハビリテーションへの応用─.日本臨床スポーツ医学会誌10:395-403,200211)YoneiY,MizunoY,TogariHetal:Muscularresistancetrainingusingappliedpressureanditse?ectsonthepro-motionofGHsecretion.????-??????????????????????1:13-27,2004(http://www.aofaam.org)12)内藤裕二:第3章エイジングの基礎3フリーラジカル.アンチエイジング医学─その理論と実践─(吉川敏一編),p46-49,診断と治療社,200613)YoneiY,MizunoY,KidoMetal:ResearchontoxicmetallevelsinscalphairoftheJapanese.????-??????????????????????2:11-20,2005(http://www.aofaam.org)