●連載126監修=安川力髙橋寛二106加齢黄斑変性の長期治療継続のコツ渡辺五郎羔羊会弥生病院眼科滲出型加齢黄斑変性は慢性疾患であり,長期にわたる治療や経過観察が必要である.正確な診断と病型分類をもって治療に臨む必要がある.抗CVEGF薬治療の治療レジメンを個々の患者に合わせて調整し,場合によっては光線力学的療法の併用も検討する.的確な病状説明で患者の信頼を獲得することも重要である.はじめに滲出型加齢黄斑変性(neovascularCage-relatedCmacu-lardegeneration:nAMD)は高齢者の慢性疾患であり,その治療は長期にわたって継続していくこととなる.造影検査,抗CVEGF薬硝子体内注射,光線力学的療法(photodynamicCtherapy:PDT)など,検査・治療は侵襲的なものとなるうえに,経済的な負担も無視することはできない.良好な医師・患者関係の構築はもとより,治療に積極的に参加してもらうための病状説明,検査・治療への抵抗感を減らす努力も必要である.長期治療継続のためには,まずは短期視力の改善・維持がなくてはならない,そのためのポイントを以下にあげていく.正確な診断と症例の特徴を捉える病変サブタイプ,新しいCnAMD分類,pachychoroid関連疾患を加えた考え方(柳分類,図1)など.nAMDの分類は臨床的特徴から典型CAMD,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV),網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousCproliferation:RAP)の三つのサブタイプに分けて治療方針を立てていくことが一般的となっている.診断手順としては,日本人に多いCPCV,特徴的な所見のあるCRAPをまず診断し,典型CAMDは除外診断とするのがよい.近年,網膜由来の新生血管であるCRAPをCtype3として,typeC1MNV(macularCneovascular-ization),typeC2MNV,typeC3MNV,PCVと分類することが国際的に提唱されている(表1)1).また,わが国で多くみられるCpachychoroid(厚い脈絡膜)の概念が広まってきており,nAMDの分類は変化の途中といえる2)(図1).Type3MNVは,高齢・女性に多い,急速に進行しやすい,両眼性になりやすい,萎縮が進行しやすいなどの特徴があり,抗CVEGF薬に対する反応は良好なことが多いが,萎縮の進行や僚眼の発症などを常に注意しながら治療していく必要がある.僚眼の発症を見(73)C0910-1810/22/\100/頁/JCOPY表1滲出型加齢黄斑変性の分類新しい用語古い用語CType1MNVCOccultCNVCPCVCPCVCType2MNVCClassicCNVCMixedtype1andtype2MNVCMinimallyclassicCNVCType3MNVCRAPMNV:macularneovascularization,CNV:choroidalCneovascu-larization,PCV:polypoidalchoroidalvasculopathy,RAP:reti-nalangiomatousproliferation.(文献C1より改変引用)逃しやすいので,他の病型よりも短期間でモニタリングすることが望ましい.治療レジメン固定投与,必要時投与(proCrenata:PRN),TAE,その他がある.どの投与レジメンでも適切なタイミングで治療をすることにより視力の維持が可能と考えられる.固定投与は必要十分な治療が可能であるが,過剰投与となりやすく,患者の状態に合わせた個別化治療という観点では長期にわたるCnAMD治療では継続がむずかしくなってくる可能性が高い.PRNでも,悪化の際に迷わず即時治療ができれば視力維持可能という報告もあるが,医療側・患者側の環境・気持ちなどに左右されて過小治療になりやすく,長期になると視力維持がむずかしくなる傾向にある.TAEは現在多くの専門家に支持されているレジメンであり,長期に耐えうることが実証された治療法である.オリジナルの方法ではC2週間間隔の短縮・延長だが,ALTAIRstudyのようにC4週ごとの投与間隔の短縮・「維持」・延長の調整でもよいと考えられる3).過去の多くの報告では,おおむね最初のC2年間の治療をしっかりとすることで,3年目以降の治療回数は少なくすむ可能性がある.患者によるが,最初のC2年程度は気を緩あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022C1641めず治療に望むことが長期視力維持のコツということになる4).光線力学的療法の考え方従来,わが国のCnAMDと欧米との違いとしてドルーゼンの少なさやCPCVの多さがあげられていたが,pachychoroidの概念の登場により,脈絡膜の厚みや循環動態との関連が示唆されている.日本人のCnAMDにPDTが有効である原因はCPCVが多いからとされていたが,pachychoroidの概念をあてはめると,脈絡膜が厚いような患者にはCPDTが有効な可能性がある.EVER-EST2studyにより,抗CVEGF薬併用CPDTがCPCVに効果的で,治療回数減少に寄与することがわかっている5).Pachychoroidの比率が多いわが国のCnAMDには,長期的にはCPDTを絡めた治療のほうが向いている可能性がある.良好な医師・患者関係の構築長期治療は良好な医師・患者関係の構築が大切である.眼底写真,OCT画像を毎回の診療で患者に見せ,なぜ治療が必要なのか,今後どうやって治療をしていくとよいのかを示し,患者自身に自分の病状を理解してもらう努力が必要である.本稿執筆時点で新たなCnAMD治療薬が発売された.治療の選択肢が増えていくことは喜ばしいことである.C1642あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022図1Pachychoroid関連疾患(文献C2より引用)筆者も常に正確な診断を心がけ,患者にとってどの治療法がよいのかを考え続け,二人三脚の医療を心がけていきたいと願っている.文献1)SpaideRF,Ja.eGJ,SarrafDetal:Consensusnomencla-tureforreportingneovascularage-relatedmaculardegen-erationdata:ConsensusConCNeovascularCAge-RelatedCMacularCDegenerationCNomenclatureCStudyCGroup.COph-thalmology127:616-636,C20202)YanagiY:Pachychoroiddisease:aCnewCperspectiveConCexudativeCmaculopathy.CJpnCJCOphthalmolC64:323-337,C20203)OkadaAA,TakahashiK,OhjiMetal:E.cacyandsafetyofCintravitrealCa.iberceptCtreat-and-extendCregimensCinCtheALTAIRStudy:96-weekoutcomesinthepolypoidalchoroidalCvasculopathyCsubgroup.CAdvCTherC39:2984-2998,C20224)YamashiroCK,COishiCA,CHataCMCetal:VisualCacuityCout-comesCofCanti-VEGFCtreatmentCforCneovascularCage-relat-edCmacularCdegenerationCinCclinicalCtrials.CJpnCJCOphthal-molC65:741-760,C20215)LimCTH,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal:ComparisonCofCranibizumabCwithCorCwithoutCvertepor.nCphotodynamicCtherapyCforCpolypoidalCchoroidalvasculopathy:TheCEVERESTCIICRandomizedCClinicalCTrial.CJAMACOphthal-mol135:1206-1213,C2017(74)