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ステロイド局所投与-点眼・眼球周囲注射-

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSや皮膚萎縮・色素沈着などの原因になるので,結膜?内点入の方法を指導する.下眼瞼を下方に引き,下眼瞼縁の瞼結膜側に眼軟膏をのせる.量は長さ5~10mm程度で十分である.数回瞬目すると眼軟膏は眼表面に広がる.眼軟膏使用後は,眼表面の油膜のためにその後の点眼薬が吸収されなくなるので,点眼液と眼軟膏を併用する際は,眼軟膏を最後に使うよう患者に指導する.また,油膜のために霧視が起こることを説明しておく.II結膜下注射前眼部炎症にはステロイド薬点眼が第一選択であるが,頻回点眼でも効果が十分でない場合,ステロイド薬の結膜下注射を行う.水溶性ステロイド薬のデキサメタゾン(dexamethasone:デカドロン?)やベタメタゾン(betamethasone:リンデロン?)の使用が一般的である.点眼麻酔後,27ゲージ針で結膜下に薬液を注入するが,血管や強膜を損傷して出血を起こさないようにする.針先はベベルダウンにすると眼球損傷が少なくなる.強膜炎などでは強膜菲薄化や融解などを起こす危険性はじめにぶどう膜炎治療の基本は副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)1)であり,ステロイド薬の投与方法には,全身投与と局所投与がある.局所投与には,点眼と眼球周囲注射があり,眼球周囲注射は,薬液注入部位および注射方法に応じて,結膜下注射・Tenon?下注射・球後注射・経眼瞼的(経皮的)眼窩隔膜注射などに分けられる(表1).現在では結膜下注射・Tenon?下注射が一般的である.本稿では,ステロイド薬点眼(眼軟膏を含む)と,結膜下注射・Tenon?下注射について述べる.I点眼前眼部炎症の程度に応じて,デキサメタゾン(dexa-methasone)やベタメタゾン(betamethasone)の点眼回数を1日4~5回程度から増減する.炎症が高度なときには,1時間あるいは2時間ごとに頻回点眼することもある.消炎を確認しながら点眼回数を減らしていく.ステロイド薬点眼の減量に際しては,フルオロメトロン(?uorometholone)へすぐに変更するより,デキサメタゾンやベタメタゾンの点眼回数を1日1~3回に減らしていくほうがよい.抗菌薬の併用については意見が分かれるが,筆者は原則必要ないと考えている.羞明や眼痛のために流涙が多いときは,ステロイド薬眼軟膏の使用も考慮する.また,就寝中の徐放効果目的で就寝前に使用することもある.ただし,ステロイド薬眼軟膏を眼瞼周囲に塗り広げて長期使用すると,眼瞼炎(3)????*SumieKawahara:久留米大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕河原澄枝:〒830-0011久留米市旭町67久留米大学医学部眼科学講座特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1387~1390,2006ステロイド局所投与─点眼・眼球周囲注射─????????????????????????????─??????????????????????????????????─河原澄枝*表1副腎皮質ステロイド薬の眼球周囲注射1)結膜下注射2)Tenon?下注射a.鋭針を用いる方法b.鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射)3)球後注射4)経眼瞼的(経皮的)眼窩隔膜注射———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006もあり,注射の部位や頻回の注射には注意する.IIITenon?下注射遷延する強い後眼部炎症や?胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)の治療には,トリアムシノロン(triamcinoloneacetonide:ケナコルト?)の後部Tenon?下注射を行う.Tenon?下注射されたステロイド薬は,経強膜的に眼内移行し(図1),また,トリアムシノロンは徐放性の懸濁ステロイド薬であるため,粒子が徐々に溶解吸収されて抗炎症効果が長期間持続する.1回の投与で数週間から数カ月の効果が期待でき(図2,3),ステロイド薬全身投与に比べると全身的な副作用が少ない.Tenon?下注射には,鋭針を用いる方法と鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射2~4))があるが,筆者らは後者を行っている.経Tenon?球後注射は,白内障手術時のTenon?下麻酔と同様の要領で,経Tenon?下的に眼球後方に薬液を注入する方法である.結膜切開を必要とする点では煩雑であるが,眼球穿孔の可能性も少なく,ステロイド薬を眼球後方に確実に注入すること(4)図1Tenon?下注射されたステロイド薬の移行経路Tenon?下へ注入されたステロイド薬は,眼球後部から吸収され眼内へ移行する.図2症例:63歳,女性,サルコイドーシス─トリアムシノロンTenon?下注射前a:フルオレセイン蛍光眼底造影,b:光干渉断層法(opticalcoherencetomography:OCT).フルオレセイン蛍光眼底造影では強い蛍光漏出があり,OCTでは黄斑浮腫と漿液性網膜?離がみられる.ab図3図2のトリアムシノロンTenon?下注射後a:1カ月後,b:3カ月後.黄斑浮腫と漿液性網膜?離は改善した.ab———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????ができると考えている.眼球後方への確実な注入は,眼圧上昇や白内障進行などの合併症の発生頻度を少なくするうえでも重要である.1.鋭針を用いる方法26ゲージ針(短針)を結膜?円蓋部より刺入し,薬液を注入する.点眼麻酔後に,耳上側あるいは耳下側の円蓋部から刺入する.針先が目視できないので,眼球穿孔を避けるために針先を左右に振りながら眼球壁に沿って針を進める.注入前に血液の逆流がないことを確認する.2.鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射)21あるいは23ゲージのTenon?下注射用の曲鈍針と1.0m?注射シリンジを使用する.角膜輪部から7~8mmの部分に1~2mm程度の小さな結膜切開を行い,Tenon?を切開する.筆者らは,注射後の眼瞼下垂発生予防を考え,耳下方結膜円蓋部から行っている.強膜を確実に露出しそこから子午線方向に鈍針を眼球後方へ進めてから,ステロイド薬をゆっくり注入する.抵抗がある場合には,針先を動かす(少し戻す)と注入しやすくなる.戻しすぎると眼球後方に確実に注入できず,結膜切開部から薬液が漏出するので注意する.点眼麻酔薬で十分に表面麻酔を行っておくと,薬液(トリアムシノロン)注入時の痛みはさほどない.注入時に軽い圧迫感があることをあらかじめ患者に伝えておく.筆者らは,トリアムシノロン0.5m?(20mg)を注入している.外来で可能な処置であるが,感染予防のために清潔操作で行う.筆者らは,外来処置室で,内眼手術とほぼ同様に眼瞼周囲の皮膚および結膜?の洗浄・消毒を行い,ドレープ装用・顕微鏡下で行っている.感染性強膜炎や眼窩膿瘍などの報告もあり,また,ステロイド薬の性質上,感染が起こっても眼痛や充血などの症状が隠されることから診断の遅れにつながる.これらのことを考えると,鋭針を用いての経結膜下Tenon?下注射であっても,清潔操作下で行ったほうがよいと考える.結膜切開部の縫合は不要である.術後は,抗菌薬点眼を1週間程度使用する.Tenon?下注射は比較的安全な手技であるが,重篤な副作用や合併症5,6)も起こりうる(表2).また,Tenon?下に注入した薬液の除去は困難なため,適応は慎重に選ぶ必要がある.ぶどう膜炎では,あらかじめステロイド薬点眼が使用されていることが多く,ステロイドレスポンダーであるかどうかの判断は比較的やさしい.ステロイド薬点眼使用歴がない場合は,トリアムシノロン使用前に,ベタメタゾンやデキサメタゾンの点眼を2~4週間行い,ステロイドレスポンダーでないことを確認しておく.ステロイドレスポンダーには,トリアムシノロンTenon?下注射は選択しない.しかし,ステロイド薬点眼で眼圧上昇がなくても,トリアムシノロンTenon?下注射後に眼圧が上昇する症例も多く,注射後は眼圧の推移に注意する.大多数は,緑内障点眼薬と炭酸脱水酵素阻害薬で対応が可能であるが,眼圧コントロールが得られずに濾過手術が必要になることもある.おわりにステロイド薬は消炎効果に優れており,ぶどう膜炎治療には欠かせない薬剤であるが,その効果の反面副作用も多い.眼周囲注射に際しては,適応,投与方法,投与回数や間隔などを十分に考慮して行う.文献1)後藤浩:内眼炎の薬物療法─基礎と臨床:副腎皮質ステロイド薬.眼薬理18:39-43,20042)OkadaAA,WakabayashiT,MorimuraYetal:Trans-Tenon?sretrobulbartriamcinoloneinfusionforthetreat-mentofuveitis.???????????????87:968-971,20033)岡田アナベルあやめ:トリアムシノロンアセトニドの経テ(5)表2ステロイド眼局所投与の副作用一般的な副作用緑内障白内障感染症局所注射の副作用眼球穿孔・眼内誤注入7)感染性強膜炎・強膜軟化症5)眼窩膿瘍8)球後出血・網脈絡膜血管閉塞9)網脈絡膜血管塞栓,血管内誤注入眼瞼下垂10)眼窩脂肪ヘルニア10)———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006ノン?球後注入.眼紀55:442-444,20044)大黒伸行:眼局所へのドラッグデリバリーシステム.あたらしい眼科21:35-40,20045)直井信久,白坂陽子:網膜疾患に対するトリアムシノロン局所療法の副作用.あたらしい眼科21:1035-1041,20046)中西頼子,山本博之:黄斑浮腫に対するトリアムシノロンの効果と副作用.あたらしい眼科22:605-612,20057)大房祥江,川久保洋,島田宏之ほか:テノン?下注射によりステロイドが網膜に注入された1例.眼科38:1559-1563,19968)EngelmanCJ,PalmerJD,EgbertP:Orbitalabscessfol-lowingsubtenontriamcinoloneinjection.???????????????122:654-655,20049)MoshfeghiDM,LowderCY,RothDBetal:Retinalandchoroidalvascularocclusionafterposteriorsub-tenontri-amcinoloneinjection.??????????????134:132-134,200210)DalCantoAJ,Downs-KellyE,PerryJD:Ptosisandorbitalfatprolapseafterposteriorsub-Tenon?scapsuletriamcinoloneinjection.?????????????112:1092-1097,2005(6)年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2007Vol.20■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp

序説:非感染性ぶどう膜炎治療の最先端

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1(1)????非感染性ぶどう膜炎に対する治療は近年大きく変わってきている.海外で行われている治療で,まだ国内には取り入れられていないものも数多くある.本特集では,現在よく使用されているものから,将来的にわが国でも利用可能になることを期待するものまで,ぶどう膜炎に対する治療の最先端を紹介したい.非感染性ぶどう膜炎の治療は,一般的には3つのカテゴリーに分類される.第一は伝統的な副腎質ステロイド(以下,ステロイド)で,抗炎症作用だけでなく免疫抑制作用をもち,非常に効果的でありながらも全身的副作用の危険性が高い薬剤である.全身的副作用を軽減するために,最近はTenon?下あるいは硝子体内に積極的に局所投与をすることもあるが,むしろ眼副作用に悩まされるようになった.眼科医にとっては,自分の領域範囲内で,ある意味管理しやすい副作用と考えがちである.しかし,特にステロイド緑内障は不可逆的な視機能低下をきたす可能性があるため,決して軽く考えてはいけない.本特集のステロイド療法については,河原澄枝(点眼,眼球周囲投与),菅原道孝(全身投与)と大黒伸行(硝子体内投与)の3氏に現場の臨床医にとって欠かせない情報をまとめていただいた.非感染性ぶどう膜炎に対する治療の二つめは,免疫抑制薬であり,これはわが国のぶどう膜炎領域では最も利用が進んでいない.海外では,患者の病態に応じてさまざまな免疫抑制薬が「免疫抑制療法」(immunosuppressivetherapy)あるいは「免疫調整療法」(immunomodulatorytherapy)として使われているにもかかわらず,わが国で利用できるのはシクロスポリン1剤のみである.しかも,Beh?et病の病名がなければ保険適用はない.膠原病のような全身疾患を伴うぶどう膜炎の場合は,薬剤の種類は若干広がるが,基本的にほとんどの非感染性ぶどう膜炎に使用できない.しかし,免疫抑制薬はいずれも,単に免疫を抑制する目的に用いられている.薬剤の選択は,病名だけでなく患者の病状および全身状態に依存する.たとえば,Beh?et病といえどもシクロスポリンしか効果がないという訳ではない.シクロスポリンおよびステロイドの全身投与で炎症発作が抑制されない患者には,視機能を失う前に他の免疫抑制薬であるアザチオプリンなどを使いたいところであるが,残念ながらわが国の保険医療制度,厚生労働省の薬剤承認制度では認められていない.わが国における免疫抑制薬の使用については,毛塚剛司氏に詳しく述べていただいた.非感染性ぶどう膜炎の治療のカテゴリーの三つめは,近い将来わが国で認可される予定の生物学的療法である.これは,ぶどう膜炎領域では画期的なできごとである.この20年ほど新しい治療法はなく,コントロールできない疾患には徐々に免疫抑制療法をエスカレートすることしか手段がないうえに,副0910-1810/06/\100/頁/JCLS*AnnabelleAyameOkada:杏林大学医学部眼科●序説あたらしい眼科23(11):1385-1386,2006非感染性ぶどう膜炎治療の最先端??????????????????????????????????????????????????岡田アナベルあやめ*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006作用に悩ませられてきた.無論,生物学的療法においても副作用は多く存在するが,薬理作用が疾患の発症機序に対して選択的であるため,効果が高いと考えられる.欧米のぶどう膜炎専門家が,特にtumornecrosisfactoraを阻害するモノクローナル抗体であるin?iximabを広く使用するようになり,さまざまな疾患で効果が確認されている.わが国においても,大野ら1)によりBeh?et病におけるin?iximabの有用性が報告されている.しかし,本薬剤の使用に際してわが国ではひとつ大きな懸念がある.これは,in?iximab治療中の日和見感染症,特に結核の危険性である.周知のとおり,結核は潜伏感染を含め,諸外国に比べわが国ではまだまだ比較的高率である.杏林アイセンターの眼炎症外来において全身検査を必要とした患者の調査では,約20%が強陽性(硬結≧10mm)であった2).しかし,これらの患者の胸部X線はほとんど正常と読影されており,潜伏結核感染の有無がわかりにくい.結核感染症の3割から4割が肺外結核であるため,潜伏感染は必ずしも胸部X線に異常所見が生じないという事実を忘れてはならない.潜伏感染の可能性を除外するには,Quantiferon?-TBGoldという検査があるが,海外ではすでに応用されているにもかかわらず残念ながら結核の多いわが国ではまだ導入されていない3).本特集では,生物学的療法について南場研一氏と大野重昭氏に詳しく解説していただいた.薬剤以外の療法も近年生まれつつある.これはわが国特有の状況である.顆粒球除去療法(granulo-cytapheresis)は大腸炎のために開発されたものであるが,最近,Beh?et病のぶどう膜炎にも効果が示された.より多症例での臨床調査を必要とするが,副作用の少ない治療法であるため,保険医療上の応用が非常に期待されている.これについては,Beh?et病に初めて使用した園田康平氏と南場研一氏に解りやすく紹介していただいた.さらに非感染性ぶどう膜炎の治療の一部に合併症に対する手術のあることはいうまでもない.特に,白内障および緑内障が最も頻度が高い外科的に処置できる合併症である.この両者に注目し,慶野博氏に手術のevi-dence-basedmedicine(EBM)を細かくまとめていただいた.最後に一言付け加えておきたい.ぶどう膜炎領域では専門家の意見が分かれることも少なくないし,エキスパートを集めて議論すると,考え方がかなり異なることがわかる.本特集で述べられている内容は,あくまでその著者個人の意見ということになる.しかしながら,いずれも多くのぶどう膜炎を診察し治療した経験に基づくものであり,述べられている意見はガイドラインとして受けとっていただければよいと思う.文献1)OhnoS,NakamuraS,HoriSetal:Ef?cacy,safetyandpharmacokineticsofmultipleadministrationofin?iximabinBeh?et?sdiseasewithrefractoryuveoretinitis.????????????31:1362-1368,20042)MorimuraY,OkadaAA,KawaharaSetal:Tuberculinskintestinginuveitispatientsandtreatmentofpre-sumedoculartuberculosisinJapan.?????????????109:851-857,20023)MoriT,SakataniM,YamagishiFetal:Speci?cdetec-tionoftuberculosisinfection:aninterferon-g-basedassayusingnewantigens.?????????????????????????170:59-64,2004(2)

私が思うこと1.留学の思い出

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????私が思うこと●シリーズ①(75)はじめに新しい企画として,今度から好きな文章を書いてリレーするそうです.どういう訳でしょう?小生にトップバッターが回ってきました.何でも書いていいよ…と言われておりますので,個人的な留学の思い出を書いてみようと思います.私は1997年から3年間,アメリカのボストンに留学しました.ボストンは,最初にイギリス人がメイフラワー号で入植した地,いわば今のアメリカが始まった場所です.街中に史跡がちらばり,休日ともなると観光客でいっぱいです.人々はわかりやすく路に赤い線でかかれた「フリーダムトレイル」という遊歩道を歩いたり(線に沿って歩くだけで主な史跡を廻れます),ユニークな形の水陸両用車で街の観光とチャールズ川でのクルージングを両方楽しむ「ダックツアー」なる観光ツアーに参加したりしていました(ガイドの指示で,観光途中アヒルのようにグワッグワッと声を出さねばなりません).ボストンに留学する眼科医は多く,身近な方からお話しを聞くでしょうし,「アニー・マイ・ラブ」というテレビドラマや「バンビーノの呪い」を破った大リーグボストン・レッドソックス等々,きっと皆さんも馴染みある街ではないでしょうか.スケペンス眼研究所スケペンス眼研究所は,ボストン市のダウンタウンにあります.研究所のすぐ前には,アメリカで最初にできたという消防署があり,その後ろにはビーコンヒルと呼ばれる,中世ヨーロッパを思わせる煉瓦づくりの住宅街が広がっていました.Dr.スケペンスはあまりに有名な網膜の先生ですが,もともとDr.スケペンスが創られた研究所がどんどん発展し,臨床研究部門(retinaassoci-ates)と基礎研究部門が両立する,ハーバード大学附属の大研究所となっていました.私のいた基礎研究部門だけでも免疫学,生理学,生化学,病理学,遺伝子学,分子生物学などいくつものラボがあります.かの高名なMassachusettsEyeandEarIn?rmaryやMassachu-0910-1810/06/\100/頁/JCLS園田康平(???-??????????)九州大学大学院医学研究院眼科学分野1965年鹿児島県生まれ.趣味はテニス,スキューバダイビング,睡眠.研修医の頃ベーチェット病の患者さんに接したのを機会に,ライフワークはベーチェット病と決心する.免疫の話で悪酔いするのも好きな,「おたく」なやつである.(園田)留学の思い出▲研究所前のビーコンヒル向かって一番正面がアメリカ最古の消防署.▲スケペンス眼研究所正面———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006settsGeneralHospitalは歩いて数分以内の距離で,論文で名前しか知らなかった有名な先生と(その気になれば?)容易に共同研究ができる環境です.眼科だけでこれだけ充実して各分野で研究できる環境が揃ったところはあまりないのではないでしょうか?そういう訳でしょうか,日本のいろんな施設から多くの先生が留学されていました.同時期に留学していた先生方とは家族ぐるみのおつき合いをさせていただきました(大きな声では言えませんが,アメリカにいても日本語をしゃべることが多く,英語はあんまり上達しませんでしたが……).このときの先生方とはいろいろ通じ合うところが多く,帰国後いまだに学会の度に集まってお酒を飲んでおります.話題も子供やゴルフ,好きなお酒の話など,なんだか仕事以外のことが多く,尽きることがありません.留学のとき,苦楽をともにした皆さんは,私にとって今もかけがえのない方々です.アメリカでの出産そして怪我最初ボストンには夫婦2人で行ったのですが,ちょうど1年すぎた頃妻が妊娠しました.出産を現地でするか一時帰国するか迷いました.幸いボスのOKをもらい,毎月の定期検診にはラボを休んで妻に同行していました.担当医師とのやりとりや,病院の設備・ケア体制など説明を受けるなかで,妻と話し合ってボストンで出産することにしました.私どもの少し前に愛媛大学の宮本和久先生ご夫妻や東京医科大学の毛塚剛司先生ご夫妻が元気に現地出産されるのを見て,これにも大いに元気づけられました.無事に長女が生まれたのですが,直後1週間はラボをお休みしました.また義母がボストンまでヘルプに来てくれたり,宮本先生・毛塚先生からはベビー用品を譲って頂いたりと,周りの人に助けてもらい何とかやれたのだと思います.そして我が家で使ったベビー用品は,また次の方のところに廻って行きました….帰国後長男が生まれ,日米の出産を経験しました.異国での出産はそれなりの覚悟はいりますが,善し悪し両方だと思います.アメリカは産後48時間で退院だったりするのは大変ですが,研究所が出産に対して柔軟に対応してくれた(=十分休ませてくれた)のは助かりました.おかげでなんだか家族の時間は沢山とれたように思います.しかし…娘だけアメリカ市民権をもっており,将来アメリカに行く・アメリカ人男性と結婚する,といわれたらどうしよう?などと今から心配したりします(封建的九州男児と批判されそうですね…).出産は別として,アメリカで病院のお世話にはなりたくないと思っていたのですが,留学して1年ほどたった頃,雪道で滑った拍子に花壇の柵に顔をつっこみ眼窩底骨折を起こしてしまいました.眼に柵が突き当たらなくて本当に不幸中の幸いでしたが,1週間後全身麻酔手術となり大変心細い思いをしました.幸い手術は大成功で,まったく眼球運動障害などの後遺症はありませんし,外見も怪我をしたのがわからないぐらいに回復しました.形成外科のドクターが執刀したようですが,その手術技術の高さとナースが訓練されているのには感動しました.しかし一泊入院で,術翌日に全身麻酔明けのふらふらの状態で退院させられたのには参りました.全身麻酔なのに導尿されず,おしっこが出るのを確認して帰されました.(それをもって麻酔が覚めたとするようですが…これは患者本人としてはかなり大変でした….)アイデアの浮かぶとき旅行が好きな小生は,学会にかこつけては留学中よくアメリカ内外に旅行に行かせてもらいました.また週末は泊まりがけであちこちドライブに行きました.高速道路は原則的に無料ですし,どこに行ってもモーターインなどの安い宿泊施設が充実しています.貧乏暮らしのポスドクでも車の旅行は気軽にできます.諸先輩方も口をそろえて言われることですが,やはり自然のスケールの大きさには圧倒されました.少し街から離れると,果てしなく続く森林・山河があります.紅葉の時期には見事な紅葉が連山全体を覆います.旅行ばかりしていると「怠けている…」ともとられます.それまで日本では研究室にこもって実験することを自分のなかで諒としてきました.留学中ですので,「せっかくの機会だ,人生を楽しもう!」と旅行にばっかり行き始めたのですが,旅行中何気ないときに研究のアイデアがよく浮かんでいました.気分転換で頭をスッカラカンにすると,煮詰まっていた仕事のブレークスルーが見つかり,かえって効率がいいことにも気がつきました.遊んだ言い訳に聞こえるかも知れませんが,遊びも大事だと思います.そんなことを気付かせてくれた留学生活でした.(76)

よくわかる医療情報のお話3.電子カルテ その2-眼科に向いてないのかな?

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS眼科領域でも電子カルテの導入が進んでいることはご存知のとおりですが,眼科用電子カルテは構築がむずかしいといわれることがあります.それは何故でしょうか.眼科では画像やスケッチを記載することが多いこと,自家検査が多種類であること,また,入力件数すなわち記載項目や患者数が多いことなどから,内科・外科などを対象とした全科用電子カルテとは異なる仕様が必要であることが理由です.すでに日本眼科学会,日本臨床眼科学会などにおいても指摘されています.入力のテンプレート例は日本眼科学会のウェブサイトで閲覧することができます.他科に比べると問題を多く抱えながらも,それぞれの施設で工夫をしながら電子カルテを導入しているというのが現状です.眼科に電子カルテを導入する方法には大きく分けて3通りあります.一つは全科用電子カルテを眼科用にカスタマイズする方法(1),他の一つは眼科専用のサブシステムを全科用電子カルテに接続する方法(2),残りの一つは眼科専用に電子カルテを導入する方法(3)です.(1)では,眼科診療の特殊性を反映させることができない反面,導入費用を抑えることができます.初期に電子カルテが導入された一般病院にみられます.病院全体での導入費用が限られているため,眼科にだけ高額な費用が掛けられないという事情があります.ほとんどの眼科検査をスキャナーで取り込み,一つひとつ画像として表示する仕様となっており,過去の多数の事例で知られるように眼科診療には不向きなシステムです.(2)では,眼科診療により適した機能を有していますが,導入費用もそれなりに必要となります.大学病院,一般病院でも眼科に理解のある施設に導入されています.病院全体のサーバーとは別に眼科専用のサーバーを設置することになります.しかしながら,オーダリング機能など全科用電子カルテと眼科用サブシステムとの連動が十分に行われないということも多く,この種の電子カルテでも眼科診療を行ううえで十分な仕様となっているわけではありません.また,古い眼科検査機器ではサブシステムに接続できないといった問題も発生します.(3)では,接続が必要となるのは医事会計システム程度で,基幹システムとの連動を必要としない眼科診療に特化したシステムとなるため,仕様の面である程度,自由に構築することができます.医事会計システムと一体になっているものもあります.眼科の診療所にみられるものです.画像ファイリング装置から発展したもの,独自に開発されたものなど,現在では40社近いメーカーが開発を行っているといわれています.周辺機器となる眼科検査機器についても,従来は単に出力端子をもつだけでしたが,近年は,たとえば画像におけるDICOMなど,情報交換のための規格に準拠したデータをCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)と同様に送出する機器が出現してきており,電子カルテ化の流れに伴って,眼科領域の周辺機器も変化してきています.(73)よくわかる医療情報のお話●連載(隔月)③若宮俊司*電子カルテその2─眼科に向いていないのかな?*ShunjiWakamiya:川崎医科大学眼科学教室/川崎医療福祉大学感覚矯正学科/同医療情報学科/名古屋大学大学院医学系研究科医療管理情報学教室外来における診療の一情景

硝子体手術のワンポイントアドバイス41.黄斑裂孔を伴う糖尿病性牽引性網膜剥離に対する硝子体手術(中級編)

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSはじめに裂孔併発型糖尿病性牽引性網膜?離に対する硝子体手術に関しては,本シリーズ(12)で記載したが,そのなかで時々黄斑裂孔を伴う症例に遭遇することがある.このような症例では,増殖膜が黄斑裂孔の辺縁に強固に癒着しており,スリット状の裂隙になっていることが多い.硝子体手術施行に際しては,癒着部位の膜処理を慎重に行い,黄斑裂孔を不用意に拡大させないようにする必要がある.●硝子体手術時の注意点コアの硝子体を切除した後,増殖膜処理および人工的後部硝子体?離作製を行うが,この際に不用意に硝子体を前方に牽引すると,黄斑裂孔の辺縁が裂けてしまうので注意が必要である.黄斑部の状態を慎重に確認しながら,まずは硝子体剪刀で黄斑裂孔と増殖膜の癒着を切断する(図1).その後,周辺部に向かって人工的後部硝子体?離を作製する.このような症例では不完全後部硝子体?離が生じていることが多いので,膜処理は比較的容易なことが多い.増殖膜処理および人工的後部硝子体?離作製が終了した時点で,黄斑裂孔を介して網膜下液を吸引する.この際,網膜下液が粘稠なため,黄斑裂孔が大きく拡大するが,あまり問題にはならないようである(図2).通常の特発性黄斑円孔とは異なり,スリット状に裂けたタイプの裂孔のため,このまま気圧伸展網膜復位術を施行しても裂孔閉鎖が得られることが多いが,楕円形の形状が残存する場合には,インドシアニングリーン(ICG)を使用した内境界膜?離を併用したほうが黄斑裂孔の閉鎖が得られやすい(図3).●硝子体手術後の経過黄斑裂孔を伴う糖尿病性牽引性網膜?離は,術後に検眼鏡的に黄斑裂孔の閉鎖が得られることが多く,視力も予想以上に改善することがある1).(71)文献1)前田耕志,池田恒彦,澤浩ほか:黄斑裂孔を伴う糖尿病性牽引性網膜?離に対する硝子体手術.眼臨89:971-974,1995硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載?41黄斑裂孔を伴う糖尿病性牽引性網膜?離に対する硝子体手術(中級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図2増殖膜処理後の黄斑裂孔の所見楕円形の形状が残存している.図1硝子体剪刀による増殖膜処理硝子体剪刀で黄斑裂孔と増殖膜の癒着を慎重に切断する.図3ICG染色による内境界膜?離黄斑裂孔の閉鎖を目的とした内境界膜?離を行う.

眼科医のための先端医療70.高脂血症治療薬で眼疾患を治療できる?

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS高脂血症治療薬スタチンとは?スタチン(正式名称:3-hydroxy-3-methylglutarylcoenzymeAinhibitor)は優れた血中コレステロールおよび低比重リポ蛋白(LDL)値低下作用をもつ高脂血症治療薬として現在広く用いられています.高脂血症は生活習慣病の一つであり,動脈硬化の進展などを介してさまざまな病態に深く関わっているため,コレステロールを下げること自体が健康に良いのはいうまでもありませんが,近年のめざましい研究成果から,このスタチンにはコレステロール低下に依存せずに血管を保護する作用など,生体に有益な効果を有することが知れられています.これはスタチンの多面的作用(pleiotropice?ect)とよばれ,循環研究の大きな話題の一つとなっています.スタチンの多面的作用スタチンはもともと肝臓でのLDLの取り込みを亢進させることにより高脂血症を改善させることを目的として開発された薬物です.しかしながら,欧米を中心とした大規模な臨床・疫学的検討によって,冠動脈疾患の発症進展を低下させることがLancet誌に報告され1),スタチンの心血管保護作用が俄然注目を浴びるようになりました.それ以降たくさんの基礎・臨床研究がなされ,スタチンによる心血管保護作用のメカニズムが徐々に解明されつつあります.スタチンの血管に対する作用のメカニズムに関しては,抗凝固・血栓作用や単球の血管内皮への接着抑制作用に加え,血管内皮細胞における一酸化窒素合成の促進,エンドセリン発現の抑制,酸化ストレスの軽減2),あるいは低分子量G蛋白???の活性化を抑制する3)ことなどが考えられています.眼科疾患へのスタチン治療の応用眼科領域でもスタチンの有用性が示され始めています.1990年代初めにすでにスタチン投与によって糖尿病網膜症が改善したとの症例報告があります4).最近になりラットの虚血再灌流モデル5),糖尿病誘発モデル6)でスタチンが白血球の血管内皮への接着を抑制する,あるいは血液網膜柵の透過性亢進を抑制する7)という報告がなされ,スタチンの網膜循環障害疾患への応用の可能性が示されました.筆者らもこのスタチンの血管保護作用に注目し,まず正常人にスタチンを投与した際の網膜循環動態を評価しました.するとスタチン内服後1週間で網膜血流は約20%増加しました8).糖尿病網膜症などは発症早期から網膜血流が減少することが知られています9)ので,スタチン投与によって網膜血流を改善させることができれば,網膜症の発症進展を抑制できるのではないかと期待しております.さらに筆者はこのスタチンの網膜血管への直接作用を,網膜摘出血管を用いた実験系で評価し,スタチンによる血管拡張作用は血管内皮からの一酸化窒素が重要な役割を果たしていることを明らかにしました10).糖尿病や高血圧などではその早期から血管内皮の機能異常,すなわち内皮からの一酸化窒素放出能の低下がひき起こされていることから,スタチンが網膜血管内皮保護作用を有し,糖尿病網膜症の発症進展予防に有効であるというエビデンスの一つになると考えています.さらに大規模臨床試験による検討から,スタチンが加齢黄斑変性11,12)や緑内障13)にも有効であるという興味深(67)◆シリーズ第70回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊長岡泰司(テキサスA&M大学/旭川医科大学眼科)高脂血症治療薬で眼疾患を治療できる?図1血管に対するスタチンの作用(仮説)スタチンはeNOSの活性化およびHMG-CoA抑制を介した???????-kinase経路の抑制により結果的にNO産生を促進させ,血管拡張,血管内皮保護作用を有すると考えられている.HMG-CoA:3-hydroxy-3-methylglutarylcoenzymeA,NO:nitricoxide(一酸化窒素),eNOS:血管内皮型NO合成酵素,???:低分子量G蛋白,Farnesyl-PP:ファルネシルピロリン酸.HMG-CoAメバロン酸???/???-kinaseeNOSNOFarnesyl-PPコレステロール-+-++血管拡張血流増加血管内皮保護スタチン———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006い結果が報告されました.特に緑内障に関しては,スタチンを23カ月以上内服している群で開放隅角緑内障発症率が有意に低かったと報告されています.また培養線維柱帯細胞を用いた実験から,スタチンは細胞の形態を変化させミオシン軽鎖のリン酸化を抑制することにより眼圧下降させるというメカニズムが提唱されています14).実際筆者らの行ったスタディでも,スタチン内服により眼圧は2mmHgほど有意に低下しておりました.少数例での検討ではありますが,スタチンが眼循環改善効果と眼圧下降作用の両方を有するのであれば,新しい緑内障治療薬となる可能性もあると思われます.今後の展望実際に眼科疾患に応用するためには,解決しなければならない問題が数多く残されています.スタチンの血管新生への作用については,ウサギの虚血肢モデルで血管新生を増加させるという報告があり15),すでに血管新生が進行している増殖糖尿病網膜症への投与は慎重にすべきかも知れません.しかしながら今年のARVOでは,レーザー誘導脈絡膜新生血管モデルや糖尿病ラットなどで,スタチンのVEGF(血管内皮増殖因子)抑制を介した新生血管抑制効果が報告されており,臓器によりスタチンの新生血管への効果は異なるのかもしれません.また,血管さらに動物実験で効果が得られるスタチンの濃度は,実際の内服によって得られる血中濃度よりも高濃度で用いられていることがほとんどです.これを克服するには眼局所に高濃度に投与できるドラッグデリバリーシステムの開発が必要です.脂溶性,水溶性などいくつかのタイプのスタチンが存在しますが,眼組織,特に後眼部への移行性に優れたスタチンの点眼をつくることができれば,われわれ眼科医も手軽にこの薬剤を眼科疾患に応用できる日がくるかもしれません.いずれにしても眼科領域でのスタチンの研究はまだ始まったばかりで,今後エビデンスを積み重ねていくことでこの薬剤の眼科疾患への応用の可能性が評価されていくものと思われます.文献1)Randomisedtrialofcholesterolloweringin4444patientswithcoronaryheartdisease:theScandinavianSimvas-tatinSurvivalStudy(4S).??????344:1383-1389,19942)Hernandez-PereraO,Perez-SalaD,Navarro-AntolinJetal:E?ectsofthe3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoAreductaseinhibitors,atorvastatinandsimvastatin,ontheexpressionofendothelin-1andendothelialnitricoxidesynthaseinvascularendothelialcells.?????????????101:2711-2719,19983)RikitakeY,LiaoJK:RhoGTPases,statins,andnitricoxide.????????97:1232-1235,20054)GordonB,ChangS,KavanaghMetal:Thee?ectsoflipidloweringondiabeticretinopathy.???????????????112:385-391,19915)HonjoM,TaniharaH,NishijimaKetal:Statininhibitsleukocyte-endothelialinteractionandpreventsneuronaldeathinducedbyischemia-reperfusioninjuryintheratretina.???????????????120:1707-1713,20026)MiyaharaS,KiryuJ,YamashiroKetal:Simvastatininhibitsleukocyteaccumulationandvascularpermeabilityintheretinasofratswithstreptozotocin-induceddiabetes.???????????164:1697-1706,20047)MooradianAD,HaasMJ,BatejkoOetal:Statinsamelio-rateendothelialbarrierpermeabilitychangesinthecere-braltissueofstreptozotocin-induceddiabeticrats.?????????54:2977-2982,20058)NagaokaT,TakahashiA,SatoEetal:E?ectofsystemicadministrationofstatinonretinalcirculation.????????????????124:665-670,20069)KonnoS,FekeGT,YoshidaAetal:RetinalbloodflowchangesintypeIdiabetes.Along-termfollow-upstudy.?????????????????????????37:1140-1148,199610)NagaokaT,HeinT,YoshidaAetal:Simvastatinelicitsdilationofisolatedporcineretinalarterioles:Roleofnitricoxideandmevalonate-Rhokinasepathway.??????????????????????????(inpress)11)McGwinGJr,OwsleyC,CurcioCAetal:Theassociationbetweenstatinuseandagerelatedmaculopathy.???????????????87:1121-1125,200312)WilsonHL,SchwartzDM,BhattHRetal:Statinandaspirintherapyareassociatedwithdecreasedratesofchoroidalneovascularizationamongpatientswithage-relatedmaculardegeneration.???????????????137:615-624,200413)McGwinGJr,McNealS,OwsleyCetal:Statinsandothercholesterol-loweringmedicationsandthepresenceofglaucoma.???????????????122:822-826,200414)SongJ,DengPF,StinnettSSetal:E?ectsofcholesterol-loweringstatinsontheaqueoushumorout?owpathway.?????????????????????????46:2424-2432,200515)KureishiY,LuoZ,ShiojimaIetal:TheHMG-CoAreductaseinhibitorsimvastatinactivatestheproteinkinaseAktandpromotesangiogenesisinnormocholester-olemicanimals.???????6:1004-1010,2000(68)***———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????(69)■「高脂血症治療薬で眼疾患を治療できる?」を読んで■現在,眼疾患のなかでも糖尿病網膜症,加齢黄斑変性など網脈絡膜血管疾患に有効性,安全性が確立された治療薬はまだありません.その病態の研究から,血管新生促進因子である血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)の抑制を目的とした治療薬の開発治験が日本でも行われています.これは発症した上記疾患の特に新生血管そのものを治療のターゲットとしたもので,副作用を回避しつつ積極的な治療を目指すものです.今回,長岡泰司先生が詳細に,そしてわかりやすくまとめてくださったスタチンは同様に,網膜血管疾患の治療を目指すものですが,使い方として長期に内服することができ,全身疾患としての動脈硬化性血管病態を改善することを目的として使用することができます.スタチンを治療薬として使う際に考える必要があるのは近年,予防医学の枠組みのなかで研究が急速に進行しているメタボリックシンドロームと眼疾患の関連と考えられます.眼科医としては,まず,眼疾患にメタボリックシンドロームがどのように関連しているかを知りたいところです.さらに内科医に対しては,身体のなかで唯一生きた血管の状態を観察,評価できる網膜血管の所見,網膜血管疾患の病態の情報を全身の動脈硬化症の重要なリスクファクターとして検討することが有意義であることをアピールする必要があります.このような検討に関連して介入試験としてスタチン治療はまさにぴったりの薬物ということになります.眼科医がいかに全身疾患の治療に有意義な情報を提供し,かつ,眼科疾患の治療法開発に内科をはじめとした他科の先生の協力を得るかという重要な接点について,長岡先生に解説していただきました.今後の眼科研究の大きな方向性を示していただいたと考えられます.山形大学医学部視覚病態学山下英俊☆☆☆

新しい治療と検査シリーズ165.小切開角膜内皮移植

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS?バックグラウンド角膜内皮移植は,2000年前後にいくつかの臨床報告がなされてから急速に術式の発展がみられた.当初は,マイクロケラトームを用いて深部実質を移植する術式としてmicrokeratome-assistedendotheliallamellarkera-toplasty(ELK)1,2)と,強角膜切開から深部実質を挿入するposteriorlamellarkeratoplasty(PLK)あるいはdeeplamellarendothelialkeratoplasty(DLEK)が注目されていた3).その後,ELKは徐々に衰退して,現在では強角膜から深部実質を移植する流れになっている.?新しい治療法DLEKでは,角膜厚を調整することを目的にレシピエント側の実質を切除するステップが含まれていたが,最近ではDescemet膜のみを?がして深部実質を移植する術式にシフトしつつある.代表的な術式は,Des-cemet?sstrippingwithendothelialkeratoplasty(DSEK)とよばれており,Priceらによって報告された4).DSEKはDLEKと比較して深層実質を切除するステップが省けるため,手技が比較的容易であるのが最大の特徴である.一方で,術後に実質が多少厚くなる可能性があるため,浅前房眼,前房レンズ挿入眼などは良い適応とはならない.実質の余分な厚みは,今のところ術後経過に影響するという報告はないものの,今後の経過観察が必要である.?実際の手術法DSEK,DLEKは現在5.0mm幅の小切開創よりドナーが挿入されている.原法では水晶体?外摘出術(ECCE)新しい治療と検査シリーズ(65)165.小切開角膜内皮移植プレゼンテーション:榛村重人慶應義塾大学医学部眼科学教室コメント:稲富勉京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学図1レーザー虹彩切除術後の水疱性角膜症に対して,PEA+IOL+DLEKを施行した症例図2Pseudophakicbullouskeratopathy(左)に対するDSEK(右)幼少時の角膜実質炎による角膜浅層の淡い混濁も認められる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006と同じ9.0mm前後の強角膜切開より行われていたが,少量の粘弾性物質を内皮面に塗布することでドナーを半折りにしても問題ないことがわかってきた.ドナーがレシピエントの内皮面に接着するのは内皮細胞のポンプ作用とされている.術終了時に前房内空気でドナー組織をレシピエントに数分間押しつけるだけで内皮は接着する.Terryらはすでに100例近くの症例を報告している5,6)が,術後6カ月の拒絶反応は4%,平均内皮細胞密度は2,140±427cells/mm2という良好な結果を得られている.DSEK,DLEK最大の利点である屈折変化は,術前と比較して0.28±1.08Dの乱視変化しか認めていない.いずれのデータも全層角膜移植(PKP)より良好であり,今後はさらに術式の改良とともに発展することが予想される.約4~10%の頻度で術後に内皮のずれが報告されているが,再度空気注入で整復が可能である.文献1)AzarDT,JainS,SamburskyR:Anewsurgicaltechniqueofmicrokeratome-assisteddeeplamellarkeratoplastywithahinged?ap.???????????????118:1112-1115,20002)BusinM,Ar?aRC,SebastianiA:Endokeratoplastyasanalternativetopenetratingkeratoplastyforthesurgicaltreatmentofdiseasedendothelium:initialresults.??????????????107:2077-2082,20003)MellesGR,LanderF,vanDoorenBTetal:Preliminaryclinicalresultsofposteriorlamellarkeratoplastythroughasclerocornealpocketincision.?????????????107:1850-1856;discussion1857,20004)PriceFWJr,PriceMO:Descemet?sstrippingwithendo-thelialkeratoplastyin50eyes:arefractiveneutralcorne-altransplant.??????????????21:339-345,20055)TerryMA,OusleyPJ:Deeplamellarendothelialkerato-plastyvisualacuity,astigmatism,andendothelialsurvivalinalargeprospectiveseries.?????????????112:1541-1548,20056)TerryMA,OusleyPJ:Deeplamellarendothelialkerato-plasty:earlycomplicationsandtheirmanagement.??????25:37-43,2006(66)?本方法に対するコメント?新しい角膜内皮移植術としてはposteiorlamellarkeratoplasty(PLK),microkeratome-assistedendo-theliallamellarkeratoplasty,Descemet?sstrippingwithendothelialkeratoplasty(DSEK)がある.全層角膜移植での不正乱視,縫合糸部での感染,創離解などの問題を解決できる画期的な方法である.しかし手術手技は煩雑であり,さらに特殊器具を必要とするなど,一般化しにくい一面は否定できない.特にPLKでの角膜実質層間?離では,切除角膜厚の調整や円形切除には技量と経験を必要とする.視機能面では良好な結果が報告されているが,当初期待された免疫的反応や内皮細胞の推移は全層角膜移植術と同等であり,内皮型拒絶反応には注意がいる.今回紹介されている小切開術式が主流になるのは間違いなさそうであるが,Mellesらの報告では早期の角膜内皮細胞の減少が9mmより5mm切開で速い一面は気になる.角膜内皮細胞への悪影響や創傷治癒については十分な検討が待たれる.安定した手技取得には,時間と症例数が必要であり,移植片の位置づれや接着不良などが散見され,完成された全層角膜移植と比較すると初期症例の克服には課題が残る.また平面での創傷治癒が起こるため,混濁による視機能への影響が危惧される.内皮移植は乱視抑制や縫合糸に関連する合併症が少ない利点は評価に値するが,現方法が将来的に全層角膜移植に置き換わるためには,より完成度の高い手技への改良と長期的な内皮細胞への影響が検証されることが必須であるように感じている.☆☆☆

眼感染症:アカントアメーバ培養検査

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS■アカントアメーバを見つけよう!アカントアメーバ(以下,アメーバ)は,角膜炎を起こすことが知られている微生物で,淡水や土壌に住む原虫である.外傷をきっかけに角膜に感染するが,近年ではコンタクトレンズ装用者に重篤な感染症をひき起こす原因微生物として問題となっている.角膜の病巣からアメーバを証明するには,病巣を擦過(あるいは掻爬)して(図1),検体を塗抹鏡検するか,あるいは分離培養する必要がある.迅速診断としては塗抹鏡検が有用であるが,さらに分離培養を行うことによって,アメーバの存在が確定的になるだけでなく,その増殖力を観察することで病勢を判断できる.栄養体は3~4日,?子は5~7日で確認できる(図2).アメーバの培養検査にはさまざまな方法があるが,本稿では,筆者らが用いている培養法を中心に紹介する.■培養検査に必要なもの(図3)アメーバの培養には,方法の詳細に関わらず,以下のような準備が必要である.?アメーバ用培地:抗生物質を含まない寒天培地.?菌液:大腸菌,あるいは納豆菌,イースト菌など,アメーバの餌になる菌を含んだ液.?菌液を培地に塗布する道具:コンラージ棒など.?角膜擦過に用いる器具類:開瞼器,スパーテル,鑷子,impressioncytology用の膜・MQAなど.?保管場所:25~30℃の室温,あるいは孵卵器.■培養検査の手順1.培地の準備①アメーバ用培地を作製する.(63)41.アカントアメーバ培養検査眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=大橋裕一井上幸次亀井裕子東京女子医科大学東医療センター眼科アカントアメーバ角膜炎はその多彩な病像ゆえに診断に苦慮することがある.そんなとき威力を発揮する培養検査は,病巣部だけでなくコンタクトレンズやケース内保存液を用いてアメーバの存在を証明できる有用な手段である.納豆菌を用いた培養法は,特別な道具や施設がなくても比較的簡単に作製できる便利な方法といえる.図1アカントアメーバ角膜炎の偽樹枝状病変と掻爬部位写真にで示すように,病巣部付近を大きめに掻爬する.図2寒天培地上で培養されたアカントアメーバ(生体顕微鏡で観察,400倍)左:培養3日目.多数の栄養体(トロホゾイド)があり,盛んに分裂している(矢印↑).右:培養7日目.二重壁の?子(シスト)が多数みられる.(背景にある微細な粒子が,寒天表面で増殖した納豆菌)———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006②菌液を作製する.③菌液を培地に塗る.2.角膜擦過①点眼用キシロカイン?4%液で点眼麻酔する.②開瞼器をかける.③スパーテルで角膜を擦過する.④擦過した角膜をスパーテルですくい,培地の中央に載せる.3.培地の観察①培地のふたをテープでシールする.この際テープに小さい穴を数カ所開けておく.②25℃の室温,あるいは孵卵器に静置する.③培地を生体顕微鏡に載せ,観察する.■納豆菌を用いた培養法の実際筆者らが用いているのは,納豆菌を用いた培養法である.抗菌薬を含まないアカントアメーバ培地をまとめて作製しておく.納豆菌液は,検体を採取する直前に作製して,使用する必要枚数だけ培地に塗布するのがよい.1.アメーバ用培地の作製用意するもの:滅菌シャーレ(直径6cm),寒天,生理食塩水.方法:20倍に希釈した生理食塩水で寒天を溶かして1.5%濃度とし,滅菌シャーレに厚さが5mmになるよう注ぐ.オートクレーブで121℃,15分間滅菌する.2.菌液の作製と培地への塗布用意するもの:市販の納豆(発泡スチロール,あるいは紙カップに入ったもの),滅菌蒸留水,滅菌シリンジ,コンラージ棒,アルコールランプ.方法:市販の納豆パックを開封し,納豆が入ったまま容器内に蒸留水を入れて,20分ほど静置する.蒸留水が淡い乳白色になっているのを確認して,シリンジで静かに液を吸う.作製した菌液を,アメーバ用培地に2~3滴滴下し,アルコールランプで熱消毒したコンラージ棒を用いて,まんべんなく塗布する.■コツ1)培地の保管:納豆菌を塗布する前の培地は冷蔵庫で1週間は保存できる.納豆菌を塗布したらできるだけ早く使用する.2)納豆菌液の作製:納豆はできるだけ新しいものを購入する(水戸の納豆がよい?).菌液を吸う際には,ねばねばした固まりを吸い込まないように注意しながら丁寧に行う.3)検体採取と接種:病巣部よりやや大きめに掻爬するとよい.検体は培地の中心に置く.スパーテルを培地に軽く押し付けるようにすると培地に軽い傷ができ,置いた場所がわかりやすい.文献1)石橋康久,本村幸子:アカントアメーバ角膜炎の診断と治療.眼科33:1355-1361,19912)石尾香,岡田克樹,石橋康久ほか:アカントアメーバ角膜炎の確定診断における培地の比較.眼紀46:1021-1025,1995(64)■コメント■アカントアメーバ角膜炎の診療では確定診断はきわめて重要な位置を占める.病原体の分離により,大きな自信をもって治療に取り組めるからである.アカントアメーバの分離には餌となる細菌の存在が必要である.一般病院の検査室では大腸菌が使用されることも多いが,ここで紹介された納豆菌(学名?????????????????natto)も便利なアイテムである.特に,水戸の納豆は,人間のみならずアカントアメーバにとっても大好物に違いない.アカントアメーバ角膜炎を疑った場合,分離培養を試みることをお勧めする.培地の塗布液面にアカントアメーバの軌跡を発見したとき,このうえない感動に襲われるはずである.愛媛大学医学部眼科大橋裕一寒天培地納豆パックコンラージ棒図3培養検査に必要なもの

光線力学的療法(PDT):狭義滲出型加齢黄斑変性の診断

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS現在一般的に用いられている加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の分類は1995年にBirdらが提唱した国際分類による1).この分類では加齢性の黄斑の変化は加齢黄斑症(age-relatedmaculopathy:AMD)とまとめられていて,初期と後期に分けられている.滲出型加齢黄斑変性(exudativeage-relatedmaculadegeneration:exudativeAMD)は,萎縮型(drytype)とともに後期加齢黄斑症に分類されている.臨床の現場でよく目にする滲出型AMDは,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)が網膜色素上皮下や感覚網膜下に伸展し,出血や滲出性病変を生じて最終的には瘢痕下する疾患である.これまでのフルオレセイン蛍光造影(FA)に加えて,近年普及したインドシアニングリーン蛍光造影(IA)や光干渉断層計(OCT)によってより詳細に滲出型AMDの病態を観察することが可能となったが,これまで滲出型AMDとして考えていたもののなかにさまざまな病態が含まれていることが報告されてきた.この数年で広く知られるようになったポリープ状脈絡膜血管症(polypoi-dalchoroidalvasculopathy:PCV)2)と網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)3)が新しい概念の滲出型AMDの病態である.PCVやRAPも黄斑部に滲出病変を生じ最終的に瘢痕化することから,滲出型AMDに含まれる一病型と考えられる.しかし,その臨床経過やCNVの進展や予後が異なることから臨床では区別して考えるのが一般的であり,これらを除いた滲出型AMDを狭義滲出型AMDとよんでいる.狭義滲出型AMDの診断には基本となる検眼鏡所見に加え,FAやIA,OCTといった画像検査が大いに参考となる.狭義滲出型AMDの基本病態はCNVであるが,この(61)永井由巳関西医科大学眼科光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子1.狭義滲出型加齢黄斑変性の診断滲出型加齢黄斑変性とは,高齢者の黄斑部に脈絡新生血管が生じてその滲出変化により視機能が低下する疾患である.狭義滲出型加齢黄斑変性とは,滲出型加齢黄斑変性から,その亜型で新生血管の形態や位置など病態や予後の異なるポリープ状脈絡膜血管症(PCV)や網膜内血管腫状増殖(RAP)を除いたものをいう.提供図1Gass1型のCNV眼底には網膜色素上皮の色素むらと扁平な漿液性網膜?離,網膜下出血を認め(a),FAでは早期に顆粒状過蛍光と出血による蛍光ブロックを認める(b).FA後期では淡い蛍光漏出を認めた(c).IAでは早期に網目状のCNVがみられ(d),晩期にはplaque状過蛍光を示した(e).OCTでは網膜色素上皮の扁平な隆起と重層化を認めた(f).abcedf出血によるblock網目状のCNV漿液性網膜?離網膜色素上皮層の隆起CNVoccultCNV図2Gass2型のCNV眼底には灰白色病変と周囲に漿液性網膜?離とを認める(a).FAでは早期から境界明瞭な過蛍光を示すCNVがみられ(b),時間とともに旺盛な蛍光漏出を認めた(c).IAでも早期から低蛍光輪に囲まれた境界明瞭な過蛍光を示すCNVがみられた(d,e).OCTでは網膜色素上皮の断裂部から網膜下に突出したCNVの中等度反射塊を認める(f).classicCNV後期の蛍光漏出CNVdarkrim網膜色素上皮の断裂2型CNV?胞様黄斑浮腫abcedf———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006(00)CNVの発育進展部位は網膜色素上皮下と感覚網膜下とがある.この発育部位の違いにより臨床所見や治療の効果も異なってくることから,その診断には注意を要する.Gassは網膜色素上皮下に発育するCNVを1型(図1),感覚網膜下に発育するCNVを2型(図2),両者が混在する混合型と分類した.これらを分類するのにFAやIA,OCTが有用である.検眼鏡所見を含めたこれらの検査所見の特徴を表1に示す.CNVの分類は上記で述べたとおりであるが,臨床的には1型と2型との両者を含む,混合型が最も多いことから,光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)を行ううえで効果を比較するためにFAでは図3のように分類する.滲出型AMDの診断は,眼底検査が最も重要ではあるが,これらの画像の読影パターンを数多くの症例を経験して把握することで,正確に行うことができる.文献1)BirdAC,BresslerNM,BresslerSBetal:Aninternationalclassi?cationandgradingsystemforage-relatedmaculop-athyandage-relatedmaculardegeneration.TheInterna-tionalARMEpidemiologicalStudyGroup.????????????????39:367-374,19952)YannuzziLA,SorensonJ,SpaideRFetal:Idiopathicpol-ypoidalchoroidalvasuculopathy(IPCV).??????10:1-8,19903)YannuzziLA,NegraoS,IidaTetal:Retinalangiomatousproliferationinage-relatedmaculardegeneration.??????21:416-434,2001表1Gass1型CNVと2型CNVの所見の特徴Gass1型Gass2型CNVの発育部位網膜色素上皮下感覚網膜下FAでの分類OccultClassic検眼鏡所見(CNVの部位)網膜色素上皮の隆起?漿液性網膜色素上皮?離?線維血管性網膜色素上皮?離?網膜色素上皮下出血網膜下の灰白色病変?縁取り状の網膜下出血や網膜浮腫・網膜?離FA所見OccultCNV?網膜色素上皮下のCNVなのではっきりと造影されない.?線維血管性色素上皮?離(FVPED)?起源不明の後期蛍光漏出病巣(late-phaseleakageofundeter-minedsource)ClassicCNV?造影早期から境界明瞭で旺盛な蛍光漏出?CNVの周りに低蛍光輪(darkrim)IA所見造影早期には網目状の血管がみられることが多く,晩期になるとCNVの範囲全体が面状の過蛍光を示し,plaqueとよばれる.造影早期に網目状の血管がみられ,晩期になると旺盛な蛍光漏出がみられるが,線維化が進むとほとんど蛍光を示さないこともある.OCT所見網膜色素上皮下に広がるCNVのため,網膜色素上皮の高反射層が肥厚あるいは二重化を示す.網膜色素上皮層に断裂部がみられ,そこから感覚網膜下に広がるような高反射塊がみられる.線維化が進むとCNVの反射はより高反射となる.図3光線力学的療法におけるCNVのFAでの分類病変におけるclassicCNVの割合で分類する.a:predomi-nantlyclassicCNV(50%以上),b:minimallyclassicCNV(50%未満),c:occultwithnoclassicCNV(0%).a-1c-1b-1a-2c-2b-2:occultCNV:classicCNV

緑内障:前眼部3D解析装置ペンタカムによる閉塞隅角緑内障の前眼部形状

2006年10月30日 月曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSペンタカム(オクルス社)は,光源を180?回転させることにより複数のScheimp?ug像を撮影できる回転式Scheimp?ugカメラで,撮影画像からコンピュータ上で角膜前後面,虹彩,水晶体前後面を立体構築することにより,1)角膜の前後面形状測定,2)複数測定点での角膜厚,前房深度測定,3)前房容積測定などが可能である(図1,2).この装置を用いて閉塞隅角眼での解析を試みたところ,狭隅角群の前房容積(74.5±21.1??)はレーザー虹彩切開術(laseriridotomy:LI)施行後群(96.4±21.4??),開放隅角群(144.2±31.6??)に比較して有意に小さかった(p<0.001).前房容積は周辺前房深度と最も強く相関し(p<0.001),LI施行前後では,中心前房深度には変化はなく,前房容積,周辺前房深度のみ有意に増加した(p<0.001).以上より,ペンタカムによる前房容積および周辺前房深度の測定は,狭隅角眼の前房形状の指標として有用であると考えられた1).閉塞隅角緑内障の発症機序としては,相対的瞳孔ブロックとプラトー虹彩が最も大きく関与しているとされている.最近の報告では,相対的瞳孔ブロックの成分が(59)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄76.前眼部3D解析装置ペンタカムによる閉塞隅角緑内障の前眼部形状大鳥安正大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)一般的に狭隅角眼に対する予防的レーザー虹彩切開術の相対的適応は,圧迫隅角検査で周辺虹彩前癒着が生じている場合(原発閉塞隅角症)とされている.圧迫隅角検査に加えて,非接触式前眼部3D解析装置により,経時的に前眼部形状変化を定量評価することは,病態把握に有用である.図1ペンタカムの概観前房容積中心前房深度Scheimpflug画像中心角膜厚角膜曲率隅角角度デンシトメトリー中間前房深度周辺前房深度図2ペンタカムのオーバービューディスプレー表示約2秒で,Scheimp?ug画像,前眼部3D解析,角膜トポグラフィ,パキメトリー,デンシトメトリーの5つの解析が可能である.閉塞隅角眼の前眼部形状解析には,中心前房深度,周辺前房深度,前房容積などが参考になる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.10,2006強い場合には,LIにより隅角は開大するが,プラトー虹彩形状では,LIを行っても隅角形状はほとんど変化なく,周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechiae:PAS)の進行もあるとされている2).すなわち,PASの存在だけでLIを施行しても必ずしもPASの進行を抑制できるわけではないということになる.プラトー虹彩形状に関しては,圧迫隅角検査でサインウェーブサイン(あるいは,ダブルハンプサイン)があれば超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscope:UBM)で虹彩形状を確認することが望ましく,プラトー虹彩形状であれば,安易にLIをせずに隅角底を広げるような処置としてピロカルピン点眼,レーザー隅角形成術および水晶体混濁があれば水晶体摘出を行うことを考慮すべきであろう.アジア人では相対的瞳孔ブロック以外の原因によって閉塞隅角緑内障が発症していることが少なくないことに加えて,わが国では予防的LI後の水疱性角膜症の発症率が高いことから,LIの適応の見直しが必要となってきている.狭隅角眼では,圧迫隅角検査によるPASの有無やUBMによる虹彩形状を確認することに加えて,ペンタカムのような非接触式3D画像解析装置により前眼部形状変化(前房深度や前房容積など)を経時的に解析することにより,LIの適応を慎重に考慮すべきであると考える.文献1)岡奈々,大鳥安正,岡田正喜ほか:前眼部3D解析装置Pentacam?における閉塞隅角緑内障眼の前眼部形状.日眼会誌110:398-403,20062)ChoiJS,KimYY:Progressionofperipheralanteriorsyn-echiaeafterlaseriridotomy.???????????????140:1125-1127,2005(60)☆☆☆年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2007Vol.20■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp