———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSや皮膚萎縮・色素沈着などの原因になるので,結膜?内点入の方法を指導する.下眼瞼を下方に引き,下眼瞼縁の瞼結膜側に眼軟膏をのせる.量は長さ5~10mm程度で十分である.数回瞬目すると眼軟膏は眼表面に広がる.眼軟膏使用後は,眼表面の油膜のためにその後の点眼薬が吸収されなくなるので,点眼液と眼軟膏を併用する際は,眼軟膏を最後に使うよう患者に指導する.また,油膜のために霧視が起こることを説明しておく.II結膜下注射前眼部炎症にはステロイド薬点眼が第一選択であるが,頻回点眼でも効果が十分でない場合,ステロイド薬の結膜下注射を行う.水溶性ステロイド薬のデキサメタゾン(dexamethasone:デカドロン?)やベタメタゾン(betamethasone:リンデロン?)の使用が一般的である.点眼麻酔後,27ゲージ針で結膜下に薬液を注入するが,血管や強膜を損傷して出血を起こさないようにする.針先はベベルダウンにすると眼球損傷が少なくなる.強膜炎などでは強膜菲薄化や融解などを起こす危険性はじめにぶどう膜炎治療の基本は副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬)1)であり,ステロイド薬の投与方法には,全身投与と局所投与がある.局所投与には,点眼と眼球周囲注射があり,眼球周囲注射は,薬液注入部位および注射方法に応じて,結膜下注射・Tenon?下注射・球後注射・経眼瞼的(経皮的)眼窩隔膜注射などに分けられる(表1).現在では結膜下注射・Tenon?下注射が一般的である.本稿では,ステロイド薬点眼(眼軟膏を含む)と,結膜下注射・Tenon?下注射について述べる.I点眼前眼部炎症の程度に応じて,デキサメタゾン(dexa-methasone)やベタメタゾン(betamethasone)の点眼回数を1日4~5回程度から増減する.炎症が高度なときには,1時間あるいは2時間ごとに頻回点眼することもある.消炎を確認しながら点眼回数を減らしていく.ステロイド薬点眼の減量に際しては,フルオロメトロン(?uorometholone)へすぐに変更するより,デキサメタゾンやベタメタゾンの点眼回数を1日1~3回に減らしていくほうがよい.抗菌薬の併用については意見が分かれるが,筆者は原則必要ないと考えている.羞明や眼痛のために流涙が多いときは,ステロイド薬眼軟膏の使用も考慮する.また,就寝中の徐放効果目的で就寝前に使用することもある.ただし,ステロイド薬眼軟膏を眼瞼周囲に塗り広げて長期使用すると,眼瞼炎(3)????*SumieKawahara:久留米大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕河原澄枝:〒830-0011久留米市旭町67久留米大学医学部眼科学講座特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1387~1390,2006ステロイド局所投与─点眼・眼球周囲注射─????????????????????????????─??????????????????????????????????─河原澄枝*表1副腎皮質ステロイド薬の眼球周囲注射1)結膜下注射2)Tenon?下注射a.鋭針を用いる方法b.鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射)3)球後注射4)経眼瞼的(経皮的)眼窩隔膜注射———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006もあり,注射の部位や頻回の注射には注意する.IIITenon?下注射遷延する強い後眼部炎症や?胞様黄斑浮腫(cystoidmacularedema:CME)の治療には,トリアムシノロン(triamcinoloneacetonide:ケナコルト?)の後部Tenon?下注射を行う.Tenon?下注射されたステロイド薬は,経強膜的に眼内移行し(図1),また,トリアムシノロンは徐放性の懸濁ステロイド薬であるため,粒子が徐々に溶解吸収されて抗炎症効果が長期間持続する.1回の投与で数週間から数カ月の効果が期待でき(図2,3),ステロイド薬全身投与に比べると全身的な副作用が少ない.Tenon?下注射には,鋭針を用いる方法と鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射2~4))があるが,筆者らは後者を行っている.経Tenon?球後注射は,白内障手術時のTenon?下麻酔と同様の要領で,経Tenon?下的に眼球後方に薬液を注入する方法である.結膜切開を必要とする点では煩雑であるが,眼球穿孔の可能性も少なく,ステロイド薬を眼球後方に確実に注入すること(4)図1Tenon?下注射されたステロイド薬の移行経路Tenon?下へ注入されたステロイド薬は,眼球後部から吸収され眼内へ移行する.図2症例:63歳,女性,サルコイドーシス─トリアムシノロンTenon?下注射前a:フルオレセイン蛍光眼底造影,b:光干渉断層法(opticalcoherencetomography:OCT).フルオレセイン蛍光眼底造影では強い蛍光漏出があり,OCTでは黄斑浮腫と漿液性網膜?離がみられる.ab図3図2のトリアムシノロンTenon?下注射後a:1カ月後,b:3カ月後.黄斑浮腫と漿液性網膜?離は改善した.ab———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????ができると考えている.眼球後方への確実な注入は,眼圧上昇や白内障進行などの合併症の発生頻度を少なくするうえでも重要である.1.鋭針を用いる方法26ゲージ針(短針)を結膜?円蓋部より刺入し,薬液を注入する.点眼麻酔後に,耳上側あるいは耳下側の円蓋部から刺入する.針先が目視できないので,眼球穿孔を避けるために針先を左右に振りながら眼球壁に沿って針を進める.注入前に血液の逆流がないことを確認する.2.鈍針を用いる方法(経Tenon?球後注射)21あるいは23ゲージのTenon?下注射用の曲鈍針と1.0m?注射シリンジを使用する.角膜輪部から7~8mmの部分に1~2mm程度の小さな結膜切開を行い,Tenon?を切開する.筆者らは,注射後の眼瞼下垂発生予防を考え,耳下方結膜円蓋部から行っている.強膜を確実に露出しそこから子午線方向に鈍針を眼球後方へ進めてから,ステロイド薬をゆっくり注入する.抵抗がある場合には,針先を動かす(少し戻す)と注入しやすくなる.戻しすぎると眼球後方に確実に注入できず,結膜切開部から薬液が漏出するので注意する.点眼麻酔薬で十分に表面麻酔を行っておくと,薬液(トリアムシノロン)注入時の痛みはさほどない.注入時に軽い圧迫感があることをあらかじめ患者に伝えておく.筆者らは,トリアムシノロン0.5m?(20mg)を注入している.外来で可能な処置であるが,感染予防のために清潔操作で行う.筆者らは,外来処置室で,内眼手術とほぼ同様に眼瞼周囲の皮膚および結膜?の洗浄・消毒を行い,ドレープ装用・顕微鏡下で行っている.感染性強膜炎や眼窩膿瘍などの報告もあり,また,ステロイド薬の性質上,感染が起こっても眼痛や充血などの症状が隠されることから診断の遅れにつながる.これらのことを考えると,鋭針を用いての経結膜下Tenon?下注射であっても,清潔操作下で行ったほうがよいと考える.結膜切開部の縫合は不要である.術後は,抗菌薬点眼を1週間程度使用する.Tenon?下注射は比較的安全な手技であるが,重篤な副作用や合併症5,6)も起こりうる(表2).また,Tenon?下に注入した薬液の除去は困難なため,適応は慎重に選ぶ必要がある.ぶどう膜炎では,あらかじめステロイド薬点眼が使用されていることが多く,ステロイドレスポンダーであるかどうかの判断は比較的やさしい.ステロイド薬点眼使用歴がない場合は,トリアムシノロン使用前に,ベタメタゾンやデキサメタゾンの点眼を2~4週間行い,ステロイドレスポンダーでないことを確認しておく.ステロイドレスポンダーには,トリアムシノロンTenon?下注射は選択しない.しかし,ステロイド薬点眼で眼圧上昇がなくても,トリアムシノロンTenon?下注射後に眼圧が上昇する症例も多く,注射後は眼圧の推移に注意する.大多数は,緑内障点眼薬と炭酸脱水酵素阻害薬で対応が可能であるが,眼圧コントロールが得られずに濾過手術が必要になることもある.おわりにステロイド薬は消炎効果に優れており,ぶどう膜炎治療には欠かせない薬剤であるが,その効果の反面副作用も多い.眼周囲注射に際しては,適応,投与方法,投与回数や間隔などを十分に考慮して行う.文献1)後藤浩:内眼炎の薬物療法─基礎と臨床:副腎皮質ステロイド薬.眼薬理18:39-43,20042)OkadaAA,WakabayashiT,MorimuraYetal:Trans-Tenon?sretrobulbartriamcinoloneinfusionforthetreat-mentofuveitis.???????????????87:968-971,20033)岡田アナベルあやめ:トリアムシノロンアセトニドの経テ(5)表2ステロイド眼局所投与の副作用一般的な副作用緑内障白内障感染症局所注射の副作用眼球穿孔・眼内誤注入7)感染性強膜炎・強膜軟化症5)眼窩膿瘍8)球後出血・網脈絡膜血管閉塞9)網脈絡膜血管塞栓,血管内誤注入眼瞼下垂10)眼窩脂肪ヘルニア10)———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006ノン?球後注入.眼紀55:442-444,20044)大黒伸行:眼局所へのドラッグデリバリーシステム.あたらしい眼科21:35-40,20045)直井信久,白坂陽子:網膜疾患に対するトリアムシノロン局所療法の副作用.あたらしい眼科21:1035-1041,20046)中西頼子,山本博之:黄斑浮腫に対するトリアムシノロンの効果と副作用.あたらしい眼科22:605-612,20057)大房祥江,川久保洋,島田宏之ほか:テノン?下注射によりステロイドが網膜に注入された1例.眼科38:1559-1563,19968)EngelmanCJ,PalmerJD,EgbertP:Orbitalabscessfol-lowingsubtenontriamcinoloneinjection.???????????????122:654-655,20049)MoshfeghiDM,LowderCY,RothDBetal:Retinalandchoroidalvascularocclusionafterposteriorsub-tenontri-amcinoloneinjection.??????????????134:132-134,200210)DalCantoAJ,Downs-KellyE,PerryJD:Ptosisandorbitalfatprolapseafterposteriorsub-Tenon?scapsuletriamcinoloneinjection.?????????????112:1092-1097,2005(6)年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2007Vol.24月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2007Vol.20■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障・光線力学的療法・眼感染症)新しい治療と検査/眼科医のための先端医療他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他株式会社メディカル葵出版〒113-0033東京都文京区本郷2-39-5片岡ビル5F振替00100-5-69315電話(03)3811-0544お申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.http://www.medical-aoi.co.jp