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新しい治療と検査シリーズ166.Coaxial phacoによる極小切開白内障手術

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS?バックグラウンド白内障手術の歴史は,切開創を小さくする歴史であったともいえる.3mm切開が一般的となり,小切開白内障手術でほぼ完成したと思われていた一方で,超音波ハンドピースより灌流系と吸引系を分離したbimanualphacoによる極小切開白内障手術が一部で行われていた1).最近の機器の進歩は,このbimanualphacoによる極小切開白内障手術をより繊細な手術として発展させることを可能にし普及し始めた2).これに対抗するかのごとく,2mm前後の切開創手術が可能な手術として2005年1月に登場したのが,coaxialphacoによる極小切開白内障手術である.?新しい治療法新しい治療法といっても,超音波ハンドピースより灌流系と吸引系を分離したbimanualphacoとは異なり,従来と基本的な手技が同じままで極小切開で白内障手術ができるというのがこのcoaxialphacoによる極小切開白内障手術である.?実際の手術法と原理超音波(US)チップをフレアーチップ(口径0.9mmのマイクロと1.1mmのスタンダードチップがある)にし,ウルトラスリーブまたはナノスリーブを装着させて手術を行う.フレアーチップの先端は幅が広いが,切開創を通過するシャフトの部分の口径は細く,この周囲を灌流液が流れることにより灌流量を確保する.従来のマイクロスリーブでは,2.6~3.0mmの切開創を作製し,USチップ(マイクロフレアーチップなど)を挿入していたが,ウルトラスリーブでは,この切開幅が,2.2mm(2.1~2.5mm),ナノスリーブでは,1.9mm(1.7~2.0mm)で挿入が可能になる(図1).手術手技としては,従来のphacochop法,Divide&Conquer法のいずれでも可能であり,大きな手技の違いはない(図2).新しい治療と検査シリーズ(59)166.Coaxialphacoによる極小切開白内障手術プレゼンテーション:黒坂大次郎岩手医科大学眼科学講座コメント:常岡寛東京慈恵会医科大学附属第三病院眼科?Micro:2.6~3.0mm?Ultra:2.1~2.5mm?Nano:1.7~2.0mm図1各種スリーブおよびスリーブと必要な切開創幅図2ナノスリーブ(1.9mm切開)での水晶体乳化吸引術———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006?本方法の良い点切開創を小さくできることは,角膜形状の変化を減少できる可能性があるばかりでなく,術後眼内炎の発症を抑えられる可能性も秘めている.切開幅では,bimanualphaco法のほうがより小さな切開からの白内障除去が可能なわけであるが,現行の眼内レンズ(IOL)では,挿入に2mm前後の切開幅が必要で,bimanualphacoで行っても,IOL挿入の際には,切開創を広げるか,別に作製する必要がある3).さらに,ラーニングカーブが必要であるが,coaxialphacoによる極小切開白内障手術では,ほぼ従来と同じ手技がそのまま使えるので,ラーニングカーブも少なく優れている.さらに,coaxialphacoによる極小切開白内障手術では,切開創から灌流液を漏らさない.USチップ周囲から灌流液を漏らす従来のcoaxialphacoやbimanualphacoと違い,ほぼすべての灌流液は,USチップから排出されるわけで,核片の効率的な除去という点からも合理的な手術といえる.設定をうまくコントロールすることにより,灌流不足を補うボトル高の上昇を減らせ,より侵襲を減らせる可能性がある4).さらに,この秋に登場したトーショナルフェイコと組み合わせると,従来よりボトルを落としての手術も可能になる.ナノスリーブでもほとんど問題なく手術を行える.文献1)HaraT,HaraT:Clinicalresultsofendocapsularphaco-emulsi?cationandcompletein-the-bagintraocularlens?xation.???????????????????????13:279-286,19872)常岡寛:極小切開白内障手術.??????18:372-378,20043)常岡寛:2mm切開時代のIOL挿入.眼科手術18:481-487,20054)黒坂大次郎:白内障手術アップデート2006極小切開白内障手術を可能にした器具.あたらしい眼科23:435-439,2006(60)?本方法に対するコメント?新しい手技を習得することなしに創口を小さくすることができるため,coaxialphacoによる極小切開白内障手術はきわめて有意義な術式である.ただ,ナノスリーブを用いた1.9mm切開での手術はまだ前房の安定性に問題があり,現状での眼内レンズ(IOL)挿入を考えるとウルトラスリーブを用いた2.2mm切開での手術のほうがよいと思われる.しかし,極小切開対応IOLの開発が進み,日本でも来年(2007年)には現行のモデルを少し改変したIOLを1.5mmの強角膜創から挿入することが可能になるため,現状のcoaxialphacoでは対応できなくなる.さらに細い超音波チップと灌流スリーブを用いるようにするか,細いスリーブでは不足する灌流量をサイドポートからも供給できるようなシステムにするか,それとも灌流スリーブの装着をあきらめてbimanualphacoにするか,さらなる検討と発展が望まれる.☆☆☆

眼感染症:感染性ぶどう膜炎の血液検査

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS臨床的に感染性ぶどう膜炎が疑われる場合,その診断あるいは治療効果の評価目的に病原微生物に対する血清抗体価を中心とした血液検査が行われることがある.しかし,病因を直接反映することの多い眼内液を用いた検索とは異なり,末?血から得られる検査データは常に眼局所の病勢を反映しているわけではなく,その評価は眼所見も踏まえて総合的に行う必要がある.■ウイルス性ぶどう膜網膜炎多くの成人は単純疱疹ウイルス(HSV)や帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して不顕性感染を起こしている.したがって,ウイルス性ぶどう膜網膜炎の診断目的に血清ウイルス抗体価を測定しても,その結果のみでは診断に役立つことはない.ただし,抗体価がまったく上昇していない場合,すなわち未感染の場合には発症における当該ウイルスの関与を否定する根拠にはなりうる.1.桐沢型ぶどう膜炎(急性網膜壊死)(図1)血清の抗体価とともに眼内液(前房水もしくは硝子体液)中の抗体価を同時期に測定し,それぞれの免疫グロブリン量で補正した比率を求め,その値(Goldmann-Witmer係数,Q値)が41)~62)以上の場合には,当該ウイルスによって眼内局所で抗体産生が行われている可能性があり,診断的意義も高い.HSVによって発症する桐沢型ぶどう膜炎の場合,Q値に基づく診断では交差性の問題からHSV-1とHSV-2の区別はできない.しかし,中和試験(NT)による血清抗HSV抗体価の測定結果は,眼内から検出されるウイルスDNAとよく相関することから,血清レベルの抗体検索が両ウイルスの区別に役立つ3).2.サイトメガロウイルス網膜炎サイトメガロウイルス網膜炎の診断は眼底所見そのものと,背景となる免疫抑制の確認が基本となるが,診断のスクリーニングとして末?血を用いたアンチジェネミア検査は有用である4).ただし,アンチジェネミアの結果と網膜炎の病勢は必ずしも平行しないことに留意する.臨床的にサイトメガロウイルス網膜炎が疑われるが,明らかな免疫抑制状態につながる治療歴や既往歴のない場合は後天性免疫不全症候群(AIDS)の可能性も考慮し,インフォームド・コンセントのもとに抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体の検索が望ましい場合もある.3.HTLV-I関連ぶどう膜炎ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-Ⅰ)に感染したキャリアにみられるHTLV-Ⅰ関連ぶどう膜炎では,血清抗HTLV-Ⅰ抗体の上昇がみられる5).というよりも本症に特徴的な眼底所見に加え,血清抗HTLV-Ⅰ抗体が上昇しており,かつ患者が南九州などの本ウイルスの高浸淫地域出身であるならば,HTLV-Ⅰ関連ぶどう膜炎である可能性が高い.独特な硝子体混濁や網膜血管上の結節様病変などがみられる場合に血清抗HTLV-Ⅰ(57)42.感染性ぶどう膜炎の血液検査眼感染症セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=大橋裕一井上幸次後藤浩東京医科大学眼科感染性ぶどう膜炎における血液検査の意義は,疾患や同一疾患でも病期によって異なり,その結果が診断の鍵を握ることもあれば,解釈に慎重を要することもある.診断に際してはあくまでも検眼鏡的な所見を含めた臨床所見と経過を重視し,血液検査については参考にとどめたほうがよいことがあることを銘記すべきであろう.図1桐沢型ぶどう膜炎血清VZVIgG(FA)は72.6mg/d?,HSVIgG(FA)は10未満であった.この検査結果が診断に直結することはないが,少なくともHSVに起因する病態ではないことはわかる.前房水を用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)ではVZVDNAが陽性,HSVDNAは陰性であった.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006抗体が上昇していることを確認することの意義は大きいが,そのような眼所見はないが抗体価のみが高値を示した場合には,他の疾患の可能性も否定はできない.■真菌性眼内炎真菌性眼内炎(図2)の診断は特徴的な眼底所見に加え,静脈カテーテルなどの使用歴や免疫抑制などの患者背景を把握することによって可能なことが多い.起炎菌の多くは????????????????であるが,ムコールを除く真菌全般における細胞壁の主要構成成分を反映する血清b-D-グルカンの定量(ファンギテックGテスト)は,カンジダをはじめ多くの真菌症の診断に有用である.治療効果の評価を含め,経時的に測定することも臨床的に意義がある.ただし,眼内炎発症時には真菌血症としてのピークは過ぎ,すでに血清b-D-グルカン値も低値となっていることもある.■眼トキソプラズマ症眼トキソプラズマ症(図3)の診断は蛍光眼底造影所見を含めた特徴的な眼底像から可能なことが多い.特に再発例では網脈絡膜萎縮病巣の辺縁から滲出病巣が出現し,多くは検眼鏡的に診断されるが,血清抗トキソプラズマ抗体の測定結果は診断を確定する根拠となる.ただし,後天性眼トキソプラズマ症の際に上昇するトキソプラズマIgM抗体については,治療後も数カ月から数年にわたって高値を示すことがある.したがって,検査結果の解釈や治療継続の是非については,臨床所見や経過を踏まえて判断する必要がある.文献1)DussaixE,CerquetiPM,PontetFetal:Newapproachestothedetectionoflocallyproducedantiviralantibodiesintheaqueousofpatientswithendogenousuveitis.????????????????194:145-149,19872)沖津由子:各種目疾患における眼内液ヘルペス群ウイルス抗体価および抗体率の検索.眼内ウイルス感染の診断指標として.臨眼42:801-805,19883)薄井紀夫,柏瀬光寿,箕田宏ほか:ヘルペス性ぶどう膜炎における単純ヘルペスウイルスの型別.日眼会誌104:476-482,20004)FezzaJ,WitzmanM,ShoemakerDetal:QuantitativeCMVantigenemiacorrelatedwithophthalmoscopicscreeningforCMVretinitisinAIDSpatients.???????????????????????32:81-82,20015)NakaoK,MatsumotoM,OhbaN:Seroprevalenceofanti-bodiestoHTLV-Iinpatientswithoculardisorders.???????????????75:76-78,1991(58)図3眼トキソプラズマ症血清抗トキソプラズマ抗体は1.28倍(PHA),トキソプラズマIgG抗体は103IU/m?(正常6未満),トキソプラズマIgM抗体は1.7(正常0.8未満)であった.この症例のように網脈絡膜萎縮病巣の辺縁に新鮮な網膜滲出病巣がみられる場合,先天感染の再燃か,それとも後天感染の再発なのかは判然としない.図2真菌性眼内炎咽頭癌に対する放射線ならびに化学療法後に発症した症例.眼科受診時の血清b-D-グルカンの値は165pg/m?と高値を示した.■コメント■直接眼内液などの検体を得ることがむずかしい感染性ぶどう膜炎の診断においては,血液検査によるスクリーニングは重要な意味をもつ.特に,詳細な問診をベースに患者背景を焙り出し,血液検査などで裏付けていく作業は診断への近道ともなる.筆者も述べているように,血液検査は絶対的なものではないが,臨床所見との対比のなかでうまく利用すべきであろう.ここに書かれてあるノウハウを学ぶとともに,ぜひ引用文献にも目を通していただきたい.愛媛大学医学部眼科大橋裕一

光線力学的療法(PDT):広義滲出型加齢黄斑変性(PCV,RAP)の診断

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvas-culopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)は,加齢黄斑変性の特殊型に分類されている.自然経過や光線力学的療法(PDT)に対する治療成績も狭義加齢黄斑変性と異なることから診断を的確に行わなければならない.そのために検眼鏡所見と補助診断であるフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA),インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA),そして光干渉断層計(OCT)の所見を正確に読影する必要がある.●PCVPCVは,日本PCV研究会が作成した診断基準では,1.眼底検査で橙赤色隆起病巣を認める,あるいは,2.IAで特徴的なポリープ状病巣の所見を認めると確実例になる1).検眼鏡所見:網膜色素上皮(RPE)レベルの橙赤色隆起病巣(図1a矢頭)が特徴である.橙赤色隆起病巣がフィブリンに覆われ灰白色病巣として認められる場合には,感覚網膜下の脈絡膜新生血管(choroidalneovasu-culalization:CNV)いわゆるGass分類Type2との鑑別がむずかしいことがある.FA所見:PCVはRPE下の病変であるので,FAでは病巣を捉えきれない.ポリープ状病巣を覆うフィブリンが,過度のstainingの所見を示すとclassicCNVの所見と鑑別がむずかしいこともある.ポリープ状病巣は,内部は血液成分のblockによる低蛍光,周囲は蛍光漏出による過蛍光を示すこともある(図1d矢印).異常血管網の部は,上方のRPEが萎縮するのでwindowdefectによる過蛍光としてみられる(図1d矢頭で囲まれた範囲).IA所見:診断基準のポリープ状病巣とは,IAでみられる瘤状病巣あるいは瘤状病巣が集合したブドウの房状病巣のことである.造影時間の経過とともに大きくなり,ある時点から形,大きさは変わらない(図1e,f矢印).早期には,内部に小さな過蛍光を認めることもある(図1e矢印).後期にポリープ状病巣は均一な過蛍光を示すものが多い(図1f矢印)が,輪状の過蛍光を示すものもある1).異常血管網は脈絡膜動脈と同時に造影が始まる.口径不同,拡張,蛇行などの走行異常が認められ,異常血管網の範囲とその周囲には低蛍光を認める(図1e矢頭で囲まれた範囲).造影後期像は面状の過蛍光を示すものもある(図1f矢頭で囲まれた範囲).OCT所見:ポリープ状病巣は,RPEを押し上げる.網膜色素上皮?離(RPED)内の隆起所見として認めら(55)森隆三郎日本大学駿河台病院眼科光線力学的療法(PDT)セミナー監修/石橋達朗湯沢美都子2.広義滲出型加齢黄斑変性(PCV,RAP)の診断ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)と網膜血管腫状増殖(RAP)は,加齢黄斑変性(AMD)の特殊型に分類されており,光線力学的療法(PDT)に対する治療成績も狭義AMDと異なることから診断を的確に行わなければならない.そのために検眼鏡所見と補助診断であるフルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA),インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA),光干渉断層計(OCT)の所見を正確に読影する必要がある.提供図1ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)a:カラー,b:OCT,c,d:FA,e,f:IA.OCT①5mm①②5mm②baFA30秒FA10分IA30秒IA20分dcfe———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006(00)れることもある(図1b大矢頭).ポリープ状病巣がフィブリンに覆われるとGass分類Type2CNVと鑑別がむずかしい(図1b矢印).異常血管網の範囲には,RPEと脈絡膜毛細血管板および脈絡膜内層血管の間の高反射帯がみられる(図1b小矢頭).●RAPRAPでは,網膜血管由来の新生血管が網膜下やRPE下に発育し,黄斑部に出血や滲出が生じる2).RAPの診断基準はないが,網膜血管と新生血管の吻合を確認できれば診断できる(ただし,狭義加齢黄斑変性の瘢痕期のCNVが網膜血管と吻合したものは,RAPではない).RAPは,3病期に分類されている2).Stage1は,黄斑部網膜内新生血管である.Stage2は,網膜内新生血管が下方に伸展し,網膜下新生血管を伴うもので,RPEDを伴わない場合と伴う場合がある.Stage3は,さらに伸展してCNVを伴うものである.検眼鏡所見:黄斑部に網膜動脈や網膜静脈の末?血管に連なる新生血管がみられる.網膜内新生血管は網膜内の赤い塊としてみられる(図2a矢頭).網膜内出血がみられればその周囲に網膜内新生血管の存在を疑う.網膜下新生血管は,網膜内新生血管の下方周囲に灰白色の所見としてみられる.FA所見:造影早期に網膜内新生血管(図2c矢頭)と網膜動脈や網膜静脈の吻合がみられる(図2c矢印).網膜内新生血管は,後期まで強い蛍光漏出を示すことがある(図2d大矢頭).感覚網膜下新生血管は早期から面状の過蛍光としてみられる(図2c小矢頭で囲まれた範囲).OccultCNVである線維血管性(?brovascular)RPED(図2d点線で囲まれた範囲)は,Stage3の所見である.IA所見:FAと同様に新生血管は造影早期に網膜動脈や網膜静脈との吻合がみられる(図2e矢印).網膜内新生血管は,点状の過蛍光(図2e矢頭),感覚網膜下新生血管は早期から面状の過蛍光としてみられる(図2e,f).網膜色素上皮下のCNVは,過蛍光斑(hotspot)としてみられることもある.しかしRPE下液によるblockのために不明瞭な場合もあり,Stage2とStage3は鑑別できないこともある(図2e,f).OCT所見:網膜内新生血管は,大きければ描出される.網膜下新生血管は,RPE上の高反射として描出される(図2b矢頭).RPE下の高反射(図2b矢印)がRPE下の新生血管であるのかフィブリンであるのかが不明な場合,OCTではStage2とStage3の鑑別ができないこともある.文献1)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準,日眼会誌109:417-427,20052)YannuzziLA,NegraoS,IidaTetal:Retinalangiomatousproliferationinage-relatedmaculardegeneration.???????21:416-434,2001OCT①10mm①②10mm②abFA35秒IA24秒IA20分AVAVFA10分dcfe図2網膜血管腫状増殖(RAP)a:カラー,b:OCT,c,d:FA,e,f:IA.

緑内障:新しい方式による前眼部光干渉断層計(OCT)

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS●前眼部OCTへの期待近年,網膜の断層像を高解像度で非侵襲的にかつ簡便に得られる診断装置として,光干渉断層計(opticalcoherencetomograph:OCT)が普及してきた.おもに眼底疾患の診断に用いられてきたOCTであるが,緑内障の分野では,網膜神経線維層(RNFL)の解析だけでなく,隅角の観察や濾過手術後の濾過胞形状など,前眼部の観察にも応用されるようになってきた.これまでは,隅角の画像解析にはPavlinらによって開発された超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicro-scope:UBM)が一般的に用いられてきた.しかし,UBMは被検者を仰臥位にさせ,検査眼にアイカップを装着後,生理食塩水を介して検査を行うなど煩雑な操作が要求されるとともに,接触型の検査であるがゆえ感染症などに注意が必要であった.したがって,非接触,座位にて検査が可能であること,手術直後から非侵襲かつ短時間で行うことができ,患者の負担も軽いことなどから,隅角や濾過胞を観察するためにはOCTを用いることのメリットは大きい.また,解像度もUBMが50?mに対し,OCTでは垂直方向で10~20?mと格段に優れており,UBMに比べて有利な点が多い.最近では,前眼部専用のOCTが開発され,細隙灯顕微鏡に接続されたOCTにより診察を行いながら前眼部のOCT断層像を得ることができるものもあり,今後臨床での応用が期待されている.●従来のOCDR方式と新しいOFDR方式のOCT従来の眼底観察用OCTでは,opticalcoherencedomainre?ectometry(OCDR)とよばれる方式が採用され,820nmの近赤外光を参照ミラーを移動させることにより画像を取得している.一方,北里大学眼科学教室では,本学物理学教室(大林康二教授)とopticalfre-quencydomainre?ectometry方式(以下,OFDR方式)による新しいOCTを共同開発した1,2).これは,1,540~1,570nmのsuperstructuredgratingdistributedBraggre?ector(SSG-DBR)レーザー光を用いたもので,レーザー光を密に幅広く高速で変化させることによって,前眼部画像は短時間かつ高解像度で取得できるよ(53)●連載?緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄77.新しい方式による前眼部光干渉断層計(OCT)鈴木宏昌1)中西基2)庄司信行1)清水公也1,2)1)北里大学大学院医療系研究科臨床医科学群眼科学2)北里大学医学部眼科従来の光干渉断層計(opticalcoherencetomograph:OCT)と異なり,レーザーの波長を高速で変化させて画像を取得する新しい方式のOCT(OFDR-OCT)を用い,緑内障術後の隅角・濾過胞を観察した.術直後から房水流出経路の経時的変化が観察できるだけでなく,濾過胞内部の観察によってneedlingの適応を決定するなど,治療面も含めたさまざまな応用が期待される.図2トラベクロトミー後の線維柱帯部の内部突出とDescemet膜?離図1狭隅角図3濾過胞の一例———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006うになった.今回筆者らは,このOFDR-OCTにより得られた前眼部画像をいくつか紹介したい.●臨床応用前眼部OCTでの臨床応用ではおもに,角膜,結膜,濾過手術後の濾過胞の内部情報,虹彩形状,隅角などの観察があげられる.狭隅角の診断法として,UBMにおいてangleopeningdistance(AOD)やtrabecularirisangle(TIA)などが知られている3,4)が,OFDR-OCTにても同様の隅角像を得ることが可能である(図1).解像度の点でも優れており,線維柱帯切開術後の切開部位や合併症として生じたDescemet膜?離も詳細に捉えることができる(図2).一方,濾過手術における濾過胞所見については,従来のOCDR-OCTを応用し,その得られた内部所見に関する報告がすでにいくつか散見されるようになってきている5)が,本装置(OFDR-OCT)でも,濾過胞内部の房水流出路の観察(図3)や,線維化,癒着の程度まで観察が可能であり,また手術直後からの検査が可能である点など,得られる情報は多い.●OCTの限界と問題点OCTは,測定光を観察組織に照射し,戻ってきた反射光を検出して画像として描出している.そのため,深部組織や高反射の組織の後部では観察が困難となる.一般的にOCT画像は強反射では暖色系,低反射では寒色系として描出される.角膜などの弯曲した組織では,測定場所によって反射強度が異なってくる(図4).そのため,病変と表示色は必ずしも一致しないこともあり注意が必要である.現在のところ,前眼部OCTでは解像度の関係からSchlemm管の観察は困難であり,また観察光の到達距離が虹彩裏面までであるため,毛様体の観察は困難である.よって現時点では隅角と濾過胞の観察が主となるが,将来的には,Schlemm管の大きさや位置の確認,あるいは,毛様溝の観察を可能にすることによって眼内レンズの位置確認などに応用できるよう改良が必要と考えている.濾過手術直後に厚い出血などがあると,より深部組織の情報が得られにくくなるなどの欠点がある.画像取得速度がUBMに比べて遅いこともあり(UBM10枚/秒,OCT約1枚/秒),リアルタイムで濾過胞の全体像を把握するにはまだまだ改良の余地があるが,画像処理の高速化に関してはコンピュータ上の問題でもあり,近いうちに解決可能であると考えている.おわりに緑内障診療からみた前眼部OCTの魅力は,UBMと違って非接触型であり,術直後からの観察が可能なことにより,術直後からの房水流出経路の確認や,癒着・瘢痕の過程が観察できることである.また,座位でも検査が可能なため,将来的には一連の診察の流れで観察が可能になり,診療時間の短縮や効率化が得られる点も魅力である.さらに,needlingを予定した場合の濾過胞内部あるいは瘢痕部位の確認など,治療面も含め,さまざまな応用が期待される.文献1)AmanoT,Hiro-OkaH,ChoiDHetal:Opticalfrequency-domainre?ectometrywitharapidwavelength-scanningsuperstructure-gratingdistributedBraggre?ectorlaser.????????44:808-816,20052)NakanishiM,AmanoT,Hiro-OkaHetal:Anteriorseg-mentoptical-frequency-domain-re?ectometeropticalcoherencetomographyusingSSG-DBRlaser(2ndreport),ARVO2006annualmeeting,program#3293/Poster#B826,2006/4/30-5/4,FortLauderdale,Florida3)PavlinCJ,HarasiewiczK,FosterFS:Ultrasoundbiomi-croscopyofanteriorsegmentstructuresinnormalandglaucomatouseyes.???????????????113:381-389,19924)佐野令奈,黒川徹,栗本康夫ほか:うつむき試験陰性狭隅角患者の仰臥位と伏臥位における隅角開度および前房深度の比較.日眼会誌105:388-393,20015)SaviniG,ZaniniM,BarboniP:Filteringblebsimagingbyopticalcoherencetomography.???????????????????????????33:483-489,2005(54)図4レーザー虹彩切開術後角膜中央,濾過胞表面および周辺虹彩切除部付近の虹彩表面で高反射を示す部位がみられる.

屈折矯正手術:屈折矯正手術の実践とノモグラム

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSLASIK(laser???????keratomileusis)を始めとする屈折矯正手術において眼科医に要求される最も重要なことは,「屈折矯正手術」に対する考え方であって,手術方法・レーザーの機種あるいは周辺機器の決定は二次的な問題にすぎない.屈折矯正手術を実践するうえで手術に対する眼科医としての考え方を明確にし,それをインフォームド・コンセントとして患者に伝える必要がある.表1に,手術において患者に伝えるべき要項を記載した.●目的・結果・リスクそもそも屈折矯正手術の目的は,裸眼視力の回復によって日常生活上で眼鏡あるいはコンタクトレンズに依存する確率をいかに減らせるかということである.1.2あるいは1.5という視力は眼科医にとっての目標で,手術を受ける側の目標は「眼鏡やコンタクトレンズのいらない生活」であって裸眼視力1.2あるいは1.5になることではない.患者の多くは1.2あるいは1.5以上の裸眼視力を期待しているであろうが,この視力は手術を行った数字上の結果であって手術の目的ではないことを理解させる必要がある.必然的にさまざまな原因で目標が達成されず結果的に1.2以上の視力に達しない場合もありうる.具体的には,①屈折誤差,②矯正誤差,③体調・環境の変化による視力変動,④近視への原因不明の戻り,⑤それ以外の不明な理由.もちろん,視力に影響する疾患は近視あるいは乱視のみではなくさまざまな疾患があるわけだから,術後5年先,10年先の結果を保証して手術しているわけではない点は強調する必要があろう.手術である以上リスクは0ではない点は明らかにしておく必要がある.手術適応を守りかつ顕微鏡手術に習熟した眼科医が適切な操作を行えば,現実問題として事故を起こす可能性はほとんどないといってよい手術ではあるが,100%確実な手術というものはあり得ない点を十分理解させなければならない.万一事故が起こったとしても過去に失明につながるような例はなく,予測するかぎりでは現在の眼科医の臨床レベルで十分対応できる事故しか起こり得ない点は強調するべきであろう.●視力の回復と視覚の質の変化患者の最も知りたい点は,実際にどの程度の視力にまで回復するのか,という点であることは間違いない.術後の視力結果は各施設によって若干の差があるのはやむを得ないとしても,過去の症例に対する手術結果を統計処理してデータを患者に提供できるようにしておく必要がある.あわせて,前述したように誤差や変動・近視への戻りによって期待視力に達しない場合もありうるが,(51)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男78.屈折矯正手術の実践とノモグラム越智利行越智眼科屈折矯正手術においては,手術の目的・結果・リスク・視力の回復・視覚の質の変化に対する「眼科医としての考え方」を明確にしておく必要があり,そのことをインフォームド・コンセントとして患者に正確に伝える必要がある.さらにそれを基礎として,より高度な矯正効果を得るためには各施設での経験に基づいたノモグラムを作成する必要がある.表1屈折矯正手術の要項手術の目的1.裸眼視力の回復2.眼鏡・コンタクトレンズの要らない日常生活結果1,2以上に達しない場合も…①屈折誤差②矯正誤差③体調・環境変化の影響④近視への戻り⑤原因不明リスク100%の安全性は保証できないが…①過去に失明につながる重大事故はない②現在の眼科レベルで対応可能視力回復の確率各施設の手術結果によって…①視力の統計処理②追加矯正の可能性視覚の質の変化視覚は感覚的なものであること①体調・環境に左右される可能性②老視の発生の可能性③Wave-frontguidedなどのnewtechnol-ogyによる視覚の質の改善の可能性———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006必要かつ可能ならば追加矯正手術を行うことによって期待視力に近付ける可能性のあることも伝えておく必要がある.このことは逆にいうと,初回手術の際には必ず追加矯正の可能性も視野に入れて,手術方法や切除深度を決定しなければならないということにほかならない.日常生活での問題点として考えねばならない点は視覚の質の変化である.コントラスト感度の低下あるいはglareやhalloによる視覚の質の変化は,体調や環境に左右される感覚的な問題である.近年ではwave-frontguidedによる改良の余地が期待され,この手術方法を希望する患者もいるが,必ずしもすべての症例に可能なわけでもないし,結果が万全でもないことは十分理解させる必要がある.また老視の問題も年齢によっては避けて通れない.●インフォームド・コンセント近視矯正手術において最も重要なことは,患者に対するインフォームド・コンセントであることは論を俟たない.しかし敢えて結果がすべての評価を左右すると考えると,最終的には高い矯正精度を追求することは当然といえよう.視力の誤差すなわち低矯正・過矯正となるのは①角膜ベッドの状態,②術前の屈折,特に乱視の強弱,③年齢,④性別,⑤手術室の環境,⑥手術方法の違い,⑦レーザー・ケラトームなどの機種による特性,といったさまざまな原因があげられるが,これ以外にも術前のコンタクトレンズの種類や使用年数や使用状況,manifestrefraction決定の誤り,角膜自体の個体差,患者個々の生活状況など,あらゆる原因が考えられる.矯正精度をあげるためにはそのなかで試行錯誤をくり返しながら努力をしていく以外にない.さまざまな原因があることを念頭においてもなお実際の手術においてより正確な矯正効果を得るためには各施設固有のノモグラムが最も必要とされる.表2,図1に一般的なLASIKにおける近視性乱視矯正ノモグラムを掲げた.手術方法においてもPRK(photorefractivekeratecto-my)からLASIK,LASEK(laser-assistedsubepithelialkeratectomy),Epi-LASIK,Epi-PRKとさまざまな方法が考案・開発されている.それぞれ特徴と長所・短所があり,どの方法も完全に捨て去られる,あるいはすべて唯一の方法に統一されるというものではなかろう.さらには高次の収差を矯正し視覚の質を向上させるためのwave-frontguidedLASIKあるいはtopo-linkguidedLASIKといった新しい矯正手段が可能となっている.必然的に手術方法あるいはレーザー照射方式に適合した新しいノモグラムの開発が常に必要となってくるのは当然であろう.屈折矯正手術を行ううえでは,常に試行錯誤をくり返し高い矯正精度を目指す姿勢こそが重要であるといえよう.(52)表2LASIKノモグラムの一例(近視性乱視の入力値)乱視度数→近視度数↓0-0.25-0.5-0.75-1-1.25-0.25-0.5-0.45-0.36-0.29-0.260-0.5-0.75-0.71-0.67-0.5-0.45-0.41-0.75-1-0.96-0.91-0.87-0.75-0.68-1-1.24-1.21-1.17-1.13-1.09-1-1.25-1.45-1.46-1.41-1.36-1.31-1.28-1.5-1.75-1.71-1.68-1.63-1.59-1.55-1.75-1.99-1.96-1.93-1.9-1.87-1.84-2-2.15-2.11-2.08-2.04-2.01-1.97-2.25-2.35-2.32-2.28-2.25-2.21-2.18-2.5-2.55-2.52-2.48-2.45-2.42-2.39-2.75-2.73-2.7-2.67-2.64-2.61-2.59-3-2.9-2.87-2.85-2.82-2.8-2.77-3.25-3.13-3.1-3.08-3.05-3.03-3-3.5-3.36-3.33-3.31-3.28-3.26-3.23-3.75-3.59-3.56-3.54-3.51-3.48-3.46-4-3.82-3.79-3.77-3.74-3.71-3.69-4.25-4.04-4.01-3.99-3.96-3.93-3.91-4.5-4.27-4.24-4.21-4.19-4.16-4.13-4.75-4.49-4.46-4.43-4.41-4.38-4.35-5-4.72-4.69-4.66-4.64-4.61-4.58-5.25-4.94-4.91-4.88-4.85-4.82-4.8-5.5-5.16-5.13-5.1-5.07-5.04-5.02-5.75-5.38-5.35-5.32-5.29-5.26-5.23-6-5.6-5.57-5.54-5.51-5.48-5.45-6.25-5.81-5.78-5.75-5.72-5.69-5.66-6.5-6.03-6-5.97-5.94-5.91-5.88-6.75-6.24-6.21-6.18-6.15-6.12-6.09-7-6.46-6.43-6.4-6.37-6.34-6.31-7.25-6.67-6.64-6.61-6.58-6.55-6.52-7.5-6.88-6.85-6.82-6.79-6.76-6.73-7.75-7.09-7.06-7.03-7-6.97-6.94-8-7.3-7.27-7.24-7.2-7.17-7.14乱視が強度になるに従って,入力近視度数(D)は減弱する必要があることを示す.図1近視屈折度数と入力度数おおむね-2Dを境にして,屈折度数が強くなるに従って,屈折度数(D)に対する入力度数(D)は減弱する必要があることを示す.024681012140屈折度数(D)2468101214:屈折度数(D):入力度数(D)入力値(D)

眼内レンズ:IMS(infusion misdirection syndrome)の機序-術中浅前房化・前房動揺-

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS術中の浅前房化ならびに前房動揺をきたす原因にはいろいろあるが,IMS(infusionmisdirectionsyn-drome)もその1つである.●IMSの機序IMSは1993年にMackoolにより報告1)されたもので,灌流液がZinn小帯領域を通過して硝子体腔に回ってしまうことによる浅前房化である.無硝子体眼などで前房内と硝子体腔を灌流液が自由に行き来する状態では大きな前房動揺をきたす.灌流液が硝子体腔に流入するという点でこれも一種のIMSと考えられるが,Mackoolは浅前房化しか報告していない.ではこの2つの現象の機序はどういうものであろうか?正常な状態では後部Zinn小帯と前部硝子体膜が一体化しており,水晶体後面に輪状に強く付着し,Wieger?帯を形成している.このZinn小帯・前部硝子体膜が隔壁として作用し,房水あるいは灌流液の急激な硝子体内への流入を防いでいる.もちろん前部硝子体膜は完全な膜ではないので,通常ゆっくりとした房水の移動は起こるが,急激な移動は起こらないのである(図1).しかしZinn小帯・前部硝子体膜隔壁に損傷が生じた場合には,損傷部を通してIMSが生じると考えられる.後?(49)永本敏之杏林アイセンター眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎243.IMS(infusionmisdirectionsyndrome)の機序術中浅前房化・前房動揺IMS(infusionmisdirectionsyndrome)は1993年に報告された白内障術中合併症で,灌流液がZinn小帯領域を通過して硝子体腔に回ってしまう状態である.Wieger?帯が外れているが,前部硝子体膜が割としっかりしている場合には,Berger腔に灌流液が貯留し浅前房化をきたす.一方,高度の硝子体液化や硝子体切除後で,硝子体ゲルがほとんど残っていない症例では大きな前房動揺をきたす.Wieger靱帯Berger腔前部硝子体膜図1前眼部断面図紫色で示した前部硝子体膜は後部Zinn小帯と一体化しており,Wieger?帯で後?に強く付着している.房水と硝子体液はZinn小帯・前部硝子体膜領域を通してゆっくりと行き来できるが,正常状態では急激な移動は起こらない.図2IMSによる浅前房化の機序Wieger?帯の一部または前部が後?から外れていると灌流液がBerger腔に回ってしまう.図3IMSによる前房動揺の機序硝子体切除後無硝子体眼あるいは硝子体の高度の液化変性(強度近視眼など)で,前部硝子体膜もほとんどない場合は,灌流液が前房と硝子体腔を自由に行き来し,水晶体が前後に動揺して前房動揺が起こる.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006(00)破損を通して灌流液が硝子体腔に達する場合も一種のIMSといえるが,その際は硝子体が前房内に突出し,後?の挙上(浅前房化)や前房動揺は通常起こらない.では,つぎに浅前房化だけをきたす症例と,大きな前房動揺をきたす症例の違いを考える.まず浅前房化であるが,Wieger?帯(後部Zinn小帯後?付着部)が一部または全部外れており,前部硝子体膜が割としっかりしている場合には,Berger腔に灌流液が回り,貯留した灌流液量に従って後?の挙上が起こる(図2).ただし,水晶体?内に核がある間は核が後?の形状を保持しており,後?は挙上してこない.しかし,フェイコの最終局面や皮質吸引の時点になると後?の可動性が高まり,浅前房化が起こってくる.この状態が起こりやすい症例としては,偽落屑症候群で後部Zinn小帯の変性が進み後?付着部が外れている症例,水晶体の前方移動に基づく緑内障発作を起こしたことのある症例(通常の急性緑内障発作と診断されている場合も多々見受けられる)があげられ,一般的に高齢者で,術前の前房深度は浅いか正常である.一方,大きな前房動揺をきたす場合は,高度近視などの硝子体の液化が強い症例や徹底的な硝子体切除が行われた症例などで,硝子体ゲルがほとんど残っておらず,前部硝子体膜にも損傷がある症例である.この場合,灌流液が眼房と硝子体腔をかなり自由に行き来する状態となっており,フェイコで灌流を開始した直後は灌流液の急激な前房内流入により水晶体は硝子体側に押され,前房が急激に深くなる(この状態を逆瞳孔ブロックとよぶ術者もいる).しかしZinn小帯が伸びきった時点で水晶体の後方移動は止まる.今度は灌流液がZinn小帯領域を通して前房から硝子体腔に回りだすと前房が浅くなる.これをくり返すために大きな前房動揺が起こると考えられる(図3).●IMSへの対処法浅前房化も前房動揺も,まずボトルの高さを低くし,最大吸引圧と吸引流量も低く設定する(表1).前房が浅くなる場合はボトルを低くではなく,「高くする」の間違いじゃないかと思われる読者も多いと思うが,IMSの場合は低くするのである.IMSによる浅前房化の場合に前房側から水晶体後方へ灌流液を回す力は灌流圧,すなわちボトルの高さに依存している.Zinn小帯およびWieger?帯部の抵抗に打ち勝つためには,それなりの高い灌流圧が必要である.つまり高吸引・高灌流の設定で起こりやすい現象であり,低灌流・低吸引の設定では起こりにくいのである.それ以上の対処法については紙面の都合上,他書に譲る.文献1)MackoolRJ:Infusionmisdirectionsyndrome.???????????????????????19:671-672,1993表1前房動揺と設定値通常設定低設定1234ボトル高(cm)6050403020最大吸引圧(mmHg)300280250200150吸引流量(m?/min)3330282520筆者の場合,前房動揺の程度に応じて低設定1から4へと設定値を変更していく(In?niti,30?micro?areABStip).

コンタクトレンズ:トライアルレンズの管理(2)

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSコンタクトレンズ(CL)処方においてはトライアルレンズが不可欠である.前号の「トライアルレンズの一般的な管理や規格の確認などについて(植田喜一)」に続き,今回は「トライアルレンズの消毒法」について,ハードコンタクトレンズ(HCL)の場合とソフトコンタクトレンズ(SCL)の場合に分けて概説する.●トライアルレンズの汚染CL処方時は感染の危険性のある不特定多数に対してトライアルレンズを使用するため,何らかの前眼部感染症をもつ人からのトライアルレンズの汚染が考えられる.また,感染のない場合でも表皮ブドウ球菌などの常在菌によってトライアルレンズが汚染される危険性がある.●トライアルレンズを取り巻く汚染媒体トライアルレンズ本体のほか,CL用保存ケース,手指,ピンセット,その他CL室で使用する器具,機械などが汚染の媒体となりうる危険性がある.汚染防止のためには手洗いの励行,トライアルレンズおよび使用器具の適切な消毒,感染・汚染物の適切な処理などを徹底しなければならない.●SCLのトライアルレンズのケア頻回交換レンズ,定期交換レンズ,ディスポーザブルレンズの場合には,トライアルレンズは毎回新品を使用することが可能で,これがトライアルレンズの理想である.使用後のレンズは感染媒体として扱い,確実に廃棄しなければならない.一方,従来型SCLの場合は毎回新品を使用することがむずかしく,洗浄・消毒を行って再利用する.1.洗浄・すすぎ患者にレンズの装脱を行った後,界面活性剤配合の洗浄液で洗浄する.洗浄・すすぎにより物理的に微生物を除去することができる.2.消毒最も確実な消毒法は,熱による煮沸消毒で細菌や真菌のみならず,ウイルス,アカントアメーバなどに対しても確実な消毒効果を有している.しかしながら,熱によるレンズ素材への影響も大きく,特に高含水レンズは煮沸消毒は不可能で,コールド消毒を行う.a.煮沸消毒煮沸消毒可能な低含水のトライアルSCLおよびSCL用保存ケースは100℃で20分以上煮沸消毒することが好ましい.従来型SCLは米国食品医薬品局(FDA)の分類でグループIが多く,一般に煮沸消毒で問題となる熱によるレンズ変形をきたしにくい.トライアルでの短時間の使用では汚れも軽度であるため,蛋白質の沈着の問題も生じにくい.b.コールド消毒煮沸ができないSCLの場合には熱を用いずコールド(47)柳井亮二山口大学大学院医学系研究科眼科学/下関市立豊田中央病院眼科コンタクトレンズセミナー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純TOPICS&FITTINGTECHNICS269.トライアルレンズの管理(2)─トライアルレンズの消毒─図1トライアルレンズ管理のためのフローチャート消毒用石鹸を用いて流水で手を洗う直ちに流水で手を洗うことができない場合は,0.1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液あるいは消毒用アルコール*に浸した脱脂綿などで清拭する患者に装脱の操作を行う*:HBに無効廃棄可能なCLは廃棄**再利用する場合煮沸20分以上オートクレーブ20分以上コールド消毒ケース,ピンセットは流水ですすぎ,煮沸あるいは消毒液に30分浸漬後流水ですすいだ後,保存バイアルビンまたはレンズケースにSCLを入れる洗浄液にて洗浄後,流水ですすぐ0.5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10~30分浸漬する流水ですすぎレンズケースに保存液をそそぐトライアルレンズセットケースに保存SCLの場合HCLの場合**:密閉できる容器に保管し,焼却あるいはオートクレーブで滅菌後廃棄———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006(00)消毒剤による消毒を行う.一般には,MPS(多目的用剤)がレンズケアの主流であるが,MPSの消毒効果は煮沸消毒や過酸化水素よりも弱く,トライアルレンズの消毒には不十分であると考えられる.1)ポビドンヨードポビドンヨード(イソジン?)は,古くから医療現場に用いられている消毒剤で,広い抗菌スペクトルと生体に対する安全性が特長である.クレンサイド?(オフテクス)は,消毒効果と生体に対する安全性は高く評価されるが,つけ置き洗浄のシステムであるため,汚れを十分に除去できない可能性がある.また,ヨウ素に対するアレルギーに注意が必要である.2)次亜塩素酸ナトリウム塩素系の次亜塩素酸塩は,細菌,真菌,ウイルス,アメーバなどの消毒が可能で,0.5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に20分浸漬する.ただし,次亜塩素酸は漂白効果が強いため,退色に注意が必要である.SCL用ケア用剤としてはマンスリークリーナー?(東レ)やクラフレッシュ?マンスリークリーナー(クラレ)がある.市販消毒剤にはアンチホルミン?,クロラックス?,ピューラックス?,ハイター?,ミルトン?がある.3.保存最近は保存液中に界面活性剤や酵素を添加することにより,つけ置き洗浄を行うコールド消毒剤もある.ただし,眼刺激症状や過敏症をひき起こす可能性があり,装用前に防腐剤の入っていない生理食塩水などですすいだほうがよい.●HCLのトライアルレンズのケアHCLはSCLに比べると,汚れが付着しにくい素材で微生物の汚染も起こりにくいが,残存した汚れがレンズ表面の水濡れ性を低下させたり,微生物汚染の足場となる.1.洗浄・すすぎ蛋白質や脂肪が付着しやすいため,界面活性剤に酵素を配合した洗浄剤で洗浄を行い,大量の水道水ですすぐ.2.消毒ガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)においても,感染予防のためにはトライアルレンズの消毒が必要で,次亜塩素酸塩による消毒が好ましい.しかしながら,次亜塩素酸塩は酸化力が強く,着色レンズの退色や破損,ひび割れを生じやすくなるため,丁寧に操作する.次亜塩素酸ナトリウム洗浄剤にはプロージェント?(メニコン),ハードケア?(HOYA)がある.3.保存わが国では,水濡れ性を保持するためにHCLを保存液に浸漬して保存するが,海外ではポリメチルメタクリレート(PMMA)素材のHCLと同様にRGPCLにおいても乾燥した状態でレンズケースに保管することが多い.これは乾燥により微生物汚染の予防になるほか,バイオフィルムの形成もなく衛生的にレンズを保存できる利点がある.保存液は定期的に交換しなければならないため,使用頻度の低いトライアルレンズの場合には,乾燥保管のほうがよい.ただし,RGPCLではレンズの水濡れ性が悪くなり,レンズのくもりの原因となりやすいため,トライアルレンズの使用前にCL装着液などで水濡れ性を改善する.おわりに近年はディスポーザブルレンズの増加により,トライアルレンズを洗浄・消毒する頻度は減少しているが,逆に洗浄・消毒の必要なトライアルレンズの管理が疎かになりやすくなる.CL診療において最も重要なトライアルレンズをきちんと管理し,衛生的に維持しておくことは,適切なCL処方の基本となるばかりでなく,院内における感染防止の観点からも重要である.

写真:Capsular Block Syndrome

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———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLS(45)德田芳浩井上眼科病院写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦270.CapsularBlockSyndrome①①図2図1のシェーマ①:増殖した水晶体上皮細胞.図1ディフューズ光による観察レンズ全体が強く白濁しているようにみえる.図4レトロイルミネーションによる観察混濁の割りに,反射光はよく通ってみえる.図3スリット光による観察眼内レンズ(IOL)に混濁はなく,IOL後面から?内全体に乳白色の均一で無構造な液体が観察できる.後?は混濁の奥にあってはっきりしない.———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006(00)Capsularblocksyndrome(CBS)とは,白内障手術や眼内レンズ(IOL)挿入に関連して,水晶体?の開口部(=連続前?切開窓)が何らかの要因で閉鎖することで?内圧の上昇や?内部への物質の貯留が起こる症候群であり,Miyakeらによって新しく3群に分類1)されている.今回,紹介する症例はその3群(術中CBS,術後早期CBS,術後晩期CBS)のうちの,術後晩期CBSであり,液状後発白内障2)とよばれていたものである.症例は73歳,女性,10年前に右眼の白内障手術を施行された.術中術後の合併症を認めず,予後良好な状態で経過していた.術前に糖尿病や緑内障などの,全身合併症や眼疾患の併発を認めていない.術式は典型的な超音波乳化吸引術による小切開白内障手術で,前?切開縁はスムーズで連続しており,IOLは6.0mm光学部径の3ピースアクリルフォーダブルレンズが完全?内固定されている.カルテ上では,術後約8年目から,IOL後方のはっきりとした混濁を認めている.実は,左眼も15年前に?外摘出術による白内障手術が施行され,ワンピースポリメチルメタクリレート(PMMA)レンズが挿入されているが,そちらには後発白内障を認めない.右眼のみのはっきりとした混濁にもかかわらず,問診にて見え方の左右差はないという解答を得ている.散瞳後の細隙灯顕微鏡による観察で,前?切開縁はぎりぎりのところもあるが全周でIOL光学部をカバーしており,前?切開窓は閉鎖されていると考えられる.IOL後方には部分的に水晶体上皮細胞の増殖と白色で均一な液体の貯留を認めた.矯正視力は両眼ともに術後から1.2を保持しており,自覚的な混濁の認識は認めない.文献的にこの液体は水晶体上皮由来の無構造な蛋白質とされている3).治療としては,YAGレーザーによる後?切開が最も一般的と考えられるが,フォーカシングがむずかしいと聞いている.また,この蛋白質による炎症を懸念して,筆者は外科的な?の洗浄を第一選択で行っている.前?とレンズは簡単に?離できるので,シムコ針を使って?内の液体を除去すると同時に,?赤道部にある増殖水晶体上皮をすべて取り去り,前?切開を拡張してブロックの再発を予防している.洗浄除去により,液状の後発白内障の再発はなくなるが,後?の線維性混濁タイプの後発白内障は再発する.ちなみに,本症例では本人の自覚がなく,治療を希望していないので経過観察としている.文献1)MiyakeK,OtaI,IchihashiSetal:Newclassi?cationofcapsularblocksyndrome.???????????????????????24:1230-1234,19982)MiyakeK,OtaI,MiyakeSetal:Liqueiedafter-cataract:Acomplicationofcontinuouscurvilinearcapsulorhexisandintraocularlensimplantationinthelenscapsule.???????????????125:429-435,19983)永田万由美,松島博之,泉雅子:液状後発白内障の成分分析.眼紀52:1020-1023,2001

免合併症に対する治療

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSあり,実際には個々の症例,疾患ごとにその適応については十分な検討が必要となる.以下に個々の疾患ごとに白内障手術適応を決めるうえで参考となる最近の論文を紹介する.a.Beh?et病合田らは最終眼発作から6カ月以内に手術した症例と7カ月以上経て手術した症例では,後者の群のほうが眼発作の出現頻度が有意に低いことを報告している3).平岡らは長期間炎症が鎮静化していても,免疫抑制薬を使用しているような活動性の高い症例では術後に眼発作頻度が増加することを報告している4).またKadayif?ilarらは術前に3カ月の消炎期間をおいた場合,術後炎症は軽度でその後経過は良好であったと述べている5).b.若年性関節リウマチに伴うぶどう膜炎若年性関節リウマチ(juvenilerheumatoidarthritis:JRA)に伴うぶどう膜炎は欧米では多く,日本ではJRAとほぼ同一の病態を示す若年性慢性虹彩毛様体炎(chro-niciridocyclitisinyounggirls)が圧倒的に多い.併発白内障は約60~70%に発症し,重篤な視力障害の原因となる.しかし,対象が若年者であることや長期的に炎症が持続していること,また手術時にすでにcycliticmembraneを形成していることなどから術後成績については賛否両論である.最近のLamらの報告では最終受診時において全症例で0.5以上の視力が得られ,また術後に後発白内障と続発緑内障が約80%の症例で認められていた6).小児の併発白内障でも成人と同様にステはじめに一般にぶどう膜炎に対する治療の基本は副腎皮質ステロイド薬の局所および全身投与,免疫抑制薬や抗微生物薬の投与といった薬物療法が主体となる.しかしながらぶどう膜における短期間の著しい炎症,あるいは炎症の遷延化や再燃によりさまざまな合併症や続発症が生じ,その結果手術療法が唯一の治療手段となることもある.これまでぶどう膜に炎症を有する眼に対して,あるいは炎症の既往のある眼に対して外科的治療を行うことはさらなる炎症を誘発する可能性があり,その適応についてはかなり慎重に判断がなされていたが,近年の白内障,緑内障,硝子体疾患における手術手技の進歩や手術器具の改良,術前術後の効果的な抗炎症療法の導入により,良好な手術成績が得られるようになってきた1).本稿では,「ぶどう膜炎併発白内障および続発緑内障」に焦点を絞って手術治療に関する現時点でのevidencebasedmedicine(EBM)をまとめてみたい.Iぶどう膜炎併発白内障1.手術適応白内障手術に伴うさまざまな炎症性細胞の反応を予防するために,ある程度の期間活動性の炎症のないことを確認したうえで,手術計画を立てることが重要である.これまでさまざまな報告がなされているが,一般的には1カ月から6カ月の消炎期間を経たうえで手術を行うのが良いとされている2).しかし,これらは1つの目安で(37)????*HiroshiKeino:東京医科大学霞ヶ浦病院眼科〔別刷請求先〕慶野博:〒300-0395茨城県稲敷郡阿見町中央3-20-1東京医科大学霞ヶ浦病院眼科特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1421~1428,2006合併症に対する治療??????????????????????????????????????????????????????????????????慶野博*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006ロイドの局所および全身投与,報告によってはメソトレキセートなどの免疫抑制薬を使用することで,しっかりと術前に消炎させることが良好な術後成績を得るうえで必須であることを述べている7,8).c.Fuchs虹彩異色性虹彩毛様体炎これまでこの疾患の併発白内障手術についていくつかの報告がなされているが,おおむね術後成績は良好である9,10).ただし,術後の眼圧上昇や前房出血などを生じることがあるため,他のぶどう膜炎と同様に注意深い経過観察が必要である11).d.原田病原田病の併発白内障は特に遷延例において虹彩後癒着を伴って生じてくることが多い.Ganeshらは全体の80%で視力が改善し,50%は6/18以上の視力を得たと報告している.また全体の76%が後発白内障を生じ,そのうちの42%においてYAGレーザーによる後?切開が施行されていた12).一般的には炎症が鎮静化された時期に行えば視力予後は良好であるが,当施設における原田病併発白内障の術後合併症についてみると,全体の46%で術後の眼圧上昇を認めたことから,厳密な術後管理が重要である13).e.サルコイドーシスサルコイドーシスの術後成績は比較的良好といわれており,術前の消炎が2~3カ月間にわたって維持されていれば眼内レンズ挿入も特に大きな問題はない.当施設でも術後ぶどう膜炎再燃例の疾患別頻度でみてもサルコイドーシスが最も頻度が低いという結果であった13).しかしながら,一部の症例では術後に?胞様黄斑浮腫が出現,あるいは増強することがあること,また術後炎症が強いケースではcycliticmembraneを形成することがあり注意を要する14).2.術前のぶどう膜炎活動性の評価ぶどう膜炎併発白内障手術では術前にある程度の消炎鎮静期間をおいた後,手術施行となるわけだが検眼鏡的に消炎が得られている(当施設では消炎の定義として前房中に炎症細胞を認めないか,認めたとしても全視野に1~5個程度であること)としても,subclinicalには前房内炎症が持続していることもある.その程度を評価する客観的な数値として当施設では前房フレア値をぶどう膜炎の術前評価項目として活用している.当院において手術直前のフレア値と術後視力との相関をみたところ,術前フレア値の高い症例ほど術後視力が悪い傾向があった13)(図1).また術前のフレア値が50photoncounts/ms以上の症例では術後6カ月を経ても鎮静化せず,反対に術前のフレア値が20photoncounts/ms以下の症例では術後のフレア値は安定しており,フレア値に上昇は認められなかった15)(図2).さらにぶどう膜炎を肉芽腫性と非肉芽腫性に分類し術後のフレア値を比較したところ,肉芽腫性のほうが非肉芽腫性に比べてフレア値が高く,フレア値の上昇が長く続くことが判明した15)(図3).これらの結果から術前のフレア値が50photoncounts/ms以上の肉芽腫性ぶどう膜炎の場合,慎重に手(38)術前020406080100120140期間フレア値(photoncounts/ms):術前炎症(+)併発白内障n=5:術前炎症(-)併発白内障n=20:対照群(加齢白内障)n=10p<0.051日3日7日6月3月1月14日図2ぶどう膜炎併発白内障手術前の炎症の有無による術後フレア値の変化(文献15より)0204060801.00.50.1術前フレア値(photoncounts/ms)術後視力n=66,r=-0.524,p<0.001図1術前フレア値と術後視力(文献13より)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????術時期を決定する必要があると思われる.このように術前のぶどう膜炎の活動性を評価するうえで,細隙灯顕微鏡の所見だけでなく,フレア値を測定しておくことは術後の炎症の程度をある程度予測するうえで,有力な手がかりになりうると考えられる.3.術前の消炎対策術前の準備として消炎目的のために予防的にステロイド投与を行うかについては意見が分かれるところである.筆者らの施設では十分に消炎期間のとれている症例については,特に術前のステロイドの内服は行っていない.一方でMeacockらは白内障術前30分前からメチルプレドニゾロンを点滴静注(15mg/kg)した群と手術日の2週間前からプレドニゾロンを内服(0.5mg/kg)させた群で比較し,視力予後には差がないものの,血液?眼関門の破綻が後者のほうが軽度であったことを報告している16).4.術式および眼内レンズの種類最近の国内におけるぶどう膜炎患者の白内障手術における眼内レンズ挿入術に関しての報告をみると,全体の99%とほとんどの施設で眼内レンズ挿入術が行われていることが明らかとなっている17).挿入する眼内レンズの種類に関するデータをみると,acrylレンズが71%と最も多く,ついでpolymethylmethacrylate(PMMA)レンズが33%,heparinsurface-modi?ed(HSM)PMMAレンズが19%,siliconeレンズが8%であった17).当施設においてもacrylレンズが最も多く(全体の74.8%),ついでHSMPMMAレンズ18%,PMMAレンズ他7.2%であった18).使用頻度の最も多かったacrylレンズについてのこれまでの報告をみると,術後炎症が少なく,再燃の頻度も低いこと,後発白内障の頻度も他のレンズに比べて低いという利点がある19~21).Siliconeレンズについては術後の炎症細胞の付着が少ないものの後発白内障の頻度が高いことが指摘されている19,20).また術後の前房炎症の指標とされるフレア値についてacrylレンズ,siliconeレンズ,ハイドロジェルレンズで比較したところ,3者の間には有意な差はみられなかった22).生体適合性の面からacrylレンズとHSMPMMAレンズとの間で比較したところ,acrylレンズのほうが炎症細胞の付着が少なく生体適合性に優れていることが判明している23).当施設でも後?切開の頻度についてレンズ間で比較したところ,acrylレンズはHSMPMMAレンズやPMMAレンズよりも有意に後?切開の頻度が少ないことが明らかとなった13).5.術後の薬物療法当院では,まず術後の消炎対策として,手術終了時に抗生物質とともにベタメタゾン(リンデロン?)の結膜下注射,また症例によってはトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト?)の後部Tenon?下注射を行っている.さらに術翌日の炎症に応じてステロイド薬の全身投与(プレドニゾロン換算で20~40mg)や非ステロイド消炎薬の全身投与を2~4日間行う.これと並行してステロイド薬点眼(ベタメタゾン,またはフルオロメトロン),非ステロイド消炎薬(ジクロフェナクナトリウム,またはブロムフェナクナトリウム)などの点眼を最低3カ月継続する.炎症が持続しているうちは虹彩後癒着防止のため散瞳薬の点眼を就寝前に行う.6.術後合併症まず当施設における術後合併症の種類と発生頻度につ(39)術前01020304050期間フレア値(photoncounts/ms):肉芽腫性ぶどう膜炎n=18:非肉芽腫性ぶどう膜炎n=14:正常対照群(加齢白内障)n=10p<0.051日3日7日6月3月1月14日図3非肉芽腫性ぶどう膜炎併発白内障と肉芽腫性ぶどう膜炎併発白内障手術前後におけるフレア値の変化(文献15より)———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006いて表1に示す13).ぶどう膜炎の再燃が全体の27.8%,以下高眼圧が17.3%,後発白内障が16%でみられた.視力低下の原因となる?胞様黄斑浮腫の出現頻度は全体の2.5%であった.また術前,術後の6カ月から3年間におけるぶどう膜炎炎症発作発生頻度については,頻度が増加したものが17.3%,不変が45.7%,減少したものが37.0%であった13).さらに術後高眼圧を認めた症例を疾患ごとにみてみると,表2に示すように若年性関節リウマチが78%,原田病・交感性眼炎が46%,ヘルペス性虹彩毛様体炎が33.3%,Beh?et病が20%であった13).他施設のデータをみると,Estafanousらの報告によれば,ぶどう膜炎の再燃が全体の41%,後発白内障が62%,?胞様黄斑浮腫は33%,網膜前膜が15%,虹彩後癒着が8%でみられた24).またRahmanらは後発白内障が96%にみられ,?胞様黄斑浮腫は24%に認められたと報告している25).対象とした疾患や術式,用いた眼内レンズも施設間で違いがあるため当施設のデータと単純に比較はできないが,どの施設でも一定の割合で術後合併症が生じることは明らかであり,その発症をいかに少なくするかが今後も大きな課題である.7.まとめ近年のfoldable眼内レンズを組み合わせた小切開白内障手術の進歩により,ぶどう膜炎併発白内障に対してもより低侵襲で安全に手術を行えるようになった.しかしながらぶどう膜炎の種類によって術後の炎症や合併症の発生頻度はさまざまである.白内障手術を行う前に個々の症例ごとに疾患の同定および病型を把握して手術による影響を予測しておくこと,そして術後の消炎対策まで事前に準備しておくことなど,手術を中心とした術前,術後の総合的な治療戦略がぶどう膜炎併発白内障手術に不可欠である.IIぶどう膜炎続発緑内障1.続発緑内障の頻度と眼圧上昇機序ぶどう膜炎続発緑内障は併発白内障と並んで比較的頻度の高い合併症である.その発生頻度はぶどう膜炎全体の10~20%であると報告されている26~29).ぶどう膜炎続発緑内障の原因を2つに大別すると,閉塞隅角と開放隅角に分類される30).眼圧上昇の機序として閉塞隅角緑内障は,虹彩後癒着が瞳孔領全周に生じ瞳孔ブロックの状態(irisbomb?)にある場合,隅角に周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)が形成された結果,隅角線維柱帯が閉塞されて眼圧が上昇する場合,原田病のように発症早期に虹彩水晶体隔膜の前方移動で急性狭隅角緑内障をきたす場合,慢性的な炎症による新生血管緑内障の場合などがあげられる.開放隅角緑内障は隅角線維柱帯への炎症,炎症産物の蓄積による通過障害,炎症による隅角線維柱帯自体の機能低下,プロスタグランジンによる血液房水関門の破綻と房水産生の増加,ステロイド緑内障にみられる隅角線維柱帯への異常結合織とムコ多糖類の蓄積などがある.実際の臨床の場では,上記の眼圧上昇機序が重複しているケースも認められ,治療に苦慮することが少なくないが,眼所見を正確に把握し病態を理解することがその後の治療法や術式の選択をするうえで最も重要となる.ここではおもにぶどう膜炎続発緑内障の外科的治療に焦点を絞り,各々の術式の適応や成績について最近の知見(40)表1術後合併症の種類と発生頻度術後合併症眼数%(眼数)ぶどう膜炎再燃高眼圧後発白内障虹彩後癒着水晶体?異常収縮眼内レンズ偏位?胞様黄斑浮腫45282614118427.817.316.08.66.84.92.5(文献13より)表2術後高眼圧を認めた例の疾患別頻度術後合併症眼数%(眼数)Beh?et病サルコイドーシス原田病?交感性眼炎若年性関節リウマチヘルペス性虹彩毛様体炎同定不能(非肉芽腫性)(肉芽腫性)84631642201146783313227(文献13より)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????と併せて述べる.2.レーザー虹彩切開術と周辺虹彩切除術慢性的な虹彩炎が持続すると,虹彩の後面と水晶体の前面が徐々に癒着していく(虹彩後癒着:posteriorsynechia).それが瞳孔全周へ拡大すると後房から前房への房水の流れが遮断され後房圧が上昇し,膨隆虹彩(irisbomb?)が生じる(図4).このような場合は早急にレーザー虹彩切開術を行う必要がある.使用するレーザーにはargonとYAGの2種類があるが,筆者は照射回数が少なくて済むYAGレーザーを使用している.しかし,前房炎症を有する眼にYAGレーザーを行った場合,術後の前房炎症により開通した穴が再度閉塞することがしばしばみられる.そこで通常の狭隅角に伴った緑内障発作時と比べて大きめにレーザー虹彩切開術を施行する.そして数発照射しても穴が開かないような場合,また再閉塞をきたすような場合は観血的に周辺虹彩切除術を施行する.その際,術後の炎症は必発であるため,ステロイドの点眼や結膜下注射,炎症の程度によっては内服も併用して消炎に努める.特にBeh?et病でirisbomb?が生じた場合,レーザー虹彩切開術を行うと炎症発作の増悪を誘導するおそれがあるため,当施設ではできるかぎり周辺虹彩切除術を施行するようにしている.3.隅角癒着解離術谷原らは続発閉塞隅角緑内障に対して隅角癒着解離術が40%に有効であったと報告している31).この事実は続発閉塞隅角緑内障でも症例によっては線維柱帯以降の房水流出障害の少ないものが存在することを示している.一方で線維柱帯以降の房水流出が完全に障害されているような症例に対しては,隅角癒着解離術を何度もくり返すのではなく,流出抵抗の部位に応じて他の術式を加えていくべきであろう.4.MitomycinC併用線維柱帯切除術ぶどう膜炎による続発緑内障に対するmitomycinC(MMC)併用線維柱帯切除術の眼圧コントロール成績について表3に示す.まずわが国からの論文をみると,1998年の比較的炎症の程度の軽い例を対象にした松村らの報告では術後3年で眼圧調節率が87%32),2001年に今泉らは術後5年で初回手術例において有効率が76.3%であったと述べている33).2002年に高橋らは20(41)図4膨隆虹彩(irisbomb?)ブロック解除前(左)とブロック解除後(右).表3MMC併用線維柱帯切除術の眼圧コントロール成績報告者報告年平均経過観察期間眼圧コントロール率松村ら32)今泉ら33)高橋ら27)高橋ら34)Ceballosら37)重安ら35)岡田ら36)Yalvacら38)199820012002200220022004200420042.0年1.9年記載なし3.8年2.5年2.0年2.3年3.3年87%*76%89%80%*62%70%*82%67%*:点眼併用と記載あり.———————————————————————-Page6????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006mmHgを目標眼圧とした場合,無投薬で62.9%,点眼併用で80.5%の生存率があったとしている34).2004年に重安らは平均観察期間48カ月において眼圧調整率は初回手術70%であったと報告している35).同じく2004年に岡田らは術後24カ月で生存率は81.6%であったと述べている36).海外からの報告では2002年にCeballosらはMMC併用あるいは5-?uorouracilを併用した線維柱帯切除術を行い,点眼を併用しても生存率は術後1年で78%,2年で62%であったと報告している37).興味深いことに男性では術後2年で生存率が39%であったのに対して女性では71%と女性のほうが良好な成績であった.2004年にYalvacらはBeh?et病に伴う続発緑内障に対してMMC併用線維柱帯切除術を行ったところ,術後1年で眼圧調整率は83%,術後3年では70%の成績を得たと報告した38).また開放隅角緑内障とぶどう膜炎続発緑内障で術後の眼圧調整率を比較した場合,長期経過ではその有効性はぶどう膜炎続発緑内障群において有意に低下していた33).さらに沖波らはPASが半周以上の症例では有効率は25%であったのに対して,半周未満ないし開放隅角では85%と有意な差があったと報告している39).つぎに続発緑内障に対して緑内障単独手術と白内障緑内障同時手術で術後眼圧を比較してみると,以前に溝口らは白内障手術を併用すると術後に眼圧を20mmHg以下へ調整できる確率は術後3年で68%,緑内障手術単独では87%,さらに14mmHg以下へ調整できる確率は同時手術群で24%,単独群では63%と有意な差があったとしている40).2004年の岡田らの報告では目標眼圧が15mmHgであった場合,眼圧調整率は同時手術群が16%であったのに対して単独群が58%であった36).これらの結果より眼圧をlowteenで安定させるためには,緑内障単独手術のほうがより効果的であると考えられる.術後の炎症管理は濾過胞維持のために重要であるが,最近のMoltenoらの報告によれば,続発緑内障術後の濾過胞を維持させる手段として,術後に一定期間ステロイドや非ステロイド系消炎薬およびコルヒチンを内服させると良好な結果が得られている41).5.線維柱帯切開術続発緑内障に対して線維柱帯切開術を行うか,線維柱帯切除術を行うかは術前の炎症や眼圧,視野障害の程度,視神経乳頭変化,術後の目標眼圧,患者の年齢などから総合的に判断する.線維柱帯切開術は術後highteenを目標眼圧とする比較的視野障害が軽度の症例に推奨される術式であるといえる42).また下方からのアプローチで本術式を行った場合,上方の結膜を温存することができ将来的に線維柱帯切除術が必要となった場合でも対応可能である.しかしながら本術式では術後の前房出血は必発であり,一部の症例では切開した隅角へ虹彩が癒着し,PASを形成することがある.ステロイド緑内障のように炎症が少なくPASがないような症例に対しては本術式が有効であると報告されている43).最近Freedmanらは小児慢性ぶどう膜炎の続発緑内障12例16眼に対して隅角切開術を施行したところ有効率が75%であったと報告しており44),Hoらも31例31眼に対して本術式を行い,71%の有効率を示している45).さらに術後成績を決定する因子として,虹彩炎の罹病期間,緑内障手術に至るまでの期間,PASの程度が少ないことなどをあげている45).これらのデータは小児ぶどう膜炎症例に対する本術式の有効性を示すものである.6.まとめぶどう膜炎続発緑内障の治療を行うためには,その病態を正しく把握し眼圧上昇の原因を明らかにすることが重要である.続発緑内障に対する手術治療はMMCの登場により,その成績は以前と比較して改善されてはいるものの,良好な眼圧コントロールを維持するうえで術前,術後の消炎は併発白内障手術と同様,必須であるといえる.ステロイド使用による眼圧上昇は大きな問題であるが,その機序についてもまだ未解明の部分が多い.今後はステロイドにかわるような薬剤による抗炎症療法によって続発緑内障への進展の予防,さらには続発緑内障治療成績の向上が期待される.本稿を終えるに際し,ご校閲いただいた東京医科大学臼井正彦教授に深謝いたします.(42)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????文献1)後藤浩:ぶどう膜炎に対する外科的治療法の適応と注意点.眼科手術17:149-154,20042)NussenblattRB,WhitcupSMeds:Uveitis,FundamentalsandClinicalPractice.p137-154,Mosby,StLouis,20043)合田千穂,小竹聡,笹本洋一ほか:ベーチェット病の併発白内障に対する手術成績.臨眼54:1272-1276,20004)平岡美衣奈,藤野雄次郎:ベーチェット病の併発白内障に対する手術成績.日眼会誌103:109-123,19995)Kadayif?ilarS,GedikS,EldemBetal:CataractsurgeryinpatientswithBeh?et?sdisease.???????????????????????28:316-320,20026)LamLA,LowderCY,BaerveldtGetal:Surgicalmanage-mentofcataractsinc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科の実地医家にも十分役立つよう歴史・由来・全身症状・治療法など,広範な解説.4.各症候群に関する最新の,入手可能な文献をも収載.■本書の特色■

顆粒球除去療法

2006年11月30日 木曜日

———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSどう膜炎),4:外陰部潰瘍を主症状とする原因不明疾患である.日本をはじめ,韓国,中国,中近東,地中海沿岸諸国によくみられ,silkroaddiseaseともいわれる1).日本では現在約18,000人の報告がある.発病年齢は,男女とも20~40歳に多く,30歳代前半にピークを示す.特に眼病変は男性で重症化しやすい.病因は不明で,何らかの内因と外因が関与して白血球の異常が生じて病態が形成されると考えられている.なかでも眼症状は重篤で失明に至るケースが多く,本症患者のqualityoflife(QOL)を著しく低下させている.本疾患に対する根本治療法はいまだ確立されていない.Beh?et病の眼病変の特徴は眼内各組織の閉塞性血管炎を主体とした眼組織全体の炎症である.急性前眼部発作時には,しばしば境界線が明瞭な前房蓄膿がみられる.虹彩や毛様体から前房や硝子体中に好中球が遊走し,前房蓄膿や硝子体混濁になる.前房蓄膿の臨床的特徴は「さらさら」していることであり,体位により容易に移動する.前房水スメアをギムザ染色すると,前房蓄膿の構成細胞はほとんどが分葉核をもつ好中球であり(非肉芽腫性虹彩ぶどう膜炎),好中球の何らかの異常がBeh?et病を誘発すると考えられる.症状は一過性であるが,炎症は再燃しやすい.再燃を重ねるに従って,種々の器質的障害が残るようになり,ついには失明またはそれに近い状態まで視機能が低下する.眼病変に対する治療は急性期と緩解期で異なる.急性期には副腎皮質ステロイド薬の頻回点眼や結膜下・後部はじめにアフェレーシス(眼科では聞き慣れない用語だが)とは,人工デバイスを用いて,血液から何らかの成分を除去する治療の総称である.血液透析や血漿交換など老廃物や毒素を除く治療や,自己免疫病で自己抗体を特異的に除去する治療などが含まれる.しかし液性成分のみでなく,特定血球細胞を除去する治療(cytapheresis)も重要なアフェレーシスの分野であり,近年さまざまな疾患で実施されている.Granulocytapheresisは翻訳すると「顆粒球除去療法」となる.顆粒球は文字通り細胞内顆粒をもった細胞の総称であるが,生体内の多くの顆粒球は好中球であるため,臨床的には「好中球除去療法」という意味合いをもつことが多い.Beh?et病に伴うぶどう膜炎発作に,活性化型顆粒球(おもに好中球)が深く関わることが知られる.筆者らは(Beh?et病と同様に顆粒球が発作に関わる)潰瘍性大腸炎患者に対し顆粒球除去治療が行われ,副腎皮質ステロイド薬が効きにくい重症患者でも一定の効果をあげていることに注目した.今回眼症状を伴うBeh?et病患者に対し,顆粒球除去治療を行った.本稿では,そのパイロットスタディの概要・成績を述べるとともに,今後の臨床応用について考察する.IBeh?et病のこれまでの治療Beh?et病は1:口腔内難治性アフタ潰瘍,2:結節性紅斑などの皮膚症状,3:虹彩毛様体炎・網脈絡膜炎(ぶ(31)????*Koh-HeiSonoda:九州大学大学院医学研究院眼科学**KenichiNamba:北海道大学大学院医学研究科眼科学分野〔別刷請求先〕園田康平:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学特集●非感染性ぶどう膜炎治療の最先端あたらしい眼科23(11):1415~1419,2006顆粒球除去療法???????????????????園田康平*南場研一**———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006Tenon?下注射といった局所投与を行う.急性発作が落ち着いた緩解期には,発作頻度減少を目的とした治療を行う.まずコルヒチンを0.5~1.5mg経口投与する.コルヒチン単独で無効の場合,シクロスポリンを5mg/kg/day併用内服する.これでも無効の場合や副作用で投与できない症例では,低用量プレドニゾロン(5~10mg)の持続内服を行う.これらの薬剤は造血系,腎臓,肝臓,中枢神経系などに障害をきたす副作用もしばしば出現し,注意深く治療していかなければならない.Beh?et病眼発作予防に行われてきた上記の薬物治療は,これまで一定の効果をあげてきたが,残念ながら治療に反応せず失明に至る症例が数多く存在する.また全身副作用のため長期で投与できないケースもある.患者はBeh?et病に伴う臓器障害に加え,薬物副作用による症状にも苦しんでいる.顆粒球除去療法は潰瘍性大腸炎ですでに治療の実績があり,目立った副作用は報告されていない.現状では有効な治療法がなく眼発作のたびに失明の恐怖におびえる患者にとって,本研究で有用性が確かめられればこの上ない選択肢となりうると考えた.II顆粒球除去療法をBeh?et病に応用するまで潰瘍性大腸炎は,大腸に限局して,くり返し慢性の炎症・潰瘍ができる原因不明の疾患である.中等症以上の患者を対象とした,カラム治療(1回/週×5週間施行)と薬物療法との多施設共同無作為割付比較試験の結果,特に重症や難治例でカラム治療の有用度が評価され,保険適用になっている2).潰瘍性大腸炎では腸間の炎症部位に多数の顆粒球が浸潤する3).酢酸セルロース製ビーズカラムが潰瘍性大腸炎で効果を示す機序は,顆粒球・単球を中心とした病的白血球の選択的吸着,細胞の機能変化などによる.上述したようにBeh?et病病態形成にも同様に顆粒球が深く関わる.ゆえにこれを直接除去するカラム治療はBeh?et病の新治療法になると考えた.III実施プロトコールおよび結果北海道大学・九州大学眼科の共同研究として,各大学倫理委員会で同一プロトコールによる治療計画承認後,同時期に本治療を開始した4,5).筆者らが採用した適応基準および除外基準を表1に示す(両大学での総数14名).今回の検討では急性期眼発作ではなく,治療前後6カ月間の眼発作回数で治療成績を評価した.ゆえに眼発作の頻度の高いこと(治療開始前14週に2回以上の眼発作を起こしている)をエントリーの条件とした.またエントリー時急性発作を起こしている患者は,発作緩解を確認した後治療を開始した.急性発作期に顆粒球除去療法を行っても早期消炎効果は期待できると思われる.しかしBeh?et病眼発作は,単一発作自体自然に緩解するため,仮に治療に反応して緩解しても,自然経過との比較が困難である.また同一患者でも,その時々で急性眼発作の程度がまちまちで(前房蓄膿や黄斑部を含む広範囲の網膜滲出斑がみられるような大発作を起こすときもあれば,ごく軽微な前眼部炎症のみの小発作のときもある),回復時間も自ずと異なる.今回のような症例数の限られたパイロットスタディでは,急性期発作での効果判定が困難と考えた.酢酸セルロース製ビーズカラムはこれまで潰瘍性大腸(32)表1適応基準および除外基準<選択基準>1)年齢:20歳以上2)性別:不問3)入院・外来:不問4)片眼あるいは両眼に再発性網膜ぶどう膜炎型を有する完全型または不全型Beh?et病の患者5)ステロイド,コルヒチン,シクロスポリンA単独または組み合わせ治療にもかかわらず,過去14週で2回以上の眼発作を起こしている患者6)治療およびそのプロトコールについて本人および代諾者より文書同意の得られた患者<除外基準>1)顆粒球数2,000/mm3以下の患者2)感染症を合併している患者および合併が疑われる患者3)妊娠中,または妊娠している可能性のある女性4)前眼部のみの眼発作患者<慎重に使用することが望まれる場合>1)肝障害・腎障害のある患者2)アレルギー素因のある患者3)抗凝固剤(ヘパリン,低分子ヘパリン,メシル酸ナファモスタット)に対し過敏症の既往のある患者4)心血管系疾患のある患者5)赤血球減少(300万/mm3以下),極度の脱水(赤血球600万/mm3以上),凝固系の高度亢進(フィブリノーゲン700mg/d?以上)のある患者6)体温38℃以上の患者———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????炎に使われてきた実績からも,安全性の高い医療器具といえる.しかしBeh?et病に対しては初めての試みであり,予想外の副作用が発生する可能性も考えた.そこで個々の患者に対して安全性が確立されるまでの期間(1週間程度)は入院のうえ治療を受けていただいた.実際の治療プロトコールを図1に示す.本治療では,酢酸セルロースビーズカラムとしてアダカラム?(株式会社JIMRO)を使用し,週1回の頻度で連続5回治療を施行した.患者の一方の肘静脈を脱血側,反対側の肘静脈を返血側として血管を確保する.静脈から静脈に専用ポンプを用いて循環させ,途中でカラムを通すことでビーズに顆粒球を吸着させる.循環条件は血液流量:30m?/分,循環時間:1時間,処理血液量:1,800m?,体外流出血液量:約200m?である.機器内での血栓形成予防のため,ヘパリン(2,000単位)またはメシル酸ナファモスタット(フサン?20mg)を体外循環時に持続混入させる.血液流量は30m?/分,治療時間は60分であり,1回の治療で1,800m?の全血を処理することになる(図2).14例全体の平均発作回数は,治療前4.2±1.6回,治療後2.9±1.4回(p=0.028)であった(図3).本治療によって発作は完全に抑制されるわけではなかったが,統計学的有意差をもって発作抑制効果があることが確かめられた.また筆者らは有効な症例とそうでない症例に2分されると感じたため,有効群と無効・不変群に分けて(33)表2有効群と無効群での治療前後の発作回数治療前6カ月の治療後6カ月の発作回数発作回数患者大発作小発作大発作小発作12110有効23002有効30601有効45203有効52111有効64203有効70723有効80402有効92220有効103114無効111350無効120212無効131213無効141203無効大発作の定義:網膜の半分以上に及ぶ病変を伴う後眼部発作,または前房蓄膿を伴う前眼部発作.(文献5より)図1プロトコールの概要遡及期間(14週)観察期間(2週以内)有効性および安全性評価期間(24週)週1回計5回のアダカラム?治療入院1)カラム治療:1回/週,計5回.2)安全性が確立されるまでの期間(1週間程度)は眼科入院.その後は外来通院で行う.3)既存薬は増減せずそのまま併用4)治療前後6カ月間の発作回数で判定図3前症例の治療前後での眼発作回数の比較(文献5より改変)4.2±1.6回治療前6カ月876543210治療後6カ月症例1症例2症例3症例4症例5症例6症例7症例8症例9症例10症例11症例12症例13症例14眼発作回数2.9±1.4回(p=0.028)アダカラム?(酢酸セルロースビーズカラム)肘静脈(脱血側)肘静脈(返血側)抗凝固剤注入口返血脱血図2顆粒球除去療法の概略図———————————————————————-Page4????あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006臨床的に解析を行った.表2に有効群と無効群での治療前後の発作回数を示す.エントリーした14例中,9例は治療後発作回数が減少し有効群と判定したが,残り5例は発作回数の減少がみられず無効群と判定した.有効群では特に治療前にみられた大発作が消失するケースもあり,発作回数以上に患者の満足度は高かった.一方,無効群においては発作の重症度にも大きな変化はなかった.このように有効群と無効群の分かれる要因を特定するため,2群間の年齢,性別,罹病期間,使用薬剤,病型(完全型・不完全型)などの因子を比較検討した.その結果,罹病期間が5年以上の症例は有効群,5年未満は無効群に分類される症例が多いことが判明した.事実,罹病期間5年以上の症例7例で解析すると,全体で解析した以上にカラム治療の効果が大きいことがわかった(図4).今回の検討では,期間を通して重篤な全身副作用は認めなかった.これまで本治療に伴う副作用には,治療直後の脱力感・倦怠感・めまいなどが報告されている2).これらはすべて一過性であり,顆粒球除去治療自体ではなく,治療中使用する抗凝固剤によるものと考えられている.また本治療は眼症状以外の口腔内アフタ性潰瘍・関節症状・皮膚症状なども軽快する傾向があった.眼症状では無効群と判定した患者のなかにも,眼外症状の経過がいいという理由で,本治療の再施行を希望する患者もいる.本治療の作用機序について,アダカラム?はBeh?et病患者の顆粒球・単球を効率良く吸着除去したことを確かめた(図5).またカラムを通過した顆粒球においては接着分子(CD62L)の発現が低下していた(図5).また,接着分子の発現変化に伴い,インターロイキン(IL)-1bで刺激したヒト臍帯静脈内皮細胞への接着能の低下が認められたが,顆粒球の貪食能には変化がないことが報告されている6).つまり組織にとどまり眼炎症に関与すると考えられる顆粒球のみが選択的にビーズに吸着されるということではないかと考えている.IV今後の展望今回筆者らが行ったパイロットスタディの結果は,顆粒球除去療法が再発性の眼発作に苦しむBeh?et病患者にとってある一定の効果があることを示している7).ただし,眼発作をすべて抑制できるわけではなく,またまったく効果がなかったと思われる症例も存在した.特に現プロトコールでは発症後5年以上経過した症例では効果が高いと考えられた.Beh?et病眼症に対して,顆粒球除去療法が奏効するメカニズムを今後さらに解析していく必要がある.おそらく各種接着因子や炎症性サイトカイン・ケモカインの産生能の高い,活性化型好中球を選択的に除去している結果と考えられる.現在こちらの解析を進めているところである.今後最も大切なことは,Beh?et病に伴うぶどう膜炎(34)**p=0.014;*p=0.009;***p=0.001,out?owvsin?ow白血球数(×103/m?)012345678Columnin?owColumnout?ow(A)Columnin?owColumnout?ow(B)陽性細胞数CD62L?uorescenceintensityCD62L?uorescenceintensity陽性細胞数総白血球*好中球**リンパ球モノサイト***図5治療前後の白血球の性状(文献5より改変)眼発作回数7.24±1.49年(n=14,p=0.0275)3.13±0.3年(n=7,p=0.829)11.4±1.97年(n=7,p=0.0054)PrePostPrePostPrePost全体罹病期間<5年012345罹病期間≧5年平均罹病期間図4罹病期間別の眼発作回数の推移(文献5より改変)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.11,2006????(35)に対して最適な治療プロトコールを作成することだと考えている.現プロトコールは潰瘍性大腸炎でなされたプロトコールをそのまま使用しており,決してBeh?et病にそのまま当てはまるものではない.くり返しであるがBeh?et病患者はいつも眼の状態が悪いわけではなく,緩解と増悪をくり返しつつ徐々に不可逆性の変化を眼にきたす.ゆえに眼発作予防・頻度減少が大切であり,その観点からも眼発作をある程度予測したうえで,予防的・集中的な治療が望ましい.今度何らかの方法(血液中の各種炎症マーカーなど)で病勢をモニターしつつ,増悪期に入りそうなときに治療を行うことが効果的と考えている.今後多症例での検討を積み重ねるうちに,患者ごとのオーダーメイド的な治療プロトコールができあがっていくと期待される.謝辞:本研究の遂行に当たり,以下の方々に深く感謝申し上げます.北明大洲,小竹聡,大野重昭(以上北海道大学眼科),稲葉頌一(神奈川県赤十字血液センター),宮本敏浩(九州大学病院輸血部),有山章子,松浦敏恵,中村隆彦,藤本武,肱岡邦明,石橋達朗(以上九州大学眼科),川野庸一(浜の町病院眼科),株式会社JIMRO.文献1)SakaneT,TakenoM,SuzukiNetal:Currentconcepts:Beh?et?sdisease.????????????341:1284-1291,19992)KashiwagiN,HirataI,KasukawaR:Aroleforgranulo-cyteandmonocyteapheresisinthetreatmentofrheuma-toidarthritis.?????????????????????2:134-141,19983)AllisoMC:Pathogenesisofin?ammatoryboweldisease.In?ammatoryBowelDisease.p15-22,Mosby,StLouis,19984)SonodaK-H,InabaS,AriyamaAetal:Therapeuticneu-trophilapheresisinpatientswithocularBeh?et?sdisease.???????????????123:267-269,20055)NambaK,SonodaK-H,KitameiHetal:Granulocytapher-esisinpatientswithrefractoryocularBeh?et?sdisease.????????????21:121-128,20066)下山孝,澤田康史,田中隆夫ほか:潰瘍性大腸炎の活動期における顆粒球除去療法─多施設共同無作為割付比較試験─.日本アフェレシス学会雑誌18:117-131,1999