———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSン株式会社)があるが,満足のいく結果が得られない場合もあり,新しいタイプの遠近両用SCLの開発が求められていた.本稿では,新しく開発された遠近両用SCLとして,2005年11月24日に発売されたロートi.Q.?14バイフォーカル(ロート製薬)と近々発売予定のボシュロムソフレンズマルチフォーカル(ボシュロム・ジャパン)を紹介する.Iロートi.Q.?14バイフォーカル1.特徴a.デザイン同心円型,同時視型の遠近両用SCLで,商品名から二重焦点レンズだとイメージするが,実際には累進屈折力レンズである.本レンズは,2つの異なる光学デザイはじめに総務省が行った国勢調査によると2005年12月1日現在の総人口に対する45歳以上の割合は47.7%で,日本では着実に高年齢化が進んでいる.人は誰も加齢により調節力が減退するが,40歳代後半になると近見障害や眼精疲労を訴える場合が多く,適切な老視矯正を必要とする.一般に,老視の矯正の手段として眼鏡あるいはコンタクトレンズ(CL)が使用されるが,遠近両用CLは通常の単焦点CLに比べて処方がむずかしい,煩わしいという問題に加えて,良好な視機能が得られないことが多かった.しかしながら,各メーカーの研究,開発,技術の進歩によって十分に使用に耐えうる遠近両用CLが市販されるようになった.遠近両用CLは材質の面からハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)に,形状の面からセグメント型と同心円型に,光学的な機能面から交代視型と同時視型に大きく分けられ,さらに光学部が二重焦点レンズや累進屈折力のものなど,多種多様なレンズがある1~6)(図1).ディスポーザブルSCLや2週間で頻回に交換するSCLの使用者が急増しているが,老視矯正を目的とした遠近両用SCLを処方する機会が増えてきた.現在,2週間で頻回に交換する遠近両用SCLとしてはアキュビューバイフォーカル(ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)とフォーカスプログレッシブ(チバビジョ(9)???*KiichiUeda:山口大学大学院医学系研究科眼科学/ウエダ眼科**RyojiYanai:山口大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科特集●新しいコンタクトレンズの展望あたらしい眼科23(7):851~860,2006新しい遠近両用コンタクトレンズの紹介???????????????????????????????????????????????????????????????????????植田喜一*柳井亮二**図1遠近両用CLの種類二重焦点累進屈折力(多焦点)デザイン屈折力(焦点)材質HCLHCL・SCLHCL・SCLセグメント型同心円型形状交代視型同時視型光学的機能———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006ンがあるのが特徴である5,6).遠用重視のレンズ(Dレンズ)のデザインを図2aに示す.中央は単焦点SCLと同じ遠用の球面デザインであるが,その外側(中間部)は非球面デザインで累進屈折力レンズとして働き,周辺部は近用の球面デザインである.近用重視のレンズ(Nレンズ)のデザインを図2bに示す.中央は近用の球面デザインであるが,その外側(中間部)は非球面デザインで累進屈折力レンズとして働き,周辺部は遠用の球面デザインである.Nレンズは近方の見え方だけでなく,中間から遠方までの見え方を考慮して設計されたレンズで,Dレンズよりも中央の光学部の面積は狭く,累進移行部が広い.これらの非球面形状は前面に施されており,後面は球面形状である.b.物性,仕様本レンズはイオン性素材で高含水率であるため,アメリカのFoodandDrugAdministration(FDA)分類ではグループⅣに属する.酸素透過係数(Dk値)は,19.6×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg),酸素透過率(Dk/L値)は,12.3×10-9(cm/sec)・(m?O2/m?×mmHg)である.中心厚は0.159mm(球面度数-3.00D,加入度数+1.00D)で,レンズ径は14.4mm,ベースカーブは8.7mmのみである.球面度数は+4.00D~-6.00D(0.25Dステップ)で,加入度数は+1.00D,+1.50D,+2.00D,+2.50Dの4種類である(表1).2.処方患者の年齢および調節力からレンズのデザインを選択する.調節力の程度に応じて,①両眼ともDレンズ(以下D-D),②片眼にDレンズ,反対眼にNレンズ(以下D-N),③両眼ともNレンズ(以下N-N)の組み合わせのいずれにするかを検討する.遠方視を重視する場合にはD-D,近方視を重視する場合にはN-Nの組み合わせでよい.D-DおよびD-Nの組み合わせを行った場合の遠用度数および加入度数の決定の手順を図3に示す.トライアルレンズの遠用度数は完全矯正値を頂間距離補正した値に近い度数を選択する(乱視がある場合には,その乱視度数を等価球面度数で補正する).トライアルレンズの加入度数は視力検査時に必要とした検眼レンズの加入度数に最も近い度数を選択する.追加矯正は患者の作業距離によって両眼視による遠方と近方の見え方を参考にし(10)部用遠)ンイザデ面球(部用間中ンイザデ面球非()力折屈進累:部用近)ンイザデ面球(部用近)ンイザデ面球(部用遠)ンイザデ面球(部用間中ンイザデ面球非()力折屈進累:ba図2ロートi.Q.?14バイフォーカルのデザインa:遠用重視のレンズ(Dレンズ).b:近用重視のレンズ(Nレンズ).LC択選のンイザデに眼両D用装をズンレ定測を)離距業作(力視方近と力視方遠るよに視眼両:正矯加追LC定決方処に目き利D用装をズンレに目き利非N用装をズンレ準基択選の数度入加と数度用遠択選を数度い近に値たし正補離距間頂を値正矯全完は数度用遠・)正補で数度面球価等を数度視乱のそ,は合場るあが視乱(択選を数度い近も最に数度入加たれさと要必に時査検力視は数度入加・図3ロートi.Q.?14バイフォーカルの処方手順表1ロートi.Q.?14バイフォーカルの物性,仕様Frequency?55Multifocal素材含水率FDA分類Dk値Dk/L値中心厚直径ベースカーブ球面度数加入度数デザイン光学設計設計Metha?lconA55%グループⅣ19.6×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)12.3×10-9(cm/sec)・(m?O2/m?×mmHg)0.159mm(球面度数-3.00D,加入度数1.00D)14.4mm8.7mm+4.00D~-6.00D(0.25Dステップ)+1.00D,+1.50D,+2.00D,+2.50DDレンズ(遠用重視タイプ),Nレンズ(近用重視タイプ)累進屈折力前面非球面・後面球面———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???て行う.本レンズは異なる2つのデザインがあり,加入度数も4種類あるため,多くの患者に対応することができるという利点があるが,処方変更を行う場合には,レンズデザイン,遠用の球面度数ならびに加入度数の変更をどのように行えばよいかという問題が起こりうる5).その参考として,手順を図4と図5に示す.3.臨床試験a.多施設による臨床評価試験2005年4月26日~6月22日の間に近見障害を訴える20名40眼(45~55歳)を対象に国内の3施設で臨床試験が行われた5).処方したDレンズは30枚,Nレンズは10枚で,これらのレンズの組み合わせは,D-Dが11例,D-Nが8例,N-Nが1例であった.年齢と検眼レンズによる加入度数および処方したレンズデザインの組み合わせを表2に示す.45~49歳の被験者(平均加入度数:+1.40±0.91D)に対してはすべてD-Dで,50~54歳の被験者(平均加入度数+1.91±1.19D)に対してはほとんどがD-DあるいはD-Nで,55~59歳の被験者(平均加入度数:+2.63±0.70D)に対してはD-Nで処方した.処方したレンズの遠用度数と加入度数を表3に示す.(11)Dズンレ更変=数度面球じ同=数度入加Dズンレ更変=数度面球じ同=数度入加Dズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Dズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Dズンレじ同=数度面球く強=数度入加Dズンレじ同=数度面球く強=数度入加Dズンレ更変=数度面球く強=数度入加Dズンレ更変=数度面球く強=数度入加点焦単に目き利遠方視に不満近方視に不満に目き利非Nズンレro点焦単LC利き目非利き目利き目非利き目図4D-Dの組み合わせの処方変更の手順Dズンレ更変=数度面球じ同=数度入加Nズンレじ同=数度面球じ同=数度入加Dズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Nズンレじ同=数度面球じ同=数度入加Dズンレじ同=数度面球じ同=数度入加ズンレNじ同=数度面球く強=数度入加Dズンレじ同=数度面球じ同=数度入加ズンレN更変=数度面球く強=数度入加利き目にDレンズor単焦点CL近方視に不満遠方視に不満非利き目に単焦点CLor両眼にDレンズDズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Nズンレ更変=数度面球じ同=数度入加Dズンレ更変=数度面球じ同=数度入加ズンレN更変=数度面球く強=数度入加Dズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Nズンレ更変=数度面球く弱=数度入加Dズンレ更変=数度面球く強=数度入加ズンレN更変=数度面球く強=数度入加利き目非利き目利き目非利き目図5D-Nの組み合わせの処方変更の手順———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.7,200645~49歳の被験者(平均加入度数+1.40±0.91)に対して処方したレンズの加入度数は+1.00Dが6枚,+1.50Dが4枚,同様に50~54歳の被験者(平均加入度数+1.91±1.19)に対しては,+1.00Dが1枚,+1.50Dが13枚,+2.00Dが10枚,55~59歳(平均加入度数+2.63±0.70)に対しては+1.50Dが2枚,+2.00Dが4枚であった.高年齢になるほど検眼レンズによる加入度数は強い度数を必要とし,処方したレンズの加入度数も強い度数を処方した.レンズデザインと加入度数の関係を表4に示す.不同視のため,非利き眼に低い加入度数を処方した症例以外は,レンズデザインに関係なく両眼に同じ加入度数を選択した.両眼視による遠方視力を図6に示す.処方時は1.0以上が90%,0.9~0.8が5%,0.7~0.6が5%であったが,再診時は1.0以上が95%,0.9~0.8が5%であった,両眼の近方視力を図7に示す.処方時は1.0以上が30%,0.9~0.8が45%,0.7~0.6が25%であったが,再診時は1.0以上が55%,0.9~0.8が25%,0.7~0.6が15%,0.5~0.4が5%であった.遠方視力,近方視力ともに再診時のほうがよかった.(12)表2年齢と検眼レンズによる加入度数および処方したロートi.Q.?14バイフォーカルのデザインの組み合わせ年齢(歳)眼数(眼)検眼レンズによる加入度数(D)デザインの組合せ(症例数)D-DD-NN-N45~49100.00~+2.50(+1.40±0.91)50050~54240.00~+3.50(+1.91±1.19)651*55~596+1.50~+3.25(+2.63±0.70)030計401181*近方視重視希望のため両眼にNレンズを処方.表4処方したロートi.Q.?14バイフォーカルのレンズの組み合わせと加入度数Dレンズ-Dレンズの組み合わせ年齢(歳)Dレンズ(枚)Dレンズ(枚)+1.00D+1.50D+2.00D+1.00D+1.50D+2.00D45~4950~5455~59300220040300220040計344344Dレンズ-Nレンズの組み合わせ年齢(歳)Dレンズ(枚)Nレンズ(枚)+1.00D+1.50D+2.00D+1.00D+1.50D+2.00D45~4950~5455~5900004101201*0031012計053143*不同視の非利き眼のため低い加入度数.表3処方したロートi.Q.?14バイフォーカルの遠用度数と加入度数遠用度数球面度数(D)眼数(眼)+3.75~+3.00+2.75~+2.00+1.75~+1.00+0.75~0.00-0.25~-1.00-1.25~-2.00-2.25~-3.00-3.25~-4.00-4.25~-5.00-5.25~-6.0020722411831加入度数加入度数(D)(眼)+1.00+1.50+2.0071914再診時1.0以上~0.8~0.6~0.4~0.2不明5%5%5%処方時n=2095%90%図6ロートi.Q.?14バイフォーカルによる遠方視力(両眼視)図7ロートi.Q.?14バイフォーカルによる近方視力(両眼視)再診時1.0以上~0.8~0.6~0.4~0.2不明5%30%25%処方時n=2055%25%15%45%———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???処方時および再診時における本レンズのセンタリングはすべて良好で,動きも良好であった(図8,9).経過観察中に本レンズの装用に伴う角結膜障害は1例も認めなかった.交換したレンズは7枚(14.9%)で,これらはすべて処方時の度数変更で,再診時に処方変更したものはなかった.経過観察中にレンズが破損した症例はなかった.レンズの中止例は1例もなかった.再診時に行ったアンケートでは,遠方から近方のすべての距離において満足度は高く,視線を動かしたときや階段の昇降時の見え方,明るさの違いによる見え方についても満足度は高く,総合的な遠方または近方の見え方に対して高い満足度が得られた(図10).装用感,乾燥感,くもり,ハンドリングについてもおおむね良好な結果であった(図11).全体の印象として,満足あるいは(13)良いややずれる不良n=40n=40100%100%再診時処方時図8ロートi.Q.?14バイフォーカルのセンタリング過剰やや過剰良好やや少なめ動きなしn=40n=40100%100%再診時処方時図9ロートi.Q.?14バイフォーカルの動き図10アンケート調査(見え方)遠方(3m以上)1m~2mの距離1m~50cmの距離近方(40cm~50cm)遠方から近方へと視線を移したとき階段の上り下り総合的な遠方総合的な近方明るいところ暗いところn=20満足普通不満足図12アンケート調査(全体の印象)満足やや満足普通やや不満不満n=2040%35%25%装用感乾燥感くもりハンドリングn=20良好普通不良図11アンケート調査(装用感など)図13アンケート調査(継続使用の意志)使いたい少し使いたいどちらとも言えないあまり使いたくない使いたくないn=2040%35%25%図14総合評価満足感矯正効果有効性著効75%有効25%極めて有効75%満足90%普通10%効果あり25%安全性有用性極めて安全100%有用25%極めて有用75%n=40———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006やや満足は75%で(図12),継続使用の希望は75%であった(図13).総合評価は,満足感,矯正効果,有効性,安全性,有用性のいずれにおいても,高い評価が得られた(図14).b.有効加入度数の測定遠近両用眼鏡を処方する場合には他覚的屈折値および自覚的屈折値,年齢から考えられる調節力をもとに検眼を行うと期待される遠方視力および近方視力が得られるが,遠近両用SCLの場合にはこれらのデータをもとに検眼しても期待した視力が得られないことがある.表示された加入度数が有効に働いていないことが一つの要因である2,7).遠近両用SCLを装用した状態で測定した近点距離は,遠近両用SCLの加入度数の効果があれば単焦点SCLを装用したときよりも短い値になる.たとえば,単焦点SCLを装用して近点が50cmであれば+2.00Dの加入度数の遠近両用SCLを装用すると近点が25cmになると予想する.横軸を単焦点SCL装用時の調節力,縦軸を遠近両用SCL装用時の調節力としてグラフにプロットすると,遠近両用SCLの加入度数の効果を知ることができる2)(図15).加入度数の効果が表示通りであれば,その表示値を切片とした傾き1の直線状にプロットされ,効果がまったくなければ,原点を通る傾き1の直線プロットされる.また,実際に働いた有効な加入度数は,遠近両用SCL装用時の調節力から単焦点SCL装用時の調節力を減じた値となるので,簡単にグラフ上から読み取ることができる.そこで,12例24眼について,PUSH-UP法によって測定した本レンズと同社の単焦点(14)6.06.00.0近用加入度数(表示値)単焦点SCL装用時の調節力(D)b-a:有効加入度数ba遠近両用SCL装用時の調節力(D)図15遠近両用SCLの有効近用加入度数a:単焦点SCL装用時の調節力,b:遠近両用SCL装用時の調節力,b-a:遠近両用SCLの有効近用加入度数.単焦点SCL(D)ロートi.Q.14?バイフォーカルDレンズ近用加入度数(表示値)+2.00D遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)ロートi.Q.14?バイフォーカルNレンズ遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)近用加入度数(表示値)+2.50D遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)n=14遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0図16単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時の調節力———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???SCL(ロートi.Q.?14アスフェリック)装用時の調節力を測定した結果を図16,有効加入度数の平均値を表5に示す.このように遠近両用SCLによる老視の矯正効果にはばらつきがあり,レンズに表示された加入度数が十分に働いていないことがある.これはレンズのデザインによって異なる2,7).c.立体視角の測定本レンズを処方した25例に対してNewStereoTestsを行った結果を表6に示す5).40cmにおける立体視角は,D-Dの組み合わせを行った群の平均値は眼鏡が70.8秒に対してD-Dは110秒,D-Nの組み合わせを行った群の平均値は眼鏡が66.2秒に対してD-Nは365秒,N-Nの組み合わせを行った群の平均値は眼鏡が95秒に対してN-Nは170秒と,左右で異なるレンズデザインを選択したD-Nが最も悪い結果であった.単焦点レンズを使用して,片眼を遠方,その反対眼を近方に合わせる方法をモノビジョン法というが,遠近両用レンズを使用した場合にはモディファイドモノビジョン法という.本レンズのD-Nの組み合わせはモディファイドモノビジョン法を行ったことになるが,立体視が悪くなることがある.d.波面収差の測定本レンズ(DレンズおよびNレンズ,遠用度数-3.00D,加入度数+2.50D)および同社の単焦点SCL(球面(15)単焦点SCL(D)ロートi.Q.14?バイフォーカルDレンズ近用加入度数(表示値)+2.00D遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)ロートi.Q.14?バイフォーカルNレンズ遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)近用加入度数(表示値)+2.50D遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0単焦点SCL(D)n=14遠近両用SCL(D)8.06.04.02.00.00.02.04.06.08.0図16単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時の調節力表5ロートi.Q.?14バイフォーカルの有効加入度数の平均値表示値+2.00D表示値+2.50DDレンズ0.85±0.64D1.45±0.82DNレンズ1.77±0.80D2.39±0.94Dn=14n=140.350.300.250.200.150.100.050NレンズDレンズ単焦点SCL***RMS(μm)図17単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時におけるコマ収差への影響(S3,瞳孔径4mm)Dunnetts?multiplecomparisontest***p<0.001.図18単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時における球面収差への影響(S4,瞳孔径4mm)Dunnetts?multiplecomparisontest*p<0.05.0.160.140.120.100.080.060.040.020NレンズDレンズ単焦点SCL*RMS(μm)図19単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時における全高次収差への影響(S3+4,瞳孔径4mm)Dunnetts?multiplecomparisontest***p<0.001.0.400.350.300.250.200.150.100.050NレンズDレンズ単焦点SCL***RMS(μm)表6眼鏡およびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時の立体視角眼鏡Dレンズ-眼鏡Dレンズ-眼鏡Nレンズ-DレンズNレンズNレンズ70.8秒110秒66.2秒365秒95秒170秒n=11n=12n=2正常立体視の合格基準:100秒以下.———————————————————————-Page8???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006度数-3.00D)を装用した7例14眼に対し,Hartmann-Shack波面センサー(KR-9000PW,TOPCON)を用いて瞳孔径4mmにおける高次波面収差解析を行った結果を図17~19に示す.コマ収差,球面収差および全高次収差のすべてにおいて単焦点SCL装用時に比べDレンズ装用時のほうが有意に増加し,網膜シミュレーション像においても単焦点SCL装用時に比べDレンズ装用時のほうがLandolt環は不鮮明になっており,収差量と相関する結果が得られた(図20).一方,コマ収差,球面収差および全高次収差のすべてにおいてNレンズ装用時の収差の変化は単焦点SCL装用時と同等で,網膜シミュレーション像はDレンズ装用時に比べNレンズ装用時のほうが単焦点SCL装用時に近い結果が得られた.Dレンズは中心光学部径(遠用度数)が2.3mmで,瞳孔径4mmで算出した遠用部の面積が4.15mm2(瞳孔径の33%),累進移行部を含めた遠用部以外の面積が8.41mm2(瞳孔径の67%)であるのに対し,Nレンズは中心光学部径(近用度数)が1.2mmで,瞳孔径4mmで算出した遠用部の面積が1.13mm2(瞳孔径の9%),近用部以外の面積が11.43mm2(瞳孔径の91%)である.Nレンズは中央の光学部の面積を狭くすることにより,高次収差に対する影響が小さくなっていると考えられる.近方の見え方だけでなく,中間から遠方までの見え方を考慮して設計されたNレンズは,波面光学的には遠近両用SCLよりも単焦点SCLに近い性質を示すものと考えられる.IIボシュロムソフレンズマルチフォーカル1.特徴a.デザイン同心円型,同時視型の遠近両用SCLで,中央が近用光学部,周辺が遠用光学部である非球面デザインで累進屈折力レンズとして働くが,2つの異なる光学デザインがあるのが特徴である.加入度数が+1.50D(LowAdd)のレンズは周辺部から中央部に向かってプラス度数が徐々に増加する(図21).加入度数が+2.50D(HighAdd)のレンズは周辺部から中央部に向かってプラス度数が増加するが,中心部はプラス度数が高く,その移行部が狭い(図22).これらの非球面形状は前面に施されており,後面は球面形状である.b.物性・仕様本レンズは非イオン性素材で,低含水率であるためFDA分類ではグループⅠに属する.Dk値は8.4×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg),Dk/L値は8.4×10-9(cm/sec)・(m?O2/m?×mmHg)である.中心厚は0.10mm(球面度数-3.00D,加入度数+1.50,+2.50D)で,レンズ径は14.5mm,ベースカー(16)図20単焦点SCLおよびロートi.Q.?14バイフォーカル装用時の網膜シミュレーション像NレンズDレンズ単焦点SCL近用部中間用部遠用部ab図21ボシュロムソフレンズマルチフォーカルのデザイン(加入度数+1.50D)a:正面図,b:屈折力分布.近用部中間用部遠用部ab図22ボシュロムソフレンズマルチフォーカルのデザイン(加入度数+2.50D)a:正面図,b:屈折力分布.———————————————————————-Page9あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006???ブは8.5mmと8.8mmの2種類である.球面度数は+6.00D~-10.00D(0.25Dステップ)で,加入度数は+1.50Dと+2.50Dの2種類である(表7).2.処方患者の調節力からレンズデザインを選択する.調節力の低下が軽い症例では加入度数が+1.50Dのレンズを選択する.このレンズで良好な近方視力が得られない場合には加入度数が+2.50Dのレンズを選択する.ロートi.Q.?14バイフォーカルと同様に,①両眼とも+1.50D②片眼に+1.50D,片眼に+2.50D③両眼に+2.50Dのいずれかの組み合わせを選択することで,多くの症例に対応することができると考える.3.臨床試験本レンズは厚生労働省に対して申請書を提出しているが,2006年5月現在では承認を得ていない.したがって,日本では本レンズの評価は明らかではないが,海外においては2002年にアメリカ,ヨーロッパ,カナダで発売されて以来,世界各地で高評価を得ている.アメリカで単焦点SCL(ソフレンズ59)を装用したモノビジョン法による老視矯正と本レンズを装用した老視矯正を比較評価する臨床試験の報告がある8).38例を対象とした試験で,本レンズを装用した両眼視によるハイコントラスト遠方視力およびハイコントラスト近方視力はともに1.0以上で,完全矯正眼鏡および単焦点SCLを装用したモノビジョン法とほとんど差はないが,ローコントラスト遠方視力およびローコントラスト近方視力は完全矯正眼鏡および単焦点SCLを装用したモノビジョン法よりも低下した(表8).本レンズを装用した立体視角の平均値は単焦点SCLを装用したモノビジョン法と比較して79秒低下した(表9).アンケート調査では76%の被験者が本レンズを,24%の被験者が単焦点SCLを装用したモノビジョン法をより良い老視矯正法として選択した.臨床試験中に本レンズの装用に伴う眼障害は認めなかった.おわりに高年齢化が進んで日本では適切な老視矯正を求める患者が増えている.屈折異常ならびに老視の矯正を目的としてウエダ眼科で眼鏡を処方した症例に対して,単焦点レンズと遠近両用レンズの割合を調べた結果を図23に(17)表7ボシュロムソフレンズマルチフォーカルの物性,仕様Bausch&LombSofLensMultifocal素材含水率FDA分類Dk値Dk/L値中心厚直径ベースカーブ球面度数加入度数デザイン光学設計設計Polymacon38.6%グループI8.4×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)8.4×10-9(cm/sec)・(m?O2/m?×mmHg)0.10mm(球面度数-3.00D,加入度数+1.50,+2.50D)14.5mm8.5mm,8.8mm+6.00D~-10.00D(0.25Dステップ)+1.50D(LowAdd),+2.50D(HighAdd)レンズ中心部近用光学部累進屈折力前面非球面・後面球面表8単焦点SCLおよびボシュロムソフレンズマルチフォーカル装用時の小数視力(平均値)完全矯正眼鏡を使用単焦点SCLを装用したモノビジョンボシュロムソフレズマルチフォーカルを装用ハイコントラスト遠方視力1.31.251.3ハイコントラスト近方視力1.11.11.0ローコントラスト遠方視力1.00.830.83ローコントラスト近方視力0.80.710.63(文献8より改変)表9単焦点SCLおよびボシュロムソフレンズマルチフォーカル装用時の立体視角所有眼鏡などを使用単焦点SCLを装用したモノビジョンボシュロムソフレズマルチフォーカルを装用158秒205秒126秒(文献8より改変)———————————————————————-Page10???あたらしい眼科Vol.23,No.7,2006示す.眼鏡においては遠用目的あるいは近用目的で単焦点レンズを処方した割合は92.3%で,遠近両用目的で遠近両用レンズを処方した割合は7.7%であった.調査期間は異なるが,同様に屈折異常ならびに老視の矯正を目的としてガス透過性HCLと2週間頻回交換SCLを処方した結果を図24に示す.眼鏡およびガス透過性HCLに比して2週間頻回交換SCLの使用者の処方割合が少ない.眼鏡やガス透過性HCLに比して2週間頻回交換SCLは若い人が使用している割合が多いので年齢を考慮した比較をしなければならないが,これらの結果より老視矯正を目的として処方された眼鏡およびCLの傾向をみることができる.ガス透過性HCLに比して2週間頻回交換SCLにおいて遠近両用レンズの処方割合が少ない理由としては,遠近両用2週間頻回交換SCLは種類が少ないことや,球面度数,加入度数などの規格が制限されていることに加えて,遠方ならびに近方の見え方が悪いこと,立体視が悪くなること,コントラスト感度が低下するため像が暗くなることなどの問題があげられる.特に見え方の質に対して高い要求のある人は満足してもらえないことが多い.遠近両用2週間頻回交換SCLとして今回開発されたロートi.Q.?14バイフォーカルならびにボシュロムソフレンズマルチフォーカルは独特のレンズデザインであるが,今後これらを使用した患者からどのような評価が得られるのかを詳しく調べる必要がある.各メーカーからつぎつぎと新しい遠近両用CLが開発されており,適切なレンズを選択すれば良好な見え方が得られる場合が多くあるのも事実である.われわれ眼科医は積極的に遠近両用CLによる老視矯正を試みるべきである.文献1)曲谷久雄:多焦点コンタクトレンズの現状と未来.あたらしい眼科7:999-1008,19902)植田喜一:遠近両用ソフトコンタクトレンズの特性.あたらしい眼科18:435-446,20013)植田喜一:遠近両用コンタクトレンズの処方.視覚の科学23:69-77,20024)植田喜一:老視矯正からの選択.日コレ誌47:93-102,20055)西巻賢一:ロートi.Q.?14バイフォーカルの紹介.日コレ誌48:52-55,20066)植田喜一:マルチフォーカルコンタクトレンズによる老視矯正.眼科プラクティス9,屈折矯正完全版,p109-114,文光堂,20067)柳井亮二,植田喜一,稲垣恭子ほか:同時視型遠近両用ソフトコンタクトレンズの有効加入度数について.日コレ誌48(3)(2006,印刷中)8)RichdaleK,MitchellGL,ZadnikK:Comparisonofmulti-focalandmonovisionsoftcontactlenscorrectionsinpatientswithlow-astigmaticpresbyopia.??????????????83:266-273,2006(18)単焦点レンズ92.3%遠近両用レンズ7.7%眼鏡レンズ3,176枚(2002.1.4~2003.12.29)図23遠近両用眼鏡の処方割合単焦点レンズ99.1%単焦点レンズ88.7%遠近両用レンズ0.9%2週間頻回交換SCL9,706枚(2004.4.1~2005.3.31)HCL560枚(2004.4.1~2005.3.31)遠近両用レンズ12.3%図24遠近両用CLの処方割合