———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006????0910-1810/06/\100/頁/JCLSエキシマレーザーによるphotorefractivekeratecto-my(PRK)が正常ヒト眼に初めて行われたのが1988年1),Pallikarisがlaser???????keratomileusis(LASIK)を発表したのは1989年2)であるが,このLASIKがPRKにとってかわり屈折矯正手術の主流に躍りでたのは1996~1997年頃のことである.屈折矯正手術が世界的に広く施行されるようになって約10年が経過したことになる.この間の手術装置や器具,手術手技の改良は目覚ましく,ノモグラムの発達もあって,手術成績は著しく向上し,術中合併症の発生率は低下するなど安全性も増した.最近では,波面センサーや補償光学の導入によるwaverfront-guidedLASIKや角膜トポグラフィーにリンクしたtopography-guidedLASIKといった個々の眼に対応したカスタム照射による治療も可能となっている.新たな手術手技として,laser-assistedsubepithelialkeratectomy(LASEK)やepipolis-laser????????kera-tomileusis(Epi-LASIK)3,4)のようなPRKとLASIKの中間的な手術法が考案されて,一部ではsurfaceabla-tionへの回帰がみられ,さらには有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:phakicIOL)といったレーザー手術以外の術式も発展してきている.このように屈折矯正手術のなかでもいろいろな術式が出現してきたために,その適応をどのように決定するか,どの術式を選択するかの判断が非常に重要になってきた.今回は,最近のさまざまな屈折矯正手術の適応についてまとめてみたい.屈折矯正手術のなかで,いまだに最も高い頻度で行われている術式はLASIKである.確かに,開発当初の-15Dや-20Dといった強度近視も矯正可能か,といった期待や幻想は打ち砕かれ,さまざまな臨床データや研究の蓄積により,LASIKによる矯正の限界がみえてくると同時に,phakicIOLという術式の発展もあり,その適応範囲はさらに狭まりつつある.しかし,近視人口の多くを占める軽度から中等度の近視あるいは近視性乱視を広くカバーし,非常に精度と安定性のよい矯正効果(51)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載?監修=木下茂大橋裕一坪田一男75.最近の屈折矯正手術の適応堀好子南青山アイクリニック屈折矯正手術にもさまざまな術式が現われ,主流は相変わらずLASIKであるものの,その適応範囲は次第に狭まってきた.LASIK,surfaceablation,phakicIOLなどから,個々の症例に応じた術式の検討・選択が必要である.表1LASIKの安全基準1)レーザー照射後の角膜フラップ下実質ベッド厚は250?m以上残す2)術後の中心角膜厚は最低400?m以上とする表2LASIK適応の目安1)20歳以上(保護者の完全な同意があれば18歳以上)2)屈折度数が安定していること3)-10~-12D以下の近視,-5~-6D以下の乱視+3~+4D以下の遠視(ただし,角膜厚や角膜形状などの条件により異なる)4)矯正視力1.0以上5)説明を十分に理解していること表3LASIK不適応の目安LASIKを行わないほうがよい症例1)円錐角膜2)角膜ヘルペスの既往がある3)前眼部・後眼部の急性炎症4)明らかな瞳孔偏位5)妊娠中6)向精神薬を服用している精神疾患患者LASIK施行にあたって特別な注意が必要な症例1)角膜形状の不整(突出部位や菲薄部位がある)2)内皮細胞の減少(内皮細胞密度が1,500/mm2以下)3)単眼の患者4)閉瞼異常5)全身疾患(膠原病,糖尿病など)がある6)他の眼疾患(緑内障,白内障,網膜疾患など)がある7)病的なドライアイ8)理解力不足9)極端な角膜曲率半径(40.0D以下,48.0D以上)10)瞼裂狭小,ディープセットアイ,小眼窩11)他の屈折矯正手術の既往がある———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.23,No.8,2006を短時間に,術後疼痛などのストレスも最小限のレベルで得られることを考えると,今後もLASIKが屈折矯正手術の主流として施行されていく可能性は高い.そして,通常のLASIKの適応から外れるもの,何らかの理由でLASIKではリスクを伴い,それを他の術式で回避できる可能性が高い場合に,他の術式が選択されるという状況が今後しばらくは続くであろう.では,どのような症例がLASIKの適応で,どのような場合に適応から外れるのだろうか.表1にLASIKを施行する際の安全基準,表2にLASIK適応の目安を示す.術後に医原性円錐角膜ともよばれるkeratectasiaを起こさないためには,一般に表1の安全基準を満たす必要があると考えられている.表2は,標準的な角膜厚や形状を前提とした目安であり,530?m程度の平均的な中心角膜厚があれば-10D程度の矯正が可能ではあるが,最近では矯正度数が大きくなるほど術後収差の増大による夜間視力の低下やコントラスト感度の低下など,視機能の質的な低下をきたすことが明らかになっている.矯正度数が大きくなるほど屈折の戻りや低矯正になる確率も高い.-8~-9D以上の強度近視や,角膜厚が薄めで安全基準内での完全矯正が困難な場合には,phakicIOLという選択肢もあることを説明し,患者にとっての手術のメリット・デメリットを十分に検討することが必要であろう.表3にはLASIK不適応の目安を示す.この表3のLASIKという単語は,そのまま角膜(あるいはエキシマレーザー)屈折矯正手術に置き換えてもよいかもしれない.角膜の疾患や他の眼疾患などがあれば,その疾患の治療が最優先であり,手術は不適応である.表3にはないが,スポーツなどで眼に対する打撲の危険性が高い場合,特に格闘技選手などに対しては,角膜フラップ創の脆弱性を考慮して,PRKやEpi-LASIKなどのsur-faceablationを選択する.小角膜径,瞼裂狭小,極端にスティープまたはフラットな角膜などの場合,マイクロケラトームやエピケラトームなどの手術器具が安定して作動しないことも想定されるので,危険度が高いと判断した場合にはPRKやLASEKなどを選択する.再発性上皮?離のような上皮接着の異常がある場合は,PRKが第一選択である.最近surfaceablationとして比較されるPRK,LASEK,Epi-LASIKの優劣評価はまだ定まっていないが,上皮がフラップ状にレーザー照射面をカバーするメリットはあまりなさそうというのが実情である.不完全な上皮が残ることによって生じる上皮創傷治癒の遅れやヘイズ発生などのデメリットも認められており,ステロイド点眼を数カ月間使用しなければならないことへの配慮も必要である.ただ,フラップ作製に伴う収差の変化やフラップ創の脆弱性などを回避できるメリットはあり,今後の改良を期待したい.文献1)McDonaldMB,LiuJC,ByrdTJetal:Centralphotore-fractivekeratectomyformyopia.Partiallysightedandnormallysightedeyes.?????????????98:1327-1337,19912)PallikarisIG,PapatzanakiME,StathiEZetal:Laserinsitukeratomileusis.???????????????10:463-468,19903)PallikarisIG,NaoumidiII,KalyvianakiMIetal:Epi-LASIK:comparativehistologicalevaluationofmechanicalandalcohol-assistedepithelialseparation.???????????????????????29:1496-1501,20034)PallikarisIG,KalyvianakiMI,KatsanevakiVJetal:Epi-LASIK:preliminaryclinicalresultsofanalternativesur-faceablationprocedure.???????????????????????31:879-885,2005(52)☆☆☆