———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSより適切な両眼視の概念を導く必要があると思われる.左右の網膜に端を発する視覚情報は,互いに独立した伝達系で運ばれ,外側膝状体まではまだ相互乗り入れをしていない.さらに,第一次視覚野(以下,V1)では,眼優位コラムが存在し,ここでも隣接しているものの左右眼からの情報は個別に扱われている.しかし,V1には同時に両眼からの入力に対し反応するニューロンも存在していることがサルで報告されている.そして,この両眼から入力を受けるニューロンは,サルではV2,V3,V3A,V4,V5,MST(medialsuperiortemporal),CIPS(caudalintraparietalsulcus),LIP(lateralintra-parietal),IT(inferiortemporal),頭頂葉とさらにFEF(frontaleye?elds)にも発見されている1~10).両眼視ゆえに生じる視野闘争は,心理学実験では不自然に左右の各眼に別の絵を見せるなどして生じさせるが,実は日常的に見ている視覚像のなかにも,片眼にだけ遮閉されている部分などの左右眼で著しく異なっているところが存在し,視野闘争に類似した現象が日常的にも部分的に生じている.しかし,われわれはそのような部分に通常気がつかず,全体を自然な風景として認知している.したがって,このメカニズムの解明は,視覚メカニズムの理解にとって非常に重要であると考えられる.右眼と左眼に別の絵を同時に見せると,5秒程度の間隔で右眼に提示した絵と左眼に提示した絵が交互に見える.これが視野闘争であるが,これは長い間,右眼と左眼の入力が互いに闘い合ってその一方が見えているのだはじめに眼科臨床では,「両眼視」と「立体視」は切っても切れない関係と考えられている.しかし,これらの用語は決して同義ではなく,生理学や心理学の領域では,明らかに別の用語として使われている.「両眼視」はまさしく両眼でものを見た場合の視機能を指す.両眼視差による奥行き知覚のみならず,左右眼で異なった対象を見た場合の知覚の入れ替えである視野闘争,視野の拡大,盲点の相互代償,解像力の増大も両眼視の大きな特徴である.一方,「立体視」は対象が三次元的に奥行きをもって見える視機能である.両眼視差が立体視のための重要な手がかりになっていることは確かであるが,それが唯一無二の手がかりというわけではなく,それ以外にも運動視差,絵画的手がかり,肌理の勾配,さらには調節や輻湊などさまざまな奥行き感覚の手がかりがあり,両眼視差はそのなかの一つという位置づけになる.ところが眼科では,斜視・弱視治療の経過観察において,患者の両眼視機能のゴールとして立体視を設定していることが多いため,両眼視と立体視を混同している医師が少なくないのではないだろうか.同時視,融像,立体視の3点セットは,両眼視機能の質的評価にとって重要な古典的概念であり,これらの段階的発達過程(あるいは処理過程)は,斜視・弱視治療においては病態メカニズムの理解の助けになっている.しかし,本質的な視覚の変容そのものについては,いまだ推測の域を出ていないため,生理学や心理学などの最新の知見を参照し,(15)???*1SatoshiNakadomari:東京慈恵会医科大学眼科学講座*2YoichiroMasuda:東京慈恵会医科大学眼科学講座/スタンフォード大学〔別刷請求先〕仲泊聡:〒105-8461東京都港区西新橋3-25-8東京慈恵会医科大学眼科学講座特集●もっと知りたい,斜視・弱視あたらしい眼科23(6):713~719,2006FunctionalMRIでみる両眼視機能????????????????????????????????????????????????仲泊聡*1増田洋一郎*2———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006と考えられてきた.しかし,Logothetisが巧みな実験で,そう簡単な話ではないということを明らかにした11).彼は,Aという絵とBという絵を右眼にABABABA-BA…と速い周期で提示し,同時に左眼にBABA-BABAB…と同じ速さで提示した.一度に左右眼に見える絵は常にAとBのそれぞれであるという点は,いわゆる視野闘争を示すそれまでの実験と変わらなかったが,右眼と左眼の入力が互いに闘い合ってその一方が見えているのであれば,どちらの眼で見ているときであってもAとBが速く入れ替わって見えるという見え方に違いはないはずであった.ところがこの被験者には,Aの絵とBの絵が5秒程度ずつ交互に見えたのであった.すなわち視野闘争とは,右眼と左眼の闘い合いではなかったのだ.その鍵はほかならぬ脳のなかに存在しているはずである.このような視野闘争が生じる背景に,片眼からの入力を抑制するという斜視でよく認められる抑制に似た現象が生理学的にも生じているということがわかる.したがって,視野闘争のメカニズムの解明は,心理学的な興味だけでなく,斜視患者の視機能の解明においても重要な役割をもっていると考えられる.さて,単眼で見た場合と両眼で見た場合の違いとしては,両眼視差,視野闘争以外にも,視野の拡大,盲点の相互代償,解像力の増大つまり視力の向上といった現象を経験できる.これらについて考えてみても,両眼視の研究は,そのターゲットを脳機能に求めざるを得ないものばかりである.近年,非侵襲的に脳機能を研究する方法が発展してきており,そのうち時間的にも空間的にも分解能が比較的良い方法としてfunctionalMRI(mag-neticresonanceimaging)が注目されている.本稿では,このfunctionalMRIについて概略を述べ,これを用いて両眼視機能がどのように研究されてきているかについてその一部を紹介する.IFunctionalMRIとは脳の神経が活動するとそのエネルギーを補充するようにその周囲の毛細血管が拡張し,局所的に血液が集まる.この現象は,脳表に近赤外線を当てて,その吸光率を測定してみると明らかに存在していることがわかる.この神経活動と血液動態の変化の間を結ぶ生理学的メカニズムについては,まだ明らかにはなっていないが,活動する神経の周囲に血液が集まるという現象は間違いなく,血液には磁場に影響を及ぼす鉄分子が多く存在していることから,MRIで記録された信号に変化が生じるということは想像に難くない.このことに最初に気がついたのは,当時ベル研究所にいた小川誠二氏であった.彼は,この現象をbloodoxygenationleveldependente?ect(BOLD効果)とよび,T2*とよばれる撮像条件でこの効果が最大となり,これで撮像した脳画像から,脳の神経活動を可視化できるということを1990年に報告した12).このBOLD効果を利用して脳機能を測定する方法が,functionalMRIである.まだその発見から15年しか経っていないが,この手法を用いた研究報告はすでに数えきれないほどになっている.本法の時間分解能は,神経が脱分極してからBOLD信号がピークに達するまでに4~5秒もかかるため良いとはいえず,複数の大脳領野の発火順序を決定する根拠として,この方法を用いることは不適切である.既報のなかにはBOLDの信号変化率や有意水準を指標として神経の活動量を定量化しようとする試みが少なくないが,発見者の小川氏自身もこれを過信してはならないと述べている.このように定量性には現時点で問題を残しているfunctionalMRIではあるが,定性的にはすばらしい知見を無数に示してきている.特に視覚領域の研究は,結果が明らかであることから,報告数も多い.最近のテクノロジーの進歩により,その空間分解能が改善され,どこまで細かい現象を捉えることができるかを検証する実験が行われている.HubelとWieselのV1における眼優位コラムの発見は,視覚科学における20世紀最大の発見と考えられる.FunctionalMRIを用いてヒトの視覚皮質でこれを捉えた研究がある.このfunctionalMRIの空間分解能は,1mm以下のコラム構造を示した点で評価できる.1997年のMenonによる最初の報告には,賛否両論があった.しかし,理化学研究所のChengらは,高磁場装置を用いてこの再試に成功し,再現性を確認することでfunc-tionalMRIの高空間分解能の可能性を示した13,14).視覚領域におけるfunctionalMRIの最も有用な点は,ヒトの視覚野の細分類が可能であることであろう.(16)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006???Travelingwave法という,固視点を中心に徐々に拡大するリングと回転する扇形の視覚刺激が視覚野に作り出す周期性の信号変化からその網膜部位再現を明らかにする方法により,V1とV2,V2とV3,そしてさらに高次の視覚野を区分けすることができる.この方法は,Engelらにより提唱された後,多施設で発展し,今や後頭葉のほとんどの領域がこの方法を用いて区画化されるようになった15~17).動物を対象とした研究と比べ,ヒトの研究では,脳のどの領域がどのような働きをもっているかを記述する際に,単に脳溝や脳回の位置で規定するよりも,機能的に区画された視覚野を基準にしたほうが,個体差が少なく本質的な議論を行うことができるという点で,この方法の発明の意義は大きい.本稿のなかでも視覚野の名称が多数記述されているが,どの部分を意味しているかについてはその都度,図1を参照していただきたい.IIFunctionalMRIで調べられた両眼視機能これまで両眼視機能についてもfunctionalMRIを用いた研究が多数存在している.ここではまず,両眼視差からの奥行き知覚に関連した知見について言及する.そして,それに関連して両眼視差以外の手がかりによって生じる奥行き知覚に関わる知見についても紹介したい.筆者らは,視野の左下1/4の領域にだけ,両眼視差からの奥行き知覚を生じない症例を経験した18).その患者は,Titmusstereotestで,ハエの背中を固視すると,右側の羽は浮いて見えるのに左の羽は浮いていないと訴えた.詳しい検査の結果,左下視野のみに限定した奥行き知覚異常であると診断した.この症状は,視差の検出が部分視野内で不可能になっているということを示している.そこで,この症状をもとにして視覚刺激を作成し,functionalMRI実験を行った19).図2は,これに用いた視覚刺激である.左側の刺激では,田の字型の黄色の枠の中に円が黄色で描かれている.しかし,右側の刺激では,左下の円だけは赤と緑で描かれている.これらの円はそれぞれ一定速で左右に揺れている.赤と緑の円も同じ速さで揺れているが,この2つの動く方向は相反している.つまり,この視覚刺激を赤緑のフィルター眼鏡でみると,片眼で観察したときは4つすべての円が左右に揺れて見えるが,両眼で見た場合は左下の円だけが田の字型の枠の平面の前後を視線方向に揺れて見えることになる.その一方で,左側の刺激は,両眼で見てもす(17)図1FunctionalMRIで区分された視覚野各々の図は,頭部MRIから大脳皮質を抽出してレンダリングした右脳の3D画像上に各視覚野を色分けして示したものである.左上は内側面,右上は外側面,左下は後面,右下は下面から見た画像である.V1の位置は,後頭葉の鳥距溝の位置にほぼ一致している.(文献17より許可を得て転載)V1V2V3V3AV3BV7hMT+hV4VO-1———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006べての円が左右に揺れて見えるだけである.すなわち,左下視野内の視差情報を変化させた課題ということができる.そして,4つとも黄色で描いた左右に揺れる円を見た場合と,左下の円だけ前後に揺れる場合との間で脳活動を比較することにより,左下の視野内で視差から奥行きを感じる場合に賦活する脳内部位が明らかになるのではないかと考えた.そして,その活動部位が,前述の左下視野内の立体視異常を有する患者の病巣と重なるかどうかを検証した.その結果,図3のごとく,活動部位は右後頭葉内側上部に限局していた.そして,そこは,まさにその症例の病巣と一致していたのであった.この部位は,直接確認してはいないが,位置からいってV3またはV3Aにあたる領域と考えられる.今後,同様の実験を視覚野マッピングを行ったうえで再試すること,そして同患者の視覚野マッピングを行うことでさらに詳細な部位決定を行うことができると考えられる.Backusらは,ランダムドットステレオグラムを用いて,面の浮き上がりに関連した脳活動を捉えた.彼らは,視覚野マッピングをベースにどの領野でその活動が大きいかを丹念に調べ,その結果,V3Aに最も強い応答を検出した20).西田らも,ランダムドットステレオグラムを用いて,円錐状の奥行きを提示して,平面の円盤に比べ有意に活動している部分を求めた.その結果,後頭葉上部から頭頂葉の上頭頂小葉に活動部位を見いだし,それらは左半球よりも右に優位であった21).両眼視差は,左右眼の位置の違いにより,網膜に投影される映像が若干左右で異なることから生じる.これは眼球の位置と物体の位置で一義的に決まる両眼視差であり,これを絶対視差とよぶ.それに対し,2つの物体が重なって存在し,それらのそれぞれの絶対視差の差でそれら2つの位置関係が理解できるような場合,この差は相対視差とよばれている.これまで,サルの研究では,絶対視差はV1で,相対視差はV2で処理されることが推定されている22,23).図4に示したように,視線方向に(18)図3FunctionalMRI実験による左下視野視差刺激に関連した脳部位と左下1/4視野にのみ視差からの奥行き知覚異常をきたした患者の脳左側は,functionalMRI実験による左下視野視差刺激に関連した脳部位で,標準脳上に赤く表した.一方,右側は,左下1/4視野にのみ視差からの奥行き知覚異常をきたした患者の頭部MRIから脳をレンダリングした3D画像である.右上部後頭葉に限局した病巣とfunctionalMRI実験で得られた反応部位が一致していることがわかる.図2左下視野内の視差による奥行き知覚に関連する脳部位を見つけるために行ったfunctionalMRI実験で用いられた視覚刺激左側の刺激では,田の字型の黄色の枠の中に円が黄色で描かれている.しかし,右側の刺激では,左下の円だけは赤と緑で描かれている.これらの円はそれぞれ一定速で左右に揺れている.赤と緑の円も同じ速さで揺れているが,この2つの動く方向は相反している.つまり,この視覚刺激を赤緑のフィルター眼鏡でみると,片眼で観察したときは4つすべての円が左右に揺れて見えるが,両眼で見た場合は左下の円だけが田の字型の枠の平面の前後を揺れて見えることになる.その一方で,左側の刺激は,両眼で見てもすべての円が左右に揺れて見えるだけである.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006???2点が存在して,両眼がその奥の点に向いている場合,手前の点の網膜上に投影される位置がずれて絶対視差が生じる.この場合,2点の視差の差である相対視差は手前の点の絶対視差に一致する.ところが,2点の中央に両眼が向いている場合は,2点ともに絶対視差が生じる.しかし,この場合も2点の相対視差は不変である.すなわち,空間内の2点間の位置関係をより直接的に意味しているのは,絶対視差ではなく相対視差ということになる.Neriらは,各視覚野が,絶対視差と相対視差に対してどのように順応するかを調べた24,25).その結果,背側路であるV3A,V5/MT(hMT+の一部),V7では,絶対視差に対しての順応が生じ,腹側路であるV4(hV4),V4a/V8(VO-1)では絶対視差と相対視差の両方に対しての順応が生じ,初期視覚野であるV1,V2,V3では,どちらにも順応がわずかしか生じなかったという.Neriは,これまでのサルとヒトの研究からV1,V2,V3に入力された両眼視差情報が,V3A,V5/MT,MST(hMT+の一部),V7などの背側路と,V4,IT,V4a/V8などの腹側路に分かれ,おもに背側路ではよせ運動を起こす経路,腹側路では三次元知覚のための経路となると推測している.両眼視差によらないヒトでの奥行き知覚は,function-alMRIを用いてParadisらが後頭葉上部に,乾らが運動前野と頭頂葉に,Mooreらが後頭葉外側面に活動を認めている26~28).Paradisらは,ランダムドットが立体の表面にあってそれが回転しているときに見られるような秩序だった動きをする場合,われわれがそこに立体像を見ることができるということ(structurefrommotion)に注目し,ランダムドットのランダムな動きを見たときと比べ,立体を知覚したときの活動をfunc-tionalMRIで見いだした.彼らは,視覚野の同定を行っていなかったので後頭葉上部領域と記載したが,V3およびV3Aがそれに相当すると推定している.乾らは,ネッカーキューブとよばれる多義図形を用いて,それが立体的に見えるときとそうでないときの違いに注目して奥行き知覚に関連した領野を特定した.しかし,彼らの結果にみられた反応はあまりに広く,そのうちのどこがどういう働きをもっているかを知るにはさらなる研究が必要である.Mooreらは,無意味な立体像のグレースケール画像とそれを白と黒に二値化した画像を用いてfunctionalMRI実験を行った.無意味図形の二値化画像は,通常は立体としては知覚されず,無意味な平面画像と知覚される.しかし,立体的に描かれたグレースケール画像を見た直後にこれをみると,その立体に強い光が当たって日向と日陰が強いコントラストで表現されているような立体として知覚可能となる.彼らは,この現象を利用して,まったく同じ画像を見ていながら,片方は平面に,そしてもう一方は立体に見えるように実験を組み,その違いがどこに生じているかについて検討した.その結果,後頭葉外側面に活動を認めた.これらの奥行き認知は,いずれも両眼視差を必要としない.単眼の人でも同様の反応があり,おそらくそのような人は,こういった手がかりを日常で利用しているに違いない.しかし,いずれも両眼視差による奥行き知覚に関連する領域のそばにその活動部位が認められている点が興味深い.奥行き感覚の手がかりは,これら以外にも多数存在しており,複雑に関係し合っているものと推定される.これまではサルの研究を積み重ね,それをヒトに照らし合わせ,ヒトでの脳機能は推測の域をでない部分が多くあった.しかし,functionalMRIによってサルでの知見のヒトにおける検証ができるようになっ(19)図4絶対視差と相対視差両眼が奥の点に向いている場合,手前の点が網膜上に投影される位置はずれて絶対視差が生じる.この場合,2点の視差の差である相対視差は手前の点の絶対視差に一致する.ところが,2点の中央に両眼が向いている場合は,2点ともに絶対視差が生じる.しかし,この場合も2点の相対視差は不変である.すなわち,空間内の2点間の位置関係をより直接的に意味しているのは,絶対視差ではなく相対視差ということになる.(文献24より改変して転載)01相対視差絶対視差-1/21/2———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.23,No.6,2006た.さらには,サルとは異なった部分やサルで確認されていない部分がしだいに判明してきた.今後,MRI装置の改良や視覚刺激の工夫によって,両眼視の分野でも新たな知見が発見され臨床に大いに貢献することは想像に難くない.おわりに以上のように述べてくると眼科医としてどうしても気になる点が残る.斜視の患者の脳内表象はどうなっているのか,ということである.網膜異常対応の弱視眼における皮質への投射と健眼網膜との線維連絡はどうなっているのか.間欠性外斜視や交替性上斜位の大雑把な両眼視の生理学的根拠はいかなるものか.斜視における抑制のメカニズムなど大脳にその解を求めざるをえない問題が,斜視と弱視の領域には多数残されている.同様にして片眼に暗点のある患者の両眼での視覚はどう修正されているのであろうか.これらの点を調査するにはより包括的に脳機能を観測する方法が必要になるであろう.その点,functionalMRIは脳全体にわたる局所の応答を同時に見ることができるという点ですぐれている.しかし,functionalMRIの撮像では,頭部が固定されており,眼前に設定できる装置には大きさと磁性の制約が存在する.その制約条件の範囲内で両眼に任意の画像を分離提示したり,同時提示したり,眼位をモニターすることがfunctionalMRIによる両眼視機能測定には必要になってくる.これが,この領域の研究を困難にしている原因であると思われる.しかし,それよりも大きな「固定観念」という制約をわれわれ眼科医はもっているのではないだろうか.両眼視差が利用できないと奥行きが判断できない,抑制は片眼の視覚全体に生じている,奥行き感覚が視野の中心から等方向性に存在しているなどと思い込んだりしていないだろうか.そういう根拠のない固定観念を振り払って,もっとフレキシブルに,われわれはどのように見えるのか,どうして見えるのかについて日頃からよく考えていかなくてはいけないと思う.文献1)HubelDH,WieselTN:Stereoscopicvisioninmacaquemonkey.Cellssensitivetobinoculardepthinarea18ofthemacaquemonkeycortex.??????3:41-42,19702)MaunsellJH,VanEssenDC:Functionalpropertiesofneuronsinmiddletemporalvisualareaofthemacaquemonkey.II.Binocularinteractionsandsensitivitytobinoc-ulardisparity.??????????????49:1148-1167,19833)PoggioGF,GonzalezF,KrauseF:Stereoscopicmecha-nismsinmonkeyvisualcortex:binocularcorrelationanddisparityselectivity.??????????8:4531-4550,19884)BurkhalterA,VanEssenDC:Processingofcolor,form,anddisparityinformationinvisualareasVPandV2ofventralextrastriatecortexinthemacaquemonkey.???????????6:2327-2351,19865)TairaM,TsutsuiKI,JiangMetal:Parietalneuronsrep-resentsurfaceorientationfromthegradientofbinoculardisparity.??????????????83:3140-3146,20006)GnadtJ,MaysL:Neuronsinmonkeyparietalarealiparetunedforeye-movementparametersinthree-dimen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