———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.5,2007???0910-1810/07/\100/頁/JCLS「Freakonomics」は2005年に出版されるや否や人気を集めた「経済学」の本ですが,タイトルの通り(freakは変人の意味),一般的な意味での経済学について書いたものではありません.アメリカの経済学者とジャーナリストがコンビで執筆していますが,従来あまり学問的に取り上げられたことのない日常生活やニュースで話題になったトピックを分析し,一般人(素人)にも面白く読めるよう解説した短いストーリーを集めています.そして,この解説は一般常識を引っくり返すようなもので,読後は世の中を少し違った目で見るようになりました.国際的にもベストセラーになり,たくさんの読者,ファンから寄せられたコメントや間違いの指摘に基づいて改訂・増補版が2006年に出版されました.2006年5月には日本語版も出ており,今回「眼科医にすすめる100冊の本」に紹介させていただきました.まず目につくトピックは,第1章「学校の先生と相撲の力士,どこがおんなじ?」です.のっけから日本の相撲の話しが登場するので,日本に住むアメリカ人としてはぜひ読んでみたいと思いました.あるアメリカの学校では,授業内容を良くするために生徒の試験成績を教師の給料に反映するようにしたそうです.しかし結果的には,自分の給料が上がるように,生徒に試験の解答を教えるなどズルをする教師が出てきました.集めたデータを客観的に分析すると,どうやら相撲の八百長(があったとすれば)と同じ現象が起きているらしいのです.力士の場合,本場所で8勝7敗の勝ち越しが非常に大きなモチベーションになります.日本でもときどき話題に上ることですが,著者らは本場所の勝敗分析を行って,7勝7敗から勝ち越しをするために力士の間で何らかの取引が行われているということを経済学的に証明しました.どの世界でも,人の行動にはすべて「経済」の力が働いています.経済は,普通お金に関係したものとして捉えられますが,他のポイントもあるようです.八百長はよく言われていることで,多くの人がそうだろうと思っています.とはいえ,このような不正行為を証明できるのが経済学のすごいところだと思います.このように,第1章から第6章まで,「変人(freak)が考える経済学」のトピックを興味深く次から次へと紹介していきます.医学からは遠い話と思いがちですが,実は病院の中のさまざまな出来事や人間関係にまで応用できるかもしれません.個人的には,後期研修医がなぜ大学病院より民間病院を選ぶかについて,著者のレヴィット氏とダブナー氏に依頼し,彼らの独特な分析に基づき,この傾向に歯止めをかけるべくぜひともアドバイスを貰いたいところです.本書のトピックに共通するのは,どの人も,「動機(インセンティブ)」により行動するということです.動機はお金であったり地位であったりとさまざまですが,いずれにしてもメリットが欲しい(またはデメリットを回避したい)と思って職場を選び,他人と付き合い,ものを買うなどの行動をするのです.動機を分析すれば,人の行動が非常に解りやすいような気がします.「眼からウロコ」のエピソードが満載なので,ぜひお薦めします.(105)■5月の推薦図書■ヤバい経済学─悪ガキ教授が世の裏側を探検するFreakonomics:ARogueEconomistExplorestheHiddenSideofEverythingスティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー著望月衛訳(東洋経済新報社)シリーズ─73◆岡田アナベルあやめ杏林大学医学部眼科☆☆☆