———————————————————————-Page10910-1810/06/\100/頁/JCLSに述べたい.I眼球光学系の収差の変化と非球面眼内レンズ光が角膜を通過するときには球面収差が生じる.若年正常人ではこの角膜で生じた球面収差を,水晶体の非球面性が補正している(図1a).加齢に伴い,眼球の収差はコマ様収差,球面様収差ともに増加する.そのなかで,加齢に伴うコマ様収差の増加はおもに角膜のコマ様収差の増加が原因で生じ(図2),一方,加齢に伴う眼球の球面様収差の増加は,角膜とは相関せず(図3),おもに水晶体の球面様収差の増加により生じる(図4).この水晶体の球面様収差の増加は,白内障によって生じる水晶体の形状変化により生じ,角膜の収差の補正が不十分になる(図1b).また,白内障手術時に球面眼内レンズはじめにいわゆる後房型の眼内レンズが主流になって,すでに20年が経過しようとしている.その間に白内障手術関連の技術は格段の進歩をとげた.手術方法としては,手術用顕微鏡,超音波乳化吸引術機器,CCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)に代表される術式,粘弾性物質や抗炎症薬などの薬剤が開発,導入された.また,白内障手術後眼の評価も,視診による主観的方法に,スペキュラーマイクロスコープによる角膜内皮細胞数,パキメーターによる角膜厚,フルオロフォトメーターによるバリア機能,レーザーフレアセルメーターによる前房内炎症,角膜形状解析装置による角膜変形,Scheimp-?ugカメラによる後発白内障や眼内レンズの位置の測定など,機器による客観的評価方法が加わり,詳細なる検討ができるようになった.手術効果に関しては,裸眼,矯正視力に,コントラスト感度の測定などが加わり,詳細に検討ができるようになっている.このように,手術方法,客観的術後眼評価法,術後視機能評価法の開発などにより,白内障手術後の水準の高い結果を目指すことが可能となった.最近,新しい眼球光学系の評価方法として,波面収差解析法が加わった.この方法により,収差というヒト眼における机上の概念が臨床的に解析できるようになり,さらにその結果を利用して,収差を減少させる新しいデザインの眼内レンズ,非球面眼内レンズが開発された.本稿では,この収差に着目した眼内レンズの効果を中心(19)???*KazunoriMiyata:宮田眼科病院〔別刷請求先〕宮田和典:〒885-0051都城市蔵原町6-3宮田眼科病院特集●白内障手術アップデート2006あたらしい眼科23(4):441~445,2006最近の眼内レンズ:非球面眼内レンズについて????????????????????????????????宮田和典*図1加齢と収差の変化a.若年者b.高齢者c.球面IOL挿入眼d.球面収差補正IOL挿入眼———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006が挿入された場合,水晶体による球面収差の補正は白内障を伴った水晶体同様,角膜の収差の補正は不十分で,やはり眼球光学系における収差は若年時に比較して増加している(図1c).そこで若年者の水晶体の収差補正機能を,眼内レンズにもたせたのが非球面眼内レンズである(図5).具体的には,正常人の角膜球面収差と眼球全体の収差を測定し,水晶体のもつ非球面性を算出し,眼内レンズに非球面性をもたせている.メーカーによって,眼内レンズ使用後の眼球全体の収差を若年者の収差としたり,収差が最小になるようにしたり,とねらいは若干異なる.これにより,非球面眼内レンズ眼では,若年眼同様の収差補正が行われる(図1d).II非球面眼内レンズの臨床成績アクリル素材の非球面眼内レンズと従来の球面眼内レンズの臨床成績を比較してみると(宮田眼科病院データ,ZA9003AMOvsAR40eAMO),裸眼視力,矯正視力,コントラスト感度など,従来の術後視機能は同等であった.ZA9003は球面眼内レンズAR40eに非球面性をもたせた眼内レンズであるため,臨床成績に差がないのは肯ける.しかし,従来法では非球面眼内レンズの優位性も得られていない.そこで,他覚的に波面収差解析を行い,術前と術後1カ月を比較すると,角膜が収差の変化の主体のコマ様収差では術前後の変化も,両眼内レンズ間の(20)r=0.347,p<0.00010.70.60.50.40.30.20.101020304050607080角膜コマ様収差(?m)年齢(歳)図2年齢と角膜コマ様収差の相関r=0.168,p=0.05510.40.30.20.101020304050607080角膜球面様収差(?m)年齢(歳)図3年齢と角膜球面様収差の相関r=0.260,p=0.00260.80.70.60.50.40.30.20.10-0.11020304050607080眼球球面様収差(?m)年齢(歳)図4年齢と眼球球面様収差の相関キヤノンスターAQ-310AiシリコーンAMOZ9000シリコーンAMOZA9003アクリル図5各種非球面眼内レンズ———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006???差も認められていない(図6).球面様収差および球面収差は球面眼内レンズ眼では術前後に差は認められていないが,非球面眼内レンズ眼では有意に術後に収差が減少しており,両眼内レンズ間でも有意に非球面眼内レンズ眼の収差が少なかった(図6).その結果,全高次収差で(21)も同様に非球面眼内レンズ眼において有意に収差の減少が認められた(図6).同一症例に挿入された,球面,非球面眼内レンズの収差解析より得られた網膜像のシミュレーションを比較すると,明らかに非球面眼内レンズの像が鮮明である(図7).この有意な全高次収差の減少がもたらす臨床的優位性は,水晶体の非球面性が収差の減少をもたらす瞳孔散大時に生じる.通常の生活では,夜間の運転時のグレアなどの減少効果が期待されるが,通常の臨床検査の明度条件ではその差は検出されにくい.そこで,コントラスト感度を明度条件を変えて測定すると,71.4lux,181.9luxでは差がなかったが,13.9luxという低照度では有意に非球面眼内レンズのほうが良好であった(表1).非球面眼内レンズの問題点ただし,このような優位性が非球面眼内レンズを使用した全症例にみられるわけではない.暗所でのコントラスト感度が球面眼内レンズに比較して,改善される症例と改善されない症例がある.両眼内レンズを使用した同一症例の左右眼を比較してみると,明所時のコントラスト感度には両者に大差ないが,暗所時のコントラスト感度の改善は,瞳孔径の大きな症例にみられることがわかる(図8,9).つまり瞳孔径の小さな症例では眼内レンズの非球面性の長所が出にくい.また,非球面眼内レンズは角膜で生じる収差を打ち消すように設計されているが,その程度は一定であるため角膜の収差が大きすぎる症例では,十分に収差が改善されない可能性もある.長期的に考えると後発白内障が生じたら,もちろんその収差改善効果は減弱することが予想される.であるから,非球面眼内レンズの長所を生かすためには,後発白内障の少ない素材,デザインを選択すべきである.一方,シリコーンとアクリルの球面眼内レンズを比較した筆者らの検討では,今のところどちらの素材もほぼ同等表13種類の明度下のコントラスト感度(縞コントラスト)の比較13.85(lux)71.47(lux)181.9(lux)ZA90031.42±0.161.75±0.191.79±0.22AR40e1.30±0.201.74±0.251.80±0.15*p<0.05(paired?-test).AULCSF*NSNS※※※※※†††††:ZA9003:AR40e1.00.90.80.70.60.50.40.30.20.10コマ様収差術前1カ月球面様収差術前1カ月全高次収差術前1カ月球面収差術前1カ月0.740.670.520.610.520.460.190.420.920.830.560.750.200.210.050.30Mann-Whitney’sUtest※※p<0.01※p<0.05Wilcoxon’stest††p<0.01†p<0.05瞳孔径6mmRMS(μm)図6瞳孔径6mm時の球面眼内レンズと非球面眼内レンズの収差の比較AR40eZA9003図7収差のデータからシミュレーションした網膜像———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006(22)121714810:ZA9003:AR40e2.42.221.81.61.41.21AULCSF瞳孔径(mm)2.42.62.833.23.43.63.844.24.499224558111114141313127663310図8明所の症例別術後瞳孔径とコントラスト感度11138294371512345678961010111414131212AULCSF:ZA9003:AR40e瞳孔径(mm)1.91.81.71.61.51.41.31.21.110.90.83.844.24.44.64.855.25.45.65.866.2図9暗所の症例別術後瞳孔径とコントラスト感度経過期間Density(CCT)統計学的有意差なし0.010.020.030.040.050.0Y1M6M3M1W126.6827.3624.6723.2223.1223.9026.3325.1924.0523.75:シリコーンClariFlex:アクリルMA60BM図10シリコーン眼内レンズとアクリル眼内レンズの後?混濁の比較経過期間AreaofCCC(mm2)0.05.010.020.015.025.030.0Y1M6M3M1D2W122.9222.2921.65※††††††††††††††††††††※※※※※※21.8220.8721.3721.8119.0018.3518.7520.7621.08Mean-Whitney’sUtest※※p<0.01※p<0.05Wilcoxon’stest††p<0.01†p<0.05:シリコーンClariFlex:アクリルMA60BM図11シリコーン眼内レンズとアクリル眼内レンズの前?切開面積の比較経過期間収縮率(%)-5.00.05.010.015.020.025.030.0Y1M6M3M1:シリコーンClariFlex:アクリルMA60BMWilcoxon’stest†p<0.05††p<0.01†††††††††3.599.845.6312.5213.7810.345.337.59図12シリコーン眼内レンズとアクリル眼内レンズの前?切開面積収縮率の比較0.80.60.40.20:アクリルZA9003:シリコーンZ9000両群間に有意差なしコマ様収差球面様収差全高次収差球面収差瞳孔径6mmRMS(μm)0.050.020.570.590.200.280.530.52図13非球面シリコーン眼内レンズと非球面アクリル眼内レンズの収差比較———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.23,No.4,2006???の結果(図10~12)が得られている.現状では素材としては,シリコーンでもアクリルでも大差がないと考えられる.また,短期的なデータではアクリル,シリコーン,両素材の眼内レンズの収差減少効果にも差はない(図13).素材の選択に関しては,これからの長期的データが待たれる.まとめ以上のことを考慮すると,非球面眼内レンズは球面眼内レンズと比較して,安定性は同等で,症例によるが暗所での優位性が認められる.これといった短所はみられないため,これからの眼内レンズの主流になる可能性が高い.(23)コンタクトレンズフィッティングテクニック【著】小玉裕司(小玉眼科医院院長)CLの処方に必要な角膜・涙液・屈折矯正・その他の知識/CLの選択/ハードCLの処方/フルオレセインパターンの判定方法と注意点/レンズデザインと角膜形状/ベベル・エッジのチェック/SCLの処方・種類・選択/CLと定期検査・眼障害/HCLの修正/修正によるHCLの苦情処理-くもり・充血・異物感・視力/SCLの苦情処理-くもり・かすみ・視力低下・異物感・眼痛・流涙・充血/乱視に対するCLの処方/ドライアイ/ラウンドコルネア/カラーCL/治療用SCL/無水晶体眼・乳幼児と小児に対するCLの処方/光彩付きCL・義眼CLの処方/ハード・ソフトタイプバイフォーカルCLの処方/HCLのカスタムメイドの処方/CLと点眼薬/CLとケア用品/●ワンポイントB5判総152頁カラー写真多数収載定価8,400円(本体8,000円+税400円)メディカル葵出版〒113─0033東京都文京区本郷2─39─5片岡ビル5F振替00100─5─69315電話(03)3811─0544■内容目次■この本があれば,明日からのコンタクトレンズ診療は安心して出来る!株式会社