———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.24,No.12,200716350910-1810/07/\100/頁/JCLS条件はスポットサイズ400μm(固定),照射時間は3nsec(固定),照射出力は0.8mJから開始し,わずかに気泡が生じる最小の出力とする.照射範囲は隅角半周照射(50~60発)の報告が多いが,近年は隅角全周照射(100~120発)の報告も散見される.当施設でも隅角半周照射と全周照射で眼圧下降効果の比較検討を行ったが全周照射のほうが優れており3),現在は全周照射で施行している(表1).術後は炎症による眼圧上昇を防ぐ目的で,非ステロイド性消炎剤を1週間点眼する.合併症は術後一過性の眼圧上昇が生じることがあるが,特に問題になる症例は経験したことはない.効果の判定時期は術後1~3カ月に行う.1カ月後に眼圧が下降しない症例も2~3カ月後に徐々に眼圧が下降する症例を経験する.有効率は約70~80%で,無効例も約20~30%存在するが術前の予測は困難である.このため効果が出現するまで最低でも1カ月程度は要するので,緑内障の末期で眼圧が高い症例は適応から除外したほうがいい.術後成績はアルゴンレーザーとほぼ同等との報告が多い.SLTの術後成績を表2にまとめた.再照射に関しては,初回治療で有効であった症例のみに限定している.なお,いたずらに再照射をして手術の時期を逃さないことも肝要である.新しい治療と検ーズ(85)バックグラウンド開放隅角緑内障に対するレーザー線維柱帯形成術は1979年のアルゴンレーザーが最初である1).眼圧下降機序としては線維柱帯の熱凝固による瘢痕形成,収縮による線維柱帯組織間隙の開大に伴う房水流出の増加と考えられている.合併症としては約30~50%の症例で周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)をきたすことがあり,反復照射は逆に眼圧レベルを上昇する可能性があった.術後成績は1年で約70%,5年で約50%が有効とされており年数が経過するごとに低下する.新しい治療法1995年になり線維柱帯組織の破壊を伴わない新しいレーザー治療である選択的レーザー線維柱帯形成術(selectivelasertrabeculoplasty:SLT)が開発された2).Qスイッチ半波長Nd:YAGレーザー(波長:532nm)を用いることで線維柱帯の色素顆粒をもつ細胞のみに選択的に作用し,線維柱帯の房水流出率を改善する治療法である.線維柱帯の熱変性やSchlemm管の破壊をきたさないことが特長で,理論上くり返し照射可能と考えられている.奏効機序は不明な点が多いが,レーザーによる炎症反応の過程で線維柱帯細胞が活性化し房水流出が増加することが想定されている.治療の実際SLTには専用のレーザー装置が必要である.最近はYAGレーザーと機能を一体化したものもある.治療の実際は,術直後の眼圧上昇を抑える目的でアプラクロニジンを照射1時間前と直前に点眼し,点眼麻酔後にGoldmann三面鏡や隅角鏡を用いて線維柱帯幅全体にスポット間隔を空けずに重ならないように照射する.照射177.開放隅角緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術プレゼンテーション:菅野誠山形大学医学部情報構造統御学講座視覚病態学分野コメント:千原悦夫千原眼科表1SLTの照射条件照射部位線維柱帯幅全体スポット間隔を空けずに重ならないように照射スポットサイズ400μm(固定)照射時間3nec(固定)出力0.8mJから開始しわずかに気泡が生じる最小出力照射範囲全周(360°)照射数100~120発———————————————————————-Page21636あたらしい眼科Vol.24,No.12,2007本方法の利点SLTの利点はレーザー照射による線維柱帯組織の破壊を伴わない点である.このため,術後PAS形成などの合併症もなく,くり返し照射できる点が優れている.効果としては,点眼薬1本分で永続的な効果はないが,点眼コンプライアンスの悪い症例や点眼薬アレルギーのある症例には,積極的に考慮していいと考えられる.文献1)WiseJB,WitterSL:Argonlasertherapyforopen-angleglaucoma.Apilotstudy.ArchOphthalmol97:319-322,19792)LatinaM,ParkC:Selectivetargetingoftrabecularmesh-workcells:invitrostudiesofpulsedandCWlaserinter-actions.ExpEyeRes60:359-371,19953)菅野誠,永沢倫,鈴木理郎ほか:照射範囲の違いによる選択的レーザー線維柱帯形成術の術後成績.臨眼61:1033-1037,2007(86)☆☆☆表2SLTの成績表照射野治菅野菅野ののののの文献本方法に対するコメント隅角に対するレーザー光凝固は1970年の初め頃線維柱帯(TM)を焼灼して眼圧を上げ,実験的緑内障を誘発する手段であったが,1973年KrasnovがTMにレーザーで開口すると眼圧が下がることを報告し,1979年Wiseらは開口ではなくアルゴンレーザー凝固によりTMを収縮させれば房水透過性が向上し,眼圧が下がることを発表した(argonlasertrabeculo-plasty:ALT).ALTは眼圧下降,点眼薬数の減少や日内変動の縮小に寄与することが多くの追試によって確認されたが,治療後眼圧が一過性に上昇すること,組織学的にTMに凝固瘢痕や周辺虹彩前癒着(PAS)が形成され,眼圧下降効果が長期的に減弱することが問題となった.選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)は菅野先生が記載されているように選択的に色素を含む細胞に作用し,ALTより組織破壊が少なく,くり返し凝固治療ができるという長所がある.しかしながら,眼圧の下降効果はプロスタグランジン剤1剤とほぼ同等で,効果は持続性がなく次第に減衰する.したがって,現在のSLTの適応は,薬剤副作用によって点眼治療が困難な人,点眼のコンプライアンスが悪い人などに限られると考えてよいであろう.