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眼内レンズ:偽水晶体眼の硝子体手術翌日に発生した液状後発白内障

2022年11月30日 水曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋432.偽水晶体眼の硝子体手術翌日に発生した液状後発白内障●はじめに液状後発白内障は,白内障術後数年を経て眼内レンズ(intraocularlens:IOL)後面と後.の間に乳白色の液状物質が貯留する疾患であり,capsularCblockCsyn-drome(CBS)の晩期型に分類される.今回筆者らは,すでにCIOLが挿入されていた患者の硝子体手術翌日に液状後発白内障を発症した症例を経験したので報告する.C●症例患者はC67歳,女性.20年前に糖尿病と診断され,14年前に両眼の増殖糖尿病網膜症に対して汎網膜光凝固術,4年前に両眼の白内障に対して手術が施行されていた.今回,右眼に硝子体出血を発症したため眼科三宅病院を紹介受診した.初診時所見は,右眼矯正視力(0.3)で,前眼部は異常なく,両眼ともCIOL挿入眼で,IOLは完全に.内固定されていた.IOL後面と後.は完全に接した状態であり,後.に軽い混濁を認めた(図1).眼底所見は,右眼に硝子体出血を認め,視神経乳頭鼻側に新生血管を伴った増殖膜が観察された.太田晶子近藤峰生三重大学大学院医学研究科臨床医学系講座眼科学右眼の硝子体出血に対し硝子体手術が行われ,後.切除は行わなかった.術翌日の細隙灯顕微鏡検査(図2a)では,液状後発白内障に類似してCIOL後方の後.は硝子体側に滑らかに凸の形状を呈していた.液状物質は典型例に比して乳白色の色調は淡かった.液状後発白内障は前眼部光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)でも確認できた(図2b).右矯正視力は(1.0)と改善した.その後の経過観察で,液状物質の混濁はやや増加し,図1硝子体手術術前の細隙灯顕微鏡写真IOLが.内に挿入され液状後発白内障は認めない.(文献C1より引用)図2硝子体手術翌日の細隙灯顕微鏡写真(a)および前眼部OCT画像(b)a:IOL後方の後.は凸状を呈し,液状後発白内障を生じている.Cb:IOL後面と後.の間に物質を認めるが,典型的な液状後発白内障に比較してやや内容物の色調が淡いようにみられる.(文献C1より引用)(63)あたらしい眼科Vol.39,No.11,2022C15030910-1810/22/\100/頁/JCOPY図3硝子体手術2年後の細隙灯顕微鏡写真(a)および前眼部OCT画像(b)a:IOL後方の後.は凸状の程度は変わらないが,内部の色調はより乳白色となっている.Cb:IOL後面と後.の間の物質の色調は以前と比較して濃くなっているようにみえる.(文献C1より引用)通常の液状後発白内障と同程度の濃度を呈するようになった(図3b).硝子体手術C2年後には後.上にはCElschnig’spearlからの後.混濁が増しており(図3a),右眼矯正視力は(0.6)と低下していた.同日CYAGレーザー後.切開を施行した.液状物質は速やかに硝子体腔に流出し,視力は(1.0)に改善した.C●考按CBSは,白内障手術時に施行される連続円形切.に連続して生じる水晶体.内ブロックによる疾患群である.発生時期により術中・術後早期・術後晩期にC3分類される.本症例では白内障手術後C4年が経過していたが,硝子体手術前にはCIOL後面に液状物質は認めていなかった.術中,前房に回った灌流液が前.とCIOLのわずかな隙間から水晶体.内へ入り込み,液状物質の迷入が起きたことが誘因と考えられる.今回は硝子体手術後翌日にCBSが発症しているが,術後に浅前房は認められないこと,またCIOL後面の後.の後方突出は軽度であることから,術後早期CCBSの形状とは異なる.IOL後方の後.突出は液状後発白内障に類似している.その後,経時的に水晶体上皮細胞の再増殖,皮質成分の液化が加わり,徐々に内容物の濃度が濃くなってきたと考えられる.また,糖尿病の背景に加え,手術手技に伴い眼内のサイトカインなどに変化が起こり,血管房水柵の破綻がより助長された可能性もある.今回の症例は今まで報告のない,偽水晶体眼における硝子体手術後の術後早期CBS,または白内障手術を起点とするなら,液状後発白内障の亜型と考えられた.文献1)OtaA,OtaI,KachiSetal:FindingsinpseudophakiceyethatCdevelopedClique.edCaftercataract-likeCsubstanceConeCdayCafterCvitrectomy.CAmCJCOphthalmolCCaseCRepC27:C101615,C20222)MiyakeCK,COtaCI,CIchihashiCSCetal:NewCclassi.cationCofCcapsularCblockCsyndrome.CJCCataractCRefractCSurgC24:C1230-1234,C19983)MiyakeCK,COtaCI,CMiyakeCSCetal:Lique.edCaftercata-ract:ACcomplicationCofCcontinuousCcurvilinearCcapsu-lorhexisandintraocularlensimplantationinthelenscap-sule.AmJOphthalmolC125:429-435,C1998

コンタクトレンズ:読んで広がるコンタクトレンズ診療 ソフトコンタクトレンズの素材

2022年11月30日 水曜日

提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療3.ソフトコンタクトレンズの素材糸井素啓京都府立医科大学大学院医学研究科■はじめに1960年代に,Wichterleが高分子ゲルのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethylmethacry-late:2-HEMA)を素材としたコンタクトレンズの開発に成功し,ソフトコンタクトレンズ(SCL)が誕生した.その後,素材・デザイン・製造法の点で目覚ましい進歩を遂げ,多くの種類のSCLが登場した.その結果,数多くのSCLの中から患者に最適なCLを処方するために,各レンズの特徴を正しく把握することが重要となっている.本稿では素材に基づいたSCLの特徴をわかりやすく解説する.■ハイドロゲルレンズとシリコーンハイドロゲルレンズ現在普及しているSCLは,1972年以降に発売されたハイドロゲルレンズ(以下,HyCL)と,2004年以降に発売されたシリコーンハイドロゲルレンズ(以下,SiHyCL)の2種類に大別される.HyCLは,含水性のポリマーを主成分としたレンズで,ポリマー内の水分を介して酸素を透過するため,酸素透過係数(Dk値)は含水率に依存する.しかし,含水率が高いレンズは,乾燥に伴ってレンズが変形しやすくなるため,良好な酸素透過性と乾燥による装用感悪化の防止を両立させるのはむずかしい.また,酸素透過を水分に依存するため,水の酸素透過性80×10.11(cm2/sec)(mlO2/ml×mmHg)を超えることができないという限界がある.一方,SiHyCLは上述の含水性ポリマーに,高い酸素拡散係数を有するシリコーンを組み合わせたレンズである.シリコーンは含水性ポリマーより高い酸素透過性を有するため,SiHyCLは含水率が低いほど酸素透過性が高い.そのため,SiHyCLは,シリコーンの高い酸素透過性と,低含水率ハイドロゲルの乾燥に強く装脱が容易という,それぞれの素材のメリットが両立している.しかし,撥水性のシリコーンを含むため化粧品などの脂質汚れが付着しやすく,HyCLに比較して硬度(ヤング率:Young’smodulus)が高いレンズが多いため,角膜上方周辺部の弧状角膜上皮障害であるsuperiorepitheli-alarcuatelesions(SEAL’s)(図1)やムチンボールなど(61)0910-1810/22/\100/頁/JCOPY視覚再生機能外科学道玄坂糸井眼科図1弾性率が高いシリコーンハイドロゲル装用者にみられたSEAL's上方の角膜輪部に沿った弓状の角膜上皮障害を認める.の合併症が出現することがある.また,一部の消毒成分(塩酸ポリヘキサニド)と相性が悪い製品があり,注意を要する1).かつてはレンズの種類が少ないという問題があったが,現在は乱視用,サークルレンズ,多焦点レンズなどさまざまなデザインが揃っている.また,近年は,表面加工により脂質汚れがつきにくいレンズや,以前より含水率が高く弾性率が低いレンズ(表1),従前よりも安価なレンズなど,これまでのSiHyCLの短所を改善した新しいSyHiCLが登場しており,SiHyCLはより処方しやすくなっている.■FDA分類米国食品医薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)は,SCLの素材をその特徴に応じて大きく5グループに分類している(表2,3).ハイドロゲル素材は,含水率と素材のイオン性によってグループI~IVに分類される.一般に,ハイドロゲルレンズの含水率とイオン性は,レンズの汚れやすさ,柔軟性,酸素透過性,乾燥感に関係する.レンズ汚れの主要因である蛋白質は,イオン性素材に吸着しやすく,また含水性の高い素材ほど蛋白質が素材内部に侵入しやすいとされる.そのたあたらしい眼科Vol.39,No.11,20221501表1シリコーンハイドロゲル素材の含水率と弾性率表3FDA分類別の代表的なソフトコンタクトレンズ素材名Dk値含水率弾性率(Mpa)日本での発売年lotra.lconA14024%1.42004年bala.lconA9136%1.12004年seno.lconA10338%0.722007年nara.lcone10046%0.712010年com.lconA9055%0.62011年dele.lconA14033~80%0.72014年ste.lconA8054%0.42016年somo.lconA6056%0.52021年kali.lconA13455%0.52022年Dk値の単位:10.11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)(文献2より改変引用)表2FDAによるSCLの分類グループ名素材IIIIIIIVハイドロゲルレンズ低含水・非イオン性高含水・非イオン性低含水・イオン性高含水・イオン性Vシリコーンハイドロゲルレンズ低含水:含水率50%未満,高含水:含水率50%以上め,グループIV(高含水・非イオン性)のレンズがもっとも蛋白質を吸着しやすく,グループI(低含水・イオン性)のレンズが蛋白汚れに抵抗性がある.一方,含水率が高いほど,柔軟性に優れるため装用感がよく,酸素透過性が高いが,乾燥感を生じやすくなる.SiHyCLは,ハイドロゲルレンズと性質が異なるため,グループVとして独立して分類されている.現在,乾燥対策に保存液や表面加工に工夫をしたレンズもあり,必ずしもFDA分類とレンズの性質が一致するわけではないが,上述の基本的な考え方を理解しておきたい.ちなみに,論文などに記載されているeta.lconAなどの名称はレンズの名称ではなく,FDAに登録されている素材名である.グループレンズ名メーカー名I1dayFineUVplusシードIIプロクリアワンデーデイリーズアクア・アクアコンフォートプラスバイオトゥルーワンデーダリストワンデープラスMagicクーパービジョンアルコンボシュロムボシュロムメニコンIIIなしIVワンデーバイオメディックスEVワンデーアキビューモイスト1dayPureうるおいプラスメニコンワンデークーパービジョンジョンソン・エンド・ジョンソンシードメニコンVワンデーアキュビューオアシスデイリーズトータルワンマイデイボシュロムアクアロックスワンデーUVシンジョンソン・エンド・ジョンソンアルコンクーパービジョンボシュロム■おわりに現在もなお,SCLの開発は積極的に続けられており,新しい素材・機能・装用スケジュールのレンズが次々に登場している.その結果,SCLは急速に多様化しており,そのレンズごとの特徴を把握するのは以前に比較してむずかしくなっている.そのため,素材ごとにレンズの特徴を整理し,各種レンズの適応を把握することで,適切なレンズ選択による安全なコンタクトレンズ診療を行いたい.文献1)PaughJR,NguyenAL,HallJQJretal:Apreliminarystudyofsiliconehydrogellensmaterialandcaresolutionbioincompatibilities.Cornea30:772-779,20112)BennettES,HenryVA:Clinicalmanualofcontactlenses.5thed,Kindleed,WoltersKluwerHealth,20193)BinderPS:Complicationsassociatedwithextendedwearofsoftcontactlenses.Ophthalmology86:1093-1101,1979

写真:Microsporidia角膜炎

2022年11月30日 水曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦渡部りさ子福岡秀記462.Microsporidia角膜炎京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図1前眼部所見数珠様の放射状に広がる角膜上皮病変を認める.図3フルオレセイン染色角膜表層性の病変を認める.図4全層角膜移植後の前眼部所見移植片は透明性を維持している.(59)あたらしい眼科Vol.39,No.11,2022C14990910-1810/22/\100/頁/JCOPY症例は78歳の男性.左眼の充血を自覚し前医を受診し,強膜炎と関節リウマチの治療を開始されたが改善を認めず,京都府立医科大学附属病院(以下,当院)に紹介受診となった.ぶどう膜炎も否定できず,各種検査を施行したが,リウマチ因子のみ陽性を認め,関節リウマチに対しての治療としてステロイド内服の漸減,漸増を繰り返すも治療反応に乏しく,所見の増悪寛解を繰り返した.当院初診時から約C2年が経過し,左眼角膜に星芒状角膜炎様のウイルス様上皮病変が出現した.ゾビラックス眼軟膏を開始したが,その後角膜病変が徐々に悪化し,1年後には数珠様の放射状に広がる病変を認めた(図1~3).角膜病変が出現してからC3年半で角膜穿孔をきたし,約C4年半で左眼の全層角膜移植術および水晶体再建術を施行し(図4),切除検体病理により,のちに微胞子虫(Microsporidia)の感染と判明した.移植後の移植片の生着や透明性は良好であり,再燃なく経過は順調である.Microsporidiaは生物の細胞内に寄生する胞子で,この胞子が悪環境に対する抵抗力を与え,拡散を促進する.動物や細胞内に寄生して増殖する単細胞真核生物で,体長は種によって多少異なるが,通常C1~30Cμmとアカントアメーバと似たような大きさであることがわかっている.Microsporidia感染のリスクファクターとしてはCAIDS患者などの免疫不全患者が知られている.本症例では,関節リウマチに対してステロイドの内服および点眼がなされており,免疫状態が低下した状態であった.人への感染は比較的珍しく,角膜感染症の原因としてはまれであり,診断がつかないことが多いが,一部の集団では微生物性角膜炎の約C0.4%を占めるとの報告もある.南アジアや東南アジアでの発症が多いとされている.未だこれといった治療は確立されていないが,病変部の擦過は有効であるとされている1).対症療法としては寄生虫感染症の治療で知られているアルベンダゾール内服や,フマギリン点眼薬が有効と報告されている2).Microsporidiaは細胞内に生息する生物であり,増殖には特定の細胞培養システムを必要とするため,しばしば検出が困難である.診断は多くの場合,組織切片上の生物の形態学的同定に依存しているが,サイズが一般的な寄生虫としては小さいため,顕微鏡では検出できないことがあり,そのためいくつかの分子的,非侵襲的な手法が診断の助けとなる.検出には顕微鏡検査と組織染色がもっとも一般的な手段であるが,分子および非侵襲的な技術(コンフォーカルマイクロスコピーや前眼部光干渉断層計)が診断に果たす役割は拡大していくと考えられる3).従来は南アジア諸国で多くみられたミクロスポリディアであるが,温暖化に伴い,わが国でも増加する可能性がある.また,角膜に異常所見を認めるものの,ぶどう膜炎の病像が主体であり,ステロイド治療がなされる角膜炎としてはアカントアメーバ角膜炎や非定型抗酸菌角膜炎があるが,今後はCMicrosporidiaも念頭に置くべきであろう.文献1)DasCS,CSharmaCS,CSahuCSKCetal:Diagnosis,CclinicalCfea-turesandtreatmentoutcomeofmicrosporidialkeratocon-junctivitis.BrCJOphthalmol96:793-795,C20122)Tung-LienQuekD,PanJC,KrishnanPUetal:Microspo-ridialCkeratoconjunctivitisCinCthetropics:aCcaseCseries.COpenOphthalmolJC5:42-47,C20113)ThanathaneeCO,CLaohapitakvornCS,CAnutarapongpanCOCetal:Anteriorsegmentopticalcoherencetomographyimag-esinMicrosporidialkeratoconjunctivitis.CorneaC38:943-947,C2019C

安全なコンタクトレンズ管理

2022年11月30日 水曜日

安全なコンタクトレンズ管理ProperUseandSafeManagementofContactLenses松澤亜紀子*はじめにコンタクトレンズ(contactlens:CL)を安全に使用するためには,1)適切なレンズケアを行うこと,2)装用期間を守ること,3)定期検査を受けることが必要である.装用期間の順守や定期検査の重要性については,さまざまな機関から啓発されているため,装用期間を守っていない,または定期検査を行っていないCLユーザーが眼障害を生じ眼科を受診した際には,やや後ろめたい気持ちをもっているためか,診察時に「実は~」と話しはじめることが多い.一方で,不適切なレンズケアにより眼障害を生じたケースでは,自分のケア方法が正しいと思っていることが多く,なぜ眼障害が生じたのか疑問に思っている人が多い.近年,インターネットや量販店などでCLを購入する人が増えており,レンズケアを含めたレンズの正しい取り扱い方法を知らない,習ったけれど忘れてしまった,間違って理解しているなど,正しいケアを行っているつもりでも間違えたケア方法となっているユーザーが多い.安全なCLの管理は,レンズを取り扱う際の手洗いからはじまり,頻回交換型や定期交換型,従来型などケアの必要なレンズでは,日々の着実なレンズケアやレンズケースの管理が必須である.本稿では,安全にCLを装用するために必要なレンズケア,レンズの取り扱い方法について述べる.I手指の洗浄レンズやレンズケースを取り扱う際には石鹸での手洗いが必須である.平田はCL装用時と装脱時の手指洗浄実践率が,装用時は62.0%,装脱時は42.7%であったと報告している1).また,針谷は石鹸による手指洗浄前後にスタンプ培養を行い,洗浄後のコロニー数が洗浄前に比べて2.5倍に増加したと報告している2).CL装脱時の手洗いが習慣となっていない,手洗いをしていても正しい方法ができていない可能性もあるため,正しい手指洗浄の指導は必要である.さらに,CL処方の際にレンズの装脱を患者自身に行ってもらい,手洗いの方法やペーパータオルで十分に水分を拭き取っているかなどをチェックするとよい.IIHCLケアハードCL(hardCL:HCL)はソフトCL(softCL:SCL)に比べて細菌や真菌などの微生物汚染が少ないこと,日本の水道水が比較的清潔であることからHCLには消毒が義務づけられていない.そのため,HCLのケアでは洗浄,すすぎ,保存,強力洗浄が行われている.1.日常のHCLケアHCLの洗浄方法には,こすり洗いとつけおき洗いに大別される.こすり洗いには,研磨剤を含むものと含まないもの,*AkikoMatsuzawa:川崎市立多摩病院眼科〔別刷請求先〕松澤亜紀子:〒214-8525神奈川県川崎市多摩区宿河原1-30-37川崎市立多摩病院眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(51)1491図1ハードコンタクトレンズのこすり洗い方法a:手のひら洗浄法.手のひらに洗浄液を数滴たらしたところに,レンズの内面を上にして置き,人差し指の腹でレンズを軽く押さえながら前後に動かす.b:指先洗浄法.人差し指と中指をそろえてレンズ内面を上にして置き,洗浄液を数滴たらし,レンズ内面を親指で,レンズ外面を人差し指と中指でこすり洗いする.図2塩素系洗浄剤レンズをホルダーにセットし,A液(次亜塩素酸ナトリウム)とCB液(臭化ナトリウム)を専用ケースに入れ,蓋をして数回降ってC30分間浸漬する.その後,レンズホルダーごと水道水で十分にすすぐ.図3ソフトコンタクトレンズのケアa:レンズのこすり洗い.手のひらにCMPSや洗浄保存液をたらし,レンズの表裏をC20~30回ずつ指の腹でこする.Cb:レンズのすすぎ.爪を立てないようにレンズを指でつまみ,MPSや洗浄保存液を勢いよくかけてレンズをすすぐ.a6時間後レンズ収納錠剤投入消毒液注入消毒・中和中和完了b6時間後レンズ収納消毒液注入消毒・中和中和完了図4過酸化水素剤の消毒・中和方法(1ステップ)a:錠剤タイプ.ホルダーにレンズをセットし,カタラーゼの錠剤()と消毒液をケースに入れてC6時間以上消毒・中和を行う.Cb:白金ディスクタイプ.白金ディスク()のついたホルダーにレンズをセットし,消毒液をケースに入れてC6時間以上消毒・中和を行う.10分後レンズ収納消毒液注入10分以上消毒消毒液を破棄中和液注入中和完了図5過酸化水素剤の消毒・中和方法(2ステップ)ホルダーにレンズをセットし,消毒液をケースに入れてC10分以上消毒をする.消毒液を破棄し,ケースに中和液(カタラーゼ)を入れてC10分以上中和を行う.4時間後蛋白質レンズ収納錠剤投入溶解・すすぎ液を注入消毒・中和汚れ分解完了図6ポビドンヨード剤の消毒・中和方法レンズをホルダーにセットし,消毒・洗浄・中和成分の入った錠剤()と溶解・すすぎ液をケースに入れて中和を行う.中和が終わると液の色が透明になり,4時間以上かけて蛋白質汚れの分解が行われる.図7ハードコンタクトレンズの観察a:レンズエッジの破損.レンズエッジに破損が認められる(C.).b:レンズの汚れ.ウェット部分(C.)はでレンズの汚れがわかりづらい.レンズがドライな部分(C.)はレンズの汚れがはっきりとわかる.図8ソフトコンタクトレンズの観察a:レンズの亀裂.レンズに亀裂が認められる().b:同症例のフルオレセイン染色像.レンズの亀裂部位に一致した角膜上皮障害を認める().図9各種レンズケースの乾燥レンズホルダーなどが複雑な構造になっているケースもあるため,清潔なペーパータオルなどで水分を拭き取ってから乾燥させる.Ca:HCL用ケース.Cb:MPS用ケース.Cc:ポビドンヨード剤用ケース.Cd:過酸化水素剤用ケース(錠剤タイプ).e:過酸化水素剤用ケース(白金ディスクタイプ).

オルソケラトロジー

2022年11月30日 水曜日

オルソケラトロジーOrthokeratologyforImprovedVisionandMyopiaControl吉野健一*Iオルソケラトロジーの定義と歴史オルソケラトロジー(以下,オルソK)は,「屈折異常を一時的に除去または軽減するためのRGPCL(rigidgaspermeablecontactlens)」と定義され(ortho-=矯正,kerato-=角膜,-logy=論)る.通常は睡眠時に装用することにより角膜の形状を変化させ,日中はレンズをはずして目的の視力が維持される.装用を中止すればある一定期間(約3週間)を経て元の屈折状態に戻り,可逆的な屈折矯正効果を生む.日本では2009年,厚生労働省より「視力補正用コンタクトレンズ」とは異なる「角膜矯正用コンタクトレンズ」として薬事法に則り新たに医療機器に加えられた.オルソKの歴史は,1960年代からJessenにより通常のハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)をフラットに処方し,いわゆるcornealwarpageにより角膜を扁平化した第一世代のオルソK,すなわちOrthofocusから始まる.1980年代に入ると,Wlodygaにより開発されStoyanにより製造された「reversegeometrylens」(用語解説参照),すなわちベースカーブ(basecurve:BC)と,それに続くよりスティープな第2のカーブとその周辺のperipheralcurveといった3カーブをもつ第二世代のオルソKへと移行した.そして,現在の第三世代のオルソKは1990年代に入り開発され,すでに30年近くの歴史がある.そのレンズデザインは,①角膜中央を平坦化させる直径6.mmのBC②BC周辺のレンズを角膜に吸着させる幅0.6mmのスティープな第2のカーブreversecurve(RC)③RCに続き角膜の中間から周辺部にパラレルまたはアライメントに接触し,レンズのセントレーションに寄与する第3のカーブalignmentcurve(s)(AC)④レンズが角膜に固着するのを防ぐレンズエッジ部の第4のカーブperipheralcurve(PC)といった4カーブ(5カーブ)からなる(図1).この第三世代オルソKの屈折矯正効果は第一,第二世代のそれに比し,より早く,繊細(安全)に,正確に,再現性をもって達成される.その理由は,レンズデザインの改良にのみ負うのではなく,夜間装用の効果をより安全にするための,Dk値が100以上といった高酸素透過性素材の採用と,睡眠時のレンズのフィッティング状態を確認することを可能にしたトポグラフィーの登場にある.IIオルソKの屈折矯正原理オルソKによる近視矯正は,角膜上皮細胞層の厚さと形状を変化させることにより角膜中央部を平坦化させることによってなされる.すなわち,6mmの直径をもつBCは,角膜中心弱主径線のK値(.atK)に対しさらにフラットに設定され,レンズ下涙液に相対的な陽圧を生じさせることにより達成される.角膜中央部への圧迫は,レンズ後面の角膜上皮への直接の接触によるというよりは,涙液を介した圧力によるものとされている1).*KenichiYoshino:吉野眼科クリニック〔別刷請求先〕吉野健一:〒110-0005東京都台東区上野1-20-10風月堂本社ビル6F吉野眼科クリニック0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(43)1483:直径6mm⑤レンズ径:-B:basecurveD:reversecurveC:reversecurve(5層→2~3層)(5層→7~10層)図2オルソケラトロジーの屈折矯正メカニズムBC部の角膜上皮細胞層はC5層からC2.3層へ菲薄化し,一方,RC部の角膜上皮細胞層はC5層からC7.10層へ重層化し,とくに基底細胞の丈は増しその厚みを増す.これらの角膜上皮細胞層の形状変化を角膜上皮細胞の再分配(re-distribution)とよぶ.図3旧ガイドライン下(2016年)での年齢別処方数日本眼科医会による,181施設,10,937症例のアンケート調査結果のまとめ.20歳以上という適応年齢が現実的には遵守されておらず,20歳未満の未成年への処方がC6割を超え,12歳以下の学童への処方がC25%にも及び,旧ガイドラインの内容が形骸化した.(文献C3より改変引用)眼鏡・CLオルソK図4近視進行抑制効果(peripheralrefraction&aberration説)オルソCKによる矯正は,BC部の角膜形状は平坦化する一方,RC部の中間周辺部角膜は肥厚するため屈折は強くなり,眼鏡や通常のCCLにおける周辺部網膜の遠視性デフォーカスが改善し,これにより眼軸長の伸長が抑制,すなわち近視進行が抑制されるという説.図5RC部のレンズの汚れRC部の細い溝構造はレンズケアが行き届かず蛋白,細菌(バイオフィルム)が付着しやすい.ときに綿棒による同心円状のこすり洗いが必要になることもあるが,より強力な蛋白除去剤(プロージェント)の使用も有効である.Providenciastuartii(G(-))1%Nocardia(G(+)桿)1%Haemophilusin.uenzae(G(-)桿)1%Staphylococcus(G(+)球)2%Fungus(G(+))3%Serratiamarcescens(G(-)桿)3%図6オルソK角膜感染症の原因微生物緑膿菌がC38%,アカントアメーバがC31%で,全体の約C70%がこの二つの病原微生物が原因の角膜感染症である.〔オルソケラトロジーの安全性に関する英語文献C75編のレビュー(2005,C2006,2007)〕(文献C16より改変引用)■用語解説■reversegeometrylens:リバースジオメトリーレンズは,ベースカーブ(BC)から周辺方向に続き,よりスティープなカーブ,すなわちリバースカーブ(RC)をもったデザインのレンズをさす.「リバースジオメトリー」という用語は,従来のハードコンタクトレンズでは周辺カーブがCBCよりフラットであることに対し,リバースジオメトリーレンズでは,RCがCBCよりスティープであるという違いを明確にするために用いられた.オルソケラトロジーレンズの代名詞となっている.

眼精疲労対策

2022年11月30日 水曜日

眼精疲労対策ContactLensPrescriptionfortheTreatmentofAsthenopia梶田雅義*はじめに眼精疲労とは,眼を持続して使ったとき,健常者では疲れない程度の作業でも疲れを生じ,眼の重圧感,頭重感,視力低下,時には複視などを訴え,はなはだしいときには悪心・嘔吐まできたす状態をいう.眼精疲労は眼の使用状態,眼の能力および眼あるいは精神的な耐える力の三者がバランスを崩したときに発症すると考えられる1)(図1).スマートフォンの普及によって,近方の視覚情報量が増加し,近方視の時間も極端に長くなってきている.また,COVID-19によってオンラインやテレワークの時間が長くなり,遠くを見る機会が失われていることも眼精疲労増加の一因になっている.巷ではスマホ老眼とかスマホ斜視とよばれているように,最近の眼精疲労は調節機能異常と輻湊機能異常が発症原因になっている.I調節機能異常眼精疲労を訴えて受診する患者は,不適切な矯正状態にあることが多い.調節機能異常では視力値が良好であるため,一般の眼科検査では見逃されていることが多い.簡単な自覚的調節検査では年齢相応の調節力が得られるため,調節に異常はないと判断されるためである.コンタクトレンズ(contactlens:CL)使用者で眼精疲労の訴えがあるときには必ず,不適正な矯正の存在を疑う必要がある.CLを装用した状態でのオートレフラクトメータで測定した球面屈折値が.0.75Dよりも遠視寄りで,また数回の測定値で屈折値が変動する場合には,眼精疲労の原因として近視の過矯正,あるいは遠視の低矯正を疑う必要がある.CLの不適正な矯正を疑ったら,オートレフラクトメータで繰り返し,しつこく他覚的屈折値(オーバーレフ値)を測定してみる.球面度数が激しく変動する状態は調節異常の存在を示唆する.また,球面屈折値は安定していて円柱屈折値が1.00D以上の場合には,乱視矯正不足が眼精疲労の原因になっている可能性もある.さらに円柱レンズ度数や円柱軸度が変動する場合には激しい調節緊張にあることが疑われる.II両眼同時雲霧法と眼位検査近視過矯正や遠視低矯正,および乱視矯正不良が疑われる場合には,使用中のCLを装用したまま,両眼同時雲霧を実施すると,矯正度数の過不足を容易に見つけることができる.①オーバーレフの円柱度数が1.00Dならば,0.50Dを,1.25D以上の場合には0.75Dを減じた値の円柱レンズをオーバーレフの円柱軸に一致(10°ステップで近似)させて検眼枠に挿入する.②オーバーレフの球面屈折値に+3.00Dを加えた検眼レンズを両眼に装用する.③雲霧時間は設けないで,すぐに測定を開始する.④字づまり視力表を用いて,両眼視で視力値を確認しながら,両眼を同時に0.50Dずつレンズ交換法によっ*MasayoshiKajita:梶田眼科〔別刷請求先〕梶田雅義:〒108-0023東京都港区芝浦3-6-3協栄ビル4F梶田眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(37)1477図1眼精疲労環正三角形の板の中央に垂直に固定された柱がある.下方には眼精疲労環があり,柱は眼精疲労環を貫いている.正三角形の板の先端にはそれぞれ「眼の能力」「眼の使用」「耐える力」のおもりが吊されている.三つのおもりのバランスがとれていれば,柱は眼精疲労環の中央に位置しており,健康な状態である.三つのおもりがバランスを壊したときに,柱が眼精疲労環に接触し,眼精疲労を発症する.スクリーン図2ビノキュラーセパTN.3000(田川電気研究所製)接眼部より投影面までの距離(検査距離)がVDT(visualdisplayterminals)作業中のディスプレイ面とほぼ等しい距離であり,眼位異常によってVDT作業中に生じる眼精疲労の診断にきわめて有用である.1mの距離で検査を行えば,1cmのズレが1Δに相当するのも利点である.アコモレフ2(ライト製作所)AA-2(ニデック)図3調節機能解析装置どちらの装置も測定点を4カ所に減らした簡易モードを備えているが,眼精疲労の診断治療には,測定点を8カ所もつ通常モードで測定するのが望ましい.図4正常なFk.map(46歳,男性)図5調節けいれんのFk.map(29歳,男性)調節機能解析装置で記録される調節機能図で,横軸は視標位呈示視標に対して強い調節リードが生じており,HFC値も高置,縦軸は屈折値,カラーバーの上端は被検眼の屈折値,カラい値を呈している.ーバーの色は調節微動高周波数成分の出現頻度(HFC)である.カラーバーの高さで正しく調節ができるかがわかり,カラーバーの色で,その調節力を発揮するときにかかる毛様体筋への負担が推測できる.図7老視のFk.map(74歳,女性)調節反応量もほとんど生じていないし,HFC値が低く,調節努力も生じていない.眼精疲労の訴えはないが,近くがよく見えないと訴える.図6テクノストレス眼症のFk.map(19歳,女性)遠方視標に対しては,正常な所見を呈しているが,近接視標に対しては調節緊張症や調節けいれんの所見を呈する.図8スマホ老眼のFk.map(15歳,女性)図9老視の調節緊張症のFk.map(80歳,男性)老人のFk-mapとまったく同じ所見を呈している.遠くが見強い調節努力が生じており,それによってある程度の調節応答える単焦点レンズの矯正では手元が見えないと訴える.が生じている.眼精疲労を訴えているが,安定して見える矯正度数が定まらない.

老視対策

2022年11月30日 水曜日

老視対策ContactLensWearfortheCorrectionofPresbyopia塩谷浩*はじめに老視世代へのコンタクトレンズ(contactlens:CL)処方では,近方視での視力障害の自覚症状が出現しているCL装用者には近方視を補助する対応が必要となる.また,老視世代になって初めてCLを使用することを希望している患者には,はじめから近方視の補助を考慮した対応が必要となる.いずれの場合でも老視へ対応する方法を知らなければ,CLの使用をやめさせ眼鏡などで対応する方法をとらざるを得なくなる.しかし,日常生活で眼鏡を使用しない生活を希望している患者へは,生活スタイルを変化させないために可能な限りCLで対応する方法を選択すべきである.老視は加齢により調節力の衰えた状態を示した表現で,老眼研究会では医学的老視は近方視での自覚症状の有無にかかわらず片眼完全矯正下での調節幅が2.5D未満,臨床的老視は近方視での視力障害の自覚症状を有し,近方視力が40cm視力で0.4未満または30cm視力で0.3未満と定義している(表1).年齢別調節力をみると医学的老視は50歳頃に発症するが,CL処方における老視矯正は近方視に不自由が出現した状態であるため,40歳台からでも対応することがある(図1).一般的にCL処方での老視への対応法には,CLと眼鏡を併用する方法,CLの球面度数を中間距離に設定する方法,CLによるモノビジョン法,遠近両用CLの処方の四つの方法がある1)(表2).本稿では,この四つの方法によるCLでの老視への対応について解説し,老視表1老視の定義医学的老視近方視での自覚症状の有無にかかわらず片眼完全矯正下で調節幅が2.5D未満臨床的老視近方視での視力障害の自覚症状を有し40cm視力0.4未満または30cm視力0.3未満(老眼研究会ホームページより引用改変)世代のCL使用者の快適ライフのためにどう対応すべきかを考える.ICLと眼鏡の併用CLと眼鏡を併用する方法には,遠方視用に球面度数を適正に設定したCL装用上に近方視用に度数調整した近用眼鏡を処方する方法と,近方視用に遠方適正度数よりも球面度数をプラス側に設定したCL装用上に遠方視用に度数調整した遠用眼鏡を処方する方法の二つがある.患者の生活スタイルに応じて利便性が高いと思われる方法を選択する(表3).ソフトCL(softCL:SCL)処方の場合は,レンズ製品規格にある球面度数内で矯正しきれない強度屈折異常や中等度以上の乱視でトーリックSCLの適応となる患者では,遠近両用SCLでは見え方の質を維持することができないため有用な方法である.ハードCL(hardCL:HCL)処方の場合は,残余乱視が大きく前面トーリックHCLや両面トーリックHCLの適応となる患者*HiroshiShioya:しおや眼科〔別刷請求先〕塩谷浩:〒960-8034福島市置賜町5-26しおや眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(31)1471調節力(D)1514131211109876543210051015202580図1年齢別調節力と近点距離表2コンタクトレンズ(CL)の老視への対応法表3コンタクトレンズ(CL)と眼鏡の併用1.CLと眼鏡の併用2.CLの球面度数を中間距離に設定3.CLによるモノビジョン法4.遠近両用CLの処方・遠方視用度数設定CL+近用眼鏡・近方視用度数設定CL+遠用眼鏡表4コンタクトレンズ(CL)の球面度数を中間距離に設定コンタクトレンズの球面度数を中間距離に設定する老視への対応法には以下の二つの方法がある.・近視では低矯正に度数設定(度数を弱めに設定)・遠視では過矯正に度数設定(度数を強めに設定)表5モノビジョン法の種類モノビジョン法の種類優位眼非優位眼モノビジョン単焦点CL※1単焦点CL※2モディファイド・モノビジョン単焦点CL※1遠近両用CL※1モディファイド・モディファイド・モノビジョン遠近両用CL※1遠近両用CL※2※1遠方が両眼で違和感なく見えるように遠方適正度数に調整する.※2近方が両眼で違和感なく見えるように遠方適正度数からプラス側に調整する.ただし両眼視機能が維持できるように0.25D.1.50Dの範囲内とする.覗き孔法(hole-in-cardtest)両手で作った穴(またはカードの穴)遮蔽によって目標が見えなくなった側から両眼で目標を注視させる.の眼を優位眼と判定する.図2遠方視での優位眼の判定方法表6遠近両用コンタクトレンズの分類機能焦点形状中心光学部種類交代視二重焦点セグメント型遠用HCL同心円型同心円型遠用SCL二重焦点近用回折型近用同時視累進屈折力非球面型遠用HCLSCL近用SCL拡張焦点深度同心円型遠用SCL近用SCL:ソフトコンタクトレンズ,HCL:ハードコンタクトレンズ.交代視型セグメント型同心円型同時視型同心円型非球面型回折型図3遠近両用コンタクトレンズの光学部形状デザイン*見え方のイメージ遠方の景色道路標識テレビパソコン携帯電話近方視近方視近方視良好不良良好不良良好不良良好不良良好不良良好不良遠方視遠方視遠方視図4遠近両用コンタクトレンズの見え方の特性の分類CLの使用経験レンズの種類(SCL/HCL)を選択遠方視・近方視の重視度製品(デザイン/メーカー)を選択CLのフィッティング検査処方レンズの製品を決定見え方,装用感,ハンドリングレンズ規格を決定し,処方図5遠近両用コンタクトレンズ(CL)の処方手順まずCLの使用経験からレンズの種類を選択し,遠方視・近方視の重視度から製品を選択する.加入度数の設定年齢,近方矯正加入度数にかかわらず最初は,低い加入度数のレンズを選択球面度数の設定自覚的屈折度数※より0.50D~+1.00Dプラス側から設定図6遠近両用コンタクトレンズ(CL)の度数設定加入度数はまず低い加入度数を選択し,球面度数は低い加入度数であっても近方が見えるプラス側に設定し度数調整を開始する.装用開始時に確実に近方が見える度数設定になっていることで,度数調整は遠方矯正の不足分をマイナス度数の追加で対応することになり,度数調整がシンプル化され過矯正を起しにくい.

スポーツをする人にとってのコンタクトレンズ

2022年11月30日 水曜日

スポーツをする人にとってのコンタクトレンズContactLensesforUseinSports工藤大介*はじめに多くのスポーツにおいて,視力の果たす役割が重要であることは論をまたない.しかし,実際の競技能力とどの程度関係するかを科学的に評価するのはむずかしい.競技によっては,視力が競技能力にあまり影響しないものもある.競技能力に影響する因子は多く,視力はその中の一要因に過ぎない.眼科医がスポーツをする人の競技能力を,眼科的観点からサポートできるとすれば,現時点でできることは,眼疾患があればそれを治療し,視力を適切に,正しく矯正することだけである.現在,視力矯正は眼鏡,コンタクトレンズ(contactlens:CL),屈折矯正手術,オルソケラトロジー(orthokeratology:Ortho-K),レーザー角膜内切削形成(laserinsituker-atomileusis:LASIK)などさまざまな方法で行われているが,スポーツでもっとも多く使用されている矯正手段はCLであろう.本稿は,患者がスポーツ時にCLを用いたいと希望した際に,必要とされる基礎知識と処方時の留意点についての,眼科専門医のスポーツドクターである筆者からの提案である.筆者の個人的見解も多分に盛り込まれているので,あくまでもご自身がCLを処方される際の参考にしていただければ幸いである.ICLの適応があるかどうかまず,重要な点は,CLは誰にでも適応になる手段ではないことである.直接角膜上に装用することから,厚生労働大臣により,使用法を誤ると人体に重篤な合併症を生じさせる危険のある,高度管理医療機器に指定されている.したがって,角結膜疾患やドライアイで涙液分泌量の著しく低い患者には使用できないことがある.また,ディスポーザブルのCL以外は,レンズの洗浄などの定期的なケアが必要となる.患者がきちんとCLのリスクやケアの重要性を理解し,実施できるかどうか,年齢,使用環境,患者個人の性格などからの見きわめも重要となる.次に,CLによる矯正が必要か否かを判断する必要がある.多種多様な競技があるなかで,必ずしもすべての競技時の視力矯正手段としてCLが適しているわけではない.多様な視力矯正手段のなかから,CLを選択することが妥当かどうか,患者本人の希望と眼の状態,どのような状況で使用するかなど,多角的な面からの検討が求められる.また,CLによる矯正を選択した場合,競技種目の特性,競技環境によって,最適と思われるCLの種類は変わってくる.したがって,眼科医はそれぞれの競技の特徴や競技環境と,各種CLの特徴を理解したうえで,患者に対し,競技をするうえで最適なCLを提案する必要がある.IIスポーツの特性に適したCLのタイプスポーツ時に用いられるCLの種類はハードCL(hardCL:HCL),ソフトCL(softCL:SCL)に大別される.*DaisukeKudo:順天堂大学大学院医学研究科眼科学〔別刷請求先〕工藤大介:〒113-8421東京都文京区本郷3-1-3順天堂大学大学院医学研究科眼科学0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(23)1463FrontedgeFrontedge図1スポーツ用SCL(スポーツビュー)のデザイン(アイミー提供)33CHCCHC2O-COCH32COCHCHOCHCHOPOCHCHN+CH3OR2222CHO3mnR:アルキル基図2MPCポリマーの化学構造式右用レンズ左用レンズ図3乱視矯正用SCL(ユーソフト)のガイドマーク調光反応前(シード提供)調光反応後(着色している)図4調光着色レンズの装用写真(ジョンソン・エンド・ジョンソン提供)の際のCL装用は,アレルギー性結膜炎などを惹起して問題となることがある.SCLに抗アレルギー薬であるケトチフェンを添加した抗アレルギー薬含有SCLは,そのような患者のスポーツ時の装用に用いることができる.しかし,アレルギー性結膜炎を発症した際は原則としてCLは装用中止とし,治療をすることが重要である.スポーツ選手,とくに競技を生業とするプロ選手は,自分の眼の状態よりも試合などの予定を優先して無理にCLを装用しようとする傾向があるので,とくに管理,指導する必要がある.IIIどの競技にどのタイプのCLが適しているかどの競技にどのタイプのCLを選択するかは,大きく競技の特性,競技中の環境という二つの面から考える必要がある.1.競技の特性から選択するそれぞれの競技ごとに競技自体のもつ特性があり,その特性に合わせたCLを選択する.CLの装用という点においては,その競技が①激しい動きや相手との接触を伴うかどうか②ボールや指標が動くかどうか,という二点で多くは分類できる.a.激しい動きや相手との接触を伴うかどうか体操,ダンス,エアロビクスなど,動きの激しい競技では,動きによってレンズが脱落しにくいSCLが適している.球技のなかでも相手との接触の多いラグビー,サッカー,バスケットボールや,格闘系の競技である柔道,ボクシング,レスリングなどでは,相手と接触する機会が多いので,眼そのものに対する接触や,強い衝撃により脱落しにくいSCLが適している.また,頻繁にジャンプを繰り返すバレーボールなども,着地の衝撃でCLが脱落することの少ないSCLの適応となる.一方,激しい動きや相手との接触のないビリヤード,パワーリフティング,ボディビルなどの競技ではSCL,HCLいずれでの競技も可能であり,競技者の眼の状態や本人が競技時にどちらのレンズで競技がしやすいか,といった点などから判断する.b.ボールや指標などが動くかどうか野球,テニス,バドミントンなどボールやシャトルが高速で移動する競技では,素早く頻回な眼球運動が要求されることが多く,瞬時の眼球運動でずれにくいSCLが望ましい.一方,ライフル射撃やアーチェリー,ダーツなど,固定された指標を明視する必要がある競技では,よりはっきり指標が見えることが有利である.同じ矯正視力でも,SCLと比較してHCLはコントラスト感度がよいとされ,またこのような競技では激しい動きも伴わないため,HCLが適している.SCLでも,レンズそのものに着色し,コントラスト感度を上げる機能を有するレンズが開発,市販され,米国ではメジャーリーグの選手などが用いており,日本でもかつて市販されていた.大学野球選手を対象とし,黄色に着色したSCLを用いた研究もあるが,羞明感などの自覚症状の改善を認めたが,競技パフォーマンスに与える影響は不明とされている4).2.競技中の環境条件から選択する競技中のCL装用者を取り巻く環境は競技によってさまざまであり,眼に与える影響も大きく異なる.それらの環境に応じたCLを選択することも重要である.a.埃や泥で汚染される環境での競技現在では人工芝のグラウンドも増えてきたが,まだまだ土のグラウンドも多い.土のグラウンドで行われるラグビーやサッカーなどの競技では,眼もCLも汚染される.このような環境では1日使い捨てタイプのSCL(disposableSCL:DDSCL)を用い,使用後は直ちに破棄するべきである.CLの脱落,紛失時に備え,必ず予備のCLを準備する.b.水中で行う競技①一般的な水泳競技Ortho-Kなどがよい適応になるケースも多いが,本稿ではCLの処方という観点から述べる.一般的な競泳では,視力が競技に及ぼす影響は大きくないので,マーカーや掲示板の表示が見える程度の視力でよいことが多い.水中での装用を認めているCLはないが,CLを装用しなければマーカーも見えないような選手は装用せざるを得ない.水中で脱落しにくい,という点ではSCL1466あたらしい眼科Vol.39,No.11,2022(26)図5アカントアメーバ角膜炎の前眼部写真り,試合中に頻繁に味方,相手選手の動きと,電光掲示板の残り時間を見る必要があるが,どうもしっくり見えない,とのことで受診した.かなり激しい動きを伴う競技の特性と,選手自身が軽度のドライアイを有していたことから,レンズ径と含水率の異なる複数のレンズをトライアルとして処方,実際の練習や試合で使用してもらった.理論的にはレンズ径の大きく,低含水率のものが好まれるのではないか,と予想したが,実際に選手がもっともプレイしやすいと選んだのは,通常のレンズ径で高含水率のSCLであった.トライアルで渡したレンズはそれぞれ極端にフィッティングが異なるということもなかったが,SCLは同じベースカーブでも製品によりフィッティングが微妙に異なり,装用感に関しては主観的なものとなる.あくまで実際の練習,試合での装用が,本人が競技しやすく,満足できるものかどうかということが唯一の正解となる.したがって,スポーツ選手へのCL処方は,いくつかの候補のレンズを実際の試合や練習で使用してもらってから,本人の感想を参考にして選択したほうがよい.Vスポーツをする小児に対するCL処方小児にとっても,大人と同様にスポーツをする際,CLが適応となるケースは多い.小児のCL処方希望の動機は,運動のため,とするものがもっとも多く,全体の半数以上であったという報告がある.また,運動の内容としてはサッカー,野球などの球技系種目を中心に,バレエ,ダンス,武道などであった6).小児においても眼鏡やスポーツ用ゴーグル装用ができない場合,運動時にはCLの特性が適している.小児へのCL処方でもっとも問題となるのは,正しく安全に使用できるか,という点である.これには小児本人だけでなく,保護者への指導,啓発が重要となる.本人と保護者に対し,CLが高度管理医療機器に指定されていること,扱いを誤ると重篤な眼合併症を招くリスクがあることをしっかりと説明し,理解してもらうことが重要である.指導のみならず,定期経過観察を必ず行い,少しでも異常がみられた場合はすぐに装用を中止し,受診するよう指導する.レンズケアによるトラブルを避けるため,可能であれば洗浄不要なDDSCLを第一選択とし,スポーツ時のみの使用に限定したほうが,より安全に管理できると考える.VI最近の話題.eスポーツeスポーツ(e-sports)とは「エレクトロニック・スポーツ」の略で,電子機器を用いて行う娯楽,競技,スポーツ全般をさす言葉であり,コンピュータゲーム,ビデオゲームを使ったプレイヤー同士の対戦をスポーツ競技として捉える際の名称である.欧米ではチェスやビリヤードもスポーツとして認知されている.eスポーツは1990年代後半から欧米・韓国を中心に発展し,現在の世界プレイヤー人口推計は1億人以上と考えられている.eスポーツの競技としての特徴は,手の動き以外は激しい動きを伴わないが,大きい画面でのプレイでは,ゲームの種類によっては,かなり激しい眼球運動を伴う場合があること,長時間モニターを注視すること,基本的には室内で行われること,があげられる.眼科的には,モニターを注視することにより瞬目が減少し,眼瞼を大きく開大することにより乾燥すること,長時間凝視することによる眼精疲労などが問題となる.乾燥という点からは,CLよりは眼鏡のほうが適しているのではないか,と考えるが,不同視や,何らかの理由で眼鏡がかけられない場合は,CLを装用することもあるかもしれない.手以外の身体の部分は動かさないが,大画面での格闘ゲームなどではかなり激しい眼球運動を伴うこともあるので,乾燥に強いSCLを装用する.しかし,実際にはゲームの種類やプレイヤーの眼の状態,画面の大きさやプレイ時間などにもよるので,実際のゲーム時に使用してもらい,プレイヤー本人にとって最適なCLを処方するのがよい.どのようなCLを使用しても,非常に乾燥しやすい環境下での装用となるので,装用中は適宜人工涙液などを使用し,乾燥の予防をするよう指導する.VIIスポーツ時のCL装用は安全かわが国のスポーツによる外傷のうち,眼外傷の占める割合は全体の2.5%で,年間4,000件以上発生している.スポーツ外傷の受傷原因としては球技によるものがもっとも多く,全体の半数近くを占める7).スポーツ眼外傷1468あたらしい眼科Vol.39,No.11,2022(28)

デスクワークの多い若い人

2022年11月30日 水曜日

デスクワークの多い若い人PrescriptionofContactLensesforYoungAdultswithDemandingDeskJobs大口泰治*はじめにデスクワークの多い若い人は近方視をいかに快適にするかが大切である.通常は近方視を楽にすること=低矯正と思われていることが多いが,単に低矯正とすることでは快適な近方視とはならないことがある.近方視にかかる調節の負担を減らすためには正の調節を減らすことが必要だが,低矯正とすることで遠方視が快適にできない場合は,ときには眼位の不安定さを生じ,毛様体筋と外眼筋の疲労を増加させることがある.視力補正は常に屈折・調節・眼位の三者のバランスを考慮しながら行う必要がある.壮年期前の若い人であっても調節や眼位に異常を生じていることもある.その状態を的確に把握しながらコンタクトレンズ(contactlens:CL)処方を行う必要がある.I近方視における眼の動きデスクワークの多い若い人は20~30歳台が想定される.学童期と違い1日中パーソナルコンピューター画面やスマートフォンを見たりしながら作業をすることになり,毛様体筋と外眼筋に負担がかかる(図1).遠方視時は毛様体筋が弛緩し水晶体を薄くしている(負の調節).近方視時は毛様体筋が緊張(収縮)し水晶体を膨らませてピントを調節している(正の調節).負の調節は交感神経支配であり,正の調節は副交感神経支配である.したがって,本来は日中や活動時には交感神経が優位となるが,眼においてはデスクワークを行うと副交感神経が優位となり,そのバランスが崩れてしまうことになる.調節力は測定可能な10歳台からは低下し,40歳時点で4~5D程度はあるとされる1)が,個人差が大きい.また,他覚的に測定可能な調節反応量は35歳までは加齢変化が明らかではないが,眼の疲労を訴える患者では若くても近方視に必要な調節反応量が記録できないことも多いことがわかっている2).したがって,個々の患者に合わせて必要な調節力を考慮して処方を考える必要がある.また,パーソナルコンピューターと異なり,スマートフォンの平均視距離は19.3cmでその輻湊角は31Δと報告3)されており,近方視は外眼筋に対する負担も大きい.CLでは眼鏡と異なり眼位を補正できるプリズムレンズはない.適切な視距離を保つためには低矯正にして視距離が短くなることは避けなければならない.II加入度数が+0.50D以下の低加入遠近両用CLCLで調節を補助する方法として遠近両用CLがある.とくに最近は各社のソフトCL(softCL:SCL)で加入度数が+0.50D以下の製品が発売されている(表1).加入度数が+0.50D以下の製品のメリットは遠方の見え方の質が低下しにくいことである(図2).加入度数が+0.50D以下のSCLは,長時間の近見作業で眼に疲れを自覚しているSCL装用者を対象に同一素材の単焦点と比較した報告4)で,アンケート結果では*YasuharuOguchi:梶田眼科,福島県立医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕大口泰治:〒108-0023東京都港区芝浦3-6-3協栄ビル4F梶田眼科0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(15)1455ab図1近方視時の毛様体筋と外眼筋への負担a:遠方視時.b:近方視時.近方視時は毛様体筋と外眼筋に負担がかかる.表1各社加入度数+0.50D以下の遠近両用SCLの一覧1day2week商品名Prime1daySMARTFOCUS1dayPureうるおい1dayPureViewプラスFlexSupportEyeco.ret1dayUVMViewSupport2WEEKメニコンバイオフィニティDUOアクティブ製品外装製造会社アイレSEEDSEEDSEEDメニコンクーパービジョンDk値2830301234128B.C.8.8.mm8.8.mm8.8.mm8.6.mm8.6.mm8.6.mm球面度数+1.00~-9.00D+5.00~-10.00D+5.00~-12.00D±0.00~-8.00D-0.25~-10.00D+5.00~-12.00D加入度数+0.50D+0.50D+0.50D+0.50D+0.50D+0.25D直径14.2mm14.2mm14.2mm14.0mm14.5mm14.0mm中心近用遠用遠用遠用遠用近用B.C.:ベースカーブabc図2単焦点,低加入,高加入遠近CLのイメージa:単焦点.b:低加入.c:高加入.低加入であれば遠方の光量低下が少なく像の歪みも少ない.表2症例1(24歳,女性)の検査所見右眼左眼CL上のオーバーレフ-0.50D(cyl-0.50DAx139°+0.25D(cyl-0.50DAx11°CL視力(1.0×CL)(1.2×CL)裸眼の他覚的屈折値-8.25D(cyl-0.75DAx141°-6.75D(cyl-0.50DAx16°使用中のCL度数-7.00D-6.00D調節検査(アコモレフ)表3症例1に処方したCLと検査所見右眼左眼処方CL度数-7.00D-5.75DCL上でのオーバーレフ-0.50D(cyl-0.75DAx155°-0.25D(cyl-0.25DAx20°CL視力(0.9×CL)(1.2×CL)表4症例2(24歳,男性)の検査所見右眼左眼CL上のオーバーレフ+1.00D(cyl-0.75DAx180°+0.25D(cyl-1.50DAx176°CL視力(0.5×CL)(0.8×CL+1.25D(cyl-0.75DAx180°)(0.9×CL)(1.2×CL+0.25D(cyl-0.75DAx180°)裸眼の他覚的屈折値-3.25D(cyl-1.00DAx180°-4.25D(cyl-1.50DAx176°使用中のCL度数-4.50D-4.50D調節検査(AA2)表5症例2に処方したCLと検査所見右眼左眼処方CL度数-2.75D(cyl-0.75DAx180°-2.50D(cyl-0.75DAx180°CL上でのオーバーレフ-0.50D(cyl-0.25DAx141°-1.50D(cyl-0.75DAx4°CL視力(1.2×CL)(0.3×CL)表6症例3(23歳,女性)の検査所見右眼左眼CL上のオーバーレフ-0.50D(cyl-0.50DAx26°-0.25D(cyl-0.50DAx162°CL視力(1.0×CL)(1.2×CL)裸眼の他覚的屈折値-10.00D(cyl-0.50DAx23°-10.00D(cyl-1.00DAx165°使用中のCL度数-8.00D-8.50D調節検査(AA2)表7症例3に処方したCLと検査所見右眼左眼処方CL度数-8.00DLow(+0.75D~+1.25D)-8.50DLow(+0.75D~+1.25D)CL上でのオーバーレフ-1.00D(cyl-0.50DAx9°-0.75D(cyl-0.75DAx171°CL視力両眼遠方(0.8×CL)両眼近方(1.2×CL)--表8症例4(23歳,女性)の検査所見右眼左眼他覚的屈折値+0.25D(cyl-1.25DAx5°-2.75D(cyl-0.50DAx6°自覚的屈折値1.0(1.0×+0.75D)0.2(1.5×-1.75D)使用中の眼鏡0.00D(cyl-0.50D180°-1.50D(cyl-0.25D180°調節検査(AA2)表9症例4に処方したCLと検査所見右眼左眼処方CL度数+1.75D-1.75D°CL上でのオーバーレフ-1.75D(cyl-1.25DAx179°-0.50D(cyl-0.50DAx178°CL視力(0.2×CL)(1.2×CL)表10症例4に1カ月後に処方したCLと検査所見右眼左眼処方CL度数+1.75D-1.25D°CL上でのオーバーレフ-1.50D(cyl-1.25DAx3°-0.75D(cyl-0.50DAx2°CL視力(0.4×CL)(1.2×CL)表11症例5(20歳,女性)の初診時検査所見右眼左眼他覚的屈折値-4.25D(cyl-7.00DAx169°-3.25D(cyl-8.00DAx12°角膜曲率半径8.26.mm/7.25.mmcyl-5.75DA173°8.33.mm/7.23.mmcyl-6.25DA10°自覚的屈折値0.15(0.9×-2.75D(cyl-6.00DAx170°)0.4(0.8×-1.75D(cyl-6.00DAx10°)表12症例5に処方した左眼Bi.TorHCLと検査所見ベースカーブ1,2/球面度数,乱視度数/直径7.35.mm,8.35.mm/-1.50D,cyl-6.50D/9.0mmCL上でのオーバーレフ+0.25D(cyl-0.75DAx20°CL視力Vs=(0.9×CL)(1.0×CL×cyl-0.50DAx20°)abcde図3症例5の強度直乱視に対するBi.TorHCL処方a:前眼部OCT(axialpower).b:球面HCL.c:bの前眼部OCT像.d:Bi-TorHCL.e:dの前眼部OCT像.

小中学生のコンタクトレンズ使用の現況

2022年11月30日 水曜日

小中学生のコンタクトレンズ使用の現況CurrentStatusofContactLensesUseinElementaryandJuniorHighSchoolStudents宮本裕子*はじめに日頃,臨床の現場で「コンタクトレンズ(contactlens:CL)は何年生になったらできますか?」とよく聞かれる.筆者は,自分で自分の目の管理ができるなら,中学生でも必要な場合は使用してよいのではと答えている.では,小学生はどうなのか.処方医によって考えが異なり,CLは中学生からとしている先生もおられる1)が,筆者自身は必要な場合は小学生にもCL処方を行うことはある.そもそも軽度近視はよい眼であるという話もあるが,近年は近視進行管理を意識してCLを処方することがある.多焦点のソフトCL(softCL:SCL)を使用したり,オルソケラトロジーにおいては6~8歳で開始すべき2)とする報告もいくつかあるので,一般眼科においても小学生にCLを処方する機会が増加しているように思われる.そこで今回,近年の小中学生に対するCL使用の現況を考えてみる.I学校現場でのコンタクトレンズ使用状況日本眼科医会が行った平成30年度の学校現場でのCL使用状況調査の結果3),小中高校生ともに,使い捨て(2週間頻回交換や定期交換レンズを含む)SCLつまり使用期限のあるSCLがもっとも多く使用されている(図1).そのなかでもとくに1日使い捨てSCLがもっとも多い.特徴的なのは,小学生では,オルソケラトロジーレンズが2番目に多く使用されていることである.また,初めてCLを使用する時期は中学1年生と高校1年生が多く,小学5,6年生は少ないながら近年増加傾向にある.実際,学校健診に行っても,小学校の高学年でクラスに1人くらいすでにCLを使用している児童がいたりする.小中高一貫校を除いて多くの場合は学校が変わり,新学期を迎える中学1年生あるいは高校1年生でCLデビューをすることが多いのではないかと思われる.本調査で気になるのは,CLの入手場所として小中高生ともにネット購入が増加し,また診察を受けない例が増加している点である.ネット購入例では,度数の管理ができておらず乱視矯正ができていなかったり,近視の進行に対応できないままであったり,逆に過矯正の度数のレンズが使用されていたりと,正しい処方ができていないのが現状である.II小中学生に処方する可能性のあるCL1.単焦点SCL初めて小中学生にCLを処方するとき,ほとんどの場合は単焦点SCLが処方されていると思う.1日使い捨てタイプや2週間交換タイプなどを本人と保護者に説明してどのようなレンズにするのかを決めていくが,スポーツや稽古事をするときにCLを使用したいという理由で,1日使い捨てタイプを処方することが多いように思う.自分でCLを取り扱えるように,レンズの装着脱や取り扱い指導をしっかり行うが,一度でできないことも多く,できるようになるまで何度か試みる.小学生でもスムーズに取り扱いができるようになる場合もあるが,*YukoMiyamoto:アイアイ眼科医院〔別刷請求先〕宮本裕子:〒558-0023大阪市住吉区山之内3-1-7アイアイ眼科医院0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(9)1449図1使用しているコンタクトレンズの種類a:小学生,b:中学生,c:高校生.ハード通常(日中装用ハードコンタクトレンズ)ハード連続(連続装用ハードコンタクトレンズ)オルソCK(オルソケラトロジーレンズ)ソフト通常(使用期限なしソフトコンタクトレンズ)カラーCCL(カラーコンタクトレンズ)使い捨てソフト(使用期限ありソフトコンタクトレンズ)(文献C3より許可を得て引用)表1当院の1年あたりのSCL度数変化ab右眼CSCL度数球面デザインのみ非球面デザインのみ進行度合い(4C2眼)(1C0眼)0.09D/年以下18眼(C42.9%)6眼(6C0.0%)0.25D/年以上9眼(2C1.4%)2眼(2C0.0%)右眼CSCLの球面デザインのみ非球面デザインのみ進行度数(4C2眼)(1C0眼)1年あたりの平均進行度数C0.15±0.12DC0.12±0.14Da:球面デザインの単焦点CSCLのみを使用してきた例と非球面デザインの単焦点CSCLのみを使用してきた例において,レンズ度数があまり変わらなかった例の割合と変化の大きかった例の割合.Cb:球面デザインの単焦点CSCLのみあるいは非球面デザインの単焦点SCLのみを使用してきた例のC1年あたりの平均進行度数の比較.a,bともに対象は,近視あるいは近視性乱視でCSCLを使用しC5年以上観察できている症例の右眼のレンズ度数.表2低加入度ソフトコンタクトレンズ2週間交換タイプ1日使い捨てタイプ商品名2WEEKメニコンデュオバイオフィニティアクティブシードC1dayPureうるおいプラスCViewSupportプライムワンデースマートフォーカス製造元メニコンクーパービジョンジャパンシードアイレ含水率CDk値72%34C48%128C58%30C58%C28ベースカーブC8.6CmmC8.6CmmC8.8CmmC8.8Cmm度数-0.25~-6.00(C0.25ステップ)-6.50~-10.0(C0.5ステップ)5.00~-6.00(C0.25ステップ)-6.50~-12.00(C0.5ステップ)5.00~-6.00(C0.25ステップ)-6.50~-12.00(C0.5ステップ)1.00~-7.00(C0.25ステップ)-7.50~-9.00(C0.5ステップサイズC14.5CmmC14.0CmmC14.2CmmC14.2Cmm加入度数C0.50DC0.25DC0.50DC0.50Dその他ガイドマークありシリコーンハイドロゲルレンズUVカット機能ありUVカット機能ありab図2ソフトコンタクトレンズの屈折度数分布デザインの例a:2重焦点ソフトコンタクトレンズの屈折度数デザインの例.中心に遠用度数が配置されその周囲に近用度数が配置されている場合.Cb:累進屈折ソフトコンタクトレンズの屈折度数デザインの例.中心の遠用部分に累進屈折度数が配置されその周囲に近用度数が配置されている場合.c:EDOF(extendedCdepthCoffocus)型ソフトコンタクトレンズの屈折度数デザインの例.中心に遠用部分があり遠用度数,中間度数,近用度数が複雑に組み合わされている場合.(画像提供先:BrianHoldenVisonInstitute,株式会社シード)就学前児童-abcd--図4日本眼科医会が作成したコンタクトレンズ啓発動画のQRコードa:第C1話.Cb:第C2話.Cc:第C3話.Cd:第C4話.■用語解説■高度管理医療機器:医療機器は,一般医療機器,管理医療機器,高度管理医療機器に分類され,そのなかで,高度管理医療機器は,副作用または障害が生じたときに人の生命や健康に重大な影響を与える可能性のあるものをさす.そのなかには,人工呼吸器,人工心肺装置,自動体外式除細動器(AED),心臓ペースメーカー,コンタクトレンズなどの医療機器が含まれている.–