眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋432.偽水晶体眼の硝子体手術翌日に発生した液状後発白内障●はじめに液状後発白内障は,白内障術後数年を経て眼内レンズ(intraocularlens:IOL)後面と後.の間に乳白色の液状物質が貯留する疾患であり,capsularCblockCsyn-drome(CBS)の晩期型に分類される.今回筆者らは,すでにCIOLが挿入されていた患者の硝子体手術翌日に液状後発白内障を発症した症例を経験したので報告する.C●症例患者はC67歳,女性.20年前に糖尿病と診断され,14年前に両眼の増殖糖尿病網膜症に対して汎網膜光凝固術,4年前に両眼の白内障に対して手術が施行されていた.今回,右眼に硝子体出血を発症したため眼科三宅病院を紹介受診した.初診時所見は,右眼矯正視力(0.3)で,前眼部は異常なく,両眼ともCIOL挿入眼で,IOLは完全に.内固定されていた.IOL後面と後.は完全に接した状態であり,後.に軽い混濁を認めた(図1).眼底所見は,右眼に硝子体出血を認め,視神経乳頭鼻側に新生血管を伴った増殖膜が観察された.太田晶子近藤峰生三重大学大学院医学研究科臨床医学系講座眼科学右眼の硝子体出血に対し硝子体手術が行われ,後.切除は行わなかった.術翌日の細隙灯顕微鏡検査(図2a)では,液状後発白内障に類似してCIOL後方の後.は硝子体側に滑らかに凸の形状を呈していた.液状物質は典型例に比して乳白色の色調は淡かった.液状後発白内障は前眼部光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)でも確認できた(図2b).右矯正視力は(1.0)と改善した.その後の経過観察で,液状物質の混濁はやや増加し,図1硝子体手術術前の細隙灯顕微鏡写真IOLが.内に挿入され液状後発白内障は認めない.(文献C1より引用)図2硝子体手術翌日の細隙灯顕微鏡写真(a)および前眼部OCT画像(b)a:IOL後方の後.は凸状を呈し,液状後発白内障を生じている.Cb:IOL後面と後.の間に物質を認めるが,典型的な液状後発白内障に比較してやや内容物の色調が淡いようにみられる.(文献C1より引用)(63)あたらしい眼科Vol.39,No.11,2022C15030910-1810/22/\100/頁/JCOPY図3硝子体手術2年後の細隙灯顕微鏡写真(a)および前眼部OCT画像(b)a:IOL後方の後.は凸状の程度は変わらないが,内部の色調はより乳白色となっている.Cb:IOL後面と後.の間の物質の色調は以前と比較して濃くなっているようにみえる.(文献C1より引用)通常の液状後発白内障と同程度の濃度を呈するようになった(図3b).硝子体手術C2年後には後.上にはCElschnig’spearlからの後.混濁が増しており(図3a),右眼矯正視力は(0.6)と低下していた.同日CYAGレーザー後.切開を施行した.液状物質は速やかに硝子体腔に流出し,視力は(1.0)に改善した.C●考按CBSは,白内障手術時に施行される連続円形切.に連続して生じる水晶体.内ブロックによる疾患群である.発生時期により術中・術後早期・術後晩期にC3分類される.本症例では白内障手術後C4年が経過していたが,硝子体手術前にはCIOL後面に液状物質は認めていなかった.術中,前房に回った灌流液が前.とCIOLのわずかな隙間から水晶体.内へ入り込み,液状物質の迷入が起きたことが誘因と考えられる.今回は硝子体手術後翌日にCBSが発症しているが,術後に浅前房は認められないこと,またCIOL後面の後.の後方突出は軽度であることから,術後早期CCBSの形状とは異なる.IOL後方の後.突出は液状後発白内障に類似している.その後,経時的に水晶体上皮細胞の再増殖,皮質成分の液化が加わり,徐々に内容物の濃度が濃くなってきたと考えられる.また,糖尿病の背景に加え,手術手技に伴い眼内のサイトカインなどに変化が起こり,血管房水柵の破綻がより助長された可能性もある.今回の症例は今まで報告のない,偽水晶体眼における硝子体手術後の術後早期CBS,または白内障手術を起点とするなら,液状後発白内障の亜型と考えられた.文献1)OtaA,OtaI,KachiSetal:FindingsinpseudophakiceyethatCdevelopedClique.edCaftercataract-likeCsubstanceConeCdayCafterCvitrectomy.CAmCJCOphthalmolCCaseCRepC27:C101615,C20222)MiyakeCK,COtaCI,CIchihashiCSCetal:NewCclassi.cationCofCcapsularCblockCsyndrome.CJCCataractCRefractCSurgC24:C1230-1234,C19983)MiyakeCK,COtaCI,CMiyakeCSCetal:Lique.edCaftercata-ract:ACcomplicationCofCcontinuousCcurvilinearCcapsu-lorhexisandintraocularlensimplantationinthelenscap-sule.AmJOphthalmolC125:429-435,C1998