ICLが変えた日本の屈折矯正手術RefractiveSurgeryinJapanChangedbyICL五十嵐章史*はじめに屈折矯正手術はCLASIK(laserinsitukeratomileusis)に代表されるレーザー角膜屈折矯正手術(laserCvisioncorrection:LVC)とCICL(implantableCcollamerlens,STAAR社)に代表されるCphakicIOL(intraocularlens)の二つに大別される.LVCとCICLの割合は日本ではユニークな傾向があり,世界的にはほとんどの国で屈折矯正手術のC70~80%はCLVCであるのに対して,日本は逆にC60%程度がCICLであるといわれている.これは国内のCLVCが過去に単一施設での集団感染例があったことや消費者庁の注意勧告がでたことが要因であり,国民の中にレーザー手術のネガティブな印象があることが示唆される.一方でアジア地域は強度近視が多いことから,日本の割合こそ妥当であるという風にも考えることはできる.本稿では国内の屈折矯正手術において第一選択となったCICLについて,なぜそのような傾向になったのかをさまざまな側面から解説する.CIICLの変遷ICLの世界における変遷を図1に,国内の変遷を図2に示す.ICLはCFyodorovらの研究をもとにC1993年にCSTAARsurgical社が原型となるcollamer素材のIC2020-Mを開発したのが始まりとされている.STAAR社はこのレンズをもとに,フットプレートを追加したCV1モデル,フットプレートのC2カ所にポジショニングマークを追加したCV2モデル,光学部を拡大したV3モデル,レンズの弯曲を強くし水晶体への接触を抑制したCV4モデルへと改良を加えた.このCICLV4は国内臨床治験の良好な臨床成績からC2010年に厚生労働省の認可を受けるに至り,翌C2011年には乱視矯正レンズであるCtoricICLV4も承認されたが,ICLV4には虹彩切除が必要なこと,一定の割合で代謝性白内障の進行のリスクがあるという欠点が残っていた.それらの欠点に対してC2004年に清水はレンズに穴をあけてレンズを通して房水が循環する画期的なデザインを考案し,現在はおおむね解決に至っている.HoleICL(ICLKS-Aqua-PORT)とよばれるこのレンズは,房水の流れを妨げず,視機能に影響しない大きさとしてC0.36Cmmの貫通孔をレンズ中央に作製され,その後の良好な成績1,2)から2011年にCCEマークを取得し,2014年に国内で承認が得ることになった.STAAR社はその後,このCholeICLをもとにハロー・グレアの改善目的に光学部を最大11%拡大したモデルを登場させ,そのレンズが現状では最新モデルである.現在,holeICLにおいて従来の光学部径のものをCEVO(V4c),光学部が拡大したものをCEVO+(V5)とよんでいる.CIIICLのスペックICLはCcollamerとよばれるCcollagenとCHEMAの重合体でできたプレート型の眼内レンズで,虹彩と水晶体の間のスペースである後房へ移植される.レンズの中央にはC0.36Cmmの貫通孔がある.また,四隅にはフット*AkihitoIgarashi:代官山アイクリニック〔別刷請求先〕五十嵐章史:〒150-0021東京都渋谷区恵比寿西C1-30-3グリーンヒル代官山C1F代官山アイクリニックC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(57)C1672011・HoleICL(ICLKS.AP)CEマーク取得承認1993・STAAR社がCollamerICL(IC2020.M)を開発,埋植19972005・ICLはCEマーク取得・VisianICLとして・FDA承認2016・光学部径が拡大したICLEVO+承認・販売20172022・EDOFモデルの・EVO/EVO+VisianICLがFDA承認ICLEVOVivaCEマーク取得・世界累計枚数200万眼達成図1世界におけるICLの変遷19972003~2010,2011・国内で初のICL埋植・国内でICLV4の治験(清水公也)・2010年non-toricICLV4認可・2011年toricICLV4認可2016・光学部径が拡大したICLEVO+承認・販売図2国内におけるICLの変遷Centralhole(0.36mm)フットプレートポジショニングマークアライメントマーク(TORICLINE)図3ICLレンズのデザイン中央に房水を循環させるC0.36Cmmの貫通孔があり,周辺の四つのフットプレートを毛様溝へ固定するデザインになっている.レンズ表裏が分かるようにポジショニングマークが左上,右下にある.表1国内承認範囲におけるICLレンズ度数球面レンズ:CEVO+ModelVICM5C球面度数CD(0C.5Dステップ)円柱度数CDEVO(VICMO)光学部径CmmCEVO+(VICM5)光学部径CmmCEVO+角膜面換算光学部径CmmC.3.0~C.9.0C─C5.8C6.1C7.6C.9.5~C.10.0C─C5.5C5.9-6.1C7.4-7.6C.10.5~C.12.5C─C5.3C5.3-5.8C6.6-7.3C.13.0~C.14.0C─C4.9C5.0-5.2C6.3-6.5C.14.5~C.18.0C─C4.9C─C─各モデル全長:12.1Cmm・12.6Cmm・13.2Cmm・13.7Cmm.球面度数+14.5DからC-18.0DはCEVOモデル(ModelVICMO)になる.トーリックレンズ:CEVO+ModelVTICM5C球面度数CD(0C.5Dステップ)円柱度数CD(0C.5Dステップ)EVO(VTICMO)光学部径CmmCEVO+(VTICM5)光学部径CmmCEVO+角膜面換算光学部径CmmC.3.0~C.9.0+1.0-+4.5C5.8C6.1C7.6C.9.5~C.10.0+1.0-+4.5C5.5C5.9-6.1C7.4-7.6C.10.5~C.12.5+1.0-+4.5C5.3C5.3-5.8C6.6-7.3C.13.0~C.14.0+1.0-+4.5C4.9C5.0-5.2C6.3-6.5C.14.5~C.18.0+1.0-+4.5C4.9C─C─Changesinhigher-orderaberrations(μm)球面度数.14.5DからC.18.0DはCEVOモデル(ModelVTICMO)になる.C1.501.000.500.00DComa-likeDSpherical-likeDTotalHOAsaberrationsaberrations図4強度近視例にける術前後の高次収差変化(6mm解析径)コマ様,球面様,全収差すべてにおいてCLASIKはCICLと比較して優位に増加している(p<0.001.Mann-WhitneyUtest).logcontrastsensitivityICLimplantationWavefrontguidedLASIK2.52.5221.51.510.500logspatialfrequency(cycle/degree)logspatialfrequency(cycle/degree)図5強度近視例における術前後のコントラスト感度コントラスト曲線の面積を示すCAULCSF(theareaunderthelogcontrastsensitivityfunction)において,ICLは術前に比べ術後コントラスト感度が有意に上昇しているのに対し,LASIKは術後有意に低下している(ともにp<0.001.Wilcoxonsigned-ranktest).図6ICL摘出ICLは長期間眼内に挿入されていても癒着はせず,レンズ素材も柔らかいため,レンズハプティクスの根本をしっかり把持し,2本のレンズ鑷子で手繰り寄せるように引っ張り出すと2.6~2.8Cmm程度の切開創でも摘出が可能である.00.20.40.60.811.21.400.20.40.60.811.21.4ICL術前検査:OCOS(OnlineCalculationandOrderingSystem)VS=0.06(1.2p×S-4.00D:Cyl-1.00Ax15°)R>G(1.5×S-4.25D:Cyl-1.00Ax15°)R>G◎(1.5×S-4.50D:Cyl-1.00Ax15°)R>G(1.5×S-4.75D:Cyl-1.00Ax15°)R=G(1.5p×S-5.00D:Cyl-1.00Ax15°)R<G(1.2×S-5.25D:Cyl-1.00Ax15°)R<G(1.2p×S-5.50D:CylAx°)best(1.5×S-4.25D:Cyl-1.00Ax15°)SEVS=(1.0×S-4.75D)※SE:SphericalEquivalent図8ICL術前視力検査の一例