考える手術⑬監修松井良諭・奥村直毅白内障.外摘出術(ECCE)田中寛京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学世界では白内障が未だもっとも多い失明原因であり,安全な白内障手術を安定して提供することは大切である.現在,わが国では白内障手術機器の機能向上や手術の知識の普及により,安全に白内障手術を行える環境が整っており,白内障手術はもっとも多く行われており,基本的な手術の一つとなっている.ただし,「基本的=リスクが高くなることがある.ECCEは切開創も大きく,また手術数も多くなく不安に感じるかもしれないが,うまく適応を判断することができれば,PEAより安全かつ短時間で手術を行うことが可能となる.今回はその中でも自己閉鎖を基本とする小切開ECCEについてとりあげる.聞き手:白内障.外摘出術(extracapsularcataract聞き手:ECCEを行うことができなければ対応できないextraction:ECCE)のよい適応となるのはどのようなケースはありますか?場合でしょうか?田中:いいえ,それはないと思います.ただし,ECCE田中:ECCEは水晶体の核を丸ごと創から娩出する手術が行えるとより安全に手術が可能な場合はあると思いまです.ECCEのよい適応としては核硬度が高い患者や角す.そもそも白内障手術の目的は安全に混濁した水晶体膜中央部の混濁がある患者があげられます.習熟すればを除去し,水晶体.に眼内レンズを挿入することです.褐色白内障など水晶体乳化吸引(phacoemulsi.cation「安全に」という言葉の中には「合併症なく」また「安andaspiration:PEA)では長時間かかる,もしくは対定した時間」といった意味も含まれていると考えます.応できない場合でも,15分以内で安定して手術を行う核硬度の高い白内障眼の場合はPEAでは角膜内皮障害ことが可能となります.PEAで長い時間を要すると,や後.破損といった合併症のリスクが高くなることがあ認知症や精神疾患がある患者では体動が徐々に大きくなりますが,ECCEをうまく行うことができれば合併症のり合併症のリスクが高まります.ECCEは超短時間で手リスクを低くすることができます.術を終了することはできませんが,習熟すれば安定した時間で手術を行うことが可能となります.聞き手:ECCEのメリットを教えてください.(73)あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023730910-1810/23/\100/頁/JCOPY考える手術田中:核硬度に依存せずに一定の操作で手術を行えるというメリットがあります.また,角膜中央に混濁を合併するケースでは,PEAよりもECCEでは安全に手術をすることが可能となります.そして,現在は切開や縫合といった手技を行う機会が減っているなかで,そのような手技を学べるといった副次的なメリットも存在します.聞き手:ECCEのコツを教えてください.田中:まず,頭位ですが,ややヘッドダウンにするようにして,上方の強角膜がしっかりと露出できるようにセッティングを行います.次に強角膜創作製ですが,私は核の大きさにもよりますが,1面目は約6mmの直線の強膜切開と両端に0.5mm程度のバックカットを入れた創を作製しています.2面目の創の深さは半層から2/3層をめざしクレッセントナイフを用いて作製します.中心部の切開創では,クレッセントナイフのカッティングエッジを振るように強角膜創を作製していき,その後眼球に並行になるようにクレッセントナイフの裏面を眼球に当てつつ,ナイフを円を描くようなイメージで横に切開を広げていきます.その後,スリットナイフを用いて眼内に穿孔しますが,二重穿孔にならないようにナイフを持つ手に力を入れず先端を振りながら抵抗のない部分を進めていき,創の先端まできたことを確認してから穿孔します.その後は横方向に広げるのですが,ナイフの先端が前房内にあることを確認しつつナイフの横の部分をつかって創拡大を行います(図1a).強角膜創作製時には有鈎鑷子で強膜を把持しますが,押し付けると眼球に歪みができ,きれいな創ができないため,把持部を手前に引くイメージで創作製を行います.核の娩出のためには大きな連続円形切.(continuouscurvilinearcapsulorrhexis:CCC)の作製が必要なため,前.鑷子を用いて大きなCCCを作製します.その後,核を前房に脱臼させるために,しっかりとハイドレーションを行ったのち,両手にフックを持ち,核を前房内に徐々に脱臼させていきます(図1b).核娩出は虹彩離断や破.などのリスクを伴うため,とくに注意が必要となります.角膜と水晶体の間に角膜内皮保護のため分散型の粘弾性物質を,破.予防のために後.に凝集型の粘弾性物質を充.します.輪匙はいくつか種類がありますが,粘弾性物質を充.しながら核を娩出できるイリゲーション輪匙を好んで用いています.挿入時は左右に軽く振りながら核の下に潜り込ませ,先端部分で虹彩を挟まないようにしっかりと視認します(図1c).娩出時はゆっくりと行い,核が手前にきたところで強膜創を下方に広げ,圧の逃げ場を一カ所にすることで娩出を行います.最後は皮質を除去し眼内レンズを挿入します.無縫合で術終了することを目標にしますが,閉鎖がこころもとない場合は縫合を行うことをお勧めします.聞き手:ECCEの合併症はどういったものがありますか?田中:強角膜創の閉鎖不全,角膜内皮障害,虹彩離断などがあげられます.創の厚みや距離などが不十分である場合は自己閉鎖を得られないことがあります.虹彩嵌頓の原因となるため,その場合は8-0バイクリル糸で縫合を行っています.創が核に対して小さい場合,また輪匙での機械的な損傷がある場合は,術後角膜内皮障害に伴う角膜浮腫を生じるため,言葉の通り圧を用いて「娩出」させるイメージで行うことが望ましいです.また,複数回の操作や視認不良な状態での操作により,虹彩離断とそれに伴う出血を認めることがあります.図1白内障.外摘出術の術中操作a:強角膜3面切開作製時.スリットナイフの先端が前房内にあることを確認しつつ創拡大を行う.b:核脱臼.片方のフックを核の下に,もう片方のフックを核の上におき行う.c:核娩出.イリゲーション輪匙をしっかりと核の下に潜り込ませ,先端部分で虹彩を挟んでいないことを確認する.74あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023(74)