●連載270監修=福地健郎中野匡270.小児緑内障に対する緑内障松田彰順天堂大学医学部眼科学講座インプラント手術小児緑内障治療の第一選択は多くの場合手術であり,トラベクロトミーなどの流出路再建術がまず試みられる.トラベクロトミーが奏効しない難治例では,濾過手術あるいは緑内障インプラント手術を施行することになるが,成人例とは異なるむずかしさがある.本稿では小児緑内障に対するインプラント手術の実際について述べる.●難治小児緑内障に対する術式流出路再建術が奏効しなかった難治小児緑内障に対する外科的なアプローチとしては,トラベクレクトミーなどの濾過手術,緑内障インプラント手術,毛様体破壊術が選択肢として考えられるが,どの術式にも問題点がある.小児緑内障に対する濾過手術は長期にわたる濾過胞感染のリスクを抱えることや,続発小児緑内障に多い無水晶体眼の緑内障に成績が悪いといった問題点が指摘されている1).一方で緑内障インプラントにはチューブの露出や眼の成長に伴う再手術などの問題点が,毛様体破壊術には網膜.離や眼球勞のリスクが指摘されてい図1Peters奇形に続発した小児緑内障に対するBaerveldt緑内障インプラント挿入術生後7カ月のPeters奇形の小児にBG101-250を前房内挿入したが,初回チューブの挿入時にの部位を角膜輪部と考えて,その1.5mm後方からチューブを挿入した.実際にはの部位が角膜輪部に相当していた(a).手術から5カ月後の僚眼手術時にチューブが輪部から露出していることが判明し(b),その後チューブの挿入位置を後方に移動した.チューブの後方移動の際は前房内に十分量のヒーロンVを注入し,前房を深く保って,後方から(角膜輪部から2mm程度後方の部位()から)前房内に27ゲージ→23ゲージの順に穿刺し(c),チューブを前房内に再挿入した(d).角膜径が拡大していることもあり,後方からの針の穿刺時には感覚的にかなりの違和感を感じながらの手技であった.その後チューブ露出は認めず,眼圧もコントロールされている.(71)あたらしい眼科Vol.39,No.12,202216390910-1810/22/\100/頁/JCOPY図2先天白内障術後の続発緑内障に対するBaerveldt緑内障インプラント挿入術先天白内障に対して8カ月時に両眼の水晶体吸引術+前部硝子体切除を施行し,6歳時に緑内障と診断され,12歳時にトラベクロトミーを施行するも眼圧コントロールが得られなかった症例.耳上側にBaerveldt緑内障インプラントのプレートを挿入し,前房内にチューブ先端を留置した.術後5年経過した現在でも良好な眼圧コントロールを維持している.る1).小児緑内障に対する緑内障インプラント手術における手技上の注意は成人例と共通の部分も多く,まずは成人例で十分な経験を積んでから難治小児例の手術に向かうのが適当と考える.●小児緑内障に対するインプラント手術の実際筆者自身は小児緑内障のインプラント手術では原則としてBaerveldt緑内障インプラントBG103-250を使用している.長期の眼圧コントロールがAhmed緑内障バルブより優れていることと,多くの場合,小児眼ではBG101-350を挿入することが容積的に困難であることがその理由である.また,特殊な場合を除いてチューブは前房内に挿入することになる.角膜径が拡大した小児緑内障では,隅角の位置を正確に同定することがむずかしく,実際の隅角よりも角膜寄りからチューブを挿入しがちである.図1に実際の例を示す.小児緑内障の場合は強膜が菲薄化していることが多く,チューブ位置の修正のために穿刺部位を変更することは術後過剰濾過の原因になることがあるため,できる限り避けるべきで,やむを得ない場合にも穿刺部位は必ず縫合しておく必要がある.また,チューブ周囲からの房水の漏出も過剰濾過を誘発することがあるため,強膜が薄い患者では,まず25ゲージで穿刺し,タイトな刺入部位からのチューブ挿入を心がけている.成人例であれば過剰濾過の場合でも前房形成やチューブ内へのステント挿入などのこまめな対処が可能であるが,小児では,そういった処置であっても全身麻酔をかける必要があり,追加処置のハードルが高いことを常に念頭におく必要がある.多重手術眼にみられる上方結膜の瘢痕化症例,先天白内障手術後の無水晶体眼に続発する緑内障,濾過手術の施行がむずかしいPeters奇形などの小児緑内障に対しては,濾過手術と比較して,緑内障インプラント手術に相対的なメリットがあると考えられる(図2).●小児緑内障インプラント手術の注意点小児緑内障に対するBaerveldt緑内障インプラント挿入術における注意点をあげる.①結膜を丁寧に扱う.②プレートは角膜輪部から9mm後方に8-0ナイロン糸で確実に固定する.眼球・眼窩の大きさが小さく挿入が困難な場合はプレートの一部をハサミで切断してトリミングすることもある.③安全性を考えてチューブの根部2カ所で7-0バイクリル糸を用い確実に(watertightに)結紮する.④術後の過剰濾過を防ぐためにSher-wood’sslitは置かない.⑤前房内へのチューブ挿入は虹彩と並行よりはやや虹彩向きに挿入する.⑥強膜パッチを用いてチューブを被覆し,丁寧に結膜縫合をする.⑦手術終了時には分散型の粘弾性物質を前房に残し,指で眼圧を確認して手術を終了する.こういったことを筆者は心がけている.文献1)WernerM,GrajewskiAL:Furthersurgicaloptionsinchildren.In:Glaucoma,2nded(ShaarawyTMed),p1137-1149,Elsevier,20151640あたらしい眼科Vol.39,No.12,2022(72)