《原著》あたらしい眼科34(6):903.908,2017cロンドンオリンピックの代表選手と候補選手の視力と視力矯正方法について枝川宏*1,2,3川原貴*3奥脇透*3小松裕*3土肥美智子*3先崎陽子*3川口澄*3桑原亜紀*3赤間高雄*4松原正男*2,3*1えだがわ眼科クリニック*2東京女子医科大学東医療センター眼科*3国立スポーツ科学センター*4早稲田大学スポーツ科学学術院VisualAcuityandVisualAcuityCorrectionMethodinRepresentativeandCandidatePlayersintheLondonOlympicsHiroshiEdagawa1,2,3),TakashiKawahara3),TouruOkuwaki3),HiroshiKomatsu3),MichikoDoi3),YokoSenzaki3),MasumiKawaguchi3),AkiKuwabara3),TakaoAkama4)andMasaoMatsubara2,3)1)EdagawaEyeClinic,2)DepartmentofOphthalmology,TokyoWomens’MedicalUniversityMedicalCenterEast,3)JapanInstituteofSportsSciences,4)FacultyofSportScience,WasedaUniversityロンドンオリンピックにおける31競技種目の代表選手294人と候補選手876人の視力測定と矯正方法について聞き取り調査を行った.視力は競技時と同様の矯正状態で片眼と両眼の遠方視力を測定した.その結果,1)競技群別の分析では,単眼視力・両眼視力・非矯正眼視力・矯正眼視力と矯正方法は競技群間で有意な差があった(p<0.05).競技群で視力と視力矯正方法が違っていたのは,競技特性が関係していると考えられた.2)代表選手群と候補選手群の分析では,単眼視力・両眼視力・非矯正眼視力・矯正眼視力と矯正方法は代表選手群と候補選手群で有意な差があった(p<0.05).代表選手群と候補選手群の視力と視力矯正方法が違っていたのは,代表選手群と候補選手群のスポーツ環境の違いによるものと考えられた.Visualacuitytestingandinterviewsastovisualacuitycorrectionmethodwereconductedin294representa-tiveplayersand876candidateplayersof31kindsofsportingeventsintheLondonOlympics.Corrected,unilateralandbilateraldistantvisualacuityweremeasuredinasamestateduringplay.Theanalysisresultswereasfol-lows:1.Analysisofathleticeventgroupsdisclosedsigni.cantdi.erencesamongthemregardingmonocular,binoc-ular,non-correctedandcorrectedvisualacuity,andvisualcorrectionmethod(p<0.05).Itwasconsideredthatthecharacteristicsoftheparticularsportswererelatedtothedi.erencesincorrectedvisualacuityandcorrectionmethod.2.Analysisoftherepresentativeplayersgroupandthecandidateplayersgroupshowedsigni.cantdi.erencesbetweenthemregardingmonocular,binocular,non-correctedandcorrectedvisualacuity,andcorrec-tionmethod(p<0.05).Thesedi.erenceswereprobablyduetothedi.eringsportenvironments.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(6):903.908,2017〕Keywords:視力,アスリート,オリンピック,スポーツ.visualacuity,athletes,Olympicgames,sport.はじめに以前筆者らは,国立スポーツ科学センターでメディカルチェックを受けたトップアスリートの視力と視力矯正の実態を調査した1.3).その結果,わが国のトップアスリートの視力は良好だが競技群によって異なること,視力矯正方法は競技特性によって異なることを報告した.しかしながら,これまで分析したトップアスリートの競技レベルは競技団体推薦から日本代表までさまざまだったことから,競技レベルによる視力や視力矯正の状況についてはわからなかった.今回筆者らはロンドンオリンピックに推薦された選手を対象とし〔別刷請求先〕枝川宏:〒153-0065東京都目黒区中町1-25-12ロワイヤル目黒1Fえだがわ眼科クリニックReprintrequests:HiroshiEdagawa,M.D.,EdagawaEyeClinic,RowaiyaruMeguro1F,1-25-12Nakacho,Meguro-ku,Tokyo153-0065,JAPANて,実際にオリンピックに出場した代表選手群(代表群と略)と推薦はされたが出場できなかった候補選手群(候補群と略)に分類して,比較検討した.I対象および方法対象はロンドンオリンピック31競技種目の代表選手294人と候補選手876人の合計1,170人で,男性は644人で女性は526人,平均年齢は25.0歳だった.代表選手はロンドンオリンピック出場者で競技能力が非常に高い選手たちで,競技成績もわが国ではトップクラスである.候補選手はロンドンオリンピックのために選抜されたがオリンピックに出場ができなかった者で競技能力も代表選手ほどは高くなく,競技成績も代表選手のレベルよりも劣る選手たちである.31競技種目を競技の特性から6競技群に分類した.標的群はライフル射撃など標的を見る競技で4種目94人,代表選手は13人で候補選手は81人だった.格闘技群は柔道など近距離で競技者と対する競技で5種目112人,代表選手は43人で候補選手69人だった.球技群は野球などボールを扱う競技で8種目220人,代表選手は85人で候補選手135人だった.体操群は体操など回転競技が含まれる競技で5種目64人,代表選手は29人で候補選手は35人だった.スピード群は自転車など競技者自身が高速で動く競技で2種目62人,代表選手は17人で候補選手は45人だった.その他群は陸上競技など視力が競技に重大な影響を与えない競技で7種目618人,代表選手は107人で候補選手は511人だった(表1).調査項目は,視力(単眼視力・両眼視力)と競技中の矯正方法だった.視力測定は競技時に裸眼の者は裸眼で,矯正者は競技時の矯正状態で5m視力表を使用して右眼,左眼,両眼の順序で行った.競技時の視力矯正方法は聞き取り調査で行った.視力の分析は1.0以上,0.9.0.7,0.6.0.3,0.3未満の4段階とした.視力の検定は競技群間ではKruskal-Wallistest,代表群と候補群間はMann-Whitney’sUtest,視力矯正方法はc2検定で行って,5%の有意水準設定で検討した.II結果1.視力の状況視力は左右差を認めなかった.単眼視力2,340眼では1.0以上が79.7%(1,864眼),0.9.0.7は11.2%(262眼),0.6.0.3は6.8%(160眼),0.3未満は2.3%(54眼)だった.代表群と候補群の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者は代表群が84.7%(498/588眼)で候補群が78.0%(1,366/1,752眼)と,代表群に視力の良い者が多かった(図1).競技群間の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者が多かったのは球技群の87.0%(383/440眼)で,少ないのは格闘技群の73.7%(165/224眼)だった(表2).両眼視力1,170人では1.0以上が90.7%(1,061人)で,0.9.0.7は5.1%(60人),0.6.0.3は4.1%(48人),0.3未満は0.1%(1人)だった.代表群と候補群の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者は代表群が94.2%(277/294人)で候補群が89.5%(784/876人)と,代表群に視力の良い者が多かった(図2).競技群間の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者が多かったのは球技群の97.7%(215/220人)で,少ないのはスピード群の80.6%(50/62人)だった(表3).2.視力非矯正眼の状況非矯正眼は全体の65.3%(1,528/2,340眼)だった.代表群と候補群の比較では代表群は69.4%(408/508眼)だったが,候補群は63.9%(1,120/1,752眼)と,非矯正眼は代表群に多かった.非矯正眼の視力は1,528眼のなかで1.0以上が77.9%(1,191眼),0.9.0.7は10.3%(157眼),0.6.0.3は8.6%(131眼),0.3未満は3.2%(49眼)だった.代表群と候補群の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の視力の良い者は代表群81.4%(332/408眼)で候補群76.7%(859/1,120眼)と,代表群に視力の良い者が多かった(図表1競技特性の分類1)標的群種目:標的を見ることが必要な種目4種目(94名)代表13名・候補81名アーチェリー・ライフル射撃・クレー射撃・近代五種2)格闘技群種目:近距離で競技者と対する種目5種目(112名)代表43名・候補69名柔道・テコンドー・フェンシング・ボクシング・レスリング3)球技群種目:ボールを扱う必要のある種目8種目(220名)代表85名・候補135名サッカー・水球・卓球・テニス・バドミントン・バレーボール・ホッケー・ビーチバレー4)体操群種目:回転運動が多く含まれる種目5種目(64名)代表29名・候補35名新体操・体操・トランポリン・飛び込み・シンクロナイズドスイミング5)スピード群種目:道具を使用して高速で行う種目2種目(62名)代表17名・候補45名自転車・カヌー6)その他群種目:視力が重大な影響を与えにくい種目7種目(618名)代表107名・候補511名競泳・ウエイトリフティング・セーリング・トライアスロン・ボート・陸上競技・馬術図1代表群と候補群の単眼視力分布■1.0以上■0.9~0.7■0.6~0.3■0.3未満図2代表群と候補群の両眼視力分布■1.0以上■0.9~0.7■0.6~0.3■0.3未満図3代表群と候補群の非矯正視力分布3).競技群間の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者が多かったのは標的群の89.2%(107/120眼)で,少ないのは格闘技群(113/154眼)とその他群(549/748眼)の73.4%だった(表4).3.視力矯正眼と矯正方法の状況視力矯正眼は全体の34.7%(812/2,340眼)だった.代表群と候補群の比較では代表群は30.6%(180/588眼)だったが候補群は36.1%(632/1,756眼)と,矯正眼は候補群に多かった.矯正眼の視力は812眼のなかで1.0以上が83.4%(677眼),0.9.0.7は13.2%(107眼),0.6.0.3は3.0%(24眼),0.3未満は0.5%(4眼)だった.代表群と候補群の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の視力の良い者は代表群93.9%(169/180眼)で候補群80.4%(508/632眼)表2競技群別の単眼視力分布n=2,340眼1.0以上0.9.0.70.6.0.30.3未満n=1,864n=262n=160n=54標的群15420122n=188(81.9%)(10.6%)(6.4%)(1.1%)格闘技群16536203n=224(73.7%)(16.0%)(8.9%)(1.4%)球技群38343140n=440(87.0%)(9.8%)(3.2%)体操群1051841n=128(82.0%)(14.1%)(3.1%)(0.8%)スピード群9210814n=124(74.2%)(8.1%)(6.4%)(11.3%)その他群96513510234n=1,236(78.1%)(10.9%)(8.3%)(2.7%)表3競技群別の両眼視力分布n=1,170人1.0以上0.9.0.70.6.0.30.3未満n=1,061n=60n=48n=1標的群85630n=94(90.4%)(6.4%)(3.2%)格闘技群100930n=112(89.3%)(8.0%)(2.7%)球技群215320n=220(97.7%)(1.4%)(0.9%)体操群61300n=64(95.3%)(4.7%)スピード群501110n=62(80.6%)(1.7%)(17.7%)その他群55038291n=618(89.0%)(6.1%)(4.7%)(0.2%)表4競技群別の非矯正視力分布n=1,528眼1.0以上0.9.0.70.6.0.30.3未満n=1,191n=157n=131n=49標的群1071021n=120(89.2%)(8.3%)(1.7%)(0.8%)格闘技群11321173n=154(73.4%)(13.6%)(11.0%)(2.0%)球技群27930130n=322(86.7%)(9.3%)(4.0%)体操群711241n=88(80.7%)(13.6%)(4.5%)(1.2%)スピード群727413n=96(75.0%)(7.3%)(4.2%)(13.5%)その他群549779131n=748(73.4%)(10.3%)(12.2%)(4.1%)■1.0以上■0.9~0.7■0.6~0.3■0.3未満全体4n=812眼代表群1n=180眼候補群4n=632眼図4代表群と候補群の矯正視力分布■CL■眼鏡■LASIK■Ortho-K全体728148383610166580282010n=812眼代表群n=180眼候補群4n=632眼0%20%40%60%80%100%図5代表群と候補群の視力矯正方法CL:コンタクトレンズ,LASIK:laserinsitukeratomileu-sis,Ortho-K:orthokeratologyと,代表群に視力の良い者が多かった(図4).球技群間の比較では有意差(p<0.05)があって,1.0以上の者が多かったのは球技群の89.8%(106/118眼)で,少ないのは格闘技群(50/70眼)とその他群(416/488眼)の71.4%だった(表5).矯正方法は全体ではCLが89.7%(728眼)でもっとも多く,眼鏡が4.7%(38眼),LASIKは4.4%(36眼),Ortho-Kは1.2%(10眼)だった.代表群と候補群の比較では有意差(p<0.05)があって,CLを選択していた者は候補群に多かったが,眼鏡・LASIK・Ortho-Kを選択していた者は代表群に多かった(図5).競技群間の比較では有意差(p<0.05)があって,すべての群でCLが多かった.眼鏡とLASIKは標的群やスピード群に多く,Ortho-Kは格闘技群で多かった(表6).III考察以前筆者らは,わが国のトップアスリートの視力は良好だったと報告2,3)したが,今回の視力の結果は前回の報告よりも1.0以上の割合は少なく,0.7未満の割合が多かった.このような結果になったのは,今回の対象者のほうが1.0以上が多い球技群の割合が低かったことと,0.7未満が多いその他群の割合が高かったためである.これは調査対象が前回は夏と冬のオリンピックやアジア大会などの65種目だったの表5競技群別の矯正視力分布n=812眼1.0以上0.9.0.70.6.0.30.3未満n=677n=107n=24n=4標的群511250n=68(75.0%)(17.6%)(7.4%)格闘技群501640n=70(71.4%)(22.9%)(5.7%)球技群1061110n=118(89.8%)(9.3%)(0.9%)体操群34600n=40(85.0%)(15.0%)スピード群20341n=28(71.4%)(10.7%)(14.3%)(3.6%)その他群41659103n=488(85.2%)(12.1%)(2.0%)(0.7%)表6競技群別の矯正方法n=812眼CL眼鏡LASIKOrtho-Kn=728n=38n=36n=10標的群362480n=68(52.9%)(35.3%)(11.8%)格闘技群64006n=70(91.4%)(8.6%)球技群110062n=118(93.2%)(5.1%)(1.7%)体操群n=4040(100.0%)000スピード群n=2824(85.6%)2(7.2%)2(7.2%)0その他群45412202n=488(93.0%)(2.5%)(4.1%)(0.4%)CL:コンタクトレンズ,LASIK:laserinsitukeratomileusis,Ortho-K:orthokeratologyに対して,今回はロンドンオリンピックでわが国が出場権を獲得した31種目だったことが影響している.今回視力1.0以上の割合は,単眼視力が79.7%で両眼視力は90.7%と,選手の多くは視力が良好だった.しかし,視力0.7以上の割合でみると単眼視力が90.9%で両眼視力は95.8%と,ほとんどの選手は視力0.7以上でプレイしていた.このことから,選手の多くは0.7以上の視力があればプレイに支障はなく,視力をさらに良くする必要性を感じる者が少なかったと考えられる.しかし,現在のところ選手がプレイに支障のない視力で競技能力が十分に発揮できているかについては不明である.過去の実験では競技種目によっては視力0.7未満になると選手の競技能力に低下がみられた4)ことから,視力を1.0以上に向上させると選手の競技能力がさらに発揮できると考えられる.したがって,選手の競技能力を向上させるには,視力を1.0以上に矯正することを勧めたほうが良いであろう.競技群別の視力では,以前報告した結果と同様に標的群・球技群・体操群では1.0以上の選手の割合が多く,格闘技群・スピード群・その他群では0.7未満の選手が多かった(表2).米国のオリンピック選手の調査でも標的種目や球技種目の選手の視力は良く,格闘技や陸上競技などの選手の視力は悪いといった競技特性による違いがあったと,今回とほぼ同じ結果を報告している5).標的群の選手は標的を見る必要があること,球技群の選手は不規則に動くボールや対象物に臨機応変に対応する必要があることなどから,視力の良い者が多かったと考えられる.しかし,格闘技群の選手は相手が近距離にいて遠方を見る必要がないこと,スピード群の選手はボールのような不規則に動く目標を見ることがないこと,その他群の選手は視力で試合が左右されることが少ないことから,良い視力は必要がないと思っている可能性がある.代表群と候補群の視力を比較すると,1.0以上の選手は代表群に多く,0.7未満の選手は候補群に多かった(図1).非矯正視力も1.0以上の選手の割合は代表群に多かったが,0.7未満の選手では候補群のほうが多かった(図3).非矯正眼でプレイをしている選手は,矯正をしなくても視力が良いか,視力が悪いにもかかわらず矯正をしていなかった者である.0.7未満の選手が候補群で多かったことは,代表群では視力の悪い選手は積極的に視力矯正をしていたけれども,候補群では視力の悪い選手は視力矯正をすることに消極的だったのであろう.矯正視力は矯正が適切であれば1.0以上の視力が期待される.そのため,矯正視力1.0以上が多かった代表群では選手の視力矯正はほぼ適切だったとみなせるが,矯正視力1.0以上が少なかった候補群では矯正が不適切だった選手だけでなく,あえて1.0以上の矯正を希望していなかった選手もいたと思われる(図4).また,代表群に視力の良い者が多かった別の理由として,スポーツ環境の違いがあげられる.日本オリンピック協会(JOC)のアスリートプログラムではオリンピック強化指定選手の日常の健康と体力を管理するため,定期的に健康診断・体力測定などを実施することと,強化指定選手の強化活動に必要な助言,指導を与えるためのさまざまなスタッフを配置すると決められている.代表群の選手は全員が強化指定されているので,アスリートプログラムによって身体が常に良い状態を保つようにメディカチェックやさまざまなサポートを継続して受けている.そのため視力をチェックする機会も多く,選手自身も視力を良い状態に保つように注意していたと考えられる.しかし,候補群の選手は強化指定選手に指定されない限り,代表選手よりメディカルチェックを受ける頻度は少ない.そのため視力をチェックする機会も自ずと少なく,視力を良い状態に保つ重要性に気づいていなかったことがありうる.競技群別の矯正方法の特徴的な点としては,すべての競技群でCLの使用がもっとも多かったこと,標的群・スピード群・その他群では眼鏡やLASIKの使用が多かったこと,格闘技群ではLASIKはいなかったがOrtho-Kを選択している選手が多かったことがあげられる(表6).CLの使用が多かったのは,視野を妨げることなく自然に見えることから,多くの競技種目で使いやすいからであろう.標的群・スピード群・その他群で眼鏡やLASIKの使用が多かったのは,標的群の選手にとっては標的を注視する際に瞬きが減少してCLが使いにくいことや,標的を狙う眼に視力矯正用のレンズを使用するからであろう.スピード群の選手にとってはプレイ中に風が眼に当たってCLが乾燥して見づらいためと推測できる.格闘技群でLASIKがいなかったのは接触時に角膜が損傷しやすいことや,相手が近距離にいることから良い視力を求める選手が少なかったからであろう.また,Ortho-Kが多かったのは眼球強度に影響がなく,競技のときに視力矯正用具を使用しなくてよいからであろう.代表群と候補群の視力矯正方法の特徴としては,代表群では競技特性に合わせた矯正方法を選択していた選手が多かったが,一部に競技特性に適した選択をしていなかった選手もいた.また,候補群では多くの選手がCLを使用していたことから,競技特性に合った方法を考慮していた者が少なかったようである(図5).このように代表群と候補群ともに選手のなかには視力矯正方法について十分に理解していない者がいたようである.選手はそれぞれの矯正方法の利点や欠点を理解して,競技特性に適したより良い矯正方法を選択することが必要である.たとえば,Ortho-Kは矯正効果に個人差があること,視力がやや不安定なところがあること,効果が出るまでに時間を要することなどに注意しなければならないが,競技中に眼鏡やCLを使用しなくてすむだけでなく,角膜強度が低下しないことから水中で行う水球や飛び込みなどの種目や格闘技種目などでも使用が勧められる.LASIKは視力の矯正効果はあるが術後に近視の戻り・不正乱視・まぶしさの増加などが起こる可能性があることや,角膜が薄くなることから眼を直接打撲する可能性のある競技には不向きである.眼鏡は視野が狭く感じる,レンズが曇るなどの欠点はあるが,ボールによる眼外傷が多い球技種目では眼を守るために防護効果のあるスポーツ眼鏡を用いることも良いであろう.今回の結果から,選手の競技力のいっそうの向上を図るには,選手に視力矯正の重要性と競技種目に適した矯正方法をアドバイスすることが必要である.視力(II).あたらしい眼科32(9):1363-1367,2015文献4)枝川宏,石垣尚男,真下一策ほか:スポーツ選手におけ1)枝川宏,原直人,川原貴ほか:スポーツ選手の眼にる視力と競技能力.日コレ誌37:34-37,1955関する意識と視機能.臨眼60:1490-1412,20065)LadyDM,KirschenDG,PantallP:Thevisualfunctionof2)枝川宏,川原貴,小松裕ほか:トップアスリートのOlympiclevelathletes-Aninitialreport.EyeContactLens視力.あたらしい眼科29:1168-1171,201237:116-122,20113)枝川宏,川原貴,小松裕ほか:トップアスリートの***