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網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブおよびアフリベルセプト硝子体内投与の効果

2019年6月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科36(6):821.825,2019c網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブおよびアフリベルセプト硝子体内投与の効果小池直子*1尾辻剛*1前田敦史*1西村哲哉*1髙橋寛二*2*1関西医科大学総合医療センター眼科*2関西医科大学眼科学教室CComparativeE.cacyofIntravitrealRanibizumabandA.iberceptforCentralRetinalVeinOcclusionwithMacularEdemaNaokoKoike1),TsuyoshiOtsuji1),AtsushiMaeda1),TetsuyaNishimura1)andKanjiTakahashi2)1)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityMedicalCenter,2)DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityC網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に伴う黄斑浮腫に対して,ラニビズマブ硝子体内投与(IVR)とアフリベルセプト硝子体内投与(IVA)を施行し,12カ月以上経過を追えたC38例C39眼(IVR群C17眼,IVA群C21眼)について,その効果に差があるかを後ろ向きに検討した.12カ月後のClogMAR視力は,IVR群では投与前C0.99からC0.79に,IVA群でも0.69からC0.49と両群とも有意に改善し,両群間で視力変化率には有意差はなかった.12カ月後の中心窩網膜厚はCIVR群では投与前C670.5CμmからC334.5Cμmに有意に減少し,IVA群でもC830.7CμmからC389.0Cμmに有意に減少し,両群間で有意差はなかった.12カ月までの平均投与回数はCIVR群C3.7回に対しCIVA群C2.9回と有意差はなかった.12カ月後に浮腫が消失していたものはCIVR群でC7眼(58.8%),IVA群でC16眼(76.2%)と両群間で有意差はなかった.両群とも投与後C12カ月の時点で視力と浮腫が改善し,その効果において両群間に有意差はみられなかった.CWecomparedthee.cacyofintravitrealranibizumab(IVR)anda.ibercept(IVA)formacularedemasecond-arytocentralretinalveinocclusion(CRVO)C.Thisretrospectivestudyinvolved38eyesof39patientswithmacu-larCedemaCassociatedCwithCRVO;allCwereCfollowedCupCforCmoreCthanC12months.CSeventeenCeyesCreceivedCIVRCand21eyesreceivedIVA.LogMARbestcorrectedvisualacuiby(BCVA)improvedfrom0.99to0.79inpatientstreatedCwithCIVRCandCfromC0.69toC0.49inCpatientsCtreatedCwithCIVA.CCentralCretinalthickness(CRT)decreasedCfrom670.5Cμmto334.5CμminIVRgroupandfrom830.7Cμmto389.0CμminIVAgroup.Therewasnosigni.cantdi.erenceCbetweenCtheCtwoCgroupsCinCchangeCofCBCVACandCCRT.CTheCnumberCofCinjectionsCaveragedC3.7inCIVRCgroupand2.9inIVAgroup.At12months,therewere7eyes(58.8%)withoutmacularedemainIVRgroupand16eyes(76.2%)inIVAgroup.BothIVRandIVAweree.ectiveformacularedemasecondarytoCRVOupto12months.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(6):821.825,C2019〕Keywords:網膜中心静脈閉塞症,黄斑浮腫,VEGF,ラニビズマブ,アフリベルセプト.centralretinalveinoc-clusion,macularedema,vascularendotherialgrowthfactor,ranibizumab,a.ibercept.Cはじめに網膜中心静脈閉塞症(centralCretinalCveinocclusion:CRVO)に伴う黄斑浮腫に対する治療としては,これまでに網膜光凝固,ステロイド投与,硝子体手術が行われてきた.CRVOに対する光凝固治療としては,CVOStudyGroupによって格子状光凝固が視力向上に関しては無効と報告された1).また,硝子体手術に関しては大規模臨床研究によって効果が証明されておらず,ステロイド注射に関してはある程度の視力改善が報告されたが,高頻度で発生した合併症が問題となった2).このようにCCRVOに伴う黄斑浮腫に対しては満足できる治療法が存在しなかったのが実情であったが,現在では抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthC〔別刷請求先〕小池直子:〒570-8607大阪府守口市文園町C10-15関西医科大学総合医療センター眼科Reprintrequests:NaokoKoike,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityMedicalCenter,10-15Fumizono-cho,Moriguchi,Osaka570-8607,JAPANCfactor:VEGF)薬の硝子体内投与が治療の第一選択として広く行われるようになっている3).ラニビズマブは抗CVEGF抗体の一種で,ヒト化モノクローナル抗体のCFab断片であり,CRVOに伴う黄斑浮腫に対する効果としては,大規模研究であるCCRUISEstudyによって,偽注射に対してラニビズマブ治療の優位性が証明された3,4).わが国でもC2013年に初めてCCRVOに対するラニビズマブによる抗CVEGF療法が承認され,広く使用されるようになった.その後アフリベルセプトがCCRVOに対して使用可能となった.アフリベルセプトは,ヒト免疫グロブリン(Ig)G1のCFcドメインにヒトCVEGF受容体C1およびC2の細胞外ドメインを結合した遺伝子組み換え融合糖蛋白質であり,VEGF-Aと優れた親和性を有する5)だけでなく,その他のCVEGFファミリーであるCVEGF-B,胎盤成長因子(pla-centagrowthfactor:PlGF)とも結合することができるといった特徴がある.このアフリベルセプトもCCRVOに対する大規模臨床研究によりその有効性が示されている6,7).しかし,このラニビズマブとアフリベルセプトのCCRVOに伴う黄斑浮腫に対する効果の直接比較を行った報告は少ない.今回筆者らはCCRVOに伴う黄斑浮腫に対して,ラニビズマブの硝子体内投与(intravitrealranibizumab:IVR),あるいはアフリベルセプトの硝子体内投与(intravitreala.iber-cept:IVA)を施行し,その効果について検討した.本研究に関しては関西医科大学総合医療センター研究倫理審査委員会の承認のもと行った.CI対象および方法1.対象対象は,平成C26年C3月.平成C29年C3月に関西医科大学総合医療センター眼科にてCCRVOに伴う黄斑浮腫に対してIVRまたはCIVAを施行し,12カ月以上経過を追えたC38例39眼(IVR群18眼,IVA群21眼)である.他の抗VEGF薬の投与歴のあるものや経過中に他の治療を行ったものは除外した.治療前のCIVR群とCIVA群のそれぞれの患者の背景として,男女比,年齢,発症から初回投与までの期間,投与前視力,投与前の中心窩網膜厚(centralCretinalthickness:CRT),虚血型の割合,浮腫のタイプを調査した.虚血型の定義はフルオレセイン蛍光眼底造影のパノラマ撮影にて無灌流領域が10乳頭面積以上確認されたものとした.浮腫のタイプについては光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で.胞様黄斑浮腫(cystoidCmacularedema:CME),スポンジ状,漿液性網膜.離(serousCretinaldetachment:SRD)に分類し,同一症例で所見が複数存在する場合はそれぞれのタイプに重複してC1例ずつカウントした.2.方法ラニビズマブ(0.5Cmg)硝子体内投与(IVR)もしくはアフリベルセプト(2Cmg)硝子体内投与(IVA)を行い,これらの症例の投与前と投与C3,C6,C9,12カ月後の視力,OCTで測定したの変化,12カ月までの投与回数,OCTでみたC12カ月後の浮腫の消失について後ろ向きに検討した.CRTはCRTVue-100R(Optovue社)を用いて測定した.薬剤の選択はC2013年C11月までは全例CIVRで,2013年C12月以降は全身状態に問題のない症例は原則としてCIVAを行った.投与方法はCIVRまたはCIVAの初回投与後のC2回目以降は必要時投与(prorenata:PRN)で行った.PRNの再投与基準は,OCTで黄斑浮腫を認めた場合としたが,残存浮腫があってもCCRTがC1/3以下に減少するなど明らかに浮腫の減少がみられる場合は次回診察までの経過観察とした.視力低下や出血の増加のみでは再投与の基準とはしなかった.また,虚血型の症例については網膜出血がある程度減少した時期に血管アーケード外に汎網膜光凝固を行った.統計学的解析にはCIBMCSPSSstatistics(IBM社)を使用した.治療前後の視力の比較はCWilcoxonの符号付順位和検定を,CRTの値は正規分布していたためその比較には対応のあるCt検定を,両群間の視力改善,CRTの減少率および投与回数の比較にはCMann-WhitneyのCU検定を,浮腫の消失の比較にはCc2検定を用い,p<0.05を統計学的に有意とした.視力に関する検討では,小数視力をClogMAR(logarith-micCminimumCangleCofresolution)視力に換算し,logMARでC0.3以上の変化を有意とした.CII結果男女比,年齢,発症から初回投与までの期間,投与前視力,投与前のCCRT,虚血型の割合,浮腫のタイプで両群間に有意差はみられなかった(表1).対象となった全例の平均ClogMAR視力は,投与前はC0.83,3カ月後はC0.66,6カ月後はC0.62,9カ月後はC0.63,12カ月後はC0.63であった.図1のグラフに示すようにCIVR群,IVA群の平均ClogMAR視力はそれぞれ投与前C0.99,0.69で,3カ月後はC0.88,0.49,6カ月後はC0.74,0.52,9カ月後は0.75,0.54,12カ月後はC0.79,0.49であった.投与前と比べてCIVR群,IVA群ともにC3,C6,C9,12カ月で有意に改善した(p<0.05:WilcoxonCsigned-ranktest).IVR群でCIVA群に比べ投与前視力が悪かったが両群間で有意差はなかった(表1).また,投与前からC12カ月後における視力変化には両群間で有意差はなかった(p=0.59:Mann-WhitneyCUtest).12カ月後における視力変化は,IVR群では改善C6眼(35.3%),不変C10眼(58.8%),悪化C1眼(5.9%)であり,IVA群では改善C9眼(42.9%),不変C9眼(42.9%),悪化C3眼(14.3表1投与前の患者背景IVR群(18眼)IVA群(21眼)男:女6:1110:11Cp=0.33(Fisher’sexactprobabilitytest)平均年齢70.4(52.86)歳73.8(58.92)歳Cp=0.27(Student’sttest)発症から初回治療までの期間6.5カ月3.8カ月Cp=0.21(Mann-WhitneyUtest)虚血型5眼3眼p=0.23(Fisher’sexactprobabilitytest)治療前ClogMAR視力C0.99C0.69Cp=0.09(Mann-WhitneyUtest)中心窩網膜厚C648.5C670.6Cp=0.81(Student’sttest)CMEC15C20浮腫のタイプ(重複あり)スポンジ状C9C11Cp=0.98(chi-squareforindependencetest)CSRD8C11Cすべての項目において両群間に有意差なし.CME:.胞様黄斑浮腫,SRD:漿液性網膜.離.1.8表212カ月後における視力変化0.8IVR群とCIVA群の間に有意差なし(*p=0.93:Mann-Whitney1.6改善不変悪化1.4IVR6眼(35.3%)10眼(58.8%)C1.2IVA9眼(42.9%)9眼(42.9%)1眼(5.9%)3眼(14.3%)*n.s.ClogMAR視力1logMARでC0.3以上の変化を有意とした.Utest).0.60.40.21,0009000800-0.2700600500400CRT(μm)図1視力変化投与前と比べてCIVR群,IVA群ともにC3,6,9,12カ月で有意に改善した(*p<0.05:WilcoxonCsigned-ranktest).12カ月での視力改善は両群間に有意差なし(p=0.52:Mann-WhitneyUtest).300200%)であった(表2).視力悪化したC4眼のうちC12カ月後のC100n.s.時点で浮腫が残存していたものはC2眼であった.CRTに関しては,投与前はC660.7Cμm,3カ月後はC331.1μm,6カ月後はC266.1Cμm,9カ月後はC343.2Cμm,12カ月後はC308.5Cμmで,IVR群,IVA群の平均CCRTはそれぞれ投与前C670.6μm,648.5μmで,3カ月後はC360.6μm,294.6μm,6カ月後はC260.3Cμm,273.3Cμm,9カ月後はC342.3Cμm,344.3Cμm,12カ月後はC327.3Cμm,285.2Cμmと両群ともC3,6,9,12カ月後のCCRTは有意に減少(p<0.01:pairedttest)したが,両群間に有意差はなかった(p=0.92:Mann-Whit-neyUTest)(図2).12カ月までの平均投与回数は,IVR群で平均C3.7回,IVA群では平均C2.9回と有意差はなかった(p=0.06:Mann-Whit-neyCUtest)(図3).12カ月後に浮腫が消失していたものは,IVR群ではC17眼中C10眼(58.8%),IVA群ではC21眼中C16眼(76.2%)と有意差はなかった(p=0.21:Fisher’sexactprob-abilitytest)(表3).浮腫のタイプ別での浮腫消失を図4に示す.IVR群ではすべての浮腫のタイプで有意差はなかっ0投与前図2中心窩網膜厚(CRT)の変化投与前と比べてCIVR群,IVA群ともにC3,6,9,12カ月で有意に改善した(*p<0.01:pairedttest).12カ月でのCCRTの減少率は両群間に有意差なし(p=0.92:Mann-WhitneyUtest).た(p=0.58:chi-squareforindependencetest).IVA群においても浮腫のタイプにかかわりなく浮腫が消失した(p=0.98:chi-squareCforCindependencetest).すべての浮腫のタイプで両群間で消失率に有意差はなかった(FisherC’sCexactprobabilitytest).CIII考按今回筆者らはCCRVOに伴う黄斑浮腫に対するラニビズマブとアフリベルセプトの効果について検討した.IVRおよびIVAはいずれもCCRVOの黄斑浮腫に対し,投与後C12カ月の時点で浮腫を軽減させる効果があった.浮腫消失率はCIVR表312カ月後における浮腫の消失消失残存8IVR10眼(58.8%)7眼(41.2%)*n.s.7IVA16眼(76.2%)5眼(23.8%)C65*p=0.21(Fisher’sexactprobabilitytest)C43p=0.28p=0.37p=0.142100眼数図312カ月までの投与回数IVR群で平均C3.7回,IVA群では平均C2.9回と有意差なし(p=0.06:Mann-WhitneyUtest).群ではC58.8%に対し,IVA群ではC76.2%と有意差はなく,平均投与回数は,IVR群で平均C3.7回,IVA群では平均C2.9回と有意差はなかった.また,視力変化やCCRTの変化には両群間で有意差はなかった.既報においても,LoteryらはCRVOにおいてC1年間の平均投与回数を比べると,IVRは4.4回,IVAはC4.7回で有意差はなかったと報告している8).また,ChatziralliらはCCRVOに対するCIVRとCIVA(導入期3回+必要時投与)ではC18カ月の時点で視力,CRTの変化ともに有意差はなく,浮腫消失率にも差はなかった(IVR群:50%,IVA群:42.9%)としている9).また,SaishinらはC6カ月の前向き検討でCCRVOに対するCIVRあるいはCIVAを隔月投与したところ,視力,CRTの変化ともに有意差はなく,前房水CVEGF濃度では投与開始C2カ月後で両群とも有意に減少したが,IVA群ではC11眼中C8眼が測定限界値以下まで減少したとしている10).今回のCCRVOの黄斑浮腫に対する後ろ向き検討のC1年間の結果において,既報と同様に視力変化やCCRTの変化,浮腫消失率,投与回数においてCIVA群とCIVR群の間に有意差はなかった.ただし,対象症例数が少なく検討項目のなかには統計学的処理においてCp値が小さいものがあるので,今後症例数が増加すれば再検討が必要であり,前向き検討も必要である.視力がClogMARでC0.3以上悪化したC4眼については,治療開始までの期間や虚血の有無など,治療前での共通した特徴はなく,治療前の予測は困難と思われた.また,このC4眼のうちC12カ月後の時点で浮腫が残存していたものはC2眼であり,一方でC10眼は浮腫が残存していても視力が維持改善できた.CRVOにおいては浮腫の残存は視力低下のおもな原因ではないのかもしれない.CRVOに伴う黄斑浮腫に対する抗CVEGF薬の投与方法については,筆者らの報告のように初回投与後のCPRNや,導入C3回投与後にCPRNといった方法が行われており,確立さ200CMEスポンジ状SRD図4浮腫のタイプ別消失率IVR群(p=0.58:chi-squareCforCindependencetest),IVA群(p=0.98:chi-squareCforCindependencetest)ともに浮腫のタイプにかかわりなく浮腫が消失した.すべての浮腫のタイプで両群間で消失率に有意差はなかった(Fisher’sexactprobabilitytest).れた治療プロトコールは存在しないが,できるだけ少ない治療回数で効果が得られるのであれば患者の経済的負担や全身的副作用の点からも望ましいと思われる.視力良好例では,滲出型加齢黄斑変性と同様に厳格な基準でのCPRNが重要であるが,投与前視力が不良のCCRVOでは浮腫の完全消失に持ち込むのは非常に困難な症例がある.一方,前述のようにCRVOにおいて浮腫の残存は視力低下のおもな原因ではないのであれば,このような難症例において浮腫の完全消失にこだわらなくてよいのかもしれない.すなわち抗CVEGF薬を繰り返し投与しても浮腫が残存するような症例では,いったん視力改善が頭打ちになった後の維持期の投与は,視力低下を再投与条件とした必要時投与で十分なのかもしれない.この研究は過去の診療録を調べることによる実臨床での後ろ向き研究で症例数も限られており,今後長期にわたる観察とさらなる検討が必要である.文献1)TheCCentralCVeinCOcclusionCStudyGroup:EvaluationCofCgridCpatternCphotocoagulationCforCmacularCedemaCinCcen-tralCveinCocclusion.CMCreport.COphthalmologyC102:1425-1433,C19952)IpCMS,CScottCIU,CVanVeldhuisenCPCCetal:ACrandomizedCtrialCcomparingCtheCe.cacyCandCsafetyCofCintravitrealCtri-amcinolonewithobservationtotreatvisionlossassociatedwithCmacularCedemaCsecondaryCtoCcentralCretinalCveinocclusion:theStandardCarevsCoricosteroidforRetinal消失率(%)8060401回2回3回4回5回6回7回VeinOcclusion(SCORE)studyreport5.ArchOphthalmolC127:1101-1114,C20093)CampochiaroCPA,CBrownCDM,CAwhCCCCetal:SustainedCbene.tsCfromCranibizumabCforCmacularCedemaCfollowingCcentralCretinalCveinocclusion:twelve-monthCoutcomesCofCaphase3study.OphthalmologyC118:2041-2049,C20114)BrownDM,CampochiaroPA,SinghRPetal:Ranibizum-abformacularedemafollowingcentralretinalveinocclu-sion:six-monthCprimaryCendCpointCresultsCofCaCphaseC3study.OphthalmologyC117:1124-1133,C20105)HolashCJ,CDavisCS,CPapadopoulosCNCetal:VEGF-trap:aCVEGFCblockerCwithCpotentCantitumorCe.ects.CProcCNatlCAcadSciUSAC99:11393-11398,C20026)HolzCFG,CRoiderCJ,COguraCYCetal:VEGFCTrap-EyeCforCmacularCoedemaCsecondaryCtoCcentralCretinalCveinCocclu-sion:6-monthCresultsCofCtheCphaseCIIICGALILEOCstudy.CBrJOphthalmolC97:278-284,C20137)BoyerCD,CHeierCJ,CBrownCDMCetal:VascularCendothelialCgrowthfactorTrap-EyeformacularedemasecondarytocentralCretinalCveinocclusion:six-monthCresultsCofCtheCphaseC3COPERNICUSCstudy.COphthalmologyC119:1024-1032,C20128)LoteryAJ,RegnierS:Patternsofranibizumabanda.iber-cepttreatmentofcentralretinalveinocclusioninroutineclinicalpracticeintheUSA.EyeC29:380-387,C20159)ChatziralliI,TheodossiadisG,MoschosMMetal:Ranibi-zumabCversusCa.iberceptCforCmacularCedemaCdueCtoCcen-tralCretinalCveinocclusion:18-monthCresultsCinCreal-lifeCdata.GraefesArchClinExpOphthalmolC255:1093-1100,C201710)SaishinY,ItoY,FujikawaMetal:Comparisonbetweenranibizumabanda.iberceptformacularedemaassociatedwithcentralretinalveinocclusion.JpnJOphthalmolC61:C67-73,C2017C***

糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体注射の長期成績

2019年1月31日 木曜日

《第23回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科36(1):92.96,2019c糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体注射の長期成績三原理恵子*1村松大弐*2若林美宏*2三浦雅博*1塚原林太郎*1馬詰和比古*2八木浩倫*2阿川毅*1真島麻子*2志村雅彦*3後藤浩*2*1東京医科大学茨城医療センター眼科*2東京医科大学病院臨床医学系眼科学分野*3東京医科大学八王子医療センター眼科IntravitrealInjectionofA.iberceptforDiabeticMacularEdema:Long-termE.ectinJapanesePatientsRiekoMihara1),DaisukeMuramatsu2),YoshihiroWakabayashi2),MasahiroMiura1),RintaroTsukahara1),KazuhikoUmazume2),HiromichiYagi2),TsuyoshiAgawa1),AsakoMashima2),MasahikoShimura3)andHiroshiGoto2)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversityIbarakiMedicalCenter,2)DepartmentofOpthalmology,TokyoMedicalUniversityHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversityHachiojiMedicalCenterC目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するアフリベルセプト硝子体注射(IVA)の効果を検討する.対象および方法:DMEにCIVAを施行し,18カ月以上観察が可能であったC14眼を対象に,後ろ向きに調査した.初回CIVA後C6,12,18カ月と最終受診時の視力と中心網膜厚,追加治療の有無と種類について検討した.結果:平均観察期間はC24.8カ月であった.治療前視力の平均ClogMAR値はC0.51で,治療C6カ月でC0.26,12,18カ月後には,それぞれC0.27,0.25で全期間で有意な改善を示した(p<0.05).治療前の網膜厚はC526Cμmで,治療C6,12,18カ月後にはC367,336,363μmと全期間で有意な改善を示した(p<0.05).6カ月までのCIVA回数は,平均C2.9回であり,12,18カ月後には,3.5回,4.1回であった.経過中に光凝固をC5眼に,ステロイド局所投与をC8眼に併用した.また,ラニビズマブ硝子体注射へ切り替えた症例がC2眼あった.結論:DMEに対してCIVAを第一選択として治療を行った場合,適切な追加治療を施行することで,IVAの注射回数を少なくしながら,大規模研究と遜色ない長期の視機能予後を得られる可能性がある.CPurpose:Toanalyzethelong-terme.cacyofintravitrealinjectionofa.ibercept(IVA)inJapanesepatientswithdiabeticmacularedema(DME)C.Casesandmethods:Thiswasaretrospectivecaseseriesstudyinvolving14eyesof12patientswithDMEwhoreceivedIVA(0.5mg)C.Caseswerefollowedfor18monthsorlonger.BestC-cor-rectedCvisualacuity(BCVA;logMAR)andCcentralCretinalthickness(CRT)wereCtheCmainCoutcomes.CResults:CThemeanfollow-upperiodwas24.8months.BaselineBCVAandCRTwere0.51and526Cμm,respectively.At6months,CtheCmeanCBCVAChadCsigni.cantlyCimprovedCtoC0.26,CandCtheCmeanCCRTChadCsigni.cantlyCdecreasedCtoC367Cμm,CcomparedCwithCtheCbaselinevalues(p<0.05)C.At12monthsCandC18months,CBCVAChadCsigni.cantlyCimprovedto0.27(p<0.05)and0.25(p<0.05)C,respectively;CRThaddecreasedto336Cμm(p<0.05)and363Cμm(p<0.05)C,respectively.TheaveragenumberofIVAwas4.1times.Amongallcases,5eyeswerealsotreatedwithphotocoagulation;8eyeswerealsotreatedwithlocalsteroids.Twoeyeswereswitchedtoranibizumabtreatment.Conclusion:IVACcombinedCwithCappropriateCadditionalCtreatmentsCareCexpectedCtoCbeCe.ectiveCasCaC.rst-choiceCtreatmentforDME.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(1):92.96,2019〕Keywords:糖尿病黄斑浮腫,アフリベルセプト,抗CVEGF,光凝固,トリアムシノロンアセニド.diabeticmacu-laredema,a.ibercept,anti-VEGF,photocoagulation,triamcinoloneacetonide.C〔別刷請求先〕三原理恵子:〒300-0395茨城県稲敷郡阿見町中央C3-20-1東京医科大学茨城医療センター眼科Reprintrequests:RiekoMihara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMedicalUniversityIbarakiMedicalCenter,3-20-1AmimachichuouInashikigunIbaraki300-0395,JAPANC92(92)はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticCmacularedema:DME)に対する治療は,過去に格子状光凝固,ステロイド局所投与,硝子体手術などが施行されてきたものの,満足できる成績は得られなかった.近年CDMEの病態に血管内皮増殖因子(vascu-larCendothelialCgrowthfactor:VEGF)が関与していることが判明し,またCVEGF阻害薬が保険適用を受けて以来,抗VEGF療法がCDME治療の主体となりつつある1.7).VEGF阻害薬の一つであり,膜融合蛋白であるアフリベルセプトのCDMEに対する治療効果は,大規模研究であるDaVincistudyやCVIVID/VISTAstudyにより格子状光凝固に対する視機能予後の優位性が証明されている4.7).しかし,これらの大規模研究では,視力や浮腫に厳格な組み入れ基準があり,また,ほぼ毎月アフリベルセプトのみが投与されるなど,実臨床とはかけ離れた診療結果であるため,臨床にそのまま適用されることは少ない.わが国ではC2014年C11月よりアフリベルセプトがCDME治療に保険適用を受け,広く使用されるようになってきた.本研究は抗CVEGF療法をアフリベルセプトの硝子体注射で開始したCDME症例のうち,18カ月以上の観察が可能であった症例の治療成績を検討したので報告する.CI対象および方法対象はC2014年C12月.2015年C11月に,東京医科大学病た,蛍光眼底造影で無灌流域や毛細血管瘤を認めた症例には光凝固(汎網膜光凝固や血管瘤直接凝固)を併用した.全C14眼のうちC7眼については治療開始からC1カ月ごとにC2.3回の注射を行うCIVA導入療法を施行し,その後はCPRN投与を行った.残りのC7眼はC1回注射の後にCPRN投与を行った.検討項目は,IVA前,およびCIVA後C6,12,18カ月ならびに最終来院時における完全矯正視力と光干渉断層計C3D-OCT2000(トプコン)もしくはCCirrusHD-OCT(CarlCZeissMeditech)を用いて計測したCCRTとし,さらに再発率,治療方法ならびに投与回数,投与時期について診療録をもとに後ろ向きに調査した.CII結果全C14眼の平均観察期間はC24.8C±2.7カ月(20.29カ月)であった.全症例における治療前の平均CCRTはC526.6C±143.7μmであったのに対し,IVA後C6カ月の時点ではC367.7C±105.1Cμmと有意に減少していた.さらにC12カ月の時点でC336.8±147.9Cμm,18カ月ではC363.9C±133.3Cμm,最終来院時ではC372.5C±142.1Cμmと,全期間を通じ,治療前と比較して有意な改善を示した(p<0.05,pairedt-検定)(図1).全症例における治療前の視力のClogMAR値の平均はC0.51C±0.32であった.視力はCIVA後C6カ月でC0.26C±0.25と有意に改善した.その後C12,18カ月ではC0.27C±0.21,0.25C±0.25,最終来院の時点でもC0.26C±0.25と,それぞれ治療前と比較院ならびに東京医科大学茨城医療センター眼科において,抗VEGF療法を行ったことのないCDMEに対し,アフリベルセプトC2Cmg/0.05Cmlの硝子体注射(intravitrealCinjectionCofa.ibercept:IVA)で治療を開始し,18カ月以上の観察が可能であったC12例C14眼(男性C7例,女性C5例)である.治療時の年齢分布はC34.78歳,平均(C±標準偏差)はC57.3C±10.8歳である.治療前の光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による浮腫のタイプは網膜膨化型がC12眼(86%),.胞様浮腫がC6眼(43%),漿液性網膜.離がC5眼(36%)であり,これらの所見は同一症例で混合している場合もあった.症例の内訳は,まったくの無治療がC8眼,抗VEGF療法以外の治療がすでに行われていたのは6眼であり,網膜光凝固がC6眼,トリアムシノロンアセトニドCTenon.下注射(sub-TenonCinjectionCofCtriamcinoronacetonide:STTA)がC1眼であった(同一症例の重複治療例あり).抗VEGF療法開始後は毎月視力測定,OCT検査を行い,必要に応じた治療(prorenata:PRN)を行った.再投与基準は,浮腫残存,2段階以上の視力低下,もしくはC20%以上の中心網膜厚(centralretinalthickness:CRT)の増加がみられ,患者の同意が得られた場合とし,原則としてCIVAを行った.浮腫の悪化があってもCIVAに同意されなかった場合や,IVA後の浮腫改善が不十分な場合はCSTTAを施行した.ま-して有意な改善を示していた(p<0.05,CpairedCt検定)(図2).大規模研究の解析方法に合わせ,治療前後でClogMAR(0.2)以上視力が変化した場合を改善あるいは悪化と定義すると,治療前と比較してCIVA後C6カ月の時点で改善例はC7眼(50%),不変例はC7眼(50%),悪化例はC0眼(0%),12カ月の時点で改善例はC8眼(57%),不変例はC6眼(43%),悪化例はC0眼(0%),18カ月の時点で改善例はC7眼(50%),不変例はC7眼(50%),悪化例はC0眼(0%)であり,経時的に視力改善例が増加していた(図3).治療前の小数視力がC0.5以上を示した症例はC3眼(21%)存在したが,IVA後C6カ月では10眼(71%),12カ月で10眼(71%),18カ月後で11眼(78%)と,視力良好例の占める割合も増加していた(各々Cp<0.05,Cc2検定)(表1).経過観察期間中にC13眼は追加治療を要した.初回の注射施行後,最初に黄斑浮腫が再発するまでの期間は平均C4.4C±2.9カ月で,中央値はC4カ月であった.また,再注射後もC12眼(86%)がC2回目の再発をきたした.2回目の再発までの期間は平均C4.5C±2.8カ月で,中央値はC3カ月であった.1眼のみ,IVA注射後に軽度の浮腫がいったん再発するも自然軽快し,視力も安定していたため再治療を要さなかった.初回治療後C6カ月までの平均CIVA投与回数はC2.9C±1.3回,6000.25505000.3CRT(μm)logMAR4500.44000.53503000.6250治療前6カ月12カ月18カ月最終時図1治療前後の中心網膜厚の経時的変化全症例の各時点における中心網膜厚(CRT)を示す.注射C6カ月で網膜厚は大きく減少し,その後も全期間で治療前と比較して減少している.*p<0.05.%60504030201006カ月後12カ月後18カ月後■改善■不変■悪化図32段階以上の視力変化12カ月までではC3.5C±1.8回,18カ月までではC4.1C±2.3回であった.また,全経過観察期間中に,黄斑浮腫の改善目的や網膜無灌流領域に対し光凝固を併用した症例はC5眼(35%)で,局所光凝固C2眼,毛細血管瘤の直接光凝固C4眼,格子状光凝固C2眼となっている.黄斑浮腫の改善目的にCSTTAを併用した症例はC7眼(20%),トリアムシノロン硝子体注射(intravitrealCinjectionCofCtriamcinoloneacetonide:IVTA)をC1眼(7%)に併用,ラニビズマブC0.5Cmg/0.05Cml硝子体注射(intravitrealCinjectionCofranibizumab:IVR)に切り替えた症例がC2眼(14%)存在し,IVA単独のみで治療を続けた例はC5眼(35%)であった.追加治療を行ったC13眼を,光凝固やCSTTAを併用した群(併用療法群:n=9)と,IVA単独で治療した群(単独群:n=4)に分類し,IVAの回数や視力改善度についてサブグループ解析を行った.併用療法群では追加治療として,当初の6カ月目まではCSTTAあるいはCIVTAを使用していなかっ6カ月12カ月18カ月図2治療前後の視力の経時的変化全症例の各時点における視力のClogMAR値を示す.注射C6カ月で視力は上昇し,その後も全期間で治療前と比較して有意に改善した.*p<0.05表1治療前後の各時点における小数視力0.5以上が占める割合治療前21%6カ月後71%*12カ月後71%*18カ月後78%**p<0.05たが,7.12カ月ではC50%の症例で,さらにはC13.18カ月ではC36%での症例で併用療法が行われていた.初回治療後6カ月での平均CIVA回数は併用療法群ではC3.2C±1.0回であった.12カ月まででC3.7C±1.5回,18カ月までではC3.7C±1.9回であった.一方,単独群では初回治療後C6カ月での平均IVA回数はC2.2C±1.9回,12カ月においてはC3.3C±2.6回,18カ月ではC6.0回C±2.5回(p=0.08)と経時的に投与回数が増加し,最終観察時までのCIVA回数は単独群ではC7.0回C±2.3回であり,併用療法群のC3.9C±2.1回と比較して有意な差を認めた(p<0.05,Cunpairedt-検定).なお,視力の改善度に関しては,18カ月,最終観察時において両群間に差は認めなかった.CIII考按DMEに対するアフリベルセプト療法の第CIII相無作為試験は,日本,欧州,オーストラリアで行われたCVIVID試験と,米国で行われたCVISTA試験のC2年間の経過が報告されている6).VIVID/VISTACstudyはアフリベルセプトC2Cmgの用量で,投与レジメンとして毎月投与する群と,5回連続注射の後にC2カ月ごと固定投与群,レーザー光凝固単独群の3群に割り付け,アフリベルセプト治療のレーザー光凝固に対する有意性を証明したのであるが,アフリベルセプト毎月投与群での改善文字数は,2年間でCVIVID試験でC22.4回注(94)射してC11.4文字,VISTA試験ではC21.3回注射してC13.5文字であった.一方,アフリベルセプトC2カ月ごとの投与群ではCVIVID試験ではC13.6回注射してC9.4文字,VISTA試験ではC13.5回注射してC11.1文字の視力改善であった.今回の対象となったC14眼のうち,50%にあたるC7眼では導入期治療として,IVAをC2.3回毎月連続投与を行い,その後は毎月観察を行って悪化(再発)時にCIVA再投与を行うPRNで治療を行い,残りのC7眼ではC1回の注射の後にCPRNとしていた.その結果,全症例ではC6カ月間で平均C2.9回,12カ月間に平均C3.5回,18カ月までに平均C4.1回,最終来院時までにC4.5回の注射を行っていた.全症例における検討では,アフリベルセプト治療の開始直後から網膜浮腫は減少し,全経過観察期間中において治療前よりも有意な浮腫の減少が得られており,視力に関しても治療前と比較して全期間で有意な向上が得られていた.視力のデータをCETDRSの文字数に換算すると,18カ月でC13.2文字,最終来院時においてC12.6文字の改善が得られた結果となり,大規模研究よりも少ない注射回数で同等以上の改善が得られていた.本研究において,大規模研究と比較して圧倒的に少ない注射回数にもかかわらず,大規模研究以上の視力改善効果を得られた理由は,追加治療としてCIVAのみならず適宜CSTTAやCIVTA,光凝固を使用して追加,維持療法を行っていたことがあげられる.糖尿病網膜症やDMEの病態進展にはVEGFのみならず,炎症が関与することが報告されている8.12).また,糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固時における黄斑浮腫の発生をCSTTAによって抑制可能とする報告もあるので13),本研究におけるステロイドの併用がCVEGF以外の浮腫を惹起する因子を抑制した可能性もある.本研究の対象となった全症例を,IVA単独で治療した群と,途中からステロイドなどの併用療法を行った群に分類しサブグループ解析を行った結果,両群間で視力の改善度には統計学的な差は認めなかったものの,注射回数に関しては,IVA単独群はC18カ月で平均C6.0回,最終時までに平均C7.0回のCIVAが必要であったが,併用群においてはC18カ月で平均C3.7回,最終時までに平均C3.9回であり,併用群で有意にIVA回数が少なかった.また,本研究においては,導入期や治療開始早期,半年からC1年目程度まではおもにCIVAで追加治療が行われ,後期になるとCIVA追加を希望されずにステロイドでの代替治療を行った例が多かったが,このレジメンが少ない注射回数での良好な成績につながった可能性もある.すなわち,糖尿病網膜症の病期によって浮腫の原因となる因子が変化していた可能性があり,早期に抗CVEGF治療を行い,慢性期に入る時期には抗炎症治療に切り替えたことが良好な成績に関与していたと考えられる.さらに良好な成績につながった第二の理由として,本研究で積極的に毛細血管瘤への直接光凝固や無灌流域への選択的光凝固を併用したため,網膜症そのものへの進行抑制が影響をきたしていた可能性があげられる.わが国では一般的に毛細血管瘤に対する直接光凝固や,targetedCretinalphotocoagulation(TRP)とも称される14)部分的な無灌流域に対する選択的光凝固が行われるが,米国における光凝固は後極部における格子状光凝固ならびに広範な無灌流域に対する徹底的な汎網膜光凝固が主体であるため,これが本研究の治療成績との差異につながった可能性も考えられる.また,近年では眼底に凝固斑が出現しない,より低侵襲な光凝固による良好な治療成績も報告されており15),今後はこのような新しい低侵襲光凝固をアフリベルセプトと併用することにより,黄斑浮腫への治療効果もよりいっそう向上していくかもしれない.今回の実臨床によるCDME患者に対するアフリベルセプトを第一選択とした治療は,経過中にステロイドの局所投与や局所光凝固を適宜追加することで,中.長期的にも有効な結果を得られたといえる.しかしながら,症例数は十分とは言い難く,糖尿病以外の全身的な要因の考察もされていないため,当院での治療法が無条件で肯定されたというわけではない.今後も長期にわたる経過観察と治療データの蓄積が必要であるものの,DMEの治療については,抗CVEGF療法のみならず他の治療法を適宜組み合わせることで,個別化治療による視機能予後の最適化をめざすべきと思われた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)村松大弐,三浦雅博,岩﨑琢也ほか:糖尿病黄斑浮腫に対するラニビズマズ硝子体注射の治療成績.あたらしい眼科C33:111-114,C20162)志村雅彦:糖尿病黄斑浮腫.眼科55:1525-1536,C20133)石田琴弓,加藤亜紀,太田聡ほか:難治性糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の短期成績.あたらしい眼科34:264-267,C20174)真島麻子,村松大弐,若林美宏ほか:糖尿病黄班浮腫に対するアフリベルセプト硝子体注射のC6カ月治療成績.眼臨紀10:755-759,C20175)DoCDV,CSchmidt-ErfurthCU,CGonzalezCVHCetal:TheCDACVINCIStudy:phaseC2primaryCresultsCofCVEGFCTrap-Eyeinpatientswithdiabeticmacularedema.Ophthalmol-ogyC118:1819-1826,C20116)KorobelnikJF,DoDV,Schmidt-ErfurthUetal:Intravit-reala.iberceptfordiabeticmacularedema.Ophthalmolo-gyC121:2247-2254,C20147)BrownDM,Schmidt-ErfurthU,DoDVetal:Intravitreala.iberceptfordiabeticmacularedema:100-weekresultsfromtheCVISTACandCVIVIDCStudies.OphthalmologyC122:C2044-2052,C2015C8)WakabayashiCY,CUsuiCY,COkunukiCYCetal:IncreasesCofCvitreousmonocytechemotacticprotein1andinterleukin8levelsCinCpatientsCwithCconcurrentChypertensionCandCdia-beticretinopathy.RetinaC31:1951-1957,C20119)WakabayashiCY,CKimuraCK,CMuramatsuCDCetal:AxialClengthCasCaCfactorCassociatedCwithCvisualCoutcomeCafterCvitrectomyfordiabeticmacularedema.InvestOphthalmolVisSciC54:6834-6840,C201310)MuramatsuCD,CWakabayashiCY,CUsuiCYCetal:CorrelationCofcomplementfragmentC5awithin.ammatorycyto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難治性糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の短期成績

2017年2月28日 火曜日

《第21回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科34(2):264.267,2017c難治性糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の短期成績石田琴弓加藤亜紀太田聡平野佳男野崎実穂吉田宗徳小椋祐一郎名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学Short-termOutcomeofIntravitrealA.iberceptforDiabeticMacularEdemaKotomiIshida,AkiKato,SatoshiOta,YoshioHirano,MihoNozaki,MunenoriYoshidaandYuichiroOguraDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences目的:糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与の治療効果を検討した.対象および方法:糖尿病黄斑浮腫に対しアフリベルセプト硝子体内投与を行い,6カ月以上経過観察できた11例15眼(非増殖糖尿病網膜症7例9眼,増殖糖尿病網膜症4例6眼)を対象とした.平均年齢は58.3歳,平均観察期間は8.7カ月であった.必要に応じて追加投与を行い,矯正視力,中心網膜厚,黄斑体積を検討した.結果:平均投与回数は2.9回であった.最終受診時において,投与前と比較して平均視力はlogMAR視力で0.49から0.38(p<0.05)に,中心網膜厚は526μmから433μmに(p<0.05),黄斑体積は13.6mm3から12.3mm3(p<0.01)にいずれも有意に改善を示した.結論:糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内投与は,視力および黄斑浮腫の改善に有効であった.Purpose:Toreportthee.cacyofintravitreousinjectionofa.ibercept(IVA)forthetreatmentofdiabetimacularedema.PatientsandMethod:Enrolledwere15eyeswithdiabeticmacularedema(9eyeswithnon-pro-liferativediabeticretinopathy,6eyeswithproliferativevitreoretinopathy)thatunderwentIVAandwerefollowedupfor6monthsorlonger.Meanagewas58.3years;averagefollow-upperiodwas8.7months.Alleyesunder-wentIVAintheprorenata(PRN)regimenandbest-correctedvisualacuity(BCVA)measurement;centralreti-nalthickness(CRT)andmaculavolume(MV)onopticalcoherencetomographyweremeasuredperiodically.Results:ThemeanIVAfrequencywas2.9times.Atlastvisit,logMARBCVAsigni.cantlyimprovedfrom0.49to0.38(p<0.05),CRTdecreasedfrom526μmto433μm(p<0.05)andMVdecreasedfrom13.6mm3to12.3mm3(p<0.01),comparedtobaseline.Conclusion:Intravitrealinjectionofa.iberceptisane.ectivetreatmentfordiabeticmacularedema.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(2):264.267,2017〕Keywords:アフリベルセプト,抗血管内皮増殖因子,糖尿病黄斑浮腫,光干渉断層計.a.ibercept,antivascularendothelialgrowthfactor,diabeticmaculaedema,opticalcoherencetomographyはじめに糖尿病網膜症は先進国において主要な成人の失明原因である.わが国においても,若生ら1)の視覚障害の原因調査で糖尿病網膜症は2位(15.6%)を占めている.糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の重症度にかかわらず発症し,直接視力低下の原因となるため,その治療は重要である.糖尿病黄斑浮腫に対しては毛細血管瘤に対する直接凝固や,閾値下凝固を含む格子状凝固,あるいはステロイド局所投与,硝子体手術が施行されてきたが,治療に抵抗することも少なくない.2014年に抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)製剤であるラニビズマブとアフリベルセプトが相次いで糖尿病黄斑浮腫の治療薬として承認され,重要な役割を果たしている.ラニビズマブはVEGFに対する中和抗体のFab断片で2),アフリベルセプトはVEGF受容体-1およびVEGF受容体-2の細胞外ドメインとヒトIgG1のFcドメインからなる遺伝子組換え融合糖蛋白質であり,VEGF-A,VEGF-B,胎盤成長因子などのVEGFファミリーに高い親和性を有するとされている3).〔別刷請求先〕加藤亜紀:〒467-8601名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学Reprintrequests:AkiKato,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,1Kawasumi,Mizuho-cho,Mizuho-ku,Nagoya467-8601,JAPAN264(122)今回筆者らは糖尿病黄斑浮腫に対するアフリベルセプト硝子体内注射後の視力,滲出性変化への影響を評価したので報告する.I対象および方法対象は2014年11月.2015年3月に名古屋市立大学病院で,他の治療で改善が困難な糖尿病黄斑浮腫に対し,アフリベルセプト2mg硝子体内注射を施行し,6カ月以上経過観察できた11例15眼である.投与前視力が小数視力で1.2以上の症例,無硝子体眼は対象から除外した.平均年齢58.3±3.3歳,平均観察期間8.7±0.3カ月(6.10カ月)であった.病型の内訳は非増殖糖尿病網膜症7例9眼,増殖糖尿病網膜症4例6眼であった.全例において糖尿病黄斑浮腫に対して治療歴があり,トリアムシノロン後部Tenon.下投与11例13眼,網膜光凝固12例14眼,(毛細血管瘤に対する直接凝固11眼,格子状閾値下凝固2眼,汎網膜光凝固7眼)ラニビズマブ硝子体内注射5例6眼であった(重複含む).初回アフリベルセプト投与後は原則毎月診察を行い,矯正視力,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)(シラスHD-OCT,ZEISS社)から,小数視力で2段階以上の視力低下あるいはOCTで黄斑部浮腫の残存または増悪が認められた場合はアフリベルセプトの追加投与を行った(prorenata:PRN投与).また症例によっては他の治療法を併用した.矯正視力およびOCTによる中心網膜厚,黄斑体積を後ろ向きに検討した.視力変化は,小数視力をlogarithmofminimalangleofresolution(logMAR)視力に換算したうえで0.3以上の差を改善または悪化とし,それ以外を不変とした.またCRTは20%以上の変化を改善,悪化とした.logMAR視力,中心網膜厚,黄斑体積の投与前と投与後の統計的比較には,Dunnett’stestを用いて,p<0.05を有意差ありとした.II結果平均投与回数は2.9±0.32であった.アフリベルセプト投与前後の最高矯正視力の変化を図1に示す.平均logMAR視力は,投与前0.49±0.08に対し,投与後最高時では0.26±0.08で有意に改善を認めた.また投与後最高視力においては,視力が改善した症例5眼(33%),不変が10眼(67%)で悪化した症例はなかった.投与後1カ月,3カ月,6カ月,最終受診時ではそれぞれ,0.34±0.05,0.36±0.06,0.39±0.08,0.39±0.08で,いずれの時点においても術前と比較して有意に改善を認めた(図2).最終受診時における視力変化は改善2眼(13%),不変13眼(87%)で悪化した症例はなかった(図3).平均中心網膜厚は投与前526±37μm,投与後1カ月,3カ月,6カ月,最終受診時ではそれぞれ,353±21μm,431±50μm,473±45μm,443±47μmで,投与前と比較し1カ月と最終受診時で有意に改善を認めた(図4).投与後最良中心網膜厚は改善が11眼(73%),不変が4眼(26%)で悪化した症例はなかった.最終受診時の中心網膜厚は改善7眼(47%),不変7眼(47%)で悪化1眼(6%)であった.平均黄斑体積は投与前13.6±0.46mm3,投与後1カ月,3カ月,6カ月後,最終受診時はそれぞれ11.9±0.31mm3,12.2±0.53mm3,12.1±0.53mm3,12.3±0.50mm3で,いずれの時点においても術前と比較して有意に改善を認めた(図4).経過観察中に,黄斑浮腫に対してアフリベルセプト以外の治療を行った症例は7例8眼で,トリアムシノロン後部Tenon.下注射2例2眼,トリアムシノロン硝子体内注射1例1眼,毛細血管瘤に対する直接凝固4例4眼,格子状閾値下凝固1例2眼,硝子体手術1例1眼(重複含む)であった.経過観察中に浮腫が消失し,その後再発しなかった症例は3例3眼で,2例はアフリベルセプト投与直後に毛細血管瘤に対する直接凝固を併用した症例,1症例はアフリベルセプト投与の2週間前に直接凝固を施行していた症例であった.6例9眼は浮腫が一度は消失したが,経過観察中に浮腫が再発し追加治療を行った.3例3眼は経過観察中,一度も浮腫の改善が得られなかった.経過観察中に,眼内炎,水晶体損傷,網膜.離,網膜裂孔など,直接アフリベルセプト硝子体内投与が関与したと思われる合併症はみられなかった.両眼加療中の患者1例で経過観察中に網膜中心動脈閉塞症を発症した.左眼へのアフリベルセプト投与3日後,右眼へのアフリベルセプト投与2カ月後に急に右眼視力が光覚弁にまで低下,蛍光眼底造影検査で右眼の著明な動脈の灌流遅延を認めた.その後視力は発症前程度にまで改善した.この症例は血糖値のコントロールが不安定で,前増殖型ではあったが,比較的無灌流領域の広い症例であった.またその他の重篤な有害事象は認めなかった.III考按今回筆者らは他の治療で改善が困難な難治性糖尿病黄斑浮腫に対してアフリベルセプト硝子体内投与を施行した.約9カ月間での平均投与回数は約3回で,アフリベルセプト後,最高視力はlogMAR視力で0.49から0.26に有意に改善,また33%の症例で視力が0.3以上改善した.経過観察中の平均視力は投与前と比較し有意に改善していた.中心網膜厚は最良時において73%が投与前と比較して改善し,平均中心網膜厚は最終受診時において投与前と比較して有意に改善していた.また平均黄斑体積も視力と同様,経過観察中投与前と比較し有意に改善していた.経過観察中浮腫の再発を認めなかったのは3眼(20%)で,9眼(60%)は浮腫が再発し,1.201.000.800.600.400.20アフリベルセプト投与後最高視力投与前136最終受診時(カ月)0.200.400.600.801.001.20図2アフリベルセプト投与後の視力の推移(logMAR)矯正視力は投与前と比較していずれの時点においても有意に改善を認めた(**p<0.01,*p<0.05,Dunnett’stest,bar±SE).アフリベルセプト投与前視力(logMAR)図1アフリベルセプト投与前視力と投与後最高視力(logMAR)全症例のアフリベルセプト投与前と投与後の最高視力を示す.60015.0526中心網膜厚黄斑体積13.6473431433*12.3**353**12.2**12.1**11.9**中心網膜厚(μm)黄斑体積(mm3)50014.0最高視力40013.0最終視力30012.020011.0投与前136最終受診時(カ月)図4アフリベルセプト投与後の中心網膜厚・黄斑体積の推移中心網膜厚は投与前と比較して1カ月,最終受診時,有意に改善を認めた.黄斑体積は投与前と比較していずれの時点においても有意に改善を認めた(**p<0.01,*p<0.05,Dunnett’stest,bar±SE).ト2mgを4週間ごとに5回投与後,8週ごとに連続投与した群では100週目で10文字程度改善し(VISTA11.1文字,VIVID9.4文字),15文字以上改善を維持していた割合は(VISTA33%VIVID31%)であったとしている.一方でRESTOREstudy6)やREVEALstudy7)ではPRN投与方式でラニビズマブ単独投与と黄斑部に対する網膜光凝固の併用の比較をしている.いずれも1年後において視力改善は6文字程度(RESTORE:IVR単独群6.1文字,併用群5.9文字,REVEAL:IVR単独群6.6文字,併用群6.4文字)で,ラニビズマブ投与回数は7回であったとしている.また網膜光凝固を併用した群と,しなかった群では結果に差はなかったと報告している.今回の筆者らの検討では,logMARでの0.02の変化をETDRS視力の1文字と換算したとき,最高視力は0.23改0%20%40%60%80%100%図3最高視力時・最終受診時における視力改善度logMAR視力で0.3以上の変化を改善・悪化としたとき,最高視力時は改善が33%,最終受診時は改善13%,残りは不変で悪化した症例はなかった.残りの3眼(20%)は経過観察中浮腫が残存した.糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF薬の有効性はすでに大規模臨床試験で示されている.わが国で最初に承認されたラニビズマブ0.5mg硝子体内投与については,RISEandRIDE試験4)として知られる毎月ラニビズマブ硝子体内投与(intravitrealranibizumab:IVR)の有効性を評価した報告で,24カ月後においてETDRS視力で12文字(RIDE12.0文字,RISE11.9文字)の改善を認め,36カ月後でも11文字(RIDE11.4文字,RISE11.0文字)程度の改善を認めたとしている.また36カ月後15文字以上の改善を維持していた割合は約40%(RIDE40.2%,RISE41.6%)であったとしている.アフリベルセプトにおいても連続投与に関する報告がされており,VISTAandVIVID試験5)においてアフリベルセプ善で約11.5文字改善しており,0.3以上の改善すなわち15文字以上の改善がえられた症例は33%で,最高視力時だけを比較すると,アフリベルセプトの連続投与での改善度に近いが,最終視力はlogMARで0.1の改善,ETDRSに換算すると5文字の改善にとどまり,15文字以上改善した症例も13%になり,PRN投与による既報と同等かそれ以下であると考えられる.投与回数も1年で約4回の計算になり,他の試験と比較すると少ない.実臨床においてたとえPRN方式であったとしても,医師が必要と判断したときに必ずしも患者が治療を希望するとは限らない.患者によっては金銭的な理由からステロイドの局所投与や,網膜光凝固を選択する場合も少なくない.よって可能な限り治療回数と,治療費を抑えることが必要になる.当院では以前から,インドシアニングリーン蛍光眼底造影を利用した毛細血管瘤の直接凝固8)を積極的に行っており,今回追加治療の必要なかった症例はいずれも治療の前後に直接凝固の治療歴があった.網膜光凝固の併用は差がないとの報告も多いが6,7),近年追尾システムを導入した網膜光凝固機器による網膜光凝固の併用でラニビズマブの投与回数を少なくできたとの報告がされており9),抗VEGF治療に毛細血管瘤に対する直接凝固を併用することは糖尿病黄斑浮腫の治療に有用であると思われる.今回の症例では5例6眼にラニビズマブ硝子体内投与の既往があった.糖尿病黄斑浮腫の治療において,現在わが国で認可されているどちらの薬剤の治療効果が高いかは興味深いところであるが,ベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプト3剤の治療効果を比較したprotocolTとよばれる検討10,11)においては,治療開始後1年目では視力が20/50以下の群ではアフリベルセプトは他の群と比較して有意に視力改善がみたれたが,2年目では,3群の視力改善度も投与回数もともに差はなく,また合併症についても3群間で大きな差はみられなかったとしており,今回の症例においても長期経過を検討する必要があると思われる.今回,網膜中心動脈閉塞症と思われる所見を呈した症例が1例あった.両眼治療中で,左眼へのアフリベルセプト投与3日後,右眼へのアフリベルセプト投与2カ月後に右眼に症状が出現し,その後無治療で視力は発症前程度にまで改善したことから,動脈の完全閉塞が生じていたかどうかは定かではないが,抗VEGF薬による加療は眼内炎,網膜裂孔,水晶体損傷など眼への直接的な侵襲によるもののみならず,全身の血流,あるいは今回のように眼局所の血流にも影響を及ぼす可能性があり,注意深い経過観察が必要である.アフリベルセプトは糖尿病黄斑浮腫に対して他の治療に抵抗する症例においても浮腫の改善に有効であった.しかし効果は一時的で,大部分の症例において浮腫が再発し,追加治療が必要であった.視力改善を維持するためには投与回数を増やしたほうが良いとも思われるが,実臨床の場ではむずかしい部分もあり,併用療法も含め今後さらなる検討が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)若生里奈,安川力,加藤亜紀ほか:日本における視覚障害の原因と現状.日眼会誌118:495-501,20142)FerraraN,GerberHP,LeCouterJ:ThebiologyofVEGFanditsreceptors.NatMed9:669-676,20033)HolashJ,DavisS,PapadopoulosNetal:VEGF-Trap:aVEGFblockerwithpotentantitumore.ects.ProcNatlAcadSciUSA99:11393-11398,20024)BrownDM,NguyenQD,MarcusDMetal:Long-termoutcomesofrenibizumabtherapyfordiabeticmaculaedema:the36-monthresultsfromtwophaseIIItrials:RISEandRIDE.Ophthalmology120:2013-2022,20135)BrownDM,Schmidt-ErfurthU,DoDVetal:Intravitreala.iberceptfordiabeticmacularedema:100-weekresultsfromtheVISTAandVIVIDstudies.Ophthalmology122:2044-2052,20156)MitchellP,BandelloF,Schmidt-ErfurthUetal:TheRESTOREstudy:ranibizumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyfordiabeticmacularedema.Ophthalmology118:615-625,20117)IshibashiT,LiX,KohAetal:TheREVEALStudy:Ranibizumabmonotherapyorcombinedwithlaserversuslasermonotherapyinasianpatientswithdiabeticmacularedema.Ophthalmology122:1402-1415,20158)OguraS,YasukawaT,KatoAetal:Indocyaninegreenangiography-guidedfocallaserphotocoagulationfordia-beticmacularedema.Ophthalmologica234:139-150,20159)LieglR,LangerJ,SeidenstickerFetal:Comparativeevaluationofcombinednavigatedlaserphotocoagulationandintravitrealranibizumabinthetreatmentofdiabeticmacularedema.PLoSONE9:e113981,201410)DiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:A.iber-cept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema.NEnglJMed372:1193-1203,201511)WellsJA,GlassmanAR,AyalaARetal:A.ibercept,bevacizumab,orranibizumabfordiabeticmacularedema:Two-yearresultsfromacomparativee.ectivenessran-domizedclinicaltrial.Ophthalmology123:1351-1359,2016***