《原著》あたらしい眼科33(1):145.150,2016c糖尿病黄斑浮腫の硝子体手術成績に及ぼすカリジノゲナーゼの影響伊勢重之古田実石龍鉄樹福島県立医科大学医学部眼科学講座AdjuvantKallidinogenaseinPatientswithVitrectomyforDiabeticMacularEdemaShigeyukiIse,MinoruFurutaandTetsujuSekiryuDepartmentofOphthalmology,FukushimaMedicalUnivercitySchoolofMedicine目的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対する硝子体手術成績に及ぼすカリジノゲナーゼ内服の効果を評価する.方法:非盲検前向き単純無作為比較臨床研究.対象は治療歴のないびまん性DME25例25眼.術後にカリジノゲナーゼ(150単位/日)を投与した投与群12例12眼と,投与を行わなかったコントロール群13例13眼である.硝子体手術前,術後1カ月,術後3カ月,術後6カ月の視力と中心窩網膜厚(CFT)の変化を検討した.結果:投与群,コントロール群ともに術後6カ月の視力は有意に改善(p<0.01)したが,両群の視力変化量に差はなかった.術後6カ月の平均CFT変化量は,両群ともに有意に減少(p<0.01)し,CFT変化量に有意差はなかった.硝子体網膜境界面に異常がない16眼(投与群8眼,コントロール群8眼)で比較したところ,投与群のみ術後3カ月,6カ月でCFTが減少(p<0.01)していた.投与群は全例でCFTは減少し,コントロール群よりもCFTが安定している傾向にあった.結論:DMEの硝子体手術後にカリジノゲナーゼを内服することにより,CFTは安定的に改善し,その効果は硝子体牽引がない症例でも認められた.Purpose:Toevaluatetheeffectoforalkallidinogenaseonvisualacuityandcentralfovealthickness(CFT)aftervitrectomyfordiabeticmacularedema(DME).Methods:Thisstudy,designedasanopen-label,prospective,randomized,singleinstitutionalstudy,compared12eyesof12patientswhoreceivedoralkallidinogenasepostoperativelyfor6months(kallidinogenasegroup)with13eyesof13patientswhoreceivednokallidinogenase(controlgroup).MainoutcomemeasurementsincludedlogMARandCFTbeforesurgeryand1month,3months,6monthsaftervitrectomy.Results:LogMARimprovedsignificantlyat6monthsineachgroupascomparedwithbeforesurgery(p<0.01).Therewasnosignificantdifferenceinvisualimprovementbetweenthegroups.MeanCFTofbothgroupsgraduallydecreasedat6months(p<0.01).ThedecrementofCFTat6monthsinthekallidinogenasegroupwasgreaterthaninthecontrolgroup(n.s.).Sixteeneyeswithoutvitreomacularinterfaceabnormalityinopticalcoherencetomographywereanalyzed.ThemeanCFTinthe8eyestreatedwithkallidinogenasesignificantlydecreasedat3months(p<0.01),whereasthe8eyesinthecontrolgroupdidnotshowsignificantdecrementduringthefollow-upperiod.Conclusion:Asanadjunctivetherapy,oralkallidinogenasewaseffectiveinrestoringthemacularmorphologyaftervitrectomyforDME.Theeffectmaybeprominentineyeswithoutvitreomacularinterfaceabnormalities.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(1):145.150,2016〕Keywords:糖尿病黄斑浮腫,カリジノゲナーゼ,中心窩網膜厚,光干渉断層計(OCT),硝子体手術,VEGF.diabeticmacularedema,kallidinogenase,centralfovealthickness,opticalcoherencetomography,OCT,vitrectomy,vascularendothelialgrowthfactor.〔別刷請求先〕伊勢重之:〒960-1295福島市光が丘1番地福島県立医科大学医学部眼科学講座Reprintrequests:ShigeyukiIse,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FukushimaMedicalUnivercitySchoolofMedicine,1Hikarigaoka,Fusushimacity960-1295,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(145)145はじめに糖尿病黄斑浮腫(diabeticmacularedema:DME)は単純網膜症の時期から視力低下の原因となる.近年の疫学研究では,わが国におけるDMEは110万人に及び,増加傾向にあるといわれている1).Lewisらは,肥厚した後部硝子体膜を伴うDMEに対する硝子体手術の有効性を初めて報告した2).その後,硝子体黄斑境界面異常を有する症例では,硝子体手術が有効であることが多くの臨床症例で確認されている4.11).硝子体手術の奏効機序として,黄斑部の網膜硝子体境界面における機械的牽引の解除,硝子体腔内の血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)や炎症性サイトカインの除去,硝子体除去後の硝子体腔内酸素分圧の上昇などが考えられている3).黄斑牽引や硝子体網膜境界面の異常がない症例に対しても硝子体手術の有効性が報告されているが10.13),異論も多く検討の余地がある.安定しない硝子体手術成績の向上を図る目的で,トリアムシノロン(triamcinoloneacetonide:TA)のTenon.下注射14,15)や硝子体注射16,17)の併用も検討されており,短期的には手術成績が改善したとする報告もある.しかし,中長期的には黄斑浮腫の再燃やステロイドによる合併症などが指摘されており,術後成績は必ずしも安定しているとはいえず,長期的な効果を有する治療法の開発が期待されている.カリジノゲナーゼは1988年から網脈絡膜循環改善薬として国内で使用されており,その作用機序は一酸化窒素(NO)産生亢進による血管拡張作用であるとされている18).近年,カリジノゲナーゼは循環改善作用以外に抗VEGF作用をもつことが報告されており18,19),網膜浮腫改善効果も期待される.今回,DMEに対する硝子体手術後にカリジノゲナーゼを投与し,手術成績に与える影響を検討した.I対象および方法研究デザインは非盲検前向き単純無作為比較臨床研究である.本研究は,福島県立医科大学医学部倫理委員会の承認を得て施行した.2012年2月.2013年2月に,福島県立医科大学眼科にてDMEに対して硝子体手術を計画し,術前に同意を得られた30例30眼を対象とした.封筒法での単純無作為割り付けを行い,硝子体手術後にカリジノゲナーゼ150単位/日を6カ月間内服する群(投与群),内服しない群(コントロール群)の2群に分けた.以下のいずれかに当てはまる症例は除外した.除外対象は,血清クレアチニン値3mg/dl以上,HbA1C値10%以上,対象眼白内障がEmery-Little分類GradeIII以上,黄斑浮腫に対するステロイドおよび抗VEGF薬使用の既往,黄斑部光凝固の既往,白内障手術以外の内眼手術歴のある症例である.手術方法は25ゲージ(G)もしくは23Gシステムを用いた経毛様体扁平部硝子体手術で,有水晶体眼は白内障手術を併用した.全例で網膜内146あたらしい眼科Vol.33,No.1,2016境界膜(internallimitingmembrane:ILM).離を併用した.術中に硝子体やILMの可視化のためにTAまたはインドシアニングリーンを使用した際には,手術終了時にこれらの薬剤を可及的に除去した.術後はステロイド点眼と非ステロイド系消炎薬点眼を3カ月間継続したのち,完全に中止した.ステロイド内服,眼局所注射,黄斑部光凝固,抗VEGF薬投与などの黄斑浮腫に対する追加治療は行わなかった.検討項目はlogMAR視力と光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT,HeidelbergEngineering社製SPECTRALISOCTRまたはZeiss社製CirrusOCTR)による中心窩網膜厚(centralfovealthickness:CFT)および血圧とHbA1C値である.それぞれ術前,術後1カ月,3カ月,6カ月に測定を行った.CFTは中心窩網膜の表層から網膜色素上皮までの距離とし,それぞれのOCTに付属しているソフトウェア上の計測機能を用いて中心窩を手動計測した.OCT所見の判定は既報20,21)に準じ,黄斑部網膜硝子体境界面上に肥厚した後部硝子体膜や黄斑上膜すなわち黄斑部網膜硝子体境界面異常(vitreomacularinterfaceabnormalities:VMIA)の有無を観察した.一般的には硝子体手術の効果が少ないとされるVMIAのない群についても,投与群とコントロール群それぞれのlogMAR視力とCFTの変化量を検討した.統計学的検討は,logMAR視力とCFT,血圧,HbA1C値について,各群内での測定値および変化量をDunnettの多重比較検定を用いて評価した.2群間の有意差検定には,分散分析および繰り返し測定型二元配置分散分析もしくはBonferroni型多重検定を用いて評価した.危険率5%未満を有意差ありとして採択した.II結果通院困難による脱落の5例5眼を除き,25例25眼を解析した.投与群は12例(男性8例,女性4例),年齢は64.3歳(±標準誤差,範囲45.78歳).コントロール群は13例(男性11例,女性2例),平均年齢68.1歳(±3.3,52.78歳)であった.術前の両群間の年齢,CFT,血清クレアチニン値,HbA1C値,平均血圧,脈圧に差はなかったが,視力は投与群が有意(p<0.05)に良好であった(表1).研究期間中はHbA1C値,平均血圧,脈圧に有意な変動はなく,カリジノゲナーゼ投与による重篤な副作用はみられなかった.1.視力変化投与群の平均logMAR視力は,術前0.48±0.06(平均±標準誤差),術後1カ月0.45±0.08(有意差なし,n.s.),術後3カ月0.34±0.04(n.s.),術後6カ月0.28±0.06(p<0.01)であり,持続した改善傾向を示した.コントロール群の平均logMAR視力は,術前0.73±0.08,術後1カ月0.60±0.07(p<0.05),術後3カ月0.50±0.06(p<0.001),術後6カ月(146)0.52±0.05(p<0.001)と,術後1カ月から改善を示した.術後から投与群が有意に視力良好であり,全経過を通して投与群はコントロール群よりも視力が良好であった(p<0.05)(図1).術前からのlogMAR視力変化量は,コントロール群のほうが術後早期に視力が改善する傾向がみられたが,群間に有意差はなかった(図2).VMIAがない症例のlogMAR視力変化も同様の傾向を示し,コントロール群は術後3カ月.0.17±0.06μm,術後6カ月.0.20±0.08μmで有意に改善し,投与群は術後6カ月で.0.17±0.06μmに改善したが有意差はみられなかった.観察期間を通して群間に差はなかった.2.CFT変化投与群のCFTは,術前521±21μm(平均±標準誤差)で,術後は継続的に減少し,術後1カ月423±23μm(n.s.),術後3カ月378±60μm(p<0.01),術後6カ月286±86μm(p<0.001)となった.コントロール群のCFTは,術前471±71μmから術後1カ月で331±31μm(p<0.01)と有意に減少したが,それ以降は術後3カ月343.9±59.0μm(p<0.05),術後6カ月333.5±33.5μm(p<0.01)となり,有意差はあるもののCFTの変化はみられなかった.いずれの時点でも両群間に有意差はなかった(図3).術前からのCFT変化量は,投与群では継続的に減少したのに対し,コントロール群では術後1カ月で減少したが,それ以降の減少がみられず,むしろ減少幅がやや縮小する傾向がみられた.術後6カ月でのCFT減少量は,両群間に96.7μmの差が生じていたが有意差はなかった(図4).術前VMIAがない症例でCFT変化を検討した.VMIAがない症例は16例16眼で,投与群は8例8眼,コントロール群は8例8眼であった.投与群のCFTは術後6カ月まで減少する傾向を示し,CFT変化量は術後6カ月で.173±37μm(p<0.001)であった.一方,コントロール群のCFT変化量は術後6カ月で.92±84μmとなり術前より減少したが,すべての時点において群間に有意差はなかった(図5).有意差がない原因を探るため個々の症例のCFT変化を検討した(図6).投与群ではCFTが術前表1群別患者背景投与群コントロール群項目(平均±標準誤差)n=12(平均±標準誤差)n=13検定年齢(歳)64.3±2.268.1±3.3ns術前視力(logMAR)0.48±0.060.73±0.08p<0.05中心窩網膜厚(μm)521.1±47.3472±41.5ns血清クレアチニン(mg/dl)0.98±0.141.16±0.11nsHbA1CNGSP(%)6.82±0.186.82±0.25ns平均血圧(mmHg)102.8±2.493.1±4.5ns脈圧(mmHg)57.3±6.664±3.0ns0.90.1投与前1カ月後3カ月後6カ月後0.8投与群(n=12)コントロール群(n=13)##*********0.70.60.50.40.30.20.1-0.2-0.10***logMAR視力logMAR視力-0.3投与群(n=12)******0コントロール群(n=13)投与前1カ月後3カ月後6カ月後-0.4群内比較:Dunnett型多重比較***:p<0.001,**:p<0.01,*:p<0.05(vs投与前)群間比較:分散分析および繰り返し測定型二元配置分散分析#:p<0.05(vsコントロール群)図1群別logMAR視力の経過投与群の平均視力は持続した改善傾向を示した.コントロール群の平均視力は術後1カ月から改善を示した.全経過を通して投与群はコントロール群よりも視力が良好であった.(147)群内比較:Dunnett型多重比較***:p<0.001,**:p<0.01,*:p<0.05(vs投与前)群間比較:Bonferroni型多重検定ns(vsコントロール群)図2群別logMAR視力の変化量視力変化量は,コントロール群のほうが術後早期に視力が改善する傾向がみられたが,群間に有意差はなかった.あたらしい眼科Vol.33,No.1,2016147投与前1カ月後3カ月後6カ月後投与群(n=12)コントロール群(n=13)0100200300400500600投与前1カ月後3カ月後6カ月後**********中心窩網膜厚(μm)群内比較:Dunnett型多重比較***:p<0.001,**:p<0.01,*:p<0.05(vs投与前)群間比較:分散分析および繰り返し測定型二元配置分散分析ns(vsコントロール群)図3群別中心窩網膜厚(CFT)の経過投与群のCFTは術後から継続的な減少を示した.コントロール群のCFTは術後1カ月から有意な減少を示したが,それ以降は変化がみられなかった.術後6カ月では投与群がコントロール群を47.1μm下回っていたが,いずれの時点でも両群間に有意差はなかった.投与群(n=8)コントロール群(n=8)*****中心窩網膜厚の変化量(μm)-250-200-150-100-50050投与前1カ月後3カ月後6カ月後群内比較:Dunnett型多重比較***:p<0.001,**:p<0.01(vs投与前)群間比較:Bonferroni型多重検定ns(vsコントロール群)図5群別中心窩網膜厚(CFT)の変化量(黄斑牽引なし)黄斑牽引のない症例におけるCFT変化量は,投与群では術後6カ月まで一貫して減少し,術後3カ月以降は有意差を示した.コントロール群では術前より減少したものの,すべての時点において有意差はなかった.術後6カ月で両群間に81.1μmの差が生じたが,群間に有意差はなかった.よりも増加した症例はなく,ゆっくりと減少する傾向を示すのに対して,コントロール群ではCFT変動幅が大きく,術前よりもCFTが増加した症例が8例中2例にみられた.III考察DMEに対する硝子体手術成績は多数報告されており,148あたらしい眼科Vol.33,No.1,2016投与群(n=12)コントロール群(n=13)-300-250-200-150-100-500**********中心窩網膜厚の変化量(μm)群内比較:Dunnett型多重比較***:p<0.001,**:p<0.01,*:p<0.05(vs投与前)群間比較:Bonferroni型多重検定ns(vsコントロール群)図4群別中心窩網膜厚(CFT)の変化量CFT変化量は投与群で継続的に減少したのに対し,コントロール群では術後1月以後の改善がみられなかった.術後6カ月では両群間に96.7μmの差が生じていたが,有意差はなかった.投与前1カ月後3カ月後6カ月後300200100投与群-1000(n=8)-200-300-400-500300200100コントロール群0(n=8)-100-200-300-400-500図6群別症例別中心窩網膜厚(CFT)の変化量(黄斑牽引なし)個々のCFT変化量は,投与群ではすべての症例で減少傾向を示し,術前より増加した症例はなかった.コントロール群ではCFT変動幅が大きく,術前よりも増加した症例が8例中2例にみられた.Christoforidisら22)は,硝子体手術は83%の例で黄斑浮腫軽減効果があり,56%の例で視力に何らかの改善があったと報告されている.近年では,一般的に硝子体手術の効果は限定的で,黄斑牽引がみられる症例や中心窩に漿液性網膜.離がある症例に対してのみ有効であるという認識が広まった21,23,24).一方で,黄斑牽引を含めたVMIAのない症例に対投与前1カ月後3カ月後6カ月後(148)しても硝子体手術は有用であるとする報告もあり25),少なくともわが国においては手術の有効性に対する一定の見解は得られていない.鈴木ら26)のDME28例33眼に対するカリジノゲナーゼ単独内服前向き試験で,カリジノゲナーゼ投与後3カ月で有意にCFTの減少を認めている.今回の検討では,硝子体手術後の網膜形態改善に対してもカリジノゲナーゼ投与が有用で,相乗効果が期待できることが示唆された.Sonodaら27)の報告では,DMEに対する硝子体手術成績には炎症性サイトカインであるIL-6が関与するとされている.また,Fukuharaら28)はマウスにおける脈絡膜新生血管モデルで,tissuekallikrein(カリジノゲナーゼ)がVEGF165のisoformであるVEGF164を断片化させる効果を報告している.本報告では,DMEに対する硝子体手術後にカリジノゲナーゼを投与し,非投与症例との差を検討した.両群ともに術後6カ月では視力およびCFTの改善がみられ硝子体手術の有効性が確認できた.両群間で視力およびCFTの改善に差がなかったが,投与群全体でのCFTは継続的に改善したのに対し,コントロール群は術後1カ月以後の継続的改善はみられなかった.コントロール群が早期から急速に視力とCFTが改善したことは,手術による直接的な牽引除去や一時的なVEGF濃度の低下が作用機序となっていたと考えられる.VMIAがない例のみを検討したところ,CFTはカリジノゲナーゼ投与により有意に改善した.それらの個々の症例のCFT変化をみると,コントロール群は術後に増加した例もみられたのに対して,カリジノゲナーゼ投与症例では全例でCFTは減少傾向にあり,CFTの変動が少なかった.このことは,硝子体手術により硝子体腔内のIL-6やVEGFが除去され,術後もカリジノゲナーゼによる抗VEGF効果により網膜の血管透過性減少が持続し,VMIAのない症例においても浮腫改善が促進された可能性が考えられた.カリジノゲナーゼは網膜循環の改善29)や電気生理学的な改善30)も期待できることが報告されている.今後,硝子体手術例に対するカリジノゲナーゼ効果に関しては,レーザースペックルフローグラフィーなどの非侵襲的な微小循環評価法と形態変化を合わせて検討することで,奏効機序をより明確にすることができると考えられる.今回の検討は症例数が少なく,単純無作為割り付けを行ったが,ベースライン視力に差があったため,視力成績の評価が困難であった.今後は層別化無作為化などを行い検討する必要がある.近年のDME発症機序に関する病態理解,OCTや電気生理学的検査の進歩,眼底微小循環の計測装置の開発など,過去には検出不可能であったカリジノゲナーゼの効果が臨床研究でも明らかになってきた.カリジノゲナーゼは内服による長期投与可能な薬剤であり,DMEのように慢性的な病変の治療には有用であると考えられる.今後,そ(149)の作用機序の解明,治療効果のさらなる検討が必要である.文献1)川崎良,山下英俊:疫学に基づいた糖尿病網膜症の管理.月刊糖尿病5:23-29,20132)LewisH,AbramsGW,BlumenkranzMSetal:Vitrectomyfordiabeticmaculartractionandedemaassociatedwithposteriorhyaloidtraction.Ophthalmology99:753759,19923)山本禎子:糖尿病黄斑症に対する硝子体手術─新しい展開を目指して─.あたらしい眼科20:903-907,20034)HarbourJW,SmiddyWE,FlynnHWetal:Vitrectomyfordiabeticmacularedemaassociatedwithathickenedandtautposteriorhyaloidmembrane.AmJOphthalmol121:405-413,19965)ScottDP:Vitrectomyfordiabeticmacularedemaassociatedwithatautpremacularposteriorhyaloid.Curr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