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カルテオロール持続点眼液の使用感のアンケート調査

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page1(153)7290910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(5):729732,2008cはじめに緑内障は長期にわたって管理の必要な疾患であり,ほとんどの患者が点眼薬を使用している.点眼治療を有効にするためには,コンプライアンスが大変重要であり,コンプライアンスを高めるために,多くの調査,工夫がされてきている13).コンプライアンスを高める要因としては患者教育が大切である4,5)が,点眼薬の利便性,使用感も重要である.2007年7月より発売された,カルテオロール持続点眼液(ミケランRLA点眼液2%)(以下,MKLA)は1日1回の点眼でよく,持続化剤としてアルギン酸を用いている.そのため,従来のゲル製剤より使用感は良好とされている.今回,筆者らはMKLAの使用感や利便性についてアンケート調査を行ったので報告する.I対象および方法1.対象参加6施設で通院中の,眼圧の安定している緑内障および高眼圧症患者で,アンケート調査に同意の得られた117人〔別刷請求先〕湖淳:〒545-0021大阪市阿倍野区阪南町1-51-10湖崎眼科Reprintrequests:JunKozaki,M.D.,KozakiEyeClinic,1-51-10Hannan-cho,Abeno-ku,Osaka-city,Osaka545-0021,JAPANカルテオロール持続点眼液の使用感のアンケート調査湖淳*1稲本裕一*2岩崎直樹*3尾上晋吾*4杉浦寅男*5平山容子*6*1湖崎眼科*2稲本眼科医院*3イワサキ眼科医院*4尾上眼科医院*5杉浦眼科*6平山眼科QuestionnaireSurveyofGlaucomaPatients’ImpressionofLong-ActingCarteololOphthalmicSolutionJunKozaki1),YuichiInamoto2),NaokiIwasaki3),ShingoOnoue4),ToraoSugiura5)andYokoHirayama6)1)KozakiEyeClinic,2)InamotoEyeClinic,3)IwasakiEyeClinic,4)OnoueEyeClinic,5)SugiuraEyeClinic,6)HirayamaEyeClinicカルテオロール持続点眼液(ミケランRLA点眼液2%)(MKLA)は1日1回の点眼でよく,持続化剤としてアルギン酸を用いているため,粘稠性は軽減されている.今回,従来のb遮断薬あるいは炭酸脱水酵素阻害薬点眼液が投与されて安定している緑内障および高眼圧症患者117人について,MKLAに変更したときの使用感,利便性についてアンケート調査を行った.変更前後で視力,眼圧に有意差はなかった.カルテオロール点眼液(MK)から変更した群は39例で,89%が1回点眼のMKLAの方が便利と答え,97%がMKLAへの変更を希望した.マレイン酸チモロールのゲル製剤から変更した群は50例で,60%が差し心地が良いと答え,86%がMKLAの継続を希望した.全体ではコンプライアンスが良好な患者は82%で,MKLAに変更しても変わらないと答えた患者は56%であったが,78%は点眼回数が減ることを望んでいた.90%の患者がMKLAの継続を希望した.Long-actingcarteololophthalmicsolution(MKLA)needstobeadministeredonlyoncedaily,anditsviscosityislowerthantheconventionalsolution,thankstotheuseofalginicacidtoprolongitsaction.Aquestionnairesur-veyofuser’simpression,conveniencesetc.inregardtoswitchingfromconventionalophthalmicsolutionstoMKLAwasrecentlycarriedoutin117glaucomapatients.NeithervisualacuitynorintraocularpressureafterswitchingtoMKLAdieredsignicantlyfrompre-switchinglevels.Ofthegroupthatswitchedfromconventionalcarteololoph-thalmicsolution(MK)toMKLA(n=39),89%ratedMKLAasconvenientbecauseofitsonce-dailytreatment,and97%wishedtocontinuereceivingMKLA.OfthegroupthatswitchedfromtimololmaleategeltoMKLA(n=50),60%ratedMKLAasmorecomfortableand86%desiredtocontinuereceivingit.Overall,78%ofthepatientswel-comedthedecreaseindosingfrequency,and90%desiredtocontinuereceivingMKLA.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(5):729732,2008〕Keywords:カルテオロール持続点眼液,アルギン酸,アンケート調査,コンプライアンス,ゲル製剤.long-act-ingcarteololophthalmicsolution,alginicacid,questionnairesurvey,compliance,gel.———————————————————————-Page2730あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(154)して,無しが82%であった.Q2の1回点眼で点眼忘れは,少なくなるが44%,変わらないが56%,多くなるが0%であった.変更後のQ3の1回点眼は,便利が78%,変わらないが19%,便利でないが3%であった.Q4の差し心地は?に対して,良いが59%,良くないが10%,変わらないが31%であった.Q5のどちらが良いかに対して,前の方が良いが12%,どちらでもないが25%,MKLAの方が良いが63%であった.Q6の続けたいかに対して,“はい”が90%“いいえ”が10%であった.MKLAの継続に関しては,眼圧上昇で診察医が不適と判断した2人と希望のなかった12人を除き88%が継続となった.Q5の前の方が良いと答えた12%に比較し,Q6の続けたいかの質問に“いいえ”と答えたのが10%と減っているのは,使い心地は悪いが眼圧が下降したためMKLAの継続を希望したからである(表1).MKからMKLAへの変更は39人であった.変更前の視力は,0.91±0.29,眼圧は16.7±2.3mmHg,変更後の視力は0.90±0.30,眼圧は16.4±2.4mmHgで,視力,眼圧のいずれも有意差はなかった.アンケートでは,MKLA変更前のQ1の点眼忘れに対して,無しが87%であった.Q2の1回点眼で点眼忘れは,少なくなるが50%,変わらないが50%,多くなるが0%であった.変更後のQ3の1回点眼は,便利が89%,変わらないが8%,便利でないが3%であった.MKLAが便利でないと答えた患者は1例で,そのコメントは1日2回点眼の方が精神的に安心するとのことであった.Q4の差し心地は?に対して,良いが54%,良くないが10%,変わらないが36%であった.Q5のどちらが良いかに対して,MKの方が良いが8%,どちらでもないが20%,MKLAの方が良いが72を対象とした.男性は38人,女性は79人で,平均年齢は66.8±11歳であった.内訳は原発開放隅角緑内障50人,正常眼圧緑内障14人,閉塞隅角緑内障(レーザー虹彩切開術および白内障術後)8人,高眼圧症37人,および続発緑内障8人であった.なお,本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に則り,共同して設置した,倫理審査委員会の承認を得て実施した.2.方法現在使用しているb遮断薬点眼あるいは炭酸脱水酵素阻害薬点眼液をMKLAに変更し,変更前および変更1カ月後に視力,眼圧などの検査を行い,患者にはコンプライアンス,差し心地,利便性,継続希望などについてアンケート用紙に記入してもらった.患者が継続の希望がない場合と診察医が不適と判断した症例は点眼を変更前にもどした.変更前の点眼は,従来の1日2回点眼のカルテオロール点眼液(ミケランR点眼液2%)(以下,MK)を単剤で使用していた症例は28人,他剤と併用していた症例は11人で合計39人であった.マレイン酸チモロールのゲル製剤(チモプトールRXE点眼液0.5%あるいはリズモンRTG点眼液0.5%)(以下,TMG)は,単剤で使用していた人は27人,他剤と併用していた人は23人で合計50例であった.その他は28人であった.II結果全体の117人では,MKLAに変更前の視力は0.93±0.24,眼圧は17.2±2.9mmHg,変更後の視力は0.92±0.25,眼圧は17.0±3.3mmHgと両方とも有意差はなかった.アンケートでは,MKLAに変更前のQ1の点眼忘れに対表1アンケート結果:MKLAに変更した全症例(n=117)Q1.点眼忘れ無し82%週1回14%週2回4%Q2.1回点眼で点眼忘れは?少なくなる44%変わらない56%多くなる0%Q3.1回点眼は便利78%変わらない19%便利でない3%Q4.差し心地は?良い59%良くない10%変わらない31%Q5.どちらが良い?前の方が良い12%どちらでもない25%今の方が良い63%Q6.続けたいか?はい90%いいえ10%表2アンケート結果:MKからMKLAに変更(n=39)Q1.点眼忘れ無し87%週1回13%週2回0%Q2.1回点眼で点眼忘れは?少なくなる50%変わらない50%多くなる0%Q3.1回点眼は便利89%変わらない8%便利でない3%Q4.差し心地は?良い54%良くない10%変わらない36%Q5.どちらが良い?前の方が良い8%どちらでもない20%今の方が良い72%Q6.続けたいか?はい97%いいえ3%———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008731(155)まり,点眼は多くても我慢して守るが,できれば回数は少ない方がいいということであろう.差し心地についてMKからMKLAへの変更の群では,54%が良いと答えている.“しみない”との理由が最も多く,“霧視がない”“ねばつきがない”というのが続いた.また,10%が良くないと答えている.理由は“ねばつきを感じる”というのがほとんどであった.TMGからMKLAへの変更群では60%が良いと答えた.理由は“ねばつきがない”というのがほとんどで,“霧視がない”がつぎに多かった.良くないという答えは10%で,“ねばつき”“霧視”“しみる”というのが少数あった.点眼回数1日1回の利便性について,1日2回の方が安心感があるというコメントがあり,粘稠性については,“ねばつき”がある方が,入った感じがわかる,持続力を感じるというコメントもあった.多少の好みはあるものの,MKからMKLAへの変更群では97%,TMGからMKLAへの変更群では86%,全体では90%の患者がMKLAへの変更を希望していたことから,MKLAは緑内障患者の点眼治療のコンプライアンスやQOL(qualityoflife)を高めることができる有用な点眼液と思われた.文献1)塚原重雄:緑内障薬物療法とcompliance.眼臨79:349-354,19852)阿部春樹:薬物療法,コンプライアンスを良くするには.あたらしい眼科16:907-912,19993)佐々木隆弥,山林茂樹,塚原重雄ほか:緑内障薬物療法における点眼モニターの試作およびその応用.臨眼40:731-734,19864)古沢千晶,安田典子,中本兼二ほか:緑内障一日入院の実際と効果.あたらしい眼科23:651-653,20065)平山容子,岩崎直樹,尾上晋吾ほか:アンケートによる緑内障患者の意識調査.あたらしい眼科17:857-859,20006)高橋雅子,中島正之,東郁郎:緑内障の知識に関するアンケート調査.眼紀49:457-460,19987)仲村優子,仲村佳巳,酒井寛ほか:緑内障患者の点眼薬に関する意識調査.あたらしい眼科20:701-704,20038)小林博,岩切亮,小林かおりほか:緑内障患者の点眼状況.臨眼60:43-47,2006%であった.Q6の続けたいか?に対して,“はい”が97%,“いいえ”が3%であった(表2).MKLAの継続に関しては,診察医が不適と判断した症例がなかったため,97%が継続となった.TMGからMKLAへの変更は50例であった.変更前の視力は0.93±0.21,眼圧は17.8±3.6mmHg,変更後の視力は0.93±0.23,眼圧は17.7±4.2mmHgで,視力,眼圧のいずれも有意差はなかった.アンケートでは,MKLA変更前のQ1の点眼忘れに対して,無しが82%であった.Q3の1回点眼は,便利が67%,変わらないが31%,便利でないが2%であった.Q4の差し心地は?に対して,良いが60%,良くないが10%,変わらないが30%であった.Q5のどちらが良いかに対して,TMGの方が良いが14%,どちらでもないが36%,MKLAの方が良いが50%であった.Q6の続けたいか?に対して,“はい”が96%,“いいえ”が14%であった(表3).MKLAの継続に関しては,眼圧上昇のため診察医が不適と判断した1例と希望のなかった7例を除き,42例84%が継続となった.III考按全体のコンプライアンスは82%であった.諸家68)の報告でも80%前後であるが,塚原1)は面接の方法によっても差があると述べている.コンプライアンスは1日2回点眼より,1回点眼の方が良好になるものと予想されたが,50%以上で変わらないという答えであった.これは,仲村ら7),小林ら8),森田ら9)も点眼薬剤数が増えてもコンプライアンスは変わらないか,むしろ向上していると報告しているように,点眼回数の減少はコンプライアンスの向上には必ずしも寄与しない,ということかもしれない.従来のカルテオロール点眼液であるMKから同主成分で持続型のMKLAへの変更では89%の患者が1日1回点眼の利便性を望んでいた.全体でも78%であった.小林ら10)も80%以上の患者が点眼回数の減少などの利便性の向上を希望している,と述べている.また,徳川ら11),佐々田ら12)も0.5%マレイン酸チモロールとゲル製剤を比較して,1日1回点眼という利便性の優位性を述べている.つ表3アンケート結果:TMGからMKLAに変更(n=50)Q1.点眼忘れ無し82%週1回12%週2回6%Q2.1回点眼で点眼忘れは?少なくなる─変わらない─多くなる─Q3.1回点眼は便利67%変わらない31%便利でない2%Q4.差し心地は?良い60%良くない10%変わらない30%Q5.どちらが良い?前の方が良い14%どちらでもない36%今の方が良い50%Q6.続けたいか?はい86%いいえ14%———————————————————————-Page4732あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(156)11)徳川英樹,大鳥安正,森村浩之ほか:チモロールからチモロールゲル製剤への変更でのアンケート調査結果の検討.眼紀54:724-728,200312)佐々田知子,永山幹夫,山口樹一郎ほか:チモロールゲル製剤の比較.あたらしい眼科18:1443-1446,20019)森田有紀,堀川俊二,安井正和:緑内障患者のコンプライアンス,点眼薬の適正使用に向けて.医薬ジャーナル35:153-158,199910)小林博,岩切亮,小林かおりほか:緑内障患者の点眼薬への意識.臨眼60:37-41,2006***