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細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009 および2014年のまとめ)

2016年6月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科33(6):875.887,2016c細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査(2005,2007,2009および2014年のまとめ)末信敏秀*1松崎薫*2小山英明*2岸直子*2松本哲*2秦野寛*3*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部*2株式会社LSIメディエンス*3ルミネはたの眼科InvestigationofBacterialIsolatesRecoveredfromOcularInfections,RegardingSusceptibilityToshihideSuenobu1),KaoruMatsuzaki2),HideakiKoyama2),NaokoKishi2),SatoruMatsumoto2)andHiroshiHatano3)1)MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)LSIMedienceCorporation,3)LumineHatanoEyeClinic細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のgatifloxacin(GFLX)および他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,2005年,2007年,2009年および2014年の各1年間に,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より分離された2,498菌株を対象に,GFLXおよびその他の点眼用抗菌薬に対する感受性を測定した.グラム陽性菌では,計4回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,moxifloxacin(MFLX)およびtosufloxacin(TFLX)に対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちStreptococcusspp.およびEnterococcusspp.はlevofloxacin(LVFX)よりも,Corynebacteriumspp.はMFLXおよびLVFXよりも,GFLXに高い感受性を示した.一方,グラム陰性菌においても,GFLXに対する感受性の低下は認められず,LVFXおよびTFLXに対する感受性とほぼ同等であった.また,2014年分離株のうちPseudomonasaeruginosaはMFLXよりもGFLXに高い感受性を示した.以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性に経年的な耐性化傾向は認められなかったことから,GFLXは細菌性外眼部感染症に対して有用な抗菌薬であると考えられた.Isolatesrecoveredfromocularinfectiouspatientsbetween2005and2014wereassessedinvitroregardingtheirsusceptibilitiestogatifloxacin(GFLX)andotherophthalmicantimicrobialagents.TheinvitroactivityofGFLXagainsttheisolateswascomparedtothatoflevofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX).TheactivitiesofGFLXagainstgram-positiveand-negativebacteriascarcelychangedduringtheinvestigationperiod.TheactivityofGFLXagainstgram-positiveisolatewasalmostequaltothoseofMFLXandTFLX.Againstgram-negativeisolates,GFLXantibacterialactivitywasalmostequaltothoseofLVFXandTFLX.SinceGFLXdidnotexhibitdiminishedactivityduringtheperiodofthisinvestigation,theagentisconcludedtobepotentlyactiveagainstbacterialisolatesfromocularinfectiouspatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(6):875.887,2016〕Keywords:ガチフロキサシン,感受性,サーベイランス,フルオロキノロン,眼感染症.gatifloxacin,susceptibility,surveillance,fluoroquinolones,ocularinfection.はじめにGatifloxacin(GFLX)点眼薬が2004年に上市されてから10年が経過するなか,筆者らは2005年,2007年および2009年の計3回,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性を検討し,経年的な耐性化傾向を認めなかったことを報告した1).現時点においても,GFLXをはじめとするフルオロキノロン系点眼薬は,細菌性外眼部感染症に対する第一選択薬の座を譲っていない.言い換えれば,フルオロキノロン系薬に代わる新しい作用機序をもつ有用な抗菌薬が,世に登場していないともいえる.フルオロキノロン系薬は,細菌のDNA合成に関与するDNAgyraseおよびtopoisomeraseIVという酵素を阻害することで抗菌活性を示し,GFLXでは,〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(115)875 表1試験菌株各回の収集株数試験菌目標収第1回第2回第3回第4回集株数(2005年)(2007年)(2009年)(2014年)StaphylococcusStaphylococcusaureus(Methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA,100100100100100Methicillin-resistantS.aureus:MRSA)CoagulasenegativeStaphylococcus(CNS)100100100100100StreptococcusStreptococcuspneumoniae5050505050Streptococcusspecies(S.pneumoniae以外)2525252525Enterococcusspecies2525252525Corynebacteriumspecies2525252525Moraxella(Branhamella)catarrhalis2525252525EnterobacteriaceaeCitrobacterspecies1010101010Klebsiellaspecies1010101010Serratiaspecies2525252525Morganellamorganii1010101010NonglucosefermentativegramnegativerodPseudomonasaeruginosa5050505050Pseudomonasspecies(P.aeruginosa以外)2525252525Sphingomonaspaucimobilis2576187Stenotrophomonasmaltophilia1010101010Acinetobacterspecies2525252525Haemophilusinfluenzae5050505050嫌気性菌Propionibacteriumacnes5050505050計640622621633622キノロン環8位のメトキシ基が両酵素の阻害活性を高め,変異株の出現頻度低減に寄与することで,耐性菌が生じにくいことが示唆されている2).一方,抗菌薬にとって,その使用量に伴う耐性化は一般的に不可避である.したがって,継続的に新規作用機序を有する抗菌薬の創薬が必要である一方,既存薬の適正使用を推進し耐性化を最小限に止めることが重要である.すなわち,医療現場における適正使用の根拠となる「推定起因菌の感受性動向」の情報に基づいて,適切な抗菌薬が選択される必要がある.そこで筆者らは,継続して眼科臨床分離株の感受性を監視し,感受性動向の情報を医療現場と共有することが重要であると考え,前回報告の2009年から5ヵ年が経過した2014年に分離された細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のGFLXおよび他の点眼用抗菌薬に対する感受性を検討することを目的として,4回目の調査を実施したので報告する.なお,本調査は感受性動向を把握することを主たる目的とすることから,過去の成績1)とあわせて報告する.876あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016I材料および方法1.試験薬剤今回の試験では,継続的な感受性動向の調査対象薬剤としてgatifloxacin(GFLX),levofloxacin(LVFX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)およびcefmenoxime(CMX)に加え,erythromycin(EM)およびtobramycin(TOB)の7薬剤を用いた.なお,Staphylococcusspp.にはoxacillin(MPIPC),StreptococcuspneumoniaeにはpenicillinG(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.2.試験菌株表1に示した菌種について,各回(1年間)における目標収集株数を設定し,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より検体採取,分離,同定された順に,目標株数に達するまでの収集菌株(総数2,498株)を試験菌株とした.試験菌株は分離後,最小発育阻止濃度(MIC)測定時まで保存液(スキムミルク)中にて.70℃以下で保存した.なお,これらの試験菌株は,「疫学研究に関する倫理指針」(平成14(116) 年文部科学省・厚生労働省告示第2号)を遵守して使用した.3.薬剤感受性測定試験菌株の薬剤感受性測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)に準じた微量液体希釈法にて実施した.微量液体希釈法による測定にはフローズンプレート(栄研化学)を使用した.測定培地は,S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.については,2%ウマ溶血液添加cation-adjustedMuellerHintonbroth(CAMHB)を用い,H.influenzaeにはHTMbroth(hematin15μg/mL,b-NAD15μg/mLおよびyeastextract0.5%添加CAMHB)を用い,その他の好気性菌にはCAMHBを用いた.嫌気性菌については,5%馬溶血液添加brucellabroth(hemin5μg/mLおよびvitaminK11μg/mLも添加)を用いた.好気性菌は約5×104.1×105CFU/well,嫌気性菌は約1.2×105CFU/wellとなるように各wellに菌を接種後,好気性菌は35℃,20.24時間,好気培養,嫌気性菌は35℃,46.48時間,嫌気培養を行った.判定は,対照に用いた薬剤不含有培地における菌の発育を確認した後,菌の発育が認められない最小薬剤濃度をMICとした.4.耐性基準各菌種の耐性の定義はCLSIの基準に従い,以下のとおりとした.S.aureusは,MPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものをsusceptible(MSSA),4μg/mL以上のものをresistant(MRSA)とした.coagulasenegativeStaphylococcus(CNS)は,MPIPCのMIC値が0.25μg/mL以下のものをsusceptible(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをresistant(MRCNS)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものをsusceptible(PSSP),0.12.1μg/mLのものをintermediate(PISP),2μg/mL以上のものをresistant(PRSP)とした.5.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関過去3回の調査結果から,GFLXのMICrangeが比較的幅広いことが予測される菌種について,GFLXと対象薬剤のMIC値との相関について検討した.すなわち,第4回調査の分離株のうち,S.aureusおよびCNS(各100株)に対するMPIPC,CMX,EMおよびTOBのMIC値との相関をSpearman順位相関係数を用いて検討した(JMP10forWindows,SASInstituteInc,Cary,NorthCarolina,USA).同様に,Corynebacteriumspp.(25株)およびPseudomonasaeruginosa(50株)についてはCMX,EMおよびTOBのMIC値との相関について検討した.また,MIC値相関の検討では,羽藤らの報告3)を参考に,(117)分位点密度を等高線パターンとして描出(同JMP10)し,視覚的な評価を試みた.II結果1.グラム陽性菌2005年(第1回),2007年(第2回),2009年(第3回)および2014年(第4回)の各年に外眼部感染症患者から分離された菌株に対する各種抗菌薬のMICの成績を表2に示した.その結果,4回の調査においてS.aureus100株に占めるMRSAの割合は20%程度で,GFLXのMIC90は32.128μg/mLであり大きな変動は認められず,MFLXのMIC90は32.64μg/mL,LVFXおよびTFLXのMIC90は,それぞれ>128および>16μg/mLであった.また,MSSAに対するGFLXのMIC90は0.12.0.25μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様に大きな変動は認められなかった.CNSに占めるMRCNSの割合は40%程度であり,GFLXのMIC90は2μg/mLで,過去3回の調査成績と変化はなかった.また,MSCNSについては,GFLXのMIC90は0.12.2μg/mLであり,第4回調査でもっとも高かったが,他のフルオロキノロン系薬についても同様の傾向を示した.PSSPおよびPISPに対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.25.0.5μg/mLであり,MFLXおよびTFLXと同等であった.また,PRSPの収集株数は,すべての調査において10株未満と少なかったが,GFLXのMICはPSSPおよびPISPに対するMICとほぼ同等であった.Streptococcusspp.に対するGFLXのMIC90は4回の調査を通じて0.5μg/mLであり,変動は認められなかった.また,他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の著明な変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90(0.5μg/mL)はLVFX(2μg/mL)より低かった.Enterococcusspp.に対するGFLXのMIC90は0.5.1μg/mLであり,上昇は認められなかった.他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の変動は認められなかったが,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,LVFXの2μg/mLより低かった.一方,CMXのEnterococcusspp.に対するMIC90は4回の調査すべてにおいて>128μg/mLであった.Corynebacteriumspp.に対するGFLXのMIC90は8.16μg/mLであり,第4回調査のGFLXのMIC90(8μg/mL)は,LVFXおよびMFLXの64μg/mLおよび32μg/mLより低かった.ただし,CMXのMIC90は0.25.1μg/mL,TOBでは2μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.計4回の調査におけるP.acnesに対するGFLXのMIC90は0.25.0.5μg/mLであり,MFLXと同等で他のフルオロキノロン系薬よりも低値であった.また,CMXのMIC90は0.25.0.5μg/mLでありあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016877 表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび他の対象薬のMIC推移MIC:μg/mL菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSAGFLX≦0.06-4≦0.060.12≦0.06-20.120.12≦0.06-40.120.25≦0.06-320.120.25第1回(81株)LVFX0.12-80.250.250.12-40.250.250.12-80.250.50.12->1280.250.5第2回(78株)TFLX≦0.06-8≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.12≦0.06->16≦0.060.25第3回(76株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-16≦0.060.12第4回(81株)CMX1-4221-2121-2220.5-422EM0.25->1280.5>128TOB0.25-640.516MRSAGFLX0.12->1284128≦0.06-642320.12->12881280.12-64464第1回(19株)LVFX0.25->1288>1280.25->1288>1280.25->12832>1280.25->12816>128第2回(22株)TFLX≦0.06->164>16≦0.06->164>16≦0.06->16>16>16≦0.06->16>16>16第3回(24株)MFLX≦0.06-128264≦0.06-32232≦0.06-128864≦0.06-64864第4回(19株)CMX8->128>128>1284->12864>1288->128>128>1284->12816>128EM0.5->128>128>128TOB0.5->1281>128MSCNSGFLX≦0.06-2≦0.060.12≦0.06-20.121≦0.06-20.120.12≦0.06-20.122第1回(60株)LVFX0.12-80.120.250.12-80.2520.12-40.250.250.12-80.254第2回(52株)TFLX≦0.06-16≦0.06≦0.06≦0.06->16≦0.062≦0.06-4≦0.06≦0.06≦0.06-8≦0.064第3回(60株)MFLX≦0.06-2≦0.06≦0.06≦0.06-4≦0.060.5≦0.06-1≦0.060.12≦0.06-2≦0.061第4回(60株)CMX0.25-20.510.25-10.510.25-10.510.25-10.51EM0.12->1280.25128TOB≦0.06->1280.2516MRCNSGFLX≦0.06-212≦0.06-222≦0.06-6412≦0.06-3212第1回(40株)LVFX0.12-16240.12-16480.12->128480.12->12844第2回(48株)TFLX≦0.06-1624≦0.06->1648≦0.06->1628≦0.06->1644第3回(40株)MFLX≦0.06-40.51≦0.06-412≦0.06-3212≦0.06-3211第4回(40株)CMX2-16480.5-164161-8481-16416EM0.25->12864>128TOB0.12->128864PSSPGFLX0.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.250.12-0.50.250.25第1回(38株)LVFX0.25-10.510.25-1110.5-1110.5-111第2回(32株)TFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.12第3回(29株)MFLX≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25第4回(30株)CMX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.250.120.25≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.50.250.25EM≦0.06->1284>128TOB8-321632(118) (119)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016879第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90PISPGFLX0.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.250.250.250.12-0.50.250.5第1回(10株)LVFX第2回(14株)TFLX第3回(15株)MFLX第4回(13株)CMXEMTOBPRSPGFLX第1回(2株)LVFX第2回(4株)TFLX第3回(6株)MFLX第4回(7株)CMXEMTOBStreptococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBEnterococcusspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCorynebacteriumspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB0.5≦0.06≦0.060.250.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.510.250.2521211>1281612816320.50.50.120.120.5─────0.250.50.120.12≦0.060.510.250.251288324160.120.50.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816648320.50.5≦0.06≦0.060.120.2510.120.120.5≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.251≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.120.1210.520.50.540.520.50.54120.50.5>128>128>128>166410.50.120.120.25─────0.250.50.120.12≦0.060.510.50.5640.250.50.50.250.2510.120.120.5─────0.510.250.25≦0.06120.50.5>128166416320.250.5≦0.06≦0.06≦0.060.2510.120.120.50.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.2510.250.258≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.12140.520.250.252120.50.5>12832>128>16640.50.50.120.120.5─────0.2510.120.12≦0.060.510.50.51280.250.50.250.120.2510.120.121─────0.510.250.250.25120.50.5>12816128>16320.50.-15≦0.06-0.25≦0.06-0.25-0.50.121->1288-320.250.-150.120.120.-251->12816-32-0.50.120.-225≦0.06-0.5≦0.06-0.25≦0.06-2≦0.06->1282-320.-251–0.50.25-0.50.258->128->1280.258->128≦0.06-16≦0.06-128≦0.06->16≦0.06-32≦0.06-2≦0.06->128≦0.06-810.120.120.25216───────0.510.250.25≦0.06≦0.06160.510.250.25128>12816832160.120.12≦0.0610.250.250.5>12832───────0.520.250.250.254320.520.50.5>128>128>128864832182 第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)菌名(株数)DrugMICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90P.acnesGFLX0.250.250.250.25-0.50.250.50.25-0.50.250.50.25-0.50.250.5第1回(50株)LVFX第2回(50株)TFLX第3回(50株)MFLX第4回(50株)CMXEMTOB-0.50.250.5-10.12-0.25≦0.06-0.50.510.25≦0.060.510.250.50.-150.12-20.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.250.-150.5-10.25-0.5≦0.06-0.50.510.250.12110.50.50.-150.510.-1511-0.50.250.250.5≦0.06-0.50.120.50.120.120.1216-646464グラム陰性菌M.(B.)catarrhalisGFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOBCitrobacterspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBKlebsiellaspp.GFLX第1回(10株)LVFX第2回(10株)TFLX第3回(10株)MFLX第4回(10株)CMXEMTOBSerratiaspp.GFLX第1回(25株)LVFX第2回(25株)TFLX第3回(25株)MFLX第4回(25株)CMXEMTOB≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.250.250.250.50.120.120.120.120.511120.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.06≦0.06≦0.060.120.250.50.250.250.50.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.0610.50.250.25110.250.50.5110.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.250.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.50.250.2510.25≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.50.250.2510.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.120.250.120.1211122≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.120.250.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.120.120.50.250.250.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-10.50.-1120.25-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06-0.12≦0.0664->1281280.-1250.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.0664>1281280.50.250.5≦0.06-0.50.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.250.12≦0.06-0.50.25≦0.06-0.50.1264->1281280.-4252≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.50.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.061280.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06>1280.50.250.120.120.50.25>1284(120) 菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128菌名(株数)Drug第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90M.morganiiGFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-1≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第1回(10株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06第2回(10株)TFLX≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-2≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.12第3回(10株)MFLX≦0.06-0.250.120.25≦0.06-40.120.5≦0.06-0.120.120.12≦0.06-0.250.120.25第4回(10株)CMX≦0.06-1≦0.06≦0.06≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06EM128>128>128>128TOB0.250.50.50.5P.aeruginosaGFLX0.25-320.520.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第1回(50株)LVFX0.25-640.510.25-80.510.25-40.510.25-40.50.5第2回(50株)TFLX0.12->160.250.50.12-40.250.50.12-20.250.50.12-20.250.25第3回(50株)MFLX0.5-128140.5-16120.5-8120.5-812第4回(50株)CMX16->128163216-12832648->12816648->1283232EM64->128>128>128TOB0.25-20.51Pseudomonasspp.GFLX≦0.06-0.50.120.5≦0.06-40.510.12-10.51≦0.06-10.120.5第1回(25株)LVFX≦0.06-0.50.120.25≦0.06-40.50.50.12-10.51≦0.06-10.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06-0.25≦0.060.25≦0.06-10.250.5≦0.06-0.50.250.5≦0.06-0.50.120.25第3回(25株)MFLX≦0.06-10.251≦0.06-8120.25-2120.12-20.251第4回(25株)CMX0.12-12816640.5->1283212816-128326416-643264EM8->12832>128TOB≦0.06-0.5≦0.060.5S.paucimobilisGFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-10.121≦0.06-0.5──第1回(7株)LVFX0.12-1──≦0.06-2──0.12-20.2520.12-1──第2回(6株)TFLX≦0.06-0.5──≦0.06-1──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.5──第3回(18株)MFLX≦0.06-0.5──≦0.06-2──≦0.06-2≦0.061≦0.06-0.25──第4回(7株)CMX2-32──1->128──2->128326416-64──EM2-4──TOB0.12-1──S.maltophiliaGFLX0.25-40.51≦0.06-320.540.25-2110.25-111第1回(10株)LVFX0.5-40.520.12-32140.5-2120.5-212第2回(10株)TFLX0.12-20.51≦0.06->160.520.12-10.50.50.12-0.50.50.5第3回(10株)MFLX0.12-20.251≦0.06-320.520.12-10.50.50.25-0.50.50.5第4回(10株)CMX2->128128>12832->128128>1284->128128>12832->128128>128EM128->128128>128TOB8->128128>128(121)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016881 菌名(株数)Drug第1回(2005年)MICrangeMIC50MIC90第2回(2007年)MICrangeMIC50MIC90第3回(2009年)MICrangeMIC50MIC90第4回(2014年)MICrangeMIC50MIC90Acinetobacterspp.GFLX≦0.06-16≦0.060.25第1回(25株)LVFX≦0.06-160.120.5第2回(25株)TFLX≦0.06->16≦0.060.12第3回(25株)MFLX≦0.06-16≦0.060.25第4回(25株)CMX4-1281632EMTOBH.influenzaeGFLX≦0.06≦0.06≦0.06第1回(50株)LVFX≦0.06≦0.06≦0.06第2回(50株)TFLX≦0.06≦0.06≦0.06第3回(50株)MFLX≦0.06≦0.06≦0.06第4回(50株)CMX≦0.06-0.5≦0.060.5EMTOBABPC0.12->1280.54≦0.06-0.5≦0.060.12≦0.06-0.50.120.25≦0.06-0.25≦0.06≦0.06≦0.06-1≦0.060.121-641664≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.50.12-160.54≦0.06-0.12≦0.060.12≦0.06-0.250.120.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.060.124-641632≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.120.50.12-6414≦0.06-0.12≦0.06≦0.06≦0.06-0.250.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.12≦0.06≦0.064-3216324-6416160.25-20.51≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06-0.50.250.52-16880.25-4220.12->128132収集株数が10株未満であった場合は,MIC50およびMIC90を算定せず.フルオロキノロン系薬と同程度であったが,EMのMIC値は全株で0.12μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.2.グラム陰性菌計4回の調査のM.(B.)catarrhalisに対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下であり,LVFX,TFLXおよびMFLXと同等であった.Citrobacterspp.に対するGFLXのMIC90は,第2回調査で0.5μg/mLと高値であった以外は0.06μg/mL以下であり,上昇を認めなかった.Klebsiellaspp.に対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.Serratiaspp.に対するGFLXのMIC90については,0.25.0.5μg/mLであり,上昇を認めなかった.M.morganiiに対するGFLXのMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,第2回調査におけるMIC90がやや高かったが,他のフルオロキノロン系薬も同様の傾向であった.P.aeruginosaに対するGFLXのMIC90は0.5.2μg/mLで大きな変動はなく,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.また,第4回調査におけるGFLXのMIC90は0.5μg/mLであり,MFLXの2μg/mLより低かった.Pseudomonasspp.に対するGFLXのMIC90についても0.5.1μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬のMIC90とほぼ同等であった.S.paucimobilisについては,第3回調査を除いて収集株数が少なくMIC90は算出していないが,MICrangeは≦0.06.1μg/mLであり,TFLXおよびMFLXと同等であった.S.maltophiliaに対するGFLXの計4回の調査におけるMIC90は1.4μg/mLであり,第2回調査で若干の上昇を認めたが,他のフルオロキノロン系薬と同様に経年的なMIC90の上昇は認められなかった.Acinetobacterspp.に対するGFLXの過去4回の調査におけるMIC90は≦0.06.0.25μg/mLであり,LVFX,TFLXおよびMFLXとほぼ同等であった.H.influenzaeに対するGFLXのMIC90は,計4回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.一方,MFLXではMICが0.12μg/mLを示す菌株が認められた.3.GFLXと対象薬剤のMIC値の相関図1に示したとおり,S.aureusに対するGFLXのMIC値は,MPIPCおよびCMXと相関が認められた.MPIPCとの比較では,MSSAとMRSAで等高線パターンが異なり,MSSAではGFLXのMIC値として0.12μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,MRSAでは4μg/mL付近でもっとも高かった.その他の対象薬剤との比較では,GFLXあるいは対象薬剤のいずれかに低感受性である群,両方に低感受性である群の存在が認められた.一方,CNSでは,GFLXのMIC値はMPIPCおよびTOBと相関が認められた(図2).MSCNSおよびMRCNSでは,それぞれGFLXのMIC値と(122) 図1S.aureus(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%して0.12および2μg/mL付近の分位点密度がもっとも高く,等高線パターンはX軸方向に大きく拡がっていた.その他の対象薬剤との比較においても,等高線パターンはX軸方向に拡大していた.図3,4に示したとおり,Corynebacteriumspp.(25株)およびP.aeruginosa(50株)では,GFLXと対象薬剤のMIC値に相関は認められなかった.Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaに対するGFLXのMIC値としては,それぞれ8および0.5μg/mL付近で分位点密度がもっとも高かった.また,Corynebacteriumspp.ではX軸あるいはY軸方向への等高線拡大が認められた一方で,P.aeruginosaでの等高線には拡大が認められなかった.III考按細菌感染症の治療の多くは,病巣の塗抹検鏡から起因菌を(123)予測し,経験的治療(empirictherapy)として抗菌薬の投与が開始される.ついで,培養による起因菌の同定ならびに薬剤感受性の検査結果に基づく抗菌薬の最適化が図られ,標的治療(definitivetherapy)へと移行する.このような治療方針は,外眼部における細菌感染症も例外ではなく,経験的治療としては,広域抗菌スペクトラムを有するフルオロキノロン系薬の点眼剤が汎用されている.1987年のOFLXの登場にはじまり,現在では,第4世代フルオロキノロン4.6)と称されるGFLXおよびMFLXが臨床使用されている.MRSAやMRCNSのGFLXおよびMFLXに対する耐性化は,LVFXおよびTFLXに対する耐性化とは異なり段階的7.9)で,GFLXまたはMFLX感性株のなかにはLVFX耐性株が存在する9).10ヵ年の調査では,GFLXおよびMFLXのMIC90がLVFXに比して若干低く,またGFLXおあたらしい眼科Vol.33,No.6,2016883 図2CoagulaseNegativeStaphylococcus(CNS)(100株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%よびMFLXのMIC90の推移に明らかな上昇傾向は認められなかったが,MRSAに対する抗菌活性がMRCNSに比べ弱い傾向にあった.また,S.aureusに対するGFLXのMIC値はMPIPCおよびCMXと相関したことから,mecA(MPIPC,CMXなどへの耐性化に関与する遺伝子)獲得株では,同時にgrlA(topoisomeraseIVをコードする遺伝子)およびgyrA(DNAgyraseをコードする遺伝子)に変異を有する確率が高いことが示唆された.さらにEMおよびTOBではMIC90が高かったことから,MRSAが起因菌であると判明した際は,クロラムフェニコールなどの感受性を示す抗菌薬の選択を考慮すべきと考えられた.このほか,分位点密度等高線パターンの検討から,S.aureusは多様な薬剤感受性パターンを示し,第4回調査ではMSSAのなかにフルオロキノロン系薬全般のMIC値が高い株が存在したことから,引き続き注視する必要がある.CNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は,過去3回の調査においては,いずれもMSCNSに比してMRCNSで高かったが,第4回調査におけるMSCNSおよびMRCNSに対するフルオロキノロン系薬のMIC90は同程度であった.したがって,MSCNSの薬剤感受性動向にも注視する必要があると考えられる.ただし,分位点密度等高線パターンから,GFLXはCMX,EMおよびTOBに比して優秀な抗菌活性を有しているといえる.一方,CNSに対するGFLXのMIC値は,S.aureusと同様にMPIPCおよびCMXと相関(CMXとは弱い相関)するとともに,TOBとも相関した.したがって,GFLX耐性(あるいは低感受性)のCNSでは,(124) あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016885(125)程度であった.グラム陰性菌に対するフルオロキノロン系薬のMIC値は,他の系統の薬剤に比べて低く,耐性化も認められず,優れた抗菌活性を示した.グラム陰性菌のうち,とくに角膜炎の起因菌として重要なP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.また,P.aeruginosaに対して,第4回調査の対象薬剤としたTOBはGFLXと同程度のMIC90を示し,GFLXよりも高感受性の株も存在したことから,P.aeruginosaが起因菌として疑われる場合は,GFLXとTOBの組合せが有効であると考えられた.一方,P.aerugi-nosaの分位点密度等高線パターンは非常に特徴的であり,EMに対しては,全株が感受性を示さないという傾向が認められた.P.acnesは,フルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,10ヵ年の調査を通じて感受性の低下傾向はみられなかった.一方,第4回調査のP.acnes全株がEMに対して高い感受性を示したことから,P.acnesが起因菌である場合はEMも有効な選択肢であると考えられた.aac(6’)-aph(2’’)(アミノグリコシドへの耐性化遺伝子)10)を有する確率が高いことが示唆された.S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.また,S.pneumoniaeを含むレンサ球菌属に対してはb-ラクタム系およびマクロライド系が第一選択薬として推奨5)されているが,GFLXは同程度の抗菌活性を示した.Corynebacteriumspp.に対するフルオロキノロン系薬のMICrangeは比較的幅広く,抗菌活性は優秀とは言い難いが,フルオロキノロン系薬のなかではGFLXおよびTFLXのMIC90が低かった.一方,Corynebacteriumspp.に対してもっとも強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,GFLXのMIC値とも相関しなかったことから,Corynebac-teriumspp.を起因菌とする場合はCMXが最適な選択肢であると考えられた.また,第4回調査の対象薬剤としたEMおよびTOBの抗菌活性については,CMXについでTOBが高く,EMでは低感受性株の存在を認めたがGFLXと同図3Corynebacteriumspp.(25株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90% 以上,2004年の発売から10ヵ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性について検討した結果,経年的な耐性化傾向は認められなかった.したがって,GFLX点眼薬は現時点においても,外眼部感染症に対して有用であると考えられ,今後も外眼部感染症に対する経験的治療(empirictherapy)の主軸として使用されることに問題はないと考えられる.また,第4回調査の分離菌のうちStreptococcusspp.,Enterococcusspp.,Corynebacteriumspp.およびP.aeruginosaは,他のフルオロキノロン系薬に比してGFLXに高い感受性を示した.このうち,Corynebacteriumspp.は重篤な角膜炎の起因菌11)として,P.aeruginosaはコンタクトレンズ装着に伴う角膜炎の起因菌12)として問題視されている.一方,Streptococcusspp.およびEnterococcusspp.は外眼部感染症の起因菌のみならず,濾過胞感染13)や術後眼内炎14)の起因菌としても重要であることから,GFLXは外眼部感染症に対する経験的治療のほか,周術期管理においても有用な選択肢であると考えられる.しかしながら,近年ではフルオロキノロン系薬耐性菌の出現と増加7,15,16)に加886あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016図4P.aeruginosa(50株)に対するGFLXおよび対象薬剤のMIC値の相関(Spearman順位相関係数)分位点密度等高線(二変量の密度を推定し,各等高線より下に位置する点の割合を示す)■:10%,■:20%,■:30%,■:40%,■:50%,■:60%,■:70%,■:80%,■:90%え,新しい抗菌薬開発のモチベーションが世界的に減衰17)しており,新規作用機序を有する抗菌薬の登場には時間を要すると考えられる.したがって,現存の抗菌薬に対する耐性菌の拡大を最小化することがきわめて重要であり,さらなる抗菌薬の適正使用の推進が必要と考えられる.適正使用は,適切な抗菌薬の選択に始まる.すなわち,推定起因菌の感受性に関する最新情報18),各抗菌薬の製剤としての特性も考慮し,経験的治療を開始することが非常に重要である.加えて,当該起因菌の薬剤感受性結果に基づく抗菌薬の最適化,投与期間の最短化への介入も重要である19).今回,筆者らは,眼科臨床由来の2005,2007,2009および2014年分離株の感受性について報告したが,引き続き,感受性動向を監視し,最新情報を医療現場と共有していく必要があると考える.文献1)末信敏秀,石黒美香,松崎薫ほか:細菌性外眼部感染症(126) 分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査.あたらしい眼科28:1321-1329,20112)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20013)羽藤晋,南川洋子,山田昌和:結膜.から分離されたブドウ球菌に対する二変量ノンパラメトリック密度を用いた薬剤感受性分布解析.あたらしい眼科24:663-667,20074)ChawlaB,AgarwalP,TandonRetal:Invitrosusceptibilityofbacterialkeratitisisolatestofourth-generationfluoroquinolones.EurJOphthalmol20:300-305,20105)井上幸次,大橋裕一,浅利誠志ほか:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版.日眼会誌117:467-509,20136)DuggiralaA,JosephJ,SharmaSetal:Activityofnewerfluoroquinolonesagainstgram-positiveandgram-negativebacteriaisolatedfromocularinfections:Aninvitrocomparison.IndianJOphthalmol55:15-19,20077)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20108)NoguchiN,OkiharaT,NamikiYetal:Susceptibilityandresistancegenestofluoroquinolonesinmethicillin-resistantStaphylococcusaureusisolatedin2002.IntJAntimicrobAgents25:374-379,20059)星最智:正常結膜.から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,201010)MartineauF,PicardFJ,LansacNetal:CorrelationbetweentheresistancegenotypedeterminedbymultiplexPCRassaysandtheantibioticsusceptibilitypatternsofStaphylococcusaureusandStaphylococcusepidermidis.AntimicrobAgentsChemother44:231-238,200011)DasS,RaoAS,SahuSKetal:Corynebacteriumsppascausativeagentsofmicrobialkeratitis.BrJOphthalmol:bjophthalmol-2015-306749PublishedOnlineFirst:13November201512)KondaN,MotukupallySR,GargPetal:Microbialanalysesofcontactlens-associatedmicrobialkeratitis.OptomVisSci91:47-53,201413)YamamotoT,KuwayamaY,KanoKetal:Clinicalfeaturesofbleb-relatedinfection:a5-yearsurveyinJapan.ActaOphthalmol91:619-624,201314)鈴木崇,戸所大輔,小早川信一郎ほか:腸球菌による白内障術後眼内炎の臨床像の検討.日眼会誌118:22-27,201415)EguchiH,KuwaharaT,MiyamotoTetal:High-levelfluoroquinoloneresistanceinophthalmicclinicalisolatesbelongingtothespeciesCorynebacteriummacginley.JClinMicrobiol46:527-532,200816)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,199917)InfectiousDiseasesSocietyofAmerica:The10x’20initiative:pursuingaglobalcommitmenttodevelop10newantibacterialdrugsby2020.ClinInfectDis50:10811083,201018)OliveiraAD,Hofling-LimaAL,BelfortRJretal:Fluoroquinolonesusceptibilitiestomethicillin-resistantandsusceptiblecoagulase-negativeStaphylococcusisolatedfromeyeinfection.ArqBrasOftalmol70:286-289,200719)厚生労働省医政局地域医療計画課:「薬剤耐性菌対策に関する提言」の送付について.事務連絡,平成27年4月1日***(127)あたらしい眼科Vol.33,No.6,2016887

ガチフロ®点眼液0.3%の小児外眼部感染症患者に対する有用性

2016年4月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科33(4):577〜583,2016©ガチフロ®点眼液0.3%の小児外眼部感染症患者に対する有用性末信敏秀*1秦野寛*2*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部*2ルミネはたの眼科ClinicalEffectivenessofGATIFLO®OphthalmicSolution0.3%inPediatricPatientswithBacterialOcularInfectionToshihideSuenobu1)andHiroshiHatano2)1)MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)LumineHatanoEyeClinicガチフロ®点眼液0.3%の小児外眼部感染症患者に対する有用性を再検討した.上市後にプロスペクティブな連続調査方式にて実施した4調査から,安全性評価の対象として,新生児(27日以下)73例,乳児(28日以上1歳未満)131例,小児(1歳以上15歳未満)74例を集積した結果,副作用の発現を認めなかった.また,主要な疾患であった結膜炎および涙囊炎に対する医師判定による全般改善度(有効率)は,それぞれ98.5%および94.4%で高い有効率を示した.以上の結果,ガチフロ®点眼液0.3%は新生児期から年長小児期の細菌性外眼部感染症治療への寄与が期待される薬剤であると考えられた.ThisreviewaimstoevaluatetheclinicaleffectivenessofGATIFLO®ophthalmicsolution0.3%inpediatricpatientswithbacterialocularinfection.Inthesafetyevaluation,whichinvolved278cases(73newborns,131infantsand74children)from4studiesconductedusingtheprospectivecontinuousmethod,noadversedrugreactionswereobserved.Intheefficacyevaluation,theeffectiveratesinpatientswithconjunctivitisanddacryocystitiswere98.5%and94.4%,respectively.TheseresultssuggestthatGATIFLO®ophthalmicsolution0.3%isausefulmedicationfortreatingexternalbacterialinfectionsoftheeyeinnewborns,infantsandchildren.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(4):577〜583,2016〕Keywords:ガチフロキサシン,ガチフロ®点眼液0.3%,新生児,乳児,小児,安全性,有効性.gatifloxacin,GATIFLO®ophthalmicsolution0.3%,newborns,infants,children,safety,efficacy.はじめに新生児期,乳児期あるいは小児期(ここでは15歳未満)では,経口投与された薬剤の吸収,分布,代謝や排泄などの体内挙動が異なる1)ため,成人における成績を転用することは困難である2).したがって,小児の個別の発達過程に応じた適切な投薬に関するデータが必要となるが,一般的に,そのような情報は十分ではない.一方,細菌性外眼部感染症は疾患により年齢分布に特徴があるが,結膜炎は際立って小児に多く発症する.したがって,全身的影響が比較的少ない,すなわち,個々の小児の発達過程に基づく影響を最小限に抑えることを考慮した抗菌薬投与が選択されるべきであり,やはり点眼による局所投与が第一選択である3).このようななか,フルオロキノロン点眼薬が汎用されるようになって久しいが,経口薬と同様に点眼薬についても,とくに1歳未満の小児に対する臨床成績に関する報告は散見4〜6)される程度で,情報は相対的に不足している7).そこで,2004年9月に上市されたガチフロ®点眼液0.3%(以下,本剤)について,承認時には評価されていなかった「1歳未満の小児に対する有効性および安全性を評価することを目的とした調査(2005年6月〜2006年6月)」に加え,「新生児(生後27日以下)を対象とした調査(2007年5月〜2008年9月)」を実施し,その成績を報告した8,9).また,細菌学的効果の経年変化を検討することをおもな目的として計2回の調査(第1回:2005年12月〜2007年10月,第2回:2008年3月〜2010年1月)を実施10)するなかで,同じく小児集団に関する成績を得た.そこで今回は,これら4調査で集積された小児集団(15歳未満)における患者背景ならびに本剤の有用性について再検討したので報告する.I対象および方法表1に示すとおり,細菌性外眼部感染症(眼瞼炎,涙囊炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎,角膜潰瘍)を対象として前向きに実施した4調査のうち,本剤が投与された小児症例(15歳未満)を対象とした.4調査成績の再検討項目は,患者背景である年齢,疾患名,本剤の使用状況,有害事象の発現状況および有効性評価とし,細菌学的効果に関する調査では本剤投与開始時における細菌検査とした.安全性は,副作用の発現率を評価した.有効性は,本剤投与開始後の臨床経過より担当医師が総合的に判断し,改善,不変および悪化の3段階で評価した.このうち改善症例を有効例,不変および悪化症例を無効例とした.細菌学的効果に関する調査にて採取された検体は,輸送用培地(カルチャースワブTM)を用いて検査施設である三菱化学メディエンス株式会社(現,株式会社LSIメディエンス)に輸送し,細菌分離と同定に供した.細菌学的効果に関する調査のほか,本剤投与開始時の検出菌に関する成績が任意で報告された症例を含め,年齢(日齢)と検出菌種の分布についてWilcoxon検定にて評価した.有意水準は5%とした.II結果1.評価対象症例4調査にて集積された安全性評価対象症例は新生児(生後27日以下)73例,乳児(生後28日以上1年未満)131例,小児(1歳以上15歳未満)74例の計278例であった(表1).さらに,細菌性外眼部感染症以外への投与8例(霰粒腫および眼感染症予防の各3例,結膜裂傷および乳児内斜視術後の各1例)および有効性評価が判定不能であった2例(涙囊炎2例)の計10例を除いた268例を有効性評価対象とした.2.安全性a.安全性評価対象症例の患者背景患者背景を表2に示す.最若齢は生後1日目の新生児であり,また,疾患別では結膜炎が70.1%(195/278例)でもっとも多く,ついで涙囊炎が13.7%(38/278例)であった.b.副作用発現率安全性評価対象とした278例において副作用の発現を認めなかった.3.有効性表3に示すとおり,結膜炎195例における有効率は98.5%であった.一方,涙囊炎に対する有効率は94.4%であり,疾患別ではもっとも低かった.涙囊炎36例ならびに結膜炎+涙囊炎6例は,いずれも新生児および乳児症例であり,また,平均投与期間が1カ月超と長かった.このほか,新生児には麦粒腫および角膜炎(角膜潰瘍を含む)症例は認められず,乳児では角膜炎(角膜潰瘍を含む)症例は認められなかった.4.初診時検出菌の分布a.小児区分別での初診時検出菌表4に示すとおり,新生児11例,乳児34例および小児50例の計95例から130株の初診時菌が検出された.その結果,グラム陽性菌の割合は新生児で70.6%(12/17)ともっとも高く,乳児で66.7%(32/48),小児で50.8%(33/65)であった.また,新生児ではcoagulasenegativestaphylococci(CNS)の割合が35.3%(6/17)ともっとも高かった一方で,Streptococcuspneumoniaeの検出例はなかった.乳児ではCorynebacteriumspp.,S.pneumoniaeおよびHaemophilusinfluenzaeの割合が,それぞれ20.8%(10/48),14.6%(7/48)および18.8%(9/48)で主要な検出菌であった.小児ではH.influenzaeの割合が35.4%(23/65)ともっとも高く,ついでCorynebacteriumspp.およびStaphylococcusaureusの割合が15.4%(10/65)と高かった.また,図1に示すとおり,10株以上が検出されたCNS,a-Streptococcusspp.,S.pneumoniae,Corynebacteriumspp.,H.influenzaeおよびS.aureusについて,由来患者の日齢分布について検討した結果,平均日齢±標準偏差はCNSで268±608日でもっとも低く,S.aureusで2,222±1,762日でもっとも高かった.b.疾患別での初診時検出菌表5に示すとおり,結膜炎ではH.influenzaeが33.0%(33/100)を占め,もっとも高かった.涙囊炎では際立って割合の高い菌種はなかったが,グラム陽性菌の割合が70.0%(14/20)と高く,Corynebacteriumspp.,a-Streptococcusspp.およびS.pneumoniaeの割合が15.0%(3/20)で主要であった.III考察新生児期,乳児期あるいは小児期では,経口投与された薬剤の吸収,分布,代謝や排泄などの体内挙動が異なる.たとえば,新生児では胃内pHが高いため,酸性条件下で不安定な薬剤(ペニシリンG,エリスロマイシンなど)の体内吸収が乳児や小児に比べ高いことが知られている11).しかしながら,小児を対象とした臨床試験成績に基づき,小児に対する適応を有する医薬品は限られている2,7).このようななか,小児への医薬品の投与は,成人用量を体重あるいは体表面積から換算して行われることが多く,“とりあえず”の治療としては許容されるかもしれないが,継続治療にあたっては小児の成長段階に応じたPK/PDに基づく個別化が必要である.一方,点眼療法に目を向けると,小児用として用法・用量を設定し,適応とした点眼薬はない.2006年に発売されたトスフロキサシントシル酸塩水和物点眼液では,小児を対象とした臨床試験が実施されたが,成人と同じ用法・用量の設定である.このように,フルオロキノロン点眼薬の適応となる外眼部感染症は小児特有の疾患ではなく,また,多くの代替薬が存在することから,本剤についても1歳未満の小児に対する用法・用量の設定を目的とした臨床試験は実施しなかったが,上市後の使用実態下においては経験的に使用される可能性が非常に高く,安全性および有効性について検討する必要があると考え,使用成績調査を行った.新生児および乳児における外眼部感染症への易感染性は,涙液分泌量が少ないことや,免疫機能が未発達であることに起因するものと理解すべきであろう12).すなわち,新生児および乳児における外眼部感染症の好発部位である結膜は粘膜であり,粘膜には全身免疫とは異なる免疫システムが構築されている.結膜では,病原体に対する防御に不可欠な抗原特異的分泌型IgAを効率的に誘導するメカニズムとして,結膜関連リンパ組織(conjunctiva-associatedlymphoidtissue:CALT)を中心とした結膜(粘膜)免疫システムが構築されている13).分泌された抗原特異的IgAは,二量体として涙液中に存在するが,生誕時にはIgAはほとんど分泌されず,6〜8歳で成人の60〜80%に達することが知られている14).このように,新生児では結膜(粘膜)の免疫機能が未成熟であり,早産児では粘膜自体が未成熟なため細菌感染を発症しやすい15).加えて,新生児涙囊炎や先天鼻涙管閉塞に伴う涙囊炎が多い16).本検討においても,新生児および乳児では結膜炎あるいは涙囊炎の割合が高かった.また,涙囊炎では他疾患に比べ投与期間が長い傾向にあった.すなわち,新生児および乳児期の涙囊炎は先天鼻涙管閉塞に起因することが多く,根治療法は外科的治療となる.しかしながら,先天鼻涙管閉塞は生後3カ月までに70%,生後12カ月までに96%が自然治癒(鼻涙管の開口)する17)ことから,外科的治療の施行時期については結論が出ていない.したがって,外科的治療の施行あるいは自然治癒まで,待機的に本剤が投与されたため,涙囊炎での投与期間が長くなったものと推察された.結膜炎の主要な起炎菌は,H.influenzaeおよびS.pneumoniaeであり,結膜囊からの分離頻度は,それぞれ29%および20%程度である15).本検討においても,結膜炎からの検出菌はH.influenzaeが33.0%でもっとも高かった.また,小児結膜炎由来のH.influenzaeおよびS.pneumoniaeは,その約90%が鼻咽腔由来株と同一クローンであることから,鼻咽腔は両菌種を主要な常在菌とする粘膜組織部位であり,小児の細菌性結膜炎は鼻感冒および発熱についで発症し,急性中耳炎を併発することが多い18).さらに,細菌性結膜炎の起炎菌は,小児涙囊炎発症への関与も示唆されており,S.pneumoniae,H.influenzaeおよびS.aureusが主要菌種と考えられている19).本検討では,検出株数が十分でない可能性があるがCorynebacteriumspp.,a-Streptococcusspp.およびS.pneumoniaeが主要な検出菌であった.小児の詳細区分での検出菌については,新生児ではCNSがもっとも多くWongらの報告20)と同様であり,年長小児では,S.aureusおよびH.influenzaeの分離頻度が上昇する傾向が認められ,Tarabishyらの報告21)と同様であった.筆者らは,本検討における主要検出菌であるH.influenzae,Corynebacteriumspp.,a-Streptococcusspp.,S.aureus,CNSおよびS.pneumoniaeについて,2005年,2007年および2009年の分離株に対するガチフロキサシンのMIC90を検討した結果,経年的な抗菌活性の減弱を認めなかった22).したがって,本剤は有用な治療選択肢と考えるが,Corynebacteriumspp.およびmethicillin-resistantS.aureus(MRSA)に対するMIC90は高い傾向にあったことから,Corynebacteriumspp.が起炎菌として疑われる際はセフメノキシム(CMX)を併用するなどの必要があると考える.一方,小児(15歳未満)の外眼部感染症からのMRSAの検出頻度は2〜3%程度10)で比較的低い.また,小児由来のMRSAのうち58〜66%程度は市中感染型(CA-MRSA,communityassociatedMRSA)で,病院内感染型MRSA(HA-MRSA,hospital-associatedMRSA)よりも優位を占める23,24).さらに,HA-MRSAが多剤耐性を示す一方で,CA-MRSAは多くの抗菌薬に感受性25)であることから,入院歴にも着目した薬剤選択の必要があると考えられる.以上のように,2004年の上市以降に実施した4調査における新生児73例,乳児131例および小児(15歳未満)74例に対する有用性について再検討した結果,ガチフロ®点眼液0.3%は,新生児期から年長小児期の外眼部感染症治療への寄与が期待される薬剤であると考えられた.文献1)KearnsGL,Abdel-RahmanSM,AlanderSWetal:Developmentalpharmacology─drugdisposition,action,andtherapyininfantsandchildren.NEnglJMed349:1157-1167,20032)ICH:Clinicalinvestigationofmedicalproductsinthepediatricpopulation.ICHharmonizedtripartiteguideline,20003)浅利誠志,井上幸次,大橋裕一ほか:抗菌点眼薬の臨床評価方法に関するガイドライン.日眼会誌119:273-286,20154)松村香代子,井上愼三:新生児,乳幼児,小児に対する0.3%オフロキサシン(タリビッド®)点眼液の使用経験.眼紀42:662-669,19915)大橋秀行,下村嘉一:新生児,乳幼児,小児の細菌性結膜炎に対する0.5%レボフロキサシン点眼薬の使用経験.あたらしい眼科19:645-648,20026)北野周作,宮永嘉隆,大野重昭ほか:新規ニューキノロン系抗菌点眼薬トシル酸トスフロキサシン点眼液の小児の細菌性外眼部感染症を対象とする非対照非遮蔽多施設共同試験.あたらしい眼科23:118-129,20067)ChungI,BuhrV:Topicalophthalmicdrugsandthepediatricpatient.Optometry71:511-518,20008)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液(ガチフロ®0.3%点眼液)の製造販売後調査─特定使用成績調査(新生児および乳児に対する調査)─.あたらしい眼科24:975-980,20079)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液(ガチフロ®点眼液0.3%)の製造販売後調査─特定使用成績調査(新生児に対する調査)─.あたらしい眼科26:1429-1434,200910)末信敏秀,川口えり子,星最智:ガチフロ®点眼液0.3%の細菌学的効果に関する特定使用成績調査.あたらしい眼科31:1674-1682,201411)越前宏俊:小児の生理と薬物動態.薬事54:213-218,201212)伊藤大藏:薬剤の選択と治療の実際―眼科領域感染症.周産期医学28:1333-1336,199813)清野宏,岡田和也:粘膜免疫システム─生体防御の最前線.日耳鼻114:843-850,201114)齋藤昭彦:小児の免疫機構.薬事54:219-222,201215)BuznachN,DaganR,GreenbergD:Clinicalandbacterialcharacteristicsofacutebacterialconjunctivitisinchildrenintheantibioticresistanceera.PediatrInfectDisJ24:823-828,200516)亀井裕子:小児眼感染症の最近の動向.臨眼57(増刊号):81-85,200317)YoungJD,MacEwenCJ:Managingcongenitallacrimalobstructioningeneralpractice.BMJ315:293-296,199718)SugitaG,HotomiM,SugitaRetal:GeneticcharacteristicsofHaemophilusinfluenzaandStreptococcuspneumoniaisolatedfromchildrenwithconjunctivitis-otitismediasyndrome.JInfectChemother20:493-497,201419)宮崎千歌:眼科薬物療法VII眼窩・涙道4涙小管炎,涙囊炎,先天性鼻涙管閉塞.眼科54:1490-1495,201220)WongVW,LaiTY,ChiSCetal:Pediatricocularsurfaceinfections:a5-yearreviewofdemographics,clinicalfeatures,riskfactors,microbiologicalresults,andtreatment.Cornea30:995-1002,201121)TarabishyAB,HallGS,ProcopGWetal:Bacterialcultureisolatesfromhospitalizedpediatricpatientswithconjunctivitis.AmJOphthalmol142:678-680,200622)末信敏秀,石黒美香,松崎薫ほか:細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査.あたらしい眼科28:1321-1329,201123)AmatoM,PershingS,WalvickMetal:Trendsinophthalmicmanifestationsofmethicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)inanorthernCaliforniapediatricpopulation.JAAPOS17:243-247,201324)HsiaoCH,ChuangCC,TanHYetal:Methicillin-resistantStaphylococcusaureusocularinfection:a10-yearhospital-basedstudy.Ophthalmology119:522-527,201225)辻泰弘:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA).薬局63:2515-2519,2012〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN0910-1810/16/¥100/頁/JCOPY(95)577表1各調査の概要と評価対象症例調査名各調査における対象細菌検査の要否小児区分新生児計(生後27日以下)乳児(生後28日以上1年未満)小児(1歳以上15歳未満)①新生児に対する調査細菌性外眼部感染症任意(診療実態下)65――65②1歳未満の小児に対する調査細菌性外眼部感染症任意(診療実態下)3110―113③細菌学的効果に関する調査(第1回)細菌性外眼部感染症全例実施2113649④細菌学的効果に関する調査(第2回)細菌性外眼部感染症全例実施3103851合計安全性評価対象症例7313174278有効性評価対象症例(外眼部感染症)*6912574268*:細菌性外眼部感染症以外への投与例8例ならびに有効性判定不能2例を有効性評価から除外.578あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(96)表2安全性評価対象278例の背景要因区分症例数年齢新生児(日齢)6日以下19(新生児計73例)7日以上13日以下1314日以上20日以下2421日以上27日以下17平均日齢(最小〜最大)13.6日(1〜27日)乳児(月齢)1カ月21(乳児計131例)2カ月133カ月184カ月115カ月146カ月77カ月118カ月79カ月910カ月811カ月12平均月齢(最小〜最大)5.6カ月(1〜11カ月)小児(年齢)1歳11(小児計74例)2歳123歳94歳105歳76歳37歳58歳29歳510歳311歳112歳413歳114歳1平均年齢(最小〜最大)5.4歳(1〜14歳)疾患名外眼部感染症270結膜炎195涙囊炎38麦粒腫23角膜炎(角膜潰瘍を含む)3結膜炎+涙囊炎6結膜炎+眼瞼炎2結膜炎+麦粒腫1結膜炎+その他2外眼部感染症以外8霰粒腫3眼感染症予防3結膜裂傷1乳児内斜視術後1表3有効性評価対象(外眼部感染症症例)268例の有効率と投与期間疾患名小児区分症例数有効率(%)投与日数Mean±SDMin〜Max結膜炎新生児5698.29.8±6.22〜30乳児8298.89.8±12.72〜97小児5798.29.5±6.53〜43計19598.59.7±9.52〜97涙囊炎新生児9100.075.7±65.612〜200乳児2792.627.0±21.14〜98小児0計3694.439.1±42.14〜200麦粒腫新生児0乳児9100.010.7±9.73〜34小児14100.017.1±24.34〜100計23100.014.6±19.83〜100角膜炎(角膜潰瘍を含む)新生児0乳児0小児3100.014.7±7.57〜22計3100.014.7±7.57〜22結膜炎+涙囊炎新生児3100.057.7±56.516〜122乳児3100.026.3±17.68〜43小児0計6100.042.0±41.28〜122その他の眼感染症(複数使用理由含む)新生児1100.014.0乳児4100.017.3±17.65〜43小児0計5100.016.6±15.35〜43表4小児区分と初診時検出菌小児区分(初診時検出結果が陽性であった症例数)新生児(11例)乳児(34例)小児(50例)計(95例)GrampositiveCorynebacteriumspp.1(5.9%)10(20.8%)10(15.4%)21(16.2%)a-Streptococcusspp.3(17.6%)5(10.4%)7(10.8%)15(11.5%)Staphylococcusaureus1(5.9%)3(6.3%)10(15.4%)14(10.8%)Coagulasenegativestaphylococci(CNS)6(35.3%)6(12.5%)2(3.1%)14(10.8%)Streptococcuspneumoniae7(14.6%)4(6.2%)11(8.5%)Streptococcussp.1(2.1%)1(0.8%)Lactobacillussp.1(5.9%)1(0.8%)Subtotal12(70.6%)32(66.7%)33(50.8%)77(59.2%)GramnegativeHaemophilusinfluenzae2(11.8%)9(18.8%)23(35.4%)34(26.2%)Acinetobacterspp.2(11.8%)1(2.1%)1(1.5%)4(3.1%)Moraxella(Branhamella)catarrhalis1(5.9%)1(2.1%)2(3.1%)4(3.1%)Nonglucosefermentativegramnegativerod(NFR)3(4.6%)3(2.3%)Stenotrophomonasmaltophilia1(2.1%)1(1.5%)2(1.5%)Pseudomonassp.1(2.1%)1(1.5%)2(1.5%)Pseudomonasaeruginosa2(4.2%)2(1.5%)Sphingomonaspaucimobilis1(1.5%)1(0.8%)Serratiamarcescens1(2.1%)1(0.8%)Subtotal5(29.4%)16(33.3%)32(49.2%)53(40.8%)Total174865130580あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(98)図1検出菌別での由来患者の日齢分布表5疾患別の初診時検出菌疾患名(初診時検出結果が陽性であった症例数)結膜炎(73例)涙囊炎(14例)麦粒腫(6例)角膜炎(1例)その他(1例)計(95例)GrampositiveCorynebacteriumspp.16(16.0%)3(15.0%)2(25.0%)21(16.2%)a-Streptococcusspp.11(11.0%)3(15.0%)1(12.5%)15(11.5%)Staphylococcusaureus10(10.0%)2(10.0%)2(25.0%)14(10.8%)Coagulasenegativestaphylococci(CNS)11(11.0%)2(10.0%)1(100.0%)14(10.8%)Streptococcuspneumoniae8(8.0%)3(15.0%)11(8.5%)Streptococcussp.1(5.0%)1(0.8%)Lactobacillussp.1(100.0%)1(0.8%)Subtotal56(56.0%)14(70.0%)5(62.5%)1(100.0%)1(100.0%)77(59.2%)GramnegativeHaemophilusinfluenzae33(33.0%)1(5.0%)34(26.2%)Acinetobacterspp.3(3.0%)1(12.5%)4(3.1%)Moraxella(Branhamella)catarrhalis3(3.0%)1(5.0%)4(3.1%)Nonglucosefermentativegramnegativerod(NFR)2(2.0%)1(12.5%)3(2.3%)Stenotrophomonasmaltophilia1(1.0%)1(5.0%)2(1.5%)Pseudomonassp.1(1.0%)1(5.0%)2(1.5%)Pseudomonasaeruginosa1(1.0%)1(5.0%)2(1.5%)Sphingomonaspaucimobilis1(12.5%)1(0.8%)Serratiamarcescens1(5.0%)1(0.8%)Subtotal44(44.0%)6(30.0%)3(37.5%)53(40.8%)Total10020811130(99)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016581582あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016(100)(101)あたらしい眼科Vol.33,No.4,2016583

ガチフロ®点眼液0.3%の細菌学的効果に関する特定使用成績調査

2014年11月30日 日曜日

1674あたらしい眼科Vol.4101,211,No.3(00)1674(108)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科31(11):1674.1682,2014cはじめに細菌性外眼部感染症の治療にあたっては,起炎菌に対して感受性を示す抗菌薬を選択することが望まれる.しかしながら,実際には初診時に起炎菌を同定できないために,広域スペクトラムを有する薬剤が優先して処方されやすいという現状がある.フルオロキノロン系抗菌点眼薬は広域スペクトラムを有し,化学的にも安定した薬剤であるため,点眼液に適していることから外眼部感染症の初期治療薬として広く用いられている.近年ではgatifloxacin(GFLX),moxifloxacin,tosufloxacinが点眼薬として開発され,その選択肢は増している.GFLXの構造上の特徴であるキノロン環8位のメトキシ基の存在は,標的酵素の一つであるDNAgyrase阻害活性の向上に寄与している1).加えて,同じく標的酵素の一つであるtopoisomeraseIVに対する阻害活性がDNAgyrase阻害活性と近似し,両酵素を強力に阻害する2)ことにより,耐性菌が生じにくいことが示唆されている3).GFLXは,2004年に「ガチフロR点眼液0.3%」(以下,本剤)として上市され,眼科診療に用いられている.今回筆者らは,細菌性外眼部感染症からの初診時検出菌動向の検討も視野に入れ,計2回の特定使用成績調査(以下,本調査)を実施した.実施にあたってはGPSP省令(「医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準に関する省令」平成16年12月20日付厚生労働省令第171号)に従い,2005年12月から2007年10月に第1回調査,2008年3月から2010年1月に第2回調査を実施した.〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬企画部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPANガチフロR点眼液0.3%の細菌学的効果に関する特定使用成績調査末信敏秀*1川口えり子*1星最智*2*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬企画部*2国立長寿医療研究センター眼科Post-marketingUse-resultSurveillanceofGatifloxacinOphthalmicSolutionToshihideSuenobu1),ErikoKawaguchi1)andSaichiHoshi2)1)Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofOphthalmology,NationalCenterforGeriatricsandGerontology細菌性外眼部感染症に対するガチフロR点眼液0.3%の安全性,有効性および初診時検出菌に対する細菌学的効果を検討することを目的として,計2回の特定使用成績調査を行った.その結果,安全性評価対象962例に7例の副作用を認めた(発現率0.73%)が,いずれも投与部位における事象であった.また,初診時に適応菌種が分離された912例における有効率は97%,消失率は89%であった.以上の結果,本剤は細菌性外眼部感染症に対して有用な点眼薬であることが示唆された.Toevaluatethesafety,efficacyandbacteriologicaleffectofgatifloxacinophthalmicsolution(GATIFLORoph-thalmicsolution0.3%),use-resultsurveillancewasconductedtwiceinthepost-marketingperiod.Ofatotalof962patients,adversedrugreactionswereobservedin7patients(incidencerate:0.73%).Allincidentswerelimitedtothesiteofdrugapplication.Theratesofefficacyandbacteriologicaleffectin912patientswere97%and89%,respectively.TheseresultssuggestthatGATIFLORophthalmicsolution0.3%contributestothetreatmentofthepatientswithbacterialocularinfection.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(11):1674.1682,2014〕Keywords:ガチフロキサシン,ガチフロR点眼液0.3%,使用成績調査,安全性,有効性,細菌学的効果.gatifloxacin,GATIFLORophthalmicsolution0.3%,use-resultsurveillance,safety,efficacy,bacteriologicaleffect.(00)1674(108)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科31(11):1674.1682,2014cはじめに細菌性外眼部感染症の治療にあたっては,起炎菌に対して感受性を示す抗菌薬を選択することが望まれる.しかしながら,実際には初診時に起炎菌を同定できないために,広域スペクトラムを有する薬剤が優先して処方されやすいという現状がある.フルオロキノロン系抗菌点眼薬は広域スペクトラムを有し,化学的にも安定した薬剤であるため,点眼液に適していることから外眼部感染症の初期治療薬として広く用いられている.近年ではgatifloxacin(GFLX),moxifloxacin,tosufloxacinが点眼薬として開発され,その選択肢は増している.GFLXの構造上の特徴であるキノロン環8位のメトキシ基の存在は,標的酵素の一つであるDNAgyrase阻害活性の向上に寄与している1).加えて,同じく標的酵素の一つであるtopoisomeraseIVに対する阻害活性がDNAgyrase阻害活性と近似し,両酵素を強力に阻害する2)ことにより,耐性菌が生じにくいことが示唆されている3).GFLXは,2004年に「ガチフロR点眼液0.3%」(以下,本剤)として上市され,眼科診療に用いられている.今回筆者らは,細菌性外眼部感染症からの初診時検出菌動向の検討も視野に入れ,計2回の特定使用成績調査(以下,本調査)を実施した.実施にあたってはGPSP省令(「医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準に関する省令」平成16年12月20日付厚生労働省令第171号)に従い,2005年12月から2007年10月に第1回調査,2008年3月から2010年1月に第2回調査を実施した.〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社研究開発本部育薬企画部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPANガチフロR点眼液0.3%の細菌学的効果に関する特定使用成績調査末信敏秀*1川口えり子*1星最智*2*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬企画部*2国立長寿医療研究センター眼科Post-marketingUse-resultSurveillanceofGatifloxacinOphthalmicSolutionToshihideSuenobu1),ErikoKawaguchi1)andSaichiHoshi2)1)Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofOphthalmology,NationalCenterforGeriatricsandGerontology細菌性外眼部感染症に対するガチフロR点眼液0.3%の安全性,有効性および初診時検出菌に対する細菌学的効果を検討することを目的として,計2回の特定使用成績調査を行った.その結果,安全性評価対象962例に7例の副作用を認めた(発現率0.73%)が,いずれも投与部位における事象であった.また,初診時に適応菌種が分離された912例における有効率は97%,消失率は89%であった.以上の結果,本剤は細菌性外眼部感染症に対して有用な点眼薬であることが示唆された.Toevaluatethesafety,efficacyandbacteriologicaleffectofgatifloxacinophthalmicsolution(GATIFLORoph-thalmicsolution0.3%),use-resultsurveillancewasconductedtwiceinthepost-marketingperiod.Ofatotalof962patients,adversedrugreactionswereobservedin7patients(incidencerate:0.73%).Allincidentswerelimitedtothesiteofdrugapplication.Theratesofefficacyandbacteriologicaleffectin912patientswere97%and89%,respectively.TheseresultssuggestthatGATIFLORophthalmicsolution0.3%contributestothetreatmentofthepatientswithbacterialocularinfection.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(11):1674.1682,2014〕Keywords:ガチフロキサシン,ガチフロR点眼液0.3%,使用成績調査,安全性,有効性,細菌学的効果.gatifloxacin,GATIFLORophthalmicsolution0.3%,use-resultsurveillance,safety,efficacy,bacteriologicaleffect. あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141675(109)I対象および方法本調査に参加した医療施設において,新たに本剤が投与された患者を対象として前向き調査を実施した.調査項目は患者背景である性別,年齢,疾患名,初診時主症状および本剤の使用状況,併用薬剤の有無,臨床経過,有害事象,有効性評価,細菌学的効果とした.観察期間は3日.14日とした.安全性は,副作用の発現率および内容を評価した.有効性は本剤投与開始後の臨床経過より担当医師が総合的に判断し,改善,不変および悪化の3段階で評価した.このうち改善症例を有効例,不変および悪化症例を無効例とした.さらに,有効性を評価した症例のうち細菌学的効果が判定できた症例は,計2回の調査における適応菌種別での有効率ならびに消失率をFisher直接確率検定にて評価した.有意水準は5%とした.医療施設にて採取された検体は,輸送用培地(カルチャースワブTM)を用いて検査施設である三菱化学メディエンス株式会社に輸送した.検査施設では検体からの細菌分離と同定,さらに分離菌に対するGFLXの最小発育阻止濃度(mini-muminhibitoryconcentration:MIC)をClinicalandLabo-ratoryStandardsInstituteに準じた微量液体希釈法にて測定した.好気性菌は35℃にて20.22時間の好気培養,嫌気性菌は35℃にて46.48時間の嫌気培養を行った.ブドウ球菌属はoxacillin感受性にて細分類した.すなわちStaphylo-coccusaureusについてはoxacillinのMIC値が2μg/mL以下のものをmethicillin-susceptibleS.aureus(MSSA),4μg/mL以上のものをmethicillin-resistantS.aureus(MRSA)とした.Coagulase-negativestaphylococci(CNS)はoxacillinのMIC値が0.25μg/mL以下のものをmethicil-lin-susceptibleCNS(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをmethicillin-resistantCNS(MRCNS)とした.初診時検出菌については投与開始以降の細菌検査結果が陰性となった時点で消失と判定した.II結果1.症例構成図1に示した106施設から987例(第1回475例,第2回512例)の調査票を収集し,本剤の投与歴がある症例などの25例を除いた962例を安全性評価対象,さらに安全性評価対象のうち有効性判定不能症例などの17例を除いた945例を有効性評価対象とした.初診時に菌が検出され,投与後14±4日までに2回目の検体が採取された912例を細菌学的効果評価対象とした.初診時検出菌は本剤の適応菌種で分類し,複数菌種が検出された場合は検出菌ごとに1症例として計数した.2.安全性a.安全性評価対象症例の患者背景患者背景を表1に示した.年齢分布は65歳以上の高齢者が51%を占めた.疾患は結膜炎が最も多く全体の66%を占め,ついで麦粒腫が13%であった.初診時主症状は疾患を反映し,眼脂および充血が68%に認められた.平均投与期間は第1回が16.3±14.6日,第2回が11.2±7.9日であり,疾患別では涙.炎,角膜潰瘍,眼瞼炎の平均投与期間が2週間以上と長かった.b.副作用発現率表2に示したとおり,7例7件の副作用を認めたことから,副作用発現率は0.73%であった.副作用の内訳は眼刺激および眼そう痒症が各2例,結膜充血,点状角膜炎および適用部位熱感が各1例であり,全身性の副作用は認めなかった.3.有効性表3に示したとおり,眼瞼炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎および角膜潰瘍の有効率はいずれも95%以上であった.一方,涙.炎の有効率は75%であり疾患別では最も低かった.疾患ごとに2回の調査間で有効率を比較したところ,有意な低下を認めなかった.初診時に検出された適応菌種別では,第1回調査のレンサ球菌属,モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリスおよびアクネ菌で90%未満であったが,有意な有効率の低下を示す適応菌種は認めなかった(表4).4.初診時検出菌の分布と消失率a.年代別および疾患別の初診時検出菌図2に示したとおり,すべての年代でグラム陽性菌(図中の紫系色)が57.87%と主を占めた.グラム陰性菌(図中の赤系色)の割合は15歳未満で37.42%と最も高かった.15歳未満ではインフルエンザ菌が28.29%と最も多く,つい図1症例構成安全性評価対象症例:962例(第1回:466例,第2回:496例)調査票完成症例:987例(第1回:475例,第2回:512例)有効性評価対象症例:945例(第1回:456例,第2回:489例)初診時検出菌別での有効性評価および細菌学的効果評価対象症例:912例(第1回:383例,第2回:529例)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141675(109)I対象および方法本調査に参加した医療施設において,新たに本剤が投与された患者を対象として前向き調査を実施した.調査項目は患者背景である性別,年齢,疾患名,初診時主症状および本剤の使用状況,併用薬剤の有無,臨床経過,有害事象,有効性評価,細菌学的効果とした.観察期間は3日.14日とした.安全性は,副作用の発現率および内容を評価した.有効性は本剤投与開始後の臨床経過より担当医師が総合的に判断し,改善,不変および悪化の3段階で評価した.このうち改善症例を有効例,不変および悪化症例を無効例とした.さらに,有効性を評価した症例のうち細菌学的効果が判定できた症例は,計2回の調査における適応菌種別での有効率ならびに消失率をFisher直接確率検定にて評価した.有意水準は5%とした.医療施設にて採取された検体は,輸送用培地(カルチャースワブTM)を用いて検査施設である三菱化学メディエンス株式会社に輸送した.検査施設では検体からの細菌分離と同定,さらに分離菌に対するGFLXの最小発育阻止濃度(mini-muminhibitoryconcentration:MIC)をClinicalandLabo-ratoryStandardsInstituteに準じた微量液体希釈法にて測定した.好気性菌は35℃にて20.22時間の好気培養,嫌気性菌は35℃にて46.48時間の嫌気培養を行った.ブドウ球菌属はoxacillin感受性にて細分類した.すなわちStaphylo-coccusaureusについてはoxacillinのMIC値が2μg/mL以下のものをmethicillin-susceptibleS.aureus(MSSA),4μg/mL以上のものをmethicillin-resistantS.aureus(MRSA)とした.Coagulase-negativestaphylococci(CNS)はoxacillinのMIC値が0.25μg/mL以下のものをmethicil-lin-susceptibleCNS(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをmethicillin-resistantCNS(MRCNS)とした.初診時検出菌については投与開始以降の細菌検査結果が陰性となった時点で消失と判定した.II結果1.症例構成図1に示した106施設から987例(第1回475例,第2回512例)の調査票を収集し,本剤の投与歴がある症例などの25例を除いた962例を安全性評価対象,さらに安全性評価対象のうち有効性判定不能症例などの17例を除いた945例を有効性評価対象とした.初診時に菌が検出され,投与後14±4日までに2回目の検体が採取された912例を細菌学的効果評価対象とした.初診時検出菌は本剤の適応菌種で分類し,複数菌種が検出された場合は検出菌ごとに1症例として計数した.2.安全性a.安全性評価対象症例の患者背景患者背景を表1に示した.年齢分布は65歳以上の高齢者が51%を占めた.疾患は結膜炎が最も多く全体の66%を占め,ついで麦粒腫が13%であった.初診時主症状は疾患を反映し,眼脂および充血が68%に認められた.平均投与期間は第1回が16.3±14.6日,第2回が11.2±7.9日であり,疾患別では涙.炎,角膜潰瘍,眼瞼炎の平均投与期間が2週間以上と長かった.b.副作用発現率表2に示したとおり,7例7件の副作用を認めたことから,副作用発現率は0.73%であった.副作用の内訳は眼刺激および眼そう痒症が各2例,結膜充血,点状角膜炎および適用部位熱感が各1例であり,全身性の副作用は認めなかった.3.有効性表3に示したとおり,眼瞼炎,麦粒腫,結膜炎,瞼板腺炎,角膜炎および角膜潰瘍の有効率はいずれも95%以上であった.一方,涙.炎の有効率は75%であり疾患別では最も低かった.疾患ごとに2回の調査間で有効率を比較したところ,有意な低下を認めなかった.初診時に検出された適応菌種別では,第1回調査のレンサ球菌属,モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリスおよびアクネ菌で90%未満であったが,有意な有効率の低下を示す適応菌種は認めなかった(表4).4.初診時検出菌の分布と消失率a.年代別および疾患別の初診時検出菌図2に示したとおり,すべての年代でグラム陽性菌(図中の紫系色)が57.87%と主を占めた.グラム陰性菌(図中の赤系色)の割合は15歳未満で37.42%と最も高かった.15歳未満ではインフルエンザ菌が28.29%と最も多く,つい図1症例構成安全性評価対象症例:962例(第1回:466例,第2回:496例)調査票完成症例:987例(第1回:475例,第2回:512例)有効性評価対象症例:945例(第1回:456例,第2回:489例)初診時検出菌別での有効性評価および細菌学的効果評価対象症例:912例(第1回:383例,第2回:529例) 表1安全性評価対象症例の患者背景要因第1回第2回全体性別男200206406女266290556年齢(歳)平均値±SD56.3±26.060.0±25.956.1±25.9(最小値.最大値)(22日齢.96歳)(11日齢.99歳)(11日齢.99歳)(分布)27日以下2351歳未満1110211歳以上15歳未満36387415歳以上65歳未満17919737665歳以上75歳未満1019920075歳以上80歳未満627513780歳以上7574149疾患名眼瞼炎181937涙.炎292554麦粒腫5566121結膜炎307331638瞼板腺炎111526角膜炎281644角膜潰瘍142135その他437初診時主症状眼瞼,瞼板の発赤6287149眼瞼,瞼板の腫脹7676152逆流分泌物272249涙.部の発赤,腫脹9817眼脂267289556充血231219450角膜混濁21930角膜上皮欠損353469投与期間(日)平均値±SD16.3±14.611.2±7.913.6±11.9(最小値.最大値)(2.134)(2.65)(2.134)(分布)1日4644969602日以上5日未満4644969605日以上10日未満44846991710日以上19日未満29816746519日以上28日未満1105316328日以上592382投与期間不明202疾患別(平均値±SD)眼瞼炎涙.炎26.6±24.927.6±27.411.9±13.115.6±14.219.1±20.822.1±22.9麦粒腫17.4±15.19.2±4.312.9±11.4結膜炎14.2±9.910.9±7.112.5±8.7瞼板腺炎14.3±6.99.5±9.411.5±8.6角膜炎14.0±8.112.7±8.713.5±8.2角膜潰瘍26.7±30.714.8±8.519.5±20.9併用薬剤の有無あり219266485なし247230477でコリネバクテリウム属が16.23%,15歳以上65歳未満%検出された.コリネバクテリウム属はすべての年代で検出ではブドウ球菌属が39.43%と最も多く,ついでコリネバされたが,65歳以上で特にその割合が高かった.全検出菌クテリウム属が20.29%,65歳以上ではコリネバクテリウに占めるMRSAの割合は65歳以上で4.6%,15歳以上65ム属が37.42%と最も多く,ついでブドウ球菌属が29.35歳未満で1.2%,15歳未満で2.3%であった.(110) 表2副作用発現状況安全性評価対象例数962副作用発現例数(%)7(0.73)副作用発現件数7副作用の種類種類別発現例数(率)眼障害6(0.62)眼刺激2(0.21)眼そう痒症2(0.21)結膜充血1(0.10)点状角膜炎1(0.10)全身障害および投与局所様態1(0.10)適用部位熱感1(0.10)表3疾患別の有効率有効率fisher疾患名第1回第2回全体第1回vs第2回眼瞼炎89%(16/18)100%(19/19)95%(35/37)p=0.230NS涙.炎68%(19/28)84%(21/25)75%(40/53)p=0.213NS麦粒腫96%(53/55)94%(62/66)95%(115/121)p=0.688NS結膜炎96%(292/303)97%(316/327)97%(608/630)p=1.000NS瞼板腺炎100%(11/11)100%(15/15)100%(26/26)─角膜炎100%(26/26)88%(14/16)95%(40/42)p=0.139NS角膜潰瘍93%(13/14)100%(21/21)97%(34/35)p=0.400NS眼瞼炎+結膜炎0%(0/1)─0%(0/1)─図3に示したとおり,疾患別分布は角膜潰瘍を除いてはグラム陽性菌が74.100%と主であった.角膜潰瘍ではセラチア属および緑膿菌の検出頻度がそれぞれ13.33%および11.38%と高かった.一方,MRSAは眼瞼炎で0.4%,涙.炎で6.9%,麦粒腫で3.5%,結膜炎で3.4%検出され,涙.炎で最も検出頻度が高かった.涙.炎では緑膿菌が3.4%の頻度で検出された.b.初診時に検出された適応菌種の消失率適応菌種合計の消失率は,いずれの調査においても89%であり低下を認めなかった(表5).10株以上検出された菌種別でみても消失率の低下を認めなかったが,MRSAの消失率は第1回および第2回調査ともに最も低く,それぞれ63%および75%であった.5.初診時に検出された適応菌種に対するGFLXのMIC初診時に検出された適応菌種に対するGFLXのMICを表6に示した.10株以上検出された菌種についてはMIC50およびMIC90を算出した.計2回の調査のMIC値を比較したところ,レンサ球菌属のMIC90は第1回で4.0μg/mL,第2回で0.25μg/mLであったが,第1回調査で分離されたレンサ球菌属にはMICが16μg/mLと比較的高値を示すa-Streptococciが1株存在していたことが要因と考えられた.一方,他の適応菌種に対するMIC50およびMIC90については2管以上のMIC値の変化は認めなかった.III考按フルオロキノロン系抗菌薬であるofloxacin点眼薬が1987年に上市されてから四半世紀が経過した.現在までに数多くのフルオロキノロン系抗菌点眼薬が開発され,GFLX点眼薬は2004年に上市された.フルオロキノロン系抗菌点眼薬は,広域抗菌スペクトラムを有することから,外眼部感染症に対する初期治療に汎用されてきた.一方でフルオロキノロン耐性菌の報告4.6)が増加していることも事実である.(111)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141677 表4初診時検出菌別の有効率有効率fisher検出菌第1回第2回全体第1回vs第2回ブドウ球菌属96%(137/142)98%(170/174)97%(307/316)p=0.736NSMSSA95%(42/44)100%(62/62)98%(104/106)p=0.170NSMRSA100%(16/16)94%(15/16)97%(31/32)p=1.000NSMSCNS95%(40/42)95%(54/57)95%(94/99)p=1.000NSMRCNS98%(39/40)100%(38/38)99%(77/78)p=1.000NSレンサ球菌属83%(15/18)96%(26/27)91%(41/45)p=0.286NS肺炎球菌92%(11/12)100%(23/23)97%(34/35)p=0.343NS腸球菌属100%(8/8)100%(4/4)100%(12/12)─モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス86%(6/7)100%(3/3)90%(9/10)─コリネバクテリウム属98%(116/118)96%(194/203)97%(310/321)p=0.340NSシトロバクター属未検出100%(4/4)100%(4/4)─クレブシエラ属100%(3/3)100%(2/2)100%(5/5)─セラチア属100%(1/1)100%(7/7)100%(8/8)─モルガネラ・モルガニー100%(2/2)100%(2/2)100%(4/4)─インフルエンザ菌97%(30/31)100%(29/29)98%(59/60)p=1.000NSシュードモナス属100%(2/2)100%(1/1)100%(3/3)─緑膿菌100%(6/6)100%(5/5)100%(11/11)─スフィンゴモナス・パウチモビリス100%(1/1)100%(4/4)100%(5/5)─ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア100%(4/4)100%(2/2)100%(6/6)─アシネトバクター属100%(3/3)100%(11/11)100%(14/14)─アクネ菌88%(22/25)96%(27/28)92%(49/53)p=0.333NS適応菌種合計96%(367/383)97%(514/529)97%(881/912)p=0.274NS・ブドウ球菌属(第2回)1株がoxacillinに対するMIC測定不能であった.15歳未満(n=39)(n=51)15歳以上65歳未満(n=128)(n=160)65歳以上(n=232)(n=350)第1回第2回第1回第2回第1回第2回0%25%50%75%100%ブドウ球菌属*(MSSA:,MRSA:,MSCNS:,MRCNS:),レンサ球菌属:,肺炎球菌:,腸球菌属:,コリネバクテリウム属:,アクネ菌:,モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス:,シトロバクター属:,クレブシエラ属:,セラチア属:,モルガネラ・モルガニー:,インフルエンザ菌:,シュードモナス属:,緑膿菌:,スフィンゴモナス・パウチモビリス:,ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア:,アシネトバクター属:,適応外菌種:.*MSSA:methicillin-susceptibleStaphylococcusaureus,MRSA:methicillin-resistantStaphylococcusaureus,MSCNS:methicillin-susceptiblecoagulase-negativestaphylococci,MRCNS:methicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococci.図2年代別の初診時検出菌(112) 眼瞼炎涙.炎麦粒腫結膜炎瞼板腺炎角膜炎角膜潰瘍ブドウ球菌属(MSSA:,MRSA:,MSCNS:,MRCNS:),レンサ球菌属:,肺炎球菌:,腸球菌属:,コリネバクテリウム属:,アクネ菌:,モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス:,シトロバクター属:,クレブシエラ属:,セラチア属:,モルガネラ・モルガニー:,インフルエンザ菌:,シュードモナス属:,緑膿菌:,スフィンゴモナス・パウチモビリス:,ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア:,アシネトバクター属:,適応外菌種:.**MSSA:methicillin-susceptibleStaphylococcusaureus,MRSA:methicillin-resistantStaphylococcusaureus,MSCNS:methicillin-susceptiblecoagulase-negativestaphylococci,MRCNS:methicillin-resistantcoagulase-negativestaphylococci.図3疾患別の初診時検出菌表5初診時検出菌別の消失率第1回第2回第1回第2回第1回第2回第1回第2回第1回第2回第1回第2回第1回第2回(n=23)(n=26)(n=23)(n=34)(n=44)(n=58)(n=279)(n=410)(n=6)(n=16)(n=16)(n=7)(n=8)(n=9)0%25%50%75%100%消失率fisher検出菌第1回第2回全体第1回vs第2回ブドウ球菌属91%(129/142)94%(163/174)92%(292/316)p=0.396NSMSSA91%(40/44)92%(57/62)92%(97/106)p=1.000NSMRSA63%(10/16)75%(12/16)69%(22/32)p=0.704NSMSCNS95%(40/42)96%(55/57)96%(95/99)p=1.000NSMRCNS98%(39/40)100%(38/38)99%(77/78)p=1.000NSレンサ球菌属89%(16/18)89%(24/27)89%(40/45)p=1.000NS肺炎球菌83%(10/12)100%(23/23)94%(33/35)p=0.111NS腸球菌属100%(8/8)100%(4/4)100%(12/12)─モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス100%(7/7)100%(3/3)100%(10/10)─コリネバクテリウム属89%(105/118)82%(166/203)84%(271/321)p=0.110NSシトロバクター属未検出100%(4/4)100%(4/4)─クレブシエラ属100%(3/3)100%(2/2)100%(5/5)─セラチア属100%(1/1)100%(7/7)100%(8/8)─モルガネラ・モルガニー100%(2/2)100%(2/2)100%(4/4)─インフルエンザ菌81%(25/31)97%(28/29)88%(53/60)p=0.104NSシュードモナス属100%(2/2)100%(1/1)100%(3/3)─緑膿菌83%(5/6)80%(4/5)82%(9/11)─スフィンゴモナス・パウチモビリス100%(1/1)75%(3/4)80%(4/5)─ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア100%(4/4)100%(2/2)100%(6/6)─アシネトバクター属100%(3/3)100%(11/11)100%(14/14)─アクネ菌84%(21/25)86%(24/28)85%(45/53)p=1.000NS適応菌種合計89%(342/383)89%(471/529)89%(813/912)p=0.915NS・ブドウ球菌属(第2回)1株がoxacillinに対するMIC測定不能であった.(113)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141679 表6初診時検出菌に対するGFLXの抗菌活性(MIC:μg.mL)第1回第2回菌種名MICrangeMIC50MIC90株数MICrangeMIC50MIC90株数ブドウ球菌属≦0.06.>1280.122.0142≦0.06.>1280.124.0173MSSA≦0.06.2.00.120.2544≦0.06.4.00.120.2562MRSA0.12.>1284.0128160.12.>1288.0>12816MSCNS≦0.06.4.00.121.042≦0.06.640.121.057MRCNS≦0.06.321.02.040≦0.06.321.02.038レンサ球菌属≦0.06.160.254.018≦0.06.4.00.250.527肺炎球菌0.12.0.50.250.25120.12.0.50.250.2523腸球菌属0.5.16──80.5──4モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス≦0.06──7≦0.06──3コリネバクテリウム属≦0.06.1284.016114≦0.06.1282.016203シトロバクター属───0≦0.06.0.5──4クレブシエラ属≦0.06──3≦0.06.0.12──2セラチア属0.25──1≦0.06.0.25──7モルガネラ・モルガニー≦0.06──2≦0.06──2インフルエンザ菌≦0.06≦0.06≦0.0631≦0.06≦0.06≦0.0629シュードモナス属0.25.0.5──21──1緑膿菌0.5──60.25.0.5──5スフィンゴモナス・パウチモビリス≦0.06──10.25.2──4ステノトロホモナス(ザントモナス)・マルトフィリア1.16──4≦0.06──2アシネトバクター属≦0.06──3≦0.06.0.25≦0.060.2511アクネ菌0.12.0.50.250.25250.25.8.00.250.527・株数が10株未満についてはMIC90を算出していない.・ClinicalandLaboratoryStandardsInstituteに準拠.・ブドウ球菌属(第2回)1株,コリネバクテリウム属(第1回)4株およびアクネ菌(第2回)1株がMIC測定不能であった.本調査の疾患別での初診時検出菌は,ブドウ球菌属およびコリネバクテリウム属をはじめとするグラム陽性菌の検出率が74.100%と高かった.一方,角膜潰瘍では緑膿菌およびセラチア属をはじめとするグラム陰性菌の検出率が55.77%と高かった.年代別での初診時検出菌分布は,小児ではレンサ球菌属およびインフルエンザ菌の割合が28.29%と高く,成人ではブドウ球菌属およびアクネ菌の割合が,それぞれ39.43%および9.13%と高く,さらに高齢者ではコリネバクテリウム属の割合が37.43%と最も高かった.これは,小児での検出菌はインフルエンザ菌が30%で最も多く,成人ではブドウ球菌属が48%で最も多く,高齢者ではコリネバクテリウム属が31%で最も多かったとする加茂らの報告7)と同様の傾向であった.外眼部感染症の重要な起炎菌であるMRSAの検出率は,高齢者で最も高く4.6%であったが,全検出菌に占めるMRSA分離頻度は3%であり,小早川ら8)が報告した2%と同程度であった.本調査のMRSA検出症例におけるGFLXの有効率は97%であり,他菌種に劣る結果ではなかったが,菌の消失率は69%であり他菌種に比して低かった.フルオロキノロンに対するMRSAの感受性低下は,すでに広く問題視されている9,10).本調査で分離されたMRSA32株に対するGFLXのMIC50およびMIC90は,細菌学的効果が不変の10株では32μg/mLおよび>128μg/mL,消失の22株では4μg/mLおよび64μg/mLであった.すなわち,MIC値が細菌学的効果に反映されていることが示唆され,MRSAが検出された際はクロラムフェニコールなどの感受性を示す抗菌点眼薬への変更も考慮すべきである.また,本調査では15歳未満の小児においても2.3%の頻度でMRSAが検出された.加茂ら7)も小児からのMRSA検出率が1%であったと報告しており,小児においても高頻度ではないがMRSAを起因とする場合があるため注意が必要である.コリネバクテリウム属は一般的に常在菌として位置付けられており,過去の報告ではコリネバクテリウム属の健常結膜.保菌率は36.44%と報告されている11.13).したがって,本調査の検出菌が,どの程度起炎菌として関与しているかは評価がむずかしいところである.一方,近年においては,その起炎性に関する報告14)が散見されていることから,本調査においてはコリネバクテリウム属も評価対象として取り扱った.コリネバクテリウム属の結膜.内保菌率増加の一因としては加齢が挙げられる11).本調査においても,15歳未満では16.23%であるのに対し,65歳以上では37.42%と高齢者においてコリネバクテリウム属の検出率が高かった.コ(114) リネバクテリウム属が検出された321症例の有効率は97%であり臨床効果に関する問題は認めなかったが,GFLXのMIC90は16μg/mLでありMRSAのMICのつぎに高く,コリネバクテリウム属に対するフルオロキノロン系抗菌薬の抗菌活性は優秀であるとは言い難い11,15).したがって,高齢者の外眼部感染症では特にコリネバクテリウム属の関与も意識し,セフェム系抗菌点眼薬などの感受性の良好な抗菌点眼薬の使用を考慮してよいと考える4).緑膿菌の検出頻度は結膜炎で1%,涙.炎で3.4%,角膜潰瘍で11.38%であり,角膜潰瘍での検出率が特に高かった.Lichtingerらは,2000.2010年に角膜炎が疑われる患者1,413例より採取した角膜擦過物からの緑膿菌検出頻度が7.13%であり,経時的な検出頻度が増加していることを示唆している16).本調査で検出された緑膿菌角膜炎(角膜潰瘍)由来4株のGFLXに対するMICは0.5μg/mL以下と感受性は良好であり,有効率も100%であった.しかしながら,重症の緑膿菌角膜炎が想定される場合には,感染性角膜炎診療ガイドラインにも記されているように,より確実な効果を期待してフルオロキノロンとアミノグリコシド系抗菌点眼薬の併用を考慮して良いと考える17).このほか既述の菌種を含め,2回の調査の間で本剤の適応菌種別の消失率ならびに有効率に低下を認めなかった.抗菌力については,MRSAに対するMIC50(4.0→8.0μg/mL)アクネ菌に対するMIC90(0.25→0.5μg/mL)に検査誤差範(,)囲とも考えられる上昇を認めた以外に明らかな変化を認めなかった.したがって,MRSAやコリネバクテリウム属については注意する必要があるが,本剤は外眼部感染症の初期治療薬の一つとして有用な薬剤と考えられた.しかしながら,フルオロキノロン系薬剤への偏った使用は耐性菌の蔓延を加速させる可能性があるため,患者背景や臨床所見から起炎菌を想定したうえで適切な初期治療薬を選択するべきである.副作用に関しては7例認め,副作用発現率は0.73%であった.同じフルオロキノロン系抗菌薬であるクラビットR点眼液0.5%の副作用発現率は0.63%18)と報告されおり,本剤の副作用発現率は同等であった.本調査では全身性あるいは重篤な副作用を認めず,安全性に関する特筆すべき問題は認めなかった.加えて,本剤は小児集団に対する安全性についても検討されており,生後27日以下の新生児68例および生後1年未満の乳児110例において副作用を認めていない19,20).今後も外眼部感染症由来の検出菌の動向に注意していく必要があるが,ガチフロR点眼液0.3%は外眼部感染症の治療に有用な薬剤であると考えられた.文献1)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:ContributionoftheC-8-MethoxygroupofgatifloxacintoinhibitionoftypeIItopoisomerasesofStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother46:3337-3338,20022)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:Targetpreferenceof15quinolonesagainstStaphylococcusaureus,basedonantibacterialactivitiesandtargetinhibition.AntimicrobAgentsChemother45:3544-3547,20013)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20014)FukumotoA,SotozonoC,HiedaOetal:Infectiouskeratitiscausedbyfluoroquinolone-resistantCorynebacterium.JpnJOphthalmol55:579-580,20115)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20106)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,19997)加茂純子,村松志保,赤澤博美ほか:感受性からみた年代別の眼科領域抗菌薬選択2008.臨眼63:1635-1640,20098)小早川信一郎,井上幸次,大橋裕一ほか:細菌性結膜炎における検出菌・薬剤感受性に関する5年間の動向調査(多施設共同研究).あたらしい眼科28:679-687,20119)HaasW,PillarCM,TorresMetal:Monitoringantibioticresistanceinocularmicroorganisms:resultsfromtheantibioticresistancemonitoringinocularmicroorganism(ARMOR)2009surveillancestudy.AmJOphthalmol152:567-574,201110)BlancoAR,SudanoRA,SpotoCGetal:Susceptibilityofmethicillin-resistantStaphylococciclinicalisolatestonetilmicinandotherantibioticscommonlyusedinophthalmictherapy.CurrEyeRes38:811-816,201311)星最智,卜部公章:白内障術全患者における結膜.常在細菌の保菌リスク.あたらしい眼科28:1313-1319,201112)星最智,大塚斎史,山本恭三ほか:結膜.と鼻前庭の常在菌の比較.あたらしい眼科28:1613-1617,201113)矢口智恵美,佐々木香る,子島良平ほか:ガチフロキサシンおよびレボフロキサシンの点眼による白内障周術期の減菌効果.あたらしい眼科23:499-503,200614)井上幸次,大橋裕一,秦野寛ほか:前眼部・外眼部感染症における起炎菌判定日本眼感染症学会による眼感染症起炎菌・薬剤感受性多施設調査(第一報).日眼会誌115:801-813,201115)末信敏秀,石黒美香,松崎薫ほか:細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査.あたらしい眼科28:1321-1329,201116)LichtingerA,YeungSN,KimPetal:ShiftingtrendsinbacterialkeratitisinToronto.Ophthalmology119:17851790,201217)井上幸次,大橋裕一,浅利誠志ほか:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版作成委員会:感染性角膜炎診療ガイドライン第2版.日眼会誌117:467-509,2013(115)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141681 18)神田佳子,加山智子,岡本紳二ほか:各種外眼部感染症に24:975-980,2007対する抗菌点眼剤レボフロキサシン点眼液(クラビットR点20)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液眼液0.5%)の使用成績調査.臨眼62:2007-2017,2008(ガチフロR点眼液0.3%)の製造販売後調査─特定使用成績19)丸田真一,末信敏秀,羅錦營:ガチフロキサシン点眼液調査(新生児に対する調査)─.あたらしい眼科26:1429(ガチフロR0.3%点眼液)の製造販売後調査─特定使用成績1434,2009調査(新生児および乳児に対する調査)─.あたらしい眼科***(116)

細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査

2011年9月30日 金曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(101)1321《原著》あたらしい眼科28(9):1321?1329,2011cはじめにOfloxacin(OFLX)点眼薬が1987年に上市されて以降,現在までにnorfloxacin(NFLX),lomefloxacin(LFLX),levofloxacin(LVFX),gatifloxacin(GFLX),tosufloxacin(TFLX)ならびにmoxifloxacin(MFLX)が点眼液として開発され,フルオロキノロン系抗菌薬の点眼薬が細菌性外眼部感染症に対する第一選択となって久しい.これらフルオロキノロン系抗菌薬は,細菌のDNA合成に関与するDNAgyraseおよびtopoisomeraseIVという両酵素を阻害することで抗菌活性を示し,また,各薬剤のキノロ〔別刷請求先〕末信敏秀:〒541-0046大阪市中央区平野町2-5-8千寿製薬株式会社開発本部育薬企画部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2-5-8Hiranomachi,Chuo-ku,Osaka541-0046,JAPAN細菌性外眼部感染症分離菌株のGatifloxacinに対する感受性調査末信敏秀*1石黒美香*1松崎薫*2池田文昭*2秦野寛*3*1千寿製薬株式会社開発本部育薬企画部*2三菱化学メディエンス株式会社化学療法研究室*3ルミネはたの眼科InvestigationofBacterialIsolatesRecoveredfromOcularInfectionsRegardingSusceptibilitytoGatifloxacinandOtherAntimicrobialAgentsToshihideSuenobu1),MikaIshikuro1),KaoruMatsuzaki2),FumiakiIkeda2)andHiroshiHatano3)1)Post-MarketingSurveillanceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)ChemotherapyDivision,MitsubishiChemicalMedienceCorporation,3)LumineHatanoEyeClinic細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のgatifloxacin(GFLX)および他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,2005年,2007年および2009年の各1年間に,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より分離された1,911菌株を対象に,GFLXおよびその他の点眼用抗菌薬に対する感受性を測定した.グラム陽性菌では,過去3回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,moxifloxacin(MFLX)およびtosufloxacin(TFLX)に対する感受性とほぼ同等であり,また,他のフルオロキノロン系薬に対してよりもやや高い感受性を示す傾向が認められた.一方,グラム陰性菌においても,3回の調査を通じてGFLXに対する感受性の低下は認められず,levofloxacin(LVFX)およびTFLXに対する感受性とほぼ同等で,他のフルオロキノロン系薬に対してよりもやや高い感受性を示す傾向が認められた.以上,2004年の発売から5カ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性に経年的な耐性化傾向は認められなかったことから,GFLXは細菌性外眼部感染症に対して有用な抗菌薬であると考えられた.Isolatesrecoveredfromocularinfectiouspatientsbetween2005and2009wereassessedinvitroregardingtheirsusceptibilitiestogatifloxacin(GFLX)andotherophthalmicantimicrobialagents.TheinvitroactivityofGFLXagainsttheisolateswascomparedtothatoflevofloxacin(LVFX),ofloxacin(OFLX),lomefloxacin(LFLX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX).TheactivitiesofGFLXagainstgram-positiveandnegativebacteriascarcelychangedduringtheinvestigationalperiod.TheactivityofGFLXagainstgrampositiveisolatewasalmostequaltothoseofMFLXandTFLX,andwashigherthanotherquinolones.Againstgram-negativeisolates,GFLXantibacterialactivitywasalmostequaltothoseofLVFXandTFLX,andmayhavebeenslightlystrongerthanotherquinolones.Sinceitdidnotexhibitdiminishedactivityduringtheperiodofthisinvestigation,GFLXisconcludedtobepotentlyactiveagainstbacterialisolatesfromocularinfectiouspatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(9):1321?1329,2011〕Keywords:ガチフロキサシン,感受性,サーベイランス,フルオロキノロン,眼感染症.gatifloxacin,susceptibility,surveillance,fluoroquinolones,ocularinfection.1322あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(102)ン環における構造上の相違が両酵素に対する阻害活性に影響を及ぼす.GFLXの構造上の特徴は,キノロン環7位に3-メチルピペラジニル基および8位にメトキシ基を有することであり,3-メチルピペラジニル基による増強効果は比較的小さいと考えられる一方で,8位メトキシ基はDNAgyrase阻害活性の向上に寄与している1).すなわち,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVに対する阻害活性強度が近似することで,両酵素を同程度かつ強力に阻害2)(デュアル・インヒビター)する結果,Staphylococcusaureus2,3),Streptococcuspneumoniae4)あるいはEscherichiacoli5)などに対する抗菌活性が増強しているものと考えられる.同時に,8位メトキシ基は両酵素の変異株の出現頻度低減にも寄与していることから,耐性菌が生じにくいことが示唆されている6).このような特徴を有するGFLXは,2004年に点眼薬として上市されているが,抗菌薬の宿命として,耐性菌の発現は一般的に不可避であることから,今回筆者らは,細菌性外眼部感染症由来の各種臨床分離株のGFLXおよび他の点眼用抗菌薬に対する感受性動向を検討するため,上市以降の5年間に計3回の感受性調査を実施したので報告する.I材料および方法1.試験薬剤今回の試験では,gatifloxacin(GFLX),levofloxacin(LVFX),ofloxacin(OFLX),lomefloxacin(LFLX),tosufloxacin(TFLX),moxifloxacin(MFLX),cefmenoxime(CMX)の7薬剤を用いた.なお,Staphylococcusにはoxacillin(MPIPC),StreptococcuspneumoniaeにはpenicillinG(PCG),Haemophilusinfluenzaeにはampicillin(ABPC)を追加した.2.試験菌株表1に示したとおり,2005年,2007年および2009年の各1年間における目標収集株数を設定し,全国の一次医療機関の細菌性外眼部感染症患者より検体採取,分離,同定された順に目標株数に達するまでの収集菌株(総数1,911株)を表1試験菌株試験菌各回の目標収集株数収集株数第1回(2005年)第2回(2007年)第3回(2009年)StaphylococcusStaphylococcusaureus(Methicillin-susceptibleS.aureus:MSSA,Methicillin-resistantS.aureus:MRSA)100100100100Coagulase-negativeStaphylococcus(CNS)100100100100StreptococcusStreptococcuspneumoniae50505050Streptococcusspecies(S.pneumoniae以外)25252525Enterococcusspecies25252525Corynebacteriumspecies25252525Moraxella(Branhamella)catarrhalis25252525Neisseriagonorrhoeae10500EnterobacteriaceaeCitrobacterspecies10101010Klebsiellaspecies10101010Serratiaspecies25252525Morganellamorganii10101010Nonglucosefermentativegram-negativerod(NFR)Pseudomonasaeruginosa50505050Pseudomonasspecies(P.aeruginosa以外)25252525Sphingomonaspaucimobilis257618Stenotrophomonasmaltophilia10101010Acinetobacterspecies25252525HaemophilusHaemophilusinfluenzae50505050Haemophilusaegyptius10101010嫌気性菌Propionibacteriumacnes50505050計660637631643(103)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111323試験菌株とした.試験菌株は分離後,最小発育阻止濃度(MIC)測定時まで保存液(スキムミルク)中にて?70℃以下で保存した.なお,これらの試験菌株は,文部科学省および厚生労働省より公表された「疫学研究に関する倫理指針」を遵守して使用した.3.薬剤感受性測定試験菌株の薬剤感受性測定は,ClinicalandLaboratoryStandardsInstitute(CLSI)に準じた微量液体希釈法ならびに寒天平板希釈法(Neisseriagonorrhoeaeのみ)にて実施した.微量液体希釈法による測定には,フローズンプレート(栄研化学)を使用した.測定培地は,S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.については,2%ウマ溶血液添加cation-adjustedMuellerHintonbroth(CAMHB)を用い,H.influenzaeおよびH.aegyptiusにはHTMbroth(hematin15μg/mL,b-NAD15μg/mLおよびYeastExtract5%添加CAMHB)を用い,その他の好気性菌にはCAMHBを用いた.嫌気性菌については,5%ウマ溶血液添加Brucellabroth(hemin5μg/mLおよびvitaminK11μg/mLも添加)を用いた.好気性菌は約5×104~1×105CFU(colonyformingunit)/well,嫌気性菌は約1~2×105CFU/wellとなるように各wellに菌を接種後,好気性菌は35℃,20~22時間,好気培養,嫌気性菌は35℃,46~48時間,嫌気培養を行った.N.gonorrhoeaeの感受性は寒天平板希釈法により測定し,測定培地として1%DGS含有GCagar(GS寒天培地)を用いて約104CFU/spotとなるように菌を接種し,35℃,5%CO2条件下で20~24時間培養を行った.判定は,対照に用いた薬剤不含有培地における菌の発育を確認した後,菌の発育が認められない最小薬剤濃度をMICとした.4.耐性基準各菌種の耐性の定義はCLSIの基準に従い,以下のとおりとした.S.aureusは,MPIPCのMIC値が2μg/mL以下のものをsusceptible(MSSA),4μg/mL以上のものをresistant(MRSA)とした.Coagulase-negativeStaphylococcus(CNS)は,MPIPCのMIC値が0.25μg/mL以下のものをsusceptible(MSCNS),0.5μg/mL以上のものをresistant(MRCNS)とした.S.pneumoniaeはPCGのMIC値が0.06μg/mL以下のものをsusceptible(PSSP),0.12~1μg/mLのものをintermediate(PISP),2μg/mL以上のものをresistant(PRSP)とした.II結果1.グラム陽性菌2005年(第1回),2007年(第2回)および2009年(第3回)の各年に外眼部感染症患者から分離された菌株に対する各種抗菌薬のMICの成績を表2に示した.過去3回の調査においてMSSAに対するGFLXのMIC90は0.12~0.25μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様に大きな変動は認められなかった.MRSAに対するGFLXのMIC90は32~128μg/mLであり大きな変動は認められず,MFLXのMIC90は32~64μg/mL,他のフルオロキノロン系薬のMIC90は>16または>128μg/mLであった.MSCNSについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は0.12μg/mLであり,第1回調査の成績と同等であったが,第2回調査のみ1μg/mLと高値であった.MRCNSについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は2μg/mLとMFLXと同等であり,過去2回の調査成績と変化はなかった.PSSPおよびPISPに対するGFLXのMIC90は過去3回の調査を通じて0.25μg/mLであり,MFLXおよびTFLXと同等であった.一方,PRSPの第1回,第2回および第3回において収集された菌株数は,それぞれ2株,4株および6株と少なかったが,GFLXのMICはPSSPおよびPISPに対するMICとほぼ同等であった.Streptococcusspp.およびEnterococcusspp.に対するGFLXのMIC90は3回の調査を通じて各々0.5および1μg/mLであり,変動は認められなかった.他のフルオロキノロン系薬においてもMIC90の変動は認められなかった.一方,CMXのEnterococcusspp.に対するMIC90は3回の調査すべてにおいて>128μg/mLであった.Corynebacteriumspp.に対するGFLXのMIC90も過去3回の調査を通じて16μg/mLでありフルオロキノロン系薬のなかでは低値であったが,CMXのMIC90は0.25~0.5μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも低値を示した.過去3回の調査におけるP.acnesに対するGFLXのMIC90は0.25~0.5μg/mLであり,MFLXと同等で他のフルオロキノロン系薬よりも低値であった.2.グラム陰性菌過去3回の調査のM.(B.)catarrhalisに対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下であり,LVFX,TFLXおよびMFLXと同等であった.N.gonorrhoeaeは第1回調査においてのみ5株が収集されたが,GFLXのMICrangeは0.25~2μg/mLであり,フルオロキノロン系薬のなかで最も低値を示した.第3回調査のCitrobacterspp.に対するGFLXのMIC90は0.06μg/mL以下で第1回調査成績と同等であったが,第2回調査では0.5μg/mLと高値であり,同様の傾1324あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(104)表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(1)MIC:μg/mL菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90グラム陽性菌MSSA第1回(81株)第2回(78株)第3回(76株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????4816>128824≦0.060.250.51≦0.06≦0.0620.120.250.51≦0.06≦0.062≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????2481282120.120.250.51≦0.06≦0.0610.120.250.51≦0.06≦0.062≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????48161284220.120.250.51≦0.06≦0.0620.250.5120.120.122MRSA第1回(19株)第2回(22株)第3回(24株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.250.51≦0.06≦0.068???????>128>128>128>128>16128>128481612842>128128>128>128>128>1664>128≦0.060.250.51≦0.06≦0.064???????64>128>128>128>1632>1282816128426432>128>128>128>1632>1280.120.250.51≦0.06≦0.068???????>128>128>128>128>16128>12883264>128>168>128128>128>128>128>1664>128MSCNS第1回(60株)第2回(52株)第3回(60株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????28161281622≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.50.120.250.51≦0.06≦0.061≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????2816128>16410.120.250.51≦0.06≦0.060.51243220.51≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.25???????248644110.120.250.51≦0.06≦0.060.50.120.250.51≦0.060.121MRCNS第1回(40株)第2回(48株)第3回(40株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.062???????21632128164161243220.5424864418≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.060.5???????21632>128>164162486441428161288216≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.061???????64>128>128>128>16328148322142816128828PSSP第1回(38株)第2回(32株)第3回(29株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.250.250.5140.120.120.120.251280.120.120.250.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.250.251280.120.120.120.251280.120.120.250.120.514≦0.06≦0.06≦0.06???????0.51280.250.250.50.251280.120.120.120.251280.250.250.25PISP第1回(10株)第2回(14株)第3回(15株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.120.512≦0.06≦0.060.25???????0.251280.120.1210.250.5140.120.120.50.250.5140.120.1210.120.514≦0.06≦0.060.12???????0.251280.120.1210.250.5140.120.120.250.251280.120.120.50.120.512≦0.06≦0.06≦0.06???????0.251280.250.1210.250.5140.120.120.50.251280.120.121PRSP第1回(2株)第2回(4株)第3回(6株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.251280.120.120.5──────────────0.251240.120.120.5???????0.524160.50.54──────────────0.25124?80.120.120.5?4──────────────(105)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111325菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Streptococcusspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06≦0.06???????0.512160.250.2520.250.5180.120.12≦0.060.51280.250.250.25≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06≦0.06???????0.524160.50.540.250.5140.120.12≦0.060.51280.250.25≦0.060.120.250.52≦0.06≦0.06≦0.06???????0.524160.250.2520.251280.120.12≦0.060.51280.250.250.25Enterococcusspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.51240.250.258???????124811>1280.51240.250.2512812480.50.5>1280.251240.250.251???????12480.50.5>1280.51280.50.56412480.50.5>1280.251240.250.258???????12480.50.5>1280.51280.50.512812480.50.5>128Corynebacteriumspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????16128>12812816320.583264324160.121664128648320.5≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????>128>128>128>128>166410.250.5120.50.250.251664>12812816320.25≦0.06≦0.060.120.5≦0.06≦0.06≦0.06???????32>128>128>128>16640.50.250.5120.250.120.2516128>128>128>16320.5P.acnes第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.250.51410.25≦0.060.250.51410.250.50.250.5120.120.25≦0.06???????0.512820.50.50.250.51410.250.120.512410.50.250.250.510.50.25≦0.06???4???0.51210.50.50.250.51410.250.120.512410.50.50.250.520.50.12≦0.06??????0.51410.250.5グラム陰性菌M.(B.)catarrhalis第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.250.12?0.25≦0.06?0.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?1≦0.06?1≦0.06?0.5N.gonorrhoeae第1回(5株)第2回(0株)第3回(0株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.5180.250.5≦0.06???????281664440.25──────────────Citrobacterspp.第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.250.250.50.50.250.50.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.120.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.50.250.510.2511≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.50.250.50.50.2510.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.120.25≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.25表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(2)MIC:μg/mL1326あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(106)菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Klebsiellaspp.第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.060.120.25≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.060.120.25≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.120.12≦0.060.120.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.250.12?0.25≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?0.5≦0.06≦0.06?0.12Serratiaspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????1124120.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.120.50.250.50.50.250.50.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????0.50.512110.50.250.120.250.250.120.250.120.50.250.50.50.2510.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????11241220.120.120.250.250.120.250.120.50.250.50.50.250.51M.morganii第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.12≦0.060.120.120.120.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06???????1122240.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.060.250.120.250.250.250.50.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.25≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06?0.25≦0.06?0.12≦0.06?1≦0.06?0.12P.aeruginosa第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.250.50.50.120.516???????3264128>128>16128>1280.50.5120.2511621240.54320.250.250.50.50.120.516???????8816164161280.50.5120.2513211220.52640.250.250.50.50.120.58???????448828>1280.50.5110.2511611220.5264Pseudomonasspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.12???????0.50.5110.2511280.120.120.250.25≦0.060.25160.50.250.510.25164≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5???????448818>1280.50.5110.2513210.5120.521280.120.120.250.5≦0.060.2516???????11240.521280.50.5110.2513211220.5264S.paucimobilis第1回(7株)第2回(6株)第3回(18株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.060.120.251≦0.06≦0.062???????0.51280.50.532──────────────≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.061???????124812>128──────────────≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.062???????124822>1280.120.250.51≦0.06≦0.063212481164S.maltophilia第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX0.250.5120.120.122???????448822>1280.50.5120.50.25128124411>128≦0.060.120.251≦0.06≦0.0632???????32326464>1632>1280.51240.50.5128448822>1280.250.5120.120.124???????224811>12811240.50.512812440.50.5>128表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(3)MIC:μg/mLあたらしい眼科Vol.28,No.9,20111327向が他のフルオロキノロン系薬でも認められた.Klebsiellaspp.に対するGFLXのMIC90は,過去3回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFXおよびTFLXと同等であった.Serratiaspp.に対するGFLXのMIC90については,すべての調査を通じて0.5μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.M.morganiiに対するGFLXのMIC90は≦0.06~0.25μg/mLであり,第2回調査におけるMIC90がやや高かったが,他のフルオロキノロン系薬も同様の傾向であった.P.aeruginosaに対するGFLXのMIC90は1~2μg/mLで大きな変動はなく,他のフルオロキノロン系薬と同様の傾向であった.Pseudomonasspp.に対するGFLXのMIC90についても0.5~1μg/mLであり,他のフルオロキノロン系薬のMIC90とほぼ同等であった.S.paucimobilisについては,第3回調査におけるGFLXのMIC90は1μg/mLであり,TFLXおよびMFLXと同等であった.なお,S.paucimobilisは第1回および第2回調査時の収集株数が各々7株および6株と少なかったが,第3回調査のGFLXのMICとほぼ同等であった.S.maltophiliaに対するGFLXの過去3回の調査におけるMIC90は1~4μg/mLであり,第2回調査で若干の上昇が認められたが,他のフルオロキノロン系薬と同様に経年的なMIC90の上昇は認められなかった.Acinetobacterspp.に対するGFLXの過去3回の調査におけるMIC90は0.12~0.25μg/mLであり,LVFX,TFLXおよびMFLXとほぼ同等であった.ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌に対するCMXのMIC90は32~>128μg/mLであり,フルオロキノロン系薬よりも高値であった.H.influenzaeおよびH.aegyptiusに対するGFLXのMIC90は,計3回の調査を通じて0.06μg/mL以下であり,LVFX,OFLXおよびTFLXと同等であった.一方,LFLXおよびMFLXではMICが0.12μg/mLを示す菌株(H.influenzae)が認められた.III考按細菌感染症の治療において,病巣擦過物の塗抹検鏡および培養による起炎菌の同定ならびに抗菌薬に対する感受性を確認して有効な抗菌薬が選択されるべきであるが,実際には検査結果を待たずして経験的治療が開始されることが多い.細菌性外眼部感染症においても,広域抗菌スペクトラムを有するフルオロキノロン系薬の点眼剤が汎用されているが,近年ではフルオロキノロン系薬耐性菌の出現と増加が報告されており7?9),起炎菌の感受性動向を調査することは,非常に重要になっている10).フルオロキノロン系薬の作用標的は,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVであるが,両酵素のQRDR(quinolone(107)菌名(株数)Drug第1回第2回第3回MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90MICrangeMIC50MIC90Acinetobacterspp.第1回(25株)第2回(25株)第3回(25株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.064???????161632128>1616128≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.250.5110.120.2532≦0.06≦0.060.120.25≦0.06≦0.061???????0.50.5110.25164≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.120.250.51≦0.060.1264≦0.06?0.12≦0.060.120.250.5≦0.06≦0.06160.120.250.51≦0.060.1232≦0.06?0.250.12?0.50.25?1≦0.06≦0.06?0.124?64H.influenzae第1回(50株)第2回(50株)第3回(50株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMXABPC≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.250.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.121≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.54≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06?0.12≦0.06?0.5≦0.06?0.5≦0.06?0.50.12?>1280.12?160.12?64H.aegyptius第1回(10株)第2回(10株)第3回(10株)GFLXLVFXOFLXLFLXTFLXMFLXCMX≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.060.12≦0.06≦0.060.5≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.060.25≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.12≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06≦0.06?0.5≦0.06?0.25≦0.06?0.5収集株数が10株未満であった場合は,MIC50およびMIC90を算定せず.表2外眼部感染症由来分離株に対するgatifloxacinおよび対照薬のMIC推移(4)MIC:μg/mL1328あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011resistance-determinationregion)にアミノ酸置換をひき起こす遺伝子変異が耐性化に密接に関連している.Noguchiら11)は,2002年に分離されたMRSA100株の97%がgrlA(topoisomeraseIVをコードする遺伝子)あるいはgyrA(DNAgyraseをコードする遺伝子)に変異を有し,いずれか一方の変異株ではLVFXへの感受性低下が認められたが,GFLXおよびMFLXに対する感受性の低下はほとんどなく,grlAおよびgyrA両遺伝子が変異することによりGFLXおよびMFLXに対しても高度耐性化したと報告している.今回の調査においても,MRSAに対するGFLXおよびMFLXのMIC90は,他のフルオロキノロン系薬に比して低い傾向が認められた.同様にMcDonaldら7)は,CNSにおけるフルオロキノロン系薬への耐性化についてもMRSAと同様に段階的であり,はじめにLVFXおよびTFLXに耐性化し,ついでGFLXおよびMFLXにも耐性化することを報告している.星12)は正常結膜?から分離されたMRCNSにおけるフルオロキノロン系薬耐性率がMSCNSに比して有意に高いことに加え,GFLXまたはMFLX感性株のなかにはLVFX耐性株が存在することを報告している.今回の調査においても,MRCNSに対するGFLXおよびMFLXのMIC90は,他のフルオロキノロン系薬よりも低い傾向にあり,CNSのGFLXおよびMFLXに対する耐性率は,LVFXに対する耐性率と相違したとするLingminら13)の報告と一致している.このような耐性率相違の要因としては,LVFXの一次作用標的がtopoisomeraseIVであるのに対し,その化学構造に共通してキノロン環8位にメトキシ基を有するGFLXおよびMFLX14)では,DNAgyraseおよびtopoisomeraseIVの両酵素をバランスよく強力に阻害する2,7)ことが反映されているものと考えられる.一方,S.pneumoniaeに対するフルオロキノロン系薬の抗菌活性はPSSP,PISPおよびPRSPに対して同等であり,PCGに対する耐性度には影響されなかった.Corynebacteriumspp.はtopoisomeraseIVを欠くことから,主としてgyrA変異によりフルオロキノロン系薬に対する耐性が獲得されると考えられている8).今回の調査においてGFLXが比較的高い抗菌活性を示した要因としては,GFLXのDNAgyraseに対する阻害活性が変異の影響を受け難いためと考えられる.山中ら15)も,Corynebacteriumspp.ではgyrAにコードされるSer-83およびAsp-87のアミノ酸変異パターンによってフルオロキノロン耐性度が変化し,両アミノ酸が変異したフルオロキノロン高度耐性株に対してGFLXのMICが最も低かったことを報告している.なお,Corynebacteriumspp.に対して最も強い抗菌活性を示した薬剤はCMXであり,小林らの報告16)と同様であった.グラム陰性菌およびP.acnesはフルオロキノロン系薬に高い感受性を示し,3回の調査を通じて感受性の低下傾向はみられず,多剤耐性株(MDRP)の出現が問題視されているP.aeruginosaについても耐性化傾向は認められなかった.以上,2004年の発売から5カ年にわたって,外眼部感染症分離菌のGFLXに対する感受性について検討した結果,経年的な耐性化傾向は認められなかった.したがって,GFLX点眼薬は,現時点においてもなお,外眼部感染症に対して有用であると考えられた.一方,抗菌薬にとって,その使用頻度に伴う耐性化は一般的に不可避であり,継続して眼科臨床分離株の感受性を監視し,感受性動向の情報を医療現場と共有することが肝要であると考えられた.一般に,抗菌薬耐性はCLSIの基準に基づき論じられることが多いが,CLSIのブレークポイントは全身性抗菌薬を対象としており,点眼抗菌薬について同様の基準が適応できるか明らかではない.点眼抗菌薬の臨床効果と分離株の感受性との関係についても,引き続き検討していく必要があると考えられる.文献1)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:ContributionoftheC-8-MethoxygroupofgatifloxacintoinhibitionoftypeIItopoisomerasesofStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother46:3337-3338,20022)TakeiM,FukudaH,KishiiRetal:Targetpreferenceof15quinolonesagainstStaphylococcusaureus,basedonantibacterialactivitiesandtargetinhibition.AntimicrobAgentsChemother45:3544-3547,20013)FukudaH,HoriS,HiramatsuK:Antimicrobialactivityofgatifloxacin(AM-1155,CG5501,BMS-206584),anewlydevelopedfluoroquinolone,againstsequentiallyacquiredquinolone-resistantmutantsandthenorAtransformantofStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother42:1917-1922,19984)KishiiR,TakeiM,FukudaHetal:Contributionofthe8-methoxygrouptotheactivityofgatifloxacinagainsttypeIItopoisomerasesofStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother42:1917-1922,19985)LuT,ZhaoXandDricaK:Gatifloxacinactivityagainstquinolone-resistantgyrase:allele-specificenhancementofbacteriostaticandbactericidalactivitiesbytheC-8-methoxygroup.AntimicrobAgentsChemother43:2969-2974,19996)FukudaH,KishiiR,TakeiMetal:Contributionofthe8-methoxygroupofgatifloxacintoresistanceselectivity,targetpreference,andantibacterialactivityagainstStreptococcuspneumoniae.AntimicrobAgentsChemother45:1649-1653,20017)McDonaldM,BlondeauJM:Emergingantibioticresistanceinocularinfectionsandtheroleoffluoroquinolones.JCataractRefractSurg36:1588-1598,20108)EguchiH,KuwaharaT,MiyamotoTetal:High-levelfluoroquinoloneresistanceinophthalmicclinicalisolatesbelongingtothespeciesCorynebacteriummacginleyi.JClinMicrobiol46:527-532,2008(108)あたらしい眼科Vol.28,No.9,201113299)HooperDC:Mechanismsoffluoroquinoloneresistance.DrugResistUpdat2:38-55,199910)OliveiraAD,Hofling-LimaAL,BelfortRJretal:Fluoroquinolonesusceptibilitiestomethicillin-resistantandsusceptiblecoagulase-negativeStaphylococcusisolatedfromeyeinfection.ArqBrasOftalmol70:286-289,200711)NoguchiN,OkiharaT,NamikiYetal:Susceptibilityandresistancegenestofluoroquinolonesinmethicillin-resistantStaphylococcusaureusisolatedin2002.IntJAntimicrobAgents25:374-379,200512)星最智:正常結膜?から分離されたメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌におけるフルオロキノロン耐性の多様性.あたらしい眼科27:512-517,201013)LingminHMS,ChristopherNT,HerminiaMK:One-dayapplicationoftopicalmoxifloxacin0.5%toselectforfluoroquinolone-resistantcoagulase-negativeStaphylococcus.JCataractRefractSurg35:1715-1718,200914)DilekI,DavidCH:MechanismsandfrequencyofresistancetogatifloxacinincomparisontoAM-1121andciprofloxacininStaphylococcusaureus.AntimicrobAgentsChemother45:2755-2764,200115)山中千尋,江口洋:コリネバクテリウムの分子疫学について教えてください.あたらしい眼科26:226-228,200916)小林寅喆,松崎薫,志藤久美子ほか:細菌性眼感染症患者より分離された各種新鮮臨床分離株のLevofloxacin感受性動向について.あたらしい眼科23:237-243,2006(109)***

レボフロキサシンの薬剤感受性結果とガチフロキサシン・モキシフロキサシン・セフメノキシムの感受性相関

2011年7月31日 日曜日

0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(121)1025《原著》あたらしい眼科28(7):1025?1028,2011cはじめに眼感染症治療薬として,抗菌スペクトルの広さからキノロン系点眼薬がエンピリック・セラピーとして用いられることが多く1~4),なかでもレボフロキサシン(LVFX)は安全性と組織移行性より第一選択薬として汎用されている.しかし,起因菌が確認されず,薬剤感受性試験の結果も判明していない状態での「とりあえずキノロン」といった安易な抗菌薬濫用は,耐性菌の誘導を招き,治療失敗となる原因の一つである.LVFXなどのキノロン薬耐性化に伴い3,5),より抗菌力の強いキノロン薬としてガチフロキサシンン(GFLX)やモキシフロキサシン(MFLX)が開発され2,5),キノロン系点眼薬の選択肢は増加した.その結果,抗菌力の強さに期待し,LVFXに耐性であった場合の第二選択薬としてGFLXやMFLXが選択されることもあり,最新のサンフォード感染〔別刷請求先〕木村圭吾:〒565-0871吹田市山田丘2-15大阪大学医学部附属病院臨床検査部Reprintrequests:KeigoKimura,LaboratoryforClinicalInvestigation,OsakaUniversityHospital,2-15Yamadaoka,Suita-city,Osaka565-0871,JAPANレボフロキサシンの薬剤感受性結果とガチフロキサシン・モキシフロキサシン・セフメノキシムの感受性相関木村圭吾*1西功*1豊川真弘*1砂田淳子*1上田安希子*1坂田友美*1井上依子*1浅利誠志*1,2*1大阪大学医学部附属病院臨床検査部*2同感染制御部SusceptibilityTestingofLevofloxacinandItsCorrelationtoGatifloxacin,MoxifloxacinandCefmenoximeKeigoKimura1),IsaoNishi1),MasahiroToyokawa1),AtsukoSunada1),AkikoUeda1),TomomiSakata1),YorikoInoue1)andSeishiAsari1,2)1)DivisionofClinicalMicrobiology,2)InfectionControlTeam,OsakaUniversityMedicalHospital眼科材料由来(61株)および他の臨床材料由来(19株)の計80株に対してレボフロキサシン(LVFX),ガチフロキサシン(GFLX),モキシフロキサシン(MFLX),セフメノキシム(CMX)の薬剤感受性を測定し,特にキノロン系抗菌薬3剤の相関関係を検討した.キノロン3剤の感受性結果は73株(91.3%)が一致し,LVFXが中等度耐性もしくは耐性を示した株(34株)のうちGFLX・MFLXの少なくとも1剤がLVFXに比し良好な感受性を示した株は6株(17.6%)であった.一方CMXに対しては,methicillin-susceptibleStaphylococcusspp.,Streptococcusspp.,Corynebacteriumspp.の90%以上が感受性を示した.したがってLVFX耐性時のGFLX・MFLXの安易な使用は避けるべきであり,上記細菌群に対してはむしろCMXが推奨された.Wecarriedoutsusceptibilitytestingoflevofloxacin(LVFX),gatifloxacin(GFLX),moxifloxacin(MFLX)andcefmenoxime(CMX)against61strainsfromocularclinicalisolatesand19strainsfromotherclinicalspecimens.Thecorrelationsbetweenthethreequinoloneantibioticswerealsostudied.Ofthe80strainsintotal,73strains(91.3%)exhibitedcommonresultsregardingthethreequinolones.Sixoutof34strainsshowedthatGFLXand/orMFLXweremorepotentthanLVFX,whichwasinterpretedasintermediatesusceptibilityorresistancetoLVFX.Ontheotherhand,over90%ofthemethicillin-susceptibleStaphylococcusspp.,Streptococcusspp.andCorynebacteriumspp.strainsweresusceptibletoCMX.CMXwasthereforerecommended,ratherthanthethreequinolones,againstthesestrains.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(7):1025?1028,2011〕Keywords:レボフロキサシン,ガチフロキサシン,モキシフロキサシン,セフメノキシム,キノロン系抗菌薬.levofloxacin,gatifloxacin,moxifloxacin,cefmenoxime,quinolone.1026あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(122)症治療ガイド6)では,急性の細菌性角膜炎に対しては両薬剤が第一・第二選択薬として推奨されているが,はたして,LVFX治療無効後のGFLX・MFLXの使用は真に適切であるといえるであろうか.今回筆者らは,LVFX耐性時のGFLX・MFLXの有効性を検証し,「実際に,GFLX・MFLXの2剤は使用可能なのか」という眼科医の疑問に回答するため,眼科材料由来の検出菌株を中心にLVFX・GFLX・MFLXの3剤およびセフェム系唯一の点眼薬であるセフメノキシム(CMX)の薬剤感受性を比較検討した.特にキノロン系点眼薬の3剤の使用方法に関して一つの提言をしたい.I対象および方法1.検査対象菌株2003年に実施された感染性角膜炎全国サーベイランス7)にて収集された分離菌および当院で検出された眼科材料由来の検出菌より,methicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA)を8株,methicillin-susceptibleStaphylococcusaureus(MSSA)を4株,methicillin-resistantStaphylococcusepidermidis(MRSE)を6株,methicillin-susceptibleStaphylococcusepidermidis(MSSE)を7株,Pseudomonasaeruginosa(P.aerugonosa)を7株,Streptococcuspneumoniae(S.pneumoniae)を9株,S.peumoniaeを除くStreptococcusspp.を10株,Corynebacteriumspp.を10株使用した.さらに当検査室保存株より血液由来株15株(MRSA:2株,MSSA:6株,MRSE:4株,MSSE:3株),髄液由来株1株(S.pneumoniae),およびキノロン耐性のP.aeruginosaとしてmultidrugresistantP.aeruginosa(MDRP)を3株加え,合計80株を検査対象菌株とした.また,精度管理株はStaphylococcusaureusATCC25,923株,P.aeruginosaATCC27,853株,EscherichiacoliATCC25,922株を用いた.2.試験薬剤LVFX,GFLX,MFLXおよびCMXの4薬剤を使用した.3.薬剤感受性試験方法センシ・ディスクTM(BD)を用いたKirby-Bauer法にて感受性試験を実施した.試験用培地は,Staphylococcusspp.およびP.aeruginosaに対してはMuellerHintonAgar(BD)を,一方S.pneumoniae,Streptococcusspp.およびCorynebacteriumspp.に対してはMuellerHintonAgarwith5%SheepBlood(BD)を使用した.各薬剤の感受性判定は,センシ・ディスクTMの添付文書(判定表)に従い判定した.判定基準の記載のないP.aeruginosa,Streptococcusspp.に対するMFLXの感受性結果,およびCorynebacteriumspp.に対する4剤の感受性結果は,すべてS.pneumoniaeの判定基準を用いて判定を行った.II結果1.キノロン3剤(LVFX・GFLX・MFLX)の感受性相関(表1)全80株のうち73株(91.3%)がキノロン3剤の感受性結果(感受性:S,中等度耐性:I,耐性:R)が一致した.MRSAは,10株すべてがキノロン3剤にRを示した.MSSAは1株(No.15)のみLVFX:Rであり,その株はMRSA同様3剤ともRであった.残り9株はキノロン3剤がすべてSで一致した.MRSEは,今回検証した菌株のうちキノロン3剤の感受性結果に最も差が生じた細菌群であり,3株(No.22,23,28)においてLVFXに比しGFLXまたはMFLXが有効である結果が得られた.この3株の感受性結果はLVFX/GFLX/MFLXの順にR/I/I,I/S/S,R/R/Iであった.一方,他の3株(No.27,29,30)はキノロン3剤ともRで一致,1株(No.21)はIで一致,残り3株はSで一致した.MSSEは,3剤の感受性結果に差が生じた株は存在せず,3株(No.33,34,38)はRで一致,1株(No.32)はIで一致,残り6株はSで一致した.P.aeruginosaは,LVFXおよびGFLXがI,MFLXがRという他菌種とは異なる結果を示した株(No.46)が1株確認された.MDRP(No.48,49,50)については3株すべてキノロン3剤に耐性を示し,GFLXおよびMFLXの有効性は示されず,残り6株はSで一致した.Streptococcusspp.は3株(No.51,59,60)がキノロン3剤ともRで一致,残り7株はSで一致した.S.pneumoniaeは1株(No.62)のみLVFX:Rであり,この株はGFLX:R,MFLX:Iであった.残り9株はSで一致した.Corynebacteriumspp.は,キノロン3剤の感受性結果に差が生じた株が2株(No.71,72)確認され,この2株の感受性結果はLVFX/GFLX/MFLXの順にI/S/S,R/R/Iであった.一方,他の2株(No.73,79)はRで一致,残り6株はSで一致した.2.CMXの感受性結果(表1)CMXは,MRSA,MRSE,P.aeruginosaを除く細菌群50株のうち49株(98%)において感受性を示した.III考察キノロン系点眼薬は,眼感染症治療や術前後の感染予防に広く使用されている.オフロキサシンなどのolderfluoroquinolonesとよばれるキノロン系抗菌薬の耐性化が問題視された後,LVFX,GFLXそしてMFLXが開発され点眼薬として承認されてきた経緯がある.なかでも特にLVFXは使用頻度が高いが,MRSAに対しては感受性率0%,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌に対しては感受性率10%との報告1,2)も存在し,その使用には注意が必要であり,感受性試験実施の重要性が指摘されている.(123)あたらしい眼科Vol.28,No.7,20111027今回筆者らは,LVFX:Rのとき,GFLXやMFLXをその代替薬として使用できるかを確認するため,各菌種に対する薬剤感受性試験を実施した.LVFXがIもしくはRを示した株(34株)のうち,GFLXおよびMFLXのうち少なくとも1剤がLVFXに比し良好な感受性を示した株は6株(17.6%)であった.今回は最小発育阻止濃度(MIC)を測定していないため,各キノロン薬の詳細なMIC値による優劣比較は困難であるが,少なくともGFLXおよびMFLXはLVFXに比し特にグラム陽性菌に対して有意に抗菌力が強いとの多くの報告1,2,5,8)とは異なる結果であり,LVFX耐性時のGFLXおよびMFLXの使用を推奨できる結果ではなかった.グラム陰性菌に対するGFLX・MFLXの抗菌力は,グラム陽性菌の場合と同様,LVFXと同等であり,特にこの2剤が優れているという結果は得られなかった.グラム陰性菌に対し,キノロン3剤の間に優劣は認められなかったという筆者らの報告は,Matherら1),Kowalskiら2)の報告と一致する.キノロン系抗菌薬は,DNA複製に関与するDNAジャイレースとトポイソメラーゼⅣを阻害することにより作用する.したがって,細菌がキノロン耐性を獲得するためには,細菌DNAのキノロン耐性決定領域に存在するDNAジャイレースのサブユニットA遺伝子(gyrA)およびトポイソメラーゼⅣのサブユニットC遺伝子(parC)に変異が加わる必要があるといわれている.細菌がGFLX・MFLXに耐性となるためには,gyrAおよびparC両者の同時変異が必要であるため,LVFXに比し耐性は獲得しにくく,感受性の低下も少ないと考えられている2,4,8,9).しかし,今回の検討では,LVFX:Rの株(29株)のうち25株(86.2%)が他2剤のキノロンも同様にRであった.これは,薬剤間の交差耐性機構などによりすでに両遺伝子に変異を有している株が多く存在している可能性が高いことを強く示唆しているため,LVFX:Rの株に対して安易にGFLXやMFLXを使用すべきではないとの結論となる.通常の薬剤感受性検査では,多種類の抗菌薬を同時に測定するため代表薬剤であるLVFX以外のキノロン系薬剤を複数同時に測定することはルーチン検査ではきわめて煩雑である.このため臨床からは,「LVFX:Rのとき,GFLXやMFLXは使用可能なのか.その2剤の感受性試験も追加で実施してほしい」との問い合わせが多く,今回の検討はそのような検査依頼に応えるため実施したものである.GFLXお表1LVFX,GFLX,MFLX,CMXの感受性結果一覧MRSAMSSAMRSEMSSENo.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMX1RRRR11SSSS21IIIR31SSSS2RRRR12SSSS22RIIR32IIIS3RRRR13SSSS23ISSR33RRRS4RRRR14SSSS24SSSR34RRRS5RRRR15RRRS25SSSR35SSSS6RRRR16SSSS26SSSR36SSSS7RRRR17SSSS27RRRR37SSSS8RRRR18SSSS28RRIR38RRRS9RRRR19SSSS29RRRR39SSSS10RRRR20SSSS30RRRR40SSSSP.aeruginosaStreptococcusspp.(S.pneumoniaeを除く)S.pneumoniaeCorynebacteriumspp.No.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMXNo.LVFXGFLXMFLXCMX41SSSI51RRRS61SSSS71ISSS42SSSI52SSSS62RRIS72RRIS43SSSI53SSSS63SSSS73RRRS44SSSI54SSSS64SSSS74SSSS45SSSI55SSSS65SSSS75SSSS46IIRR56SSSS66SSSS76SSSS47SSSI57SSSS67SSSS77SSSS48RRRR58SSSS68SSSS78SSSS49RRRR59RRRS69SSSS79RRRR50RRRR60RRRS70SSSS80SSSS感受性(S),中等度耐性(I),耐性(R)と表記し,各菌に対するLVFX,GFLX,MFLXおよびCMXの感受性結果を示した.キノロン3剤の結果に乖離のみられた菌については■で表現した.1028あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(124)よびMFLXがLVFXに比し有効である場合はむしろ少なく,比較検討した80株中73株(91.3%)がLVFXと同様の感受性結果であったため,GFLXおよびMFLXの感受性結果は,LVFXの結果から十分推定可能であることが示唆された.したがって,微生物検査室の対応として,国内で使用可能なキノロン系点眼薬6種すべての感受性を試験する必要はなく,広く使用されているLVFXを試験することで十分であると思われた.前述の眼科医からの依頼に対する回答としては,「LVFX:Rのとき,GFLXおよびMFLXも80%以上同様にRですので,感受性結果は同一と考えてください.」との回答が適当と考える.一方CMXは,MSSA,MSSE,Streptococcusspp.,S.pneumoniaeおよびCorynebacteriumspp.の各々に対して90%以上の感受性を示した.キノロン3剤がIもしくはR,しかしCMX:Sを示す株も11株存在し,キノロン薬以上の有効性が期待できる場合があることが示唆された.加茂ら9)はCorynebacteriumspp.,MSSA,Streptococcusspp.に対して,CMXはLVFX・GFLXに比し同等以上の感受性を有していたと報告しており,渡邉ら4),宇野ら10)は上記の同様の菌種に対して,CMXがLVFX・GFLX・MFLXに比し同等かそれ以上に低いMIC90を示した,と報告している.菌種によっては,CMXがキノロン薬以上の有効性を示した筆者らの結果と一致する.以上,キノロン3剤の薬剤感受性センシ・ディスクTM(BD)を用いたKirby-Bauer法にて比較検討した結果,90%以上の株で感受性結果が一致しており,GFLXおよびMFLXの2剤が特に有用性が高いとは言い難い結果であった.眼感染症治療に際しては,基本に戻り,塗抹・培養検査を実施し起因菌の特定と薬剤感受性試験の実施が重要である.文献1)MatherR,KarenchakLM,RomanowskiEGetal:Fourthgenerationfluoroquinolones:newweaponsinthearsenalofophthalmicantibiotics.AmJOphthalmol133:463-466,20022)KowalskiRP,DhaliwalDK,KarenchakLMetal:Gatifloxacinandmoxifloxacin:aninvitrosusceptibilitycomparisontolevofloxacin,ciprofloxacin,andofloxacinusingbacterialkeratitisisolates.AmJOphthalmol136:500-505,20033)BlondeauJM:Fluoroquinolones:mechanismofaction,classification,anddevelopmentofresistance.SurvOphthalmol49:S73-S78,20044)渡邉雅一,石塚啓司,池本敏雄:モキシフロキサシン点眼液(ベガモックス点眼液TM0.5%)の薬理学的特性および臨床効果.日本薬理学雑誌129:375-385,20075)DuggiralaA,JosephJ,SharmaSetal:Activityofnewerfluoroquinolonesagainstgram-positiveandgram-negativebacteriaisolatedfromocularinfections:aninvitrocomparison.IndianJOphthalmol55:15-19,20076)戸塚恭一,橋本正良:サンフォード感染症治療ガイド2010,第40版,p26,ライフサイエンス出版,20107)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現状─.日眼会誌110:961-972,20068)HwangDG:Fluoroquinoloneresistanceinophthalmologyandthepotentialrolefornewerophthalmicfluoroquinolones.SurvOphthalmol49:S79-S83,20049)加茂純子,山本ひろ子,村松志保:病棟・外来の眼科領域細菌と感受性の動向2001~2005年.あたらしい眼科23:219-224,200610)宇野敏彦,大橋裕一,下村嘉一ほか:外眼部細菌性感染症由来の臨床分離株に対するモキシフロキサシンの抗菌活性.あたらしい眼科23:1359-1367,2006***

術前抗生物質投与におけるレボフロキサシン点眼液と ガチフロキサシン点眼液の比較検討

2010年4月30日 金曜日

———————————————————————-Page1(107)5230910-1810/10/\100/頁/JCOPY46回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科27(4):523526,2010cはじめに1987年にオフロキサシン(OFLX)点眼液(タリビッドR点眼液)が上市されて以来,フルオロキノロン系点眼薬はその強力な殺菌作用と広い抗菌スペクトルから,感染症治療のみならず,周術期の感染予防目的でも日常的に使用されている.他方,臨床の場でキノロン耐性菌の出現も問題になりつつあり,2000年に発売された,いわゆる第3世代キノロン製剤であるレボフロキサシン(LVFX)点眼液にも耐性菌がみられるようになってきた1).2004年に発売されたガチフロキサシン(GFLX)点眼液はdualinhibitionを特徴とする第4世代キノロンで,耐性菌が出現しにくいとされている.今回筆者らは,周術期の感染予防目的で使用した場合,LVFXとGFLXの有効性に差があるかについて,一般の中核市中病院に通院する患者を対象に一般病院で通常施行されている結膜細菌培養と薬剤感受性試験を行い,検討したので報告する.〔別刷請求先〕末吉理恵:〒673-8501明石市鷹匠町1-33明石市立市民病院眼科Reprintrequests:MasaeSueyoshi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,AkashiMunicipalHospital,1-33Takashomachi,AkashiCity,Hyogo673-8501,JAPAN術前抗生物質投与におけるレボフロキサシン点眼液とガチフロキサシン点眼液の比較検討末吉理恵辻村まり明石市立市民病院眼科ComparisonofLevoloxacinandGatiloxacinasPreoperativeTopicalAntibioticAgentsMasaeSueyoshiandMariTsujimuraDepartmentofOphthalmology,AkashiMunicipalHospital2005年4月から2007年3月までに内眼手術予定の1,217眼を対象とし,一般病院で通常施行されている結膜細菌培養と薬剤感受性試験を行った.分離培養された菌に対してレボフロキサシン(LVFX)とガチフロキサシン(GFLX)の最小発育阻止濃度(minimuminhibitoryconcentration:MIC)を測定し,薬剤感受性を比較検討した.1,217眼中39眼(3.2%)から42株の菌が検出された.グラム陽性菌が21株であり,その15株がStaphylococcusaureus(うちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌:MRSAが5株)であった.グラム陰性菌が21株で,その7株がHaemophilusinuenzaeであった.MICからはLVFXとGFLXの感受性に明らかな差はなく,耐性菌は両剤ともに低感受性を示した.グラム陽性菌Staphylococcusaureus(そのうち特にMRSA)およびStaphylococcusepidermidisについては両剤ともに耐性菌が認められており,注意が必要と考えられた.FromApril2005toMarch2007,wepreoperativelyinvestigatedthebacterialoraintheconjunctivalsacsof1,217eyesofpatientswhoweretoundergosurgery.Wecomparedlevooxacin(LVFX)withgatioxacin(GFLX)onthebasisofminimuminhibitoryconcentration(MIC).Atotalof42strainswereisolatedfrom39eyes(3.2%)bydirectisolation.Ofthe42strains,21weregram-negativecocci;ofthose,15strainswereStaphylococcusaureus,including5strainsofmethicillin-resistantStaphylococcusaureus(MRSA).Theother21strainsweregram-nega-tiverods;ofthose,7strainswereHaemophilusinuenzae.RegardingMICdistribution,nosignicantdierencewasnotedbetweenLVFXandGFLX.Theuoroquinolone-resistantstrainswerefoundinthegram-positivebacte-ria.WemustpayattentiontoMRSAandStaphylococcusepidermidis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(4):523526,2010〕Keywords:結膜内細菌叢,薬剤感受性,レボフロキサシン,ガチフロキサシン,最小発育阻止濃度.bacterialoraintheconjunctivalsacs,drugsensitivity,levooxacin,gatioxacin,minimuminhibitoryconcentration(MIC).———————————————————————-Page2524あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(108)I対象および方法術前に明らかな急性結膜炎の所見を認めず,2005年4月1日から2007年3月31日の期間に当科で内眼手術を施行した27101歳の症例1,217眼(男性447眼;平均年齢72.04歳,女性770眼;平均年齢74.89歳,合計1,217眼;平均年齢73.84歳)を対象とした.手術の約1カ月前に外来で,術前検査の一環として,結膜擦過物の細菌学的検査を行った.具体的には,カルチャースワブプラスR(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)を用い,眼科医師が結膜を擦過して検体採取し検体保存輸送用培地に入れ,当院(市立病院)の細菌検査室に提出した.5%ヒツジ血液寒天培地とチョコレート寒天培地で35℃48時間の好気条件,直接分離培養を行った.検出された菌は,院内でも薬剤感受性検査を行うとともに,(株)三菱化学メディエンスに提出し,すべての菌株に対してLVFXとGFLXの最小発育阻止濃度(minimuminhibitoryconcentration:MIC)を微量液体希釈法にて測定し,比較検討した.結果について,下記の項目を検討した.(1)直接分離培養で検出された細菌検出株数,検出頻度,性別および年齢(2)MICの観点からみた検出された菌に対するLVFXとGFLXの抗菌力MIC値が4μg/ml以上のものを耐性菌とみなした(院内での薬剤感受性検査で耐性と判定された株のMIC値を採用した).検出された株数が少なかったため,統計学的解析は行っていない.II結果1,217眼中39眼(3.2%)から菌が検出された.男性19眼:平均年齢74.58歳,女性20眼:平均年齢75.10歳,合計39眼:平均年齢74.85歳であった.39眼中37眼において検出された菌は1種類であったが,2種類の菌を検出したものが1眼(76歳,男性),3種類の菌を検出したものが1眼(76歳,女性)あった.菌が検出された症例については術前に適切な抗生物質点眼を行い,減菌した後に手術を施行した.術後眼内炎を発症した症例は認めなかった.菌が検出された症例の性別および各年代別の検出率は,図1に示すとおりで,高齢者に多いというような一定の傾向は認めなかった.検出された菌は,グラム陽性菌が21株であり,その15株がStaphylococcusaureus(うちメチシリン耐性黄色ブドウ球菌:MRSAが5株)であった.グラム陰性菌が21株で,Haemophilusinuenzaeが最も多く7株,ついでCitrobacterkoseriが4株認められた.検出されたグラム陽性菌の内訳と各MICは表1に,グラム陰性菌の内訳と各MICは表2に示すとおりで,耐性菌はLVFXとGFLXの両剤ともに低感受性であった.全分離株に対する両剤の累積発育阻止率曲線は図2に示すとおりである.Staphylococcusaureusに対する両剤の累積発育阻止率曲線を図3に示した.なお,LVFXとGFLXの両剤ともに低感受性であった菌はすべて,院内の薬剤感受性検査でアルベカシン(ABK)およびバンコマイシン(VCM)に感受性があり,これらを用いて手術前に減菌した.III考察結膜内常在菌の菌検出率は,これまでに53.185%との報告がある28).当院の検査室において通常施行している病原菌を対象とした培養検査の検出率は3.2%であった.専門的施設で結膜症例数05010015020025030035040020代男性20代女性30代男性30代女性40代男性40代女性50代男性50代女性60代男性60代女性70代男性70代女性80代男性80代女性90代男性90代女性100代男性100代女性:検出:検出5%7.9%2.8%0.7%4%3%5.9%2.1%8.3%100%図1菌が検出された症例の性別および各年代別の検出率———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010525(109)表2グラム陰性菌の内訳と各MIC(μg/ml)およびAQCmaxMIC菌株平均年齢(歳)MICAQCmax/MICLVFXGFLXLVFXGFLXPseudomonasaeruginosa(1例)690.50.56.784.6Serratiamarcescens(1例)580.120.2528.259.2Haemophilusinuenzae(7例)76.71≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Proteusmirabilis(2例中1例)84≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Proteusmirabilis(2例中1例)70≦0.060.25≧56.59.2Citrobacterkoseri(4例)78.75≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Citrobacterfreundii(1例)700.120.2528.259.2Enterobactercloacae(1例)82≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Escherichiacoli(1例)86≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Morganellamorganii(2例)73.5≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3Moraxellacatarrhalis(1例)82≦0.06≦0.06≧56.5≧38.3表1グラム陽性菌の内訳と各MIC(μg/ml)およびAQCmaxMIC菌株平均年齢(歳)MICAQCmax/MICLVFXGFLXLVFXGFLXStaphylococcusaureus(15例中8例)74.250.12≦0.0628.25≧38.3Staphylococcusaureus(15例中1例)700.250.1213.5619.17Staphylococcusaureus(15例中1例)70211.6952.3Staphylococcusaureus(15例中2例)MRSA71.5420.84751.15Staphylococcusaureus(15例中1例)MRSA57>12832<0.0030.071875Staphylococcusaureus(15例中2例)MRSA78>12864<0.0030.036Staphylococcusepidermidis(2例中1例)760.12≦0.0628.25≧38.3Staphylococcusepidermidis(2例中1例)69820.423751.15Streptococcuspneumoniae(2例中1例)7610.253.399.2Streptococcuspneumoniae(2例中1例)8010.53.394.6GroupGStreptococcus(1例)800.250.1213.5619.17Enterococcusfaecalis(1例)760.50.256.789.2MIC(μg/ml)0累積発育阻止率(%)102030405060708090100:LVFX:GFLX≦0.060.120.250.51248163264>128図2全分離株に対する累積発育阻止率曲線累積発育阻止率図3S.aureusに対する累積発育阻止率曲線———————————————————————-Page4526あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(110)内常在菌を調査するのではなく,一般病院で通常施行されている培養検査の検出率については,これまでにあまり多数の報告がないが,臨床の場で通常行われている方法であると思われ,今回これについて報告する.遅発性眼内炎の起炎菌として同定されているPropionibac-teriumacnesなどは今回の検討例では検出されていないが,検出された菌は術後早期の眼内炎の起炎菌として報告されている菌種9,10)と類似しており,今回はこれに対して検討した.GFLXは,キノロン骨格1位のシクロプロピル基に加えて,キノロン骨格8位にメトキシ基をもつことで,細菌の標的酵素であるDNAジャイレースとトポイソメレースⅣの両酵素を強力に同程度阻害(dualinhibition)する特徴がある.そこで,LVFXに低感受性であっても,GFLXに感受性の高い菌が多数ある可能性があると考えた.今回の検討で,すべてのグラム陽性菌においてGFLXのMICがLVFXより低かったが,LVFXに耐性をもつ菌株ではGFLXの感受性も低くこれらの菌に対してGFLXによる減菌効果は少ないと考えられた.グラム陰性菌においてはLVFXとGFLXのMICは同じであるものが多く,GFLXのMICがLVFXより高い菌株も認められた.また,術後眼内炎を予防するためには,前眼部へ効率よく移行する点眼薬が求められる.薬動力学的パラメータとして,房水内最高濃度(AQCmax)とMICを組み合わせたAQCmax/MICが臨床での有効性を反映するとの概念が提唱されており,この値が大きいほど有効性が高いと考えられている11).0.5%LVFX点眼液および0.3%GFLX点眼液のAQCmaxは,それぞれ3.39μg/mlおよび2.30μg/mlと報告されている12).検出された菌のAQCmax/MICは,表1(グラム陽性菌),表2(グラム陰性菌)に示すとおりである.グラム陽性菌に対しては,すべての菌株においてGFLXが勝っている.グラム陰性菌に対しては,すべての菌株においてLVFXが勝っている.両剤の有用性について差は少ないと考えられた.近年,細菌の薬剤耐性化が進んでおり,特にニューキノロン薬に対する耐性化が報告されている13).GFLXは新たに開発され,まだあまり使用されていないが,すでに交差耐性となっている菌株も認められている.今回の全分離株のうち,MIC値が4μg/ml以上の株を耐性菌とみなすと,LVFXで6株(約14.3%),GFLXで3株(約7.1%)のみが耐性と判断され,両剤は今のところ周術期の感染予防に有効であると思われた.しかしながら,これまでの報告とも一致するが,術後眼内炎の主要な起炎菌であるグラム陽性菌Staphylococcusaureus(そのうち特にMRSA)およびStaphylococcusepidermidisについては,両剤ともに低感受性を示す株があり,特に注意が必要であると考えられた.文献1)櫻井美晴,林康司,尾羽澤実ほか:内眼手術術前患者の結膜細菌叢のレボフロキサシン耐性率.あたらしい眼科22:97-100,20052)白井美惠子,西垣士朗,荻野誠周ほか:術後感染予防対策としての術前結膜内常在菌培養検査.臨眼61:1189-1194,20073)片岡康志,佐々木香る,矢口智恵美ほか:白内障手術予定患者の結膜内常在菌に対するガチフロキサシンおよびレボフロキサシンの抗菌力.あたらしい眼科23:1062-1066,20064)岩﨑雄二,小山忍:白内障術前患者における結膜内細菌叢と薬剤感受性.あたらしい眼科23:541-545,20065)志熊徹也,臼井正彦:白内障術前患者の結膜内常在菌と3種抗菌点眼薬の効果.臨眼60:1433-1438,20066)丸山勝彦,藤田聡,熊倉重人ほか:手術前の外来患者における結膜内常在菌.あたらしい眼科18:646-650,20017)秋葉真理子,坂上晃一,秋葉純:高齢者の結膜内常在菌と薬剤耐性.臨眼53:773-776,19998)大秀行,福田昌彦,大鳥利文:高齢者1,000眼の結膜内常在菌.あたらしい眼科15:105-108,19989)秦野寛:白内障術後眼内炎:起炎菌と臨床病型.あたらしい眼科22:875-879,200510)原二郎:眼科手術と術後眼内炎─起炎菌の変遷と術前消毒の効果.眼科手術11:159-164,199811)佐々木一之,三井幸彦,福田正道ほか:点眼用抗菌薬の眼内薬動力学的パラメーターとしてのAQCmaxの測定.あたらしい眼科12:787-790,199512)福田正道,高橋信夫:ガチフロキサシン点眼薬の家兎眼内移行動態─房水内最高濃度値(AQCmax)の測定─.あたらしい眼科21:1109-1112,200413)松尾洋子,柿丸晶子,宮崎大ほか:鳥取大学眼科における分離菌の薬剤感受性・患者背景に関する検討.臨眼59:886-890,2005***