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シリコーンハイドロゲルレンズに対するポビドンヨード消毒剤OPL78 の臨床試験

2010年9月30日 木曜日

1310(14あ4)たらしい眼科Vol.27,No.9,20100910-1810/10/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科27(9):1310.1317,2010cはじめにコンタクトレンズ(CL)による眼障害で最も問題視されるのは角膜感染症であるが,近年,とりわけ2週間頻回交換ソフトコンタクトレンズ(SCL)使用者に感染例が増えており,SCLの消毒に関心が集まっている1,2).現在,SCLの化学消毒剤として,塩化ポリドロニウムやポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を消毒成分とする1液型のマルチパーパスソリューション(MPS),および過酸化水素消毒剤やポビドンヨード消毒剤が使用されている.これらの消毒剤のうち,MPSを使用する者が大多数を占めるが,MPSは他の消毒剤に比べ消毒効果が弱いことが難点である3).過酸化水素消毒剤は過酸化水素の中和が不十分だとその細胞毒性によって眼〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科Reprintrequests:KiichiUeda,M.D.,UedaEyeClinic.1-1-15Akineminami,Shimonoseki751-0872,JAPANシリコーンハイドロゲルレンズに対するポビドンヨード消毒剤OPL78の臨床試験植田喜一*1稲葉昌丸*2宮本裕子*3久保田泰隆*4岩崎直樹*4山崎勝秀*5斉藤文郎*5*1ウエダ眼科*2稲葉眼科*3アイアイ眼科医院*4イワサキ眼科医院*5株式会社オフテクスClinicalEvaluationofOPL78,aPovidon-IodineDisinfectionSystem,withSiliconeHydrogelLensesKiichiUeda1),MasamaruInaba2),YukoMiyamoto3),YasutakaKubota4),NaokiIwasaki4),KatsuhideYamasaki5)andFumioSaitoh5)1)UedaEyeClinic,2)InabaEyeClinic,3)Ai-aiEyeClinic,4)IWASAKIEYECLINIC,5)OphtecsCorporationソフトコンタクトレンズ用ポビドンヨード消毒剤OPL78の有用性を評価するために臨床試験を行った.65名(男性16名,女性49名,平均年齢33.0±9.8歳)を対象に,2週間頻回交換のシリコーンハイドロゲルレンズ(SHCL)4種にOPL78を使用して12週間の経過観察を行った.調査項目は,細隙灯顕微鏡による前眼部所見,レンズの状態,装用後レンズの微生物学的検査,被験者へのアンケート(自覚症状)であった.その結果,OPL78の使用期間中に前眼部所見はほとんど変化しなかった.レンズの傷,汚れを認める症例はあったが,レンズ装用に影響はなかった.微生物学的検査からは問題を認めず,自覚症状についてはほぼ良好にレンズが使用できるという回答が大多数であった.これらの結果から,OPL78はSHCLの消毒剤として有用であるといえる.OPL78,achemicaldisinfectionsystemforsoftcontactlensesthatcontainspovidone-iodineastheactiveingredient,wasclinicallyevaluatedwithsiliconehydrogellenses(SHCL).Thestudyincluded65patients(49females,16males;meanage:33.0±9.8years),whousedOPL78todisinfecta2weeksfrequentreplacementSHCLfor12weeks,thenratedtheusefulnessofOPL78.Weconductedslit-lampexamination,observationofSHCLwornoneyesandmicrobiologicalexaminationafterpatientshadcompletedadisinfectingprocedure.Finally,weconductedaquestionnairesurvey.Anterioreyefindingsbyslit-lampexaminationdidnotchangemuchduringtheclinicalevaluation.ThoughscratchesanddepositswerefoundonSHCLinsomecases,thesedidnotaffectthewearingoftheSHCL.Themicrobiologicalexaminationdisclosednoproblems.Furthermore,thequestionnairesurveyshowedthatthemajorityofrespondentsexperiencednoproblemswhileusingOPL78withSHCL.Onthebasisoftheseresults,itisconcludedthatOPL78isusefulfordisinfectingSHCL.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(9):1310.1317,2010〕Keywords:OPL78,ポビドンヨード,シリコーンハイドロゲル,消毒剤,臨床試験.OPL78,povidone-iodine,disinfection,siliconehydrogel,clinicalevaluation.(145)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101311障害が生じるという問題がある.一方,ポビドンヨード消毒剤は,細菌,真菌,ウイルスおよびアメーバなどに対して広い抗菌スペクトルを有しており,角膜への安全性が高いと報告されている4~11).最近のCL市場は,2週間頻回交換SCLや1日使い捨てSCLの使用者が増えているが,素材の面では新素材であるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(SHCL)が急増している.従来のポビドンヨード消毒剤は,消毒顆粒,中和錠,溶解・すすぎ液の3剤で構成されていたが,最近,顆粒と錠剤を1錠タイプとした2剤タイプのOPL78が開発された.そこで2週間頻回交換SHCLを試験レンズとして,OPL78の有用性を評価するための臨床試験を実施したので,その結果を報告する.I対象および方法1.対象2009年1月26日~2009年6月30日に,試験の目的と内容の説明を受け,自らの意思で文書による同意を示した被験者65人(男性16名,女性49名,平均年齢33.0±9.8歳)を対象とした.被験者の背景を図1に示す.2.方法a.使用レンズおよび使用化学消毒剤使用した4種類の2週間頻回交換SHCLとその症例数は,アキュビューRオアシスTMが20例40眼,エアオプティクスRが15例30眼,メダリストRプレミアが15例30眼,メニコン2WEEKプレミオが15例30眼であった.これらのSHCLの種類と仕様を表1に示す.各SHCLは原則として2週間ごとに交換した.被験者に対しては,レンズの取り扱い時には手洗いを徹底するよう指導した.使用したポビドンヨード消毒剤OPL78の構成を図2に,使用方法を図3に示す.OPL78-Iは消毒成分と中和・洗浄成分を1つの錠剤としたもので,これを溶解・すすぎ液であるOPL78-IIに溶かして使用した.OPL78の使用説明書によるとこすり洗いの必要はないが,レンズの汚れが多いと認められた被験者には,溶解・すすぎ液(OPL78-II)によるレンズのこすり洗いを指導した.b.観察時期・調査項目と内容OPL78は各SHCLに対して12週間使用させた.調査する項目と内容は,細隙灯顕微鏡による前眼部所見,装用後のレンズ状態,微生物学的検査,被験者へのアンケートである(表2).前眼部所見およびアンケートによる自覚症状は表3表1使用レンズの種類と仕様レンズ名アキュビューRオアシスTMエアオプティクスRメダリストRプレミアメニコン2WEEKプレミオメーカージョンソン&ジョンソンチバビジョンボシュロムメニコンポリマーSenofilconALotrafilconBBalafilconAAsmofilconADk/L値*147138101161含水率(%)38333640ベースカーブ(mm)8.48.68.68.3,8.6装用方法2週間終日装用2週間終日装用2週間終日装用1週間連続装用2週間終日装用*酸素透過率=×10.(9cm/sec)・(mlO2/〔ml×mmHg〕).レンズの種類ケア用品の種類(n=65人)(n=65人)1カ月定期交換SCL*10%1日ディスポーザブルSCL*11%従来型SCL*1%装用経験なし1%77%2週間頻回交換SCL*過酸化水素消毒剤9%使用経験なし5%無記入6%80%MPS**図1被験者背景*SCL:ソフトコンタクトレンズ,**MPS:マルチパーパスソリューション.1312あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(146)の判定基準に従って評価した.装用後のレンズ状態は細隙灯顕微鏡で,汚れと傷の有無を観察した.また,12週間後にOPL78の使いやすさ,SHCLの汚れ落ち,SHCLの装用感についてアンケートを行い,被験者からの評価を得た.試験開始から2週間後にSHCLを回収し,表4に示す手順,方法および判定基準12)で微生物学的評価を行った.眼科領域で臨床的に問題となることの多いStaphylococcusaureus,Pseudomonasaeruginosa,Escherichiacoli,Serratiaspp.を特定菌としこれらが検出された場合は有効性なしとした.なお,増菌培養でのみ検出された菌については陰性として扱った12).c.統計解析手法前眼部所見,自覚症状の評価について試験開始時と12週間後でWilcoxonの符号付順位検定により有意差検定を行った.有意水準は5%とした.II結果1.前眼部所見試験開始時に角膜上皮ステイニング,角膜血管新生,球結膜充血,上眼瞼乳頭増殖,pigmentedslide,dimpleveil,角膜瘢痕を認めた被験者がいたが,すべて軽度であったため表2調査項目と内容調査項目内容開始時2週間後4週間後8週間後12週間後前眼部所見角膜上皮ステイニング,SEALs*,角膜浮腫,角膜浸潤,角膜潰瘍,血管新生,球結膜充血,乳頭増殖●●●●●装用後のレンズ状態傷,汚れ,変形,変色●●●●微生物学的検査表4参照●被験者へのアンケート調査異物感,乾燥感,かゆみ,くもり,その他●●●●●***SEALs:superiorepithelialarcuatelesions.**12週目には被験者に対しアンケートによるOPL78の総合評価も行った.OPL78-I(有核錠)外側:・ポビドンヨード(消毒剤)内側:・亜硫酸ナトリウム(中和剤)・蛋白分解酵素(洗浄剤)OPL78.II(溶解・すすぎ液)・塩化ナトリウム,ホウ酸レンズケース消毒剤OPL78-I中和剤・洗浄剤OPL78-Ⅱレンズケース図2OPL78の構成OPL78-IOPL78-IIOPL78-IIケースにIとIIを入れ,レンズをセットする.4時間以上放置する.装用IIを入れ替え,すすぎ操作をする.色が消える消毒中(オレンジ色)消毒完了(無色)左右に振る図3OPL78の使用方法(147)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101313試験を行った.これらの所見の程度は,試験開始時と12週間後に差を認めなかった.試験中に,superiorepithelialarcuatelesions(SEALs)が1眼,球結膜充血が2眼認めたが,いずれも軽度であった(表5).2.装用後のレンズ状態SHCLの汚れは2週間後では22眼(16.9%)に観察されたが,12週間後には9眼(6.9%)と減少した.汚れを認めたSHCLを装用していた被験者のうち,汚れが多いためこすり操作を指示した者は2週間後の観察時で4名,4週間後で7名,8週間後で4名であった.SHCLの傷を2週間後以降2~7眼(1.5~5.4%)に認めたが,すべて軽度で,装用中止に至る例はなかった.金属の付着を1眼と塗料の付着を1眼認めた(図4).試験期間中に変形などの異常を認めなかった.3.微生物学的検査今回,検査を行った130検体中,すべての症例で特定菌(S.aureus,P.aeruginosa,E.coli,Serratiaspp.)は検出されなかった.130検体中128検体で総検出菌数が0~103(cfu/ml)未満,2検体が103~105(cfu/ml)未満であり,解析対象症例の98.5%がきわめて有効,1.5%が有効であった(表6).有効2検体から検出された菌は,Staphylococcus属とCorynebacterium属であった.4.被験者へのアンケート調査自覚症状については,ほぼ良好にレンズが使用できるといった回答がほとんどであった.自覚症状として乾燥感(発現率20.8~34.6%),異物感(発現率3.9~15.4%),かゆみ(発現率0.8~11.5%)の順で多かった.なお,試験開始時と12表3前眼部所見と自覚症状の判定基準1)前眼部所見判定基準A)角膜所見角膜ステイニング(範囲)0:ステイニングなし1:角膜表面の1.25%のステイニング2:角膜表面の26.50%のステイニング3:角膜表面の51.75%のステイニング4:角膜表面の76.100%のステイニング(密度)0:ステイニングなし1:密度が低いステイニング2:密度が中等度のステイニング3:密度が高いステイニングSEALs0:なし1:軽度2:中度3:重度角膜実質の細胞浸潤・潰瘍0:なし1:細胞浸潤2:潰瘍角膜浮腫0:なし1:上皮の浮腫2:実質の浮腫(Descemet膜皺襞を含む)3:角膜全体の浮腫角膜血管新生0:なし1:角膜輪部から2mm未満2:角膜輪部から2mm以上3:角膜輪部から2mm以上多方向または実質内血管新生B)結膜所見球結膜充血0:なし1:1/2未満2:1/2以上3:全周上眼瞼乳頭増殖0:なし1:円蓋部結膜のみ2:円蓋部結膜+瞼結膜1/2未満3:円蓋部結膜+瞼結膜1/2以上その他0:なし1:軽度2:中度3:重度2)自覚症状判定基準0:なし(気になる自覚症状なし)1:軽度(時々気になる自覚症状はあるが,ほぼ良好)2:中度(常時気になる自覚症状はあるが,休止なし)3:重度(常時強い自覚症状があり,装用できない)1314あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010(148)週間後のかゆみには,有意差を認めた(p=0.0128)が,他の症状については認めなかった(図5).レンズの装用感や汚れ落ち,OPL78の使いやすさについては非常に良いあるいは良いと回答した被験者が77~80%で,被験者のOPL78の継続使用意向は68%であった(図6).III考按新素材のSHCLの消毒剤としてOPL78を用いて,65例130眼を対象に12週間の経過観察を行い,OPL78の臨床上の有用性について検討した.OPL78の消毒成分であるポビドンヨードは,水溶液中で有効ヨウ素(I2,I3.)を遊離する.この有効ヨウ素は細胞に対して高い浸透性を有し,膜蛋白質,酵素蛋白質,核蛋白質のチオール基を酸化することにより殺菌作用を発揮する.ポビドンヨードは広い範囲の微生物に有効でありながら,皮膚刺激性がほとんどないため,粘膜面や手指,皮膚の消毒など臨床的に広く利用されている.ポビドンヨードはSCL用化学消毒剤としても開発されたが,細菌,真菌,アカントアメーバ,ウイルスに対する消毒効果が高いだけでなく,安全性も高いことが報告されている4,5).今回の臨床試験では130検体中すべての症例で,臨床で問題となることの多いS.aureus,P.aeruginosa,E.coli,Serratiaspp.が検出されなかった.128検体がきわめて有効,2検体が有効で,この2検体から検出された菌はおもに結膜.や皮膚の常在菌と考えられるStaphylococcus属とCorynebacterium属で,これらを分離培養したのちOPL78の消毒液に105~6cfu/mlを負荷したところ,すべての菌が死滅した.被験者が自らケアを行ったレンズを中和後の液が入ったケースごと回収して微生物学的検査を行ったが,レンズケースに消毒液が充満していなかったので,消毒液が接触しなかったケース内面に付着した菌が検出された可能性がある.微生物学的検査の結果と試験期間中に被験者に感染症を疑う症状や所見がなかったことから,OPL78はSHCLの消毒剤として有効だと評価する.試験期間中の細隙灯顕微鏡で観察された前眼部所見は,SCLやSHCL装用者に比較的多く認められる所見であるが,これらはすべて軽度なものであった.SHCLとPHMBを含むMPSの組み合わせで,角膜ステイニングを発生することがある13,14).これはレンズに含有する消毒剤の成分が角膜上皮細胞に影響するためで,硬めのSHCLが機械的に角膜を刺激することも影響していると考えられている13).今回の試験では,角膜ステイニングは範囲・密度とも試験開始時と12週間後で変化がなかったが,OPL78は消毒成分を中和し,かつ装用前にすすぎを行うため,消毒剤の成分がレンズに含有することは少ないためと考える.日本で最初にポビドンヨード消毒剤として製品化されたクレンサイドRは,従来素材のSCL使用者に遅発性の薬剤アレルギー様所見を認めることがあった15).OPL78はクレンサイドRと消毒成分や中和成分,洗浄成分が同一であるが,SHCLを対象とした今回の試験においては同様の所見は確認されなかった.従来素材のSCLとSHCLの素材の違いはあるが,遅発性のアレルギー所見については12週間という短期間では評価できない.したがって,長期間の使用にあたっては注意が必要である.なお,本試験期間中に,有害事象として麦粒腫を1眼に認めたが,OPL78との因果関係は明らかでないため,副作用と判定しなかった.表4微生物学的検査の手順,方法,判定基準検査手順①ケア後,レンズケース内のレンズを採取する②各レンズを2mlDPBS入り滅菌PPtubeに移す③Vortex-mixerで1分攪拌する④攪拌後,レンズおよび攪拌液を検体として培養する検体培養方法①トリプチケースソイ5%羊血液寒天培地35℃,24~48時間培養②チョコレートII寒天培地37℃,5%CO2,24~48時間培養③チオグリコレート培地35℃,7日間増菌培養④SCD寒天培地35℃,5日間培養(CL埋没)①②は攪拌後液200μlを使用,③は残液全量を使用.判定基準12)OPL78消毒後CLの微生物学的検査結果特定菌*の検出総検出菌数(cfu/ml)極めて有効検出せず0~103未満有効検出せず103~105未満有効性なし検出105以上*特定菌:S.aureus,P.aeruginosa,E.coli,Serratiaspp.(149)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101315表5前眼部所見症状程度*1観察時期p値*2開始時2週間後4週間後8週間後12週間後角膜ステイニング範囲0123105眼223097眼276094眼3600104眼2600103眼25200.9094角膜ステイニング密度01231052230973210943240104224010325200.8832SEALs0123130000129100130000130000129100─角膜浸潤・潰瘍0123130000130000130000130000130000─角膜浮腫0123130000130000130000130000130000─角膜血管新生01231263101281101281101281101281100.1797球結膜充血0123130000130000129100130000130000─上眼瞼乳頭増殖01231264001264001272101264001282000.1797その他*30123124600124600124600123700124600─*1:程度の判定は表3を参照.*2:検定方法:Wilcoxonの符号付順位検定(開始時と12週間後),─:開始時と12週間後ともに程度が0,または症例数などから検定不可であったもの.*3:その他の内訳:pigmentedslide,dimpleveil,角膜瘢痕.レンズ枚数(枚)*※重複あり2211758822296353025201510502週間後4週間後8週間後12週間後観察時期付着物金属付着物塗料■:汚れ■:傷■:その他図4装用後のレンズ状態*各時期全130枚中汚れ,傷などが認められたレンズの枚数.1316あたらしい眼科Vol.27,No.9,2010装用後のレンズ状態について,汚れが認められる例があった.OPL78は洗浄剤として蛋白分解酵素などを含むが,脂質汚れが付着しやすいSHCLに対しては洗浄力が十分ではない場合がある.この場合には,OPL78の溶解・すすぎ液によるこすり洗いを行うよう指導する必要がある.他の観察時期と比較して2週後にレンズの汚れが多く観察されたが,その原因は明らかではなかった.今回の試験で初めてSHCLを装用する被験者が多かったため,慣れるまでに眼の分泌物(150)表6微生物学的検査総検出菌数(cfu/ml)項目0~103未満103~105未満105以上検体数*12820特定菌検出せず検出せず─判定極めて有効有効─*増菌培養によってのみ検出された菌は陰性として扱った.(n=130枚)140120100806040200眼数(眼)開始時2週4週8週12週観察時期(n=130眼)140120100806040200眼数(眼)開始時2週4週8週12週観察時期(n=130眼)140120100806040200眼数(眼)開始時2週4週8週12週観察時期(n=130眼)140120100806040200眼数(眼)開始時2週4週8週12週観察時期(n=130眼)*:p≦0.05■程度0:なし■程度1:軽度■程度2:中度■程度3:重度103p=0.4024p=0.0128*p=0.5862p=0.463187402385989339283644541乾燥感かゆみ異物感くもり12011011412512217138233571129116115122120112142188112212112312412586352425図5被験者へのアンケート調査(自覚症状)レンズの装用感レンズの汚れ落ちOPL78の使いやすさ■:非常に良い■:良い■:普通■:悪い■:非常に悪い使用感継続使用意向使いたくない1%0%20%40%60%80%100%(n=65人)(n=65人)1720262412332133513どちらでもよい31%使いたい68%図6被験者へのアンケート調査(総合評価)あたらしい眼科Vol.27,No.9,20101317が増加した可能性も考えられる.自覚症状の訴えは,乾燥感,異物感,かゆみの順に多かった.試験開始時と12週間後のかゆみの程度については有意差があったが,自覚症状はほとんどが軽度で,SHCLの装用を中止するものではなかった.これらの自覚症状は,他のSHCLの臨床報告でもみられるもので,忍田らは1カ月交換SHCLを過酸化水素剤で消毒して3カ月間経過観察した試験結果を報告しているが,自覚症状は乾燥感(発現率10.3~33.3%),異物感(10.3~20.5%),かゆみ(5.1~7.7%)の順に多く,発現率も同様であった16).今回の異物感についても前述したSHCLの汚れや,SHCLの機械的刺激が主とした原因であったと考える.CLのケアは定められた方法を遵守することが求められるが,ポビドンヨード消毒剤についても3剤の添加が必要な従来の消毒操作の簡便化が望まれていた4).OPL78の使用法はOPL78-IをOPL78-IIに溶かして使用するが,今回の試験のアンケート調査で使いやすさは77%の被験者が非常に良いあるいは良いと回答した.レンズの汚れ落ちや装用感については被験者の80%が非常に良いあるいは良いと回答した.これらのことから被験者の68%がOPL78の継続使用の意向を示し,総合的に高い評価を得た.以上のことから,OPL78はSHCL消毒剤として有効性が高く,安全で,操作性も良く,有用であると考える.文献1)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス.日眼会誌110:961-972,20062)福田昌彦:コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.あたらしい眼科26:1167-1171,20093)植田喜一,柳井亮二:コンタクトレンズケアの現状と問題点.あたらしい眼科26:1179-1186,20094)柳井亮二,植田喜一,田尻大治ほか:細菌・真菌に対するポビドンヨード製剤の有効性.日コレ誌47:32-36,20055)柳井亮二,植田喜一,田尻大治ほか:アカントアメーバおよびウィルスに対するポビドンヨード製剤の有効性.日コレ誌47:37-41,20056)柳井亮二,植田喜一,戸村淳二ほか:家兎角膜に対するポビドンヨード製剤の安全性.日コレ誌47:120-123,20057)YanaiR,YamadaN,UedaKetal:EvaluationofPovidone-iodineasadisinfectantsolutionforcontactlenses:Antimicrobialactivityandcytotoxicityforcornealepithelialcells.ContactLensAntEye29:85-91,20068)KilvingtonS:Antimicrobialefficacyofapovidoneiodine(PI)andaone-stephydrogenperoxidecontactlensdisinfectionsystem.ContactLensAntEye27:209-212,20049)松田賢昌,杉江祐子,塚本光雄ほか:新しいソフトコンタクトレンズ消毒システムOPL7の臨床評価~第1報グループIレンズを用いた試験~.眼紀52:687-701,200110)杉江祐子,松田賢昌,塚本光雄ほか:新しいソフトコンタクトレンズ消毒システムOPL7の臨床評価~第2報グループIVレンズを用いた試験~.眼紀52:702-713,200111)稲葉昌丸,西川博彰,岩崎和佳子ほか:OPL7のソフトコンタクトレンズ装用者に対する使用経験.あたらしい眼科15:295-305,199812)宮永嘉隆:ソフトコンタクトレンズ用化学消毒液BL-49の臨床評価.日コレ誌38:258-273,199613)植田喜一,稲垣恭子,柳井亮二:化学消毒剤による角膜ステイニングの発生.日コレ誌49:187-191,200714)糸井素純:マルチパーパスソリューションとシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとの組み合わせで見られる角膜ステイニングの評価.あたらしい眼科26:93-99,200915)植田喜一:ポビドンヨード製剤(クレンサイド)による角結膜障害が疑われた4例.日コレ誌47:193-196,200516)忍田太紀,伏見典子,澤充ほか:シリコーンハイドロゲルレンズ(HiDk)の臨床試験報告.日コレ誌49:35-43,2007(151)***