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眼窩先端部症候群7例の原因と臨床経過の検討

2024年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科41(9):1135.1140,2024c眼窩先端部症候群7例の原因と臨床経過の検討小林嶺央奈*1,2渡辺彰英*2外園千恵*2*1舞鶴赤十字病院眼科*2京都府立医科大学眼科学教室CInvestigationoftheCausesandClinicalCoursesin7CasesofOrbitalApexSyndromeReonaKobayashi1,2)C,AkihideWatanabe2)andChieSotozono2)1)DepartmentofOphthalmology,JapaneseRedCrossSocietyMaizuruHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC眼窩先端部症候群に必要な初期対応を明らかにするため,2009.2020年に京都府立医科大学附属病院眼科を受診したC7例の原因,治療,臨床経過を後ろ向きに検討した.患者の内訳は男性C6例,女性C1例,平均年齢C71歳,原因は副鼻腔炎C2例,眼窩先端部腫瘍C3例,特発性眼窩炎症とCTolosa-Hunt症候群がC1例であった.副鼻腔炎のC2例はともに真菌性で抗真菌薬投与を行うも失明した.腫瘍C3例はびまん性大細胞型CB細胞性リンパ腫,眼窩副鼻腔腫瘍,眼窩炎症性偽腫瘍で,リンパ腫に対し化学療法,炎症性偽腫瘍に対しステロイドパルス療法を行い,炎症性偽腫瘍例で視力が改善した.眼窩副鼻腔腫瘍は生検で確定診断に至らず,腎機能障害のためステロイド治療を行えず失明した.特発性眼窩炎症,Tolosa-Hunt症候群にステロイドパルス療法を行い視力が改善した.眼窩先端部症候群が疑われる際は迅速に画像検査を行い,副鼻腔に病変があれば耳鼻咽喉科での速やかな生検が必要である.CPurpose:ToCinvestigateCtheCcausesCandCclinicalCcoursesCinC7CcasesCofCorbitalCapexsyndrome(OAS)C.CCasereport:Thisstudyinvolved7OAScases(6males,1female;meanage:71years)seenatKyotoPrefecturalUni-versityCofCMedicine,CKyoto,CJapanCfromC2009CtoC2020.CCausesCincludedsinusitis(2cases)C,CorbitalCapextumors(3cases),idiopathicorbitalin.ammation(1case)C,andTolosa-Huntsyndrome(1case)C.Inthe2sinusitiscases,bothfungal,CblindnessCoccurredCdespiteCantifungalCtreatment.CTheC3CtumorCcases,Crespectively,CinvolvedCaCdi.useClargeCB-cellClymphoma,CanCorbitalCethmoidCsinusCtumor,CandCanCin.ammatoryCpseudotumor.CChemotherapyCwasCper-formedforthelymphomacase,andcorticosteroidpulsetherapywasadministeredforthein.ammatorypseudotu-morCcase.CImprovementCinCvisionCwasCobservedCinCtheCin.ammatoryCpseudotumorCcase.CCorticosteroidCpulseCimprovedvisionintheidiopathicorbitalin.ammationandTolosa-Huntsyndromecases.Conclusion:RapidtestingforfungalsinusitisisvitalwhenOASissuspected,andimagingandabiopsybyanotolaryngologistisnecessaryinthepresenceofsinuslesions.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(9):1135.1140,C2024〕Keywords:眼窩先端部症候群,副鼻腔炎,真菌感染,ステロイドパルス.orbitalapexsyndrome,sinusitis,fungalinfection,steroidpulse.Cはじめに眼窩先端部症候群は眼窩部から眼窩深部の病変により視神経管および上眼窩裂を走行する神経が障害され,全眼球運動障害と視力障害をきたす疾患である.類縁疾患として眼球運動障害と三叉神経の障害による知覚麻痺を主体とする上眼窩裂症候群や海綿静脈洞症候群があるが,眼窩先端部症候群の疾患概念としては,眼球運動障害や三叉神経障害に加えて視神経障害をきたしたものが本症候群と定義される1)(図1).原因は副鼻腔炎やサルコイドーシス,ANCA関連血管炎,炎症性疾患,感染症,腫瘍,肥厚性硬膜炎など多岐にわたる.とくに真菌性副鼻腔炎が原因の場合は致死率が高く,注意が必要である2).国内での眼窩先端部症候群について複数症例をまとめた報告は少ない3.5).今回筆者らは眼窩先端部症候群のC7症例について原因,臨床経過について検討し,必要な初期対応について若干の知見を得たので報告する.〔別刷請求先〕小林嶺央奈:〒624-0906京都府舞鶴市字倉谷C427舞鶴赤十字病院眼科Reprintrequests:ReonaKobayashi,DepartmentofOpthalmology,MaizuruRedCrossHospital,427Kuratani,Maizuru,Kyoto624-0906,JAPANC眼球運動障害上眼窩裂症候群三叉神経第1枝の刺激症状・知覚麻痺海綿静脈洞症候群眼窩先端部症候群視神経障害図1眼窩先端部症候群の類縁疾患(今日の眼科疾患治療方針第3版.679-680,医学書院,2016,BadakereCA,CPatil-ChhablaniP:Orbitalapexsyndrome:Areview.EyeBrainC11:63-72,C2019より改変)表1対象症例のまとめ症例性別年齢原疾患治療治療前視力治療後視力再発C1男性C71真菌性副鼻腔炎CESSCVRCZCVD=(0C.2)CVD=SL-なしC2男性C78真菌性副鼻腔炎CESSCAMPH-BCVS=30Ccm/CFCVS=SL-なしC3男性C74CDLBCLR-CHOP療法CVS=(0C.5)CVS=(0C.8)なしC4男性C75炎症性偽腫瘍CMPSLpuluseCVS=30Ccm/CF不明不明C5男性C85眼窩副鼻腔腫瘍経過観察CVS=(0C.8)CVS=SL+不明C6女性C76Tolosa-Hunt症候群CMPSLpulseCVS=(0C.6)CVS=(0C.7)なしC7男性C66特発性眼窩炎症CMPSLpulseCVD=(C0.15)CVD=(0C.8)なしMPSL:methylprednisolone,ESS:endoscopicsinussurgery,VRCZ:voriconazole,AMPH-B:amphoteri-cin,DLBCL:di.uselargeB-celllymphoma.I方法2009年C1月.2020年C12月に京都府立医科大学附属病院眼科(以下,当科)を受診し,眼窩先端部症候群と診断した7症例について診療録をもとに原因,治療,臨床経過を検討した.画像検査で眼窩先端部に病変を認め,動眼神経麻痺や外転神経麻痺による眼球運動障害,三叉神経第一枝の障害のいずれかの障害に加えて視神経障害があったものを眼窩先端部症候群と診断した.II結果7例の内訳は男性C6例,女性C1例,年齢はC66.85歳(平均C71.7C±6.3歳)であった(表1).原因となった疾患は,副鼻腔炎がC2例,眼窩先端部腫瘍がC3例,Tolosa-Hunt症候群がC1例,特発性眼窩炎症がC1例であった(図2).副鼻腔炎C2例はともに真菌性副鼻腔炎であり,耳鼻咽喉科での内視鏡下副鼻腔手術(endoscopicCsinussurgery:ESS)による生検で真菌塊を認めた.症例C1の原因真菌はCAsper-gillusCfumigatusであったが,症例C2は生検部位より真菌が検出されたが真菌の種類を同定することはできなかった.症例C1は他科入院中に視力低下がみられ,当科紹介となった.当科初診時の右眼矯正視力はC0.2であったが軽度白内障を認めるのみで,眼瞼下垂および眼球運動障害を認めなかった.その数日後より眼瞼下垂,眼球運動障害を生じ,画像検査で副鼻腔炎および眼窩先端部に占拠性病変を認め(図3),耳鼻咽喉科のCESSで真菌塊を認めたことから抗真菌薬による治療が開始された.視力低下を自覚してからすでに約C3週間が経過しており,治療の効果は乏しく失明となった.症例C2は左眼の眼瞼下垂と視力低下の症状から始まり,次第に悪化して全眼球運動障害を呈したため画像検査を行った図3症例1における頭蓋内MRIT1強調画像(Ca),T2強調画像(Cb).水平断画像(Cb)で眼窩部に低信号の病変を認める.T2強調STIR画像(Cc).右篩骨洞後方から眼窩先端部および海綿静脈洞にかけて病変を認める.ところ,蝶形骨洞内に軟部陰影を認めた(図4).しかし,症状が出現してから受診までの日数が長く,抗真菌薬による治療が開始されるまで約C1カ月が経過しており,投薬の効果なく失明となった.眼窩先端部腫瘍によるC3症例はそれぞれ,びまん性大細胞型CB細胞性リンパ腫(di.useClargeCB-celllymphoma:DLBCL),炎症性偽腫瘍,眼窩副鼻腔腫瘍であった.症例C3は,篩骨洞の軟部陰影が骨破壊を伴い,眼窩先端部や海綿静脈洞へ進展していた.耳鼻咽喉科でのCESS術中所見から真菌感染が疑われたため抗真菌薬による治療が開始されたが,生検結果からCDLBCLと診断されたため,血液内科へ紹介となり化学療法が行われた.矯正視力は白内障手術が行われた影響もあり,治療前後でC0.5からC0.7まで改善した.症例C4は,前医にて心臓カテーテル治療の入院中に視野欠損を自覚,視力が光覚弁となり精査加療のため当院へ紹介となった.MRI検査を行ったところ眼窩先端部に炎症性腫瘤を認めた.副鼻腔炎を認めず,採血上も真菌感染は否定的であったため,診断的治療としてステロイドパルス療法を行った.指数弁まで視力は回復したが,その後は前医へ転院され,前医にてステロイドパルス療法継続となったため治療後の視力は不明である.症例C5は,眼窩および篩骨洞後方の骨破壊を伴う腫瘍であった(図5).耳鼻咽喉科での生検では炎症細胞の浸潤や肉芽組織,線維性組織を認めるのみで積極的に腫瘍を疑う病理結果ではなく,確定診断に至らなかった.病変が広範囲にわたり手術不可能であったこと,透析中で腎機能障害があることを考慮し,ステロイド治療を行わずに経過観察の方針となった.当科初診時の視力は裸眼視力でC0.8であったが,眼窩先端部への病変の進展により光覚弁となった.Tolosa-Hunt症候群の症例6,特発性眼窩炎症の症例C7の2症例はステロイドパルス療法が行われた.症例C6は治療前後で視力はC0.6からC0.7とわずかな改善がみられたのみであbcd図4症例2におけるCT・MRI画像a,b:CT画像.左蝶形骨洞内から眼窩先端部に軟部陰影および,左内側壁の骨破壊を認める.Cc,d:MRI画像.T2強調画像(Cd)で左蝶形骨洞および眼窩先端部に低信号の病変を認める.った.一方,症例C7では治療前後でC0.15からC1.0と著明な視力改善を認め,眼球運動障害の改善も認めた.CIII考按眼窩先端部症候群は眼窩部から眼窩深部の病変により視力低下や眼球運動障害をきたす比較的まれな疾患である.原因は多岐にわたり,原因疾患によって治療方針も異なる.原因検索のため,MRIやCCT,必要に応じて造影検査も追加する.また,血液検査で全血液計測やCCRP,肝・腎機能に加え,ANCA関連血管炎やサルコイドーシス,IgG4関連疾患,悪性リンパ腫などを考慮した検査を行う.今回の検討で真菌性副鼻腔炎が原因となったC2例は,その他の症例と比較して視機能の改善に乏しく,重篤な経過となった.既報でも副鼻腔炎が原因となる眼窩先端部症候群のうち,とくに真菌感染症によるものは重篤な転機をたどった報告もあり注意が必要である6.9).真菌性副鼻腔炎は周辺部組織に浸潤する浸潤型と,周辺浸潤を伴わない非浸潤型に分けられる.浸潤型副鼻腔真菌症はC2.3%とまれであるが10)頭蓋内にまで及んだ浸潤型眼窩先端部症候群では死亡例も報告されている6).また,真菌感染のなかでも頻度の高いCAsper-gillusCfumigatusは空気中の胞子から体内に吸入されることで感染し,さらに血管との親和性が高いため血管壁を突破し全身へ散布される.血栓症や動脈瘤,膿瘍といった合併症の報告もあり6.8)早期の診断と治療が重要と考えられる.真菌感染症による副鼻腔炎が原因となった眼窩先端部症候群を画像所見のみで診断することはむずかしい.しかし,真菌性副鼻腔炎では真菌内のアミノ酸代謝産物の鉄,マグネシウム,マンガンが常磁性体効果を有し,T2画像で低信号を示すとされており,画像上の特徴として留意すべきである11,12).また,採血で真菌感染を示唆するCb-Dグルカンが陰性のこともあり9)b-Dグルカンが陰性であるからといって真菌感染の可能性を除外することはできない.本検討でも真菌性副鼻腔炎のC2症例はCb-Dグルカンは陰性であった.そのため速やかに耳鼻咽喉科で副鼻腔手術による病変部位の生検を行い,真菌を証明することが重要となる.越塚らは,診断と治療の時間を要し死亡に至った浸潤型副鼻腔真菌症による眼窩先端部症候群の症例報告から,副鼻腔真菌症での生検の重要性を説いている13).最近では内視鏡手術の発達により安全で低侵襲な生検が行えるようになっており,易感染性患者での眼窩先端部症候群では浸潤型副鼻腔真菌症を念頭に,適切な時期に慎重に内視鏡生検を行う必要性を指摘している.本検討の症例C1は,当初は視力低下のみで眼瞼下垂や眼球運動障害などの症状に乏しく,副鼻腔真菌症による眼窩先端部症候群の診断には至らなかった.視力低下を自覚して数日してから眼瞼下垂や眼球運動障害が出現し,耳鼻咽喉科での内視鏡手術と副鼻腔の生検を行い副鼻腔真菌症の診断に至った.症例C2では画像検査で骨破壊を認め,浸潤型副鼻腔真菌症となっていた.これらのC2症例は既往に糖尿病や慢性腎臓病といった易感染性の全身疾患を有し,ハイリスク患者であった.こうした患者では真菌感染を念頭に,早期の鼻内視鏡による副鼻腔炎の生検が必要であったと考えられる.また,篩骨洞後方や蝶形骨洞など内視鏡手術が困難な深部の病変で生検が困難な場合や,病変部が小さく画像による判断がむずかしい患者では診断に難渋する.こうした症例に対しては患者背景の詳細な聴取や経時的な臨床経過,放射線科医や耳鼻咽喉科医,眼科医の複数の専門医の意見を総合的に判断し,治療方針を決定する必要がある.診断的治療を行う場合は,安易なステロイド投与が感染の悪化を招くことがあるため注意しなくてはならない.炎症性腫瘍やCTolosa-Hunt症候群,特発性眼窩炎症が原因となった症例4,6,7に関してはステロイドパルス療法で視機能の改善がみられた.炎症性疾患が原因である患者に対してはステロイドによる治療を積極的に行うことで良好な視力が得られると考えられる.しかし,悪性リンパ腫や真菌感染ではステロイド治療により一時的に鎮静化しても,その後再燃し病状を悪化させ,結果として予後が悪くなることがある.そのためステロイド治療前に,悪性リンパ腫や真菌感染症による眼窩先端部症候群を否定しておくことが望ましい.画像検査や採血で真菌感染が疑われ,患者背景に易感染性のある場合はステロイド治療を開始する前に,耳鼻咽喉科で病変部位の生検を依頼する必要があると考えられる.以上,当科における眼窩先端部症候群のC7例の原因と臨床図5症例5におけるCT画像眼窩後方の篩骨洞側に骨欠損像を認める.経過を報告した.眼窩先端部症候群のうち真菌感染による副鼻腔炎が原因であった症例は,結果的に抗真菌薬治療開始が遅れたことで視力予後が不良であった.眼窩先端部症候群を疑った際には,まず画像検査にて真菌感染による副鼻腔炎が原因であるかどうかを疑い,副鼻腔に病変があれば速やかに耳鼻咽喉科へ依頼し生検を施行することが重要である.また,副鼻腔炎を伴わない場合はその他の原因疾患を想起し検査を進め,適切な診断および治療につなげる必要がある.文献1)KjoerI:ACcaseCofCorbitalCapexCsyndromeCinCcollateralCpansinusitis.ActaOphthalmolC23:357,C19452)TurnerJH,SoudryE,NayakJVetal:SurvivaloutcomesinCacuteCinvasiveCfungalsinusitis:aCsystematicCreviewCandquantitativesynthesisofpublishedevidence.Laryngo-scopeC123:1112-1118,C20083)二宮高洋,檜森紀子,吉田清香ほか:東北大学における眼窩先端部症候群C19例の検討.神経眼科36:404-409,C20194)藤田陽子,吉川洋,久冨智朗ほか:眼窩先端部症候群の6例.臨眼59:975-981,C20055)中島崇,青山達也,奥沢巌ほか:眼窩尖端症候群をきたした数例についての解析.臨眼32:930-936,C19786)津村涼,尾上弘光,末岡健太郎ほか:浸潤型蝶形骨洞アスペルギルス症による死亡例と生存例.あたらしい眼科C39:1256-1260,C20227)YipCCM,CHsuCSS,CLiaoCWCCetal:OrbitalCapexCsyndromeCdueCtoCaspergillosisCwithCsubsequentCfatalCsubarachnoidChemorrhage.SurgNeurolIntC3:124,C20128)戸田亜以子,坂口紀子,伊丹雅子ほか:副鼻腔真菌症に続発した海綿静脈洞血栓症と内頸動脈瘤による眼窩先端部症候群のC1例.臨眼72:1277-1283,C20189)甘利達明,澤村裕正,南館理沙ほか:非浸潤型副鼻腔アスペルギルス感染症により視神経症を呈したC1例.臨眼C74:C907-912,C2020C10)FukushimaT,ItoA:Fungalinfection.JpnClinMedC41:CneseCde.ciencyCinAspergillusCniger:evidenceCofC84-97,C1983CincreasedCproteinCdegradation.CArchCMicrobialC141:266-11)ZinreichCSJ,CKennedyCDW,CMalatCJCetal:FungalCsinus-268,C1985itis:DiagnosisCwithCCTCandCMRCimaging.CRadiology13)越塚慶一,花澤豊行,中村寛子ほか:眼窩先端症候群を伴C169:439-444,C1988った浸潤型副鼻腔真菌症のC2症例.頭頸部外科C25:325-12)MaCH,CKubicekCCP,CRohrM:MetabolicCe.ectsCofCmanga-332,C2015***

インフルエンザワクチン接種後に発症した抗MOG 抗体陽性 視神経脊髄炎の1 例

2021年2月28日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(2):206.213,2021cインフルエンザワクチン接種後に発症した抗MOG抗体陽性視神経脊髄炎の1例多田香織*1伴由利子*1大槻陽平*1内田真理子*1山口達之*2*1京都中部総合医療センター眼科*2京都中部総合医療センター脳神経内科ACaseofAnti-MyelinOligodendrocyteGlycoprotein(MOG)AntibodyPositiveNeuromyelitisOpticaFollowingSeasonalIn.uenzaVaccinationKaoriTada1),YurikoBan1),YoheiOtsuki1),MarikoUchida1)andTatsuyukiYamaguchi2)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,2)DepartmentofNeurology,KyotoChubuMedicalCenterC近年,抗ミエリンオリゴデンドロサイトプロテイン(MOG)抗体は,抗アクアポリンC4抗体陰性視神経脊髄炎や再発性視神経炎の一部で陽性になることが明らかとなり,注目されている.今回,インフルエンザワクチン接種後に発症した抗CMOG抗体陽性視神経脊髄炎の症例を経験したので報告する.症例はC22歳,女性,インフルエンザワクチン接種のC1週間後に両下肢の感覚異常,左眼視力低下,眼痛を自覚した.初診時,VD=1.2(1.5),VS=0.3(1.0),中心フリッカー値は右眼C36CHz,左眼C20CHz,左眼相対的瞳孔求心路障害陽性,視野検査で両眼のCMariotte盲点の拡大と左眼の傍中心暗点がみられた.頭部・眼窩・全脊髄CMRIの所見より視神経脊髄炎と診断した.ステロイドパルスC1クールで症状は改善傾向を示し,経過中に血清抗CMOG抗体陽性と判明した.抗CMOG抗体陽性視神経脊髄炎は長期の免疫抑制が必要とされる.本症例ではステロイド内服継続により発症C7カ月まで眼症状の再発はない.CPurpose:Toreportacaseofanti-myelinoligodendrocyteglycoprotein(MOG)antibodypositiveneuromyelitisoptica(NMO)thatdevelopedfollowingaseasonalin.uenzavaccination.Case:A22-year-oldfemalewashospital-izedduetoparesthesiainthebilaterallowerextremitiesandreducedvisualacuityinthelefteyewithopticpain1weekCafterCbeingCadministeredCaCseasonalCin.uenzaCvaccination.CTheCcorrectedCvisualCacuityCwasC1.5inCtheCrightCeyeandC1.0CinCtheCleft.CHerCleftCeyetestedCpositiveforCarelativeCa.erentCpupillarydefect.CAvisualC.eldtestshowedanCexpandedCMariotte’sCspotCinCtheCbothCeyesCandCeccentricCscotomaCinCtheCleftCeye.CMagneticCresonanceCimagingCFLAIRimagesrevealedhyperintenselesionsinthecerebralcortex,cervicalspinalcord,andbilateralopticnerve.UnderthediagnosisofNMO,shereceivedsteroidpulsetherapyandhervisionimproved.Aftersteroidpulsether-apy,heranti-MOGantibodywasfoundtobepositivewhileheranti-aquaporin-4antibodywasnegative.Thus,shewasC.nallyCdiagnosedCwithCanti-MOGCantibodyCpositiveCNMO.CConclusion:ContinuousCtreatmentCwithCoralCpred-nisolonesuccessfullysuppressedtherecurrenceofNMO.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)38(2):206.213,C2021〕Keywords:ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG),視神経脊髄炎,ステロイドパルス,抗MOG抗体関連疾患,インフルエンザワクチン接種後.myelinoligodendrocyteglycoprotein(MOG),neuromyelitisoptica(NMO),steroidpulsetherapy,MOGantibody-relateddisease,in.uenzavaccination.Cはじめに視神経脊髄炎における抗アクアポリン(aquaporin:AQP)4抗体の病原性が証明されて以来,とくに自己抗体と視神経炎との関連が注目されている1).近年,抗ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(myelinColigodendrocyteglycoprotein:MOG)抗体は,抗CAQP4抗体陰性視神経脊髄炎や再発性視神経炎の一部で陽性になることがわかってきた2,3).AQP4はアストロサイトに豊富に存在するのに対し,MOGは中枢神経においてミエリン鞘とオリゴデンドロサイトの細胞表面に発現し,神経の髄鞘化,ミエリン構造の維持〔別刷請求先〕多田香織:〒629-0197京都府南丹市八木町八木上野C25京都中部総合医療センター眼科Reprintrequests:KaoriTada,DepartmentofOphthalmology,KyotoChubuMedicalCenter,25YagiuenoYagi,Nantan,Kyoto629-0197,JAPANC206(90)における接着分子として働いている糖蛋白である.免疫原性が強く,MOGが抗原として認識された場合,脳脊髄だけでなく,視神経にも脱髄を生じることがマウスを用いた研究で証明されている4).今回筆者らは,インフルエンザワクチン接種後に発症した抗CMOG抗体陽性視神経脊髄炎の症例を経験したので報告する.CI症例患者:23歳,女性.既往歴,内服歴:とくになし.現病歴:インフルエンザワクチン接種のC2日後から頭痛と起立時の浮動感が出現し,かかりつけ内科を受診したところワクチンの副反応が疑われた.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方され,その後頭痛は軽快した.しかし,ワクチン接種よりC1週間後から両側の手指振戦や上下肢の疼痛が出現(発症C1日目),そのC2日後に左眼の眼痛,眼球運動時痛,見え方が暗いなどの症状が出現したため,かかりつけ内科を再診,近医眼科を受診した.眼科受診時(発症C6日目),視力はCVD=1.2(n.c.),VS=0.7(1.2C×.0.25D)であり,左眼の視力低下および外眼筋と視神経の炎症を指摘されステロイド点眼を処方された.しかし,全身的に症状の改善は乏しく,発症C7日目(ワクチン接種後C13日)にかかりつけ内科より京都中部総合医療センター(以下,当院)脳神経内科に紹介となった.脳神経内科外来初診時の神経学的所見は,意識清明,発語に問題なく,左眼視力低下の訴えがあった.瞳孔や眼球運動に異常はみられず,四肢の麻痺や失調もみられなかった.両側上下肢に姿勢時振戦と異常感覚がみられたが,歩行に問題はなかった.過去に何度もインフルエンザワクチンを接種したことはあるが,このような症状は初めてということであった.初診日に抗CAQP4抗体を調査項目に含めた血液検査を施行し,当日に結果が得られた血算や生化学の一般的な項目は正常範囲内であった.髄液検査ではリンパ球優位の細胞増多がみられ,オリゴクローナルバンドは陰性であったが,中枢神経の髄鞘破壊やその程度の指標であるミエリン塩基性蛋白(myelinbasicprotein:MBP)は測定限界値を超える高値であった.胸部CX線,心電図に異常所見はみられなかった.図1頭部・眼窩MRIa:発症C7日目の頭部CMRIFRAIR画像.両側大脳に白質病変が多発している(.).b:発症C7日目の眼窩MRIガドリニウム(gadolinium:Gd)造影像.両側視神経の腫脹,蛇行,異常濃染がみられる.Cc:ステロイドパルスC1クール後C10日目の頭部CMRIFRAIR画像.初診時に多数みられた大脳白質病巣はいずれも縮小した(.).d:ステロイドパルスC1クール後C3日目の眼窩CMRIGd造影像.右側で若干の造影効果が残存していたが,左側優位にみられた視神経の腫脹および異常造影効果は明らかに改善した.図2脊髄MRI(T2強調画像)a:発症C8日目.3椎体にわたる脊髄に高信号がみられる.Cb:発症C9日目.頸髄の高信号領域はおよそC6椎体長まで拡大した.Cc:発症C9日目.脊髄円錐部にも高信号域が出現した.Cd:cの脊髄円錐の病変の拡大画像.Ce:ステロイドパルスC1クール後C10日目.脊髄の異常陰影は消退した.a図3眼底写真a:眼科初診時.両眼とも視神経乳頭の境界は不明瞭で,とくに左眼の乳頭腫脹が著しい.Cb:ステロイド加療後(発症後C5カ月).両眼の視神経乳頭腫脹は消退した.ab同日,精査加療目的で脳神経内科に入院となった.翌日(発症C8日目)のCMRIでは,頭部のCFRAIR画像で大脳に多発する白質病変がみられ(図1a),年齢から虚血は考えにくいため脱髄性疾患が疑われた.さらに,頸椎C3椎体にわたり脊髄の腫脹およびCT2強調画像で高信号を呈し(図2a),脊髄炎の病態であった.この頃には左眼だけなく右眼の見えにくさの自覚も出現しており,MRIでも両眼視神経の腫脹,蛇行,およびガドリニウム(gadolinium:Gd)造影像で異常濃染が図4光干渉断層計(OCT)a:眼科初診時(CirrusHD-OCT,CarlZeissMeditec).黄斑部の水平断(上段)では異常所見はみられず,とくに左眼に強い視神経乳頭腫脹がみられた(下段右).両眼の黄斑部網膜内層厚(GCC)の経度菲薄化がみられた(下段左).b:ステロイド加療後(発症後C5カ月)(RS-3000Advance,ニデック).黄斑部の水平断(上段)では異常所見はみられず,視神経乳頭腫脹は消退した(下段右)が,両眼の黄斑部網膜内層厚の菲薄化は初診時と比較し進行した(下段左).みられた(図1b).さらにその翌日(発症C9日目)には排尿困難となり,脊椎CMRIで頸髄病変の拡大とともに脊髄円錐にも新たな病変が確認された(図2b~d).同日当院眼科に紹介となり,視力はCVD=1.2(1.5C×.0.5D),VS=0.3(1.0C×.0.75D)と左眼視力は近医受診時より低下していた.中心フリッカー値(critical.ickerfrequency:CFF)は右眼C36Hz,左眼C20CHzととくに左眼で低値であり,左眼相対的瞳孔求心路障害(relativeCa.erentCpupillarydefect:RAPD)陽ab図5動的視野検査a:眼科初診時.両眼のCMariotte盲点の拡大と左眼に散在する傍中心暗点がみられた.Cb:ステロイド加療後(発症後C7カ月).左眼の傍中心暗点は消失し,両眼のCMariotte盲点の軽度拡大が残存している.性であった.前眼部・中間透光体に異常所見はなく,眼底検査で両眼の視神経乳頭の境界は不明瞭で,とくに左眼に著しい乳頭腫脹がみられた(図3a).黄斑部には顕眼鏡的に異常所見はなく,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)では黄斑周囲網膜内層厚の軽度菲薄化がみられた(図4a).動的視野検査では,両眼のCMariotte盲点の拡大と,左眼に散在する傍中心暗点がみられた(図5a).抗CAQP4抗体の結果は未確定の段階であったが,急性視神経脊髄炎の診断で,ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1,000Cmg/日×5日間)を開始した.パルスC1クール終了翌日には,視力CVD=1.0(1.5),VS=0.8(1.5),CFFは右眼C40CHz,左眼35CHzと視機能の回復がみられ,全身症状も改善傾向を示した.ステロイド治療に対する反応は良好であり,後療法としてプレドニゾロン(PSL)40Cmgを開始した.ステロイドパルス療法終了後C3日目に施行した眼窩CMRIでは,右眼で若干の造影効果が残存していたが,左眼優位にみられた視神経の腫脹および異常造影効果は明らかに改善していた(図1d).ステロイドパルス療法終了後C10日目には,初診時に多数みられた大脳白質病巣はいずれも縮小しており(図1c),脊髄の異常陰影は消退した(図2e).発症C17日目に,入院時(発症C7日目)に採取した血液で抗CAQP4抗体が陰性(enzyme-likedCimmune-sorbentassay:ELISA法)と判明した.同保存血清でのCcell-basedassay(CBA)法による抗AQP4抗体の再検と抗CMOG抗体の測定を,東北大学医学部神経内科学教室に依頼した.最終的に治療開始からC1カ月半ほどで抗CMOG抗体陽性の結果を得た.抗CAQP4抗体はCBA法を用いた再検査でも陰性であった.発症後C7カ月が経過しCPSL10Cmg内服中であるが,視力はCVD=1.5(n.c.),CVS=1.5(2.0C×.0.25D),CFFは右眼50Hz,左眼C48Hzと良好であり,乳頭腫脹は改善した(図3b).視野検査では,左眼の傍中心暗点は消失したが,両眼のCMariotte盲点の軽度拡大が残存しており(図5b),OCTでは初診時には軽度であった両眼の黄斑部網膜内層厚の菲薄化の増悪がみられた(図4b下段左).CII考按MOGはミエリン鞘やオリゴデンドロサイトの細胞表面に限局して発現し,細胞外に免疫グロブリン(Ig)様ドメインを有しており,グリア細胞に発現する他の蛋白に比べて自己抗原の標的となりやすい2).そのため実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimentalCautoimmuneencephalomyelitis:EAE)のマウスを作製する際の刺激抗原として利用されている.MOGは,中枢神経系の他の部位より視神経に多く発現していることがマウスで証明されており5),EAEでは脳脊髄のみでなく視神経にも脱髄をきたす4).EAEは多発性硬化症(multiplesclerosis:MS)の動物モデルとして古くから用いられているため,MOGは長い間,MSの標的抗原の一つと推測されてきた.また,従来のCELISA法やウェスタンブロット法で解析された報告では,抗CMOG抗体はCMSの疾患活動性を測るマーカー候補としても注目されてきたが,その結果は報告により大きく異なっていた6,7).さらに近年,CBA法が開発されると,生体内と同じ高次構造で膜上に発現するCMOGに対する抗CMOG-IgG1抗体が特異的に同定できるようになり,最近ではむしろCMSとの関連性は否定的と考えられている8).一方,将来的にCMSとなりうる患者が初めて臨床症状を示した段階をCclinicallyisolatedsyndrome(CIS)とよぶが,この病態とときに鑑別が困難となる疾患に,急性散在性脳脊髄炎(acuteCdisseminatedencephalomyelopathy:ADEM)がある.ADEMは代表的な中枢神経系の脱髄性疾患であり,おもに小児の脳,脊髄,視神経に同時多発的な脱髄性病変を認める.小児例を中心に,多くの症例で先行する感染症やワクチン接種歴を有し,それらを契機とした自己免疫機序が病態に関与していると考えられている.このCADEMを含む小児の中枢神経炎症性脱髄疾患では,高率に抗CMOG抗体が陽性となることが以前から知られていたが,多くは一過性で病的意義は不明であった9).しかし,小児の抗CMOG抗体陽性例の報告が増えるにつれ,その臨床症状は視神経炎による視力障害を伴うことが多く,視神経炎の再発も多いがステロイド反応性がよい症例が多いことがわかってきた.最近では,抗CMOG抗体陽性視神経炎でも感染後CADEM同様に先行感染がみられる症例10)や,ステロイド依存性で両眼性,有痛性の慢性再発性視神経炎(chronicCrelapsingCin.ammatoryopticCneuropathy:CRION)において抗CMOG抗体陽性となる症例の報告11)もあり,抗CMOG抗体関連疾患の臨床像の特徴が解明されつつある.そして近年,視神経脊髄炎関連疾患(neuromyelitisopticaspectrumdisorders:NMOSD)においても,抗CMOG抗体は,抗CAQP4抗体に続く重要な疾患マーカーとして注目されている.抗CAQP4抗体はC2004年にCLennonらにより視神経脊髄炎にみられる特異的な抗体として報告され12),2006年,Wingerchukらによる視神経脊髄炎の改訂基準13)に盛り込まれた.しかしその後,抗CAQP4抗体が陽性であるものの視神経炎単独もしくは脊髄炎単独の発症が多く存在することが判明し,さらにC2012年にはCKitleyらが成人の視神経脊髄炎で抗CAQP4抗体陰性かつ抗CMOG抗体が陽性となるC4例をまとめて報告した14).このことからC2015年に再びCWing-erchukらにより,前述のような症例を包括するCNMOSDの診断基準が提唱された15).この診断基準では抗CAQP4抗体が陽性であることが重要視されているが,抗CAQP4抗体陰性でも,1回以上の臨床的増悪で,少なくともC2つの主要臨床症候があり,空間的多発するCMRI所見がみられた場合,他疾患が除外されればCNMOSDと診断される.本症例では,視神経炎,脊髄炎症状とそれを説明するCMRI画像上での多発する病巣がみられ,経過中に症状,画像所見の増悪がみられた.他疾患の除外について,本症例は,比較的若年でインフルエンザワクチン接種後C1週間での発症であり,とくにワクチン接種後CADEMとの鑑別を要した.鑑別点として,まず本症例ではCADEMの特徴ともされる脳症症状(意識変容や行動変化)を伴わなかった.また,本症例の脊髄病変はC3椎体以上にわたる長病変であり,NMOSDに特徴的といえる.さらに典型的なCADEM症例と比較して回復経過が早かった.以上の点からからワクチン接種後CADEMを除外し,抗CMOG抗体陽性視神経脊髄炎と診断した.本症例では今後,再発の可能性はもちろん,今回の事象がCCISであり,のちにCMSに進行する可能性も完全に否定はできないため,眼症状のみならず全身症状にも注意を向けつつ,他科と連携をとり長期的な経過観察が必要と考える.インフルエンザワクチンと視神経脊髄炎発症との関連性について考えるにあたり,Karussisらによるワクチン接種後炎症性中枢神経系脱髄疾患に関する論文のレビュー16)が参考になる.このレビューでは,1979.2013年に発表された71症例について分析されている.原因となったワクチンでもっとも報告が多かったのはインフルエンザワクチン(21例:30.0%)であるが,これにはC2009.2012年における新型インフルエンザ(H1N1)のパンデミックによるワクチン接種者数増加が影響している可能性が言及されている.ワクチン接種から発症までの平均期間はC14.2日であり,いずれの症例においてもワクチン接種と発症の因果関係を証明する手段は明確にされていないが,時間的な関係性からワクチン接種が原因とされている.興味深いことに,全C71例では半数以上に,インフルエンザワクチンが関与しているC21例ではC8例に視神経炎がみられた.視神経炎の原因を考える際に,ワクチン接種の既往は重要な要因であることを知っておく必要がある.また,2014年に世界で初めてわが国から,インフルエンザ感染後に発症した抗CMOG抗体陽性脊髄炎の症例が報告された10).症例はC32歳男性,インフルエンザCA型に罹患し,オセルタミビル内服加療で症状は回復したが,インフルエンザ感染C9日日目に全身の痛み,尿閉,下肢の筋力低下で抗MOG抗体陽性脊髄炎を発症した.視神経炎は伴わず,ステロイド加療で経過良好であった.この症例は,インフルエンザウイルスに対する免疫反応と抗CMOG抗体との関連の可能性を示唆しており,大変興味深い.2019年C10月に,2015年から日本神経眼科学会を中心に行われた視神経炎の疫学調査結果が発表された17).日本全国のC33施設で非感染性視神経炎と診断された症例から,虚血性,圧迫性,遺伝性,中毒性視神経炎を除外したC531例を対象に,その特性について調査した.その結果,531例中,血清検査での抗CAQP4抗体陽性例がC66例(12%),抗CMOG抗体陽性例がC54例(10%)と同程度であり,両抗体陰性例がC410例(77%),両抗体陽性例がC1例であった.発症平均年齢は抗CAQP4抗体陽性群でC52.5(13.84)歳,抗CMOG抗体陽性群の平均年齢はC47.0(3.82)歳,両抗体陰性群で47.5(4.87)歳と明らかな差はみられなかった.しかし,抗AQP4抗体陽性群は年齢の増加とともに増加し,抗CMOG抗体陽性群はC40歳代とC60歳代に,両抗体陰性群はC50歳代にピークがみられ,各群の年齢分布には差がみられた.また,抗CAQP4抗体陽性群ではC84%が女性であったのに対し,抗MOG抗体陽性群ではC51%であった.治療前視力は抗CAQP4抗体陽性例で優位に低く,指数弁の割合も優位に高かったが,治療前視力から抗CAQP4抗体の予測ができるほどの特異性はなかった.抗CMOG抗体陽性群では眼痛,視神経乳頭腫脹をきたす症例の割合が他群に比べ優位に高く(76%),これはCMRI所見で,抗CMOG抗体陽性視神経炎の炎症が視神経全長にわたる,もしくは視神経前方に病変が限局する症例が多いことからも説明される.一方,抗CAQP4抗体陽性視神経炎では球後型が多く,眼痛も少なく,MRI所見でも視神経後方に病変が限局する傾向にあり,視神経乳頭腫脹は視神経炎の鑑別において重要な所見であることがわかった.治療反応性は他群に比べ抗CMOG抗体陽性群でよい結果であった.ステロイド治療による視力改善が良好であっても,なかには視野障害が残存する症例があること,抗CMOG抗体と抗CAQP4抗体の双方が陽性となる症例では,ステロイド抵抗性で再発を繰り返す傾向にあり,視力予後が非常に悪い症例があることなども報告されるため18)注意が必要である.抗CAQP4抗体は一度陽性になると数年にわたり陽性であることが多いが,抗CMOG抗体は発症早期や寛解期に測定しても検出されにくく,陽性となる期間が短く限られている19).本症例では,ステロイド治療開始前の発症C7日目に採取した血液で抗CAQP4抗体陰性(ELIZA法)であり,その結果を受け,同保存血清で抗CMOG抗体検査を依頼したところ,CBA法で陽性であった.ほかにも初発時には陰性でも再発時に陽性となった視神経炎症例の報告20)もあり,抗CMOG抗体の検出には検査のタイミングも重要となる.わが国における全国調査が終了し,抗CMOG抗体陽性例の臨床的特徴が少しずつ解明されつつある.治療方針を決定するうえでも,抗体の存在を確認しておくことは有用であると考える.今後,さらなる症例の蓄積および長期経過観察による抗CMOG抗体の臨床的意義,治療予後を含む疾患概念の確立,ガイドラインの作成が待たれる.謝辞:本症例における抗CMOG抗体を測定していただきました東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学講座高橋利幸先生に深謝いたします.文献1)LennonVA,WingerchukDM,KryzerTJetal:Aserumautoantibodymarkerofneuromyelitisoptica:distionctionfrommultiplesclerosis.LancetC364:2106-2112,C20042)KezukaCT,CUsuiCY,CYamakawaCNCetal:RelationshipCbe-tweenCNMO-antibodyCandCanti-MOGCantibodyCinCopticCneuritis.JNeuro-OphthalmolC32:107-110,C20123)SatoDK,CallegaroD,Lana-PeixotoMAetal:DistinctionbetweenMOGantibody-positiveandAQP4antibody-pos-itiveCNMOCspectrumCdisorders.CNeurologyC82:474-481,C20144)ShaoCH,CHuangCZ,CSunCSLCetal:Myelin/oligodendrocyteCglycoprotein-speci.cCT-cellsCinduceCsevereCopticCneuritisCinCtheCC57BL/6mouse.CInvestCOphthalmolCVisCSciC45:C4060-4065,C20045)BettelliCE,CPaganyCM,CWeinerCHLCetal:MyelinColigoden-drocyteCglycoprotein-speci.cCTCcellCreceptorCtransgenicCmiceCdevelopCspontaneousCautoimmuneCopticCneuritis.CJExpMedC197:1073-1081,C20036)BergerCT,CRubnerCP,CSchautzerCFCetal:AntimyelinCanti-bodiesCasCaCpredictorCofCclinicallyCde.niteCmultipleCsclero-sisCafterCaC.rstCdemyelinatingCevent.CNCEngCJCMedC349:C139-145,C20037)KuhleCJ,CPohlCC,CMehlingCMCetal:LackCofCassocitionCbe-tweenCantimyelinCantibodiesCandCprogressionCtoCmultipleCsclerosis.NEnglJMedC356:371-378,C20078)WatersCP,CWoodhallCM,CO’ConnorCKCCetal:MOGCcell-basedCassayCdetectsCnon-MSCpatientsCwithCin.ammatoryCneurologicCdisease.CNeurolCNeuroimmunolCNeuroin.ammC2:e89,C20159)OC’ConnorCKC,CMcLaughlinCKA,CDeCJagerCPLCetal:Self-antigenCtetramersCdiscriminateCbetweenCmyelinCautoanti-bodiesCtoCnativeCorCdenaturedCprotein.CNatCMedC13:211-217,C200710)AmanoCH,CMiyamotoCN,CShimuraCHCetal:In.uenza-associatedMOGantibody-positivelongitudinallyextensivetransversemyelitis:aCcaseCreport.CBMCCNeurologyC14:C224-227,C201411)西川優子,奥英弘,戸城匡宏ほか:抗CMOG抗体が強陽性であったCChronicCrelapsingCin.ammatoryCopticneuropa-thy(CRION)のC1例.神経眼科C33:27-33,C201612)LennonVA,WingerchukDM,KryzerTJetal:AserumautoantibodyCmarkerCofCneuromyelitisoptica:distinctionCfrommultiplesclerosis.LancetC364:2106-2112,C200413)WingerchukCDM,CLennonCVA,CPittockCSJCetal:RevisedCdiagnosticCcriteriaCforCneuromyelitisCoptica.CNeurologyC66:1485-1489,C200614)KitleyCJ,CWoodhallCM,CWatersCPCetal:Myelin-oligoden-drocyteglycoproteinantibodiesinadultswithaneuromy-elitisopticaphenotype.NeurologyC79:1273-1277,C201215)WingerchukDM,BanwellB,BennetJLetal:Internation-alCconsensusCdiagnosticCcriteriaCforCneuromyelitisCopticaCspectrumdisorders.NeurologyC85:177-189,C201516)KarussisCD,CPetrouP:TheCspectrumCofCpost-vaccinationCin.ammatoryCNSdemyelinatingsyndromes.AutoimmunRevC13:215-224,C201417)IshikawaH,KezukaT,ShikishimaKetal:Epidemiologi-calCandCclinicalCcharacteristicsCofCopticCneuritisCinCJapan.COphthalmologyC126:1385-1398,C201918)NakajimaH,MotomuraM,TanakaKetal:AntibodiestomyelinColigodendrocyteCglycoproteinCinCidiopathicCopticCneuritis.CBMJCOpenC5:e007766,doi:10.1136/bmjopen-2015-007766,C201519)MiyauchiCA,CMondenCY,CWatanabeCMCetal:PersistentCpresenceCofCtheCanti-myelinColigodendrocyteCglycoproteinCautoantibodyinapediatriccaseofacutedisseminateden-cephalomyelitisfollowedbyopticneuritis.NeuropediatricsC45:196-199,C201420)毛塚剛:抗CMOG抗体─眼科の立場から.眼科59:7-12,C2017C***

著明な視力回復がみられた外傷性眼球脱臼の1 例

2011年2月28日 月曜日

300(14あ6)たらしい眼科Vol.28,No.2,20110910-1810/11/\100/頁/JC(O0P0Y)《原著》あたらしい眼科28(2):300.302,2011cはじめに眼球脱臼とは,眼球が眼窩中隔の外に出て,視神経・外眼筋・球結膜などの眼球付着物がある程度付着保存されているものと定義されている1).突発的な外傷あるいは自傷行為が原因の外傷性眼球脱臼については,国内外ともに報告は少なく,ほとんどが1例報告である1~9).海外の報告例では光覚消失6),眼球癆7,8)や眼球摘出9)など,その視力予後は不良なものが大多数を占めている.今回筆者らは,外傷性の眼球脱臼で受診時に光覚を消失していたにもかかわらず,最終的に良好な視力回復が得られた症例を経験したので報告する.I症例患者:70歳,男性.主訴:左眼球突出,視力低下.現病歴:2009年11月30日19時ごろ,飲酒後に風呂場で転倒.浴槽の角に左眼を強打し視力低下を自覚した.近医を受診したところ左眼球脱臼を認めたため,同日23時に当院救急外来に搬送された.既往歴:アルコール性肝障害.初診時眼科所見:視力;RV=0.7(1.2×+1.25D(cyl.0.75DAx60°),LV=光覚なし.左眼直接対光反射消失.左眼球は上下眼瞼縁を越えて露出しており,耳側および鼻側の結膜裂傷を認めた(図1a,b).前眼部で左角膜びらんを認めたが,中間透光体は異常なかった.左眼網膜色調は良好であった.Computedtomography(CT)で,外直筋の眼球付着部での断裂が疑われた.視神経断裂の有無は,CTでは詳細不明であった.眼窩骨折は認められなかった(図1c).臨床経過:外来処置室において,1%キシロカインRで眼〔別刷請求先〕原克典:〒693-8501出雲市塩冶町89-1島根大学医学部眼科学講座Reprintrequests:KatsunoriHara,M.D.,DepartmentofOphthalmology,ShimaneUniversityFacultyofMedicine,89-1Enya-cho,Izumo,Shimane693-8501,JAPAN著明な視力回復がみられた外傷性眼球脱臼の1例原克典谷戸正樹児玉達夫高井保幸太根ゆさ松岡陽太郎大平明弘島根大学医学部眼科学講座MarkedRecoveryofVisioninaCaseofTraumaticGlobeLuxationKatsunoriHara,MasakiTanito,TatsuoKodama,YasuyukiTakai,YusaTane,YotarouMatsuokaandAkihiroOhiraDepartmentofOphthalmology,ShimaneUniversityFacultyofMedicine光覚消失後に良好な視力回復が得られた,外傷性眼球脱臼の1例を経験した.症例は70歳,男性.飲酒後に風呂場で転倒した際に浴槽の角で左眼を打ち付け,左眼球脱臼をきたした.当院受診時,左眼は光覚なく,対光反射は消失していた.受傷後4時間で眼球を整復し,翌日からステロイドパルス治療を行った.受傷後5カ月で左眼視力は1.2に回復した.左視神経乳頭近傍の網脈絡膜萎縮と,それに一致する視野欠損を残した.良好な視力予後に寄与する要因として,①早期の脱臼整復,②視神経断裂・網膜中心動脈閉塞がない,③ステロイドパルス治療の可能性が考えられた.A70-year-oldmale,whiletakingabath,struckthecornerofthebathtubwithhisface,causingglobeluxationofhislefteye.Intheinitialexaminationatemergencyroom,visualacuitywasnolightreception,andtheleftpupildidnotrespondtolightstimulation.Thepatientunderwentrepositioningofhisleftglobe4hoursaftertheinjury,thenreceivedintensivesteroidtherapyfor3days.At5monthsaftertheinjury,visualacuityhadrecoveredto1.2.Fundusandvisualfieldexaminationsrevealedparapapillaryretinochoroidalatrophyandcorrespondingscotomainhislefteye.Promptrepositioningoftheeyeglobeaftertheinjury,absenceofopticnerveavulsionandcentralretinalarteryocclusion,anduseofsteroidmedicationarepossibleexplanationsofthegoodvisualacuityprognosisinthiscase.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(2):300.302,2011〕Keywords:外傷性眼球脱臼,眼球整復,網脈絡膜萎縮,視力回復,ステロイドパルス.traumaticglobeluxation,repositioningofeyeglobe,retinochoroidalatrophy,recoveryofvision,steroidpulsetherapy.(147)あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011301球周囲と眼窩内に浸潤麻酔を行った後,デマル(Desmarres)鈎を用いて眼瞼縁を眼球前方に牽引し,眼球整復を行った(図1d).受傷から整復までに要した時間は約4時間であった.整復直後に左眼視力は光覚ありとなったが,上外転障害を認めた.整復後に撮影したMRI(磁気共鳴画像)では,左眼球がやや内転位を呈し,左外直筋の眼球付着部付近での連続性が不明瞭となっていた.視神経に関しては,眼窩内での連続性は保たれていたが,眼窩尖端部から視神経管レベルでの左視神経描出が対側に比べ不良であり,同部位での損傷が示唆された.受傷翌日,手術室において左眼外直筋整復術を図1症例の経過観察a,b,c:初診時の顔写真(a:正面,b:左側面)と頭部CT(c).左眼眼球脱臼を認める.d:整復術直後の顔写真.眼球脱臼は整復されている.e,f:受傷後5カ月の左眼眼底写真(e)とGoldmann視野(f).視神経乳頭近傍の網脈絡膜萎縮とそれに一致する暗点を認める.acebdf302あたらしい眼科Vol.28,No.2,2011(148)試みた.術中,上直筋の断裂を認めたが断端は確認できなかった.外直筋は不全断裂の状態で,挫滅が高度なため縫合処置を行えなかった.術後,左眼視力は手動弁であった.整復術当日よりプリドールR1,000mg/日で,ステロイドパルス治療を3日間施行した.受傷5日目に左眼矯正視力は0.03に改善した.Goldmann視野検査で,左眼の視野狭窄,Mariotte盲点に連続する絶対暗点,および中心比較暗点を認めた.9方向眼位では,上外転障害のため,正面視で軽度内下転位となっていた.その後,左眼矯正視力は受傷4週後に0.4,8週後に0.6,12週後には1.0と回復していった.受傷5カ月後,左眼矯正視力1.2まで改善した.左内斜視は残存していた.眼底検査で,左視神経乳頭下耳側に網脈絡膜萎縮がみられた(図1e).Goldmann視野検査では,網脈絡膜萎縮に一致した暗点を認めた(図1f).網脈絡膜萎縮は,同部位の支配血管である短後毛様動脈の障害に起因すると考えられた.視力回復に伴い,複視の症状が出現した.Worth4灯検査で遠見,近見ともに同側性複視の所見がみられたが,日常視においては,近見でのみときどき複視を自覚した.網脈絡膜萎縮に一致した暗点が,複視の自覚を軽減している可能性が考えられた.頭位の異常なく,プリズム眼鏡装用による自覚症状の改善は認めなかった.II考按1983年以降,わが国で発表された外傷性眼球脱臼症例の報告は5例ある(表1)1~5).そのうち1例は眼球摘出,3例は最終視力で光覚を消失しており,1例のみに1.0の視力回復を認めている.これらの症例報告の受傷状況と今回の症例から,外傷性眼球脱臼で,良好な視力予後に寄与する要因として,つぎの3点の可能性が考えられた.1つ目は,受傷早期に脱臼整復を行うことである.視力予後の良かった外江らの症例では受診後ただちに整復を行っていた3).筆者らの症例でも受傷後約4時間と比較的早い時期での整復を施行していた.ただし,光覚を消失した症例も比較的早期に脱臼整復を行っており,整復におけるcriticaltimeは明らかでなく,今後の症例の蓄積が待たれる.2つ目は,受傷時に視神経断裂や網膜中心動脈閉塞症のように高度な視機能障害が存在していないことである.視力予後が不良であった4例のうち,3例に網膜中心動脈閉塞症が確認され,1例で視神経断裂が併存していた.3つ目は,ステロイド治療の有無である.5例中4例でステロイド加療は行われていなかった.筆者らの症例では,眼球整復後にステロイドパルス治療を施行している4).ステロイド治療の有効性については症例報告が限られているため断定はできないが,外傷時の視神経および視神経周囲の炎症性浮腫の軽減と,それに伴う循環改善が良好な視力予後に寄与したと考えられた.過去の報告例では加療にもかかわらず,ほとんどが失明している.光覚なしから矯正視力1.2まで回復した筆者らの症例は非常にまれであったと考えられる.受傷時の眼窩内損傷の程度は偶発的であるが,受傷後ただちに眼球を整復し,ステロイドパルス療法を行うことが,良好な視力予後に寄与する可能性がある.文献1)福喜多光一:外傷性眼球脱臼の1例.臨眼81:777-780,19872)福原晶子,大原輝幸:眼球保存できた外傷性眼球脱臼の1例.臨眼82:1505-1508,19883)外江理,上野山さち,雑賀司珠也ほか:外傷性眼球脱臼の1例.臨眼46:1172-1174,19924)鈴木由美,川久保洋,島田宏之ほか:外傷性眼球脱臼の1例.眼科38:605-609,19965)鈴木崇弘,山家麗,赤塚一子ほか:外傷性眼球脱臼に対し眼球整復術を施行した1例.臨眼57:833-835,20036)BajajMS,PushkerN,NainiwalSKetal:Traumaticluxationoftheglobewithopticnerveavulsion.ClinExperimentOphthalmol31:362-363,20037)KiratliH,TumerB,BilgicS:Managementoftraumaticluxationoftheglobe.Acasereport.ActaOphthalmolScand77:340-342,19998)AlpB,YanyaliA,ElibolOetal:Acaseoftraumaticglobeluxation.EurJEmergMed8:331-332,20019)LelliGJJr,DemirciH,FruehBR:Avulsionoftheopticnervewithluxationoftheeyeaftermotorvehicleaccident.OphthalPlastReconstrSurg23:158-160,2007表1わが国での外傷性眼球脱臼の報告報告年報告者年齢・性別眼底所見受傷機転受診時視力退院後視力整復までの時間ステロイド治療1987福喜多ら15歳・男性CRAO木の枝LS(.)LS(.)約3時間(.)1988福原ら10歳・女性CRAO転倒LS(.)LS(.)受傷当日(.)1992外江ら10歳・男性特記異常なし鉄棒0.03(n.c.)0.7(1.0)受診後ただちに(.)1996鈴木由美ら27歳・男性CRAO鉄パイプLS(.)眼球摘出(+)2003鈴木崇弘ら58歳・女性視神経断裂ハンドルに殴打LS(.)LS(.)受傷当日(.)2011原ら(本報)70歳・男性特記異常なし転倒LS(.)0.5(1.2)約4時間(+)CRAO:centralretinalarteryocclusion,LS:光覚.