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In vitro におけるコンタクトレンズに付着した蛋白質に 対するソフトコンタクトレンズ用消毒剤のレンズケア効果

2021年2月28日 日曜日

《原著》あたらしい眼科38(2):191.196,2021cInvitroにおけるコンタクトレンズに付着した蛋白質に対するソフトコンタクトレンズ用消毒剤のレンズケア効果鈴木崇*1糸川貴之*1堀江隆至*2内田薫*2堀裕一*1*1東邦大学医療センター大森病院眼科*2日本アルコン株式会社CInvitroCEvaluationofLensCareE.ectofSoftContactLensDisinfectionSolutionontheProteinDepositedContactLensesCTakashiSuzuki1),TakayukiItokawa1),TakashiHorie2),KaoruUchida2)andYuichiHori1)1)DepartmentofOphthalmology,SchoolofMedicine,TohoUniversity,2)AlconJapanLtd.C目的:ソフトコンタクトレンズ(SCL)に付着した蛋白質や脂質などの付着物は,眼アレルギー,眼不快感ならびに角膜感染症の原因となるため,SCLから付着物を適切に除去する必要がある.そこで今回,5種類のCSCL用消毒剤を用いて,invitroにおける頻回交換のCSCLに付着した蛋白質のレンズケア効果を検討した.対象および方法:試験コンタクトレンズ(CL)には,SCLのCeta.lconAおよびシリコーンハイドロゲルCCLのCseno.lconAを用いた.涙液組成を模したリン酸緩衝液(PBS)を含んだプラスチック試験管に試験CCLを移し,蛋白質が付着した試験CCLを準備した.過酸化水素剤(HP剤),ポビドンヨード剤(PI剤),3種類のマルチパーパスソリューション(MPS)およびCPBSを用いてCeta.lconAのレンズケアを実施した.レンズケアおよび測定順序をランダム化し,レンズケア時間は各CSCL用消毒剤の最短消毒時間とした.レンズケア後に試験CCLから蛋白質を抽出し,MicroBCAproteinassaykitにて分光光度計で吸光度を測定し,試験CCLに付着した蛋白質量を定量した.結果:試験CCLに付着した蛋白質量は,Cseno.lconAのC7.8C±1.1Cμg/レンズに比べてCeta.lconAはC1,089.0C±98Cμg/レンズと有意に多かった.5種類のCSCL用消毒剤ならびにCPBSでのレンズケア後のCeta.lconAに付着した蛋白質量は,それぞれC528.1C±88Cμg/レンズ,758.1C±155Cμg/レンズ,858.5C±218Cμg/レンズ,730.4C±140Cμg/レンズ,841.1C±257Cμg/レンズ,727.5C±160Cμg/レンズでレンズケア前よりも減少した.5種類のCSCL用消毒剤においては,HP剤に対してCPI剤およびC3種類のCMPS間で有意差を認めた(対応のないCt検定p<0.05).結論:InvitroにおけるCeta.lconAに付着した蛋白質はC5種類のCSCL用消毒剤でのレンズケア効果が認められた.HP剤はCPI剤やC3種類のCMPSに比べて,eta.lconAに付着した蛋白質に対するレンズケア効果が有意に優れていることが示された.CObjective:DepositsCsuchCasCproteinsCandClipidsCadheringCtoCsoftCcontactlenses(SCLs)causeCocular-relatedCallergy,discomfortandinfections.Thus,itisnecessarytohavethemappropriatelyremoved.Inthisinvitrostudy,weexaminedthee.ectoflenscareproteinsadheringtofrequentreplacementtypesofSCLbyusing5SCLdisin-fectionCsolutions.CCasesCandCmethods:ThisCstudyCinvolvedCeta.lconCACandCseno.lconCACsiliconeChydrogelCSCLs.CThestudySCLsweretransferredtoaplastictesttubecontainingaphosphatebu.er(PBS)simulatingtearcom-position,CandCaCstudyCSCLCtoCwhichCtheCproteinCwasCattachedCwasCprepared.CLens-careCtestCsolutionsCwereCexam-inedforthehydrogenperoxide(HP)C,thepovidone-iodine(PI)C,3typesofmulti-purposesolutions(MPS)andPBS.Lens-careCofCtheCeta.lconCACSCLsCwasCmadeCwithCdisinfectionCsolutions.CTheClens-careCandCmeasurementCorderCwererandomized,andthelens-caretimewastheshortestdisinfectingtimeofeachdisinfectantusedfortheSCLs.Afterlens-care,theproteinwasextractedfromtheSCLs,andtheabsorbancewasmeasuredandquanti.edbyaspectrophotometerusingaMicroBCAproteinassaykit.Results:TheamountofproteinattachedtostudySCLswasC1089.0±98Cμg/lensforeta.lconA,whichwassigni.cantlyhigherthan7.8±1.1Cμg/lensforseno.lconA.TheamountCofCproteinCadheringCtoCeta.lconCACafterClensCcareCwithCtheC5SCLCdisinfectionCsolutionsCandCPBSCwasC〔別刷請求先〕鈴木崇:〒143-8541東京都大田区大森西C6-11-1東邦大学医療センター大森病院眼科Reprintrequests:TakashiSuzuki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,SchoolofMedicine,TohoUniversity,6-11-1Omori-Nishi,Ohta-ku,Tokyo143-8541,JAPANC528.1±88Cμg/lens,C758.1±155Cμg/lens,C858.5±218Cμg/lens,C730.4±140Cμg/lens,C841.1±257Cμg/lens,CandC727.5±160Cμg/lens,Crespectively.CTheCamountsCofCproteinCadheringCtoCeta.lconCACwasClowerCthanCpriorCtoClensCcare.CRegardingthe5SCLdisinfectionsolutions,astatisticalsigni.cantdi.erencewasdemonstratedamongHP,PIand3CMPS(unpairedt-testp<0.05)C.Conclusion:InthisinvitroCstudy,lens-caree.ectofproteinattachedtoeta.lconACwasCobservedCwithCtheC5SCLCdisinfectants.CItCwasCshownCthatCHPCwasCsigni.cantlyCsuperiorCtoCPICandCtheC3typesofMPSinregardtothelenscaree.ectontheproteinattachedtoeta.lconA.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(2):191.196,C2021〕Keywords:ソフトコンタクトレンズ用消毒剤,蛋白質汚れ,過酸化水素剤,ポビドンヨード剤,マルチパーパスソリューション.softcontactlensdisinfectionsolution,proteindeposits,hydrogenperoxide,povidoneiodine,multi-purposesolution.Cはじめにソフトコンタクトレンズ(softcontactlens:SCL)やシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ(siliconeChydrogelCcontactlens:SHCL)は,視力および整容補正,眼表面疾患の治療などを使用目的として普及してきた1,2).1日交換とC1週間連続装用タイプ以外の頻回交換タイプのCSCLやCSHCLにおいては適切なレンズケアが必要である3).レンズケアにはCSCL用消毒剤が多く使用されており,有効成分の観点からC3種類に分類される.1種類目は,塩化ポリドロニム,ポリヘキサニド塩酸塩またはアレキシジン塩酸塩を有効成分とするマルチパーパスソリューション(multi-purposeCsolu-tion:MPS)である4).MPSはその名のとおり,1本で洗浄,すすぎ,保存が可能であるが,洗浄の際にはこすり洗いが必須である.MPSは簡便に使用できるが,一部ユーザーは適切なこすり洗いを実施していないことが報告されている3).2種類目は,白金ディスクやカタラーゼにより中和が必要な過酸化水素(hydrogenCperoxide:HP)を有効成分とするHP剤で,こすり洗いは推奨である.HP剤は消毒効果が高いことが報告されており,白金ディスクで中和するCHP剤は防腐剤が含まれないことから,眼刺激が軽減されることが報告されている5,6).一方,HP剤が適切に中和されない場合は眼表面障害の発生が懸念される7).3種類目は,アスコルビン酸により中和が必要なポビドンヨード(povidoneiodine:PI)を有効成分とするCPI剤で,HP剤と同様にこすり洗いは推奨である8).PI剤も消毒効果が高いと報告されているが,適切に中和されない場合はヨードアレルギーが懸念される8,9).このように,SCL用消毒剤は有効成分に起因する長所ならびに短所はあるが,適切なレンズケアを怠った場合,レンズの汚れによる眼不快感,レンズ装用時の見にくさ,乳頭増殖などのアレルギー症状,アカントアメーバ角膜炎などのCCL関連合併症が発症するため,レンズケアの重要性が報告されている3,10.12).このような背景から,頻回交換タイプのCSCLやCSHCLに付着した蛋白質や脂質などの汚れに対するCSCL用消毒剤によるレンズケア効果について,invitroおよびCexvivoにおいて検討がなされている3,10.12).しかしながら現時点において,PI剤による頻回交換タイプのCSCLやSHCLに付着した蛋白質のレンズケア効果を検討した報告はない.そこで今回,invitroにおける白金ディスクで中和するタイプのCHP剤に対するCPI剤を含むC4種類のCSCL用消毒剤の蛋白質付着に対するレンズケア効果を比較検討した.CI対象および方法試験CCLにはCSCLの原材料ポリマー分類のグループCIVのCeta.lconAおよびグループCV-1のCSHCLであるCseno.lconAを用いた(表1).試験CCLをブリスターパックから取り出し,リン酸緩衝液(phosphateCbu.ersaline:PBS)で試験CLを繰返し洗浄後,報告に従って涙液組成を模したCPBS(表2)を含んだプラスチック試験管に試験CCLを移し,37℃でC16時間浸漬して蛋白質を付着させた試験CCLを準備した13).その後,HP剤,PI剤,MPS-A,MPS-B,MPS-CおよびCPBSを用いて試験CCLのレンズケアを実施した(表3).検体数の設定根拠は,統計的検出力ではなく,実施可能性に基づき各C6枚に設定した.試験手順に基づくバイアスを最小化するため,レンズケアおよび測定の順序をランダム化し,レンズケア時間は各CSCL用消毒剤の最短消毒時間として,置換ブロック法により事前に作製された割付順序に従って実施した.レンズケア後,1Cw/v%ドデシル硫酸ナトリウム(sodiumCdodecylsulfate:SDS)溶液を用いて試験CCLから蛋白質を抽出し,MicroCBCACproteinCassaykitを用いて分光光度計で波長C562Cnmにおける吸光度を測定した.評価項目は,5種類のCSCL用消毒剤のCHP剤,PI剤,MPS-A,MPS-B,MPS-Cでのレンズケア後および対照としたCPBSでの洗浄後の試験CCLに付着した蛋白量(μg/レンズ)とした.吸光度測定のブランクの標準液は,1%炭酸ナトリウムを含むC1Cw/v%CSDS溶液を使用した.MicroBCAproteinassaykitに付属のアルブミン標準サンプルを用いて検量線を作製し,試験CLのC1枚当たりの蛋白質付着量(アルブミンに換算した総蛋白質量)を算出した.操作のばらつきを最小化するため,表1試験CLの概要試験CCLCeta.lconACseno.lconA構成モノマー2-HEMA,CMAAなど2-HEMA,CSiMAA2,mPDMS1000,CDMAなど酸素透過係数*C28C103含水率[%]C58C38**ベースカーブ[mm]8.4,C8.78.4,C8.8直径[mm]C14.0C14.0中心厚[mm](.3.00D)C0.09C0.07SCLの原材料ポリマー分類CIVCV-1*(cm2/sec)×(mlOC2/ml×mmHg)**本研究のベースカーブはCeta.lconAがC8.7,seno.lconAがC8.8のC.3.00Dを使用.表2人工涙液組成組成含有量[mg/ml]TMS-PBS:Dulbecco’sphosphatebu.eredsaline(D8662[Sigma-Aldrich])CaCl2C0.1CMgCl2・C6HC2OC0.1CKClC0.2CKH2PO4C0.2CNaClC8.0CNa2HPO4・C7HC2OC2.16CLipidC0Lysozyme(LC6876-10G[Sigma-Aldrich])C5.3CBovineserumalbuminC3.5TMS:tear-mimickingsolution,PBS:phosphateCbu.eredCsaline.表3本研究で使用した5種類のSCL用消毒剤のレンズケア方法および検体数消毒剤CHPCPICMPS-ACMPS-BCMPS-C洗浄およびすすぎの方法こすり洗いを含めた洗浄およびすすぎ洗いを実施しないこととした.こすり洗いを含めた洗浄およびすすぎ洗いを実施しないこととした.レンズを手のひらにのせ,本剤を数滴つけて,レンズの両面を各々20.C30回指で軽くこすりながら洗うこととした.洗ったレンズの両面を本剤で十分にすすぐこととした.レンズを手のひらにのせ,本剤をC3.C5滴落として片面を人差し指で約C10秒間ていねいに洗浄することとした.裏面も本剤をC3.5滴落として約C10秒間ていねいに洗浄することとした.レンズの両面を本剤ですすぎ,表面の残留物を十分に取り除くこととした.手のひらにレンズをのせ,本剤を数滴つけて,レンズの両面を各々20.C30回指で軽くこすりながら洗うこととした.洗ったレンズの両面を本剤でC5秒以上すすぐこととした.最短消毒時間6時間4時間検体数各C6枚(eta.lconAおよびCseno.lconA)HP:hydrogenperoxide,PI:povidoneiodine,MPS:multi-purposesolution.作業員は操作の途中で交代せずに操作を行うこととした.統計解析は,5種類のCSCL用消毒剤でのレンズケア後およびPBSでの洗浄後の試験CCLに付着している蛋白量(μg/レンズ)について,各群の記述統計量(n,平均値,標準偏差,中央値,最小値,最大値)を算出することとした.一元配置分散分析によりC6群間の群間比較を行うこととした.本研究におけるすべての操作ならびに測定は,住化分析センター株式会社へ委託した.統計処理はCMicrosoftCExcel2016で実施し,記述統計量は正規分布に従っており,対応のないCt検定で実施した.CII結果1.試験CLに付着した蛋白質量試験CCL付着した蛋白質量はCeta.lconAがC1,089.0C±98μg/レンズ,seno.lconAがC7.8C±1.1Cμg/レンズでCeta.lconAが有意に多かった(対応のないCt検定p<0.05,図1).C1,400*1,2001,00080060040020001,089.07.8eta.lconAseno.lconA図1試験CLに付着した蛋白質量各群Cn=6,平均値C±標準偏差[μg/レンズ],*p<0.0001対応のないCt検定.C1,4001,2001,0008006004002000**2.eta.lconAへの蛋白質付着量Eta.lconAへの蛋白質付着量がCseno.lconAに比べて有意に多かったため,PBS,HP剤,PI剤およびC3種類のMPSでのレンズケア後の蛋白質付着量はCeta.lconAで評価することとした.eta.lconAに付着した蛋白質量は,PBSがC727.5C±160μg/レンズ,HP剤がC528.1C±88Cμg/レンズ,PI剤がC758.1C±155μg/レンズ,MPS-AがC858.5C±218Cμg/レンズ,MPS-BがC730.4C±140Cμg/レンズ,MPS-CがC841.1C±257Cμg/レンズで,レンズケア前のCeta.lconAの蛋白質付着量よりも有意に減少した(対応のないCt検定Cp<0.05,図2).また,5種類のCSCL用消毒剤のみでCeta.lconAに付着した蛋白質量を比較すると,HP剤は他の消毒薬に対して有意に低値であった(対応のないCt検定p<0.05,図2).CIII考察わが国では過酸化水素のコールド消毒システムとしてのSCL用消毒剤がC1991年に発売14)されて以来,MPS,HP剤およびCPI剤とC32種類が販売15)されており,頻回交換タイプのCSCLおよびCSHCLユーザーが使用している.SCLやSHCLの販売経路は眼科,CL量販店,眼鏡店,インターネットと多岐3)にわたる.一方,適切なレンズケアを指導されていないことによるCCL関連合併症が問題視されており,Cinvitro10,11)およびCexvivo11,12)におけるCSCL用消毒剤のレンズケア効果,消毒効果および眼表面への影響について報告がなされている.本報告はCinvitroでの結果ではあるものの,PI剤を含むC5種類のCSCL用消毒剤による頻回交換タイプのSCLに付着した蛋白質のレンズケア効果を検討した初めての報告である.***図2レンズケア前後のeta.lconAに付着した蛋白質量の比較各群Cn=6,平均値C±標準偏差[μg/レンズ],*p<0.05対応のないCt検定.HP:hydrogenperoxide,PI:povidoneCiodine,MPS:multi-purposesolution,PBS:phosphatebu.ersaline.土至田らは,正の電荷を帯びているリゾチームは負の電荷を帯びているイオン性CSCLに引き付けられるため,SCLの原材料ポリマー分類のグループCIIIおよびCIVのCSCLに蛋白質が付着しやすい傾向であると報告している13).本研究でも,eta.lconAのほうがCSHCLのCseno.lconAよりもレンズC1枚当たりの蛋白質付着量は有意に多かったことは,eta-.lconA中のカルボキシル基由来の負の電荷と本研究で使用した蛋白質類中の正の電荷との静電気的な相互作用が影響したものと考えた15,16).Kielは過酸化水素剤の分解時の酸素の発泡力は蛋白質の洗浄効果を示すと報告している17).Kielらの研究における試験レンズであったCvi.lconAにおいて,酸素バブリングまたは触媒ディスクなしの過酸化水素システム溶液で循環させたレンズよりも,過酸化水素システム溶液および触媒ディスクありで循環させたレンズから有意に多くの蛋白質が除去されたと報告している.HP剤の触媒ディスクありの条件,中和されたCHP剤の酸素バブルおよびCHP剤の触媒ディスクなしの条件での結果を比較した.その結果,試験レンズのCvi.l-conAの洗浄前での蛋白質付着量がC598C±184Cμg/レンズであったのに対して,HP剤の触媒ディスクありがC360C±52Cμg/レンズ,HP剤の酸素バブルがC471C±81Cμg/レンズ,HP剤の触媒ディスクなしがC464C±128Cμg/レンズであった.これらの結果に基づき,HP剤の触媒ディスクありはCHP剤の酸素バブルおよびCHP剤の触媒ディスクなしに比べて有意にCvi.lconAの蛋白質付着量が少なかったと報告している17).また,RequenaらはCHP剤が蛋白質の構造変化をもたらすと報告している18).以上から,本研究で使用した試験CCLのCeta.lconAに付着した蛋白質のCHP剤によるレンズケア効果は,HP剤の中和時における発泡力および蛋白質構造変化に起因するものと考えた17,19).岡田らは,実臨床のCCL装用眼におけるCSCLへの蛋白質の付着量は,invitroにおけるCSCLへの蛋白質付着量と異なり,その可能性としてCCL装用の場合は涙液中のリゾチーム以外の種々の蛋白質,脂質および無機物の相互作用による影響が考えられると報告している20).土至田らは,CL装用者の眼の状態,涙液中の蛋白質や脂質の種類やそれらの濃度,CL装用状況,生活環境要因や化粧品使用状況なども関与するため,invitroの結果がCinvivoにおけるCCL装用中の状況と同等の結果が得られるか否かの判断はむずかしいものの,研究の傾向を認識するという観点で有意義であったと報告している13).本研究もCinvitroにおける評価のため,exCvivoにおける頻回交換タイプのCSCLやCSHCLに付着した蛋白質量を正確に反映しているか否かは本研究結果のみでは判断できないが,こすり洗いが推奨であるCHP剤およびCPI剤,こすり洗いが必須であるCMPSのC3種類での試験CCLに付着した蛋白質の洗浄性能を理解するためには,有意義な結果であると考えた.本研究の結果から,頻回交換タイプのレンズ素材中に負の電荷を有するCSCLに付着した蛋白質起因の眼アレルギー症状や眼不快感を軽減するためには,HP剤はCPI剤および本研究で使用したC3種類のCMPSに比べて有用なSCL用消毒剤と考えられた.一方,今後の研究では,こすり洗いを実施した後でCSCL用消毒剤によるレンズケア効果や,CL装用後の頻回交換タイプのCSCLやCSHCLに付着した蛋白質のレンズケア効果の検討が必要と考えた.本研究でCeta.lconAに付着した蛋白質に対するC5種類のSCL用消毒剤のレンズケア効果が認められた.HP剤はCPI剤ならびに本研究で使用したC3種類のCMPSに比べて,レンズ素材中に負の電荷を有するCSCLのCeta.lconAに付着した蛋白質に対するレンズケア効果が優れていることが示された.利益相反:本研究は日本アルコン株式会社による研究資金にて実施した.文献1)日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドライン編集委員会:コンタクトレンズ診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌118:557-591,C20142)奥野賢亮,井上智之,堀裕一ほか:眼表面疾患に対するシリコーンハイドロゲルレンズの治療的使用に関する検討.臨眼64:1533-1538,C20103)宇野敏彦,福田昌彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜症全国調査.日眼会誌115:107-115,C20114)WaltherCH,CSubbaramanCLN,CJonesL:E.cacyCofCcontactClensCcareCsolutionsCinCremovingCcholesterolCdepositsCfromCsiliconeChydrogelCcontactClenses.CEyeCContactCLensC45:C105-111,C20195)LievensCW,KannarrS,ZootaLetal:LidpapillaeimproveC-mentCwithhydrogenperoxidelenscaresolutionuse.OptomVisSciC93:933-942,C20166)WaltersCR,CMcAnallyCC,CGabrielCMCetal:ComparisonCofCtheCantimicrobialCe.cacyCofChydrogenCperoxideCandCpovi-doneiodidecontactlenscareproducts.AAOptC20197)福田正道,北川和子,佐々木一之:ソフトコンタクトレンズ用消毒剤の細胞毒性の検討.日コレ誌C32:39-42,C19908)Martin-NavarroCM,Lorenzo-MoralesJ,Lopez-ArencibiaAetal:Acanthamoebaspp.:E.cacyofBioclenFROneStepR,apovidone-iodinebasedsystemforthedisinfectionofcontactlenses.ExpParasitolC126:109-112,C20109)植田喜一:CLフィッティングケースバイケースポビドンヨードアレルギーが認められたケース.日コレ誌C47:C293-294,C200510)PuckerAD,NicholsJJ:Impactofarinsesteponproteinremovalfromsiliconehydrogelcontactlenses.OptomVisSciC86:943-947,C200911)OmaliCNG,CSubbaramanCLN,CColes-BrennanCCCetal:Bio-logicalCandCclinicalCimplicationsCofClysozymeCdepositionConCsoftcontactlenses.OptomVisSciC92:750-757,C201512)NegarCBO,CHeynenCM,CSubbaramanCLNCetal:ImpactCofClensCcareCsolutionsConCproteinCdepositionConCsoftCcontactClenses.OptomVisSciC93:963-972,C201613)土至田宏,村上晶,下川幸恵:シリコーンハイドロゲルレンズのタンパク質および脂質に対する付着性の評価.日コレ誌54:111-115,C201214)小玉裕司:ケア用品の基礎知識.日コレ誌C42:S11-S16,C200015)小玉裕司,梶田雅義,植田喜一ほか:コンタクトレンズデータブック第C3版.メジカルビュー社,201416)TakahashiCD,CUchidaCK,CIzumiT:ActivitiesCofClysozymeCcomplexedwithpolysaccharideandpotassiumpoly(vinylalcoholsulfate)withvariousdegreesofesteri.cation.PolymBullC67:741-751,C201117)KielJS:Proteinremovalfromsoftcontactlensusingdis-infection/neutralizationCwithChydrogenCperoxide/catalyticCdisc.ClinTherC15:30-35,C199318)RequenaCJR,CDimitroyaCMN,CLegnameCGCetal:OxidationCofCmethionineCresiduesCinCtheCprionCproteinCbyChydrogenCperoxide.ArchBiochemBiophysC432:188-195,C200419)三村達哉,須永鷹博,溝田淳:過酸化水素水によるCCL付着花粉の洗浄効果.アレルギーの臨床C40:60-69,C202020)岡田栄一,松田智子,横山哲朗ほか:ソフトコンタクトレンズに付着する涙液中タンパク質成分の解析.日コレ誌C49:C238-242,C2007C***