《原著》あたらしい眼科37(3):345?352,2020?ブリモニジン/チモロール配合点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症を対象とした長期投与試験新家眞*1福地健郎*2中村誠*3関弥卓郎*4*1公立学校共済組合関東中央病院*2新潟大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野*3神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野*4千寿製薬株式会社Long-TermE?cacyandSafetyofNovelBrimonidine/TimololOphthalmicSolutioninPatientswithPrimaryOpen-angleGlaucoma(BroadDe?nition)orOcularHypertensionMakotoAraie1),TakeoFukuchi2),MakotoNakamura3)andTakuroSekiya4)1)KantoCentralHospital,TheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,2)DivisionofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofMedicalandDentalSciences,NiigataUniversity,3)DepartmentofSurgery,DivisionofOphthalmology,KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,4)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltdはじめに緑内障は多くの場合きわめて慢性に経過する進行性の疾患で,長期の点眼や定期的な経過観察を要し,かつ自覚症状がないことが多いことから,アドヒアランスの維持は治療の成否に大きくかかわる1).緑内障患者を対象としたアンケート調査では,薬剤数の増加により点眼回数に負担を感じる症例が有意に増え,点眼を忘れる頻度が高くなることが報告されている2).薬剤数および点眼回数を減らすことのできる配合点眼剤は,患者のアドヒアランスを向上させ,治療効果を上げることに貢献することが期待される.〔別刷請求先〕新家眞:〒158-8531東京都世田谷区上用賀6-25-1公立学校共済組合関東中央病院Reprintrequests:MakotoAraie,M.D.,Ph.D.,KantoCentralHospitaloftheMutualAidAssociationofPublicSchoolTeachers,6-25-1Kamiyoga,Setagaya-ku,Tokyo158-8531,JAPAN表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師渡辺眼科医院渡邉広己富士見台眼科浅野由香三橋眼科医院三橋正忠道玄坂加藤眼科加藤卓次成城クリニック松﨑栄医療法人社団はしだ眼科クリニック橋田節子医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功たまがわ眼科クリニック關保医療法人社団富士青陵会なかじま眼科中島徹医療法人社団ムラマツクリニックむらまつ眼科医院村松知幸医療法人社団優あい会小野眼科クリニック小野純治医療法人社団橘桜会さくら眼科松久充子北川眼科医院北川厚子医療法人良仁会柴眼科医院柴宏治医療法人社団優美会川口あおぞら眼科清水潔赤羽しまだ眼科島田典明0.1%ブリモニジン酒石酸塩/0.5%チモロール配合点眼剤(以下,SJP-0135)は,a2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩とb遮断薬であるチモロールマレイン酸塩を有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は,a2受容体を選択的に刺激して,毛様体上皮においてcyclicadenos-inemonophosphate(cyclicAMP)産生を抑制して房水の産生を抑制し,さらに,ぶどう膜強膜流出路を介して房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す3).0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガン点眼液0.1%)は,わが国では2012年に千寿製薬株式会社が承認を得た緑内障治療薬であり,唯一のa2作動薬である.臨床試験においては他の緑内障治療薬と併用することでさらなる眼圧下降効果が得られており4,5),眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている6).チモロールマレイン酸塩はb遮断薬であり,毛様体上皮のb受容体を遮断して,cyclicAMP産生を抑制することにより,房水産生を抑制して眼圧下降効果を示す7,8).0.5%チモロール点眼剤(以下,チモロール)は,わが国では1981年に承認され,プロスタグランジン関連薬とともに第一選択薬として広く使用されている.わが国では,ブリモニジン酒石酸塩点眼剤の使用患者の約6割にb遮断薬が併用されている9).SJP-0135は,作用機序の異なる2成分を配合することにより各単剤よりも強い眼圧下降効果が期待されることに加えて,配合剤に変更することで点眼回数の減少に伴う患者の利便性向上が期待される.さらに,現在,わが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組合せはプロスタグランジン関連薬とb遮断薬,または炭酸脱水酵素阻害薬とb遮断薬の組合せのみであることから,わが国初のa2作動薬を含有した配合点眼剤であるSJP-0135は治療選択肢の拡大に貢献すると考えられる.今回は,SJP-0135の第III相長期投与試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0135を長期点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性について検討したので報告する.I方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,2017年1月?2018年6月に表1に示す全国16医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,本治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第14条第3項および第80条の2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験の実施状況の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMIN000026471).2.目的SJP-0135を52週間点眼したときの眼圧下降効果および安全性の検討を目的とした.3.対象対象は,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,チモロールを4週間投与後の眼圧が15.0mmHg以上で,選択基準を満たし,除外基準に抵触しない患者とした.おもな選択基準および除外基準を表2に示した.なお,すべての被験者から治験参加前に,文書による同意を得た.4.方法a.被験薬被験薬は,点眼液1ml中にブリモニジン酒石酸塩を1.0mg,チモロールを5.0mg(チモロールマレイン酸塩として6.8mg)含有する水性点眼剤である.b.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同非対照非遮閉試験として実施した.観察期開始日から既存の緑内障治療薬をチモロールに切り替え,両眼にそれぞれ1回1滴,1日2回(朝および夜),4週間点眼した後,治療期としてSJP-0135を,両眼にそれぞれ1回1滴,1日2回(朝および夜),52週間点眼した.c.症例数「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について(平成7年5月24日薬審第592号)」に基づき,評価症例数を100例とした.さらに中止脱落率表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも眼圧下降治療(点眼)を受けており,今後も継続が必要な者3)両眼とも最高矯正視力が0.3以上4)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値が15.0mmHg以上31.0mmHg以下おもな除外基準1)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者2)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者3)コンタクトレンズの装用が必要な者4)高度の視野障害がある者5)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者6)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者7)スクリーニング検査日の過去180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon?下注射または結膜下注射を実施した者8)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患(例:肝障害,腎障害,心血管系疾患,内分泌系疾患)を有する者9)気管支喘息,気管支痙攣もしくは重篤な慢性閉塞性肺疾患を有するまたは既往のある者10)コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II,III度)若しくは心原性ショックを有するまたは既往のある者11)肺高血圧による右心不全,うっ血性心不全,糖尿病性ケトアシドーシス,代謝性アシドーシスまたはコントロール不十分な糖尿病のある者12)ブリモニジン酒石酸塩または他のa2作動薬,チモロールマレイン酸塩または他のb遮断薬,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者13)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬および炭酸脱水酵素阻害薬を使用する予定のある者14)その他,治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者を約20%程度と想定し,目標症例数を125例に設定した.5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数および臨床検査の各検査および観察を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前を0時間値として8時?10時の間に測定し,点眼後は2時間値を測定した.有害事象は,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用とした.6.併用薬および併用処置治験期間中は,表2の除外基準に抵触する薬剤および処置の併用は禁止した.7.評価方法および解析方法a.有効性有効性は,最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,各観察日における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とし,要約統計量を算出し,投与後の推移を検討した.副次評価項目は,主要評価項目を除く,各観察日における治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧値および眼圧変化率とし,要約統計量を算出し,各々の推移を検討した.眼圧値については,各測定時点における治療期開始日と投与後の各観察日をpairedt検定(有意水準両側5%)により比較した.b.安全性安全性は,治療期に組み入れられたすべての被験者のうち,SJP-0135の投与を一度も受けなかった被験者,初診時(治療期開始日)以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とし,有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧,脈拍数および臨床検査を評価し,有害事象の発現割合(発現例数/SS)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧,脈拍数および臨床検査は,SJP-0135投与前後の比較を行った.眼底および視野は,スクリーニング検査日からの悪化の有無について比較した.II結果1.被験者の構成同意を取得できた被験者は157例で,スクリーニング脱落例5例を除いた152例が観察期としてチモロールの投与表3検査・観察スケジュール観察期(4週)治療期(52週)スクリーニング検査日治療期開始日投与4,8,12,20,36,44週投与28,52週中止脱落時測定時点(時間)?02020202同意取得○背景因子●●点眼●●●最高矯正視力●●●●●結膜・眼瞼・角膜所見●●●●●●●眼圧●●●●●●●●●眼底●●●視野●●●血圧・脈拍数●●●●●●●●●臨床検査●●●点眼状況注1●●●●有害事象注1○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.注1:投与16,24,32,40,48週でも実施した.を受けた.このうち観察期脱落例16例を除いた136例が治療期に組み入れられ,SJP-0135の投与を受けた.治験完了例は108例で,治験未完了例は28例であった.治療期に組み入れられ,SJP-0135を投与した136例全例をSSとした.SSから4例(除外基準に抵触2例,治療期開始日以降の適切な検査データなし2例)を除いた132例をFASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.2.有効性眼圧値の推移を図1に,眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移を表5に示した.主要評価項目である治療期の眼圧変化値(2時間値)の平均値±標準偏差は,治療期投与4週から52週まで,?3.4±2.3??2.8±1.8mmHgの範囲で推移し,安定した眼圧下降効果が認められた.副次評価項目については,治療期の眼圧値の0時間値,2時間値および0時間値と2時間値の平均値は,いずれも治療期投与4週から52週まで,治療期開始日の眼圧値よりも低下し,すべての観察日で,投与前と比較して統計学的に有意な差を認めた(いずれもp<0.0001).治療期の眼圧変化値および眼圧変化率の0時間値および0時間値と2時間値の平均は,いずれも約?3??2mmHg,約?10??20%の範囲で推移した.眼圧変化値(2時間値)を対象疾患別に原発開放隅角緑内障(広義)[原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,前視野緑内障(高眼圧群,正常眼圧群)]および高眼圧症で層別解析した結果を表6に,治療期開始日(2時間値)の眼圧値別に,低眼圧層(15mmHg以上18mmHg未満,18mmHg以上20mmHg未満),中眼圧層(20mmHg以上22mmHg未満)および高眼圧層(22mmHg以上)に層別解析した結果を図2に示した.いずれの層別解析でも主要評価項目の結果と同様に,治療期投与4週から52週まで,いずれの層においても安定した眼圧下降効果が認められた.3.安全性有害事象は98例(72.1%)271件認めた.このうち,副作用は27例(19.9%)34件であった.副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,アレルギー性結膜炎12例(8.8%),点状角膜炎10例(7.4%),眼瞼炎3例(2.2%),結膜充血2例(1.5%)であった.重度と判定された副作用はなく,中等度と判定された副作用は2例(1.5%)2件(いずれもアレルギー性結膜炎)で,その他の副作用[25例(18.4%)32件]は軽度であった.治験薬投与の中止を必要とした副作用は9例(6.6%)に10件(アレルギー性結膜炎7件,眼瞼炎3件)認めた.死亡例,重篤な副作用はなかった.臨床検査値,バイタルサイン,身体的所見および安全性に関連する他の観察項目でも,臨床上問題となるような変動や所見に関連する副作用はなかった.表4被験者背景(FAS)項目分類SJP-0135(n=132)性別男女平均±値標準偏差最小値?最大値原発開放隅角緑内障(広義)原発開放隅角緑内障正常眼圧緑内障前視野緑内障(高眼圧群)前視野緑内障(正常眼圧群)高眼圧症有無有無有無58(43.9)74(56.1)年齢(歳)65.0±9.730?85対象疾患注1107(81.1)(有効性評価対象眼)30(22.7)45(34.1)15(11.4)17(12.9)25(18.9)緑内障治療薬注2132(100.0)0(0.0)眼局所の合併症注297(73.5)35(26.5)眼局所以外の合併症116(87.9)16(12.1)例数(%)注1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1)(2)を満たす者前視野緑内障(高眼圧群):以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者正常眼圧緑内障:以下の(1)(2)(3)すべてを満たす者前視野緑内障(正常眼圧群):以下の(2)(3)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経乳頭の存在,(3)過去に眼圧値が21.0mmHg以上を示した既往がない.注2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした.0時間値242時間値2420201616121248122028364452観察日(週)48122028364452観察日(週)図1眼圧値の推移*p<0.0001(投与前との比較)pairedt検定,平均値±標準偏差(mmHg).眼圧値は,0時間値および2時間値とも治療期投与4週から52週まで,安定した眼圧下降効果が認められた.表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移測定時点眼圧値(mmHg)眼圧変化値(mmHg)眼圧変化率(%)0時間値治療期開始日18.1±2.5(132)??治療期投与4週16.1±2.4*(130)?2.0±1.7(130)?11.1±8.5(130)治療期投与8週15.8±2.4*(129)?2.3±2.0(129)?12.2±10.0(129)治療期投与12週15.7±2.4*(126)?2.4±2.1(126)?13.1±10.9(126)治療期投与20週15.9±2.8*(124)?2.2±2.3(124)?11.9±12.2(124)治療期投与28週16.1±2.6*(119)?2.0±2.3(119)?10.4±12.4(119)治療期投与36週16.0±2.8*(115)?2.0±2.3(115)?10.6±12.5(115)治療期投与44週16.0±2.7*(108)?1.9±2.4(108)?10.4±12.9(108)治療期投与52週15.8±2.7*(108)?2.1±2.0(108)?11.6±11.0(108)2時間値治療期開始日17.5±2.3(132)??治療期投与4週14.7±2.6*(130)?2.8±1.8(130)?16.0±10.2(130)治療期投与8週14.5±2.4*(129)?3.0±1.9(129)?16.7±10.6(129)治療期投与12週14.1±2.3*(126)?3.4±2.3(126)?19.1±11.8(126)治療期投与20週14.3±2.4*(124)?3.2±2.2(124)?17.8±11.4(124)治療期投与28週14.4±2.4*(119)?3.1±2.2(119)?17.3±12.1(119)治療期投与36週14.1±2.5*(115)?3.3±2.2(115)?18.7±11.9(115)治療期投与44週14.5±2.4*(108)?2.8±2.1(108)?16.1±11.8(108)治療期投与52週14.5±2.6*(107)?2.9±2.2(107)?16.3±12.4(107)0時間値と2時間値の平均値治療期開始日17.8±2.3(132)??治療期投与4週15.4±2.3*(130)?2.4±1.4(130)?13.6±7.7(130)治療期投与8週15.2±2.3*(129)?2.6±1.7(129)?14.6±9.1(129)治療期投与12週14.9±2.2*(126)?2.9±1.9(126)?16.1±9.9(126)治療期投与20週15.1±2.5*(124)?2.7±2.0(124)?14.9±10.6(124)治療期投与28週15.2±2.3*(119)?2.5±2.0(119)?13.9±10.6(119)治療期投与36週15.1±2.5*(115)?2.6±2.0(115)?14.7±10.8(115)治療期投与44週15.2±2.4*(108)?2.4±2.0(108)?13.3±11.1(108)治療期投与52週15.1±2.5*(107)?2.5±1.8(107)?14.1±10.2(107)平均値±標準偏差(例数),*p<0.0001〔各VISIT(測定時点)?治療期開始日(測定時点)のpairedt検定有意水準:両側5%〕眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率は,治療期投与4週から52週まで,安定した眼圧下降効果が認められた.眼圧値は,すべての観察日で,投与前と比較して統計学的に有意な差を認めた.表6対象疾患別眼圧変化値(2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)高眼圧症原発開放隅角緑内障正常眼圧緑内障前視野緑内障(高眼圧群)前視野緑内障(正常眼圧群)治療期投与?2.7±1.9?2.2±2.0?2.8±1.9?3.0±1.8?2.7±1.9?3.4±1.64週(106)(29)(45)(15)(17)(24)治療期投与?3.2±2.1?3.2±1.9?3.3±2.5?2.8±1.8?3.2±1.7?4.3±2.812週(102)(28)(43)(14)(17)(24)治療期投与?2.9±2.2?2.9±2.0?3.1±2.4?2.0±2.2?3.3±1.8?3.8±2.328週(95)(26)(41)(13)(15)(24)治療期投与?2.7±2.1?2.2±2.3?3.1±2.0?1.9±2.3?3.0±1.8?3.5±2.452週(85)(21)(39)(11)(14)(22)平均値±標準偏差(例数)いずれの対象疾患でも眼圧変化値(2時間値)は,治療期投与4週から52週まで,安定した眼圧下降効果が認められた.低眼圧層(15mmHg以上18mmHg未満表7治療期副作用の発現割合低眼圧層(18mmHg以上20mmHg未満)中眼圧層(20mmHg以上22mmHg未満)0高眼圧層(22mmHg以上)-2-4-6-84122852観察日(週)図2治療期開始日(2時間値)の眼圧値別の眼圧変化値(2時間値)平均値±標準偏差(mmHg).いずれの眼圧層でも眼圧変化値(2時間値)は,治療期投与4週から52週まで,安定した眼圧下降効果が認められた.注1:副作用名はICH国際医薬用語集MedDRA/JVersion19.1のPT(基本語)を用いて分類した.おもな副作用は,アレルギー性結膜炎12例(8.8%),点状角膜炎10例(7.4%),眼瞼炎3例(2.2%),結膜充血2例(1.5%)であった.III考按わが国では数多くの作用機序の異なる緑内障治療薬が使用可能であるが,緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場合,まず単剤(単薬)療法から開始し,目標眼圧に達していないなど,有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1).そのため,本治験では,チモロールからSJP-0135へ切り替えた場合の安全性および有効性を確認するため,観察期としてチモロールを4週間投与した後,観察期終了日の眼圧値が15.0mmHg以上であった患者を対象に,治療期としてSJP-0135に切り替えて52週間投与した.有効性に関しては,眼圧値は治療期のすべての測定時点において投与前と比較して統計学的に有意に低下し,治療期52週まで安定した眼圧下降効果を認めた.層別解析の結果,いずれの対象疾患(原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,前視野緑内障,高眼圧症)においても治療期投与4週から52週まで,安定した眼圧下降効果を認めた.また,治療期開始日(2時間値)の眼圧値別の層別解析の結果,いずれの層においても,治療期投与4週から52週まで,眼圧値はベースラインより2.0mmHg以上低下し,かつ安定した眼圧下降効果を認めた.以上より,SJP-0135はチモロール単剤から切り替えた場合はさらなる眼圧下降効果が期待でき,長期投与時でもその効果は減弱しないと考えられる.さらに,SJP-0135は対象疾患および投与開始前の眼圧値にかかわらず,眼圧下降効果を示すと考えられる.安全性に関しては,有害事象は72.1%,副作用は19.9%で認めたが,治療期52週を通じて重篤な副作用は認めなかった.比較的発現頻度の高かった副作用は,アレルギー性結膜炎(8.8%),点状角膜炎(7.4%)および眼瞼炎(2.2%)であり,いずれもアイファガン点眼液0.1%およびチモロール点眼液において既知の副作用であった.アイファガン点眼液0.1%では,長期投与によりアレルギー性結膜炎の発現頻度が高くなる傾向が認められており,投与52週におけるアレルギー性結膜炎の副作用発現頻度は18.4%である10).この値は今回の8.8%に比べて髙かった.海外では0.2%ブリモニジン酒石酸塩/0.5%チモロール配合点眼剤(COMBIGAN,米国Allergan,Inc.)が市販されている.COMBIGANの臨床試験において,投与12カ月を通してCOMBIGANの眼圧下降効果はチモロール単剤(1日2回)およびブリモニジン(1日3回)と比べて優れ,かつ安定していたことが確認されている11).このことから,SJP-0135も同様に,長期投与時をした場合でも各単剤に比べて髙い眼圧下降効果を示すと考える.また,安全性については投与12カ月におけるアレルギー性結膜炎の発現頻度は0.2%ブリモニジン酒石酸塩群(9.4%)に比べてCOMBIGAN群(5.2%)では約半数であり,有意に低いことが報告されている11).なお,a作動薬による細胞容積の減少および傍細胞流の増加による潜在的な炎症誘発因子の結膜組織内への侵入12)がb遮断薬により抑制される13)ことで,ブリモニジン由来の眼部アレルギーの発現頻度がチモロールにより低下するという報告があり,配合剤でのアレルギー性結膜炎の発現頻度減少の一つの仮説として考えられている14).そのため,SJP-0135においても,アイファガン点眼液0.1%に比べてアレルギー性結膜炎の発現頻度が低下する可能性がある.以上の結果より,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,SJP-0135は52週間点眼したとき,安定した眼圧下降効果を維持し,安全性に問題のない治療薬となりうると考える.SJP-0135はわが国初のa2作動薬を含む配合点眼剤であること,SJP-0135への切り替えにより薬剤数および総点眼回数が減ることで患者の治療効果の向上が期待できることから,SJP-0135は緑内障治療の薬物療法において有用性の高い選択肢になると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第4版.日眼会誌122:5-53,20182)高橋真紀子,内藤知子,溝上志朗ほか:緑内障点眼薬使用状況のアンケート調査“第二報”.あたらしい眼科29:555-561,20123)BurkeJ,SchwartzM:Preclinicalevaluationofbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(S-1):S9-S18,19964)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌116:955-966,20125)新家眞,坂本祐一郎:ブリモニジン点眼液0.1%の臨床的有用性に関する多施設前向き観察的研究―使用成績調査中間報告.臨眼71:859-867,20176)KrupinT,LiebmannJM,Green?eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentstudy.AmJOphthalmol151:671-681,20117)LarssonLI:Aqueoushumor?owinnormalhumaneyestreatedwithbrimonidineandtimolol,aloneandincombi-nation.ArchOphthalmol119:492-495,20018)CoakesRL,BrubakerRF:Themechanismoftimololinloweringintraocularpressure:Inthenormaleye.ArchOphthalmol96:2045-2048,19789)2014年4月?2018年3月における縮瞳薬及び緑内障治療剤:局所用の使用状況.株式会社JMDC10)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,201211)SherwoodMB,CravenER,ChouCTetal:Twice-daily0.2%brimonidine-0.5%timolol?xed-combinationtherapyvsmonotherapywithtimololorbrimonidineinpatientswithglaucomaorocularhypertension:a12-monthran-domizedtrial.ArchOphthalmol124:1230-1238,200612)ButlerP,MannschreckM,LinSetal:Clinicalexperiencewiththelong-termuseof1%apraclonidine:Incidenceofallergicreactions.ArchOphthalmol113:293-296,199513)AlvaradoJA,MurphyCG,Franse-CarmanLetal:E?ectofbeta-adrenergicagonistsonparacellularwidthand?uid?owacrossout?owpathwaycells.InvestOphthalmolVisSci39:1813-1822,199814)AlvaradoJA:Reducedocularallergywith?xed-combination0.2%brimonidine-0.5%timolol.ArchOphthalmol125:717-718,2007◆**