———————————————————————- Page 1(95) 16710910-1810/09/\100/頁/JCOPY あたらしい眼科 26(12):1671 1677,2009cはじめに涙液減少型ドライアイに対しては,涙液量補充の目的で人工涙液およびヒアルロン酸ナトリウムの点眼を行うが,難治例についても涙点プラグの挿入により上皮障害が劇的に改善することが一般的である.最近,筆者らは,当科の角膜外来を受診した重症のドライアイ患者のなかに,流行性角結膜炎〔別刷請求先〕野田恵理子:〒791-0295 愛媛県東温市志津川愛媛大学医学部眼科学教室Reprint requests:Eriko Noda, M.D., Department of Ophthalmology, Ehime University School of Medicine, Shitsukawa, Toon, Ehime 791-0295, JAPAN流行性角結膜炎を契機に発症したと考えられる ドライアイの 3 症例野田恵理子山口昌彦白石敦宇野敏彦大橋裕一愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野Three Cases of Dry Eye Thought to be Caused by Epidemic KeratoconjunctivitisEriko Noda, Masahiko Yamaguchi, Atsushi Shiraishi, Toshihiko Uno and Yuichi OhashiDepartment of Ophthalmology, Ehime University School of Medicine背景:流行性角結膜炎(EKC)罹患後に多発性角膜上皮下浸潤(MSI)を生じることはよく知られているが,ドライアイの報告は調べる限りにおいてない.今回,筆者らは EKC を契機にドライアイが発症したと思われる 3 症例を経験したのでその臨床像を報告する.症例:症例 1 は 59 歳,女性.EKC に罹患(アデノチェックR陽性)した 1 カ月後に涙液減少型ドライアイを発症した.上下涙点へのプラグ挿入にて点状表層角膜症(SPK)は改善しなかったが,シクロスポリンおよびステロイド点眼を追加したところ病変は軽快した.増悪時,共焦点顕微鏡による観察で角膜中央部にLangerhans 細胞(LC)が認められた.症例 2 は 62 歳,女性.4 年前に EKC(他医診断)に罹患した後に涙液減少型ドライアイを発症,涙点プラグ挿入にて SPK は軽快しなかったが,シクロスポリン点眼を行ったところ軽快傾向を示した.この症例でも共焦点顕微鏡で LC の浸潤が確認された.症例 3 は 57 歳,女性.EKC に罹患(キャピリアアデノR陽性)した 2 週後より SPK が出現した.Schirmer 値は低値で BUT(涙液層破壊時間)短縮があり,涙液減少型ドライアイと考えられた.共焦点顕微鏡で多数の LC 浸潤が認められ,病変はステロイド点眼により軽快した.結論:症例はいずれも EKC 後しばらくして涙液減少ドライアイを発症したが,所見の改善には涙液量の確保だけでは不十分で,何らかの免疫抑制薬の使用が必要であり,病態形成に免疫学的機序が関与している可能性が推察された.We report three cases of dry eye thought to be caused by epidemic keratoconjunctivitis(EKC). Case 1:59-year-old female. Tear-de cient dry eye appeared one month after EKC contraction. Although the super cial punctate keratopathy(SPK)did not improve after lacrimal plug insertion, cyclosporine and steroid eyedrops were e ective. When the SPK worsened, Langerhans cells(LC)were observed in the cornea by confocal microscopy(HRT II-RCM). Case 2:62-year-old female. Tear-de cient dry eye developed 4 years after EKC diagnosis. Changes in SPK severity and LC in ltration were similar to those in Case 1. Case 3:57-year-old female. SPK appeared 2 weeks after EKC contraction and tear-de cient dry eye was diagnosed. LC in ltration was observed via HRT II-RCM. SPK improved after steroid eyedrop administration. In each case, tear volume maintenance alone did not resolve SPK;immunosuppressive agents were also necessary. We propose that dry eye occurring after EKC may be related to an immunological mechanism.〔Atarashii Ganka(Journal of the Eye)26(12):1671 1677, 2009〕Key words:ドライアイ,流行性角結膜炎(EKC),点状表層角膜症(SPK),ランゲルハンス細胞(LC),レーザー生体共焦点顕微鏡(HRT II-RCM).dry eye, epidemic keratoconjunctivitis(EKC), super cial punctate keratopathy(SPK), Langerhans cell(LC), Heidelberg Retina Tomograph II-Rostock Cornea Module(HRT II-RCM).———————————————————————- Page 21672あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(96)(epidemic keratoconjunctivitis:EKC)を契機に発症したと考えられる治療抵抗性の症例が存在することに気づいた.EKC の罹患後に多発性角膜上皮下浸潤(multiple subepithe-lial corneal in ltlates:MSI)1)が生じることはよく知られているが,ドライアイについての報告は調べる限りにおいてなく,病態もよくわかっていない.今回,筆者らの経験した 3症例について,その臨床像,治療経過などを報告するとともに,レーザー生体共焦点顕微鏡(Heidelberg Retina Tomo-graph II-Rostock Cornea Module:HRT II-RCM)所見を参考にドライアイの発症機序について考察した.I症例〔症例1〕59 歳,女性.主訴:両眼の視力低下.現病歴:2004 年 11 月 9 日より,両眼 EKC に罹患したが(アデノチェックR陽性),その後重症の角結膜上皮障害が出現し,両眼の視力低下をきたしたため,2004 年 12 月 7 日,当院に紹介受診となった.初診時所見(EKC 罹患後約 1 カ月):視力は右眼(0.4),左眼(0.15),両眼ともに涙液メニスカスは低く,角膜にはびまん性の点状表層角膜症(super cial punctate keratopa- 濯琢ⅲ猪?????敏朿0.1%????????0.05%???????RLRL???????鏗???????鏗2004.11.9EKC?????????鏗BBLLL暢滿ⅲ?B0.1%?????????????B+++++++++++++++±++++++++++±±±+++++±++2004.12.7 補?+B(0.4)(0.15)RL(1.2)(1.2)?堀(1.2)(1.2)0.1%???????????B(-)±±図 3 症例1の治療経過 R:右眼,L:左眼, B:両眼.RL図 1症例1の初診時における前眼部フルオレセイン染色所見両眼ともに涙液メニスカスの低下,著明な SPK,瞼裂間結膜のフルオレセイン染色所見を認める.図 2 症例1の初診時左眼前眼部写真MSI を認める.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091673(97)thy:SPK)および瞼裂間結膜のフルオレセイン点状染色を認め,左眼には MSI が認められた(図 1,2).Schirmer Ⅰ法は両眼ともに3 m m,BUT(涙液層破壊時間)は両眼ともに 1 秒と低値であった.血液検査にて,抗 SS-A 抗体,抗SS-B 抗体はともに陰性で,ドライマウスなど Sjogren 症候群を疑わせる所見はなかった.前医では,ヒアルロン酸ナトリウム点眼両眼 6 回/日,レボフロキサシン点眼両眼 4 回/日が処方されていた.治療経過:所見から涙液減少型ドライアイと診断された.治 療 経 過 と SPK,MSI お よ び 視 力 の 推 移 を 図 3 に 示 す.EKC 罹患前にはドライアイ症状はなく,罹患後に発症または顕在化したものと思われた.治療としては,両眼に上下涙点プラグを挿入し,人工涙液点眼を追加,さらに,消炎の目的で 0.1%フルオロメトロン点眼両眼 4 回/日を開始した.右眼は,上下涙点プラグによる涙液量の増加とともに SPKの改善が得られ,自覚症状,所見ともに軽快したが,涙点プラグ挿入によって十分な涙液量が確保できているにもかかわらず,左眼の SPK は不変であった.フルオロメトロン点眼の中断で SPK および MSI が増悪し,再開すると軽快することをくり返しながら,最終的にステロイド点眼を中止した.しかし,中止から 5 カ月目の 2006 年 9 月 12 日,両眼のSPK,左眼の MSI が増悪した.ここで HRT II-RCM を施行したところ,両眼の角膜中央部において,角膜上皮基底細胞から Bowman 膜レベルに Langerhans 細胞(LC)の著明な浸潤を認め,特に左眼においては太く枝分かれした,高い活動性を有すると思われる LC が多数認められた(図 4 上).SPK の増悪に免疫反応が関与している可能性を考え,自家調整した 0.05%シクロスポリン点眼両眼 4 回/日を開始したところ,SPK,MSI ともに改善し,HRT II-RCM でも LC浸潤の減少がみられた(図 4 下).しかし,6 週後に至って,点眼後の刺激感や眼脂出現のため,シクロスポリン点眼は中止し,0.1%フルオロメトロン点眼に変更した.その後,0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼を防腐剤無添加のものに変更し,0.1%フルオロメトロン点眼を両眼 2 回/日で経過観察中であるが,SPK の増悪を認めていない.〔症例2〕62 歳,女性.主訴:両眼痛.現病歴:2001 年 10 月,両眼が EKC に罹患したが(アデノチェックR陽性,他医にて診断),その後ドライアイによる重症の角結膜上皮障害が発症し,人工涙液,ヒアルロン酸ナトリウム点眼に加え,両眼の下涙点プラグ挿入などの治療を受けていた.症状が改善しないため,2006 年 1 月 10 日に図 5症例2の初診時前眼部フルオレセイン染色写真(上:初診時,下:最終診察時)初診時には,両眼ともに涙液メニスカスの低下,左眼に特に強く角結膜上皮障害を認めた.最終診察時にはやや改善している.悪化時(2006.9.12)改善(2006.12.19)RL図 4症例1のHRT II RCM所見———————————————————————- Page 41674あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(98)当院に紹介受診となった.初診時所見(EKC 罹患後約 4 年):視力は右眼(1.2),左眼(0.7),両眼ともに涙液メニスカスは低く,両眼の瞼裂間に SPK と結膜上皮の点状染色がみられた.上皮障害は特に左眼で著明であった(図 5 上).Schirmer I 法は右眼3 m m,左眼2 mm,BUT は両眼ともに 1 秒と低値であった.血液検査にて,抗 SS-A 抗体,抗 SS-B 抗体はともに陰性で,ドライマウスなど Sjogren 症候群を疑わせる所見はなかった.また,前医でヒアルロン酸ナトリウム点眼両眼 5 回/日が処方されていた.両眼の下涙点のプラグはすでに脱落していた.治療経過:経過観察中,SPK の軽快と増悪をくり返したが,2006 年 11 月 14 日に,SPK の著明な増悪を認めたため,症例 1 と同様に自家調整した 0.05%シクロスポリン点眼両眼 4 回/日を開始した.投与後 SPK は改善したが,点眼開始7 日後に点眼による刺激症状と眼脂のため中止せざるをえず,中止後は 0.1%フルオロメトロン点眼両眼 4 回/日とした.涙点プラグ脱落後の涙点は大きく拡大し,涙点プラグ再挿入が困難であったため,涙液量確保の目的で観血的涙点閉鎖 術 を 勧 め た が 拒 否 さ れ, そ の ま ま 経 過 観 察 と な っ た.2007 年 3 月 14 日,SPK はやや軽減したものの残存している(図 5 下).初診時,角膜中央部における角膜上皮基底細胞から Bowman 膜レベルでの LC 浸潤は軽度であったが,2006 年 11 月 14 日の SPK 悪化時には LC の浸潤は明らかに増加していた(図 6).〔症例3〕57 歳,女性.主訴:両眼の羞明,視力低下.現病歴:2006 年 10 月 10 日,両眼のアデノウイルス結膜炎と診断された(キャピリアアデノR陽性,咽頭痛あり).2006 年 10 月 24 日,羞明,視力低下が出現したため当院受診となった.初診時所見(EKC 罹患後 2 週):視力は右眼(1.0),左眼(0.9),両眼ともに涙液メニスカスは低く,Schirmer Ⅰ法にて右眼2 mm,左眼3 mm,BUT は両眼ともに 1 秒と低値であった.血液検査にて,抗 SS-A 抗体,抗 SS-B 抗体はともに陰性で,ドライマウスなど Sjogren 症候群を疑わせる所見はなかった.両眼ともに角結膜上皮障害は軽度であったが,角膜上皮内に淡い浸潤を伴う点状表層角膜炎を認めた(図7).MSI は認められなかった.治療経過:両眼にレボフロキサシン点眼,0.1%リン酸デキサメタゾン点眼(4 回/日)を開始したところ,自覚症状,角膜所見ともに約 1 カ月で改善し,点状表層角膜炎は消失した.以後は,0.1%フルオロメトロン点眼を両眼 4 回/日,人工涙液点眼を適宜使用に変更し経過を観察中であるが,瞼裂間の角結膜上皮障害は残存している.治療前の 10 月 24 日には,HRT II-RCM により,中央部の角膜上皮翼細胞のレベルに白血球の浸潤と思われる高輝度の小型細胞が角膜中央部に多数認められた.また,角膜上皮基底細胞レベルには著明な LC 浸潤もみられた(図 8 上)が,ステロイド点眼開始後 6 週目には両者ともに減少した(図 8 下).II考察今回,筆者らが経験した症例の臨床像は表 1 に示すとおりで,初診時(2006.1.10)悪化時(2006.11.14)RL図 6症例2のHRT II RCM所見 図 7症例3の前眼部写真両眼ともに角膜上皮内に淡い浸潤を伴う SPK を認めた(角膜上皮炎).なお,結膜上皮障害は軽度であった.MSI は認められなかった.———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091675(99)(1) いずれも高齢の女性で,EKC に罹患後 2 4 週で発症している.(2) 涙液減少型ドライアイだが Sjogren 症候群の診断基準は満たさない.(3) 人工涙液や涙点プラグだけでは SPK の完全寛解は困難で,軽快・増悪をくり返すことがある.(4) 病変の増悪時に上皮下に Langerhans 細胞(LC)の浸潤がみられる.表 1症例のまとめ症例 1症例 2症例 3年齢,性別59 歳,女性62 歳,女性57 歳,女性罹患後期間1 カ月不明2週症状視力低下眼痛羞明,視力低下RLRLRL初診時視力0.40.151.20.71.00.9最終視力1.21.21.21.21.01.2SPK++++++++++MSI + BUT(秒)111111Schirmer I 法333223治療方法涙液の確保・涙点プラグ・人工涙液・ヒアルロン酸ナトリウム・涙点プラグ・人工涙液・ヒアルロン酸ナトリウム・人工涙液免疫抑制0.05%シクロスポリン↓0.1%フルオロメトロン0.1%フルオロメトロン0.1%リン酸デキサメタゾン↓0.1%フルオロメトロンRL治療前(2006.10.24)翼細胞レベル基底細胞レベル翼細胞レベル基底細胞レベル:LC(Langerhans細胞),:WBC(白血球)治療後(2006.12.7)図 8症例3のHRT II RCM所見———————————————————————- Page 61676あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(100)(5) SPK の改善には,ステロイドあるいはシクロスポリンの点眼が有効である.など,一般の涙液減少型ドライアイとは異なるものである.最大のポイントは EKC を契機にドライアイが発症したのかという点であるが,それ以前の眼科受診がないために明確な判断はできないものの,病歴からは罹患後 2 4 週目付近における症状悪化は顕著である.検査所見は涙液減少型ドライアイであることを示しており,この時点において何らかの機序で涙腺機能の低下が起きた可能性が高いと考えられる.他方,動物実験レベルにおいて筆者らの推論を支持する報告がある2).Richard らによると,アデノウイルス 5 型の家兎角膜実質感染モデルにおいて涙腺の免疫組織学的検討を行ったところ,アデノウイルス自体の存在は確認されないものの,CD4 陽性でかつ MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラス II を発現する多数のリンパ球浸潤が涙腺内に認められたとしている.型は異なるものの,この事実は,EKC 罹患後に涙腺炎が生じ,Sjogren 症候群に類似した涙液分泌機能低下をひき起こす可能性を示唆している.涙液減少の機転として,円蓋部結膜の炎症性瘢痕化による涙腺導管の閉塞も考えられるが,今回の症例では,上眼瞼結膜の瘢痕形成や結膜 の短縮などの所見は明らかではなかった.第二のポイントは,症例 1 の左眼のように,涙点プラグ挿入によって十分な涙液確保を図ったにもかかわらず SPK が遷延化したことで,EKC 罹患後でみられるドライアイの病態に涙液減少以外のメカニズムがかかわっている可能性が考えられる点である.近年,角膜におけるより鮮明な画像が得られる生体レーザー共焦点顕微鏡検査として,HRT II-RCM(Heidelberg 社)が開発され,角膜真菌症3,4)やアカントアメーバ角膜炎5),サイトメガロウイルス角膜内皮炎6)などの角膜感染症における非侵襲的な病原体検出に応用されている.一方で,Sjogren 症候群における角膜神経密度の解析7)やEKC における角膜浸潤細胞の検討8)など,種々の角膜疾患の病態評価にも用いられている.今回,HRT II-RCM を用いて,角膜上皮基底細胞から Bowman 膜レベルにおける LCの動向に注目して経過を追ったところ,全例で SPK の悪化時に LC の浸潤が増加しており,シクロスポリンもしくはステロイドの点眼投与により,SPK および LC の浸潤も明らかに減少していた.EKC 罹患後,MSI がときに 1 年以上も出現・消失をくり返す症例に遭遇することがあるが,このことはアデノウイルス抗原が角膜上皮下から実質浅層にかけて年余にわたり残存しうる可能性を示唆している.SPK の悪化時に細胞性免疫の担い手である LC の浸潤が増加することや,細胞性免疫を特異的に抑制するシクロスポリン点眼がSPK の減少に効果を発揮することから,MSI の有無にかかわらず,角膜内に残存するアデノウイルス抗原に対するⅣ型アレルギー反応が,SPK の遷延化に関与しているとも推察される.興味深いことに,今回の症例の SPK の発症時期は,罹患後 2 4 週付近とアデノウイルス抗原に対するⅣ型アレルギー反応とされる MSI の発症時期によく一致している.同様のメカニズムが涙腺を含む眼表面で起きているのかもしれない.角膜への LC 浸潤は正常者でも認められるが,多くは角膜輪部から周辺部にかけてのものであり,角膜中央部でみられることは稀とされる10).また,Sjogren 症候群では角膜中央部に若干の LC は観察される7)のみで,今回の症例のような著明な LC の浸潤は認められない.EKC 後の MSI 症例をHRT II-RCM で観察した Adel らの報告によると,罹患後 8週において角膜中央部の上皮下に多数の LC,炎症細胞の浸潤を認めたとされているが,ドライアイや SPK についての記載はない8).EKC 後にみられる角膜中央部への LC の浸潤が普遍的な現象なのか,あるいは MSI や SPK の遷延化に伴って生じるのか,今後 EKC 罹患眼について HRT II-RCMを施行し,検討していく必要がある.EKC 後の難治性 SPK に対する治療のポイントには大きく2 点ある.1 点目は,涙液減少型ドライアイへの対策で,人工涙液やヒアルロン酸などの点眼治療だけで不十分な場合,涙点プラグを中心とした涙点閉鎖が不可欠である.2 点目は,局所的な免疫抑制薬の併用で,症例 1,2 では自家調整した0.05%シクロスポリン点眼が SPK の改善に効果を示した.結果的には,点眼コンプライアンス不良のため中止となり,低力価ステロイドの点眼に変更せざるをえなかったが,長期点眼による眼圧上昇や日和見感染症などのリスクを考えると,残しておきたいオプションの一つではある.日常臨床において,EKC を契機に涙液減少型ドライアイを発症する症例は決して稀ではないように思われる.特に,通常の治療に抵抗して SPK が残存するようなケースでは,EKC の既往についても考慮する必要がある.発症機序や治療戦略に言及した報告は筆者らの調べる限りではないが,免疫抑制薬の投与が消炎に有効であり,涙腺や角膜における免疫反応が病態に密接に関与している可能性があると考えられる.おわりに今回筆者らは,EKC を契機にドライアイが発症もしくは顕在化したと思われる 3 症例を経験した.3 症例とも涙液減少型ドライアイを合併しており,SPK の増悪時には HRT II-RCM で角膜上皮下に LC 浸潤の増加が認められ,免疫抑制薬点眼の使用により LC 浸潤の減少がみられた.EKC 後に遷延化する SPK には,涙液減少のみならず,角膜上皮下における何らかの免疫学的機序が関与している可能性もあり,治療には,点眼や涙点プラグによる十分な涙液確保に加えて,シクロスポリンやステロイドなどの免疫抑制薬の点眼———————————————————————- Page 7あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091677(101)が必要であると考えられた.文献 1) 青木功喜,井上幸次:ウイルス性結膜炎のガイドライン.日眼会誌 107:11-16, 2003 2) Wood RL, Trousdale MD, Stevenson D et al:Adenovirus infection of the cornea causes histopathologic changes in the lacrimal gland. Curr Eye Res 16:459-466, 1997 3) Brasnu E, Bourcier T, Dupas B et al:In vivo confocal microscopy in fungal keratitis. Br J Ophthalmol 91:588-591, 2007 4) 野田恵理子,白石敦,坂根由梨ほか:生体レーザー共焦点顕微鏡(HRT II-RCM)が診断,経過観察に有用であった角膜真菌症の 1 例.あたらしい眼科 25:385-388, 2008 5) Kobayashi A, Ishibashi Y, Oikawa Y et al:In vivo and ex vivo laser confocal microscopy ndings in patients with early-stage acanthamoeba keratitis. Cornea 27:439-445, 2008 6) Shiraishi A, Hara Y, Takahashi M et al:Demonstration of “owl’s eye” morphology by confocal microscopy in a patient with presumed cytomegalovirus corneal endothe-liitis. Am J Ophthalmol 143:715-717, 2007 7) Villani E, Galimberti D, Viola F et al:The cornea in Sjogren syndrome:An in vivo confocal study. Invest Oph-thalmol Vis Sci 48:2017-2022, 2007 8) Alsuhaibani AH, Sutphin JE, Wagoner MD:Confocal microscopy of subepithelial in ltrates occurring after epi-demic keratoconjunctivitis. Cornea 25:778-780, 2006 9) Gutho RF, Stave J:Essentials in Ophthalmology chapter 13. In Vivo Micromorphology of the Cornea:Confocal Microscopy Principles and Clinical Applications. p173-208, Springer-Verlag, Berlin, 2006 10) Zhivov A, Stave J, Vollmar B et al:In vivo confocal micro-scopic evaluation of Langerhans cell density and distribu-tion in the normal human corneal epithelium. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 243:1056-1061, 2005***