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Selective Laser TrabeculoplastyとPattern Scanning Laser Trabeculoplastyの2年成績

2024年10月31日 木曜日

SelectiveLaserTrabeculoplastyとPatternScanningLaserTrabeculoplastyの2年成績中野花菜*1小椋俊太郎*1木村雅代*1安川力*1野崎実穂*1,2*1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学*2名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科CComparativeStudyofSLTandPSLTforGlaucomaTreatmentwith2-yearFollow-upKanaNakano1),ShuntaroOgura1),MasayoKimura1),TsutomuYasukawa1)andMihoNozaki1,2)1)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,NagoyaCityUniversityGraduateSchoolofMedicalSciences,2)DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEasternMedicalCenterC目的:2年間経過を追えた選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)とCPASCALのパターンシステムを利用したパターンレーザー線維柱帯形成術(PSLT)を施行した症例について後ろ向きに比較検討した.対象と方法:2010.2018年に名古屋市立大学病院でCSLTあるいはCPSLTを施行し,2年間経過観察できた原発開放隅角緑内障C17眼(SLT群C8眼,PSLT群C9眼).両群ともC360°照射を行い,眼圧および点眼スコアを比較,検討した.結果:眼圧はCSLT群,PSLT群共にC2年の時点で有意に低下していた.点眼スコアは,両群とも有意に増加していたが,両群で点眼スコアに有意差は認めなかった.また,平均眼圧下降率は両群で統計学的有意差は認めなかった.結論:PSLTはC2年の経過観察期間においてCSLTと同等の眼圧下降効果を有すると考えられた.CPurpose:Toretrospectivelycomparethee.cacybetweenselectivelasertrabeculoplasty(SLT)andpatternscanninglasertrabeculoplasty(PSLT)usingthePASCAL(Topcon)patternsystemovera2-yearfollow-upperi-odCinCprimaryCopen-angleCglaucoma(POAG)patients.CMethods:ThisCstudyCinvolvedC17CPOAGCeyesCthatCunder-wentSLT(8eyes)andPSLT(9eyes)with360°Cirradiationbetween2010and2018.Inbothgroups,intraocularpressure(IOP)andthenumberofocularhypotensivemedications(OHM)administeredoverthe2-yearfollow-upperiodwasexamined.Results:At2-yearspostoperative,signi.cantIOPreductionwasobservedintheSLTandPSLTgroups.AlthoughbothgroupsdidrequireanincreasednumberofOHM,therewasnosigni.cantdi.erencebetweenthetwogroups.AverageIOPreductionintheSLTandPSLTgroupswas17.5%and22.9%,respectively,thusshowingnosigni.cantdi.erencebetweenthetwogroups.Conclusion:SLTandPSLTwereequallye.ectiveforCreducingCIOPCinCPOAGCeyesCoverCaC2-yearCfollow-upCperiod,CthusCshowingCthatCPSLTCisCaCviableCtreatmentCoptionforlong-termIOPmanagementinglaucomapatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(10):1251.1255,C2024〕Keywords:原発開放隅角緑内障,選択的レーザー線維柱帯形成術,パターンレーザー線維柱帯形成術.primaryCopenangleglaucoma,selectivelasertrabeculoplasty,patternscanninglasertrabeculoplasty.Cはじめにパターンレーザー線維柱帯形成術(patternscanninglasertrabeculoplasty:PSLT)はレーザー光凝固装置CPASCAL(トプコン)のパターンシステムを利用したレーザー線維柱帯形成術である.選択的レーザー線維柱帯形成術(selectivelasertrabeculoplasty:SLT)と比較し,一度に複数発のレーザー発射が可能で,コンピューターで照射範囲を制御できる特徴を有する.2010年にCTuratiらは,波長C532Cnm(緑)のCPASCALを用いてCPSLTを施行し,6カ月の平均眼圧下降率はC24%であったことを報告した1).PSLTは施行後も組織瘢痕や癒着をきたさないため,その奏効機序はCSLTに類似していると考えられていたが,当時CPSLTとCSLTの眼圧下降効果は比較検討されていなかった.そのため,筆者らは以前にC6カ月の観察期間における波長C577nm(黄)の〔別刷請求先〕野崎実穂:〒464-8547愛知県名古屋市千種区若水C1-2-23名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科Reprintrequests:MihoNozaki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEasternMedicalCenter.1-2-23Wakamizu,Chikusa-ku,Aichi,Nagoya464-8547,JAPANCSLT群(n=8)PSLT群(n=9)p値年齢(歳)C70.8±11.3(C60.C83)C69.1±10.4(C53.C84)C0.78a性別男性C4例,女性C2例男性C4例,女性C4例C0.53b病型狭義CPOAG8眼狭義CPOAG8眼,NTG1眼C0.33b眼圧(mmHg)C19.9±4.5C17.4±2.4C0.20a点眼スコアC3.5±1.1C3.8±1.1C0.60alogMAR視力C0.33±0.60C0.16±0.28C0.47a視野重症度早期2,中期2,後期C4早期2,中期0,後期C7C0.25bCat検定,CbC|2検定.PASCALによるCPSLTとCSLTを比較検討し,両者は同等の眼圧下降効果が得られると報告した2).さらに,原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG)または高眼圧症患者に対してC12カ月間比較した報告3)や,開放隅角緑内障(openangleglaucoma:OAG)と高眼圧症に対して,24カ月間の長期観察した海外の報告4)でも,PSLTの眼圧下降効果や安全性はCSLTと同等であった.今回筆者らは,2年間経過を追うことのできたCOAG患者のCSLTあるいはCPSLT施行症例について後ろ向きに比較検討したので報告する.CI対象と方法対象はC2010.2018年までに名古屋市立大学病院でCSLTまたはCPSLTを施行し,2年間経過観察できたCPOAG17眼である.SLTを施行した群C8眼をCSLT群,PSLTを施行したC9眼をCPSLT群とした.視野重症度はCHumphrey視野計における視野異常の判定基準(Anderson-Patellaの基準)に従った.視野の統計学的指標の一つであるCmeanCdeviation(MD)値が,MD>C.6dBは初期,C.6CdB≧MD≧.12CdBは中期,MD<C.12CdBは後期と分類した.施行前に,対象患者に対しあらかじめ起こりうる事態の可能性を説明し,長期予後は不明である旨を十分説明し,インフォームド・コンセントを得た.レーザー照射前の処置として,レーザー開始30.60分前にCa2受容体作動薬であるアプラクロニジンを点眼し,麻酔薬はオキシブプロカイン点眼液を使用した.PSLT群では,PASCALCStreamline577(波長577nm),SLT群ではタンゴオフサルミックレーザー(波長C532Cnm)(エレックス社)を使用し,両群ともCLatinaSLTゴニオレーザーレンズ(オキュラー社)を使用して,線維柱帯全周C360°に照射を行った.レーザーの照射条件は,SLT群では,線維柱帯からごくわずかに気泡が認められる程度を目安にエネルギー設定を行った.PSLT群では,はじめにシングルスポットC10ミリ秒の照射時間で,線維柱帯の色調がわずかに変化する程度に出力を設定し,実際には照射時間が半分のパターンスポットのエネルギーで照射した.レーザー終了後に再びアプラクロニジンを点眼し,術後はステロイド点眼,非ステロイド性抗炎症点眼は使用しなかった.また,すでに緑内障点眼治療を受けている症例ではレーザー後も点眼をすべて継続した.点眼スコアは点眼C1種をC1点と計算,配合点眼薬と炭酸脱水酵素阻害薬C2錠/日の内服は,2点として計算した.有意差検定にはCStudentのCt検定あるいはC|2検定を用い,有意確率C5%未満を有意と判定した.本研究に関しては名古屋市立大学病院倫理委員会承認のもと施行した.CII結果平均年齢は,SLT群でC70.8C±11歳(60.83歳),PSLT群でC69.1C±10歳(53.84歳),病型の内訳は,SLT群では狭義CPOAGがC8眼,PSLT群では狭義CPOAGがC8眼,正常眼圧緑内障(normaltensionglaucoma:NTG)1眼で,年齢,性別,病型,緑内障手術既往眼の割合に両群間で有意差はみられなかった.また,術前の眼圧はCSLT群でC19.9C±4.5mmHg,PSLT群でC17.4C±2.4CmmHgで有意差はみられなかった.術前の点眼スコアはCSLT群で,3.5C±1.1,PSLT群でC3.8±1.1と有意な差はなかった.視力や視野重症度のいずれも有意差を認めなかった.病期は早期症例だけではなく,中期や後期に至っているものも含まれた(表1).平均照射エネルギーは,SLT群でC0.70CmJ,PSLT群では平均レーザー出力C379CmW,平均照射エネルギーがC1.89CmJであった(表2).術後C24カ月の平均眼圧はCSLT群C15.8C±2.9CmmHg,PSLT群C13.4C±2.6CmmHgでベースラインと比較して両群とも有意な眼圧下降を得た(p<0.05)(図1).また,点眼スコアは,SLT群で術前C3.5C±1.1であったものが術後C4.0C±0.8,PSLT群で術前C3.8C±1.1であったものが術後C4.2C±0.8と,両群ともに増加していたが,術前後で有意な差は認めなかった(図2).24カ月における平均眼圧下降率はCSLT群C17.5%,PSLTSLTCPSLTCレーザー波長C532CnmC577CnmレーザースポットサイズC400CμmC100Cμm378.6±69.9CmWレーザー出力・エネルギーC0.70±0.14CmJ(0C.4.C0.9mJ)C(3C00.C500mW)C1.89±0.35CmJ(1C.50.C2.50mJ)レーザー照射時間C3CnsecC5CmsecIOP(mmHg)群C22.9%で,有意な差は得られなかった.さらに視力や重症度も両群間において有意差はみられなかった(表3).また,SLT群,PSLT群ともにC5CmmHg以上の一過性眼圧上昇や,強い炎症などの術後合併症を生じた症例はなかった.C6N.S.SLT24カ月の期間内に眼圧下降目的に観血的手術を施行したC5N.S.症例はなかったが,1眼追加の治療を行った.追加治療を要4点眼スコアしたC1眼はCSLTを施行した狭義CPOAGの症例で,SLT後C63カ月間は眼圧C14-16CmmHgで推移していたが,徐々に眼圧上昇があり,22カ月後にCPSLTを施行した.,PSLT後は,2緑内障点眼を継続し,眼圧C12-14CmmHg程度で経過した.CIII考按今回筆者らは,すでに点眼治療中のCPOAGに対し,追加治療としてCSLTまたはCPSLTを施行し,その眼圧下降効果について後ろ向きにC2年間の比較検討をした.SLT群,PSLT群ともに術後2年の期間で有意な眼圧下降効果を示し,1024カ月後t検定*p<0.05(術前と比較),N.S.有意差なし.図2術前術後点眼スコア点眼C1種を点眼スコアC1点,合剤はC2点と計算.SLT群,PSLT群とも有意差は認めなかったが,点眼スコアは増加した.SLT(n=8)PSLT(n=9)p値眼圧C点眼スコアC眼圧下降率C眼圧下降率C20%以上を達成した割合logMAR視力C視野重症度15.8±2.9CmmHgC3.5±1.1C17.5±21.5%C50.0%(Cn=4)0.45±0.52C早期1,中期4,後期C313.4±2.6CmmHgC3.8±1.1C22.9±10.5%C66.7%(Cn=6)C0.34±0.47※C早期1,中期2,後期C6C※C0.10a0.57a0.53a0.49b0.67a0.45b※経過観察中C1眼が網膜静脈分枝閉塞症を発症,1眼が網膜前膜に対する手術を受け視力低下,いずれも術前の視野重症度で後期緑内障.at検定,CbX2検定.PSLT群,SLT群間で有意差はなかった.SLTによる眼圧下降の奏効機序としては線維柱帯色素細胞を選択的に標的とし,レーザー治療を行うことで,治療後の組織瘢痕や癒着が生じにくいとされている5).Alvaradoらによれば,SLTによるレーザー照射はマクロファージの遊走を促進し,炎症性サイトカインの放出がCSchelemm管内皮細胞の房水透過性を増加させ,これによって眼圧が下降する可能性が示唆されている6,7).一方で,PSLTによる眼圧低下のメカニズムはまだ解明されていないが,アルゴンレーザーによる線維柱帯形成術と比較すると,PSLTはC15分のC1以下の低エネルギーで照射され,線維柱帯に不可逆性の障害を残さないため,PSLTの眼圧低下のメカニズムはCSLTとの類似性が推測されている8).ElahiらによるC24カ月のCSLTとCPSLTの効果比較した報告では,眼圧下降率はCSLT群C13.0%,PSLT群C11.0%で有意な差はなく,経過中点眼スコアの有意な増加もみられなかった4)が,対象症例のベースラインの視野CMD値がC.5CdB,点眼スコアもC1.2と,今回の筆者らの研究よりも初期の症例が対象であった.本研究ではC65%が後期緑内障症例であり,SLT群,PSLT群ともに点眼スコアがC24カ月で有意な増加を認めていた.さらに,経過観察中にブリモニジン,リパスジルや種々の配合点眼薬の発売が相ついだことや,もともと後期緑内障症例が多く,より目標眼圧を低く設定する必要性があったことが点眼スコア増加の一因として考えられる.本研究の限界として,2年経過を追えた症例数が少ないこと,SLTとCPSLT症例の選択が無作為ではない点があげられるが,SLT群,PSLT群ともに術後C2年の期間で有意な眼圧下降効果を示し両治療ともに有効性が考えられた.これまでに,NTG眼に対する第一選択治療としてCSLTを施行した後C3年間観察した結果,SLTが第一選択治療として有効な方法の一つであったという報告や9),早期緑内障症例にCSLTを施行したほうがより大きな眼圧下降を得られたという報告もある10).コンピューターの制御下で自動的にエーミングビームが動き,180°あるいはC360°照射を行うことが可能であるCPSLTでは,SLTで起こりうるような重ね打ち照射や照射漏れといったことがなくなり,再現性のある手技が実現できる利点があげられる.本研究では,PSLTがSLTに劣らずC2年間経過後も眼圧下降効果を得られたが,今後初期症例に対してのCPSLTの長期にわたる有効性についての検討が重要であると思われた.本論文の要旨は第C33回日本緑内障学会にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)TuratiCM,CGil-CarrascoCF,CMoralesCACetal:PatternedCLaserCTrabeculoplasty.COphthalmicCSurgCLasersCImagingC41:538-545,C20102)荒木みどり,野崎実穂,服部知明ほか:PatternedClasertrabeculoplastyと選択的レーザー線維柱帯形成術の比較.臨眼68:1269-1273,C20143)WongMOM,LaiIS,ChanPPetal:E.cacyandsafetyofselectivelasertrabeculoplastyandpatternscanninglasertrabeculoplasty:arandomisedclinicaltrial.BrJOphthal-molC105:514-520,C20214)ElahiCS,CRaoCHL,CPaillardCACetal:OutcomesCofCpatternCscanninglasertrabeculoplastyandselectivelasertrabecu-loplasty:ResultsCfromCtheClausanneClaserCtrabeculoplastyCregistry.ActaOphthalmologicaC99:e154-e159,C20215)KramerTR,NoeckerRJ:ComparisonofthemorphologicchangesCafterCselectiveClaserCtrabeculoplastyCandCargonClaserCtrabeculoplastyCinChumanCeyeCbankCeyes.COphthal-mologyC108:773-779,C20016)AlvaradoJA,AlvaradoRG,YehRFetal:AnewinsightintoCtheCcellularCregulationCofCaqueousout.ow:howCtra-becularCmeshworkCendothelialCcellsCdriveCaCmechanismCthatCregulatesCtheCpermeabilityCofCSchlemm’sCcanalCendo-thelialcells.BrJOphthalmolC89:1500-1505,C20057)AlvaradoJA,KatzLJ,TrivediSetal:Monocytemodula-tionofaqueousout.owandrecruitmenttothetrabecularmeshworkCfollowingCselectiveClaserCtrabeculoplasty.CArchCOphthalmolC128:731-737,C20108)LeeCJY,CHaCSY,CPaikCHJCetal:MorphologicCchangesCin10)GazzardG,KonstantakopoulouE,Garway-HeathDetal:Ctrabecularmeshworkafterpatternedandargonlasertra-Selectivelasertrabeculoplastyversuseyedropsfor.rst-beculoplastyincats.CurrEyeResC39:908-916,C2014ClineCtreatmentCofCocularChypertensionCandCglaucoma9)新田耕治,杉山和久,馬渡嘉郎ほか:正常眼圧緑内障に対(LiGHT):amulticentrerandomisedcontrolledtrial.Lan-する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術CcetC393:1505-1516,C2021の有用性.日眼会誌117:335-343,C2013***