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眼内レンズ強膜内固定術後の眼球擦過によりハプティックが 露出し急性感染性眼内炎を生じたと思われた1 例

2024年3月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科41(3):345.348,2024c眼内レンズ強膜内固定術後の眼球擦過によりハプティックが露出し急性感染性眼内炎を生じたと思われた1例西江緑*1小林顕*2白尾裕*3*1石川県済生会金沢病院眼科*2金沢大学附属病院眼科*3医療法人社団浅ノ川浅ノ川総合病院眼科CACaseofAcuteInfectiousEndophthalmitisCausedbyHapticExposurefromtheConjunctivaafterFlangedSuturelessIntrascleralIntraocularLensFixationMidoriNishie1),AkiraKobayashi2)andYutakaShirao3)1)DepartmentofOphthalmology,SaiseikaiKanazawaHospital,2)3)DepartmentofOphthalmology,AsanogawaGeneralHospitalCDepartmentofOphthalmology,KanazawaUniversityHospital,目的:眼内レンズ強膜内固定術(フランジ法)後の眼内炎症例はこれまでに数例しか報告がない.今回新たなC1例を報告する.症例:59歳,男性.2010年C9月に両眼の超音波水晶体乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行.2021年C5月,右眼の眼内レンズ亜脱臼の診断で当院へ紹介され,右眼に眼内レンズ強膜内固定術(フランジ法)を行った.2021年C9月,右眼に眼痛と視力低下を訴え,当院を紹介受診.初診時に細隙灯顕微鏡検査で,右眼前房に高度の細胞浮遊と硝子体混濁を認め,8時の位置のフランジが結膜から露出していた.同日,硝子体手術とフランジの強膜内埋没を行った.硝子体液培養は陰性であったが,抗菌薬溶液での硝子体洗浄により迅速に治癒したため,細菌性眼内炎と診断した.アレルギー性結膜炎のため患者が頻回に眼球圧迫したことでフランジの露出と,それに伴う眼内炎が生じたと考えられた.結論:眼球を圧迫する可能性のある患者には慎重な術式選択が必要である.CPurpose:Toreportararecaseofinfectiousendophthalmitiscausedbyhapticexposurefromtheconjunctivafollowing.angedsuturelessintrascleralintraocularlens(IOL).xation.Case:A59-year-oldmaleunderwentbilat-eralphacoemulsi.cationandIOLimplantationinSeptember2010.InMay2021,hewasreferredforrighteyeIOLsubluxation,CandCunderwentCsuturelessCintrascleral.xation(.angedCtechnique)C.CInCSeptemberC2021,CheCpresentedCcomplainingCofCrightCeyeCpainCandCdecreasedCvision.CExaminationCrevealedCcellC.oaters,CvitreousCopacities,CandCanCexposed.angeatthe8-o’clockposition.Vitrectomyand.angeburialwereperformed.Thoughvitreous.uidcul-tureCwasCnegative,CrapidCimprovementCafterCantibioticCirrigationCledCtoCtheCdiagnosisCofCbacterialCendophthalmitis.CWeCtheorizeCthatCtheChapticCexposureCandCassociatedCendophthalmitisCwasCcausedCbyCtheCpatient’sCfrequentCpres-suretohiseyeduetoallergicconjunctivitis.Conclusion:Itisimportanttobecautiouswhenselectingthesurgicaltechniqueinpatientswhoareatriskofocularcompression.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(3):345.348,C2024〕Keywords:眼内レンズ強膜内固定術,フランジ法,術後眼内炎.suturelessintrascleralintraocularlens.xation,.angedtechnique,postoperativeendophthalmitis.Cはじめに2007年のCGaborらによる報告以来,眼内レンズ(intraocu-larlens:IOL)強膜内固定術式が発展してきた1).従来の毛様溝縫着術で起こりうる縫合糸による炎症や感染,縫合糸の劣化による眼内レンズの脱臼や亜脱臼など,縫合糸関連の合併症を排除できることが利点である.山根らはC30ゲージ針を用いて低侵襲にCIOL固定が可能となるダブルニードル法を開発した2).この眼内レンズ強膜内固定術(フランジ法)後に眼内炎に至った症例は,これまでに数例しか報告されていない.Karacaらは山根法によるCIOL強膜内固定後の遅発性眼内炎のC1例を報告しており,Obataらは露出したハプティックによる眼内炎のC1例を報告している3,4).今回,眼〔別刷請求先〕西江緑:〒920-0353石川県金沢市赤土町二C13-6石川県済生会金沢病院眼科Reprintrequests:MidoriNishie,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SaiseikaiKanazawaHospital,13-6Akatsuchimachi,Kanazawa,Ishikawa920-0353,JAPANC図1硝子体手術開始時の手術用顕微鏡からの所見術前に著明な結膜充血と結膜浮腫を認めた.眼内レンズ強膜内固定術のフランジ形成部分はC2時方向とC8時方向に確認され,8時方向ではフランジの先端が結膜より露出していた(.).内レンズ強膜内固定術(フランジ法)を施行された患者が,自身で眼球圧迫しハプティックが露出したことが原因と思われる術後眼内炎のC1例を経験したので報告する.CI症例患者:59歳,男性.主訴:右眼の眼痛と霧視.現病歴:2010年,両眼の白内障に対して超音波水晶体乳化吸引術およびCIOL挿入術を当院で施行された(AN6KA,興和).2021年C5月,視力低下を主訴に近医眼科を受診した.右眼のCIOL亜脱臼の診断で当院へ紹介され,同月,右眼の経毛様体扁平部硝子体切除術およびCIOL強膜内固定術フランジ法を施行された.2021年C9月CX-1日深夜より右眼の眼痛を,X日より右眼霧視を自覚した.近医眼科を受診し右眼虹彩炎と診断され,同日当科へ紹介された.既往歴:アレルギー性結膜炎(花粉症),痛風.内服薬:ロキソプロフェンCNa錠C60Cmg,レバミピド錠100mg,フェブキソスタット錠C20mg.点眼薬:市販品の抗アレルギー点眼薬.家族歴:特記事項なし.初診時検査所見:視力右眼(0.01C×IOL)(best),左眼(1.0C×IOL)(best).眼圧右眼C13mmHg,左眼C17mmHg.眼軸長R26.0mm,L26.0mm.右眼細隙灯顕微鏡所見では,隅角に周辺虹彩前癒着や結節はなく,高度の前房細胞の浮遊と前房蓄膿があり,著明な結膜充血と結膜浮腫を伴っていた(図1).角膜後面やCIOL表面に肉芽腫性の沈着物はなかった.IOL強膜内固定術のフランジ形成部分はC2時方向とC8時方向に確認され,8時方向で図2硝子体手術中の手術用顕微鏡からの所見術中,強膜圧迫により容易にC8時方向のハプティックが露出した(.).はフランジの先端が結膜より露出していた(図1).硝子体細胞を多数認めた.眼底の透見性は不良であった.血液検査に特記すべき異常はなかった.CII経過2021年C9月CX日,入院のうえ,同日経毛様体扁平部硝子体洗浄を施行した.灌流前に硝子体カッターの吸引チューブから,硝子体液を採取し培養検体とした.灌流液にはバンコマイシン塩酸塩とセフタジジム水和物を混合した.術中,強膜圧迫により容易にC8時方向のハプティックが露出した(図2).硝子体中やハプティックに菌塊は目視されなかった.眼底に色調変化はなかった.露出したハプティックは,CT-.xationtechniqueに準じて強膜を半層切開し,ヨードで強膜トンネル周囲を洗浄した後フランジ部分を埋没させ,8-0バイクリル糸を用いて強膜をC1糸縫合した5).バンコマイシンとセフタジジムの静脈内投与をC1週間行った.X+1日には前房細胞は速やかに減少傾向となった.硝子体培養を行ったが,起因菌は検出されなかった.術後速やかに眼内細胞が減少したこと,眼底に異常がなかったことから外因性の感染性眼内炎と診断した.術後右眼矯正視力はC1.0へ回復した.CIII考察本症例はCIOL強膜内固定術からC3カ月経過した時点で発症した眼内炎であり,鑑別疾患としては遅発性術後感染性眼内炎,直近に生じた急性感染性眼内炎,内因性感染性眼内炎,非感染性眼内炎があげられる.遅発性の感染性眼内炎としては,角膜後面沈着物やCIOL上の肉芽腫性沈着物を認めないこと,自覚症状の出現から前房蓄膿が生じるまでの期間がC24時間程度と短いことが矛盾していた.術前に非感染性眼内炎の可能性は否定できなかったが,急性感染性眼内炎が否定できないこと,眼底透見性不良であることから硝子体手術の適応とした.硝子体洗浄と抗生物質の投与によって速やかに完治したこと,眼底所見に異常がなかったことから,硝子体培養は陰性であったが急性感染性眼内炎と診断した.EndophthalmitisCVitrectomyCStudy(EVS)では白内障手術後眼内炎症例のC5.10%がグラム陰性菌であり,約C90%がグラム陽性菌で,約C70%がバンコマイシン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌であった7).灌流内にはCEVSでの起因菌をほとんどカバーするセフタジジム水和物とバンコマイシン塩酸塩を使用した.EVSではCIOL二次挿入後の眼内炎患者には硝子体切除が有益とされており,ハプティックが露出していることもあり最善と思われる硝子体手術を施行した.また,EVSでは抗生物質の静脈内投与の有無で転帰に有意差がなかったが,EVSで使用されたアミカシン硫酸塩よりも眼内移行性の優れたセフタジジム水和物が使用可能であったことから投与を行った.問診によりC9月は花粉症の増悪のため頻繁に眼球を擦っていたことが判明した.手術中ハプティックが強膜圧迫によって容易に出し入れされたことから,本症例は患者自身で眼球圧迫したことによりハプティックの露出を生じたことに起因すると考えられた.縫着法では術後眼内炎などの合併症が複数報告されており,従来の縫着法によるCIOL二次挿入法と比較してCIOL強膜内固定術フランジ法では種々の合併症が少ないことが一つの利点である6).しかし,IOL強膜内固定術フランジ法後の長期安全性はまだわかっておらず,術後晩期合併症の報告はこれまでに数例しかない.Karacraらはフランジ法によるIOL強膜内固定術後の遅発性眼内炎を報告している3).典型的な遅発性眼内炎では後.に白色プラークがみられ,アクネ菌を起因菌とするが,Karacraらの報告では水晶体.や硝子体が除去されていたにもかかわらず,強膜内固定術後C3カ月程度でアクネ菌を起因菌とする遅発性眼内炎を発症した.ハプティックは結膜下に確認され,硝子体基底部にプラークがあったことから強膜トンネルからの侵入と推論されている.また,ObataらはCIOL強膜内固定術(他院での手術のため術式の詳細はなく,写真からフランジは確認できないためフランジ法ではなく強膜半層切開での固定と思われる)の後C3年での眼内炎を報告しており,ハプティックの結膜上への露出とハプティック周囲の白色プラークを認めていた4).強膜が菲薄化しており,強膜トンネルから穿孔してハプティックが露出したものと推察されている.本症例ではハプティックは露出しておらず,フランジの先端のみが露出している状態であった.Obataらの症例とは機序が異なり,患者の用手的眼球圧迫により強膜が陥凹し,ハプティックが眼内・眼外への露出を繰り返した際に,菌が侵入したものと考えられた.プラークがなく,自覚症状の出現から前房蓄膿形成までの期間が短いことから強毒菌の侵入と推察された.今回,フランジの露出に起因する感染性眼内炎症例を経験し,術式の検討が必要と思われた.太田は,T-.xationの際,術直後の眼内レンズの位置ずれ予防のためにC9-0ナイロン糸で支持部と強膜床を一糸縫合後,創口からの漏れ予防と術後の眼内炎対策で,T字強膜創をC8-0バイクリル糸で一糸縫合することを推奨した5).本症例ではCT-.xationに準じて再固定を行い,以降の経過観察においてハプティックの露出は認めていない.IOL強膜内固定法では感染性眼内炎予防としてハプティックを強膜内に適切に埋め込み,結膜からの露出を回避することが重要とされる8).IOL強膜内固定後にハプティックが結膜から露出する原因としては結膜とハプティックが擦れ合うことと考えられている.結膜による被覆がない場合,眼表面と硝子体空の間に開放性の瘻孔が存在するため眼内炎のリスクを高める可能性がある.一般的にハプティックが露出している場合は外科的修復を必要とする.Pakravanらは強膜内固定後のハプティックの露出例C19眼の検討で,5眼(26%)に結膜炎の既往があったことを報告している9).19眼中3眼(16%)に強膜バックルの手術歴,2眼(10%)チューブシャントの手術歴があり,結膜に手術歴のある眼では,結膜が脆弱で露出を生じる可能性があると指摘している9).本症例では初回手術において理想的な固定状態ではなかった可能性や,フランジのサイズが適切ではなかったために強膜内に完全に埋没されていなかった可能性がある.アトピー皮膚炎の素因をもつ患者や,アレルギー性結膜炎などの既往がある患者など,頻回に目を圧迫あるいは擦過する可能性のある患者に対しては,IOL強膜内固定フランジ法の適応は慎重になるべきと考えた.また,そのような患者にIOL強膜内固定フランジ法を施行した際には,眼球を強く擦らないように指導が必要である.文献1)GaborCSG,CPavlidisMM:SuturelessCintrascleralCposteriorCchamberCintraocularClensC.xation.CJCCataractCRefractCSurgC33:1851-1854,C20072)YamaneCS,CSatoCS,CMaruyama-InoueCMCetal:FlangedCintrascleralCintraocularClensC.xationCwithCdouble-needleCtechnique.COphthalmology124:1136-1142,C20173)KaracaCU,CKucukevciliogluCM,COzgeCGCetal:LateConsetCendophthalmitisaftersuturelessintrascleralIOLimplanta-tionwithYamaneTechnique.IntJOphthalmolC14:1449-1451,C20214)ObataCS,CKakinokiCM,CSaishinCYCetal:EndophthalmitisCfollowingexposureofahapticaftersuturelessintrascleralintraocularlens.xation.JVitreoretinDis3:1,C20185)太田俊彦:眼内レンズ強膜内固定術T-.xationtechnique.眼科手術C29:24-31,C20166)SchechterRJ:Suture-wickendophthalmitiswithsuturedposteriorCchamberCintraocularClenses.CJCCataractCRefractCSurg16:755-756,C19907)TheEndophthalmitisVitrectomyStudyGroup:Resultsoftheendophthalmitisvitrectomystudy.ArandomizedtrialofCvitrectomyCandCintravenousCantibioticsCforCtheCtreat-mentCofCpost-operativeCbacterialCendophthalmitis.CArchCOphthalmolC113:1479-1496,C19958)WernerL:FlangeCerosion/exposureCandCtheCriskCforCendophthalmitis.CJCCataractCRefractCSurgC47:1109-1110,C20219)PakravanP,PatelV,ChauVetal:Hapticerosionfollow-ingCsuturelessCscleral-.xatedCintraocularClensCplacement.COphthalmolRetinaC7:333-337,C2022***

フランジ法を用いた眼内レンズ強膜内固定術における 角膜形状変化

2022年3月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科39(3):363.366,2022cフランジ法を用いた眼内レンズ強膜内固定術における角膜形状変化福島正樹*1宮腰晃央*2追分俊彦*2コンソルボ上田朋子*2柳沢秀一郎*2林篤志*2*1高岡市民病院眼科*2富山大学大学院医学薬学研究部眼科学講座CCornealTopographyChangesafterFlangedIntraocularLensIntrascleralFixationSurgeryMasakiFukushima1),AkioMiyakoshi2),ToshihikoOiwake2),TomokoConsolvoUeda2),ShuichiroYanagisawa2)andAtsushiHayashi2)1)DapartmentofOphthalmology,TakaokaCityHospital,2)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandPharmaceuticalSciences,UniversityofToyamaC目的:ダブルニードルテクニックを用いたフランジ法による,眼内レンズ(IOL)強膜内固定術によって生じる角膜乱視の短期影響を検討する.対象:2018年C11月.2019年C12月に,富山大学附属病院にて上記手術を施行しC1カ月以上経過を追えたC22例C22眼を対象とした.方法:切開幅がC2.8Cmm群(14眼)とC7.0Cmm群(8眼)のC2群に分け,惹起乱視(SIA),角膜高次収差,IOL固定部経線方向の角膜屈折値の変化,IOL固定部直行方向の角膜屈折値の変化を調べた.結果:平均CSIAはC2.8Cmm群でC1.01C±0.34ジオプター(D),7.0Cmm群でC1.41C±0.65Dであった.IOL固定部経線方向の角膜屈折値の変化は,それぞれC.0.19±0.63D,C.0.01±0.68Dであり,有意差は認めなかった(p=0.71,Cp=0.98).IOL固定部直行方向の角膜屈折値の変化は,それぞれC.0.21±0.58D,+0.04±0.66Dであり,有意差は認めなかった(p=0.42,p=0.59).結論:フランジ法を用いたCIOL強膜内固定術では,IOL支持部が角膜形状に与える影響は小さく,惹起乱視の主たる原因は強膜縫合や創口閉鎖に伴う平坦化と考えられる.より長期の観察・検討が必要である.CPurpose:ToCstudyCtheCimpactCofC.angedCintrascleralCintraocularlens(IOL).xationCwithCtheCdouble-needleCtechniqueoncornealastigmatism.Methods:Thisstudyinvolvedtheanalysisof22consecutivepatientswithcor-nealCastigmatismCwhoCunderwentC.angedCintrascleralCintraocularlens(IOL).xationCwithCtheCdouble-needleCtech-niquebetweenNovember2018andDecember2019andwhocouldbefollowedformorethan1-monthpostopera-tive.Thepatientsweredividedinto2groupsbasedonthesizeofthescleralwound(i.e.,the2.8Cmmgroupandthe7.0Cmmgroup)C,CwithCtheCdataCdeterminedCbyCanteriorCsegment-opticalCcoherencetomography(CASIA2;Tomey)Candasurgicallyinducedastigmatism(SIA)calculator(Alcon)C.Results:ThemeanSIAscorewas1.01±0.34diop-ters(D)inCtheC2.8CmmCgroupCandC1.41±0.65DCinCtheC7.0mmCgroup.CBetweenCtheCtwoCgroups,CnoCstatisticallyCsigni.cantCchangesCwereCobservedCinCmeanCcornealCcurvatureCinCtheCmeridianCalongCtheChapticsCofCtheCIOLCandCorthogonaltothehapticsoftheIOL,respectively.Conclusion:Thee.ectoftheIOLhapticsoncornealshapewassmall,CandCtheCmainCcauseCofCSIACwasCthoughtCtoCbeCtheCscleralCsutureCandCtheC.atteningCassociatedCwithCwoundCclosure.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(3):363.366,C2022〕Keywords:眼内レンズ強膜内固定術,フランジ法,惹起乱視,前眼部三次元光干渉断層計.intrascleralCintraocu-larlens.xation,.anged.xation,surgicallyinducedastigmatism,anteriorsegmentopticalcoherencetomography.C〔別刷請求先〕福島正樹:〒933-8550富山県高岡市宝町C4-1高岡市民病院眼科Reprintrequests:MasakiFukushima,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TakaokaCityHospital,4-1Takaramachi,Takaoka-shi,Toyama933-8550,JAPANCp=0.71p=0.98a4846444240術前術後術前術後2.8mm群7.0mm群p=0.42p=0.594846444240術前術後術前術後2.8mm群7.0mm群p=0.06p=0.53[μm][D][D]b0.80.60.40.20術前術後術前術後2.8mm群7.0mm群図1術前後の各種測定結果の変化a:眼内レンズ固定部経線方向の角膜屈折値の変化.Cb:眼内レンズ固定部直交方向の角膜屈折値の変化.Cc:角膜高次収差の変化.はじめに水晶体支持組織のない無水晶体眼に対する眼内レンズCintraocularlens:IOL)固定法として,IOLの毛様体溝縫着術や毛様体扁平部縫着術が広く行われてきたが,術後合併症として角膜内皮減少や続発緑内障,縫合糸断裂が問題となっていた1.5).2007年に強膜内固定術が報告され6),その後,より低侵襲で固定が強固なフランジ法が開発された7).フランジ法では,縫合糸がないこと,最小限の強膜創しか作製しないことから,低侵襲な方法であると報告されている.C364あたらしい眼科Vol.39,No.3,2022一方で,フランジ法を用いたCIOL強膜内固定術における術前後の角膜形状変化に関する報告が少ないことや,スリーピースのトーリックCIOLが存在しないことから,乱視矯正は考慮されていないのが現状である.本研究の目的は,フランジ法を用いたCIOL強膜内固定術における術前後の角膜形状変化を明らかにすることである.CI対象および方法1.対象症例2018年C11月.2019年C12月に富山大学附属病院で,ダブルニードルテクニックを用いたフランジ法によるCIOL強膜内固定術を施行し,1カ月以上経過を追えた患者C22例C22眼(男性C17眼,女性C5眼)の診療録を後ろ向きに調査した.創口の切開幅によりC2群に分け,2.8Cmm群がC14眼(男性C9眼,女性C5眼)で平均年齢はC80.3C±6.6歳,7.0Cmm群がC8眼(男性C8眼,女性C0眼)で平均年齢はC65.6C±16.3歳であった.すべての患者に対し術前に手術の術式と利点・欠点について十分な説明を行い,文書で同意を得ている.本研究は富山大学臨床・疫学研究などに関する倫理審査委員会の承認を得て行った.C2.手術手技手術は,2名の網膜・硝子体術者(Y.S.,U.T.)により行われた.全例,Tenon.下麻酔で行った.無水晶体症例では12時方向にC2.8Cmmの創口を作製した.IOL脱臼・亜脱臼・硝子体落下症例では,まずC12時方向にC7.0Cmmの創口を作製し,IOLを眼外に摘出した.その後,有硝子体眼ではEVA(ドルク社)のC25ゲージシステムを用いて経毛様体扁平部硝子体切除術を行った.2.8Cmm群ではインジェクターを用いて,7.0Cmm群ではそのまま全例CNX-70(参天製薬)をC12時方向の創口から前房内に挿入した.既報のとおり2)ダブルニードルテクニックを用いてフランジ法によるCIOL強膜内固定術を行い,IOL支持部は角膜輪部よりC2Cmmの位置に,2時-8時方向で固定した.なお,全例でカニューラ挿入部の強膜創の縫合を行った.C3.検討項目2群それぞれの惹起乱視,IOL固定部経線方向の角膜屈折値の変化,IOL固定部直交方向の角膜屈折値の変化,角膜高次収差の変化を検討した.すべての症例において,術前と術1カ月後に前眼部三次元光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)のCCASIAII(トーメーコーポレーション)で測定を行った.惹起乱視についてはCCASIAIIで得られた角膜屈折値をCSIACcalculator(アルコン)に入力して算出した.IOL固定部経線方向の角膜屈折値およびCIOL固定部直交方向の角膜屈折値はCCASIAIIによるCAxialCpower(Real)の項目をもとに算出した.CASIAIIでは,指定した軸に対しての角膜屈折値を算出する方法がないため,正確なIOL固定軸(2時-8時方向)の角膜屈折値は計算できない.そのため,近似値としてCCASIAIIのCAxialpower(Real)画面の角膜中央の直径C3Cmm点線円形内のそれぞれの軸方向の三つの値の平均値を使用している.IOL固定部経線方向(2時-8時方向)の角膜屈折値はC45.225°方向の値を使用し,IOL固定部直交方向(4時-10時)の角膜屈折値はC135.315°方向の値を使用し算出した.角膜高次収差は角膜中央直径3Cmmにおける角膜CHOA値を用いた.結果の数値は平均値C±標準偏差で示し,比較には対応のあるCt検定を用い,p<0.05を有意と定めた.CII結果惹起乱視は,2.8Cmm群でC1.01C±0.34D,7.0mm群でC1.41C±0.65Dであり,2群間に有意差は認めなかった(p=0.18).IOL固定部経線方向の角膜屈折値の変化は,2.8Cmm群でC.0.19±0.63D(p=0.71),7.0Cmm群でC.0.01±0.68D(p=0.98)の変化であり,両群とも術前後で有意差は認めず(図1a),2群間でも変化量に有意差は認めなかった(p=0.70).IOL固定部直交方向の角膜屈折値の変化は,2.8mm群でC.0.21±0.58D(p=0.42),7.0mm群ではC.0.04±0.66D(p=0.59)であり,両群とも術前後で有意差は認めず(図1b),2群間でも変化量に有意差は認めなかった(p=0.56).角膜中心C3Cmm径の高次収差の変化は,2.8Cmm群でC.0.12C±0.14Cμm(p=0.06),7.0mm群で.0.02±0.05Cμm(p=0.53)であり,両群とも術前後で有意差は認めず(図1c),2群間でも変化量に有意差は認めなかった(p=0.27).CIII考按今回筆者らは,フランジ法を用いたCIOL強膜内固定術における術前後の角膜形状変化をCCASIAIIで得られたパラメータを用いて検討した.まず,惹起乱視に関してはC2.8Cmm群でC1.01C±0.34D,7.0mm群でC1.41C±0.65Dであった.経強角膜切開によるCIOL.内固定術の惹起乱視に関する過去の報告では,2.4Cmm切開ではC0.40C±0.28D8),5.5mmではC0.77±0.65D9),10.11mm切開ではC1.77C±1.61D9)と切開幅が大きくなると創口方向への平坦化が大きくなる傾向があり,本研究結果と一致した.2群間に有意差は認めなかったが,症例数が少ないためと考えられる.フランジ法を用いたIOL強膜内固定術において,ケラトメータによる角膜乱視がC41DC.1.1.35D,術後12週間でC.1.27D,術後4週間でC.術前に変化したとの報告がある10).本研究のC2.8Cmm群ではやや強い惹起乱視が生じていることがわかる.創口の閉鎖に伴う平坦化に加え,IOL支持部の角膜形状への影響を検討する必要があると考えた.そこでCIOL支持部が角膜形状に与える影響を調べるために,本研究ではCIOL固定部経線方向および直交方向の角膜屈折値の変化も検討した.2.8Cmm群,7.0Cmm群ともに経線方向・直交方向の角膜屈折値はわずかに減少していたが,有意差は認めなかった.強膜フラップ作製を伴うCIOL毛様溝縫着術では,術後C1年で経線方向の角膜屈折値が+1.61D,直交方向の屈折値が.0.60D変化したとの報告がある11).この変化は強膜フラップによる影響と考察されている.強膜フラップを作製していない今回の結果と比較すると,IOL支持部そのものが角膜形状に与える影響は小さいと考えられた.25ゲージシステムによる硝子体切除術後の角膜形状の変化は軽微であることが報告されている12).本研究では全例にて強膜創の縫合を行った.20ゲージシステムではあるが,強膜縫合による角膜曲率への影響も報告されている13).強膜の弾力性の変化や縫合の緩みによる影響は,術後C1.3カ月で消失すると考察されている.本研究のC2.8Cmm群でやや強い惹起乱視が生じていた原因の一つに,強膜創の縫合が影響していた可能性がある.本研究における限界の一つに,術後の角膜形状解析を行った時期が全例術C1カ月後という早期であった点があげられる.小切開白内障手術後でも切開部の創口の瘢痕治癒による角膜形状変化が安定するのにC10週間かかったとの報告がある14).本研究では,切開部の創口閉鎖の途中を観察している可能性も考えられる.本研究では,術前後で角膜高次収差の有意な変化はみられなかった.Gullstrand模型眼にC6.0CmmのスリーピースCIOLを強膜内固定し,術前後の高次収差を比較した過去の報告15)では,中央C5.2Cmm径のコマ収差が増加している.本研究では角膜中央C3Cmmの高次収差を測定しているため,IOL支持部の固定が及ぼす角膜形状への影響は,角膜中央部に及ぶほど大きくないのかもしれない.フランジ法を用いたCIOL強膜内固定術では,IOL支持部が角膜形状に与える影響は小さく,惹起乱視の主たる原因は強膜縫合と切開部の創口閉鎖に伴う平坦化と考えられる.今後,より長期の観察・検討が必要である.文献1)DrolsumL:Long-termCfollow-upCofCsecondaryC.exible,Copen-loop,anteriorchamberintraocularlenses.JCataractRefractSurgC29:498-503,C20032)BiroZ:ResultsCandCcomplicationsCofCsecondaryCintraocu-larClensCimplantation.CJCCataractCRefractCSurgC19:64-67,C19933)DowningJE:Ten-yearfollowupcomparinganteriorandposteriorCchamberCintraocularClensCimplants.COphthalmicCSurgC23:308-315,C19924)EverekliogluCC,CErCH,CBekirCNACetal:ComparionCofCsec-ondaryCimplantationCofC.exibleCopen-loopCanteriorCcham-berCandCscleral-.xatedCposteriorCchamberCintraocularClenses.JCataractRefractSurgC29:301-308,C20035)加藤睦子,中山正,細川海音:眼内レンズ毛様溝縫着術の手術成績.臨眼67:503-509,C20136)GaborCSG,CPavlidisMM:SuturelessCintrascleralCposteriorCchamberCintraocularClensC.xation.CJCCataractCRefractCSurgC33:1851-1854,C20077)YamaneCS,CSatoCS,CMaruyama-InoueCMCetal:FlangedCintrascleralCintraocularClensC.xationCwithCdouble-needleCtechnique.OphthalmologyC124:1136-1142,C20178)KawaharaA,KurosakaD,YoshidaA:Comparisonofsur-gicallyCinducedCastigmatismCbetweenCone-handedCandCtwo-handedCcataractCsurgeryCtechniques.CClinicalCOph-thalmolC7:1967-1972,C20139)GeorgeR,RupaulihaP,SripriyaAVetal:ComparisonofendothelialCcellClossCandCsurgicallyCinducedCastigmatismCfollowingCconventionalCextracapsularCcataractCsurgery,CmanualCsmall-incisionCsurgeryCandCphacoemulsi.cation.COphthalmicEpidermolC12:293-297,C200510)IshikawaCH,CFukuyamaCH,CKomukuCYCetal:FlangedCintrascleralClensC.xationCviaC27-gaugeCtrocarsCusingCaCdouble-needleCtechniquesCdecreasesCsurgicalCwoundsCwithoutClosingCitsCtherapeuticCe.ects.CActaCOphthalmolC98:499-503,C202011)MaCLw,CXuanCD,CLiCXYCetal:CornealCastigmatismCcor-rectionwithsclera.apsintrans-scleralsuture-.xedpos-teriorCchamberClensimplantation:aCpreliminaryCclinicalCobservation.IntJOphthalmolC4:502-507,C201112)YanyaliCA,CGelikCE,CHorozogluCFCetal:CornealCtopo-graphicCchangesCaftertransconjunctival(25-gauge)CsuturelessCvitrectomy.CAmCJCOphthalmolC140:939-941,C200513)DovCW,CHeniaCL,CNissimCLCetal:CornealCtopographicCchangesCafterCretinalCandCvitreousCsurgery.CHistoricalCimage.OphthalmologyC106:1521-1524,C199914)LimCR,CBorasioCE,CIlariL:Long-termCstabilityCofCkerato-metricastigmatismafterlimbalrelaxingincisions.JCata-ractRefractSurgC40:1676-1681,C201415)MatsuiN,InoueM,ItohYetal:Changesinhigher-orderaberrationsofintraocularlenseswithintrascleral.xation.BrJOphthalmolC99:1732-1738,C2015***