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ブリンゾラミドからブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬 への変更1 年間の効果,安全性

2024年4月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(4):439.443,2024cブリンゾラミドからブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更1年間の効果,安全性井上賢治*1朝比奈裕美*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSafetyandE.cacyOveraOne-YearPeriodafterSwitchingfromBrinzolamidetoBrimonidine/BrinzolamideFixedCombinationKenjiInoue1),YumiAsahina1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合剤(BBFC)のC1年間の効果と安全性を後向きに検討する.対象および方法:ブリンゾラミド点眼薬(BRZ)からCBBFCへ変更した緑内障,高眼圧症C128例を対象とした.変更前後の眼圧と視野を比較し,副作用と中止例を調査した.結果:眼圧は変更前(15.4C±3.5CmmHg)より変更3,6,9,12カ月後(13.1C±2.7,13.8C±3.2,13.8C±3.8,13.7C±2.7CmmHg)に有意に下降した.視野のCMD値は変更前C.9.79±4.59CdBと変更C12カ月後.9.18±4.70CdBで同等だった.副作用はC34例(26.6%)で出現し,結膜炎C12例,眼瞼炎C7例などだった.中止例はC50例(39.1%)で,副作用C29例,薬剤追加変更C20例などだった.結論:BRZからCBBFCへの変更ではC1年間にわたり眼圧は下降し,視野は維持できたが,中止例も約C40%と多かった.CPurpose:ToCinvestigateCbothCsafetyCandCe.cacyCoverCaC1-yearCperiodCafterCswitchingCfromCbrinzolamide(BRZ)toCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BBFC)C.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC128CpatientswhowereswitchedfromBRZtoBBFC.Thecomparisonofintraocularpressure(IOP)andmeandeviation(MD)valueatbeforeandatafterswitching,adversereactions,anddropoutswereinvestigated.Results:At3,6,9,and12monthsafterswitching,meanIOPhadsigni.cantlydecreasedto13.1±2.7,C13.8±3.2,C13.8±3.8,CandC13.7C±2.7CmmHg,Crespectively,CcomparedCtoCatbaseline(15.4C±3.5CmmHg)C.CThereCwasCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCMDCvalueCbetweenCthatCatbaseline(C.9.79±4.59dB)andCatCafterC12months(C.9.18±4.70dB)C.COfCtheCtotalC128Cpatients,adversereactionsoccurredin34(26.6%)C,i.e.,conjunctivitis(n=12patients),blepharitis(n=7patients),andother(n=15patients),and50patients(39.1%)discontinuedtheadministrationduetoadversereactions(n=29patients),switching/addingmedications(n=20patients),andother(n=1patient)C.Conclusions:AlthoughIOPdecreasedandvisualacuitywasmaintainedfor1-yearafterswitchingfromBRZtoBBFC,approximately40%ofthepatientsdiscontinuedtheadministration.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(4):439.443,C2024〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,眼圧,安全性,変更.brimonidine/brinzolamide.xedcombination,intraocularpressure,safety,switching.Cはじめに緑内障治療における配合点眼薬は通常のC1成分の点眼薬よりも眼圧下降効果の面で,またC2剤併用よりもアドヒアランスの面で優れており,近年実臨床での使用が増加している1).日本で従来から使用可能な配合点眼薬はすべてにCb遮断薬が含有されており,全身性の副作用の問題からCb遮断薬が含有しない配合点眼薬の開発が望まれていた.ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬を配合したブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が海外ではC2013年より,日本でもC2020年C6月に使用可能となった.日本で実〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/24/\100/頁/JCOPY(73)C439表1患者背景項目症例128例性別男性67例,女性61例平均年齢C67.3±11.4歳(29.91歳)病型POAG84例CNTG43例COH1例変更前薬剤数C2.9±0.7剤(1.5剤)変更前点眼瓶数C2.3±0.6本(1.4本)変更前使用薬剤CPG/b配合点眼薬C66例(ブリンゾラミドPG点眼薬C29例との併用)CPG/b配合点眼薬+ROCK阻害薬C9例CPG/b配合点眼薬+a1遮断薬6例Cb遮断薬C3例PG点眼薬+b遮断薬C3例PG点眼薬+a1遮断薬+ROCK阻害薬C2例その他C10例変更前眼圧C15.4±3.5CmmHg(8.26mmHg)変更前CMD値C.9.79±4.59CdB(C.25.92.1.11CdB)POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,OH:高眼圧症.施された治験においてもブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告されている2,3).しかし,これらの治験2,3)ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の投与期間はC4週間と短期だった.点眼薬の使用は長期に及ぶため,眼圧下降効果と安全性の評価では長期間の経過観察が理想である.上市後にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の効果と安全性については数多く報告されている4.8).しかし,これらの報告の経過観察期間は12週間4),3カ月間5),6カ月間6.8)で,長期ではない.海外ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の開放隅角緑内障,高眼圧症に対するC6カ月間9),正常眼圧緑内障に対するC18カ月間の眼圧下降効果と安全性の報告10)がある.国内でのブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の長期間の眼圧下降効果と安全性の報告はなく,不明である.筆者らはブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の変更C6カ月間の眼圧下降効果と安全性を評価した6).具体的にはブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例,ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例,ブリモニジン点眼薬からの変更症例を後ろ向きに調査した.今回ブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更した症例を対象として,経過観察期間をC1年間に延長し,さらに症例数を増加して,その長期的な効果と安全性を評価した.20*******1816141215.4±3.510128例13.1±2.713.8±3.213.8±3.813.7±2.7118例97例70例67例648**p<0.0001,*p<0.00012(ANOVA,BonferroniandDunn検定)0図1変更前後の眼圧I対象および方法2020年C6月.2021年C6月に井上眼科病院に通院中で,ブリンゾラミド点眼薬を中止してCwashout期間なしでブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド配合点眼薬,1日C2回点眼)が新規に投与された原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む),高眼圧症患者C128例C128眼を対象とした.男性C67例,女性C61例,平均年齢はC67.3C±11.4歳(平均±標準偏差,29.91歳だった)(表1).変更したブリンゾラミド点眼薬以外の緑内障点眼薬は継続とした.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧を調査し,比較した.変更前と比べた変更C3,6,9,12カ月後の眼圧下降幅を調査した.変更前と変更C12カ月後のCHumphrey視野検査C30-2CSITAstandardのCmeandeviation(MD)値を調査し比較した.変更後の副作用と中止症例を調査した.変更前後の薬剤数と点眼瓶数を調査した.配合点眼薬は薬剤C2剤,点眼瓶数C1瓶として解析した.診療録から後ろ向きに調査を行った.片眼該当症例は罹患眼,両眼該当症例は変更前眼圧が高いほうの眼,変更前眼圧が左右同値の症例では右眼を対象とした.眼圧変化の解析にはANOVA,BonferroniandDunn検定を用いた.MD値の比較にはCWilcoxonの符号順位検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障した.CII結果薬剤数は変更前C2.9C±0.7剤,1.5剤,変更後C3.9C±0.7剤,2.6剤だった.点眼瓶数は変更前C2.3C±0.6本,1.4本,変更後C2.3C±0.6本,1.4本だった.眼圧は変更前C15.4C±3.5C眼圧(mmHg)表2副作用内訳症例数期間結膜炎/アレルギー性結膜炎C122週間後,C1カ月後,C3カ月後,C4カ月後,C5カ月後(C3例),C8カ月後,9カ月後,1C0カ月後(2例),1C1カ月後眼瞼炎C710日後,1カ月後,5カ月後(2例),6カ月後,1C1カ月後,1C2カ月後結膜充血C62カ月後,3カ月後(3例),6カ月後,1C0カ月後掻痒感C51カ月後,3カ月後,4カ月後,6カ月後,1C0カ月後刺激感C28カ月後,1C0カ月後眠気C21カ月後,7カ月後めまいC110日後眼痛C22週間後,3カ月後霧視C14カ月後重複あり表3中止症例内訳症例数副作用29例結膜炎C/アレルギー性結膜炎C10例,眼瞼炎C5例,結膜充血C4例,掻痒感C2例,刺激感C2例,めまいC1例,眼痛C1例,眼痛+結膜充血C1例,掻痒感+霧視C1例,結膜炎+眼瞼炎C1例,結膜充血+掻痒感1例薬剤追加変更20例眼圧上昇C9例,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C3例SLT施行1例SLT:選択的レーザー線維柱帯形成術mmHg(平均C±標準偏差),8.26mmHg(128例),変更C3カ月後C13.1C±2.7CmmHg(118例),6カ月後C13.8C±3.2CmmHg(97例),9カ月後C13.8C±3.8mmHg(70例),12カ月後C13.7C±2.7mmHg(67例)で,変更3,6,9,12カ月後すべてで変更前に比べて有意に下降した(変更C3,6,9カ月後Cp<0.0001,変更C12カ月後Cp<0.001)(図1).眼圧下降幅は変更3カ月後C2.1C±2.2CmmHg,6カ月後C1.5C±2.7CmmHg,9カ月後C1.6C±3.1CmmHg,12カ月後C1.3C±2.5CmmHgだった.変更6カ月後に点状表層角膜炎を発症し,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した症例と変更C8カ月後にリパスジル点眼薬のアレルギーでリパスジル点眼薬が中止となった症例は眼圧の解析から除外した.また,変更C6カ月後に転医した症例と変更8カ月後に白内障手術を施行した症例は眼圧の解析からは除外した.視野のCMD値は変更前C.9.79±4.59CdB,C.25.92.1.11dBだった.MD値は変更前と変更C12カ月後C.9.18±4.70CdB,C.19.86.C.0.33CdBで同等だった(p=0.8556).副作用はC34例(26.6%)で出現した(表2).内訳は結膜炎/アレルギー性結膜炎C12例(9.4%),眼瞼炎C7例(5.5%),結膜充血C6例(4.7%),掻痒感C5例(3.9%),刺激感C2例(1.6%),眠気C2例(1.6%)などだった(重複含む).重複した副作用は眼痛+結膜充血(変更C3カ月後),掻痒感+霧視(変更4カ月後),結膜炎+眼瞼炎(変更C5カ月後),結膜充血+掻痒感(変更C10カ月後)が各C1例だった.中止例はC50例(39.1%)だった(表3).中止の理由は,副作用C29例(22.7%)(結膜炎/アレルギー性結膜炎C10例,眼瞼炎C5例,結膜充血C4例,掻痒感C2例,刺激感C2例,めまい1例,眼痛C1例,眼痛+結膜充血C1例,掻痒感+霧視1例,結膜炎+眼瞼炎C1例,結膜充血+掻痒感C1例),薬剤追加や変更C20例(15.6%)(眼圧上昇C9例,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C3例),選択的レーザー線維柱帯形成術(selec-tivelasertrabeculoplasty:SLT)施行C1例(0.8%)だった.これらの副作用は点眼薬中止後に軽快,あるいは消失した.眼圧上昇C9例のうちC8例はリパスジル点眼薬,1例はブナゾシン点眼薬が各々追加された.視野障害進行C8例のうち,6例はリパスジル点眼薬が追加,1例はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬を中止してリパスジル点眼薬に変更,1例はレボブノロール点眼薬とラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更し,さらにリパスジル点眼薬が追加された.眼圧下降不十分C3例では,3例ともリパスジル点眼薬が追加された.CIII考按今回のブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更では,眼圧は変更後に有意に下降した.眼圧下降幅はC1.3.2.1mmHg,眼圧下降率はC6.7.12.9%だった.今回と同様の点眼薬変更を行った報告がある2,6,7,9,10).日本の第CIII相臨床試験では,眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅は3.7C±2.1mmHg,眼圧下降率はC18.1C±10.3%であった2).山田らのC2例C4眼での報告では変更C6カ月後の眼圧下降率はC22.9%だった7).海外での正常眼圧緑内障に対するブリンゾラミド点眼薬単剤からの変更では,眼圧は変更後C18カ月間にわたり有意に下降した10).その眼圧下降幅はC0.8.1.1CmmHg,眼圧下降率は4.9.6.8%であった.ブリンゾラミド点眼薬とCPG/Cb遮断配合点眼薬併用症例でブリンゾラミド点眼薬をブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更したC20例の眼圧下降幅は変更C1カ月後C4.0C±2.9CmmHg,3カ月後C4.5C±3.9CmmHg,6カ月後C4.8C±3.7CmmHgだった9).その眼圧下降率は変更C1カ月後C18.4%,3カ月後C20.7%,6カ月後C22.1%だった.今回の調査では日本の第CIII相臨床試験2)より眼圧下降は不良であったが,日本の第CIII相臨床試験では変更前眼圧がC20.7C±2.0CmmHg2)と高値だったため,また変更前の使用薬剤数が今回の調査がC2.9C±0.7剤と多剤併用であったためと考えられる.海外での正常眼圧緑内障に対するブリンゾラミド点眼薬単剤からの変更では,変更前眼圧はC13.4C±1.6CmmHg10)で,今回のほうがやや高値だった.そのため今回のほうが眼圧下降幅はやや良好だった.開放隅角緑内障,高眼圧症に対するブリンゾラミド点眼薬からの変更では,変更前眼圧はC21.7C±3.2CmmHg9)と今回の調査より高値だった.そのため眼圧下降幅(4.0.4.8CmmHg)は今回の調査より強力だったと考えられる.ただし,海外で使用されているブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬に含有されているブリモニジンは0.2%製剤で,日本のC0.1%製剤とは異なる.今回の調査では変更前と変更C12カ月後の平均CMD値に変化はなかった.しかし,視野障害進行により投与中止となった症例もC8例存在したので,変更後の視野変化には注意する必要がある.また,視野障害の進行についてはさらに長期の経過観察を行い評価すべきである.今回の調査での副作用はC34例(26.6%)に出現した.副作用の内訳は多岐にわたっていた.日本の第CIII相臨床試験のブリンゾラミド点眼薬からの変更では副作用はC8.8%に出現した2).その内訳は霧視C3.3%,点状角膜炎C2.7%などであった.今回のほうが副作用出現が多かったが,経過観察期間が1年間と長期だったためと考えられる.副作用はC34例で出現したがそのうちC29例(85.3%)で投与中止となった.また,筆者らは今回と同様の点眼薬変更についてC6カ月間の効果,安全性を報告した6)が,そのときの副作用出現はC18.3%だった.今回の調査で変更C6カ月後以降に出現した副作用は結膜炎/アレルギー性結膜炎C5例,眼瞼炎C2例,刺激感C2例,眠気C1例,結膜充血+掻痒感C1例だった.新たに成分として加わったブリモニジンによるアレルギー性結膜炎,眼瞼炎が長期投与した後に出現しやすいこと11)が関与していると考えられる.その他にもブリモニジン点眼薬に対するアレルギー反応はC2週間以内にC13.5%12),投与中止値C204.7日でC25.7%13),投与C1年でC15.7%14),2年でC27.1%14)と報告されている.すべての報告12.14)で点眼アレルギーの既往がリスク因子だった.変更C6カ月後以降もアレルギー反応を含めた副作用出現には注意する必要がある.また,投与時には点眼アレルギーの既往を確認したほうがよい.今回の中止症例はC39.1%であったが,日本の第CIII相臨床試験では,有害事象による中止例はなかった2,3).しかし,この臨床試験はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の投与期間がC4週間と短かったことが原因と考えられる.筆者らのC6カ月間の経過観察での中止症例はC16.3%だった6).さらに長期の経過観察を行った今回の症例では,副作用,眼圧上昇,視野障害進行による中止例が変更C6カ月以降にも多数出現しており,点眼後の注意深い経過観察は必要である.また,今回の症例は眼圧が目標眼圧に達していない,あるいは視野障害が進行した症例が含まれている.そのため点眼薬を変更しても眼圧が十分に下がらない,または上昇する症例や視野障害進行が抑えられない症例が存在し,中止症例となった可能性もある.中止症例ではリパスジル点眼薬が投与された症例が多かったが,ブリモニジン点眼薬とリパスジル点眼薬の使用により高い交差性から副作用が多く出現する可能性が高まる.しかし,多剤併用症例のため使用していない点眼薬が少なく,リパスジル点眼薬が使用されたと考える.今回の臨床研究の問題点として以下があげられる.一つめはブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更するあるいは変更後に中止する,あるいは他剤を追加する基準がなく,主治医の判断にまかされていた点である.二つめは各症例のアドヒアランスが明確でない点である.三つめは眼圧測定時間が症例ごとに異なるため,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の眼圧下降効果が正確に判定できなかった可能性がある.しかし,今回は後ろ向き研究であり,実際の臨床現場における状況をありのままに解析すればよいと考え,このような研究内容とした.今回,ブリンゾラミド点眼薬を中止してブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬に変更した症例のC1年間にわたる効果と安全性を調査した.この変更では点眼瓶数,1日の点眼回数は変化せずアドヒアランス維持が期待できる.眼圧は変更後に有意に下降し,視野のCMD値は変更前後で同等だった.副作用はC26.6%に出現したが,配合点眼薬の中止により改善したため重篤ではなかった.中止症例はC39.1%と多く,副作用出現や眼圧上昇などが理由であった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はブリンゾラミド点眼薬からの変更症例においてC1年間にわたり良好な眼圧下降効果と視野維持効果を示したが,副作用出現や中止例は多く,慎重な経過観察が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)InoueK,KomoriR,Kunimatsu-SanukiSetal:FrequencyofCuseCofC.xed-combinationCeyeCdropsCbyCpatientsCwithCglaucomaatmultipleprivatepracticesinJapan.ClinOph-thalmolC16:557-565,C20222)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C20203)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科C37:1289-1298,C20204)OnoeCH,CHirookaCK,CNagayamaCMCetal:TheCe.cacy,CsafetyCandCsatisfactionCassociatedCwithCswitchingCfromCbrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CtoCaC.xedCcombi-nationofbrinzolamide1%andbrimonidine0.1%inglau-comapatients.JClinMedC10:5228,C20215)髙田幸尚,住岡孝吉,岡田由香ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド併用使用から配合点眼薬へ変更後の短期の眼圧変化.眼科64:275-280,C20226)InoueK,Kunimatsu-SanukiS,IshidaKetal:Intraocularpressure-loweringCe.ectsCandCsafetyCofCbrimonidine/Cbrinzolamide.xedcombinationafterswitchingfromothermedications.JpnJOphthalmolC66:440-446,C20227)山田雄介,徳田直人,重城達哉ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬の有効性について.臨眼C76:695-699,C20228)丸山悠子,池田陽子,吉井健悟ほか:ブリンゾラミドとブリモニジン併用点眼からブリモニジン・ブリンゾラミド配合剤への切替え効果の検討.あたらしい眼科C39:974-977,C20229)TekeliCO,CKoseHC:EvaluationCofCtheCuseCofCbrinzol-amide-brimonidineC.xedCcombinationCinCmaximumCmedi-caltherapy.TurkJOphthalmolC52:262-269,C202210)JinCSW,CLeeSM:TheCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationofbrinzolamide1%andbrimonidine0.2%innormalCtensionglaucoma:anC18-monthCretrospectiveCstudy.JOculPharmacolTherC34:274-279,C201811)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C201212)ManniCG,CCentofantiCM,CSacchettiCMCetal:DemographicCandclinicalfactorsassociatedwithdevelopmentofbrimo-nidineCtartrate0.2%-inducedCocularCallergy.CJCGlaucomaC13:163-167,C200413)BlundeauCP,CRousseauJA:AllergicCreactionsCtoCbrimoni-dineCinCpatientsCtreatedCforCglaucoma.CCanCJCOphthalmolC37:21-26,C200214)永山幹夫,永山順子,本池庸一ほか:ブリモニジン点眼によるアレルギー性結膜炎発症の頻度と傾向.臨眼C70:C1135-1140,C2016C***

緑内障点眼薬3 種類2 製剤から4 種類2 製剤への 配合点眼薬切替─多施設共同観察試験

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1476.1480,2023c緑内障点眼薬3種類2製剤から4種類2製剤への配合点眼薬切替─多施設共同観察試験上田晃史*1,4坂田礼*2,4安達京*3宮田和典*1白土城照*2大内健太郎*5相原一*2,4*1宮田眼科病院*2四谷しらと眼科*3アイ・ローズクリニック*4東京大学医学部附属病院*5大塚製薬株式会社CAMulticenterObservationalStudyofSwitchingFixed-CombinationEyeDropsfromTwoFormulationsofThreeEyeDropstoTwoFormulationsofFourEyeDropsfortheTreatmentofGlaucomaKojiUeda1,4),ReiSakata2,4),MisatoAdachi3),KazunoriMiyata1),ShiroakiShirato2),KentaroOuchi5)andMakotoAihara2,4)1)MiyataEyeHospital,2)YotsuyaShiratoEyeClinic,3)EyeRoseClinic,4)TheUniversityofTokyoHospital,5)OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.C目的:FP受容体作動薬(以下,FP)と炭酸脱水酵素阻害薬・b遮断薬配合点眼薬(以下,CAI/b)の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討すること.対象および方法:2カ月以上FPとCA/bを併用してC15CmmHg以上で管理されていた患者を対象とした.FP+CAI/bをCCAR/LAT+BRM/BRZへ変更し,変更前と変更後C3カ月目の眼圧を比較検討した.結果:原発開放隅角緑内障C42眼,高眼圧症C2眼を検討対象とし,点眼変更前後の眼圧はそれぞれC17.5±2.2CmmHg,15.4±3.2CmmHgで,変更後にC2.0±2.8CmmHg(p<0.001)の眼圧下降を認めた.1例で皮疹を認めた.結論:点眼変更によって,重篤な副作用は認めずに眼圧は有意に低下した.CPurpose:ToCevaluateCtheCsafetyCandCe.cacyCofCswitchingCfromCprostaglandinCFreceptor(FP)agonistCandCcarbonicanhydraseinhibitor/bblocker.xedcombination(CAI/b)eyedropstocarteolol/latanoprost.xedcombi-nation(CAR/LAT)andCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BRM/BRZ)eyeCdropsCforCtheCtreatmentCofCglaucoma.CMethods:ThisCstudyCinvolvedCglaucomaCorCocularChypertensionCpatientsCwithCanCintraocularCpressure(IOP)of≧15CmmHgwhohadbeentreatedwithFPreceptoragonistandCAI/beyedropsforatleast2monthsbeforeswitchingtoCAR/LATandBRM/BRZeyedrops.IOPatpreswitchandat3-monthspostswitchwascom-pared.CResults:ThisCstudyCinvolvedC42CpatientsCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandC2CpatientsCwithCocularChypertension.CMeanCIOPCwasC17.5±2.2CmmHgCbeforeCswitchCandC15.4±3.2CmmHgCatC3-monthsCpostCswitch,CthusCshowingasigni.cantdecreaseof2.0±2.8CmmHg(p<0.001).Askinrashwasobservedin1case.Conclusion:IOPsigni.cantlydecreasedafterswitchingfromFPreceptoragonistandCAI/btoCAR/LATandBRM/BRZ,andnoserioussidee.ectswereobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(11):1476.1480,C2023〕Keywords:眼圧,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,原発開放隅角緑内障.intraocularpressure,carteolol/latanoprost.xedcombination,brimonidine/brinzolamide.xedcom-bination,primaryopenangleglaucoma.Cはじめにを行っていくため1,2),病期の進行とともに点眼数が増えて緑内障点眼治療は目標眼圧をめざして単剤や多剤併用点眼いく.そしてC2本以上の点眼薬を使用する際には,点眼アド〔別刷請求先〕坂田礼:〒113-8655東京都文京区本郷C7-3-1CRC棟A北C339(秘書室)東京大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:ReiSakata,M.D.,Ph.D.,TheUniversityofTokyoHospital,7-3-1HongoBunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPANC1476(106)8週間以上カルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液+ブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液観察期間12週間・有害事象処方変更日12週後(±4週:8~16週)・眼圧・眼圧・患者背景図1対象患者8週以上プロスタグランジン点眼液(FP)と炭酸脱水酵素阻害・Cb遮断配合点眼液(CAI/Cb)を併用し,眼圧15CmmHg以上で管理されていた原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者に対して,両点眼薬をカルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液(CAR/LAT)とブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液(BRM/BRZ)へ変更しC12週間の経過観察を行った.ヒアランスを維持させるために配合点眼薬を選択することが推奨されている3).配合点眼薬のメリットとして,1日の点眼回数が減ることや洗い流し効果を軽減させるための点眼間隔を開ける必要がないことなどがある.配合点眼薬は,FP受容体作動薬(以下,FP)とCb遮断薬の組み合わせ(以下,FP/Cb),炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬の組み合わせ(以下,CAI/Cb)が当初認可されたが,2019年にCa2刺激薬とCb遮断薬の配合点眼薬(以下,Ca2/b),2020年に炭酸脱水酵素阻害薬とCa2刺激薬(以下,CAI/Ca2)の配合点眼薬がそれぞれ上市された.CAI/Ca2の登場により,CFP/bと併用することでC2製剤C4成分の治療が可能となった.このCFP/Cb+CAI/a2の配合点眼薬は,最小限の点眼本数で最大に近い効果を得ることと,点眼アドヒアランス維持の両立が期待できる組み合わせである.CFP/b配合点眼薬のCb遮断薬はチモロールまたはカルテオロールが配合されているが,FP/チモロールC1回点眼では,本来のチモロールC2回点眼あるいは持続タイプのゲル化チモロールC1回点眼と比較して終日での眼圧下降は劣る可能性が高い.一方,FP/カルテオロールC1回点眼は,基剤としてアルギン酸を含有し,持続的な作用が維持できるカルテオロールと同様であるため,1回点眼でも終日の眼圧下降が維持できる.今回,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglau-coma:POAG)または高眼圧症患者を対象として,FPとチモロール含有CCAI/CbのC2製剤C3成分の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)のC2製剤C4成分の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討した.CI対象および方法研究デザインは,国内C3施設による多施設共同後ろ向き観察研究である.組み入れ基準として,8週間以上CFPとCAI/bを併用し,15CmmHg以上で管理されていたCPOAGまたは高眼圧症患者のうち,2021年C9月C30日までにさらなる眼圧下降が必要とされ,両点眼薬をCCAR/LATとCBRM/BRZの併用療法に変更した患者を対象とした(図1).除外基準は,1)緑内障手術(レーザー含む)の既往のある患者,2)処方変更前にビマトプロスト点眼液を使用していた患者,3)処方変更後に他の緑内障点眼薬を併用,あるいは緑内障手術(レーザー含む)を実施した患者,4)点眼薬を遵守できなかった患者とした.処方変更日と処方変更C12週後(C±4週:8.16週)に,Goldmann圧平眼圧計で測定した眼圧を,対応のあるCt検定を用いて比較検討した.両眼とも選択基準を満たした症例については処方変更日の眼圧値が高い眼を有効性評価対象眼とし,眼圧が両眼とも同じ場合は右眼とした.主要評価項目は,処方変更日から処方変更C12週後までの眼圧下降値(平均)とし,副次評価項目は,同じ期間の眼圧値,眼圧下降率,そして期間中の安全性の評価とした.眼圧下降値および眼圧下降率の取扱いは以下のとおりとした.・眼圧下降値=(処方変更日の眼圧測定値)C.(12週時の眼圧測定値)・眼圧下降率(%)=(12週時の眼圧下降値)/(処方変更日の眼圧測定値)×100本検討はヘルシンキ宣言の教義を遵守し,宮田眼科病院の倫理委員会(承認CID:CS-368-017)によって承認された.本研究は,新たに試料・情報を取得することはなく,既存の診療録のみを用いた調査研究であるため,研究対象者から文書または口頭による同意取得は行わず,あらかじめ情報を通知もしくは公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障する方法(オプトアウト)による手続きを行った.統計解析は,SASVersion9.4(SASInstituteInc.)を使用し,両側で有意水準は5%とした.表1患者背景合計眼数44眼処方変更日時点での年齢C65.0±11.2歳性別男性:26人,女性:18人表2点眼変更前のFPとCAI/bの組み合わせ症例数(割合)ラタノプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩23(C52.3%)タフルプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩10(C22.7%)トラボプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩5(1C1.4%)ラタノプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩4(9C.1%)タフルプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)トラボプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)25II結果2044名C44眼(POAG42眼,高眼圧症C2眼)が検討対象となった.患者背景を表1,点眼変更前のCFPとCCAI/Cbの処方の組み合わせを表2に示す.処方変更日から変更C12週後までの平均眼圧値は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg(95%信頼区間,平均眼圧(mmHg)151016.8,18.1),15.4C±3.2CmmHg(95%信頼区間,14.5,16.4)で,変更後の平均眼圧下降値はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった(図2).眼圧下降率は,11.4C±15.6%(p<0.001)であった.処方変更C12週目で処方変更日の眼圧値からC10%,20%,30%以上の眼圧下降率を達成した症例数は,それぞ50処方変更日処方変更後12週時れC29眼(66%),15例(34%),3例(7%)であった.点眼変更後,発疹(全身だが詳細不明)を認めた症例がC1例あったが,重篤な副作用は認められなかった.CIII考按本検討ではCFPとCCAI/Cbの併用療法で管理していた緑内障・高眼圧症の患者に対して,CAR/LATとCBRM/BRZへの併用療法に変更したところ,3カ月目で平均C2.0CmmHg(11.4%)と有意な眼圧下降を示した.点眼変更後に発疹を認めた症例があったが,点眼中止後に回復を認め,容認性も良好と考えられた.今回の研究結果からC2製剤C3成分を,Ca2を加えたC2製剤C4成分に変更することで,点眼本数や点眼回数を増やすことなく治療の強化を行うことが可能であることが示された.緑内障進行を遅延させる確実な方法は眼圧下降しかないが,眼圧をC1CmmHg下げることでも視野進行を抑制することができるとされている5).点眼治療において,第一選択薬として用いられることが多いCFPは,単剤のなかでもっとも眼圧下降効果が強い点眼薬であるが,多くの患者はこれを含めた多剤併用管理となっていることが多い2).FPに他点眼図2点眼変更前後の眼圧値処方変更日から処方変更C12週時までの眼圧値(平均)は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg,15.4C±3.2CmmHgで,眼圧下降値(平均)はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった.薬を追加して治療強化を行っていく場合,ほとんどの研究において追加後に有意な眼圧下降効果を認めているが6.10),点眼本数が増えるほど,点眼アドヒアランスが落ちることが懸念される.したがって,治療強化の際には配合点眼薬を選択して患者の負担軽減を図る必要がある.今回使用したCCAR/LATと,LATの眼圧下降効果を比較した研究では,CAR/LATがCLATより強力な眼圧下降を認めており,1日C1回点眼のまま治療を強化できることが示されている11).また,BRM/BRZはCbを含有しない配合点眼薬として,全身既往歴のある患者にも処方する場面が増えてくると考えられが,BRM/BRZの第CIII相臨床試験12)ではBRZ単独療法からCBRM/BRZへの変更によって,3.7C±2.1mmHgの眼圧下降が得られており(変更前C20.7+/.2.0mmHg,変更後C18.2+/.2.8CmmHg),対照であるCBRZ群に比べ有意な眼圧下降が得られている.今回は点眼変更後にC44例中C15例(34%)の症例で,点眼変更前からC20%以上の眼圧下降,そしてC3例(7%)でC30%以上の眼圧下降を認めている.この理由として,チモロールがカルテオロールに変更になったこと,新規のCa2が加わったこと,そして処方内容を一新したことによって点眼アドヒアランスが上がったことなどが考えられる.FPとチモロール点眼薬C2回の併用とCFP/チモロール配合点眼薬C1回の眼圧下降効果を検討したメタ解析13)では,多剤併用のほうが配合点眼薬よりも眼圧下降効果が高いことが示されているが,この理由は言及したとおりである.また,チモロールは長期連用で眼圧下降効果が減弱するいわゆるCtachyphylaxisがあるため14),切替前にチモロールの効果が減弱していた可能性も否定できない.また,第一選択治療としてのCa2の眼圧下降率はC20.25%とされており15),FP単剤にCBRMを追加した場合も有意な眼圧下降を認め(変更前眼圧C16.0C±4.0mmHg,追加後眼圧C14.6C±3.2CmmHg)8),これが眼圧下降に影響した可能性がある.さらに,点眼切り替えで処方内容が一新されたことで患者への説明がしっかりと行われ,患者の点眼への意識が一時的に高まったことも眼圧下降によい影響を及ぼしたと考えられた.副作用について,点眼変更後,発疹を認めた症例がC1例あったが,点眼中止に至るような副作用は認めなかった.処方変更後に加わったCa2は,点眼開始後しばらくしてからアレルギー性結膜炎が発症する場合もあるが,今回は調査期間が短かったためこのような症例はなかった.本研究の限界として,患者の選択バイアスがあったことをあげる.まず今回はC2製剤C3成分で眼圧C15CmmHg以上の患者を対象としたため点眼変更の有効性をはっきりと認めたが,一方でわが国では,点眼使用下でC15CmmHg未満で管理されている緑内障患者が多いのも事実である.そのような患者に対する点眼治療強化についての知見は少なく,仮に点眼変更の効果がない場合は,低侵襲緑内障手術などの手術療法に切り替えていかざるをえない.このような問題点は今後検討し解決していく必要があると考えられた.つぎに,処方変更後C12週まで経過を追えた患者を対象とした研究であったことから,12週までになんらかの理由で点眼が中止された症例の検討が行えていない.また,今回の検討では点眼変更前後で非選択的Cb遮断薬を使用している.カルテオロールはCISA(intrinsicsympathomimeticactivity)作用を有し16),チモロールよりも循環器系への影響が少ないが,非選択性Cb遮断薬自体は喘息や慢性閉塞性肺疾患に対しては処方禁忌であり,このような患者における点眼処方の組み立て方は別途検討が必要である.最後に,点眼変更前後のCFPやCCAIが統一されていない問題があげられる.点眼変更前はC61%がラタノプロストであったが,CAIはC14%しかブリンゾラミドを使用していなかった.前後で同じ成分で切り替えていない症例も含まれたため,今回示した眼圧下降幅(率)も過小あるいは過大評価されている可能性は否定できない.しかし,本研究は,緑内障の日常診療でよく遭遇する処方の組み合わせを想定し,それを現状でもっとも効率的な組み合わせのC2製剤C4成分に切り替えた後の有効性や安全性を検討することを主眼としたため,今回の結果はおおむね実臨床を反映した結果であると考えられた.まとめると,2製剤C3成分のCFPとCCAI/Cbの併用療法から,2製剤C4成分のCFP/CbとCCAI/Ca2の併用療法に変更したところ,ほとんどのケースで問題なく切り替えを行うことができ,3カ月目で有意な眼圧下降を認めた.緑内障点眼治療において治療を強化する際,点眼回数を増加させずに点眼アドヒアランスを維持したままさらなる眼圧下降が得られる配合点眼薬C2製剤を組み合わせる処方は有効であると考えられる.利益相反:上田晃史FII,坂田礼FII,RII,安達京FII,宮田和典FIV,RIV,白土城照FII,大内健太郎E,相原一FII,RIII文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-117,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHarasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)内藤知子:緑内障配合薬のアップデート.あたらしい眼科C38:173-174,C20214)LeskeCMC,CHeijlCA,CHusseinCMCetal:FactorsCforCglauco-maCprogressionCandCtheCe.ectCoftreatment:theCearlyCmanifestCglaucomaCtrial.CArchCOphthalmolC121:48-56,C20035)朴華,井上賢治,井上順治ほか:多施設による緑内障患者の治療実態調査C2020年版─正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障.あたらしい眼科C38:945-950,C20216)LiF,HuangW,ZhangX:E.cacyandsafetyofdi.erentregimensCforCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularhypertension:aCsystematicCreviewCandCnetworkCmeta-analysis.ActaOphthalmolC96:277-284,C20187)MaruyamaCK,CShiratoS:AdditiveCe.ectCofCdorzolamideCorCcarteololCtoClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglauco-ma:aCprospectiveCrandomizedCcrossoverCtrial.CJCGlauco-maC15:341-345,C20068)宮本純輔,徳田直人,三井一央ほか:0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液追加投与後の眼圧下降効果と副作用.あたらしい眼科C33:729-734,C20169)MizoguchiCT,COzakiCM,CWakiyamaCHCetal:AdditiveCintraocularCpressure-loweringCe.ectCofCdorzolamide1%/timolol0.5%C.xedCcombinationConCprostaglandinCmono-therapyCinCpatientsCwithCnormalCtensionCglaucoma.CClinCOphthalmolC5:1515-1520,C201110)松浦一貴,寺坂祐樹,佐々木慎一:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害剤のC3剤併用でコントロール不十分な症例に対するブリモニジン点眼液の追加処方.あたらしい眼科31:1059-1062,C201411)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C201612)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C202013)QuarantaL,BiagioliE,RivaIetal:ProstaglandinanalogsandCtimolol-.xedCversusCun.xedCcombinationsCorCmono-therapyCforopen-angleCglaucoma:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CJCOculCPharmacolCTherC29:382-389,C201314)BogerWP:Shortterm.“escape”andClongterm“drift”.CtheCdissipationCe.ectsCofCtheCbetaCadrenergicCblockingCagents.SurvOphthalmolC28:235-240,C198315)GeddeCSJ,CVinodCK,CWrightCMMCetal:PrimaryCopen-angleglaucomapreferredpracticepattern.OphthalmologyC128:71-150,C202116)佐野靖之,村上新也,工藤宏一郎ほか:気管支喘息患者に及ぼすCb遮断点眼薬の影響CCarteololとCTimololとの比較.現代医療C16:1259-1264,C1984***

ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ ブリンゾラミド配合点眼薬への変更後の長期経過

2023年8月31日 木曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(8):1085.1088,2023cブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更後の長期経過塩川美菜子*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CLong-TermE.cacyofSwitchingtoBrimonidine/BrinzolamideFixedCombinationfromConcomitantUseMinakoShiokawa1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BBFC)のC1年間の効果と安全性を後向きに調査する.対象および方法:ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬の併用治療からCBBFCへ変更した原発開放隅角緑内障,高眼圧症C116例を対象とした.変更前と変更C12カ月後までの眼圧,Humphrey視野のCmeandeviation(MD)値を比較した.副作用と脱落例を調査した.結果:眼圧は変更前C14.3C±2.9CmmHg,変更3,6,9,12カ月後がC14.0C±3.1,C14.0±3.1,14.2C±3.2,14.1C±3.2CmmHgで維持された.MD値は変更前C.10.12±6.11CdB,12カ月後C.9.63±6.13CdBで同等だった.副作用はC8例(6.9%)で出現し,掻痒感,結膜充血などだった.脱落例はC32例(27.6%)あった.結論:BBFCは,1年間にわたり併用治療と同等の眼圧,視野を維持でき,安全性もほぼ良好だった.CPurpose:ToCretrospectivelyCinvestigateCtheC1-yearCoutcomesCandCsafetyCofCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BBFC)inpatientswithprimaryopen-angleglaucoma(POAG)orocularhypertension.PatientsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved116patientswithPOAGorocularhypertensionwhosetreatmentwasswitchedCfromCtheCconcomitantCuseCofCbrimonidineCandCbrinzolamideCtoCBBFC.CIntraocularpressure(IOP)andCmeandeviation(MD)IOPvaluesusingtheHumphreyvisual.eldtestprogramwerecomparedatbaselineanduptoC12CmonthsCpostCswitch.CAdverseCreactionsCandCdropoutsCwereCalsoCinvestigated.CResults:IOPCwasCfoundCtoCbeCmaintainedat3,6,9,and12monthspostswitch(i.e.,14.0±3.1,C14.0±3.1,C14.2±3.2,CandC14.1±3.2CmmHg,respec-tively)comparedwithatbaseline(14.3C±2.9mmHg)C.TheMDIOPvalueatbaselineandat12monthspostswitchwere.10.12±6.11CdBand.9.63±6.13CdB,respectively,thusillustratingnosigni.cantdi.erencebetweenthetwo.In8(6.9%)ofthe116patients,adversereactionssuchasitching,conjunctivalhyperemia,andotherdidoccur,andin32(27.6%)ofthe116patients,administrationwasdiscontinued.Conclusion:BBFCe.ectivelymaintainedIOPandvisual.eldsequivalenttothoseofconcomitanttherapyovera1-yearperiod,andtheoverallsafetywassatis-factory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(8):1085.1088,C2023〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,眼圧,副作用,変更,長期.brimonidine/brinzolamide.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,switching,long-term.CはじめにsiveCglaucomasurgery:MIGS),チューブシャント手術な緑内障は進行性,非可逆性の視神経症で,現在のところエどが普及してきているものの,緑内障の主たる治療が薬物治ビデンスのある唯一の治療は眼圧下降である1).近年,レー療であることは現時点では変わらない.内服薬であれば多剤ザー線維柱帯形成術や低侵襲緑内障手術(minimallyCinva-を一度に服用することが可能であるが,点眼薬の場合はC5分〔別刷請求先〕塩川美菜子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:MinakoShiokawa,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,CJAPANC以上の点眼間隔をあけなければならず,薬剤数が多いほど時間がかかり日常生活に大きな負担を強いることとなる.緑内障診療においては点眼治療の継続率が悪いことが課題である2)が,多剤併用症例では使用点眼薬剤数が増加するに従ってアドヒアランスが低下することも報告されている3).点眼指導,アドヒアランスの向上が疾患の進行抑制に重要であることが緑内障診療ガイドラインにも記されている1).アドヒアランス向上をめざして配合点眼薬が開発され,わが国では現在C9種類の配合点眼薬が使用可能となった.なかでもブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド)はC2020年C6月に発売されたCb遮断薬を含まない数少ない配合点眼薬の一つで,心疾患,慢性閉塞性呼吸器疾患,高齢者などCb遮断薬使用が禁忌または望ましくない患者への有用性が期待される.井上眼科病院(以下,当院)ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬をC3.6カ月使用時の効果と安全性について検討し報告した4,5).今回はブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬の併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更後C1年間の眼圧下降効果と安全性を検討したので報告する.CI対象および方法対象は当院に通院中の原発開放隅角緑内障と高眼圧症で,2020年C6月.2021年C6月にC0.1%ブリモニジン点眼薬とC0.1%ブリンゾラミド点眼薬の併用治療からC0.1%ブリモニジン/0.1%ブリンゾラミド配合点眼薬に変更したC116例C116眼とした.方法はブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬併用治療からCwashout期間を設けずにブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更した症例について,診療録より後ろ向きに調査した.変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧変化,変更前と変更C12カ月後のCHumphrey視野検査(30-2SITAstandardプログラム)のCmeandeviation値(MD値)の変化,副作用と脱落例を検討項目とした.眼圧については眼圧変化量をC2mmHg以上下降,2mmHg未満の変化,2mmHg以上上昇に分けた調査も行った.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧変化の解析にはCANOVAとCBonferroniCandDunn検定を用いた.変更前と変更C12カ月後のCMD値の比較にはCWil-coxonの符号順位検定を用いた.統計学的検討における有意水準はp<0.05とした.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認を得た.研究情報は院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.II結果1.患者背景116例中,男性はC62例,女性はC54例,平均年齢はC65.5C±11.8歳(33.89歳)であった.病型は狭義原発開放隅角緑内障C96例,正常眼圧緑内障C17例,高眼圧症C3例であった.平均使用薬剤数はC4.3C±0.7剤(3.6剤)だった.配合剤はC2剤とカウントした.C2.眼圧変化眼圧変化を図1に示す.変更前平均眼圧はC14.3C±2.9mmHg,変更C3カ月後C14.0C±3.1CmmHg,6カ月後C14.0C±3.1mmHg,9カ月後C14.2C±3.2CmmHg,12カ月後C14.1C±3.2mmHgで,変化なく維持された.12カ月後の眼圧変化量は,変更前と比べてC2CmmHg以上下降C25例(29.4%),2CmmHg未満C37例(43.5%),2CmmHg以上上昇C23例(27.1%)だった(図2).2CmmHg未満C37例の内訳はC2CmmHg未満の上昇がC12例,不変C9例,2CmmHg未満の下降がC16例だった.C3.MD値MD値の変化を図3に示す.変更前CMD値はC.10.12±6.11dB,変更C12カ月後C.9.63±6.13CdBで変化はみられなかった(p=0.2895).C4.副作用・脱落副作用はC116例中C8例(6.9%)で出現した.内訳は掻痒感がC2例で変更C1カ月後,3カ月後に出現,結膜充血がC2例で変更C3カ月後,5カ月後に出現した.霧視が変更C3カ月後に,角膜障害が変更C4カ月後に,アレルギー性結膜炎が変更C6カ月後に,眼瞼炎が変更C9カ月後に各C1例出現した.8例中C6例は投与を中止した.中止により症状は改善した(表1).脱落はC116例中C32例(27.6%)あった.内訳は眼圧上昇が9例,薬剤追加がC8例,副作用がC6例,併用薬による副作用がC5例,白内障手術がC2例,転院がC2例だった.CIII考按ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はわが国で行われた臨床試験において良好な眼圧下降と安全性が報告された6,7).市販後のブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の効果については,当院だけでなく他施設からも報告されている8.10).短期的検討としてCOnoeらは,ブリンゾラミドとブリモニジンの併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更したC22例を対象に行った研究で,眼圧は変更前がC15.0C±4.1CmmHg,変更C3カ月後がC14.8CmmHgで同等で,3カ月後の角膜上皮障害の軽度の悪化がみられたものの結膜充血に変化はなかったと報告した8).高田らは併用治療から配合点眼薬へ変更したC33例を対象とし,眼圧は変更前がC13.5C±2.3CmmHg,変更C3カ月後がC12.9C±3.1CmmHgで有意差はなく,副作用はなかったと報告した9).当院で行20NS18162mmHg以上下降眼圧(mmHg)25例,29.4%121014.3±2.914.0±3.114.0±3.114.2±3.214.1±3.28n=116n=115n=99n=92n=85642n=850変更前変更変更変更変更3カ月後6カ月後9カ月後12カ月後図1変更前後の眼圧眼圧は変更前後で変化はなかった(NS).C図2変更12カ月後の眼圧変化量2CmmHg未満(3C7例)の内訳は,2CmmHg未満上昇12例,不変9例,C2CmmHg未満下降16例だった.0NS副作用表1変更後の副作用発現時期継続・中止MD値(dB)-53カ月後継続1例-10結膜充血2例3カ月後継続1例5カ月後中止1例霧視1例3カ月後中止-20変更前変更12カ月後角膜障害1例4カ月後中止図3変更前後のMD値アレルギー性結膜炎1例6カ月後中止MD値は変更前後で変化はみられなかった(p=眼瞼炎1例9カ月後中止-15-10.12±6.11(n=80)-9.63±6.13(n=52)0.2895).った併用治療から配合点眼薬への変更後C3カ月の調査でも,眼圧は変更前はC14.2C±3.0mmHg,変更C3カ月後はC14.9C±4.4CmmHgで変化はなかった4).長期的効果で山田らは併用治療から配合点眼薬に変更した8例C15眼を対象として,眼圧は変更前C12.9C±2.1CmmHg,変更C3カ月後C13.6C±2.3mmHg,変更C6カ月後C12.6C±1.7CmmHgで有意差はなく,副作用として霧視がC2例,眼瞼皮膚炎がC1例出現したと報告した10).当院ではC102例を対象にブリンゾラミドとブリモニジンの併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更C6カ月後の調査を行い,眼圧は変更前がC14.4C±3.0mmHg,変更C6カ月後がC13.9C±2.8CmmHgと同等,副作用はC7例,6.9%に出現し,結膜充血がC3例,掻痒感がC2例,霧視がC1例,アレルギー性結膜炎を伴う眼瞼炎がC1例あったと報告した5).今回はC1年間の調査でわが国における既報はないものの,3カ月,6カ月後と同様にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更後も眼圧は変わらず維持され,併用治療と同等副作用はC8例(6.9%)で出現したが,6例は投与中止により症状が改善した.の効果を得られた.変更C12カ月後の眼圧変化量はC2CmmHg以上下降がC29.4%,2CmmHg未満がC43.5%,2CmmHg以上上昇がC27.1%であった.併用治療よりも眼圧下降が得られた症例のなかには,点眼本数が減ったことにより点眼遵守が良好となった症例がある可能性が示唆された.一方,配合剤のデメリットとして,1剤の点眼忘れがC2成分の眼圧下降効果減少を招くことがあげられる.眼圧が上昇した症例のなかにはもともとアドヒアランスが不良で,点眼本数が減っても点眼遵守につながらなかった症例も含まれている可能性がある.今後は点眼状況の聴取などアドヒアランスに重点をおいた前向き調査も検討の必要があると考えた.MD値はC1年間では変更前後に変化はなかった.さらに長期的な経過観察が必要であるが,緑内障は疾患の性質上,治療により目標眼圧に達していても視野障害が悪化する症例は存在するため11),長期になるほど点眼薬との関連を考察することは困難となることも予想される.副作用はC8例(6.9%)に出現し,内訳は掻痒感,結膜充血,霧視,角膜障害,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎であった.わが国で行われたブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の臨床試験では,ブリモニジンからの変更で副作用の出現が12.9%6),ブリンゾラミドからの変更でC8.8%7),内訳はいずれも霧視,結膜充血,角膜障害,アレルギー性結膜炎,眼刺激などで,重篤な副作用はなかったと報告されている.当院で行ったC6カ月の調査における副作用の出現はC6.9%5)で,今回はC1年の調査であったが副作用の発現頻度の増加はなく内訳も既知のものだった.長期使用による新たな事象もみられず比較的安全に使用できる点眼薬であることが示唆された.脱落がC32例(27.6%)あった.内訳は眼圧上昇,薬剤追加,副作用,併用薬による副作用,白内障手術,転院だった.眼圧上昇のC9例中C6例は他の薬剤を追加,3例は患者の希望によりブリモニジンとブリンゾラミドの併用治療に戻した.薬剤追加したC8例は眼圧に変化はないものの,さらなる眼圧下降を期待して他の点眼薬を追加していた.副作用による脱落6例はブリモニジンとブリンゾラミドの併用治療に戻し,ブリモニジンかブリンゾラミドを中止した症例だった.併用薬による副作用C5例は結膜充血,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎で併用していたリパスジルの副作用を疑い,リパスジルを中止した症例だった.配合点眼薬のデメリットとして含有する2成分のどちらの成分の副作用か不明になることがある.利便性やアドヒアランスの問題はあるものの,最初にブリモニジンとブリンゾラミド併用治療を行い,十分に効果と安全性を確認してから配合点眼薬へ変更するほうが患者の理解も得やすいかもしれない.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はC1年間にわたり併用治療と同等の眼圧下降効果が得られ安全性も良好で,とくにCb遮断薬の使用が望ましくない患者に対する緑内障治療に有用であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)KashiwagiCK,CFuruyaT:PersistenceCwithCtopicalCglauco-maCtherapyCamongCnewlyCdiagnosedCJapaneseCpatients.CJpnJOphthalmolC58:68-74,C20143)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20094)井上賢治,國松志保,石田恭子ほか:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと短期効果.あたらしい眼科39:226-229,C20225)InoueK,Kunimatsu-SanukiS,IshidaKetal:Intraocularpressure-loweringCe.ectsCandCsafetyCofCbrimonidine/Cbrinzolamide.xedcombinationafterswitchingfromothermedications.JpnJOphthalmolC66:440-441,C20226)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科37:1289-1298,C20207)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科37:1299-1308,C20208)OnoeCH,CHirookaCK,CNagayamaCMCetal:TheCe.cacy,CsafetyCandCsatisfactionCassociatedCwithCswitchingCfrombrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CtoCaC.xedCcombi-nationCofbrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CinCglau-comapatients.JClinMedC10:5228,C20219)高田幸尚,住岡孝吉,岡田由香ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド併用使用から配合点眼薬へ変更後の短期の眼圧変化.眼科64:275-280,C202210)山田雄介,徳田直人,重城達哉ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬の有効性について.臨眼C76:695-699,C202211)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentCofCnormal-tensionCglaucoma.CAmCJCOphthalmolC126:498-505,C1998***

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと 短期効果

2022年2月28日 月曜日

《原著》あたらしい眼科39(2):226.229,2022cブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと短期効果井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CExaminationofthePrescriptionsandShort-TermE.cacyofBrinzolamide/BrimonidineFixedCombinationEyeDropsforGlaucomaKenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BBFC)処方症例の特徴と短期効果を後向きに調査する.対象および方法:2020年C6.9月にCBBFCが新規に処方されたC138例の患者背景と処方パターンを調査した.変更症例では変更前後の眼圧を比較した.結果:原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,その他C18例だった.眼圧はC15.3±5.0CmmHg,使用薬剤数はC3.6±1.3剤だった.BBFC変更C121例,追加C4例,変更追加C13例だった.変更薬剤はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例,ブリンゾラミド点眼薬C29例などだった.眼圧はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更症例では変更前C14.2±3.0CmmHgと変更後C14.9±4.4CmmHgで同等だった.中止例はC14例(10.1%)で眼圧上昇C5例,掻痒感C3例などだった.結論:BBFC処方は同成分同士,含有薬剤からの変更が多かった.眼圧は同成分同士の変更では変化なく,安全性も良好だった.CPurpose:ToCinvestigateCpatientCcharacteristicsCandCshort-termCe.cacyCofCbrinzolamide/brimonidineC.xedcombination(BBFC)eyeCdropsCforCglaucoma.CSubjectsandmethods:ThisCretrospectiveCstudyCinvolvedC138patientsnewlyprescribedwithBBFCinwhomintraocularpressure(IOP)beforeandafterswitchingwereinvesti-gatedandcompared.Results:Inthe138patients,thediagnosiswasprimaryopen-angleglaucomain85,normal-tensionglaucomain35,andotherin18.ThemeanIOPvaluewas15.3±5.0CmmHg,andthemeannumberofmedi-cationsCusedCwasC3.6±1.3.CPrescriptionCpatternsCwereswitching(121patients),adding(4patients),CandCadding/switching(13patients).CInCtheCswitchingCgroup,C62CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidineCandC29CpatientsCswitchedCfromCbrinzolamideCalone.CInCtheCpatientsCwhoCswitchedCfromCbrinzolamide+brimonidine,CnoCsigni.cantCdi.erenceCofCmeanCIOPCwasCobservedCbetweenCpreCandpostCswitching(i.e.,C14.2±3.0CandC14.9±4.4CmmHg,Crespectively).CPostCadministration,C14patients(10.1%)wereCdiscontinued.CConclusions:BBFCCwasCusedasswitchingfromallorpartofthesameingredients.Therewasnosigni.cantdi.erenceinIOPpostswitch-ingbetweenthesameingredients,andthesafetywassatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)39(2):226.229,C2022〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,処方パターン,眼圧,安全性,変更.brimonidine/brinzol-amide.xedcombination,prescriptionspattern,intraocularpressure,safety,switching.Cはじめに低下が問題となる2).そこでアドヒアランス向上のために配緑内障点眼薬治療においてはアドヒアランス維持,向上が合点眼薬が開発された.わが国ではC2010年にラタノプロス重要である.アドヒアランス低下は緑内障性視野障害の進行ト/チモロール配合点眼薬が使用可能になり,2019年C12月に関与している1).また,多剤併用治療ではアドヒアランスまでにC7種類が上市された.このC7種類の配合点眼薬の特徴〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC226(94)は,すべての配合点眼薬にCb遮断点眼薬が配合されていることである.Cb遮断点眼薬の眼圧下降効果は強力である3).しかし,循環器系や呼吸器系の全身性副作用が出現することがあり,コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(II・III度),心原性ショックのある患者,重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者では使用禁忌である.そのためCb遮断点眼薬を配合しない配合点眼薬の開発が望まれていた.2020年C6月にブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬を配合したブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド)が使用可能となり,日本で実施された治験において良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告された4,5).しかし,臨床現場でどのような患者にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が使用されているかを調査した報告は過去にない.そこで今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された患者について,その処方パターン,短期的な眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2020年C6.9月に井上眼科病院に通院中でブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(1日C2回朝夜点眼)が新規に投与された緑内障あるいは高眼圧症患者C138例C138眼(男性70例,女性C68例)を対象とした.平均年齢はC68.2C±10.5歳(平均C±標準偏差)(33.87歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障C85例,正常眼圧緑内障C35例,続発緑内障14例(ぶどう膜炎C7例,落屑緑内障C6例,血管新生緑内障C1例),原発閉塞隅角緑内障C1例であった.投与前眼圧は投与時の眼圧,投与後眼圧は投与後初めての来院時,2.3C±0.9カ月後,1.4カ月後に測定した.投与前眼圧はC15.3C±5.0mmHg,8.43CmmHgであった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が追加投与された症例(追加群),前投薬を中止してブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が投与された症例(変更群),複数の薬が変更,追加となった症例(変更追加群)に分けた.変更群では変更した点眼薬を調査した.変更群ではブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬,ブリンゾラミド点眼薬から変更した症例についてはおのおの投与前後の眼圧を比較した.投与後の副作用と中止症例を調査した.配合点眼薬は薬剤数C2剤として解析した.診療録から後ろ向きに調査を行った.片眼該当症例は罹患眼,両眼該当症例は投与前眼圧が高いほうの眼を対象とした.変更前後の眼圧の比較には対応のあるCt検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.図1変更症例の変更前薬剤II結果全症例のうち追加群はC4例(2.9%),変更群はC121例(87.7%),変更追加群はC13例(9.4%)であった.追加群は正常眼圧緑内障C2例,原発開放隅角緑内障C1例,続発緑内障(血管新生緑内障)1例であった.追加前眼圧はC19.5C±9.7CmmHg(14.34CmmHg),追加後眼圧はC13.3C±4.7CmmHg(9.20CmmHg)で,眼圧は追加前後で同等であった(p=0.100).使用薬剤はなしがC3例,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬がC1例であった.副作用出現症例と中止症例はなかった.変更追加群は原発開放隅角緑内障C9例,正常眼圧緑内障C2例,続発緑内障(ぶどう膜炎)2例であった.変更追加前眼圧はC20.5C±9.6CmmHg(10.43CmmHg),変更追加後眼圧はC15.0C±3.7CmmHg(10.20CmmHg)で,眼圧は変更追加前後で同等であった(p=0.051).使用薬剤数はC3.0C±1.8剤であった.変更追加後の副作用はC1例(眼刺激)で出現した.中止症例は眼圧下降不十分C1例,眼刺激C1例,眼圧が下降したため追加C1カ月以内に中止C1例であった.変更群の変更した点眼薬の内訳はブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬C62例(51.2%)(以下,A群),ブリンゾラミド点眼薬C29例(24.0%)(以下,B群),ブリモニジン点眼薬C14例(11.6%)(以下,C群),その他C16例(13.2%)(以下,その他群)であった(図1).各群の変更前の平均薬剤数は,A群C4.3C±0.8剤,B群C3.1C±0.8剤,C群C2.8C±0.9剤,その他群C3.5C±1.1剤であった.平均使用点眼薬(ボトル)数は変更前CA群C3.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本,変更後CA群C2.7C±0.7本,B群C2.5C±0.7本,C群C2.4C±0.8本であった.1日の平均点眼回数は,変更前CA群C6.2C±1.2回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回,変更後CA群C4.2C±0.7回,B群C3.8C±1.2回,C群C4.0C±1.4回であった.薬剤変更理由は,A群はアドヒアランス向上,B群,C群は眼圧下降不十分であった.その他群の変更理由は,視野障害進行C8例,眼圧下降不十分C4例,アドヒアランス向上C3例,副作用発現A群(ブリモニジン点眼薬+B群(ブリンゾラミド点眼薬からの変更)30ブリンゾラミド点眼薬からの変更)**p<0.00013025252015105201510500C群(ブリモニジン点眼薬からの変更)NS30変更前変更後変更前変更後眼圧(mmHg)16.12514.420151050変更前変更後図2変更症例の眼圧変化(*p<0.05,対応のあるCt検定)(不整脈)1例であった.眼圧はCA群では変更前C14.2C±3.0mmHg,変更後C14.9C±4.4CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.119)(図2).B群では変更前C15.0C±3.6CmmHg,変更後C12.6C±2.8CmmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.0001).C群では変更前C16.1±5.6CmmHg,変更後C14.4C±4.3CmmHgで,変更前後で同等であった(p=0.150).投与後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は変更追加群では眼刺激C1例,変更群ではCA群で掻痒感C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,掻痒感+結膜充血C1例,B群で掻痒感C2例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例であった.中止症例はC14例(10.1%)であった.その内訳は変更追加群で眼圧下降C1例,眼刺激C1例,眼圧下降不十分C1例,変更群ではCA群で眼圧上昇C3例,視力低下1例,掻痒感C1例,B群で掻痒感C1例,掻痒感+眼瞼発赤C1例,めまいC1例,C群で眼刺激C1例,眼圧上昇C1例,その他群で眼圧上昇C1例であった.CIII考按ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に投与された症例を検討したが,さまざまな処方パターンがみられた.ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告6)では,変更群がC93.7%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬+ブリモニジン点眼薬からブリモニジン/チモロール配合点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬への変更C53.4%,Cb遮断点眼薬18.3%,ブリモニジン点眼薬C8.3%などであった.ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターンの報告7)では,変更群がC85.1%を占めていた.変更群の変更した点眼薬の内訳は,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬C43.4%,Cb遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬C34.9%,Cb遮断点眼薬16.9%,炭酸脱水酵素阻害点眼薬C4.2%などであった.同成分同士の変更がブリモニジン/チモロール配合点眼薬C53.3%,ブリンゾラミド点眼薬/チモロール配合点眼薬C78.3%と多く,今回(51.2%)もほぼ同様の結果であった.今回のブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更(A群)では眼圧は変更前後で同等だった.海外で行われたブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬とブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬併用の比較試験において眼圧下降は同等であった8).ただし海外のブリモニジン点眼薬の濃度はC0.2%で,日本のC0.1%製剤とは異なる.A群では平均使用薬剤数はC1剤,1日の平均点眼回数はC2.0回減少したので患者の点眼の負担は減少したと考えられる.一方,今回のブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(B群)では眼圧は変更後に有意に下降し,眼圧下降幅はC1.7C±4.2mmHg,眼圧下降率はC7.6C±20.2%であった.日本で行われた治験では,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC3.7C±2.1CmmHg,眼圧下降率はC18.1±10.3%であった4).今回のブリモニジン点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更(C群)では眼圧は変更前後で同等だった.日本で行われた治験ではブリモニジン点眼薬からの変更では眼圧は変更C4週間後に有意に下降し,ピーク時の眼圧下降幅はC2.9C±2.0CmmHg,眼圧下降率はC14.8C±10.3%であった5).今回の調査では日本で行われた治験5)より眼圧下降は不良であったが,変更前の使用薬剤数がC2.8C±0.9剤と多剤併用であったためと考えられる.また日本で行われた治験においても眼圧下降幅はブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更した薬剤としてブリンゾラミド点眼薬症例(3.7C±2.1CmmHg)のほうがブリモニジン点眼薬症例(2.9C±2.0CmmHg)よりも大きかった.つまりブリモニジン点眼薬のほうがブリンゾラミド点眼薬よりも眼圧下降効果が強い可能性がある.メタアナリシスにおいても眼圧下降のピーク値はブリモニジン点眼薬(6.1CmmHg)はブリンゾラミド点眼薬(4.4mmHg)より強力であった9).今回変更後に副作用はC11例(8.0%)で出現した.その内訳は掻痒感C4例,眼刺激C2例,視力低下C1例,結膜充血C1例,めまいC1例,掻痒感+結膜充血C1例,掻痒感+眼瞼発赤1例であった.日本で行われたブリンゾラミド点眼薬からの変更の治験では副作用はC8.8%に出現した4).その内訳は霧眼C8.2%,点状角膜炎C2.7%,結膜充血C0.5%,眼脂C0.5%,眼の異物感C0.5%,眼刺激C0.5%,眼瞼炎C0.5%,眼乾燥C0.5%,硝子体浮遊物C0.5%などであった.日本で行われたブリモニジン点眼薬からの変更の治験では副作用はC12.9%に出現した5).その内訳は霧視C6.7%,眼刺激C2.8%,結膜充血C1.1%,眼の異常感C1.1%,結膜炎C1.1%,アレルギー性結膜炎0.6%,結膜浮腫C0.6%,眼脂C0.6%,点状角膜炎C0.6%などであった.副作用に関して今回調査と治験4,5)の結果を比較すると今回調査では掻痒感が多かったが,それ以外はほぼ同等だった.中止症例は今回はC10.1%であったが,治験では有害事象による中止症例はなかった4,5).今回,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬が新規に処方された患者を調査した.ブリモニジン点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬からの変更がもっとも多く,ブリンゾラミド点眼薬,ブリモニジン点眼薬からの変更が続いた.ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からの変更とブリモニジン点眼薬からの変更では投与後に眼圧に変化はなく,ブリンゾラミド点眼薬からの変更では投与後に眼圧は有意に下降した.副作用はC8.0%に出現したが,重篤ではなかった.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬は短期的には良好な眼圧下降効果と高い安全性を示した.今後は長期的な経過観察による検討が必要である.文献1)ChenPP:BlindnessCinCpatientsCwithCtreatedCopen-angleCglaucoma.OphthalmologyC110:726-733,C20032)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)LiCT,CLindsleyCK,CRouseCBCetal:ComparativeCe.ective-nessCofC.rst-lineCmedicationsCforCprimaryCopen-angleglaucoma:Asystematicreviewandnetworkmeta-analy-sis.OphthalmologyC123:129-140,C20164)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C20205)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科C37:1289-1298,C20206)小森涼子,井上賢治,國松志保ほか:ブリモニジン/チモロール配合点眼薬の処方パターンと短期的効果.臨眼C75:C521-526,C20217)井上賢治,藤本隆志,石田恭子ほか:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン.あたらしい眼科C32:C1218-1222,C20158)Gandol.CSA,CLimCJ,CSanseauCACCetal:RandomizedCtrialCofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbri-monidineforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AdvTherC31:1213-1227,C20149)VanderValkR,WebersCA,SchoutenJSetal:Intraocu-larpressure-loweringe.ectsofallcommonlyusedglauco-madrugs:aCmeta-analysisCofCrandomizedCclinicalCtrials.COphthalmologyC112:1177-1185,C2005***