‘ブリンゾラミド’ タグのついている投稿

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1299.1308,2020cブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験相原一*1関弥卓郎*2*1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学*2千寿製薬株式会社CPhaseIIIStudytoEvaluatetheE.cacyandSafetyofNovelBrimonidine/BrinzolamideOphthalmicSuspensionComparedwithBrinzolamideOphthalmicSuspensioninPatientswithPrimaryOpen-AngleGlaucoma(Broad-De.nition)orOcularHypertensionMakotoAihara1)andTakuroSekiya2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandFacultyofMedicine,TheUniversityofTokyo,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.C0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)の眼圧下降効果および安全性をC1%ブリンゾラミド点眼剤(以下,ブリンゾラミド)と比較した.原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症患者を対象に,ブリンゾラミドをC4週間投与した後,眼圧値がC18.0CmmHg以上のC423例にCSJP-0125またはブリンゾラミドをC4週間投与した.治療期C4週の眼圧変化値は,SJP-0125群C.3.7±2.1mmHg,ブリンゾラミド群C.1.7±1.9CmmHgで,群間差は.2.0CmmHg(95%信頼区間:C.2.4.C.1.5,p<0.0001)であり,SJP-0125のブリンゾラミドに対する優越性が検証された.副作用はCSJP-0125群C8.8%,ブリンゾラミド群C10.2%に発現し,両群で同程度であった.重篤な副作用も認められなかったことから,SJP-0125の安全性に問題はないと考えられた.CPurpose:ToCcompareCtheCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationCophthalmicCsuspensionCofCbrimonidineCtartrate0.1%/Cbrinzolamide1%(SJP-0125)withCthoseCofCbrinzolamide1%(brinzolamide).Subjects:Thisstudyinvolved423patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhyperten-sionwhoseIOPwas≧18.0CmmHgafterbrinzolamideadministrationfor4weeksandwhounderwentSJP-0125orbrinzolamideadministrationforanadditional4weeks.ThemeanIOPchangesatWeek4ofthetreatment-periodwere.3.7±2.1CmmHgintheSJP-0125groupand.1.7±1.9CmmHginthebrinzolamidegroup,andthedi.erencebetweenthetwogroupswas.2.0CmmHg(95%CI:.2.4to.1.5,p<0.0001)C,thusdemonstratingthesuperiorityofSJP-0125tobrinzolamide.IntheSJP-0125groupandthebrinzolamidegroup,treatment-relatedadverseevents(TRAEs)wereCobservedCin8.8%Cand10.2%,Crespectively,CandCtheCratesCinCbothCgroupsCwereCsimilar.CNoCseriousCTRAEsCwereCreported.CConclusion:SJP-0125CwasCfoundCe.ectiveCforCloweringCIOPCandCsafe,CwithCnoCseriousCTRAEs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1299.1308,C2020〕Keywords:ブリモニジン,ブリンゾラミド,配合剤,緑内障,比較試験.brimonidine,brinzolamide,.xedcombi-nationophthalmicsuspension,glaucoma,comparativestudy.Cはじめにである1).緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場緑内障は進行性かつ非可逆的な視野障害を引き起こす疾患合は単剤療法から開始し,有効性が十分でない場合には多剤であり,エビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1).一方,わ〔別刷請求先〕関弥卓郎:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部Reprintrequests:TakuroSekiya,ResearchandDevelopmentDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0047,JAPANCが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合わせはプロスタグランジン関連薬とCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬,a2作動薬とCb遮断薬のC3種のみであるため,これら以外の組み合わせの配合点眼剤の開発は治療の選択肢を拡大するという点で臨床的意義があると考える.また,緑内障に対して適切な治療が行われない場合,失明に至る可能性がある1)ため,早期発見と早期治療による視機能障害の進行抑制が重要となるが,自覚症状に乏しいことから点眼治療のアドヒアランスが悪いことが報告されており2.4),アドヒアランスの不良は緑内障が進行する重要な要因の一つとなっている1).多剤併用による治療を行う場合には,薬剤数および点眼回数を減らすことのできる配合点眼剤を使用することで,患者のアドヒアランスが向上すると考えられる.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)は,Ca2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミドを有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は,a2受容体を選択的に刺激し,毛様体上皮でCcyclicCade-nosinemonophosphate(cyclicAMP)産生を抑制して房水の産生を抑制し,さらに,ぶどう膜強膜流出路を介して房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す5,6).ブリモニジン酒石酸塩点眼液は,わが国ではC2012年に千寿製薬株式会社が承認を得た緑内障治療薬(アイファガンCR点眼液C0.1%)であり,唯一のCa2作動薬である.臨床試験では他の緑内障治療薬と併用することでさらなる眼圧下降効果が得られており7,8),眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている9).一方,ブリンゾラミドは炭酸脱水酵素阻害薬であり,II型炭酸脱水酵素を特異的に阻害して,CHCO3C.の生成を抑制することにより,Na+の能動輸送機構を抑制し,その結果房水の産生を抑制して眼圧を下降させる10,11).両剤は良好な眼圧下降効果と忍容性により,プロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬の単剤では目標眼圧に達しない患者に対し,第二選択薬として併用されることが多い.また両剤は,プロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬を副作用または禁忌のために使用できない患者にも使用されている.SJP-0125は作用機序の異なるC2成分を配合することから,各単剤よりも高い眼圧下降効果が期待できることに加えて,各単剤を併用するよりも患者の利便性が増し,アドヒアランスを向上させることが期待される.そこで,SJP-0125の第CIII相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0125の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0125の有効成分の一つであるC1%ブリンゾラミド点眼剤(以下,ブリンゾラミド)を対照に比較検討したので報告する.I方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,表1に示す全国C45医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第C14条第C3項および第C80条のC2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験情報の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMINC000028494).C2.目的原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0125をC1日C2回C4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性を,ブリンゾラミドを対照に比較検討する.さらに,参照群としてC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)およびブリンゾラミドの併用群を設定し,SJP-0125の有効性および安全性が各単剤の併用と同程度であることを確認する.C3.対象原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,ブリンゾラミドをC4週間投与後の眼圧がC18.0CmmHg以上で,表2の基準に該当する患者を対象とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.C4.方法a.被験薬被験薬(SJP-0125)は,点眼剤C1Cml中にブリモニジン酒石酸塩をC1Cmg,ブリンゾラミドをC10Cmg含有する懸濁性点眼剤である.Cb.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮蔽(評価者遮蔽)並行群間比較試験として実施した.観察期にブリンゾラミドをC1回C1滴,1日C2回朝(8:00.10:00)および夜(20:00.22:00),両眼にC4週間点眼した後,治療期にCSJP-0125,ブリンゾラミド,ブリモニジンおよびブリンゾラミドの両剤のいずれかを,1回C1滴,1日2回朝および夜,両眼にC4週間点眼した.ブリモニジンおよびブリンゾラミドの併用群では,治験薬の点眼間隔はC10分以上C15分以内とした.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬割付責任者が識別不能性を確認した後,治験薬の無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値のC2時間値および観察期終了日(治療期開始日)のC2時間値のスクリーニング検査日表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師医療法人社団山田眼科特定医療法人丸山会丸子中央病院医療法人社団いとう眼科医療法人社団悠琳会しぶや眼科クリニック医療法人社団優美会川口あおぞら眼科医療法人社団仁香会しすい眼科医院三橋眼科医院道玄坂加藤眼科成城クリニック医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科医療法人豊潤会松浦眼科医院医療法人社団富士青陵会なかじま眼科医療法人社団ムラマツクリニックむらまつ眼科医院医療法人社団優あい会小野眼科クリニック北川眼科医院医療法人社団シー・オー・アイいしだ眼科医療法人社団康順会丹羽眼科医療法人やすまつ佐藤眼科医院医療法人社団風帆会赤塚眼科はやし医院日本医科大学付属病院医療法人社団高友会立川通クリニック医療法人社団済安堂お茶の水・井上眼科クリニック医療法人社団浩仁医会水天宮藤田眼科大谷地裕明野原雅彦大原睦子渋谷裕子清水潔呉輔仁三橋正忠加藤卓次松﨑栄佐藤功松浦雅子中島徹村松知幸小野純治北川厚子石田玲子丹羽やす子佐藤圭吾林殿宣中元兼二高橋義徳岡山良子藤田浩司実施医療機関治験責任医師医療法人光耀会菊地眼科クリニック菊地琢也医療法人健究社スマイル眼科クリニック岡野敬大塚眼科クリニック大塚宏之医療法人社団律心会辻眼科クリニック辻一夫医療法人社団ケアライトさいとう眼科医院齋藤憲医療法人庸倫会スズキ眼科服部博之京都大学医学部附属病院赤木忠道かなもり眼科クリニック金森章泰医療法人社団おじま眼科クリニック尾島知成医療法人朔夏会さっか眼科医院属佑二医療法人中森眼科医院中森玄司医療法人圭明会原眼科病院原岳医療法人社団みすまるのさと会アイ・ローズクリニック安達京大阪大学医学部附属病院松下賢治慶應義塾大学病院結城賢弥琉球大学医学部附属病院古泉英貴杉浦眼科杉浦寅男医療法人稲本眼科医院稲本裕一医療法人湖崎会湖崎眼科湖崎淳尾上眼科医院尾上晋吾医療法人社団秀光会かわばた眼科川端秀仁医療法人社団うえだ眼科クリニック上田裕子表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力がC0.3以上の者3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値がC18.0CmmHg以上C31.0CmmHg以下の者おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去C180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon.下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)角膜障害を有する者10)ブリモニジン酒石酸塩または他のCa2作動薬,ブリンゾラミドまたは他の炭酸脱水酵素阻害薬,スルホンアミド系薬剤,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者11)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬,1日あたりC4.5Cgを超えるアスピリンの大量投与または別に規定したもの以外の眼局所の治療薬を使用する予定のある者12)治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者スクリーニング検査日治療期観察期前治療4週4週現行治療(緑内障点眼剤の・ブリンゾラミドを点眼SJP-0125群:SJP-0125を点眼種類は問わない)または無治療・観察期終了日の0時間値およびブリンゾラミド群:ブリンゾラミドを点眼2時間値の眼圧値が18.0mmHg以上併用群:ブリモニジンおよび31.0mmHg以下の場合、治療期へブリンゾラミドを点眼移行する図1治験デザイン表3検査・観察スケジュール○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.測定時点C7時間での眼圧,血圧・脈拍数は,原則測定した.からの眼圧変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的に割付群を決定した.SJP-0125群,ブリンゾラミド群,併用群の割付比はC3:3:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで治験薬割付責任者が保管した.Cc.被.験.者.数SJP-0125群とブリンゾラミド群の眼圧下降の差をC1.0mmHg,共通の標準偏差を約C2.6CmmHgと推定,有意水準両側C5%,検出力C90%と設定し必要な評価被験者数を各群144例と算出した.併用群は参照群とし,評価被験者数を50例とした.中止脱落を考慮してCSJP-0125群,ブリンゾラミド群の目標被験者数を各群C160例,併用群をC56例,合計C376例と設定した.C5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,細隙灯顕微鏡検査所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野,血圧・脈拍数の各検査を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前かつC8:00.10:00の間にC0時間値を測定し,点眼後はC2時間値および原則としてC7時間値を測定した.また,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を有害事象として収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用と表4被験者背景(FAS)SJP-0125ブリンゾラミド併用合計項目分類(n=181)(n=176)(n=61)(n=418)性別男79(C43.6)87(C49.4)27(C44.3)193(C46.2)女102(C56.4)89(C50.6)34(C55.7)225(C53.8)年齢(歳)平均値±標準偏差C60.5±12.9C62.3±12.7C62.1±11.8C.最小値.最大値28.9C026.8C932.8C2C.対象疾患1原発開放隅角緑内障(広義)115(C63.5)121(C68.8)42(C68.9)278(C66.5)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障79(C43.6)89(C50.6)27(C44.3)195(C46.7)前視野緑内障36(C19.9)32(C18.2)15(C24.6)83(C19.9)高眼圧症66(C36.5)55(C31.3)19(C31.1)140(C33.5)緑内障治療薬2有127(C70.2)134(C76.1)46(C75.4)307(C73.4)無54(C29.8)42(C23.9)15(C24.6)111(C26.6)眼局所の合併症2有108(C59.7)102(C58.0)42(C68.9)252(C60.3)無73(C40.3)74(C42.0)19(C31.1)166(C39.7)眼局所以外の合併症有128(C70.7)122(C69.3)44(C72.1)294(C70.3)無53(C29.3)54(C30.7)17(C27.9)124(C29.7)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層390(C49.7)84(C47.7)32(C52.5)206(C49.3)(有効性評価対象眼)中眼圧層457(C31.5)57(C32.4)19(C31.1)133(C31.8)高眼圧層534(C18.8)35(C19.9)10(C16.4)79(C18.9)例数(%)C.:該当なし1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経障害の存在2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした3:18CmmHg以上C20CmmHg未満4:20CmmHg以上C22CmmHg未満5:22CmmHg以上した.C6.併用薬および併用処置治験期間中,表2の除外基準に抵触する薬剤または処置の併用は禁止した.C7.評価方法および解析方法a.有効性最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を有効性の主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期C4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした(優越性の検証).欠測値に対しては,lastCobservationCcarriedforward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の各観察日(治療期C2週および治療期C4週)の眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれのC0時間値,2時間値,7時間値,0時間値とC2時間値の平均値,0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値)とした.t検定(有意水準両側C5%)によりCSJP-0125群およびブリンゾラミド群のC2群間で比較した.参照群との比較には検定を行わないこととした.眼圧値は,治療期開始日と投与後の各観察日の値をCpairedt検定(有意水準両側C5%)で比較した.また,治療期C4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に解析した.Cb.安全性治療期に組み入れられた被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,治療期開始日以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS例数)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧・脈拍数は治療期の治験薬投与前後を比較した.眼底および視野はスクリーニング検査日からの悪化の有無を比較した.CII結果1.被験者の構成同意を取得した被験者はC498例,観察期にブリンゾラミドの投与を開始したのはC483例であった.このうち無作為化され,治療期の投与を開始したのはC423例であった.治験完了例はC414例,治験未完了例はC9例であった.治療期の投与を開始したC423例(SJP-0125群C182例,ブ表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移(FAS)測定時点CSJP-0125ブリンゾラミド併用0時間値治療期開始日眼圧値C20.7±2.0(1C81)C20.6±1.9(1C76)C20.5±2.0(61)治療期C2週眼圧値C18.5±2.5*†(1C80)C19.3±2.4*†(1C74)C18.2±2.4*(60)変化値C.2.3±2.0†(1C80)C.1.2±1.9†(1C74)C.2.3±2.1(60)変化率C.10.9±9.7†(1C80)C.5.9±9.2†(1C73)C.10.9±9.9(60)治療期C4週眼圧値C18.2±2.8*†(1C80)C19.0±2.7*†(1C73)C18.1±2.1*(59)変化値C.2.5±2.1†(1C80)C.1.6±2.0†(1C73)C.2.4±1.9(59)変化率C.12.3±10.2†(1C80)C.7.7±9.7†(1C73)C.11.6±8.4(59)2時間値治療期開始日眼圧値C20.1±2.0(1C81)C20.0±1.9(1C76)C19.8±1.8(61)治療期C2週眼圧値C16.5±2.4*†(1C80)C18.5±2.4*†(1C74)C16.7±2.6*(60)変化値C.3.6±2.2†(1C80)C.1.5±1.6†(1C74)C.3.2±2.1(60)変化率C.17.7±10.3†(1C80)C.7.7±7.8†(1C73)C.15.9±10.2(60)治療期C4週眼圧値C16.4±2.5*†(1C80)C18.3±2.6*†(1C73)C16.5±2.7*(59)変化値1C.3.7±2.1†(1C81)C.1.7±1.9†(1C76)C.3.4±2.4(60)変化率C.18.1±10.3†(1C80)C.8.5±9.3†(1C73)C.17.1±11.6(59)7時間値治療期開始日眼圧値C19.1±2.1(1C64)C19.2±2.1(1C57)C19.0±2.3(55)治療期C2週眼圧値C16.8±2.6*†(1C63)C18.0±2.4*†(1C54)C17.0±2.4*(54)変化値C.2.3±2.2†(1C63)C.1.1±1.9†(1C54)C.2.0±1.8(54)変化率C.12.0±11.4†(1C63)C.5.7±9.7†(1C54)C.10.2±9.1(54)治療期C4週眼圧値C16.8±2.5*†(1C63)C17.8±2.7*†(1C54)C16.7±2.2*(53)変化値C.2.2±2.1†(1C63)C.1.4±1.9†(1C54)C.2.3±1.7(53)変化率C.11.5±10.7†(1C63)C.7.4±9.8†(1C54)C.11.9±8.8(53)0時間値とC2時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.4±1.9(1C81)C20.3±1.9(1C76)C20.2±1.8(61)治療期C2週眼圧値C17.5±2.3*†(1C80)C18.9±2.3*†(1C74)C17.4±2.3*(60)変化値C.2.9±1.8†(1C80)C.1.4±1.5†(1C74)C.2.7±1.9(60)変化率C.14.3±8.7†(1C80)C.6.9±7.3†(1C74)C.13.4±8.9(60)治療期C4週眼圧値C17.3±2.5*†(1C80)C18.7±2.6*†(1C73)C17.3±2.2*(59)変化値C.3.1±1.9†(1C80)C.1.6±1.7†(1C73)C.2.9±1.9(59)変化率C.15.2±9.2†(1C80)C.8.2±8.5†(1C73)C.14.4±8.8(59)0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.0±1.9(1C64)C19.9±1.9(1C57)C19.8±1.8(55)治療期C2週眼圧値C17.3±2.3*†(1C63)C18.6±2.2*†(1C54)C17.4±2.1*(54)変化値C.2.7±1.8†(1C63)C.1.3±1.4†(1C54)C.2.4±1.5(54)変化率C.13.6±8.7†(1C63)C.6.7±6.9†(1C54)C.12.4±7.3(54)治療期C4週眼圧値C17.2±2.4*†(1C63)C18.3±2.5*†(1C54)C17.1±2.1*(53)変化値C.2.8±1.7†(1C63)C.1.6±1.5†(1C54)C.2.7±1.5(53)変化率C.14.1±8.7†(1C63)C.8.2±7.9†(1C54)C.13.5±7.4(53)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.*:p<0.0001(治療期C2週またはC4週の眼圧値Cvs治療期開始日の眼圧値Cpairedt検定,有意水準両側5%)C†:p<0.01(SJP-0125vsブリンゾラミドCt検定,有意水準両側5%)リンゾラミド群C177例,併用群C64例)をCSSとした.このC2.有効性うち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データの眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率ないC3例および除外基準に抵触したC2例を除くC418例(SJP-を表5,眼圧変化値の推移を図2,対象疾患別,治療期開始0125群C181例,ブリンゾラミド群C176例,併用群C61例)を日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期C4週,FASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.2時間値)を表6,図3および図4に示した.主要評価項目である治療期C4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,SJP-0125群ではC.3.7±2.1CmmHg,ブリ0時間値1ンゾラミド群では.1.7±1.9CmmHgであり,統計学的に有0意な差を認め(点推定値:C.2.0mmHg,95%両側信頼区間:-1-2*.2.4.C.1.5CmmHg,p<0.0001),SJP-0125群のブリンゾラミド群に対する優越性が検証された.副次評価項目である治療期C2週および治療期C4週の眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率は,すべての測定時点で-3*-4-5SJP-0125ブリンゾラミド併用-6SJP-0125群のブリンゾラミド群に対する統計学的に有意な治療期開始日治療期2週治療期4週差を認めた(いずれもCp<C0.01).さらに,治療期C2週および2時間値治療期C4週の眼圧値は,いずれの群もすべての測定時点で投1与前と比較して統計学的に有意に低下した(いずれもCp<0.0001).併用群の眼圧下降効果は,SJP-0125群と同程度であった.また,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に治療期4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を解析した結果,いずれの層も全体の解析結果と同じ傾向を示した.眼圧変化値(mmHg)0-1-4**-2-3-5-6SJP-0125ブリンゾラミド併用3.安全性治療期開始日治療期2週治療期4週治療期にCSJP-0125群,ブリンゾラミド群および併用群に7時間値発現した有害事象はそれぞれ47例(25.8%)59件,43例C1**-3眼圧変化値(mmHg)(24.3%)67件およびC12例(18.8%)13件であった.このうち副作用は,それぞれC16例(8.8%)22件,18例(10.2%)23件,7例(10.9%)7件で,各群の発現割合は同程度であった.治療期の副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,SJP-0125群では霧視C6例(3.3%),点状角膜炎C5例(2.7%),0-1-2-4-5-6SJP-0125ブリンゾラミド併用ブリンゾラミド群では霧視C11例(6.2%),点状角膜炎C4例(2.3%),味覚障害C3例(1.7%),併用群では眼刺激C2例(3.1%)であった.重度と判定された副作用はいずれの群にもなく,中等度と判定された副作用は併用群でC1例C1件(眼瞼紅斑)認めた.その他の副作用は軽度であった.副作用による中止は併用群でC2例(霧視,眼瞼紅斑)であった.副作用による死亡および重篤な副作用はなかった.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数には,臨床上問題となるような変動や所見はみられなかった.CIII考按SJP-0125の有効性を検証するにあたり,SJP-0125の有効成分の一つであり,わが国で第二選択薬として広く使用されているブリンゾラミドを対照に比較試験を行った.治療期C4週での眼圧変化値(2時間値)を比較した結果,SJP-0125群はブリンゾラミド群よりも優れた眼圧下降効果を示した.さらに,治療期C2週および治療期C4週のC0,2,7時間のすべての時点で,SJP-0125群はブリンゾラミド群よりも大きな眼圧下降を示し,1日を通して良好な眼圧下降効治療期開始日治療期2週治療期4週平均値±標準偏差,*:p<0.01(SJP-0125vsブリンゾラミドt検定,有意水準両側5%)図2眼圧変化値の推移果を示した.また,眼圧変化値および眼圧変化率は全測定時点でCSJP-0125群と併用群で同程度であった.これらのことから,SJP-0125はブリンゾラミド単剤から切り替えることで追加の眼圧下降効果が得られ,ブリモニジンとブリンゾラミドの併用から切り替えることで薬剤数を減らしかつ同程度の眼圧下降効果が得られると考える.プロスタグランジン関連薬,Cb遮断薬および炭酸脱水酵素阻害薬のC3剤併用でコントロール不良の患者を対象とした臨床研究では,ブリモニジンの追加投与で眼圧下降効果が得られることが確認されている12).このことから,ブリンゾラミドを第一選択薬であるプロスタグランジン関連薬またはCb遮断薬と併用している場合にも,ブリンゾラミドからCSJP-0125への切り替えによってさらなる眼圧下降効果が得られることが期待される.また,対象疾患別に解析した結果から,SJP-0125は原発開放隅角緑内障,前視野緑内障および高眼圧症のいずれに対しても眼圧下降効果を示すと考えられる.さらに,治療期開表6対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期4週,2時間値)項目CSJP-0125ブリンゾラミド併用眼圧値(治療期開始日,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C20.0±2.0(1C15)C19.9±1.8(1C21)C19.9±2.0(42)原発開放隅角緑内障C20.1±2.2(79)C20.0±1.8(89)C19.6±1.6(27)前視野緑内障C19.7±1.4(36)C19.5±1.7(32)C20.6±2.4(15)高眼圧症C20.4±2.1(66)C20.4±2.1(55)C19.7±1.6(19)眼圧値(治療期開始日,2時間値)低眼圧層:1C8CmmHg以上C20CmmHg未満C18.6±0.5(90)C18.5±0.5(84)C18.5±0.6(32)中眼圧層:2C0CmmHg以上C22CmmHg未満C20.5±0.6(57)C20.4±0.5(57)C20.3±0.4(19)高眼圧層:2C2CmmHg以上C23.6±1.5(34)C23.2±1.3(35)C23.3±1.0(10)図3対象疾患別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)SJP-0125ブリンゾラミド併用低眼圧層中眼圧層高眼圧層眼圧変化率(%)0-5-10-15-20-25-30-35平均値±標準偏差低眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)18mmHg以上20mmHg未満中眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)20mmHg以上22mmHg未満高眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)22mmHg以上図4治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)表7治療期の副作用一覧(SS)SJP-0125ブリンゾラミド併用副作用名1C(n=182)(n=177)(n=64)件数例数(%)件数例数(%)件数例数(%)全体C2216(C8.8)C2318(C10.2)C77(C10.9)眼障害C2015(C8.2)C2016(C9.0)C66(9C.4)霧視C66(3C.3)C1111(C6.2)C11(1C.6)点状角膜炎C75(2C.7)C54(2C.3)C00(0C.0)結膜充血C11(0C.5)C11(0C.6)C11(1C.6)眼脂C11(0C.5)C11(0C.6)C00(0C.0)眼の異物感C11(0C.5)C11(0C.6)C00(0C.0)眼刺激C11(0C.5)C00(0C.0)C22(3C.1)眼瞼炎C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)眼乾燥C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)硝子体浮遊物C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)眼痛C00(0C.0)C11(0C.6)C00(0C.0)眼瞼紅斑C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)眼そう痒症C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)胃腸障害C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)口内乾燥C00(0C.0)C00(0C.0)C11(1C.6)臨床検査C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)視野検査異常C11(0C.5)C00(0C.0)C00(0C.0)神経系障害C11(0C.5)C33(1C.7)C00(0C.0)味覚異常C11(0C.5)C33(1C.7)C00(0C.0)1:副作用名はCICH国際医薬用語集CMedDRA/JVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.始日(2時間値)の眼圧値別に解析した結果から,SJP-012525.8%,ブリンゾラミド群でC24.3%,併用群でC18.8%であは投与開始前の眼圧値にかかわらず眼圧下降効果を示すと考り,各群での発現割合は同程度であった.副作用発現割合もえられる.3群間で同程度であり,いずれの群でも重篤な副作用は認め安全性に関しては,有害事象の発現頻度はCSJP-0125群でなかった.SJP-0125群で比較的発現頻度の高かった副作用は霧視(3.3%)および点状角膜炎(2.7%)であったが,これらはC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液またはC1%ブリンゾラミド点眼液において既知の副作用であり13,14),発現割合はブリンゾラミド群および併用群と同程度であった.このことから,4週間の使用ではCSJP-0125の安全性はブリンゾラミド単剤および併用療法と同様に良好であると考える.海外ではC0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(SIMBRINZACR,米国CAlconCResearch,Ltd.)が市販されている.単剤で眼圧コントロール不良または眼圧降下薬を多剤併用している開放隅角緑内障または高眼圧症患者のうち,休薬期間後の眼圧値がC9:00時点でC24.36CmmHg,11:00時点でC21.36CmmHgである患者を対象とした海外第CIII相試験では,0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤群の投与開始日からの眼圧変化値(0,2,7時間値の平均)は投与C2週でC.7.6mmHg,3カ月でC.7.9CmmHg,6カ月でC.7.8CmmHgであり,投与後2週からC6カ月にかけて安定した眼圧下降効果が確認されている15).これらのことから,SJP-0125も同様に,本試験で検証したC4週間を超えて長期間投与した場合でも,安定した眼圧下降効果を示すことが期待される.また,投与C6カ月における有害事象の発現頻度はC0.2%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤群と各単剤群および併用群で同程度であったことから15,16),SJP-0125でも長期投与時の安全性に問題はないことが期待される.以上の結果より,SJP-0125は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるブリンゾラミド点眼剤に比べ眼圧下降効果は有意に大きく,その効果は1日を通じて良好であること,安全性に問題のないことを確認した.このことから,ブリンゾラミド単剤からCSJP-0125に変更することで,薬剤数および点眼回数を変えることなく,より優れた眼圧下降効果を得ることができると考えられる.この追加の眼圧下降効果は,第一選択薬とブリンゾラミドを併用している場合にブリンゾラミドをCSJP-0125に変更することでも得られると期待される.また,すでにCa2作動薬および炭酸脱水酵素阻害薬を併用している場合は,SJP-0125に変更することで併用治療と同程度の治療効果が得られることに加え,薬剤数および総点眼回数が減ることで患者のアドヒアランスが向上すると考えられる.SJP-0125はわが国初のCb遮断薬を含まない配合点眼剤であり,さらにプロスタグランジン関連薬も含まないことから,それら単剤で効果不十分またはそれらを使用できない患者に使用できる配合剤としても期待される.以上より,SJP-0125は緑内障治療において有用性の高い配合点眼液であると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内C1308あたらしい眼科Vol.37,No.10,2020障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌122:5-53,C20182)GrayCTA,COrtonCLC,CHensonCDCetal:InterventionsCforCimprovingadherencetoocularhypotensivetherapy.CochraneDatabaseSystRevC2009:CD006132,C20093)QuigleyHA,FriedmanDS,HahnSR:Evaluationofprac-ticeCpatternsCforCtheCcareCofCopen-angleCglaucomaCcom-paredwithclaimsdata:theglaucomaadherenceandper-sistencystudy.OphthalmologyC114:1599-1606,C20074)TsaiJC,McClureCA,RamosSEetal:Compliancebarri-ersCinglaucoma:aCsystematicCclassi.cation.CJCGlaucomaC12:393-398,C20035)TorisCB,GleasonML,CamrasCBetal:E.ectsofbrimo-nidineConCaqueousChumorCdynamicsCinChumanCeyes.CArchCOphthalmolC113:1514-1517,C19956)BurkeCJ,CSchwartzM:PreclinicalCevaluationCofCbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,19967)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌C116:955-966,C20128)新家眞,坂本祐一郎:ブリモニジン点眼液C0.1%の臨床的有用性に関する多施設前向き観察的研究─使用成績調査中間報告.臨眼C71:859-867,C20179)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentCstudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C201110)中島正之:新しい緑内障治療薬:点眼用炭酸脱水酵素阻害剤.あたらしい眼科10:959-964,C199311)IesterM:BrinzolamideCophthalmicsuspension:aCreviewCofCitsCpharmacologyCandCuseCinCtheCtreatmentCofCopenCangleglaucomaandocularhypertension.ClinOphthalmolC2:517-523,C200812)松浦一貴,寺坂祐樹,佐々木慎一:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害剤のC3剤併用でコントロール不十分な症例に対するブリモニジン点眼液の追加処方.あたらしい眼科31:1059-1062,C201413)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C201214)MarchCWF,COchsnerCKI,CtheCBrinzolamideCLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyande.cacyofCbrinzolamide1.0%(Azopt)inCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC151:671-681,C201115)AungCT,CLaganovskaCG,CHernandezCParedesCTJCetal:CTwice-dailyCbrinzolamide/brimonidineC.xedCcombinationCversusbrinzolamideorbrimonidineinopen-angleglauco-maCorCocularChypertension.CAmericanCAcademyCofCOph-thalmologyC121:2348-2355,C201416)GandoliSA,LimJ,SanseauACetal:Randomizedtrialofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbrimo-nidineCforCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAdvTherC31:1213-1227,C2014(132)

ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III 相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験

2020年10月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科37(10):1289.1298,2020cブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験相原一*1関弥卓郎*2*1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学*2千寿製薬株式会社CPhaseIIIStudytoEvaluatetheE.cacyandSafetyofNovelBrimonidine/BrinzolamideOphthalmicSuspensionComparedwithBrimonidineOphthalmicSolutioninPatientswithPrimaryOpen-AngleGlaucoma(Broad-De.nition)orOcularHypertensionMakotoAihara1)andTakuroSekiya2)1)DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicineandFacultyofMedicine,TheUniversityofTokyo,2)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.C0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)の眼圧下降効果および安全性をC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)と比較した.原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症患者を対象に,ブリモニジンをC4週間投与した後,眼圧値がC18.0CmmHg以上のC355例にCSJP-0125またはブリモニジンをC4週間投与した.治療期C4週の眼圧変化値は,SJP-0125群C.2.9±2.0mmHg,ブリモニジン群C.2.4±2.0CmmHgで,群間差は.0.6CmmHg(95%信頼区間:C.1.0.C.0.1,p=0.0109)であり,SJP-0125のブリモニジンに対する優越性が検証された.副作用はCSJP-0125群C12.9%,ブリモニジン群C1.1%に認められた.重篤な副作用は認めず,おもな副作用は既知のものであったことから,SJP-0125の安全性に問題はないと考えられた.CPurpose:ToCcompareCtheCintraocularpressure(IOP)-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCtheC.xedCcombinationCophthalmicCsuspensionCofCbrimonidineCtartrate0.1%/brinzolamide1%(SJP-0125)withCthoseCofCbrimonidineCtar-trate0.1%(brimonidine)C.Subjects:Thisstudyinvolved355patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension,whoseIOPwas≧18.0CmmHgafterbrimonidineadministrationfor4weeksandwhounderwentSJP-0125orbrimonidineadministrationforanadditional4weeks.ThemeanIOPchangesatWeek4ofthetreatment-periodCwereC.2.9±2.0CmmHgCinCtheCSJP-0125CgroupCandC.2.4±2.0CmmHgCinCtheCbrimonidineCgroup,CandCtheCdi.erencebetweenthetwogroupswas.0.6CmmHg(95%CI:.1.0to.0.1,Cp=0.0109)C,thusdemonstratingthesuperiorityCofCSJP-0125CtoCbrimonidine.CInCtheCSJP-0125CgroupCandCtheCbrimonidineCgroup,Ctreatment-relatedCadverseevents(TRAEs)wereCobservedCin12.9%Cand1.1%,Crespectively.CAlthoughCpreviouslyCreportedCTRAEsCassociatedwithbrimonidineorbrinzolamidecommonlyoccur,noseriousTRAEswereobserved.Conclusion:SJP-0125wasfounde.ectiveforloweringIOPandsafe,withnoseriousTRAEs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(10):1289.1298,C2020〕Keywords:ブリモニジン,ブリンゾラミド,配合剤,緑内障,比較試験.brimonidine,brinzolamide,.xedcombi-nationophthalmicsuspension,glaucoma,comparativestudy.Cはじめに治療法は眼圧下降である1).わが国では単剤としてプロスタ緑内障治療の目的は患者の視機能を維持させることであグランジン関連薬,Cb遮断薬,Ca2作動薬,炭酸脱水酵素阻り,現在,緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な害薬,Rhoキナーゼ阻害薬,Ca1遮断薬,交感神経非選択性〔別刷請求先〕関弥卓郎:〒C650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部Reprintrequests:TakuroSekiya,ResearchandDevelopmentDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe,Hyogo650-0047,JAPANC作動薬,副交感神経作動薬が承認されている.緑内障診療ガイドラインでは,薬物治療を行う場合まず単剤療法から開始し,目標眼圧に達していないなど有効性が十分でない場合には多剤併用(配合点眼剤を含む)を行うとされている1)が,わが国で承認されている配合点眼剤の有効成分の組み合わせはプロスタグランジン関連薬とCb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬,Ca2作動薬とCb遮断薬のC3種のみである.そのため,上記以外の組み合わせで配合点眼剤を開発することは治療の選択肢を広げることができる点で臨床的意義があると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩/1%ブリンゾラミド配合懸濁性点眼剤(以下,SJP-0125)は,Ca2作動薬であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミドを有効成分とする配合点眼剤である.ブリモニジン酒石酸塩は房水産生を抑制し,ぶどう膜強膜路からの房水流出を促進することで眼圧下降効果を示す2).また,眼圧下降効果に相応しない視野維持効果があることも報告されている3).ブリンゾラミドは房水産生を抑制することで眼圧下降効果を示す4).そこで,SJP-0125の第CIII相比較試験として,原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象に,SJP-0125の有効性(眼圧下降効果)および安全性について,SJP-0125の有効成分の一つであるC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤(以下,ブリモニジン)を対照に比較検討したので報告する.CI方法1.実施医療機関および治験責任医師本治験は,表1に示す全国C55医療機関で実施した.治験開始に先立ち,すべての医療機関の治験審査委員会で審議され,治験の実施が承認された.本治験は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則,治験実施計画書,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」第C14条第C3項および第C80条のC2に規定する基準ならびに「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)に関する省令」などの関連規制法規を遵守して実施した.治験情報の登録は,UMIN-CTRに行った(UMIN試験ID:UMINC000028493).C2.目的原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象として,SJP-0125をC1日C2回C4週間点眼したときの有効性(眼圧下降効果)および安全性を,ブリモニジンを対照に比較検討することを目的とした.C3.対象原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症と診断され,ブリモニジンをC4週間投与後の眼圧がC18.0CmmHg以上で,表2の基準に該当する患者を対象とした.すべての被験者から治験参加前に文書による同意を得た.C4.方法a.被験薬被験薬(SJP-0125)は,点眼剤C1Cml中にブリモニジン酒石酸塩をC1Cmg,ブリンゾラミドをC10Cmg含有する懸濁性点眼剤である.Cb.治験デザイン・投与方法本治験は,多施設共同無作為化単遮蔽(評価者遮蔽)並行群間比較試験として実施した.観察期にブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝(8:00.10:00)および夜(20:00.22:00),両眼にC4週間点眼した後,治療期にCSJP-0125またはブリモニジンをC1回C1滴,1日C2回朝および夜,両眼にC4週間点眼した.治験デザインを図1に示した.治験薬は点眼容器を小箱に入れて封緘し,外観上の識別不能性を確保した.治験薬割付責任者が識別不能性を確認した後,治験薬の無作為割付を行った.被験者への割付は,観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値のC2時間値および観察期終了日(治療期開始日)のC2時間値のスクリーニング検査日からの眼圧変化値を因子とし,施設および各因子の群間のバランスを確保するため,動的に割付群を決定した.SJP-0125群,ブリモニジン群の割付比はC1:1とした.割付表は厳封し,開鍵時まで治験薬割付責任者が保管した.Cc.被.験.者.数SJP-0125群とブリモニジン群の眼圧下降の差を1.0mmHg,共通の標準偏差を約C2.6CmmHgと推定,有意水準両側C5%,検出力C90%と設定し,必要な評価被験者数を各群C144例と算出した.中止脱落を考慮してCSJP-0125群,ブリモニジン群の目標被験者数を各群C160例とし,合計C320例と設定した.C5.検査・観察項目眼圧,最高矯正視力,細隙灯顕微鏡検査所見(結膜・眼瞼・角膜),眼底,視野,血圧・脈拍数の各検査を表3のスケジュールで実施した.眼圧は,Goldmann圧平眼圧計で朝の点眼前かつC8:00.10:00の間にC0時間値を測定し,点眼後はC2時間値および原則としてC7時間値を測定した.また,治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくないまたは意図しない疾病またはその徴候を有害事象として収集した.治験薬との因果関係を否定できない場合は副作用とした.C6.併用薬および併用処置治験期間中,表2の除外基準に抵触する薬剤または処置の併用は禁止した.C7.評価方法および解析方法a.有効性最大の解析対象集団(fullanalysisset:FAS)を有効性の表1実施医療機関および治験責任医師実施医療機関治験責任医師実施医療機関治験責任医師たかはし眼科髙橋俊明松村眼科医院松村明金沢大学附属病院杉山和久医療法人明和会宮田眼科病院大谷伸一郎医療法人社団豊栄会さだまつ眼科クリニック貞松良成医療法人陽山会井後眼科馬渡祐記医療法人社団深志清流会清澤眼科医院清澤源弘医療法人恕心会さめしま眼科鮫島基泰医療法人社団はしだ眼科クリニック橋田節子医療法人社団彩光会札幌かとう眼科加藤祐司たまがわ眼科クリニック關保中の島たけだ眼科竹田明野村眼科野村亮二東北大学病院津田聡吉村眼科内科医院吉村弦公益財団法人湯浅報恩会寿泉堂綜合病院神田尚孝医療法人社団緑泉会南波眼科南波久斌眼科君塚医院君塚佳宏医療法人大宮はまだ眼科濱田直紀医療法人誠療会尾﨏眼科クリニック尾﨏雅博医療法人大宮はまだ眼科西口分院福岡詩麻市橋眼科クリニック市橋慶之医療法人社団泰成会こんの眼科今野泰宏東京大学医学部附属病院坂田礼医療法人社団うえだ眼科クリニック上田裕子東京浜松町眼科クリニック南光太郎医療法人社団瑞英会野近眼科医院吉見裕美子藤井眼科藤井博明医療法人社団碧明会大沢眼科・内科大澤彰岸根公園眼科斉藤秀典武蔵小金井さくら眼科安田佳守臣国保直営総合病院君津中央病院中村洋介医療法人社団慶翔会両国眼科クリニック岩崎美紀医療法人天神疋田眼科医院*疋田直文東京医科大学病院丸山勝彦渡辺眼科渡辺純子いまい眼科今井雅仁大森町眼科クリニック天野由紀医療法人湘山会眼科三宅病院三宅豪一郎医療法人良仁会柴眼科医院柴宏治医療法人社団秀明会遠谷眼科遠谷茂東京慈恵会医科大学附属病院久米川浩一健康保険組合連合会大阪中央病院井上由美子諸星眼科クリニック諸星計草津眼科クリニック望月英毅西府ひかり眼科野口圭医療法人鈴木眼科クリニック鈴木亨医療法人社団ひいらぎ会若葉台眼科佐藤功医療法人宮本眼科宮本秀久医療法人かがやきくぼた眼科久保田泰隆望月眼科望月泰敬医療法人菅澤眼科医院菅澤啓二医療法人杏水会右田眼科右田雅義杉浦眼科杉浦寅男医療法人宮嶋会みやじま眼科宮嶋聖也*旧:医療法人福ビル疋田眼科医院表2おもな選択基準および除外基準おもな選択基準1)20歳以上の外来患者(日本人),性別不問2)両眼とも最高矯正視力がC0.3以上の者3)観察期終了日(治療期開始日)の眼圧値がC18.0CmmHg以上C31.0CmmHg以下の者おもな除外基準1)緑内障に対する手術またはレーザー療法,内眼手術(各種レーザー療法を含む),角膜移植術または角膜屈折矯正手術の既往のある者2)コンタクトレンズの装用が必要な者3)高度の視野障害がある者4)スクリーニング検査日の過去C180日以内に副腎皮質ステロイドの眼内注射,Tenon.下注射または結膜下注射を実施した者5)治験期間中に病状が進行するおそれのある網膜疾患を有する者6)原発開放隅角緑内障(広義),高眼圧症以外の活動性の眼科疾患を有する者7)がんに罹患している者,または重篤な全身性疾患を有する者8)脳血管障害,起立性低血圧,心血管系疾患などの循環不全を有する者9)角膜障害を有する者10)ブリモニジン酒石酸塩または他のCa2作動薬,ブリンゾラミドまたは他の炭酸脱水酵素阻害薬,スルホンアミド系薬剤,本治験で使用する薬剤の成分に対し,アレルギーまたは重大な副作用の既往のある者11)緑内障・高眼圧症に対する治療薬,副腎皮質ステロイド,交感神経刺激薬,交感神経遮断薬,副交感神経刺激薬,モノアミン酸化酵素阻害薬,抗うつ薬,炭酸脱水酵素阻害薬,抗コリン作用を含む治療薬,1日あたりC4.5Cgを超えるアスピリンの大量投与または別に規定したもの以外の眼局所の治療薬を使用する予定のある者12)治験責任医師または治験分担医師が本治験への参加が適切でないと判断した者スクリーニング検査日前治療現行治療(緑内障点眼剤の種類は問わない)または無治療図1治験デザイン表3検査・観察スケジュール○:スクリーニング実施前に文書による同意を取得した.測定時点C7時間での眼圧,血圧・脈拍数は,原則測定した.主たる解析対象集団とした.主要評価項目は,治療期C4週における治療期開始日からの眼圧変化値(2時間値)とした(優越性の検証).欠測値に対しては,lastCobservationCcarriedforward(LOCF)によりデータを補完した.副次評価項目は,治療期の各観察日(治療期C2週および治療期C4週)の眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値,眼圧変化率(それぞれのC0時間値,2時間値,7時間値,0時間値とC2時間値の平均値,0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値)とした.t検定(有意水準両側C5%)によりCSJP-0125群およびブリモニジン群のC2群間で比較した.眼圧値は,治療期開始日と投与後の各観察日の値をCpairedt検定(有意水準両側5%)で比較した.また,治療期C4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に解析した.Cb.安全性治療期に組み入れられた被験者のうち,治験薬の投与を一度も受けなかった被験者,治療期開始日以降の再来院がないなどの理由により安全性が評価できなかった被験者を除外した集団を安全性解析対象集団(safetyset:SS)とした.有害事象,最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血圧・脈拍数を評価した.有害事象は,発現割合(発現例数/SS例数)を算出した.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,血圧・脈拍数は治療期の治験薬投与前後を比較し表4被験者背景(FAS)SJP-0125ブリモニジン合計項目分類(n=173)(n=177)(n=350)性別男87(C50.3)91(C51.4)178(C50.9)女86(C49.7)86(C48.6)172(C49.1)年齢(歳)平均値±標準偏差C62.7±12.9C61.5±13.3C.最小値.最大値21.8C522.8C7C.対象疾患1原発開放隅角緑内障(広義)126(C72.8)126(C71.2)252(C72.0)(有効性評価対象眼)原発開放隅角緑内障87(C50.3)89(C50.3)176(C50.3)前視野緑内障39(C22.5)37(C20.9)76(C21.7)高眼圧症47(C27.2)51(C28.8)98(C28.0)緑内障治療薬2有137(C79.2)133(C75.1)270(C77.1)無36(C20.8)44(C24.9)80(C22.9)眼局所の合併症2有118(C68.2)112(C63.3)230(C65.7)無55(C31.8)65(C36.7)120(C34.3)眼局所以外の合併症有131(C75.7)131(C74.0)262(C74.9)無42(C24.3)46(C26.0)88(C25.1)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層3102(C59.0)105(C59.3)207(C59.1)(有効性評価対象眼)中眼圧層441(C23.7)41(C23.2)82(C23.4)高眼圧層530(C17.3)31(C17.5)61(C17.4)例数(%)C.:該当なし1:対象疾患は下のように定義した.原発開放隅角緑内障:以下の(1),(2)を満たす者前視野緑内障:以下の(2)を満たし治療が必要と判断された者(1)緑内障性視野異常の存在,(2)緑内障性視神経障害の存在2:左右眼どちらか一方でも該当した場合,有とした.3:18CmmHg以上C20CmmHg未満4:20CmmHg以上C22CmmHg未満5:22CmmHg以上た.眼底および視野はスクリーニング検査日からの悪化の有無を比較した.CII結果1.被験者の構成同意を取得した被験者はC452例,観察期にブリモニジンの投与を開始したのはC438例であった.このうちC355例が無作為化され,治療期の投与を開始した.治験完了例はC345例,治験未完了例はC10例であった.治療期の投与を開始したC355例(SJP-0125群C178例,ブリモニジン群C177例)をCSSとした.このうち,治療期開始日以降の有効性評価が可能な検査データのないC4例および除外基準に抵触したC1例を除くC350例(SJP-0125群C173例,ブリモニジン群C177例)をCFASとした.被験者背景(FAS)を表4に示した.C2.有効性眼圧値,治療期開始日からの眼圧変化値および眼圧変化率を表5,眼圧変化値の推移を図2,対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)を表6,図3および図4に示した.主要評価項目である治療期C4週における眼圧変化値(2時間値)の平均は,SJP-0125群ではC.2.9±2.0CmmHg,ブリモニジン群では.2.4±2.0CmmHgであり,統計学的に有意な差を認め(点推定値:C.0.6CmmHg,95%両側信頼区間:C.1.0.C.0.1CmmHg,p=0.0109),SJP-0125群のブリモニジン群に対する優越性が検証された.副次評価項目である治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,治療期C4週のC2時間値を除くすべての測定時点でCSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).また,治療期C2週および治療期C4週での眼圧変化値および眼圧変化率は,すべての測定時点でSJP-0125群のブリモニジン群に対する統計学的に有意な差を認めた(いずれもCp<0.05).さらに,治療期C2週および治療期C4週の眼圧値は,すべての測定時点で投与前と比較して統計学的に有意に低下した(いずれもp<0.0001).また,対象疾患別および治療期開始日の眼圧値別に治療期4週の眼圧変化値および眼圧変化率(2時間値)を解析した結果,いずれの層も全体の解析結果と同じ傾向を示した.表5眼圧値,眼圧変化値および眼圧変化率の推移(FAS)測定時点CSJP-0125ブリモニジン0時間値治療期開始日眼圧値C21.2±2.3(173)C21.1±2.4(177)治療期C2週眼圧値C19.0±2.8*††(171)C19.8±3.1*††(173)変化値C.2.2±1.9††(171)C.1.3±1.9††(173)変化率C.10.5±8.8††(171)C.6.1±9.3††(173)治療期C4週眼圧値C18.6±2.8*††(172)C19.5±3.2*††(173)変化値C.2.6±2.0††(172)C.1.6±2.0††(173)変化率C.12.2±9.4††(172)C.7.6±9.9††(173)2時間値治療期開始日眼圧値C19.9±2.1(173)C19.8±2.1(177)治療期C2週眼圧値C17.1±2.8*†(171)C17.8±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.9††(171)C.2.0±2.1††(173)変化率C.14.0±9.9††(171)C.10.2±10.4††(173)治療期C4週眼圧値C16.9±2.9*(172)C17.5±2.9*(173)変化値1C.2.9±2.0†(173)C.2.4±2.0†(177)変化率C.14.8±10.3†(172)C.12.1±10.5†(173)7時間値治療期開始日眼圧値C19.6±2.6(163)C19.5±2.7(164)治療期C2週眼圧値C17.4±2.7*††(161)C18.4±3.1*††(159)変化値C.2.2±1.9††(161)C.1.1±2.3††(159)変化率C.10.8±9.7††(161)C.5.3±12.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.3±2.8*††(161)C18.2±3.1*††(158)変化値C.2.3±1.9††(161)C.1.3±2.1††(158)変化率C.11.8±9.4††(161)C.6.3±10.9††(158)0時間値とC2時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.5±2.1(173)C20.5±2.2(177)治療期C2週眼圧値C18.0±2.6*††(171)C18.8±2.9*††(173)変化値C.2.5±1.6††(171)C.1.6±1.8††(173)変化率C.12.2±8.1††(171)C.8.2±8.9††(173)治療期C4週眼圧値C17.8±2.7*†(172)C18.5±2.9*†(173)変化値C.2.7±1.8††(172)C.2.0±1.8††(173)変化率C.13.5±8.7††(172)C.9.8±9.0††(173)0時間値とC2時間値とC7時間値の平均値治療期開始日眼圧値C20.2±2.2(163)C20.1±2.2(164)治療期C2週眼圧値C17.8±2.6*††(161)C18.7±2.8*††(159)変化値C.2.4±1.5††(161)C.1.4±1.6††(159)変化率C.11.8±7.6††(161)C.7.3±8.2††(159)治療期C4週眼圧値C17.6±2.6*†(161)C18.4±2.9*†(158)変化値C.2.6±1.6††(161)C.1.7±1.6††(158)変化率C.12.8±8.0††(161)C.8.7±8.6††(158)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.*:p<0.0001(治療期C2週またはC4週の眼圧値Cvs治療期開始日の眼圧値Cpairedt検定,有意水準両側5%)C†:p<0.05C††:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンCt検定,有意水準両側5%)C3.安全性31件,2例(1.1%)2件であった.治療期にCSJP-0125群およびブリモニジン群に発現した有治療期の副作用一覧を表7に示した.おもな副作用は,害事象はそれぞれ50例(28.1%)68件および32例(18.1%)SJP-0125群では霧視12例(6.7%),眼刺激5例(2.8%),36件であった.このうち副作用は,それぞれC23例(12.9%)味覚異常C4例(2.2%),結膜充血C2例(1.1%),眼の異常感C2例(1.1%)および結膜炎C2例(1.1%),ブリモニジン群では0時間値1結膜充血C1例(0.6%)およびアレルギー性結膜炎C1例(0.6%)であった.-2**副作用はすべて軽度であった.副作用による中止はCSJP-0125群でC1例(結膜炎)あり,副作用による死亡および重篤な副作用はなかった.最高矯正視力,結膜・眼瞼・角膜所見,眼底,視野,血-3**-4-5SJP-0125ブリモニジン-6圧・脈拍数には,臨床上問題となるような変動や所見はみら治療期開始日治療期2週治療期4週れなかった.2時間値III考按SJP-0125の有効性を検証するにあたり,SJP-0125の有効成分の一つであり,わが国で第二選択薬として広く使用されているブリモニジンを対照に比較試験を行った.治療期C4週での眼圧変化値(2時間値)を比較した結果,SJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降効果を示した.さら眼圧変化値(mmHg)-2-3*-4-5SJP-0125ブリモニジン-6に,治療期C2週および治療期C4週の0,2,7時間値のいずれ治療期開始日治療期2週治療期4週でもCSJP-0125群はブリモニジン群よりも優れた眼圧下降を7時間値1****-3-4示し,1日を通して良好な眼圧下降効果を示した.治療期C4週のC2時間値では,SJP-0125群のブリモニジン群に対する追加の眼圧下降効果はC0.6CmmHgに留まったが,0時間値およびC7時間値での追加眼圧下降効果はC2時間値よりも大きかった(図2).この結果から,ブリンゾラミドの炭酸脱水酵素阻害作用による終日にわたる基礎房水分泌の抑制作用が,ブ眼圧変化値(mmHg)0-1-2-5SJP-0125ブリモニジン-6リモニジンの眼圧下降効果を補完することで,SJP-0125は治療期開始日治療期2週治療期4週ブリモニジン単剤と比較してより良好なC1日を通した眼圧下降効果を示すと期待される.これらのことから,ブリモニジン単剤からCSJP-0125への切り替えは有用であると考える.0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤はプロスタグランジン関連薬と併用することでさらなる眼圧下降効果を示すことが国内第CIII相試験で確認されている5).またチモロールの単独治療で効果不十分の患者を対象とした海外第CIII相試験では,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤により追加の眼圧下降効果が得られることが確認されている6).これらのことから,SJP-0125も作用機序が異なる他の緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果を示すことが期待される.また,対象疾患別に解析した結果から,SJP-0125は原発開放隅角緑内障,前視野緑内障および高眼圧症のいずれに対しても眼圧下降効果を示すと考えられる.さらに,治療期開始日(2時間値)の眼圧値別に解析した結果から,SJP-0125は投与開始前の眼圧値にかかわらず眼圧下降効果を示すと考えられる.安全性に関しては,有害事象の発現頻度はCSJP-0125群で28.1%,ブリモニジン群でC18.1%,副作用の発現頻度はSJP-0125群でC12.9%,ブリモニジン群でC1.1%であり,いずれの群にも重篤な副作用は認めなかった.SJP-0125群で平均値±標準偏差,*:p<0.05**:p<0.01(SJP-0125vsブリモニジンt検定,有意水準両側5%)図2眼圧変化値の推移比較的発現頻度の高かった副作用は霧視(6.7%),眼刺激(2.8%),味覚異常(2.2%)であり,これらはC0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼剤またはC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤で既知の副作用である7,8).もっとも頻度の高かった霧視はC1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤でもおもな副作用として報告されており,SJP-0125群でのみ認められた.また,1%ブリンゾラミド懸濁性点眼剤の点眼後,涙液の白濁化や涙液層の不安定化によって霧視が生じることが報告されている9,10)ことから,ブリンゾラミドを懸濁させた製剤であるCSJP-0125でも,同様の機序で霧視が発現した可能性が考えられる.これらのことから,各単剤と比較して,4週間の使用ではCSJP-0125の安全性に問題はないと考える.以上の結果より,SJP-0125は原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症の患者に対して,既承認薬であるブリモニジンに比べ眼圧下降効果は有意に高く,その効果はC1日を通じて良好であること,安全性に問題のないことを確認した.ま表6対象疾患別,治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化値および眼圧変化率(治療期4週,2時間値)項目CSJP-0125ブリモニジン眼圧値(治療期開始日,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C19.7±2.1(126)C19.5±2.0(126)原発開放隅角緑内障C19.6±2.1(87)C19.5±2.2(89)前視野緑内障C20.0±2.0(39)C19.5±1.6(37)高眼圧症C20.3±2.1(47)C20.6±2.3(51)眼圧値(治療期開始日,2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C18.5±0.6(102)C18.5±0.5(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C20.6±0.6(41)C20.5±0.5(41)高眼圧層:22CmmHg以上C23.5±1.9(30)C23.7±1.7(31)眼圧変化値(治療期C4週,2時間値)C1対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.3.0±2.1(126)C.2.4±2.0(126)原発開放隅角緑内障C.3.1±2.0(87)C.2.4±2.1(89)前視野緑内障C.2.9±2.2(39)C.2.4±2.1(37)高眼圧症C.2.7±2.0(47)C.2.3±2.0(51)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.2.8±2.0(102)C.2.5±2.0(105)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.3.3±1.7(41)C.1.9±2.0(41)高眼圧層:22CmmHg以上C.2.8±2.5(30)C.2.6±2.3(31)眼圧変化率(治療期C4週,2時間値)対象疾患原発開放隅角緑内障(広義)C.15.5±10.5(125)C.12.5±10.9(123)原発開放隅角緑内障C.15.9±10.2(87)C.12.5±10.8(86)前視野緑内障C.14.5±11.2(38)C.12.4±11.1(37)高眼圧症C.13.1±9.7(47)C.11.1±9.6(50)治療期開始日の眼圧値(2時間値)低眼圧層:18CmmHg以上C20CmmHg未満C.15.3±10.8(102)C.13.5±10.8(103)中眼圧層:20CmmHg以上C22CmmHg未満C.15.9±8.6(41)C.9.2±9.8(39)高眼圧層:22CmmHg以上C.11.4±10.5(29)C.10.9±9.6(31)平均値±標準偏差(例数)眼圧値および変化値の単位:mmHg,変化率の単位:%1:LOCFにより欠測データを補完した.CSJP-0125ブリモニジン眼圧変化率(%)平均値±標準偏差図3対象疾患別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)眼圧変化率(%)SJP-0125ブリモニジン0低眼圧層中眼圧層高眼圧層-5-10-15-20-25-30(102)(103)(41)(39)(29)(31)(例数)平均値±標準偏差低眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)18mmHg以上20mmHg未満中眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)20mmHg以上22mmHg未満高眼圧層:治療期開始日の眼圧値(2時間値)22mmHg以上図4治療期開始日の眼圧値別の眼圧変化率(治療期4週,2時間値)表7治療期の副作用一覧(SS)副作用名1CSJP-0125(n=178)ブリモニジン(n=177)件数例数(%)件数例数(%)全体C3123(C12.9)C22(1C.1)眼障害C霧視C眼刺激C結膜充血C眼の異常感C結膜炎Cアレルギー性結膜炎C結膜浮腫C眼脂C点状角膜炎C27125222111122(C12.4)C12(C6.7)C5(2C.8)C2(1C.1)C2(1C.1)C2(1C.1)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C1(0C.6)C20010010002(1C.1)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)1(0C.6)0(0C.0)0(0C.0)0(0C.0)神経系障害C味覚異常C444(2C.2)C4(2C.2)C000(0C.0)0(0C.0)1:副作用名はCICH国際医薬用語集CMedDRA/JVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.た,各単剤の臨床試験結果より,SJP-0125を作用機序が異なる緑内障治療薬と併用することで追加の眼圧下降効果が期待されることから,各単剤と他の緑内障治療薬との併用で効果不十分な場合に,各単剤からCSJP-0125への切り替えが有効であると考えられる.さらに,SJP-0125はわが国で初めてのCb遮断薬を含まない配合点眼剤であり,プロスタグランジン関連薬も含まないことから,それらが使用できない患者にも使用できる配合剤として期待される.加えてCSJP-0125は眼圧下降効果に相応しない視野維持効果が報告されている3)ブリモニジン酒石酸塩を有効成分として含有することから,SJP-0125でも同様の効果が期待される.以上より,SJP-0125は緑内障治療において有用性の高い配合点眼剤であると考える.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン第C4版.日眼会誌122:5-53,C20182)BurkeCJ,CSchwartzM:PreclinicalCevaluationCofCbrimoni-dine.SurvOphthalmol41(Suppl1):S9-S18,19963)KrupinT,LiebmannJM,Green.eldDSetal:Arandom-izedtrialofbrimonidineversustimololinpreservingvisu-alfunction:resultsfromthelow-pressureglaucomatreat-mentCstudy.AmJOphthalmolC151:671-681,C20114)IesterM:BrinzolamideCophthalmicsuspension:aCreviewCofCitsCpharmacologyCandCuseCinCtheCtreatmentCofCopenCangleglaucomaandocularhypertension.ClinOphthalmolC2:517-523,C20085)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障および高眼圧症を対象とした臨床第III相試験─チモロールとの比較試験またはプロスタグランジン関連薬併用下におけるプラセボとの比較試験.日眼会誌116:955-966,C20126)MichaudCJE,CFrirenB:ComparisonCofCtopicalCbrinzol-amide1%CandCdorzolamide2%CeyeCdropsCgivenCtwiceCdailyinadditiontotimolol0.5%inpatientswithprimaryopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC132:235-243,C20017)新家眞,山崎芳夫,杉山和久ほか:ブリモニジン点眼液の原発開放隅角緑内障または高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科29:679-686,C20128)MarchCWF,COchsnerCKI,CtheCBrinzolamideCLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyande.cacyofCbrinzolamide1.0%(Azopt)inCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CAmCJCOph-thalmolC151:671-681,C20119)石橋健,森和彦:二種類の炭酸脱水酵素阻害点眼薬投与に伴う霧視について.日眼会誌110:689-692,C200610)野口毅,川﨑史朗,溝上志朗ほか:ブリンゾラミド点眼後の霧視の発生機序.日眼会誌114:369-373,C2010***

ドルゾラミド・チモロール配合点眼液とブリンゾラミド・チモロール配合点眼液の切り替え効果

2015年6月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科32(6):883.888,2015cドルゾラミド・チモロール配合点眼液とブリンゾラミド・チモロール配合点眼液の切り替え効果永山幹夫*1永山順子*1本池庸一*1馬場哲也*2*1永山眼科クリニック*2白井病院EffectsofSwitchingofBrinzolamide/TimololFixedCombinationsversusDorzolamide/TimololFixedCombinationsMikioNagayama1),JunkoNagayama1),YoichiMotoike1)andTetsuyaBaba2)1)NagayamaEyeClinic,2)ShiraiEyeHospital目的:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(以下,コソプト)をブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(以下,アゾルガ)に変更した際の眼圧変化と患者評価について検討する.対象および方法:コソプト点眼を2カ月以上継続している緑内障および高眼圧症患者48例48眼を対象とした.アゾルガに切り替え2カ月後,再度コソプトに切り替え2カ月経過をみた.切り替え後2週間の時点で患者アンケートを行い,点眼による刺激感,異物感,充血の自覚スコア,およびどちらがより好ましいかとその理由を調査した.結果:眼圧はベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±3.3mmHgで,すべての時点で差はなかった.自覚スコアの平均値はアゾルガが刺激感0.15,異物感0.30,充血0.20,コソプトではそれぞれ0.75,0.10,0.25であり,コソプトの刺激感が有意に高かった(p<0.01).「どちらがより好ましいか」に対する回答はアゾルガ切り替え時点では「アゾルガがよい」が14例29.1%,「コソプトがよい」が13例27.1%,「どちらでもよい」が21例43.8%であったのに対し,コソプト再開時点(アゾルガ切り替え2カ月後)ではそれぞれ5例10.4%,28例58.3%,15例31.3%で,おもに霧視・粘稠感がない点,点眼操作がしやすい点から「コソプトがよい」とするものが有意に増加した(p<0.01).結論:アゾルガとコソプトの眼圧下降効果は同等であった.コソプトはアゾルガより刺激感が強く,アゾルガの使用感に対する不満は点眼期間が長くなると強くなった.Purpose:Toexaminethechangesinintraocularpressure(IOP)andpatientself-assessmentaftertheswitchfromdorzolamide/timololfixedcombination(DTFC)tobrinzolamide/timololfixedcombination(BTFC).SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved48eyesof48patientswithglaucomatouseyesandocularhypertensionwhocontinuouslyunderwentDTFCtreatmentfor2monthsormore.TheirtreatmentwasthenswitchedfromDTFCtoBTFC.AfterBTFCwasinstilledfor2months,itwasswitchedagaintoDTFC,andthepatientswerethenfollowedupfor2months.Twoweeksaftereachswitch,thepatientswereaskedtocompleteaquestionnairetoobtainsubjectivescoresforirritation,foreignbodysensation,andhyperemiapostinstillation,aswellastoanswerthequestion“Whicheyedropwasmorepreferable?”andexplaintheirreasonsforthepreference.Results:MeanIOPwas15.8±2.8mmHgatbaseline,15.8±2.9mmHgat2monthsafterswitchingtoBTFC,and15.7±3.3mmHgat2monthsafterresuminginstillationofDTFC;nodifferencewasobservedatallmeasurementtime-points.ThemeansubjectivescoreswithBTFCwere0.15forirritation,0.30forforeignbodysensation,and0.20forhyperemia,whereasthosewithDTFCwere0.75,0.10,and0.25,respectively.ThescoreforirritationpostinstillationofDTFCwassignificantlyhigherthanthatofBTFC(p<0.01).Asfortheresponsestothequestion“Whicheyedropismorepreferable?”,postswitchingtoBTFC,14patients(29.1%)preferredBTFC,13patients(27.1%)preferredDTFC,and21patients(43.8%)reportednopreferencebetweenthetwoeyedrops.AfterresuminginstillationofDTFC(at2-monthspostswitchingtoBTFC),5patients(10.4%)preferredBTFC,28patients(58.3%)preferredDTFC,and15patients(31.3%)reportednopreference.ThenumberofpatientswhopreferredDTFCsignificantlyincreasedprimarilyduetoitnotcausingblurredvision/sensationofviscousfluidanditseaseofinstillation(p<0.01).Conclusions:BTFCandDTFCwerecomparableintheireffectonthereductionofIOP.AlthoughDTFC〔別刷請求先〕永山幹夫:〒714-0086岡山県笠岡市五番町3-2永山眼科クリニックReprintrequests:MikioNagayama,M.D.,NagayamaEyeClinic,3-2Goban-cho,Kasaoka-shi,Okayama,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(119)883 causedmoresevereirritationthanBTFC,ittendedtobepreferredforcontinuoususeduetoeaseofinstillation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(6):883.888,2015〕Keywords:緑内障,配合点眼液,ブリンゾラミド,ドルゾラミド,チモロールマレイン酸塩.glaucoma,fixedcombination,brinzolamide,dorzolamide,timolol.はじめに緑内障患者の多くは年余にわたる点眼治療の継続が必要であり,そのうちの少なくとも半数は複数剤の点眼が必要となる1).その場合,それぞれの投与間隔を一定時間空ける必要があること,決められた投与の時間,回数を守ること,多くの点眼瓶を管理しなければならないことなどの問題が生じるため,治療のアドヒアランスが単剤投与に比べ大きく低下することが知られている2).近年相次いで国内での発売が開始された配合点眼薬は,点眼回数を減少させることでアドヒアランス向上とともに,治療効果や患者のQOL(qualityoflife)を改善させることが期待される.プロスタグランジン製剤とb遮断薬の配合点眼液は日本ではすでに2010年に発売され,臨床の場での使用経験が蓄積されてきている.炭酸脱水酵素阻害薬とb遮断薬の配合点眼液については,2010年6月にドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(コソプトR配合点眼液,以下,コソプト)が発売された.さらに2013年11月にブリンゾラミド/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬(アゾルガR配合懸濁性点眼液,以下,アゾルガ)が新たに発売となった.両薬剤は海外での報告と同様に日本人に対しても,チモロール単剤療法よりも眼圧下降効果が強く3),単剤併用と同様の効果があり4,5),長期治療にも有効である6,7)ことが報告されている.本研究ではこれら2剤の眼圧下降作用,副作用の違いが日本人において実際にどうであるか,臨床の場で比較検証する2M以上2M2Mベースラインコソプトアゾルガコソプト眼圧測定第1回アンケート第2回アンケート図1プロトコール継続しているコソプトはウォッシュアウト期間を設けずに直接アゾルガに切り替えた(ベースライン).その後アゾルガを2カ月継続した後,再度コソプトに切り替え,2カ月間経過観察を行った.眼圧値はベースライン時,アゾルガ切り替え後2カ月,コソプト再開後2カ月で比較した.884あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015目的で,コソプトからアゾルガへ切り替えを行い,眼圧と被検者の点眼時の自覚症状の変化を調査した.なお,いわゆる「切り替え効果」の影響を避けるため,アゾルガ切り替え後に再度コソプトへの切り替えを行い,クロスオーバー試験に近い形で経過をみるデザインとした.I対象および方法対象は当院で加療中の成人開放隅角緑内障および高眼圧症で,コソプトを2カ月以上継続投与されている患者のうち,以下の条件を満たすものである.内眼手術後4カ月以内でないこと,活動性のぶどう膜炎を有さないこと,ステロイド点眼を使用していないこと.b遮断薬および炭酸脱水酵素阻害薬投与の禁忌事項に該当しないこと.重篤な腎障害を有さないこと.妊娠中および授乳中でないこと.被検者には研究の目的,内容について書面を用いて説明を行い,同意を得られたもののみをエントリーした.継続しているコソプトはウォッシュアウト期間を設けずにアゾルガに切り替え,この時点をベースラインとした.なお,切り替えの際には全例に処方前に点眼方法の注意として点眼瓶の底を押さえて滴下すること,点眼後に数分間涙.部を圧迫し眼瞼に付着した点眼液をウエットティッシュで拭くこと,点眼後数分間霧視を生じることを説明した.その後アゾルガを2カ月継続した後,再度コソプトに切り替え,2カ自覚症状について伺います(│をつけて下さい)項目症状の程度白目の部分が赤い(充血)目がゴロゴロして異物感がある点眼時しみる全くない全くない全くない我慢できないくらい赤い最高にゴロゴロしている最高に痛い図2自覚症状のアンケート充血,異物感,刺激感の3点について「全くない」を0,「非常に強い」を4として自覚がどのくらいの数値になるか被検者が直線上にマークを記入する方法でカウントした.(120) 月間経過観察を行った.眼圧はGoldmann圧平式眼圧計で2回連続測定し,その平均値を用いた.眼圧値はベースライン時,アゾルガ切り替え後2カ月,コソプト再開後2カ月で比較した(図1).また,それぞれの薬剤への切り替え後2週間の時点で使用感について患者アンケートを行った(図2).内容は「点眼による刺激感,異物感,充血の自覚のスコア」と「どちらがより好ましいと感じるか」と「好ましいと思った理由」である.自覚スコアについては「まったくない」を0,「非常に強い」を4として被検者の自覚がどのくらいの数値になるか直線上にマークして記入する方法でカウントした.理由については自由回答形式で複数回答可とした.アンケートの被検者への聞き取りはコメディカルが行った.併用眼圧下降薬については調査期間中変更しないこととした.両眼が対象となる条件を満たす症例についてはベースライン時の眼圧値のより高い1眼を選択し,両眼の眼圧値が同一の場合には右眼を選択した.55例55眼が試験にエントリーされ,経過中7例が脱落した.最終的に解析の対象となったのは48例48眼.内訳は男性28例,女性20例,年齢は31.88歳(70.0±12.5歳)であった.脱落した内容はアゾルガ切り替えの際に生じた副作用が原因のものが4例,コソプト再開時の副作用が原因のものが1例,併用薬のアレルギーによるものが2例であった.対象の緑内障病型の内訳は原発開放隅角緑内障36例,正常眼圧緑内障6例,落屑緑内障5例,高眼圧症1例であった.II結果眼圧はベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±p<0.010.200.300.150.250.100.750.000.100.200.300.400.500.600.700.80充血異物感刺激感■:アゾルガ:コソプトNSNS3.3mmHgですべての時点で差はなかった(対応のあるt検定)(図3).アンケートによる自覚スコアの平均値はアゾルガが刺激感0.15,異物感0.30,充血0.20,コソプトではそれぞれ0.75,0.10,0.25であり,コソプトの刺激感が有意に高かった(Wilcoxonの符号付き順位和検定p<0.01)(図4).「どちらがより好ましいか」に対する回答はアゾルガ切り替え時点では「アゾルガがよい」が14例29.1%,「コソプトがよい」が13例27.1%,「どちらでもよい」が21例43.8%であったのに対し,コソプト再開時点ではそれぞれ5例10.4%,28例58.3%,15例31.3%とコソプトをよいとするものが増加していた(c2検定p<0.01)(図5).その理由としては,アゾルガがよいと答えたものでは「しNS0510152025ベースライン1M(アゾルガ)2M(アゾルガ)1M(コソプト)2M(コソプト)NS眼圧(mmHg)図3眼圧経過ベースライン15.8±2.8mmHg,アゾルガ切り替え2カ月後15.8±2.9mmHg,コソプト再開2カ月後15.7±3.3mmHgですべての時点で差はなかった(対応のあるt検定).どちらでもアゾルガがどちらでもアゾルガが28%30%42%よいよい10%56%34%よいよいコソプトがコソプトがよいよい第1回アンケート第2回アンケート図5アンケート結果1「どちらがより好ましいと感じるか」アゾルガ切り替え時(第1回アンケート)では「アゾルガがよ図4自覚スコアい」が14例,「コソプトがよい」が13例,「どちらでもよい」充血,異物感は両者で差はなかった.コソプトは刺激感がアゾが21例であったのに対し,コソプト再開時(第2回アンケールガよりも有意に高かった(Wilcoxonの符号付き順位和検定ト)ではそれぞれ5例,28例,15例とコソプトをよいとするp<0.01).ものが有意に増加していた(c2検定p<0.01).(121)あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015885 アゾルガがよい理由(n=5)さし心地がよい,14しみない点眼液が出やすい0246人数(名)コソプトがよい理由(n=28)粘稠感がない霧視がない眼瞼が白くならない点眼液が出やすい振る必要がない刺激感がない異物感がない人数(名)図6アンケート結果2「好ましいと思った理由」(第2回アンケート結果,複数回答あり)「アゾルガをよい」としたものの理由では「しみないから」がもっとも多かった.「コソプトをよい」としたものの理由では「粘稠感がないから」「霧視が少ないから」「眼瞼が白くならないから」などアゾルガが懸濁液であることからくると思われる問題を不満としたものが多かった.また,「振らなくてよいから」といった点眼のしやすさについての理由も多くみられた.みないから」がもっとも多かった.一方コソプトがよいと答えたものでは,「粘稠感がないから」が14例,「霧視が少ないから」が8例,「眼瞼が白くならないから」が5例で,アゾルガが懸濁液であることからくる問題を不満としたものが多かった.また,「振らなくてよいから」といった点眼のしやすさについての理由もみられた(図6).III考按海外の研究でアゾルガの眼圧下降はコソプトと比較して非劣性であることがすでに報告されている8,9).しかし,海外で用いられるコソプトに含有されるドルゾラミドの濃度は2%であり,わが国で使用されているコソプトに含有される1%ドルゾラミドと同一ではないため,眼圧下降効果も異なっている可能性がある.今回の試験では,全期間を通じて眼圧の有意な変化はみられず,わが国でもアゾルガはコソプトと同等の眼圧下降効果を有しているものと考えられた.ただし,今回の対象はベースライン時の平均眼圧が15.8mmHgとやや低く,切り替えによる効果の差が出にくい状態であったと思われる.また,今回は点眼から眼圧測定までの時間は症例によって統一されていなかった.効果の差をより詳細にみるためには点眼時間を一定にして眼圧の日内変動を計測するプロトコールでの試験を行うことがより望ましいと思われ886あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015113578140246810121416る.点眼の使用感についての過去の報告ではコソプトは刺激感が問題となるとされている9.11).今回の試験でも,やはりコソプトは点眼時の「刺激感」のスコアがアゾルガよりも有意に高い結果となった.これはコソプトのpHは5.5.5.812)と涙液よりもやや酸性であるが,アゾルガのpHは6.7.7.713)と中性寄りであるためであると思われる.一方,アゾルガは点眼時の霧視が問題になるとされている10,11).今回,直接の評価項目に「霧視」がなかったが,自由回答形式で「コソプトをよい」とした理由に「霧視がないこと」をあげているものが多くみられた.「どちらがより好ましいか」に対する回答については,興味深いことにアゾルガに切り替えた時点でのアンケートで「アゾルガが好ましい」と答えた14例のうち,2カ月点眼を継続した時点でも「アゾルガが好ましい」と答えたものはわずか1例に減少した.それに対して最初のアンケートで「コソプトが好ましい」と答えた13例は2カ月後も全例が同様に「コソプトが好ましい」と答えていた.過去の報告をみるとVoldら14),Rossiら15)はさし心地に対する患者評価をスコア化し比較した結果,アゾルガの満足度が有意に高かったとしている.しかし,これらの報告では評価の対象項目に「霧視」が含まれておらず,アゾルガの副作用に対する評価が十分でない可能性がある.Lanzlら16)はコソプトからアゾルガに切り替えた2,937名のうち「アゾルガがよい」としたものは82%,「コソプトがよい」としたものは8.8%であったと報告している.この報告では切り替え理由の過半数が「コソプトに対するintoleranceのため」であった.今回の検討での対象はコソプト点眼を2カ月以上継続可能であった症例に限定されていた.そのため,もともとコソプトの刺激感に耐えられなかった症例は含まれておらず,Lanzlらの報告とは対象となった症例の背景に違いがあると考えられる.またMundorfら11),およびAnaら17)は2日間両者を比較し,刺激感が少ないことからアゾルガがより好まれたと報告している.筆者らの報告はアゾルガ点眼を2カ月間継続した後に最終調査を行っており,観察期間が異なっている.以上,多くの報告でアゾルガがより好まれるとされており,今回とは食い違う結果となっている.この理由については第1に,上記のようなスタディデザインの違いがあげられる.第2に,過去の報告の対象にはアジア人種はほとんど含まれていないが,点眼に対する感受性は人種間で異なるため,これが結果の差に関与している可能性がある.第3に,アゾルガの点眼瓶はコソプトに比べてやや堅く,アゾルガは点眼液の粘稠性が高いため,滴下に若干力を要する.「コソプトを好ましい」とした理由に点眼操作のしやすさについてのコメントも多くみられたことから,点眼瓶の違いも結果に影響した可能性がある.(122) アゾルガの評価が2カ月間で大きく変化した理由として,点眼開始当初はいわゆる切り替え効果で患者本人のモチベーションが高く,霧視がそれほど問題とされなかった可能性があげられる.コソプトの刺激感は点眼を継続することにより慣れ,あまり問題とならなくなるといわれている18)がアゾルガの粘稠性,霧視の自覚は軽減せず,長期的には逆により意識されるようになる印象を受けた.実際に,切り替えてから4.26週までの期間で調査を行った報告では両者の使用感に差はなかった10)とされている.ブリンゾラミド点眼後の霧視の副作用については閉瞼のうえ涙.部の圧迫を行うこと,ウエットティッシュによる眼瞼の拭き取りを行うことによって軽減されることが報告されている19).今回試験開始の際に全例に書面を渡したうえ,アゾルガ点眼後に生じる霧視と眼瞼が白くなる点について説明を行い,涙.部圧迫,拭き取りについて十分に指導を行った.にもかかわらず2カ月後には多くの症例で霧視に対する不満が生じていた.このなかには指導内容を忘れているケースもあり,自覚症状,不満の聞き取りとともに定期的に点眼指導を行ったほうがよいと思われた.今回の検討で,コソプト点眼を継続している症例に対してアゾルガへの切り替えを行った場合,長期の使用感において不満が生じる可能性があることがわかった.ただし,コソプトの刺激感が気になるという症例にアゾルガが明確に支持されたケースも存在した.自覚症状については個人による感受性の違いが大きく関与するため,各薬剤処方の前に副作用の可能性について説明を十分行い,患者の希望と薬剤の特性を考慮したうえで選択を行うのがよいと思われる.本稿の要旨は第25回日本緑内障学会にて発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)KassMA,HeuerDK,HigginbothamEJetal:Theocularhypertensiontreatmentstudy:arandomizedtrialdeterminesthattopicalocularhypotensivemedicationdelaysorpreventstheonsetofprimaryopen-angleglaucoma.ArchOphthalmol120:701-713,20022)DjafariF,LeskMR,Harasymowycz,PJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalong-termpatientpopulation.JGlaucoma18:238-243,20093)YoshikawaK,KozakiJ,MaedaH:Efficacyandsafetyofbrinzolamide/timololfixedcombinationcomparedwithtimololinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:389-399,20144)NagayamaM,NakajimaT,OnoJ:Safetyandefficacyof(123)afixedversusunfixedbrinzolamide/timololcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:219-228,20145)北澤克明,新家眞,MK-0507A研究会:緑内障および高眼圧症患者を対象とした1%ドルゾラミド塩酸塩/0.5%チモロールマレイン酸塩の配合点眼液(MK-0507A)の第III相二重盲検比較試験.日眼会誌6:495-507,20116)NakajimaM,IwasakiN,AdachiM:PhaseIIIsafetyandefficacystudyoflong-termbrinzolamide/timololfixedcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:149-156,20147)磯辺美保,小泉一馬,辻智弘ほか:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合剤コソプト配合点眼液の特定使用成績調査.新薬と臨牀1:37-69,20148)SezginAB.,GuneyE,BozkurtKTetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JOculPharmacolTher29:882-886,20139)ManniG,DenisP,ChewPetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma4:293-300,200910)GrahamAA,MathewR,SimonL:PatientperspectiveswhenswitchingfromCosoptR(dorzolamide-timolol)toAzargaTM(brinzolamide-timolol)forglaucomarequiringmultipledrugtherapy.ClinOphthalmol6:2059-2062,201211)MundorfTK,RauchmanSH,WilliamsRDetal:ApatientpreferencecomparisonofAzargaTM(brinzolamide/timololfixedcombination)vsCosoptR(dorzolamide/timololfixedcombination)inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol3:623-628,200812)コソプトR配合点眼液インタビューフォーム.201313)アゾルガR配合懸濁性点眼液医薬品インタビューフォーム.201314)VoldSD,EvansRM,StewartRHetal:Aone-weekcomfortstudyofBID-dosedbrinzolamide1%/timolol0.5%ophthalmicsuspensionfixedcombinationcomparedtoBID-doseddorzolamide2%/timolol0.5%ophthalmicsolutioninpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JOculPharmacolTher24:601-605,200815)RossiGC,TinelliC,PasinettiGMetal:Signsandsymptomsofocularsurfacestatusinglaucomapatientsswitchedfromtimolol0.5%tobrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombination:a6-monthefficacyandtolerability,multicenter,open-labelprospectivestudy.ExpertOpinPharmacother12:685-690,201116)LanzlI,RaberT:Efficacyandtolerabilityofthefixedcombinationofbrinzolamide1%andtimolol0.5%indailypractice.ClinOphthalmol5:291-298,201117)AnaS,JuanS,EmilioRSJetal:Preferenceforafixedcombinationofbrinzolamide/timololversusdorzolamide/timololamongpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol7:357-362,2013あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015887 18)StewartWC,DayDG,StewartJAetal:Short-termocu-19)亀井裕子,山田はづき,吉原文ほか:1%ブリンゾラミドlartolerabilityofdorzolamide2%andbrinzolamide1%点眼液点眼後の霧視に影響する要因.あたらしい眼科7:vsplaceboinprimaryopen-angleglaucomaandocular1007-1012,2012hypertensionsubjects.Eye9:905-910,2004***888あたらしい眼科Vol.32,No.6,2015(124)

薬物粒子径変更に伴うブリンゾラミド懸濁性点眼液の眼内薬物移行性評価

2015年4月30日 木曜日

《第34回日本眼薬理学会原著》あたらしい眼科32(4):545.549,2015c薬物粒子径変更に伴うブリンゾラミド懸濁性点眼液の眼内薬物移行性評価長井紀章*1真野裕*1松平有加*1山岡咲絵*1吉岡千晶*1伊藤吉將*1岡本紀夫*2下村嘉一*2*1近畿大学薬学部製剤学研究室*2近畿大学医学部眼科学教室NanosizingoftheParticleinBrinzolamideOphthalmicSuspensionEnhancesItsIntraocularPenetrationNoriakiNagai1),YuMano1),YukaMatsuhira1),SakieYamaoka1),ChiakiYoshioka1),YoshimasaIto1)Okamoto2)andYoshikazuShimomura2),Norio1)FacultyofPharmacy,KinkiUniversity,2)DepartmentofOphthalmology,KinkiUniversitySchoolofMedicine本研究では,市販緑内障治療薬である炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミド(BLZ)懸濁性点眼液の薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性について検討を行った.市販BLZ懸濁性点眼液(エイゾプトR)の薬物粒子微細化には,ビーズミルによる水中破砕法を用いた.市販BLZ懸濁性点眼液の平均粒子径は7.05±0.416μmであったが,ビーズミル法を用いることで,平均粒子径0.423±0.221μmまで微細化でき,ナノオーダーの粒子径を有するBLZ分散液が調製できた(Milled-BLZ分散液).これらMilled-BLZ分散液の眼内薬物移行性について評価したところ,薬物粒子径をナノオーダーにしたことで主薬の角膜透過性および薬物網膜到達量が有意に向上した.以上,微細化によりBLZ懸濁性点眼液の眼内薬物移行性が高まることが明らかとなった.本研究は,点眼用懸濁液の製剤設計およびバイオアベイラビリティー向上につながるものと考えられる.Inthisstudy,weinvestigatedtheeffectofparticlesizeinbrinzolamide(BLZ)ophthalmicsuspensionontheintraocularpenetrationofthedrug.AsuspensioncontainingBLZnanoparticles(BLZNPssuspension;particlesize:0.423±0.221μm)waspreparedbyuseofthebeadmillmethod.Next,theBLZNPssuspensionandanon-milledBLZsuspension(particlesize:7.05±0.416μm),respectively,wereinstilledinrateyes,andintraocularpenetrationofthedrugwasthenanalyzed.ThecornealpenetrationofBLZfromtheBLZNPssuspensionwasfoundtobesignificantlyhigherthanthatinthenon-milledBLZsuspension.Inaddition,theamountofBLZintheretinasofeyesinstilledwiththeBLZNPssuspensionwasapproximately2-foldhigherthanthatintheretinasofeyesinstilledwiththenon-milledBLZsuspension.TheseresultssuggestthatthenanosizingoftheparticleinBLZophthalmicsuspensionenhancestheintraocularpenetrationofthedrug,andthatanoculardrugdeliverysystemusingnanoparticlesmayexpandtheirusagefortherapyinthefieldofophthalmology.Thefindingsofthisstudyprovideimportantinformationthatshouldproveusefulfordesigningfurtherstudiestodevelopanti-glaucomadrugs.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(4):545.549,2015〕Keywords:ブリンゾラミド,粒子径,ビーズミル,薬物眼内移行性,エイゾプトR.brinzolamide,particlesize,beadmill,drugintraocularpenetration,AzoptRophthalmicsuspension.はじめにであり,現在臨床現場ではb遮断薬,プロスタグランジン緑内障は,眼圧上昇により視神経・網膜が圧迫され,その製剤,炭酸脱水酵素阻害薬,選択的交感神経a1遮断薬,a,結果視神経障害がみられる眼疾患であり,先進国において失b受容体遮断薬,副交感神経作動薬など,異なる作用機序を明の第一要因である.この緑内障治療の第一選択は薬物療法有する緑内障治療薬の単剤または併用使用が行われている.〔別刷請求先〕伊藤吉將:〒577-8502東大阪市小若江3-4-1近畿大学薬学部製剤学研究室Reprintrequests:YoshimasaIto,Ph.D.,FacultyofPharmacy,KinkiUniversity,3-4-1Kowakae,Higashi-Osaka,Osaka577-8502,JAPAN0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(81)545 これら緑内障治療薬の一つである炭酸脱水酵素阻害薬の眼圧下降機序は,毛様体無色素上皮細胞においてH2O+CO2.H2CO3.H++HCO3.の反応を触媒している炭酸脱水酵素(carbonicanhydraseII)の働きを阻害し,HCO3.の生成を抑制することにより,Na+の能動輸送機構を抑え,その結果房水産生が抑制されるというものである.さらに,点眼により網膜や脈絡膜へ薬物が移行した際には,網膜のMuller細胞や網膜色素上皮細胞,脈絡膜毛細血管に存在する炭酸脱水酵素を阻害し網膜血流が増加するなど,眼圧下降作用のほかに眼循環に好影響を与える可能性が示唆されている1.3).一方,炭酸脱水酵素阻害薬点眼により網膜血流を高めるためには,血管拡張をきたすほどの十分な薬物濃度を網膜へ供給する必要があり1.5),現場では炭酸脱水酵素阻害薬の眼内移行性を高めることが期待されている.点眼薬の眼内移行性を高める方法として,粘稠化剤により薬物の結膜.内滞留性を向上させる手法が知られている.しかし,粘稠化剤により滞留性を高めただけでは網膜などの眼後部への到達はわずかである.一方,筆者らは近年“医薬品ナノ結晶点眼製剤”を提案し,点眼液中の薬物粒子サイズをナノオーダーにすることで角膜透過性や結膜からの体内移行性が飛躍期に上昇することを見出し報告している6).したがって,懸濁点眼薬の薬物粒子径をナノオーダーにすることでバイオアベイラビリティ向上が期待される.本研究では,市販緑内障治療薬である炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミド(BLZ)懸濁性点眼液の薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性について検討を行った.I対象および方法1.実験動物実験には日本白色種雄性ウサギ(2.3kg)および雄性Wistarラット(7週齢)を用いた.これら実験動物は25℃に保たれた環境下で飼育し,飼料(飼育繁殖固形飼料CE-2,CR-3,日本クレア)および水は自由に摂取させた.また,動物実験は近畿大学実験動物規定に従い行った.2.ビーズミル法によるブリンゾラミド懸濁液破砕処理市販緑内障治療薬BLZ懸濁性点眼液1%(エイゾプトR懸濁性点眼液1%,日本アルコン)の薬物粒子微細化は,直径0.1mmのジルコニアビーズおよびBeadSmash12(和研薬社製)を用いた水中破砕法(ビーズミル法)にて行い,BeadSmash12による破砕条件は冷却下(4℃)5,500rpmにて30sec×20回とした6).得られた分散液中BLZ濃度は0.91%であり(ビーズやチューブへの吸着率9%),分散液中のBLZ濃度を生理食塩水にて0.8%に調製したものを本研究ではMilled-BLZ分散液とした.また,BLZ懸濁性点眼液を生理食塩水にて0.8%に調製したものをBLZ分散液として用いた.薬物粒子径の測定はナノ粒子径分布測定装置SALD-546あたらしい眼科Vol.32,No.4,20157100(島津製作所)にて行い,平均値および標準偏差は内蔵の解析ソフトで算出した(屈折率1.95.0.05i).3.HPLC法によるBLZの定量試料40μlに,氷冷した0.1μg/mlp-オキシ安息香酸メチル(内標準物質,MeOHにて溶解)80μlを加え,この液をクロマトディスク4A(0.45μm,クラボウ)で濾過後高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に注入した.HPLC装置はLC-20AT(島津製作所)を使用した.カラムは,InertsilRODS-3(3μm2.1×50mm,ジーエルサイエンス)を用い,室温にて移動相(リン酸カリウム/アセトニトリル,80/20)で平衡化した.移動相の流速は0.25ml/minとし,255nmの紫外部吸収を測定した.4.Invitroウサギ角膜薬物透過実験実験にはメタアクリル樹脂製角膜透過セルを使用した6).日本白色種雄性ウサギをペントバルビタール(東京化成工業社製)過剰投与により安楽死後,眼球を摘出し,生理食塩水で洗浄した.角膜は,眼球後部の視神経の部位よりハサミを入れ,強膜部位を1.2mm残し切り取った.この角膜を角膜透過セルに装着し,リザーバー側(房水側)にリザーバー液としてHEPES(+Glc)緩衝液(10mMHEPES,136.2mMNaCl,5.3mMKCl,1.0mMK2HPO4,1.7mMCaCl2・2H2O,5.5mMGlucose,pH7.4)を3.0ml注加した.ドナー側(涙液側)にはBLZあるいはMilled-BLZ分散液を3.0ml注加した.角膜透過セルは,恒温槽中で35oCに保った.BLZ透過量は,リザーバー液を経時的に50μlずつ採取し,上記HPLC法により測定した.得られたデータは,次式に従い,非線形最小二乗法コンピュータプログラムMULTIを用いて当てはめ計算を行い,速度論的パラメータの算出を行った.t=d26D(1)JC=Km・D・CBLZ=KpCBLZd(2)Qt=Jc・A・(t.t)(3)ここで,JcはBLZの透過速度,Kmは角膜/製剤の分配係数,Dは角膜内での拡散係数,tlagはラグタイム,dは角膜の厚さ(平均0.0625cm),Aは用いた角膜の有効角膜面積(0.78cm2),Qはt時間にリザーバー側に透過した積算薬物量,CBLZはBLZ分散液中のBLZ濃度である.JCおよびtは(3)式に当てはめ算出した.角膜透過係数KpはJc/CBLZから算出した6).5.Invivoウサギ眼内薬物移行実験日本白色種雄性ウサギに,耳静脈よりペントバルビタール(0.6ml/kg)を投与し全身麻酔した.麻酔後,眼球に局所麻酔薬0.4%ベノキシール液を点眼し,マイクロシリンジで(82) ファイコンチューブ(0.5-1.0,冨士システムズ)と連結した29ゲージ注射針を角膜近傍の強膜部分より前眼房に挿入することによりカニューレを装着した.その後,片眼にBLZまたはMilled-BLZ分散液40μlを点眼し,定めた時間間隔でカニューレより房水を5μlずつ採取し,房水中BLZ濃度を上記HPLC法により測定した(図1).また,得られたデータから台形法を用い房水中BLZ濃度-時間曲線下面積(areaundertheBLZconcentration-timecurve:AUC)を算出した6).6.網膜中薬物到達量の測定BLZまたはMilled-BLZ分散液をWistarラットに点眼し,点眼1時間後にペントバルビタール(東京化成工業)を過剰投与することで安楽死させた.その後,眼球を摘出し,網膜を回収した.網膜中BLZ量は上記HPLC法にて測定した.7.統計解析データは,平均値±標準誤差(SE)として表した.各々の実験値の解析にはStudentのt-testを用い,p値が0.05以下を有意差ありとした.II結果1.ビーズミル処理に伴う市販BLZ懸濁液の薬物粒子径変化図2はBLZおよびMilled-BLZの粒度分布曲線を示す.BLZ分散液の平均粒子径は7.09±0.413μmであり,市販BLZ懸濁性点眼液1%の平均粒子径と比較し差はみられなかった(7.05±0.416μm,平均値±標準偏差).一方,MilledBLZ分散液の平均粒子径は0.423±0.221μmと,ナノオーダーまでBLZの粒子を微細化することが可能であった.2.BLZ懸濁液中薬物粒子径の違いが眼内薬物移行性に与える影響図3はBLZおよびMilled-BLZ分散液のinvitroウサギ角膜透過性を,表1は図3中のデータから算出した速度論的パラメータを示す.両分散液ともに実験開始1時間後から薬物図1Invivoウサギ眼内薬物移行実験操作写真Cumulativedistribution(%)Cumulativedistribution(%)8015601040520000.010.050.10.5151050100500Particlediameter(μm)10020100A:BLZsuspensions20Frequency(%)Frequency(%)80B:Milled-BLZsuspensions15601040520000.010.050.10.5151050100500Particlediameter(μm)図2BLZおよびMilled.BLZ分散液における粒度分布薬物粒子径はナノ粒子径分布測定装置SALD-7100にて測定した.実線は相対粒子量の頻度を,点線は相対粒子量の積算を示す.(83)あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015547 の角膜透過が認められたが,粒子径の違いによる差はみられなかった.図4はBLZおよびMilled-BLZ分散液のinvivoウサギ角膜透過性について示す.Invitroウサギ角膜透過実験の結果と異なり,Milled-BLZ分散液処理群のラグタイム(t)は,BLZ処理群のそれより低かった.また,MilledBLZ分散液処理群のAUCは,BLZ処理群のそれの2倍高値であった(AUC,BLZ71±12,Milled-BLZ分散液142±4,μM・min,平均値±SE,n=6).図5にはBLZおよびMilledBLZ分散液点眼後の網膜中薬物含量を示す.Milled-BLZ分散液点眼1時間後の網膜中BLZ濃度は,BLZ分散液点眼後0120BLZconcentration(μM)80160100401406020:BLZsuspensions:Milled-BLZsuspensions0123456のそれと比較し有意に高かった.III考按炭酸脱水酵素阻害薬の点眼は眼圧降下作用だけでなく,網膜血流の改善効果が期待できる.本研究では,炭酸脱水酵素阻害薬であるBLZ懸濁性点眼液を用い,薬物粒子径変更に伴う眼内薬物移行性改善効果について検討を行った.まず初めに,ビーズミル法を用い市販BLZ懸濁性点眼液の薬物粒子微細化を試みた(図2).その結果,平均粒子径7.05±0.416μmであった市販BLZ懸濁性点眼液を,平均粒子径0.423±0.221μmとナノオーダーまで微細化することに成功した.一方,BLZ分散液中薬物濃度を測定したところ,破砕処理過程で使用したチューブやジルコニアビーズへの薬物の付着により,破砕処理前には1%であったBLZが破砕処理後には0.91%と減少が認められた.このため,本研究では生理食塩水にて0.8%に濃度調製した市販BLZ懸濁性点眼液(BLZ分散液)およびビーズミル法にて破砕後のBLZ懸濁液(Milled-BLZ分散液,0.8%)を比較検討に用いた.Invitroウサギ角膜透過実験にて,BLZおよびMilledBLZ分散液の角膜透過性を検討したところ,両分散液間で差はみられなかった(図3および表1).これらinvitroウサTime(h)図3BLZおよびMilled.BLZ分散液におけるinvitroギ角膜透過実験はドナー側(涙液側)にBLZあるいは角膜透過性(ウサギ)Milled-BLZ分散液を用いており,薬物の溶解を促進する因平均値±標準誤差,n=6羽6眼,n.s.(notsignificant).子である涙液がなく,角膜表面において薬物の供給が十分に表1Invitroウサギ角膜透過法におけるBLZおよびMilled.BLZ点眼液の速度論的パラメータJc(nmol/cm2/h)Kp(×10.4cm/h)Kmt(min)D(×10.5cm2/h)BLZ1.41±0.270.77±0.140.45±0.0960.7±1.01.07±0.02Milled-BLZ1.52±0.110.83±0.060.52±0.0765.1±5.71.02±0.08速度論的パラメータは式(1).(3)を用いて算出した.平均値±標準誤差,n=6.040103040506070BLZconcentration(μM)26351:BLZsuspensions:Milled-BLZsuspensions******BLZconcentration(nmol/g)*1612840BLZMilled-BLZsuspensionssuspensions20Time(min)図5BLZおよびMilled.BLZ分散液における薬物図4BLZおよびMilled.BLZ分散液におけるinvivo網膜移行性(ラット)角膜透過性(ウサギ)網膜は薬物点眼1時間後に回収した.平均値±標準誤平均値±標準誤差,n=6羽6眼,*p<0.05,vs.BLZsus-差,n=6羽6眼,*p<0.05,vs.BLZsuspensionspensions(Student’st-test).(Student’st-test).548あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015(84) 満たされている条件下での薬物透過性を評価する方法である.したがって,本結果から瞬目などにより涙液代謝がみられない系では,粒子径の違いによる薬物の透過性に差はみられないことが明らかとなった.また,両分散液ともに角膜表面で溶解したBLZが角膜内部へ取り込まれ眼内へ移行することが示唆された.一方,これらinvitroウサギ角膜透過実験の結果と異なり,invivoウサギ角膜透過性実験では,Milled-BLZ分散液処理群のラグタイム(t)は,BLZ処理群のそれより低く,Milled-BLZ分散液処理群のAUCは,BLZ処理群のそれの2倍高値であった(図4).さらに,Milled-BLZ分散液点眼1時間後の網膜中BLZ濃度は,BLZ分散液点眼後のそれと比較し有意に高かった(図5).一般に,粒子径が小さいほど比表面積が高まり,薬物の溶解速度が高まることが知られている.本結果においても薬物粒子径の小さいMilled-BLZ分散液中のBLZ結晶はBLZ分散液中の結晶と比較し,点眼後涙液により速やかに溶解されるものと考えられる.これら角膜表面での溶解速度の向上は角膜内への薬物供給量の増加につながり,その結果Milled-BLZ分散液点眼時のtの短縮や眼房水および網膜への薬物到達濃度の増加がみられるものと示唆された.BLZ懸濁性点眼液と網膜血流改善に関してはこれまで多くの報告がなされている.Barnesら1)は家兎に7日間連続してBLZを点眼した際,視神経乳頭部血流が約10%増加したと報告している.また,ヒトに関する報告では,正常眼圧緑内障患者を対象とし,BLZを2週間連続点眼することで,網膜中心動脈で最低流速の上昇,末梢血管抵抗の低下がみられることを江見ら2)が示している.さらに,前田ら3)は,BLZは緑内障眼において,神経乳頭辺縁部および傍乳頭網膜組織血流を増加させることを報告している.一方,BLZ点眼後においても網膜血流改善がみられないとの報告もされており4,5),これら異なる結果の仮説として,BLZ点眼後の組織内CO2濃度が血管拡張をきたすレベルに達するかどうかが一つのキーとして考えられている.このように,BLZによる眼圧と網膜循環血流を同時標的とした治療には,十分な薬物量を網膜まで到達させることが必要である.本研究では,市販BLZ懸濁性点眼液の薬物粒子径を変更することで網膜への薬物到達濃度が増加することを明らかとした.これら粒子径を中心とした処方変更は今後の緑内障治療にきわめて有用であると考えられる.一方,市販点眼製剤を用いた今回の系では計20回ものビーズミル破砕処理が必要であり,より効率的な調製法の確立は今後の薬物への応用において重要な課題である.しかし,筆者らはすでにより破砕に適した添加物(デキストリンやセルロース系化合物など)を選択することで効果的かつ効率的な薬物破砕が可能であることを見出し報告している6).したがって,今後これらの添加物を用い,ナノオーダーの薬剤生成法の改良を試みる予定である.以上,本研究ではビーズミル法を用い市販BLZ懸濁性点眼液の薬物微細化を行うことにより,主薬の角膜透過性および薬物網膜到達量が向上すること見出した.本研究は,点眼用懸濁液の製剤設計およびバイオアベイラビリティ向上につながるものと考えられる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)BarnesGE,LiB,DeanTetal:Increasedopticnerveheadbloodflowafter1weekoftwicedailytopicalbrinzolamidetreatmentinDutch-beltedrabbits.SurvOphthalmol44:S131-140,20002)江見和雄:正常眼圧緑内障におけるブリンゾラミドの眼血流に対する効果.あたらしい眼科21:535-538,20043)前田祥恵,今野伸介,清水美穂ほか:緑内障眼における1%ブリンゾラミド点眼の視神経乳頭および傍乳頭網膜血流に及ぼす影響.あたらしい眼科22:529-532,20054)前田祥恵,今野伸介,大塚賢二:ブリンゾラミド1回点眼の正常人傍乳頭網膜循環に及ぼす影響.あたらしい眼科21:271-274,20045)SampaolesiJ,TosiJ,DarchukVetal:Antiglaucomatousdrugseffectsonopticnerveheadflow:design,baselineandpreliminaryreport.IntOphthalmol23:359-367,20016)NagaiN,ItoY,OkamotoNetal:Ananoparticleformulationreducesthecornealtoxicityofindomethacineyedropsandenhancesitscornealpermeability.Toxicology319:53-62,2014***(85)あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015549

2 剤併用投与をタフルプロスト単独投与に変更した場合の眼圧下降効果

2010年11月30日 火曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(91)1573《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(11):1573.1575,2010cはじめに2008年12月,緑内障および高眼圧症治療薬剤として新しいプロスタグランジン(PG)F2a誘導体であるタフルプロスト(タプロスR)0.0015%が参天製薬より発売された.タフルプロストはプロスト系PG製剤であり,プロスタノイドFP受容体に高い親和性をもつため強力な眼圧下降効果が期待できる点眼液である.また,他のプロスト系PG製剤と違い,わが国で初めて創製されたプロスト系PG製剤である.既存のPGF2a誘導体1剤とタフルプロストとの眼圧下降効果の比較はなされているが,2剤併用とタフルプロスト1剤単独使用の眼圧下降効果の評価はあまりなされていない.今回,筆者らは既存のプロスト系PG製剤,つまり,ラタノプロスト(キサラタンR:ファイザー社製)もしくはトラボプロスト(トラバタンズR:日本アルコン社製)とブリンゾラミド(エイゾプトR:日本アルコン社製)との2剤併用点眼していた症例をタフルプロストの単独投与に変更した場合の眼圧下降効果を比較検討した.I対象および方法対象は当院において既存のプロスト系PG製剤とブリンゾ〔別刷請求先〕小林茂樹:〒981-0913仙台市青葉区昭和町1-28小林眼科医院Reprintrequests:ShigekiKobayashi,M.D.,KobayashiEyeClinic,1-28Showamachi,Aoba-ku,Sendai981-0913,JAPAN2剤併用投与をタフルプロスト単独投与に変更した場合の眼圧下降効果小林茂樹小林守治小林眼科医院IntraocularPressure-ReducingEffectsofShiftfromProstaglandinFormulation-BrinzolamideCombinationtoTafluprostMonotherapyShigekiKobayashiandMoriharuKobayashiKobayashiEyeClinic目的:既存のプロスタグランジン(PG)製剤と新しく開発されたタフルプロストとの比較はなされているが,2剤併用点眼とタフルプロスト単独点眼との比較検討はあまりなされていない.今回,PG製剤とブリンゾラミドの2剤を併用点眼していた症例をタフルプロストの単独点眼に変更した場合の眼圧下降効果を比較検討した.対象および方法:対象は2剤併用していた広義の開放隅角緑内障および高眼圧症の症例23例42眼.方法は2剤併用点眼時とタフルプロスト単独点眼変更後の眼圧を比較し,解析には受診時眼圧の平均値を用いた.結果:2剤併用点眼時の平均眼圧は10.9mmHg,タフルプロスト単独点眼後の平均眼圧は11.3mmHg(p=0.0013)であった.変更前と比較して眼圧が不変であったのは32眼(76%)であった.結論:タフルプロストの単独投与に変更後も眼圧は維持され,点眼の簡便性においても好評であった.Purpose:Toinvestigatetheintraocularpressure(IOP)-reducingeffectsofshiftingfromprostaglandinformulation-brinzolamidecombination(combinationtherapy)totafluprostmonotherapy.Subjects:Subjectscomprised23patients(42eyes)thathadbeenreceivingthecombinationtherapy.Methods:MeanIOPonreceivingthecombinationtherapywascomparedwiththataftershiftingtotafluprostmonotherapy.Results:IOPdidnotchangein32eyes(76%),demonstratingtheeffectivenessoftafluprostmonotherapy.Conclusions:IOPdidnotchange,andinstillationconveniencewasgood.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(11):1573.1575,2010〕Keywords:緑内障,タフルプロスト,ラタノプロスト,トラボプロスト,ブリンゾラミド.glaucoma,tafluprost,latanoprost,travoprost,brinzolamide.1574あたらしい眼科Vol.27,No.11,2010(92)ラミドの2剤併用した正常眼圧緑内障(NTG)15例28眼,原発開放隅角緑内障(POAG)6例11眼および高眼圧症2例3眼,合計23例42眼(男性13例23眼,女性10例19眼)であり,年齢は76.0±9.7歳であった.3例5眼は当院初診時より人工水晶体眼であったが,その他の対象症例すべてに内眼手術の既往はなく,特に全例において,緑内障手術の既往はなかった.対象である患者には今回,タフルプロスト単独投与に変更することに対する意義を十分に説明し,インフォームド・コンセントを得たが従来の2剤併用点眼治療を要望した症例は対象症例より除外した.方法は外来受診時眼圧をノンコンタクトレンズトノメーターで3回測定し,その平均値を受診時眼圧値とし,解析には,各治療期間中に得られたすべての外来受診時眼圧の平均値を用いた.II結果対象症例のうち1症例2眼がタフルプロスト単独点眼に変更後,眼圧が1カ月で2mmHg以上,上昇した.この症例に関してはブリンゾラミドを追加投与し,経過観察としたため対象症例より除外した.既存のプロスト系PG製剤とブリンゾラミドの2剤併用点眼していた治療期間は1.9±1.0年間(平均値±標準偏差)であり,タフルプロスト単独点眼投与に変更してからの治療期間は4.2±1.2カ月間(平均値±標準偏差)であった.既存のプロスト系PG製剤とブリンゾラミドの2剤の併用点眼時の平均眼圧は10.9mmHg,タフルプロスト単独点眼後の平均眼圧は11.3mmHgと有意に0.4mmHgの上昇を認めた(p=0.0013,Wilcoxon符号付順位検定).しかし,変更前と比較して,変更後1mmHg以内の眼圧変動を臨床的に不変と定義すると,32眼(76%)の変更後の眼圧は不変であり,1mmHgを超えた眼数は10眼(24%)であった(図1).変更前眼圧が12mmHg以上の症例11眼は図1上,変更後,眼圧が下降傾向にあるが,変更前平均眼圧は13.5mmHg,変更後平均眼圧13.7mmHgと有意な差を認めなかった(p>0.62,Wilcoxonの符号付順位検定).眼圧は変更前,変更後において同等と考えられる.III考按プロスト系PG製剤として1999年,ラタノプロスト(キサラタンR)が発売された.ラタノプロストはPGF2aの17位にフェニル基を導入した誘導体を開発することで,PGのプロスタノイドFP受容体への選択性が向上し,房水のぶどう膜強膜流出のみを増加させ眼圧下降を示す1).もともとPGF2aの骨格である15位の水酸基は眼圧下降などのPGF2aの生理活性に必須であると考えられていたため2),その後,開発されたトラボプロスト(トラバタンズR)も基本骨格はラタノプロストと同様であり,17位にフェニル基,15位に水酸基をもつ15位ヒドロキシ型PG誘導体である.今回,開発されたタフルプロストは従来開発されたプロスト系PG製剤と異なり,PGF2aの骨格である15位の水酸基と水素基を2つのフッ素に置換した15位ジフルオロ型PG誘導体であるため,従来のプロスト系PG製剤よりもプロスタノイドFP受容体に対する親和性が高まったと考える3,4)(図2a.d).特に実験的にはプロスタノイドFP受容体に対する親和性はタフルプロストとラタノプロストを比較すると,タフルプロストはラタノプロストの12倍4),トラボプロストとラタノプロストを比較すると,トラボプロストの親和性はラタノプロストの2.8倍であると推定されるため3),現在発売されているプロスト系PG製剤のプロスタノイドFP受容体に対すHOHOOOOFFd:タフルプロストHOHOa:天然型PGF2ab:ラタノプロストc:トラボプロストHOHOOOHH10155120HOOOHOHHOHOCF3OOOHOH図2天然型PGF2aおよび既存のプロスト系製剤とタフルプロストの構造46810121416184681012141618変更後眼圧(mmHg)変更前眼圧(mmHg)a517b図12剤併用時(変更前)とタフルプロスト単独点眼に変更後の眼圧変化a:変更前眼圧と変更後眼圧が同値であるライン.b:変更後1mmHgの眼圧上昇ライン.bの対角線以下の変更後眼圧値を変更前と比較して不変と考えると32眼(76%)の眼圧は不変であり,眼圧値が変更後1mmHgを超えた眼数は10眼(24%)であった.(93)あたらしい眼科Vol.27,No.11,20101575る親和性はタフルプロスト>トラボプロスト>ラタノプロストの順と考えられ5),眼圧下降効果と相関があると思われる.今回,筆者らはこのタフルプロストの強力な眼圧下降効果を期待し,プロスト系PG製剤であるラタノプロストもしくはトラボプロストとブリンゾラミドの2剤併用していた症例をタフルプロスト1剤のみに変更し,眼圧下降効果を比較検討した.その結果,2剤併用時より平均0.4mmHgと有意に眼圧上昇を認めたが,1mmHg以内の眼圧上昇であり,変更前後の眼圧は不変と考えられる.しかし,変更前眼圧測定期間は変更後の眼圧測定期間に比べ長期であり,今後,変更後の眼圧測定を継続することは重要と思われる.これらのタフルプロストの眼圧下降効果の有効性は他のプロスト系PG製剤とは違う物理化学的,薬理学的特性によるものと思われる.つまり,タフルプロストのフッ素導入の効果はプロスタノイドFP受容体以外にほとんど作用しない高い選択性4)により活性が増強され,フッ素の物理化学的特性により生体内でも化学的においても代謝,分解は非常に受けにくく,薬剤としての安定性に優れている.その物理化学的メカニズムは以下の3つの特性によると考えられる6)(図3).1)フッ素(F)原子は立体的に水素(H)原子についで小さい原子である.2)フッ素(F)原子は電気陰性度が最も大きく,次が酸素(O)原子であり,しかも両原子は結合距離がきわめて近い.3)フッ素(F)原子は結合解離エネルギーが最も大きく,炭素,フッ素(C-F)結合は非常に切れにくいが,炭素,酸素(C-O)結合は切れ易い.つまり,切れ易いということは代謝を含め反応を受け易いと考えられる.したがって,フッ素は水素のように作用し,酸素のようにも作用する.前述したようにタフルプロストはPGF2aの骨格である15位の水酸基と水素基を2つのフッ素に置換したことで,タフルプロストが他のプロスト系PG製剤よりも活性,安定性,薬物動態が優れていると推定される.タフルプロスト点眼液は1日1回の点眼投与で十分であるだけでなく室温保存が可能であり,遮光の必要もないことからタフルプロスト単独点眼投与変更後の患者の評価は23症例全例で点眼の簡便性において好評であった.このように点眼遵守(コンプライアンス)や自発的点眼(アドヒアランス)7)においてもタフルプロスト単独点眼投与の有効性が示唆された.IV結論タフルプロストの単独投与に変更後も眼圧は維持され,また,点眼の簡便性においても好評であったことから,タフルプロストは既存のPG製剤とブリンゾラミド併用療法からの変更薬剤として有用であると思われる.なお,当院と参天製薬株式会社との間に利益相反の関係はない.文献1)野村俊治,橋本宗弘:新規緑内障治療薬ラタノプロスト(キサラタンR)の薬理作用.薬理誌115:280-286,20002)ResulB,StjernschantzJ:Structure-activityrelationshipsofprostaglandinanaloguesasocularhypotensiveagents.CurrOpinTherPat82:781-795,19933)SherifNA,KellyCR,CriderJYetal:OcularhypotensiveFPprostaglandin(PG)analogs:PGreceptorsubtypebindingaffinitiesandselectivities,andagonistpotenciesatFPandotherPGreceptorsinculturedcells.JOculPharmacolTher19:501-515,20034)TakagiY,NakajimaT,ShimazakiAetal:PharmacologicalcharacteristicsofAFP-168(tafluprost),anewprostanoidFPreceptoragonist,asanocularhypotensivedrug.ExpEyeRes78:767-776,20045)OtaT,MurataH,SugimotoEetal:Prostaglandinanaloguesandmouseintraocularpressure:Effectsoftafluprost,latanoprost,travoprost,andunoprostone,considering24-hourvariation.InvestOphthalmolVisSci46:2006-2011,20056)熊懐稜丸:フッ素の特性と生理活性.フッ素薬学─基礎と実験─(小林義郎,熊懐稜丸,田口武夫),続医薬品の開発・臨時増刊,p7-11,廣川書店,19937)TsaiJC:Medicationadherenceinglaucoma:approachesforoptimizingpatientcompliance.CurrOpinOphthalmol17:190-195,2006***元素(X)HFOC電気陰性度2.24.03.52.5結合距離(CH3-X,Å)1.091.391.431.54v.d.Waals(半径,Å)1.201.351.401.85abc結合解離エネルギー(CH3-X,kcal/mol)991168683図3フッ素の物理化学的特性(文献6より一部改変)a:フッ素(F)は電気陰性度が最も大きく,つぎが酸素(O)であり,結合距離も近い.b:フッ素(F)は立体的には水素(H)についで小さな原子である.c:フッ素(F)は結合解離エネルギーが最も大きく,C-F結合は非常に切れにくいがC-O結合は切れやすい(反応を受け易い).

緑内障患者におけるブリンゾラミド2回点眼からドルゾラミド3回点眼への切り替え効果の検討

2010年8月31日 火曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(107)1119《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(8):1119.1121,2010cはじめに日本国内で使用可能な炭酸脱水酵素阻害薬の点眼薬は,1999年に承認されたドルゾラミドと2002年に承認されたブリンゾラミドがある.ブリンゾラミドの承認後,ドルゾラミドからブリンゾラミドへの変更による眼圧下降効果について多くの報告1.7)が行われた.過去に当院にても秦ら1)がドルゾラミド3回点眼からブリンゾラミド2回点眼へ変更し,ブリンゾラミド2回点眼は,ドルゾラミド3回点眼に比べてさらなる眼圧下降効果が認められ,有効であることを報告した.今回,筆者らは改めて炭酸脱水酵素阻害薬切り替えによる眼圧への影響を検討するため,ブリンゾラミド2回点眼にて治療中の緑内障患者を対象に,ブリンゾラミド2回点眼継続群とドルゾラミド3回点眼変更群を比較検討した.〔別刷請求先〕丸山貴大:〒143-8541東京都大田区大森西7-5-23東邦大学医療センター大森病院眼科Reprintrequests:TakahiroMaruyama,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOmoriHospital,7-5-23Omorinishi,Ota-ku,Tokyo143-8541,JAPAN緑内障患者におけるブリンゾラミド2回点眼からドルゾラミド3回点眼への切り替え効果の検討丸山貴大渡辺博木村正彦権田恭広松本直杤久保哲男東邦大学医療センター大森病院眼科EvaluationofSwitchingfromBrinzolamideTwiceDailytoDorzolamideThriceDailyforGlaucomaTakahiroMaruyama,HiroshiWatanabe,MasahikoKimura,YasuhiroGonda,TadashiMatsumotoandTetsuoTochikuboDepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOmoriHospital目的:炭酸脱水酵素阻害薬ブリンゾラミド2回点眼中の緑内障患者において,ブリンゾラミド2回点眼を継続した場合と,炭酸脱水酵素阻害薬ドルゾラミド3回点眼に切り替えた場合の眼圧下降効果を検討した.対象および方法:ブリンゾラミド2回点眼中の緑内障患者46例92眼において,基礎薬剤は継続し,ブリンゾラミド2回点眼を継続した場合と,ドルゾラミド3回点眼に切り替えた場合の3カ月後の眼圧を検討した.結果:ブリンゾラミド2回点眼継続群の開始前,3カ月後の眼圧平均値の変化はなかった.一方,ドルゾラミド3回点眼へ切り替えた群の平均眼圧は16.6±4.2mmHgで,3カ月後の眼圧は15.9±4.0mmHgと有意に下降した(p<0.05).結論:ブリンゾラミド2回点眼使用中の緑内障患者において,ドルゾラミド3回点眼への切り替えにより,さらなる眼圧下降効果が認められた.Purpose:Weevaluatedtheeffectonglaucomaofbrinzolamidetwicedailyandofdorzolamidethricedaily,switchedfrombrinzolamidetwicedaily.CasesandMethod:Subjectsofthiscomprised92eyesof46patientswhohadbeenreceivingothermedications,andbrinzolamidetwicedaily.The92eyesweredividedintotwogroups:onegroupswitchedtodorzolamidethricedailyfrombrinzolamidetwicedaily;theothergroupcontinuedbrinzolamidetwicedaily.Bothgroupscontinuedtheirotherpreviousmedications.Intraocularpressure(IOP)wasmonitoredfor3months.Results:NoIOPdifferenceswereobservedinthebrinzolamidetwicedailygroup.Inthedorzolamidethricedailygroup,ontheotherhand,IOPatthestartofthestudyaveraged16.6±4.2mmHgandduring3monthsafterthestartofthestudyaveraged15.9±4.0mmHg.At3monthsafterswitching,IOPhaddecreased(p<0.05).Conclusion:Switchingfrombrinzolamidetwicedailytodorzolamidethricedailyhasremarkableocularhypotensiveeffect.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(8):1119.1121,2010〕Keywords:ドルゾラミド,ブリンゾラミド,炭酸脱水酵素阻害薬,眼圧下降率,眼圧下降効果.brinzolamide,dorzolamide,carbonicanhydraseinhibitor,intraocularpressurereductionrates,ocularhypotensiveeffect.1120あたらしい眼科Vol.27,No.8,2010(108)I対象および方法対象は東邦大学医療センター大森病院眼科外来でブリンゾラミド2回点眼にて治療中の緑内障患者46例92眼で,男女比は46眼:46眼,平均年齢は69±12.4歳(40.88歳)であった.92眼のうち,開放隅角緑内障58眼,正常眼圧緑内障18眼,閉塞隅角緑内障12眼,続発緑内障4眼であった.基礎点眼薬は切り替え前1カ月から,および試験期間3カ月間は変更禁止,継続とし,1%ブリンゾラミド2回点眼の患者を無作為にブリンゾラミド2回点眼継続群と,ウォッシュアウト期間なしに,ブリンゾラミドを中止し,1%ドルゾラミド3回点眼に変更する群に割り付けた.エントリー時基礎薬剤の点眼薬数の平均は2.8±0.9剤であった.ベースラインを両群間で比較すると,ブリンゾラミド継続群のベースライン眼圧は15.3±2.8mmHg,男女比は14:11,平均年齢は68.9±12歳,病型は開放隅角緑内障32眼,正常眼圧緑内障8眼,閉塞隅角緑内障8眼,続発緑内障2眼,平均点眼薬数は1.76であった.手術既往は線維柱帯切除術1眼,線維柱帯切開術1眼,白内障手術3眼,線維柱帯切除術および白内障手術4眼,suturecanalizationおよび白内障手術2眼であった.対して,ドルゾラミドに変更群のベースライン眼圧は16.6±4.2mmHg,男女比は9:12,平均年齢は69.3±13歳,病型は開放隅角緑内障26眼,正常眼圧緑内障10眼,閉塞隅角緑内障4眼,続発緑内障2眼,平均点眼薬数は1.81であった.手術既往は白内障手術5眼,線維柱帯切除術および白内障手術5眼,suturecanalizationおよび白内障手術3眼であった.なお,白内障手術はすべて超音波乳化吸引術および眼内レンズ挿入術を施行した.眼圧はほぼ同時刻(午前10時±1時間)にCanon社製非接触眼圧計T-3にて測定した.各群の変更前後の眼圧を比較した.期間は2008年1月から7月までで,点眼薬の変更時と変更3カ月後までの平均眼圧下降値と平均眼圧下降率を両群間で比較した.本研究は目標症例数を各群30例,計60例と定め,無作為化で検討を行ったが,期間終了までに目標症例数に達することができなかったことから,試験期間内で終了できた症例で検討を行ったために,症例数にばらつきが認められた.また,両眼および片眼ブリンゾラミドどちらでも対象症例としたが,結果的に両眼ブリンゾラミドのみが組み入れられた.数値は平均値±標準偏差で表記した.検定は各群内の眼圧変動の比較は対応のある2標本t検定を使用し,両群間の眼圧下降量の比較検定は対応のない2標本t検定を実施した.統計上の有意水準は5%とした.本研究は倫理委員会の承認を得,患者に対しては本研究の目的を説明し,インフォームド・コンセントを書面にて得た.II結果ブリンゾラミド2回点眼継続患者25例50眼のベースライン眼圧は15.3±2.8mmHgで,3カ月後の眼圧は15.2±3.4mmHgとほぼ変化はなかった(NS).一方,ドルゾラミド3回点眼へ切り替えた21例42眼のベースライン眼圧は16.6±4.2mmHgで,3カ月後の眼圧は15.9±4.0mmHgと眼圧は有意に下降した(p<0.05)(図1).平均眼圧下降幅はブリンゾラミドで0.1±2.9mmHg,ドルゾラミドで0.8±2.1mmHgであった(図2).平均眼圧下降率はブリンゾラミドで0.4±16.9%,ドルゾラミドで3.7±12.5%であった(図3).また両群とも試験期間を通して,副作用の報告はなかった.ドルゾラミド3回点眼への切り替えによる脱落もなく,両群とも試験期間を通して中止症例はなかった.NSブリンゾラミド2回点眼継続ドルゾラミド3回点眼切り替え眼圧下降率(%)0-5-10-15-20図3平均眼圧下降率NSブリンゾラミド2回点眼継続ドルゾラミド3回点眼切り替え眼圧下降幅(mmHg)0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0-3.5図2平均眼圧下降幅252015105ベースライン眼圧(mmHg)3カ月:ブリンゾラミド2回点眼継続:ドルゾラミド3回点眼に切り替え16.6±4.215.3±2.815.9±4.015.2±3.4**p<0.05(pairedt-test)Mean±SD図1眼圧推移(109)あたらしい眼科Vol.27,No.8,20101121III考按これまでに,ドルゾラミド3回点眼とブリンゾラミド2回点眼の変更による眼圧下降効果について多くの報告1.7)が行われてきた.おもにドルゾラミドからブリンゾラミドに変更した際の報告であり,眼圧は下降1,7)または変化なし2.6)とほぼ同等の効果があると報告されている.今回,ブリンゾラミド2回点眼をドルゾラミド3回点眼へ変更することによりさらなる眼圧下降が認められた.井上ら8)は1%ブリンゾラミド2回点眼を使用中の患者において,1%ブリンゾラミド点眼薬を3回点眼に増量あるいは1%ドルゾラミド3回点眼に変更することにより,有意に眼圧下降を示し,また1%ブリンゾラミド3回点眼と1%ドルゾラミド3回点眼には同等の効果を有すると報告している.今回の結果はこの結果と一致すると考えられ,ブリンゾラミド2回点眼で眼圧下降が認められない症例に対して,同系統であるドルゾラミド3回点眼への変更は,選択肢としても考慮可能である.しかし今回,炭酸脱水酵素阻害薬同士の変更であったが,治療に対して,前向きとなりコンプライアンスが改善したため,眼圧が下降した可能性もある.長期に点眼治療が行われる慢性緑内障では,点眼薬の怠薬が生じやすい.また点眼薬数も多く,コンプライアンスの低下している場合がある.ブリンゾラミド2回点眼からドルゾラミド3回点眼に変更することはコンプライアンスの低下につながる可能性もあるが,同じ点眼薬を長期的に使うことが多くなりやすい慢性緑内障の患者に服薬意識の向上をもたらし,コンプライアンスの向上につながり,同系統でも点眼薬を変更してみる価値はあると考えられた.文献1)秦桂子,田中康一郎,杤久保哲男:1%ドルゾラミドから1%ブリンゾラミドへの切り替えにおける眼圧効果.あたらしい眼科23:681-683,20062)SallK:Theefficacyandsafetyofbrinzolamide1%ophthalmicsuspension(Azopt)asaprimarytherapyinpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.BrinzolamidePrimaryTherapyStudyGroup.SurvOphthalmol44:155-162,20003)SilverLH:Clinicalefficacyandsafetyofbrinzolamide(AzoptTM),anewtopicalcarbonicanhydraseinhibitorforprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.AmJOphthalmol126:400-408,19984)SeongGJ,LeeSC,LeeJHetal:Comparisonsofintraocular-pressure-loweringefficacyandsideeffectsof2%dorzolamideand1%brinzolamide.Ophthalmologica215:188-191,20015)小林博,小林かおり,沖波聡:ブリンゾラミド1%とドルゾラミド1%の降圧効果と使用感の比較─切り替え試験.臨眼58:205-209,20046)久保田みゆき,原岳,久保田俊介ほか:ドルゾラミドからブリンゾラミドへの切り替え試験後の眼圧下降効果の比較.臨眼58:301-303,20047)今井浩二郎,森和彦,池田陽子ほか:2種の炭酸脱水酵素阻害点眼薬の相互切り替えにおける眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科22:987-990,20058)井上賢治,塩川美菜子,若倉雅登ほか:ブリンゾラミド2回点眼からブリンゾラミド,ドルゾラミド3回点眼への変更による眼圧下降効果.臨眼63:63-67,2009***

熱応答ゲル化チモロール点眼薬およびブリンゾラミド点眼薬のラタノプロスト点眼薬への追加効果

2008年8月31日 日曜日

———————————————————————-Page1(97)11430910-1810/08/\100/頁/JCLSあたらしい眼科25(8):11431147,2008cはじめにラタノプロストはぶどう膜強膜流出促進による優れた眼圧下降作用と,全身に対する副作用が少なく認容性が良好なことから,現在わが国ではb遮断薬とともに緑内障治療の第一選択薬として使用されている1).しかし日常診療においてはラタノプロスト単剤では十分な眼圧下降効果が得られない症例もあり,他の薬剤に変更あるいは追加の投与が必要となる.薬剤の併用を行う場合は薬理学的に作用機序が異なる薬剤の追加が望ましいため,ラタノプロストが第一選択薬のときには房水産生抑制作用を有するb遮断薬点眼や炭酸脱水〔別刷請求先〕塩川美菜子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:MinakoShiokawa,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN熱応答ゲル化チモロール点眼薬およびブリンゾラミド点眼薬のラタノプロスト点眼薬への追加効果塩川美菜子*1井上賢治*1若倉雅登*1井上治郎*1富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医学部眼科学第二講座OcularHypotensiveEectofGel-formingTimololSolutionorBrinzolamideSolutionAddedtoLatanoprostMinakoShiokawa1),KenjiInoue1),MasatoWakakura1),JiroInouye1)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)SecondDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySchoolofMedicineラタノプロスト点眼薬単剤で治療中の緑内障,高眼圧症49例49眼に2剤目として熱応答ゲル化チモロール点眼あるいは1%ブリンゾラミド点眼を追加投与したときの眼圧下降効果,使用感,副作用についてprospectiveに検討した.総投与症例49例中,解析対象となった症例は42例であった.ゲル化チモロール投与群の平均眼圧は追加投与前18.4±2.4mmHg,投与12週後で15.1±2.5mmHgと有意に下降した(p<0.01).ブリンゾラミド投与群の平均眼圧は追加投与前17.8±2.3mmHg,投与12週後で15.0±2.5mmHgと有意に下降した(p<0.01).追加投与12週後まででは眼圧下降は両群間に差はなかった.使用感はゲル化チモロール群ではしみる,ブリンゾラミド群ではかすみが多く,副作用出現率は両群間に差はなかった.ラタノプロスト点眼と熱応答ゲル化チモロール点眼あるいはブリンゾラミド点眼の併用は,ともに眼圧下降に効果的である.In49patients(49eyes)withglaucomaandocularhypertensionundertreatmentwithlatanoprostophthalmicsolutionalone,weprospectivelyevaluatedocularhypertensiveeect,sensationofuseandadversereactionswhenthermo-settinggeltimololophthalmicsolutionor1%brinzolamideophthalmicsolutionwasaddedasthesecondconcomitantmedication.Thecasethatbecameananalysissubjectintotaladministrationcase49patientswas42patients.Themeanintraocularpressure(IOP)ofthegel-formingtimololgroupdecreasedsignicantly,from18.4±2.4mmHgbeforeadditionto15.1±2.5mmHgatthe12weeksafteraddition(p<0.01).ThemeanIOPofbrinzor-amide-treatedgroupsalsodecreasedsignicantly,from17.8±2.3mmHgbeforeadditionto15.0±2.5mmHgatthe12weeksafteraddition(p<0.01).Therewasnodierenceinocularhypertensiveeectbetweenthetwogroupsuptothe12weeksafteraddition.Asforthesensationofuse,irritationwascomplaintinthegel-formingtimololgroup,whereasblurredvisionwascomplainedduringbrinzolamidegroup.Nodierenceintheincidenceofadversereactionwasseenbetweenthetwogroups.Thisstudydemonstratesthatthecombinationoflatanoprostwitheitherthermo-settinggeltimololorbrinzolamideiseectiveforIOPreduction.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(8):11431147,2008〕Keywords:熱応答ゲル化チモロール,ブリンゾラミド,ラタノプロスト,眼圧下降効果.gel-formingtimolol,brinzolamide,latanoprost,ocularhypotensiveeects.———————————————————————-Page21144あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(98)酵素阻害薬点眼を選択することが多くなる.これらの薬剤をラタノプロストに追加併用した場合の眼圧下降効果については,数多く報告されている28)が,b遮断薬として熱応答ゲル化チモロールを使用した報告は少ない7,8).今回はラタノプロスト点眼薬を使用中に熱応答ゲル化チモロール(リズモンRTG,以下ゲル化チモロール)点眼あるいはブリンゾラミド(エイゾプトR)点眼を2剤目として追加投与した際の眼圧下降効果についてprospectiveに検討した.I対象および方法井上眼科病院に通院中で,ラタノプロスト点眼単剤による治療を2カ月間以上行っていても眼圧下降効果が不十分,あるいは視野障害が進行している緑内障および高眼圧症患者49例を対象とした.眼圧下降効果,視野障害の進行については臨床的判断で評価した.調査の目的を十分に説明し,インフォームド・コンセントを得たうえで,封筒法により2剤目をゲル化チモロール点眼,ブリンゾラミド点眼のいずれかに決定して追加投与した.点眼は疾患が両眼の症例では両眼に,片眼例では患眼に行った.追加投与前眼圧は測定値が数回安定していることを前提に追加直前1回の眼圧測定値とし,追加投与12週後までの眼圧を投与前と比較し,眼圧下降値と下降率をゲル化チモロール群とブリンゾラミド群間で比較した.各薬剤の点眼時間は限定しなかったが,ラタノプロストは単独投与時より夜1回点眼を指示しており,追加投与を行ったゲル化チモロールは朝1回点眼,ブリンゾラミドは朝夜12時間ごとの点眼を指示した.眼圧測定はGold-mann圧平眼圧計を用いて行い,測定者は全例に対し同一検者で行った.検者は点眼内容について把握しているが過去の眼圧測定値についてはブラインドで測定を行った.眼圧測定時間は9時から17時の外来診療時間内で全例一定はしていないが,症例ごとの眼圧測定は,追加投与前から調査期間中ほぼ一定時刻に行った.さらに選択式のアンケート(追加投与12週後に施行)により点眼状況と使用感を調査した.点眼薬による副作用も診察ごとに調査した.副作用については追加投与後に出現した患者の訴えおよび眼科的所見とし,ラタノプロストの副作用と考えられる所見を含めて追加投与前から存在したものは除外した.解析は両眼症例では右眼,片眼症例では患眼について行い,統計解析にはWilcoxon符号付順位和検定とMann-Whitney検定を用い,p<0.05を有意水準とした.II結果1.患者背景(表1)副作用の発現や通院中断により,調査中止になった症例はゲル化チモロール群が3例,ブリンゾラミド群が4例であった.そのため,眼圧下降効果の解析はゲル化チモロール群21例,ブリンゾラミド群21例で行った.視野障害の進行により,追加投与となったのは4例であった.患者背景に有意差はなかった.2.眼圧平均眼圧の推移を図1に示す.眼圧はラタノプロスト単独投与時(追加投与前)ではゲル化チモロール群が18.4±2.4mmHg(平均値±標準偏差),ブリンゾラミド群が17.8±2.3*p<0.01*p<0.01ゲル化チモロール群ブリンゾラミド群眼圧(mmHg)追加前4週後8週後12週後******2520151050眼圧(mmHg)追加前4週後8週後12週後2520151050図1熱応答ゲル化チモロールおよびブリンゾラミド点眼追加前後の眼圧表1患者背景ゲル化チモロール群ブリンゾラミド群性別男性9例女性12例男性8例女性13例年齢4279歳(63.7±11.0歳)5681歳(69.6±7.9歳)追加前眼圧Meandeviation値*18.4±2.4mmHg9.6±7.4dB17.8±2.3mmHg11.9±8.9dB病型原発開放隅角緑内障原発閉塞隅角緑内障正常眼圧緑内障高眼圧症10(例)38012(例)261*Meandeviation値はHumphrey視野プログラム中心30-2Sita-Standardによる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081145(99)mmHgで両群に有意差はなかった.ゲル化チモロール群の追加4週後,8週後,12週後の眼圧は各々15.7±2.3mmHg,15.1±2.2mmHg,15.1±2.5mmHg,ブリンゾラミド群は15.8±2.5mmHg,15.3±2.6mmHg,15.0±2.5mmHgであった.ゲル化チモロール群,ブリンゾラミド群ともに追加投与12週後までは有意に眼圧が下降した(p<0.01).眼圧下降値の推移を図2に示す.眼圧下降値は追加4週後,8週後,12週後でゲル化チモロール群では各々2.8±0.9mmHg,2.9±1.0mmHg,3.3±1.1mmHg,ブリンゾラミド群では2.2±1.1mmHg,2.7±1.4mmHg,2.8±1.0mmHgで両群間に有意差はなかった.眼圧下降率を図3に示す.眼圧下降率は追加4週後,8週後,12週後でゲル化チモロール群では各々15.0±4.8%,16.2±5.9%,18.3±6.1%,ブリンゾラミド群では12.2±6.2%,15.1±7.7%,15.7±6.0%で両群間に有意差はなかった.3.点眼状況点眼を忘れた回数はゲル化チモロール群で平均0.4±0.7回/週,ブリンゾラミド群で0.4±0.8回/週で有意差はなかった.4.使用感患者の自覚症状を図4に示す.「しみる」という刺激症状がゲル化チモロール群(39.3%)で,ブリンゾラミド群(11.1%)より有意に多かった(p=0.0088).「かすむ」という霧視がブリンゾラミド群(40.7%)で,ゲル化チモロール群(14.3%)より有意に多かった(p=0.024).「べたつく」,「かゆみがある」,「異物感がある」などの自覚症状も発現したが,両群間に差はなかった.5.副作用調査中止例を含めたすべての対象患者49例における副作用出現率はゲル化チモロール群が12.5%(3例/24例),ブリンゾラミド群が16.0%(4例/25例)であった.ゲル化チモロール群では咳と痰,違和感,点状表層角膜炎が各1例で出現し,このうち咳と痰,違和感の2例が点眼中止となった.ブリンゾラミド群ではヒリヒリする鈍痛,悪心,口の中が苦くなる,頭痛が各1例で出現し,全例点眼中止となった.III考按緑内障治療は,患者にとって侵襲,リスク,合併症(副作用)が少ないものから行っていく必要がある.また,啓蒙,健康診断,診断技術の進歩などから,早期発見,早期治療の傾向が進み,今後個々の緑内障患者の治療歴も伸びていくことが予想される.そのため,緑内障診療において最も侵襲が少ない点眼薬治療は重要視されており,眼圧下降効果,コンプライアンス,副作用,防腐剤など各方面から利点がある点眼薬が近年次々に発売され,われわれの選択肢は大幅に広がった.一方で多くの点眼薬から選択する際に,患者背景などを考慮すると迷うことが多くなった.ラタノプロストが眼圧下降効果と全身への影響の少なさ911)から第一選択薬として使用されることが多いが,その治療効果が不十分で点眼薬の追加が必要となった場合の2剤目の選択が問題となる.ラタノプロストと他の薬剤の併用効果については多数報告されている28)が,b遮断薬点眼と炭酸脱水酵素阻害薬点眼のどちらが優れているかの結論はでていない.今回,コンプライアンスを考え,1日1回の熱応答:ゲル化チモロール群:ブリンゾラミド群5432104週後8週後12週後眼圧下降値(mmHg)図2熱応答ゲル化チモロールおよびブリンゾラミド点眼追加前後の眼圧下降値後後後眼圧下降率ゲル化チモロールブリンゾラミド*図3熱応答ゲル化チモロールおよびブリンゾラミド点眼追加前後の眼圧下降率ラ感じに感の下感ゲル化チモロールブリンゾラミド******図4熱応答ゲル化チモロールおよびブリンゾラミドの使用感———————————————————————-Page41146あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(100)ゲル化チモロール点眼と1日2回のブリンゾラミド点眼を用いて調査した.熱応答ゲル化チモロール点眼は,水溶性チモロール点眼やイオン応答ゲル化チモロール(チモプトールRXE)点眼と眼圧下降効果は同等で12),1日1回点眼,防腐剤の少なさとゲル基剤の特性から角膜保護作用が高いと報告されている.ブリンゾラミド点眼はドルゾラミド(トルソプトR)点眼と眼圧下降作用は同等で,1日2回点眼,刺激感が少なく14),夜間の眼圧下降にも有用である10)と報告されている.今回の結果は,追加投与12週後で眼圧下降幅はゲル化チモロール群が平均3.3mmHg,ブリンゾラミド群が平均2.8mmHg,眼圧下降率はゲル化チモロール群が平均18.3%,ブリンゾラミド群が平均15.7%であった.ラタノプロストにb遮断薬の追加投与したときの眼圧下降効果は,水谷ら2)はラタノプロスト単剤使用中の正常眼圧緑内障患者にニプラジロールを追加投与24週後の眼圧下降幅は2.0mmHg,河合ら3)はラタノプロスト単剤使用中の開放隅角緑内障患者および正常眼圧緑内障患者にカルテオロールを追加,投与6カ月後の眼圧下降率が11.8%,橋本ら4)はラタノプロスト単剤使用中の正常眼圧緑内障患者にゲル化チモロールを追加投与4週後の眼圧下降幅は1.2mmHg,本田ら5)はラタノプロスト単剤使用の開放隅角緑内障および高眼圧症患者にチモロールあるいはカルテオロールを追加,追加投与4週後の眼圧下降幅はチモロールで1.6mmHg,カルテオロールで2.2mmHgと報告している.また,b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬の比較では,廣岡ら6)はラタノプロスト単剤治療中の開放隅角緑内障患者に対する追加投与で,眼圧下降率は投与8週後でチモロールが14.7±14.5%,ブリンゾラミドが12.1±16.2%,井上ら7)はラタノプロスト単剤使用の緑内障患者でb遮断薬あるいは炭酸脱水酵素阻害薬を追加投与し,16カ月の眼圧下降率がb遮断薬で15.819.3%,炭酸脱水酵素阻害薬で12.717.0%と報告している.対象や調査期間,使用薬剤の種類が各々異なるため,単純に数値を比較するのが妥当かはわからないが,今回の結果はゲル化チモロール群,ブリンゾラミド群ともに,追加投与により過去の報告27)と同等の眼圧下降効果を示した.またゲル化チモロール群とブリンゾラミド群では眼圧下降幅および眼圧下降率に統計学的な有意差はみられなかったが,ゲル化チモロール群のほうがブリンゾラミド群よりやや眼圧下降効果が大きい傾向がみられた.これは廣岡ら6)のチモロールとブリンゾラミドを8週間使用した報告でも述べられている.症例数を増やし,長期間の調査を行い,さらに検討を加える必要があると考えた.点眼コンプライアンスは,ゲル化チモロール群とブリンゾラミド群で有意差はなかった.緑内障患者のなかには,点眼回数が少ないことに不安を感じたり,逆に少ないからこそ治療を軽んじたりする者もおり9),使用薬剤が2剤までにおいては1日1,2回点眼の薬剤については個々の患者の性格や生活リズムを考慮して点眼薬を選択するほうが重要であることが示唆された.使用感はゲル化チモロール群では「しみる」「べたつく」が多く,これは井上ら13)の報告と同様であった.ブリンゾラミド群では刺激感は少なく,「かすむ」という見え方の変化が多いのは過去の報告14,15)と同様であった.副作用はラタノプロストへのb遮断薬点眼の追加投与では,点状表層角膜炎や充血,涙液異常などが多く,河合ら3)はカルテオロール追加投与後に37.5%でBUT(涙液層破壊時間)が悪化し,25.0%で角膜上皮障害が悪化した,本田ら5)はb遮断薬の追加により,角結膜障害,結膜充血が悪化したと報告しているが,今回はこれらのような局所副作用はほとんど出現しなかった.これは,追加投与前からみられる副作用については除外してあること,ゲル化チモロールが角膜保護作用を有していることによると考えられた.今回の結果により,ラタノプロスト投与例への2剤目の追加投与として熱応答ゲル化チモロール点眼とブリンゾラミド点眼では眼圧下降効果に差はなかった.薬剤には特有の使用感,副作用があるので薬剤が十分に効果を発揮できるかどうかはコンプライアンスの良し悪しに影響される.2剤目としてどの薬剤を選択するかは,まず喘息,慢性閉塞性肺疾患,不整脈,心不全などの既往について問診し全身状態を把握し,個々の患者の性格や生活リズム,患者が点眼回数や使用感など何に重点をおくかを理解したうえで決定する必要があると考えられた.今回の調査では,症例ごとの眼圧日内変動の把握,全症例での点眼時間,眼圧測定時間の限定は行わなかったが,薬剤の作用時間を考慮すると,点眼時間や眼圧測定時間を一定させること,12週間と調査期間も短かかったためさらに長期間にわたる調査を続けること,症例数を増やすこと,そのうえで緑内障の分類別に検討してみることでまた別の知見が得られるかもしれない.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:777-814,20062)水谷匡宏,竹内篤,小池伸子ほか:プロスタグランディン系点眼単独使用の正常眼圧緑内障に対する追加点眼としてのニプラジロール.臨眼56:799-803,20023)河合裕美,林良子,庄司信行ほか:カルテオロールとラタノプロストの併用による眼圧下降効果.臨眼57:709-713,20034)橋本尚子,原岳,高橋康子ほか:正常眼圧緑内障に対するチモロール・ゲルとラタノプロスト点眼薬の眼圧下降効果.臨眼57:288-291,20035)本田恭子,杉山哲也,植木麻理ほか:ラタノプロストと2種のb遮断薬併用による眼圧下降効果の比較検討.眼紀———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081147(101)11)北澤克明,ラタノプロスト共同試験グループ:ラタノプロスト点眼液156週間長期投与による有効性および安全性に関する多施設共同オープン試験.臨眼60:2047-2054,200612)佐々田知子,永山幹夫,山口樹一郎ほか:チモロールゲル製剤の比較.あたらしい眼科18:1443-1446,200113)井上賢治,曽我部真紀,若倉雅登ほか:水溶性チモロールから熱応答ゲル化製剤への変更.臨眼60:1971-1976,200614)新田進人,湯川英一,森下仁子ほか:正常眼圧緑内障に対する1%ブリンゾラミド点眼液と1%ドルゾラミド点眼液の眼圧下降効果.臨眼60:193-196,200615)小林博,小林かおり,沖波聡:ブリンゾラミド1%とドルゾラミド1%の降圧効果と使用間の比較─切り替え試験.臨眼58:205-209,200454:801-805,20036)廣岡一行,馬場哲也,竹中宏和ほか:開放隅角緑内障におけるラタノプロストへのチモロールあるいはブリンゾラミド追加による眼圧下降効果.あたらしい眼科22:809-811,20057)井上賢治,若倉雅登,井上治郎ほか:b遮断点眼薬および炭酸脱水酵素阻害点眼薬のラタノプロストへの追加効果.あたらしい眼科24:387-390,20078)比嘉弘文,名城知子,上條由美ほか:チモロール熱応答型ゲル点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科24:103-106,20079)植木麻里,川上剛,奥田隆章ほか:ラタノプロストの眼圧下降作用と副作用.あたらしい眼科18:655-658,200110)木内良明:緑内障治療薬の選択基準と治療指針─緑内障の薬物治療の第1選択には何を選ぶか.眼科43:155-161,2001***

ラタノプロスト点眼薬へのb 遮断点眼薬および炭酸脱水酵素阻害点眼薬追加の長期効果

2008年7月31日 木曜日

———————————————————————-Page1(95)9990910-1810/08/\100/頁/JCLS18回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科25(7):9991001,2008cはじめにラタノプロストは,プロスタグランジンF2a誘導体で,良好な眼圧下降効果を有し,全身性副作用の報告が少ないことからも1,2),緑内障点眼薬の第一選択として用いられることが多くなっているが,ラタノプロストのみでは十分な眼圧下降が得られない症例も存在し,2剤目の薬剤の併用が必要となることがある.以前筆者らは,ラタノプロスト単独使用例に対し,0.5%チモロール,ブリンゾラミドを追加投与した症例において,投与後2カ月で検討した結果,チモロール追加群・ブリンゾラミド追加群で有意な眼圧下降を示し,両群間で眼圧下降幅・下降率については有意差を認めなかったと報告した3).しかしこれは2カ月間と比較的短期間での解析〔別刷請求先〕佐藤志乃:〒761-0793香川県木田郡三木町池戸1750-1香川大学医学部眼科学教室Reprintrequests:ShinoSato,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KagawaUniversityFacultyofMedicine,1750-1Ikenobe,Miki,Kita,Kagawa761-0793,JAPANラタノプロスト点眼薬へのb遮断点眼薬および炭酸脱水酵素阻害点眼薬追加の長期効果佐藤志乃廣岡一行高岸麻衣溝手雅宣馬場哲也白神史雄香川大学医学部眼科学講座Long-TermAdditiveIntraocularPressure-loweringEectofTimololorBrinzolamidewithLatanoprostShinoSato,KazuyukiHirooka,MaiTakagishi,MasanoriMizote,TetsuyaBabaandFumioShiragaDepartmentofOphthalmology,KagawaUniversityFacultyofMedicine原発開放隅角緑内障におけるラタノプロスト点眼への0.5%チモロールあるいはブリンゾラミド追加の長期効果についてレトロスペクティブに検討した.対象は原発開放隅角緑内障で,3カ月以上ラタノプロスト単独点眼加療を受けている患者のうち,2剤目として0.5%チモロールを追加した10例,ブリンゾラミドを追加した17例で,追加投与前と投与後2カ月ごとに12カ月までの眼圧を比較検討した.12カ月間継続投与できたのは,チモロール追加群7例,ブリンゾラミド追加群11例であった.眼圧はチモロール追加群で投与4カ月後に最も大きな眼圧下降を示したが,その後効果は減弱した.ブリンゾラミド追加群では12カ月にわたって眼圧下降効果がみられた.無効による中止はチモロール追加群0例,ブリンゾラミド追加群4例(c2検定,p=0.26),副作用による中止はチモロール追加群3例,ブリンゾラミド追加群2例(c2検定,p>0.99)であった.Weretrospectivelystudiedthelong-termadditiveintraocularpressure(IOP)-loweringeectoftimololorbrinzolamideusedadjunctivelywithlatanoprost.Weevaluated27eyesof27patientswithprimaryopen-angleglaucomawhohadbeentreatedwithlatanoprostaloneformorethanthreemonths.Eachpatientreceivedadjunc-tivetreatmentwitheithertimolol(n=10)orbrinzolamide(n=17).IOPwasmeasuredatthebaselineandat2,4,6,8,10and12monthsafteradditiontolatanoprost.In7ofthe10patientstreatedadjunctivelywithtimololand11ofthe17patientstreatedadjunctivelywithbrinzolamide,IOPwaswellcontrolledfor12months.Long-termdriftinIOPwasseenineyestreatedadjunctivelywithtimolol,whereasbrinzolamideloweredIOPfromthelatanoprostbaselinefor12months.Nopatientstreatedadjunctivelywithtimolol,and4patientstreatedadjunctivelywithbrin-zolamide,discontinuedtreatmentbecauseofinsucientecacy(p=0.26).Threepatientstreatedadjunctivelywithtimololand2patientstreatedadjunctivelywithbrinzolamidediscontinuedtreatmentbecauseofmedicationintoler-ance(p>0.99).〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(7):9991001,2008〕Keywords:原発開放隅角緑内障,ラタノプロスト,チモロール,ブリンゾラミド,眼圧,長期効果.primaryopen-angleglaucoma,latanoprost,timolol,brinzolamide,intraocularpressure,long-termeect.———————————————————————-Page21000あたらしい眼科Vol.25,No.7,2008(96)降率についてはStudentのpairedt検定およびunpairedt検定を,無効症例・副作用の出現率についてはc2検定を用い,危険率5%を有意水準とした.II結果12カ月間継続投与でき,解析の対象となった症例はチモロール追加群7例,ブリンゾラミド追加群11例であった.両群の性別,年齢,ベースライン眼圧には,いずれも両群間で有意差はみられなかった(表1).ベースライン眼圧と比較してブリンゾラミド追加群では,2,4,8,10カ月後で有意な眼圧下降がみられ,1年間効果が持続した.一方,チモロール追加群では,4カ月後に眼圧下降効果が最大となり,その後は効果の減弱がみられた(図1).眼圧下降幅には,両群間で有意差はみられなかった(図2).眼圧下降率では,追加後2カ月目にブリンゾラミド追加群で有意に大きかったものの,それ以降は差を認めなかった(図3).であり,長期間での両群の眼圧下降効果を検討した報告はない.そこで今回,追加投与後1年間の効果について比較検討した.I対象および方法1.対象香川大学医学部附属病院眼科外来に通院中の原発開放隅角緑内障で,3カ月以上ラタノプロストを単独で使用している症例のうち,眼圧コントロールが不十分な症例に対し,0.5%チモロールを追加した10例と,ブリンゾラミドを追加した17例を対象とした.ぶどう膜炎,強膜炎,角膜疾患の合併例,1年以内に内眼手術およびレーザー治療の既往があるもの,炭酸脱水酵素阻害薬,副腎皮質ステロイド薬を投与されているものは除外した.2.方法ラタノプロストを3カ月以上投与した症例のうち,眼圧下降が不十分な症例に対してチモロール,またはブリンゾラミドを追加投与し,12カ月間の眼圧の経過について検討した.追加投与前の眼圧をベースライン眼圧とし,ベースライン,その後2カ月ごとに12カ月までの眼圧をGoldmann圧平眼圧計にて測定した.測定時刻は午前912時までとした.検討項目は眼圧,眼圧下降幅,眼圧下降率,無効症例・副作用の出現率とし,統計学的解析は眼圧,眼圧下降幅,眼圧下図1眼圧の経過眼圧経過表1患者背景チモロール追加群ブリンゾラミド追加群p値性別(男/女)5/24/70.33*年齢(歳)62.4±10.564.21±11.50.75**ベースライン眼圧(mmHg)17.5±4.518.9±3.80.45***c2検定.**対応のないt検定.図2眼圧下降幅012345672468:ブリンゾラミド追加群:チモロール追加群眼圧下降幅(mmHg)期間(月)10120510152025302412:ブリンゾラミド追加群:チモロール追加群眼圧下降率(%)期間(月)**:p<0.056810図3眼圧下降率———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.7,20081001(97)経過観察中,ブリンゾラミド追加群において無効であった症例が4例あった.これらは追加投与後2カ月目,4カ月目の時点での眼圧がベースライン時と比較し不変もしくは上昇したものであり,無効症例はベースライン眼圧が1415mmHgと低い症例であった.単剤投与の場合と同様,治療開始前眼圧の低い症例については,眼圧下降が得られにくいものと思われる.一方,チモロール追加群では無効症例はなく,眼圧下降に対する感受性については本剤のほうが高いことが推測された.今回の結果から,ブリンゾラミドおよびチモロールは,ラタノプロスト単剤使用時よりもさらなる眼圧下降を示したが,長期的にみるとその眼圧下降効果に異なった傾向がみられた.臨床においては,両点眼薬のそれぞれの傾向を考慮したうえでの選択・投与が必要と思われる.文献1)WillisAM,DiehltKA,RobbinTE:Advancesintopicalglaucomatherapy.VeteOphthalmol5:9-17,20022)WaldockA,SnapeJ,GrahamCM:Eectofglaucomamedicationsonthecardiorespiratoryandintraocularpres-surestatusofnewlydiagnosedglaucomapatients.BrJOphthalmol84:710-713,20003)廣岡一行,馬場哲也,竹中宏和ほか:開放隅角緑内障におけるラタノプロストへのチモロールあるいはブリンゾラミド追加による眼圧下降効果.あたらしい眼科22:809-811,20054)緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:777-814,20065)O’ConnorDJ,MartoneJ,MeadA:Additiveintraocularpressureloweringeectofvariousmedicationswithlatanoprost.AmJOphthalmol133:836-837,20026)MarchWF,OchsnerKI,TheBrinzolamideLong-TermTherapyStudyGroup:Thelong-termsafetyandecacyofbrinzolamide1%(Azopt)inpatientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertension.AmJOph-thalmol129:136-143,20007)緒方博子,庄司信行,陶山秀夫ほか:ラタノプロスト単剤使用例へのブリンゾラミド追加による1年間の眼圧下降効果.あたらしい眼科23:1369-1371,20068)BogerWP:Shortterm“Escape”andLongterm“Drift.”Thedissipationeectofthebetaadrenergicblockingagents.SurvOphthalmol28(Supple1):235-240,1983今回の経過観察中に中止となった症例については,無効による中止がチモロール追加群0例(0%),ブリンゾラミド追加群4例(23.5%)で,両群間で有意差はなかったものの,ブリンゾラミド追加群で多い傾向にあった(p=0.26).副作用による中止は,チモロール追加群で3例(30.0%)あり,原因として息切れ・動悸,角膜上皮障害,眼瞼炎があげられ,ブリンゾラミド追加群では2例(11.8%)で,原因は充血,眼瞼炎であった(p>0.99).III考按現在,国内においても多数の緑内障治療薬が認可されているが,薬物治療の原則は必要最小限の薬剤と副作用で最大の効果を得ることであり,それぞれの薬理効果,副作用を考慮したうえでの選択が必要である4).併用療法においては異なった薬理作用の薬剤の併用が望ましく,ぶどう膜強膜流出を促進するラタノプロストを第一選択薬として使用した場合,房水産生抑制効果のあるb遮断薬または炭酸脱水酵素阻害薬の併用は効果が期待できる.実際,ラタノプロストへの併用薬として,炭酸脱水酵素阻害薬の一つであるドルゾラミド,もしくはb遮断薬を用いた場合に有意な眼圧下降効果が得られることが報告されている5).筆者らが追加薬剤としてチモロールとブリンゾラミドを選択し,追加投与2カ月で検討した報告では,両群ともにラタノプロスト単剤投与時よりもさらなる眼圧下降が得られ,かつ両群間で眼圧下降幅・下降率に有意差を認めなかった3).しかし,今回12カ月の長期投与ではブリンゾラミド追加群については12カ月間の長期にわたり効果が持続したが,チモロール追加群については効果の減弱がみられた.Marchらは,ブリンゾラミドの単剤投与における長期効果の検討で,18カ月間にわたって有意な眼圧下降効果が持続したと報告しており6),緒方らは,ラタノプロストへのブリンゾラミド追加投与による眼圧下降効果は1年以上減弱することなく持続したと報告している7)が,今回の検討でも同様に,ブリンゾラミド追加群では12カ月間の長期にわたり効果が持続した.一方,以前からチモロールの長期間投与において効果が減弱する症例があること,他剤への併用薬として用いた場合にもその傾向が多くみられることが報告されている8)が,筆者らの結果においてもチモロール追加群において効果の減弱がみられた.***

ブリンゾラミド長期点眼による角膜への影響

2008年5月31日 土曜日

———————————————————————-Page1(135)7110910-1810/08/\100/頁/JCLS18回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科25(5):711713,2008cはじめに近年,緑内障点眼薬は多種にわたり存在している.炭酸脱水酵素阻害薬点眼は内服に比較して全身的な副作用が少なく,追加点眼薬として広く使用を検討される薬剤である.炭酸脱水酵素阻害薬点眼の眼圧下降機序は,毛様体無色素上皮に存在する炭酸脱水酵素(CA)を阻害,おもにCAアイソザイムII型を阻害することで房水産生を抑制し,眼圧を下降させると考えられている.CAアイソザイムII型は角膜内皮にも存在し,角膜実質内への水分の流入を調節するポンプ作用をもつ.そのため,炭酸脱水酵素阻害点眼薬は角膜ポンプ作用を低下させ,角膜含水量を増加させて角膜厚を増加させる可能性があると考えられている.実際に炭酸脱水酵素阻害薬であるドルゾラミド点眼薬(トルソプトR)は,角膜への影響を示す報告がみられている14).しかし,同様の炭酸脱水酵素阻害薬であるブリンゾラミド点眼薬(エイゾプトR)点眼に関する角膜への影響の報告はまだ少ない5).今回,1%ブリンゾラミド点眼薬を24カ月使用した際の角膜厚と角膜内皮,眼圧への影響を検討した.I対象および方法対象は自治医科大学附属病院眼科緑内障外来で2004年11月にブリンゾラミド点眼を処方開始された連続した10例18眼で,2006年11月まで2年の経過観察を行った.症例の内訳は,男性5例10眼,女性5例8眼であった.平均年齢は65.8±8.3歳(5784歳),対象疾患は正常眼圧緑内障を含む広義の原発開放隅角緑内障10例18眼であった.ブリンゾラミド点眼開始前に内眼手術を受けていた症例は3眼であった.〔別刷請求先〕橋本尚子:〒320-0861宇都宮市西1-1-11原眼科病院Reprintrequests:TakakoHashimoto,M.D.,HaraEyeHospital,1-1-11Nishi,Utsunomiya-shi,Tochigi-ken320-0861,JAPANブリンゾラミド長期点眼による角膜への影響橋本尚子*1,2原岳*1,2青木由紀*1國松志保*1*1自治医科大学眼科学教室*2原眼科病院CornealInuenceofLong-TermTopicalBrinzolamideUseTakakoHashimoto1,2),TakeshiHara1,2),YukiAoki1)andShihoKunimatsu1)1)DepartmentofOphthalmology,JichiMedicalUniversity,2)HaraEyeHospitalブリンゾラミド長期点眼による角膜への影響を,中心角膜厚と角膜内皮細胞密度で検討した.対象は緑内障18眼,緑内障点眼の変更なくブリンゾラミド点眼を追加し,12カ月,24カ月で中心角膜厚,角膜内皮細胞密度を測定した.中心角膜厚は投与前が529.1±41.1μm,24カ月後は525.1±34.0μmであった.角膜内皮細胞密度は投与前が2,453±356個/mm2,24カ月後は2,486±541個/mm2であった.中心角膜厚,角膜内皮細胞密度ともにブリンゾラミド点眼24カ月使用にても有意差はなかった.対象症例に内眼手術既往例を3眼含んでいたが,そのなかに角膜内皮が著明に減少した症例が1眼あり,今後内眼手術既往眼では注意して経過観察をする必要性があると考えた.Toassessthecornealinuenceoflong-termbrinzolamideuse,weexaminedcornealthicknessandendothelialcelldensityin18glaucomatouseyesfollowingbrinzolamideuse.Centralcornealthickness(CCT)andcornealendotherialcelldensityweremeasuredbeforebrinzolamideuseandat24monthsofuse.CCTwas529.1±41.1μmbeforeuseand525.1±34.0μmat24monthsofuse.Cornealendothelialcelldensitywas2,453±356and2,486±541at24monthsofuse.Thedierenceswerenotsignicant.Of3eyesthathadundergoneintraocularsurgerybeforetheexamination,1showedremarkabledecreaseincornealendotherialcelldensity.Cornealconditionsshouldbecheckediftopicalbrinzolamideisbeingusedafterintraocularsurgery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(5):711713,2008〕Keywords:ブリンゾラミド,中心角膜厚,角膜内皮細胞密度.brinzolamide,centralcornealthickness,densityofcornealendothelialcells.———————————————————————-Page2712あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(136)入術(PEA+IOL)(点眼開始36カ月前)を別の機会に施行されており,術前の角膜厚は術前が575μm,24カ月後が548μm,角膜内皮細胞密度は術前が1,973個/mm2,24カ月後が1,200個/mm2であった.症例2はMMC使用線維柱帯切除術(点眼開始96カ月前)を施行されており,術前の角膜厚は術前が531μm,24カ月後が530μm,角膜内皮細胞密度は術前が2,008個/mm2,24カ月後が1,912個/mm2であった.症例3はMMC使用線維柱帯切除術(点眼開始87カ月前)を施行されており,術前の角膜厚は術前が540μm,24カ月後が535μm,角膜内皮細胞密度は術前が2,036個/mm2,24カ月後が2,070個/mm2であった(図1,2).III考按ブリンゾラミド点眼は炭酸脱水酵素阻害点眼薬であるが,同様のドルゾラミド点眼薬には中心角膜厚や角膜内皮への影響を示す報告がなされている14).今回,ブリンゾラミド点眼を24カ月継続使用して経過観察をしたが,中心角膜厚,角膜内皮細胞密度ともに,結果としては有意差がなく,中心角膜厚の増加や角膜内皮細胞の減少など角膜への影響は全体的にはなかった.しかし,内眼手術既往がある眼においてドルゾラミド,ブリンゾラミド各点眼使用後に角膜内皮障害に方法は対象症例に使用中の緑内障治療点眼を変更せずに,ブリンゾラミド点眼を追加した.ブリンゾラミド点眼前,12カ月後,24カ月後に,1)中心角膜厚,2)角膜内皮細胞密度,3)眼圧を測定した.中心角膜厚の測定には点眼麻酔下にて超音波パキメータ(DGH-TECH社,PachetteDGH500R)を用いて中心の角膜圧を5回測定し,その平均値を用いた.角膜内皮細胞密度はスペキュラマイクロスコープ(KONAN社,NONCONROBO-CAR)を用いて撮影し,50個以上の細胞を選択して計測した.なお,炭酸脱水酵素阻害薬の内服症例は除外し,経過観察中に視野障害の進行した場合は投薬を変更することとした.また,併用点眼薬は平均1.3本で,延べ眼数でチモロール・ゲル点眼が10眼,ラタノプロスト点眼が13眼であった.II結果1.中心角膜厚ブリンゾラミド点眼投与前は529.1±41.1μm,投与12カ月後は524.8±35.4μm,24カ月後は525.1±34.0μmであった.点眼投与前との角膜厚の変化率は投与12カ月で0.8%,24カ月で0.6%であった.点眼投与前と12カ月後はp=0.05と有意差が認められたが,24カ月後は有意差が認められなかった.2.角膜内皮細胞密度ブリンゾラミド点眼投与前は2,453±356個/mm2,投与12カ月後は2,488±487個/mm2,24カ月後は2,486±541個/mm2であった.点眼投与前との角膜内皮細胞密度の変化率は投与12カ月で+1.3%,24カ月で+0.8%であった.点眼投与前と12カ月後,24カ月後ともに有意差は認められなかった.3.眼圧下降率ブリンゾラミド点眼投与前は14.7±2.4mmHg,投与12カ月後は13.4±2.5mmHg,24カ月後は14.0±1.8mmHgであった.眼圧下降率は投与12カ月で6.9%,24カ月で2.3%であった.点眼投与前と比較して12カ月後はp<0.05と有意差が認められたが,24カ月後は有意差が認められなかった.今回の経過中に,視野進行のため投薬を変更した症例はなかった.また,内眼手術既往症例では,これまで炭酸脱水酵素阻害薬点眼にて角膜浮腫の不可逆性変化をきたしたとの症例報告がいくつかある6,7).そのため,今回の症例のなかで,内眼手術既往症例を検討してみた.今回の対象症例18眼中3眼に内眼手術既往があった.症例1はマイトマイシンC(MMC)使用線維柱帯切除術(点眼開始66カ月前),超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ挿図2角膜内皮細胞密度の経時変化灰色の丸は18例全症例の平均値,黒丸は症例1,黒三角は症例2,黒四角は症例3の角膜内皮細胞密度(個/mm2)を示す.経時変化(月)01224:全症例:症例:症例:症例05001,0001,5002,0002,5003,0003,500角膜内皮細胞密度(個/mm2)図1中心角膜厚の経時変化灰色の丸は18例全症例の平均値,黒丸は症例1,黒三角は症例2,黒四角は症例3の角膜厚(μm)を示す.経時変化(月)010020030040050060070001224:全症例:症例:症例:症例中心角膜厚(μm)———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008713(137)tyandecacystudyofdorzolamide,anovel,activetopi-calcarbonicanhydraseinhibitor.ArchOphthalmol111:1343-1350,19932)InoueK,OkugawaK,OshikaTetal:Inuenceofdorzol-amideoncornealendothelium.JpnJOphthalmol47:129-133,20033)LassJH,KhosrofSA,LaurenceJKetal:Adouble-maskedrandomized,1-yearstudycomparingthecornealeectsofdorzolamide,timolol,andbetaxolol.ArchOph-thalmol1161003-1010,19984)EaganCA,HodgeDO,McLarenJWetal:Eectofdor-zolamideoncornealendothelialfunctioninnormalhumaneyes.InvestOphthalmolVisSci39:23-29,19985)井上賢治,庄司治代,若倉雅登ほか:ブリンゾラミドの角膜内皮への影響.臨眼60:183-187,20066)KonowalA,MorrisonJC,BrownSVLetal:Irreversiblecornealdecompensationinpatientstreatedwithtopicaldorzolamide.AmJOphthalmol127403-406,19997)安藤彰,宮崎秀行,福井智恵子ほか:炭酸脱水酵素阻害薬点眼後に不可逆的な角膜浮腫をきたした1例.臨眼59:1571-1573,20058)橋本尚子,原岳,高橋康子ほか:正常眼圧緑内障に対するチモロール・ゲル,ラタノプロスト点眼の短期使用と長期眼圧下降効果.日眼会誌108:477-481,2004よると思われる不可逆的な角膜浮腫を生じた症例報告6,7)がなされており,今回の症例のなかで内眼手術既往がある3眼を検討してみた.3眼のうち,内眼手術を2回受けていた症例1で,角膜内皮細胞密度の明らかな減少が認められた.その症例は,ブリンゾラミド点眼開始までの経過時間が線維柱帯切除術から66カ月,PEA+IOLから36カ月であった.手術侵襲による内皮減少も否定はできないが,ブリンゾラミド点眼開始から12カ月後は大きな減少ではなく24カ月後で大きく減少しているため,今後,内眼手術既往眼は注意して角膜内皮細胞密度を確認する必要性があると思われた.眼圧下降率に関してブリンゾラミド投与12カ月後では投与前と比較して眼圧下降の有意差が認められたが,24カ月後は有意差が認められなかった.ブリンゾラミドは基本的には併用薬として使用されているため,眼圧に関しては併用薬との兼ね合い8)もある可能性も考えられた.今後も症例数を増やし,また経過期間も延ばしつつ角膜への影響についてさらに検討していく必要性があると考えた.文献1)WilkersonM,CylrinM,LippaEAetal:Four-weeksafe-***