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ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬 からブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点 眼薬への変更

2021年8月31日 火曜日

《第31回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科38(8):951.954,2021cブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬からブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬への変更松村理世*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CSwitchingtoBrimonidine/TimololFixedCombinationandBrinzolamidefromBrinzolamide/TimololFixedCombinationandBrimonidineRiyoMatsumura1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ変更した症例の眼圧下降効果と安全性を調査した.対象および方法:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬を併用使用中の緑内障C29例29眼を対象とした.これらの点眼薬を中止しCwashout期間なしでブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ変更した.変更前と変更C1回目来院時の眼圧を比較した.変更後の副作用と投与中止例を調査した.結果:眼圧は変更前C16.6C±4.2CmmHgと変更後C16.8C±4.7CmmHgで同等だった.副作用はC4例(13.8%)で出現し,内訳は見えづらいC2例,結膜充血C1例,刺激感C1例だった.投与中止例はC4例(13.8%)で,内訳は眼圧上昇C3例,見えづらいC1例だった.結論:ブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ同成分の点眼薬から変更したところ,短期的には眼圧を維持でき,安全性も良好だった.CPurpose:ToCinvestigateCtheCIOP-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCbrimonidine/timololC.xedCcombinationCandCbrinzolamide.SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved29eyesof29patientsbeingadministeredacombinationtherapyofbrinzolamide/timolol.xedcombinationandbrimonidinewhowereswitchedtoacombinationtherapyofbrimonidine/timololC.xedCcombinationCandCbrinzolamideCwithoutCaCwashoutCperiod.CIntraocularpressure(IOP)atCbaselineCandCtheC.rstCvisitCafterCswitchingCwereCcompared.CAdverseCreactionsCandCdropoutsCwereCinvestigated.CResults:ThereCwasCnoCdi.erenceCinCIOPCatbaseline(16.6C±4.2CmmHg)andCatCtheC.rstvisit(16.8C±4.7CmmHg)C.Adversereactionsoccurredin4patients(13.8%);i.e.,blurredvisionin2,conjunctivalhyperemiain1,andirrita-tionCinC1.CFourpatients(13.8%)discontinuedCtheCadministration,CandCtheCreasonsCforCdiscontinuationCwereCincreasedCIOPCinC3CandCblurredCvisionCinC1.CConclusion:AfterCswitchingCtoCtheCcombinationCtherapyCofCbrimoni-dine/timolol.xedcombinationandbrinzolamidefrombrinzolamide/timolol.xedcombinationandbrimonidine,IOPwasmaintainedandthesafetywassatisfactoryintheshort-term.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C38(8):951.954,C2021〕Keywords:眼圧,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,緑内障,安全性.CintraocularCpressure,Cbrimonidine-timololC.xedCcombination,Cbrinzolamide-timololC.xedCcombination,Cglaucoma,Csafety.Cはじめに用中の患者は点眼薬を変更せざるをえない状況になった.筆2019年C11月中旬にブリンゾラミド/チモロール配合点眼者らは眼圧下降効果と副作用,アドヒアランスの観点から点薬(アゾルガ,ノバルティスファーマ)が突然供給停止とな眼薬の主剤がまったく変わらず,ボトル数やC1日の総点眼回った.そのためブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬を使数が増加しない変更がもっともよいと考えた.〔別刷請求先〕松村理世:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:RiyoMatsumura,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/21/\100/頁/JCOPY(103)C951表1点眼薬使用感のアンケート調査①充血は?□前より赤くならない□前と同じ□前より赤くなる②刺激は?□前よりしみない□前と同じ□前よりしみる③かゆみは?□前よりかゆくない□前と同じ□前よりかゆい④痛みは?□前より痛くない□前と同じ□前より痛い⑤かすみは?□前よりかすまない□前と同じ□前よりかすむ□変更した後のほうが良い□どちらも同じ□変更する前のほうが良い□充血しない□しみない□かゆくない□痛くない□かすまない□点眼瓶が使いやすい□味覚に変化がない□価格が安い□その他()表2点眼薬使用感のアンケート調査「問1」の結果前より良い同じ前の方が良い刺激感(しみる)2例6.9%23例79.3%4例13.8%かゆみ1例3.4%24例82.8%4例13.8%痛み0例0.0%27例91.3%2例6.9%同時期のC2019年C12月にブリモニジン点眼薬とチモロール点眼薬を配合したブリモニジン/チモロール配合点眼薬(アイベータ,ノバルティスファーマ)が使用可能となった.筆者らはブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬の併用患者に対して,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬への変更を行った.この変更では,2ボトル,1日C4回点眼を維持でき,アドヒアランスも維持できると考えた.今回,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬が供給停止となったことを契機として,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬併用中の患者に対して,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ変更した際の短期的な眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2019年C12月.2020年C1月にブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬を使用しており,両点眼薬を中止し,washout期間なしでブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ変更したC29例C29眼を対象とした.両眼該当例では眼圧の高い眼を,眼圧が同値の場合は右眼を,片眼症例では該当眼を解析対象とした.男性13例,女性C16例,平均年齢はC70.2C±9.9歳(平均値C±標準偏差C46.83歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障C24例,落屑緑内障C4例,原発閉塞隅角緑内障C1例であった.変更前眼圧はC16.6C±4.2CmmHg(10.25CmmHg)であった.Humphrey視野検査プログラムC30-2SITA-StandardのCmeandeviation値は平均C.7.06±5.81CdB(C.18.53.0.11CdB)であった.緑内障使用薬剤数は平均C4.7C±0.6剤(4.6剤)であった.他の点眼薬は継続使用とした.配合点眼薬はC2剤とした.変更前と変更後C1回目(79.2C±38.6日後)の来院時の眼圧(Goldmann圧平眼圧計による)を比較した.眼圧変化量をC2CmmHg以上上昇,C±2CmmHg未満,2CmmHg以上下降に分けて解析した.変更前と変更後の点眼薬の使用感と好みを変更後C1回目の来院時にアンケートで調査した(表1).変更後の副作用,中止例を調査した.変更前後の眼圧の比較には対応のあるCt検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理委員会で承認を得た.研究の趣旨と内容を患者に開示し,患者の同意を文書で得た.CII結果眼圧は変更前C16.6C±4.2CmmHgと変更後C16.8C±4.7CmmHgで同等であった(p=0.7167).眼圧変化量はC2CmmHg以上上昇C6眼(20.7%),C±2mmHg未満C18眼(62.1%),2mmHg以上下降C5眼(17.2%)であった.アンケート結果を表2に示す.変更前後の眼の症状は充血,刺激感,かゆみ,痛み,かすみのすべてで同じがC72.4.91.3%と高率であった.変更前後の組み合わせの選択(問2C①)はどちらも同じC19例(65.5%),変更後が良いC5例(17.2%),変更前が良いC4例(13.8%)などだった.変更後が良い理由(5例)は,点眼瓶が使いやすいC4例,しみないC1例,かすまないC1例,充血しないC1例であった(問C2C②).変更前が良い理由(4例)は,充血しないC2例,しみないC2例,かゆくないC1例であった.変更後に副作用はC4例(13.8%)で出現し,その内訳は見952あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021(104)えづらいC2例,結膜充血C1例,刺激感C1例であった.中止症例はC4例(13.8%)で,その内訳は眼圧上昇C3例,見えづらいC1例であった.継続症例はC25例(86.2%)であった.眼圧上昇症例は原発開放隅角緑内障C2例,落屑緑内障C1例であった.原発開放隅角緑内障症例の眼圧は各10mmHgから14CmmHgへ,12CmmHgからC22CmmHgへ上昇した.落屑緑内障症例の眼圧はC25CmmHgからC31CmmHgへ上昇した.3例とも変更後C1回目の来院時にブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬に戻した.その後,原発開放隅角緑内障症例では眼圧は各C11CmmHgとC14CmmHgになり,変更前に戻った.落屑緑内障症例では眼圧はC30CmmHgのままで元に戻らなかった.見えづらさを訴えて中止した症例ではブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬に戻したところ見えづらさは改善した.変更後のブリンゾラミド点眼薬は先発医薬品(エイゾプト,ノバルティスファーマ)使用がC3例,後発医薬品(センジュ,千寿製薬)使用がC26例であった.CIII考按ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の供給停止を受けて,この配合点眼薬の変更に関して以下の四つの方法を検討した.C1.ブリンゾラミド点眼薬と同じ炭酸脱水酵素阻害薬であるドルゾラミド点眼薬を含んだドルゾラミド/チモロール配合点眼薬への変更.C2.ブリンゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬併用への変更.C3.他にプロスタグランジン関連薬を使用している患者ではプロスタグランジン関連薬/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬併用への変更.C4.他にブリモニジン点眼薬を使用している患者ではブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬併用への変更.1の変更に関しては,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬からブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬へ変更した報告では,刺激感はドルゾラミド/チモロール配合点眼薬で多く,霧視はブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬で多かった1).この変更により副作用が出現し,アドヒアランスが低下する危険性を有していた.2の変更に関しては,患者にとって点眼ボトルとC1日の総点眼回数が増えるためにアドヒアランスが低下する2)可能性を有していた.3,4の変更に関しては変更後に点眼ボトルとC1日の総点眼回数が増加しないためにアドヒアランスを維持できると考えた.また,点眼薬の成分も同一のため新たな副作用の発現も少なく,眼圧も変化しないと予想した.しかし,国内ではビマトプロスト/チモロール配合点眼薬は使用できないためにビマトプロスト点眼薬を使用している患者ではこの変更は行うことができない.そこで今回はC3の変更を行った.今回点眼薬の主剤が同成分での変更を行ったところ,変更前後の眼圧に変化はなかった.しかし,個別の症例で検討すると,変更後に眼圧がC2CmmHg以上上昇した症例がC20.7%,2CmmHg以上下降した症例がC17.2%存在した.同成分の変更としてラタノプロスト点眼薬とゲル化チモロール点眼薬を中止し,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬へ変更した患者でのC36カ月後の眼圧変化量はC2CmmHg超上昇C10.0%,C±2CmmHg以内C77.0%,2CmmHg超下降C13.0%であった3).ドルゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬を中止し,ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬へ変更した患者でのC3カ月後の眼圧変化量はC2CmmHg超上昇C16.1%,C±2CmmHg以内C77.4%,2CmmHg超下降C6.5%であった4).主剤が同成分での変更においても変更後に眼圧は上昇したり,下降したりする患者が存在するので,変更後の注意深い経過観察が必要である.今回の眼圧上昇症例では全例で変更後に後発医薬品のブリンゾラミド点眼薬を使用していた.眼圧上昇した原因として後発医薬品が先発医薬品と同等の眼圧下降効果を有していない点5),調査時期が冬季であったため眼圧が上昇しやすかった点6),落屑緑内障症例では眼圧が変動しやすいことが影響した点7)などが考えられる.眼圧下降症例では全例で変更後に後発医薬品のブリンゾラミド点眼薬を使用していた.後述のように点眼瓶が使いやすくなり,アドヒアランスが向上した可能性がある.変更前後の眼の症状の変化は充血,刺激感,かゆみ,痛み,かすみともに同じが大多数を占めた.今回の点眼薬の変更では,主剤の成分に変更がなかったためと考えられる.変更前後の組み合わせの好みは変更前と変更後でほぼ同数だった.変更後が良い理由として,点眼瓶が使いやすいがもっとも多かった.今回の点眼薬の変更では変更前のブリモニジン点眼薬と変更後のブリモニジン/チモロール配合点眼薬は千寿製薬の平型容器で共通である.変更前のブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬と変更後の先発医薬品のブリンゾラミド点眼薬はアルコンファーマのラウンド型容器で共通である.平型容器は持ちやすく,押しやすく,キャップの開閉が行いやすく,一方ラウンド型容器は押しにくく,液が出にくく,残量が見えにくいと報告されている8).ブリンゾラミド点眼薬の先発医薬品を使用した患者では変更前後の点眼瓶の形状はまったく同じである.ブリンゾラミド点眼薬の後発医薬品を使用した患者では点眼瓶が使いやすくなり,アドヒアランスが向上した可能性がある.点眼瓶の形状を考慮することも重要である.今回は調査期間中に新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言発令などの影響で,変更後C1回目の来院が最(105)あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021C953短C14日後.最長C176日後と差が出てしまい統一ができなかった.このことが変更後の結果に影響を及ぼした可能性も否定できない.今回,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬とブリモニジン点眼薬を中止し,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬とブリンゾラミド点眼薬へ変更した患者を検討した.主剤が同成分の変更のため短期的には眼圧は維持することができ,安全性や使用感も良好だった.このような点眼薬の変更は点眼薬選定の選択肢となりうると考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)AugerCGA,CRaynorCM,CLongsta.S:PatientCperspectivesCwhenCswitchingCfromCosopt(CR)(dorzolamide-timolol)toCAzarga.(brinzolamide-timolol)forCglaucomaCrequiringCmultipleCdrugCtherapy.CClinCOphthalmolC6:2059-2062,C2012C2)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:E.cacyandsafetyofswitchingCtoClatanoprost0.005%-timololCmaleate0.5%C.xed-combinationCeyedropsCfromCanCun.xedCcombinationCfor36months.ClinOphthalmolC8:1275-1279,C20144)InoueCK,CShiokawaCM,CSugaharaCMCetal:Three-monthCevaluationCofCdorzolamideChydrochloride/timololCmaleateC.xed-combinationCeyeCdropsCversusCtheCseparateCuseCofCbothdrugs.JpnJOphthalmolC56:559-563,C20125)津幡結美子,菊池順子,井上賢治ほか:Cb遮断点眼液の後発品処方への変更.日本の眼科C78:727-732,C20076)古賀貴久,谷原秀信:緑内障と眼圧の季節変動.臨眼C55:C1519-1522,C20017)KonstasAG,MantzirisDA,StewartWC:DiurnalintraocC-ularCpressureCinCuntreatedCexfoliationCandCprimaryCopen-angleglaucoma.ArchOphthalmolC115:182-185,C19978)中道晶子,高橋嘉子,井上賢治ほか:緑内障患者を対象とした点眼容器のアンケート調査報告.あたらしい眼科C37:C100-103,C2020C***954あたらしい眼科Vol.38,No.8,2021(106)

ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン

2015年8月31日 月曜日

12185108,22,No.3《原著》あたらしい眼科32(8):1218.1222,2015cはじめに緑内障治療の目標は視野障害進行を停止あるいは緩徐にすることで,そのために眼圧を下降させる1,2).眼圧を下降させるために点眼薬の単剤投与から始めるが,単剤投与で目標眼圧に到達しない症例では点眼薬を変更するか,他の点眼薬を追加投与する3).追加投与を繰り返すと多剤併用となり,点眼回数が増えるに伴ってアドヒアランスが低下することが問題である4).アドヒアランスの観点からは2つの薬剤成分を含有する配合点眼薬の使用がすすめられる.2013年11月にブリンゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬の配合点眼薬(アゾルガR)が新たに使用可能となった.このBTFCの日本人緑内障患者に対するチモロール点眼薬からの変更5,6),単剤投与7)については良好な眼圧下降効果が報告されている.しかし,臨床の現場でどのような症例にBTFCが使用1218(152)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科PrescriptionPatternofBrinzolamide1.0%/TimololMaleate0.5%FixedCombinationEyeDropsKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,BTFC)が新規に処方された症例の特徴を後ろ向きに調査する.対象および方法:BTFCが新規に投与された117例195眼を対象とした.追加症例,変更症例,変更+他剤追加症例に分けて,投与3カ月後までの眼圧を調査した.結果:BTFC追加症例は7例9眼,変更症例は100例166眼,変更+他剤追加症例は10例20眼だった.変更症例はドルゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,DTFC)からが43例72眼,b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI)からが36例58眼,b遮断薬からが16例28眼などだった.DTFC,b遮断薬からの変更では眼圧は変更後に有意に下降した.b遮断薬+CAIからの変更では眼圧は変更前後で同等だった.結論:BTFCはDTFCからの変更,b遮断薬+CAIからの変更として多く使用されていた.BTFCの眼圧下降効果は良好だった.Purpose:Weretrospectivelyinvestigatedthecharacteristicsinpatientswhowerenewlyadministeredbrinzo-lamide1.0%/timololmaleate0.5%fixedcombination(BTFC)eyedrops.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved198eyesof117patientswhowerenewlyadministeredBTFCandwhoweredividedinto3groups.TheinstillationofBTFCwasaddedinthefirstgroup,whilethesecondgroupswitchedfromtheprevioustreatment,andthethirdgroupinvolvedswitchingplusaddingconcomitantly.Inallthreegroups,intraocularpressure(IOP)wascomparedfor3monthsafteradministration.Results:Nineeyeswereinthefirstgroup,166eyeswereinthesecondgroup,and20eyeswereinthethirdgroup.Inthesecondgroup,72eyeswereswitchingfromdorzol-amide/timololmaleatefixedcombination(DTFC),58eyesswitchingfromb-blockerspluscarbonicanhydraseinhibitor(CAI),and28eyesswitchingfromb-blockers.InthepatientsswitchingfromDTFCorb-blockers,IOPsignificantlydecreased.Inthepatientsswitchingfromb-blockersplusCAI,IOPwasequivalent.Conclusion:InthepatientsinwhomBTFCwasadministeredfrequentlywhileswitchingfromDTFCorb-blockersplusCAI,asignificantlybetterIOPreductioneffectwasobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(8):1218.1222,2015〕Keywords:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,眼圧,変更,追加,処方.brinzolamide/timololfixedcombi-nation,intraocularpressure,switch,addition,administer.《原著》あたらしい眼科32(8):1218.1222,2015cはじめに緑内障治療の目標は視野障害進行を停止あるいは緩徐にすることで,そのために眼圧を下降させる1,2).眼圧を下降させるために点眼薬の単剤投与から始めるが,単剤投与で目標眼圧に到達しない症例では点眼薬を変更するか,他の点眼薬を追加投与する3).追加投与を繰り返すと多剤併用となり,点眼回数が増えるに伴ってアドヒアランスが低下することが問題である4).アドヒアランスの観点からは2つの薬剤成分を含有する配合点眼薬の使用がすすめられる.2013年11月にブリンゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬の配合点眼薬(アゾルガR)が新たに使用可能となった.このBTFCの日本人緑内障患者に対するチモロール点眼薬からの変更5,6),単剤投与7)については良好な眼圧下降効果が報告されている.しかし,臨床の現場でどのような症例にBTFCが使用1218(152)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科PrescriptionPatternofBrinzolamide1.0%/TimololMaleate0.5%FixedCombinationEyeDropsKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,BTFC)が新規に処方された症例の特徴を後ろ向きに調査する.対象および方法:BTFCが新規に投与された117例195眼を対象とした.追加症例,変更症例,変更+他剤追加症例に分けて,投与3カ月後までの眼圧を調査した.結果:BTFC追加症例は7例9眼,変更症例は100例166眼,変更+他剤追加症例は10例20眼だった.変更症例はドルゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,DTFC)からが43例72眼,b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI)からが36例58眼,b遮断薬からが16例28眼などだった.DTFC,b遮断薬からの変更では眼圧は変更後に有意に下降した.b遮断薬+CAIからの変更では眼圧は変更前後で同等だった.結論:BTFCはDTFCからの変更,b遮断薬+CAIからの変更として多く使用されていた.BTFCの眼圧下降効果は良好だった.Purpose:Weretrospectivelyinvestigatedthecharacteristicsinpatientswhowerenewlyadministeredbrinzo-lamide1.0%/timololmaleate0.5%fixedcombination(BTFC)eyedrops.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved198eyesof117patientswhowerenewlyadministeredBTFCandwhoweredividedinto3groups.TheinstillationofBTFCwasaddedinthefirstgroup,whilethesecondgroupswitchedfromtheprevioustreatment,andthethirdgroupinvolvedswitchingplusaddingconcomitantly.Inallthreegroups,intraocularpressure(IOP)wascomparedfor3monthsafteradministration.Results:Nineeyeswereinthefirstgroup,166eyeswereinthesecondgroup,and20eyeswereinthethirdgroup.Inthesecondgroup,72eyeswereswitchingfromdorzol-amide/timololmaleatefixedcombination(DTFC),58eyesswitchingfromb-blockerspluscarbonicanhydraseinhibitor(CAI),and28eyesswitchingfromb-blockers.InthepatientsswitchingfromDTFCorb-blockers,IOPsignificantlydecreased.Inthepatientsswitchingfromb-blockersplusCAI,IOPwasequivalent.Conclusion:InthepatientsinwhomBTFCwasadministeredfrequentlywhileswitchingfromDTFCorb-blockersplusCAI,asignificantlybetterIOPreductioneffectwasobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(8):1218.1222,2015〕Keywords:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,眼圧,変更,追加,処方.brinzolamide/timololfixedcombi-nation,intraocularpressure,switch,addition,administer. されているかを調査した報告は過去にない.そこで今回,BTFCが新規に投与された症例についてその処方パターンと眼圧下降効果を検討した.I対象および方法2013年11月.2014年7月に井上眼科病院に通院中で,BTFC(1日2回朝夜点眼)が新規に投与された緑内障あるいは高眼圧症患者117例195眼(男性45例72眼,女性72例123眼)を対象とした.平均年齢は66.8±13.1歳(平均±標準偏差)(26.94歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)140眼,正常眼圧緑内障30眼,続発緑内障16眼(ぶどう膜炎6眼,落屑緑内障4眼,血管新生緑内障4眼,Posner-Schlossman症候群2眼),原発閉塞隅角緑内障6眼,高眼圧症3眼であった.診療録から後向きに調査を行った.BTFCが新規に投与された症例を,BTFCが追加投与された症例(追加群),前投薬が中止となりBTFCが投与された症例(変更群),前投薬が中止となりBTFCが投与されるのと同時にさらに他の点眼薬が追加あるいは変更された症例(変更追加群)に分けた.BTFCが投与された理由について追加群,変更群,変更追加群各々で調査した.3群間で性別,年齢,緑内障病型,眼圧,前投薬数を比較した(c2検定,Kruskal-Wallis検定,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).前投薬数の解析では配合点眼薬は2剤とした.変更群では,DTFCからの変更,b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更,b遮断点眼薬からの変更に分けて,変更前と変更1,3カ月後の眼圧を比較した(ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).さらにDTFCからの変更では変更理由を眼圧下降効果不十分と副作用出現に分けて変更前と変更1,3カ月後の眼圧を比較した(ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).有意水準はいずれもp<0.05とした.II結果追加群は7例9眼,変更群は100例166眼,変更追加群は10例20眼だった(図1).BTFCが投与された理由は,追加群と変更追加群では全例が眼圧下降効果不十分だった.変更群では眼圧下降効果不十分が90例150眼,副作用出現が10例16眼だった.性別は3群間に差がなかった(p=0.1739,c2検定)(表1).年齢は変更群が追加群に比べて有意に高齢だった(p=0.007,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).病型は原発開放隅角緑内障が変更群で追加群に比べて有意に多かった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).眼圧は追加群で変更群と変更追加群に比べて有意に高かった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).前投薬は追加群で変更群と変更追加群に比べて有意に少なかった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).(153)変更群の内訳は,DTFCからの変更が43例72眼,b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が36例58眼,b遮断点眼薬からの変更が16例28眼,炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が4例7眼などだった(図2).BTFCが投与された理由は,DTFCからの変更では眼圧下降効果不十分が33例56眼,副作用出現が10例16眼だった.副作用の内訳は掻痒感3例5眼,結膜充血2例4眼,刺激感2例3眼,霧視1例2眼,アレルギー性結膜炎1例1眼,めまい1例1眼だった.他の変更群は全例眼圧下降効果不十分だった.b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例の各々の点眼薬の内訳は,b遮断点眼薬はイオン応答ゲル化チモロール点眼薬23眼,水溶性チモロール点眼薬9眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬8眼,カルテオロール点眼薬8眼,持続性カルテオロール点眼薬8眼,レボブノロール点眼薬2眼,炭酸脱水酵素阻害点眼薬はブリンゾラミド点眼薬44眼,ドルゾラミド点眼薬14眼だった.組み合わせとしてはイオン応答ゲル化チモロール点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬19眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬8眼,持続性カルテオロール+ブリンゾラミド点眼薬7眼などだった.b遮断点眼薬からの変更症例の点眼薬の内訳は持続性カルテオロール点眼薬15眼,イオン応答ゲル化チモロール点眼薬7眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬4眼,カルテオロール点眼薬2眼だった.炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例の内訳はドルゾラミド点眼薬6眼,ブリンゾラミド点眼薬1眼だった.眼圧はDTFCからの変更では,変更前17.9±2.9mmHg,変更1カ月後17.2±3.7mmHg,3カ月後16.4±3.5mmHgで変更後に有意に下降した(p<0.0001)(図3).投与された理由別では,眼圧下降効果不十分例では変更前18.2±2.9mmHg,変更1カ月後17.9±3.6mmHg,3カ月後16.8±3.4mmHgで,変更前に比べて変更3カ月後に有意に下降した(p<0.001).副作用出現例では変更前16.5±2.6mmHg,変更1カ月後14.2±3.1mmHg,3カ月後14.8±3.7mmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.001).b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では,変更前15.8±3.3mmHgと変更1カ月後15.7±3.5mmHg,3カ月後15.2±3.4mmHgで同等だった(p=0.16).b遮断点眼薬からの変更では,変更前18.0±5.4mmHg,変更1カ月後14.9±3.9mmHg,3カ月後14.9±3.8mmHgで変更後に有意に下降した(p<0.001).III考按BTFCが新規に投与された症例を検討したがさまざまな処方パターンがみられた.緑内障点眼薬治療の第一選択薬は強力な眼圧下降効果,全身性の副作用が少ない点,1日1回あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151219 表1追加群,変更群,変更追加群の患者背景追加群変更群変更追加群p値点眼の利便性よりプロスタグランジン関連点眼薬が使用されることが多い.今回の195眼のうち前投薬としてプロスタグランジン関連点眼薬が使用されていた症例は170眼(87.2%)であった.プロスタグランジン関連点眼薬で眼圧下降効果が不十分な症例では点眼薬の追加が行われる.追加投与の場合は,b遮断点眼薬や炭酸脱水酵素阻害点眼薬の追加,プロスタグランジン関連点眼薬を中止してプロスタグランジン/チモロール配合点眼薬への変更が考えられる.今回の症例のうちb遮断点眼薬や炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例はプロスタグランジン関連点眼薬との併用が35眼中32眼(94.3%)と多かった.DTFCからの変更,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更でも,プロスタグランジン関連点眼薬との併用症例が130眼中120眼(92.3%)と多かった.配合点眼薬が使用可能となる前は,プロスタグランジン関連点眼薬,b遮断点眼薬,炭酸脱水酵素阻害点眼薬の併用が多かったと思われる.DTFCの登場により,プロスタグランジン関連点眼薬+DTFCの使用症例が増えたと考えられる.今後はプロスタグランジン関連点眼薬+b遮断点眼薬あるいはプロスタグランジン関連点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が増加すると予想される.変更追加群,変更群,166眼,85.1%追加群,20眼,10.3%9眼,4.6%図1追加群,変更群,変更追加群の割合症例性別年齢病型(眼)眼圧(眼)前投薬数(眼)7例9眼100例166眼男性4例,女性3例男性35例,女性65例*54.9±23.5歳68.4±11.3歳(26.82歳)(40.90歳)**続発緑内障:5原発開放隅角緑内障(狭義):120正常眼圧緑内障:28正常眼圧緑内障:2続発緑内障:10原発開放隅角緑内障(狭義):1高眼圧症:1原発閉塞隅角緑内障:6高眼圧症:2****27.3±5.5mmHg(20.35mmHg)17.1±3.7mmHg(7.34mmHg)16.2±2.7mmHg(10.22mmHg)<0.0001****0.1±0.3剤3.1±0.9剤3.0±0.4剤(0.1剤)(1.5剤)(2.4剤)<0.000110例20眼男性6例,女性4例0.173959.2±15.5歳(41.77歳)0.007原発開放隅角緑内障(狭義):19続発緑内障:1<0.0001炭酸脱水酵素その他,257眼,4.2%20151050ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬,72眼,43.4%b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬,58眼,34.9%b遮断点眼薬,28眼,16.9%阻害点眼薬,1眼,0.6%図2変更群の内訳眼圧(mmHg)(*p<0.01,**p<0.0001)******ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬b遮断薬変更前変更1カ月後変更3カ月後図3変更群の変更前後の眼圧(*p<0.001,**p<0.0001,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定)1220あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(154) 今回はDTFCからの変更がもっとも多かったが,DTFCからBTFCへ変更した症例の眼圧下降効果が報告されている8).Lanzlらは,各種点眼薬からBTFCへの変更症例を報告した8).ドルゾラミド2%/チモロール配合点眼薬単剤からの変更症例(2,937例)では,眼圧は変更前18.5±4.1mmHgに比べて変更後16.5±3.2mmHgに有意に下降した.一方,プロスタグランジン関連点眼薬+ドルゾラミド2%/チモロール配合点眼薬からプロスタグランジン関連点眼薬+BTFCへの変更症例(823例)では,眼圧は変更前18.3±5.0mmHgに比べて変更後16.4±3.9mmHgに有意に下降した.今回の調査でも変更により眼圧は有意に下降したが,眼圧下降幅は0.7.1.5mmHgでLanzlらの報告8)(1.9.2.0mmHg)よりやや低値を示した.一方,DTFCとBTFCを別々に投与した際の眼圧下降効果は同等と報告されている9).副作用の比較では刺激感はDTFCに多く8,10),霧視はBTFCに多い10),あるいは同等だった9)と報告されている.一方,プロスタグランジン関連点眼薬/チモロール配合点眼薬においても,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬からトラボプロスト/チモロール配合点眼薬11.13)あるいはビマトプロスト/チモロール配合点眼薬13)への変更で眼圧が有意に下降したと報告されている.今回,変更により眼圧が下降した理由としてとくに副作用が出現した症例ではアドヒアランスが向上したことや,ドルゾラミドとブリンゾラミドの眼圧下降効果の差が考えられる.b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では変更前後で眼圧は変化なかった.Lanzlらは,ブリンゾラミド点眼薬+チモロール点眼薬からの変更症例(252例)では眼圧が変更前18.4±3.4mmHgに比べて変更後16.6±2.9mmHgに有意に下降し,ドルゾラミド(2%)点眼薬+チモロール点眼薬からの変更症例(73例)では眼圧が変更前18.7±3.5mmHgに比べて変更後16.5±2.9mmHgに有意に下降したと報告した8).変更により点眼ボトル数や点眼回数が減るためにアドヒアランスが向上し,眼圧が下降することが考えられる.今回は変更前後で眼圧に変化がなかったが,元来アドヒアランスが良好な症例が多数含まれていた可能性がある.b遮断点眼薬からの変更では,炭酸脱水酵素阻害点眼薬が追加されたことと同様のため眼圧は有意に下降した.その眼圧下降幅は2.5.3.4mmHg6),3.2mmHg5),4.8mmHg8)と報告されており,今回(3.1mmHg)と同等だった.今回,BTFCの追加群は7例9眼だった.そのなかで前投薬でプロスタグランジン関連点眼薬を使用していた症例は1眼(11.1%)と少なかった.続発緑内障が9眼中5眼(55.6%)と多く,内訳としてぶどう膜炎が3眼,Posner-Schlossman症候群が2眼だった.ぶどう膜炎を発症している症例では,炎症を惹起するプロスタグランジン関連点眼薬は使用しづらく,BTFCが使用されたと考えられる.また,白内(155)障手術後の眼圧上昇に対しても.胞様黄斑浮腫を惹起する可能性のあるプロスタグランジン関連点眼薬は使用しづらく,BTFCが今後使用されると考えられる.BTFCが投与された理由は,眼圧下降効果不十分と副作用出現だった.今回の後ろ向き研究の問題点として,投与を行った眼科医師は10名以上で,眼圧下降効果不十分の判定基準が定められておらず,個々の医師の判断によるものであった.今回,BTFCが新規に処方された症例の特徴を調査した.DTFCからの変更がもっとも多く,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更,b遮断点眼薬からの変更が続いた.DTFCからの変更,b遮断点眼薬からの変更では眼圧は有意に下降し,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では眼圧は変化なかったことから,BTFCは良好な眼圧下降効果を有することが示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Theeffectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,19982)VanVeldhuisenPC,EdererF,GaasterlandDEetal;TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS):7.Therelationshipbetweencontrolofintraocularpressureandvisualfielddeterioration.AmJOphthalmol130:429-440,20003)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,20124)DjafariF,LeskMR,HarasymowyczPJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalong-termpatientpopulation.JGlaucoma18:238-242,20095)YoshikawaK,KozakiJ,MaedaH:Efficacyandsafetyofbrinzolamide/timololfixedcombinationcomparedwithtimololinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:389-399,20146)NagayamaM,NakajimaT,OnoJ:Safetyandefficacyofafixedversusunfixedbrinzolamide/timololcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:219-228,20147)NakajimaM,IwasakiN,AdachiM:PhaseIIIsafetyandefficacystudyoflong-termbrinzolamide/timololfixedcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:149-156,20148)LanzlI,RaberT:Efficacyandtolerabilityofthefixedcombinationofbrinzolamide1%andtimolol0.5%indailypractice.ClinOphthalmol5:291-298,2011あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151221 9)ManniG,DenisP,ChewPetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma18:293300,200910)AugerGA,RaynorM,LongstaffS:PatientperspectiveswhenswitchingfromCosoptR(dorzolamide-timolol)toAzargaTM(brinzolamide-timolol)forglaucomarequiringmultipledrugtherapy.ClinOphthalmol6:2059-2062,11)添田尚一,宮永嘉隆,佐野英子ほか:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液への切替え.あたらしい眼科30:861-864,201312)林泰博,檀之上和彦:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼への切り替えによる眼圧下降効果.臨眼66:865-869,201213)CentofantiM,OddoneF,GandolfiS:Comparisonoftravoprostandbimatoprostplustimololfixedcombinationsinopen-angleglaucomapatientspreviouslytreatedwithlatanoprostplustimololfixedcombination.AmJOphthalmol150:575-580,2010***(156)