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Preserflo MicroShuntの6カ月成績とnylon stentによる術後脈絡膜剝離予防策の検討

2024年12月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科41(12):1476.1481,2024cPreser.oMicroShuntの6カ月成績とnylonstentによる術後脈絡膜.離予防策の検討城下哲夫貞松良成さだまつ眼科クリニックCSix-monthOutcomesafterPreser.oMicroShuntImplantationandPreventionofPostoperativeChoroidalDetachmentwithaNylonStentTetsuoJoshitaandYoshinariSadamatsuCSadamatsuEyeClinicC目的:プリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)の術後C6カ月成績および術後の過剰濾過対策としてのCnylonstentの有用性の検討を行う.対象および方法:さだまつ眼科クリニックにおいてC2023年C1.8月にPFM挿入術を施行したC45例C51眼を対象とした.診療録から後ろ向きに眼圧,緑内障薬の点眼数,6カ月生存率,角膜内皮細胞密度,併発症について検討した.成功基準は術前からC20%以上の眼圧下降とした.結果:術前眼圧C24.7±7.5CmmHgはC6カ月後C14.1±4.6CmmHgへ有意に下降した.術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった.術後合併症としてもっとも多かったのは脈絡膜.離でC14眼(27.5%)に認め,うちC2眼は外科的介入を要した.脈絡膜.離(CD)発生の有無における患者背景の群間比較では,平均年齢,術前眼圧,眼圧下降幅に有意差が認められた.術中にC10-0nylonstentをCPFM内腔に挿入し対策を講じることで低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%へ有意に減少した.結論:PFM挿入術は術後有意な眼圧下降を認めたが,脈絡膜.離の合併症には注意する必要があり,その対策として,とくに高齢で術前眼圧の高い症例にはCnylonstentは有用な可能性がある.CPurpose:ToCevaluateCtheC6-monthCpostoperativeCoutcomesCofCPreser.oMicroShunt(PFM,CSantenCPharma-ceuticalCCo.,Ltd.)implantationCandCtheCe.ectivenessCofCnylonCstentingCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMeth-ods:Thisretrospectivestudyinvolved51eyesof45glaucomapatientsthatunderwentPFMimplantationatSad-amatsuCEyeCClinic,CSaitama,CJapanCbetweenCJanuaryCandCAugustC2023.CTheCmedicalCrecordsCofCallCcasesCwereCreviewedCtoCinvestigateCintraocularpressure(IOP),CnumberCofCglaucomaCmedicationsCused,CsurvivalCrateCatC6-monthspostoperative,cornealendothelialcell(CEC)density,andpostoperativecomplications.Thesuccesscrite-rionwasa.20%IOPreductionfromthatatbaseline.Results:At6-monthspostoperative,themeanpreoperativeIOPof24.7±7.5CmmHghadsigni.cantlydecreasedto14.1±4.6CmmHg,andthesurvivalratewas76.5%.Theaver-agedecreaseofCECdensitywas2.8±0.1%,andthemostcommoncomplicationwaschoroidaldetachment(CD);Ci.e.,CDobservedin14(27.5%)ofthe51eyes,2ofwhichrequiringsurgicalintervention.InthecomparisonoftheincidenceCofCCDCbetweenCtheCinvestigatedCfactors,Csigni.cantCdi.erencesCwereCobservedCinCtheCmeanCageCofCtheCpatients,preoperativeIOP,anddegreeofIOPreduction.Duringsurgery,10-0nylonstentingintothePFMlumensigni.cantlyCreducedCtheCincidenceCofCover-.ltrationCfrom31.0%Cto4.5%.CConclusion:PFMCimplantationCsigni.cantlydecreasedtheIOP,yetcarefulattentionmustbepaidtothepossibledevelopmentofCD.Nylonstent-ingmaybeane.ectivepreventivemeasure,especiallyinelderlypatientsandthosewithhighpreoperativeIOP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)41(12):1476.1481,C2024〕Keywords:緑内障手術,プリザーフロマイクロシャント,脈絡膜.離,低眼圧,ナイロンステント.glaucomaCsurgery,Preser.oMicroShunt,choroidaldetachment,hypotony,nylonstenting.C〔別刷請求先〕城下哲夫:〒344-0035埼玉県春日部市谷原新田C2213-1さだまつ眼科クリニックReprintrequests:TetsuoJoshita,M.D.,SadamatsuEyeClinic,2213-1Yaharashinden,Kasukabe-city,Saitama344-0035,JAPANC1476(92)はじめに緑内障手術において線維柱帯切除術(trabeculectomy:LET)はC1968年に報告され,以来効果的な手術として知られている1.3)が,同時にその合併症リスクも高い4).わが国でC2023年C8月より使用可能となったプリザーフロマイクロシャント(Preser.oMicroShunt:PFM)は,長さC8.5Cmm,外径C350Cμm,内腔C70Cμmのデバイスで,生体適合性材料であるスチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(polystyrene-isobuthlene-styrene:SIBS)で作られている5,6).PFMを用いた濾過手術はCLETに比べ術後早期の低眼圧のリスクは有意に低いという報告がある7,8)が,一方でLETに比べCPFMで術後早期の低眼圧が有意に多く,脈絡膜.離(choroidaldetachment:CD)も多い傾向にあるという報告9)もある.今回,PFMのC6カ月成績を後ろ向きに検討した.CI対象と方法2023年C1.8月にCPFM単独,または白内障同時手術を当院で施行した緑内障患者連続C45例C51眼を対象とした.眼圧は原則としてCGoldmann圧平眼圧測定を用い,一部測定が困難で測定結果に信頼性が低かったものにおいてはアイケア手持眼圧計(iCareIC100,IcareFinlandOy)を用いて測定した.角膜内皮細胞密度はスペキュラマイクロスコープ(TOMEYEM-4000,トーメーコーポレーション),角膜厚は前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて測定した.手術室において,点眼麻酔後,術野消毒・ドレーピングし術野を確保した.2%キシロカインCEで結膜下浸潤麻酔を行い角膜輪部側より結膜を切開,Tenon.を展開し強膜を露出させ,2%キシロカインCEでCTenon.下麻酔を行った.止血を確認したのち,0.04%マイトマイシンC(MitomycinC:MMC)を強膜にC4分間塗布し,生理食塩水C20Cmlで洗浄した.角膜輪部からC3Cmmの位置から専用のダブルステップナイフを用いて強膜トンネルを作製し前房内に穿孔,同トンネル内にCPFMを挿入した.PFMの先端が前房内にあることを確認し,PFM後端からの房水の逆流を確認したのち,PFM後方露出部を矢状方向に強膜上に沿わせた状態でTenon.と結膜を角膜輪部にC9-0バージンシルク縫合糸を用いてC2針縫合した.手術終了時にデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムC1.65Cmg(デカドロン)の結膜下注射を行った.白内障同時手術の場合は,まずに先にC12時よりC2.3Cmmの角膜切開にて白内障手術を施行し,前房内の粘弾性物質(ヒアルロン酸CNa1.1眼粘弾剤C1%CMV「センジュ」)を十分に洗浄除去したのち,PFMの手順へ進んだ.連続症例C30眼目以降のC22眼においては全眼,術中にCPFMの後端より10-0ナイロン糸(以下,nylonstent)を挿入し,術後の眼圧に応じて術後平均C5.4C±9.3日目(1.42日目)に抜去した.術眼の緑内障点眼薬は術後から中止し,術後眼圧に応じて再開した.術後はモキシフロキサシン(ベガモックス点眼液0.5%)をC2週間,デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム(サンテゾーン点眼液C0.1%)をC6カ月間,ブロムフェナクナトリウム(ブロナック点眼液C0.1%),レバミピド(ムコスタ点眼液CUD0.2%)をC3カ月間継続した.検討項目は術後眼圧経過,薬剤スコア,累積生存率,角膜内皮細胞密度および併発症とした.CD発生の有無における患者背景の群間比較項目は,病型,角膜厚,術前からの眼圧下降幅,術前眼圧,平均年齢,Cnylonstentの有無,白内障同時手術の有無とした.CNylonstentの有無,およびCPFM単独/白内障同時手術における術翌日眼圧,CD発生率,低眼圧発生率を比較した.全観察点で(術前,術後C1日,1,2,3週日,1,2,3,4,5,6,7およびC8カ月)で診察と眼圧測定を行った.薬剤スコアは緑内障の単剤をC1点,配合剤はC2点,経口炭酸脱水酵素阻害薬はC1錠C2点として計算した.解析方法として,術後眼圧と薬剤スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較検定を行い,生存率は既報7)と同じように緑内障治療薬の追加なしで術前からC20%以上の眼圧下降を成功,これをC2回連続した観察点で満たさない場合,または手術室での追加緑内障手術を要した場合を死亡としてCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成した.CD発生の有無,nylonstentの有無,PFM単独/白内障同時手術における患者背景の群間比較にはCt検定,Fisherの直接確率計算法,nylonstentの有無およびCPFM単独/白内障同時手術におけるCCDと低眼圧発生頻度の比較にはCFisherの直接確率計算法を用いた.有意水準はp<0.05とした.本研究は臨床研究法を遵守しヘルシンキ宣言に基づき,手術前にインフォームド・コンセントを得て,豊栄会研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:H023R504).CII結果対象の連続C45例C51眼を後ろ向きに検討した.患者背景を表1に示す.病型の内訳は,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleglaucoma:POAG)23眼,落屑緑内障(exfolia-tionglaucoma:EXG)19眼,EXG以外の続発開放隅角緑内障(secondaryCopenCangleglaucoma:SOAG)で硝子体手術後の眼圧上昇C3眼,新生血管緑内障C2眼,抗精神病薬内服によると思われる続発閉塞隅角緑内障C2眼,ぶどう膜炎緑内障1眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼であった.全症例の術後平均観察期間はC4.0C±2.2カ月であった.全症例の眼圧経過は術後C8カ月を除いた全期間において術前C24.7C±7.5CmmHgから有意に下降し,術後C6カ月目ではC14.1±4.6CmmHgまで減少した(p<0.001,ANOVA+Dun-nett’stest,図1).全症例の薬剤スコアは術前C3.8C±0.8から術後C6カ月目ではC0.5C±1.2に減少した(p<0.001,pairedtest).術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286,pairedt-test).図2にCKaplan-Meier生命表解析を用いた生存曲線を示す.表1患者背景眼数年齢(歳)男:女病型(POAG:EXG:others)術前眼圧(mmHg)術前薬剤スコア術前角膜内皮細胞密度(cells/mmC2)術前中心角膜厚(μm)術後観察期間(カ月)IOL:phakiaPFM単独手術:白内障同時手術PFM挿入位置鼻上側:耳上側:鼻下側ナイロンステント挿入無硝子体眼緑内障手術歴あり45例51眼C73.7±10.5(48.88)33:1823:19:9C24.7±7.5(16.42)C3.8±0.8(2.5)C2314±438C525±37C4.0±2.239:1243:848:2:122眼7眼11眼(mean±SD)(Range)薬剤スコアは炭酸脱水酵素阻害薬をC1錠C2点,配合剤点眼をC2点とした.POAG:原発性開放隅角緑内障,EXG:落屑緑内障,PFM:プリ術後C6カ月の生存率はC76.5%であった.術後併発症として頻度が高かったのはCCDで,51眼中C14眼(27.5%)に認めた.うちC9眼(17.6%)は経過観察またはベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン点眼液0.1%),アトロピン硝酸塩水和物(日点アトロピン点眼液C1%),粘弾性物質(ophthalmicCviscosurgicaldevice:OVD)(オペガン0.6眼粘弾剤1%)の前房内注入(1眼)で消退,3眼(5.9%)はそれぞれ術後C8カ月目,2週目,1週目時点で経過観察可能な範囲のCCDが残存し,2眼(3.9%)は重篤なCCDとなり外科的な介入を要した.その他の術後併発症は,高眼圧(16CmmHg<)がC12眼(23.5%),低眼圧(<6CmmHg)が10眼(19.6%),前房出血がC10眼(19.6%),浅前房がC7眼(13.7%),複視がC4眼(7.8%),PFMの挿入位置不良がC2眼(3.9%)であった.術後の追加処置としては,9眼(17.6%)でCneedling(1回3眼,2回4眼,3回2眼),5眼(9.8%)で濾過胞再建とPFM短縮,2眼(5.7%)で重篤なCCDのためCtappingとシリコーンオイル(siliconoil:SO)置換,1眼(2.0%)でCOVDの前房内注入(1回),1眼(2.0%)で挿入位置修正を行った.患者背景の群間比較では,CD群とCCDが発生しなかった群でそれぞれ,平均年齢がC80.9C±6.6歳とC70.9C±10.6歳(p=0.0018*),術前眼圧がC29.6C±7.5CmmHgとC22.8C±6.7CmmHg(p=0.00765*),術前からの眼圧下降幅がC21.9C±9.1CmmHgとC13.1C±7.2CmmHg(p=0.00069*)であった.Nylonstent群と非挿入群ではそれぞれ,平均年齢がC69.4C±11.9歳とC76.9C±3.8mmHg±6.11),術翌日眼圧がC2表)(*0.00993=3歳(pC.8.001)7mmHg(p<0C.3±と7.3ザーフロマイクロシャント.C24.7±7.53025(表2),CD発生率はCNylon眼圧(mmHg)15.1±4.52014.1±4.6*15********10**5pre171421285684112140168196234観察期間(日)(mean±SD)眼数515151392345423830221791図l眼圧経過術C7カ月後まで有意に下降した(*p<0.001,ANOVA+Dunnett’stest)生存率(%)100806040200050100150生存期間(日)図2Baselineより20%以上眼圧下降6カ月生存率生存率はC76.5%であった.表2患者背景(CD発生群と非発生群)EXGCPOAG角膜厚(μm)平均年齢(歳)術前眼圧(mmHg)術前からの眼圧下降幅(mmHg)術翌日眼圧(mmHg)Cnylonstent(+)白内障同時手術CD群CDが発生(n=14)しなかったp値群(n=37)8(57.1%)11(29.7%)4(28.6%)19(51.4%)C533.7±32.0C522.0±38.5C80.9±6.6C70.9±10.6C29.6±7.5C22.8±6.7C21.9±9.1C13.1±7.2C7.7±4.0C9.8±4.33(21.4%)19(51.4%)1(7.1%)7(18.9%)0.106+0.21+0.318*C0.0018*C0.00765*C0.00069*C0.129*C0.0658+0.419+NS群NSを入れな(n=22)かった群p値(n=29)5(22.7%)14(48.3%)11(50.0%)12(41.4%)C514.4±36.5C533.4±35.3C69.4±11.9C76.9±8.3C25.4±8.1C24.1±7.1C13.7±8.2C16.8±8.9C11.6±3.8C7.3±3.75(22.7%)3(10.3%)0.0829+0.581+0.0674*C0.00993*C0.567*C0.212*C0.000174*C0.268+PFM単独白内障同時群(n=43)手術群p値(n=8)18(41.9%)1(12.5%)C0.231+20(46.5%)3(37.5%)C0.715+526.1±36.9C520.8±39.0C0.712*C75.6±9.4C63.4±11.3C0.00194*C25.0±7.4C22.6±7.8C0.406*C16.3±8.9C11.0±8.0C0.111*C8.7±3.9C11.6±5.4C0.08*17(39.5%)5(62.5%)C0.268+(mean±SD)+:Fisher’sexacttest,*:t-testCD:脈絡膜.離,NS:ナイロンステント,PFM:プリザーフロマイクロシャント,EXG:落屑緑内障,POAG:原発性開放隅角緑内障.stent群がC13.6%,非挿入群がC37.9%(p=0.0658)(表3),術表3Nylonstentの有無およびPFM単独/白内障同時手術によ翌日の低眼圧発生率はCnylonstent群がC4.5%,非挿入群がるCDと低眼圧発生頻度の比較31.0%(p=0.0302*)(表3)であった.白内障同時手術群のCD発生率はC12.5%,PFM単独群がC30.2%(p=0.419)(表2)であった.CIII考按術後の眼圧変化としては,1眼しかなかった術後C8カ月を除いた全観察期間において有意に眼圧下降が得られた(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest,図1).術翌日はC10CmmHgCD発生有低眼圧発生有(<6mmHg)nylonstent(C.)nylonstent(+)11/29(C37.9%)3/22(C13.6%)9/29(C31.0%)1/22(C4.5%)p値C0.0658+0.0302+PFM単独白内障同時手術13/43(C25.5%)1/8(C12.5)8/43(C18.6%)2/8(C25.0%)p値C0.419+0.647++:Fisher’sexacttest以下まで下降し,術後C1カ月目まで徐々に上昇して安定しCD:脈絡膜.離,PFM:プリザーフロマイクロシャント.た.この傾向は既報7,8)と一致した.術後C6カ月の角膜内皮細胞密度の測定ができたC14眼において角膜内皮細胞密度の平均減少率は.2.8±0.1%であった(p=0.286).Bakerらは術後C1年での角膜内皮細胞密度の平均減少率はCPFMとCLETで差はないとしており7),少なくとも短期でのCPFMによる角膜内皮細胞の明らかな減少は認められないといえる.しかし,PFMの挿入角度によって,角膜内皮に近く固定されたものは角膜内皮細胞の減少が危惧されるため,挿入位置の修正が必要になることもあるだろう.今回の症例にも術翌日にCPFMの先端が角膜内皮近くに挿入されていたため,再手術にて挿入角度を修正した症例があった.今回C51眼中C14眼(27.5%)にCCDを認めた.既報のCCDの発生頻度C4.6.11%C7.10)に比べて多い結果であった.PFM施行後のCCD発生リスクについての報告は未だないが,Iwa-sakiらはCLET施行後のCCD発生のリスクファクターとして,EXG,大幅な眼圧下降,厚い角膜厚をあげている11).今回EXGの有無でCCD発生率に有意差は認められず(p=0.106),角膜厚においてもCCD発生の有無に差はなかった(p=0.318)(表2).術前から術翌日の眼圧下降幅においては,CD発生群C21.9C±9.1CmmHgに対しCCDが発生しなかった群でC13.1C±7.2CmmHgと有意差を認めた(p<0.001)(表2).やはり大幅な眼圧下降はCCD発生のリスクといえよう.PFMはその構造上,高い眼圧のほうが下降幅は大きくなる.そこで術前眼圧を比較するとCCD発生群C29.6C±7.5CmmHgに対し発生しなかった群C22.8C±6.7CmmHgと有意差を認めた(p<0.01)(表2).術前眼圧が高いことはCCD発生のリスクとして考慮する必要がある可能性がある.また,平均年齢においてCCD発生群C80.9C±6.6歳に対しCCDが発生しなかった群でC70.9C±10.6歳と有意差を認めた(p<0.01)(表2).高齢であることもCD発生のリスクファクターとなり得る.今回の対象の平均年齢はC73.7C±10.5歳と既報C7.10)に比べ高齢であったことはCDの発生率が高いことに影響している可能性がある.低眼圧に対してCOVDの前房内注入はCPFMの閉塞を危惧し,当初は選択を避けていたが,その後,白内障同時手術を経験していく中でCOVDは使用可能と判断し,低眼圧傾向とCDの出現早期からCOVDの前房内注入をするようにすることで以降の症例では術後にコントロール不良なCCDにまでは発展することなく経過した.LupardiらはCPFM術後の過剰濾過に対し,PFM内腔に10-0ナイロン糸を挿入することで低眼圧を改善・予防した12,13).また,LukeらはCPFM内腔にC8-0ポリアミド糸を挿入することで術後の低眼圧を予防した14).今回Cnylonstent群では非挿入眼に比し術翌日の眼圧は有意に上昇し,低眼圧の発生率はC31.0%からC4.5%まで有意に減少した(p=0.0302)(表3).CDの発生率は有意差はないもののC37.9%からC13.6%へ減少傾向を示した(p=0.0658)(表3).しかし,Cnylonstentの有無による術前眼圧と術前眼圧下降幅に差はなかった(表2).今回Cnylonstentの使用は無作為に割り付けていたが,平均年齢はCnylonstentを入れなかった群で有意に高かった.そこでCnylonstentを入れなかったC29眼を対象にCCD発生の有無で平均年齢,術前眼圧,術前からの眼圧下降幅,角膜厚,術翌日眼圧,EXGの有無に統計的差があるかを検討したところ,それぞれ平均年齢C81.9C±4.3歳,73.9C±8.7歳(p=0.0084*,t-test),術前眼圧C28.3C±6.8CmmHg,21.6C±6.1CmmHg(p=0.0108*,t-test),術前眼圧からの眼圧下降幅C21.3C±9.4mmHg,14.1C±7.5CmmHg(p=0.0306*,t-test)と有意差を認めた.角膜厚(p=0.705,t-test),術翌日眼圧(p=0.703,t-test),EXGの有無(p=0.264,Fisher’sCexacttest)については有意差は認められなかった.このことからも高齢で術前眼圧が高いことは術後CCD発症のリスクとなる可能性が高いといえるだろう.術翌日眼圧はCnylonstentを入れた群で有意に高かった(表2).Nylonstentによって大幅な眼圧下降は抑制できると期待できる.CNylonstentは低眼圧や大幅な眼圧下降に伴うCCDについては予防策となるかもしれない.今回経験した症例の結果からは,とくに高齢で術前眼圧が高い患者にはCnylonstentが有用な可能性が期待できる.しかし,nylonstentによるPFMの長期の成功率への影響は未知数であり,今後さらに多数,長期の検討が必要である.文献1)CairnsJE:Trabeculectomy.CpreliminaryCreportCofCaCnewCmethod.AmJOphthalmolC66:673-679,C19682)GeddeSJ,FeuerWJ,ShiWetal:TreatmentoutcomesintheCprimaryCtubeCversusCtrabeculectomyCstudyCafterC1Cyearoffollow-up.OphthalmologyC125:650-663,C20183)CaprioliJ,DeLeonJM,AzarbodPetal:TrabeculectomycanCimproveClong-termCvisualCfunctionCinCglaucoma.COph-thalmologyC123:117-128,C20164)EdmundsB,ThompsonJR,SalmonJFetal:TheNationalsurveyoftrabeculectomy.III.earlyandlatecomplications.EyeC16:297-303,C20025)KerrCNM,CAhmedCIIK,CPinchukCLCetal:PRESERFLOCMicroShunt.In:MinimallyCinvasiveCglaucomaCsurgery(SngCCCA,CBartonK),p91-103,CSingapore,CSpringer,C20216)GreenCW,CLindCJT,CSheybaniA:ReviewCofCtheCXenCgelCstentCandCInnFocusCMicroShunt.CCurrCOpinCOphthalmolC29:162-170,C20187)BakerCND,CBarnebeyCHS,CMosterCMRCetal:Ab-externoCMicroShuntversustrabeculectomyinprimaryopen-angleglaucoma:one-yearCresultsCfromCaC2-yearCrandomized,Cmulticenterstudy.OphthalmologyC128:1710-1721,C20218)FeaAM,La.GL,MartiniEetal:E.ectivenessofMicro-Shuntinpatientswithprimaryopen-angleandpseudoex-foliativeCglaucoma.COphthalmolCGlaucomaC5:210-218,C2022C9)BohlerAD,TraustadottirVD,HagemAMetal:Hypoto-nyCinCtheCearlyCpostoperativeCperiodCafterCMicroShuntCimplantationCversustrabeculectomy:aCregistryCstudy.CActaOphthalmolC102:186-191,C202310)TannerA,HaddadF,Fajardo-SanchezJetal:One-yearsurgicaloutcomesofthePreserFloMicroShuntinglauco-ma:aCmulticentreCanalysis.CBrCJCOphthalmolC107:1104-1111,C202311)IwasakiCK,CKakimotoCH,CArimuraCSCetal:ProspectiveCcohortstudyofriskfactorsforchoroidaldetachmentaftertrabeculectomy.IntOphthalmolC40:1077-1083,C202012)LupardiCE,CLa.CGL,CCiardellaCACetal:Ab-externoCintra-luminalCstentCforCprolongedChypotonyCandCchoroidalCdetachmentCafterCPreser.oCimplantation.CEurCJCOphthal-molC33:63-66,C202313)LupardiCE,CLa.CGL,CMoramarcoCACetal:SystematicCPreser.oCMicroShuntCintraluminalCstentingCforChypotonyCpreventionCinChighlyCmyopicpatients:aCcomparativeCstudy.JClinMedC12:1677,C202314)LukeCJN,CReinkingCN,CDietleinCTSCetal:IntraoperativeCprimaryCpartialCocclusionCofCtheCPreserFloCMicroShuntCtoCpreventCinitialCpostoperativeChypotony.CIntCOphthalmolC43:2643-2651,C2023***