《原著》あたらしい眼科36(4):537.543,2019cビマトプロスト点眼液(ルミガンR点眼液0.03%)の使用成績調査(サブ解析)末信敏秀*1石黒美香*1北尾尚子*1川瀬和秀*2山本哲也*2*1千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部*2岐阜大学大学院医学系研究科眼科学CSubanalysisofPost-marketingStudyofBimatoprostOphthalmicSolution(LUMIGANROphthalmicSolution0.03%)ToshihideSuenobu1),MikaIshikuro1),NaokoKitao1),KazuhideKawase2)andTetsuyaYamamoto2)1)MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,2)DepartmentofOphthalmology,GifuUniversityGraduateSchoolofMedicineC本研究は,ビマトプロスト点眼液(ルミガンCR点眼液C0.03%)使用成績調査のサブ解析である.対象は,1年超の経過観察症例C3,219例のうち,プロスタグランジン関連薬+他の緑内障治療薬による前治療が,ビマトプロストへ切り替えられたC778例とした.その結果,前治療プロスタグランジン関連薬は,ラタノプロストC432例,トラボプロスト192例,タフルプロストC154例であった.ラタノプロスト+b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬の組み合わせがC184例でもっとも多く,このうちラタノプロストのみがビマトプロストに切替えられたC177例では,切替時眼圧C16.8C±5.4CmmHgがC1カ月後にC14.6C±4.2CmmHgと有意に低下した.他の組み合わせからのビマトプロストへの切替え例においても,おおむね,統計学的に有意な眼圧下降が認められた.ビマトプロスト点眼液は,他のプロスタグランジン関連薬からの切替によって,さらなる眼圧下降効果が期待される薬剤であると考えられた.CThisCstudyCisCaCsubanalysisCofCtheCresultsCofCaCbimatoprostCophthalmicsolution(LUMIGANCRCophthalmicCsolu-tion0.03%)investigation.Among3,219casesfollowed-upformorethan1year,thetargetwas778casesinwhompretreatmentCwithCprostaglandinCanaloguesCandCotherCglaucomaCtherapeuticCdrugsCwasCswitchedCtoCbimatoprost.CThepretreatmentprostaglandinanalogueswerelatanoprostin432cases,travoprostin192cases,andta.uprostin154cases.Latanoprostplusbetablockerpluscarbonicanhydraseinhibitorwasthemostcommon,in184cases.Inthe177patientsinwhomonlylatanoprostwasswitchedtobimatoprost,therewassigni.cantdecreaseinintraocu-larpressure:16.8C±5.4CmmHgCatCtheCtimeCofCswitchingCandC14.6±4.2CmmHgCatConeCmonthClater.CStatisticallyCsigni.cantdecreaseinintraocularpressurewasalsoobservedinmanycasesofswitchingtobimatoprostfromoth-erCcombinations.CTheseCresultsCsuggestCthatCbimatoprostCmayChaveCanCadditionalCocularChypotensiveCe.ectCwhenCswitchingfromotherprostaglandinanaloguesandothercombinations.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(4):537.543,C2019〕Keywords:ビマトプロスト,ルミガンCR点眼液C0.03%,プロスタグランジン,安全性,有効性,眼圧.bimato-prost,LUMIGANRophthalmicsolution0.03%,prostaglandin,safety,e.cacy,intraocularpressure.はじめに緑内障は,わが国における主たる失明原因の一つであり,眼圧下降が唯一のエビデンスに基づく確実な治療法である1).眼圧下降の手段としては,薬物治療,レーザー治療,手術治療があげられるが,初期治療の第一選択は薬物治療である.なかでも,プロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連薬は優れた眼圧下降効果を有し,全身性の副作用が少ないことから,第一選択薬として汎用されて久しい.PG関連薬による眼圧下降が,緑内障治療の第一義である視野障害進行抑制に有効であることが報告2)され,改めて眼圧下降の重要性が認識された.一方,PG関連薬に対するレスポンスには個体差が存在す〔別刷請求先〕末信敏秀:〒650-0047神戸市中央区港島南町C6-4-3千寿製薬株式会社研究開発本部育薬研究推進部Reprintrequests:ToshihideSuenobu,MedicalScienceDepartment,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,6-4-3Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku,Kobe-shi,Hyogo650-0047,JAPANCるとともに,眼圧下降による視野障害進行の程度にも個体差が認められ,さまざまな治療選択肢を駆使しても視野障害が進行する例が存在する.PG関連薬であるラタノプロスト点眼液,トラボプロスト点眼液およびタフルプロスト点眼液においても,7.7.15.0%の割合でノンレスポンダーの存在が報告されている3).このようななか,ビマトプロスト点眼液(ルミガンCR点眼液C0.03%,以下,ビマトプロスト)がC2009年に新たな選択肢に加わり,上市後に実施した使用成績調査(2009年C10月.2015年C12月)において,その眼圧下降効果が証明された4).すなわち,原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglaucoma:POAG),正常眼圧緑内障(normalCtensionCglau-coma:NTG),原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureglaucoma:PACG),続発緑内障(secondaryCglaucoma:SG)および高眼圧症(ocularhypertension:OH)の病型別,新規単剤投与および前治療薬別,開始時眼圧値別のいずれにおいても投与C1カ月後に有意な眼圧下降が得られた.今回筆者らは,PG関連薬+他の緑内障薬による前治療が,ビマトプロストによる治療へ切替られた症例における眼圧推移に着目し,使用成績調査対象例のサブ解析(以下,本研究)を行ったので報告する.CI対象および方法1.研究デザイン本研究は,ビマトプロストの使用成績調査(以下,調査)にて集積された症例におけるサブ解析である.調査は,本剤の使用経験のない緑内障・高眼圧症患者を対象とし,中央登録方式でプロスペクティブに実施したものであり,調査方法の詳細,全般的な結果はすでに報告した4).調査では,投与開始後C1年を超える経過観察症例としてC3,219例,観察期間は原則C12カ月以上,最長C24カ月とし,投与開始日からC3カ月後,12カ月後およびC24カ月後までのC3分冊の調査票を各観察期間終了後に回収した.なお,医薬品医療機器総合機構によるプロトコルの審査を経て,調査を実施した.C2.解析対象集団ビマトプロスト投与開始時および投与後C24カ月後までに1時点以上の眼圧が測定された症例のうち,前治療としてPG関連薬(ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト)+b受容体遮断薬(以下,Cb遮断薬),PG関連薬+炭酸脱水酵素阻害薬(carbonicCanhydraseinhibitor:CAI)またはCPG関連薬+b遮断薬+CAIが投与され,このうちCPG関連薬がビマトプロストに切り替えられた症例,ならびにビマトプロスト単剤治療に切り替えられた症例を対象とした.なお,PG関連薬,Cb遮断薬およびCCAI以外の緑内障薬が併用された症例は除外した.評価眼はC1症例C1眼とし,両眼投与の場合は投与開始時の眼圧が高い眼,開始時眼圧が同値の場合は右眼とした.ただし,投与期間中に内眼手術(レーザー治療を含む)を施行した眼は除外し,休薬期間がある場合は休薬前まで,中止症例は中止時までの眼圧値を評価対象とした.眼圧値は平均C±標準偏差を算出し,投与開始時と各経過観察時の眼圧を,Dunnett型の多重性調整を行った対応のあるCt検定で比較した.また,(開始時眼圧C.投与後眼圧)/開始時眼圧C×100(%)として,投与C1カ月後,3カ月後およびC24カ月後の眼圧下降率を算出した.本研究は事後解析であり,統計解析は千寿製薬にて行った.統計解析ソフトはCSAS9.4(SASInstituteInc.)を用い,有意水準は両側5%とした.CII結果1.解析対象集団の構成本研究の選択基準に該当する症例はC778例であった.患者背景は表1に示すとおりであり,性別,年齢および病型分布については調査全体4)と同様の傾向であった.また,図1に示したとおり,前治療として投与されていたCPG関連薬+b遮断薬Cand/orCAIの組み合わせのうち,ラタノプロスト+b遮断薬+CAIがC23.7%(184/778)でもっとも多かった.同様に,トラボプロストおよびタフルプロストにおいても,+b遮断薬+CAIの構成比がもっとも高かった.+CAIの組み合わせが,いずれのCPG関連薬においてももっとも少なかった.切替時の眼圧は,ラタノプロスト+b遮断薬でもっとも低く(15.9C±3.7CmmHg),タフルプロスト+CAIでもっとも高かった(19.1C±6.0CmmHg)(表2).これら解析対象の多くにおいて,PG関連薬のみがビマトプロストに切り替えられていたが,ビマトプロスト単剤に変更された症例が散見された.すなわち,ラタノプロスト前投与でC11.6%(50/432),トラボプロスト前投与でC8.9%(17/192),タフルプロスト前投与でC5.8%(9/154)がビマトプロスト単剤に変更されていた.PG関連薬のみが変更された症例におけるC1カ月後の眼圧下降率は,ラタノプロスト前投与,トラボプロスト前投与およびタフルプロスト前投与で,それぞれC12.6.14.3%,9.3.14.1%およびC15.2.16.4%であった.同様に,24カ月後の眼圧下降率は,それぞれC11.3.16.1%,11.7.16.9%およびC12.7.33.0%であった.また,ビマトプロスト単剤への切替例におけるC1カ月およびC24カ月後の眼圧下降率は,10.5%およびC8.0%であった.C2.眼.圧.推.移ラタノプロストのみがビマトプロストへ切替られた症例におけるC24カ月目までの眼圧推移は図2に示したとおりであり,+b遮断薬,+CAI,+b遮断薬+CAIいずれの群にお表1患者背景症例数(%)患者背景項目本研究(n=778)調査全体*(n=4,680)性別男性女性362(C46.5)416(C53.5)2,249(C48.1)2,430(C51.9)年齢(投与開始時)平均C±SDC最小.最大69.7±11.5歳C16.9C8歳67.9±12.8歳11.9C8歳病型(本剤投与眼)緑内障719(92.4)4,260(91.0)POAG(狭義)446(57.3)2,008(42.9)C│┌NTG176(22.6)1,752(37.4)C│CPACG34(4.4)185(4.0)C│CSG61(7.8)306(6.5)C└その他の緑内障2(0.3)9(0.2)COH27(3.5)216(4.6)その他(複数の使用理由を含む)32(4.1)204(4.4)POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,PACG:原発閉塞隅角緑内障,SG:続発緑内障,OH:高眼圧症.*:文献4)より改変して引用(性別の調査不能C1例が存在したが本表では除外).タフルプロスト前投与n=154,19.8%ラタノプロスト前投与n=432,55.5%図1前治療いても投与開始C1カ月以降,24カ月後までのすべての経過観察時点において,切替時に比べ有意な眼圧下降(p<0.05)を認めた.トラボプロストのみがビマトプロストへ切替られた症例におけるC24カ月後までの眼圧推移は図3に示したとおりであり,+b遮断薬+CAIにおいては,21カ月後を除く経過観察時点において,切替時に比べ有意な眼圧下降を認めた.一方,+b遮断薬ではC9カ月,18カ月およびC24カ月後でのみ有意な眼圧下降を認め,+CAIでは切替以降いずれの観察時点においても有意な眼圧下降を認めなかった.タフルプロストのみがビマトプロストへ切替られた症例におけるC24カ月後までの眼圧推移は図4に示したとおりであり,+b遮断薬ではC1カ月およびC9カ月後を除く観察時点において切替時に比べ有意な眼圧下降を認めた.また,+b遮断薬+CAIにおいては,24カ月後を除く経過観察時点において,有意な眼圧下降を認めた.一方,+CAIでは2カ月,表2追加解析対象一覧切替時眼圧切替後治療内容1カ月後眼圧3カ月後眼圧24カ月後眼圧前治療内容(成分)(平均C±SD)(成分)症例数平均C±SD下降率平均C±SD下降率平均C±SD下降率(mmHg)(mmHg)(%)(mmHg)(%)(mmHg)(%)LAT+b遮断薬C15.9±3.7BIM+b遮断薬C127C13.9±3.5C12.6C14.0±3.1C11.9C14.1±3.2C11.3CLAT+CAIC16.8±5.0BIM+CAIC78C14.4±4.3C14.3C14.7±3.7C12.5C14.2±4.1C15.5CLAT+b遮断薬+CAIC16.8±5.4BIM+b遮断薬+CAIC177C14.6±4.2C13.1C15.2±4.3C9.5C14.1±4.3C16.1CTRA+b遮断薬C16.6±3.0BIM+b遮断薬C33C15.0±3.6C9.6C14.8±2.5C10.8C13.8±2.6C16.9CTRA+CAIC16.2±4.5BIM+CAIC35C14.7±4.2C9.3C14.9±3.1C8.0C14.3±2.9C11.7CTRA+b遮断薬+CAIC17.7±4.3BIM+b遮断薬+CAIC107C15.2±4.1C14.1C15.1±3.9C14.7C15.5±4.1C12.4CTAF+b遮断薬C18.3±7.2BIM+b遮断薬C43C15.3±4.4C16.4C14.5±3.5C20.8C14.8±3.6C19.1CTAF+CAIC19.1±6.0BIM+CAIC23C16.2±4.0C15.2C16.5±4.5C13.6C12.8±3.2C33.0CTAF+b遮断薬+CAIC18.1±5.4BIM+b遮断薬+CAIC79C15.3±4.7C15.5C15.1±4.5C16.6C15.8±5.8C12.7CPG関連薬+b遮断薬Cor/andCAIC16.2±4.1BIM単剤C76C14.5±3.7C10.5C13.6±3.1C16.0C14.9±4.3C8.0C┌CLAT+b遮断薬C32C│CLAT+CAIC11C│CLAT+b遮断薬+CAIC7C│CTRA+b遮断薬C10C│CTRA+CAIC2C│CTRA+b遮断薬+CAIC5C│CTAF+b遮断薬C4C│TAF+CAIC2C└CTAF+b遮断薬+CAIC3C計C778CLAT:ラタノプロスト,TRA:トラボプロスト,TAF:タフルプロスト,BIM:ビマトプロスト.:トラボプロスト+b遮断薬→ビマトプロスト+b遮断薬:トラボプロスト+CAI→ビマトプロスト+CAI25眼圧(mmHg)201510123691215182124経過観察期間(月)123691215182124経過観察期間(月)図2ラタノプロストからビマトプロストに切り替えられた症例の眼圧推移図3トラボプロストからビマトプロストに切り替えられた症例の眼圧推移:タフルプロスト+b遮断薬→ビマトプロスト+b遮断薬:タフルプロスト+CAI→ビマトプロスト+CAI2520眼圧(mmHg)2015151010123691215182124経過観察期間(月)123691215182124経過観察期間(月)図4タフルプロストからビマトプロストに切り替えられた症例の眼圧推移12カ月,18カ月,21カ月およびC24カ月後で有意な眼圧下降を認めた.PG関連薬+b遮断薬Cand/orCAIのうち,76例がビマトプロスト単剤へ切替られ,以降の眼圧推移は図5に示したとおりである.すなわち,投与C1カ月.15カ月後まで有意な眼圧下降を認めた.CIII考按ラタノプロスト前治療からビマトプロストへの切替例では,+b遮断薬,+CAI,+b遮断薬+CAIのすべてのパターンにおいて,切替C1カ月以降C24カ月後まで有意な眼圧下降が認められた.ラタノプロストからビマトプロストへの切替による眼圧下降効果については多くの既報がある.Imasa-waら5)は,ラタノプロストからビマトプロスト切替C6週後図5PG関連薬+b遮断薬and/orCAIからビマトプロスト単剤に切り替えられた症例の眼圧推移の眼圧下降値はC1.7CmmHg(下降率:10.3%)であったと報告しており,本研究のC1カ月後の眼圧下降値であるC2.0.2.4mmHg(下降率:12.6.14.3%)は同程度であった.3カ月後の眼圧下降値はC1.6.2.1CmmHg(下降率:9.5.12.5%)であったことから,既報におけるC1.6CmmHg(下降率:9.4%)5),1.9CmmHg(下降率:11.9%)6),1.6CmmHg(下降率:12.1%)7)と同等であった.さらに,24カ月後の眼圧下降値はC1.8.2.7mmHg(下降率:11.3.16.1%)であり,有意な眼圧下降が認められた.Sontyら8)は,同様にラタノプロストからビマトプロストへの切替後の長期成績について報告しており,切替C24カ月後の眼圧下降値はC4.9.5.3CmmHg(下降率:21.2.23.8%)であり,切替時に比して有意であったと報告している.このようにビマトプロストは,さらなる眼圧下降を必要とするラタノプロスト治療例に対して,よい選択肢となりうると考えられる.トラボプロスト前治療からの切替例では,+b遮断薬の観察期間中に統計学的に有意な眼圧下降が認められた観察時点は,投与C9カ月,18カ月およびC24カ月後のみであり,ビマトプロストへの切替による効果は限定的であった.また,+CAIでの切替C1カ月,3カ月およびC24カ月後の眼圧下降率はC8.0.11.7%であったが,観察期間中を通じて統計学的に有意な眼圧下降は認められなかった.一方,+b遮断薬+CAI例では,切替C1カ月後の眼圧下降値はC2.5CmmHg(下降率:14.1%)で統計学的に有意であった.また,投与C21カ月後を除き,24カ月までの観察期間中を通じて有意な眼圧下降が認められた.ビマトプロストとトラボプロストの眼圧下降作用については,ビマトプロストが優れているとする報告9,10)が散見されるが,本研究のようにトラボプロストからビマトプロストへの切替後の眼圧推移に関する報告は見あたらない.一方,ビマトプロストからトラボプロスト/チモロール配合剤への切替時の眼圧推移については,ビマトプロストのノンレスポンダーからの切替C12週後の眼圧下降値はC3.8mmHgで有意であったとする報告11)のほか,PG関連薬(ラタノプロスト,トラボプロスト,タフルプロスト,ビマトプロスト)単剤からトラボプロスト/チモロール配合剤への切替後の眼圧はビマトプロスト前投与以外では有意に低下したとする報告12),さらには同配合剤とビマトプロスト単剤の眼圧下降効果は同等とする報告13)などがある.本研究においては,トラボプロスト+b遮断薬(33例)およびトラボプロスト+CAI(35例)の症例数が少なかったものの,トラボプロスト+b遮断薬+CAIはC107例が集積され,切替C1カ月以降,有意な眼圧下降が認められたことから,さらなる眼圧下降を必要とするトラボプロスト治療例に対しても,一定の効果が期待されるものと考える.タフルプロスト前治療からの切替例では,+b遮断薬の観察期間中では,投与C1カ月およびC9カ月後を除き,統計学的に有意な眼圧下降が認められた.また,+CAIでの眼圧下降率はC13.6.33.0%であったが,統計学的に有意な眼圧下降は一部の観察時点でのみしか認められなかった.一方,+b遮断薬+CAIでは,切替C1カ月後の眼圧下降値はC2.8CmmHg(下降率:15.5%)で統計学的に有意であった.また,投与24カ月後を除き,有意な眼圧下降が認められた.Rannoら14)は,PG関連薬からタフルプロストへの切替C3カ月後の眼圧値は,ラタノプロストおよびトラボプロスト前投与例では同等であったが,ビマトプロストからの切替例では有意に眼圧が上昇したと報告している.Hommerら15)は,PG関連薬からタフルプロストへの切替C12週後の眼圧値は,ラタノプロストおよびトラボプロスト前投与例では有意に下降したが,ビマトプロストからの切替例のみ有意な低下を認めなかったことを報告している.このように,さらなる眼圧下降を必要とするタフルプロスト治療例に対しても,一定の効果が期待される.PG関連薬+b遮断薬Cand/or+CAIからビマトプロスト単剤への切替例では,投与C1カ月後の眼圧下降値はC1.7CmmHg(下降率:10.5%)で統計学的に有意であった.したがって,多剤併用によってアドヒアランスの低下が疑われる症例については,ビマトプロスト単剤による治療に切替えることも選択肢として考慮される.このように,ビマトプロストによる眼圧下降効果については,現存するCPG関連薬からの切替時において一定の効果が期待される.一方,先の報告4)を含め,ビマトプロストは結膜充血やCDUES(deepeningCofCupperCeyelidsulcus)が一定頻度で発現することから,アドヒアランス低下を防止する意味でも注意深い経過観察が必要である.本研究は,ビマトプロスト投与期間中の観察記録データのサブ解析であり,ビマトプロストを他のCPG関連薬に切替えた際の眼圧推移については検討されていない.したがって,本研究の対象とした切替例における眼圧下降効果については,ビマトプロストに限定されるものと言及することはできない.また,先の報告4)のとおり,投与開始C1カ月時点の判定であるが,ビマトプロストの新規単剤投与例のC15.7%は眼圧下降率がC10%未満であり,他のCPG関連薬のよい適応であった可能性が示唆される.このほか,本研究の結果は,薬剤変更によるアドヒアランスの向上,十分な眼圧下降が得られた症例のみが評価された可能性などを考慮する必要はあるが,切替後C24カ月にわたって一定の持続的な眼圧下降が認められ,ビマトプロストは緑内障薬物治療の有用な選択肢であると考えられる.謝辞:調査に協力を賜り,データを提供いただきました全国の先生方に,深謝申し上げます.利益相反:本稿は,千寿製薬株式会社により実施された使用成績調査結果に基づき報告された.末信敏秀,石黒美香,北尾尚子は千寿製薬株式会社の社員である.山本哲也は本使用成績調査の医学専門家である.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20182)Garway-HeathDF,CrabbDP,BunceCetal:Latanoprostforopen-angleCglaucoma(UKGTS):aCrandomised,Cmulti-centre,Cplacebo-controlledCtrial.CLancetC385:1295-1304,C20153)InoueCk,CSetogawaCA,CTomitaG:NonrespondersCtoCpros-taglandinanalogsamongnormal-tensionglaucomapatients.CJOculPharmacolTherC32:90-96,C20164)石黒美香,北尾尚子,末信敏秀ほか:ビマトプロスト点眼液(ルミガン点眼液C0.03%)の使用成績調査.あたらしい眼科35:399-409,C20185)ImasawaCM,CTanabeCJ,CKashiwagiCFCetal:E.cacyCandCsafetyCofCswitchingClatanoprostCmonotherapyCtoCbimato-prostCmonotherapyCorCcombinationCofCbrinzolamideCandClatanoprost.OpenOphthalmolJC7:94-102,C20166)SatoCS,CHirookaCK,CBabaCTCetal:E.cacyCandCsafetyCofCswitchingfromtopicallatanoprosttobimatoprostinpatientswithCnormal-tensionCglaucoma.CJCOculCPharmacolCTherC27:499-502,C20117)MaruyamaY,IkedaY,MoriKetal:Comparisonbetweenbimatoprostandlatanoprost-timolol.xedcombinationfore.cacyCandCsafetyCafterCswitchingCpatientsCfromClatano-prost.ClinOphthalmolC9:1429-1436,C20158)SontyCS,CDonthamsettiCV,CVangipuramCGCetal:Long-termCIOPCloweringCwithCbimatoprostCinCopen-angleCglau-comaCpatientsCpoorlyCresponsiveCtoClatanoprost.CJCOculCPharmacolTherC24:517-520,C20089)NoeckerRJ,EarlML,MundorfTKetal:Comparingbima-toprostCandtravoprostinblackAmericans.CurrMedResOpinC22:2175-2180,C200610)CantorLB,HoopJ,MorganLetal:Intraocularpressure-loweringCe.cacyCofCbimatoprost0.03%CandCtravoprostC0.004%inpatientswithglaucomaorocularhypertension.BrJOphthalmolC90:1370-1373,C200611)SchnoberCD,CHubatschCDA,CScherzerML:E.cacyCandCsafetyof.xed-combinationtravoprost0.004%/timolol0.5%inpatientstransitioningfrombimatoprost0.03%/timo-lol0.5%CcombinationCtherapy.CClinCOphthalmolC9:825-832,C201512)NakanoT,MizoueS,FuseNetal:FixedcombinationoftravoprostCandCtimololCmaleateCreducesCintraocularCpres-sureCinCJapaneseCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglau-comaCorCocularhypertension:analysisCbyCprostaglandinCanalogue.ClinOphthalmolC11:55-61,C201713)西村宗作,伊藤初夏,中西正典ほか:DynamicCContourTonometerを用いたトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液とビマトプロスト点眼液の眼圧下降率の比較.あたらしい眼科31:1535-1539,C201414)RannoS,SacchiM,BrancatoCetal:AprospectivestudyevaluatingCIOPCchangesCafterCswitchingCfromCaCtherapyCwithCprostaglandinCeyeCdropsCcontainingCpreservativesCtoCnonpreservedta.uprostinglaucomapatients.SciWorldJ2012:804730,C201215)HommerCA,CKimmichF:SwitchingCpatientsCfromCpre-servedCprostaglandin-analogCmonotherapyCtoCpreserva-tive-freeta.uprost.ClinOphthalmolC5:623-631,C2011***