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ポケモンステレオテストの使用経験

2019年3月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科36(3):411.414,2019cポケモンステレオテストの使用経験草柳由季*1岩田遥*2酒匂丈裕*2*1さこう眼科*2北里大学医療衛生学部視覚機能療法学CClinicalEvaluationofPokemonStereoTestYukiKusayanagi1),YoIwata2)andTakehiroSakoh2)1)SakohEyeClinic,2)DepartmentofRehabilitation,OrthopticsandVisualScienceCourse,SchoolofAlliedHealthScience,KitasatoUniversityC小児を対象としたポケモンステレオテスト(Pokemonstereotest:PST)の使用経験について,以下のC3項目について検討した.検討1:他覚的所見からは立体視機能が良好であると予想されるが,Titmusstereotest(TST)およびCTNOstereotest(TNO)を用いて立体視機能検査を施行するも,立体視を確認することができない患児C14例(3.8C±1.0歳)に対し,PSTおよびCRandotpreschoolstereoacuitytestを用いて立体視機能検査を施行した.検討2:恒常性斜視を有する患児C7例(4.8C±1.3歳)に対し,PSTを用いて立体視機能検査を施行した.検討3:不同視弱視患児C20例(4.7C±1.7歳)に対し,PST,TST,およびCTNOを施行した.結果は以下の通りである.検討C1:PSTではC9例(64%),CRandotpreschoolstereoacuitytestではC5例(36%)で立体視が確認された.検討2:すべての患児に共通し立体視は確認されなかった.検討C3:TSTおよびCTNOはCPSTと有意な正の相関関係を示した.PSTは小児に対する立体視機能検査装置として有用であった.CWeinvestigatedthefollowingthreetestitemsrelatedtotheexperienceofusingthePST.InTest1,weper-formedCaCstereoscopicCtestCusingCPSTCandCtheCRandotCpreschoolCstereoacuityCtestConC14CpediatricCpatientsCwhoseCotherCsensoryC.ndingsCpredictedCthatCtheyCwouldChaveCgoodCstereoscopicCfunction,CbutCstereoscopicCtestingCusingCTSTandTNOcouldnotcon.rmstereoscopicvision.InTest2,weperformedstereoscopictestingusingPSTon7pediatricpatientswithconstantstrabismus.InTest3,weperformedPST,TSTandTNOon20pediatricpatientswithanisometropicamblyopia.Astoresults,inTest1PSTcon.rmedstereoscopicvisionin9casesandtheRandotpreschoolCstereoacuityCtestCcon.rmedCstereoscopicCvisionCinC5Ccases.CInCTestC2,CstereoscopicCvisionCwasCnotCcon.rmedinanyofthesubjects.Test3revealedsigni.cantpositivecorrelationbetweenTST/TNOandPST.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(3):411.414,C2019〕Keywords:立体視機能検査,ポケモンステレオテスト,小児視機能検査.stereoacuitytest,Pokemonstereotest,pediatricvisualfunctiontest.Cはじめに現在の眼科臨床において,立体視機能検査は頻繁に施行される検査の一つである.立体視は両眼視機能の最終到達点であることから,良好な立体視を獲得していることが判定できれば,良好な視力,および眼位を正位に保つことができていることを判定することができる.おもに用いられる立体視機能検査装置にはCTitmusCstereotest(TST.CStereoCOptical社),TNOstereotest(TNO.CLAMERISOOTECH社),CFrisbysteteotest(Haag-StreitUK社)などがある.とくに小児に対してはCLangCstereotest(LangCstereotest社)やCRandotCpreschoolCstereoacuitytest(StereoOptical社)など,視標に図を用いた立体視機能検査装置が用いられる.しかしながら,それらの立体視機能検査装置の視標は,たとえば象・家・車などの図であり,これは小児にとっては無機質に感じる場合もあり,これが原因となってか小児が興味を示さないこともしばしば経験される.また,これらC2種の検査装置はCrandomCdotstereogramを用いているが,それは小児にとって認識困難であることが報告されている1).一方近〔別刷請求先〕草柳由季:〒211-0004神奈川県川崎市中原区新丸子東C3-1302ららテラス武蔵小杉さこう眼科Reprintrequests:YukiKusayanagi,SakohEyeClinic,1302-3Shinmarukohigashi,Nakahara-ku,Kawasaki-city,Kanagawa211-0004,JAPANC図1ポケモンステレオテストの外観一つのパネルにC4つの視標があり,そのうち一つが実立体となっている.年,小児にとって馴染みのあるポケットモンスターのキャラクターを視標に用いた立体視機能検査装置,ポケモンステレオテスト(以下,PST,リィツメディカル社)が開発された.そこで今回筆者らは,PSTの使用経験について報告する.CI対象および方法ポケモンステレオテスト(Pokemonstereotest:PST)の外観を図1に示す.ポケットモンスターのキャラクターが視標として,それぞれ実立体として用いられている.検査距離40Ccmにおける呈示可能視差はC400秒,200秒,100秒,50秒である.4個の視標のうち,どれが立体視標であるかを解答させ,立体視機能を評価する.PSTは回転させることにより立体視標の位置をずらし,3回中C3回正答した場合に立体視機能として評価した.検討1:検査装置の興味に対する検討対象はカバーテストによる斜視,オートレフラクトメータ(TONOREFII)による不同視(等価球面による左右眼の屈折差C2.00Cdiopter以上),またC2.00Cdiopter以上の遠視および乱視,および眼科的疾患を有さず,他覚的所見からは良好な立体視機能があると予想されるにもかかわらず,TSTおよびCTNOで立体視が検出されなかった小児C14例(3.8C±1.0歳)である.これらの小児に対し,Randotpreschoolsreteo-acuitytestおよびCPSTを用いて立体視機能検査を施行した.両者はランダムな順に施行した.検討2:偽陽性に対する検討対象は恒常性斜視を有する小児C7例(4.8C±1.3歳)である.これらの小児に対し,PSTを施行し,偽陽性の有無を確認した.検討C3:弱視患児に対する他の立体視機能検査との比較検討対象は不同視弱視と診断された患児C20名(4.7C±1.7歳)である.平均視力はClogMAR値でC0.17C±0.09,不同視量はC2.89C±0.83Dであった.これらの患児に対しCTST(Circle)およびCTNO(PlateV.VII)およびCPSTを施行した.統計解析にはCSpeamanの順位相関係数を用い,有意水準C5%未満を有意差ありと評価した.TSTおよびCTNOにおいて最低数値(800,480秒)の立体視を有さない対象は除外した.被験者に対して本研究内容についての十分なインフォームド・コンセントの後,同意を得られたことを確認した.本検討は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を受けている.CII結果検討1:検査装置への興味に対する検討TST,およびCTNOで立体視を確認できず,RandotCpre-schoolCstereoacuitytestおよびCPSTを施行可能であった人数はそれぞれC5/14例(36%),9/14例(64%)であった(図2).また,RandotCpreschoolCstereoacuitytestおよびCPSTの中央値はそれぞれ,立体視確認不可,およびC100秒であった.検討2:偽陽性に対する検討すべての児童に共通し,立体視は確認されず,偽陽性を認めなかった.検討C3:弱視患児に対する他の立体視機能検査との比較検討TSTおよびCTNOとの相関関係を図3,4に示す.TSTおよびCTNOはCPSTと有意な正の相関関係を示した(p<0.05,Cr2=0.68)(p<0.05,Cr2=0.44).また,PSTにおいて立体視を確認できなかったC2例を除いたすべての被検者において,PSTはCTSTおよびCTNOと比較して良好な立体視を示した.CIII考按本検討において,PSTはCRandotCpreschoolCstereoacuitytestと比較して,立体視を確認しやすい傾向にあった.小児の検査に対する興味は,検査結果に大きく影響することは過去にも報告されており2),PSTは視標に“図”ではなく,“キャラクター”を用いた検査であるため,小児にとってより興味を引くことができたと考えられる.さらに,RandotCpreschoolCstereoacuitytestは視標にCrandomCdotCstereo-gramを用いているが,それは小児にとって認識困難であることが報告されており1),立体視を確認できない一因であると考えられる.PSTはCFrisbystereotestを踏襲した実立体が視標としてRandotpreschoolstereoacuitytestPST図2TSTおよびTNOで立体視を確認できず,RandotpreschoolstereoacuitytestおよびPSTを施行可能であった人数およびその割合2502505000100200300400500TST(秒)図3PSTとTSTの相関関係有意な正の相関関係を認めた.200PST(秒)150100図5PSTの偽陽性傾きにより単眼視差が生じる.用いられており,両眼分離に眼鏡の装用を必要としない利点がある.しかしながら,実立体は視標の傾きにより単眼視差が生じる(図5).そのため,PSTを用いる際は被検者の正面に視標を呈示する必要があるため注意が必要である(図6).PSTはCTSTおよびCTNOと正の相関関係のある結果を認め,またより高い閾値の立体視を認めた.両眼分離方法にTSTは偏光眼鏡を,TNOは赤緑眼鏡およびCrandomdotste-reogramを用いているが,PSTは実立体でもっとも日常視に近い条件下であるため,高い閾値を示したと考えられる.また,視標の視角はCTSTのCircleが0.7°であるのに対し,PSTはC3.5°とC5倍大きい.立体視標の視角が大きいほど,立体視を知覚しやすいことは過去にも報告されており3),これも高い閾値を得られた一因であると考えられる.PST(秒)2005000100200300400500600TNO(秒)図4PSTとTNOの相関関係有意な正の相関関係を認めた.150100図6被検者の正面への呈示による偽陽性の防止PSTは小児の興味を引くことができ,また両眼分離に眼鏡の装用も必要ないため,小児に対する健康診断などのスクリーニング検査にも適していると考えられる.しかしながら,1個の呈示視差に対し,1個の立体視標のみであるため,被検者が立体視標の場所を覚えてしまう可能性や,偽陽性に対しては十分に注意して活用する必要がある.anautomatedcomputerizedvisualacuityandstereoacuity文献testCinCchildrenCusingCanCinteractiveCvideoCgame.CAmJ1)Kriegbaum-StehbergerCB,CJiangCX,CMojonDS:Perfor-OphthalmolC156:195-201,C2013Cmanceofanew,3D-monitorbasedrandom-dotstereotest3)IwataCY,CFujimuraCF,CHandaCTCetal:E.ectsCofCtargetCforchildrenunder4yearsofage.GraefesArchClinExpsizeCandCtestCdistanceConCstereoacuity.CJCOphthalmolCOphthalmolC246:1-7,C2007C7950690,C20162)MaCDJ,CYangCHK,CHwangJM:ReliabilityCandCvalidityCofC***