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ラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/ カルテオロール配合点眼薬への変更3 年間の調査

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):946.949,2023cラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更3年間の調査坂田苑子*1井上賢治*1塩川美菜子*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CThree-YearSafetyandE.cacyofSwitchingtoLatanoprost/CarteololFixedCombinationfromConcomitantuseSonokoSakata1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(LCFC)のC3年間の効果と安全性を後向きに検討した.対象および方法:ラタノプロストとカルテオロール中止後CLCFCに変更した原発開放隅角緑内障,高眼圧症C43例を対象とした.変更前と変更後C6カ月ごとの眼圧とC12カ月ごとの視野をC3年間評価した.中止例を調査した.結果:眼圧は変更12カ月後C14.7±1.9CmmHg,24カ月後C14.5±2.3CmmHg,36カ月後C13.8±2.7CmmHgで,変更前C15.0±2.6CmmHgと同等だった.Humphrey30-2視野CMD値は変更C36カ月後(.7.22±4.37CdB)のみ変更前(.6.95±4.58CdB)に比べて進行した.中止例はC14例(32.6%)で,副作用C5例(結膜炎C2例,結膜充血,異物感,眼瞼炎各C1例)などだった.結論:併用からCLCFCへの変更後C3年間で眼圧に有意な差は認めず,安全性はおおむね良好だった.CPurpose:ToCretrospectivelyCinvestigateCtheCsafetyCandCe.cacyCofClatanoprost/carteololC.xedCcombination(LCFC)administeredovera3-yearperiod.PatientsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved43patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertensionwhoswitchedtoLCFCfromtheconcomitanttherapyoflatanoprostCandCcarteolol.CIntraocularpressure(IOP)andCvisual.eld(VF)wereCevaluatedCatCbaselineCandCforC3CyearsCpostswitch(i.e.,CIOPCatCbaselineCandCeveryC6months;VFCatCbaselineCandCeveryC12months).CDropoutCpatientsCwereCinvestigated.CResults:AtCbaselineCandCatC12,C24,CandC36CmonthsCpostCswitch,CIOPCwasC15.0±2.6CmmHg,C14.7±1.9CmmHg,C14.5±2.3CmmHg,CandC13.8±2.7CmmHg,Crespectively,CthusCillustratingCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCIOPCpostCswitchCfromCthatCatCbaseline.CTheCVFCmeanCdeviationvalue(Humphrey30-2)progressedConlyCafter36-months(.7.22±4.37CdB)comparedCwithCthatCatbaseline(.6.95±4.58CdB).COfCtheC43Cpatients,C14(32.6%)droppedout,andadversereactionsoccurredin5ofthedropoutpatients(conjunctivitisin2patients,andconjunctivalChyperemia,CforeignCbodyCsensation,CandCblepharitisCinC1Cpatienteach).CConclusions:ThereCwasCnoCsigni.cantCchangeCinCIOPCatC3CyearsCafterCswitchingCfromCconcomitantCtherapyCtoCLCFC,CandCtheCsafetyCofCusingCLCFCwasfoundtobesatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(7):946.949,C2023〕Keywords:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,眼圧,副作用,視野障害,長期.latanoprost/carteolol.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,visual.elddefects,long-term.Cはじめに緑内障診療ガイドライン第C5版では,緑内障点眼薬治療において目標眼圧に達していない場合は点眼薬の変更あるいは追加することが推奨されている1).点眼薬の追加を繰り返すと,多剤を併用することになる.多剤併用患者では,点眼薬数が増加するに従ってアドヒアランスが低下することが報告されている2)ので,アドヒアランスを考慮する必要がある.アドヒアランス向上をめざして配合点眼薬が開発された.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を含有するラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が,2017年C1〔別刷請求先〕坂田苑子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SonokoSakata,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-SurugadaiChiyoda-kuTokyo101-0062,JAPANC946(98)月より使用可能となった.そこで筆者らは,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用している患者で,両点眼薬を中止してラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した際のC3カ月間3),1年間4)の眼圧下降効果と安全性について報告した.これらの報告でラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の良好な眼圧下降効果,高い安全性,患者のアドヒアランスの向上が示された.しかし,緑内障点眼薬治療は長期にわたるため,長期的な効果と安全性の検討が必要である.そこで,今回これらの報告3,4)と同じ患者を対象としてラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬のC3年間の眼圧下降効果,視野への影響,安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2017年C1.9月に井上眼科病院に通院中の外来患者で,ラタノプロスト点眼薬(キサラタン,ファイザー)(夜C1回点眼)と持続性カルテオロール点眼薬(ミケランCLA,大塚製薬)(朝C1回点眼)をC1カ月間以上併用治療している原発開放隅角緑内障と高眼圧症患者を対象とした.炭酸脱水酵素阻害薬,a1遮断薬,Ca2作動薬,ROCK阻害薬の併用も可能とするが,点眼薬変更前からC1カ月間以上同一薬剤で治療中の場合に限定した.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止し,washout期間なしでラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(ミケルナ,大塚製薬)(朝C1回点眼)に変更した.使用中のほかの点眼薬は継続とした.眼圧の変化,視野への影響,有害事象を評価した.眼圧に関しては,変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後のGoldmann平眼圧計で測定した眼圧を調査し比較した.変更36カ月後の眼圧変化量を調査した.具体的には変更C36カ月後の眼圧が変更前と比べてC2CmmHg以上下降,2CmmHg未満の変化,2CmmHg以上上昇のC3群に分けた.視野への影響は,変更前と変更C12,24,36カ月後に施行したCHumphrey視野検査プログラム中心C30-2CSITAStandardのCmeandeviation(MD)値を調査し比較した.自動視野計データファイリングシステムCBeeFilesを使用し,変更前から変更C36カ月後までの視野のCMDスロープを算出し,進行の有無を内蔵ソフトで判定した.変更C36カ月後までの副作用,投与中止例を調査した.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧,変更前と変更C12,24,36カ月後のCMD値の比較にはCANOVA,BonferroniCandDunn検定を用いた.統計学的検討における有意水準は,BonferroniandDunn検定において補正を行ったため眼圧の比較はCp<0.0024,MD値の比較はp<0.0083とした.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.CII結果対象はC43例C43眼で,性別は男性C21例,女性C22例,年齢はC67.9C±11.1歳(平均値C±標準偏差),38.90歳だった.病型は原発開放隅角緑内障(狭義)25例,正常眼圧緑内障17例,高眼圧症C1例だった.使用点眼薬数はC2.5C±0.7剤,2.4剤だった(表1).MD値はC.6.95±4.58CdB,C.16.53.+0.75CdBだった.眼圧は変更C6カ月後C14.7C±2.2mmHg,12カ月後C14.7C±1.9mmHg,18カ月後C14.4C±2.5CmmHg,24カ月後C14.5C±2.3mmHg,30カ月後C13.8C±2.3CmmHg,36カ月後C13.8C±2.7mmHgで,変更前C15.0C±2.6CmmHgと統計学的に有意な差を認めなかった(図1).変更C36カ月後の眼圧変化量は,変更前と比べてC2CmmHg以上下降C11例(38.0%),2CmmHg未満C15例(51.7%),2mmHg以上上昇C3例(10.3%)だった(図2).MD値は変更C12カ月後C.7.12±4.05CdB,24カ月後C.7.20C±4.37CdB,36カ月後C.7.22±4.37dBで,変更前C.6.95±4.58CdBと比べてC36カ月後のみが有意に進行していた(p=0.0004)(表2).変更C36カ月後までのCMDスロープが得られた症例はC21例で,MDスロープが有意に悪化していたのはC4例(19.0%)だった.副作用はC5例(11.6%)で出現し,内訳は変更C5日後に異物感,変更C3カ月後に眼瞼炎,変更C6カ月後に結膜充血,変更C14カ月後に結膜炎,変更C32カ月後に結膜炎の各C1例だった.投与中止例はC14例(32.6%)で,内訳は副作用C5例,転医C3例(変更C12カ月後,変更C27カ月後,変更C32カ月後),眼圧上昇C2例(変更前C16CmmHgが変更C3カ月後C22CmmHg,変更前C18CmmHgが変更C19カ月後C21CmmHg),白内障手術施行C2例(変更C19カ月後,変更C22カ月後),来院中断C1例(変更C29カ月後),被験者都合C1例(変更C9日後)だった.副作用が出現した症例では,異物感と結膜充血の症例はラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止し,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ症状は消失した.眼瞼炎の症例は,ラタノプロスト点眼薬のみに変更したところ症状は消失した.結膜炎の症例は,2例ともラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止したところ症状は消失した.そのうちのC1例は眼圧が上昇したため,その後ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用した.変更C3カ月後に眼圧が上昇した症例では,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ眼圧はC14CmmHgに下降した.変更C19カ月後に眼圧が上昇した症例では,リパスジル点眼薬を追加したと表1対象の使用薬剤薬剤数使用薬剤症例数C2ラタノプロスト+カルテオロールC25Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミドC73ラタノプロスト+カルテオロール+ブリモニジンCラタノプロスト+カルテオロール+ドルゾラミドC32ラタノプロスト+カルテオロール+ブナゾシンC1Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブリモニジンC24ラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブナゾシンC3CmmHg20181614121086420n=39変更前変更6カ月後表2変更前後のMD値MD値(dB)変更前(n=31)C.6.95±4.58変更C12カ月後(n=22)C.7.12±4.05変更C24カ月後(n=23)C.7.20±4.37変更C36カ月後(n=21)C.7.22±4.37BonferroniandDunn検定,*p<0.0083ころ眼圧はC15CmmHgに下降した.CIII考按(文献C3より作成)CNSn=3814.4±2.5n=3313.8±2.3n=3613.8±2.7n=31n=29変更変更変更変更変更12カ月後18カ月後24カ月後30カ月後36カ月後図1変更前後の眼圧BonferroniandDunn検定.2mmHg以上上昇(3例,10.3%)*図2変更36カ月後の眼圧変化量今回ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,36カ月間にわたり眼圧は変更前と比べて統計学的有意差はなく,安定した値であった.良田らはプロスタグランジン関連点眼薬とCb遮断点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,眼圧は変更前(13.8C±1.3mmHg)と変更C3カ月後(13.7C±2.4CmmHg)で同等だったと報告した5).今回の調査では,変更前後の薬剤成分が同一であることが眼圧の維持に寄与したと考えられる.しかし,変更により眼圧が上昇し,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が中止となった症例もC2例存在したので,変更後の注意深い経過観察が必要である.今回の変更と同様の組み合わせによる長期的な効果と安全性の報告はない.筆者らはラタノプロスト点眼薬とチモロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬に変更した症例のC3年間の効果と安全性を報告した6).変更前後の眼圧は変更前と変更C6,12,18,24,30カ月後は同等で,変更C36カ月後は変更前に比べて有意に下降していた.変更C36カ月後の眼圧を変更前と比べるとC2CmmHg以上下降C13%,2CmmHg未満C77%,2CmmHg以上上昇C10%だった.今回も変更C36カ月後の眼圧を同様に比較するとC2mmHg以上下降C38.0%,2CmmHg未満C51.7%,2CmmHg以上上昇C10.3%だった.眼圧が上昇したり下降したりする症例もあり,変更後も眼圧の推移には注意を要する.今回の症例での変更前後のCMD値の比較では,変更前と変更C12,24カ月後は同等だったが,36カ月後には有意に進行していた.CollaborativeCNormalCTensionCGlaucomaStudy(CNTGS)においても,治療により眼圧下降C30%を達成していてもC3年間で約C20%の症例で視野障害が進行している7).そのため変更C36カ月後のCMD値の進行は今回の点眼薬の変更が原因ではないと考えられる.今回のC36カ月間の検討でもC19.0%の症例でCMDスロープが有意に悪化していた.長期的な経過観察におけるCMD値の進行はある程度は仕方がないと考える.しかし,今回の症例では,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後に視野障害進行により中止となった症例はなく,臨床的には視野への影響はおおむね良好である.投与中止例は今回はC32.6%だった.ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬への変更の報告6)での投与中止例はC38.3%で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬とラタノプロスト/チモロール配合点眼薬はほぼ同等の安全性を有すると考えられる.今回の症例での副作用は異物感,眼瞼炎,結膜充血,結膜炎で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の特定使用成績調査の中間解析結果8)に報告されている副作用と類似していた.また,今回の副作用はいずれも重篤ではなく,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の中止により症状が速やかに消失したので,安全性は良好であると考えられる.しかし,変更C12カ月後以降にも結膜炎がC2例出現しており,長期に使用してから副作用が出現する可能性もある.長期的に慎重に経過観察を行う必要がある.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬をラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後のC36カ月間の経過を後ろ向きに調査した.眼圧はC36カ月間にわたり安定し,安全性はおおむね良好だった.このような点眼薬の変更は副作用が出現しないかぎりアドヒアランスの面からも有効で,推奨できる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)InoueK,ShiokawaM,IwasaMetal:Short-terme.cacyandCsafetyCofCaClatanoprost/carteololC.xedCcombinationCswitchedCfromCconcomitantCtherapyCtoCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertention.CJGlaucomaC27:1175-1180,C20184)正井智子,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト+カルテオロールからラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与.あたらしい眼科C36:804-809,C20195)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科C36:1083-1086,C20196)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:E.cacyandsafetyofswitchingCtoClatanoprost0.005%-timololCmaleate0.5%C.xed-combinationCeyedropsCfromCanCun.xedCcombinationCfor36months.ClinOphthalmolC8:1275-1279,C20147)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmolC126:498-505,C19988)山本哲也,真鍋寛,冨島さやかほか:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ配合点眼液)の使用実態下における安全性と有効性特定使用成績調査の中間解析結果.臨眼C75:449-461,C2021***

ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与

2020年4月30日 木曜日

《第30回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科37(4):467.470,2020cラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与松村理世*1井上賢治*1塩川美菜子*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CLong-TermE.cacyandSafetyofSwitchingfromLatanoprostOphthalmicSolutiontoLatanoprost/CarteololFixedCombinationEyeDropsRiyoMatsumura1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(LCFC)の長期的効果と安全性を前向きに検討した.対象および方法:ラタノプロスト点眼薬(LAT)使用中の原発開放隅角緑内障(広義)25例C25眼を対象とした.LATを中止し,LCFCに変更した.変更前と変更1,3,6,12カ月後の眼圧,涙液層破壊時間(tear.lmbreak-uptime:BUT),点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK),充血,血圧,脈拍数を比較した.Humphrey視野のCmeandeviation(MD)値を変更前と変更6,12カ月後で比較した.副作用と中止例を調査した.結果:眼圧は変更C12カ月後C14.0±1.8CmmHgで,変更前C15.9C±2.9CmmHgに比べて有意に下降した(p<0.0001).BUT,SPK,MD値は変更前後で同等だった.血圧と脈拍数は変更後に有意に下降した.副作用はC2例(8.0%)出現し(圧迫感,霧視+流涙),投与中止となった.結論:LATからCLCFCへの変更により,12カ月間にわたり眼圧は下降し,視野を維持した.血圧と脈拍数の下降には注意が必要である.CPurpose:Toprospectivelyinvestigatethelong-terme.cacyandsafetyofswitchingfromlatanoprost(LAT)Ctolatanoprost/carteolol.xedcombination(LCFC)eyedrops.Methods:Thisstudyinvolved25eyesof25patientswithCprimaryCopen-angleCglaucomaCincludingCnormal-tensionCglaucomaCwhoCwereCusingCLATCeyeCdropsCandCwhoCwereCswitchedCfromCLATCtoCLCFC.CIntraocularpressure(IOP)C,CtearC.lmCbreak-uptime(BUT)C,CcornealCepithelialdefects[super.cialCpunctatekeratitis(SPK)]C,CconjunctivalChyperemia,CbloodCpressure,CandCpulseCrateCwereCcom-paredbetweenatbaselineandat1-,3-,6-,and12-monthspostswitch.Themeandeviation(MD)valuewascom-paredCpreCandCpostCswitch.CAdverseCreactionsCandCdropoutsCwereCexamined.CResults:IOPCwasCsigni.cantlyCdecreasedCatC12-monthsCpostswitch(14.0C±1.8CmmHg)inCcomparisonCwithCthatCatCbeforeswitching(15.9C±2.9mmHg)(p<0.0001)C.Nodi.erencesinBUT,SPK,andMDvaluewereobserved.However,bloodpressureandpulserateweresigni.cantlydecreased.Twopatients(8.0%)droppedoutduetoadversereactions.Conclusions:CAfterCswitchingCfromCLATCtoCLCFC,CIOPCwasCdecreasedCandCvisualC.eldCwasCmaintainedCforC12Cmonths.CStrictCattentionshouldbepaidtofallingbloodpressureandpulseratepostswitchingfromLATtoLCFC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C37(4):467.470,C2020〕Keywords:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,眼圧,副作用,視野障害,変更.latanoprost/carteolol.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,visual.elddefects,switching.Cはじめに用の少なさ,1日C1回点眼の利便性より第一選択薬である1).緑内障治療は通常点眼薬の単剤投与から始める1).プロス多施設での緑内障患者実態調査においても単剤使用患者タグランジン関連点眼薬は強力な眼圧下降作用,全身性副作(1,914例)ではプロスタグランジン関連点眼薬の使用がC73.9〔別刷請求先〕松村理世:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:RiyoMatsumura,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(91)C467表1患者背景緑内障病型原発開放隅角緑内障(狭義):7例C7眼正常眼圧緑内障:1C8例C18眼男性:女性12例:1C3例年齢C69.1±10.3歳(C47.C84歳)眼圧C15.9±2.9CmmHg(1C1.C23mmHg)Humphrey視野CMD値C.5.63±4.68CdB(C.13.05.2.18CdB)%でもっとも多かった2).プロスタグランジン関連点眼薬単剤で目標眼圧に到達しない症例では点眼薬を変更,あるいは他の点眼薬を追加する1).アドヒアランスの観点からはC1日1回点眼のプロスタグランジン/Cb遮断配合点眼薬への変更が最良である.プロスタグランジン/Cb遮断配合点眼薬は日本ではC2010年より使用可能となった.しかし,最近までプロスタグランジン/Cb遮断配合点眼薬に含まれるCb遮断薬はチモロールのみであった.チモロールはカルテオロールよりも角膜上皮障害の出現頻度が高い3)ため,チモロールではなくカルテオロールを含有する配合点眼薬の開発が望まれていた.2017年にCb遮断薬としてカルテオロールを含有するラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が使用可能となった.しかし,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の効果と副作用については十分に検討が行われていない4.6).そこで筆者らは,ラタノプロスト点眼薬を単剤使用中の原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,続発緑内障患者を対象に,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更した際の短期間(3カ月間)の眼圧下降効果と安全性を報告した4).今回対象を原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障患者に限定し,経過観察期間をC12カ月まで延長して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の眼圧下降効果,視野維持効果,安全性を前向きに検討した.I対象および方法2017年C2月.2018年C5月に井上眼科病院に通院中で,ラタノプロスト点眼薬を単剤使用中で眼圧下降が不十分な原発開放隅角緑内障(狭義),正常眼圧緑内障C25例C25眼を対象とし,前向きに研究を行った.患者背景を表1に示す.両眼該当例では眼圧の高い眼を,眼圧が同値の場合は右眼を,片眼症例では該当眼を解析対象とした.使用中のラタノプロスト点眼薬(1日C1回夜点眼,キサラタン,ファイザー)を中止し,washout期間なしでラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(1日C1回夜点眼,ミケルナ,大塚製薬)に変更した.変更前と変更C1,3,6,12カ月後に患者ごとにほぼ同時刻にCGoldmann圧平眼圧計で同一の検者が眼圧を測定した.ベースライン眼圧も含めて眼圧は2回測定し,2回の眼圧値の平均値を解析に用いた.結膜充血,点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK),涙液層破壊時間(tear.lmbreak-uptime:BUT)を計測,評価した.血圧,脈拍数はデジタル自動血圧計(UDEXsuperTYPE,エルクエスト)で測定した.SPKはCNEI分類7)を,結膜充血はアレルギー性結膜疾患ガイドライン第C2版8)を用いて評価した.変更前と変更C6,12カ月後にCHum-phrey視野検査プログラムC30-2SITA-Standardを施行しCmeandeviation(MD)値を比較した.来院時ごとに副作用と中止症例を調査した.眼圧,BUT,血圧,脈拍数,MD値の比較にはCtwo-wayANOVAおよびCBonferroni/Dunn検定を,SPKの比較にはCFriedman検定を用いた.有意水準はいずれもp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理委員会で承認を得た.臨床試験登録システムCUMIN-CTRに登録し,UMIN試験CIDとしてCUMIN000026230を取得した.研究の趣旨と内容を患者に説明し,患者の同意を文書で得たのちに検査などを行った.CII結果眼圧は変更前C15.9C±2.9CmmHg(平均C±標準偏差),変更C1カ月後C13.5C±2.3CmmHg,3カ月後C13.7C±1.9CmmHg,6カ月後C14.0C±1.8CmmHg,12カ月後C14.0C±1.8CmmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.0001)(図1).視野のCMD値は変更前(C.5.63±4.68dB)と変更C6カ月後(C.4.81±4.26CdB),変更C12カ月後(C.5.34±4.63CdB)で同等だった(p=0.19).変更前の結膜充血は軽度がC2例で,1例は変更C1カ月後には消失し,12カ月後に再び軽度出現した.1例は変更C12カ月後まで軽度が継続した.SPK(図2)とCBUT(図3)は変更前後で同等だった(p=0.32,Cp=0.18).血圧は,収縮期,拡張期ともに変更前に比べて変更後に有意に下降した(p<0.001)(表2).脈拍数は変更前C72.4C±9.1拍/分,変更C1カ月後C71.2C±11.1拍/分,3カ月後C69.7C±12.1拍/分,6カ月後C66.0C±11.2拍/分,12カ月後C67.0C±11.7拍/分だった.変更C6カ月後,12カ月後では変更前に比べて,変更C6カ月後では変更C1カ月後に比べて有意に減少した(p<0.001).副作用はC2例(8.0%)に出現し,変更C1カ月後に圧迫感が1例,変更C1カ月後に霧視・流涙がC1例で,それぞれ投与中止となった.圧迫感の症例ではラタノプロスト/チモロール配合点眼薬へ変更したところ速やかに症状が消失した.霧視・流涙の症例ではラタノプロスト点眼薬へ戻したところ速やかに症状が消失した.経過観察中の投与中止例は上述した2例(8.0%)のみだった.CIII考按ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロー468あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(92)N.S.20********3.00.6p=0.3151±2.31816142.5眼圧(mmHg)12n=2510n=23n=23n=23SPK(点)2.0n=258641.51.020変更前変更変更変更変更0.51カ月後3カ月後6カ月後12カ月後0.0変更変更変更図1ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬変更前後の眼1カ月後3カ月後6カ月後12カ月後圧(two-wayANOVAおよびCBonferroni/Dunn検定,**Cn=25n=25n=23n=23n=23p<0.0001)図2ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬変更前後のSPK(NEI分類)CN.S.p=0.17649.8表2ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬変更前後の血圧BUT(秒)14121086420収縮期(mmHg)p値拡張期(mmHg)p値変更前(n=25)C136.4±17.4C76.7±9.6変更C1カ月後(n=23)C120.4±16.7**C68.3±8.4*変更C3カ月後(n=23)C119.8±14.6**C68.4±9.9*変更C6カ月後(n=23)C121.9±16.2*C69.3±9.2*変更C12カ月後(n=23)C117.7±15.3**C66.4±7.7**<C0.0001<C0.001変更前変更変更変更変更1カ月後3カ月後6カ月後12カ月後n=25n=25n=23n=23n=23図3ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬変更前後のBUT(two-wayANOVA)(two-wayANOVAおよびBonferroni/Dunn検定,*p<0.001,**p<0.0001)ル配合点眼薬への変更は国内臨床第CIII相優越性検証試験で検討された5).眼圧下降幅は変更C4週間後C2.7C±0.2CmmHg,8週間後C2.9C±0.2CmmHgだった.また,プロスタグランジン関連点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したC32例の報告では,眼圧は変更前(14.6C±2.4CmmHg)に比べて変更C3カ月後(13.3C±2.1CmmHg)に有意に下降し,眼圧下降幅はC1.3CmmHgだった6).今回の症例での眼圧下降幅は変更C1カ月後C2.4C±1.4CmmHg,3カ月後C2.6±1.7CmmHg,6カ月後C2.3C±1.8CmmHg,12カ月後C2.3C±1.8CmmHgで,過去の報告5,6)とほぼ同等だった.国内臨床第III相優越性検証試験での副作用はC6.8%に出現し,内訳は睫毛乱生,霧視などだった5).今回の副作用出現率はC8.0%で,内訳は圧迫感と霧視・流涙が各C1例だった.これらのC2症例の副作用は重篤ではなく,点眼薬を変更したところ速やかに症状が消失した.点眼薬の副作用としてCSPKがあげられる.今回のラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更では基剤がC1剤からC2剤へ増加するためCSPKの悪化が予想された.一方,防腐剤としてラタノプロスト点眼薬では塩化ベンザルコニウム,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬ではエチレンジアミン四酢酸(ethylenedi-aminetetraaceticacid:EDTA)とホウ酸が含有されている.EDTAとホウ酸は塩化ベンザルコニウムと比較して細胞毒性が低いと報告9)されている.この両者の影響で,SPKやBUTが変更前後で変化なかったと考えられる.変更前の結膜充血は軽度がC2例で,1例は変更C1カ月後には消失し,12カ月後に再び軽度出現した.1例は変更C12カ月後まで軽度が継続した.これらの症例の結膜充血も重篤ではなく,自覚症状や訴えもなかった.ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の眼局所への安全性は良好と考えられる.今回,変更後に血圧は収縮期,拡張期ともに有意に下降した.脈拍数も変更C6,12カ月後には有意に減少した.Cb遮断薬であるカルテオロールが追加された影響が考えられる.しかし,ふらつきなどの自覚症状を訴える症例はなかった.Yamamoto(93)あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020C469らの報告ではラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更後に脈拍数は変更C4カ月後4.3拍/分,変更C8カ月後C6.1拍/分減少した5).同様に収縮期血圧は変更C4カ月後C3.0CmmHg,変更C8カ月後C4.2CmmHg,拡張期血圧は変更C4カ月後C1.4mmHg,変更C8カ月後C2.5CmmHg下降した.今回の症例の変更C12カ月後の下降幅は脈拍数C5.5拍/分,収縮期血圧C17.7CmmHg,拡張期血圧C10.3CmmHgで,Yamamotoらの報告5)と比べて脈拍数はほぼ同等,血圧は収縮期,拡張期ともに下降幅が大きかったが,その原因は不明である.ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更後には,とくに血圧下降に注意する必要がある.トラボプロスト点眼薬からトラボプロスト/チモロール配合点眼薬へ変更しC24カ月間経過観察した報告がある10).眼圧下降幅は変更C24カ月後まででC2.0.2.9CmmHgで,今回の2.3.2.6CmmHgとほぼ同等だった.また,Humphrey視野検査のCMD値は,トラボプロスト点眼薬からトラボプロスト/チモロール配合点眼薬への変更では,変更前と変更C6,12,18,24カ月後で有意な悪化はなく10),今回も変更前と変更C6,12カ月後で有意な悪化はなかった.しかし,視野障害は緩徐に進行するために今回の症例においても今後も長期的な経過観察が必要である.結論として開放隅角緑内障患者に対してラタノプロスト点眼薬をラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更することで,点眼回数を増やすことなくC12カ月間にわたり眼圧を下降させ,視野を維持することができた.安全性に関しては血圧や脈拍数の下降に注意する必要がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20182)永井瑞希,比嘉利沙子,塩川美菜子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2016年度版─薬物治療─.あたらしい眼科34:1035-1041,C20173)湖崎淳:抗緑内障点眼薬と角膜上皮障害.臨眼C64:729-732,C20104)中牟田爽史,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト点眼薬からラタノプロスト/カルテオロール塩酸塩配合点眼薬への変更.臨眼73:729-735,C20195)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteololC/ClatanoprostC.xesCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C20166)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科36:1083-1086,C20197)LempMA:ReportCofCtheCnationalCeyeCinstitute/industryCworkshopConCclinicalCtrialsinCdryCeyes.CCLAOCJC21:221-232,C19958)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌C114:833-870,C20109)UematsuCM,CKumagamiCT,CShimodaCKCetal:PolyoxyethC-yleneChydrogenatedCcastorCoilCmodulatesCbenzalkoniumCchloridetoxicity:ComparisonCofCacuteCcornealCbarrierCdysfunctionCinducedCbyCtravoprostCZCandCtravoprost.CJOculPharmacolTherC27:437-444,C201110)村木剛,井上賢治,石田恭子ほか:トラボプロストからトラボプロスト・チモロール配合剤へ変更した症例の長期効果.臨眼69:1493-1498,C2015***470あたらしい眼科Vol.37,No.4,2020(94)

ラタノプロスト+カルテオロールからラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与

2019年6月30日 日曜日

《第29回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科36(6):804.809,2019cラタノプロスト+カルテオロールからラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与正井智子*1井上賢治*1塩川美菜子*1岩佐真弓*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科CLong-termE.cacyandSafetyofaLatanoprost/CarteololFixedCombinationSwitchedfromConcomitantTherapySatokoMasai1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),MayumiIwasa1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(LCFC)の長期効果と安全性を前向きに検討した.対象および方法:ラタノプロストと持続性カルテオロールを併用中の原発開放隅角緑内障,高眼圧症C43例C43眼を対象とした.両点眼薬を中止しCLCFCに変更した.変更前と変更C12カ月後までの眼圧,視野のCmeandeviation(MD)値,涙液層破壊時間(BUT),角膜上皮障害,血圧,脈拍数を測定し,比較した.また,副作用と中止例を調査した.結果:眼圧は変更前C15.0±2.6CmmHg,変更C1カ月後C15.1±2.4CmmHg,3カ月後C15.0±2.4CmmHg,6カ月後C14.7±2.2CmmHg,12カ月後C14.7±1.9CmmHgで同等だった.角膜上皮障害とCBUTは有意に改善した.MD値,血圧,脈拍数は同等だった.副作用はC3例(7.0%)(異物感,眼瞼炎,結膜充血)で出現し,中止例はC5例(11.6%)だった.結論:ラタノプロストと持続性カルテオロール点眼薬をCLCFCへ変更したところ,12カ月間にわたり眼圧を維持でき,視野に変化を認めず,安全性も良好だった.CPurpose:Toprospectivelyinvestigatethelong-terme.cacyandsafetyoflatanoprost/carteololC.xedcombi-nation(LCFC).SubjectsandMethods:Subjectswere43patients(43eyes)withprimaryopen-angleglaucomaorocularChypertensionCwhoCwereCusingClatanoprostCandCcarteolol.CAllCwereCswitchedCtoCLCFC.CIntraocularCpressure(IOP),meandeviation(MD)value,CtearC.lmCbreak-uptime(BUT),super.cialCpunctateCkeratopathy(SPK),sys-temicbloodpressureandpulseratewerecomparedwithbaselineuntil12monthsafterswitching.Adversereac-tionsanddropoutswereinvestigated.Results:Therewasnosigni.cantdi.erencebetweenIOPatbaseline(15.0C±2.6CmmHg)andCatC1month(15.1±2.4CmmHg),3months(15.0±2.4CmmHg),6months(14.7±2.2CmmHg)andC12months(14.7±1.9mmHg)afterswitching.SPKandBUTweresigni.cantlyimproved.Therewasnodi.erenceinMD,bloodpressureorpulseratebetweenbeforeandafterswitching.Adversereactionsoccurredinthreepatients(7.0%)(foreignCbodyCsensation,Cblepharitis,CandconjunctivalChyperemia).Fivepatients(11.6%)discontinuedCtheCstudy.Conclusion:IOPandvisualC.eldweremaintainedsafelyfor12monthsbyswitchingfromconcomitantther-apytoLCFC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)36(6):804.809,C2019〕Keywords:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,眼圧,副作用,視野障害,長期.latanoprost/carteololC.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,visualC.elddefect,long-term.Cはじめに眼薬の治験ではラタノプロスト点眼薬からの変更,あるいは2017年C1月よりラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオ持続性カルテオロール点眼薬からの変更で眼圧が有意に下降ロールを含有するラタノプロスト/チモロール配合点眼薬がした1).また,持続性カルテオロール点眼薬からラタノプロ使用可能となった.ラタノプロスト/カルテオロール配合点スト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した症例と,持続性〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANC804(100)カルテオロール点眼薬にラタノプロスト点眼薬を追加して併用した症例の眼圧下降効果は同等だった.しかし,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更した際の眼圧下降効果と安全性についての報告はなく,詳細は不明であった.そこで筆者らはラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した患者を対象として,変更後C3カ月間の短期的な眼圧下降効果と安全性を報告した2).眼圧は変更前後で同等で,安全性も良好だった.しかしこのような変更による長期的な眼圧下降効果と安全性の報告は過去になく,不明だった.今回ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を使用中の原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症患者を対象に,両点眼薬を中止してラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更した際の長期的な眼圧下降効果,視野への影響,安全性を前向きに検討した.CI対象および方法2017年C1.9月に井上眼科病院に通院中の外来患者を対象とした.本研究はヘルシンキ宣言を含む関連法規を遵守しており,井上眼科病院の倫理委員会で承認を得た.臨床試験登録システムCUMIN-CTRに登録し,UMIN試験CIDとしてUMIN000026224を取得した.研究の趣旨と内容を患者に説明し,患者の同意を文書で得た後に検査などを行った.C1.対象原発開放隅角緑内障あるいは高眼圧症で,ラタノプロスト点眼薬(キサラタンCR,ファイザー)(夜C1回点眼)と持続性カルテオロール点眼薬(ミケランCRLA,大塚製薬)(朝C1回点眼)をC1カ月間以上併用治療しており,試験開始前の点眼状況がときどき忘れた程度の良好に点眼を行っているC20歳以上の原発開放隅角緑内障と高眼圧症患者を対象とした.炭酸脱水酵素阻害薬,Ca1遮断薬,Ca2作動薬,ROCK阻害薬の併用も可能とするが,試験開始前からC1カ月間以上同一薬剤で治療中の症例とした.エントリー除外基準は次のとおりである.①角膜の異常または角膜疾患を有する.②角膜屈折矯正手術の既往を有する.③活動性の外眼部疾患,眼あるいは眼瞼の炎症,感染症を有する.④緑内障手術(レーザー線維柱帯形成術,濾過手術,線維柱帯切開術など)の既往を有する.⑤試験開始前C3カ月以内に前眼部または内眼手術を施行.⑥試験期間中に併用禁止薬の使用または併用禁止療法を施行する予定がある.併用禁止薬は,緑内障治療点眼薬,経口および静注投与の眼圧下降薬,副腎皮質ステロイド(眼周辺部以外の皮膚局所投与は可)である.また併用禁止療法は,眼に対するレーザー治療,観血的手術である.試験期間中に使用する予定の薬剤および試験薬の種類に対し,薬物アレルギーの既往を有する.⑧Cb遮断薬が禁忌の患者(気管支喘息,コントロール不十分な心不全のある患者など).⑨妊婦,授乳中,妊娠をしている可能性がある女性.⑩研究責任者または研究分担者が不適格と判断した場合.C2.薬剤ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止し,washout期間なしでラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(朝C1回点眼)(ミケルナCR,大塚製薬)に変更した.他に使用中の点眼薬は継続した.C3.方法変更前と変更C1,3,6,12カ月後の眼圧,結膜充血,角膜上皮障害(NEI分類),涙液層破壊時間(tearbreakuptime:BUT),血圧,脈拍数を測定した.また,変更前,変更C6,12カ月後にCHumphrey視野プログラム中心C30-2SITAstandard検査を測定した.変更C1カ月後に使用感に関するアンケート調査(図1)を実施した.来院時ごとに副作用と投与中止例を調査した.C4.有効性の評価眼圧変化量,視野への影響,有害事象とした.主要評価である眼圧下降効果(眼圧変化量)は変更前と変更C1,3,6,12カ月後に眼圧をCGoldmann圧平眼圧計で症例ごとにほぼ同時刻に測定し,比較した.眼圧は続けてC2回測定し,その平均値を算出し,解析に用いた.視野への影響は,変更前と変更C6,12カ月後に施行したCHumphrey視野検査のCmeandeviation(MD)値を比較した.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.C5.安全性の評価血圧,脈拍数を自動血圧計(UDEXsuperTYPE,エルクエスト)で変更前と変更C1,3,6,12カ月後に測定し,変更前後で比較した.変更C12カ月後までの角膜上皮障害,結膜充血,BUTおよび副作用,投与中止例を調査した.角膜上皮障害の評価にはCNEI分類3)を用いた.具体的には角膜C5カ所(中央部,上部,下部,耳側部,鼻側部)の角膜上皮障害をC4段階スコア(0:障害なし,1:ドット数C1.5,2:ドット数C6.15,3:ドット数C16以上,もしくはC1Cmm以上の染色部位やフィラメント状の染色部位がC1カ所以上存在する)のC15点満点で評価した.結膜充血の評価はアレルギー性結膜疾患ガイドライン(第C2版)に基づき評価した4).数本の血管拡張を軽度,多数の血管拡張を中等度,全体の血管拡張を高度と評価し,標準写真を用いて評価した.C6.使用感の評価変更C1カ月後に使用感に関するアンケート調査を行った(図1).問C1①ミケルナCRに変更して,最近C1週間に点眼を忘れてしまったことはありましたか?□はい何回忘れましたか?□C1回ぐらい□C2回ぐらい□C3回ぐらい□C4回以上□いいえ②ミケルナRに変更して,前投薬(キサラタンCR,ミケランCRLA)に比べて点眼忘れは減りましたか?□減った□変わらない□増えた③その理由をお聞かせください.問2変更する前と比べて,目の症状に変化はありましたか?①充血は?□前より赤くならない□前と同じ□前より赤くなる②刺激は?□前よりしみない□前と同じ□前よりしみる③かゆみは?□前よりかゆくない□前と同じ□前よりかゆい④痛みは?□前より痛くない□前と同じ□前より痛い⑤かすみは?□前よりかすまない□前と同じ□前よりかすむ問C3①変更する前(ミケランCRLA)と比べて,ミケルナCRの点眼瓶の使いやすさ(開けやすさ,押す力など)に変化はありましたか?□前より使いやすい□どちらも同じ□前より使いにくい問C4①変更する前と後では,どちらの点眼瓶がよいですか?□変更した後のほうがよい□同じ□変更する前のほうがよい②その理由をお聞かせください(複数回答可)□充血しない□しみない□かゆくない□痛くない□かすまない□C1日の点眼回数が少ない□点眼瓶が使いやすい□薬代が安い□その他図1アンケート調査表1対象緑内障病型原発開放隅角緑内障(狭義)C25例正常眼圧緑内障C17例高眼圧症C1例男性:女性21例:2C2例平均年齢C67.9±11.1歳(C38.C90歳)眼圧C15.0±2.6CmmHg(9.2C1mmHg)MeanDeviation値C.6.95±4.58CdB(C.16.53.C0.75CdB)平均使用薬剤数C2.5±0.7剤(2.4剤)7.解.析.方.法変更前と変更C1,3,6,12カ月後の眼圧,血圧,脈拍数,BUT,角膜上皮障害スコアの比較にはCANOVA,Bonferro-niCandDunn検定を用いた.結膜充血スコアの比較にはCc2検定を用いた.統計学的検討における有意水準はCp<0.05とした.CII結果1.対象対象はC43例C43眼で,性別は男性C21例,女性C22例,年齢はC67.9C±11.1歳(平均値C±標準偏差),38.90歳だった(表眼圧(mmHg)N.S.201816141215.0±2.615.1±2.415.0±2.414.7±2.214.7±1.91086420変更前変更変更変更変更1カ月後3カ月後6カ月後12カ月後図2変更前後の眼圧1).病型は原発開放隅角緑内障(狭義)25例,正常眼圧緑内障C17例,高眼圧症C1例だった.使用点眼薬数はC2.5C±0.7剤,2.4剤だった.MD値はC.6.95±4.58CdB,C.16.53.+0.75CdBだった.投与中止となったのはC5例で,そのため眼圧の評価は,変更1カ月後は41例,3カ月後は40例,6カ月後は39例,12カ月後はC38例で行った.2mmHg以上2mmHg以上2mmHg以上2mmHg以上上昇,4例,下降,4例,上昇,9例,下降,4例,9.8%9.8%22.5%10.0%変更1カ月後変更3カ月後2mmHg以上2mmHg以上2mmHg以上2mmHg以上上昇,9例,下降,3例,上昇,8例,下降,3例,23.1%7.7%21.1%7.9%変更6カ月後変更12カ月後図3変更後の眼圧変化量表2変更前後の血圧と脈拍数血圧変更前変更C1カ月後変更C3カ月後変更C6カ月後変更C12カ月後p値収縮期血圧(mmHg)C128.8±24.8C124.9±20.0C124.9±20.8C126.2±18.8C125.8±23.9C0.83拡張期血圧(mmHg)C71.7±12.6C71.1±11.7C70.2±12.3C69.7±11.5C69.6±12.7C0.99脈拍数変更前変更C1カ月後変更C3カ月後変更C6カ月後変更C12カ月後p値C(拍/分)69.4±8.8C70.6±10.3C69.6±10.9C69.2±10.0C70.4±10.6C0.742.眼圧眼圧は変更C1カ月後C15.1C±2.4CmmHg,3カ月後C15.0C±2.4mmHg,6カ月後C14.7C±2.2CmmHg,12カ月後C14.7C±1.9CmmHgで,変更前C15.0C±2.6CmmHgと同等だった(p=0.13)(図2).変更後の眼圧がC2CmmHg以上上昇,2CmmHg以上下降,2mmHg未満の上昇・下降の症例に分けたところ,変更C1,3,6,12カ月後いずれでもC2CmmHg未満の上昇・下降症例がもっとも多かった(図3).しかしC2CmmHg以上上昇した症例が変更C1カ月後C9.8%,3カ月後C22.5%,6カ月後C23.1%,12カ月後C21.1%存在した.C3.視野MD値は変更C6カ月後C.6.37±4.46dB,12カ月後C.7.05C±4.13CdBで,変更前C.6.95±4.58CdBと同等だった(p=0.23).C4.使用感アンケート調査は,2例は変更C1カ月以前に投与中止とな(103)ったために施行せず,41例で解析した.結果は問C1C①(ミケルナRに変更して,最近C1週間に点眼を忘れてしまったことはありましたか?)に対しては,はいC2例(4.9%),いいえC39例(95.1%),はいと答えた人の忘れた回数はいずれも「1回ぐらい」だった.②(ミケルナCRに変更して,前投薬に比べて点眼忘れは減りましたか?)に対しては,減ったC19例(46.3%),変わらないC22例(53.7%),増えたC0例(0.0%)だった.③(その理由)については,減った理由は,夜点眼が忘れやすかった,朝C1回だけ,1日C1回など点眼回数の減少に関する理由がC15例(36.6%)で,未回答はC4例(9.7%)だった.変わらない理由は,元々忘れない,習慣化している6例(14.6%),その他C2例(4.9%)で,未回答はC14例(34.2%)だった.問C2(変更する前と比べて,目の症状に変化はありましたかC?)に対しては,①充血は?②刺激は?③かゆみは?④痛みは?⑤かすみは?ともに変更前後で変化ない(前と同じ)が多かった(表2).問C3(変更する前と比べて,ミケルナCRの点眼瓶の使いやすさ(開けやすさ,押す力など)に変化はありましたか?)に対しては,前より使いやすいC29例(70.7%),どちらも同じC11例(26.8%),前より使いにくいC1例(2.4%)だった.問C4C①(変更する前と後では,どちらの点眼薬がよいですか?)に対しては,変更した後のほうがよいC33例(80.5%),どちらも同じC5例(12.2%),変更する前のほうがよいC3例(7.3%)だった.②(その理由をお聞かせください〔複数回答可〕)に対しては,変更後がよい理由として点眼回数が少ないC31例,点眼瓶が使いやすいC14例,しみないC6例などで,変更前がよい理由は,かゆくないC1例だった.C5.安全性血圧は収縮期血圧,拡張期血圧ともに変更前と変更C1,3,6,12カ月後で同等だった(p=0.83,Cp=0.99)(表2).脈拍数は変更前と変更C1,3,6,12カ月後で同等だった(p=0.74).結膜充血は変更前にC2例で軽度出現していたが,各々変更C1カ月後,12カ月後に消失した.1例が変更前に結膜充血がなく,変更C6カ月後に結膜充血が軽度出現した.角膜上皮障害(NEI分類)平均スコアは,変更C1カ月後C0.6C±0.9,3カ月後C0.5C±0.7,6カ月後C0.7C±1.2,12カ月後C0.8C±1.5で,変更前C1.2C±1.4に比べて有意に改善した(p<0.05).BUTは変更C1カ月後C8.1C±3.0秒,3カ月後C8.6C±2.8秒,6カ月後C8.9±2.5秒,12カ月後C8.6C±2.6秒で,変更前C7.6C±2.4秒に比べて変更C3,6,12カ月後に有意に延長した(変更C3カ月後,12カ月後p<0.05,6カ月後p<0.0001).副作用はC3例(7.0%)で出現し,内訳は変更C5日後に異物感,変更C3カ月後に眼瞼炎,変更C6カ月後に結膜充血の各C1例だった.異物感の症例はラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止し,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ消失した.眼瞼炎の症例はラタノプロスト点眼薬のみに変更したところ消失した.投与中止例はC5例(11.6%)だった.内訳は副作用が上記のC3例,その他に変更C9日後に被験者都合がC1例,変更C3カ月後に眼圧上昇(変更前C16CmmHgが変更C3カ月後C22CmmHg)がC1例だった.眼圧が上昇した症例では,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ眼圧は14CmmHgに下降した.CIII考按緑内障診療ガイドライン5)では薬剤の選択の項目に「多剤併用時においては,配合点眼薬はアドヒアランス向上に有用である.」と記載されている.また,「アドヒアランス不良は緑内障が進行する重要な要因の一つ」とも記載されている.そこで今回,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が使用可能となったので,アドヒアランスを考慮して併用療法から配合点眼薬への変更試験を行った.筆者らはラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の処方パターンをラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が使用可能となった初期C4カ月間のデータより解析した6).ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬から変更された症例がC52.3%(33例/66例)で最多だった.そこで今回は,症例数を増やすためにラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が使用可能となった時期からC9カ月間の症例を前向きに検討した.今回の調査での平均眼圧は変更前後で変化はなかったが,個々の症例で検討すると眼圧がC2CmmHg以上上昇した症例がC9.8.23.1%,2CmmHg未満の上昇あるいは下降した症例がC67.5.80.4%,2CmmHg以上下降した症例がC7.7.10.0%みられた.さらに眼圧上昇によりラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が中止となった症例もC1例存在した.同様の結果はラタノプロスト点眼薬とゲル化チモロール点眼薬からラタノプロスト/チモロール配合点眼薬へ変更し,1年間の経過観察を行った報告7)でもみられた.眼圧下降効果に関しては今回の調査と同様だった.その報告7)ではCMD値は変更前と変更C12カ月後で変化なく,今回の調査と同様だった.しかし,視野障害は緩徐に進行するので今後もさらに長期的に検討する必要がある.今回の調査では変更後に角膜上皮障害がCNEI分類で有意に改善し,BUTは変更C1カ月後を除いて有意に延長した.原因としてベンザルコニウム塩化物(benzalkoniumCchlo-ride:BAC)の細胞毒性が考えられる.ラタノプロスト点眼薬には防腐剤としてCBACが高濃度に含まれている.一方,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬では防腐剤はBACではなくCEDTAが使用されている.EDTAはCBACより細胞毒性が低い8,9)と報告されており,そのことが角膜上皮障害の改善,BUTの延長に寄与していると考えられる.収縮期血圧,拡張期血圧,脈拍数ともに変更前後で変化はなかった.今回は変更前後で点眼薬の基材は同じであることが影響していると考えられる.結膜充血は変更前に軽度みられたC2例で変更後に消失し,変更前に出現がなかったC1例で変更後に軽度出現した.変更前に結膜充血が出現していた症例が少なかったので詳細な評価はできなかった.ラタノプロスト点眼薬とゲル化チモロール点眼薬からラタノプロスト/チモロール配合点眼薬へ変更し,1年間経過観察した報告7)では,19.1%(31例/162例)の症例が投与中止となった.中止例の内訳は,眼圧下降不十分C20例(12.3%)と副作用出現C11例(6.8%)だった.副作用の内訳は,眼痛3例,掻痒感C2例,刺激感C2例,羞明C1例,異物感C1例,頭痛・嘔気C1例,不快感C1例だった.今回の変更後C12カ月間の副作用はC7.0%に出現し,過去の報告7)と出現頻度は同等だった.また,副作用の内訳は今回は異物感,眼瞼炎,結膜充血であったが重篤な症例はなく,過去の報告7)とほぼ同様で安全性は高いと考えられる.眼圧上昇による中止例は過去の報告7)のC20例(12.3%)と比べて今回はC1例(2.3%)と少なかった.これは,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬に含有するチモロール点眼薬は本来C1日C2回点眼であるが,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬ではC1日C1回点眼となり,チモロールの効果が減弱する可能性が考えられる.一方,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に含有するカルテオロール点眼薬はC1日C1回点眼の持続性カルテオロール点眼薬が使用されており,点眼回数減少による眼圧下降効果減弱は少ないと思われる.今回のアンケート調査では,1日の点眼薬の点眼回数がC2回からC1回へ減少したことで,点眼忘れの減少(アドヒアランス向上)がみられた.充血,刺激,かゆみ,痛み,かすみの自覚症状は変更前後で同等だった.ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬とラタノプロスト点眼薬や持続性カルテオロール点眼薬の点眼瓶の開けやすさや押す力を聞いたところ,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬のほうが使いやすいと答えた症例がC70.7%で,点眼薬の好みも変更後のラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(80.5%)が多かった.変更後の点眼薬がよい理由として,点眼回数の少なさ,点眼瓶の使いやすさ,しみないがあげられた.点眼瓶の使いやすさやさし心地もアドヒアランスの向上に重要であると考えられる.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬をラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更し,12カ月間の経過観察を行ったところ,眼圧を維持することができ,視野に変化を認めず,アドヒアランスは向上し,安全性も良好だった.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3trialsCofCcarteololC/ClatanoprostC.xesCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C20162)InoueK,ShiokawaM,IwasaMetal:Short-terne.cacyandCsafetyCofCaClatanoprost/carteololC.xedCcombinationCswitchedCfromCconcomitantCtherapyCtoCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.CJGlaucomaC27:1175-1180,C20183)LampMA:ReportCofCtheCnationalCeyeCinstitute/industryCworkshoponclinicaltrialsindryeyes.CLAOJC21:221-232,C19954)アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第C2版).日眼会誌C114:833-870,C20105)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C20186)杉原瑶子,井上賢治,石田恭子ほか:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の処方パターンと眼圧下降効果,安全性.眼臨紀C11:657-662,C20187)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:AssessmentofocularhypotensiveCe.ectCandCsafetyC12monthsCafterCchangingCfromCanCun.xedCcombinationCtoCaClatanoprost0.005%+timololCmaleate0.5%C.xedCcombination.CClinCOphthalmolC6:607-612,C20128)BurgalassiCS,CChetoniCP,CMontiCDCetal:CytotoxicityCofCpotentialocularpermeationenhancersevaluatedonrabbitandhumancornealepithelialcelllines.ToxicolLettC122:C1-8,C20019)UematsuCM,CKumagamiCT,CShimodaCKCetal:PolyoxyethC-yleneChydrogenatedCcastorCoilCmodulatesCbenzalkoniumCchloridetoxicity:ComparisonCofCacuteCcornealCbarrierCdysfunctionCinducedCbyCtravoprostCZCandCtravoprost.CJOculPharmacolTherC27:437-444,C2011***