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リパスジル塩酸塩水和物・ブリモニジン酒石酸塩配合点眼液の使用経験

2025年3月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科42(3):378.382,2025cリパスジル塩酸塩水和物・ブリモニジン酒石酸塩配合点眼液の使用経験吉見翔太*1,2齋藤雄太*1,3三浦瑛子*1恩田秀寿*1*1昭和大学医学部眼科学講座*2野近眼科医院*3さいとう眼科医院CTheOutcomesofUsingRipasudil-BrimonidineFixed-CombinationEyeDropsfortheReductionofIntraocularPressureShotaYoshimi1,2),YutaSaito1,3),EikoMiura1)andHidetoshiOnda1)1)DepartmentofOphthalmology,ShowaUniversitySchoolofMedicine,2)NojikaEyeClinic,3)SaitoEyeClinicC目的:リパスジル塩酸塩水和物・ブリモニジン酒石酸塩配合点眼液(RBFC)の眼圧下降効果に関して後ろ向きに検討した.対象と方法:2022年C12月.2023年C6月にC3施設においてCRBFCを処方されたC71例の患者のうち,白内障以外の眼科手術歴あり,眼術直後の高眼圧あり,RBFC処方後C3カ月以内の再診歴がない患者を除外し,両眼症例は右眼の眼圧値を採用した.処方前後の点眼スコア増減数を.1.+2成分とパターン化し,各パターンにおける点眼処方前と処方後C3カ月の眼圧下降効果を検討した.結果:対象はC33眼で,7眼で+2成分,14眼で+1成分,9眼で±0成分,3眼で.1成分であった.点眼スコア増減数の処方前後眼圧は+2成分でC18.4±4.4CmmHgC→C14.7±1.8CmmHg(p=0.022),+1成分でC17.9±6.6CmmHgC→C14.6±2.5CmmHg(p=0.042)と点眼スコア増加で有意に眼圧下降を認めた.結論:RBFCへの変更によって点眼スコアが増加した症例では有意な眼圧下降を認めた.CPurpose:Toretrospectivelyexaminetheintraocularpressure(IOP)-loweringe.ectsofripasudil-brimonidine.xed-combination(RBFC)eyeCdrops.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC71CpatientsCprescribedCRBFCCeyeCdropsCatConeChospitalCandCtwoCeyeCclinicsCfromCDecemberC2022CtoCJuneC2023.CPatientsCwithCaChistoryCofCeyeCsurgeryotherthancataractsurgery,highIOPimmediatelyaftersurgery,andnohistoryofre-examinationwithin3monthsafterprescriptionwereexcluded.Inbilateralcases,theright-eyedatawasused.Wepatternedthenum-berCofCincreasesCandCdecreasesCinCmedicationCscoresCbeforeCandCafterCprescriptionCintoCcomponentsCrangingCfromC.1to+2,CandCcomparedCIOPCatCpre-instillationCofCRBFCCeyeCdropsCwithCIOPCatCpost-instillationCofCRBFCCeyeCdrops.Results:Thisstudyincluded33eyes.Thechangesinmedicationscorewasasfollows:+2componentsin7eyes,+1componentin14eyes,±0componentsin9eyes,and.1componentin3eyes.ComparisonofthemeanIOPofpre-andpost-instillationofRBFCeyedropsforeachchangeinmedicationscore,signi.cantIOPreductionwasCobservedCwithCanCincreasedCmedicationCscoreCasfollows:18.4±4.4CmmHgCtoC14.7±1.8CmmHg(p=0.022)for+2Ccomponents,C17.9±6.6CmmHgCtoC14.6±2.5CmmHg(p=0.042)for+1Ccomponent,C16.2±4.3CmmHgCtoC15.0±3.2CmmHg(p=0.230)forC±0Ccomponents,CandC15.0±5.2CmmHgCtoC15.0±4.6CmmHg(p=1.000)forC.1Ccomponent.CConclusion:ThisCstudyCsuggestedCthatCRBFCCeyeCdropsCsigni.cantlyCdecreasedCIOPCatCincreasedCmedicationCscores.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(3):378.382,C2025〕Keywords:緑内障,高眼圧症,眼圧,点眼スコア,リパスジル塩酸塩水和物・ブリモニジン酒石酸塩配合点眼液.Cglaucoma,ocularhypertension,intraocularpressure,medicationscore,ripasudil-brimonidine.xedcombinationCはじめに圧を下降させることが,現在唯一のエビデンスの高い治療法緑内障は世界中で失明のおもな原因の一つとなっている.となっている.眼圧を下降させるためのおもな治療法としてそして緑内障による視野障害の進行を抑制するためには,眼点眼薬の使用が行われているが,目標眼圧に到達するために〔別刷請求先〕吉見翔太:〒142-8666東京都品川区旗の台C1-5-8昭和大学医学部眼科学講座Reprintrequests:ShotaYoshimi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,ShowaUniversitySchoolofMedicine,1-5-8Hatanodai,Shinagawa-ku,Tokyo142-8666,JAPANC378(114)表1点眼スコアのパターンパターン変更前変更後成分増減意義C①現状点眼なし1眼EP21眼FP1眼FP/b4眼RBFC追加+2強力に治療強化目的C②リパスジルFP+リパスジル1眼FP/b+リパスジル2眼b/CAI+リパスジル1眼FP+CAI+リパスジル1眼CRBFC+1治療強化目的C③ブリモニジンEPC2+ブリモニジン1眼FP+ブリモニジン1眼FP/b+ブリモニジン3眼FP+b/CAI+ブリモニジン1眼CRBFC+1治療強化目的C④CCAIFP/b+CAI2眼*CAI+b/CAI1眼CRBFC+1治療強化目的C⑤CBBFCFP/b+BBFC6眼CRBFCC±0薬理作用の異なる成分へ変更し,さらなる眼圧下降に期待C⑥ブリモニジン+リパスジルFP/b+BBFC+リパスジル2眼EPC2+CAI+ブリモニジン+リパスジル1眼CRBFCC±0点眼をまとめてアドヒアランス向上を目的C⑦CBBFC+リパスジルFP/b+BBFC+リパスジル2眼FP/b+BBFC+リパスジル+a1遮断薬1眼CRBFCC.1点眼本数を減らしてでもアドヒアランス向上を目的FP:プロスタノイドCFP受容体作動薬,EP2:プロスタノイドCEP2受容体選択性作動薬,Cb:b遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,Ca1:Ca1受容体遮断薬,BBFC:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液*CAIが重複していたため,1つのCCAIを変更複数の眼圧下降薬を必要とする患者も多い.しかし,点眼薬の本数が増えると患者の点眼アドヒアランスが低下することが報告されている1).そこで近年では緑内障配合点眼薬が続々と登場してきた.配合点眼薬を使用することで,より少ない点眼本数で眼圧を下降させるとともに,点眼アドヒアランスの向上も期待できる2).その中で,リパスジル塩酸塩水和物(以下,リパスジル)とブリモニジン酒石酸塩(以下,ブリモニジン)の配合点眼液であるリパスジル・ブリモニジン配合点眼液(グラアルファ,以下,RBFC)がC2022年C9月に国内承認となった.リパスジルはCROCK阻害薬であり,房水流出抵抗の主座である主流出路の線維柱帯.Schlemm管からの房水流出を促進することにより眼圧を下降させる3).一方,ブリモニジンはアドレナリンCa2受容体作動薬であり,房水産生抑制およびぶどう膜強膜流出路を介した房水流出促進により眼圧を下降させる4).RBFCはC1剤で主流出路からの房水流出促進,副流出路からの房水流出促進および房水産生抑制のC3種の眼圧下降機序を有する世界初の新規配合点眼液である.今回筆者らは,RBFCの眼圧下降効果に関して診療録をもとに後ろ向きに検討したので報告する.CI対象と方法2022年C12月.2023年C6月に昭和大学病院附属東病院,野近眼科医院,さいとう眼科医院のC3施設においてCRBFCを処方されたC71人の患者のうち,白内障手術以外の眼手術歴,直後の高眼圧,処方後C3カ月以内の再診歴がない患者を除外し,両眼へCRBFCを使用している患者では右眼の眼圧値を採用した.また,RBFCの処方時に,他の緑内障点眼薬も追加または点眼薬の組み合わせを変更している症例があり,これらの患者はCRBFC以外の点眼成分も眼圧へ影響している可能性があるため除外した.眼圧はCGoldmann圧平眼圧計または非接触型圧平眼圧計で測定した.処方前後の点眼スコア増減数を.1.+2成分と以下および表1に示すようにパターン化した.表2患者背景(N=33)年齢C66.8±10.5(42.92)歳男/女13/20人病型POAG26眼CPE4眼COH2眼Csteroid1眼有水晶体眼/眼内レンズ挿入眼21眼/12眼眼圧C17.3±5.4(10.37)mmHg点眼スコア(成分)C3.2±1.2(0.6)POAG:原発開放隅角緑内障,PE:落屑緑内障,OH:高眼圧症,steroid:ステロイド緑内障平均±標準偏差(範囲)表3点眼スコア増減数および副作用点眼スコア増減処方前眼圧処方後最終眼圧副作用(パターン)症例数(眼)(mmHg)(mmHg)p値〔眼(パターン)〕+2(①)C7C18.4±4.4(14.26)C14.7±1.8(12.17)C*0.0219結膜充血1眼結膜充血1眼(④)+1(②③④)C14C17.9±6.6(11.37)C14.6±2.5(11.19)C0.0422*結膜炎1眼(④)眼刺激1眼(④)口渇1眼(②)C±0(⑤⑥)C9C16.2±4.3(10.25)C15.0±3.2(11.21)C0.2295なしC.1(⑦)C3C15.0±5.2(12.21)C15.0±4.6(10.19)C1.0000結膜充血1眼・パターン①(2成分増):現状よりさらに強力に眼圧を下降させる目的でリパスジルとブリモニジンのC2成分を同時に追加した症例.・パターン②③④(1成分増):さらなる眼圧下降を目的として,すでにリパスジルまたはブリモニジンを単剤で使用している症例をCRBFCへ変更,もしくは炭酸脱水酵素阻害薬の単剤使用をCRBFCへ変更した症例.・パターン⑤(成分の増減なし):ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液(以下,BBFC)の使用症例で点眼本数は増やさずに,薬理作用の異なる成分へ変更(炭酸脱水酵素阻害薬→リパスジル)することで,さらなる眼圧下降に期待した症例.・パターン⑥(成分の増減なし):ブリモニジンとリパスジルのC2成分を使用している症例に対して,点眼本数を減らしてアドヒアランスを向上させることを目的とした症例.・パターン⑦(1成分減):あえてC1成分(炭酸脱水酵素阻害薬)を減らしてでも点眼本数を減らすことで,点眼回数の負担を減らしてアドヒアランスの向上を期待した症例.各パターンにおける処方前と処方後最終診察時の眼圧を統計解析ソフトCJMPCProCver.17.0.0を使用して対応のあるCt平均±標準偏差(範囲)*:p<0.05検定を行い,p<0.05を有意とした.本研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守し,昭和大学における人を対象とする研究等に関する倫理委員会の承認を得て,診療録をもとに後ろ向きに調査を行った.CII結果患者背景を表2に示す.対象となったC33眼は平均年齢C66.8±10.5歳(平均C±標準偏差,以下同様).病型は原発開放隅角緑内障C26眼,落屑緑内障C4眼,高眼圧症C2眼,ステロイド緑内障C1眼であり,有水晶体眼C21眼,眼内レンズ挿入眼C12眼であった.処方前眼圧はC17.3C±5.4CmmHg.処方前点眼スコアはC3.2C±1.2成分であり,点眼スコア数増減数は表3に示すように,+2成分はC7眼,+1成分はC14眼,C±0成分はC9眼,C.1成分はC3眼であった.点眼スコア増減数の処方前後眼圧を図1に示す.+2成分はC18.4C±4.4CmmHgC→C14.7C±1.8CmmHg(p=0.022),+1成分はC17.9C±6.6CmmHgC→C14.6C±2.5CmmHg(p=0.042),±0成分はC16.2C±4.3CmmHgC→C15.0C±3.2CmmHg(p=0.230),.1成分はC15.0C±5.2CmmHgC→C15.0C±4.6CmmHg(p=1.000)であった.点眼スコア増加で有意に眼圧(mmHg)3020100点眼スコア増減図1処方前後の眼圧点眼スコアの増加で有意に眼圧下降を認めた.眼圧下降を認めた.また,副作用はC6眼(18.2%)に認められ(重複なし),結膜充血C3眼(9.1%),結膜炎C1眼(3.0%),眼刺激C1眼(3.0%),口渇C1眼(3.0%)であった(表3).CIII考按現在,国内には作用機序の異なる多くの緑内障点眼薬が存在する.緑内障診療ガイドライン第C5版5)ではまず単剤から点眼を開始し,効果不十分であるときには多剤併用療法(配合点眼薬を含む)を行うとされている.本研究では目標眼圧に達していない症例や視野障害の進行速度が早い症例,点眼アドヒアランスが良好でない症例などを対象にCRBFCへの切り替え,または追加を行った.その結果,表1に示すような点眼成分の増減のパターンがみられた.緑内障診療ガイドラインのフューチャーリサーチクエスチョン(FQ)1には,FP受容体作動薬以外の眼圧下降薬の追加薬としての眼圧下降幅はC1.2CmmHgと少量であるとの記載がある5).ただし当時,上市直後で文献の少ないCROCK阻害薬は,このCFQ1でのシステマティックレビューは行えていなかった.リパスジルは線維柱帯に作用することで主流出路からの房水流出促進をするといった他の眼圧下降薬とは異なるユニークな眼圧下降機序があり,すでにC3.0C±0.9成分使用している症例に対して,リパスジル点眼の追加でC2.8C±3.3CmmHgの眼圧下降幅を認めたとの報告もある6).本研究において,点眼スコアの増えた症例(パターン①.④)では眼圧が有意に低下したことは,臨床的に妥当な結果であったといえる.一方,点眼スコアが不変(パターン⑤⑥)でも変更前に比べて非劣性であった.また,症例数は少ないが,1成分減ったパターン⑦でも眼圧の変化はみられず,多剤併用症例ではC1成分の眼圧下降効果が少ないことを表しているのかもしれない.点眼のアドヒアランスが悪いことが緑内障の進行に関与することが報告7)されている.現在,プロスタノイド受容体関連薬・Cb遮断薬・炭酸脱水酵素阻害薬・Ca2作動薬・ROCK阻害薬のC5成分を組み合わせて眼圧下降させることが多く,配合点眼薬を使用することで,点眼薬C3本でC5成分を使用することができる.配合点眼薬であるCRBFCは,点眼本数を減らすことでアドヒアランスを改善させる可能性があり,また多剤連続点眼による薬剤のウォッシュアウトの可能性が低減するため,眼圧下降効果が強化される可能性も考えられ,RBFCは緑内障および高眼圧症治療の新しい選択肢となる可能性がある.また,本研究では副作用はC18.2%と既報8,9)より少なかった.既報9)の代表的副作用は,結膜充血C58.1%,眼瞼炎C25.7%,アレルギー性結膜炎C21.2%,眼刺激C7.3%であった.また,結膜充血と眼刺激はCRBFC開始後C12週以内に,アレルギー性結膜炎はC12.24週に,眼瞼炎はC24.36週にもっとも発生した.本研究でCRBFC使用に伴う副作用が少なかった原因は,観察期間が処方後C3カ月以内と短かったことや,外来診療においてCRBFC処方前に副作用の出現の可能性を十分説明しており,副作用の自己申告が少なくなった可能性も考えられる.また,李ら10)はリパスジル単剤使用に比べ,リパスジルとブリモニジンの併用により結膜充血が有意に軽減したと報告しており,リパスジルの平滑筋弛緩作用による血管拡張作用とブリモニジンのアドレナリンCa2受容体刺激による血管収縮作用の両者11,12)の拮抗に伴い,RBFCの副作用で最多とされる結膜充血が出現しにくかったと考えられる.近年,ブリモニジンによる角膜混濁の報告13,14)があり,わが国でも注意喚起されている.配合点眼薬であっても成分それぞれの副作用発現には十分注意する必要がある.本研究の限界として対象症例がC33眼と少なく,処方後C3カ月以内と観察期間が短いことがあげられる.また,今回はRBFCへの変更・追加症例のみを対象にしており,今後はRBFCから他剤への変更・追加症例も検討されるべきであろう.今後は症例数を増やし,観察期間を伸ばして検討する必要がある.本研究の結果,RBFCへの変更によって点眼スコアが増加した症例では有意な眼圧下降を認め,緑内障および高眼圧症治療の新しい選択肢となる可能性が示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)DjafariCF,CLeskCMR,CHarasymowyczCPJCetal:DetermiC-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20092)ShiraiCC,CMatsuokaCN,CNakazawaT:ComparisonCofCadherencebetween.xedandun.xedtopicalcombinationglaucomaCtherapiesCusingCJapaneseChealthcare/pharmacyCclaimsdatabase:aCretrospectiveCnon-interventionalCcohortstudy.BMCOphthalmolC21:52,C20213)InoueT,TaniharaH:Rho-associatedkinaseinhibitors:anovelCglaucomaCtherapy.CProgCRetinCEyeCResC37:1-12,C20134)TorisCB,GleasonML,CamrasCBetal:E.ectsofbrimo-nidineConCaqueousChumorCdynamicsCinChumanCeyes.CArchCOphthalmolC113:1514-1517,C19955)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改定委員会:緑内障:85-177,2022C126版).日眼会誌C5診療ガイドライン(第6)當重明子,齋藤雄太,高橋春男:開放隅角緑内障に対するリパスジル点眼薬の短期的な眼圧下降効果.臨眼C71:1105-1109,C20177)TsaiJC:ACcomprehensiveCperspectiveConCpatientCadher-enceCtoCtopicalCglaucomaCtherapy.COphthalmologyC116:C30-36,C20098)TaniharaH,YamamotoT,AiharaMetal:Ripasudil-bri-monidineC.xed-doseCcombinationCvsCripasudilCorCbrimoni-dine:twoCphaseC3CrandomizedCclinicalCtrials.CAmCJCOph-thalmolC248:35-44,C20239)TaniharaCH,CYamamotoCT,CAiharaCMCetal:Long-termCintraocularCpressure-loweringCe.cacyCandCsafetyCofCripa-sudil-brimonidineC.xed-doseCcombinationCforCglaucomaCandocularhypertension:amulticenter,open-label,phase3Cstudy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC262:2579-2591,C202410)李真煕,小溝崇史,小野喬ほか:健常者におけるブリモニジンとリパスジルの単回併用点眼による眼圧下降効果,瞳孔径,結膜充血の検討.日眼会誌C122:453-459,C201811)TaniharaCH,CInataniCM,CHonjoCMCetal:IntraocularCpres-sure-loweringCe.ectsCandCsafetyCofCtopicalCadministrationCofaselectiveROCKinhibitor,SNJ-1656,inhealthyvolun-teers.ArchOphthalmolC126:309-315,C200812)Dahlmann-NoorAH,CosgraveE,LoweSetal:Brimoni-dineCandCapraclonidineCasCvasoconstrictorsCinCadjustableCstrabismussurgery.JAAPOSC13:123-126,C200913)ManabeCY,CSawadaCA,CMochizukiK:CornealCsterileCin.ltrationCinducedCbyCtopicalCuseCofCocularChypotensiveCagent.EurJOphthalmolC30:NP23-NP25,C202014)篠崎友治,溝上志朗,細川寛子ほか:ブリモニジン関連角膜実質混濁の臨床経過自験C3症例からの考察.あたらしい眼科C41:82-88,C2024***

リパスジル塩酸塩水和物点眼薬の眼圧下降効果と安全性の検討

2017年1月31日 火曜日

《原著》あたらしい眼科34(1):124.126,2017cリパスジル塩酸塩水和物点眼薬の眼圧下降効果と安全性の検討吉川晴菜*1池田陽子*2,3森和彦*2吉井健悟*4上野盛夫*2丸山悠子*5今井浩二郎*6外園千恵*2木下茂*7*1京都第二赤十字病院眼科*2京都府立医科大学眼科学教室*3御池眼科池田クリニック*4京都府立医科大学生命基礎数理学*5福知山市民病院*6京都府立医科大学医療フロンティア展開学*7京都府立医科大学感覚器未来医療学InvestigationofIntraocularPressure-loweringE.ectsandSafetyofRipasudilHarunaYoshikawa1),YokoIkeda2,3),KazuhikoMori2),KengoYoshii4),MorioUeno2),YukoMaruyama5),KoujiroImai6),ChieSotozono2)andShigeruKinoshita7)1)DepartmentofOphthalmology,JapaneseRedCrossKyotoDainiHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,3)Oike-IkedaEyeClinic,4)DepartmentofMathematicsandStatisticsinMedicalSciences,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,5)FukuchiyamaCityHospital,6)DepartmentofMedicalInnovationandTranslationalMedicalScience,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,7)DepartmentofFrontierMedicalScienceandTechnologyforOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineリパスジル塩酸塩水和物(グラナテックR)点眼薬の眼圧下降効果と安全性について検討するために,2014年12月.2015年5月にグラナテックR点眼液を処方した225例のうち3カ月経過観察できた症例を対象に,眼圧下降効果および副作用をレトロスペクティブに検討した.処方した225例のうち,3カ月以内の中止例は20例であった.1カ月と3カ月に眼圧測定が可能であった125例のうち,グラナテックR追加群は94例(平均2.9剤に追加),切替群は31例(平均3.8剤より1剤切替)であり,経過中に副作用を認めたものは225例中76例で,半数以上に充血を認めた.点眼開始前眼圧は平均18.5±6.5mmHg,1カ月後の平均眼圧下降量は追加群/切替群は3.0±5.4/1.5±2.9mmHg,同じく3カ月後は3.1±5.4/2.9±3.0mHgであり,いずれも追加および切替前と比較して有意な眼圧下降効果を認めた.Subjectsofthisretrospectivestudywere225patientswhohadbeenprescribedGLANATECRfromDecember2014toMay2015.Statisticalanalysiswasdonebypairedt-test.Ofthe225patients,20werediscontinuedwithin3months.TheGLANATECRadditiongroupconsistedof94patients,andtheGLANATECRswitchinggroupof31patients.Sidee.ectsoccurredin76of225patientsduringthefollow-upperiod.Averageintraocularpressure(IOP)beforeGLANATECRinitiationwas18.5±6.5mmHg;averagedecreaseinIOPafter1and3monthswas3.0±5.4/1.5±2.9mmHgand3.1±5.4/2.9±3.0mmHg,respectively(additiongroup/switchinggroup).Inbothgroups,IOPwasstatisticallysigni.cantlydiminished.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(1):124.126,2017〕Keywords:リパスジル塩酸塩水和物,Rhoキナーゼ阻害薬,眼圧下降,緑内障.ripasudilhydrochloridehydrate,Rho-associated,coiled-coilcontainingproteinkinaseinhibitor,intraocularpressurelowering,glaucoma.はじめに2014年12月に発売されたリパスジル塩酸塩水和物(0.4%グラナテックR)点眼液は,Rhoキナーゼ阻害作用により主経路の房水流出を促進する1.5).これまでの抗緑内障点眼薬とは作用機序が異なることから,既存の点眼薬に追加,または切り替えることにより,さらなる眼圧下降の効果が期待されている.これまでに,多数例での0.4%グラナテックR点眼液処方による眼圧下降効果の報告はまだ行われていない.発売から1年以上経過し,多数の処方例を経験したので,リパスジル塩酸塩水和物点眼液の眼圧下降効果と安全性につい〔別刷請求先〕森和彦:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:KazuhikoMori,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,Kawaramachi,Hirokoji,Kamigyo-ku,Kyoto602-0841,JAPAN124(124)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(124)1240910-1810/17/\100/頁/JCOPYてレトロスペクティブに検討した.I対象および方法対象は2014年12月.2015年5月に当科および御池眼科池田クリニックを受診し,リパスジル塩酸塩水和物点眼液を処方した225例225眼(平均年齢68.0±35.0歳)である.本研究はヘルシンキ宣言のもと,厚生労働省倫理研究に関する倫理指針に則り個人情報を連結不可能匿名化した状態でレトロスペクティブな観察研究として行った.対象の内訳は男性111例111眼(平均年齢67.3±35.0歳),女性114例114眼(平均年齢69.4±35.3歳)であり,両眼に処方している場合は右眼のデータを選択した.副作用の検討は全例に対して行い,リパスジル塩酸塩水和物点眼開始前と開始後1カ月,3カ月の眼圧測定が可能であった症例に対して,眼圧下降効果をレトロスペクティブに検討した.眼圧測定にはGoldmann圧平式眼圧計を使用し,測定時間は外来診察時間であった午前9時.午後19時とした.点眼前眼圧は直前の1回の値を採用した.統計的検討は対応のあるt検定を用い,多重比較の調整にはBonferroni法により,p<0.017の場合に有意とした.データ表示は平均値±標準偏差とした.II結果リパスジル塩酸塩水和物点眼開始後1カ月,3カ月の眼圧を測定可能であった症例は125例125眼(平均年齢68.8±12.1歳)であり,内訳は男性63例63眼(平均年齢67.5±14.2歳),女性62例62眼(平均年齢70.1±9.8歳)であった(表1).既存使用の抗緑内障点眼液にリパスジル塩酸塩水和物点眼液を追加した群は94例94眼であり,平均2.9±1.2剤に追加されていた.1カ月後の平均眼圧下降量は3.0±5.4mmHgであり,3カ月後の平均眼圧下降量は3.1±5.4mmHgであった(図1).リパスジル塩酸塩水和物点眼眼圧下降作用に関しては5mmHg以上下降したHyperresponderが存在し,使用開始から3カ月の時点で眼圧が5mmHg以上下降した症例を9眼(25.5%),10mmHg以上下降した症例を5眼(5.3%)認めた.10mmHg以上下降した症例は全例が男性(平均年齢65.0歳)であったが,病型などその他の共通点は認めなかった.既存使用の抗緑内障点眼液平均3.8±1.0剤のうちの1剤をリパスジル塩酸塩水和物点眼液に切り替えた群は31例31眼であり,切り替え前の点眼薬はブナゾシン塩酸塩が19例,ブリモニジンが9例,その他が3例であった.1カ月後の平均眼圧下降量は1.5±表1患者背景(1カ月後と3カ月後に眼圧測定が実施できた症例125例)病型症例数(眼)男性:女性(人)平均年齢(歳)NTG4017:2368.0±11.8POAG3622:1471.6±13.5SG落屑緑内障154:1168.1±13.2ぶどう膜炎に伴う緑内障95:0464.6±16.0ステロイド緑内障11:0044血管新生緑内障22:0057.5±19.1その他のSG94:0559.3±18.1その他137:0677.0±4.2NTG:正常眼圧緑内障,POAG:原発開放隅角緑内障,SG:続発緑内障.*2220201818*1616眼圧(mmHg)14141212101088642200点眼前1M後3M後点眼前1M後3M後*有意差あり(p<0.01)*有意差あり(p<0.01)図1追加群図2切り替え群(125)あたらしい眼科Vol.34,No.1,2017125表2リパスジル塩酸塩水和物点眼薬の副作用副作用症例数(眼)充血55眼瞼腫脹5霧視2頭痛2その他12合計762.9mmHg,3カ月後の平均眼圧下降量は2.9±3.0mmHgであった(図2).切り替えから3カ月の時点で眼圧が5mmHg以上下降した症例は9眼(29%)あり,10mmHg以上下降した症例は認めなかった.すでに4剤以上使用している多剤併用症例61例61眼(平均年齢66.8±12.8歳)に絞って検討しても,リパスジル塩酸塩水和物液点眼液の使用から3カ月の時点で平均2.7±4.9mmHgと有意な眼圧下降効果を認め(p<0.01),多剤併用症例に対しても有意な眼圧下降効果を確認した.リパスジル塩酸塩水和物を処方した225例中,副作用を認めたものは76眼(33.8%)(表2)であり,半数以上に充血を認めた.また,処方した225例のうち,開始後3カ月継続できずに中止した症例は20眼(8.9%)であった.途中中止に至った理由の内訳は眼圧下降効果不十分により緑内障手術に至ったものが9眼(45%),頭痛2眼(10%),その他9眼(45%)(圧迫感,ふらつき,充血,気分不良,転院,胸のつっかえ感,かゆみ,咽頭の違和感,前房炎症それぞれ1例ずつ)であった.III考按今回,筆者らはリパスジル塩酸塩水和物液発売以来,多数の処方例を経験した.リパスジル塩酸塩水和物を追加した群,もしくは既存の点眼薬と切り替えた群ともに,使用後3カ月の時点で有意に眼圧が下降した.すでに4剤以上使用している多剤併用症例に対しても,リパスジル塩酸塩水和物点眼液使用開始から3カ月の時点で平均2.7±4.9mmHgと有意な眼圧下降効果を認めた.これは,既存の抗緑内障薬とは作用機序が異なるために,多剤併用している症例に対してもさらなる眼圧下降効果を認めたと考える.緑内障点眼4剤目としての0.1%ブリモニジン点眼液の短期眼圧下降効果の報告6)や,ブナゾシン塩酸塩からブリモニジン酒石酸塩への切り替えの報告7)と比較しても,ほぼ同等の眼圧下降効果を認めた.しかし,有意な眼圧下降効果を認めた一方で,副作用も処方例の33.8%で認め,点眼を中止せざるをえない症例も処方全体の8.9%に認めた.このように,眼圧下降効果を認めながらも,副作用の出現により使用を中止する症例もある.使用当初は副作用症状がなくても使用期間が延びるに伴い,充血や眼瞼炎が出現する症例もあるため,副作用の出現には毎回注意が必要である.眼圧下降作用に関してはhyperresponderも存在していたが,眼圧下降の効果が持続するのか,それとも一時的なものなのかは,今後症例数を増やし,経過観察期間を延長し,検討していかなくてはならないと考える.この研究でのバイアスとして,眼圧下降効果は3カ月以上継続できた症例に限っているので,3カ月を待たずに眼圧下降不十分で中止した症例は眼圧下降効果判定には含まれていない.そのために眼圧下降効果が比較的よい症例の解析結果となっている可能性がある.リパスジル塩酸塩水和物点眼液は2014年12月に発売され,処方後の報告なども少ない.長期の眼圧下降効果や副作用などについては,今後のさらなる検討が必要と考える.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)LeungT,ManserE,TanLetal:Anovelserine/threo-ninekinasebindingtheRas-relatedRhoAGTPasewhichtranslocatesthekinasetoperipheralmembranes.JBiolChem270:29051-29054,19952)IshizakiT,MaekawaM,FujisawaKetal:ThesmallGTP-bindingproteinRhobindstoandactivatesa160kDaSer/Thrproteinkinasehomologoustomyotonicdys-trophykinase.EMBOJ15:1885-1893,19963)MatsuiT,AmanoM,YamamotoTetal:Rho-associatedkinase,anovelserine/threoninekinase,asaputativetar-getforsmallGTPbindingproteinRho.EMBOJ15:2208-2216,19964)HonjoM,TaniharaH,InataniMetal:E.ectsofrho-associatedproteinkinaseinhibitorY-27632onintraocularpressureandout.owfacility.InvestOphthalmolVisSci42:137-144,20015)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal;K-115Clinical-StudyGroup:Phase2randomizedclinicalstudyofaRhokinaseinhibitor,K-115,inprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.AmJOphthalmol156:731-736,20136)平川沙織,井上俊洋,小嶋祥ほか:緑内障点眼4剤目としての0.1%ブリモニジン点眼液の短期眼圧下降効果.眼臨紀8:896-899,20157)木内貴博,井上隆史,高林南緒子ほか:眼圧下降薬4剤併用緑内障患者におけるブナゾシン塩酸塩からブリモニジン酒石酸塩への切り替え.眼臨紀8:891-895,2015***(126)