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レバミピド点眼液が奏効した糸状角膜炎の3症例

2014年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科31(9):1369.1373,2014cレバミピド点眼液が奏効した糸状角膜炎の3症例池川和加子山口昌彦白石敦坂根由梨原祐子鄭暁東鈴木崇井上智之井上康大橋裕一愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野EfficacyofRebamipideOphthalmicSolutionforTreatment-ResistantFilametaryKeratitis:ThreeCaseReportsWakakoIkegawa,MasahikoYamaguchi,AtsushiShiraishi,YuriSakane,YukoHara,XiaodongZheng,TakashiSuzuki,TomoyukiInoue,YasushiInoueandYuichiOhashiDepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicine背景:糸状角膜炎(filamentarykeratitis:FK)は,角膜上皮障害を起点に角膜糸状物を形成する慢性疾患で,強い異物感を伴い治療に難渋することも多い.今回レバミピド点眼液(RM)が奏効した糸状角膜炎の3例を報告する.症例:症例1:79歳,女性.Sjogren症候群.両総涙小管閉塞にて涙小管チューブ挿入術後にドライアイが顕性化し,角膜全面にFKが多発した.ヒアルロン酸点眼,ベタメタゾン点眼,ソフトコンタクトレンズ(SCL)連続装用にて軽快せず,RMを追加したところSCL非装用でもFKの出現は認められず,RM単独で18カ月間寛解状態である.症例2:90歳,男性.両角膜実質炎後混濁の角膜移植後で,0.1%フルオロメソロン点眼(FL)が投与されている.ドライアイによる点状表層角膜症(SPK)が出現し,ジクアホソルナトリウム点眼(DQ)を追加したところFKが出現した.DQを中止したが軽快せず,RMを開始したところFKは消失し,RM単独で18カ月間寛解状態である.症例3:67歳,女性.右顔面神経麻痺の既往.最初右下方,両角膜下方にFKが出現するようになり,DQ,FLを投与したが軽快せず,DQをRMに変更したところFKは消失し,RM単独で15カ月間寛解状態である.結論:従来の治療に抵抗性のFKに対してRMは有効であると考えられた.Threecasesoffilamentarykeratitis(FK)inwhichrebamipideophthalmicsolution(RM)waseffectivearereported.Case1:FKappearedalloverthebilateralcornealsurfaces.SinceFKtherapycomprisinghyaluronicacid,betamethasoneophthalmicsolutionandsoftcontactlens(SCL)continuouswearwasnoteffective,RMwasadministrated.Subsequently,FKhasbeencontrolledwithoutSCLfor18months,withRMonly.Case2and3:DiquafosolNaophthalmicsolution(DQ)and0.1%fluorometholonewereadministratedfordry-eyetherapy;howeverFKdidnotimprove.AfterDQwasreplacedwithRM,FKimprovedimmediatelyandhasbeencontrolledfor18monthsinCase2and15monthsinCase3,withRMonly.RMisefficaciousforconventionaltreatment-resistantFK.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(9):1369.1373,2014〕Keywords:糸状角膜炎,レバミピド点眼液,ドライアイ,角膜上皮障害,炎症,ムチン.filamentarykeratitis,rebamipideophthalmicsolution,dryeye,cornealepithelialdisorder,inflammation,mucin.はじめに糸状角膜炎(filamentarykeratitis:FK)は,種々の眼表面疾患や眼瞼疾患が複合的に関与して発症し,眼手術後や眼外傷後などに発症頻度が高まることが知られている1,2).FKの治療は,綿棒などにより角膜糸状物を物理的に除去した後,多くの症例で合併しているドライアイに対して,人工涙液点眼やヒアルロン酸点眼などを用い,ほとんどの例において眼表面炎症が病態に関与しているため,低濃度ステロイド点眼やシクロスポリン点眼を併用する.しかし,これらの保存療法だけでは再発を繰り返す場合も多く,バンデージ効果を図るためにメディカルユースソフトコンタクレンズ(MSCL)の連続装用を行うが,寛解状態を保つためには,〔別刷請求先〕山口昌彦:〒791-0295愛媛県東温市志津川愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野Reprintrequests:MasahikoYamaguchi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,EhimeUniversitySchoolofMedicine,Shitsukawa,Toon,Ehime791-0295,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(121)1369 しばしばMSCLから離脱困難となり,継続中に角膜感染症の発生などが問題となる.このように,FKに対してはさまざまな治療が行われるものの,治癒させるのはきわめて困難な疾患であるといえる.レバミピド点眼液(ムコスタRUD点眼液2%,大塚製薬,以下RM)は,2012年1月にドライアイ治療薬として発売され,実験的には,結膜杯細胞増加作用3),角膜ムチン様物質増加作用3,4),角膜上皮創傷治癒促進作用3,4)を有することが報告されている.また臨床的にも,ドライアイの自他覚症状を改善させる5,6)ことが明らかになっており,新しい作用機序をもったドライアイ治療薬として注目されている.今回筆者らは,これまでの既存の治療には抵抗性であったFKに対し,RMを投与することによって,長期寛解状態に持ち込めた3症例を経験したので報告する.I症例〔症例1〕69歳,女性.既往例として,Sjogren症候群が存在する.2006年10月,両側の総涙小管狭窄症による流涙症に対して,両側の鼻涙管シリコーンチューブ挿入術を施行した.2008年5月から両眼の乾燥感を自覚し始め,軽度の角結膜上皮障害がみられたため,人工涙液点眼(ソフトサンティア点眼液,参天製薬)と0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレインR点眼液0.1%,参天製薬)をそれぞれ両眼に1日6回投与し,途中からヒアルロン酸点眼液を防腐剤無添加の0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアルロン酸ナトリウムPF点眼液0.1%「日点」,日本点眼薬研究所)に変更して経過観察していた.2012年2月8日に左眼角膜下方にFKが出現し異物感が増強してきたため,オフロキサシン眼軟膏(タリビッドR眼軟膏,参天製薬,以下TV)を開始したが軽快せず,2週間後には左眼角膜中央にも多数のFK(図1b)がみられるようになってきたため,消炎が必要と考えて0.1%ベタメタゾン点眼液(リンベタPF眼耳鼻科用液0.1%,日本点眼薬研究所)を左眼に1日3回で開始した.しかし,左眼はFKによる異物感が軽快しないため,MSCL連続装用を開始したところ,異物感はコントロール可能になり,左眼の0.1%ベタメタゾン点眼は中止した.4月5日には右眼にもFKを認めるようになり異物感が増強してきたため(図1a),両眼ともMSCL連続装用となった.その後,右眼はMSCL装用を中止しても異物感のコントロールは可能であったが,左眼はMSCL装用を止めるとFKが増悪する状態を繰り返したため,左眼はMSCL継続のまま6月21日にRM両眼1日4回を開始した.右眼は8月2日以降FKがほとんど認められなくなり(図1c),左眼は9月6日以降MSCLを中止してもFKの再発はみられず(図1d),異物感も消失した.その後,ときに軽微なFKの再発がみられるものの,強い異物感を訴えるようなFKの出現はなくなり,RM単独投与で18カ月間,寛解状態を維持している.〔症例2〕60歳,男性.両眼の角膜実質炎後の角膜混濁に対して,右眼は表層角膜移植術,左眼は全層角膜移植術をacbd図1症例1a:右眼FK多発期.角膜中央.下方にFKを認める.b:左眼FK多発期.角膜ほぼ全面にFKを認める.c:右眼RM投与6週目.FKはほぼ消失している.d:左眼RM投与11週目.FKはほぼ消失している.1370あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014(122) acbdacbd図2症例2a:右眼FK発現時.角膜下方にFKを認める.b:左眼FK発現時.角膜下方にFKを認める.c:右眼RM投与3週目.FKは消失している.d:左眼RM投与3週目.FKはほぼ消失している.受けている.2008年ごろから両眼のSPKが増加し,FKを繰り返すようになった.2011年4月,右眼に再度表層角膜移植を行い,0.1%フルオロメソロン点眼液(フルメトロンR点眼液0.1%,参天製薬,以下FL)とレボフロキサシン点眼液(クラビットR点眼液0.5%,参天製薬)を1日3回投与していた.2012年1月,両眼角膜中央の点状表層角膜症(superficialpunctatekeratitis:SPK)が軽快せず,涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)も両眼とも1秒と短縮していたため,ドライアイ改善の目的でジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%,参天製薬,以下DQ)を追加したが,同年3月に右眼角膜下方に,4月に左眼角膜下方にFKを認めるようになった(図2a,b).FKが改善しないため,DQとFLを中止し,RMを両眼に1日4回で開始したところ,投与後3週目に両眼のFKが消失した(図2c,d).その後,RM投与のみとしたが,自覚症状を伴うようなFKの出現はなくなり,RM単独投与で18カ月間,寛解状態を保っている.〔症例3〕57歳,女性.右側顔面神経麻痺の既往はあるが,閉瞼状態は回復しており,明らかな兎眼はみられなかった.2011年7月,右眼の充血,流涙感,異物感を訴え,両眼のBUTは1秒,両角膜下方にSPKが存在し,右眼角膜下方にはFKがみられたため,ドライアイ治療の目的でDQとFLを開始した.その後,右眼のFKは出現,消失を繰り返していたが,2012年6月には左眼角膜下方にもFKを認(123)めるようになったため,TVOを追加した(図3a,b).同年8月再診時,両眼のFKが軽快しないため,DQを中止し,RMを両眼に1日4回で開始したところ,投与2週間目にFKは消退した(図3c,d).その後,RM単独投与で15カ月間,寛解状態を維持している.3症例のまとめを表1に示す.II考察Taniokaらは,臨床例から得られた角膜糸状物サンプルを免疫組織化学的に解析し,その発生メカニズムについて詳細に考察している7).すなわち,角膜上皮障害を起点として,上皮細胞成分をコアにその周囲にムチンが絡みつき,瞬目に伴う摩擦ストレスの影響下に基底細胞レベルから上皮が.離されることにより形成されるという.その結果,瞬目とともに糸状物が動くことで角膜知覚が刺激され,持続的な異物感を伴うようになる.したがって,治療戦略としては,起点となっている角膜上皮障害を速やかに修復させるとともに,炎症などによる分泌型ムチンの増加を抑制し,ドライアイやその他の要因による涙液クリアランスの悪化を改善させ,炎症起因物質やムチンをできる限り早く眼表面から排除することが必要である.しかし,SCLによる眼表面保護効果を除けば,ヒアルロン酸など,これまでの点眼薬治療では,上記の病態を持続的に改善させるのは困難であった.RMは,動物実験や培養角膜上皮による実験から,結膜杯あたらしい眼科Vol.31,No.9,20141371 acbdacbd図3症例3a:右眼FK発現時.角膜下方にFKを認める.b:左眼FK発現時.角膜下方にFKを認める.c:右眼RM投与2週目.FKは消失している.d:左眼RM投与2週目.FKは消失している.表1糸状角膜炎3症例の所見と治療(まとめ)症例1(79歳,女性)症例2(90歳,男性)症例3(67歳,女性)全身疾患Sjogren症候群――眼疾患の既往総涙小管閉塞にて両)涙小管チューブ挿入術後角膜実質炎にて両)角膜移植後右)顔面神経麻痺(閉瞼不全なし)FK出現部位両)角膜全面,右<左両)下方,右≒左両)下方,右≒左RM投与前治療軟膏――オフロキサシン眼軟膏ステロイド点眼0.1%ベタメタゾン点眼0.1%フルオロメトロン点眼0.1%フルオロメトロン点眼ドライアイ治療0.1%ヒアルロン酸点眼ジクアホソル点眼ジクアホソル点眼SCL装用+――RM投与後FK消失までの期間右)6週,左)11週両)3週両)2週RM投与後FK寛解持続期間18カ月18カ月15カ月FK:filamentarykeratitis,RM:rebamipideophthalmicsolution.細胞増加作用3),角膜ムチン様物質増加作用3,4),角膜上皮創傷治癒促進作用3,4)が確認されている.また,治験における結果から,臨床的にもドライアイの治療に有効であることが報告されている5,6).さらに,抗炎症作用を介して,角膜上皮の治癒促進に働く可能性が示されている8,9).RMは,分泌型および膜結合型ムチンの増加による涙液安定性の向上と抗炎症作用を含む角膜上皮創傷治癒作用によって,FKの起点となる遷延性の角膜上皮障害を改善させ,FKの再発を抑制している可能性がある.症例2と3においては,ドライアイによる角膜上皮障害の1372あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014悪化と考えられたため,DQを追加したがFKは改善しなかった.DQには,RMと同様に分泌型ムチンおよび膜結合型ムチンを増やす作用があり,そのうえ,結膜上皮細胞からの水分移動作用があるため,RMと同様に涙液安定性を向上させて,ドライアイを改善し,FK抑制の方向へ働くことが予想される.しかし,この2症例ではDQの追加投与では改善がみられず,RMへの変更によって改善が得られた.このことは,RMが眼表面ムチンを増やすうえに,角膜上皮障害の治癒促進という作用も持ち合わせているため,FKの発症をその機序のより上流で抑制している可能性があるのではない(124) かと推察される.また,3症例とも最終的には,ヒアルロン酸点眼やステロイド点眼を使用せずにRMのみでFKがコントロールできている点においても,FKに対するRMの有効性が示されているところであると思われた.他方,眼瞼下垂や眼瞼内反症などの眼瞼疾患においては,涙液クリアランスの悪化や眼表面摩擦の亢進がFK発症の原因になることが知られている10).これらのケースではFKの発症部位もドライアイによるものとは異なっており,観血的な眼瞼異常の是正により初めて寛解する.今回の3症例には,眼瞼下垂や眼瞼内反症などの要因はみられなかったが,眼瞼異常が主因となって生じるFKに対するRM投与の有効性については今後の検討課題である.以上,種々の治療に対する反応が不良で,RMへの変更投与が奏効したFKの3症例を提示した.RMは,その薬理作用によって種々のFKの発症要因を抑制し,長期間にわたって自覚症状および他覚所見を寛解させるのではないかと考えられた.文献1)KinoshitaS,YokoiN:Filamentarykeratitis.TheCorneafourthedition(FosterCS,AzarDT,DohlmanCHeds),p687-692,Philadelphia,20052)DavidsonRS,MannisMJ:Filamentarykeratitis.Cornea2ndedition(KrachmerJH,MannisMJ,HollandEJeds),p1179-1182,ElsevierInc,20053)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,20044)TakejiY,UrashimaH,AokiAetal:Rebamipideincreasesthemucin-likeglycoproteinproductionincornealepithelialcells.JOculPharmacolTher28:259-263,20125)KinoshitaS,AwamuraS,OshidenKetal:Rebamipide(OPC-12759)inthetreatmentofdryeye:arandomized,double-masked,multicenter,placebo-controlledphaseIIstudy.Ophthalmology119:2471-2478,20126)KashimaT,AkiyamaH,MiuraFetal:Resolutionofpersistentcornealerosionafteradministrationoftopicalrebamipide.ClinOphthalmol6:1403-1406,20127)TaniokaH,YokoiN,KomuroAetal:Investigationofcornealfilamentinfilamentarykeratitis.InvestOphthalmolVisSci50:3696-3702,20098)KimuraK,MoritaY,OritaTetal:ProtectionofhumancornealepithelialcellsfromTNF-a-induceddisruptionofbarrierfunctionbyrebamipide.InvestOphthalmolVisSci54:2572-2760,20139)TanakaH,FukudaK,IshidaWetal:RebamipideincreasesbarrierfunctionandattenuatesTNFa-inducedbarrierdisruptionandcytokineexpressioninhumancornealepithelialcells.BrJOphthalmol97:912-916,201310)北澤耕司,横井則彦,渡辺彰英ほか:難治性糸状角膜炎に対する眼瞼手術の検討.日眼会誌115:693-698,2011***(125)あたらしい眼科Vol.31,No.9,20141373

眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルに対するジクアホソルナトリウム点眼液とレバミピド点眼液の効果

2014年1月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科31(1):105.109,2014c眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルに対するジクアホソルナトリウム点眼液とレバミピド点眼液の効果堀裕一柴友明前野貴俊東邦大学医療センター佐倉病院眼科ComparisonofEfficacybetweenDiquafosolOphthalmicSolutionsandRebamipideOphthalmicSuspensionsinTreatmentofRatDryEyeModelYuichiHori,TomoakiShibaandTakatoshiMaenoDepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySakuraMedicalCenterラットドライアイモデルに対する3%ジクアホソルナトリウム点眼液と2%レバミピド点眼液の効果について比較検討した.涙液減少型ドライアイモデルとして眼窩外涙腺を摘出し8週以上経過したラットを用いた.3%ジクアホソルナトリウム点眼液,2%レバミピド点眼液,防腐剤無添加人工涙液をそれぞれ4週間点眼し,角膜上皮障害をフルオレセイン染色スコアにて評価した.また,各点眼液を単回点眼し,10分後の涙液量を測定した.さらに,4週間点眼後に眼瞼結膜を採取し,過ヨウ素酸シッフ(PAS)陽性細胞率を算出した.その結果,3%ジクアホソルナトリウム点眼液群では人工涙液群と比べ有意に角膜上皮障害の改善,涙液量およびPAS陽性細胞率の増加を認めた(p<0.05,Tukey’stest)が,2%レバミピド点眼液群では有意差は認められなかった(p>0.05,Tukey’stest).また,点眼2週後のフルオレセイン染色スコアにおいて3%ジクアホソルナトリウム点眼群は2%レバミピド群に比して有意に低値を示した(p<0.05,Tukey’stest).以上より,涙液減少型ドライアイモデルにおいて3%ジクアホソルナトリウム点眼液は2%レバミピド点眼液に比べて改善効果を示した.Wecomparedtheeffectsof3%diquafosolophthalmicsolutionsand2%rebamipideophthalmicsuspensionsintreatingaratdryeyemodel.Ratexorbitallacrimalglandswereremovedsurgicallytodevelopthedryeyemodel.Diquafosolophthalmicsolutions(6timesdaily),rebamipideophthalmicsuspensions(4timesdaily)andunpreservedartificialtears(6timesdaily)wereadministeredfor4weeks.Weperformedfluoresceincornealstaining(FCS)andperiodicacid-Schiff(PAS)stainingofthepalpebralconjunctivatodeterminechangesinFCSscoreandPAS-positivecellratiointheratdryeyemodelafter2and4weeksoftreatment,respectively.TheFCSscoredecreasedsignificantly(p<0.05,Tukey’smultiplecomparison)withthediquafosolophthalmicsolutions,ascomparedwiththeunpreservedartificialtearsafter2and4weeksoftreatmentandwiththerebamipideophthalmicsuspensionsafter2weeksoftreatment.ThePAS-positiveratiointhepalpebralconjunctivaincreasedsignificantlyafter4weeksoftreatmentwithdiquafosolophthalmicsolutions(p<0.01,Tukey’smultiplecomparison),ascomparedwiththerebamipideophthalmicsuspensions.Theseresultsindicatethatintear-deficiencytypedryeye,diquafosolophthalmicsolutionsaremoreeffectivethanrebamipideophthalmicsuspensions.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(1):105.109,2014〕Keywords:ドライアイ,ジクアホソルナトリウム点眼液,レバミピド点眼液,ラットドライアイモデル.dryeye,diquafosolophthalmicsolutions,rebamipideophthalmicsuspensions,ratdryeyemodel.はじめにり,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義しており,ドライわが国では2006年にドライアイ研究会が「ドライアイとアイは,多因子による疾患であることが認識されている1).は,様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であドライアイは大きく涙液減少型ドライアイと蒸発亢進型ドラ〔別刷請求先〕堀裕一:〒285-8741佐倉市下志津564-1東邦大学医療センター佐倉病院眼科Reprintrequests:YuichiHori,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TohoUniversitySakuraMedicalCenter,564-1Shimoshizu,Sakura,Chiba285-8741,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(105)105 イアイに分けられるが,涙液減少型ドライアイはSjogren症候群と非Sjogren症候群に分類され,蒸発亢進型ドライアイは,内因性と外因性に分けられ,内因性はマイボーム腺機能不全,瞬目率の低下などが含まれ,外因性ではビタミンA欠乏症,防腐剤,コンタクトレンズ装用などが含まれる2).このように原因も症状もさまざまなドライアイに対して,従来の点眼治療の大半は精製ヒアルロン酸点眼液が使用されていた.しかし,ドライアイ治療薬として2010年12月に3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%,以下ジクアス),2012年1月に2%レバミピド点眼液(ムコスタR点眼液UD2%,以下ムコスタ)が上市され,これらの新しいドライアイ治療用点眼液の登場により,治療選択幅が広がった.最近ではドライアイ治療の新しい考えとして,眼表面を層別に治療する考え方(tearfilmorientedtherapy:TFOT)も浸透しつつある3).ジクアスはP2Y2受容体作動薬であり,涙液分泌促進作用4),ムチン分泌促進作用5,6)および膜型ムチン遺伝子(MUC1,MUC4およびMUC16)発現促進作用7)を有することが報告されている.一方,ムコスタは,杯細胞増殖作用8),ムチン様糖蛋白質産生促進作用および膜型ムチン遺伝子(MUC1およびMUC4)発現促進作用9)を有することが報告されている.今後この2剤をどのようなドライアイに対して使い分けていくかが今後の検討課題となっている.本研究では,ジクアスとムコスタの薬理学的特性を明らかにするために,眼窩外涙腺摘出ラットのドライアイモデルの角膜上皮障害,杯細胞数および涙液量に対する両剤の効果を比較検討した.I実験方法1.点眼液防腐剤無添加人工涙液(ソフトサンティアR,参天製薬,以下ソフトサンティア),3%ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアスR点眼液3%,参天製薬,以下ジクアス)および2%レバミピド点眼液(ムコスタR点眼液UD2%,大塚製薬,以下ムコスタ)を用いた.2.実験動物ラット(雄性SD)は日本エスエルシーより購入し,1週間馴化飼育した.本研究は,「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年10月1日,法律第105号)」および「実験動物に飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年4月28日,環境省告示第88号)」を遵守し,実施した.3.ドライアイモデル作製および点眼Fujiharaらの方法10)に従って,眼窩外涙腺を各ラットの片眼において摘出した.対照として,眼窩外涙腺摘出を実施しない正常ラット(8眼)を設定した.涙腺摘出から8週間以上経過後,ソフトサンティア,ジクアスおよびムコスタの106あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014点眼を開始した.角膜上皮障害の評価および過ヨウ素酸シッフ(PAS)陽性細胞数の評価では,各点眼液の臨床上の用法用量に従い,ソフトサンティアおよびジクアスは1日6回,ムコスタは1日4回で,いずれも1回5μl,4週間点眼した(各8眼).また,涙液貯留量の評価では,各点眼液を単回点眼した(各12眼).4.角膜上皮障害の評価各点眼液の点眼前,点眼2および4週後に村上らの方法11)に従って,各眼のフルオレセイン染色スコア(0.9点)により評価した.5.涙液貯留量の評価ラットをペントバルビタール(ソムノペンチル,共立製薬)の腹腔内投与で全身麻酔後,各点眼液を各眼に各5μl点眼した.点眼10分後に,Schirmer試験紙(シルメル試験紙,昭和薬品化工)を1×17mmに裁断したSchirmer試験紙の先端をラットの下眼瞼の結膜.に挿入した.挿入1分後に試験紙を抜き取り,ただちに濡れた部分の長さを0.5mm単位で読み取り,涙液量の評価を行った.6.PAS染色によるPAS陽性細胞率の評価各点眼液を4週間点眼後,ペントバルビタールの腹腔内投与をし,全身麻酔を施した.腹部大動脈切断による放血殺にて安楽死させたのち,眼瞼結膜を採取し,4%パラホルムアルデヒド固定液に浸漬した.ヘマトキシリン・エオジン(HE)およびPAS染色を行い,PAS陽性細胞率を算出した.7.統計解析生物実験データ統計解析システムEXSUS(シーエーシー)を用いて5%を有意水準として解析した.試験系成立の解析ではStudentのt検定(等分散),薬剤比較の解析ではTukeyの多重比較検定を行った.II結果1.角膜上皮障害の検討図1に,眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルに対してソフトサンティア,ジクアスあるいはムコスタを点眼した際の点眼前,点眼2週後および点眼4週後の角膜のフルオレセイン染色スコアの結果を示す.点眼前のフルオレセイン染色スコアは,正常ラットに比して有意に高値を示した(p<0.01,Studentのt検定).ソフトサンティア群では,点眼2週後,4週後においてフルオレセイン染色スコアは有意に高値のままであった(p<0.01,Studentのt検定).ジクアスを点眼した群では,点眼2週後および4週後においてソフトサンティア群に比してフルオレセイン染色スコアは有意に低値を示した(2週後:p<0.01,4週後:p<0.05,Tukeyの多重比較検定).一方,ムコスタ群では,点眼2週後および4週後においてソフトサンティア群に比べて有意な変化は認められなかった(2週後:p=0.68,4週後:p=0.20,Tukey(106) 200μm200μmの多重比較検定).また,ジクアス群とムコスタ群を比べたティア,ジクアスあるいはムコスタを単回点眼し,10分後ところ,点眼2週後においてジクアス群はムコスタ群に比しの涙液量を比較したところ,ジクアス群では顕著な涙液量のて有意に低値を示した(p<0.05,Tukeyの多重比較検定).増加が認められ,無点眼群,ソフトサンティア群およびムコ2.涙液貯留量の比較図2に示すとおり,眼窩外涙腺を摘出すると涙液量は半分86点眼10分後##$$**¶¶■:涙腺摘出・無点眼■:涙腺摘出・以下に減少した(p<0.01,Studentのt検定).ソフトサン7:正常・無点眼角膜上皮フルオレセイン染色スコア:正常・無点眼■:涙腺摘出・ソフトサンティア******###†■:涙腺摘出・ジクアス■:涙腺摘出・ムコスタ7涙液量(mm)5ソフトサンティア■:涙腺摘出・ジクアス46■:涙腺摘出・ムコスタ3543212010点眼前点眼2週後点眼4週後図2眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルの涙液量減少に対するジクアスとムコスタの効果200μm200μm正常・無点眼涙腺摘出・無点眼図1眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルの角膜上皮障害に対するジクアスとムコスタの効果各値は,8例の平均値±標準誤差を示す.**:p<0.01,正常・無点眼群との比較(Studentのt検定).#:p<0.05,##:p<0.01,涙腺摘出・ソフトサンティア群との比較(Tukeyの多重比較検定).†:p<0.05,涙腺摘出・ムコスタ群との比較(Tukeyの多重比較検定).各値は,8あるいは12例の平均値±標準誤差を示す.$$:p<0.01,正常・無点眼群との比較(Studentのt検定).**:p<0.01,涙腺摘出・無点眼群との比較(Studentのt検定).##:p<0.01,涙腺摘出・ソフトサンティア群との比較(Tukeyの多重比較検定).¶¶:p<0.01,涙腺摘出・ムコスタ群との比較(Tukeyの多重比較検定).200μm200μm涙腺摘出・ソフトサンティア涙腺摘出・ジクアス涙腺摘出・ムコスタ図3眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルの各群の代表的な病理組織像(107)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014107 *#20304050無点眼無点眼ソフトサンティアジクアスムコスタPAS陽性率(%)†*#20304050無点眼無点眼ソフトサンティアジクアスムコスタPAS陽性率(%)†正常涙腺摘出図4眼窩外涙腺摘出ラット・ドライアイモデルのPAS陽性細胞率減少に対するジクアスとムコスタの効果各値は,8例の平均値±標準誤差を示す.*:p<0.05,正常・無点眼群との比較(Studentのt検定).#:p<0.05,涙腺摘出・無点眼群との比較(Tukeyの多重比較検定).†:p<0.05,涙腺摘出・ムコスタ群との比較(Tukeyの多重比較検定).スタ群に比して統計学的有意差が認められた(いずれもp<0.01,Tukeyの多重比較検定).一方,ムコスタ群は無点眼群およびソフトサンティア群に比べて増加傾向を示したが,統計学的有意差は認められなかった(無点眼群:p=0.43,ソフトサンティア群:p=0.49,Tukeyの多重比較検定).3.PAS陽性細胞率の比較図3に正常ラットおよび眼窩外涙腺摘出ラット(無点眼),さらに眼窩外涙腺摘出ラットに対してソフトサンティア,ジクアスあるいはムコスタを4週間点眼したときの眼瞼結膜のPAS染色像を示す.また,図4に各群の眼瞼結膜におけるPAS陽性細胞率を示す.眼窩外涙腺を摘出し8週以上経過したドライアイラットモデルにおいては,眼瞼結膜のPAS陽性細胞数は減少しており,PAS陽性細胞率は正常と比べ有意差を認めた(p<0.05,Studentのt検定,図4).4週間の点眼後,ジクアス群では無点眼群と比べ,PAS陽性細胞率の有意な増加を認めた(p<0.05,Tukeyの多重比較検定)が,ソフトサンティア群およびムコスタ群では有意な変化を認めず(p>0.05,Tukeyの多重比較検定),さらにジクアス群はムコスタ群に比して有意に高値を示した(p<0.05,Tukeyの多重比較検定).III考按本研究では,ドライアイモデル動物である眼窩外涙腺摘出ラットを用いて,ジクアスおよびムコスタの効果を角膜上皮フルオレセイン染色スコア,涙液量およびPAS陽性細胞率を指標に比較検討した.その結果,ジクアスは角膜上皮フル108あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014オレセイン染色スコア,涙液量およびPAS陽性細胞率のいずれに対しても改善作用を示し,既報10)と同様の結果が認められた.一方,ムコスタは,いずれの指標においても効果が低かった.ドライアイ治療では,最近は眼表面の層別治療であるTFOTが提唱されており,このためには,眼表面のどの部分が障害されているかを見きわめる眼表面の層別診断(TFOD:tearfilmorienteddiagnosis)が必要になってくる12).これらの層別診断や層別治療はわが国において,ジクアス,ムコスタという新しいドライアイ治療薬が登場したことで可能になった.ジクアスは涙液4)およびムチン分泌促進作用5,6),膜型ムチン発現促進作用7)を有しており,ムコスタは杯細胞増殖作用8)や膜型ムチン発現促進作用9)を有することから,TFOTでは両剤とも液層および上皮の治療に適していると考えられる.さらにジクアスはMGD治療にも効果があることが報告され13),今後油層の治療剤としても期待される.ジクアホソルナトリウムは結膜上皮細胞上のP2Y2受容体に結合し,細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させることでクロライドイオンが涙液側に放出され,浸透圧差が生じ,実質側から涙液側へ水分が誘導される4).また,結膜杯細胞上のP2Y2受容体にも作用し,同様に細胞内カルシウム濃度を上昇させることで,細胞内に貯蔵されたムチンを分泌させる5).今回用いたドライアイモデルは,眼窩外涙腺を外科的に摘出しており,涙液量が正常ラットの約半分に低下する.したがって涙液減少型のドライアイモデルと考えられる.このような涙液分泌が減少しているドライアイに対しては,涙液を改善させる点からジクアスが有効であると考えられる.本研究には,いくつかの限界があるが,その一つに角膜障害の評価方法が挙げられる.今回ドライアイモデルの眼表面上皮障害の指標にはフルオレセイン染色を使用したが,他の指標としてローズベンガル染色やリサミングリーン染色がある.特に結膜の評価にはローズベンガル染色やリサミングリーン染色が適しており,結膜杯細胞の増殖作用を有するムコスタ8)はローズベンガル染色では違った結果が得られた可能性がある.また,Toshidaらは,結膜障害モデルにおいてビタミンA点眼後にフルオレセインスコアの改善がローズベンガルスコアの改善よりも先行すると報告している14).このことからも涙液量増加作用を伴うジクアスではフルオレセイン染色スコアの改善が先行し,それにPAS陽性細胞数の改善効果が続いていると考えられ,ムコスタよりも有意であった可能性がある.今後は,ジクアスとムコスタの使い分けについて検討する必要があると考えられるが,ジクアスおよびムコスタのドライアイ患者に対する報告では,両剤ともに角結膜上皮障害の改善効果を示すが,涙液量に対してはジクアスによる効果は(108) 認められている15)ものの,ムコスタでは改善しないという報告16)がある.したがって,涙液量の減少が著しい症例では,涙液層の安定化に積極的に働きかけるジクアスがより効果を示す可能性が示唆され,また,ムコスタはもともと胃粘膜保護剤であることから上皮障害が有意な症例に有効な可能性が考えられる.今後,臨床報告が蓄積されるに従って明らかになっていくと思われる.文献1)島﨑潤(ドライアイ研究会):2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,20072)DEWSmembers:Thedefinitionandclassificationofdryeyedisease:ReportoftheDefinitionandClassificationSubcommitteeoftheInternationalDryEyeWorkshop(2007).OculSurf5:75-92,20073)横井則彦,坪田一男:ドライアイのコア・メカニズム─涙液安定性仮説の考え方─.あたらしい眼科29:291-297,20124)七條優子,村上忠弘,中村雅胤:正常ウサギにおけるジクアホソルナトリウムの涙液分泌促進作用.あたらしい眼科28:1029-1033,20115)七條優子,篠宮克彦,勝田修ほか:ジクアホソルナトリウムのウサギ結膜組織からのムチン様糖蛋白質分泌促進作用.あたらしい眼科28:543-548,20116)七條優子,阪元明日香,中村雅胤:ジクアホソルナトリウムのウサギ結膜組織からのMUC5AC分泌促進作用.あたらしい眼科28:261-265,20117)七條優子,中村雅胤:培養ヒト角膜上皮細胞におけるジクアホソルナトリウムの膜結合型ムチン遺伝子の発現促進作用.あたらしい眼科28:425-429,20118)UrashimaH,TakejiY,OkamotoTetal:Rebamipideincreasesmucin-likesubstancecontentsandperiodicacidSchiffreagent-positivecellsdensityinnormalrabbits.JOculPharmacolTher28:264-270,20129)TakejiY,UrashimaH,AokiAetal:Rebamipideincreasesthemucin-likeglycoproteinproductionincornealepithelialcells.JOculPharmacolTher28:259-263,201210)FujiharaT,MurakamiT,FujitaHetal:ImprovementofcornealbarrierfunctionbytheP2Y2agonistINS365inaratdryeyemodel.InvestOphthalmolVisSci42:96-100,200111)村上忠弘,中村雅胤:眼窩外涙腺摘出ラットドライアイモデルに対するヒアルロン酸点眼液と人工涙液の併用効果.あたらしい眼科21:87-90,200412)山口昌彦,松本幸裕,高静花ほか:TFOT(TearFilmOrientedTherapy)時代における点眼薬の使い方.FrontiersinDryEye7:8-16,201213)AritaR,SuehiroJ,HaraguchiTetal:Topicaldiquafosolforpatientswithobstructivemeibomianglanddysfunction.BrJOphthalmol97:725-729,201314)ToshidaH,OdakaA,KoikeDetal:Effectofretinolpalmitateeyedropsonexperimentalkeratoconjunctivalepithelialdamageinducedbyn-heptanolinrabbit.CurrEyeRes33:13-18,200815)TauberJ,DavittWF,BokoskyJEetal:Double-maskedplacebo-controlledsafetyandefficacytrialofdiquafosoltetrasodium(INS365)ophthalmicsolutionforthetreatmentofdryeye.Cornea23:784-792,200416)KinoshitaS,AwamuraS,OshidenKetal:Rebamipide(OPC-12759)inthetreatmentofdryeye:Arandomized,double-masked,multicenter,placebo-controlledphaseIIstudy.Ophthalmology119:2471-2478,2012***(109)あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014109

レバミピド点眼液の角膜上皮に対する安全性に関する検討

2013年10月31日 木曜日

《原著》あたらしい眼科30(10):1467.1471,2013cレバミピド点眼液の角膜上皮に対する安全性に関する検討福田正道*1中嶋英雄*2春田淳平*2柴田伸亮*1柴田奈央子*1長田ひろみ*1関祐介*1三田哲大*1佐々木洋*1*1金沢医科大学眼科学講座*2大塚製薬株式会社赤穂研究所SafetyofRebamipideOphthalmicSuspensionforCornealEpithelialCells:InVitroandInVivoStudyMasamichiFukuda1),HideoNakashima2),JunpeiHaruta2),ShinsukeShibata1),NaokoShibata1),HiromiOsada1),YusukeSeki1),NorihiroMita1)andHiroshiSasaki1)1)DepartmentofOphthalmology,KanazawaMedicalUniversity,2)AkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.レバミピド点眼液(商品名:ムコスタR点眼液UD2%,防腐剤フリー)の角膜上皮に対する安全性について塩化ベンザルコニウム(benzalkoniumchloride:BAK)を対照に用いて評価した.①培養ヒト角膜上皮細胞(humancornealepithelialcellline:HCE-T)に0.001%,0.002%,0.005%,0.01%BAK溶液またはレバミピド点眼液を0,5,15,30,60分間接触させた後に細胞生存率を測定した.②家兎に0.002%,0.005%,0.01%BAK溶液またはレバミピド点眼液を単回点眼し1分後に涙液を回収してlactatedehydrogenase(LDH)活性を測定した.③また家兎に0.01%BAKまたはレバミピド点眼液を5分ごとに5回点眼し,最終点眼の2分後に角膜抵抗(cornealresistance:CR)を測定した.BAKは濃度および時間依存的に角膜上皮細胞の生存率を低下させたのに対し,レバミピド点眼液では細胞生存率の低下はみられなかった.BAKは濃度依存的に涙液LDH活性を増加させたのに対し,レバミピド点眼液群でのLDH活性は生理食塩液と同程度であった.また,BAK群ではレバミピド点眼液群と比較して有意にCR比が低値を示した.今回の結果からレバミピド点眼液は角膜上皮障害をひき起こすことはないと考えられ,安全面に優れたドライアイ治療薬である.Thisstudyevaluatedthesafetyofrebamipideophthalmicsuspension(MucostaRophthalmicsuspensionUD2%),usingbenzalkoniumchloride(BAK)ascontrol.①Culturedhumancornealepithelial(HCE-T)cellswereincubatedwith0.001%,0.002%,0.005%or0.01%BAKsolution,orrebamipideophthalmicsuspensionfor0,5,15,30and60minutes;thecellswerecountedateachtimepointtocalculatethecellsurvivalrate(%).②Rabbiteyeswereinstilledwith50μLof0.002%,0.005%or0.01%BAKsolution,orrebamipideophthalmicsuspension,andlactatedehydrogenase(LDH)inthetear.uidwasmeasuredat1minuteafterinstillation.③Rabbiteyesweretheninstilledwith50μLof0.01%BAKsolutionorrebamipideophthalmicsuspension5timesat5-minuteintervals;cornealresistance(CR)wasmeasuredat2minutesafterthelastinstillation.BAKsolutioncausedaconcentration-andtime-dependentdecreaseincellsurvivalrate,whereastherewasnocellsurvivalratedecreaseintherebamipideophthalmicsuspensiongroup.InstillationofBAKsolutionincreasedtearLDHactivityinacon-centration-dependentmanner;however,LDHactivityintherebamipideophthalmicsuspensiongroupwasatthesamelevelasthatinthesalinegroup.Also,BAKinstillationresultedinsigni.cantCRratiodecreasecomparedtorebamipideophthalmicsuspension.Theresultsoftheseinvitroandinvivostudiessuggestthatamongdryeyetherapeuticagents,rebamipideophthalmicsuspensionispotentiallysaferforpatients.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(10):1467.1471,2013〕Keywords:レバミピド点眼液,塩化ベンザルコニウム(BAK),細胞生存率,涙液LDH活性,角膜抵抗.rebam-ipideophthalmicsuspension,benzalkoniumchloride(BAK),cellviability,tearLDHactivity,cornealresistance.〔別刷請求先〕福田正道:〒920-0293石川県河北郡内灘町大学1-1金沢医科大学眼科学講座Reprintrequests:MasamichiFukuda,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KanazawaMedicalUniversity,1-1Daigaku,Uchinada-machi,Kahoku-gun,Ishikawa920-0293,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(123)1467はじめにドライアイの治療はこれまで人工涙液やヒアルロン酸ナトリウム点眼液による点眼治療が主流であり,一部重症例に対しては外科的治療が行われてきたが,最近,ジクアホソルナトリウム点眼液ならびにレバミピド点眼液が相ついで上市された.ジクアホソルナトリウム点眼液は結膜からの水分分泌促進作用1),角結膜からのムチン分泌促進作用2)を有することが報告されている.また,レバミピド点眼液については角結膜のムチン増加作用3,4)に加えて,結膜ゴブレット細胞の増加作用4)や角結膜上皮微細構造の修復作用5)などが報告されている.このように,さまざまな薬理作用を持ったドライアイ治療用点眼薬が複数開発されたことでドライアイの治療法は多様化し,その選択肢は広がっている.一般的に点眼薬には薬理作用に関与する主剤に加えて種々の添加物が含有されており,特に塩化ベンザルコニウム(benzalkoniumchlo-ride:BAK)に代表される防腐剤は優れた防腐効力を示す一方で,涙液が減少し角結膜に障害を有するドライアイ患者においてはその細胞障害性による悪影響が懸念される6.8).このため薬理作用の違いだけでなく防腐剤の有無に関してもドライアイ治療用点眼薬の選択における重要な判断材料となる可能性がある.レバミピド点眼液は防腐剤フリーのユニットドーズ製剤であることから,防腐剤を含有する他のドライアイ治療用点眼薬に比べて細胞障害性に対する懸念は比較的少ないと推測される.本研究では培養ヒト角膜上皮細胞を用いた評価系(invitro試験)に加え,家兎での涙液中lactatedehydrogenase(LDH)量の測定ならびに角膜抵抗測定装置による評価法(invivo試験)によりBAKを対照としてレバミピド点眼液の角膜上皮に対する安全性を評価した.I実験材料1.使用薬剤2%レバミピド点眼液は,市販の商品名ムコスタR点眼液UD2%(大塚製薬)および塩化ベンザルコニウム(東京化成)を使用した.2.使用動物ニュージーランド成熟白色家兎(NZW;体重2.0.3.5kg)を本実験に使用した.動物の使用にあたり,金沢医科大学の動物使用倫理委員会の使用基準および「大塚製薬株式会社動物実験指針」を遵守して実施した.また,実験はARVO(TheAssociationforResearchinVisionandOphthalmolo-gy)のガイドラインに従って動物に負担がかからないように配慮して行った.3.使用細胞株細胞株はSV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T,購入元:理化学研究所)を使用し,10%fetalbovineserum(FBS)添加Dulbecco’sModi.edEagleMedium:Nutrient1468あたらしい眼科Vol.30,No.10,2013MixtureF-12(DME/F-12)培地で37℃,5%CO2下で培養した.4.角膜抵抗測定装置角膜抵抗(cornealresistance:CR)値の測定には,角膜抵抗測定装置(cornealresistancedevice,CRDFukudamodel2007)を用いた9,10).本装置は角膜コンタクトレンズ(CL)電極(メイヨー製)とファンクション・ジェネレータ(Dagatron,Seoul,Korea),アイソレーター(BSI-2;BAKElectronicsInc.,USA)およびPowerLabシステム(ADInstruments,Australia)から構成されている.角膜CL電極はアクリル樹脂製で家兎角膜形状に対応する直径とベースカーブとを有している.弯曲凹面に設けられた関電極および不関電極の材質はいずれも金で,その外径(直径)はそれぞれ12mm,4.8mm,および幅が0.8mm,0.6mmである.測定条件は交流,周波数:1,000Hz,波形:duration,矩形波:5ms,電流:±50μAで設定した.II実験方法1.培養ヒト角膜上皮細胞によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invitro)HCE-Tを96wellプレートに播種し,10%FBS含有DME/F-12培地で37℃,5%CO2下で一昼夜培養した.FBS非含有培地で洗浄した後,培地(コントロール)またはBAK溶液(0.001%,0.002%,0.005%,0.01%;培地で希釈),レバミピド点眼液を0,5,15,30,60分間接触させた.培地で洗浄後,CellCountingKit-8(同仁化学)を添加し,37℃で3時間インキュベートした後,マイクロプレートリーダー(日本モレキュラーデバイス)で450nmにおける吸光度を測定した.培地接触0分における細胞数を100%として各被験液接触後の細胞生存率を求めた.また,各時間の細胞生存率を用いて回帰分析により50%細胞障害時間(50%celldamagetime:CDT50)値を算出した.各値は4例の平均値±標準誤差を示す.2.涙液LDHassayによるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invitro)成熟白色家兎にBAK溶液(0.002%,0.005%,0.01%)またはレバミピド点眼液50μLを両眼に単回点眼し,1分後にマイクロキャピラリー(Drummond)で涙液を1μL回収した.生理食塩液で60μLにボリュームアップした後,LDH-細胞毒性テストワコー(和光純薬)を使用してLDH活性を測定した.なお,標準曲線の作成には精製LDH(オリエンタル酵母)を用いた.各値は8例の平均値±標準誤差を示す.3.角膜抵抗測定法によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invivo)成熟白色家兎に生理食塩液または0.01%BAK溶液,レバミピド点眼液50μLを5分ごとに両眼に5回点眼し,5回目(124)点眼終了の2分後にCRを測定した.CRの測定には角膜抵抗測定装置を用い,CR値(Ω)とCR比(%)の算出はつぎのように行った6,7).CR値(Ω)=電圧(V)/電極(A)CR比(%)=点眼後のCR値/点眼前のCR値×100各値は4.6例の平均値±標準誤差を示す.4.統計解析コントロール群に対する各群の細胞生存率をTwo-wayrepeatedmeasuresANOVA(analysisofvariance)により検定するとともに,各測定時間でコントロール群に対するDunnett’stest(Two-tail)を実施した.LDH活性値は対数変換により正規化した後でBAK溶液については生理食塩液を含めてWilliams’test(Upper-tail)を行い,レバミピド点眼液については生理食塩液に対するStudent’st-testを行った.各群のCR比はStudent’st-testで解析した.いずれの検定も5%を有意水準とした.III結果1.培養ヒト角膜上皮細胞によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invitro)培地接触0分における細胞生存率(100%)に対する各被験液接触後の細胞生存率(平均値±標準誤差)を図1に示す.BAK溶液群の細胞生存率は濃度および時間依存的に低下し,Two-wayrepeatedmeasuresANOVAによる解析ではいずれの濃度のBAK溶液群においても細胞生存率は有意に低値を示した.0.001%BAK溶液群では30分後以降で有意に低値を示し,細胞生存率は30分で72.0±6.3%,60分で38.6140:Control(培地):0.001%BAK溶液:0.005%BAK溶液:レバミピド点眼液:0.002%BAK溶液:0.01%BAK溶液120±6.9%であった.0.002%BAK溶液群の細胞生存率は15分後以降で有意に低値を示し,その値は15分後に28.7±6.0%,30分後に3.7±3.0%であった.0.005%および0.01%BAK溶液群の細胞生存率は接触5分後でそれぞれ4.9±1.6%および3.9±0.2%であった.一方,レバミピド点眼液群では60分後まで細胞生存率が低下することはなく,統計学的にもコントロール群に対して差は認められなかった(Two-wayrepeatedmeasuresANOVA).細胞生存率から算出したCDT50値を表1に示す.BAK溶液群のCDT50(分)はBAK濃度に依存して短縮した(0.001%BAK溶液:49.88分,0.002%BAK溶液:13.91分,0.005%BAK溶液:2.63分,0.01%BAK溶液:2.60分)のに対して,レバミピド点眼液群ではコントロールと同様に60分以上であった.2.涙液LDHassayによるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invitro)各被験液点眼後の涙液LDH活性値(平均値±標準誤差)を図2に示す.BAK溶液は濃度依存的にLDH活性を増加させ,生理食塩液群が474.0±62.0Unit/Lであったのに対し,0.002%BAK溶液群が1220.1±322.9Unit/L,0.005%BAK溶液群が4371.8±1502.2Unit/L,0.01%BAK溶液群表1培養ヒト角膜上皮細胞におけるレバミピド点眼液およびBAK溶液のCDT50(分)点眼液CDT50(分)Control(培地)>60レバミピド点眼液>600.001%BAK溶液0.002%BAK溶液0.005%BAK溶液0.01%BAK溶液49.8813.912.632.606040**##100,000****細胞生存率(%)100涙液LDH活性(Unit/L)*10,000NS1,000100**##10**##**##1時間(分)生理食塩液レバミピド0.002%0.005%0.01%点眼液BAK溶液BAK溶液BAK溶液図1培養ヒト角膜上皮細胞によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invitro)図2涙液LDHassayによるレバミピド点眼液およびBAK##p<0.01vs.Control(培地);Two-wayrepeatedmeasures溶液の安全性評価(invitro)ANOVA.*p<0.05,**p<0.01;Williams’test(Upper-tail).**p<0.01vs.Control(培地);Dunnett’stest(Two-tail).NS:Notsigni.cant;Unpairedt-test.(125)あたらしい眼科Vol.30,No.10,20131469CR比(%)NSNS*1201101009080生理食塩液レバミピド0.01%点眼液BAK溶液図3角膜抵抗測定法によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invivo)*p<0.05,NS:Notsigni.cant;Unpairedt-test.が21562.2±4801.4Unit/Lを示し,生理食塩液に対し0.002%BAK溶液で2.6倍,0.005%BAK溶液で9.22倍,0.01%BAK溶液で45.5倍に増加した.一方,レバミピド点眼液群のLDH活性は327.8±74.0Unit/Lを示し,生理食塩液群と同程度であった.3.角膜抵抗測定法によるレバミピド点眼液およびBAK溶液の安全性評価(invivo)角膜抵抗測定法におけるCR比(平均値±標準誤差)を図3に示す.0.01%BAK溶液群のCR比(91.7±2.9%)は生理食塩液群(101.1±3.3%)およびレバミピド点眼液群(111.1±5.8%)のいずれに対しても低値を示し,レバミピド群に対しては有意に低値であった.IV考按わが国ではドライアイ治療用点眼薬としてヒアルロン酸ナトリウム点眼液およびジクアホソルナトリウム点眼液に加えてレバミピド点眼液が上市され,近年点眼治療の選択肢が広がっており,これに伴い涙液の層別治療(tear.lmorientedtherapy:TFOT)の概念11)が提唱され,それぞれの点眼薬の薬理作用に基づいた治療が行われている.一般的に点眼薬には有効成分以外にもさまざまな添加物が含有されており,特にBAKおよび塩化ベンゼトニウム,グルコン酸クロルヘキシジンなどの防腐剤が角膜上皮に与える影響は無視できない6.8).そこで今回レバミピド点眼液の角膜上皮に対する安全性についてBAKを対照にinvitroおよびinvivo試験系で評価した.まずinvitro試験として培養ヒト角膜上皮細胞を用いて細胞生存率を指標に検討した.BAK溶液は濃度および接触時間依存的に細胞生存率を低下させ細胞障害作用を示したのに対して,レバミピド点眼液ではコントロールと同様に1470あたらしい眼科Vol.30,No.10,2013CDT50は60分以上を示し,BAK溶液で検出されたような細胞障害性は認められなかった.この試験系は被験液の細胞障害作用を検出する方法としては非常に感度の高い評価系ではあるが,涙液による希釈が考慮されていない点,また重層化された角膜上皮とは異なり単層細胞である点において生体とは大きく異なる.そこで,生体での影響を推察するためにLDHassayおよび角膜抵抗測定法を用いたinvivo試験系にてさらなる検討を実施した.涙液中のLDH量はCLの装用12)やBAKの点眼11)により上昇することが報告されており,オキュラーサーフェスの障害を定量的に評価することのできる指標であることから本研究でもLDHassayにより細胞障害性を評価した.その結果,BAK溶液単回点眼後の涙液LDH活性は生理食塩液に対して0.002%BAK溶液で2.6倍,0.005%BAK溶液で9.22倍,0.01%BAK溶液で45.5倍を示し,BAKの濃度依存的に涙液中のLDH量が増加した.これは細胞膜が傷害されてLDHが涙液中に放出されたことを意味し,BAKは単回点眼でも細胞に障害を与えることが示唆された.これに対してレバミピド点眼液群のLDH活性は生理食塩液と同程度を示したことから,レバミピド点眼液の単回点眼によるオキュラーサーフェスへの影響はほとんどないと推測された.また,筆者らはこれまでに角膜抵抗測定法を用いて種々の点眼液の細胞障害性について検討してきた6,9,13,14).そこで,本研究でもこの角膜抵抗測定法を用いて評価したところ,BAKが角膜抵抗を低下させる傾向を示したのに対して,レバミピド点眼液では角膜抵抗の低下を認めなかった.以上のことから,BAKが角膜上皮を含むオキュラーサーフェスに対して細胞障害性を示す可能性があること,ならびに防腐剤フリーのレバミピド点眼液は潜在的に安全面に優れたドライアイ治療薬であることが示唆された.今回明らかとなったBAKの細胞障害作用が臨床においてどの程度問題となるのかについては不明であるものの,ドライアイ患者では涙液が減少していることに加え,角結膜上皮に障害を有していることから正常眼と比較してBAKの影響を受けやすいと考えられ,BAKを含有するドライアイ治療薬を点眼することによって角結膜上皮障害が発症/増悪する可能性は否定できない.ドライアイ治療用点眼薬を選択する際には,個々の点眼薬の持つ薬理作用だけでなく,防腐剤の有無やその種類による角膜上皮障害の発症/増悪のリスクについても十分に考慮することが重要であると考える.文献1)FujiharaT,MurakamiT,FujitaHetal:ImprovementofcornealbarrierfunctionbytheP2Y2agonistINS365inaratdryeyemodel.InvestOphthalmolVisSci42:96-100,2001(126)2)FujiharaT,MurakamiT,NaganoTetal:INS365sup-presseslossofcornealepithelialintegritybysecretionofmucin-likeglycoproteininarabbitshort-termdryeyemodel.JOculPharmacolTher18:363-370,20023)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,20044)UrashimaH,TakejiY,OkamotoTetal:Rebamipideincreasesmucin-likesubstancecontentsandperiodicacidSchi.reagent-positivecellsdensityinnormalrabbits.JOculPharmacolTher28:264-270,20125)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20126)福田正道,矢口祐基,藤田信之ほか:ヒアルロン酸ナトリウム点眼液の角膜細胞に対する影響の検討.あたらしい眼科28:549-552,20117)UematsuM,KumagamiT,ShimodaKetal:In.uenceofalkylchainlengthofbenzalkoniumchlorideonacutecor-nealepithelialtoxicity.Cornea29:1296-1301,20108)ImayasuM,MoriyamaT,OhashiJetal:QuantitativemethodforLDH,MDHandalbuminlevelsintearswithocularsurfacetoxicityscoredbydraizecriteriainrabbiteyes.CLAOJ18:260-266,19929)FukudaM,SasakiH:Quantitativeevaluationofcornealepithelialinjurycausedbyn-heptanolusingacornealresistancemeasuringdeviceinvivo.ClinOphthalmol6:585-593,201210)福田正道,矢口裕基,萩原健太ほか:ラタノプロスト後発品点眼薬の角膜上皮障害と点眼薬の家兎眼内移行動態.医学と薬学68:283-290,201211)横井則彦,坪田一男:ドライアイのコアメカニズム─涙液安定性仮説の考え方─.あたらしい眼科28:291-297,201212)IchijimaH,ImayasuM,OhashiJetal:Tearlactatedehy-drogenaselevels.Anewmethodtoassesse.ectsofcon-tactlenswearinman.Cornea11:114-120,199213)福田正道,稲垣伸亮,萩原健太ほか:ラタノプロスト後発品点眼薬の角膜上皮細胞に対する安全性の検討.あたらしい眼科28:849-854,201114)福田正道,佐々木洋,高橋信夫ほか:角膜抵抗測定装置によるプロスタグランジン関連点眼薬の角膜障害の評価.あたらしい眼科27:1581-1585,2010***(127)あたらしい眼科Vol.30,No.10,20131471

カプサイシン処置による角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果

2013年9月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科30(9):1309.1313,2013cカプサイシン処置による角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果竹治康広中嶋英雄香川陽人浦島博樹篠原久司大塚製薬株式会社赤穂研究所EffectofRebamipideOphthalmicSuspensiononCapsaicin-inducedCornealEpithelialDamageinRatsYasuhiroTakeji,HideoNakashima,YotoKagawa,HirokiUrashimaandHisashiShinoharaAkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.レバミピド点眼液は,角膜および結膜においてムチン産生促進作用を有するドライアイ治療薬である.今回,カプサイシン処置を施したラットにおける角膜上皮障害および涙液安定性の低下に対する効果について検討した.カプサイシン処置を行ったラットに2%レバミピド点眼液または基剤を1日4回,15日間点眼した.角膜上皮障害はフルオレセイン染色スコアにより評価した.また,涙液量,涙液層破壊時間(BUT)および涙液中Muc5AC量を測定した.カプサイシン処置により,角膜上皮障害,涙液量の低下およびBUTの短縮が観察された.レバミピド点眼液により,経時的なフルオレセイン染色スコアの低下が観察され,さらに涙液量の回復,BUTの延長および涙液中Muc5AC量の増加が認められた.レバミピド点眼液は,カプサイシン処置を施したラットにおける涙液の減少を伴う角膜上皮障害を抑制することが明らかとなり,この作用は涙液中のムチン増加を介して涙液保持能を高めることにより,涙液安定性を向上させた可能性が示唆された.Rebamipideophthalmicsuspensionisatherapeuticagentfordryeyethatpromotestheproductionofmucininthecorneaandconjunctiva.Thisstudyinvestigatedtheeffectofrebamipideophthalmicsuspensiononcornealepithelialdamageanddecreaseintearstabilityinrats.Rebamipideophthalmicsuspension(2%)orvehiclewasadministeredtopically4timesdailyfor15daystoratstreatedwithcapsaicin.Cornealepithelialdamagewasevaluatedbyscoringfluoresceinstaining.Tearvolume,breakuptime(BUT)andtearMuc5ACweremeasured.Theadministrationofcapsaicininducedcornealepithelialdamage,decreaseintearvolumeanddepressionoftearstability.Rebamipideophthalmicsuspensionshowedtime-dependentimprovementofcornealepithelialdamage,restorationoftearvolume,shorteningofBUTandincreaseintearMuc5AC.Rebamipideophthalmicsuspensionwasshowntoimprovecapsaicin-inducedcornealepithelialdamageinrats.TheactionofrebamipideophthalmicsuspensionmayimprovetearstabilitybyenhancingtearretentionviaincreasedtearMuc5AC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(9):1309.1313,2013〕Keywords:レバミピド点眼液,涙液減少,角膜上皮障害,涙液安定性,ムチン.rebamipideophthalmicsuspension,tear-deficiency,cornealepithelialdamage,tearstability,mucin.はじめにドライアイは涙液の状態から涙液減少型と涙液蒸発亢進型の2つに大別される.涙液減少型ドライアイは,Sjogren症候群や,術後の知覚神経の障害などの要因により,涙腺からの涙液の供給の低下を生じ,涙液減少に伴い涙液交換の低下,浸透圧上昇など涙液の質の悪化がひき起こされる1).涙液蒸発亢進型ドライアイは,内的および外的なさまざまな要因による涙液の安定性低下が原因である.涙液安定性低下の因子の一つとして,眼表面のムチン減少による角膜表面の水濡れ性低下があげられる.実際,ドライアイ患者において,分泌型ムチン2)および膜型ムチン3)発現が低下していることが報告されている.〔別刷請求先〕竹治康広:〒678-0207兵庫県赤穂市西浜北町1122-73大塚製薬株式会社赤穂研究所Reprintrequests:YasuhiroTakeji,AkoResearchInstitute,OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.,1122-73Nishihamakita,Ako,Hyogo678-0207,JAPAN0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(109)1309 また,これらドライアイの発症・増悪のコア・メカニズムとして,涙液層の安定性の低下に伴い角膜上皮に障害がひき起こされ,上皮の水濡れ性が低下して,再び涙液層の安定性低下へと続く悪循環が問題とされている.レバミピド点眼液は,角膜および結膜においてムチン産生促進作用を有するドライアイ治療薬である.N-アセチルシステイン処置によるムチン被覆障害モデルにおいて,レバミピド点眼液は,ムチン被覆障害,涙液安定性および角結膜表面の微細構造を改善することを報告している4,5).このムチン被覆障害モデルでは涙液量の低下は認められていないことより,レバミピド点眼液は,ムチンの減少が原因で涙液安定性が低下したドライアイには有効であると考えられるが,涙液が減少したドライアイにおける角膜上皮障害に対する効果については明らかにされていない.今回,カプサイシン処置を施したラットを用いて,涙液の刺激性分泌の低下を伴う角膜上皮障害および涙液安定性の低下に対するレバミピド点眼液の効果について検討した.I実験方法1.カプサイシンの処置カプサイシンの処置は香川らの方法6)を参考にした.生後4日齢のWister/ST雌性ラット(日本エスエルシー)に50mg/kgのカプサイシン(和光純薬)を皮下投与することによりモデルを作製した.カプサイシンは10%エタノール(和光純薬),10%Tween80(Sigma)を含有した生理食塩水で溶解させ使用した.正常群は,非処置とした.カプサイシン投与4週後に,涙液量測定および角膜フルオレセイン染色を行い,群分けを実施した.本研究は,「大塚製薬株式会社動物実験指針」を遵守し実施した.2.薬物の投与カプサイシンを処置したラットのうち,レバミピド群には2%レバミピド点眼液を,コントロール群には基剤を1回5μL,1日4回,15日間点眼した.正常群は点眼を実施しなかった.3.涙液量および涙液層破壊時間(tearfilmbreakuptime:BUT)の測定涙液量の測定は,1.5mm幅に切断したシルメル試験紙を下側結膜に挿入し,1分間保持した.測定は点眼開始13日目の薬物点眼30分後に実施した.BUTの測定は,既報を一部改変した7).0.2%フルオレセイン溶液を5μL点眼し,強制的に瞬きさせた後,細隙灯顕微鏡(SL-7E,TOPCON)を用いて測定した.測定は点眼開始14日目の点眼30分後に実施した.4.角膜上皮障害の観察ラットの角膜上皮障害の観察は麻酔下で行った.麻酔は吸入麻酔剤であるイソフルラン(フォーレン吸入麻酔液,ア1310あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013表1スコア評価基準スコア角膜の染色状態0点状染色がない(正常)1点状染色が疎である2点状染色が密でもなく疎でもない3点状染色が密であるボット)を実験動物ガス麻酔システム(片山化学)を用いて実施した.1%フルオレセイン溶液を1μL点眼した後,余分な染色液を生理食塩水で洗浄した.共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡(F-10,NIDEK)にて角膜を撮影し,スコア評価は角膜を上部・中央部・下部に分け,各領域の染色状態を戸田らの方法8)に従って0.3点にスコア化し,角膜全体を9点満点とした(表1).角膜上皮障害の観察は,すべて盲検下で点眼前,点眼5,10および15日後に実施した.5.涙液中ムチンMuc5AC量の測定点眼開始13日目にシルメル試験紙を用いて涙液を採取した.シルメル試験紙をあらかじめ0.15mLリン酸緩衝生理食塩水〔PBS(.)〕が入ったチューブに入れ,撹拌することにより抽出した.遠心(15,000rpm,10分,4℃)後,上清を0.1mL採取し,Muc5AC量をRatMuc5ACELISAkit(CUSABIOBIOTECH)を用いて測定した.6.統計解析データは平均値±標準誤差で示し,統計解析は,SAS(Release9.1,SASInstituteJapan,Ltd)を用いて実施した.角膜上皮障害について,コントロール群とレバミピド群の間で繰り返し測定による分散分析を,各時間における2群間の違いを対応のないt-test(両側)を実施した.涙液量,BUTおよび涙液中Muc5ACについて,正常群とコントロール群の間およびコントロール群とレバミピド群の間で対応のないt-test(両側)を行った.いずれの検定も5%を有意水準として解析した.II結果1.角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果について,点眼開始15日目の典型的な角膜フルオレセイン染色の観察像を図1に示す.コントロール群では,正常群に比べ多数の点状染色が出現したのに対し,レバミピド群では点状染色は減少した.図2はフルオレセイン染色スコアの経時変化を示し,正常群のスコアは最大でも開始10日目の1.2±0.3であり,観察期間を通して低い値を示した.一方,コントロール群に関して,開始前のスコア(4.9±0.3)は正常群に比べ明らかに高く,開始15日目においても3.5±0.5を示し,観察期間を通して高いスコアを維持した.レバミピド群は,経時的な染色(110) 図1角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果点眼開始15日目の角膜フルオレセイン染色像を示す.コントロール群では,正常群に比べ,点状の染色が観察された.一方,レバミピド群では,点状の染色は減少した.正常ラットコントロールレバミピドカプサイシン投与ラット:正常ラット##**0123456涙液量(mm)6543:コントロール:レバミピド051015*角膜フルオレセイン染色スコア#*210正常ラットコントロールレバミピド時間(日)図2角膜上皮障害に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)*:p<0.05vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.#:p<0.05vsコントロール〔繰り返し測定による分散分析〕.スコアの低下を示し,点眼開始10および15日後のレバミカプサイシン投与ラット図3涙液量に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)点眼開始13日目に測定した.##:p<0.01vs正常〔対応のないt-test(両側)〕.**:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.ピド群のスコア(2.0±0.6,1.7±0.6)は,コントロール群のスコア(3.9±0.5,3.5±0.5)に比べて有意に低下した.2.涙液量およびBUTに対するレバミピド点眼液の効果涙液量およびBUTに対するレバミピド点眼液の効果の結果を図3および図4に示す.正常群の涙液量は4.4±0.2mmを示すのに対し,コントロール群の涙液量は2.6±0.1mmに有意に低下した.それに対してレバミピド群は3.1±0.1mmに有意に増加させた.BUTに関して,正常群は10.0±0.7秒を示したのに対し,コントロール群では5.9±0.5秒に有意に短縮した.レバミピド群のBUT(8.9±0.8秒)は,コントロール群に対して有##**024681012BUT(秒)正常ラットコントロールレバミピド意な延長を示した.3.涙液中Muc5ACに対するレバミピド点眼液の効果涙液中Muc5ACに対するレバミピド点眼液の効果の結果を図5に示す.コントロール群のMuc5AC量(19.7±2.8pg)は,正常群(26.6±3.5pg)に対して有意な差はないが低値を示した.一方,レバミピド群(52.4±9.3pg)は,コントロー(111)カプサイシン投与ラット図4BUTに対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=12)点眼開始14日目に測定した.##:p<0.01vs正常〔対応のないt-test(両側)〕.**:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131311 涙液中Muc5AC量(pg)706050403020100NS##正常ラットコントロールレバミピドカプサイシン投与ラット図5涙液中Muc5AC量に対するレバミピド点眼液の効果値は平均値±標準誤差を示す.(n=11.12)点眼開始13日目に採取した涙液を測定した.##:p<0.01vsコントロール〔対応のないt-test(両側)〕.NS:有意差なしvs正常〔対応のないt-test(両側)〕.ル群(19.7±2.8pg)に対して有意な増加を示した.III考按涙液の減少を伴う角膜上皮障害の治療は,涙液量を増加させることであり,人工涙液あるいはヒアルロン酸ナトリウム点眼液が用いられている.しかし,人工涙液の頻回点眼は,涙液の希釈を誘導し眼表面に悪影響を及ぼすこと9),涙液が極度に減少している患者に対してヒアルロン酸ナトリウム点眼液の効果が低いこと10)が報告されており,涙液の量だけでなく質の改善も必要と考えられる.そこで,涙液の減少を伴う角膜上皮障害および涙液安定性に対するレバミピド点眼液の効果について検討した.涙液分泌の低下を示す動物モデルとしては,涙腺を摘出したモデル11)や,副交感神経遮断薬であるスコポラミンの投与により涙腺からの涙液分泌を遮断するモデル12)が報告されているが,今回筆者らは,涙腺自身は正常な機能を保っているカプサイシン処置モデルを用いた.カプサイシンは知覚神経の伝達物質であるサブスタンスPの枯渇をひき起こすため,知覚神経からの栄養物質の欠如,および刺激による涙液分泌の低下を伴う角膜上皮障害を発症することが報告されている6,13).筆者らは,本モデルにおいて涙液量低下および角膜上皮障害だけでなく,涙液安定性の指標となるBUTも短縮していることを確認した.Pengらの報告によれば正常ラットのBUTは14.3.15.3秒であり14),筆者らは既報と大きな違いがない測定系において,カプサイシンモデルにおけるBUT短縮を明らかにした.レバミピド点眼液を反復投与すると,角膜上皮障害が改善することが明らかになった.以前,レバミピド点眼液はムチ1312あたらしい眼科Vol.30,No.9,2013ン被覆障害モデルにおいて,角結膜表面の微細構造を改善し,それには角結膜のムチン増加が関与していることを報告している5).本モデルにおいても涙液中Muc5ACの増加が観察されていることより,上皮障害改善作用にはムチン増加が関与していると推測される.さらに,涙液量の回復とBUTの延長を示していることより,レバミピド点眼液は眼表面のムチン増加を介して,涙液保持能の向上および角膜上皮障害の改善により安定した涙液層の形成を促したことが示唆された.なお,レバミピド点眼液は本モデルにおける知覚の低下に対して効果を示さないことを確認しており,涙液量の増加および角膜上皮障害の改善は,知覚神経自身の機能の改善を介したものではないと考えられる.LASIK(laserinsitukeratomileusis)術後の知覚神経の障害に伴う涙液分泌低下,BUTの短縮は,ドライアイの要因の一つとされていること15)から,カプサイシン処置ラットを用いた今回の結果より,レバミピド点眼液は涙液の刺激性分泌の減少に起因した角膜上皮障害が生じているドライアイ患者に対しても有効な治療薬として期待される.文献1)TheInternationalDryEyeWorkShop:Thedefinitionandclassificationofdryeyedisease:reportoftheDefinitionandClassificationSubcommitteeoftheInternationalDryEyeWorkShop.OculSurf5:291-297,20072)ArguesoP,BalaramM,Spurr-MichaudSetal:DecreasedlevelsofthegobletcellmucinMUC5ACintearsofpatientswithSjogrensyndrome.InvestOphthalmolVisSci43:1004-1011,20023)ArguesoP,Spurr-MichaudS,RussoCLetal:MUC16mucinisexpressedbythehumanocularsurfaceepitheliaandcarriestheH185carbohydrateepitope.InvestOphthalmolVisSci44:2487-2495,20034)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesontheconjunctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,20045)中嶋英雄,浦島博樹,竹治康広ほか:ウサギ眼表面ムチン被覆障害モデルにおける角結膜障害に対するレバミピド点眼液の効果.あたらしい眼科29:1147-1151,20126)KagawaY,ItohS,ShinoharaH:Investigationofcapsaicin-inducedsuperficialpunctatekeratopathymodelduetoreducedtearsecretioninrats.CurrEyeRes38:729735,20137)JainP,LiR,LamaTetal:AnNGFmimetic,MIM-D3,stimulatesconjunctivalcellglycoconjugatesecretionanddemonstratestherapeuticefficacyinaratmodelofdryeye.ExpEyeRes93:503-512,20118)TodaI,TsubotaK:Practicaldoublevitalstainingforocularsurfaceevaluation.Cornea12:366-367,19939)大竹雄一郎,山田昌和,佐藤直樹ほか:点眼薬中の防腐剤による角膜上皮障害について.あたらしい眼科8:15991603,1991(112) 10)高村悦子:ドライアイのオーバービュー.FrontiersinDryEye1:65-68,200611)FujiharaT,MurakamiT,NaganoTetal:INS365suppresseslossofcornealepithelialintegritybysecretionofmucin-likeglycoproteininarabbitshort-termdryeyemodel.JOculPharmacolTher18:363-370,200212)DursunD,WangM,MonroyDetal:Amousemodelofkeratoconjunctivitissicca.InvestOphthalmolVisSci43:632-638,200213)FujitaS,ShimizuT,IzumiKetal:Capsaicin-inducedneuroparalytickeratitis-likecornealchangesinthemouse.ExpEyeRes38:165-175,198414)PengQH,YaoXL,WuQLetal:EffectsofextractofBuddlejaofficinaliseyedropsonandrogenreceptorsoflacrimalglandcellsofcastratedratswithdryeye.IntJOphthalmol3:43-48,201015)TodaI:LASIKandtheocularsurface.Cornea27:S7076,2008***(113)あたらしい眼科Vol.30,No.9,20131313