‘ワクチン’ タグのついている投稿

COVID-19ワクチン接種後に角膜移植術後拒絶反応を認めた2症例

2025年2月28日 金曜日

《原著》あたらしい眼科42(2):250.253,2025cCOVID-19ワクチン接種後に.膜移植術後拒絶反応を認めた2症例瀬越一毅*1脇舛耕一*1南出みのり*1山崎俊秀*1外園千恵*2木下茂*1*1バプテスト眼科クリニック*2京都府.医科.学眼科学教室CTwoCasesofCornealGraftRejectionFollowingCOVID-19VaccineKazukiSegoe1),KoichiWakimasu1),MinoriMinamide1),ToshihideYamasaki1),ChieSotozono2)andSigeruKinoshita1)1)DepartmentofOphthalmology,BaptistEyeInstitute,2)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineCCOVID-19ワクチン接種に伴って炎症性の眼合併症が報告されている.今回,ワクチン摂種後に.膜移植術後拒絶反応を認めた症例を経験した.症例C1はC78歳,男性.15年前に右眼の全層.膜移植術を施.され,3年前に全層.膜移植術を再施.されていた.4回.のCCOVID-19ワクチン接種後C12C..に急激な右眼の視.低下を.覚し受診..膜移植術後拒絶反応と診断し,ステロイド全.投与および点眼治療を.い,治療開始後C14C..には拒絶反応による炎症の改善を得た.症例C2はC61歳,.性.12年前に右眼の全層.膜移植術を施.されていた.5回.のCCOVID-19ワクチン接種後C9..に急激な右眼の視.低下を主訴に受診..膜移植術後拒絶反応と診断し,ステロイド全.投与および点眼治療を.い,治療開始後C7..には拒絶反応による炎症の改善を得た.ワクチン接種後には.膜移植術後拒絶反応のリスクがあることを認識し,早期の診断や治療を.う必要があると考えられた.CIn.ammatoryocularcomplicationshavebeenreportedpostCOVID-19vaccination.Hereinwereporttwocas-esCofCcornealCgraftCrejectionCthatCoccurredCpostCCOVID-19Cvaccination.CCaseC1CinvolvedCaC78-year-oldCmaleCwhoChadundergonepenetratingkeratoplasty(PKP)inhisrighteye15yearsago,andonce-again3yearsago.TwelvedaysafterhisfourthCOVID-19vaccination,heexperiencedsuddenlossofvisualacuity(VA)inhisrighteyeandwasdiagnosedwithcornealgraftrejection.Treatmentwithsystemicandtopicalsteroidswasinitiated,andhisVAimprovedCafterC14Cdays.CCaseC2CinvolvedCaC61-year-oldCfemaleCwhoChadCundergoneCPKPC12CyearsCago.CAtC9CdaysCpostCOVID-19vaccination,shepresentedwithsuddenlossofVAinherrighteyeandwasdiagnosedwithcorne-alCgraftCrejection.CSteroidCtreatmentCwasCinitiated,CandCherCVACimprovedCafterC7Cdays.CAlthoughCbothCcasesCimprovedwithsteroidtherapy,itiscrucialtobeawareoftheriskofcornealgraftrejectionpostCOVID-19vacci-nationandensurethatpromptdiagnosisandtreatmentisinitiated.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(2):250.253,C2025〕Keywords:.膜移植術後拒絶反応,COVID-19,ワクチン,.膜移植,眼合併症.cornealCgraftCrejection,CCOVID-19,vaccines,keratoplasty,ocularadversee.ects.Cはじめに2020年C1C.,中国武漢市での肺炎の流.の報告に始まった新型コロナウイルス感染症(CoronaCVirusCDisease2019:CCOVID-19)は,瞬く間に全世界に拡.した.COVID-19による重篤な症状や死亡を防ぐために,ワクチンの迅速な開発が.常に重要であった.世界各国で直ちにワクチンや治療薬の開発が始まり,わが国ではC2021年C2.に医療従事者への接種が始まりC4.にはC65歳以上の国.へC6.にはさらに対象が拡.された.そして現在もCCOVID-19に対するワクチンの接種が感染予防のために施.されている.以前よりインフルエンザワクチンなどのワクチン接種によるぶどう膜炎や視神経炎,.膜移植術後拒絶反応などが報告されている〔別刷請求先〕脇.耕.:〒606-8287京都市左京区北.川上池.町C12バプテスト眼科クリニックReprintrequests:KoichiWakimasu,DepartmentofOphthalmology,BaptistEyeInstitute,12Kitashirakawa,Kamiikeda-cho,Sakyo-ku,Kyoto606-8287,JAPANC250(116)図1前眼部所見(症例1)a:発症前の所...膜透明性は保たれており,炎症所.も認めない.Cb:発症時の所...膜輪部の.様充.および.膜浮腫,.膜後.沈着物を認める.c:治療後の所...膜浮腫と.膜後.沈着物の軽減を認める.図2前眼部所見(症例2)a:発症前の所...膜透明性は保たれており,炎症所.も認めない.Cb:発症時の所...膜輪部の.様充.および.膜浮腫,.膜後.沈着物を認める.c:治療後の所...膜浮腫と.膜後.沈着物の軽減を認める.が1.5),COVID-19ワクチンの接種でも同様に眼への副作.が報告されている6.10).今回筆者らは,COVID-19ワクチン接種後に.膜移植術後拒絶反応を認めた全層.膜移植術(penetratingCkeratoplasty:PKP)後のC2例を経験したので報告する.CI症例症例C1患者:78歳,男性.既往歴:2007年C12.に右眼のレーザー虹彩切開術後.疱性.膜症に対して右眼のCPKP(.晶体再建術併.)を施.された.2016年C12.に移植.機能不全となり,2019年C8C.に右眼のCPKP再移植を施.された.2022年C6.の受診時は右眼視.C0.2(0.5C×sph.2.00D(cyl.4.50DAx60°),眼圧15CmmHgであり.膜透明性も良好であった(図1a).なお,左眼は浅前房に対してレーザー虹彩切開術後で.内障を認めるものの,視.はC0.8(1.2C×sph+2.50D(cyl.1.50DCAx90°)で.膜内.細胞は2,653cells/mmC2であった.現病歴:2022年C7.にC4回.のCCOVID-19ワクチン(BNT162b2,P.zer)を接種し,接種後C12..に急激な右眼の視.低下,霧視,充.を.覚したため接種後C19..に当院を受診した.所.:右眼の視.はC0.01(n.c.),右眼の眼圧はC15CmmHgであった..膜輪部の.様充.および.膜浮腫,.膜後.沈着物を認めた(図1b).なお,左眼はとくに所.の変化を認めなかった.臨床経過:.膜移植術後拒絶反応と診断し,治療としてメチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソルメドロール)125Cmgの全.投与をC3.間.い,点眼を発症前のフルオロメトロン(フルメトロン)点眼液C0.1%をC1C.C3回からベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン)0.1%点眼をC1C.C6回に増量した.治療開始してからC2週間後の受診時には右眼視.C0.2(0.4C×sph.2.00D(cyl.5.00DAx60°)に改善し,.膜浮腫と.膜後.沈着は軽減を認めた(図1c).その後は拒絶反応の再燃はなくいったんは.膜の透明化を得られたが,.膜内.細胞が減少しC6カ.後に移植.機能不全となった.症例C2患者:61歳,.性.既往歴:2011年C7.に右眼の.膜実質ヘルペス後の.膜混濁に対して右眼のCPKPを施.された.2023年C10.の受診時は右眼視.C0.8(1.0C×sph+1.50D(cyl.2.00DCAx40°),眼圧C10CmmHgであり.膜透明性も良好であった(図1a).なお,左眼は周辺部に.膜実質ヘルペス後の.膜混濁を認めるものの中.部の透.性は良好であり,視.はC0.1(0.7C×sph.1.50D(cyl.5.00DAx130°)であった.現病歴:2023年C12C.にC5回C.CCOVID-19ワクチン(BNT162b2,P.zer)を接種し,接種後C9..に急激な右眼の視.低下,霧視,充.を.覚したため接種後C11..に当院を受診した.所.:右眼の視.はC0.2(0.4C×sph+2.50D(cyl.2.00DAx40°),右眼の眼圧はC31mmHgであった..膜輪部の.様充.および.膜浮腫,.膜後.沈着物を認めた.前房内炎症や硝.体混濁などぶどう膜炎を疑う所.は認めなかった(図2b).なお,左眼はとくに所.の変化を認めなかった.臨床経過:.膜移植術後拒絶反応と診断し,治療としてメチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム(ソルメドロール)125Cmgの全.投与をC2.間.い,3..よりベタメタゾン(リンデロン)1Cmgの内服投与を.った.点眼を発症前のフルオロメトロン(フルメトロン)点眼液C0.1%をC1C.C3回からベタメタゾンリン酸エステルナトリウム(リンデロン)0.1%点眼をC1C.C5回に増量した.治療を開始してからC1週間後の受診時には右眼の視.は0.7(1.0C×sph+2.75D(cylC.3.00DAx60°)に改善し,.膜浮腫と.膜後.沈着は軽減を認めた(図2c).その後は拒絶反応の再燃はなくいったんは.膜の透明化を得られたが,.膜内.細胞が減少しC3カ.後に移植.機能不全となった.CII考按COVID-19ワクチンの接種により引き起こされる有害事象は,ワクチン未接種で感染した場合に発症する有害事象よりも頻度が少ないと報告されている..で11),COVID-19ワクチン接種後には.筋炎や.栓症などの全.疾患から12),眼科領域においてもぶどう膜炎や視神経炎,.膜移植術後拒絶反応などが報告されている6.10).ワクチン接種後に.膜移植術後拒絶反応を起こすvaccine-associatedgraftrejection(VAR)についてはC1988年に報告されて以来2),インフルエンザやCB型肝炎,破傷.のワクチン接種後にも.じた報告があり古くから知られている現象である.本来,.膜移植は特有の免疫特権に加えて.管がないことやCMHC陽性細胞が少ないことなどから拒絶反応のリスクが低い13).しかし,頻度は少なくとも.膜移植術後に拒絶反応が.じることがあり,その機序としては移植されたドナー.膜の抗原にホストのCTh1細胞が反応し,炎症性サイトカインを分泌することで導かれるとの説がある14).ワクチン接種と拒絶反応発症の直接的な因果関係を証明することはむずかしいが,COVID-19ワクチンは接種後C21C.以内に体内でCSARS-CoV-2中和抗体を誘導し,強.なCCD4陽性CTh1細胞の免疫応答を引き起こしCIFN-cなどの炎症性サイトカインが増加することが.されている15).今回の症例1ではワクチン接種後C12C..,症例C2ではC9..に発症しておりもっとも免疫反応が強いタイミングであり,これが.膜移植術後拒絶反応に寄与したのではないかと考えられる.実際にCCOVID-19ワクチン接種後からCVARまでの発症期間をデータ解析した報告16)では初回接種でC16.26C±12.97.,2回.以降ではC10.37C±9.32.で発症しており,今回の症例ではC2例ともに既報と.較しても.盾ないタイミングであった.しかし,同様にワクチン接種をした患者で.膜移植術後拒絶反応が報告されているのはまれであることや,VAR発症患者において以前にワクチン接種した際は発症していないことを考えると,他の要因も関与していると推測される..膜移植術後拒絶反応のリスク因.として若年であることや,前眼部炎症の既往,拒絶反応の既往,再移植後,.管新..膜などが知られている17).今回の症例C1は移植.機能不全の既往があり再移植後であったこと,症例C2ではヘルペス性.膜実質炎後の.膜混濁で.膜実質内に.管侵.があり,両.の症例において拒絶反応のリスクが.かったことも.膜移植術後拒絶反応を発症した要因であったのではないかと考えられる.また,ワクチン接種後の抗体価のピーク値はC2回.よりも3回.で.値であったとの報告もあり18),過去に接種歴がありCVARを発症していなくても回数を重ねるごとにリスクが.くなる可能性もある.既報ではステロイドの全.投与および点眼の強化により拒絶反応の改善を得ることができており,速やかな診断および治療により良好な転機が得られている9).しかし,拒絶反応による不可逆的な.膜内.細胞の減少は避けられず,治療が遅れる場合や発症前の.膜内.細胞密度が低い場合などは移植.機能不全となる可能性も考えられる.今回の症例においてもステロイド治療により炎症は改善することができたものの,VAR発症前の.膜内.細胞密度が低かったこともあり,最終的には移植.機能不全となった.今回の検討から,COVID-19ワクチンの接種後には.膜移植術後拒絶反応を発症するリスクがあり,患者への啓発および医療機関での接種後の綿密な診察によりCVARの早期診断,治療を図る必要があると考えられた.中でも,.膜移植術後拒絶反応のリスク因.がある症例ではより注意が必要である.また,.膜内.細胞密度が減少している症例ではVAR発症後に移植.機能不全となる可能性もあり,全.状態のリスクと合わせてワクチン接種について考慮することが望ましい.そしてワクチン接種が必要な症例ではCVAR発症の予防を.的に,接種前のステロイド全.投与および点眼の強化をはじめとする免疫抑制治療を検討すべきと考えられた.文献1)WertheimMS,KeelM,CookSDetal:Cornealtransplantrejectionfollowingin.uenzavaccination.BrJOphthalmolC90:925,C20062)SteinemannCTL,CKo.erCBH,CJenningsCD:CornealCallograftCrejectionCfollowingCimmunization.CAmCJCOphthal-molC106:575-578,C19883)SolomonA,FruchtPeryJ:BilateralsimultaneouscornealgraftCrejectionCafterin.uenzaCvaccination.CAmCJCOphthal-molC121:708-709,C19964)MarinhoCPM,CNascimentoCH,CRomanoCACetal:Di.useCuveitisandchorioretinalchangesafteryellowfevervacci-nation:are-emergingepidemic.IntJRetinaVitreousC5:C30,C20195)CunninghamCET,CMoorthyCRS,CFraunfelderCFWCetal:CVaccine-associatedCuveitis.COculCImmunolCIn.ammC27:C517-520,C20196)KeikhaCM,CZandhaghighiCM,CZahedaniSS:OpticCneuritisCassociatedCwithCCOVID-19-relatedCvaccines.CVacunasC24:158-159,C20237)PillarCS,CWeinbergCT,CAmerR:PosteriorCocularCmanifes-tationsfollowingBNT162b2mRNACOVID-19vaccine:acaseseries.IntOphthalmolC43:1677-1686,C20238)SinghRB,ParmarUPS,KahaleFetal:Vaccine-associat-edCuveitisCafterCOVID-19vaccination:vaccineCadverseCeventCreportingCsystemCdatabaseCanalysis.COphthalmologyC130:179-186,C20239)RallisKI,TingDSJ,SaidDGetal:CornealgraftrejectionfollowingCOVID-19vaccine.Eye(Lond)C36:1319-1320,C202210)PhylactouM,LiJO,LarkinDFP:Characteristicsofendo-thelialcornealtransplantrejectionfollowingimmunisationwithSARS-CoV-2messengerRNAvaccine.BrJOphthal-molC105:893-896,C202111)BardaCN,CDaganCN,CBen-ShlomoCYCetal:SafetyCofCtheCBNT162b2CmRNACCovid-19CvaccineCinCaCnationwideCset-ting.NEnglJMedC16:1078-1090,C202112)AbuMouchS,RoguinA,HellouEetal:Myocarditisfol-lowingCOVID-19mRNAvaccination.VaccineC39:3790-3793,C202113)TaylorAW:OcularCimmuneCprivilege.CEyeC23:1885-1889,C200914)HegdeCS,CBeauregardCC,CMayhewCECetal:CD4(+)T-cell-mediatedCmechanismsCofCcornealCallograftCrejec-tion:roleCofCFas-inducedCapoptosis.CTransplantationC79:C23-31,C200515)PolackCFP,CThomasCSJ,CKitchinCNCetal:SafetyCandCe.cacyCofCtheCBNT162b2CmRNACCovid-19Cvaccine.CNEnglJMedC383:2603-2615,C202016)SinghCRB,CLiCJ,CParmarCUPSCetal:Vaccine-associatedCcornealCgraftCrejectionCfollowingCSARS-CoV-2Cvaccina-tion:aCCDC-VAERSCdatabaseCanalysis.CBrCJCOphthalmolC108:17-22,C202317)CosterDJ,WilliamsKA:Theimpactofcorneala1lograftrejectionofthelong-termoutcomeofcornealtransplanta-tion.AmJOphthalmolC140:1112-1122,C200518)成.慎治,.島秀幸,宮崎未緒ほか:モデルナ社製新型コロナワクチン(mRNA-1273)接種後の抗体価について-2回.,3回.接種後の抗体価の経時的推移.医学検査C73:C360-365,C2024C***

COVID-19 のワクチン接種後の両眼同時発症 急性原発閉塞隅角症

2024年7月31日 水曜日

《第34回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科41(7):843.846,2024cCOVID-19のワクチン接種後の両眼同時発症急性原発閉塞隅角症桑野和沙渡邉友之小川俊平渡邉朗中野匡東京慈恵会医科大学眼科学講座CACaseofBilateralAcutePrimaryAngleClosureFollowingCOVID-19VaccinationKazusaKuwano,TomoyukiWatanabe,SyunpeiOgawa,AkiraWatanabeandTadashiNakanoCDepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicineC緒言:近年,COVID-19関連眼炎症性疾患発症の報告が散見される.今回筆者らはCCOVID-19ワクチン接種翌日に両眼同時発症した急性原発閉塞隅角症(APAC)の症例を経験したので報告する.症例:69歳,女性.4回目ワクチン接種翌日に右眼の羞明,痛みを自覚し,前医を受診した.眼圧は両眼C62CmmHg,浅前房,中等度散瞳を認め,両眼APACの診断で当院に紹介受診となった.眼軸長は両眼C24Cmm程度で,続発性を考慮して薬物治療を行い,発作は解除されたが,X+13日に右眼CAPACが再発し,同日右眼水晶体再建術を施行した.左眼はC1カ月後に左眼水晶体再建術を施行し,APACの再発はない.原因検索目的の血液検査,胸部CX線写真では異常所見を認めなかった.考察:両側同時発症のCAPACはまれで,既報の多くが続発性である.本症例は明らかな誘因を指摘できずCCOVID-19のワクチンの影響が否定できない.明確な因果関係については今後のデータの集積が必要である.CPurpose:Toreportacaseofbilateralacuteprimaryangleclosure(APAC)followingCOVID-19vaccination.Case:ThisCstudyCinvolvedCaC69-year-oldCfemaleCpatientCinCwhomCanCintraocularCpressureCofC62CmmHg,CshallowCanteriorchambers,andmoderatemydriasiswereobservedinbotheyesat1dayafterherfourthCOVID-19vacci-nation.ShewasreferredtoourhospitalwithadiagnosisofAPACinbotheyes.HerseizureswereresolvedwithdrugtreatmentinconsiderationofsecondaryAPAC,yet13dayslater,recurrenceofAPACwasobservedinherrighteyeandphacoemulsi.cationsurgerywasperformed.Onemonthlater,phacoemulsi.cationsurgerywasper-formedonherlefteye.Noabnormal.ndingswerefoundinbloodtestsandchestX-raysperformedtoelucidatethecause.Conclusion:Nocleartriggercouldbeidenti.edinthiscase,yetthein.uenceoftheCOVID-19vaccinecannotberuledout.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(7):843.846,C2024〕Keywords:COVID-19,ワクチン,両眼同時発症,APAC.COVID-19,vaccination,bilateralsimultaneousonset,APAC.Cはじめに急性原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureCglauco-ma;PACG)および急性原発閉塞隅角症(acuteCprimaryCangleclosure;APAC)では,しばしば眼圧が著しい高値となり,視力低下,霧視,虹視症,眼痛,頭痛,悪心・嘔吐,対光反射の減弱・消失などの症状を呈する.対応が遅れると重篤な視野障害や,失明に至る.このため早期に原因を特定し,眼圧を低下させる必要がある.通常CAPACはその特徴的な症状と所見から診断は容易であるが,両側同時発症のAPACはまれであり,これまでの報告でも多くが続発性であり,原因検索が必要となる.これまでCVokt-Koyanagi-Haradasyndrome(VKH)に続発するもの,薬物性,手術麻酔後,ウイルス感染,Weill-Marchesani症候群,両眼虹彩.胞,小眼球症に続発するもの,および蛇咬傷などの報告がある.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種後の眼合併症としては,視神経障害,ぶどう膜炎,ヘルペス性角膜炎,角膜移植拒絶反応,網脈絡膜炎などが報告されている.今回筆者らは,COVID-19ワクチン接〔別刷請求先〕桑野和沙:〒105-8461東京都港区西新橋C3-25-8東京慈恵会医科大学眼科学講座Reprintrequests:KazusaKuwano,DepartmentofOphthalmology,JikeiUniversitySchoolofMedicine,3-25-8Nishi-Shimbashi,Minato-ku,Tokyo105-8461,JAPANC図1来院時の前眼部光干渉計所見CASIA2(トーメーコーポレーション)にて,浅前房(上段),iridotrabecularcontact(ITC)にて広範囲な隅角閉塞(下段)を認める.種の翌日に,両眼同時に著明な高眼圧,浅前房,中等度散瞳を呈したCAPAC症例を経験した.原因検索のための採血,胸部CX線ではぶどう膜炎を疑う所見はみられず,COVID-19ワクチンとの関連を否定できなかった.今回の症例について,既報のワクチン関連眼疾患の考察を加え報告する.CI症例症例はC69歳,女性で,X-1日,COVID-19ワクチン(ファイザー社)のC4回目を接種した.X日,深夜C1時ころテレビを見ている際に右眼の羞明,痛みを自覚するも様子をみていた.X+1日,症状が改善しないため前医を受診した.視力は右眼C0.07(0.5C×sph.4.50D(cyl.0.50DAx125°),左眼0.01(1.0C×sph.3.25D(cyl.0.75DAx50°)で,両眼の眼圧はC62CmmHgであった.急性緑内障発作が疑われグリセオール点滴後に当院へ紹介受診となった.当院の来院時眼圧は右眼C56CmmHg,左眼C19CmmHgで,両眼ともに浅前房と中等度散瞳を認めた.前眼部光干渉断層計CCASIA2(トーメーコーポレーション)(図1)では両眼ともに浅前房がみられ,前房深度は右眼C1.59Cmm,左眼C1.65Cmm,iridotrabecularcontact(ITC)indexは右眼C92.8%,左眼C80.0%,LT(lensthickness)は右眼C5.43mm,左眼C5.47mm,LV(lensvault)は右眼C0.87mm,左眼C0.81mm,眼軸長は右眼C24.09mm,左眼C23.84Cmmであった.両眼ともに眼底には,漿液性網膜.離や脈絡膜肥厚,波打ち所見などを認めず,VKHは否定的であった.右眼眼底(図2)には耳側網膜に白色病変を認め,同日に施行したフルオレセイン/インドシアニングリーン蛍光造影検査(FA/ICGA)では同部位からの蛍光漏出を認めたが,その他炎症所見などを認めなかった.原因検索のための採血では有意な所見はなく,胸部CX線では肺門部リンパ節腫脹などサルコイドーシスを疑う所見を認めなかった.続発性のCAPACと診断しCD-マンニトール点滴,ピロカルピン塩酸塩点眼,ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼薬物治療で眼圧下降を試みた.X+2日発作が解除されないためピロカルピン塩酸塩点眼からアトロピン硫酸塩水和物点眼に切り替えたところ発作は解除された.視力は右眼(0.9C×sph.3.25D(cyl.0.50DAx100°),左眼C0.01(1.0C×sph.2.50D(cyl.0.50DAx65°),眼圧は右眼11mmHg,左眼C13CmmHgに下降した.前房深度は右眼C1.76Cmm,左眼はC1.69Cmm,ITCIndexは右眼C39.2%,左眼C44.7%に改善した(図3).病状や網膜視神経の状態を経時的に観察し,原因疾患を探索した.X+11日再発を認めないためアトロピン硫酸塩水和物点眼を中止したところCX+13日に右眼の視力低下,頭重感で受診し,視力は右眼(1.0C×sph.3.50D(cyl.1.25DAx90°),右眼眼圧40mHg,前房深度1.62mm,ITCIndex右眼C33.6%であった.発作解除時と比較して浅前房化しておりCAPACの再発と判断して,右眼水晶体再建術を行い発作の解除とその後の眼圧下降を得た.また,左眼に対しては,X+1CM,左水晶体再建術を施行し経過観図2右眼の眼底写真と蛍光造影写真眼底写真(Ca)では,右眼耳側網膜に白色病変を認める.視神経乳頭陥凹拡大は認めない.蛍光造影写真(Cb)では同部位に軽度の蛍光漏出を認めるが,その他に血管炎などは指摘できない.図3X+2日の前眼部光干渉計所見CASIA2にて前房深度の拡大(上段),ITCにて図C1と比べて閉塞範囲(下段)の改善を認める.察を行ったがCAPACの再発は認められなかった.どう膜炎,中心性漿液性脈絡網膜症(CSCR),VKH再活性CII考察化,急性帯状性潜在性外網膜症(AZOOR)および多発性脈絡膜炎などがある1.3).一般的に両眼同時発症のCAPACは稀COVID-19ワクチン接種後に報告された眼の合併症には,であるが,これまでに複数の症例報告されており,その多く外転神経麻痺,動眼神経麻痺,顔面神経麻痺/ベル麻痺,多が続発性であるため本症例においてもぶどう膜炎,薬剤性,発性脳神経麻痺,ヘルペス性角膜炎,急性黄斑神経網膜症ウイルス感染など,APACの誘因を検索したが,原因の特(AMN),傍中心性急性中部黄斑症(PAMM),上眼静脈血定には至らなかった.このため,COVID-19のワクチンの栓症(SOVT),角膜移植拒絶反応,前部ぶどう膜炎,汎ぶ影響を否定できない.Singhら4)は,米国のワクチン有害事象報告システムCVaccineCAdverseCEventCReportingCSystem(VAERS)を用いてCCOVID-19のワクチン接種後に緑内障が増加したかを検討し報告した.この際の緑内障は,緑内障(タイプ不明),閉塞隅角緑内障,開放隅角緑内障,ぶどう膜炎による緑内障を含めて発生率が検討されたが発生は非常に稀であった.ワクチン接種後の緑内障の特徴として,投与後1週間以内のC50.70代の女性に多く認められたが,その因果関係に関してはさらなる評価が必要と結論している.COVID-19ワクチン接種後の眼の炎症反応を説明するメカニズムとして,ワクチンとぶどう膜ペプチドの分子相同性,III型過敏反応,およびワクチン接種によって誘発されるその他の自然免疫反応によって二次的に生成される抗原の活性化などが示唆されている5,6).また,既報によれば,COVIDワクチンのC2回目の投与後にぶどう膜炎を発症した症例が多く,これは用量依存性の高い反応がその一因であると考察されている7).APACの成因としては,①相対的瞳孔ブロック,②プラトー虹彩,③水晶体因子,④水晶体後方因子(毛様体因子など),が複合的に関与している可能性が高い8).また,APAC発症の解剖学的リスク因子には,浅前房,浅い虹彩角膜角,水晶体膨隆に伴う水晶体肥厚,短眼軸があげられる9).本症例はそのうち前者C3項目を満すCAPACのハイリスク群で,そこにCCOVID-19ワクチンが発症機転となって,①.④が複合的に関与し,両眼同時にCAPACが発症した可能性がある.ぶどう膜炎の際に近視化がみられる機序として,Zinn小体弛緩と水晶体凸面の増加が報告されている10).またAPAC発症時には水晶体の前方移動による近視化が認められることがある.本症例では発作時には右眼C.1.25D,左眼C.0.75Dの近視化を認め,水晶体凸面のパラメータの一つであるCLVは右眼C0.87mm,左眼0.81mmと高値であった.両者は,発作解除時には,屈折の近視は軽減し,LVも右眼0.65Cmm,左眼C0.46Cmmと軽減していた.しかし,このような近視化がCAPACの誘因・原因であるのか,結果であるのかは不明であり,今後,さらにCAPACの発症機序については検討が必要と思われた.CIII結論両側同時発症のCAPACはまれで,既報の多くが続発性である.本症例は,解剖学的なリスクを有したが他にCAPACの明らかな誘因を指摘できず,COVID-19ワクチンの影響が否定できない.両者の明確な因果関係を立証するには,今後のデータの集積,解析が必要である.文献1)IchhpujaniCP,CParmarCUPS,CDuggalCSCetal:COVID-19Cvaccine-associatedCocularCadversee.ects:anCoverview.Vaccines(Basal)C10:1879,C20222)Habot-WilnerCZ,CNeriCP,COkadaCAACetal:COVIDCvac-cine-associatedCuveitis.COculCImmunolCIn.ammC6:1198-1205,C20233)WangMTM,NiedererRL,McGheeCNJetal:COVID-19vaccinationandtheeye.AmJOphthalC240:79-98,C20224)SinghCRB,CParmarCUPS,CChoCWCetal:GlaucomaCcasesCfollowingCSARS-CoV-2vaccination:VAERS.CVaccines(Basel)C10:1630,C20225)WatadCA,CDeCMarcoCG,CMahajnaCHCetal:Immune-medi-atedCdiseaseC.aresCorCnew-onsetCdiseaseCinC27CsubjectsCfollowingmRNA/DNASARS-CoV-2vaccination.Vaccines(Basel)C9:435,C20216)TeijaroCJR,CFarberDL:COVID-19vaccines:modesCofCimmuneactivationandfuturechallenges.NatRevImmu-nolC4:195-197,C20217)LiS,HoM,MakAetal:Intraocularin.ammationfollow-ingCOVID-19vaccination.IntOphthalmolC8:2971-2981,C20238)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障ガイドライン(第C5版).日眼会誌126:98,C20229)LeeCHS,CParkCJW,CParkSW:FactorsCa.ectingCrefractiveCoutcomeaftercataractsurgeryinpatientswithahistoryofCacuteCprimaryCangleCclosure.CJpnCJCOphthalmolC58:C33-39,C201410)HerbortCCP,CPapadiaCM,NeriCP:MyopiaCandCin.ammation.CJOphthalmicVisResC6:270-283,C2011***