1246101,23,No.3《第20回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科33(1):124.128,2016cはじめに近年,増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopa-thy:PDR)に対する硝子体手術は,手術機器の進歩や手術手技の向上に伴い手術成績が向上している1).また術前の抗血管内皮増殖因子の硝子体内注入などにより,手術の安全性も向上している2).しかし一方で,なお治療困難例や予後不良例が存在することも事実である.2型糖尿病患者においては,40歳未満の若年者のPDR例は比較的少ない.今回筆者らは,PDR発症時年齢および初回手術時年齢が40歳未満の2型糖尿病患者で,PDRに対し複数回の手術を施行したが,予後不良であった症例を4例経験したので報告する.I対象および方法対象は2007年1月.2012年2月の6年間に,2型糖尿病によるPDRに対し初回硝子体手術を行い,PDR発症時年齢および初回手術時年齢が40歳未満の連続症例4例8眼である.全症例とも初回硝子体手術後,経過観察が可能であり,複数回の追加手術を要した.手術はすべて同一術者が施行した(ND).白内障手術および硝子体手術は,アキュラス(日本アルコン社)もしくはコンステレーションビジョンシステム(日本アルコン社)を使〔別刷請求先〕藤原悠子:〒892-0824鹿児島市堀江町17-1公益財団法人慈愛会今村病院眼科Reprintrequests:YukoFujiwara,DepartmentofOpthalmology,FoundationJiaikai,ImamuraHospital,17-1Horie-cho,Kagoshima892-0824,JAPAN若年発症2型増殖糖尿病網膜症の予後不良例藤原悠子*1,2土居範仁*1坂本泰二*2*1慈愛会今村病院眼科*2鹿児島大学大学院医歯学総合研究科眼科PoorOutcomeofProliferativeRetinopathyCasesamongYoungInsulin-independentDiabeticsYukoFujiwara1,2),NorihitoDoi1)andTaijiSakamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,JiaikaiImamuraHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KagoshimaUniversityGraduateSchoolofMedicineandDentalScience若年発症の増殖糖尿病網膜症は,活動性が高く治療困難例も少なくない.多くは1型で,若年発症2型糖尿病患者の治療成績や転機についての報告はほとんどない.筆者らは2型糖尿病の指摘時年齢および初回硝子体手術時年齢が40歳未満で予後不良であった症例を4例経験した.糖尿病診断時年齢は平均21歳.4例中3例で長期間(平均5.8年)無治療放置期間があり,当科初診時には全例両眼とも増殖糖尿病網膜症であった.平均手術回数は6.1回.8眼中6眼は最終的に増殖硝子体網膜症となり網膜復位が得られなかった.最終視力は,0.1以下が4眼,光覚を失ったものが4眼であり,きわめて予後不良であった.Amongyounginsulin-independentdiabeticpatients,asignificantnumberdevelopthesevereformofdiabeticretinopathy,althoughtheyaremoreoftenreportedastype1(insulin-dependent)diabetesthanastype2(insulin-independent)diabetes.Wedescribe4patients(8eyes)diagnosedastype2diabeticswho,whentheyunderwentinitialvitreoussurgerybeforetheageof40,hadfinalvisualacuityrankedaspoor.Theiraverageageatdiabetesdiagnosiswas21years.In3ofthe4,duringalongperiodoftimetheyreceivednotreatment.AllwerediagnosedwithPDRatfirstvisittoourdepartment,andrequiredanaverageof6.1surgeriesduringthecourse.Ofthe8eyes,6eventuallydevelopedproliferativevitreoretinopathy,withnorepairofretinaldetachment.Finalvisualacu-itieswere0.1orlessin4eyesandnolightperceptionin4eyes;allpatientshadextremelypooroutcomes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(1):124.128,2016〕Keywords:増殖糖尿病網膜症,早期発症2型糖尿病,硝子体手術,予後.proliferativediabeticretinopathy,ear-ly-onsettype2diabetes,vitreoussurgery,prognosis.124(124)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《第20回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科33(1):124.128,2016cはじめに近年,増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopa-thy:PDR)に対する硝子体手術は,手術機器の進歩や手術手技の向上に伴い手術成績が向上している1).また術前の抗血管内皮増殖因子の硝子体内注入などにより,手術の安全性も向上している2).しかし一方で,なお治療困難例や予後不良例が存在することも事実である.2型糖尿病患者においては,40歳未満の若年者のPDR例は比較的少ない.今回筆者らは,PDR発症時年齢および初回手術時年齢が40歳未満の2型糖尿病患者で,PDRに対し複数回の手術を施行したが,予後不良であった症例を4例経験したので報告する.I対象および方法対象は2007年1月.2012年2月の6年間に,2型糖尿病によるPDRに対し初回硝子体手術を行い,PDR発症時年齢および初回手術時年齢が40歳未満の連続症例4例8眼である.全症例とも初回硝子体手術後,経過観察が可能であり,複数回の追加手術を要した.手術はすべて同一術者が施行した(ND).白内障手術および硝子体手術は,アキュラス(日本アルコン社)もしくはコンステレーションビジョンシステム(日本アルコン社)を使〔別刷請求先〕藤原悠子:〒892-0824鹿児島市堀江町17-1公益財団法人慈愛会今村病院眼科Reprintrequests:YukoFujiwara,DepartmentofOpthalmology,FoundationJiaikai,ImamuraHospital,17-1Horie-cho,Kagoshima892-0824,JAPAN若年発症2型増殖糖尿病網膜症の予後不良例藤原悠子*1,2土居範仁*1坂本泰二*2*1慈愛会今村病院眼科*2鹿児島大学大学院医歯学総合研究科眼科PoorOutcomeofProliferativeRetinopathyCasesamongYoungInsulin-independentDiabeticsYukoFujiwara1,2),NorihitoDoi1)andTaijiSakamoto2)1)DepartmentofOphthalmology,JiaikaiImamuraHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KagoshimaUniversityGraduateSchoolofMedicineandDentalScience若年発症の増殖糖尿病網膜症は,活動性が高く治療困難例も少なくない.多くは1型で,若年発症2型糖尿病患者の治療成績や転機についての報告はほとんどない.筆者らは2型糖尿病の指摘時年齢および初回硝子体手術時年齢が40歳未満で予後不良であった症例を4例経験した.糖尿病診断時年齢は平均21歳.4例中3例で長期間(平均5.8年)無治療放置期間があり,当科初診時には全例両眼とも増殖糖尿病網膜症であった.平均手術回数は6.1回.8眼中6眼は最終的に増殖硝子体網膜症となり網膜復位が得られなかった.最終視力は,0.1以下が4眼,光覚を失ったものが4眼であり,きわめて予後不良であった.Amongyounginsulin-independentdiabeticpatients,asignificantnumberdevelopthesevereformofdiabeticretinopathy,althoughtheyaremoreoftenreportedastype1(insulin-dependent)diabetesthanastype2(insulin-independent)diabetes.Wedescribe4patients(8eyes)diagnosedastype2diabeticswho,whentheyunderwentinitialvitreoussurgerybeforetheageof40,hadfinalvisualacuityrankedaspoor.Theiraverageageatdiabetesdiagnosiswas21years.In3ofthe4,duringalongperiodoftimetheyreceivednotreatment.AllwerediagnosedwithPDRatfirstvisittoourdepartment,andrequiredanaverageof6.1surgeriesduringthecourse.Ofthe8eyes,6eventuallydevelopedproliferativevitreoretinopathy,withnorepairofretinaldetachment.Finalvisualacu-itieswere0.1orlessin4eyesandnolightperceptionin4eyes;allpatientshadextremelypooroutcomes.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(1):124.128,2016〕Keywords:増殖糖尿病網膜症,早期発症2型糖尿病,硝子体手術,予後.proliferativediabeticretinopathy,ear-ly-onsettype2diabetes,vitreoussurgery,prognosis.124(124)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY用した25ゲージ(G)経結膜小切開硝子体手術を施行した.方法は3-portsystemによる経毛様体扁平部硝子体切除術(parsplanavitrectomy:PPV)で,初回硝子体手術時,全例後部硝子体未.離であったため人工的に後部硝子体.離を起こし,増殖組織を除去し,可能な限り周辺部まで硝子体を切除した後,眼内光凝固を行った.また周辺まで硝子体を切除するため,初回硝子体手術時に水晶体摘出を併施した.II結果表1~3に全症例の背景・結果を示す.4例中3例は男性,1例は女性.2型糖尿病診断時年齢は平均21歳.加療開始まで平均5.8年の無治療放置期間があり,4例中3例に治療中断歴があった.内科加療開始時の平均HbA1C(JDS)は11.5%であった.当科初診時年齢は平均29歳で,内科加療開始から平均1.75年後で平均HbA1C(JDS)は8.3%,4例中3例が血圧コントロール不良もしくは高血圧加療開始後であった(表1).当科初診時全例両眼ともPDRであり,8眼中3眼は血管新生緑内障(neovascularglaucoma:NVG)を併発していた.網膜光凝固術の既往があるのは8眼中2眼のみであったが未完成であり,それ以外の症例は硝子体出血(vitreoushemorrhage:VH)のため術前に網膜光凝固を施行することが困難であった.初回硝子体手術時,8眼中5眼表1全症例の当科初診時の全身状態背景症例性別診断時年齢(歳)加療開始までの期間(年)糖尿病加療中断の有無家族歴内科加療開始時HbA1C(%)(JDS値)内科加療開始からの期間(年)HbA1C(%)(JDS値)当科初診時HbCr血圧(mmHg)降圧薬内服の有無1M258.+9.909.915.70.6154/100.2M165++11.858.613.01.01160/92+3F1310+.12.619.012.60.39117/70.4平均M312105.8++11.611.511.755.68.312.11.8613.40.96128/79139/85+JDS:JapanDiabetesSociety.表2全症例の当科初診時眼状態および初回硝子体手術内容症例年齢(歳)DR病期当科初診時状態視力眼圧(mmHg)PRPの有無年齢(歳)手術適応所見術式初回硝子体手術タンポナーデの有無と種類増殖膜の象限数意図的・医原性裂孔の数レーザー数術中網膜1右眼左眼右眼33PDRNVGPDRNVGPDR0.5360.3220.713…343427NVGVHNVGVHVHSF62SF62.30401,5871,5711,400234平均左眼右眼左眼右眼左眼26243229PDRPDRPDRPDRNVGPDR0.5160.1180.01150.04270.81920.8…未完成未完成272424323229.3PPLPPVVHTRDVHTRDVHTRDNVGNVGTRDSO4.4SO4.3SO33.125002021復位1,8141,0461,0821,2591,3731,329DR:糖尿病網膜症,PDR:増殖糖尿病網膜症,NVG:血管新生緑内障,PRP:汎網膜光凝固術,VH:硝子体出血,TRD:牽引性網膜.離,SF6:六フッ化硫黄,SO:シリコーンオイル,PPL:経毛様体扁平部水晶体切除術,PPV:経毛様体扁平部硝子体切除術.(125)あたらしい眼科Vol.33,No.1,2016125表3全症例の最終結果症例観察期間(月)手術回数(回)眼所見最終視力最終眼圧(mmHg)1右眼左眼8545293247.87695451126.1PVR・眼球癆PVR・眼球癆PVRPVRPVRPVRNVGNVG光覚なし光覚なし光覚弁光覚弁光覚弁光覚なし0.08光覚なし..991612151192右眼左眼3右眼左眼4右眼左眼平均PVR:増殖硝子体網膜症,NVG:血管新生緑内障.図1症例3の初診時所見24歳,女性.両眼ともに硝子体出血と牽引性網膜.離を伴う増殖糖尿病網膜症.網膜光凝固術の既往はない.はタンポナーデを要した(表2).平均観察期間は47.8カ月で,平均手術回数は6.1回であった.初回手術後,全症例で複数回の再手術を施行した.再手術内容は,網膜.離の再発または術後非復位に対しては,4眼にガスまたはシリコーンオイル(siliconeoil:SO)によるタンポナーデを用いたPPVを施行した.NVGに対しては,当科初診時にNVGを併発していた症例は3眼,経過観察中に中に発症した症例が1眼あり計4眼にPPVの際に毛様体光凝固を併施した.3眼に円蓋部基底結膜切開による線維柱帯切除術もしくはエクスプレス緑内障フィルトレーションデバイス(日本アルコン社)挿入を施行した.8眼中6眼は最終的に増殖硝子体網膜症(proliferativevitreoretinopathy:PVR)となり網膜復位が得られなかった.最終視力は,0.1以下が4眼でそのうち3眼は光覚弁,また光覚を失ったものが4眼で,きわめて予後不良であった(表3).III症例呈示〔症例3〕24歳,女性.13歳時に学校検診で尿糖を指摘され入院加療を受けるが,退院後通院していなかった.16歳時,下肢骨.腫手術の際に糖尿病を指摘され,内科加療を再開したが自己中断した.2010年23歳時に倦怠感で近医を受診し,HbA1C12.6%(JDS値)と高値で加療を再開したが,不定期受診であった.2011年10月急に視力低下を自覚し,近医眼科を受診,両眼ともPDRを指摘され,網膜光凝固術を予定していたがVHを発症し,2011年11月28日当科紹介受診となった.初診時所見:VD=(0.1×sph.2.25D(cyl.2.25DAx5°),VS=0.01(n.c.),Tod=18mmHg,Tos=15mmHg.両眼ともにVH・牽引性網膜.離(tractionretinaldetachment:TRD)を伴うPDRであり光凝固の既往はなかった(図1).HbA1C9.0%(JDS値),血圧は117/70mmHgであった.初診後,内科加療を再開した.経過(右眼):網膜光凝固術はVHのため困難であり,2012年1月5日経毛様体扁平部水晶体切除術(parsplanalensectomy:PPL)+PPVを施行した.その後VHとTRDが再燃し,2012年1月12日硝子体手術+SO注入術を施行(126)図2症例3の最終時所見両眼ともに網膜切除を要した.右眼は部分的な網膜.離が残存している.左眼は増殖硝子体網膜症となり,網膜復位は得られなかった.したが,その後も強固な増殖膜とTRDが再燃し,同年2月9日輪状締結術+PPV+網膜切除(耳・鼻側周辺2象限)+SO注入術,同年3月29日PPV+網膜切除(下方周辺1象限)+SO注入術を施行した.その後NVGとなるが,薬剤で眼圧コントロールが得られている.部分的な網膜.離は残存している.経過(左眼):右眼と同様,網膜光凝固術はVHのため困難であり,2011年12月13日PPL+PPV+SO注入術を施行した.その後も強固な増殖膜とTRDが再燃し,2012年2月2日PPV+網膜切除(下鼻側周辺1象限)+SO注入術を施行,その後も強固な増殖膜とTRDが再燃し,同年3月1日輪状締結術+PPV+網膜切除(上鼻側周辺1象限)+SO注入術,同年5月22日PPV+SO注入術,2013年2月19日PPV+網膜切除(耳側周辺1象限)+SO注入術を施行したが,増殖硝子体網膜症(PVR)となり,網膜復位は得られなかった(図2).IV考察若年発症PDRの報告は,1型糖尿病に比べて2型糖尿病では少ない.Steelら3)は血糖コントロールが良好であったにもかかわらず,2型糖尿病と診断されてから数年以内に急速にPDRに進行し,予後不良であった40歳未満の症例を報告している.同じ若年発症でも1型糖尿病は加療中断により身体症状を伴うのに対し,2型糖尿病は身体症状が発現しにくいため,内科加療開始が遅れやすく治療の自己中断にもつながりやすい.それに伴い眼科受診も遅れやすい.今回筆者らが経験した症例でも,糖尿病の診断から内科加療開始まで平均5.8年の放置期間があり,その後も症例1以外で治療中断歴があった.眼科定期受診もほとんど行われていない状況であった.当科初診時すでに全例がPDRで,網膜光凝固術の既往があるのは症例4のみであったが未完成であり,それ以外の症例はVHを認め術前に網膜光凝固を施行することが困難であった.また初回硝子体手術時8眼中7眼はNVGやTRDを併発しており,8眼中5眼は初回手術時にタンポナーデを必要とした.10代で糖尿病を発症した症例では,親の理解不足もあり内科加療が中断されていた時期があった.網膜光凝固術を勧められても拒否していた例もあり,コンプライアンス不良であることが網膜症進行を助長し,術後視力転帰に影響した可能性がある.30歳未満の若年発症2型糖尿病患者では,糖尿病罹患期間だけではなく,わずかな血圧上昇もPDRへの進行のリスクファクターであるとの報告がある4).筆者らの症例でも4例中3例が血圧コントロール不良もしくは高血圧加療開始後であった.本症例のうち2例は10代で糖尿病の指摘を受けている.欧米では小児の糖尿病のほとんどが1型糖尿病であり,20歳以下の2型糖尿病の発症は数%に過ぎないのに対し,わが国では小児期発症2型糖尿病患者が多い特徴がある5).2型糖尿病では,発症年齢が18.45歳未満の若年発症群のほうが,45歳以上の発症群と比較して,微小血管障害を2倍起こしやすいという報告がある6).また発症年齢が40歳未満群と40歳以上群では,40歳未満群のほうが糖尿病発症から10年後,20年後のいずれも有意に糖尿病網膜症の発症率が高かったという報告もある7).(127)あたらしい眼科Vol.33,No.1,2016127小児期に糖尿病を発見する有用な手段として学校検尿検査での尿糖検査があるが,それでの2型糖尿病の発見は,1981年以前は1年間で10万人につき1.74人であるのに対し,それ以降は2.76人と1.5倍に増加している8).また15歳未満発症の2型糖尿病患者では,同年代の1型糖尿病患者と比較してPDRが多い傾向にあり,糖尿病治療の1980年代初診群と1990年代初診群の比較では,1990年代のほうがPDR発症頻度が増加している5).またRajalakshmiら9)は10.25歳に糖尿病を診断された若年発症患者では,視力に影響する糖尿病網膜症の罹患率は糖尿病発症から15年を超えると急増し,1型糖尿病では44.1%,2型糖尿病では52.5%と2型で多く,さらに1型糖尿病では発症から10年未満は同様の網膜症発症患者の罹患率は0%なのに対し,2型糖尿病では5年未満でも14.3%であったと報告している.これらから若年発症2型糖尿病患者は増加することが懸念されており,今回報告したような難治例が増加することが考えられる.今回経験した4症例は,いずれも当科初診時点で全例PDRであり,それ以前の眼科受診歴も乏しいものであった.若年発症例では,糖尿病発症時点で家族を含めた病気への理解を深める必要があるとともに,内科・眼科の連携がより重要であると思われた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)鎌田研太郎,臼井嘉彦,坂本純平ほか:増殖糖尿病網膜症に対する早期硝子体手術の成績.臨眼101:385-390,20072)澤田英子,安藤伸朗:増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の視力経過.日眼会誌111:407-410,20073)SteelJM,ShenfieldGM,DuncanLJ:Rapidonsetproliferativeretinopathyinyounginsurin-independentdiabetics.BMJ2:852,19764)OkudairaM,YokoyamaH,OtaniTetal:Slightlyelevatedbloodpressureaswellaspoormetaboliccontrolareriskfactorsfortheprogressionofretinopathyinearly-onsetJapanesetype2diabetes.JDiabetesComplications14:281-287,20005)奥平真紀,内潟安子,大谷敏嘉ほか:80年代と90年代に初診した15歳未満発見糖尿病患者の合併症頻度の比較.糖尿病47:521-526,20046)HillierTH,PedulaKL:Complicationinyoungadultswithearly-onsettype2diabetes.DiabetesCare26:2999-3005,20037)SongSH,GrayTA:Early-onsettype2diabetes:highriskforprematurediabeticretinopathy.DiabetesResClinPract94:207-211,20118)岩本安彦,田嶼尚子,西村理明ほか:若年発症2型糖尿病調査研究委員会報告─若年発症2型糖尿病の実態に関する予備的調査─.糖尿病51:285-287,20089)RajalakshmiR,AmuthaA,RanjaniHetal:PrevalenceandriskfactorsfordiabeticretinopathyinAsianIndianswithyoungonsettype1andtype2diabetes.JDiabetesComplications28:291-297,201410)AhmadSS,GhaniSA:Floriddiabeticretinopathyinayoungpatient.JOphthalmicVisRes7:84-87,201211)LeNguyenTD,MilesR,SavagePJetal:Theassociationofplasmafibrinogenconcentrationwithdiabeticmicrovascularcomplicationsinyoungadultswithearly-onsetoftype2diabetes.DiabetesResClinPract82:317-323,2008***(128)