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反張式眼圧計・アイケアic200 手持眼圧計による 眼圧測定値の検討

2023年10月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科40(10):1337.1341,2023c反張式眼圧計・アイケアic200手持眼圧計による眼圧測定値の検討吉村雅弘重城達哉徳田直人遠藤誠子山田雄介豊田泰大塚本彩香北岡康史聖マリアンナ医科大学眼科学教室CInvestigationofIntraocularPressureMeasuredbyiCareIC200ReboundTonometerMasahiroYoshimura,TatsuyaJujo,NaotoTokuda,AkikoEndo,YusukeYamada,YasuhiroToyoda,AyakaTukamotoandYasushiKitaokaCDepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicineC目的:アイケアCic200手持眼圧計(ic200)による眼圧測定値を,非接触型眼圧計(NCT)およびアイケアCPRO手持眼圧計(PRO)と比較する.ic200による異なる体位での眼圧測定値についても評価する.方法:開放隅角緑内障患者C50名C50眼に対し,NCTでは座位にて,PROでは座位・仰臥位,ic200では座位・仰臥位・半座位で眼圧を測定し比較検討した.結果:座位についてはCNCT13.6CmmHg,PRO13.7CmmHg,ic20013.0CmmHgであり,ic200はCNCTよりも有意に低かった.体位の影響について検討した結果,ic200では半座位,仰臥位ともに座位よりも有意に眼圧が高かった.各機種とも角膜厚との相関関係は認められなかった.結論:ic200ではCNCTよりも眼圧測定値が低く表示される傾向がある.ic200は仰臥位,半座位による眼圧上昇を正確に評価している可能性がある.CPurpose:Tocompareintraocularpressure(IOP)measurementsobtainedusingtheiCareIC200(ic200)(IcareFinland)hand-heldreboundtonometer(ic200)withthoseobtainedusinganon-contacttonometer(NCT)andtheiCarePRO(IcareFinland)hand-heldreboundtonometer(PRO)C,andevaluateIOPindi.erentpositionsusingtheic200.CMethods:In50eyeswithopen-angleglaucoma,IOPwasmeasuredinthesittingpositionwiththeNCT,intheCsittingCandCsupineCpositionsCwithCtheCPRO,CandCinCtheCsitting,Csupine,CandCsemi-recumbentCpositionsCwithCtheCic200.CResults:TheCIOPCvaluesCinCtheCsittingCpositionCwereC13.6mmHgCforCNCT,C13.7mmHgCforCPRO,CandC13.0CmmHgforic200,withic200beingsigni.cantlylowerthanNCT.TheIOPmeasuredbyic200indi.erentposi-tionsCwasCsigni.cantlyChigherCinCtheCsemi-seatedCandCsupineCpositionsCthanCinCtheCseatedCposition.CThereCwasCnoCcorrelationbetweenIOPmeasurementsinthesittingpositionandcornealthicknessforeachmodel.Conclusions:CTheic200showedatendencytomeasurelowerIOPvaluesthanNCT.IOPtendedtobehigherinthesupineandsemi-recumbentpositionsthanintheseatedposition.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(10):1337.1341,C2023〕Keywords:反跳式眼圧計,アイケアCic200手持眼圧計,アイケアCPRO手持眼圧計,座位,仰臥位,半座位.re-boundtonometer,iCareIC200hand-heldreboundtonometer,iCarePROhand-heldreboundtonometer,sittingpo-sition,supineposition,semi-recumbentpositions.Cはじめに緑内障治療においてもっとも確実な治療法は眼圧下降である1).眼圧は緑内障診療における治療効果判定や予後予測に大きく関与するため,測定された眼圧値が正確であることは重要である.眼圧測定値は測定する時間や季節などさまざまな要因に影響を受け変動することが知られている2).体位も眼圧に影響を及ぼす因子であり,座位と比較して仰臥位では眼圧測定値が上昇することが知られている3).日常診療でもっとも多く使用されているCGoldmann圧平眼圧計(Goldma-nnCapplanationtonometer:GAT)や非接触型眼圧計(non-〔別刷請求先〕吉村雅弘:〒216-8511神奈川県川崎市宮前区菅生C2-16-1聖マリアンナ医科大学眼科学教室Reprintrequests:MasahiroYoshimura,DepartmentofOphthalmology,St.MariannaUniversitySchoolofMedicine,2-16-1Sugao,Miyamae-ku,Kawasaki,Kanagawa216-8511,JAPANCcontacttonometer:NCT)は座位で測定するため,このC2機種間においては体位による影響はない.しかし,GATは検者間での測定誤差が生じることが指摘されている4)のに対し,NCTは測定が容易であり,検者間での測定誤差も少なくコメディカルでも使用可能である5).その後,反張式眼圧計であるアイケア手持眼圧計(エムイーテクニカ)が開発され,その改良機種としてアイケアCPRO手持眼圧計(以下,PRO)が誕生し,座位のみならず仰臥位でも眼圧測定が可能となった.しかし,仰臥位での眼圧測定時にCPROと角膜がほぼ垂直の状態でなければ眼圧測定が成功しないため,PROにおいても眼圧測定が困難な患者が存在した.その後アイケア手持眼圧計はさらに改良され,座位,仰臥位のみならず半座位のあらゆる角度での眼圧測定が可能となったアイケアCic200手持眼圧計(以下,ic200)が開発された.ic200の登場により仰臥位が困難な車いす利用の患者などでも比較的容易に眼圧測定が可能となった.そこで今回筆者らはCic200,PRO,NCTを用いて,座位・仰臥位・半座位での眼圧測定を行い,その眼圧値を比較検討したので報告する.CI対象および方法2022年C4.10月に聖マリアンナ医科大学病院(以下,当院)緑内障外来を受診し,初診時にCNCT,PRO,ic200のC3機種で眼圧測定が可能であった原発開放隅角緑内障患者C50名C50眼を対象とした.各症例と右眼,左眼の順に両眼の測定を行い,右眼を解析対象とした.C.6D以下の強度近視眼,重篤な角結膜疾患眼,内眼手術と近視矯正手術の既往があるものは,対象から除外した.NCT,PRO,ic200による眼圧測定は同日,同時刻(14.16時)に行った.NCTは座位にて,PROでは座位と仰臥位,ic200では座位,仰臥位,半座位C45°でそれぞれ測定した.NCTについては当院視能訓練士(3名)が測定し,PRO,ic200については同一検者(M.H.)が測定した.眼圧測定の順序は,座位・半座位C45°・仰臥位で行った.はじめに座位でC5分間姿勢保持したのちに,NCT,PRO,ic200の順で測定した.続いて半座位C45°でC5分間姿勢保持しCic200で測定した.その後仰臥位にてC5分間姿勢保持しCPRO,ic200の順に測定した.眼圧測定の際にはPRO,ic200では額あてを額に当てて固定し,眼瞼挙上はしていない.NCTでも基本的には眼瞼挙上はしないが,眼瞼挙上が必要な場合のみ眼球に圧迫を加えずに眼瞼挙上し眼圧を測定した.NCTはCCanonフルオート非接触眼圧計CTX-F(キヤノン)により,3回の連続測定の平均値を,PRO,ic200についてはC6回の連続測定の平均値を測定結果とした.PROの測定結果はC6回測定し,ばらつきが正常範囲内であることを示す「Deviation:OK」と緑色で表示された眼圧値を採用した.同様にCic200の測定結果も信頼性の色分けシステムにより緑色・黄色・赤色のいずれかに分類されるが,そのなかで変動制がもっとも低く,信頼性がもっとも高い緑色の平均値のみを採用した.得られた眼圧測定値について,測定機種,測定体位について比較検討した.角膜厚については眼圧測定と同日に前眼部光干渉断層計CASIA2(トーメーコーポレーション)で測定し,各機種の座位における眼圧測定値と角膜厚の相関について検討した.統計学的な検討は,2群間の比較についてはCpaired-tCtestを行い,有意水準をCp<0.05とした.3群間の比較においては反復測定分散分析(RepeatedCMeasuresANOVA)により,p<0.05となった場合,Bonferroni補正を行った.各種眼圧計間の一致度についてはCBland-Altmanplot,級内相関係数(intraclassCcorrelationcoe.cients:ICC)により評価した.統計解析ソフトはCIBMCSPSSCStatistics21(IBM社)を使用した.なお,本研究は診療録による後ろ向き研究である(聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会C5879号).CII結果表1に対象の背景を示す.Humphrey自動視野計によるCmeandeviationがC.6CdB未満の早期緑内障症例であり,使用中の緑内障点眼薬数は無点眼がC18眼(36%),単剤C29眼(58%),2剤C1眼(2%),3剤(4%)であった.単剤の症例はすべてプロスタノイドCFP受容体作動薬,2剤の症例はプロスタノイドCFP受容体作動薬,交感神経Cb遮断薬の配合点眼薬,3剤の症例はプロスタノイドCFP受容体作動薬と交感神経Cb遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬の配合点眼薬を使用していた.表2にCNCT,PRO,ic200による測定体位別の眼圧測定値(平均値C±標準誤差)を示す.座位についてはCNCTC13.6C±2.9mmHg,PRO13.7C±2.0CmmHg,ic200C13.0C±2.9CmmHgであった.3群間で反復測定分散分析(RepeatedMeasuresANOVA)を行った結果,有意差(p<0.01)を認めたため,Bonferroni補正を行った結果,ic200の眼圧測定値はCPROと有意差を認めなかったが,NCTよりも有意に低く表示されていた(p<0.01).つぎに同機種における体位の影響について検討した.PROについては,座位C13.7C±2.0CmmHg,仰臥位C15.1C±2.5mmHgであり,仰臥位は座位よりも有意に眼圧が高くなっていた(p<0.05).ic200については座位C13.0C±2.9CmmHg,半座位C14.4C±3.6mmHg,仰臥位C15.6C±3.7CmmHgであり,3群間で有意差を認めた(p<0.01)ため,Bonferroni補正を行った結果,半座位(p<0.05),仰臥位(p<0.01)ともに座位よりも有意に眼圧は高くなっていた.図1~3に各種眼圧計による眼圧測定値と,その他の眼圧計で測定した眼圧測定値の関係についてCBland-Altmanplotを示す.ic200とCNCTについては,中央値C.0.56,95%信表1対象の背景年齢C60.4±17.7歳性別(男/女)C24/26logMAR(小数視力)C0.11±0.33(C0.5.C1.2)等価球面度数C.1.9±2.3D眼軸長C24.3±1.1Cmm角膜厚C541.6±43.5CμmHumphrey自動視野計30-2プログラムによるC.3.3±1.8CdBmeandeviationC緑内障点眼薬数C0.74±0.7本表2各種眼圧計による測定体位別の眼圧測定値眼圧測定機種CNCTCPROCic200測定体位C13.0±2.9*座位C13.6±2.9C13.7±2.0C**─C─*C14.4±3.6*半座位C仰臥位C15.1±2.5C15.6±3.7*:p<0.01,**:p<0.05.座位における眼圧測定値は,ic200はCNCTよりも有意に眼圧測定値は低くなっていた(p<0.01).PROによる眼圧測定値は,仰臥位では座位よりも有意に高くなっていた(p<0.05).ic200による眼圧測定値は,半座位(p<0.05),仰臥位(p<0.01)ともに座位よりも有意に高くなっていた.C5.02.52.5.0ic200-NCTPRO-NCT.0-2.5-2.5-5.0-7.5(ic200+NCT)/2図1ic200とNCTによる眼圧測定値に対するBland-Altmanplot:眼圧測定値の差の平均,:誤差の許容範囲.ic200とNCTの眼圧測定値の差とその平均の間に有意な相関は認めない(r=0.02).頼区間.5.33.4.09であった(図1).ic200とCNCTの眼圧測定値の差とその平均の間に有意な傾向は認めなかった(r=0.02).PROとCNCTについては,中央値C0.13,95%信頼区間.4.21.4.39であった(図2).PROとCNCTの眼圧測定-5.0(PRO+NCT)/2図2PROとNCTによる眼圧測定値に対するBland-Altmanplot:眼圧測定値の差の平均,:誤差の許容範囲.PROとNCTの眼圧測定値の差とその平均の間に負の相関を認めた(r=.0.45).値の差とその平均の間に有意な負の相関が認められた(r=.0.45).ic200とCPROについては中央値C.0.63,95%信頼区間.4.05.2.63であった(図3).ic200とCPROの眼圧測定値の差とその平均の間に有意な正の相関が認められた(r.05.010.015.020.0.05.010.015.020.0304.02.0眼圧(mmHg)2010ic200-PRO.0-2.0-4.00.05.010.015.020.0400500600(ic200+PRO)/2図3ic200とPROによる眼圧測定値に対するBland-Altmanplot:眼圧測定値の差の平均,:誤差の許容範囲.ic200とPROの眼圧測定値の差とその平均の間に正の相関を認めた(r=0.57).=0.57).ICCは,ic200とCNCTについてはC0.78,PROとCNCTについてはC0.76,ic200とCPROについてはC0.85であった.各機種の座位における眼圧測定値と角膜厚の関係について散布図を作製し,その相関関係について検討したが,各機種とも角膜厚との相関関係は認められなかった(図4).CIII考按今回の検討では,まず座位においてCNCTと手持ち眼圧計のCPRO,ic200の眼圧測定値の比較を行った.その結果,NCTとCPROの眼圧測定値には有意差が認められなかったが,ic200はCNCTよりも有意に眼圧測定値が低くなっていた.ChenらはCNCTとCPROとCGATとを比較し,眼圧測定値がC22.30CmmHgの群以外では有意差を認めなかったとしている6).今回の検討においてはC3機種ともC20CmmHgを超えた症例はなかったため,NCTとCPROの関係については同様の結果であったといえる.NakakuraらはCGAT,PRO,ic200による眼圧測定値を比較した結果,GATでもっとも高く,続いてCPRO,ic200の順であったと報告している7).今回の結果とこれらの報告をあわせて考えると,ic200による眼圧測定値はCNCTよりも低く表示される傾向があることが示唆された.つぎに同機種における体位の影響については,PROでは,仰臥位は座位に比較し有意に眼圧測定値が高く,ic200においては仰臥位と半座位は座位よりも有意に眼圧測定値が高くなっており,既報3,6,8)と同様の結果であった.これはCPRO,ic200ともに体位の変化による眼圧上昇を正確に検知したことを示唆している.NCT,PRO,ic200のC3機種による眼圧測定値の誤差につ角膜厚(μm)図4各種眼圧計による眼圧測定値と角膜厚の相関NCT,PRO,ic200ともに眼圧測定値と角膜厚に相関関係を認めなかった.いてCBland-Altmanplotにより検討した.ic200とCNCT,PROとCNCT,ic200とCPROのどの組み合わせにおいてもほとんどのプロットがC95%信頼区間内に収まっており,固定誤差は認められなかったが,PROとCNCTでは負の比例誤差,ic200とCPROでは正の比例誤差が認められた.Nakaku-raらの検討7)では,ic200とCGATの平均値が低いほどCic200の測定値は低く測定される傾向が示されていたが,今回の筆者らの検討ではCic200とCNCTの間にはそのような傾向は認められなかった.ICCについては,これらの組み合わせがそれぞれC0.7以上であり一致性が確認された.とくにCic200とPROについてはCICCがC0.85ともっとも高く,ic200がCPROの上位機種であることからこの結果は妥当性があると考える.今回の検討において,NCT,PRO,ic200のC3機種による眼圧測定値と角膜厚の相関関係は認められなかった.つまり3機種とも角膜厚の影響を受けなかったということになるが,圧平式眼圧計であるCNCTは眼圧測定値と角膜厚の関係についての多数の報告9)から考えると,今回の検討ではなんらかのバイアスが影響した可能性が否定できない.反跳式眼圧計と角膜厚の関係については,Raoらは反跳式眼圧計とGATの差と角膜厚に相関関係があることを示しており,反跳式眼圧計の測定時には角膜厚の影響も考慮すべきとしている10).Nakakuraらの検討7)においても各種眼圧計での眼圧測定値と角膜厚の相関は認められている.PRO,ic200の眼圧測定値についても角膜厚との相関は既報と異なる結果となった.原因としては,症例のなかに緑内障点眼薬を使用していなかった患者から多剤併用の患者まで存在したため,この点が今回の結果に影響した可能性はある.しかし,既報の反跳式眼圧計と眼圧測定値の相関は弱い相関であることと今回の結果とあわせて考えると,反跳式眼圧計は比較的角膜厚の影響を受けづらい可能性が示唆された.以上,ic200,PRO,NCTの眼圧測定値について,機種間,体位での違いについて検討した.ic200ではCNCTよりも眼圧測定値が低く表示される傾向が認められた.この点については臨床でCic200を用いる際には注意が必要であるといえる.ic200では仰臥位において眼圧測定値は高くなり,半座位においてもその傾向は認められた.また,ic200の眼圧測定値と角膜厚の相関関係が認められなかったことから,LASIK後や高眼圧症の眼圧評価にも適している可能性が示唆された.症例ごとで使用中の緑内障点眼薬が異なること,角膜曲率,眼軸長といった角膜厚以外の眼圧測定値に影響を及ぼす因子の検討ができていないこと,GATとの比較がなされていないこと,NCTでは検者間再現性,PRO,ic200の検者内再現性なども考慮し,今後さらに検討の精度を上げて解析する必要があると考える.文献1)TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInter-ventionStudy(AGIS):7.CTheCrelationshipCbetweenCcon-trolCofCintraocularCpressureCandCvisualC.eldCdeterioration.CAmJOphthalmolC130:429-440,C20002)GardinerS,DemirelS,GordonMetal:SeasonalchangesinCvisualC.eldCsensitivityCandCintraocularCpressureCinCtheCocularChypertensionCtreatmentCstudy.COphthalmologyC120:724-730,C20133)NajmanovaCE,CPluha.ekCF,CHaklovaM:IntraocularCpres-sureCresponseCa.ectedCbyCchangingCofCsittingCandCsupineCpositions.ActaOphthalmolC98:e368-e372,C20204)MihailovicCA,CVaradarajCV,CRamuluCPCetal:EvaluatingCGoldmannCapplanationCtonometryCintraocularCpressureCmeasurementCagreementCbetweenCophthalmicCtechniciansCandphysicians.AmJOphthalmolC219:170-176,C20205)SaganCW,CSchwadererK:Non-contactCtonometryCbyCassistants.AmJOptomPhysiolOptC52:288-290,C19756)ChenCM,CZhangCL,CXuCJCetal:ComparabilityCofCthreeCintraocularCpressuremeasurement:iCareCproCrebound,Cnon-contactCandCGoldmannCapplanationCtonometryCinCdi.erentIOPgroup.BMCOpthalmologyC19:225,C20197)NakakuraCS,CAsaokaCR,CTeraoCECetal:EvaluationCofCreboundCtonometerCiCareCIC200CasCcomparedCwithCIcare-PROCandCGoldmannCapplanationCtonometerCinCpatientswithglaucoma.EyeVis(Lond)C8:25,C20218)LeeCT,CYooCC,CLinCSCetal:E.ectCofCdi.erentCheadCposi-tionsCinClateralCdecubitusCpostureConCintraocularCpressureCintreatedpatientswithopen-angleglaucoma.AmJOph-thalmolC160:929-936,C20159)DoughtyCM,CZamanM:HumanCcornealCthicknessCandCitsCimpactConCintraocularCpressuremeasures:aCreviewCandCmeta-analysisCapproach.CSurvCOphthalmolC44:367-408,C200010)RaoA,KumarM,PrakashBetal:RelationshipofcentralcornealCthicknessCandCintraocularCpressureCbyCiCareCreboundtonometer.JGlaucomaC23:380-384,C2014***

手持ち眼圧計Icare®PRO の座位・仰臥位における眼圧精度と有用性

2015年7月31日 金曜日

《(00)1022(100)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY《第25回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科32(7):1022.1026,2015cはじめに手持ち眼圧計の一つであり2005年10月に発売されたIcareR(IcareFinlandOy)(以下,Icare)は麻酔不要で簡便に眼圧を測定することが可能である.そのためノンコンタクトトノメータ(NCT)で測定が困難な小児や寝たきりの患者,また緑内障患者における仰臥位での測定に多く用いられ〔別刷請求先〕都村豊弘:〒761-1703香川県高松市香川町浅野1260高松市民病院附属香川診療所眼科Reprintrequests:ToyohiroTsumura,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TakamatsuMunicipalHospitalKagawaClinic,1260Asano,Kagawa-cho,Takamatsu761-1703,JAPAN手持ち眼圧計IcareRPROの座位・仰臥位における眼圧精度と有用性都村豊弘高松市民病院附属香川診療所眼科ClinicalEvaluationoftheNewReboundTonometerIcarePROintheSittingandSupinePositionsToyohiroTsumuraDepartmentofOphthalmology,TakamatsuMunicipalHospitalKagawaClinic目的:手持ち眼圧計IcareRの改良版であるIcareRPROにつき,他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.対象および方法:対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,本研究について同意が得られた168例168眼(右眼).座位でノンコンタクトレンズトノメータ(NCT),Icare,IcarePRO,Goldmann眼圧計(GAT)の順番で測定.つぎに仰臥位で5分間安静後IcareRPROで測定,その後顔を横に向けIcareで測定し,得られた眼圧値を比較・検討した.結果:座位での平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,IcarePRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHg.仰臥位での平均眼圧値はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.座位・仰臥位を含めた相関係数は0.813.0.943と強い相関があった.仰臥位に伴う眼圧上昇平均値はIcare1.79±1.77mmHg,Icare-PRO2.04±1.58mmHgであった.結論:IcarePROはIcareに比べNCTやGATとの眼圧値差やばらつきが少なく再現性に優れ,座位・仰臥位においても強い相関があったことからIcareより有用な機器であることが示唆された.Purpose:Tocompareandevaluateintraocularpressure(IOP)measurmentsobtainedbyuseoftheIcarePROandIcarereboundtonometers(IcareFinlandOy,Vantaa,Finland),anon-contacttonometer(NCT),andaGoldma-nnapplanationtonometer(GAT)inthesittingposition,andtheIcarePROandIcareinthesupineposition.Sub-jectsandMethods:Thisstudyinvolved168righteyesof168patientsseenatmyclinicbetweenJulyandSep-tember2013.IOPmeasurementswereobtainedinthesittingpositionusingNCT,Icare,IcarePRO,andGAT.Inthesupineposition,IOPmeasurementsweretakenusingIcarePROandIcare.Themean±standarddeviationIOPmeasurementsofalltonometerswerethencompared.Statisticalagreementbetweenthetonometerswascalculatedusingat-test,correlationanalysis,andtheBland-Altmanmethod.Results:ThemeanIOPsobtainedinthesittingpositionbyNCT,Icare,IcarePRO,andGATwere13.7±3.5mmHg,14.2±3.9mmHg,13.6±3.1mmHg,and12.8±3.3mmHg,respectively.CorrelationanalysisofthesedataindicatedagoodcorrelationbetweenIOPreadingsobtainedbyuseofalltonometers(r=0.813.0.943).ThemeanIOPsobtainedinthesupinepositionbyIcarePROandIcarewere15.6±3.2mmHgand16.0±3.1mmHg,respectively.Conclusion:IOPmeasurementsobtainedbyuseoftheIcarePROshowgoodcorrelationandagreementwiththoseobtainedbyuseofIcare,NCT,andGATinthesittingpositionandIcareinthesupineposition.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(7):1022.1026,2015〕Keywords:眼圧,座位,仰臥位,アイケア,アイケアPRO.intraocularpressure,sittingposition,supineposi-tion,Icare,IcarePRO. あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151023(101)るようになった.しかし,本機器での測定値はNCTやGoldmann眼圧計(GAT)に比べて高めに出やすい傾向があり,また仰臥位での測定では下に向けて測定できないため顔を横に向ける必要があった.そこで同社では改良版として,下に向けても測定が可能で,プローブも滅菌化されたIcareRPRO(以下,IcarePRO)を開発し2012年10月わが国でも発売開始した.そこでIcarePROに関してIcareならびに他の眼圧計と比較し眼圧精度や有用性について検討した.I対象および方法対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,内眼手術の既往がなく,本研究について口頭で同意が得られた168例168眼である.測定眼はすべて右眼とした.内訳は男性66名,女性102名,平均年齢は72.8±9.9(15.94)歳であった.眼圧測定は以下の順序で行った.検者はNCTに関しては当診療所スタッフ2名で行い,それ以外は筆者1名がすべての症例の測定を行った.まず座位で①NCT(TOPCONCT-90A),②Icare,③IcarePRO,④GAT,つぎに仰臥位で5分間安静後⑤IcarePRO,その後顔を横に向けて⑥Icareで測定した.NCTでは測定を3回,Icare,IcarePROについては測定を6回行い,表示された眼圧値の平均を算出した.得られた眼圧値はt検定,相関,Bland-Altman分析を用いて比較・解析を行った.系統誤差に関しては本研究の誤差の許容範囲を「誤差の許容範囲(limitsofagreement:LOA)」と定義し2機種の差の平均(d),その値の標準偏差(SD),95%信頼区間の定義値(1.96)より95%LOAとしてd±1.96SDの式で算出することができる1).d±1.96SDの範囲が機種間の誤差として許容範囲内であるかどうかを検討した.さらに対象者を正常群122名(男性35名,女性87名,平均年齢73.5±8.5歳)と視野異常を認め点眼などの加療を行っている緑内障〔このなかに狭義の原発開放隅角緑内障(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)を含む〕群46名(男性31名,女性15名,平均年齢71.0±12.8歳)に分類した.そしてIcareとIcarePROで座位,仰臥位での測定値を基にt検定で解析し,仰臥位に伴う眼圧値の変化が正常者と緑内障患者で差異があるかどうかを検討した.統計処理に関して統計ソフトはMicrosoftOfficeExcelを使用しt検定の有意水準は5%未満とした.II結果測定機器ごとの結果を示す.座位における平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,Icare-PRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHgであった.仰臥位における平均眼圧はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.各機器間においてNCTとIcarePRO間を除いて有意差があった(対応のあるt検定:有意差ありの機器間のp値はすべてp<0.003,NCT-Icare-PRO間はp=0.390)(図1).次にIcare,IcarePROとNCT間,Icare,IcarePROとGAT間における相関関係の図を示す(図2,3).それぞれの機器間におけるPearsonの相関係数(.1<r<+1)はr=0.893.0.921となり強い相関を認めた.また,座位・仰臥位を含めた各測定機器間すべてにおけるPearsonの相関係数もr=0.813.0.943となり強い相関を認めた.座位におけるBland-Altman分析を行ったところ,Icare-NCT間の差は平均が0.58mmHgで95%LOAは.2.41.3.56mmHg,Icare-GAT間の差は平均が1.47mmHgで95%LOAは.1.99.4.93mmHgであった.それに対しIcare-PRO-NCT間の差は平均が.0.10mmHgで95%LOAは.3.06.2.86mmHg,IcarePRO-GAT間の差は平均が0.79mmHgで95%LOAが.1.99.3.58mmHgとなり,GATとの比較においてIcarePROのほうがIcareに比べてばらつきが少なく再現性に優れているという結果となった(図4,5).仰臥位に伴うIcare,IcarePROを用いた眼圧上昇度の分布をみると,上昇度が1.2mmHg台はIcarePROのほうが多いがそれ以上になるとIcareのほうが多い結果となった.逆に仰臥位になることで眼圧が低下した症例もIcareで11眼(6.5%),IcarePROで9眼(5.4%)あった(図6).両機種における眼圧上昇平均値はIcareが1.79±1.77mmHg,IcarePROが2.04±1.58mmHgとIcarePROが約2mmHg高値であったが有意差はなかった(p=0.171,t検定).さらに対象者を正常群と緑内障群に分けて解析したところ正常群における眼圧上昇度はIcareが1.7±1.7mmHg,IcarePROが2.0±1.5mmHgだったのに対し,緑内障群ではIcareが2.1±1.9mmHg,IcarePROが2.3±1.8mmHgであった.ただし正常群間,緑内障群間,同一機種間において眼圧上昇度における有意差はなかった(t検定p値:正常群間p=0.072,緑内障群間p=0.490,Icare間p=0.187,IcarePRO間p=図1各眼圧計における眼圧平均値の比較数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025NCTIcareIcarePROGATIcarePROIcare眼圧値(mmHg)座位仰臥位13.7±3.514.2±3.913.6±3.112.8±3.315.6±3.216.0±3.1あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151023(101)るようになった.しかし,本機器での測定値はNCTやGoldmann眼圧計(GAT)に比べて高めに出やすい傾向があり,また仰臥位での測定では下に向けて測定できないため顔を横に向ける必要があった.そこで同社では改良版として,下に向けても測定が可能で,プローブも滅菌化されたIcareRPRO(以下,IcarePRO)を開発し2012年10月わが国でも発売開始した.そこでIcarePROに関してIcareならびに他の眼圧計と比較し眼圧精度や有用性について検討した.I対象および方法対象は2013年7.9月に当診療所を受診し,内眼手術の既往がなく,本研究について口頭で同意が得られた168例168眼である.測定眼はすべて右眼とした.内訳は男性66名,女性102名,平均年齢は72.8±9.9(15.94)歳であった.眼圧測定は以下の順序で行った.検者はNCTに関しては当診療所スタッフ2名で行い,それ以外は筆者1名がすべての症例の測定を行った.まず座位で①NCT(TOPCONCT-90A),②Icare,③IcarePRO,④GAT,つぎに仰臥位で5分間安静後⑤IcarePRO,その後顔を横に向けて⑥Icareで測定した.NCTでは測定を3回,Icare,IcarePROについては測定を6回行い,表示された眼圧値の平均を算出した.得られた眼圧値はt検定,相関,Bland-Altman分析を用いて比較・解析を行った.系統誤差に関しては本研究の誤差の許容範囲を「誤差の許容範囲(limitsofagreement:LOA)」と定義し2機種の差の平均(d),その値の標準偏差(SD),95%信頼区間の定義値(1.96)より95%LOAとしてd±1.96SDの式で算出することができる1).d±1.96SDの範囲が機種間の誤差として許容範囲内であるかどうかを検討した.さらに対象者を正常群122名(男性35名,女性87名,平均年齢73.5±8.5歳)と視野異常を認め点眼などの加療を行っている緑内障〔このなかに狭義の原発開放隅角緑内障(POAG)と正常眼圧緑内障(NTG)を含む〕群46名(男性31名,女性15名,平均年齢71.0±12.8歳)に分類した.そしてIcareとIcarePROで座位,仰臥位での測定値を基にt検定で解析し,仰臥位に伴う眼圧値の変化が正常者と緑内障患者で差異があるかどうかを検討した.統計処理に関して統計ソフトはMicrosoftOfficeExcelを使用しt検定の有意水準は5%未満とした.II結果測定機器ごとの結果を示す.座位における平均眼圧値はNCT13.7±3.5mmHg,Icare14.2±3.9mmHg,Icare-PRO13.6±3.1mmHg,GAT12.8±3.3mmHgであった.仰臥位における平均眼圧はIcarePRO15.6±3.2mmHg,Icare16.0±3.1mmHgであった.各機器間においてNCTとIcarePRO間を除いて有意差があった(対応のあるt検定:有意差ありの機器間のp値はすべてp<0.003,NCT-Icare-PRO間はp=0.390)(図1).次にIcare,IcarePROとNCT間,Icare,IcarePROとGAT間における相関関係の図を示す(図2,3).それぞれの機器間におけるPearsonの相関係数(.1<r<+1)はr=0.893.0.921となり強い相関を認めた.また,座位・仰臥位を含めた各測定機器間すべてにおけるPearsonの相関係数もr=0.813.0.943となり強い相関を認めた.座位におけるBland-Altman分析を行ったところ,Icare-NCT間の差は平均が0.58mmHgで95%LOAは.2.41.3.56mmHg,Icare-GAT間の差は平均が1.47mmHgで95%LOAは.1.99.4.93mmHgであった.それに対しIcare-PRO-NCT間の差は平均が.0.10mmHgで95%LOAは.3.06.2.86mmHg,IcarePRO-GAT間の差は平均が0.79mmHgで95%LOAが.1.99.3.58mmHgとなり,GATとの比較においてIcarePROのほうがIcareに比べてばらつきが少なく再現性に優れているという結果となった(図4,5).仰臥位に伴うIcare,IcarePROを用いた眼圧上昇度の分布をみると,上昇度が1.2mmHg台はIcarePROのほうが多いがそれ以上になるとIcareのほうが多い結果となった.逆に仰臥位になることで眼圧が低下した症例もIcareで11眼(6.5%),IcarePROで9眼(5.4%)あった(図6).両機種における眼圧上昇平均値はIcareが1.79±1.77mmHg,IcarePROが2.04±1.58mmHgとIcarePROが約2mmHg高値であったが有意差はなかった(p=0.171,t検定).さらに対象者を正常群と緑内障群に分けて解析したところ正常群における眼圧上昇度はIcareが1.7±1.7mmHg,IcarePROが2.0±1.5mmHgだったのに対し,緑内障群ではIcareが2.1±1.9mmHg,IcarePROが2.3±1.8mmHgであった.ただし正常群間,緑内障群間,同一機種間において眼圧上昇度における有意差はなかった(t検定p値:正常群間p=0.072,緑内障群間p=0.490,Icare間p=0.187,IcarePRO間p=図1各眼圧計における眼圧平均値の比較数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025NCTIcareIcarePROGATIcarePROIcare眼圧値(mmHg)座位仰臥位13.7±3.514.2±3.913.6±3.112.8±3.315.6±3.216.0±3.1 1024あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(102)0.241)(図7).III考按点眼麻酔が不要で下に向けて測定が可能な手持ち眼圧計としてIcarePROが国内では2012年7月に発売された.Icareと比べてIcarePROのその他の特徴としては,①表示画面の拡大,②1,000件以上の測定結果を保存でき画面に表示するだけでなくUSB経由でPCに転送可能,③測定プローブが図2Icare,IcarePROとNCTによる眼圧値の比較IcareおよびIcarePROとNCTによる眼圧測定値の散布図.実線は近似回帰直線.Icare:Y=1.03X+0.15,IcarePRO:0.81X+2.44.Pearsonの相関係数はIcare:0.921,IcarePRO:0.901.051015202530051015202530NCT(mmHg)Icare(mmHg)051015202530051015202530NCT(mmHg)IcarePRO(mmHg)図3Icare,IcarePROとGATによる眼圧値の比較IcareおよびIcarePROとGATによる眼圧測定値の散布図.実線は近似回帰直線.Icare:Y=1.06X+0.73,IcarePRO:0.86X+2.54.Pearsonの相関係数はIcare:0.893,IcarePRO:0.903.051015202530051015202530GAT(mmHg)Icare(mmHg)051015202530051015202530GAT(mmHg)IcarePRO(mmHg)図4Icare,IcarePROとNCTの眼圧値のBland.AltmanPlotによる比較実線は対象機種の差の平均値〔d(Icare):0.58mmHg,d(IcarePRO):.0.10mmHg〕,点線はLOA:d±1.96x標準偏差(SD)(Icare上限:3.56mmHg,下限:.2.41mmHg,IcarePRO上限:2.86mmHg,下限:.3.06mmHg).-5-4-3-2-1012345678051015202530IcareとNCTの眼圧平均値(mmHg)IcareとNCTの眼圧差(mmHg)-5-4-3-2-1012345678051015202530IcarePROとNCTの眼圧平均値(mmHg)IcarePROとNCTの眼圧差(mmHg)dd+1.96×SDd-1.96×SDdd+1.96×SDd-1.96×SD-5-4-3-2-1012345678051015202530IcareとGATの眼圧平均値(mmHg)IcareとGATの眼圧差(mmHg)-5-4-3-2-1012345678051015202530IcarePROとGATの眼圧平均値(mmHg)IcarePROとGATの眼圧差(mmHg)d+1.96×SDd-1.96×SDd+1.96×SDd-1.96×SDdd図5Icare,IcarePROとGATの眼圧値のBland.AltmanPlotによる比較実線は対象機種の差の平均値〔d(Icare):1.47mmHg,d(IcarePRO):0.79mmHg〕,点線はLOA:d±1.96x標準偏差(SD)(Icare上限:4.93mmHg,下限:.1.99mmHg,IcarePRO上限:3.58mmHg,下限:.1.99mmHg). (103)あたらしい眼科Vol.32,No.7,20151025滅菌済製品として提供されるなどがあげられる.ただし測定画面が大きくなった分,幅が32mmから46mmと拡大し重量も250gから275gと若干重くなっている.今回Icare-PROの眼圧測定値に関してIcareならびに他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.IcarePROで測定した眼圧値の精度に関してはGATとの比較を中心に多くの報告がなされている.対象患者数や緑内障患者か否かの割合が論文ごとに異なるものの,IcarePROの平均眼圧値はGATと比べて差が.0.9.0.7mmHgの範囲で報告されている2.7).今回座位でIcare,IcarePROで得られた測定値をNCT,GATそれぞれと比較したところ,IcareはNCTより0.5mmHg,GATより1.4mmHg高かった.一方,IcarePROはGATより0.8mmHg高かったがNCTより0.1mmHg低く,測定機器間で唯一有意差もなかった.また,NCTやGATとのBland-Altman分析において,IcarePROはIcareに比べて測定値のばらつきはNCTでは変わりなかったが,GATとの比較ではIcarePROのほうが少なかった.GATの眼圧測定値がgoldstandardである8)という現状からすればIcarePROの測定値はGATに近づいたことになり,その結果測定精度はIcareより改善されていると思われた.仰臥位による眼圧上昇に関しては今までにも他の眼圧計による多数の報告例がある.Pneumatonometer(Reichert社)を用いたものでは座位と比べて3.9.4.2mmHg上昇したとの報告がある9,10).TonopenRXL,TonopenRAVIA(Reichert社)などを用いたものでは0.76.2.2mmHg上昇したとの報告がある6,9.12).また,本研究で用いたIcarePROで測定した仰臥位による眼圧上昇に関してもいくつかの報告例がある.これも対象患者において緑内障の有無などが異なるが,平均上昇値が.0.9.2.9mmHgであった6,7,9,13).報告例の大半では平均値は上昇しているものの,なかには0.9mmHg低下した報告例もある9).当診療所で調査した結果では座位と比べIcareで1.8mmHg,IcarePROで2.0mmHgの上昇を認め両機器間における有意差はなかった.この結果はIcarePROに関しては報告例の範囲内ではあった.また,対象者を正常群と緑内障群に分けて眼圧上昇度をみたところ,緑内障群のほうが若干高値であったがこれも有意差はなかった.過去の報告6,7,9,13)でも緑内障患者における上昇度が高い傾向があり,本研究もそれに沿った結果となった.仰臥位に伴う眼圧上昇は緑内障における眼圧の日内変動において重要なファクターである.Kiuchiらは正常眼圧緑内障患者において仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅とMDslopeとの関係を調べたところ,有意な負の相関を認めたと報告している14).このことから,緑内障治療向上のためには仰臥位眼圧上昇幅も可能な限り小さくすることが必要であると思われる.本研究でもIcarePROによる測定で眼圧が7.4mmHg上昇した症例があった.仰臥位でIcareのように顔を横に向ける手間がなく簡便に測定できるIcarePROは,緑内障患者に対する治療方針決定において有用な機器であると思われた.このようにIcareの欠点を改善したIcarePROは眼圧測定精度などでIcareより優位であることが示された.そのため仰臥位での眼圧測定など,眼圧の日内変動を中心とした緑内障の治療方針の決定にこれまで以上に役立つことが考えられる.以上のことからIcarePROはIcareよりも有用であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし【文献】1)BlandM,AltmanDG:Statisticalmethodsforassessingagreementbetweentwomethodsofclinicalmeasurement.Lanset1:307-310,19862)HladikovaE,PluhacekF,MaresovaK:ComparisonofmeasurementofintraocularpressurebyICAREPRORtonometerandGoldmannapplanationtonometer.Cesk0510152025303540割合(%)■Icare■IcarePRO-3.0~-2.1-2.0~-1.1-1.0~-0.10.0~0.91.0~1.92.0~2.93.0~3.94.0~4.95.0~5.96.0~6.97.0~7.9眼圧上昇度(mmHg)図6Icare,IcarePROによる仰臥位に伴う眼圧上昇度の分布0510152025Icare(N)IcarePRO(N)Icare(G)IcarePRO(G)眼圧値(mmHg)13.5±3.415.2±3.613.0±2.714.9±2.816.2±4.518.3±4.715.2±3.617.4±3.6■座位■仰臥位図7正常者と緑内障患者別における仰臥位に伴う眼圧上昇度の比較N:正常群,G:緑内障群.数値は眼圧平均値±標準偏差.0510152025303540割合(%)■Icare■IcarePRO-2.0~-1.10.0~0.92.0~2.94.0~4.96.0~6.9-3.0~-2.1-1.0~-0.11.0~1.93.0~3.95.0~5.97.0~7.9眼圧上昇度(mmHg)図6Icare,IcarePROによる仰臥位に伴う眼圧上昇度の分布滅菌済製品として提供されるなどがあげられる.ただし測定画面が大きくなった分,幅が32mmから46mmと拡大し重量も250gから275gと若干重くなっている.今回IcarePROの眼圧測定値に関してIcareならびに他の眼圧計と比較し精度や有用性について検討した.IcarePROで測定した眼圧値の精度に関してはGATとの比較を中心に多くの報告がなされている.対象患者数や緑内障患者か否かの割合が論文ごとに異なるものの,IcarePROの平均眼圧値はGATと比べて差が.0.9.0.7mmHgの範囲で報告されている2.7).今回座位でIcare,IcarePROで得られた測定値をNCT,GATそれぞれと比較したところ,IcareはNCTより0.5mmHg,GATより1.4mmHg高かった.一方,IcarePROはGATより0.8mmHg高かったがNCTより0.1mmHg低く,測定機器間で唯一有意差もなかった.また,NCTやGATとのBland-Altman分析において,IcarePROはIcareに比べて測定値のばらつきはNCTでは変わりなかったが,GATとの比較ではIcarePROのほうが少なかった.GATの眼圧測定値がgoldstandardである8)という現状からすればIcarePROの測定値はGATに近づいたことになり,その結果測定精度はIcareより改善されていると思われた.仰臥位による眼圧上昇に関しては今までにも他の眼圧計による多数の報告例がある.Pneumatonometer(Reichert社)を用いたものでは座位と比べて3.9.4.2mmHg上昇したとの報告がある9,10).TonopenRXL,TonopenRAVIA(Reichert社)などを用いたものでは0.76.2.2mmHg上昇したとの報告がある6,9.12).また,本研究で用いたIcarePROで測定した仰臥位による眼圧上昇に関してもいくつかの報告例がある.これも対象患者において緑内障の有無などが異なるが,平均上昇値が.0.9.2.9mmHgであった6,7,9,13).報告例の大半では平均値は上昇しているものの,なかには0.9mmHg低下した報告例もある9).当診療所で調査した結果では座位と比べIcareで1.8mmHg,IcarePROで2.0mmHgの上昇(103)0510152025Icare(N)IcarePRO(N)Icare(G)IcarePRO(G)眼圧値(mmHg)13.5±3.415.2±3.613.0±2.714.9±2.816.2±4.518.3±4.715.2±3.617.4±3.6■座位■仰臥位図7正常者と緑内障患者別における仰臥位に伴う眼圧上昇度の比較N:正常群,G:緑内障群.数値は眼圧平均値±標準偏差.を認め両機器間における有意差はなかった.この結果はIcarePROに関しては報告例の範囲内ではあった.また,対象者を正常群と緑内障群に分けて眼圧上昇度をみたところ,緑内障群のほうが若干高値であったがこれも有意差はなかった.過去の報告6,7,9,13)でも緑内障患者における上昇度が高い傾向があり,本研究もそれに沿った結果となった.仰臥位に伴う眼圧上昇は緑内障における眼圧の日内変動において重要なファクターである.Kiuchiらは正常眼圧緑内障患者において仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅とMDslopeとの関係を調べたところ,有意な負の相関を認めたと報告している14).このことから,緑内障治療向上のためには仰臥位眼圧上昇幅も可能な限り小さくすることが必要であると思われる.本研究でもIcarePROによる測定で眼圧が7.4mmHg上昇した症例があった.仰臥位でIcareのように顔を横に向ける手間がなく簡便に測定できるIcarePROは,緑内障患者に対する治療方針決定において有用な機器であると思われた.このようにIcareの欠点を改善したIcarePROは眼圧測定精度などでIcareより優位であることが示された.そのため仰臥位での眼圧測定など,眼圧の日内変動を中心とした緑内障の治療方針の決定にこれまで以上に役立つことが考えられる.以上のことからIcarePROはIcareよりも有用であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし【文献】1)BlandM,AltmanDG:Statisticalmethodsforassessingagreementbetweentwomethodsofclinicalmeasurement.Lanset1:307-310,19862)HladikovaE,PluhacekF,MaresovaK:ComparisonofmeasurementofintraocularpressurebyICAREPRORtonometerandGoldmannapplanationtonometer.Ceskあたらしい眼科Vol.32,No.7,20151025 SlovOftalmol70:90-93,20143)Moreno-MontanesJ,Martinez-de-la-CasaJM,SabaterALetal:ClinicalevaluationofthenewreboundtonometersIcarePROandIcareONEcomparedwiththeGoldmanntonometer.JGlaucoma:inprint,20144)Baneros-RojasP,MartinezdelaCasaJM,Arribas-PardoPetal:ComparisonbetweenGoldmann,IcareProandCorvisSTtonometry.ArchSocEspOftalmol89:260264,20145)SmedowskiA,WeglarzB,TarnawskaDetal:Comparisonofthreeintraocularpressuremeasurementmethodsincludingbiomechanicalpropertiesofthecornea.InvestOphthalmolVisSci55:666-673,20146)SchweierC,HansonJV,FunkJetal:RepeatabilityofintraocularpressuremeasurementswithIcarePROrebound,Tono-PenAVIA,andGoldmanntonometersinsittingandrecliningpositions.BMCOphthalmol13:44,20137)JablonskiKS,RosentreterA,GakiSetal:Clinicaluseofanewposition-independentreboundtonometer.JGlaucoma22:763-767,20138)InternationalOrganizationforStandardization.ISO8612:2009:OphthalmicInstruments─Tonometers.Geneva,ISOCopyrightOffice,20099)BarkanaY,GutfreundS:Measurementofthedifferenceinintraocularpressurebetweenthesittingandlyingbodypositionsinhealthysubjects:directcomparisonoftheIcareProwiththeGoldmannapplanationtonometer,PneumatonometerandTonopenXL.ClinExperimentOphthalmol42:608-614,201410)BarkanaY:Postalchangeinintraocularpressure:acomparisonofmeasurementwithaGoldmanntonometer,TonopenXL,Pneumatonometer,andHA-2.JGlaucoma23:e23-e28,201411)MosterSJ,FakhraieG,VenketeshRetal:RelationshipofcentralthicknesstoposturalIOPchangesinpatientswithandwithoutglaucomainsouthernIndia.IntOphthalmol32:307-311,201212)NakakuraS,MoriE,YamamotoM:Intradeviceandinterdeviceagreementbetweenareboundtonometer,IcarePRO,andthetonopenXLandKowahand-heldapplanationtonometerwhenusedinsittingandsupineposition.JGlaucoma:inprint201413)OzkokA,TamcelikN,CaparOetal:Posture-inducedchangesinintraocularpressure:comparisonofpseudoexfoliationglaucomaandprimaryopen-angleglaucoma.JpnJOphthalmol58:261-266,201414)KiuchiT,MotoyamaY,OshikaT:Relationshipofprogressionofvisualfielddamagetoposturalchangesinintraocularpressureinpatientswithnormal-tensionglaucoma.Ophthalmology113:2150-2155,2006***(104)

マイトマイシンC 併用線維柱帯切除術後眼における体位変動と眼圧変化

2010年7月30日 金曜日

0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(103)963《第20回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科27(7):963.966,2010cはじめに緑内障においてエビデンスのある治療は眼圧下降のみである1).しかし一方で,眼圧を十分に下降させても視野障害進行を抑制できない例が存在するという事実もある2).近年,眼圧日内変動幅3)および仰臥位眼圧上昇幅4,5)が,緑内障視野障害進行と関係していることを示唆する報告が散見される.眼圧日内変動幅に関しては,薬物治療でもある程度小さくすることができる6)が,仰臥位眼圧上昇幅は,薬物治療7)およびレーザー線維柱帯形成術8)では抑制効果が少ないことが報告されている.線維柱帯切除術はマイトマイシンC(MMC)の併用により眼圧を長期に低くコントロールできるようになったため,緑内障の観血的手術として最も一般的な術式となっているが,仰臥位眼圧上昇幅に対する抑制効果に関しては現時点では明らかではない.今回,MMC併用線維柱帯切除術後眼の体位変換による眼圧変化を測定し,若干の知見を得たので報告する.I対象および方法対象は,平成21年4月20日から8月31日に東京警察病〔別刷請求先〕小川俊平:〒164-8541東京都中野区中野4-22-1東京警察病院眼科Reprintrequests:ShumpeiOgawa,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanPoliceHospital,4-22-1Nakano,Nakano-ku,Tokyo164-8541,JAPANマイトマイシンC併用線維柱帯切除術後眼における体位変動と眼圧変化小川俊平中元兼二福田匠里誠安田典子東京警察病院眼科PosturalChangeinIntraocularPressureinPrimaryOpen-AngleGlaucomafollowingTrabeculectomywithMitomycinCShumpeiOgawa,KenjiNakamoto,TakumiFukuda,MakotoSatoandNorikoYasudaDepartmentofOphthalmology,TokyoMetropolitanPoliceHospital初回マイトマイシンC併用線維柱帯切除術後6カ月以上無治療で観察できた広義の原発開放隅角緑内障20例32眼を対象に,Pneumatonometerを用いて座位と仰臥位の眼圧を測定した.眼圧は,座位から仰臥位へ体位変換直後有意に上昇し,仰臥位10分後も有意に上昇した(p<0.05).また,再度,座位へ体位変換後,眼圧は速やかに下降した(p<0.05).仰臥位眼圧上昇幅は,仰臥位直後で1.95±1.4mmHg,仰臥位10分後で3.43±1.8mmHgであった.座位眼圧と仰臥位眼圧上昇幅には有意な正の相関があった(仰臥位直後:r2=0.41,r=0.64,p<0.0001,仰臥位10分後:r2=0.43,r=0.66,p<0.0001).In32untreatedeyesof20patientswithprimaryopen-angleglaucomaornormal-tensionglaucoma,weevaluatedtheposturalchangeinintraocularpressure(IOP)followingtrabeculectomywithmitomycinC.UsingaPneumatonometer,IOPwasmeasuredafter5minutesinthesittingposition,andat0and10minutesinthesupineposition.SittingIOP,and0and10minutessupineIOPwere10.2±3.3mmHg,12.2±4.2mmHgand13.7±4.5mmHg,respectively.Thedifferencebetweensupine0minIOPandsittingIOP(ΔIOP0min)was1.95±1.4mmHg(p<0.05);thedifferencebetween10minsupineIOPandsittingIOP(ΔIOP10min)was3.43±1.8mmHg(p<0.05).ThereweresignificantcorrelationsbetweensittingIOP,ΔIOP0min(r2=0.41,r=0.64,p<0.0001)andΔIOP10min(r2=0.43,r=0.66,p<0.0001).〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)27(7):963.966,2010〕Keywords:仰臥位,体位変換,眼圧,正常眼圧緑内障,原発開放隅角緑内障,線維柱帯切除術.supineposition,posturalchange,intraocularpressure,normal-tensionglaucoma,primaryopen-angleglaucoma,trabeculectomy.964あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(104)院眼科外来に受診した原発開放隅角緑内障(広義)20例32眼である.年齢は57.6±10.8(平均値±標準偏差)歳,男性5例8眼,女性15例24眼,病型は原発開放隅角緑内障(狭義)22眼,正常眼圧緑内障10眼である.選択基準は,熟練した2人の術者による初回のMMC併用線維柱帯切除術後6カ月以上無治療で観察されたものである.除外基準は,術後6カ月以内のもの,初回手術以外にレーザー治療を含む内眼手術既往のあるもの,白内障同時手術例,僚眼へb遮断点眼薬を使用しているもの,Seidel試験で濾過胞に明らかな漏出点があるもの,高血圧・糖尿病の既往のあるものである.なお,本試験は東京警察病院治験倫理審査委員会において承認されており,試験開始前に,患者に本試験の内容について十分に説明し文書で同意を得た.線維柱帯切除術の方法を以下に記す.まず,輪部基底の結膜弁を作製し,4×3mmの強膜半層三角弁作製後,0.04%MMC0.25mlを浸した小片状スポンジェルRを4分間結膜下に塗布した.その後400mlの生理食塩水で洗浄し,線維柱帯切除,周辺虹彩切除後,強膜半層弁を10-0ナイロン糸で房水がわずかに漏出する程度に5針縫合した.最後に結膜を連続縫合した.眼圧測定は,Pneumatonometer:PT(MODEL30CLASSICTMPneumatonometer,Reichert社)とGoldmann圧平式眼圧計(GAT)を用いて行った.眼圧測定は,外来ベッド上でPTを用いて,座位安静5分後,仰臥位直後,仰臥位10分後,再度座位へ体位変換した直後に眼圧を測定した.同時に,各測定時に自動眼圧計で右上腕の血圧および脈拍数を測定した.その後,診察室へ移動し,細隙灯顕微鏡検査およびSeidel試験を行った.最後に座位安静5分後にGATを用いて眼圧を測定した(図1).すべての眼圧測定は,同一検者(S.O.)が午後2時から4時の間に行った.眼圧測定は,すべて右眼より行い,仰臥位眼圧測定時は枕を使用しなかった.まず,PT測定値とGAT測定値の一致度を調べるため,GAT眼圧と座位安静5分後および再座位直後の眼圧をBland-Altman分析を用いて比較した.さらに,体位変換により眼圧および血圧が変動するかを検討するため,全対象の座位安静5分後,仰臥位直後,仰臥位10分後,再座位直後の眼圧を,ボンフェローニ(Bonferroni)補正pairedt-testを用いて比較した.また,座位安静5分後の眼圧と座位安静5分後から仰臥位直後の眼圧上昇幅(ΔIOP直後)および仰臥位10分後の眼圧上昇幅(ΔIOP10分後)の関係について回帰分析を用いて検討した.有意水準はp<0.05(両側検定)とした.II結果手術日から本試験眼圧測定日までの期間は,2,385±1,646(214.5,604)日であった.Bland-Altman分析ではGATと座位安静5分後の眼圧〔95%信頼区間(mmHg):.1.0..2.1,r2=0.030,p=0.35〕および再座位直後の眼圧〔95%信頼区間(mmHg):.1.2.GAT-再座位直後眼圧(GAT+座位安静5分後眼圧)/2(GAT+再座位直後眼圧)/2GAT-座位安静5分後眼圧05101520531-1-3-505101520531-1-3-5図2GATとPTの一致度Bland-Altman分析では,GATと座位安静5分後の眼圧[95%信頼区間(mmHg):.1.0..2.1,r2=0.030,p=0.35]および再座位直後の眼圧[95%信頼区間(mmHg):.1.2..2.2,r2=0.005,p=0.69]の間に比例誤差はなかったが,座位安静5分後の眼圧はGAT眼圧より1.5±1.4mmHg,再座位直後の眼圧は1.7±1.5mmHg高かった.座位安静5分後仰臥位直後仰臥位10分後再座位直後ベッド上PT診察室GAT図1眼圧測定順序眼圧は,Pneumatonometer(PT)を用いて,座位安静5分後,仰臥位直後,仰臥位10分後,再度座位直後に測定した.最後にGoldmann圧平式眼圧計(GAT)で眼圧を測定した.(105)あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010965.2.2,r2=0.005,p=0.69〕の間に比例誤差はなかったが,座位安静5分後の眼圧はGAT眼圧より1.5±1.4mmHg,再座位直後の眼圧は1.7±1.5mmHg高かった(図2).各体位の全症例の眼圧は,座位安静5分後:10.8±3.7mmHg,仰臥位直後:12.6±4.9mmHg,仰臥位10分後:14.1±5.1mmHg,再座位直後:10.9±4.1mmHg,GAT:9.2±3.9mmHgであった.仰臥位直後および仰臥位10分後の眼圧は,いずれも座位安静5分後,再座位直後より有意に高かった(p<0.05).また,仰臥位10分後の眼圧が他の測定値のなかで最も有意に高かった(p<0.05)(図3).体位変換による仰臥位眼圧上昇幅(ΔIOP)は,仰臥位直後で1.95±1.4mmHg(ΔIOP直後),仰臥位10分後で3.43±1.8mmHg(ΔIOP10分後)であった.座位安静5分後の眼圧とΔIOP直後(r2=0.41,r=0.64,p<0.0001)およびΔIOP10分後(r2=0.43,r=0.66,p<0.0001)の間には有意な正の相関があった(図4).血圧は,収縮期,拡張期ともに再座位直後が最も高かった(p<0.05).また,脈拍数は,座位安静5分で最も多かった(p<0.05)(表1).血圧および脈拍数は,ΔIOP直後およびΔIOP10分後のいずれとも有意な相関はなかった.III考按緑内障における確実な治療法は,眼圧下降治療のみであり,薬物治療やレーザー治療によっても十分な眼圧下降が得られない場合は観血的手術を行う必要がある.線維柱帯切除術はMMCの併用により眼圧を長期に低くコントロールできるようになったため,緑内障の観血的手術として最も一般的な術式となった1).しかし,手術治療で十分な眼圧下降効果が得られても,視野障害が進行する症例が少なくないことはよく知られている.近年,外来眼圧2)や眼圧日内変動幅3)のみならず仰臥位眼圧上昇幅も,緑内障視野障害進行と関与している可能性が指摘されている4,5).Hirookaら5)は,原発開放隅角緑内障患者11例を対象にして,同一症例の左右眼のうち視野障害がより高度な眼と軽度な眼の仰臥位眼圧上昇幅を比較したところ,視野障害がより高度な眼が軽度な眼より仰臥位眼圧上昇幅が有意に大きかったと報告している.Kiuchiら4)は,正常眼圧緑内障患者を対象に,座位眼圧,仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅とMDslopeとの関係を調べたところ,MDslopeと座位眼圧には有意な相関はなかったが,MDslope表1体位変動と血圧,脈拍数の変化座位仰臥位直後仰臥位10分再座位直後収縮期血圧(mmHg)129.7±15.0129.8±21.0126.1±16.1137.8±19.5*拡張期血圧(mmHg)80.7±9.675.8±12.174.6±10.984.7±9.6*脈拍数(回/分)73.4±15.0*68.7±14.267.0±13.270.9±13.9*:他の3体位との比較(p<0.05,Bonferroni補正pairedt-test).平均値±標準偏差.血圧は,収縮期,拡張期ともに再座位直後で最も高かった.脈拍数は,座位安静5分で最も多かった.6543210-1-205101576543210-1051015ΔIOP直後(mmHg)座位安静5分後の眼圧(mmHg)ΔIOP10分後(mmHg)座位安静5分後の眼圧(mmHg)図4座位眼圧と仰臥位眼圧上昇幅座位安静5分後の眼圧とΔIOP直後(ΔIOP直後=.0.26+0.23×GAT,r2=0.41,r=0.64,p<0.0001)およびΔIOP10分後(ΔIOP10分後=0.59+0.30×GAT,r2=0.43,r=0.66,p<0.0001)の間には有意な正の相関があった.0510152025仰臥位直後座位安静5分後再座位直後仰臥位10分後n=32Mean±SE眼圧(mmHg)*****図3体位変換による眼圧変化各体位の平均眼圧は,座位安静5分後:10.8±3.7mmHg,仰臥位直後:12.6±4.9mmHg,仰臥位10分後:14.1±5.1mmHg,再座位直後:10.9±4.1mmHgであった.PTで測定された体位変換後の眼圧は仰臥位10分後が最も高かった(*p<0.05).966あたらしい眼科Vol.27,No.7,2010(106)と仰臥位眼圧および仰臥位眼圧上昇幅との間には有意な負の相関を認めたと報告している.眼圧下降治療の質を向上させるためには,仰臥位眼圧上昇幅も可能な限り小さくすることが望まれる.線維柱帯切除術により,仰臥位眼圧上昇幅が抑制できるかは,Parsleyらによりすでに報告されている9).Parsleyらは,座位から仰臥位への体位変換により,眼圧が対照群では1.08mmHgの上昇であったのに対して,片眼手術群では3.31mmHg,両眼手術群では5.49mmHgと大きく上昇したことから,線維柱帯切除術の仰臥位眼圧上昇抑制効果はほとんどなかったと述べている.しかし,この報告では線維柱帯切除術施行時にMMCの併用はなく,手術群の術後眼圧は15.6.17.7mmHgと比較的高値であった.そこで,今回筆者らは,原発開放隅角緑内障(広義)患者を対象として,MMC併用線維柱帯切除術後の眼圧が体位変換によりどの程度変化するかについて検討したところ,座位から仰臥位への体位変換により,仰臥位直後平均1.90mmHg,仰臥位10分後平均3.40mmHg有意に上昇した.その後,再度座位へ体位変換すると,眼圧は速やかに有意に下降した.仰臥位眼圧上昇のおもな機序の一つとして,上強膜静脈圧の上昇が考えられている10.12).体位変換による上強膜静脈圧の上昇とともに,眼圧も1.3分で速やかに上昇することが知られている13,14).Fribergら11)によれば,健常人において,眼圧は体位変換後10.15秒以内に上昇幅の80%が上昇し,30.45秒で最大となり体位を保持するかぎり上昇幅は保たれていた.また,体位変換1分後と5分後では差がなく,座位に戻ると2.3分でベースラインへ戻ったと報告している.Tsukaharaら15)は,健常人と手術既往のない緑内障患者のいずれも,仰臥位直後より仰臥位30分後のほうが眼圧は高かったと報告している.今回の結果とあわせ,MMC併用線維柱帯切除術後も体位変換により,眼圧は速やかに変動することが確認できた.座位眼圧と仰臥位眼圧上昇幅(ΔIOP)の間には有意な正の相関があり,術後座位眼圧が低いほど,仰臥位眼圧上昇幅がより小さかった.仮にMMC併用線維柱帯切除術により仰臥位眼圧上昇幅が抑制されるとすると,その機序は座位から仰臥位への体位変換後,房水が濾過胞へ速やかに流出するためと推測される.これは術後座位眼圧が低い症例ほど,術後の濾過機能がより良好であった可能性が高いためと考えられる.このことから,できるだけ座位眼圧が低い,良好な濾過機能をもった濾過胞を形成することで,仰臥位眼圧上昇幅をより小さくできる可能性が示唆された.今回の検討では,術前の仰臥位眼圧上昇幅を測定していないため,MMC併用線維柱帯切除術により仰臥位眼圧上昇幅を,術前より術後で抑制できたかについては明らかでない.この点に関して検証するためには,今後,MMC併用線維柱帯切除術前後に仰臥位眼圧上昇幅を前向きに測定し比較する必要があると考える.文献1)日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン(第2版).日眼会誌110:777-814,20062)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Comparisonofglaucomatousprogressionbetweenuntreatedpatientswithnormal-tensionglaucomaandpatientswiththerapeuticallyreducedintraocularpressures.AmJOphthalmol126:487-497,19983)AsraniS,ZeimerR,WilenskyJetal:Largediurnalfluctuationsinintraocularpressureareanindependentriskfactorinpatientwithglaucoma.JGlaucoma9:134-142,20004)KiuchiT,MotoyamaY,OshikaT:Relationshipofprogressionofvisualfielddamagetoposturalchangesinintraocularpressureinpatientwithnormal-tensionglaucoma.Ophthalmology113:2150-2155,20075)HirookaK,ShiragaF:Relationshipbetweenposturalchangeoftheintraocularpressureandvisualfieldlossinprimaryopen-angleglaucoma.JGlaucoma12:379-382,20036)中元兼二,安田典子,南野麻美ほか:正常眼圧緑内障の眼圧日内変動におけるラタノプロストとゲル基剤チモロールの効果比較.日眼会誌108:401-407,20047)SmithDA,TropeGE:Effectofabeta-blockeronalteredbodyposition:inducedocularhypertension.BrJOphthalmol74:605-606,19908)SinghM,KaurB:Posturalbehaviourofintraocularpressurefollowingtrabeculoplasty.IntOphthalmol16:163-166,19929)ParsleyJ,PowellRG,KeightleySJetal:Posturalresponseofintraocularpressureinchronicopen-angleglaucomafollowingtrabeculectomy.BrJOphthalmol71:494-496,198710)KrieglsteinGK,WallerWK,LeydheckerW:Thevascularbasisofthepositionalinfluenceontheintraocularpressure.AlbrechtvonGraefesArchklinexpOphthalmol206:99-106,197811)FribergTR,SanbornG,WeinrebRN:Intraocularandepiscleralvenouspressureincreaseduringinvertedposture.AmJOphthalmol103:523-526,198712)BlondeauP,TetraultJP,PapamarkakisC:Diurnalvariationofepiscleralpressureinhealthypatients:apilotstudy.JGlaucoma10:18-24,200113)WeinrebR,CookJ,FribergT:Effectofinvertedbodypositiononintraocularpressure.AmJOphthalmol98:784-787,198414)GalinMA,McIvorJW,MagruderGB:Influenceofpositiononintraocularpressure.AmJOphthalmol55:720-723,196315)TsukaharaS,SasakiT:PosturalchangeofIOPinnormalpersonsandinpatientswithprimarywideopen-angleglaucomaandlow-tensionglaucoma.BrJOphthalmol68:389-392,1984