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多施設による緑内障患者の実態調査2020 年版 −ROCK 阻害薬−

2022年7月31日 日曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(7):953.958,2022c多施設による緑内障患者の実態調査2020年版.ROCK阻害薬.内匠哲郎*1,3井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CMulti-InstitutionalSurveyontheUseofROCKInhibitorforGlaucomain2020TetsuroTakumi1,3)C,KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:緑内障薬物治療の実態調査から,ROCK阻害薬の使用状況を明らかにする.対象および方法:2020年C3月8日.14日にC78施設を外来受診した緑内障,高眼圧症患者C5,303例C5,303眼を対象とした.使用薬剤数別にCROCK阻害薬の使用率と併用薬を調査した.さらにC2016年調査の結果と比較した.結果:ROCK阻害薬の使用率はC1剤例C0.4%,2剤例C3.1%,3剤例C11.5%,4剤例C33.5%,5剤例C88.8%などであった.ROCK阻害薬との併用薬剤はC2剤例CPG関連薬,3剤例CPG関連薬/Cb遮断配合薬,4剤例Cb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害配合薬+PG関連薬,5剤例さらにCa2刺激薬を追加した組み合わせが各々最多であった.ROCK阻害薬の使用割合は薬剤数が増えるに従って増加した.ROCK阻害薬の使用はC2016年調査とは同様だった.結論:ROCK阻害薬はC3剤以上の使用例において配合剤と併用される頻度が高く,多剤併用になるほど使用されていた.CPurpose:ToCinvestigateCtheCcurrentCstatusCofCtheCusingCaCRho-associatedCproteinkinase(ROCK)-inhibitorCforthetreatmentofglaucoma.PatientsandMethods:Atotalof5,303outpatients(5,303eyes)withglaucomaorocularhypertensionseenat78medicalinstitutionsinJapanfromMarch8toMarch14in2020wereenrolled.ThepercentagesCofCROCK-inhibitorCandCtheCconcomitantCmedicationsCwithCROCK-inhibitorCwereCinvestigatedCinCeachCgroupofmedicationsused.Thestatuswasthencomparedwiththatreportedin2016.Results:TheuseofROCK-inhibitorCinCtheC1CtoC5CmedicationsCgroupsCwas0.4%,3.1%,11.5%,33.5%,Cand88.8%,Crespectively.CInCtheC2CtoC5Cmedicationsgroups,theconcomitantmedicationsmostwidelyusedwereprostaglandin(PG)analogs,PG/Cb-blocker.xedCcombination,Cb-blocker/carbonic-anhydrase-inhibitor(CAI/Cb).xedCcombination+PGCanalogs,CandCCAI/b.xedcombination+PGanalogs+a2agonist,respectively.TheuseofROCK-inhibitorwasincreasedasthenumberofmedicationsincreased.Conclusion:ROCK-inhibitorwasfrequentlyusedwith.xedcombinationsinthethreeormoreCmedicationsCgroup.CAsCtheCnumberCofCmedicationsCincreased,CtheCfrequencyCofCtheCuseCofCROCK-inhibitorCincreased.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(7):953.958,C2022〕Keywords:ROCK阻害薬,併用,配合剤,緑内障薬物治療.ROCK-inhibitor,concomitantuse,.xedcombina-tion,treatmentwithmedication.Cはじめに日本緑内障学会が作成している緑内障診療ガイドラインが2018年に改訂され第C4版となった1).眼科医は,この緑内障診療ガイドラインを参考にして緑内障の診断,病型分類,治療を行っている.緑内障診療ガイドライン第C4版においても緑内障性視野障害進行抑制に対して唯一根拠が明確に示されている治療は眼圧下降で,その第一選択は薬物治療である2.5).近年新たな眼圧下降の作用機序を有する点眼薬,配合点眼薬,後発医薬品の発売などで緑内障薬物治療の選択肢は大幅〔別刷請求先〕内匠哲郎:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:TetsuroTakumi,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,CJAPANC表1研究協力施設(78施設)ふじた眼科クリニックとやま眼科博愛こばやし眼科鬼怒川眼科医院おおはら眼科さいはく眼科クリニックいずみ眼科クリニック篠崎駅前髙橋眼科久が原眼科サンアイ眼科みやざき眼科藤原眼科さいき眼科はしだ眼科クリニックかわぞえ眼科クリニック石井眼科クリニックそが眼科クリニック槇眼科医院やながわ眼科高輪台眼科クリニック大原ちか眼科ふかさく眼科早稲田眼科診療所かさい眼科たじま眼科・形成外科井荻菊池眼科ほりかわ眼科久我山井の頭通りあおやぎ眼科いなげ眼科やなせ眼科本郷眼科赤塚眼科はやし医院的場眼科クリニック吉田眼科えぎ眼科仙川クリニックにしかまた眼科のだ眼科麻酔科医院東小金井駅前眼科小川眼科診療所みやけ眼科後藤眼科良田眼科高根台眼科おがわ眼科白金眼科クリニック谷津駅前あじさい眼科西府ひかり眼科小滝橋西野眼科クリニックおおあみ眼科だんのうえ眼科クリニックあつみクリニック中山眼科医院綱島駅前眼科あつみ整形外科・眼科クリニックもりちか眼科クリニック眼科中井医院林眼科医院中沢眼科医院さいとう眼科なかむら眼科・形成外科駒込みつい眼科ヒルサイド眼科クリニックさくら眼科・内科立川しんどう眼科図師眼科医院大宮・井上眼科クリニック菅原眼科クリニックいまこが眼科医院札幌・井上眼科クリニックうえだ眼科クリニックむらかみ眼科クリニック西葛西・井上眼科病院江本眼科ガキヤ眼科医院お茶の水・井上眼科クリニックえづれ眼科川島眼科井上眼科病院に拡大している.選択肢が増えることで患者に対してもっとも適した治療を提供できる可能性が増大するが,その選択には薬剤の種類が多いがゆえに苦慮することもある.そこで緑内障病型の発症頻度や緑内障薬物治療の実態を把握しておくことは眼科医の緑内障診療の一助になると考えた.筆者らは眼科専門病院やクリニックにおける多施設での緑内障患者実態調査をC2007年に開始した6).その後,2009年に第C2回7),2012年に第C3回8),2016年に第C4回緑内障患者実態調査9)を実施した.2014年にはCROCK(Rho-associatedCproteinkinase)阻害薬が使用可能となり,ROCK阻害薬の良好な眼圧下降効果と高い安全性が報告されている10.14).さらにC2016年以降,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,オミデネパグイソプロピル点眼薬,ブリモニジン/チモロール配合点眼薬が新たに使用可能になった.筆者らはC2020年に第C5回緑内障患者実態調査を実施し,緑内障患者の最新の実態を解明した15).今回はそのなかで,使用可能となってからC5年間が経過したCROCK阻害薬の使用状況を解析した.CI対象および方法本調査は,緑内障患者実態調査の趣旨に賛同した全国C78施設において,2020年C3月C8日から同C14日に施行した.調査の趣旨は緑内障診療を行ううえで,緑内障病型の発症頻度や薬物治療の実態を把握することが重要であるためとした.調査施設を表1に示す.この調査期間内に外来受診した緑内障および高眼圧症患者全例を対象とした.総症例数C5,303例5,303眼,男性C2,347例,女性C2,956例,年齢はC11.101歳,C68.7±13.1歳(平均C±標準偏差)であった.緑内障の診断と治療は,緑内障診療ガイドライン1)に則り,主治医の判断で行った.片眼のみの緑内障または高眼圧症患者では罹患眼を,両眼罹患している場合には右眼を調査対象眼とした.調査方法は調査票(表2)を用いて行った.各施設にあらかじめ調査票を送付し,診療録から診察時の年齢,性別,病型,使用薬剤数および種類,緑内障手術の既往を調査した.集計は井上眼科病院の集計センターで行った.回収した調査票より病型,使用薬剤数および種類,レーザー治療,緑内障手術の既往について解析を行った15).今回はそのなかでROCK阻害薬リパスジル点眼薬(グラナテック,興和)の使用率と併用薬を調査し,緑内障病型別のCROCK阻害薬使用割合を調査した.さらにこれらの結果をC2016年の前回調査の結果9)と比較した.配合点眼薬はC2剤として解析した.なお,2016年調査までは点眼薬は先発医薬品と後発医薬品に分けて調査していたが,今回の調査では薬剤は一般名での収集とした.ROCK阻害薬の使用率およびC2016年調査時との表2調査票第C5回緑内障実態調査第C5回緑内障実態調査イニシャル整理番号性別M:男性・F:女性年齢歳診断名右・左1:POAG2:NTG3:PACG4:続発緑内障(落屑緑内障を含む)5:高眼圧症6:小児緑内障1:無手術既往歴2:有術式1:レクトミー2:ロトミー3:GSL4:チューブシャント5:その他()レーザー既往歴1:無2:有術式1:LI2:CSLT(ALT)3:その他()1:無緑内障処方薬剤2:有〈b遮断薬〉1:チモロールマレイン酸塩(チモプトール)2:チモロールマレイン塩酸持続性(チモプトールXE)3:チモロールマレイン塩酸熱応答(リズモンTG)4:カルテオロール塩酸塩(ミケラン)5:カルテオロール塩酸塩持続性(ミケランLA)6:ベタキソロール塩酸塩(ペトプティク)7:レボブノロール塩酸塩(ミロル)〈ab遮断薬〉8:ニプラジロール(ハイパジール)〈イオンチャネル開口薬〉9:イソプロピルウノプロストン(レスキュラ)〈PG製剤〉10:ラタノプロスト(キサラタン)11:トラボプロスト(トラバタンズ)12:タフルプロスト(タプロス)13:ビマトプロスト(ルミガン)〈PG+b遮断薬配合剤〉14:ラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合(ザラカム)15:トラボプロスト/チモロールマレイン酸塩配合(デュオトラバ)16:タフルプロスト/チモロールマレイン酸塩配合(タプコム)17:ラタノプロスト/カルテオロール酸塩配合(ミケルナ)⇒裏面に続く緑内障処方薬剤2:有⇒表面より続き〈CAI+b遮断薬配合剤〉18:ドルゾラミドC/チモロールマレイン酸塩配合(コソプト)19:ブリンゾラミドC/チモロールマレイン酸塩配合(アゾルガ)〈点眼CAI〉20:ドルゾラミド塩酸塩(トルソプト)21:ブリンゾラミド塩酸塩(エイゾプト)〈経口CAI〉22:アセタゾラミド(ダイアモックス)〈a1遮断薬〉23:ブナゾシン塩酸塩(デタントール)〈a2遮断薬〉24:ブリモニジン酒石酸塩(アイファガン)〈ROCK阻害薬〉25:リパスジル塩酸塩(グラナテック)〈EPC2受容体作用薬〉26:オミデネパグイソプロビル(エイベリス)〈a2刺激薬+b遮断薬配合剤〉27:ブリモニジン酒石酸塩C/チモロールマレイン酸塩配合(アイベータ)〈その他〉28:ピロカルピン塩酸塩(サンピロ)29:ジピべフリン塩酸塩(ピバレフリン)30:その他()ROCK阻害薬の使用割合の比較にはCc2検定とCFishaerの直接確率検定を用いた.Cc2検定での比較ではCBonferroni法による多重比較の補正を行った.有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.CII結果ROCK阻害薬使用症例はC440例C440眼,男性C224例,女性C216例,年齢はC27.98歳,平均C70.7C±12.4歳であった.全症例(5,303例)の病型は正常眼圧緑内障C2,710例(51.1%),原発開放隅角緑内障C1,638例(30.9%),続発緑内障435例(8.2%),高眼圧症C286例(5.4%),原発閉塞隅角緑内障C225例(14.2%)などであった.ROCK阻害薬使用症例の病型は,原発開放隅角緑内障C222例(50.5%),正常眼圧緑内障C116例(26.4%),続発緑内障C76例(17.3%),原発閉塞隅角緑内障C23例(5.2%),高眼圧症C3例(0.7%)であった.全症例(5,303例)の使用薬剤数は平均C1.8C±1.3剤で,その内訳は無投薬C543例(10.2%),1剤C2,203例(41.5%),C2剤C1,217例(23.0%),3剤C754例(14.2%),4剤C391例(7.4%),5剤C160例(3.0%),6剤C34例(0.6%),7剤C1例(0.02%)であった.ROCK阻害薬の使用率はC1剤例ではC0.4%(9例/2,203例),2剤例ではC3.1%(38例/1,217例),3剤例ではC11.5%(87例/754例),4剤例ではC33.5%(131例/391例),5剤例ではC88.8%(142例/160例)であった.使用薬剤数が増えるにしたがって,ROCK阻害薬の使用率が有意に増加した(p<0.0001,Bonferroni法による多重比較補正後,有意水準Cp=0.005)(図1).ROCK阻害薬との併用薬剤はC2剤例ではプロスタグランジン(以下,PG)関連薬が最多(65.8%)であった(表3).3剤例ではCPG関連薬/Cb受容体遮断薬(以下,Cb遮断薬)配合1剤*2剤3剤4剤*5剤ROCK阻害薬その他*p<0.0001(c2検定後,Bonferroni法による多重比較補正)図1使用薬剤数別ROCK阻害薬の使用率表3ROCK阻害薬との併用薬剤*薬剤数ROCK阻害薬使用患者数併用薬剤使用患者割合C3C4C5C87C131C142CPG/bPG+a2PG+CAI/bPG/b+a2PG+CAI/b+a2PG/b+CAI+a234.5%C25.3%C40.5%C18.3%C64.1%C22.5%2C38CPG65.8%CPG:プロスタグランジン関連薬,Cb:b遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬,Ca2:a2刺激薬.剤(34.5%)が最多で,次にCPG関連薬とCa2受容体作動薬(以下,Ca2刺激薬)との併用(25.3%)であった.4剤例ではPG関連薬とCb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤(40.5%)が最多で,次にCPG関連薬/Cb遮断薬配合剤とCa2刺激薬(18.3%)であった.5剤例ではCPG関連薬と炭酸脱水酵素阻害薬/Cb遮断薬配合剤とCa2刺激薬(64.1%)が最多で,次にPG関連薬/Cb遮断薬配合剤と炭酸脱水酵素阻害薬とCa2刺激薬(22.5%)であった.併用薬剤は配合剤が多く,配合剤使用例はC3剤例C34.5%,4剤例C58.8%,5剤例C86.6%であった.ROCK阻害薬の使用割合はC1,2,3,4,5剤例では今回はそれぞれC0.4%,3.1%,11.5%,33.5%,88.8%でC2016年調査9)ではそれぞれC0.5%,3.7%,7.9%,23.8%,76.8%で同等だった(図2).緑内障病型別のCROCK阻害薬の使用割合をC2016年調査9)と比較した結果を示す.原発開放隅角緑内障では今回調査(13.6%)がC2016年調査(9.7%)より有意に多かった(p=0.0020Bonferroni法による多重比較補正後,有意水準Cp=0.0083).一方,正常眼圧緑内障,続発緑内障,原発閉塞隅角緑内障,高眼圧症では今回調査(4.3%,17.5%,10.2%,1.0%)とC2016年調査(3.1%,11.6%,6.4%,2.5%)で同等だった(p=0.0417,p=0.0224,p=0.1750,p=0.3129,Bonferroni法による多重比較補正後,有意水準Cp=0.0083).CIII考按今回C2020年C3月に行った多施設での第C5回緑内障実態調査におけるCROCK阻害薬の使用状況を使用薬剤数別に調査し,2016年調査9)の結果と比較した.ROCK阻害薬の使用率は薬剤数増加に伴い増加しており,ROCK阻害薬は多剤併用症例で多く使用される傾向がある.実際CROCK阻害薬使用症例のうち多剤併用症例の割合は本使用薬剤数765432120202016NS(c2検定後,Bonferroni法による多重比較補正)図22016年調査との比較(ROCK阻害薬の使用割合)調査(2,557例,48.2%)ではC2016年調査(1,929例,45.0%)よりも有意に増加していた(p=0.0016).ROCK阻害薬の増加が寄与したと考えられる.一方,緑内障病型別でのROCK阻害薬の使用割合でも原発開放隅角緑内障では今回調査(13.6%)がC2016年調査(9.7%)より増加していた.正常眼圧緑内障,続発緑内障,原発閉塞隅角緑内障では本調査(4.3%,17.5%,10.2%)がC2016年調査(3.1%,11.6%,6.4%)より増加したが有意差はなかった.高眼圧症ではCROCK阻害薬使用割合は本調査(3例,1.0%)とC2016年調査(6例2.5%)ともに低く,有意差はなかった.ROCK阻害薬は特定の病型で多く使用されている可能性がある.2012年に使用可能となったCa2刺激薬の使用割合はC2016年調査時(8.8%)9)に比べて,2020年調査時(11.9%)15)には有意に増加した.ROCK阻害薬は使用可能となってからC5年が経過し,Ca2刺激薬と同様に時間経過に伴い使用が増加した可能性が考えられた.緑内障診療ガイドライン1)では第一選択薬としてCPG関連薬,およびCb遮断薬が記載され,ROCK阻害薬は他の薬剤とともに第二選択薬としてあげられている.本調査の結果でも1剤例は0.4%と少数だった.これらの症例は何らかの理由でCPG関連薬やCb遮断薬が使用できない患者であったと考えられる.2剤例ではCPG関連薬との併用がC65.8%と最多で,PG関連薬が第一選択薬として使用されているためと考えられる.3,4,5剤例では,さまざまなパターンでCROCK阻害薬は使用されていた.ROCK阻害薬が使用可能となった当初C4カ月間のCROCK阻害薬の処方パターンを筆者らは調査した10).ROCK阻害薬投与前の薬剤数は追加群C3.9C±1.0C剤,変更群C3.9C±0.8剤,変更追加群C3.7C±1.1剤であった.追加群では投与前薬剤数はC1剤C1.6%,2剤C8.9%,3剤C13.7%,4剤C54.9%,5剤C18.5%などであった.ROCK阻害薬が処方され,3カ月後まで経過が追えた症例の報告では,ROCK阻害薬の追加群はC82例C121眼,変更群はC26例C41眼であった11).追加群の投与前の薬剤数はC1剤C4.9%,2剤C6.6%,3剤C43.8%,4剤C38.0%,5剤C6.6%であった.その他にROCK阻害薬投与例の投与前点眼スコアはC3.5C±1.0点12),C3.7±1.0点13),投与前点眼剤数はC2.8C±0.7剤14)と報告されている.過去の報告10.14)のCROCK阻害薬の使用方法と,今回調査でのC4剤例,5剤例で使用割合が高いことは一致していた.ROCK阻害薬はおもに多剤併用症例で使用されることが判明した.また,今回調査のC3,4,5剤例ではCPG関連薬/Cb遮断薬配合剤およびCb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤との併用が多く,ROCK阻害薬の併用薬は配合剤使用例が多いという報告10)と同様であった.追加群における投与前薬剤のうち配合剤はC3剤C47.3%,4剤C79.1%,5剤C54.2%であった10).今回調査でもC3,4,5剤例では配合剤の使用がC3剤例C34.5%,4剤例C58.8%,5剤例C86.6%と多く同様であった.今回の研究の問題点として,前回調査9)と症例が同一でないことがあげられる.症例を同一とすることはできなかったのでなるべく多数例を収集し,解析した.またCROCK阻害薬が何剤目として投与されたかは判断できなかった.たとえばC2剤例においてもCPG関連薬にCROCK阻害薬が追加投与されたのか,ROCK阻害薬にCPG関連薬が追加投与されたかは不明である.本調査の結果をまとめると,ROCK阻害薬はとくにC3剤以上の使用例において配合剤とともに用いられる頻度が高く,多剤併用になるほど使用されていた.本論文は第C32回日本緑内障学会で発表した.謝辞:本調査にご参加いただき,ご多忙にもかかわらず診療録の調査,記載,集計作業にご協力いただいた各施設の諸先生方に深く感謝いたします.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C20182)TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInter-ventionStudy(AGIS)7:TheCrelationshipCbetweenCcon-trolCofCintraocularCpressureCandCvisualC.eldCdeterioration.CAmJOphthalmolC130:429-440,C20003)LichterPR,MuschDC,GillespieBWetal:fortheCIGTSStudyGroup:InternCclinicalCoutcomesCinCtheCCollabora-tiveCInitialCGlaucomaCTreatmentCStudyCcomparingCinitialCtreatmentrandomizedtomedicationsorsurgery.Ophthal-mologyC108:1943-1953,C20014)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sure.AmJOphthalmolC126:487-497,C19985)HeijiA,LeskeMC,BengtssonBetal:Reductionofintra-ocularCpressureCandCglaucomaprogression:resultsCfromCtheCEarlyCManifestCGlaucomaCTrial.CArchCOphthalmolC120:1268-1279,C20026)中井義幸,井上賢治,森山涼ほか:多施設による緑内障患者の実態調査─薬物治療─.あたらしい眼科C25:1581-1585,C20087)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2009年版─薬物治療─.あたらしい眼科C28:874-878,C20118)塩川美菜子,井上賢治,富田剛司:多施設における緑内障実態調査C2012年版─薬物治療─.あたらしい眼科C30:C851-856,C20139)永井瑞希,比嘉利沙子,塩川美菜子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2016年度版─薬物治療─.あたらしい眼科C34:1035-1041,C201710)井上賢治,瀬戸川章,石田恭子ほか:リパスジル点眼薬の処方パターンと患者背景および眼圧下降効果.あたらしい眼科C33:1774-1778,C201611)塚原瞬,榎本暢子,石田恭子ほか:リパスジル点眼液による眼圧下降効果の検討.臨眼C71:611-616,C201712)石田順子,家木良彰,山下力ほか:川崎医科大学附属病院におけるリパスジル点眼液の使用経験と効果.臨眼C72:C1443-1449,C201813)上原千晶,新垣淑邦,力石洋平ほか:リパスジル点眼追加治療C12カ月の成績.あたらしい眼科C35:967-970,C201814)柴田真帆,豊川紀子,黒田真一郎:緑内障患者に対するリパスジル塩酸塩水和物点眼液追加投与の眼圧下降効果と安全性の検討.あたらしい眼科C35:684-688,C201815)黒田敦美,井上賢治,井上順治ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2020年版─薬物治療─.臨眼C75:377-385,C2021C***