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多数例による上方視神経部分低形成と緑内障合併の検討

2025年6月30日 月曜日

《第35回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科42(6):742.747,2025c多数例による上方視神経部分低形成と緑内障合併の検討金森章泰*1,2金森敬子*1*1医療法人社団かなもり眼科クリニック*2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野CALarge-ScaleStudyoftheAssociationofSuperiorOpticNerveHypoplasiaandGlaucomaAkiyasuKanamori1,2)andNorikoKanamori1)CKanamoriEyeClinic1),KobeUniversityGraduateSchoolofMedicine,DivisionofOphthalmology,DepartmentofSurgery2)目的:上方視神経部分低形成(SSOH)は日本人ではC300人にC1人程度の有病率とされ,まれではない.緑内障発症のリスク因子とされ,ときどき緑内障と誤診されているケースが散見される.目的はCSSOHの臨床像を検討し,緑内障合併例を分類することである.対象と方法:光干渉断層計(OCT)・眼底写真からCSSOHと判断したC130眼について,緑内障の合併の有無や視野検査結果等を検討した.結果:年齢・屈折値・HFA24-2のCMD・眼軸長の平均値は48.1歳,.4.20D,.1.79CdB,25.57Cmであった.緑内障性構造障害の有無について以下のようにグループ分けを行うことができた.SSOHのみ群C40眼,黄斑部にかかる網膜内層構造障害合併群C17眼,前視野緑内障合併群C52眼,緑内障合併群C21眼.そのうちCSSOHによる視野欠損を生じていたのはC9眼,10眼,10眼,11眼であった.結論:SSOHにおいて,前視野緑内障を含む緑内障合併例は多数みられた.黄斑部にかかる上方の網膜神経線維層欠損はCSSOHの広がりによるものか,緑内障性かの判断が困難であった.CPurpose:Superiorsegmentalopticnervehypoplasia(SSONH)hasanestimatedprevalenceofapproximately1CinCeveryC300CJapaneseCpeople,CsoCitCisCnotCaCrareCdisease.CHowever,CSSONHCisCconsideredCaCriskCfactorCforCtheCdevelopmentofglaucomaandisoccasionallymisdiagnosedasglaucoma.ThepurposeofthisstudywastoexaminetheclinicalfeaturesofSSONHandclassifycaseswithglaucoma.PatientsandMethods:Inthisstudy,weexam-inedCtheCpresenceCorCabsenceCofCglaucomaCandCvisualC.eldCtestC.ndingsCofC130CeyesCdiagnosedCasChavingCSSONHCbasedConCopticalCcoherenceCtomographyCandCfundusCimaging.CResults:TheCmeanCpatientCage,CrefractiveCvalue,CHumphreyCFieldCAnalyzerC24-2CmeanCdeviation,CandCaxialClengthCwereC48.1Cyears,C.4.20D,C.1.79dB,CandC25.57Cmm,respectively.The130eyesweregroupedaccordingtothestructuralglaucomatouschangeasfollows:C40eyeswithSSONHonly,17eyeswithganglioncellcomplex(GCC)damageintheuppermacular,52eyeswithpreperimetricglaucoma,and21eyeswithglaucoma.Ofthose,visual.elddefectsduetoSSONHoccurredin9,10,10,and11eyes,respectively.Conclusion:ManycasesofSSONHwerecomplicatedwithglaucoma,includingpre-perimetricCglaucoma,CsoCitCwasCdi.cultCtoCdetermineCwhetherCtheCGCCCdefectsCinCtheCupperCmaculaCwereCdueCtoCthespreadofSSONHorwereglaucomatous.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(6):742.747,C2025〕Keywords:上方視神経部分低形成,緑内障,合併,光干渉断層計.superiorsegmentalopticnervehypoplasia,glaucoma,coexisting,opticalcoherencetomography.Cはじめに上方視神経部分低形成(superiorCsegmentalCopticCnervehypoplasia:SSOH)は視神経乳頭の上方から鼻側にかけての軽度の先天的形成異常とされる.日本人における有病率は,多治見スタディで集積された眼底写真の判読より,0.3%とされている1).さらに,193名の自覚症状のない大学生における研究では,SSOHの頻度はC2.6%(全員CGoldmann視野に異常が確認されている)という報告もある2).日常診療ではよくみかける状態であるにもかかわらず,SSOHの診断基準は明確ではないうえに,SSOHの約半数は視野欠損がないとも報告されており1),その場合はいっそう診断が困難になることもある.SSOHの形態的特徴は,①網膜上方の網〔別刷請求先〕金森章泰:〒673-0892明石市大明石町C1-6-1パピオスあかしC3Fかなもり眼科クリニックReprintrequests:AkiyasuKanamori,M.D.,Ph.D.,KanamoriEyeClinic,1-6-1-3F,Ohakashi-cho,Akashi-city,Hyogo673-0892,CJAPANC742(100)膜神経線維層(retinalCnerveC.berlayer:RNFL)欠損,②乳頭上部の蒼白化,③乳頭上方の強膜のChalo,④乳頭における網膜中心動脈起始部の上方偏位,の四つがあげられているが3),日本人ではこれらの特徴がすべてそろうことは少ないとされている4,5).また,SSOHと緑内障合併例の症例報告に加え,SSOHがあると緑内障の発症率がC5倍になるとされる6).一般的な開放隅角緑内障は急に発症することはなく,その前の病期である視野が正常な前視野緑内障(preperimet-ricglaucoma:PPG)を併発している例はさらに多いと思われる.今回,多数例のCSSOHと緑内障の合併程度から,分類を試みたので報告する.CI対象と方法本研究は診療録から調査した後ろ向き研究である.プロトコールはヘルシンキ宣言に基づいており,兵庫県医師会倫理審査委員会の承認のもと,対象から文書による同意を得て行った.2017年C6月.2023年C12月にかなもり眼科クリニックを受診し,SSOHと診断した患者を対象とした.SSOHの診断は眼底所見および光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT),視野検査によって総合的に行った.OCTは緑内障とCSSOHの鑑別に有用とされる7).OCTはCRetinaScan-DUO(ニデック)を用いた.乳頭マッププログラムにて視神経形状ならびに乳頭周囲網膜神経線維層(circumpap-illaryCretinalCnerveC.berlayer:cpRNFL)厚を測定した.黄斑部解析では,黄斑部網膜内層構造(ganglionCcellCcom-plex:GCC)を計測した.GCCは網膜神経線維層+網膜神経節細胞層+内網状層の厚みからなる複合体厚である.視野はCHumphreyCFieldAnalyzer(HumphreyZeiss社)のCHum-phrey24-2SITA-standardを用いて測定を行った.本研究の選択基準は,矯正視力がC0.7以上,眼軸長がC30mm未満,良好なスキャンが取得されていること,および信頼性のある視野検査の結果が得られていることとした.26mm以上の眼軸長のある眼ではCOCTに内蔵された長眼軸補正プログラムでデータ補正を行った.眼底検査および眼底写真で上方・下方どちらかにでも視神経乳頭リムの狭窄および網膜神経線維層欠損がみられる緑内障性視神経乳頭変化に加え,OCTによる緑内障性構造障害があり,それに一致する視野欠損基準を満たすものを緑内障と診断した.信頼性のある視野検査(固視不良C20%未満,偽陰性C15%未満,偽陽性15%未満)において,視野検査結果が以下のいずれかの基準を満たした場合に緑内障性視野異常と定義した.①パターン偏差確率プロットにおいて,隣接した位置にC3点以上がC5%未満の確率を示し,そのうち少なくとも1点がC1%未満の確率を示した場合,②パターン標準偏差の確率がC5%未満の場合,③緑内障半視野検査が正常範囲外であると示した場合(AndersonとCPatellaの基準に従う)である.PPGは緑内障性構造障害があるものの緑内障性視野障害がないものと定義した.本研究では,角膜および硝子体手術の既往,角膜混濁,臨床的に有意な白内障,網膜疾患(黄斑上膜,黄斑円孔,糖尿病網膜症など),および非緑内障性視神経症の既往がある眼は除外した.CII結果対象患者はC100例C130眼である.患者の年齢は平均C±標準偏差C48.1C±11.9歳,男性41例54眼,女性59例76眼であった.等価球面度数はC.4.20±3.47D,眼軸長はC25.57C±1.70mm,Humphrey視野Cmeaddeviation(MD)値はC.1.79C±3.02CdBであった.SSOHと緑内障との鑑別を考えるにあたり,OCT解析結果をもとに判断すると,臨床上,四つのパターンがあると考えられた(図1,2).①単純な鼻上側のSSOH(SSOH群),②鼻上側のCSSOHによる構造障害に連続した黄斑部にかかるCGCC障害があるもの(+a群),③CSSOH+PPG(+P群),④CSSOH+緑内障(+G群)である.結果は,SSOH群40眼,+a群C17眼,+P群C52眼,+G群C21眼に分類された.表1に各群の背景を示す.年齢や眼軸,角膜厚に群間差はなかったものの,HFAのCMD値は有意に緑内障群で低かった(ANOVA,p<0.01).表2に示すとおり,片眼性のものはC30例あり,SSOH群C14眼,Ca群6眼,+P群10眼,+G群C0眼であった.つぎに,両眼での各群の分布を検討すると,SSOH群がC11例,Ca群3例,+P群17例,+P群6例と74%(=34/50)は多くは両眼とも同じ分類に入り,この分類には両眼性が存在すると思われた.SSOHによる視野欠損の有無により,各群の眼数を検討した(表3).視野欠損あり群はCSSOH群と+a群で比較したところ,視野欠損ありが+a群のほうが有意に多かった(Fisher検定,p=0.013).一方,+a群は低形成程度が強い群と考えると,+a群のほうがよりCSSOH視野欠損を有する症例が多い結果は妥当な結果と思われる.+G群でも+P群に比べCSSOHの視野欠損のある例が多かった(Fisher検定,p=0.009).つぎに,OCTのCdisc解析による視神経乳頭形状について検討した(表4).垂直視神経乳頭陥凹比はC4群で有意な差はなかったが,視神経乳頭面積は有意に+a群が小さかった(ANOVA,p=0.014).CIII考按SSOHに関する報告はいくつか過去にされているが,いずれも数十例までの報告で,100例を越えるような多数例による検討はC1報のみである.Yagasakiらは日本人において,眼底写真でCSSOHと診断したC106眼について報告しており,図1右眼が+a群,左眼がSSOH群の症例d左列:右眼.右列:左眼.Ca,b:眼底写真ではとくに右眼で低形成が著しい.Cc:cpRNFL,GCC解析で両眼とも上側のCcpRNFL減少がみられる.Cd:GCC解析で右眼は上方のGCCの減少がみられる.左眼は網膜神経線維の走行に沿ったCGCCの菲薄化があるようにみえるが,眼底写真で明らかな乳頭陥凹拡大はない.Ce,f:Goldmann視野計では右眼は下半分が大きく欠損している.左眼は楔状の視野欠損が下方にみられる.Cg:Humphrey視野検査(24-2)では右眼のみ下方の視野欠損を認める.左眼は正常視野である.fg図2判別がつきにくい症例(両眼とも+P群とした)左列:右眼.右列:左眼.Ca,b:両眼ともCSSOHの所見があり,視神経乳頭陥凹拡大および神経線維束欠損(↑)もある.Cc:cpRNFL解析では上.鼻側にかけてCcpRNFL減少を両眼ともに認める.下方のcpRNFL減少も認める.Cd:GCC解析では,右眼はCSSOHに連続した上方のCGCC障害に加え,下方に緑内障による神経線維束欠損を認める.+a群の障害もあるが,+P群に分類した.左眼上方は,図中の黒丸で囲んだ部分はSSOHであり,SSOH障害に連続していない図中の白丸で囲んだ部分は緑内障性変化と判断した.Ce,f:Goldmann視野計では,右眼は下方の視野欠損があるが,扇状ではなく,一見,緑内障様である.左眼は上方,および耳下側への扇状の軽度の視野欠損を認める.g:Humphrey視野C24-2では,右眼はCSSOHによる視野欠損を認める.左眼の耳側視野欠損は低形成でよいが,上側の視野欠損は黄斑部GCC下方欠損程度からするとかなり上方であり,緑内障にしては非典型的である.下方の部分低形成も混在すると考える.cdg表14分類の臨床的背景年齢(歳)眼軸(mm)角膜厚(Cμm)HFAMD(dB)SSOHのみ(n=40)C46.0±12.0C25.67±1.74C535.6±32.8C.1.48±2.41+a(n=17)C41.5±11.2C24.68±1.60C528.4±26.1C.1.66±2.88+P(Cn=52)C50.3±11.2C25.60±1.30C531.6±37.4C.0.76±2.82+G(Cn=21)C51.9±11.3C26.02±2.47C506.2±33.9C.5.06±3.51*表2片眼性と両眼性で分けた場合の4分類の眼数片眼性のもの:3C0例両眼性のもの(9通り):5C0例・SSOHのみ:1C4例・両眼CSSOHのみ:1C1例・SSOH+a:6例・SSOHと+a:1例・SSOH+P:1C0例・SSOHと+P:2例・SSOH+G:なし・SSOH+G:1例・両眼+a:3例・+aと+P:1例・+aと+G:3例・両眼+P:1C7例・+Pと+G:5例・両眼+G:6例表4OCTによる視神経乳頭形状解析結果視神経乳頭面積(mmC2)垂直視神経乳頭陥凹比SSOHのみ(n=40)C2.44±0.67C0.52±0.13+a(n=17)C2.05±0.41*C0.44±0.14+P(Cn=52)C2.56±0.70C0.51±0.21+G(Cn=21)C2.52±0.99C0.60±0.14その中で緑内障との合併例はC6例だったとしている8).106眼中COCT検査が行われたのはC35眼のみで,全例では網膜や視神経の詳細な検討はなされていない.本研究では多数例のCSSOHを対象とし,OCT所見を踏まえて緑内障の合併具合を検討し,分類を試みた.本研究では上方から鼻上側にかけて単純にCOCTのCcpRNFLでの菲薄化があるものを単純なSSOH群としたが,これはCSSOHが視神経乳頭鼻上側の局所的な低形成であるという従来の概念に相応する.しかし,スペクトラルドメインCOCTの登場により,黄斑部網膜内層が障害されている症例が多数存在することがわかり,こういった症例をプラスアルファの障害があると認識し,+a群として定義づけた.この群では視野障害が単純なCSSOHより多いことや,視神経乳頭面積が小さい結果を踏まえると,より低形成具合が大きいものと思われる.部分低形成ではない,いわゆる視神経低形成は視力不良例や黄斑形成異常を多く伴うが,36眼の視神経低形成に関する研究では視神経乳*p<0.01表3SSOHの視野欠損の有無と4分類の眼数SSOHの視野異常なし(眼)SSOHの視野異常あり(眼)SSOHのみ(n=40)C31C9+a(n=17)C7C10+P(Cn=52)C42C10+G(Cn=21)C11C9頭面積と視力が有意な相関があると報告され,本研究結果を裏付けるものである9).+a群でみられるCGCC菲薄化が,網膜神経線維層の障害のみか,あるいは網膜神経節細胞の障害を伴うかは本研究で用いたCOCTはこのC2層を分離して解析できないためこれ以上の推測はできないが,層別解析を行うことができるスペクトラリスCOCTなどがあればさらなる解析が可能と思われる.また,四つの分類はC1名の眼科医のみ(AK)で行った.とくに,図2の左眼のような非典型的な症例や微妙な緑内障性構造障害については判定者により判断が変わることもあり得るため,より正確な議論を行うには複数名による判定が望ましいと思われる.SSOHは比較的よくみられ,緑内障が合併しているかどうかで患者への対応が変わる.緑内障があれば,より綿密なフォローが必要であり,その診断は非常に重要である.視神経乳頭下方に緑内障性変化がある場合はCSSOHがあっても診断はつきやすい.しかし,上方にたとえば網膜神経線維束欠損のような緑内障性変化がある場合は,SSOHによる構造的変化が混在すると判別が非常に困難となる.本研究では+a群と+P群に分類したが,図2に示すような症例も多々あり,明確な診断基準を示すことは困難である.SSOHはもともと小乳頭であることや視神経乳頭形状がいびつなことも多く,緑内障性視神経乳頭陥凹拡大の有無での診断もむずかしいと思われる.視野欠損が生じているようであれば参考にできるが,PPGだとそれも不可能である.本研究のような横断的研究では解決しえず,緑内障であれば進行性であるので,判断に迷った際は経過観察が必要となり,今後の縦断的研究も必要と思われる.SSOH以外にも,頻度は少ないが鼻側・下方の視神経部分低形成もある.SSOHは治療の必要ない状態であるにもかかわらず緑内障と間違われることもあり10),緑内障点眼加療をされてしまっているケースも散見される.本研究で多数得られたCOCTのCdisc解析や黄斑部解析の結果を用いて,今後の研究でよりよい診断方法について検討する予定である.利益相反:利益相反公開基準に該当なし1)YamamotoT,SatoM,IwaseA:SuperiorsegmentaloptichypoplasiaCfoundCinCTajimiCEyeCHealthCCareCProjectCpar-ticipants.JpnJOphthalmolC48:578-583,C20042)岡野真弓,深井小久子,尾崎峯生:上方視神経低形成の頻度─20歳前後における頻度─神経眼科C24:389-386,C20073)KimCRY,CHoytCWF,CLessellCSCetal:SuperiorCsegmentalCopticChypoplasia.CaCsignCofCmaternalCdiabetes.CArchCOph-thalmolC107:1312-1315,C19894)HashimotoCM,COhtsukaCK,CNakazawaCTCetal:ToplessCopticCdiskCsyndromeCwithoutCmaternalCdiabetesCmellitus.CAmJOphthalmolC128:111-112,C19995)UnokiK,OhbaN,HoytWF:Opticalcoherencetomogra-phyofsuperiorsegmentaloptichypoplasia.BrJOphthal-molC86:910-914,C20026)LeeHJ,OzakiM,OkanoMetal:Coexistenceanddevel-opmentofanopen-angleglaucomaineyeswithsuperiorsegmentalCopticChypoplasia.CJCGlaucomaC24:207-213,C20157)YamadaCM,COhkuboCS,CHigashideCTCetal:Di.erentiationCbyCimagingCofCsuperiorCsegmentalCopticChypoplasiaCandCnormal-tensionglaucomawithinferiorvisual.elddefectsonly.JpnJOphthalmolC57:25-33,C20138)YagasakiA,SawadaA,ManabeYetal:ClinicalfeaturesofsuperiorCsegmentalCopticChypoplasia:hospital-basedCstudy.JpnJOphthalmolC63:34-39,C20199)Skriapa-MantaCA,CVenkataramanCAP,COlssonCMCetal:CCharacteristicCdeviationsCofCtheCopticCdiscCandCmaculaCinCopticCnerveChypoplasiaCbasedConCOCT.CActaCOphthalmolC102:922-930,C202410)WuCJH,CLinCCW,CLiuCCHCetal:SuperiorCsegmentalCopticCnervehypoplasia:aCreview.CSurvCOphthalmolC67:1467-1475,C2022C***

硝子体手術後の低眼圧により中心性漿液性脈絡網膜症を発症した2症例

2025年5月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科42(5):630.634,2025c硝子体手術後の低眼圧により中心性漿液性脈絡網膜症を発症した2症例宮良安宣今永直也寺尾信宏大城綾乃山内遵秀古泉英貴琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座CTwoCasesofCentralSerousChorioretinopathyTriggeredbyHypotonyafterVitrectomyYasunoriMiyara,NaoyaImanaga,NobuhiroTerao,AyanoOshiro,YukihideYamauchiandHidekiKoizumiCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyusC目的:25ゲージ硝子体手術後の低眼圧により中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)を発症したC2例を報告する.症例:症例C1はC61歳,男性.裂孔原性網膜.離眼のシリコーンオイル抜去術後にCCSCを発症した.症例C2はC47歳,男性.眼内レンズ脱臼に対して硝子体手術と強膜内固定術後にCCSCを発症した.両眼とも術前の光干渉断層計(OCT)で脈絡膜肥厚,脈絡膜外層血管の拡張が確認されていた.硝子体術後に低眼圧をきたし,術後C4日目のCOCTで,脈絡膜はさらに肥厚し,漿液性網膜.離(SRD)を認め,蛍光眼底造影で多数の漏出点と脈絡膜血管透過性亢進が確認された.症例C1は漏出点に対する網膜光凝固術を施行,症例C2は経過観察の方針となった.両眼とも術後C2週間で眼圧は正常化し,脈絡膜厚は術前と同程度まで減少し,SRDは寛解した.結論:硝子体手術後の低眼圧は脈絡膜血流を増加させ,CSCの発症リスクを高める可能性がある.CPurpose:ToCreportC2CcasesCofCcentralCserouschorioretinopathy(CSC)inducedCbyClowCintraocularCpressure(IOP)followingC25-gaugeCparsCplanavitrectomy(PPV).CCases:CaseC1CinvolvedCaC61-year-oldCmaleCwhoCdevel-opedCSCaftersiliconeoilextractionforarhegmatogenousretinaldetachmenteye.Case2involveda47-year-oldmaleCwhoCdevelopedCCSCCafterCPPVCandCintrascleralC.xationCforCintraocularClensCdislocation.CPreoperativeCopticalCcoherencetomography(OCT)showedpachychoroidinbotheyes.AfterPPV,IOPdecreasedinbothpatients,andOCTat4-dayspostoperativeshowedfurtherthickeningofthechoroidandserousretinaldetachment(SRD).Fluo-resceinandindocyaninegreenangiographyrevealedmultipleleakyspotsandincreasedchoroidalvascularhyper-permeability.At2-weekspostoperative,theIOPinbotheyeshadnormalized,thechoroidhadthinnedtothesamedegreeCasCbeforeCsurgery,CandCtheCSRDCwasCinCremission.CConclusion:LowCpostoperativeCIOPCafterCPPVCmayCincreasechoroidalblood.ow,leadingtoCSC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(5):630.634,C2025〕Keywords:中心性漿液性脈絡網膜症,硝子体手術,低眼圧,パキコロイド,光干渉断層計.centralserouschorio-retinopathy,parsplanavitrectomy,hypotony,pachychoroid,opticalcoherencetomography.Cはじめに中心性漿液性脈絡網膜症(centralCserousCchorioretinopa-thy:CSC)は,おもに中年男性に多く発症する疾患であり,漿液性網膜.離(serousCretinaldetachment:SRD)を特徴とする1).CSCは約半数の患者で自然治癒することが知られているが,再発や慢性化,あるいは脈絡膜新生血管を発症する患者が存在し,そのような症例は視機能予後に大きな影響を与える.近年,眼科領域におけるマルチモーダルイメージングの発達により,CSCの病態生理が明らかになってきている.光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)において眼球後極から渦静脈周辺部までの広範囲の脈絡膜肥厚,脈絡膜大血管や渦静脈の拡張などの所見2)が,インドシアニングリーン蛍光造影(indocyanineCgreenangiography:IA)〔別刷請求先〕宮良安宣:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:YasunoriMiyara,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC630(130)abc図1症例1の中心性漿液性脈絡網膜症発症時の眼底写真と蛍光造影画像61歳,男性.右眼の裂孔原性網膜.離を発症し,経毛様体扁平部硝子体手術とシリコーンオイル置換術を受けた.3カ月後にシリコーンオイル抜去術を施行された.術翌日の眼圧はC7CmmHg,術後C4日目の眼圧はC6CmmHgと低眼圧を認めた.術後C4日目に中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)を発症した際の眼底写真と蛍光造影画像.a:右眼の眼底写真.黄斑部から耳下側にかけて漿液性網膜.離を認めた.b:造影初期のフルオレセイン蛍光造影(FA).黄斑部に多数の蛍光漏出を認めた(▲).c:造影中期のインドシアニングリーン蛍光造影(IA).FAでの漏出を含む広範囲にCCVHを認めた(.).では,脈絡毛細血管板の充盈遅延,脈絡膜血管拡張,脈絡膜血管透過性亢進(choroidalCvascularhyperpermeability:CVH)などの所見3)が示され,CSCの発症機序の理解を飛躍的に向上させた.これらの脈絡膜異常はパキコロイドと呼称され1),CSCや加齢黄斑変性の一部の発症や,進行に深くかかわることが注目されてきた.また,パキコロイドの主病態は渦静脈流出路障害と考えられており2),CSCではこの渦静脈流出路障害に加えて,交感神経の亢進,ステロイド投与,ストレスなどの発症要因が加わることで,SRDが発症する可能性が指摘されている6).これまで内眼手術後にCCSCを発症した報告は複数あるが,その発症メカニズムは十分に解明されていない.今回筆者らは,経毛様体扁平部硝子体手術(parsCplanavitrectomy:PPV)施行後の低眼圧を契機にCCSCを発症したと考えられるC2例を経験したので報告する.CI症例症例1患者:61歳,男性.主訴:右眼視力低下.既往歴:サルコイドーシス.現病歴:右眼の裂孔原性網膜.離(rhegmatogenousreti-naldetachment:RRD)を発症し,PPVとシリコーンオイル置換を施行された.術後C3カ月でシリコーンオイル抜去術を施行する方針となった.術前所見:右眼矯正視力(0.5),右眼眼圧C19CmmHg,眼軸長はC24.27Cmmであった.前眼部に特記すべき所見はなかった.眼内レンズが挿入されており,硝子体腔はシリコーンオイルで置換されていた.網膜は復位しており,網膜前膜や増殖性変化は認めなかった.OCTでは脈絡膜肥厚が認められ,術前の中心窩下脈絡膜厚(subfovealCchoroidalCthick-ness:SCT)はC358Cμmであった.経過:25ゲージ硝子体手術システムを用いてシリコーンオイル抜去を行った.閉創時にC25CGポート部から漏出のあった創口はC8-0吸収糸で縫合し,眼灌流液で手術を終了した.術翌日の眼圧はC7mmHgで,術後C4日目の眼圧はC6mmHgと低眼圧であった.ポート部からの漏出はなく追加の縫合は行わなかった.術後C4日眼には黄斑から耳下側にかけてCSRDを認め,OCTでは脈絡膜肥厚,脈絡膜皺壁,網膜色素上皮.離,網膜下液を認め,SCTはC530Cμmに増加していた.原因裂孔とCSRDとの交通は認めなかった.SRD出現時の右眼矯正視力は(0.1)であった.フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)では,黄斑部に多数の漏出点が認められ,IAではCCVHが確認された(図1).これらの所見に基づき,PPV後に発症したCCSCと診断した.裂孔との交通によるCRRDの再発が危惧されたため,すべての漏出点に対して網膜光凝固術(出力C80.100CmW,凝固サイズC100Cμm,照射時間C0.1秒)を施行した.術後C11日目に眼圧C17CmmHgまで回復し,OCTでCSCTはC396Cμmに減少,SRDも改善した.経過のCOCTを図2に示す.右眼矯正視力は最終的に(0.7)となった.症例2患者:47歳,男性.主訴:視力低下.既往歴:RRDに対してCPPVの既往,僚眼にCCSCの既往.現病歴:右眼眼内レンズ脱臼の診断で,右眼CPPVと眼内図2症例1の経過中のOCT画像a:シリコーンオイル抜去術前のCOCT画像.脈絡膜肥厚,脈絡膜血管拡張を認めるが,網膜.離は認めなかった.b:術後C4日目のCCSC発症時のCOCT画像.脈絡膜肥厚と脈絡膜血管拡張がさらに顕著となり,網膜色素上皮.離,網膜下液の出現を認めた.c:術後C11日目の網膜光凝固術後のCOCT画像.脈絡膜厚は術前と同程度まで減少し,網膜色素上皮.離,網膜下液は改善傾向がみられる.図3症例2の中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)発症時の眼底写真と蛍光造影画像47歳,男性.右眼の眼内レンズ脱臼のため,PPVと眼内レンズ強膜内固定術を施行された.術翌日の眼圧はC5CmmHgと低眼圧を認めたが,術後C4日目の眼圧はC13CmmHgと改善していた.術後C4日目にCCSC発症した際の眼底写真と蛍光造影.a:右眼の眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離を認めた.b:フルオレセイン蛍光造影(FA)画像.黄斑部に蛍光漏出を認めた(▲).c:インドシアニングリーン蛍光造影画像.FAでの漏出に一致する部位に脈絡膜血管透過性亢進を認めた(.).図4症例2の経過中のOCT画像a:術前のCOCT画像.脈絡膜肥厚,脈絡膜血管拡張を認めるが,網膜.離は認めなかった.b:術後C4日目,中心性漿液性脈絡網膜症発症時のCOCT画像.脈絡膜肥厚,脈絡膜血管拡張がわずかに増悪し,新しく網膜色素上皮.離,網膜下液の出現を認めた.c:術後C13日目,経過観察後のCOCT画像.脈絡膜厚は術前と同程度まで減少し,網膜下液は改善傾向である.レンズ強膜内固定術の方針となった.術前所見:右眼矯正視力(1.0),右眼眼圧C17CmmHg,眼軸長はC24.06Cmmであった.前眼部に特記すべき所見はなかった.眼内レンズは硝子体腔に脱臼しており,網膜.離は認めなかった.OCTでは脈絡膜肥厚が認められ,術前のCSCTはC411Cμmであった.経過:25ゲージ硝子体手術システムを用いてCPPV,眼内レンズ強膜内固定を行った.閉創時に強角膜切開創からの漏出は認められなかったが,25CGポート部からの漏出があり,創口をC8-0吸収糸で縫合し,眼灌流液で手術を終了した.術翌日の眼圧はC5mmHgで,術後C4日目には眼圧がC13mmHgに回復したが,OCTで脈絡膜肥厚,網膜色素上皮.離,網膜下液が認められ,SCTはC444Cμmに増加していた.SRD出現時の右眼矯正視力は(0.2)であった.ポート部や主創からの漏出はなく追加の縫合は行わなかった.FAでは蛍光漏出が確認され,IAではCCVHが認められた(図3).これらの所見に基づき,PPV後に発症したCCSCと診断した.SRDは限局していたため,経過観察の方針となった.その後,術後C13日目には眼圧がC17mmHgに上昇し,OCTでSCTはC384Cμmに減少,網膜色素上皮.離,網膜下液は自然に消退した.経過のCOCTを図4に示す.右眼矯正視力は最終的に(0.6)となった.CII考按PPV後に発症したCCSCのC2症例を報告した.いずれの症例も眼軸長はC24Cmm程度で,術前のCOCTにて脈絡膜肥厚がみられ,症例C2においては僚眼にCCSCの既往があった.術翌日の眼圧は低く,術後C4日目のCOCT所見において脈絡膜の肥厚がみられ,FAでは黄斑部に多数の漏出点があり,IAではCFAの蛍光漏出点を含む領域にCCVHがみられた.どちらの症例も眼圧の上昇とともに脈絡膜厚は薄くなり,SRDは消失した.PPVの術後合併症として,低眼圧は一定の確率で生じることが知られている.Bamonteらは,今回筆者らが使用した機材と同様のアルコン社製C25ゲージ硝子体手術システムにおける術後低眼圧症を検討し,術後眼圧がC5CmmHg以下の低眼圧がC13.1%の症例で認められたことを報告した7).加えて危険因子として,ガスタンポナーデを行わなかった症例,偽水晶体眼,再手術症例をあげている.また,Issaらはシリコーンオイル抜去後の合併症としてC12.9%で低眼圧が生じると報告しており,症例によっては慢性的な低眼圧が持続する可能性を指摘している8).30CG針を使用した山根法での眼内レンズ強膜内固定術では,2%と低い割合ではあるが,術後に低眼圧となる可能性が報告されている9).今回の症例1は偽水晶体眼,再手術症例,シリコーンオイル抜去眼であり,症例C2は眼内レンズ強膜内固定眼,再手術症例で,両眼ともガスタンポナーデは行わず眼灌流液で終了した.これらのリスク要因が術後の低眼圧を惹起したと考えられる.眼球が一時的な低眼圧になると,脈絡膜血流はどうなるのだろうか.脈絡膜は眼灌流圧(=血圧-眼圧)の変化に対してある程度の自己調節能力を示す.しかし,レーザードップラーを用いた脈絡膜血流の検討では,脈絡膜血流と動脈圧との間には相関関係がない一方で,脈絡膜血流と眼圧との間には有意な負の相関がみられることが報告されており10),脈絡膜循環の調節メカニズムは,血圧よりも眼圧の変化に対して調節能力が脆弱であるようである.また,暗室でのうつぶせ試験による検討では,眼圧の上昇と中心窩領域の脈絡膜厚に負の相関がみられること,ベースラインの脈絡膜が厚いほど脈絡膜厚の変化が生じることが報告されている11).同様に,レーザースペックルフローグラフィーを用いた検討においても,眼圧の低下は脈絡膜血流を増加させ,脈絡膜の管腔を増加させることが指摘されている12).これらの検討から,低眼圧は眼灌流圧の増加を招き,脈絡膜血流を増加させ,脈絡膜を厚くさせると考えられる.そして,これらの検討は,短時間での脈絡膜変化を観察しており,術後の急激な低眼圧による脈絡膜灌流変化は,比較的短時間で起こりうることに留意すべきである.実際に筆者らの症例でも,低眼圧が持続した術後C4日時点で脈絡膜が明らかに肥厚しており,そののち眼圧の改善とともに脈絡膜厚が減少していることが観察された.近年,CSCでは脈絡膜肥厚,脈絡膜血管拡張,短眼軸,厚い強膜などが解剖学的な発症リスク因子であり,さらに別の要因が加わることにより,CSCが発症することが示唆されている6).これまで,内眼手術を契機にCCSCを生じた報告はいくつかあり13.18),手術からCCSCの発症までは,多くの症例で術後C1日.2週間程度である.CSC発症の原因として,手術自体の精神的・身体的ストレス,内境界膜.離による網膜への物理的ストレス,周術期のステロイド投与,術中の眼圧変動があげられており,とくに線維柱帯切除術後にCSCを発症した症例では,術後の低眼圧が原因と言及されている.今回の症例C1と症例C2はCCSCの既往やパキコロイドを有しており,このようなCCSC発症素因がある眼において,硝子体手術後の低眼圧が重なったことで,脈絡膜血流が短時間で急激に増加し,CSCを発症した可能性がある.術後の低眼圧が持続すると脈絡膜血流,脈絡膜厚が増加し,網膜色素上皮が障害されることでCSRDが生じる.一方で,眼圧が改善すると,脈絡膜血流,脈絡膜厚が正常化することでSRDが消失したと考えられる.先に述べたように,内眼手術は術中術後の短時間の眼圧変動,低眼圧により脈絡膜循環の変化が起こる可能性がある.CSCの解剖学的な発症リスク因子をもつ症例において術後にCSRDが発症した場合は,術中術後の低眼圧によるCCSC発症を鑑別疾患として留意する必要があろう.この場合は,速やかにCFAやCIAなどの蛍光眼底造影検査を行い,CSCの診断をつけることが重要である.また,術後CCSCの治療に関して,症例C1では網膜光凝固術を施行したが,症例C2では経過観察のみで低眼圧の改善に伴いCCSCも改善した.既報においても経過観察でCSRDが消失したという報告が約半数であり12.17),SRDが寛解しない症例では網膜光凝固や光線力学的療法が行われていた.CSCは自然寛解することが多く,視力予後も比較的良好であるとされているが,一方でCSRDの再発を繰り返す症例や遷延する症例では視力予後が悪化する.そのため,術後CCSCの治療としては,まず低眼圧となっている原因を突き止め,可能なら低眼圧に対する処置を行い,しばらく経過観察を行うという方針が望ましいと思われる.毛様体機能低下が疑われる場合,ステロイド投与を検討したくなるが,CSCが疑われる場合の安易なステロイドの増量はCCSCの遷延化を招く危険性があり,避けるべきであろう.低眼圧が持続する可能性が高い場合や長期間CSRDが持続する場合,また,RRDの原因裂孔にCSRDが交通することでCRRDの再発につながる場合などは,早めに網膜光凝固術や光線力学的療法を検討する必要があると考える.今回は硝子体手術後の低眼圧により脈絡膜肥厚を伴い,続発的にCCSCを発症したC2例を経験した.術後低眼圧に伴う脈絡膜の肥厚と脈絡膜血流の増加がCCSC発症の一因となったと考えられた.パキコロイドを有する患者における術後のSRDの出現は,CSCの発症を考慮する必要がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)GassCJD:PathogenesisCofCdisciformCdetachmentCofCtheCneuroepithelium.CAmCJCOphthalmolC63(Suppl):1-139,C19672)YangCL,CJonasCJCB,CWeiW:ChoroidalCvesselCdiameterCinCcentralCserousCchorioretinopathy.CActaCOphthalmolC91:Ce358-e362,C20133)IidaT,KishiS,HagimuraNetal:PersistentandbilateralchoroidalCvascularCabnormalitiesCinCcentralCserousCchorio-retinopathy.RetinaC19:508-512,C19994)WarrowCDJ,CHoangCQV,CFreundKB:PachychoroidCpig-mentepitheliopathy.RetinaC33:1659-1672,C20135)SpaideCRF,CGemmyCCheungCCM,CMatsumotoCHCetal:CVenousCoverloadchoroidopathy:aChypotheticalCframe-workforcentralserouschorioretinopathyandallieddisor-ders.ProgRetinEyeResC86:100973,C20226)HirookaCK,CSaitoCM,CYamashitaCYCetal:ImbalancedCcho-roidalCcirculationCinCeyesCwithCasymmetricCdilatedCvortexCvein.JpnJOphthalmolC66:14-18,C20227)BamonteCG,CMuraCM,CStevieCTanH:HypotonyCafterC25-gaugeCvitrectomy.CAmCJCOphthalmolC151:156-160,C20118)IssaCR,CXiaCT,CZarbinCMACetal:SiliconeCoilremoval:post-operativeCcomplications.CEye(Lond)C34:537-543,C20209)YamaneCS,CSatoCS,CMaruyama-InoueCMCetal:FlangedCintrascleralCintraocularClensC.xationCwithCdouble-needleCtechnique.OphthalmologyC124:1136-1142,C201710)PolskaE,SimaderC,WeigertGetal:Regulationofcho-roidalCbloodC.owCduringCcombinedCchangesCinCintraocularCpressureCandCarterialCbloodCpressure.CInvestCOphthalmolCVisSciC48:3768-3774,C200711)WangCYX,CJiangCR,CRenCXLCetal:IntraocularCpressureCelevationCandCchoroidalCthinning.CBrCJCOphthalmolC100:C1676-1681,C201612)AkahoriT,IwaseT,YamamotoKetal:Changesincho-roidalblood.owandmorphologyinresponsetoincreaseinCintraocularCpressure.CInvestCOphthalmolCVisCSciC58:C5076-5085,C201713)佐藤圭子,池田誠宏,岩崎哲也ほか:濾過手術後に中心性漿液性網脈絡膜症様病変を生じたC1例.臨眼48:1176-1177,C199414)ImasawaCM,COhshiroCT,CGotohCTCetal:CentralCserousCchorioretinopathyCfollowingCvitrectomyCwithCintravitrealCtriamcinoloneacetonidefordiabeticmacularoedema.ActaOphthalmolScandC83:132-133,C200515)Moreno-LopezCM,CPerez-LopezCM,CCasas-LleraCPCetal:CPersistentsubretinal.uidd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原発性アルドステロン症および虚血性心疾患に伴いParacentral Acute Middle Maculopathyを呈した2例 

2025年5月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科42(5):618.624,2025c原発性アルドステロン症および虚血性心疾患に伴いParacentralAcuteMiddleMaculopathyを呈した2例円谷康佑柳田智彦庄司信行北里大学病院眼科CTwoCasesofParacentralAcuteMiddleMaculopathyAssociatedwithPrimaryAldosteronismandIschemicHeartDiseaseKosukeTsumuraya,TomohikoYanagitaandNobuyukiShojiCDepartmentofOphthalmology,KitasatoUniversityHospitalC目的:原発性アルドステロン症および虚血性心疾患にそれぞれ続発した傍中心窩急性中間層黄斑症(PAMM)のC2例を報告する.症例:症例C1はC55歳,女性.3日前から左眼の見づらさを自覚して近医を受診し,北里大学病院へ紹介された.矯正視力は両眼ともC1.2であった.左眼黄斑鼻側に網膜の淡い白濁を認め,光干渉断層計(OCT)で病巣部の網膜中間層に高輝度な変化があり,PAMMと診断した.筆者の施設(以下,当院)での初診時血圧C230/111CmmHgであり,原発性アルドステロン症Coおよび脂質異常症の診断となった.症例C2はC57歳,男性.1カ月に左心室内血栓を指摘され,ヘパリンとワーファリンで加療された.7日前から左眼の中心左上に霧視を自覚したため当院を受診.矯正視力は両眼ともC1.5であった.左眼視神経乳頭から黄斑にかけて帯状の白濁を認めた.OCTで視神経乳頭下耳側は網膜内層肥厚を,黄斑近傍は網膜中間層の高輝度変化を呈しており,前者は網膜動脈分枝閉塞症(BRAO),後者はBRAOに伴うCPAMMと診断した.結論:症例C1は原発性アルドステロン症をCPAMMの原因として直接関連付けて報告した初の症例であり,PAMMが原発性アルドステロン症を含む未診断の高血圧症の発見につながる可能性を示唆した.症例C2はCPAMMが虚血性心疾患に続発したことを示唆した.CPurpose:Toreporttwocasesofparacentralacutemiddlemaculopathy(PAMM)secondarytoprimaryaldo-steronismandischemicheartdisease,respectively.Cases:Case1involveda55-year-oldfemalewhowasreferredtoCKitasatoCUniversityCHospitalCbyCherClocalCdoctorCafterCdecreasedCvisionCoccurredCinCherCleftCeye.CHerCbest-cor-rectedCvisualacuity(BCVA)wasC1.2CinCbothCeyes,CyetCaCfaintCretinalCopaci.cationCwasCobservedConCtheCleft-eyemaculaandopticalcoherencetomography(OCT)revealedhigh-intensitychangesintheretinalintermediatelayer,thusleadingtoadiagnosisofPAMM.Herbloodpressurewas230/111CmmHg,andshewasdiagnosedwithprima-ryaldosteronismanddyslipidemia.Case2involveda57-year-oldmalewhowastreatedwithheparinandwarfarinforCaCleftCventricularCthrombusC1CmonthCpriorCtoCinitialCpresentationCatCourChospitalCdueCtoCpartialCblurredCvisionCoccurringinhislefteye.HisBCVAwas1.5inbotheyes.Aband-likeopaci.cationwasobservedinthelefteye.OCTrevealedthickeningoftheretinalinnerlayerbelowtheopticdisc,andhigh-intensitychangesintheretinalintermediateClayerCnearCtheCmacula,CthusCleadingCtoCaCdiagnosisCofCbranchCretinalCarteryocclusion(BRAO)andCPAMM,respectively.Conclusion:InCase1,weencountered,tothebestofourknowledge,the.rstknowncasedirectlylinkingprimaryaldosteronismasacauseofPAMM,suggestingthatPAMMmayleadtothediscoveryofundiagnosedChypertension,CincludingCprimaryCaldosteronism,CandCtheC.ndingsCofCCaseC2CshowCthatCPAMMCcanCoccursecondarytoischemicheartdisease.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(5):618.624,C2025〕Keywords:傍中心窩急性中間層黄斑症,光干渉断層計,高血圧,原発性アルドステロン症,虚血性心疾患.paracen-tralCacuteCmiddleCmaculopathy,CopticalCcoherenceCtomography,Chypertension,CprimaryCaldosteronism,CischemicCheartCdisease.C〔別刷請求先〕円谷康佑:〒252-0375神奈川県相模原市南区北里C1-15-1北里大学病院眼科Reprintrequests:KosukeTsumuraya,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KitasatoUniversityHospital,1-15-1Kitasato,Minami-ku,Sagamihara,Kanagawa252-0375,JAPANC618(118)はじめに傍中心窩急性中間層黄斑症(paracentralCacuteCmiddlemaculopathy:PAMM)とは,2013年にCSarrafら1)が報告した急性の視力・視野障害をきたす病態であり,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で急性期の傍中心窩における網膜中間層(内顆粒層,外網状層)の高輝度病変が特徴的である.検眼鏡で網膜の浮腫状の色調変化を認めることもあるが,異常所見がないこともある1,2).PAMMは一つの疾患というより病態であり,網膜静脈閉塞症(retinalCveinocclusion:RVO)や網膜動脈閉塞症(retinalCarteryocclusion:RAO),糖尿病網膜症,さらには高血圧や貧血など,網膜の虚血をきたすさまざまな病因によって生じる2).当院でC2019年C11月.2022年C11月に経験した,原発性アルドステロン症および虚血性心疾患にそれぞれ続発したと考えられるCPAMMのC2例を報告する.CI症例[症例1]患者:55歳,女性.主訴:左眼の中心近傍の視力低下.現病歴:3日前から左眼の中心近くの視力低下を自覚して,2日前に近医を受診し,網膜動脈分枝閉塞症(branchRAO:BRAO)を疑われ,北里大学病院へ紹介受診となった.眼科既往歴:なし.初診時眼所見:視力は右眼C0.5(1.2C×sph.1.50D),左眼1.0(1.2C×sph.0.50D),眼圧は右眼C16mmHg,左眼C16mmHgであった,両眼ともに前眼部および中間透光体に異常所見はなかった.眼底所見として,右眼底に異常はなかったが,左眼黄斑の鼻側に網膜の淡い白濁(図1a)を認めた.黄斑部COCT(TOPCONDRIOCTTriton,トプコン製)で,白濁部位に一致して内顆粒層を中心とした網膜中間層の高輝度な変化(図1b)を生じていた.OCTA(同上)では高輝度部に一致して深層網膜毛細血管網の血流シグナルが低下(図1c)しており,PAMMと診断した.フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)検査を施行したが,造影遅延や造影不良を認めなかった.淡い白濁病変は,網膜中間層の虚血によるものと考えられた.Humphrey静的視野(SITA-standard,プログラム中心C10-2)では網膜病変と対応する中心やや耳側に感度低下(図2a)を認めた.図1症例1の左眼眼底写真とOCTおよびOCTA画像a:左眼眼底写真黄斑鼻側に淡い白濁を認める.Cb:OCT画像.内顆粒層を中心とした網膜中間層の高輝度変化を認める.Cc:OCTA画像.高輝度部に一致して深層網膜毛細血管網の血流シグナル低下を認める(C→).d:発症C2週間後.網膜中間層の高輝度領域は減少したが残存している(上が初診時,下がC2週間後).ab図2症例1のHumphrey静的視野(SITA-standard,プログラム中心10-2)a:初診時.網膜病変と対応する中心やや耳側に感度低下を認める.Cb:発症C9カ月後.中心やや耳側の感度低下はわずかに残存している.経過:患者は既往歴なしとの認識であったが,健診を受けておらず,当院初診時血圧がC230/111CmmHgと著明な高血圧を呈していた.内科を受診したところ原発性アルドステロン症,高コレステロール血症と診断された.発症C2週間後,網膜中間層の高輝度領域は減少し残存(図1d)した一方,自覚症状は軽快した.発症C9カ月後に施行したCHumphrey静的視野(SITA-standard,プログラム中心C10-2)では中心やや耳側の感度低下(図2b)はわずかに残存した.[症例2]患者:57歳,男性.主訴:左眼霧視.現病歴:上記眼症状発症C3週間前に心筋梗塞で他院循環器内科に入院,心エコーで左室にC2個の血栓が指摘されてヘパリンとワーファリンにて加療された.入院治療開始C2週間後に左眼でまぶしい物を見ると残像や白い雲のような物が見える症状を自覚したが,入院中に眼科受診の機会はなく,眼症状自覚C4日後に退院となった.退院C3日後,すなわち眼症状図3症例2の左眼眼底写真とOCTおよびOCTA画像a:左眼視神経乳頭近傍に軟性白斑(→)を,黄斑下鼻側にCPAMM(C▲)を認める.Cb:視神経乳頭下耳側(上)は網膜内層肥厚を,黄斑近傍(下)は網膜中間層の高輝度変化(b)を呈している.Cc:視神経乳頭下耳側は深層網膜毛細血管網の血流シグナルが低下している(C→)が,黄斑近傍の血流シグナルの変化は明らかでない.Cd:発症C3週間後に網膜中間層の高輝度領域は減少し,自覚症状は軽快した(上が初診時,下がそのC2週間後).発症C7日後に当院を予約外受診した.当院でC12年前に両眼レーザー屈折矯正角膜切除術(photorefractiveCkeratecto-my:PRK)の既往があり,フォローのため年C1回通院している.眼科既往歴:両眼CPRK(12年前).初診時眼所見:視力は右眼C1.5(矯正不能),左眼C0.7(1.5C×sph.0.50D(cyl.0.50DAx90°),眼圧は右眼13mmHg,左眼C12CmmHgであった,両眼ともに前眼部および中間透光体に異常所見はなかった.眼底所見として,右眼眼底に異常はなかったが,左眼視神経乳頭と黄斑の間に網膜の淡い白濁(図3a)を認めた.黄斑部COCTで,視神経乳頭下耳側は網膜内層肥厚を,黄斑近傍は網膜中間層の高輝度変化(図3b)を呈しており,前者はCBRAO,後者はCBRAOに伴うPAMMと診断した.OCTAでは視神経乳頭下耳側は網膜内層肥厚の血流シグナルが低下(図3c)していたが,黄斑近傍の血流シグナルの変化は明らかでなかった.経過:網膜中間層の高輝度病変と自覚症状は発症C2週間後図4症例2のHumphrey静的視野(SITA-standard,プログラム中心10-2)発症C3カ月後に初めて施行した視野検査では中心耳側上方の視野欠損が認められた.には軽快傾向となった(図3d)が,多少の靄の自覚が残存している.その後CPAMM発症C2カ月後に撮影した冠動脈血管造影(coronaryangiography:CAG)で多枝病変を指摘され,冠動脈バイパス手術を施行された.PAMM発症C3カ月後に初めて施行したCHumphrey静的視野(SITA-standard,プログラム中心C10-2)では中心耳側上方の視野欠損(図4)が認められた.CII考按PAMMの病変部位である網膜中間層(内顆粒層,外網状層)は網膜内循環,脈絡毛細血管板のいずれからも遠く,虚血の影響を受けやすい層であるため,主要血管の閉塞がなくても血流低下だけで虚血状態に陥る.発症機序からも臨床で遭遇する可能性が高く,11カ月の間でC5例経験したという報告もある3).PAMMは,網膜浅層を主座とする軟性白斑やCBRAOと比較するとより深い層に生じるため,網膜の色調はより淡く,辺縁もより不明瞭となる2).症例C2では左眼視神経乳頭近傍のCBRAOより,黄斑周辺のCPAMMのほうが淡く,辺縁不明瞭である(図3a).それに対応してCOCTでは,前者は網膜内層,後者は網膜中間層に高輝度変化(図3b)を呈する.症例C1のCOCTAではCOCTでの高輝度部に一致して深層網膜毛細血管網の血流シグナルの低下(図1c)が認められた一方で,FAでは深層毛細血管網の虚血を検出できないため,灌流不全の所見は得られなかった.症例C2のCOCTAでは視神経乳頭下耳側のCBRAOの領域は深層網膜毛細血管網の血流シグナル低下を示しているが,PAMMの領域においては血流シグナルの低下(図3c)は明らかでなかった.症例C2ではCFAを施行しなかった.PAMMにおけるCOCTA所見の経過報告としては,深層網膜毛細血管網の血流シグナルは発症後数日から数週間で回復することが報告されており4),症例C2においてCPAMMの領域に血流シグナル低下が認められなかったのは,発症後C7日経過して血流が回復したものと推定される.PAMMの視力予後は良好から高度の低下までさまざまであるが2),今回の症例では矯正視力自体は良好なものの,軽度視野欠損の自覚および静的視野検査での所見は残存した.Rahimyらによると,PAMMは特発性と続発性に分類される2).続発性CPAMMがCRVOやCRAO,糖尿病網膜症といった網膜血管疾患に伴う場合は,その網膜血管疾患の部分所見と位置づけられ,他の網膜所見を伴うため診断はつきやすいが,原因が特定されていない場合には高血圧や糖尿病,貧血といった全身疾患の検索が求められる.他方,続発性PAMMが外因性であり,かつ他の網膜所見を伴わない場合には,病歴聴取や全身疾患の検索によって初めてその原因が特定される.偏頭痛やアンフェタミン,カフェインや経口避妊薬といった薬剤,急性上気道炎やインフルエンザワクチン接種に加え2,5),最近ではCCOVID-19に伴うCPAMMも報告されている6).また,27人の心血管リスクの低い高血圧症患者とC24人の健常者を対象とした研究では,内顆粒層の菲薄化と外網状層の破壊として定義されるCPAMM後の変化が高血圧症患者のC88.9%で認められたと報告されており7),PAMMの病態が高血圧患者において非常に多くみられ,高血圧網膜症を含む高血圧患者における網膜微小循環の初期変化を示している可能性がある.PubMedと医中誌で「原発性アルドステロン症」と「PAMM」のC2単語を検索語句として検索したところ,該当論文がC0件であったことから,本症例C1はCPAMM診断を契機に原発性アルドステロン症が診断された初の症例である可能性がある.症例C1は著明な高血圧に患者本人が気づかずに生活しており,PAMMによる見えづらさを自覚して眼科を受診した結果,高血圧が判明し,内科を受診して原発性アルドステロン症,高コレステロール血症が発見されたことからも,PAMMを診断した際の全身的な原因検索の重要性が示唆される.血圧C230/111CmmHgは高血圧症の中でも最重度のCIII度高血圧(収縮期血圧C.180CmmHgまたは拡張期血圧C.110CmmHg)であり,慢性的に全身の血管に過大な負荷をかけ続け,高コレステロール血症とも相まって動脈硬化を促進し,脳卒中や虚血性心疾患といった生命予後に直結する疾患に罹患するリスクを高める.その一方で,高血圧緊急症を引き起こさない限り高血圧のみでは自覚症状が乏しく,健診や医療機関受診がないと長期間発見されない8).眼科ですべての網膜疾患患者に血液検査を行うのはあまり現実的ではないが,血圧測定は侵襲なく簡便に行うことができるため,未治療の高血圧症の早期発見に資することができると考えられる.本症例C2は心筋梗塞発症からC3週間で視覚症状が自覚されている.PAMMは網膜毛細血管の虚血であり,脳動脈瘤に対するコイル塞栓術やステント留置術後に発症したとの報告もある9).本症例C2は虚血性心疾患が先行しており,左室の血栓の一部がヘパリンやワーファリン投与後に遊離して微小血栓として網膜の毛細血管を塞栓した可能性と,ヘパリンやワーファリン投与によって他の動脈のプラークに付着した微小血栓が網膜まで至った可能性が疑われる.いずれにしても動脈硬化/虚血性心疾患がCPAMMの原因として矛盾ないといえ,PAMMが虚血性心疾患の発症ないし増悪を示唆している.ただし,脳血管疾患や虚血性心疾患それ自体ではなく,それらに対する血管内治療や抗血栓療法が副作用としてPAMMを誘発した可能性も否定できない.OCTの進歩によりCPAMMという病態が検出可能になったことによって,より病態が進行しCBRAOや網膜出血といった状態に至る前の軽度な段階で全身疾患を発見する契機が拡大した.PAMMが高血圧や虚血性心疾患と関連して発症することは発症機序の点からもまれではないと考えられるが,全身既往歴を聴取しないとそれら疾患を眼科医は把握できない場合も多い.PAMMなどの網膜虚血性病変を認めた際には,まず全身既往歴を聴取し,それでも当該病変を説明しうる既往歴がない場合には,血圧測定や状況によっては血液検査を含む対応を検討する必要がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)SarrafCD,CRahimyCE,CFawziCAACetal:ParacentralCacuteCmiddlemaculopathy:aCnewCvariantCofCacuteCmacularCneuroretinopathyCassociatedCwithCretinalCcapillaryCisch-emia.JAMAOphthalmolC131:1275-1287,C20132)RahimyCE,CKuehleweinCL,CSaddaCSRCetal:ParacentralCacutemiddlemaculopathy:whatweknewthenandwhatweknownow.RetinaC35:1921-1930,C20153)小笠原千尋,建林美佐子,外山裕志ほか:ParacentralCacuteCmiddlemaculopathyを呈したC5例.臨眼72:529-536,C20184)伊藤潤,原千佳子,若林卓ほか:光干渉断層血管撮影にて血流改善が観察できた網膜中心動脈閉塞症による一過性網膜虚血に伴うCparacentralacutemiddlemaculopathyCの1例.日眼会誌125:732-737,C20215)ChenX,RahimyE,SergottRCetal:SpectrumofretinalvasculardiseasesassociatedwithparacentralacutemiddleCmaculopathy.AmJOphthalmolC160:26-34,C20156)TeoKY,InvernizziA,StaurenghiGetal:COVID-19-re-latedCretinalCmicro-vasculopathy-aCreviewCofCcurrentCevi-dence.AmJOphthalmolC235:98-110,C20227)BurnashevaMA,MaltsevDS,KulikovANetal:Associa-tionCofCchronicCparacentralCacuteCmiddleCmaculopathyClesionswithhypertension.OphthalmolRetinaC4:504-509,C20208)GauerR:SevereasymptomaticChypertension:evaluationCandtreatment.AmFamPhysicianC95:492-500,C20179)林孝彰,飯田由佳:未破裂内頸動脈瘤に対するフローダイバーターステント留置術後に網膜内層虚血に伴うCpara-centralacutemiddlemaculopathyを発症したC1例.あたらしい眼科C39:1281-1287,C2022***

Relentless Placoid Chorioretinitis のマルチモーダル イメージングの有用性

2025年4月30日 水曜日

《原著》あたらしい眼科42(4):483.488,2025cRelentlessPlacoidChorioretinitisのマルチモーダルイメージングの有用性我謝朱莉寺尾信宏大城綾乃古泉英貴琉球大学大学院医学研究科眼科学教室CTheUtilityofMultimodalImaginginaCaseofRelentlessPlacoidChorioretinitisAkariGaja,NobuhiroTerao,AyanoOshiroandHidekiKoizumiCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyusC目的:Relentlessplacoidchorioretinitis(RPC)は多数の斑状病巣を広範囲に生じ,再発を長期に繰り返す疾患である.今回,RPCの臨床経過をマルチモーダルイメージングにより評価した.症例:17歳,女性.視力は右眼(1.0),左眼(1.2).両眼に後極から周辺部へ多数の色素を伴う斑状の瘢痕病変と,活動性病変を示唆する黄白色滲出斑を認めた.初診時よりC4カ月後,右眼の黄斑部および周辺部に複数の黄白色滲出斑の再発を認め,視力は右眼(0.05)に低下した.中心窩の黄白色滲出斑は,光干渉断層計(OCT)では網膜滲出性変化および脈絡膜肥厚を,光干渉断層血管撮影(OCTA)では脈絡膜毛細血管板の灌流不全を,マイクロペリメータ微小視野計では網膜感度低下を認めた.周辺部の黄白色滲出斑は超広角走査レーザー検眼鏡を用いた眼底自発蛍光(FAF)では淡い過蛍光を呈した.結論:RPCの活動性評価には,黄斑部はOCT,OCTA,微小視野計,周辺部は広角CFAFが有用であった.CPurpose:Relentlessplacoidchorioretinitis(RPC)isadiseasethatpresentswithnumerousplacoidlesionsandrecurringClesionsCoverCaClong-termCperiod.CInCthisCstudy,CweCevaluatedCtheCclinicalCcourseCinCaCcaseCofCRPCCusingCmultimodalimaging.Case:A17-year-oldfemalepresentedwithRPC.FunduscopicexaminationshowednumerousplacoidClesionsCthatCappearedCtoCbeCmixedCwithCfreshCandColdCscarClesionsCinCbothCeyes.CFourCmonthsClater,CfreshClesionswithmultipleyellowish-whiteplacoidexudatesappearedfromtheposteriorpoletotheperiphery.Opticalcoherencetomography(OCT)examinationofthefreshlesionsinthefovearevealedretinalexudativechangesandchoroidalCthickening.COCTangiography(OCTA)revealedC.owCreductionCwithinCtheCchoriocapillaris,CandCmicrope-rimetryshowedreducedretinalsensitivity.Wide-anglefundusauto.uorescence(FAF)ofperipheralfreshlesionsshowedhyper.uorescence.Conclusion:MultimodalimagingsuchasOCT,OCTA,microperimetry,andwide-angleFAFweresuitableforassessingRPCstatus.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(4):483.488,C2025〕Keywords:relentlessplacoidchorioretinitis,マルチモーダルイメージング,光干渉断層計,光干渉断層血管撮影,眼底自発蛍光.relentlessplacoidchorioretinitis,multimodalimaging,opticalcoherencetomography,opticalcoher-encetomographyangiography,auto.uorescence.CI緒言RelentlessCplacoidchorioretinitis(RPC)は,Jonesら1)によりC2000年に提唱された新しい疾患概念であり,急性後部多発性斑状色素上皮症(acuteCposteriorCmultifocalCplacoidpigmentCepitheliopathy:APMPPE)や地図状脈絡膜炎と類似の臨床所見,蛍光眼底造影所見を呈する非感染性ぶどう膜炎である1,2).RPCは,前眼部に炎症を伴い,病変が黄斑部から周辺部まで広範囲に散在し,長期にわたり再発を繰り返す点1,2)でCAPMPPEや地図状脈絡膜炎とは異なる.RPCは,一般的には色素沈着を伴う瘢痕病変と新しい活動性の黄白色病変が共存することが多い.黄白色滲出斑はフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)では蛍光の逆転現象を示し,病状の活動性を示唆する重要な所見〔別刷請求先〕我謝朱莉:〒901-2720沖縄県宜野湾市喜友名C1076琉球大学大学院医学研究科眼科学教室Reprintrequests:AkariGaja,M.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyue,1076Kiyuna,Ginowan,Okinawa901-2720,JAPANCabcdef図1初診時の右眼各種画像所見a:カラー眼底写真では,黄斑部を中心に色素を伴う瘢痕病巣および黄白色滲出斑(C.)を認める.Cb,c:フルオレセイン蛍光造影(b:早期,Cc:後期)では,黄白色滲出斑は蛍光の逆転現象(C.)を認める.Cd:OCT(水平断)では,瘢痕病巣に一致する網膜外層障害を認める(C.).e:OCTA(脈絡膜毛細血管板:CC)では,黄白色滲出斑に一致する灌流不全を認める(C.).f:微小視野計では,瘢痕病巣に一致する網膜視感度の低下を認める.として知られているが,病変は黄斑部だけでなく,しばしば周辺部にも存在するため,再発や治療反応の評価を確実に行うためには広角の蛍光眼底造影検査が使用される.今回,筆者らはCRPCの黄斑部および周辺部の臨床経過について,マルチモーダルイメージングを用いて評価したので報告する.CII症例患者:17歳,女性.既往歴:特記事項なし.家族歴:父,父方の祖母:緑内障.現病歴:1週間継続する側頭部痛および左眼の眼痛,充血を主訴に近医を受診,虹彩炎および両眼底に多数の滲出斑を認め,ぶどう膜炎と診断され,0.1%ベタメタゾン点眼およびプレドニゾロン(prednisolone:PSL)30Cmg内服を開始され,1カ月後に琉球大学病院眼科へ精査加療目的に紹介となった.経過:初診時,視力は右眼(1.0),左眼(1.2),眼圧は右眼C23.0CmmHg,左眼C24.0CmmHg.前眼部に炎症所見は認めなかった.眼底には,黄斑部および周辺部に広範に多数の色素を伴う瘢痕病巣および黄白色滲出斑を認めた(図1a,2a,b).FAでは,黄白色滲出斑は蛍光の逆転現象を,瘢痕病変はCwindowdefectに伴う過蛍光所見を,色素沈着部は低蛍光所見を呈した(図1b,c).インドシアニングリーン蛍光造影では,早期から後期にかけ広範囲にわたる多数の低蛍光斑を認めた.光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)では,活動性を認める黄白色滲出斑は網膜下に高輝度の滲出性変化を,瘢痕病巣は網膜外層に欠損や不明瞭化を認めた(図1d).光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)では,活動性を認める黄白色滲出斑に一致して脈絡膜毛細血管板(choriocapillaris:CC)レベルでの灌流不全を認めた(図1e).微小視野計では,色素沈着の強い瘢痕萎縮病巣に一致して網膜感度の低下を認めた(図1f).超広角走査レーザー検眼鏡を用いた眼底自発蛍光(fundusauto.uorescence:FAF)では,後極から周辺部にかけて,ほとんどの病変は低蛍光を示していたが,黄斑部から周辺部の活動性病変を示す黄白色滲出斑は淡い過蛍光所見を呈した(図2c,d).APMPPEや地図状脈絡膜炎,RPCを鑑別に考え,前医でのステロイド治療はいったん中止として,再発がないか注意深く経過観察した.初診時よりC4カ月後,急激な右眼の視力低下を自覚して再診,視力は右眼(0.05)に低下し,右眼中心窩近傍(図3a)および周辺部に複数の黄白色滲出性病変のab図2初診時,走査型レーザーを用いた眼底撮影および眼底自発蛍光(FAF)a,b:広角眼底撮影(Ca:右眼,Cb:左眼)では,多数の色素を伴う斑状の瘢痕病巣と周辺部に黄白色滲出斑を認める(C.).c,d:広角CFAF(Cc:右眼,d:左眼)では,周辺部の活動性病変を示す黄白色滲出斑に一致して淡い過蛍光所見を示す(C.).出現を認めた(図4a).右眼の中心窩を含む活動性の黄白色滲出斑は,OCTでは著明な網膜滲出性変化および限局的な脈絡膜肥厚を認め(図3b),OCTAではCCCレベルでの灌流不全を認めた(図3c).微小視野計では,活動性病変に一致した右眼の網膜感度の低下を認めた(図3d).広角CFAFでは,右眼底周辺部に境界不鮮明な黄白色滲出斑(図4a)に一致した淡い過蛍光斑の出現を認めた(図4b).RPCの急性増悪と診断し,トリアムシノロンアセトニドTenon.下注射およびステロイドパルス療法としてメチルプレドニゾロンC1,000Cmg/日をC3日間行い,後療法としてCPSL60Cmgから開始し,漸減した.2カ月後,視力は右眼(1.0)に改善した.右眼の黄斑部の黄白色滲出斑は,色素を伴う境界明瞭な病巣となり(図5a),OCTでは右眼の網膜滲出性変化および脈絡膜肥厚の改善を(図5b),OCTAでは右眼黄斑部CCCレベルでの灌流不全の改善を(図5c),微小視野計では右眼中心窩の網膜感度の改善を認めた(図5d).広角CFAFでは右眼底周辺部の淡い過蛍光斑は消失した.その後C3年間再発を認めず,視力は両眼(1.0)を維持している.現在は再発予防のため,PSL10Cmgおよびシクロスポリン150Cmgを内服し,マルチモーダルイメージングを用いて黄斑部および周辺部の再発の有無を定期的に評価している.III考按RPCは,おもに脈絡膜,網膜色素上皮に病変を生じるまれな両眼性の非感染ぶどう膜炎であり,APMPPEや地図状脈絡膜炎と非常に似た症状を呈することが知られている.近年,画像検査機器の性能向上により,RPCの特徴的な臨床的所見が明らかになってきた.蛍光眼底造影検査では活動性病変は初期で低蛍光,後期で過蛍光所見を示す,いわゆる蛍光の逆転現象が特徴である.OCTでは活動性病変は網膜層に高反射病巣を伴う漿液性網膜.離などを呈する3).これらの臨床的特徴はCAPMPPCE1,2)や地図状脈絡膜炎1,2)にも認められるため,診断に難渋することがある.鑑別にはCRPCの特徴的所見や臨床経過を把握することが重要であり,後極から赤道部を超えて病変が及ぶ2,4)こと,前眼部炎症2)を生じること,再発を長期に繰り返し,瘢痕病変と活動性病変が混在2)していること,50個以上の病変2,4)が観察されることなどの特徴があればCRPCと診断する.本症例では,初診時には前医で投与されていたステロイド点眼,内服の使用により前眼部炎症は明らかではなかったが,活動性病変以外にも両眼に後極から赤道部周辺まで多数の発症時期の異なる瘢痕性病変を認めていたことから,潜在性に病状が進行していた可acdb図3再発時の各種画像所見a:カラー眼底写真では,中心窩近傍に黄白色滲出性病変を認める().b:OCT(水平断)では,中心窩に網膜滲出性変化および脈絡膜肥厚(.)を認める.c:OCTA(脈絡膜毛細血管板)では,黄白色滲出斑に一致する灌流不全を認める(.).d:微小視野計では,黄白色滲出斑に一致する網膜感度の低下を認める.Cab図4再発時の広角眼底撮影および広角FAFa:広角眼底撮影では,周辺部に新たな黄白色滲出性病変(.)を認める.b:広角CFAFでは,黄白色滲出斑に一致する淡い過蛍光斑(.)を認める.能性が高いと判断した.さらに当院初診時からC4カ月後には地図状脈絡膜炎などと鑑別に難渋したが,臨床的特徴,経黄斑部を含む活動性病変の再発を認めた.それ以降長期にわ過,その他の検査結果からCRPCと診断した.たり再発を繰り返しているわけではないため,APMPPEや初診時より,黄斑部はCOCT,OCTA,微小視野計,周辺cd図5治療後3カ月の各種画像所見a:カラー眼底写真では,中心窩近傍に認めた黄白色滲出斑は消失し,軽度の色素沈着を伴う瘢痕病巣を認める.Cb:OCT(水平断)では,網膜滲出性変化および脈絡膜肥厚の改善を認める.Cc:OCTA(CC)では,黄白色滲出斑部位における灌流不全の改善を認めた.d:微小視野計では,中心窩の網膜感度の改善を認めた.部はカラー広角眼底撮影,広角CFAFなどを使用し,マルチモーダルイメージングを用いて病状の活動性を評価した.CAmer3)らは,RPCの活動期にCOCTでの網膜下滲出性病変を示したと報告しており,本症例においても再燃時に黄斑部のCOCTにて網膜下滲出性変化や脈絡膜肥厚を認め,既報と同様であった.また,ステロイドパルス療法後には網膜下滲出性変化や脈絡膜肥厚は改善を認め,OCTでの評価は治療効果判定にも有用であった.CKlufasら5)は,APMPPEをはじめ,その類縁疾患であるRPCおよびCpersistentCplacoidCmaculopathyのCOCTAを評価し,CCにおける灌流不全をC96%に認めたと報告している.彼らはCCCの灌流不全が蛍光眼底造影での早期での低蛍光領域と密接に関連していたこと,さらに治療や経過観察によりCCCの灌流不全が改善されたことから,脈絡膜内層が病変の首座である可能性や,その二次的な変化として網膜外層障害が生じることを示唆した.本症例においても,活動性病変ではCCCレベルでの灌流不全が著明であった.ステロイド治療後,黄斑部のCCCレベルでの灌流不全は速やかに改善した.これらの結果から,非侵襲的に繰り返し評価が可能なCOCTAは,RPCにおける疾患の鑑別,黄斑部の経過観察,治療におけるモニタリングに非常に有用であると考えられた.微小視野計は眼底像を確認しながら,黄斑部における網膜感度を測定する機器である.本症例では再発時には活動性病変に一致した網膜感度の低下を認めた.治療後には網膜感度低下領域は速やかに改善し,それに伴い視力も改善した.これらは,カラー眼底写真などでは判断が困難な微細な病状の活動性変化を微小視野計が反映できる可能性を示唆する結果であり,OCTやCOCTAなどから得られた網膜構造と微小視野計で測定した網膜感度を眼底画像上で重ね合わせることにより,網膜構造と網膜機能の関係をより正確に解析できる可能性があり,治療効果判定にはとくに有用であると考える.広角CFAFでは,初診時および再発時に周辺部に活動性変化と考えられる淡い過蛍光斑が認められ,自覚症状が乏しい周辺部領域において,経過中に病状が変化していることが確認可能であった.CYehら6)は,FAFを用いて,後極からその周辺部に広範囲に多数の低蛍光所見を示すことをCRPCの特徴として報告している.本症例においても既報と同様に,周辺部に多数の低蛍光斑を認めていたが,蛍光眼底造影検査で漏出を認める活動性の黄白色滲出斑は,広角CFAFでは淡い過蛍光斑を呈しており,周辺部の活動性病変を評価するのに非常に有用である可能性が示された.RPCは長い活動期を有し,再発を繰り返すことにより徐々に視力低下をきたすと報告1,7)されている.しかし,RPCは明確な治療方針が確立しておらず4),ステロイド単独加療だけでは再発をきたす可能性が報告されている1).再発予防には免疫抑制薬4),TNF阻害薬8)などの併用が有効との報告がなされており,活動性評価に準じた治療方針の変更が必要になる.黄斑部評価は,長期視力予後を保つために重要であり,OCT,OCTA,微小視野計は病変の早期発見,治療効果判定にとくに有用であり,さらに長期的な視力予後改善につながる可能性がある.また,非侵襲検査である広角CFAFは,自覚症状を伴いにくい周辺部の新規病変を早期に発見することが可能であり,周辺部の再発所見に引き続き生じる可能性がある黄斑部病変の再発を予防できる可能性がある.APMPPE,地図状脈絡膜症,Vogt-小柳-原田病などのぶどう膜炎全般に活動性や治療評価にマルチモーダルイメージングの重要性が多く報告されているが,RPCの活動性,治療評価においてもマルチモーダルイメージグ,とくに黄斑部病変にはCOCT,OCTA,微小視野計を組み合わせて評価することは有用であり,今後視機能評価にも応用できる可能性がある.周辺部病変には広角CFAFによる評価が有用であり,とくに経過観察時においては,広範囲の活動性病変を非侵襲的に評価できるため,再発を頻繁に繰り返すCRPCでは,自覚症状の乏しい再発所見を見逃さずに確認できる有効な検査といえる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)JonesCBE,CJampolCLM,CYannuzziCLACetal:Relentlessplacoidchorioretinitis:anewentityoranunusualvariantofserpiginouschorioretinitis?ArchOphthalmolC118:931-938,C20002)RavenML,RingeisenAL,YonekawaYetal:Multi-mod-alCimagingCandCanatomicCclassi.cationCofCtheCwhiteCdotCsyndromes.IntJRetinaVitreousC3:12,C20173)AmerCR,CFlorescuT:OpticalCcoherenceCtomographyCinCrelentlessCplacoidCchorioretinitis.CClinCExpCOphthalmolC36:388-390,C20084)UrakiCT,CNambaCK,CMizuuchiCKCetal:CyclosporineCandCprednisolonecombinationtherapyasapotentialtherapeu-ticCstrategyCforCrelentlessCplacoidCchorioretinitis.CAmJOphthalmolCaseRepC14:87-91,C20195)KlufasCMA,CPhasukkijwatanaCN,CIafeCNACetal:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCrevealsCchoriocapil-larisC.owCreductionCinCplacoidCchorioretinitis.COphthalmolCRetinaC1:77-91,C20176)YehCS,CForooghianCF,CWongCWTCetal:FundusCauto.u-orescenceimagingofthewhitedotsyndromes.ArchOph-thalmolC128:46-56,C20107)ObradoviC.L,CJovanovi.S,CPetrovi.NCetal:RelentlessCplacoidCchorioretinitis-ACcaseCreport.CSrpCArhCCelokCLekC144:527-530,C20168)AsanoCS,CTanakaCR,CKawashimaCHCetal:RelentlessCplac-oidchorioretinitis:aCcaseCseriesCofCsuccessfulCtaperingCofCsystemicimmunosuppressantsachievedwithadalimumab.CaseRepOphthalmolC10:145-152,C2019***

半視野異常を有する初期緑内障眼における網膜神経節細胞 関連層厚の非対称性の比較

2024年3月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科41(3):353.359,2024c半視野異常を有する初期緑内障眼における網膜神経節細胞関連層厚の非対称性の比較三宅美鈴*1山下力*1,2荒木俊介*1,2後藤克聡*1水上菜美*1大内達央*1春石和子*1,2家木良彰*1三木淳司*1,2桐生純一*1*1川崎医科大学眼科学1教室*2川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科CComparisonofAsymmetricRetinalGanglionCell-RelatedLayerThicknessinEarlyGlaucomawithSuperiororInferiorVisualHemi.eldDefectsMisuzuMiyake1),TsutomuYamashita1,2)C,SyunsukeAraki1,2)C,KatsutoshiGoto1),NamiMizukami1),TatsuhiroOhuchi1),KazukoHaruishi1),YoshiakiIeki1),AtsushiMiki1,2)CandJunichiKiryu1)1)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,2)DepartmentofOrthoptics,FacultyofRehabilitation,KawasakiUniversityofMedicalWelfareC目的:上方または下方視野障害を有する初期緑内障眼において,視野障害パターンの違いがCOCTパラメータの緑内障検出力に及ぼす影響について検討した.対象および方法:対象は初期緑内障(earlyglaucoma:EG)群C133眼(上半視野異常群C63眼,下半視野異常群C70眼),正常対照群C70眼である.RTVue-100を用い,乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚,網膜神経節細胞複合体(GCC)厚を測定した.上半視野異常群と下半視野異常群におけるCcpRNFLおよびCGCC厚パラメータの緑内障検出力を検討するため,受信者動作特性曲線下面積(AUC)を算出した.結果:上半視野異常群のCAUCにおいては下方CcpRNFL厚(0.997)と下方CGCC厚(0.973)は同等であった.下半視野異常群では上方CcpRNFL厚(0.990)が上方CGCC厚(0.901)よりCAUCが有意に高かった(p=0.002).結論:上下いずれかの半視野異常を有するCEG眼は,視野障害部位によってCRGC障害パターンが異なる可能性がある.CPurpose:ToCinvestigateCtheCin.uenceCofCdi.erentCpatternsCofCvisualC.eldCdefectsConCtheCabilityCofCopticalCcoherencetomography(OCT)parametersCtoCdetectCglaucomaCinCearly-stageCglaucomatousCeyesCwithCsuperiorCorCinferiorhemi.eld.elddefects.SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved133eyeswithearly-stageglaucoma(63eyesCwithCisolatedCsuperiorChemi.eldCdefects,CandC70CeyesCwithCisolatedCinferiorChemi.elddefects)andC70CnormalCcontroleyesthatunderwentRTVue-100OCT.Theareaunderthereceiveroperatingcharacteristiccurve(AUC)CwasCcalculatedCtoCdetermineCtheCabilityCtoCdiagnoseCtheCcircumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer(cpRNFL)andCganglionCcellcomplex(GCC)thickness.CResults:InCtheCsuperiorChemi.eldCdefectCglaucomaCgroup,CtheCparameterCforCdiscriminatingCnormalCeyesCfromCglaucomatousCeyesCwasCtheCinferiorCcpRNFLthickness(0.997)andCinferiorCGCCthickness(0.973)C.CForCdiagnosingCinferiorChemi.eldCdefectCglaucoma,CtheCAUCCofCsuperiorCGCCCthickness(0.901)wasCsigni.cantlyClowerCthanCthatCofCtheCsuperiorCcpRNFLthickness(0.990,Cp=0.002)C.CConclusion:TheabilityCofCtheCGCCCandCcpRNFLCthicknessCparametersCtoCdiagnoseCearlyCglaucomaCdi.eredCbetweenCglaucomatousCeyeswithsuperiororinferiorhemi.eldvisual.elddefects.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C41(3):353.359,C2024〕Keywords:半視野異常,初期緑内障,光干渉断層計,網膜神経節細胞複合体,乳頭周囲網膜神経線維層.Chemi.elddefect,earlyglaucoma,opticalcoherencetomography,ganglioncellcomplex,circumpapillaryretinalCnerve.berlayer.Cはじめに(retinalnerve.berlayer:RNFL)の菲薄化や視神経乳頭陥緑内障は,進行性網膜神経節細胞死による網膜神経線維層凹拡大などの構造的異常と,それに対応した視野異常を生じ〔別刷請求先〕三宅美鈴:〒701-0192岡山県倉敷市松島C577川崎医科大学眼科学C1教室Reprintrequests:MisuzuMiyake,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki,Okayama701-0192,JAPANCる疾患である1).視野異常が検出される緑内障眼では,すでに網膜全体の約C50%の網膜神経節細胞(retinalCganglioncell:RGC)が喪失しているとされ,緑内障性の視神経および網膜構造異常の早期検出が重要である.初期緑内障眼における視野障害は,RNFLの走行の特徴に伴い,水平線を保ち上下いずれかの半側視野にのみ異常が検出されることが多い.近年,初期緑内障眼の下方視野障害は周辺領域で浅く広い視野障害であるのに対して,上方視野障害は中心領域で深く局所的な視野障害が多いといった半網膜障害の位置によって視野障害パターンの違いがあることなどが報告されている2).初期緑内障眼における視神経乳頭や網膜神経線維層の構造的変化を捉えるうえで,スペクトラルドメインCOCT(spec-traldomain-OCT:SD-OCT)による乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryretinalnerve.berlayer:cpRNFL)厚や網膜神経節細胞複合体(ganglionCcellcomplex:GCC)厚の評価は有用であり,これらは相補的に評価すべきであると報告されている3).しかし,初期緑内障眼の視野障害パターンの違いがCOCTパラメータの緑内障検出力に影響するかを検討した報告は少ない.GCC厚の測定は黄斑部CRGC障害を検出するために有用なスキャンパターンであるが,中心窩は通常網膜の水平子午線より下に位置するため,網膜神経線維層束の非対称な分布が網膜の上と下で生じることが多い.したがって,GCCをはじめとするCOCTパラメータの診断能は,半網膜障害の位置によって異なる可能性がある.そこで,本研究は上方または下方視野障害を有する初期緑内障眼のCcpRNFL厚およびCGCC厚の緑内障検出力を分析することを目的とした.さらに,正常対照眼と比較して,半視野異常を有する初期緑内障眼の視野正常側におけるCOCTパラメータについても評価したCI対象および方法対象はC2018年C4月.2021年C5月に川崎医科大学附属病院眼科において,広義原発開放隅角緑内障と診断された症例とした.健常眼は当科受診した患者のなかで,年齢(C±2歳以内)と屈折異常(C±1D以内)を本研究の緑内障眼と適合させた症例を正常対照として抽出した.対象のデータを電子カルテから収集し,後ろ向きに解析を行った.本研究は,川崎医科大学・同附属病院倫理委員会の承認を受けた(承認番号:5331-00).研究の実施については川崎医科大学・同附属病院のホームページに掲載し,情報開示を行った.本研究の対象は視力検査,他覚的屈折力検査,眼圧検査,細隙灯顕微鏡検査,眼底検査,SD-OCT検査(RTVue-100,Optovue社)とCHumphrey静的視野計(CarlCZeissCMeditec社)による中心C30-2SITA-standardを行った者とした.本研究の対象の選択基準は,1)最高矯正視力がC0.8以上,2)球面度数は.6.00D.+3.00D,乱視度数はC3D以下,3)OCTと視野検査を同日に測定した症例とした.緑内障患者または正常対照者の両眼が本研究の選択基準を満たしている場合は,片眼のみを無作為に選択した.本研究における初期緑内障の定義は,緑内障専門医による検眼鏡および眼底写真を用いた観察において,緑内障性視神経乳頭所見やCRNFL欠損所見などの緑内障を示唆する異常があり,Humphrey静的視野計による視野検査結果で,緑内障性視野障害を有するものとした.緑内障以外の眼底異常,白内障手術を含む内眼手術やレーザー治療の既往のある眼は除外した.Humphrey静的視野計(中心C30-2CSITA-standard)でCAnderson-Patellaの基準である1)パターン偏差確率プロットで,p<5%の点がC3個以上隣接して存在し,かつそのうちC1点がCp<1%,2)パターン標準偏差(patternCstandarddeviation:PSD)がCp<5%,3)緑内障半視野テストが正常範囲外を満たしたうえで,Anderson-Hodappの病期分類によるCmeandaviation(MD)値がC.6CdBより大きい初期緑内障眼のうち,上半視野側または下半視野側のみに視野異常を呈した症例を対象とし,Anderson-Patellaの基準1)を満たした半視野側を異常視野側,満たさない側を非異常視野側と定義した.視野検査は固視不良C20%未満,偽陽性C15%未満,偽陰性がC15%未満の信頼性の高い結果のみを採用した.SD-OCTの測定はCRTVue-100バージョンC4.0を用いて,GCC,ONH,3DDiscのスキャンプロトコルを使用した.検討項目は,視神経乳頭中心から直径C3.45Cmm部位のCcpRNFL厚パラメータ(平均,上方,下方,16分割セクター),黄斑部直径C6Cmm範囲内のCGCC厚パラメータ(平均,上方,下方,CfocalClossvolume:FLV,globalClossvolume:GLV)とした.FLVおよびCGLVは,年齢別正常データベースとの差をもとにCGCC厚の菲薄化をパーセント表示するプログラムである.FLVはCGCCのスキャンエリアにおける局所的な菲薄化,GLVは全体の菲薄化を意味するパラメータとされている.cpRNFLおよびCGCC厚の非対称性パラメータ(asymmetryratio)として,測定領域の厚さの比(異常視野側/非異常視野側)の算出を行った.SD-OCT測定結果においては,signalCstrengthindexがC45以上のデータを採用し,解析画像の欠損やセグメンテーションエラーのないデータを採用した.統計学的検討は,正常対照眼と上半視野異常群および下半視野異常群のパラメータの比較は,Kruskal-Wallis検定を用い,そこで有意差が得られた場合はCSche.e多重比較法を行った.多重比較の補正はCBonferroni法によって行った.受信者動作特性曲線下面積(areaCunderCtheCreceiverCoper-atingcurve:AUC)を用い,緑内障検出力を評価した.AUCの比較はCMedCalc(MedCalcSoftwareInc,Mariaker-ke,Belgium)を用いた.統計学的分析は,統計解析ソフト表1患者背景正常対照群上半視野異常群下半視野異常群C*Cpp†Cp‡眼数C70C63C70年齢(歳)C64.8±6.0C66.0±11.7C65.1±12.6C0.617C0.405C0.913男:女35:3C528:3C536:3C4C0.603C1.000C0.488屈折度数(D)C.0.7±1.5C.1.3±2.3C.1.1±2.3C0.278C0.400C0.974Cmeandeviation(dB)C0.4±1.3C.2.5±1.8C.2.3±1.6C0.001C0.001C0.401patternstandarddeviation(dB)C1.6±0.3C5.7±3.0C4.8±2.8C0.001C0.001C0.081visual.eldindex(%)C99.6±0.7C91.3±6.5C94.7±3.9C0.001C0.001C0.007pvalue*=p-valuesofdi.erencesbetweenthenormalgroupandtheupperhemi.eldglaucomagroup.pvalueC†=p-valuesofdi.erencesbetweenthenormalgroupandthelowerhemi.eldglaucomagroup.pvalueC‡=p-valuesofdi.erencesbetweentheupperhemi.eldglaucomagroupandthelowerhemi.eldglaucomagroup.表2各群におけるOCTパラメータ比較正常対照群上半視野異常群下半視野異常群C*Cpp†Cp‡cpRNFLparameters(Cμm)AverageC107.5±6.4C80.8±8.3C84.0±8.9C0.001C0.001C0.373SuperiorC105.9±7.1C85.2±10.5C77.4±9.2C0.001C0.001C0.010InferiorC109.1±7.2C76.1±11.1C90.7±10.3C0.001C0.001C0.001TUC1C76.8±8.7C62.8±14.2C56.7±14.5C0.001C0.001C0.063TUC2C102.2±12.4C82.9±19.3C70.9±13.3C0.001C0.001C0.001STC2C136.4±14.8C105.3±24.2C87.7±16.8C0.001C0.001C0.001STC1C140.9±16.6C106.0±21.6C89.7±15.5C0.001C0.001C0.002SNC1C117.3±17.3C95.4±18.1C85.8±16.6C0.001C0.001C0.017SNC2C119.2±13.3C95.6±15.2C96.4±14.9C0.001C0.001C0.962NUC2C91.1±11.3C73.9±13.5C76.9±15.8C0.001C0.001C0.687NUC1C63.9±8.3C54.3±8.9C56.1±11.6C0.001C0.001C0.567NLC1C61.3±8.4C52.1±7.1C54.5±9.7C0.001C0.001C0.311NLC2C80.1±10.8C67.0±11.9C70.8±13.6C0.001C0.001C0.243INC2C116.9±13.0C93.9±16.2C99.2±14.9C0.001C0.001C0.233INC1C138.9±17.8C96.7±17.7C112.6±21.1C0.001C0.001C0.001ITC1C164.6±15.2C95.6±17.8C131.1±23.8C0.001C0.001C0.001ITC2C148.5±18.9C85.0±18.1C117.6±23.7C0.001C0.001C0.001TLC2C93.0±13.7C64.0±14.5C79.4±15.5C0.001C0.001C0.001TLC1C68.5±7.0C56.1±10.6C59.5±11.2C0.001C0.001C0.327AsymmetryRatioC0.98±0.07C0.91±0.11C0.86±0.09C0.001C0.001C0.028CGCCparametersAverage(Cμm)C96.4±5.6C75.7±7.5C81.8±9.4C0.001C0.001C0.006Superior(Cμm)C94.5±12.4C81.8±8.3C78.5±10.2C0.001C0.001C0.420Inferior(Cμm)C96.5±5.8C69.5±11.0C84.2±13.1C0.001C0.001C0.001AsymmetryRatioC0.99±0.06C0.86±0.10C0.93±0.10C0.001C0.002C0.004FLV(%)C0.4±0.3C7.8±4.6C5.2±3.4C0.001C0.001C0.039GLV(%)C3.6±2.8C21.8±7.2C16.5±8.4C0.001C0.001C0.016pvalue*=p-valuesofdi.erencesbetweenthenormalgroupandtheupperhemi.eldglaucomagroup.pvalueC†=p-valuesofdi.erencesbetweenthenormalgroupandthelowerhemi.eldglaucomagroup.pvalueC‡=p-valuesofdi.erencesbetweentheupperhemi.eldglaucomagroupandthelowerhemi.eldglaucomagroup.cpRNFL:circumpapillaryretinalnerve.berlayer,TU:temporalupper,ST:superiortemporal,SN:superiornasal,NU:CnasalCupper,NL:nasalClower,IN:inferiorCnasal,IT:inferiorCtemporal,TL:temporalClower,GCC:ganglionCcellCcomplex,FLV:focallossvolume,GLV:globallossvolume.CSPSSCStatistics23.0(SPSSJapan)を使用した.危険率C5%未満を統計学的に有意とした.CII結果上半視野異常群C63眼,下半視野異常群C70眼,正常対照表3各OCTパラメータの緑内障検出力正常対照群Cvs.上半視野異常群C正常対照群Cvs.下半視野異常群CAUCCCuto.CSensitivityCSpeci.cityCpAUCCCuto.CSensitivityCSpeci.cityCpCcpRNFLparametersAverageC0.998≦95C98.4C97.1C0.001C0.985≦99C95.7C94.2C0.001SuperiorC0.947≦97C85.7C89.9C0.001C0.990≦92C97.1C100C0.001InferiorC0.997≦92C96.8C98.6C0.001C0.923≦101C82.9C90.0C0.001TUC1C0.795≦67C65.1C91.3C0.001C0.884≦64C78.6C97.1C0.001TUC2C0.795≦90C65.1C84.1C0.001C0.953≦85C82.9C92.8C0.001STC2C0.863≦124C81.0C78.3C0.001C0.979≦112C91.4C95.7C0.001STC1C0.901≦126C84.1C84.1C0.001C0.985≦117C98.6C94.2C0.001SNC1C0.833≦106C76.2C71.0C0.001C0.909≦98C80.0C89.9C0.001SNC2C0.883≦109C81.0C78.3C0.001C0.870≦109C81.4C78.3C0.001NUC2C0.833≦81C73.0C81.2C0.001C0.790≦84C72.9C73.9C0.001NUC1C0.789≦60C77.8C66.7C0.001C0.724≦60C67.1C66.7C0.001NLC1C0.792≦58C84.1C61.0C0.001C0.706≦56C65.7C66.7C0.001NLC2C0.802≦75C81.0C66.7C0.001C0.715≦75C67.1C66.7C0.001INC2C0.858≦102C73.0C87.0C0.001C0.809≦109C77.1C75.4C0.001INC1C0.951≦118C87.3C87.0C0.001C0.825≦120C71.4C87.0C0.001ITC1C0.999≦133C98.4C100C0.001C0.879≦148C75.7C87.0C0.001ITC2C0.980≦110C95.2C98.6C0.001C0.855≦129C71.4C85.5C0.001TLC2C0.928≦79C87.3C88.4C0.001C0.766≦87C74.3C66.7C0.001TLC1C0.833≦62C71.4C84.1C0.001C0.764≦61C65.7C91.3C0.001CAsymmetryRatioC0.821≦0.97C73.0C85.6C0.001C0.861≦0.92C81.4C88.4C0.001CGCCparametersAverageC0.990≦87C95.2C100C0.001C0.913≦90C81.4C90.0C0.001SuperiorC0.902≦88C79.4C91.3C0.001C0.901≦88C81.4C91.3C0.001InferiorC0.973≦86C95.2C97.1C0.001C0.834≦89C70.0C90.0C0.001CAsymmetryCRatioC0.864≦0.94C77.8C97.1C0.001C0.701≦0.97C68.6C69.6C0.001FLVC0.983>C1.5C95.2C98.6C0.001C0.967>C1.1C91.4C95.7C0.001GLVC0.991>C11.5C96.8C100C0.001C0.952>C7.6C90.0C89.9C0.001cpRNFL:circumpapillaryCretinalCnerveC.berClayer,TU:temporalCupper,ST:superiorCtemporal,SN:superiorCnasal,NU:nasalupper,NL:nasallower,IN:inferiornasal,IT:inferiortemporal,TL:temporallower,GCC:ganglioncellcomplex,FLV:focallossvolume,GLV:globallossvolume,AUC:areaunderthereceiveroperatingcharacteristiccurves.C群C70眼が本研究に登録された.各群の年齢,性別,屈折度数,MD値,PSD値,visualC.eldindex(VFI)値を表1に示す.正常対照群と各緑内障群との間には,年齢,性別,屈折度数に有意な差はなかった.MD値,PSD値,VFIにおいては,正常対照群と各緑内障群との間で有意な差があった(p=0.001).上半視野異常群と下半視野異常群の視野検査結果の比較では,MD値とCPSD値は同程度であったが,上半視野異常群のCVFIは下半視野異常群に比べ有意に低値であった(p=0.007).各群におけるCcpRNFLおよびCGCCパラメータの平均値を表2に示す.緑内障眼のCOCTパラメータは,上半視野異常群,下半視野異常群ともに正常対照群と比較して,すべてのセクターで有意な菲薄化がみられた.また,上半視野異常群と下半視野異常群ともに,非異常視野側に対応するCOCTパラメータにおいても有意な菲薄化を示した.上半視野異常群と下半視野異常群のCOCT検査結果の比較では,TU1やTL1の乳頭耳側セクターやCSN2からCIN2の乳頭鼻側のC6セクターには差がみられなかった.各緑内障群と正常眼を識別するために,cpRNFLおよびGCCパラメータのCAUCを算出した結果を表3に示す.上半視野異常群においてもっとも大きいCAUCは下耳側セクターのCIT1のC0.999であり,下方CcpRNFL厚がC0.977,下方GCC厚がC0.973と同等に高い検出力を示した.一方,下半視野異常群においては上方CcpRNFL厚がC0.990でもっとも大きいCAUCを示し,上方CGCC厚(0.901)よりもCcpRNFL厚のほうが有意に高い検出力を示した(図1,p=0.002).GCC厚パラメータのCFLVおよびCGLVは,各緑内障群においてC0.952.0.991と大きなCAUCを示した.AsymmetryRatioのCAUCにおいて,上半視野異常群ではCGCC厚のCAsymmetryRatioが高く,下半視野異常群ではCGCC厚のa1b10.80.80.60.40.2000.20.40.60.811-Speci.citySensitivitySensitivity図1上半視野異常群(a)と下半視野異常群(b)における,上方および下方の乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)と網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の受信者動作特性曲線下半視野異常群において,上方CcpRNFL厚のCAUCはC0.990で高値を示し,上方CGCC厚(AUC:0.901)より0.60.40.201-Speci.city00.20.40.60.81も有意に高い検出力を示した(p=0.002).CAsymmetryRatioはC0.701と低値を示しCcpRNFL厚のAsymmetryRatioが高値であった.CIII考按本研究において,上下いずれかの半視野異常を有する初期緑内障眼のOCTパラメータの緑内障検出力を検討した結果,上半視野異常群と下半視野異常群とで緑内障検出力の高いパラメータが異なっていることが示唆された.上半視野異常群では下方CcpRNFL厚と下方CGCC厚とで緑内障検出力は同等であったが,下半視野異常群においては上方CcpRNFL厚のAUCが上方CGCC厚よりも有意に高いことが示された.また,緑内障眼の非異常視野側に対応する領域では,cpRNFL厚およびCGCC厚は正常対照群と比較し有意に菲薄化していた.上または下半視野異常のみを有する中期以降の緑内障眼を対象とし,GCL+IPL厚やCcpRNFL厚の緑内障検出力を検討した報告4,5)では,下半視野異常眼ではすべての上方セクターのCGCL+IPL厚のCAUCは,上方CcpRNFL厚のCAUCより低値であったと述べられている.本研究はCGCL+IPL厚にCRNFL厚を含むCGCC厚を用いた解析結果であるが,下半視野異常群の上方CGCC厚のCAUCは上耳側(ST1.TU2)セクターのCcpRNFL厚のCAUCよりも低く,先行研究と同様の結果であった.また,本研究で用いたcpRNFL厚およびGCC厚のCasymmetryratioにおいても,下半視野異常群のGCC厚Casymmetryratioは低かった.このことは,中心窩が視神経乳頭よりも下方に位置しているために網膜神経線維の分布が上下対称的ではなく,下方の網膜神経線維がより中心窩付近を走行していることや下方の網膜神経線維領域が脆弱であること6,7)が関与していることが考えられる.RTVue-100のCGCC厚測定領域の中心は,黄斑耳側の網膜神経節細胞障害の検出を向上させるために中心窩より耳側にずらしているが,下半視野異常を伴う緑内障眼の黄斑上耳側のCRGC障害を十分に反映していない可能性が示された(図2).この黄斑上耳側の脆弱性の高い領域は,黄斑部網膜厚の測定領域外であり,本装置では緑内障性CRGC障害を十分に検出できない可能性があるため,広範囲の網膜内層解析かCcpRNFL厚とCGCC厚を相補的に評価する必要があると思われた.本研究で上半視野異常群の上方CGCC厚(非異常視野側)と下半視野異常群の上方CGCC厚(異常視野側)に差がみられなかったことも,前述していることが影響していると考えられた.また,初期緑内障眼において黄斑部下方の網膜神経線維障害が先行する頻度が高いことも報告されており8),経時的な変化を検出するために乳頭および黄斑部解析の縦断的研究が必要である.一方,本研究の上半視野異常群と下半視野異常群の視野障害の比較では,MD値とCPSD値は同程度であったが,上半視野異常群のCVFIは下半視野異常群に比べ有意に低値で中心視野障害が強いことが示された.以前より,初期開放隅角緑内障眼の視野障害では,下半視野よりも上半視野のほうが多くみられるという報告9)や緑内障性視野障害が下方から視野障害が始まるという報告がある10).また,早期緑内障眼の下方視野障害は周辺領域で浅く広い視野障害であるのに対して,上方視野障害は中心領域で深く局所的視野障害が多いことが報告されており2),本研究においても過去の報告と類似する結果となった.また,本研究結果における上半視野異常群のCVFIの低値が,GCCパラメータに影響を及ぼした可能ab図2上半視野異常緑内障(a),下半視野異常緑内障(b)の症例a:視野検査結果では中心部領域の感度低下が顕著である.cpRNFLの解析では下耳側CcpRNFL厚の菲薄化が検出され,GCC解析では下方のCGCC厚は正常眼データベースよりも薄いことがわかる.Cb:鼻側周辺部領域の感度低下がみられ,上耳側CcpRNFL厚の菲薄化が検出されている.一方,GCC解析では上耳側にわずかな異常領域がみられる.性があることが考えられる.今後,多数例を対象にした検討RGCの変化を捉えるためにはCpreperimetricCglaucomaを行うことやCVFI値もマッチングさせた半視野異常群を有(PPG)を含めた多症例での検討を行う必要があると考えてするC2群間において,中心C10°内の視野結果とCRGC障害のいる.関連についても検討する予定である.さらに,半視野障害を本研究の限界として,症例数が少ないことや視野を中心お傍中心暗点型や鼻側周辺視野障害型などに分け,RGC障害よび周辺のセクター別に解析を行うなど詳細な検討が必要でパターンを解析することも必要であると考える.ある.また,本研究は緑内障初期を対象とした研究結果であ本研究では,半視野異常を有する初期緑内障(MD値>り,今後,PPGを含めた緑内障病期別の検討も必要であるC.6CdB)において,上半視野異常群,下半視野異常群ともにと考えられる.また,網膜神経節細胞層の非対称性指数は緑非異常視野側に対応するCcpRNFL厚およびCGCC厚は正常対内障重症度に関係なく緑内障検出能が高いことが報告されて照群に比して有意に菲薄化していた.この結果は,非異常視おり14),半視野異常群に分けた黄斑部網膜内層の層別解析も野側の網膜構造変化は視野異常に先行して生じているという検討する予定である.既報の結果11,12)と類似していた.一方で,Saitoら13)の報告本研究では,半視野異常を有する初期緑内障眼において,では,PPGを含む初期緑内障(MD値>C.2dB)眼において,視野障害を有さない非異常視野側に対応した網膜内層厚にお上半視野異常群(下半網膜障害群)ではCcpRNFL厚および黄いても菲薄化している可能性が示唆された.上半視野異常を斑部網膜内層厚の上下非対称性が明瞭であったが,下半視野有する初期緑内障眼のCcpRNFL厚とCGCC厚パラメータの緑異常群(上半網膜障害群)では非障害側の網膜も菲薄化して内障検出力は同等であったが,下半視野異常眼ではCGCC厚おりCcpRNFL厚および黄斑部網膜内層厚の上下非対称性はよりもCcpRNFL厚のパラメータのほうが有用である可能性著明でなかったと報告している.この報告は,初期緑内障にが示唆された.おいて,上半網膜または下半網膜でCRGC障害が異なるメカニズムによって生じている可能性を示唆している.本研究は利益相反:利益相反公表基準に該当なしMD値>C.6CdBにおける症例の研究結果であり,わずかな文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)HoodCDC,CSlobodnickCA,CRazaCASCetal:EarlyCglaucomaCinvolvesCbothCdeepClocal,CandCshallowCwidespread,CretinalCnerve.berdamageofthemacularregion.InvestOphthal-molVisSciC55:632-649,C20143)TanCO,CChopraCV,CLuCATCetal:DetectionCofCmacularCganglionCcellClossCinCglaucomaCbyCFourier-domainCopticalCcoherenceCtomography.COphthalmologyC116:2305-2314,C20094)KimHS,YangH,LeeTHetal:Diagnosticvalueofgan-glionCcell-innerCplexiformClayerCthicknessCinCglaucomaCwithsuperiororinferiorvisualhemi.elddefectsJGlauco-maC25:472-476,C20165)DeshpandeG,BawankuleP,RajeDetal:Structuraleval-uationCofCperimetricallyCnormalCandCa.ectedChemi.eldsCinCopenCangleCglaucoma.CIndianCJCOphthalmolC67:1657-1662,C20196)HoodCDC,CRazaCAS,CdeCMoraesCCGCetal:TheCnatureCofCmacularCdamageCinCglaucomaCasCrevealedCbyCaveragingCopticalCcoherenceCtomographyCdata.CTranslCVisCSciCTech-nolC1:3.doi,20127)HoodDC,RazaAS,deMoraesetal:Glaucomatousdam-ageofthemacula.ProgRetinEyeResC32:1-21,C20138)KimCYK,CHaCA,CNaCKICetal:TemporalCrelationCbetweenCmacularganglioncell-innerplexiformlayerlossandperi-papillaryCretinalCnerveC.berClayerClossCinCglaucoma.COph-thalmologyC124:1056-1064,C20179)HartWMJr,BeckerB:Theonsetandevolutionofglau-comatousCvisualC.eldCdefects.COphthalmologyC89:268-279,C198210)DranceSM:Theglaucomatousvisual.eld.BrJOphthal-molC56:186-200,C197211)NaCJH,CKookCMS,CLeeCYCetal:DetectionCofCmacularCandCcircumpapillaryCstructuralClossCinCnormalChemi.eldCareasCofCglaucomatousCeyesCwithClocalizedCvisualC.eldCdefectsCusingCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomography.CGraefesArchClinExpOphthalmolC250:595-602,C201212)InuzukaCH,CKawaseCK,CSawadaCACetal:MacularCretinalCthicknessCinCglaucomaCwithCsuperiorCorCinferiorCvisualChemi.elddefects.JGlaucomaC22:60-64,C201313)SaitoH,IwaseA,AraieM:Comparisonofretinalgangli-onCcell-relatedClayerCasymmetryCbetweenCearlyCglaucomaCeyesCwithCsuperiorCandCinferiorChemiretinaCdamage.CBrJOphthalmolC104:655-665,C202014)YamadaH,HangaiM,NakanoNetal:Asymmetryanaly-sisofmacularinnerretinallayersforglaucomadiagnosis.AmJOphthalmolC158:1318-1329,C2014***

Intrachoroidal Cavitation のEn Face 画像を用いた 定量評価とOCT および視野所見の特徴

2023年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科40(12):1605.1610,2023cIntrachoroidalCavitationのEnFace画像を用いた定量評価とOCTおよび視野所見の特徴大内達央*1山下力*1,2荒木俊介*1,2後藤克聡*1三宅美鈴*1水上菜美*1春石和子*1,2家木良彰*1三木淳司*1,2桐生純一*1*1川崎医科大学眼科学1*2川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科CQuantitativeEvaluationofIntrachoroidalCavitationUsingEn-FaceImagingandCharacteristicsofOCTandVisualFieldFindingsTatsuhiroOuchi1),TsutomuYamashita1,2)C,ShunsukeAraki1,2),KatsutoshiGoto1),MisuzuMiyake1),NamiMizukami1),KazukoHaruishi1,2)C,YoshiakiIeki1),AtsushiMiki1,2)CandJunichiKiryu1)1)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,2)DepartmentofOrthoptics,FacultyofRehabilitation,KawasakiUniversityofMedicalWelfareC目的:OCTのCenface画像を用いてCintrachoroidalcavitation(ICC)の面積や深度の定量評価を行い,OCTパラメータおよび視野所見の臨床的特徴について検討した.対象および方法:対象はCenface画像で脈絡膜内空隙状病変を認めたC3例C3眼である.Enface画像からCICCの最大面積,最大深度を算出し,OCTパラメータ[乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)厚,網膜神経節細胞複合体(GCC)厚],視野所見との関連性を評価し,ICCの臨床的特徴について検討した.結果:ICCの最大面積,最大深度とCOCTパラメータ,視野障害に関連性はみられなかった.全症例でCICCは視神経乳頭下方に存在し,下方のCcpRNFL厚およびCGCC厚の菲薄化がみられ,上半視野障害を示した.眼底写真では病変が不明瞭な症例が存在した.結論:ICCの検出および定量評価にCenface画像を用いた解析は有用であった.CPurpose:Toevaluatetheareaanddepthofintrachoroidalcavitation(ICC)usingopticalcoherencetomogra-phy(OCT)en-faceimagingandclinicalcharacteristicsoftheOCTparametersandvisual.eld.ndings.SubjectsandMethods:InCthisCstudy,C3CeyesCofC3CpatientsCwithCICCCdetectedCusingCen-faceCimagesCwereCexamined.CTheCmaximumareaanddepthofICCwascalculated,andtherelationshipwithOCTparameters〈circumpapillaryreti-nalCnerveC.berlayer(cpRNFL)andCretinalCganglionCcellcomplex(GCC)thickness〉andCvisualC.eldC.ndingsCwasCevaluated.CInCaddition,CtheCclinicalCfeaturesCofCICCCwereCanalyzed.CResults:TheCmaximumCareaCorCdepthCofCICCCandOCTparametersorvisual.elddefectswereunrelated.TheICCwaslocatedinferiortotheopticdisc,theinfe-riorCcpRNFLCandCGCCCthicknessesCwereCthinned,CandCupperChemi.eldCdefectsCwereCobserved.CSomeClesionsCwereCunclearConCfundusCphotographs.CConclusion:En-faceCimagingCanalysisCwasCusefulCforCtheCdetectionCandCquantita-tiveevaluationofICC.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(12):1605.1610,C2023〕Keywords:intrachoroidalcavitation,enface画像,光干渉断層計,視野障害.intrachoroidalcavitation,en-faceimages,opticalcoherencetomography,visual.elddefects.CはじめにIntrachoroidalcavitation(ICC)は視神経乳頭近傍にみられる黄白色.橙色の三日月状の脈絡膜内空隙状病変であり,Freundら1)が当初,網膜色素上皮.離としてCperipapillarydetachmentCinpathologicCmyopiaという表記で報告した病態である.その後,Taranzoら2)は本病態が網膜色素上皮.離ではなく,脈絡膜内の洞様構造であると報告し,ICCとよんだ.ICCは強度近視のC4.9.16.9%にみられ3,4),視神経乳頭の下方に多く存在する5)と報告されている.Shimadaら3)はCICCによって視神経乳頭近傍で網膜内層の菲薄化や断裂〔別刷請求先〕大内達央:〒701-0192岡山県倉敷市松島C577川崎医科大学眼科学C1Reprintrequests:TatsuhiroOuchi,M.D.,DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki,Okayama701-0192,JAPANCc図1症例1(63歳,男性,左眼,屈折度数:C.11.75D(cyl.1.00DCAx80°,眼軸長:27.64mm)の検査結果a:Enface画像から算出したCICCの最大面積はC4.34CmmC2であった.ICC/Disc面積比はC1.69であった.Cb:Enface画像から算出したCICCの最大深度はC0.42Cmmであった(Caの×の位置でのCBスキャン画像).c:眼底写真では黄白色.橙色の病変がみられた(.).d:左:cpRNFL解析,右:GCC解析の結果.下方CcpRNFL厚および下方CGCC厚の菲薄化がみられた.e:HFA中心C30-2プログラム,SITA-Fastの結果.上鼻側領域の感度低下がみられた.が生じ,71%が緑内障様視野障害を伴うと報告している.基準となる深さで平坦化処理する技術で,任意の層の網脈絡また,Fujimotoら6)はCICCの体積,深さ,長さと視野障害膜病変の広がりを捉えることが可能である.そこで本研究での関連性について報告しているが,光干渉断層計(opticalはCenface画像を用いてCICCの面積や深度の定量評価を行Ccoherencetomography:OCT)のパラメータを含めた検討い,OCT,視野検査所見との関連性およびCICCの臨床的特はなされておらず,いまだ詳細な病態は明らかとなっていな徴,enface画像を用いたCICCの検出,解析の有用性についい.て検討した.近年,OCTの撮影・解析技術は急速に発展している.Enface画像はCOCTの三次元断層画像から眼底画像を再構築し,c図2症例2(78歳,男性,左眼,眼内レンズ挿入眼,屈折度数:C.0.75D(cyl.2.00DCAx90°,眼軸長:24.46Cmm)の検査結果a:Enface画像から算出したCICCの最大面積はC1.48CmmC2であった.ICC/Disc面積比はC0.68であった.Cb:Enface画像から算出したCICCの最大深度はC0.20Cmmであった(Caの×の位置でのCBスキャン画像).c:眼底写真ではCICCの病変が不明瞭であった.d:左:cpRNFL解析,右:GCC解析の結果.上下象限CcpRNFL厚および下方CGCC厚の菲薄化がみられた.e:HFA中心C30-2プログラム,SITA-Fastの結果.上方および鼻側の感度低下がみられた.検査が施行されたC3例とした.緑内障以外の眼疾患を有するCI対象および方法症例は対象から除外した.本研究は,川崎医科大学・同附属対象はC2015年C4月.2018年C3月に川崎医科大学附属病病院倫理委員会の承認のもと(承認番号C5798-00),ヘルシ院眼科において眼底写真およびCOCT画像で脈絡膜内空隙状ンキ宣言に準拠して行われた.病変がみられ,swept-sourceOCTによるCenface画像解析,ICCの最大面積,最大深度の算出で用いるCOCT画像はCspectralCdomainOCTによる網膜内層解析,HumphreyCDRIOCT-1Atlantis(トプコン)を用いて取得した.本装置C.eldanalyzer(HFA,CarlCZeissMeditec)による静的視野は,光源波長C1,050Cnm,スキャンレートC100,000CA-scans/c図3症例3(52歳,女性,右眼,屈折度数:C.9.00D(cyl.0.50DCAx20°,眼軸長:27.10mm)の検査結果a:Enface画像から算出したCICCの最大面積はC0.53CmmC2であった.ICC/Disc面積比はC0.17であった.Cb:Enface画像から算出したCICCの最大深度はC0.15Cmmであった(Caの×の位置でのCBスキャン画像).c:眼底写真ではCICCの病変が不明瞭であった.d:左:GCC解析,右:cpRNFL解析の結果.下耳側象限のCcpRNFL厚および下方CGCC厚の菲薄化がみられた.e:HFA中心C30-2プログラム,SITA-Fastの結果.上半視野障害がみられた.秒,深さ方向8μmである.スキャンプロトコルはC12C×9測した.また,ICCの最大面積と視神経乳頭面積(mmC2)をCmmの黄斑部三次元スキャン(512C×256枚)とした.En比較するため,同様の方法で視神経乳頭面積を手動計測し,face画像はCDRIOCT-1Atlantisで取得したC3次元スキャンICC/視神経乳頭(ICC/Disc)面積比を算出した.なお,算出画像を専用のソフトウェア(EnViewversion1.0.1,トプコした面積は光学式眼軸長測定装置(OA-1000,トーメーコン)を用い,Bruch膜で平坦化して構築した.ICCの最大面ーポレーション)で測定した各眼の眼軸長とCDRICOCT-1積は脈絡膜内空隙状病変(低反射領域)の最大面積(mmC2),Atlantisのモデル眼軸長(24.39Cmm)から既報7,8)を参考に倍ICCの最大深度(mm)はCBruch膜から脈絡膜高反射領域ま率補正を行った.での垂直距離と定義し,上記のソフトウェアを用いて手動計乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer:cpRNFL)厚,網膜神経節細胞複合体(ganglionCcellcomplex:GCC)厚の測定はCRTVue-100(Optovue)を用いた.本装置は,光源波長C840nm,スキャンレート26,000CA-scans/秒,深さ方向C5Cμmである.スキャンプロトコルはCGCC,ONHとし,signalCstrengthindexがC45以上のデータを採用した.視野測定はCHFA(中心C30-2プログラム,SITA-Fast)を用い,固視不良,偽陽性,偽陰性のすべてがC20%未満の結果のみ採用した.緑内障性視野障害との類似性を評価するために,Anderson-Patella基準9)の1)パターン偏差確率プロットで,p<5%の点がC3個以上隣接して存在し,かつそのうちC1点がp<1%,2)パターン標準偏差がCp<5%,3)緑内障半視野テストが正常範囲外の項目別の陽性率を算出した.また,視野障害部位は既報5,10)を参考に各測定点を神経線維の走行に沿ってC6個のクラスターに分割し,各クラスターの異常率を算出して評価した.異常率は,patternCdevia-tionplotsで同一クラスター内にCp<0.05が隣接したC3点以上存在し,そのうちC1個がCp<0.01であるものを異常と判定して算出した.検討項目はCICCの最大面積や最大深度とCcpRNFL厚,GCC厚,視野検査所見の関連性とした.CII結果本研究の対象はC3名C3眼,平均年齢C±標準偏差はC64.3C±13.1歳であった.各症例の結果を図1~3に示す.全症例でICCはCenface画像において視神経乳頭下方に存在していたが,視神経乳頭より面積が小さい症例(ICC/Disc面積比がC1未満)は眼底写真では病変が不明瞭であった.全症例で下方CcpRNFL厚およびCGCC厚は,上方CcpRNFL厚およびCGCC厚よりも菲薄化していた.ICCの最大面積,最大深度とCcpRNFL厚,GCC厚に関連性はみられなかった.全症例で上方トータル偏差,パターン偏差が,下方トータル偏差,パターン偏差よりも低値であった.Anderson-Patella基準の陽性率は全症例,すべての項目が陽性であった.各クラスターの異常率は全症例,上半視野のCBjerrum領域のクラスターで異常がみられた(図4).ICCの最大面積,最大深度と視野障害の程度に関連性はみられなかった.CIII考察本研究では,ICCを伴うC3例を対象にCenface画像を利用してCICCの面積や深度を定量評価した.また,全症例でICCの病変部位に対応する領域にCcpRNFL厚,GCC厚の菲薄化がみられ,Bjerrum領域の視野障害を伴っていた.ICCは視神経周囲の機械的伸展に伴い,視神経乳頭周囲のCbordertissueofJacobyの断裂が生じ,網膜周囲組織が徐々に強膜脈絡膜側に入り込むことで形成される11.13)と考えら図4各クラスターの異常症例数全症例,上半視野のCBjerrum領域のクラスターで異常がみられた.れている.ICC眼では視野障害を伴うことが知られており3,5,14),その原因としてCSpaideら12)はCICCの病変部位では強膜カーブの後方偏位が生じ,ICCと視神経乳頭の境界領域に沿って網膜内層の菲薄化がみられることを報告している.Okumaら5)のCICC眼における静的視野計での視野障害,GCC厚についての検討では,ICCは視神経乳頭下方に生じ,下方CGCC厚の菲薄化,上半視野のCBjerrum領域の視野障害が生じると報告しており,本研究と類似した結果であった.したがって,ICCは網膜内層の連続性の途絶により,病変部位に対応した網膜内層の菲薄化,Bjerrum領域の視野障害が生じ,初期緑内障眼と類似した所見を呈する可能性が示唆された.本研究では,ICCの最大面積が大きくなるほど,ICCの最大深度が深くなる傾向がみられたが,ICCの最大面積,ICCの最大深度とCcpRNFL厚,GCC厚および視野障害の程度に関連性はみられなかった.Fujimotoら6)は,OCT画像からICCのC3D画像を生成し,ICCの深さ,体積と視野障害の程度を検討した結果,ICCの体積とCMeanDeviation(MD)値,上半視野障害は負の相関がみられるが,ICCの深さとCMD値には相関関係はみられなかったと報告している.本研究は既報とはCICCの解析方法,症例数が異なるため,結果に相違が生じたと考えられるが,enface画像によるICCの深さ,面積,体積の解析は,ICCの網膜内層の菲薄化,視野障害の病態解明に有用である可能性があるため,今後症例数を増やした検討が必要であると考えられる.本研究では,視神経乳頭より面積が小さいCICCは眼底写真では病変が不明瞭であった.既報4,15)においても,OCT画像で検出されたCICCのうち,眼底写真で病変を認めたのは47.53.3%であったと報告されており,面積が小さく,病変の色調が明らかではないCICCは見逃される可能性がある.その一方で,enface画像はCICCの病変を境界明瞭な低反射領域として描出することが可能であり,本研究においてもC1.0Cmm2未満の病変を検出することができた.したがって,ICCの検出にはCenface画像が有用と考えられる.本研究の限界として,症例数が少なく,緑内障性視神経障害を含む可能性がある.ICCによって生じる視野障害は,緑内障性視野障害とは異なる機序であると考えられているが,詳細な発生機序は明らかとなっておらず,今後,経時的変化を含めた病態解明が必要となる.本研究では,enface画像を利用することでCICCの面積や深度の定量評価が可能であることが明らかとなった.ICCに対するCenface画像の活用は,ICCの検出,病態解明に有用である可能性が示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)FreundCKB,CCiardellaCAP,CYannuzziCLACetal:Peripapil-laryCdetachmentCinCpathologicCmyopia.CArchCOphthalmolC121:197-204,C20032)ToranzoCJ,CCohenCSY,CErginayCACetal:PeripapillaryCintrachoroidalCcavitationCinCmyopia.CAmCJCOphthalmolC140:731-732,C20053))ShimadaCN,COhno-MatsuiCK,CYoshidaCTCetal:Charac-teristicsofperipapillarydetachmentinpathologicmyopia.ArchOphthalmolC124:46-52,C20064)YouQS,PengXY,ChenCXetal:Peripapillaryintracho-roidalCcavitations.CTheCBeijingCeyeCstudy.CPLoSCOneC8:Ce78743,C20135)OkumaCS,CMizoueCS,COhashiY:VisualC.eldCdefectsCandCchangesCinCmacularCretinalCganglionCcellCcomplexCthick-nessCinCeyesCwithCintrachoroidalCcavitationCareCsimilarCtoCthoseinearlyglaucoma.ClinCOphthalmolC10:1217-1222,C20166)FujimotoCS,CMikiCA,CMaruyamaCKCetal:Three-dimen-sionalvolumecalculationofintrachoroidalcavitationusingdeep-learning-basedCnoiseCreductionCofCopticalCcoherenceCtomography.TranslVisSciTechnolC11:1,C20227)LittmannH:DeterminationCofCtheCrealCsizeCofCanCobjectConCtheCfundusCofCtheClivingCeye.CKlinCMblCAugenheilkC180:286-289,C19828)SampsonDM,GongP,AnDetal:AxiallengthvariationimpactsConCsuper.cialCretinalCvesselCdensityCandCfovealCavascularCzoneCareaCmeasurementsCusingCopticalCcoher-encetomographyangiography.InvestOphthalmolVisSciC58:3065-3072,C20179)AndersonDR,PatellaVM:Interpretationofasingle.eldprintout.CautomatedCstaticCperimetry,C2ndCed,CMosby,CStCLouis,Cp121-190,C199910)Garway-HeathCDF,CPoinoosawmyCD,CFitzkeCFWCetal:CMappingCtheCvisualC.eldCtoCtheCopticCdiscCinCnormalCten-sionglaucomaeyes.OphthalmologyC107:1809-1815,C200011)ShimadaN,Ohno-MatsuiK,NishimutaAetal:Peripapil-laryCchangesCdetectedCbyCopticalCcoherenceCtomographyCinCeyesCwithChighCmyopia.COphthalmologyC114:2070-2076,C200712)SpaideRF,AkibaM,Ohno-MatsuiK:Evaluationofperi-papillaryCintrachoroidalCcavitationCwithCsweptCsourceCandCenhancedCdepthCimagingCopticalCcoherenceCtomography.CRetinaC32:1037-1044,C201213)ChenCY,CMaCX,CHuaR:Multi-modalityCimagingC.ndingsCofhugeintrachoroidalcavitationandmyopicperipapillarysinkhole.BMCOphthalmolC18:24,C201814)XieS,KamoiK,Igarashi-YokoiTetal:StructuralabnorC-malitiesinthepapillaryandperipapillaryareasandcorre-spondingvisual.elddefectsineyeswithpathologicmyo-pia.InvestOphthalmolVisSciC63:13,C202215)YehSI,ChangWC,WuCHetal:Characteristicsofperi-papillaryCchoroidalCcavitationCdetectedCbyCopticalCcoher-encetomography.OphthalmologyC120:544-552,C2013***

片眼性網膜色素上皮剝離の所見から初期診断が困難であった 原田病の1 例

2023年10月30日 月曜日

《原著》あたらしい眼科40(10):1354.1359,2023c片眼性網膜色素上皮.離の所見から初期診断が困難であった原田病の1例古味優季*1熊谷知幸*1吉川祐司*1石川聖*1渋谷雅之*1庄司拓平*1,2蒔田潤*1篠田啓*1*1埼玉医科大学医学部眼科*2小江戸眼科内科CACaseofVogt-Koyanagi-HaradaDiseasethatWasDi.culttoDiagnoseduetoUnilateralRetinalPigmentEpithelialDetachmentYukiKomi1),TomoyukiKumagai1),YujiYoshikawa1),ShoIshikawa1),MasayukiShibuya1),TakuheiShoji1,2),JunMakita1)andKeiShinoda1)1)DivisionofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversity,2)KoedoEyeInstituteC背景:Vogt-小柳-原田病(VKH)と中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)はときとして鑑別が困難である.今回,初診時所見からは急性CCSCを否定できなかったが,時間とともに所見が顕在化したことで網膜色素上皮.離(PED)を伴うVKHと診断した症例を経験した.症例:23歳,女性.左眼歪視を主訴に埼玉医科大学病院眼科を受診した.数日前から耳鳴りや頭痛があった.左眼にのみ脈絡膜の肥厚とCPED,漿液性網膜.離(SRD)があった.VKHを疑うも蛍光眼底造影検査では特徴的な所見を認めず,急性CCSCも疑われた.1週間後に右眼にCSRDと脈絡膜肥厚が出現し,再検した蛍光眼底造影検査でCVKHに特徴的な所見を認めた.腰椎穿刺にて細胞数増多もあり不完全型CVKHと診断し,ステロイドパルス療法を施行し症状が改善した.結論:VKHは画像所見が非典型的であっても,時間とともに所見が顕在化する可能性を考慮し経過観察する必要がある.CPurpose:TopresentacaseofVogt-Koyanagi-Harada(VKH)diseasewithretinalpigmentepithelialdetach-ment(PED)thatwasinitiallydi.culttodiagnose.Case:A23-year-oldfemalepresentedwithmetamorphopsiainherCleftCeyeCafterCexperiencingCtinnitusCandCheadaches.CExaminationCrevealedCserousCretinaldetachment(SRD),Cchoroidalthickening,andPEDinthateye,andVKHdiseasewassuspected.However,therewerenocharacteristic.uoresceinangiography(FA).ndings,CandCacuteCcentralCserousCchorioretinopathyCcouldCnotCbeCruledCout.COneCweekClater,CSRDCandCchoroidalCthickeningCalsoCappearedCinCherCrightCeye,CandCFACimagesCrevealedCcharacteristicC.ndingsofVKHdisease.Alumbarpuncturerevealedanincreaseinthenumberofcells,andadiagnosisofincom-pleteVKHdiseasewasmade.Steroidpulsetherapywasinitiated,andthesymptomsimproved.Conclusion:EvenwhenFAimagesareatypicalofVHKdisease,follow-upexaminationsarerecommended,ascharacteristic.ndingsofthediseasemaypossiblybecomeapparentovertime.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(10):1354.1359,C2023〕Keywords:原田病,中心性漿液性脈絡網膜症,網膜色素上皮.離,光干渉断層計,インドシアニングリーン蛍光造影.Vogt-Koyanagi-Haradadisease,centralserouschorioretinopathy,pigmentepithelialdetachment,opticalco-herencetomography,indocyaninegreenangiography.Cはじめにて自己免疫が生じると考えられている3,4).一方,中心性漿Vogt-小柳-原田病(Vogt-Koyanagi-Haradadisease:液性脈絡網膜症(centralCserouschorioretinopathy:CSC)VKH)は急性期に両眼性に滲出性網膜.離を生じ,視機能は黄斑部に漿液性網膜.離(serousCretinaldetachment:低下を生じる疾患である1.3).脈絡膜のメラノサイトに対しSRD)をきたし,視力低下や歪視・小視などの視機能障害を〔別刷請求先〕古味優季:〒350-0495埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷C38埼玉医科大学医学部眼科Reprintrequests:YukiKomi,M.D.,DivisionofOphthalmology,SaitamaMedicalUniversity,38Morohongo,MoroyamaIruma,Saitama350-0495,JAPANC1354(96)図1初診時のカラー眼底とOCT所見左眼には隔壁を伴う漿液性網膜.離と網膜色素上皮.離,脈絡膜の肥厚が認められる(下)が,右眼は脈絡膜の肥厚と脈絡膜大血管の肥厚を認めた(上).生じる疾患で,おもな原因として脈絡膜循環障害が考えられている5).VKHとCCSCではいずれも脈絡膜と網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)に障害をきたしており,SRDを生ずる,ないしフルオレセイン蛍光造影(.uoresceinCangi-ography:FA)でCRPEからの漏出がみられるなど臨床所見は似ている6).しかし,VKHとCCSCの治療戦略は異なる.VKHではステロイドが治療の主軸となるが,CSCではステロイドは原因の一つでもあり病態を悪化させる可能性がある7).そのため,VKHとCCSCの鑑別は慎重に行われる必要があるが,臨床所見が類似することから誤診されることが多い6,8).今回筆者らは,初診時の画像所見が非典型的であったが,時間とともに所見が顕在化したことからCVKHと診断し適切な加療を行うことができたC1症例を経験したので報告する.I症例23歳,女性.左眼歪視を自覚したため近医眼科を受診し,左眼CSRD,網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialCdetach-ment:PED)の所見があり埼玉医科大学病院眼科を紹介受診した.既往歴はなく,内服薬は漢方薬(当帰芍薬散)のみであった.受診数日前から耳鳴りや頭痛があったが,内科は受診はしていなかった.最高矯正視力(best-correctedCvisualacuity:BCVA)は右眼C1.2,左眼C0.6であり,前眼部に炎症は認めなかった.左眼に眼底検査でCSRDを認め,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)で隔壁を伴うCSRDとCPED,および脈絡膜肥厚を認めた.右眼はCOCTで脈絡膜大血管の肥厚を認めた(図1).同日,FAとインドシアニングリーン蛍光造影(indocya-図2初診時蛍光造影検査所見a:左眼フルオレセイン蛍光造影(FA)初期.3カ所の過蛍光あり.Cb:左眼CFA後期.2カ所は貯留し,1カ所は蛍光漏出をしている.Cc:左眼インドシアニングリーン蛍光造影(IA)初期..離範囲に一致した低蛍光があり.僚眼と比較するとChypo.uorescentdarkdots(HDDs)が生じているようにみえる.Cd:左眼CIA後期.複数の境界明瞭な小斑状過蛍光が認められる.Ce:右眼CFA後期.明らかな異常なし.Cf:右眼CIA後期.HDDsなど明らかな異常はない.CnineCgreenangiography:IA)を施行した.FAでは右眼にの境界明瞭な小斑状過蛍光となった(図2c,d).VKHに特異常所見はなく,左眼に初期から黄斑部に過蛍光があり,後徴的な散在する低蛍光斑(hypo.uorescentCdarkdots:期にはC2カ所は貯留を,1カ所は漏出を認めた(図2a,b).HDDs)も疑われたが,この所見のみでCVKHと診断するこIAでは.離範囲に一致した低蛍光がみられ,後期には複数とは困難であった.右眼はCFAでは異常なく,IAで顆粒状図3再検時のカラー眼底とOCT所見初診時にはなかった漿液性網膜.離が認められる.cd図4再検時の蛍光造影検査所見a:再検時右眼フルオレセイン蛍光造影(FA).乳頭周囲に点状の多発性蛍光漏出が認められる.Cb:再検時左眼FA.乳頭周囲に点状の多発性蛍光漏出,中央に蛍光貯留あり.Cc:再検時右眼インドシアニングリーン蛍光造影(後期相).散在するChypo.uorescentdarkdots(HDDs)があり,脈絡膜の充盈遅延が認められる.Cd:再検時左眼CICG(後期相).右眼同様,散在するCHDDsがあり,脈絡膜の充盈遅延が認められる..離範囲に一致した低蛍光あり.表1OCT所見の比較ShinWB8)(n=100eyes)CLinD9)(n=117eyes)VKHCCSCCVKHCCSCC疾患数C50C50C65C52CSRD43(86%)47(94%)65(1C00%)52(1C00%)CPED0(0%)30(60%)2(3%)23(C44.2%)隔壁を伴うCSRD27(54%)2(4%)55(C84.6%)C0RPE/脈絡膜の皺襞27(54%)1(2%)44(C67.7%)C0VKH:Vogt-小柳-原田病,CSC:中心性漿液性脈絡網膜症,SRD:漿液性網膜.離,PED:網膜色素上皮.離,RPE:網膜色素上皮.過蛍光やCHDDsなど異常はなかった(図2e,f).光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangi-ography:OCTA)の脈絡膜毛細血管板(choriocapillaris:CC)のCenface画像は.離範囲に一致した無信号領域を認めた.OCT所見では両眼の脈絡膜肥厚を認めるが,右眼のCFAとCICG所見には異常はなかった.大血管拡張による変化による可能性もあり,左眼COCTではCPEDを伴うことから急性CCSCも疑われ,ステロイド加療にて増悪するリスクも考えられたため,カリジノゲナーゼ内服を処方し,1週間後に再診となった.再診時,BCVAは右眼C1.2,左眼C0.8,前眼部に炎症は認めなかった.右眼眼底にもCSRDと脈絡膜の肥厚を認めた(図3).蛍光造影検査を再度施行しCFAでは両眼に点状の多発性蛍光漏出を認めた(図4a,b).IAでは両眼に散在するHDDs,および脈絡膜の充盈遅延を認めた(図4c,d).同日,腰椎穿刺を施行したところ,髄液中に細胞数増多を認めた.これらの結果から診断基準に則り,不完全型CVKHと診断した.入院後,ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムC1,000Cmg/日C×3日)を施行し,BCVAは右眼C1.2,左眼C1.2,歪視などの症状は改善した.SRDやCPEDは縮小し,脈絡膜厚は減少した.その後ステロイド内服を漸減後終了し,2年後も再発はみられていない.CII考按現在のCVKHの診断基準1)はC2001年に作成されたものである.画像検査所見は眼底所見とCFA所見が主体であるが,近年,これらに加えてCIA,OCT,OCTA所見がCVKHの診断や経過観察に有用であると報告されている2.4).既報では,VKHの患者のうちC20%前後が最初にCCSCと診断され6),同様にCCSC患者のC20%が初回にCVKHと診断された8)と報告されている.Yangらの報告はCOCTが汎用されるようになった以前のものであり,OCTを用いて同様の検討を行った場合,上記頻度とは異なる可能性がある6).OCTが使用された文献ではCVKHの患者のうちC14%がCCSCと誤診されたと報告されている8).OCT所見にて隔壁を伴うCSRDとCRPEの皺襞はCVKHに多くみられ,PEDはCCSCに特異的といわれている8,9)(表1).しかし,頻度は少ないが,今回の症例のようにCVKHでCPEDが生じることは報告されている.文献によっては急性期CVKH眼におけるCPEDの頻度は,OCT所見の比較において65眼中C2眼(3.1%)9),OCTおよびCFA所見の比較でC80眼中C1眼(1.3%)10),enCfaceOCTおよびOCTA所見の比較で眼中C0眼(0%)11),3DOCTを用いた観察でC50眼中C5眼(10%)にみられた12)などと多様で,検出方法や検査範囲の違いなどによると考えられる.わが国でもCOCTが導入されるより以前や導入早期にCVKHの症例でPEDを検出した報告があり,丸山らは急性期CVKH10例C20眼の詳細な観察においてC2眼にCPEDを認めたとし13),牧野らは網膜.離が持続したCVKHの症例でCPEDを認め,ステロイド治療が遅れたこともあって脈絡膜における滲出性反応が強く,臨床的には確認が困難であったが,滲出液の貯留は網膜下のみならずCPEDの形で網膜色素上皮とCBruch膜との間にも生じたものと考えられる,と記述している14).その他の検査所見としては,IA検査にて斑状の低蛍光斑(hypo.uorescentCdarkdots:HDDs)はCVKHにおいてC100%にみられ15),OCTAの脈絡膜毛細血管板層のCenface画像では,CSCでは網膜下液と一致した無信号領域が,VKHでは脈絡膜毛細血管板層の虚血に一致した無信号領域がみられる11).本症例は初診時には片眼性で,OCT所見ではCSRDに加えPEDを伴いCCSCとCVKH双方に特徴的な所見を呈した.FA,IA,OCTA所見ではCCSCに近い所見を呈したため,診断に難渋した.診断後に初診時のCIAを確認すると,右眼と比較するとわずかにCHDDsを認める.診断に迷いが生じた際にはマルチモーダルイメージを駆使して総合的に判断することが重要である.VKHにCPEDが生じる機序は解明されていない.PEDの病因は,炎症・虚血・特発・変性のC4つに大別されており,炎症性CPEDは,脈絡膜の炎症が血管透過性の増加と外血液眼関門の破壊を引き起こし,続いてCRPE下に蛋白質を多く含む液体が蓄積した場合に生じると述べている16).VKHでも同様の機序でCPEDを生じている可能性が考えられる.近年,VKHには脈絡膜のうねり12)や加療後にCRPE裂孔が生じた17)などの報告があり,VKHにおいてはCRPEに機能障害だけでなく裂孔などの器質障害が生じCRPE下の貯留液が網膜下腔へと漏出することによってCSRDとなるため,結果としてCVKHではCPEDが観察されにくい可能性があるかもしれない.今回の症例は若年であり,発症から短期間であることから,RPEの障害がわずかでありCPEDを観察することができたと考えられるが,明らかなCRPEの断裂は観察されておらず,器質障害が生じた確証はない.VKHは病初期では眼所見が非典型的であっても,時間とともに眼所見が顕在化し診断に至る可能性があり,正しい治療を行ううえで慎重に経過観察をする必要がある.文献1)ReadCRW,CHollandCGN,CRaoCNACetal:RevisedCdiagnosticCcriteriaCforCVogt-Koyanagi-Haradadisease:reportCofCanCinternationalCcommitteeConCnomenclature.CAmCJCOphthal-molC131:647-652,C20012)PichiCF,CInvernizziCA,CTuckerCWRCetal:OpticalCcoher-enceCtomographyCdiagnosticCsignsCinCposteriorCuveitis.CProgRetinEyeResC75:100797,C20203)OC’KeefeCGA,CRaoNA:Vogt-Koyanagi-HaradaCdisease.CSurvOphthalmolC62:1-25,C20174)長谷川英一:Vogt-小柳-原田病(VKH).RetinaCMedicineC6:46-50,C20175)YannuzziLA:CentralCserouschorioretinopathy:aCper-sonalperspective.AmJOphthalmolC149:361-363,C20106)YangCP,CRenCY,CLiCBCetal:ClinicalCcharacteristicsCofCVogt-Koyanagi-HaradaCsyndromeCinCChineseCpatients.COphthalmologyC114:606-614,C20077)ArakiCT,CIshikawaCH,CIwahashiCCCetal:CentralCserousCchorioretinopathyCwithCandCwithoutsteroids:aCmulti-centersurvey.PLoSOneC14:e0213110,C20198)ShinWB,KimMK,LeeCSetal:Comparisonoftheclini-calCmanifestationsCbetweenCacuteCVogt-Koyanagi-HaradaCdiseaseCandCacuteCbilateralCcentralCserousCchorioretinopa-thy.KoreanJOphthalmolC29:389-395,C20159)LinD,ChenW,ZhangGetal:ComparisonoftheopticalcoherenceCtomographicCcharactersCbetweenCacuteCVogt-Koyanagi-Haradadiseaseandacutecentralserouschorio-retinopathy.BMCOphthalmolC14:87,C201410)LiuCXY,CPengCXY,CWangCSCetal:FeaturesCofCopticalCcoherenceCtomographyCforCtheCdiagnosisCofCVogt-Koya-nagi-Haradadisease.RetinaC36:2116-2123,C201611)AggarwalCK,CAgarwalCA,CDeokarCACetal:DistinguishingCfeaturesCofCacuteCVogt-Koyanagi-HaradaCdiseaseCandCacuteCcentralCserousCchorioretinopathyConCopticalCcoher-enceCtomographyCangiographyCandCenCfaceCopticalCcoher-enceCtomographyCimaging.CJCOphthalmicCIn.ammCInfectC7:3,C201712)ZhaoGL,LiRZ,PangYHetal:Diagnosticfunctionof3DopticalCcoherenceCtomographyCimagesCinCdiagnosisCofCVogt-Koyanagi-HaradaCdiseaseCatCacuteCuveitisCstage.CMedSciMonitC24:687-697,C201813)丸山泰弘,大谷倫裕,岸章治:Vogt-小柳-原田病の急性期COCT所見.臨眼52:1563-1566,C199814)牧野一雄,藤井節子,塚本尚哉ほか:網膜.離が持続した原田病患者の網膜色素上皮障害.あたらしい眼科C13:797-801,C199615)AbouammohMA,GuptaV,HemachandranSetal:Indo-cyaninegreenangiographic.ndingsininitial-onsetacuteVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.CActaCOphthalmolC94:C573-578,C201616)Zayit-SoudryCS,CMorozCI,CLoewensteinA:RetinalCpig-mentCepithelialCdetachment.CSurvCOphthalmolC52:227-243,C200717)PrallCFR,CTokuharaCKG,CKeefeCKSCetal:RetinalCpigmentCepitheliumCtearCinCVogt-Koyanagi-HaradaCdisease.CRetinCCasesBriefRepC5:284-286,C2011***

琉球大学病院における小児外傷性黄斑円孔の臨床転帰

2023年9月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科40(9):1244.1248,2023c琉球大学病院における小児外傷性黄斑円孔の臨床転帰愛知高明今永直也北村優佳山内遵秀古泉英貴琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座CClinicalOutcomesofPediatricTraumaticMacularHoleCasesSeenattheUniversityoftheRyukyusHospitalTakaakiAichi,NaoyaImanaga,YukaKitamura,YukihideYamauchiandHidekiKoizumiCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyusC目的:琉球大学病院における小児外傷性黄斑円孔の臨床転帰を報告する.対象および方法:対象はC2000.2020年に当科を受診したC18歳以下の外傷性黄斑円孔C17例C17眼(男性C16例,女性C1例,平均年齢C12.5±3.1歳).初診時視力,最終視力,光干渉断層計(OCT)による黄斑円孔の形態を後ろ向きに検討した.結果:自然閉鎖例がC7眼,硝子体手術症例がC10眼で,最終的に全例で円孔閉鎖した.平均ClogMAR視力は初診時C1.06±0.30から最終受診時C0.33±0.33と有意に改善した(p<0.01).初診時からC1カ月時点で最小円孔径や円孔底径が有意に縮小している症例では経過観察が選択されていた(291.6Cμmvs.83.6Cμm,p<0.05,449.1CμmCvs.189.3Cμm,p<0.05).一方,手術症例は初診時から1カ月時点で最小円孔径が有意に拡大していた(363.6CμmCvs.552.9Cμm,p<0.05).結論:円孔径が縮小している症例には経過観察が選択され,縮小を認めない症例には手術が選択されていた.最終的に全例で円孔閉鎖し,視力の改善が得られていた.CPurpose:Toreporttheclinicaloutcomesofpediatrictraumaticmacularhole(MH)casesseenattheUniver-sityCofCtheCRyukyusCHospital.CSubjectsandMethods:ThisCretrospectiveCobservationalCcaseCseriesCstudyCinvolvedC17eyesof17traumaticMHcases(16malesand1female,18yearsoldoryounger[meanage:12.5±3.1years])CseenCbetweenC2000CandC2020.CInCallCcases,Cbest-correctedCvisualacuity(BCVA)atCbothCinitialCandC.nalCvisitCandCopticalCcoherenceCtomographyC.ndingsCwereCevaluated.CResults:InCallC17Ceyes,CtheCMHclosed(spontaneousCclo-sure:n=7eyes;closureCpostCvitrectomysurgery:n=10eyes).CMeanBCVA(logMAR)signi.cantlyCimprovedCfrom1.06±0.30atbaselineto0.33±0.33at.nalfollow-up(p<0.01).Inthe7spontaneousMHclosurecases,themeanCMHCminimumCdiameterCandCtheCmeanCMHCbasalCdiameter,Crespectively,CatC1CmonthCwasCsigni.cantlyCdecreasedcomparedwiththoseattheinitialvisit(p<0.05).Inthe10eyesthatunderwentsurgery,themeanMHminimumdiameterat1monthwassigni.cantlyincreasedcomparedwiththatattheinitialvisit(p<0.05).Conclu-sions:InpediatrictraumaticMHcases,theeyeswithdecreasingMHdiametersat1monthaftertheinitialvisittendedCtoChaveCspontaneousCMHCclosure,CwhileCthoseCwithCincreasingCMHCdiametersCtendedCtoCrequireCsurgicalCtreatment.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(9):1244.1248,C2023〕Keywords:外傷性黄斑円孔,小児,硝子体手術,光干渉断層計,黄斑円孔径.traumaticmacularhole,pediatric,parsplanavitrectomy,opticalcoherencetomography,macularholediameter.Cはじめに外傷性黄斑円孔は,眼外傷によって黄斑に網膜全層または分層円孔を生じたものである1).特発性黄斑円孔はC60歳以上の女性に多くみられるが,外傷性黄斑円孔は若年者に多く発症し,小児での発症報告も少なくない2,3).小児の外傷性黄斑円孔は成人と同様に,自然閉鎖が認められる場合があり,かつ小児は成人よりも自然閉鎖率が高く1),硝子体手術のリスクが高いため,受傷後しばらくは経過観察されることが多い.一方で,過去の報告では受傷から硝子体手術までの期間が長かった症例は,早期に手術を受けた症例よりも円孔〔別刷請求先〕愛知高明:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:TakaakiAichi,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC1244(122)が閉鎖しにくい可能性が指摘されており4),過度の経過観察は恒久的な視機能低下につながる可能性がある.このように,現状では小児の外傷性黄斑円孔の手術時期については適切な手術時期は定まっていない3).また,視力予後についても網膜.離の合併,網膜震盪,脈絡膜破裂,網膜色素上皮の損傷,経過中の網膜下脈絡膜新生血管や線維化など,外傷による網膜の損傷を合併するため,機能的な予後は不明なことが多いことが示唆されている1).今回筆者らは,琉球大学病院(以下,当院)を受診した小児の外傷性黄斑円孔患者における,視力予後と円孔閉鎖にかかわる因子に関して,文献的考察を加え検討したので報告する.CI対象および方法2000.2020年の間に当院において外傷性黄斑円孔と診断され,6カ月以上経過観察可能であったC18歳以下の患者(17例C17眼)を対象とした.対象症例の受傷機転,自然閉鎖あるいは手術までの日数,初診時視力,最終視力,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)による黄斑円孔の形態(最小円孔径と円孔底径)について,診療録をもとに後ろ向きに検討した.自然閉鎖例および手術を要した代表症例のCOCT経過を,それぞれ図1,2に示す.本検討はヘルシンキ宣言に則り行い,琉球大学の人を対象とする医学系倫理審査委員会によって承認された.後ろ向き研究のため,研究内容を琉球大学のホームページに掲載し,オプトアウトの機会を提供した.図116歳,男性:ペットボトルで受傷a:初診時のCOCT.最小円孔径はC512Cμm,円孔底径はC522Cμmであった.Cb:初診時からC1カ月後のCOCT.最小円孔径はC192μm,円孔底径はC288Cμmで縮小傾向を認めた.Cc:最終受診時のOCT.受傷C58日後に黄斑円孔は閉鎖したが,網膜萎縮,脈絡膜損傷のため,最終視力は(0.6)であった.図213歳,男性:野球ボールで受傷a:初診時のCOCT.最小円孔径はC362Cμm,円孔底径はC1,580Cμmであった.Cb:初診時からC1カ月後のCOCT.最小円孔径はC551Cμm,円孔底径はC1,080Cμmと拡大傾向を認め,受傷C43日後に硝子体手術を施行し,黄斑部耳側の内境界膜を半周.離し円孔上に被覆した.Cc:術後C1カ月時点でのCOCT.円孔は閉鎖せず,受傷後C78日に再手術を施行し,鼻側の内境界膜を被覆した.Cd:最終受診時のCOCT.術後,黄斑円孔は閉鎖し,最終視力は(0.6)であった.表1全症例の臨床的特徴と転機初診時最終受傷から自受傷から初診時初診時症例年齢性別受傷原因経過然閉鎖まで手術まで最小円孔径円孔底径合併症視力視力の日数の日数(μm)(μm)1C7男野球バットC0.1C1.2経過観察C8C128C408C2C16男ペットボトルC0.04C0.6経過観察C58C512C522網膜振盪/網膜下出血/脈絡膜破裂3C18男交通外傷C0.06C0.2経過観察C38C232C417網膜振盪4C12男サッカーボールC0.2C0.6経過観察C42C247C480網膜振盪5C11男サッカーボールC0.2C0.9経過観察C29C316C480C6C12男野球バットC0.15C0.9経過観察C59C190C246網膜振盪7C11男野球ボールC0.05C0.4経過観察C32C416C991C8C14男野球ボールC0.15C0.3硝子体手術C99C316C917網膜下出血/脈絡膜破裂9C16男野球ボールC0.15C0.8硝子体手術C50C0C1,044脈絡膜破裂10C13男野球ボールC0.1C0.5硝子体手術C94C328C1,153C11C14男サッカーボールC0.03C0.2硝子体手術C106C530C980網膜振盪12C13男野球ボールC0.03C0.6硝子体手術C43C221C4,262網膜振盪/網膜下出血/脈絡膜破裂13C14男野球ボールC0.1C0.7硝子体手術C116C480C993網膜振盪14C14男野球ボールC0.15C0.5硝子体手術C120C664C1,762網膜振盪15C14男野球ボールC0.2C0.6硝子体手術C132C362C1,580網膜振盪/網膜下出血/再手術16C9女野球ボールC0.03C0.6硝子体手術C98C410C1,125C17C5男テニスボールC0.08C0.05硝子体手術C120C325C1,540網膜振盪/脈絡膜破裂II結果全症例の特徴と転機を表1に示す.性別は男性C16例,女性C1例,平均年齢はC12.5C±3.1歳(5.18歳)であった.受傷原因の内訳は野球ボールがC9例,サッカーボールがC3例,野球バットがC2例,テニスボールがC1例とスポーツに関する外傷がC83.3%であった.全症例のうち,円孔が自然閉鎖した症例がC7例で,受傷から円孔閉鎖までの平均期間はC43.0C±27.1日,硝子体手術を施行した症例はC10例で,受傷から手術までの平均期間はC97.8C±31.3日であった.手術後C1例は円孔閉鎖が得られず,再手術により円孔閉鎖し,最終的には全例が円孔閉鎖した.全例における初診時の平均ClogMAR視力はC1.07C±0.06で,円孔閉鎖後の平均ClogMAR視力はC0.33C±0.33と有意に改善した(p<0.01).自然閉鎖群の初診時平均ClogMAR視力はC1.02±0.29,円孔閉鎖後の平均ClogMAR視力はC0.22C±0.26,手術群の初診時平均ClogMAR視力はC1.08C±0.32,円孔閉鎖後の平均ClogMAR視力はC0.40C±0.36であり,両群間で初診時および円孔閉鎖後の視力において有意差はなかった.OCTで測定した最小黄斑円孔径および黄斑円孔底径は,自然閉鎖群では初診時の最小黄斑円孔径はC291.6C±133.7μm,黄斑円孔底径はC449.1C±109.0Cμm.手術群では初診時の最小黄斑円孔径はC363.6C±179.9Cμm,黄斑円孔底径は1,535.6±1,001.6Cμmであり,最小黄斑円孔径では有意差はなかったが,黄斑円孔底径は手術群で有意に大きかった(p<0.01).受傷後C2週間では,自然閉鎖群および手術群ともに,最小黄斑円孔径や黄斑円孔底径の有意な変化は認めなかった.受傷後C1カ月時点で,自然閉鎖群は最小黄斑円孔径C83.6±81.8Cμm,黄斑円孔底径C189.3C±131.8Cμmであり,有意に円孔径は縮小傾向であった(p<0.05)が,手術群では最小黄斑円孔径C552.9C±153.8μm,黄斑円孔底径C1,188.4C±675.0Cμmであり,最小黄斑円孔径が有意に拡大していた(p<0.05).自然閉鎖群と手術群それぞれの最小黄斑円孔径と黄斑円孔底径の経過を図3に示す.CIII考按外傷性黄斑円孔は眼球前方からの瞬間的な外力で眼球が圧排され,黄斑を含む網膜全体が遠心方向に牽引されることで生じると考えられている5).外力による黄斑部の進展によって生じるため,後部硝子体.離が生じていない若年者では,黄斑部網膜に接着した硝子体皮質が黄斑部と一緒に遠心方向に牽引され,外傷性黄斑円孔が生じやすい2,5).また,自然閉鎖の報告も多数あり,どの程度経過観察を行い硝子体手術に踏み切るかは,術者や施設に委ねられているのが現状である.成人を含めた外傷性黄斑円孔の自然閉鎖率は,既報ではabμmp<0.05μmp<0.056001,2005001,00040080030060020040010020000初診時2週4週8週初診時2週4週8週症例1症例2症例3症例4症例1症例2症例3症例4症例5症例6症例7症例5症例6症例7cμmp<0.05dμm9008007006005004003002001004,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000初診時2週4週8週0初診時2週4週8週症例8症例9症例10症例11症例12症例8症例9症例10症例11症例12症例13症例14症例15症例16症例17症例13症例14症例15症例16症例17図3自然閉鎖群と硝子体手術群の最小黄斑円孔径と黄斑円孔底径の経過a:自然閉鎖群の最小黄斑円孔径.初診時からC4週で有意に円孔が縮小した.Cb:自然閉鎖群の黄斑円孔底径.初診時からC4週で有意に円孔が縮小した.Cc:硝子体手術群の最小黄斑円孔径.初診時からC4週で有意に円孔が拡大した.Cd:硝子体手術群の黄斑円孔底径.円孔径に有意な変化はなかった.25.0.66.7%2,3,6,7)とかなりばらつきがあるが,小児の外傷性黄斑円孔ではC34.5.50%2,4,6,8)であり,成人とほぼ同等の自然閉鎖率である.筆者らの検討でも,41.2%の症例で自然閉鎖しており,既報と同等の結果であった.受傷から閉鎖までの期間は,既報ではC39.63日程度2,4)であり,本検討でも自然閉鎖群は平均C43日で円孔閉鎖を得られており,自然閉鎖はC2カ月前後に得られることが多い.一方,小児例においては,手術時に全身麻酔を必要とし,人工的な後部硝子体.離作製や水晶体温存での手術など,成人と比較し手術難度が高いことが問題となる.小児の外傷性黄斑円孔では自然閉鎖例が存在する以上,経過観察による円孔閉鎖を期待したくなるが,Millerら4)は受傷後C3カ月を超えた症例は硝子体手術の閉鎖率が低下することを報告している.また,過度の経過観察が弱視を惹起し,恒久的な視機能低下リスクになることが指摘されており2,8),受傷後C2.3カ月時点で円孔閉鎖が得られない場合は,小児であっても硝子体手術に踏み切る必要がある.小児外傷性黄斑円孔における硝子体手術は,成人に対する特発性黄斑円孔と同様に,円孔周囲の内境界膜.離を併用した硝子体手術が標準的な術式である.成人の外傷性黄斑円孔の閉鎖率は初回手術でC90%以上を達成した報告が多いが9,10),以前は小児外傷性黄斑円孔に対する硝子体手術は,後部硝子体と内境界膜の癒着が成人と比べて強く11),完全な後部硝子体.離を人工的に作製することは困難であり,網膜損傷,視野障害,硝子体出血が生じやすく,年齢が若い患者ほど手術成績が悪いことが指摘されていた5).しかし,近年では,Liuら2)は受傷後平均C13日の手術で,初回手術による閉鎖率はC14/18眼(77.8%),最終的に全例の円孔閉鎖を達成しており,Brennanら8)は受傷後平均C147日で内境界膜.離を併用した硝子体手術を施行し,初回閉鎖率C12/13眼(92.3%)を達成した.本検討でも内境界膜.離を併用した硝子体手術により,初回円孔閉鎖率はC9/10眼(90%),最終円孔閉鎖率はC100%であった.近年は黄斑円孔手術において,巨大円孔や陳旧性黄斑円孔のような難治性の黄斑円孔に,内境界膜翻転を併用した硝子体手術が考案され,円孔閉鎖率の大幅な改善がみられている12).本検討でも難治性症例では内境界膜翻転を併用していた.他にプラスミン併用硝子体手術13)やCbloodCcoating2)などの報告もあり,小児における外傷性黄斑円孔の治療成績も向上している.このことからも自然閉鎖の見込みが低いと考えられる場合は,積極的な硝子体手術を行い円孔の閉鎖を試みる価値があると思われる.一方で,どのような患者が黄斑円孔の自然閉鎖となるかは議論の余地がある.Chenら3)は初診時の円孔径が小さいこと,網膜内.胞がない症例は自然閉鎖する可能性が高いことを報告しているが,Liuら2)は円孔径がC400Cμm以上の症例でも,縮小傾向なら自然閉鎖の可能性があると指摘している.Millerら5)は同様に円孔径が縮小傾向なら自然閉鎖率が高いことを報告しており,初診時の円孔径は自然閉鎖とは関連しないと結論している.筆者らの検討では,初診時の時点では,最小円孔径は自然閉鎖群と手術群で有意差はなかったが,自然閉鎖群は初診時と比べて受診からC1カ月時点での最小黄斑円孔径や黄斑円孔底径が有意に縮小しており,逆に手術群では初診時と比べて受診からC1カ月時点での最小黄斑円孔径が有意に拡大していた.このことは,LiuやCMillerらの指摘と合致する.しかし,初診時と受診からC2週間時点での円孔径では,自然閉鎖群も手術群も円孔径は有意差がなかった点からは,少なくともC1カ月以上の経過観察が妥当と考えられる.しかし,受傷からC1カ月時点で黄斑円孔径が拡大傾向にあるのであれば,手術のリスクとベネフィットや患者の希望を考慮したうえで,手術時期を検討すべきであろう.今回の検討では,視力予後については自然閉鎖群と手術群で有意差はなく,どちらの群も初診時と比べて視力は改善しており,手術群でもC7/10眼(70.0%)で最終小数視力(0.6)以上を達成していた.過去の報告においても手術を要した症例でも術後は初診時より視力が改善し2,4,6,8),自然閉鎖群と視力予後は差がなかった2,6)ことが報告されている.Azevedoら14)は小児外傷性黄斑円孔の視力予後において,早期硝子体手術は安全で効果的な選択であり,手術のリスク/ベネフィット比は経過観察よりも優れていることを指摘した.一方で,外傷性黄斑円孔においては,外傷によるCellipsoidzoneや脈絡膜の損傷,網膜震盪や網膜.離の合併が,視力不良と関連することが知られており2,5),筆者らの検討でも最終小数視力が(0.3)以下の症例は,全例で網膜震盪や脈絡膜損傷を合併していた.解剖学的な黄斑円孔閉鎖が得られたとしても視力不良の患者が存在することは念頭に置くべきである.今回,当院における若年者外傷性黄斑円孔の臨床転帰を呈示した.成人の外傷性黄斑円孔と同じく,小児でも硝子体手術による黄斑円孔閉鎖によりある程度良好な視力が得られる可能性がある.自然閉鎖例もあり手術時期の判断はむずかしいが,硝子体手術による円孔閉鎖で視機能維持が期待できる場合も多数あるため,OCTによる黄斑円孔の形状変化を見逃さず,円孔の拡大があれば硝子体手術に踏み切る必要がある.文献1)Budo.CG,CBhagatCN,CZarbinMA:TraumaticCmacularhole:diagnosis,CnaturalChistory,CandCmanagement.CJCOph-thalmol2019;2019:58378322)LiuCJ,CPengCJ,CZhangCQCetal:Etiologies,Ccharacteristics,Candmanagementofpediatricmacularhole.AmJOphthal-molC210:174-183,C20203)ChenH,ChenW,ZhengKetal:Predictionofspontane-ousCclosureCofCtraumaticCmacularCholeCwithCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.CSciCRepC5:12343,C20154)MillerJB,YonekawaY,EliottDetal:Long-termfollow-upCandCoutcomesCinCtraumaticCmacularCholes.CAmCJCOph-thalmolC160:1255-1258Ce1,C20155)MillerJB,YonekawaY,EliottDetal:Areviewoftrau-maticmacularhole:diagnosisandtreatment.IntOphthal-molClinC53:59-67,C20136)YamashitaCT,CUemaraCA,CUchinoCECetal:SpontaneousCclosureCofCtraumaticCmacularChole.CAmCJCOphthalmolC133:230-235,C20027)ChenCHJ,CJinCY,CShenCLJCetal:TraumaticCmacularCholestudy:amulticentercomparativestudybetweenimmedi-ateCvitrectomyCandCsix-monthCobservationCforCspontane-ousclosure.AnnTranslMedC7:726,C20198)BrennanCN,CReekieCI,CKhawajaCAPCetal:Vitrectomy,CinnerClimitingCmembraneCpeel,CandCgasCtamponadeCinCtheCmanagementCofCtraumaticCpaediatricCmacularholes:aCcaseseriesof13patients.OphthalmologicaC238:119-123,C20179)KuhnF,MorrisR,MesterVetal:Internallimitingmem-braneCremovalCforCtraumaticCmacularCholes.COphthalmicCSurgLasersC32:308-315,C200110)BorC’iCA,CAl-AswadCMA,CSaadCAACetal:ParsCplanaCvit-rectomywithinternallimitingmembranepeelingintrau-maticmacularhole:14%per.uoropropane(CC3F8)versussiliconeCoilCtamponade.CJCOphthalmol2017;2017:C391769611)SebagJ:Age-relateddi.erencesinthehumanvitreoreti-nalinterface.ArchOphthalmolC109:966-971,C199112)MichalewskaCZ,CMichalewskiCJ,CAdelmanCRACetal:CInvertedCinternalClimitingCmembraneC.apCtechniqueCforClargeCmacularCholes.COphthalmologyC117:2018-2025,C201013)WuWC,DrenserKA,TreseMTetal:Pediatrictraumat-icCmacularhole:resultsCofCautologousCplasminCenzyme-assistedCvitrectomy.CAmCJCOphthalmolC144:668-672,C200714)AzevedoS,FerreiraN,MeirelesA:anagementofpediat-rictraumaticmacularholesC─Ccasereport.CaseRepOph-thalmolC4:20-27,C2013***

眼科受診を契機に診断された化膿性脊椎炎を伴う 猫ひっかき病の1 例

2023年4月30日 日曜日

《第58回日本眼感染症学会原著》あたらしい眼科40(4):544.551,2023c眼科受診を契機に診断された化膿性脊椎炎を伴う猫ひっかき病の1例篠原大輔*1林孝彰*1大庭好弘*2筒井健介*2根本昌実*2中野匡*3*1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科*2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター総合診療部*3東京慈恵会医科大学眼科学講座CACaseofCatScratchDiseasewithPyogenicSpondylitisDiagnosedafteranOphthalmologicalAssessmentDaisukeShinohara1),TakaakiHayashi1),YoshihiroOhba2),KensukeTsutsui2),MasamiNemoto2)andTadashiNakano3)1)DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversityKatsushikaMedicalCenter,2)DivisionofGeneralMedicine,TheJikeiUniversityKatsushikaMedicalCenter,3)DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversitySchoolofMedicineC目的:不明熱の精査中,眼症状と脊椎炎症状を呈し,眼科受診を契機に猫ひっかき病と診断されたC1例を報告する.症例:患者はC54歳,女性.約C1カ月前より持続する弛張熱に対して内科的精査が行われたが,原因を特定することができなかった.腰部の圧痛所見もみられた.右眼霧視と飛蚊症の自覚があり,眼科受診となった.視力は右眼(0.8),左眼(1.2)で,右眼眼底に網膜出血を伴う滲出斑と局所的な星芒状白斑を認めた.また,両眼の視神経乳頭周囲に複数の白色病巣がみられた.OCT検査では右眼黄斑部に漿液性網膜.離と視神経乳頭周囲網膜神経線維層の肥厚を認めた.視神経網膜炎を疑う眼底所見から,猫ひっかき病を鑑別にあげ血清学的検査を施行し,BartonellaChenselaeに対する抗体価の陽性を認め診断が確定した.脊椎CMRIでは椎体に多数の異常信号を認め,化膿性脊椎炎と診断された.抗菌薬投与後,右眼視力(1.2)となり,眼底所見,全身性の炎症所見ならびに脊椎CMRI所見も改善した.結論:眼底所見が軽微であっても視神経網膜炎を疑うCOCT所見がみられれば,猫ひっかき病を鑑別にあげることが重要と考えられた.CPurpose:Toreportacaseofcatscratchdisease(CSD)diagnosedafteranophthalmologicalassessmentinapatientwhopresentedwithocularandspondylitissymptomswhileundergoingadetailedmedicalexaminationforafeverofunknownorigin.Casereport:A54-year-oldfemaleunderwentamedicalexaminationforaremittentfeverthathadpersistedforapproximately1month,yetthecausewasindeterminate.Therewasalsoa.ndingoftendernessinherlowerback,andshecomplainedofblurredvisionanda.oaterinherrighteyeandvisitedourophthalmologyCdepartment.CUponCexamination,CherCbest-correctedCvisualacuity(BCVA)wasC0.8CODCandC1.2COS.CFunduscopyCrevealedCanCexudativeClesionCwithCretinalChemorrhageCandChardCstellateCexudatesCfocallyCinCtheCrightCeye,CandCmultipleCwhiteCspotsCwereCfoundCaroundCtheCopticCdiscsCinCbothCeyes.COpticalCcoherenceCtomography(OCT)revealedaserousmacularretinaldetachmentandthickeningofthecircumpapillaryretinalnerve.berlay-erintherighteye.Basedonthose.ndingsofsuspectedopticneuroretinitis,CSDwaslistedasadi.erentialdiag-nosisthatwaslatercon.rmedbyserologicaltestingthatshowedpositiveantibodytitersagainstBartonellaChense-lae.CSpinalCMRIC.ndingsCrevealedCmultipleCabnormalCsignalsCinCtheCvertebralCbodies,CdiagnosedCasCpyogenicCspondylitis.CAfterCtheCadministrationCofCantibacterialCdrugs,CherCBCVACrecoveredCtoC1.2,CandCtheCfundusC.ndings,CsystemicCin.ammatoryC.ndings,CandCspinalCMRIC.ndingsCalsoCimproved.CConclusion:WhenCOCTC.ndingsCofCsus-pectedCopticCneuroretinitisCareCfound,CitCisCimportantCtoCconsiderCCSDCasCaCdi.erentialCdiagnosis,CevenCthoughCtheCfundus.ndingsareminimal.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(4):544.551,C2023〕Keywords:不明熱,化膿性脊椎炎,視神経網膜炎,猫ひっかき病,光干渉断層計.feverofunknownorigin,pyo-genicspondylitis,opticneuroretinitis,catscratchdisease,opticalcoherencetomography.C〔別刷請求先〕林孝彰:〒125-8506東京都葛飾区青戸C6-41-2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科Reprintrequests:TakaakiHayashi,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,TheJikeiUniversityKatsushikaMedicalCenter,6-41-2Aoto,Katsushika-ku,Tokyo125-8506,JAPANC544(112)はじめに猫ひっかき病はネコのひっかき傷や咬傷が原因となり,受傷部位の所属リンパ節腫大や発熱を主徴とする人獣共通感染症であり,1992年にグラム陰性桿菌であるBartonellahenselae(B.henselae)が病原体であることが明らかになった1).わが国では,猫ひっかき病患者数の全国的な統計調査が行われていないため,年間発生患者数は不明である.典型例では抗菌薬投与を行わなくてもC4.8週間で自然治癒するとされているが2),近年血清学的診断法が確立したことで,眼症状や中枢神経症状のみを呈する症例や,抗菌薬不応例,膠原病類似症例などの非定型例の報告も散見される3,4).一方,猫ひっかき病患者は必ずしも眼症状を訴えるわけではないため,眼科医が日常診療で経験する機会は決して多くない.今回筆者らは,弛張熱で発症し眼科受診を契機に診断された,化膿性脊椎炎を伴う猫ひっかき病のC1例を経験したので報告する.CI症例患者:54歳,女性.主訴:右眼の霧視および飛蚊症.現病歴:約C1カ月前よりC38℃前後の発熱が持続し,10日前に近医内科を受診した.咳嗽を認めたが,胸部CX線検査では異常はなかった.血液検査で白血球の上昇はなく,CRPの著明な上昇を認め,ウイルス感染が疑われた.肝酵素も軽度上昇していたが,Epstein-Barrウイルス(EBウイルス)に対する抗CEBNA抗体は陽性も抗CVCAIgM抗体は陰性であり,腹部エコーでも胆石以外の明らかな異常所見はなかった.細菌感染も鑑別にあげ,セフェム系抗菌薬内服が開始されたが,その後も弛張熱が持続し,3日前に東京慈恵会医科大学葛飾医療センター(以下,当院)総合診療部に紹介受診となった.身体診察では腰椎中央部に圧痛を認めた.また,右眼の霧視および飛蚊症の自覚があり,当院眼科初診となった.既往歴:片頭痛,脂質異常症,不正性器出血.初診時所見:矯正視力は右眼C0.2(0.8C×sph+1.00D(cylC.0.50DAx75°),左眼C0.9(1.2×+1.25D(cyl.0.50DAx125°),眼圧は正常範囲内であった.前房内の細胞浮遊は明らかでなかったが,両眼に微細な角膜後面沈着物,前部硝子体中に色素散布がみられた.右眼底所見として,網膜出血を伴う滲出斑そして視神経乳頭鼻側に複数の白色病巣を認め,中心窩から上方にかけて星芒状白斑が局所的にみられた(図1a,b).左眼にも視神経乳頭周囲に複数の白色病巣を認めた(図1c).硝子体混濁はみられなかった.光干渉断層計(opti-calCcoherencetomography:OCT,CirrusCHD-OCT5000)検査では右眼黄斑部に漿液性網膜.離の所見を認め,中心窩鼻側に小さな高輝度病変が外網状層に観察された(図2a).右眼の網膜厚は全体的に肥厚し,下方網膜静脈の肥厚が両眼でみられた(図2a,b).黄斑部の漿液性網膜.離が右眼視力低下の原因と考えられた.不明熱に対して,総合診療部で詳細な全身検査が行われた.血液検査所見:白血球C7,600/μl(白血球分画:好中球C58.5%,リンパ球C31.8%,単球C8.9%,好酸球C0.3%,好塩基球0.5%),CRP14.78Cmg/dl,プロカルシトニンC0.08Cng/ml,血沈(1時間値)77Cmm,赤血球数,血小板数,腎機能,電解質に異常なし,AST40CU/l,ALT37CU/l,LDH282CU/l,CT-Bil0.8Cmg/dl,ALP443CU/l,Cc-GTP62CU/l,PT-INR0.97,APTT31.2秒,Fbg666Cmg/dl,FDP11.1Cμg/ml,リウマトイド因子陰性,抗核抗体陰性,IgG2,646Cmg/dl,CIgA362mg/dl,IgM177mg/dl,C3162mg/dl,CH5057.5CU/ml,PR3-ANCA1.0CU/ml未満,MPO-ANCA1.0CU/ml未満,アンギオテンシンCI変換酵素(ACE)12.6CU/l,可図1初診時眼底写真a:右眼に網膜出血を伴う滲出斑,そして視神経乳頭鼻側に複数の白色病巣を認める.Cb:右黄斑部の拡大写真で,中心窩から上方にかけて星芒状白斑が局所的にみられる.c:左眼の視神経乳頭周囲に複数の白色病巣を認める.ab図2初診時OCT画像(a:右眼,b:左眼)a:右眼黄斑部に漿液性網膜.離の所見を認め,中心窩鼻側に小さな高輝度病変(→)が外網状層に観察される.網膜厚は全体的に肥厚している.下方網膜静脈の肥厚がみられる.Cb:左眼でも,下方網膜静脈の肥厚がみられる.図3初診から4日後の右眼滲出斑のOCT画像硝子体側に隆起した高反射病変が外顆粒層に及び,深部の信号はブロックされている.溶性IL-2レセプター(sIL-2R)1,210U/ml,抗ds-DNAIgG抗体C10CIU/ml未満,抗CSm抗体陰性,抗CRNP抗体陰性,抗CSS-A抗体陰性,マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)48.1Cng/ml,フェリチンC988Cng/ml,甲状腺刺激ホルモン(TSH)3.46CμIU/ml,FT41.33Cng/dl,抗ストレプトリジンCO抗体C78CIU/ml,HBs抗原陰性,HCV抗体陰性,梅毒CRPR陰性,梅毒CTP抗体陰性,T-SPOT.TB陰性,サイトメガロウイルスCIgG抗体陽性,サイトメガロウイルスCIgM抗体陰性,サイトメガロウイルスCpp65抗原CC7-HRP陰性,EBウイルス核酸定量陰性,HTLV-1抗体陰性,トキソプラズマCIgG抗体陰性,トキソプラズマCIgM抗体陰性,b-D-グルカンC6.0Cpg/ml未満,カンジダ抗原陰性,クリプトコッカス抗原陰性,寄生虫抗体スクリーニング陰性という結果であった.高度の炎症反応,肝胆道系酵素軽度上昇,sIL-2R上昇,フェリチン上昇を認めた.尿検査:pH6.5,尿比重C1.010,蛋白陰性,潜血陰性,赤血球C0-1/HPF(highpower.eld),白血球C1-4/HPF.培養検査:血液培養,尿培養,咽頭抗酸菌培養検査はいずれも陰性であった.経胸壁心エコー:疣贅など感染性心内膜炎を疑う所見を認めなかった.側頭動脈エコー:壁肥厚など巨細胞性動脈炎を疑う所見を認めなかった.頭部・頸部コンピュータ断層撮影(computedCtomogra-phy:CT):頭蓋内・頭頸部に明らかな異常所見を認めなかった.胸部CCT:右肺中葉の陳旧性炎症以外に明らかな所見を認めなかった.腹部CCT:脂肪肝,胆.結石,軽度脾腫大のほかに明らかな所見を認めなかった.経過:眼科初診からC4日後の右眼滲出斑のCOCT所見として,硝子体側に隆起した高反射病変が外顆粒層におよび,深部の信号はブロックされていた(図3).フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)検査では,右眼滲出斑の組織染による過蛍光と出血部の蛍光ブロックを認めたが,両眼ともに明らかな網膜血管炎を示唆する所見はみられなかった(図4).FAの造影後期相で両眼視神経に軽度の過蛍光所見を認めた(図4).OCTによる視神経乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer:cpRN-FL)厚は,左眼に比べ右眼で肥厚していた.臨床経過ならびに右眼の視神経網膜炎を疑う眼底所見から,精査されていなかった猫ひっかき病の可能性も考慮し,内科で詳細な問診を行ったところ,動物との接触歴があることが判明し,ネコによる咬傷の既往を聴取した.バルトネラ感染症を鑑別にあげ,血清学的検査を施行した.眼科初診からC11日後,総合診療部に入院し猫ひっかき病を疑い,ミノサイクリン点滴(初回C300Cmg/日,その後C200mg/日)とリファンピシンC300Cmg/日の内服を開始した.同日施行した脳脊髄液検査所見は初圧C12CcmHC2O,細胞数C2/μl,52Cmg/dl,蛋白C18.6Cmg/dl,乳酸C13.9Cmg/dl,抗酸菌図4初診から4日後のフルオレセイン蛍光造影写真上段が右眼,下段が左眼で,各写真の右上に造影開始からの時間経過を示す.造影開始C19秒からC10分C10秒にかけて,右眼滲出斑に一致して,組織染による過蛍光と出血部の蛍光ブロックを認める.両眼ともに明らかな網膜血管炎を示唆する所見はみられない.後期相(右眼:10分C10秒,左眼:10分)で両眼視神経に軽度の過蛍光所見を認める.培養陰性であり,細胞診で腫瘍性病変を認めなかった.その後,腰部圧痛の精査目的に施行した脊椎磁気共鳴画像(magneticresonanceimaging:MRI)で,胸椎・腰椎の椎体に多数の異常信号を認め,T1強調像(図5a)で低信号を,T2強調像(図5b)では高信号を示し脊椎炎が疑われた.抗菌薬開始後もCCRP値C10.14Cmg/dlで経過したが,全身状態はやや改善し,体温もC37℃を下回るようになり,9日間の入院後退院となり,ミノサイクリン点滴をドキシサイクリンC100Cmg/日の内服に変更した.眼科初診からC20日後,抗CB.henselaeIgM抗体C20倍,IgG抗体C1,024倍以上とともに陽性であることが判明し,猫ひっかき病と診断した.その後,軽度肝機能障害が出現したため,抗菌薬をスルファメトキサゾールC400mg/トリメトプリムC80Cmg(ST)合剤に変更,その後CCRP3.30Cmg/dlと著明に低下した.椎体CMRIの異常信号は,猫ひっかき病による化膿性脊椎炎と診断された.眼科初診から約C1カ月後,右眼視力は(1.2)に改善,右眼眼底の滲出斑は縮小し,局所的にみられた星芒状白斑が初診時に比べ明瞭化していた(図6a).一方,左眼でみられた視神経乳頭周囲の白色病巣は消失した.また,右眼COCTでみられた漿液性網膜.離は消退し(図6b),肥厚していたcpRNFL厚も改善した.その後,ST合剤による薬疹が疑われ,シプロフロキサシンC600Cmg/日内服に変更し,約C1カ月間服用した.眼科初診からC2.5カ月後,ドキシサイクリン200mg/日の内服に変更,約C2カ月間の服用後終了となった.眼科初診から約C7カ月後の血清学的検査で,抗CB.ChenselaeIgM抗体は陰性化し,IgG抗体はC256倍に低下した.また,脊椎CMRIでは胸椎・腰椎ともに異常信号はほぼ消失した(図5c).眼科最終受診時(初診からC11カ月後),右眼視力(1.5)で,眼底所見の悪化はなかった.経過中,左眼視力は(1.2)を維持していた.ac図5脊椎MRI画像入院後の胸椎・腰椎の椎体に多数の異常信号を認め,T1強調像(Ca)で低信号を,T2強調像(Cb)では高信号を示す.眼科初診から約C7カ月後のCT2強調像(Cc)で異常信号はほぼ消失している.CII考按本症例はC3週間以上持続する弛張熱で発症し,不明熱として精査された.感染症をはじめ,膠原病やその他の非感染性炎症性疾患,悪性腫瘍などを鑑別疾患としてあげていたが,原因を特定することができなかった.総合診療部の問診で聴取された右眼の霧視と飛蚊症が眼科受診のきっかけとなり,猫ひっかき病の診断につながった.猫ひっかき病に伴う眼所見としては,Parinaud眼腺症候群,前部ぶどう膜炎,視神経乳頭腫脹,黄斑部星芒状白斑,漿液性網膜.離,網脈絡膜滲出斑,網膜出血,まれに網膜中心動脈分枝閉塞症などの報告がある5.8).FukudaらのC15例19眼の検討において8),眼底病変は,網膜白色斑/滲出斑(84%),網膜出血(63%),視神経病変(63%),漿液性網膜.離(53%),黄斑部星芒状白斑(47%)の順に多かったと報告されている.本症例では微細な角膜後面沈着物を両眼に認め,眼底所見で,右眼に網膜出血を伴う眼底滲出斑,漿液性網膜.離,また視神経網膜炎を疑う局所的な星芒状白斑(図1a,b,2a)とCOCTでの視神経乳頭周囲網膜神経線維層の肥厚を認め,視神経乳頭周囲の白色病巣(図1a,c)ならびに下方網膜静脈肥厚は両眼にみられた(図2).左眼の眼底所見は軽微であったが,いずれも猫ひっかき病でみられる所見であり,不明熱の原因疾患にあげるきっかけとなった.過去に報告された猫ひっかき病C24例の検討では9),13例(54%)が片眼性でC11例(46%)が両眼性であった.両眼性と診断されたC6例に星芒状白斑がみられ,いずれも片眼性であった9).このように両眼性であっても,左右眼で異なる眼底所見を示すことが,猫ひっかき病の特徴であるかもしれない.猫ひっ図6初診から1カ月後の右眼底写真とOCT画像a:右眼の眼底写真で,滲出斑は縮小し,局所的にみられた星芒状白斑が初診時に比べ明瞭化している.Cb:右眼COCTで,初診時にみられた漿液性網膜.離は消退している.かき病患者で視神経網膜炎を呈する頻度はC1.2%程度と考えられているが,逆に視神経網膜炎を発症した患者においては,約C6割の症例で血清学的にCB.henselaeの既感染が示されたとの報告がある10).視神経網膜炎は,視神経乳頭の腫脹と黄斑部の星芒状白斑が特徴的な所見であり,トキソプラズマ症やトキソカラ症などの感染症や,サルコイドーシス・Behcet病などでもみられるほかに,高血圧症・糖尿病・網膜静脈分枝閉塞症・頭蓋内圧亢進症・前部虚血性視神経症でも類似の所見を呈することがある11).そのため,他疾患を鑑別する必要があるものの,猫ひっかき病を疑ううえでは有用な所見と考えられる.局所または多発する網脈絡膜炎を合併する場合には,さらに猫ひっかき病の可能性が高くなるといわれている10).眼病変の発症機序は不明であるが,全身の炎症症状とは同時期に発生しないことが多く,B.henselaeの直接的な眼内感染以外にも,菌体由来の弱毒性のエンドトキシンの関与や,抗菌薬により破壊された菌体成分に関連する抗原による遅延型アレルギーの関与も考えられている12).視神経網膜炎やその他の眼所見に対し,ステロイドの局所または全身投与を行った報告も多数あるが3,6,13),本症例ではCB.henselaeに対する初期治療としてテトラサイクリン系抗菌薬に加えリファンピシンを投与し,その後,ST合剤へ変更し,眼所見ならびに全身の炎症所見はとともに改善した.B.henselaeは,細胞内寄生菌であるため,テトラサイクリン系やマクロライド系抗菌薬に感受性がある.本症例のように視機能障害が軽度で眼底所見が軽微であった場合には,眼科的に必ずしもステロイドの全身投与は必要ないかもしれない.本症例では全身性の高度炎症所見を認めたものの,プロカルシトニン値は基準範囲内であった.過去に猫ひっかき病と診断されたケースで,本症例と同様にCCRP高値にもかかわらずプロカルシトニン値が基準範囲内であった報告がある14,15)一方,プロカルシトニン値が上昇した報告例もあった16).一般的に,プロカルシトニンは敗血症などの重症細菌感染症で上昇することが知られている.過去の報告と照らし合わせると,本症例でプロカルシトニン値が基準範囲内であった理由として,重症細菌感染症の病態に至っていなかった可能性が考えられた.また,本症例では全身性の炎症所見や眼所見の他に,腰部の圧痛とCMRIでの脊椎の異常信号を認めた.画像所見からは,感染症のほか,非感染性炎症性疾患に関連した脊椎関節炎・骨髄炎,血液腫瘍,転移性腫瘍なども考慮されたが,抗菌薬投与により発熱や眼所見とともに画像所見も消退したことから,猫ひっかき病に伴う化膿性脊椎炎と考えられた.B.henselaeは血行性・リンパ行性もしくは隣接部に炎症が波及し,多臓器に影響を及ぼすことがあり,心内膜炎や肝臓・脾臓の多発性肉芽腫性病変,脳炎・髄膜炎・脊髄炎による神経症状の報告がある17).まれではあるが骨髄炎も引き起こし,猫ひっかき病患者のC0.1.0.3%に発症すると報告されている17,18).骨病変の部位としては脊椎・四肢骨・骨盤・.骨・頭蓋骨の報告があり,周囲の軟部組織へ炎症が波及したり,膿瘍を形成したりする症例もある17,18).発熱と骨髄炎発症部位の圧痛以外の明らかな所見を認めずに,診断に苦慮する症例に対して,骨病変を生検しCpolymeraseCchainreaction検査でCB.ChenselaeDNAが証明された報告例もあり17),骨髄炎は免疫機序というよりは骨への直接的な感染によるものと考えられる.また,感染が全身に波及し,肝脾腫や画像上で肝臓・脾臓の異常影を合併することも多い18,19).脊椎の骨髄炎に関して,抗菌薬投与が行われる症例がほとんどで,手術を要した症例も報告されているが,生命予後は良好とされている17).脊椎炎のCMRI所見として,T1強調像で低信号を,T2強調像では高信号を示すことが多く19),本症例も同様であった(図5a,b).また,本症例でも腹部CCTで軽度の脾腫が指摘されており,これまでの報告と同様に,全身へ感染が波及していた所見の一つと考えられた.本症例を経験し,眼底所見が軽微であっても視神経網膜炎を疑う所見がみられれば猫ひっかき病を鑑別にあげることが重要で,本疾患の診断において,眼科医の果たす役割は大きいと考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)RegneryCRL,COlsonCJG,CPerkinsCBACetal:SerologicalCresponseCto“RochalimaeaChenselae”antigenCinCsuspectedCcat-scratchdisease.LancetC339:1443-1445,C19922)土田里香:猫ひっかき病.小児科診療C65:118-119,C20023)藤井寛,清水浩志,阿部祥子ほか:弛張熱と眼底隆起性病変を伴う網脈絡膜炎を認めた猫ひっかき病の女児例.小児科臨床C57:1012-1016,C20044)池田衣里,南博明,福田和由ほか:間欠熱で発症した非定型的猫ひっかき病のC1例.小児科臨床C73:437-441,C20205)ZaccheiCAC,CNewmanCNJ,CSternbergP:SerousCretinalCdetachmentofthemaculaassociatedwithcatscratchdis-ease.AmJOphthalmolC120:796-797,C19956)小林かおり,古賀隆史,沖輝彦ほか:猫ひっかき病の眼底病変.日眼会誌C107:99-104,C20037)溝渕朋佳,天野絵梨,谷口義典ほか:ぶどう膜炎,視神経網膜炎,無菌性髄膜炎を呈した猫ひっかき病のC2例.日内会誌C106:2611-2617,C20178)FukudaCK,CMizobuchiCT,CKishimotoCTCetal:ClinicalCpro.leCandCvisualCoutcomeCofCintraocularCin.ammationCassociatedCwithCcat-scratchCdiseaseCinCJapaneseCpatients.CJpnJOphthalmolC65:506-514,C20219)SolleyCWA,CMartinCDF,CNewmanCNJCetal:CatCscratchdisease:posteriorsegmentmanifestations.OphthalmologyC106:1546-1553,C199910)CunninghamCET,CKoehlerJE:OcularCbartonellosis.CAmJOphthalmolC130:340-349,C200011)KsiaaI,AbrougN,MahmoudAetal:UpdateonBarton-ellaneuroretinitis.JCurrOphthalmolC31:254-261,C201912)棚成都子,堤清史,望月學ほか:ネコひっかき病にみられた限局性網脈絡膜炎のC1例.眼紀50:239-243,C199913)徳永孝史,渡久地鈴香,島袋美起子ほか:眼底所見が診断の契機となった非典型猫ひっかき病のC2例.那覇市立病院医学雑誌C7:47-51,C201514)DureyCA,CKwonCHY,CImCJHCetal:BartonellaChenselaeCinfectionCpresentingCwithCaCpictureCofCadult-onsetCStill’sCdisease.IntJInfectDisC46:61-63,C201615)TirottaCD,CMazzeoCV,CNizzoliM:HepatosplenicCcatscratchdisease:Descriptionoftwocasesundergoingcon-trast-enhancedCultrasoundCforCdiagnosisCandCfollow-upCandsystematicliteraturereview.SNComprClinMedC3:2154-2166,C202116)SodiniC,ZaniEM,PecoraFetal:Acaseofatypicalbar-tonellosisCinCaC4-year-oldCimmunocompetentCchild.CMicro-organismsC9:950,C202117)VermeulenCMJ,CRuttenCGJ,CVerhagenCICetal:TransientCparesisCassociatedCwithCcat-scratchdisease:caseCreportCandliteraturereviewofvertebralosteomyelitiscausedbyBartonellaChenselae.PediatrCInfectCDisCJC25:1177-1181,C200618)VerdonR,Ge.rayL,ColletTetal:Vertebralosteomyeli-tisCdueCtoCBartonellaChenselaeCinadults:aCreportCofC2Ccases.ClinInfectDisC35:e141-e144,C200219)NotoT,FukuharaJ,FujimotoHetal:Bonemarrowsig-nalsCwithoutCosteolyticClesionsConCmagneticCresonanceCimagingCinCaC4-year-oldCpatientCwithCcat-scratchCdisease.CPediatrIntC62:242-244,C2020***

上方視神経低形成における網膜内層菲薄化の検出に有用な 光干渉断層計パラメータの検討

2023年3月31日 金曜日

《原著》あたらしい眼科40(3):420.427,2023c上方視神経低形成における網膜内層菲薄化の検出に有用な光干渉断層計パラメータの検討川口由夏*1後藤克聡*1三木淳司*1,2荒木俊介*1家木良彰*1桐生純一*1*1川崎医科大学眼科学1教室*2川崎医療福祉大学リハビリテーション学部視能療法学科COpticalCoherenceTomographyParametersUsefulforDetectingInnerRetinalLayerThinninginSuperiorSegmentalOpticHypoplasiaYukaKawaguchi1),KatsutoshiGoto1),AtsushiMiki1,2),SyunsukeAraki1),YoshiakiIeki1)andJunichiKiryu1)1)DepartmentofOphthalmology1,KawasakiMedicalSchool,2)DepartmentofSensoryScience,FacultyofRehabilitation,KawasakiUniversityofMedicalWelfareC目的:上方視神経低形成(SSOH)における網膜内層菲薄化の検出に有用な光干渉断層計(OCT)パラメータを検討した.対象および方法:対象はCSSOH群C19例C33眼,正常群C34例C34眼である.OCTによる乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)および神経節細胞複合体(GCC)パラメータをC2群間で比較し,ROC曲線下面積(AUC)を求めた.結果:SSOH群のCcpRNFL厚は耳側および下耳側を除く領域で正常群よりも有意に減少し,減少率はC16セクター解析での上鼻側(SN1)(41.3%)でもっとも高かった.GCC厚は上半側でCSSOH群C87.7Cμm,正常群C95.7Cμmであった.cpRNFL厚のC8セクター解析における上耳側+上鼻側/下耳側+下鼻側の比(ST+SN/IT+IN比)はCSSOH群C0.62,正常群C0.89,GCC厚の上半側/下半側の比(S/I比)はCSSOH群C0.92,正常群C0.99といずれも有意差がみられた(各Cp<0.001).AUCはCcpRNFL厚のC8セクター解析においてCSN0.98,ST+SN/IT+IN比C0.99,GCC厚ではCS/I比C0.81であった.結論:SSOHの網膜内層菲薄化の検出にはCcpRNFL厚の上鼻側およびCST+SN/IT+IN比が有用であることが示唆された.CPurpose:ToCcompareCopticalCcoherencetomography(OCT)parametersCusefulCforCdetectingCinnerCretinalthinninginsuperiorsegmentaloptichypoplasia(SSOH).SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved33eyesof19SSOHCpatientsCandC34CeyesCofC34CnormalChealthyCcontrolCsubjects.CUsingCOCT,CtheCcircumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer(cpRNFL)andganglioncellcomplex(GCC)parameterswerecomparedbetweenthetwogroups,andtheCareaCunderCtheCreceiverCoperatingCcharacteristiccurve(AUC)wasCdetermined.CResults:TheCcpRNFLCthick-nessintheSSOHgroupwassigni.cantlylowerthanthatinthecontrolgroupinallregionsexceptthetemporalandCinferiorCtemporalCsectors,CwithCtheChighestCreductionCrateCatCtheCsuperiorCnasal1(SN1)sector(41.3%)inCaC16-sectoranalysis.GCCthicknessatsuperiorhemispherewas87.7CμmintheSSOHgroupand95.7Cμminthecon-trolCgroup.CThereCwereCsigni.cantCdi.erencesCinCtheCsuperiorCtemporal+superiorCnasal/inferiorCtemporal+inferiorCnasalratio(ST+SN/IT+INratio)atCanC8-sectorCanalysisCinCcpRNFLCthickness,Ci.e.,C0.62CinCtheCSSOHCgroupCandC0.89CinCtheCcontrolCgroup,CandCinCtheCsuperior/inferiorratio(S/Iratio)ofCGCCCthickness,Ci.e.,C0.92CinCtheCSSOHCgroupCandC0.99CinCtheCcontrolgroup(p<0.001,respectively).CTheCAUCCwasC0.98CatCtheCsuperiorCnasalCsectorCinCcpRNFLthickness,0.99atST+SN/IT+INratioin8-sectoranalysis,and0.81inGCCthicknessS/Iratio.Conclu-sion:ThesuperiornasalsectorandST+SN/IT+INratioofthecpRNFLthicknessareusefulfordetectinginnerretinalthinninginSSOH.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(3):420.427,C2023〕Keywords:上方視神経低形成,光干渉断層計,神経節細胞複合体,網膜神経線維層,視野障害.superiorsegmen-taloptichypoplasia,opticalcoherencetomography,ganglioncellcomplex,retinalnerve.berlayer,visual.ledde-fect.C〔別刷請求先〕川口由夏:〒701-0192岡山県倉敷市松島C577川崎医科大学眼科学C1教室Reprintrequests:YukaKawaguchi,DepartmentofOphthalmology1,KawasakiMedicalSchool,577Matsushima,Kurashiki,Okayama701-0192,JAPANC420(138)はじめに上方視神経低形成(superiorCsegmentalCopticChypopla-sia:SSOH)は先天性の視神経乳頭異常であり,視力良好でMariotte盲点に連なる下方から耳側にかけて楔状の非進行性視野障害を呈する疾患である1).SSOHの眼底所見の特徴として,網膜中心動脈の上方偏位,上方視神経乳頭の蒼白,上方乳頭周囲の強膜ハロー,乳頭上鼻側における網膜神経線維層の菲薄化があげられる2).SSOHの診断には,特徴的な視神経乳頭の検眼鏡的所見や視野検査における楔状視野欠損の検出に加えて,共焦点走査型レーザー検眼鏡や光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomog-raphy:OCT)を用いた画像検査の有用性が報告されている3.11).しかし,OCTによる検討では乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer:cpRNFL)のみを解析した報告が多く4.6,8,9),神経節細胞複合体(gangli-oncellcomplex:GCC)をはじめとする黄斑部網膜内層厚を詳細に検討した報告は少ない7,10).さらに,筆者らが調べた限り黄斑部網膜内層の菲薄化検出に有用なパラメータを検討した報告はない.そこで本研究は,OCTを用いてCSSOHにおける視神経乳頭周囲および黄斑部の網膜内層菲薄化の検出に有用なCOCTパラメータを検討することを目的とした.CI対象および方法1.対象川崎医科大学倫理委員会の承認のもと,ヘルシンキ宣言に基づき後ろ向き観察研究を行った.対象はC2013年C2月.2021年C1月に川崎医科大学附属病院眼科を受診し,OCTおよび眼底カメラ,Humphrey静的視野計(HumphreyCFieldAnalyzer:HFA)またはCGoldmann視野計による視野検査を行い,SSOHと診断され,本研究に対してオプトアウトによる包括同意が得られた患者である.SSOHの診断は,Yamamotoら12)の報告に基づき上鼻側の視神経乳頭縁の菲薄化,上鼻側の神経線維層欠損かつ下方の楔状視野欠損を伴うものとし,緑内障専門医(Y.I.)と神経眼科医(A.M.)のC2名によって行われた.対象の除外基準は,C.6.00Cdiopter(D)未満の高度近視,緑内障,他の視神経および網膜疾患を合併した症例とした.対照群は,両眼ともに矯正視力がC1.0以上で,屈折異常は+2.75.C.5.75Dで,眼圧検査,細隙灯顕微鏡による前眼部検査,HFA30-2SITA-Standard,眼底検査,眼底写真,spectral-domainOCT(SD-OCT)を施行し,軽度白内障を除いて明らかな異常所見がなかった正常眼とし,ランダムに選択した片眼のデータを解析に用いた.HFAにおける正常の判定は,パターン偏差確率プロットでCMariotte盲点の上下のC2点を除く部位において,少なくともCp<5%の連続したC3点,p<0.5%またはC1%のC1点が存在せず,95%信頼区間やCglaucomaChemi.eldtestにおいて正常範囲内である場合と定義した.なお,固視不良,偽陽性,偽陰性がそれぞれC20%未満のデータを解析に用いた.C2.OCTによる網膜内層厚測定SD-OCTはCRTVue-100(Optovue社)を使用し,ソフトウェアCversion4.0で解析した.cpRNFL厚は,opticCnerveCheadmap(ONH)プログラムを用い,視神経乳頭を中心としたC4.9Cmmの範囲を長さC3.4CmmのC12本の放射状ラインスキャンとC13本の同心円リング(1.3.4.9Cmm径)で測定した.cpRNFL解析では,視神経乳頭中心から直径C3.45Cmm円周上のCcpRNFL厚が算出される(図1a).cpRNFLパラメータは全体,上半側(superior),下半側(inferior)の各平均値,上半側/下半側の比(S/I比)(図1b),4象限(図1c),8セクター(図1d),16セクターの各平均値(図1e),8セクターにおけるCST+SN/IT+IN比を用いた.黄斑部網膜内層厚は,GCCプログラムを用いて,黄斑部C7Cmm×7Cmmの範囲で長さC7Cmmの水平ラインスキャンC1本,7Cmmの垂直ラインスキャンC15本をC0.5Cmm間隔で測定した.GCC解析では,中心窩より耳側C0.75Cmmの位置を中心とした直径C6Cmm領域の網膜神経線維層から内網状層までの厚みが算出される(図2a).GCCパラメータは全体,上半側,下半側の各平均値およびCGCC厚のCS/I比を用いた(図2b).解析に用いたCOCT画像はCsignalstrengthindex(SSI)がCcpRNFL解析でC45以上,GCC解析でC50以上得られたデータで,セグメンテーションエラーがみられたものは除外した.検討項目は,各COCTパラメータをCSSOH群と正常群で比較,receiverCoperatingcharacteristic(ROC)曲線下面積(areaCunderCtheCROCcurve:AUC)とし,SSOH群における網膜内層菲薄化の検出に有用なパラメータを検討した.カットオフ値はCROC曲線において,左上の隅との距離が最小となる点と定義した.また,各パラメータにおける減少率または増加率は,(正常群の厚み.SSOH群の厚み)C÷正常群の厚み×100の計算式で求めた.C3.統計学的検討SSOH群と正常群の臨床パラメータの比較には,Mann-WhitneyのCU検定,Fisherの直接確率検定,各COCTパラメータの比較には一般化線形混合モデル(generalizedlinearmixedmodel:GLMM)を用い,年齢を共変量として解析した.AUCの差の検定にはCDelong検定を用いた.統計解析の有意水準はCp=0.05とし,統計ソフトはCSPSSver.22(IBM社)およびCMedCalc(MedCalcSoftware社)を用いた.各データは平均値±標準偏差で表記した.CII結果1.SSOH群と正常群における患者背景SSOH群C19例C33眼と正常群C34例C34眼における患者背下半側cdNUNLe図1cpRNFL解析視神経乳頭中心から直径C3.45Cmm円周上のCcpRNFL厚を測定した(Ca).cpRNFLパラメータは全体,上半側(superior),下半側(inferior),上半側/下半側の比セクタC61),dセクター(C8),c象限(C4),b((S/I比)ー(e),8セクターにおけるCST+SN/IT+IN比を用いた.ST:上耳側(superiortemporal),TU:耳上側(temporalupper),TL:耳下側(temporallower),IT:下耳側(inferiortemporal),IN:下鼻側(inferiornasal),NL:鼻下側(nasalClower),NU:鼻上側(nasalupper),SN:上鼻側(superiornasal).Ca:SSOH(右眼),b~e:解析領域.Cab上半側下半側図2GCC解析中心窩より耳側C0.75Cmmの位置を中心とした直径C6Cmm円内の網膜神経線維層から内網状層までのCGCC厚を測定した(Ca).GCCパラメータは,全体,上半側,下半側,S/I比とした(Cb).a:SSOH(右眼),b:解析領域.景を示す(表1).年齢はCSSOH群C30.3C±17.5歳(9.62歳),正常群C47.6C±9.5歳(15.59歳),性別はCSSOH群男性C2例,女性C17例,正常群男性C15例,女性C19例,屈折度数はSSOH群C.2.22±2.04D,正常群C.1.66±1.82D,眼圧はSSOH群C13.8C±2.8CmmHg,正常群C15.2C±2.5CmmHgであった.両群間で年齢および性別,眼圧に有意差があったが,屈折度数に有意差はなかった.また,SSOH群では正常群と比較して,HFAの平均偏差(meandeviation:MD)は有意な低下,パターン標準偏差(patternCstandarddeviation:PSD)は有意な増加,視野指数(visual.eldindex:VFI)は有意な減少がみられた.C2.cpRNFLパラメータSSOH群と正常群における各CcpRNFLパラメータを示す(表2).SSOH群は正常群に比べて全体,上半側,下半側のすべてのパラメータで有意な減少がみられた.4象限解析では,耳側を除く上方,下方,鼻側のC3象限においてCSSOH群で有意に減少し,減少率は上方がもっとも高かった.8セクター解析では,TLとCIT以外でCSSOH群の有意な減少がみられ,減少率はCSN(41.0%)がもっとも高かった.16セクター解析では,TU1,TL1,TL2,IT2を除いた領域でSSOH群の有意な減少がみられ,減少率はCSN1(41.3%)がもっとも高かった.S/I比およびC8セクター解析におけるCST+SN/IT+IN比もCSSOH群で有意に低下していた.C3.GCCパラメータSSOH群と正常群における各CGCCパラメータを示す(表3).SSOH群は正常群に比べて全体および上半側において有意な減少がみられたが,下半側では有意差はなかった.S/I比はCSSOH群C0.92,正常群C0.99とCSSOH群で有意に低下していた.C4.AUC各COCTパラメータにおけるAUCの値を示す(表4).cpRNFLパラメータでは,8セクター解析におけるCST+SN/CIT+IN比がC0.99ともっとも高く,ついでCS/I比,8セクター解析におけるCSN,16セクター解析におけるCST1,SN1で0.98であった.GCCパラメータではCS/I比でC0.81,上半側で0.74であった.cpRNFL厚のCST,SNおよびCST+SN/IT+IN比のCAUCは,GCC厚のCS/I比よりも有意に高かった(各p値:0.019,0.002,<0.001)(表5).cpRNFL厚のCST,SN,ST+SN/IT+IN比間のCAUCに有意差はなかった.また,cpRNFL厚のCST+SN/IT+IN比のカットオフ値C0.78を基準に検討した結果,0.78未満がCSSOH群C93.9%(31眼)に対して正常群C2.9%(1眼)と両群の比率に有意差がみられた(p<0.001).SNのカットオフ値C98.5Cμmでは,98.5Cμm未満がCSSOH群C90.9%(30眼)に対して正常群C5.9%(2眼)と両群の比率に有意差がみられた(p<0.001).表1SSOH群と正常群における臨床パラメータの比較SSOH群正常群p値年齢(歳)C30.3±17.5C47.6±9.5<C0.001**性別(男性:女性)2:1C715:1C9C0.015*屈折度数(D)C.2.22±2.04C.1.66±1.82C0.266眼圧(mmHg)C13.8±2.8C15.2±2.5C0.026*MD(dB)C.4.02±3.57C0.69±0.77<C0.001**PSD(dB)C6.64±4.25C1.52±0.26<C0.001**VFI(%)C93.8±6.1C99.8±0.4<C0.001****:p<0.01,*:p<0.05.MD:meandeviation,PSD:patternstandarddeviation,VFI:visual.eldindexCIII考按SD-OCTを用いてCSSOHにおける網膜内層厚の詳細な検討を行った結果,SSOH群のCcpRNFL厚は正常群と比較して耳側および下耳側を除く領域で有意に減少し,上鼻側での減少率がもっとも高かった.SSOH群のCGCC厚は正常群に比べて全体および上半側で有意な減少がみられた.また,SSOHによる網膜内層菲薄化の検出には,cpRNFLパラメータがCGCCパラメータよりも有用で,とくにCcpRNFL厚のCST+SN/IT+IN比がもっともCAUCが高い結果であった.SSOH群におけるCcpRNFL厚について,本研究ではC8セクター,16セクター解析において耳側および下耳側を除いた領域で正常群よりも有意に減少し,ST+SN/IT+IN比も有意に低下していた.Time-domainOCT(TD-OCT)を用いたCcpRNFL厚の検討では,布施ら4)はC12セクター解析ではC7-10時方向を除いた領域での菲薄化,4象限解析では耳側を除いた領域での菲薄化を報告している.Yamadaら5)は4時とC7-9時方向を除いた領域で菲薄化がみられたと報告している.一方,SD-OCTを用いたCcpRNFL厚の検討では,Hanら7)やCYagasakiら8)はC12セクター解析でC6-9時を除く領域,7-9時を除く領域での菲薄化をそれぞれ報告している.これらの既報4,5,7,8)において,SSOHでは耳側および下耳側を除く領域でCcpRNFLの菲薄化をきたすとされている.本研究ではC16セクターの解析でより詳細な検討を行ったが,既報4,5,7,8)と同様の傾向であった.よって,SSOHによるcpRNFLの菲薄化は耳側および下耳側を除く広範囲で生じ,その検出はCOCTの原理や機種にかかわらず可能であることが示唆された.SSOHにおける耳側および下耳側のCcpRNFLが保存される理由として,視神経乳頭耳側に入射する乳頭黄斑束の網膜神経節細胞はほとんどがCmidget細胞で,midget細胞は網膜神経節細胞の約C8割を占めることから13,14),乳頭黄斑束では網膜神経節細胞の余剰性が高いことが影響している可能性がある.これは,SSOHでは一般的に視力良好であ表2SSOH群と正常群における各cpRNFLパラメータの比較cpRNFLパラメータ(μm)SSOH群正常群減少率/増加率(%)p値全体C88.2±13.7C107.9±6.3C.18.3<C0.001**上半側C74.0±16.5C105.8±7.4C.30.1<C0.001**下半側C102.4±12.5C110.0±6.4C.6.9C0.001**S/I比C0.72±0.10C0.96±0.05<C0.001**4象限上方C82.6±18.7C128.7±11.3C.35.8<C0.001**耳側C80.9±13.6C84.3±8.5C.4.0C0.392下方C134.0±17.6C144.8±9.7C.7.5C0.001**鼻側C55.5±15.8C74.1±9.7C.25.1<C0.001**8セクターCSTC95.3±21.9C138.9±11.3C.31.4<C0.001**CTUC79.3±18.7C88.5±9.6C.10.4C0.044*CTLC82.5±11.5C80.0±9.4C3.1C0.297CITC153.8±21.4C156.9±9.1C.2.0C0.175CINC114.1±19.9C132.6±15.8C.14.0<C0.001**CNLC59.2±16.9C70.6±10.4C.16.1C0.001**CNUC51.8±17.4C77.5±10.1C.33.2<C0.001**CSNC69.9±18.3C118.4±14.8C.41.0<C0.001**CST+SN/IT+IN比C0.62±0.10C0.89±0.08<C0.001**16セクターCST1C85.8±20.9C140.5±16.4C.38.9<C0.001**CST2C104.7±26.4C137.3±17.1C.23.7<C0.001**CTU2C88.1±25.1C102.0±14.4C.13.6C0.017*CTU1C70.5±13.4C75.0±6.9C.6.0C0.302CTL1C68.8±8.3C68.1±5.7C1.0C0.213CTL2C96.1±16.1C91.9±13.6C4.6C0.377CIT2C150.9±25.4C145.5±17.1C3.7C0.833CIT1C156.8±23.8C168.4±14.3C.6.9C0.015*CIN1C125.3±23.2C144.9±20.1C.13.5C0.001**CIN2C102.8±18.7C120.3±13.7C.14.5<C0.001**CNL2C69.7±20.0C80.7±12.3C.13.6C0.003**CNL1C48.6±14.5C60.6±9.7C.19.8<C0.001**CNU1C44.5±15.6C62.7±9.0C.29.0<C0.001**CNU2C59.1±20.2C92.3±13.5C.36.0<C0.001**CSN2C70.9±21.8C119.6±14.3C.40.7<C0.001**CSN1C68.8±16.6C117.2±17.9C.41.3<C0.001****:p<0.01,*:p<0.05.S/I:superior/inferior,ST:superiortemporal,TU:temporalupper,TL:temporallower,IT:inferiortemporal,IN:inferiornasal,NL:nasallower,NU:nasalupper,SN:superiornasal.表3SSOH群と正常群における各GCCパラメータの比較GCCパラメータ(μm)SSOH群正常群減少率/増加率(%)p値全体C91.4±7.1C96.0±5.6C.4.8C0.002**上半側C87.7±9.9C95.7±6.2C.8.4<C0.001**下半側C95.1±5.6C96.3±5.2C.1.2C0.059S/I比C0.92±0.08C0.99±0.03<C0.001****:p<0.01,*:p<0.05.4.0×4.8mmのC6セクター解析において,SSOHのCganglion(143)あたらしい眼科Vol.40,No.3,2023C425表4各OCTパラメータにおけるAUCcpRNFLパラメータCAUCカットオフ値(Cμm)全体C0.91C100.2上半側C0.94C96.9下半側C0.70C103.2S/I比C0.98C0.854象限上方C0.97C112.5耳側C0.61C80.3下方C0.68C135.5鼻側C0.84C63.38セクターCSTC0.94C123.0CTUC0.74C82.0CTLC0.56C81.0CITC0.56C150.5CINC0.76C123.5CNLC0.71C63.0CNUC0.90C64.5CSNC0.98C98.5CST+SN/IT+IN比C0.99C0.7816セクターCST1C0.98C120.0CST2C0.87C116.0CTU2C0.75C92.0CTU1C0.67C70.0CTL1C0.55C69.0CTL2C0.58C88.0CIT2C0.58C151.0CIT1C0.64C159.0CIN1C0.73C138.0CIN2C0.76C109.0CNL2C0.67C69.0CNL1C0.75C54.0CNU1C0.84C51.0CNU2C0.91C78.0CSN2C0.97C100.0CSN1C0.98C89.0GCCパラメータCAUCカットオフ値(Cμm)全体C0.69C94.3上半側C0.74C93.3下半側C0.57C96.8S/I比C0.81C0.95り,乳頭黄斑束が保存されることを支持すると思われる.SSOHにおけるCSD-OCTを用いた黄斑部網膜内層厚について,多数例での検討は筆者らの調べた限りCHanら7)と本研究のC2報のみである.本研究では,中心窩より耳側C0.75mmの位置を中心とした直径C6mmの上下の半側領域において,SSOH群のCGCC厚は上半側でのみ正常群に比べて有意な減少がみられた.Hanら7)は中心窩を中心とした楕円形表5各OCTパラメータにおけるAUCの比較cpRNFL8セクターGCCパラメータcpRNFL8セクターCSTCTUCTLCITCINCNLCNUCSNCST+SN/IT+IN比全体上半側下半側S/I比CSTC.<0.001<0.001<0.001C0.002<0.001C0.228C0.166C0.095<0.001<0.001<0.001C0.019CTU**C.0.122C0.008C0.771C0.748C0.005<0.001<0.001C0.445C0.908C0.030C0.213CTL**C.0.997C0.018C0.083<0.001<0.001<0.001C0.216C0.074C0.950C0.008CIT****.0.0170.114<0.001<0.001<0.0010.0700.0140.9360.004*IN***C.0.422C0.019<0.001<0.001C0.257C0.775C0.005C0.502CNL**C.0.002<0.001<0.001C0.796C0.638C0.071C0.199CNU*********.0.0170.011<0.0010.005<0.0010.133*SN**********C.0.295<0.001<0.001<0.001C0.002CST+SN/IT+IN比***********C.<0.001<0.001<0.001<0.001GCCパラメータ全体********.0.0120.0010.072*上半側*********C.<0.001C0.182下半側***************C.0.005S/I比***********C.**:p<0.01,*:p<0.05.celllayer(GCL)+innerplexiformClayer(IPL)厚を正常群と比較検討し,上耳側,上方,下耳側,下方でのみ有意に減少したと報告している.本研究では,Hanら7)の報告で示された下方領域での黄斑部網膜内層厚の減少はみられなかった.この理由として,GCC厚とCGCL+IPL厚のセグメンテーションの違いやCOCTの機種,解析領域,対象による違いが影響していると考えられる.しかし,上半側のCGCCの菲薄化のみで下半側のCGCCが保存された本研究の結果は,乳頭黄斑束が保存されるCSSOHの病態と一致するため,SSOHの網膜内層菲薄化をより正確に捉えた所見であると考えられる.SSOHの網膜内層菲薄化の検出に有用なパラメータについて,本研究のCcpRNFLパラメータではC8セクター解析においてCSNのCAUCがC0.98と高く,16セクター解析においてもCST1,SN1のCAUCがC0.98と高値であった.また,ST+SN/IT+IN比のCAUCはC0.99で,全COCTパラメータのなかでもっとも高い値を示した.TD-OCTを用いたCcpRNFL厚におけるCAUCの検討では,布施ら4)はC12時方向(0.93)が最大であり,ついでC1時方向(0.90),2時方向(0.87)が高いことを報告している.Yamadaら5)とCLeeら6)も1時方向のCAUCがもっとも高く,SSOHと正常眼の鑑別に有用であると報告している.本研究は既報4.6)と同様の結果で,上方から上鼻側にあたるC12時やC1時方向での識別能力が高かった.さらに,本研究で新たに検討したCcpRNFL厚のCST+SN/IT+IN比は,全COCTパラメータのなかでCAUCがもっとも高く,SSOH群のC93.9%がCST+SN/IT+IN比C0.78未満であったことから,SSOHの網膜内層菲薄化を検出するうえで有用性の高い指標であることが示唆された.ST+SN/CIT+IN比の検出力が高かった理由として,cpRNFL厚の個体差による影響があげられる.cpRNFL厚は正常範囲に幅があり,軽度の減少があっても正常眼の厚みとオーバーラップしてしまい,異常領域として判定されない問題がある15).一方,ST+SN/IT+IN比は上下比を用いることで個体差の影響を受けにくく,上方セクターと下方セクターの厚みの差を著明に反映したと考えられる.よって,ST+SN/IT+IN比はCSSOHにおける網膜内層の個体間評価においても有用なパラメータであると思われる.また,SSOHにおいて黄斑部の網膜内層パラメータを用いてCAUCを検討した報告はなく,本研究が初めての報告である.本研究におけるCGCCパラメータのCAUCは,全体で0.69,上半側でC0.74,下半側でC0.57,S/I比でC0.81とCGCC厚が減少していた上半側およびCS/I比で高値を示した.しかし,GCCパラメータはCcpRNFLパラメータほど高い検出力は得られなかった.その理由として,本研究で用いたCGCC厚の測定領域は直径C6Cmm円で,測定中心が中心窩から耳側に偏心していることがあげられる.また,中心窩は視神経乳頭よりも下方に位置しており,SSOHの視神経乳頭上方から広がる網膜内層菲薄化が中心窩近傍の測定領域内に及ばなければ捉えることができないと考えられる.さらに,本研究で用いたCGCC厚の自動解析では解析部位が上下分割のみで細分化されておらず,局所的な網膜内層厚の減少は平均化されてしまい過小評価されることが考えられる.そのため,SSOHと正常眼の鑑別には,GCCパラメータよりもcpRNFLパラメータのほうが有用であることが明らかとなった.本研究における問題点として,SSOHの症例数が少ないこと,両眼のデータを採用している症例が存在したこと,SSOH群と正常群の年齢に有意差がみられたことがあげられる.しかし,年齢についてはCSSOH群のほうが正常群よりも若いため,SSOH群における加齢によるCcpRNFLの減少16)はなく,さらに年齢を共変量として統計解析を行ったため,年齢による解析結果への影響は小さいと考えられる.今回の検討はCSSOHと正常眼の比較であり,臨床において鑑別が必要となる緑内障眼との比較はできていないため,今後は症例数を増やして下方視野障害を伴う緑内障眼との検討を行う必要がある.CIV結論今回の検討により,SSOHではCcpRNFL厚の減少は上鼻側だけでなく耳側および下耳側を除く広範囲でみられ,ST+SN/IT+IN比も有意に低下し,黄斑部の上半側のCGCC厚も減少していた.OCTを用いたCSSOHと正常眼の鑑別には,OCTパラメータのなかでもCcpRNFL厚の上方から上鼻側およびCST+SN/IT+IN比が有用であることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)PetersenCRA,CWaltonDS:OpticCnerveChypoplasiaCwithCgoodCvisualCacuityCandCvisualC.elddefects:aCstudyCofCchildrenCofCdiabeticCmothers.CArchCOphthalmolC95:254-258,C19772)KimCRY,CHoytCWF,CLessellCSCetal:SuperiorCsegmentalCopticChypoplasia.CACsignCofCmaternalCdiabetes.CArchCOph-thalmolC107:1312-1315,C19893)MikiA,ShirakashiM,YaoedaKetal:OpticnerveheadanalysisofsuperiorsegmentaloptichypoplasiausingHei-delbergCretinaCtomography.CClinCOphthalmolC4:1193-1199,C20104)布施昇男,相澤奈帆子,横山悠ほか:SuperiorCsegmen-talopticChypoplasia(SSOH)の網膜神経線維層厚の解析.日眼会誌C116:575-580,C20125)YamadaCM,COhkuboCS,CHigashideCTCetal:Di.erentiationbyCimagingCofCsuperiorCsegmentalCopticChypoplasiaCandCnormal-tensionglaucomawithinferiorvisual.elddefectsonly.JpnJOphthalmolC57:25-33,C20136)LeeCHJ,CKeeC:OpticalCcoherenceCtomographyCandCHei-delbergCretinaCtomographyCforCsuperiorCsegmentalCopticChypoplasia.BrJOphthalmolC93:1468-1473,C20097)HanJC,ChoiDY,KeeC:Thedi.erentcharacteristicsofcirrusCopticalCcoherenceCtomographyCbetweenCsuperiorCsegmentalCopti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