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リパスジル点眼薬の処方パターンと患者背景および眼圧下降効果

2016年12月31日 土曜日

《原著》あたらしい眼科33(12):1774?1778,2016cリパスジル点眼薬の処方パターンと患者背景および眼圧下降効果井上賢治*1瀬戸川章*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科IntraocularPressureReductionwithandPrescriptionPatternsofRipasudil,aRhoKinaseInhibitorKenjiInoue1),AkiraSetogawa1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:リパスジル点眼薬の処方パターンと眼圧下降効果を後ろ向きに調査した.対象および方法:2014年12月?2015年3月に新規にリパスジル点眼薬が投与された161例161眼を対象とした.リパスジル点眼薬が追加された症例(追加群),他の点眼薬から変更された症例(変更群),変更と追加が同時に行われた症例(変更追加群)に分けて,リパスジル点眼薬の処方パターン,投与された理由,投与前後の眼圧などを調査した.結果:全症例の投与前薬剤数は3.9±0.9剤だった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障119例(73.9%),続発緑内障30例(18.6%)などだった.追加群は124例(77.0%),変更群は21例(13.0%),変更追加群は16例(10.0%)だった.投与された理由は追加群と変更追加群は全例が,変更群は14例(66.7%)が眼圧下降効果不十分,7例(33.3%)が副作用出現だった.追加群では投与後に眼圧が有意に下降した(p<0.01).結論:リパスジル点眼薬は多剤併用で眼圧下降効果が不十分な原発開放隅角緑内障症例に追加投与されることが多く,眼圧下降は良好である.Purpose:Weretrospectivelyinvestigatedintraocularpressurereductionwithandprescriptionpatternsof0.4%ripasudil.Methods:Atotalof161eyesof161patientswereincluded.Participantsweredividedinto3groups:ripasudilwasaddedtoexistingtreatment(addedgroup),existingtreatmentwaschangedtoripasudil(changedgroup),orripasudilwasaddedandreplacedanothermedication(changed/addedgroup).Intraocularpressure(IOP)wascomparedbeforeandafteradministrationofripasudil.Results:Thenumberofmedicationsusedwas3.9±0.9.Diseasetypeswereopen-angleglaucoma(119cases,73.9%),secondaryglaucoma(30cases,18.6%),etal.Atotalof124(77.0%),21(13.0%),and16(10.0%)caseswereintheadded,changedandchanged/addedgroups,respectively.Allsubjectsintheaddedandchanged/addedgroupsbeganusingripasudilbecauseofinsufficientIOPreduction.Inthechangedgroup,14(66.7%)and7(33.3%)patientsbeganusingripasudilbecauseofinsufficientIOPreductionandadversereactions.Intheaddedgroup,IOPdecreasedsignificantlyafteradministrationofripasudil(p<0.01).Conclusion:WhenmultiplemedicationsdonotproperlymanageIOP,ripasudilmaybeaddedineyeswithopen-angleglaucoma.TheadditionofripasudilwaseffectiveinreducingIOP.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)33(12):1774?1778,2016〕Keywords:リパスジル,処方,追加,変更.ripasudil,prescription,add,change.はじめに緑内障点眼薬治療は単剤から始めて,目標眼圧に達成しない場合は点眼薬の変更あるいは追加が行われる.点眼薬の追加の際には,今まで使用していた点眼薬とは眼圧下降の作用機序の異なる点眼薬を使用することになる.また,点眼薬には副作用もあり,たとえばb遮断点眼薬は呼吸器系や循環器系疾患を有する症例には使用しづらい.そのような理由から従来の点眼薬とは眼圧下降の作用機序の異なる点眼薬の開発が望まれていた.線維柱帯-Schlemm管を介する主経路からの房水排出の促進作用を有するRhoキナーゼ阻害薬のリパスジル点眼薬(グラナテックR,興和創薬)1)が開発され,2014年12月より日本で使用可能となった.Rhoキナーゼ阻害薬の作用機序は巨大空胞の増加2),細胞接着への作用2),細胞-細胞外マトリクス間関係の変化3),短期的な細胞骨格と細胞の収縮性の変化1),細胞外マトリクス産生抑制4),線維柱帯間隙への作用5)が想定されている.リパスジル点眼薬は,日本で行われた臨床治験においては良好な眼圧下降効果が報告されている6?10).それらの治験ではリパスジル点眼薬の単剤投与6?9),b遮断点眼薬への追加投与9,10),プロスタグランジン関連点眼薬への追加投与9,10),プロスタグランジン/チモロール配合点眼薬への追加投与9)が行われた.しかしこの新しいリパスジル点眼薬が実際に臨床診療の現場でどのような症例に使用されているのかを調査した報告はない.そこで今回,リパスジル点眼薬が使用可能となってから初期の4カ月間に投与された症例のデータを後ろ向きに調査した.I方法2014年12月?2015年3月に,井上眼科病院に通院中で新規にリパスジル点眼薬(1日2回点眼)が処方された連続した161例161眼を対象とした.眼科医師24名が処方していた.両眼にリパスジル点眼薬が処方された症例は眼圧の高い眼を,眼圧が同値の症例は右眼を解析に用いた.対象を以下の3群に分けた.リパスジル点眼薬が他の点眼薬に追加投与された症例(追加群),他の点眼薬がリパスジル点眼薬に変更された症例(変更群),他の点眼薬の変更とリパスジル点眼薬の追加投与が同時に行われた症例,あるいは他の点眼薬とリパスジル点眼薬が同時に追加投与された症例(変更追加群)とした.3群の患者背景〔年齢,投与前眼圧,投与前視野検査のmeandeviation(MD)値,使用薬剤数〕を比較した.なお配合点眼薬は2剤として,アセタゾラミド内服は錠数にかかわらず1剤として解析した.視野検査はHumphrey視野計(カール・ツァイス社)プログラム30-2SITA-Standardを使用した.変更群では変更された点眼薬を調査した.追加群では使用薬剤を調査した.リパスジル点眼薬投与1,3カ月後の眼圧を調査し,投与前と比較した.リパスジル点眼薬投与後の中止例を調査した.各群のリパスジル点眼薬が投与された理由を診療録から調査した.統計学的検討は3群の患者背景の比較にはKruskal-Wallis検定,投与前後の眼圧の比較にはANOVABonferroni/Dunn検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.II結果全症例161例のうち男性76例,女性85例,年齢は64.8±13.1歳(平均±標準偏差),22?92歳だった(図1).投与前眼圧は21.6±6.2mmHg,8?44mmHgだった.投与前視野検査のMD値は?10.7±8.0dB,?31.2?2.1dBだった.投与前薬剤数は3.9±1.0剤,1?7剤だった.病型は原発開放隅角緑内障119例(73.9%),続発緑内障30例(18.6%),高眼圧症5例(3.1%),原発閉塞隅角緑内障4例(2.5%),先天緑内障3例(1.9%)だった.追加群は124例(77.0%),変更群は21例(13.0%),変更追加群は16例(10.0%)だった.年齢は追加群64.9±14.2歳,変更群63.3±10.5歳,変更追加群66.0±6.2歳で同等だった(p=0.619).投与前眼圧は追加群22.0±6.6mmHg,変更群19.2±3.2mmHg,変更追加群21.3±5.8mmHgで同等だった(p=0.243).投与前視野検査のMD値は追加群?10.9±8.5dB,変更群?11.1±6.9dB,変更追加群8.3±5.7dBで同等だった(p=0.688).使用薬剤数は追加群3.9±1.0剤,変更群3.9±0.8剤,変更追加群3.7±1.1剤で同等だった(p=0.872).追加群の使用薬剤数は1剤2例(1.6%),2剤9例(8.9%),3剤19例(13.7%),4剤67例(54.9%),5剤24例(18.5%),6剤2例(1.6%),7剤1例(0.8%)だった.追加群の使用薬剤を表1に示す.4剤がもっとも多く,そのうちもっとも多い組み合わせはプロスタグランジン関連点眼薬+a2刺激点眼薬+炭酸脱水酵素阻害/b配合点眼薬だった.変更群の変更前点眼薬はブリモニジン点眼薬10例(47.6%),ブナゾシン点眼薬7例(33.3%),0.5%チモロール点眼薬2例(9.5%),ラタノプロスト点眼薬1例(4.8%),1%ドルゾラミド点眼薬1例(4.8%)だった.リパスジル点眼薬が投与された理由は,追加群と変更追加群では全例が眼圧下降効果不十分で,変更群では眼圧下降効果不十分14例(66.7%),副作用出現7例(33.3%)だった(図1).副作用の内訳は結膜充血1例,アレルギー性結膜炎3例,結膜充血+アレルギー性結膜炎1例,眼掻痒感1例,流涙1例だった.眼圧は追加群では投与前(22.0±6.6mmHg)と比べて投与1カ月後(19.4±5.4mmHg),投与3カ月後(18.6±5.7mmHg)には有意に下降した(p<0.01)(図2).変更群では投与前(19.2±3.2mmHg)と投与1カ月後(18.0±3.7mmHg)には同等だったが,投与3カ月後(17.5±4.2mmHg)には投与前と比べて有意に下降した(p<0.01).変更追加群では投与前(21.3±5.8mmHg)と投与1カ月後(19.4±4.7mmHg),投与3カ月後(18.5±4.8mmHg)は同等だった(p=0.206).中止例は追加群9例(7.3%)で,内訳は来院中断3例,他剤追加2例,緑内障手術施行2例,選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)施行1例,希望により転医1例だった.変更群は1例(4.8%)で,来院中断だった.変更追加例は1例(6.3%)で,他剤追加だった.III考按今回の症例ではリパスジル点眼薬は多剤併用(平均3.9剤)に追加投与される症例が多かった.配合点眼薬は2剤として解析したが,配合点眼薬を1剤として解析した場合も使用薬剤数は平均3.3±0.9剤だった.リパスジル点眼薬は,線維柱帯-Schlemm管を介した主経路からの房水排出促進作用という従来の点眼薬とは眼圧下降の作用機序が異なる薬である1).今回の結果からは,多剤併用をしても従来の点眼薬では眼圧下降効果が不十分,言い換えればもう少し眼圧を下降させたい症例に投与されたと考えられる.リパスジル点眼薬が投与された理由も,追加群と変更追加群では全例が眼圧下降効果不十分であった.点眼薬を3剤以上使用している患者ではアドヒアランスが低下するという報告もあり11),4剤目,5剤目などに処方することに疑問もある.多剤併用でも眼圧下降効果不十分な症例では本来手術を施行すべきであるが,線維柱帯切除術では浅前房,脈絡膜?離,低眼圧黄班症,濾過胞炎,眼内炎などの合併症が出現することもあり,患者の視機能を低下させる危険もある.とくに眼内炎では硝子体手術を施行しても失明する危険もある.濾過胞関連感染症は平均2.5年の観察期間で1.5±0.6%と高率に報告されている12).そのため余命が短いと考えられる高齢者では,手術ではなく点眼薬や内服薬の多剤併用が行われることが多いと考えられる.点眼薬による副作用が出現した症例では,その点眼薬を中止する必要がある.その際に眼圧下降を考慮すると,他の眼圧下降機序を有する点眼薬を投与することになる.なぜならば眼圧下降の作用機序が異なる点眼薬のほうが同じ副作用が出現しづらいからである.リパスジル点眼薬は眼圧下降の作用機序が他の点眼薬と異なるために,点眼薬の変更の際に使用されやすいと考えられる.多剤併用例では他の点眼薬の選択肢が少ないので新規に使用可能となったリパスジル点眼薬が使用されたと考えられる.今回の症例においても副作用出現によりリパスジル点眼薬へ変更された症例の使用前薬剤数は3.7±0.8剤と多剤併用症例だった.リパスジル点眼薬の眼圧下降幅は単剤投与では2.7?4.0mmHg6),3.5mmHg7),ピーク時6.4?7.3mmHgとトラフ時1.6?4.3mmHg8),ピーク時3.7mmHgとトラフ時2.6mmHg9)と報告されている.b遮断点眼薬への追加投与ではピーク時2.9mmHgとトラフ時2.4mmHg10),ピーク時3.0mmHgとトラフ時2.2mmHg9)と報告されている.プロスタグランジン関連点眼薬への追加投与ではピーク時2.4mmHgとトラフ時1.4mmHg9),ピーク時3.2mmHgとトラフ時2.2mmHg10)と報告されている.プロスタグランジン/チモロール配合点眼薬への追加投与ではピーク時1.7mmHgとトラフ時1.7mmHgと報告されている9).今回の追加群での眼圧下降幅は2.6?3.4mmHgで,追加投与の報告9,10)とほぼ同等だった.しかし今回の症例には眼圧をピーク値と思われる午前中に測定した症例やトラフ値と思われる夕方に測定した症例も含まれており,今後さらなる解析が必要である.今回は眼圧が上昇した際にリパスジル点眼薬が投与された症例もあり,眼圧下降効果の評価としては考慮する必要があったかもしれない.また症例のエントリー期間が冬から春であったために,眼圧が上昇していた可能性もある.リパスジル点眼薬の投与中止例は,単剤投与では7日間投与で0%6),8週間投与で0%7),52週間投与で35.8%9),b遮断点眼薬への追加投与では8週間投与で1.9%10),52週間投与で30.0%9),プロスタグランジン関連点眼薬への追加投与では8週間投与で2.9%10),52週間投与で25.8%9),プロスタグランジン/チモロール配合点眼薬への追加投与では52週間投与で27.1%9)と報告されている.今回のリパスジル点眼薬の投与中止例は追加群7.3%,変更群4.8%,変更追加群6.3%と過去の短期投与の報告6,7,10)より多く,長期投与の報告9)より少なかった.その原因として治験と臨床現場の症例の違い,今回は多剤併用症例が多かったこと,今回は投与期間が短期投与と長期投与の間である3カ月間だったことなどが考えられる.いずれにせよリパスジル点眼薬の安全性は良好と考えられる.交感神経a2受容体刺激薬であるブリモニジン点眼薬が2012年5月に日本で使用可能になった.ブリモニジン点眼薬も従来の点眼薬とは眼圧下降の作用機序が異なる薬だった.ブリモニジン点眼薬が使用可能となった初期の処方例,とくに追加投与では,追加投与前の使用薬剤数は1剤12.7%,2剤21.8%,3剤以上65.5%と多剤併用例が多いと報告13)されており,今回もほぼ同等だった.今回のリパスジル点眼薬を追加投与した症例の眼圧下降効果と安全性は良好であったので,リパスジル点眼薬は,今後は2剤目,3剤目など早い段階で使用される可能性がある.リパスジル点眼薬は多剤併用で眼圧下降効果が不十分な原発開放隅角緑内障症例に対して追加投与されることが多い.3剤目,4剤目,5剤目に投与されたリパスジル点眼薬の眼圧下降効果とアドヒアランスに疑問は残るが,実際の臨床現場では多剤併用症例への追加投与が多かった.追加投与された症例の眼圧下降効果と安全性は短期的には良好だった.今後は長期的にリパスジル点眼薬の眼圧下降効果と安全性を検討する必要がある.文献1)HonjoM,TaniharaH,InataniMetal:EffectsofRhoassociatedproteinkinaseinhibitorY-27632onintraocularpressureandoutflowfacility.InvestOphthalmolVisSci42:137-144,20012)KamedaT,InoueT,InataniMetal:TheeffectofRhoassociatedproteinkinaseinhibitoronmonkeySchlemm’scanalendothelialcells.InvestOphthalmolVisSci53:3092-3103,20123)KogaT,KogaT,AwaiMetal:Rho-associatedproteinkinaseinhibitor,Y-27632,inducesalterationsinadhesion,contractionandmotilityinculturedhumantrabecularmeshworkcells.ExpEyeRes82:362-370,20064)FujimotoT,InoueT,KamedaTetal:InvolvementofRhoA/Rho-associatedkinasesignaltransductionpathwayindexamethasone-inducedalterationsinaqueousoutflow.InvestOphthalmolVisSci53:7097-7108,20125)RaoPV,DengPF,KumarJetal:ModulationofaqueoushumoroutflowfacilitybytheRhokinase-specificinhibitorY-27632.InvestOphthalmolVisSci42:1029-1037,20016)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:Phase1clinicaltrialsofaselectiveRhokinaseinhibitor,K-115.JAMAOphthalmol131:1288-1295,20137)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:Phase2randomizedclinicalstudyofaRhokinaseinhibitor,k-115,inprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension.AmJOphthalmol156:731-736,20138)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:Intra-ocularpressure-loweringeffectsofaRhokinaseinhibitor,ripasudil(K-115),over24hoursinprimaryopen-angleglaucomaandocularhypertension:arandomized,open-label,crossoverstudy.ActaOphthalmol93:e254-e260,20159)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:One-yearclinicalevaluationof0.4%ripasudil(K-115)inpatientswithopen-angleglaucomaandocularhypertension.ActaOphthalmol94:e26-e34,201610)TaniharaH,InoueT,YamamotoTetal:Additiveintraocularpressure-loweringeffectsoftheRhokinaseinhibitorripasudil(K-115)combinedwithtimololorlatanoprost:Areportof2randomizedclinicaltrials.JAMAOphthalmol133:755-761,201511)DjafariF,LeskMR,HarasymowyczPJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalongtermpatientpopulation.JGlaucoma18:238-243,200912)YamamotoT,KuwayamaY,CollaborativeBleb-relatedInfectionIncidenceandTreatmentStudyGroup:Interimclinicaloutcomesinthecollaborativebleb-relatedinfectionincidenceandtreatmentstudy.Ophthalmology118:453-458,201113)中島佑至,井上賢治,富田剛司:ブリモニジン酒石酸塩点眼薬の追加投与による眼圧下降効果と安全性.臨眼68:967-971,2014〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-kuTokyo101-0062,JAPAN0197170-41810/あ160910-1810/16/\100/頁/JCOPY図1追加群,変更群,変更追加群の背景とリパスジル点眼薬投与理由(97)あたらしい眼科Vol.33,No.12,20161775表1追加群における投与前薬剤1剤(2例,1.6%)CAI2例(100%)2剤(9例,8.9%)PG+CAI3例(3.3%)b+CAI2例(22.2%)CAI/b配合剤2例(22.2%)PG+b1例(11.1%)PG+a21例(11.1%)3剤(19例,13.7%)PG+b+CAI5例(26.3%)a2+CAI/b配合剤3例(26.3%)PG+CAI+a23例(15.8%)a2+PG/b配合剤2例(10.5%)PG+CAI/b配合剤2例(10.5%)CAI内服+CAI/b配合剤1例(10.5%)PG+b+a11例(5.3%)CAI+CAI内服+a21例(5.3%)CAI+PG/b配合剤1例(5.3%)4剤(67例,54.9%)PG+a2+CAI/b配合剤39例(58.2%)CAI+a2+PG/b配合剤6例(13.4%)PG+b+CAI+a27例(10.4%)CAI内服+a2+CAI/b配合剤3例(4.5%)PG+b+CAI+a12例(3.0%)PG+CAI+a1+a22例(3.0%)PG+CAI+CAI内服+a22例(3.0%)PG+a1+CAI/b配合剤2例(3.0%)PG+CAI+ab+a21例(1.5%)CAI+a1+PG/b配合剤1例(1.5%)a1+a2+PG/b配合剤1例(1.5%)PG+CAI内服+CAI/b配合剤1例(1.5%)5剤(24例,18.5%)PG+CAI内服+a2+CAI/b配合剤7例(29.2%)PG+b+CAI+CAI内服+a26例(29.2%)PG+a1+a2+CAI/b配合剤4例(12.5%)PG+a2+ピロカルピン+CAI/b配合剤1例(4.2%)PG+b+CAI+a1+ピロカルピン1例(4.2%)PG+CAI+CAI内服+ab+a21例(4.2%)PG+b+CAI+a1+a21例(4.2%)CAI+a2+ピバレフリン+PG/b配合剤1例(4.2%)PG+CAI+CAI内服+a1+a21例(4.2%)PG+b+CAI+CAI内服+a11例(4.2%)6剤(2例,1.6%)PG+CAI内服+a1+a2+CAI/b配合剤2例(100%)7剤(1例,0.8%)PG+b+CAI+CAI内服+a1+a2+ピロカルピン1例(100%)b:b遮断点眼薬,PG:プロスタグランジン関連点眼薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害点眼薬,a1:a1遮断点眼薬,a2:a2刺激点眼薬1776あたらしい眼科Vol.33,No.12,2016(98)図2リパスジル点眼薬投与前後の眼圧(99)あたらしい眼科Vol.33,No.12,201617771778あたらしい眼科Vol.33,No.12,2016(100)

ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン

2015年8月31日 月曜日

12185108,22,No.3《原著》あたらしい眼科32(8):1218.1222,2015cはじめに緑内障治療の目標は視野障害進行を停止あるいは緩徐にすることで,そのために眼圧を下降させる1,2).眼圧を下降させるために点眼薬の単剤投与から始めるが,単剤投与で目標眼圧に到達しない症例では点眼薬を変更するか,他の点眼薬を追加投与する3).追加投与を繰り返すと多剤併用となり,点眼回数が増えるに伴ってアドヒアランスが低下することが問題である4).アドヒアランスの観点からは2つの薬剤成分を含有する配合点眼薬の使用がすすめられる.2013年11月にブリンゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬の配合点眼薬(アゾルガR)が新たに使用可能となった.このBTFCの日本人緑内障患者に対するチモロール点眼薬からの変更5,6),単剤投与7)については良好な眼圧下降効果が報告されている.しかし,臨床の現場でどのような症例にBTFCが使用1218(152)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科PrescriptionPatternofBrinzolamide1.0%/TimololMaleate0.5%FixedCombinationEyeDropsKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,BTFC)が新規に処方された症例の特徴を後ろ向きに調査する.対象および方法:BTFCが新規に投与された117例195眼を対象とした.追加症例,変更症例,変更+他剤追加症例に分けて,投与3カ月後までの眼圧を調査した.結果:BTFC追加症例は7例9眼,変更症例は100例166眼,変更+他剤追加症例は10例20眼だった.変更症例はドルゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,DTFC)からが43例72眼,b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI)からが36例58眼,b遮断薬からが16例28眼などだった.DTFC,b遮断薬からの変更では眼圧は変更後に有意に下降した.b遮断薬+CAIからの変更では眼圧は変更前後で同等だった.結論:BTFCはDTFCからの変更,b遮断薬+CAIからの変更として多く使用されていた.BTFCの眼圧下降効果は良好だった.Purpose:Weretrospectivelyinvestigatedthecharacteristicsinpatientswhowerenewlyadministeredbrinzo-lamide1.0%/timololmaleate0.5%fixedcombination(BTFC)eyedrops.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved198eyesof117patientswhowerenewlyadministeredBTFCandwhoweredividedinto3groups.TheinstillationofBTFCwasaddedinthefirstgroup,whilethesecondgroupswitchedfromtheprevioustreatment,andthethirdgroupinvolvedswitchingplusaddingconcomitantly.Inallthreegroups,intraocularpressure(IOP)wascomparedfor3monthsafteradministration.Results:Nineeyeswereinthefirstgroup,166eyeswereinthesecondgroup,and20eyeswereinthethirdgroup.Inthesecondgroup,72eyeswereswitchingfromdorzol-amide/timololmaleatefixedcombination(DTFC),58eyesswitchingfromb-blockerspluscarbonicanhydraseinhibitor(CAI),and28eyesswitchingfromb-blockers.InthepatientsswitchingfromDTFCorb-blockers,IOPsignificantlydecreased.Inthepatientsswitchingfromb-blockersplusCAI,IOPwasequivalent.Conclusion:InthepatientsinwhomBTFCwasadministeredfrequentlywhileswitchingfromDTFCorb-blockersplusCAI,asignificantlybetterIOPreductioneffectwasobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(8):1218.1222,2015〕Keywords:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,眼圧,変更,追加,処方.brinzolamide/timololfixedcombi-nation,intraocularpressure,switch,addition,administer.《原著》あたらしい眼科32(8):1218.1222,2015cはじめに緑内障治療の目標は視野障害進行を停止あるいは緩徐にすることで,そのために眼圧を下降させる1,2).眼圧を下降させるために点眼薬の単剤投与から始めるが,単剤投与で目標眼圧に到達しない症例では点眼薬を変更するか,他の点眼薬を追加投与する3).追加投与を繰り返すと多剤併用となり,点眼回数が増えるに伴ってアドヒアランスが低下することが問題である4).アドヒアランスの観点からは2つの薬剤成分を含有する配合点眼薬の使用がすすめられる.2013年11月にブリンゾラミド点眼薬とチモロール点眼薬の配合点眼薬(アゾルガR)が新たに使用可能となった.このBTFCの日本人緑内障患者に対するチモロール点眼薬からの変更5,6),単剤投与7)については良好な眼圧下降効果が報告されている.しかし,臨床の現場でどのような症例にBTFCが使用1218(152)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY〔別刷請求先〕井上賢治:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台4-3井上眼科病院Reprintrequests:KenjiInoue,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPANブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬の処方パターン井上賢治*1藤本隆志*1石田恭子*2富田剛司*2*1井上眼科病院*2東邦大学医療センター大橋病院眼科PrescriptionPatternofBrinzolamide1.0%/TimololMaleate0.5%FixedCombinationEyeDropsKenjiInoue1),TakayukiFujimoto1),KyokoIshida2)andGojiTomita2)1)InouyeEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,BTFC)が新規に処方された症例の特徴を後ろ向きに調査する.対象および方法:BTFCが新規に投与された117例195眼を対象とした.追加症例,変更症例,変更+他剤追加症例に分けて,投与3カ月後までの眼圧を調査した.結果:BTFC追加症例は7例9眼,変更症例は100例166眼,変更+他剤追加症例は10例20眼だった.変更症例はドルゾラミド/チモロール配合点眼薬(以下,DTFC)からが43例72眼,b遮断薬+炭酸脱水酵素阻害薬(以下,CAI)からが36例58眼,b遮断薬からが16例28眼などだった.DTFC,b遮断薬からの変更では眼圧は変更後に有意に下降した.b遮断薬+CAIからの変更では眼圧は変更前後で同等だった.結論:BTFCはDTFCからの変更,b遮断薬+CAIからの変更として多く使用されていた.BTFCの眼圧下降効果は良好だった.Purpose:Weretrospectivelyinvestigatedthecharacteristicsinpatientswhowerenewlyadministeredbrinzo-lamide1.0%/timololmaleate0.5%fixedcombination(BTFC)eyedrops.Patientsandmethods:Thisstudyinvolved198eyesof117patientswhowerenewlyadministeredBTFCandwhoweredividedinto3groups.TheinstillationofBTFCwasaddedinthefirstgroup,whilethesecondgroupswitchedfromtheprevioustreatment,andthethirdgroupinvolvedswitchingplusaddingconcomitantly.Inallthreegroups,intraocularpressure(IOP)wascomparedfor3monthsafteradministration.Results:Nineeyeswereinthefirstgroup,166eyeswereinthesecondgroup,and20eyeswereinthethirdgroup.Inthesecondgroup,72eyeswereswitchingfromdorzol-amide/timololmaleatefixedcombination(DTFC),58eyesswitchingfromb-blockerspluscarbonicanhydraseinhibitor(CAI),and28eyesswitchingfromb-blockers.InthepatientsswitchingfromDTFCorb-blockers,IOPsignificantlydecreased.Inthepatientsswitchingfromb-blockersplusCAI,IOPwasequivalent.Conclusion:InthepatientsinwhomBTFCwasadministeredfrequentlywhileswitchingfromDTFCorb-blockersplusCAI,asignificantlybetterIOPreductioneffectwasobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)32(8):1218.1222,2015〕Keywords:ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬,眼圧,変更,追加,処方.brinzolamide/timololfixedcombi-nation,intraocularpressure,switch,addition,administer. されているかを調査した報告は過去にない.そこで今回,BTFCが新規に投与された症例についてその処方パターンと眼圧下降効果を検討した.I対象および方法2013年11月.2014年7月に井上眼科病院に通院中で,BTFC(1日2回朝夜点眼)が新規に投与された緑内障あるいは高眼圧症患者117例195眼(男性45例72眼,女性72例123眼)を対象とした.平均年齢は66.8±13.1歳(平均±標準偏差)(26.94歳)であった.緑内障病型は原発開放隅角緑内障(狭義)140眼,正常眼圧緑内障30眼,続発緑内障16眼(ぶどう膜炎6眼,落屑緑内障4眼,血管新生緑内障4眼,Posner-Schlossman症候群2眼),原発閉塞隅角緑内障6眼,高眼圧症3眼であった.診療録から後向きに調査を行った.BTFCが新規に投与された症例を,BTFCが追加投与された症例(追加群),前投薬が中止となりBTFCが投与された症例(変更群),前投薬が中止となりBTFCが投与されるのと同時にさらに他の点眼薬が追加あるいは変更された症例(変更追加群)に分けた.BTFCが投与された理由について追加群,変更群,変更追加群各々で調査した.3群間で性別,年齢,緑内障病型,眼圧,前投薬数を比較した(c2検定,Kruskal-Wallis検定,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).前投薬数の解析では配合点眼薬は2剤とした.変更群では,DTFCからの変更,b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更,b遮断点眼薬からの変更に分けて,変更前と変更1,3カ月後の眼圧を比較した(ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).さらにDTFCからの変更では変更理由を眼圧下降効果不十分と副作用出現に分けて変更前と変更1,3カ月後の眼圧を比較した(ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).有意水準はいずれもp<0.05とした.II結果追加群は7例9眼,変更群は100例166眼,変更追加群は10例20眼だった(図1).BTFCが投与された理由は,追加群と変更追加群では全例が眼圧下降効果不十分だった.変更群では眼圧下降効果不十分が90例150眼,副作用出現が10例16眼だった.性別は3群間に差がなかった(p=0.1739,c2検定)(表1).年齢は変更群が追加群に比べて有意に高齢だった(p=0.007,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定).病型は原発開放隅角緑内障が変更群で追加群に比べて有意に多かった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).眼圧は追加群で変更群と変更追加群に比べて有意に高かった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).前投薬は追加群で変更群と変更追加群に比べて有意に少なかった(p<0.0001,Kruskal-Wallis検定).(153)変更群の内訳は,DTFCからの変更が43例72眼,b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が36例58眼,b遮断点眼薬からの変更が16例28眼,炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が4例7眼などだった(図2).BTFCが投与された理由は,DTFCからの変更では眼圧下降効果不十分が33例56眼,副作用出現が10例16眼だった.副作用の内訳は掻痒感3例5眼,結膜充血2例4眼,刺激感2例3眼,霧視1例2眼,アレルギー性結膜炎1例1眼,めまい1例1眼だった.他の変更群は全例眼圧下降効果不十分だった.b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例の各々の点眼薬の内訳は,b遮断点眼薬はイオン応答ゲル化チモロール点眼薬23眼,水溶性チモロール点眼薬9眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬8眼,カルテオロール点眼薬8眼,持続性カルテオロール点眼薬8眼,レボブノロール点眼薬2眼,炭酸脱水酵素阻害点眼薬はブリンゾラミド点眼薬44眼,ドルゾラミド点眼薬14眼だった.組み合わせとしてはイオン応答ゲル化チモロール点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬19眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬+ブリンゾラミド点眼薬8眼,持続性カルテオロール+ブリンゾラミド点眼薬7眼などだった.b遮断点眼薬からの変更症例の点眼薬の内訳は持続性カルテオロール点眼薬15眼,イオン応答ゲル化チモロール点眼薬7眼,熱応答ゲル化チモロール点眼薬4眼,カルテオロール点眼薬2眼だった.炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例の内訳はドルゾラミド点眼薬6眼,ブリンゾラミド点眼薬1眼だった.眼圧はDTFCからの変更では,変更前17.9±2.9mmHg,変更1カ月後17.2±3.7mmHg,3カ月後16.4±3.5mmHgで変更後に有意に下降した(p<0.0001)(図3).投与された理由別では,眼圧下降効果不十分例では変更前18.2±2.9mmHg,変更1カ月後17.9±3.6mmHg,3カ月後16.8±3.4mmHgで,変更前に比べて変更3カ月後に有意に下降した(p<0.001).副作用出現例では変更前16.5±2.6mmHg,変更1カ月後14.2±3.1mmHg,3カ月後14.8±3.7mmHgで,変更後に有意に下降した(p<0.001).b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では,変更前15.8±3.3mmHgと変更1カ月後15.7±3.5mmHg,3カ月後15.2±3.4mmHgで同等だった(p=0.16).b遮断点眼薬からの変更では,変更前18.0±5.4mmHg,変更1カ月後14.9±3.9mmHg,3カ月後14.9±3.8mmHgで変更後に有意に下降した(p<0.001).III考按BTFCが新規に投与された症例を検討したがさまざまな処方パターンがみられた.緑内障点眼薬治療の第一選択薬は強力な眼圧下降効果,全身性の副作用が少ない点,1日1回あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151219 表1追加群,変更群,変更追加群の患者背景追加群変更群変更追加群p値点眼の利便性よりプロスタグランジン関連点眼薬が使用されることが多い.今回の195眼のうち前投薬としてプロスタグランジン関連点眼薬が使用されていた症例は170眼(87.2%)であった.プロスタグランジン関連点眼薬で眼圧下降効果が不十分な症例では点眼薬の追加が行われる.追加投与の場合は,b遮断点眼薬や炭酸脱水酵素阻害点眼薬の追加,プロスタグランジン関連点眼薬を中止してプロスタグランジン/チモロール配合点眼薬への変更が考えられる.今回の症例のうちb遮断点眼薬や炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更症例はプロスタグランジン関連点眼薬との併用が35眼中32眼(94.3%)と多かった.DTFCからの変更,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更でも,プロスタグランジン関連点眼薬との併用症例が130眼中120眼(92.3%)と多かった.配合点眼薬が使用可能となる前は,プロスタグランジン関連点眼薬,b遮断点眼薬,炭酸脱水酵素阻害点眼薬の併用が多かったと思われる.DTFCの登場により,プロスタグランジン関連点眼薬+DTFCの使用症例が増えたと考えられる.今後はプロスタグランジン関連点眼薬+b遮断点眼薬あるいはプロスタグランジン関連点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更が増加すると予想される.変更追加群,変更群,166眼,85.1%追加群,20眼,10.3%9眼,4.6%図1追加群,変更群,変更追加群の割合症例性別年齢病型(眼)眼圧(眼)前投薬数(眼)7例9眼100例166眼男性4例,女性3例男性35例,女性65例*54.9±23.5歳68.4±11.3歳(26.82歳)(40.90歳)**続発緑内障:5原発開放隅角緑内障(狭義):120正常眼圧緑内障:28正常眼圧緑内障:2続発緑内障:10原発開放隅角緑内障(狭義):1高眼圧症:1原発閉塞隅角緑内障:6高眼圧症:2****27.3±5.5mmHg(20.35mmHg)17.1±3.7mmHg(7.34mmHg)16.2±2.7mmHg(10.22mmHg)<0.0001****0.1±0.3剤3.1±0.9剤3.0±0.4剤(0.1剤)(1.5剤)(2.4剤)<0.000110例20眼男性6例,女性4例0.173959.2±15.5歳(41.77歳)0.007原発開放隅角緑内障(狭義):19続発緑内障:1<0.0001炭酸脱水酵素その他,257眼,4.2%20151050ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬,72眼,43.4%b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬,58眼,34.9%b遮断点眼薬,28眼,16.9%阻害点眼薬,1眼,0.6%図2変更群の内訳眼圧(mmHg)(*p<0.01,**p<0.0001)******ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬b遮断薬変更前変更1カ月後変更3カ月後図3変更群の変更前後の眼圧(*p<0.001,**p<0.0001,ANOVA,Bonferroni/Dunn検定)1220あたらしい眼科Vol.32,No.8,2015(154) 今回はDTFCからの変更がもっとも多かったが,DTFCからBTFCへ変更した症例の眼圧下降効果が報告されている8).Lanzlらは,各種点眼薬からBTFCへの変更症例を報告した8).ドルゾラミド2%/チモロール配合点眼薬単剤からの変更症例(2,937例)では,眼圧は変更前18.5±4.1mmHgに比べて変更後16.5±3.2mmHgに有意に下降した.一方,プロスタグランジン関連点眼薬+ドルゾラミド2%/チモロール配合点眼薬からプロスタグランジン関連点眼薬+BTFCへの変更症例(823例)では,眼圧は変更前18.3±5.0mmHgに比べて変更後16.4±3.9mmHgに有意に下降した.今回の調査でも変更により眼圧は有意に下降したが,眼圧下降幅は0.7.1.5mmHgでLanzlらの報告8)(1.9.2.0mmHg)よりやや低値を示した.一方,DTFCとBTFCを別々に投与した際の眼圧下降効果は同等と報告されている9).副作用の比較では刺激感はDTFCに多く8,10),霧視はBTFCに多い10),あるいは同等だった9)と報告されている.一方,プロスタグランジン関連点眼薬/チモロール配合点眼薬においても,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬からトラボプロスト/チモロール配合点眼薬11.13)あるいはビマトプロスト/チモロール配合点眼薬13)への変更で眼圧が有意に下降したと報告されている.今回,変更により眼圧が下降した理由としてとくに副作用が出現した症例ではアドヒアランスが向上したことや,ドルゾラミドとブリンゾラミドの眼圧下降効果の差が考えられる.b遮断点眼薬と炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では変更前後で眼圧は変化なかった.Lanzlらは,ブリンゾラミド点眼薬+チモロール点眼薬からの変更症例(252例)では眼圧が変更前18.4±3.4mmHgに比べて変更後16.6±2.9mmHgに有意に下降し,ドルゾラミド(2%)点眼薬+チモロール点眼薬からの変更症例(73例)では眼圧が変更前18.7±3.5mmHgに比べて変更後16.5±2.9mmHgに有意に下降したと報告した8).変更により点眼ボトル数や点眼回数が減るためにアドヒアランスが向上し,眼圧が下降することが考えられる.今回は変更前後で眼圧に変化がなかったが,元来アドヒアランスが良好な症例が多数含まれていた可能性がある.b遮断点眼薬からの変更では,炭酸脱水酵素阻害点眼薬が追加されたことと同様のため眼圧は有意に下降した.その眼圧下降幅は2.5.3.4mmHg6),3.2mmHg5),4.8mmHg8)と報告されており,今回(3.1mmHg)と同等だった.今回,BTFCの追加群は7例9眼だった.そのなかで前投薬でプロスタグランジン関連点眼薬を使用していた症例は1眼(11.1%)と少なかった.続発緑内障が9眼中5眼(55.6%)と多く,内訳としてぶどう膜炎が3眼,Posner-Schlossman症候群が2眼だった.ぶどう膜炎を発症している症例では,炎症を惹起するプロスタグランジン関連点眼薬は使用しづらく,BTFCが使用されたと考えられる.また,白内(155)障手術後の眼圧上昇に対しても.胞様黄斑浮腫を惹起する可能性のあるプロスタグランジン関連点眼薬は使用しづらく,BTFCが今後使用されると考えられる.BTFCが投与された理由は,眼圧下降効果不十分と副作用出現だった.今回の後ろ向き研究の問題点として,投与を行った眼科医師は10名以上で,眼圧下降効果不十分の判定基準が定められておらず,個々の医師の判断によるものであった.今回,BTFCが新規に処方された症例の特徴を調査した.DTFCからの変更がもっとも多く,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更,b遮断点眼薬からの変更が続いた.DTFCからの変更,b遮断点眼薬からの変更では眼圧は有意に下降し,b遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬からの変更では眼圧は変化なかったことから,BTFCは良好な眼圧下降効果を有することが示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyGroup:Theeffectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmol126:498-505,19982)VanVeldhuisenPC,EdererF,GaasterlandDEetal;TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInterventionStudy(AGIS):7.Therelationshipbetweencontrolofintraocularpressureandvisualfielddeterioration.AmJOphthalmol130:429-440,20003)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第3版).日眼会誌116:3-46,20124)DjafariF,LeskMR,HarasymowyczPJetal:Determinantsofadherencetoglaucomamedicaltherapyinalong-termpatientpopulation.JGlaucoma18:238-242,20095)YoshikawaK,KozakiJ,MaedaH:Efficacyandsafetyofbrinzolamide/timololfixedcombinationcomparedwithtimololinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:389-399,20146)NagayamaM,NakajimaT,OnoJ:Safetyandefficacyofafixedversusunfixedbrinzolamide/timololcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:219-228,20147)NakajimaM,IwasakiN,AdachiM:PhaseIIIsafetyandefficacystudyoflong-termbrinzolamide/timololfixedcombinationinJapanesepatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.ClinOphthalmol8:149-156,20148)LanzlI,RaberT:Efficacyandtolerabilityofthefixedcombinationofbrinzolamide1%andtimolol0.5%indailypractice.ClinOphthalmol5:291-298,2011あたらしい眼科Vol.32,No.8,20151221 9)ManniG,DenisP,ChewPetal:Thesafetyandefficacyofbrinzolamide1%/timolol0.5%fixedcombinationversusdorzolamide2%/timolol0.5%inpatientswithopen-angleglaucomaorocularhypertension.JGlaucoma18:293300,200910)AugerGA,RaynorM,LongstaffS:PatientperspectiveswhenswitchingfromCosoptR(dorzolamide-timolol)toAzargaTM(brinzolamide-timolol)forglaucomarequiringmultipledrugtherapy.ClinOphthalmol6:2059-2062,11)添田尚一,宮永嘉隆,佐野英子ほか:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼液への切替え.あたらしい眼科30:861-864,201312)林泰博,檀之上和彦:ラタノプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼からトラボプロスト・チモロールマレイン酸塩配合点眼への切り替えによる眼圧下降効果.臨眼66:865-869,201213)CentofantiM,OddoneF,GandolfiS:Comparisonoftravoprostandbimatoprostplustimololfixedcombinationsinopen-angleglaucomapatientspreviouslytreatedwithlatanoprostplustimololfixedcombination.AmJOphthalmol150:575-580,2010***(156)