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隅角と前房深度は6 年を隔てた経年変化で狭く,浅くなる

2022年7月31日 日曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(7):963.967,2022c隅角と前房深度は6年を隔てた経年変化で狭く,浅くなる橋本尚子*1原岳*1本山祐大*1大河原百合子*1成田正弥*1原孜*1堀江大介*2伊野田悟*3千葉厚*1平出奈穂*1田中誠人*1片嶋優衣*1小池由記*1*1原眼科病院*2亀田総合病院眼科*3自治医科大学眼科学講座CChangesinAnteriorChamberAngleandDepthinNormalHealthySubjectsOvera6-YearPeriodTakakoHashimoto1),TakeshiHara1),YutaMotoyama1),YurikoOkawara1),MasayaNarita1),TsutomuHara1),DaisukeHorie2),SatoruInoda3),AtsushiChiba1),NahoHiraide1),MakotoTanaka1),YuiKatashima1)andYukiKoike1)1)HaraEyeHospital,2)DepartmentofOphthalmology,KamedaMedicalCenter,3)DepartmentofOphthalmology,JichiMedicalUniversityC目的:隅角,前房深度,中心角膜厚のC6年の経年変化を比較検討する.対象および方法:対象は検査の同意が得られた健常者C40名.男性C10名女性C30名.初回検査時の平均年齢C40.4C±9.5(21.57)歳.右眼を対象とした.全員内眼手術既往なし.2014年C5月とC2020年C8月にCCASIAで隅角(耳側および鼻側CTIA750およびCTIA500),前房深度,中心角膜厚を測定し,比較検討した.結果:2014年の耳側隅角CTIA750はC42.2C±13.2°,TIA500はC44.1C±14.0°,鼻側隅角CTIA750はC38.1C±11.8°,TIA500はC38.8C±12.4°.2020年では耳側隅角CTIA750はC35.7C±12.2°,TIA500はC35.3C±13.9°,鼻側隅角CTIA750はC32.9C±11.5°,TIA500はC34.3C±12.3°.前房深度はC2014年:3.09C±0.3Cmm,2020年:2.99C±0.3mmであった.すべて有意差(p<0.01)が得られた.中心角膜厚はC2014年:533C±26Cμm,2020年:533C±27Cμmで有意差はなかった(p=0.31).結論:6年を隔てた経年変化は,中心角膜厚は変化なく,隅角は狭くなり,前房深度は浅くなっていた.CPurpose:Toinvestigatethe6-yearchangesinanteriorchamberangle(ACA)C,anteriorchamberdepth(ACD)C,andcentralcornealthicknessinnormalhealthysubjects.SubjectsandMethods:Thisstudyinvolved40healthysubjects[10males,30females;meanage:40.4C±9.4years(range:21-57year)]C.InformedconsentwasobtainedfromCallCsubjects,CandConlyCright-eyeCdataCwasCused.CAllCsubjectsChadCnoChistoryCofCintraocularCsurgery.CInCMayC2014andAugust2020,ACA(temporal-andnasal-sideTIA750andTIA500)C,ACD,andcentralcornealthicknesswereCmeasuredCbyCCASIACandCcompared.CResults:InC2014,CtheCtemporal-sideCTIA750CandCTIA500CanglesCwereC42.2±13.2°CandC44.1±14.0°,respectively,andthenasal-sideTIA750andTIA500angleswere38.1±11.8°CandC38.8C±12.4°,Crespectively.CInC2020,CtheCtemporal-sideCTIA750CandCTIA500CanglesCwereC35.7±12.2°CandC35.3±13.9°,Crespectively,CandCtheCnasal-sideCTIA750CandCTIA500CanglesCwereC32.9±11.5°CandC34.3±12.3°,Crespectively.CTheCmeanCACDCwasC3.09±0.3CmmCinC2014CandC2.99±0.3CmmCinC2020.CSigni.cantCdi.erencesCwereCobservedCinCall.ndings(p<0.01)C.Themeancentralcornealthicknesswas533±26μmin2014and533±27μmin2020,withnosigni.cantCdi.erenceobserved(p=0.31)C.CConclusion:AlthoughCnoCchangeCinCcentralCcornealCthicknessCwasCobserved,theACAsnarrowedandtheACDsbecameshalloweroverthe6-yearperiod.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(7):963.967,C2022〕Keywords:隅角,前房深度,中心角膜厚,経年変化,CASIA.angle,anteriorchamberdepth,centralcornealthickness,changeofaging,CASIA.C〔別刷請求先〕橋本尚子:〒320-0861栃木県宇都宮市西C1-1-11原眼科病院Reprintrequests:TakakoHashimotoM.D.,HaraEyeHospital,1-1-11Nishi,Utsunomiya,Tochigi320-0861,JAPANC0910-1810/22/\100/頁/JCOPY(109)C963図1aTIA(trabecular.irisangle)TIA:隅角底(anglerecess:AR)から,angleCopeningCdistance(AOD.図C1b参照)の両端に引いた直線の間の角度.はじめに隅角あるいは前房深度は年齢が上がるに従い,狭く,浅くなると報告されている1.6)が,そのほとんどは特定の期間に幅広い年齢の患者を対象として行った「横断調査」によるものである.隅角あるいは前房深度の経年変化を論じるには,横断調査よりも同一人物の経年変化を測定するのがより有用であると考えられる.Panらは,走査型周辺前房深度計SPAC(タカギセイコー)を用いてC2003年とC2008年にC157人の日本人を対象として初回とC5年後で前房深度の狭小化と前房深度の減少を報告している7).今回筆者らは,前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)SS-1000CASIA(トーメーコーポレーション)を用いてC2014年とC2020年に,初回とC6年後の隅角,前房深度,中心角膜厚を測定した結果を比較検討し,6年の経過で前房深度は浅くなり,隅角は狭くなる,という結果を得たので報告する.CI対象および方法対象は内眼手術既往のない,検査の同意が得られた健常者40名(内訳は男性C10名,女性C30名).初回検査時の平均年齢はC40.4C±9.5(21.57)歳.解析の対象は右眼とした.2014年C5月とC2020年C8月に前眼部COCT(CASIA)を用いて暗室にて計測した.隅角定量は耳側および鼻側のCtrabecu-larCirisangle(TIA)750μmおよびCTIA500μm(図1a,b)を測定8),また前房深度,中心角膜厚を測定した.2014年2020年ともに同一視能訓練士が撮影および解析を行った.2014年とC2020年の測定結果の比較には対応のあるCt検定を図1bAOD(angleopeningdistance)AOD:強膜岬(scleralspur:SS)からC500μm,750Cμmの線維柱帯上の点(T)と,その点から垂直に虹彩に下した線(I)の距離.AOD500が△の間の距離,AOD750が□の間の距離を示す.行った.各パラメータの変化量と年齢の相関に関しては,単回帰分析を行った.両検定ともに有意水準をCp<0.01とした.なお,当該研究は当院倫理委員会の承認(承認番号202116)を得て施行した.CII結果1.測定結果と2014年対2020年の比較隅角のC6年の経時変化では,耳側CTIA750はC42.2C±13.2°からC35.7C±12.2°(p<0.01),耳側CTIA500はC44.1C±14.0°からC35.3C±13.9°(p<0.01)と有意に狭くなっていた.また,鼻側もCTIA750はC38.1C±11.8°からC32.9C±11.5°(p<0.01),TIA500はC38.8C±12.4°からC34.3C±12.3°(p<0.01),と有意に狭くなっていた.前房深度はC3.09C±0.3mmからC2.99C±0.3mm(p<0.01)と有意に浅くなっていた.中心角膜厚はC533±26μmからC533C±27μm(p=0.31)と有意差はなかった(表1).2014年とC2020年の各パラメータの変化量については,単回帰分析の結果,耳側CTIA750のみ有意な年齢との相関を認め,係数はC.0.32(p<0.01,rC2=0.19)であった.耳側TIA500,鼻側CTIA750,TIA500,前房深度,中心角膜厚の変化量は年齢と有意な相関を認めなかった(表2).2014年からC20年にかけての耳側CTIAの変化量(2014年のCTIA750.2020年のCTIA750)は,年齢に対して負の相関を示した(図2).変化量を年代別にみてみると,20歳代では平均C7.86°,30歳代では平均C11.0°,40歳代ではC5.37°,50表12014年と2020年測定結果の比較2014年2020年p値変化量/年年齢(歳)C40.4±9.5C45.9±9.3<0.0000001C1.0隅角耳側CTIA750(°)C42.2±13.2C35.7±12.2<0.0001C.1.08隅角耳側CTIA500(°)C44.1±14.0C35.3±13.9<0.0001C.1.46隅角鼻側CTIA750(°)C38.1±11.8C32.9±11.5<0.0001C.0.87隅角鼻側CTIA500(°)C38.8±12.4C34.3±12.3<0.0001C.0.75前房深度(mm)C3.09±0.3C2.99±0.3<0.0001C.0.02中心角膜厚(μm)C533±26C533±27C0.31C.中心角膜厚以外は有意差が認められた.表22014~2020年の変化量と年齢の相関変化量回帰係数p値隅角耳側CTIA750(°)C6.5±6.9C.0.32<0.01隅角耳側CTIA500(°)C8.8±7.5C.0.31C0.01隅角鼻側CTIA750(°)C5.2±6.7C.0.15C0.17隅角鼻側CTIA500(°)C4.5±6.8C.0.22C0.05前房深度(mm)C0.10±0.07C.0.00039C0.75中心角膜厚(μm)C0.90±11.4C0.10C0.61耳側CTIA750のみ有意な年齢との相関が認められたが,耳側CTIA500,鼻側CTIA750,TIA500,前房深度,中心角膜厚の変化量は年齢との有意な相関を認めなかった.変化量(°)30.025.020.015.010.05.00.0-5.0-10.015105020~3030~4040~5050~60図2耳側TIA750:2014~2020年の変化量と年齢(2014年時)の相関耳側CTIA750の変化量と年齢との間には負の相関が認められた.棒グラフは年代別のTIA750の変化量を示す.30歳代で変化量がもっとも大きくなり,その後は減少していた.変化量(mm)0.300.250.200.150.100.050.00-0.05-0.100.20.1020~3030~4040~5050~60図3前房深度:2014~2020年の変化量と年齢(2014年時)の相関前房深度の変化量と年齢には有意な相関はみられなかった.棒グラフは年代別の前房深度の変化量を示す.30歳代で変化量がもっとも大きくなり,その後減少していた.歳代ではC0.52°であった.2014年から20年にかけての前房深度の変化量は,年齢と有意な相関を認めなかった(図3).変化量を年代別にみてみると,20歳代では平均C0.07Cmm,30歳代では平均C0.14Cmm,40歳代ではC0.12Cmm,50歳代ではC0.08Cmmであった.CIII考按1.本研究の特徴従来,隅角,前房深度は加齢とともに減少すると報告されていたが,そのほとんどは横断調査によるものであり,日本人においては,若い世代(20.30歳代)と高齢者の世代(70歳.80歳)では屈折,眼軸長の平均値も異なるため,加齢による前房深度,隅角の変化を横断調査で評価するには無理があるといわざるを得ない.この点に着目したCWickremas-ingheらは,比較的世代間差のないモンゴル人を対象とした疫学横断調査を行った結果,加齢とともに,前房深度が減少し,水晶体厚が増加することを報告し9),前房深度の減少には水晶体厚の増加が関与していることを示唆している.本研究は,日本人を対象としており,年齢はC20.57歳と若く,有水晶体眼で非緑内障眼のC6年後の経年変化を観察いる点が貴重なデータであると考える.結果として,従来の報告と同様,隅角は経年変化で狭くなり,前房深度は経年変化で浅くなることが確認された.中心角膜厚は変わらなかった.C2.前房深度の経年変化平均C40.4歳時の前房深度は平均C3.09mmで,6年後は2.99Cmmへと有意に減少していた.1年当たりの変化量は.0.02Cmmであった(表1).酒井らは日本人を対象とした横断研究で非緑内障者C89例(10歳代後半からC80歳代前半)の前房深度は年齢と有意な負の相関を示し,1年当たりの変化量は.0.021Cmmであったと報告しており10),本研究の変化量と一致していた.一方,Panら7)は縦断研究としてC2003年とC2008年に走査型周辺前房深度計(SPAC)を用いてC157人の日本人を対象に前房深度と隅角を測定している.対象症例の年齢はC18.95歳,平均C66.7歳であった.前房深度はグレード分類で評価されており,実際の前房深度の定量とは異なるが,5年でグレードが平均C7.2からC6.5に減少していた.彼らはさらに,眼内レンズ挿入眼(26眼)では前房深度,隅角ともにC5年間で有意な変化を示さなかったことから,前房深度,隅角の変化には水晶体が関与していると記している.本研究の対象者は全員が内眼手術既往のない有水晶体眼である.さらに,本研究ではCCASIA-1000を用いることで,より解像度の高い画像を得ることができ,定性的な狭小化の傾向だけでなく,定量的な分析が可能となった.本研究ではC6年における前房深度の変化量と年齢に単回帰分析では有意な相関はみられなかった(表2).ただし,年代別にみてみると(図2),前房深度はC20歳代,30歳代で減少の変化量が高く,30歳代でピークとなり,40歳代,50歳代では変化量が減少していた.水晶体は誕生直後はほぼ全体が核であるが,水晶体上皮細胞の増殖と核の圧縮,移動により,加齢とともに前房側に厚みを増すことが知られている11).本研究における前房深度の変化量が水晶体厚の前房側への増加を反映すると考えた場合,水晶体厚の増加量はC30歳代で大きく,40歳代,50歳代と増加量は漸減することになる.Wickremasingheら9)の報告のなかで,table2に示されている世代別の前房深度,水晶体厚の平均値をみると,50歳代,60歳代,70歳代の増加量よりもC40歳代のほうが増加量が多くなっている.本研究での前房深度の狭小化は生理的な水晶体厚の変化を反映している可能性があると思われた.C3.隅角の経年変化平均C40.4歳時の耳側隅角はCTIA750でC42.2°,TIA500で44.1°あったが,6年後には各々35.7°,35.3°と有意に狭小化していた.1年当たりの変化量はC.1.0.C.1.5°であった(表1).PanらによるCSPACの報告7)ではまた,前房隅角は34.2°からC28.1°に減少し,この変化量を単純に経過年のC5で除すると,変化量はC.1.22°/年となり,本研究の結果と近似した値で矛盾しない.本研究において耳側隅角は,TIA500のほうがC750よりも大きな変化量を示した.Panらは前房深度の減少は中心に比べて周辺で強い,と報告しており,瞳孔よりのCTIA750よりもより周辺のCTIA500で変化量が多いことと矛盾しない.6年間の変化量と年齢の相関を単回帰分析したところ,耳側CTIA750の変化量と年齢には有意な負の相関(C.0.32)が認められた.50歳以上の中国人を対象としたCWangらの縦断調査12)によれば,年齢とともに閉塞隅角の発症率は増加し,水晶体がより厚くなり,隅角がより狭くなり,近視眼の偽落屑により頻度が高くなっていた.本研究では,対象者に偽落屑は含まれていなかった.年代別にみた変化量は前房深度と同様でC30歳代に減少量がピークを示していた.高齢者の原発閉塞隅角症,原発閉塞隅角緑内障の隅角の狭小化には白内障による水晶体厚の増加ならびにCZinn小帯脆弱が要因と考えられている.本研究の対象者は非緑内障眼の有水晶体眼で,白内障による矯正視力の低下がみられていなかった.よって,50歳代における前房深度,隅角の減少が白内障によるものかどうかの評価はしがたい.しかしながら,20.60歳の日本人において,6年の経過で前房深度は浅くなり,隅角が狭小化することは確認することができた.さらに確実なエビデンスになるためには,対象者数,経過観察のポイントの増加が望ましいが,本研究が,今後の原発閉塞隅角症,原発閉塞隅角緑内障,白内障における前房深度,隅角定量における経過観察の研究の一助となれば幸いである.【利益相反】:利益相反公表基準に該当なし文献1)YamamotoT,IwaseA,AraieMetal:TheTajimiStudyreportC2:prevalenceCofCprimaryCangleCclosureCandCsec-ondaryglaucomainaJapanesepopulation.OphthalmologyC112:1661-1669,C20052)KashiwagiCK,CTokunagaCT,CIwaseCACetal:UsefulnessCofCperipheralCanteriorCchamberCdepthCassessmentCinCglauco-mascreening.EyeC19:990-994,C20053)加茂純子,佐宗真由美,鶴田真ほか:走査型周辺前房深度計(SPAC)による周辺前房深度の男女別加齢変化.日眼会誌C111:518-525,C20074)ShajariCM,CHerrmannCK,CBuhrenCJCetal:AnteriorCcham-berCangle,Cvolume,CandCdepthCinCaCnormativeCcohort-ACretrospectiveCcross-sectionalCstudy.CCurrCEyeCResC44:C632-637,C20195)HashemiCH,CKhabazkhoobCM,CMohazzab-TorabiCSCetal:CAnteriorCchamberCangleCandCanteriorCchamberCvolumeCinCaC40-toC64-year-oldCpopulation.CEyeCContactCLensC42:C244-249,C20166)LavanyaCR,CWongCTY,CFriedmanCDSCetal:DeterminaC-tionsCofCangleCclosureCinColderCSingaporeans.CArchCOph-thalmolC126:686-691,C20087)PanCZ,CFuruyaCT,CKashiwagiK:LongitudinalCchangesCinCanteriorCcon.gurationCinCeyesCwithCopenCangleCglaucomaCandassociatedfactors.JGlaucomaC21:296-301,C20128)LiuS,YuM,YeCetal:AnteriorchamberangleimagingwithCswept-sourceCopticalCcoherencetomography:anCinvestigationConCvariabilityCofCangleCmeasurement.CInvestCOphthalmolVisSciC52:8598-8603,C20119)WickremasingheS,FosterPJ,UranchimegDetal:OcularbiometryCandCrefractionCinCmongolianCadults.CInvestCOph-thalmolVisSciC45:776-783,C200410)酒井寛,佐藤健雄,鯉淵博ほか:前眼部撮影・解析装置(EAS-1000)を用いた閉塞隅角緑内障眼の前眼部計測.日眼会誌C100:546-550,C199611)AnthonyJB,RameshCT,BrendaJT:Wol.’sAnatomyoftheCEyeCandCOrbit,C8Cedition,Cp432-435,CChapmanC&CHallCmedical,Spain,199712)WangL,HuangW,HuangSetal:Ten-yearincidenceofprimaryangleclosureinelderlyChinese:theLiwanEyeStudy.BrJOphthalmolC103:355-360,C2019***

白内障眼内レンズ手術後超早期の屈折変動に関する検討

2017年12月31日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(12):1771.1775,2017c白内障眼内レンズ手術後超早期の屈折変動に関する検討大内雅之大内眼科CChangeinRefractiveStatusinVeryEarlyPostoperativeDaysinCataractSurgeryMasayukiOuchiCOuchiEyeClinic目的:白内障眼内レンズ(IOL)手術の術後超早期の屈折変化を調べ,翌日のみ遠視化傾向となる割合,その因子を検討した.方法:白内障CIOL手術を受けたC200眼を,0.25Cdiopter(D)より大きな差を有意として,術翌日がC2日目よりも遠視寄りだった症例(A群),翌日がC2日目より近視寄りだった症例(B群),2日間の変動がC±0.25D以内の症例(C群)に分け,術翌日.2日目の,眼圧,前房深度,角膜屈折力,角膜中央厚の変動を測定計算した.結果:組み入れされたC189眼の内訳は,A群C66眼,B群C38眼,C群C85眼であった.前房深度の変動はC3群間に差はなかった.角膜屈折力の変動はC3群に差があり,A群はCB群に比べ有意に大きく(p=0.02),A群では,角膜屈折力の変動と角膜中央厚の変動に有意な負の相関がみられた(p=0.01)が,術後C2日目以降は屈折変化がみられなかった.結論:白内障IOL手術の約C35%の症例で,術翌日は最終屈折より遠視寄りになり,それは,一時的な角膜厚の増加に伴う角膜屈折力の減少が因子となっている可能性が示唆された.CPurpose:Tostudytheincidenceofearlypostoperativerefractivechangeineyeswithhyperopicshiftonly,at1dayCpostCcataractCsurgery.CMethods:200CeyesCthatCunderwentCintraocularClens(IOL)implantationCwereCdividedinto3groupsbasedontheamountofdiopter(D)changeinrefractivestatusbetweendays1and2postoperative-ly:GroupCA:eyesCwith>0.25DChyperopicCchangeCinCsphericalCequivalent(SE)atCdayC1CasCcomparedCtoCdayC2postoperatively;GroupB:eyeswith>0.25Dmyopicchangeinsphericalequivalent(SE)atday1ascomparedtodayC2Cpostoperatively;GroupCC:eyesCwithinC0.25DCofCrefractiveCchangeCbetweenCdayC1CandCdayC2.CChangeCinanteriorchamberdepth(ACD),cornealpower(K),intraocularpressure(IOP)andcornealthicknessbetweendays1CandC2CpostoperativelyCwereCevaluated.CResults:OfCtheC200CoperatedCeyes,CthereCwereC66CeyesCinCGroupCA,C38eyesinGroupBand85eyesinGroupC;11eyeswereexcludedduetonotmeetingtheinclusioncriteria.EveninGroupAeyes,norefractivechangewasobservedat1week,1monthand6monthspostoperatively.Althoughnodi.erenceCinCACDCchangeCwasCfoundCbetweenCtheCgroups,Csigni.cantCdi.erenceCwasCseenCinCchangeCofCK,CwhichwasCsigni.cantlyClargerCinCGroupCACthanCinCGroupCB(p=0.02)C.CMoreover,Csigni.cantCnegativeCcorrelationCwasfoundCbetweenCchangeCofCKCandCchangeCofCcornealCthicknessCinCGroupCA(p=0.01)C.CConclusions:Ofthe189includedeyes,35%showedhyperopicchangeonlyatday1postoperativelyduetotheKvaluedecreasecausedbythetemporaryincreaseofcornealthickness.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C34(12):1771.1775,C2017〕Keywords:眼内レンズ,術後屈折,遠視化,前房深度,角膜屈折力,角膜厚.intraocularlens,post-operativere-fraction,hyperopicchange,anteriorchamberdepth,cornealpower,cornealthickness.Cはじめにが開発されており,それらの多くは,眼軸長(axiallength:近年の白内障手術においては,小切開手術と光学式眼軸長AL)に加えて,角膜屈折力(K値)や前房深度(anterior測定器の登場で,術後球面度数の精度は向上してきた1).さchamberdepth:ACD)が重要な計算因子として用いられてらに,より正確な術後屈折を求めて,さまざまな度数計算式いる2,3).〔別刷請求先〕大内雅之:〒601-8453京都市南区唐橋羅城門町C47-1大内眼科Reprintrequests:MasayukiOuchi,M.D.,Ph.D.,OuchiEyeClinic,47-1Karahashi-Rajomon-cho,Minami-ku,Kyoto601-8453,CJAPAN術後屈折誤差の因子として,以前はCALがもっとも大きいとされていたが4),光学式眼軸長測定器の登場以後はその比重は小さくなり,術後の眼内レンズ(IOL)深度(e.ectivelensposition:ELP)の予測精度が最大の因子であり5),つぎに,とくに屈折矯正手術既往眼や角膜形状異常眼などで,K値が重要因子と考えられている6).一方,術式の進歩に加えてプレミアムCIOLの普及に伴い,早期の屈折安定が求められているが,白内障CIOL手術では,術翌日の超早期のみ,屈折値が最終値よりも遠視寄りになる症例をしばしば経験する.しかし,この術後超早期の屈折変化について論じた報告はない.本論文では,IOL手術後超早期の屈折変化を調べ,さらに,術翌日に遠視寄りの屈折を示す症例については,その因子を検討した.CI対象および方法本研究は,当院倫理委員会の審理を経て行われた前向き研究で,すべての組み入れ症例から,本研究への組み入れに対し文書による同意を得た.対象は,同一術者同一手技で水晶体摘出,同一CIOLの挿入を行った連続C134例C200眼で,組み入れ基準は,眼軸長がC22.0Cmm以上C28.0Cmm未満,術前角膜屈折力C42.0ジオプトリー(D)以上46.0D以下,水晶体核硬度Cemery分類CIII以下,円錐角膜などの角膜形状異常がない,水晶体以外に混濁を有さない,黄斑浮腫を有さない,術前に光学的眼軸長測定器CIOLマスター(CarlCZeissCMeditec社)による眼軸長測定が可能,術中合併症がなく,IOLが.内固定されている,術後に細隙灯顕微鏡で確認できるCDescemet膜皺襞,角膜浮腫,創口閉鎖不全がないことを条件とした.術式は,2.2CmmBENT透明角膜切開から,連続円形前.切開,ハイドロダイセクションの後,0.9mmミニフレアABSチップ,0.9Cmmウルトラスリーブを装着した超音波白内障手術装置CCENTURION(いずれもCAlcon社)を用いて水晶体を摘出し,同創からCDカートリッジを装.した電動IOL挿入機CAutoSertを用いてCSN60WF(いずれもCAlcon社)を挿入した.術翌日,術後C2日目に,他覚的屈折(等価球面値),角膜屈折力,ACD,角膜中央厚,眼圧を,術後C1週,1カ月,6カ月には,他覚的屈折と角膜屈折力をそれぞれ測定した.他覚的屈折検査は,オートレフラクトメーターCARK560A(NIDEK社),眼圧は非接触式眼圧計CNT4000(NIDEK社)で,ACDは光学式眼軸長測定装置CIOLマスターC700(CarlZeissCMeditec社),角膜中央厚は超音波眼軸長測定装置AL-2000(TOMEY社)で測定した.角膜厚の測定に関しては,健常角膜では,光学的測定器機の再現性が高いとされるが7,8),術後などのわずかな浮腫や混濁があると,超音波パキメーターよりも過小評価される9,10)ことから,今回は,絶対値よりも,経時的変化の評価を重視し,超音波測定機器を用いた.これらの値より,以下の検討を行った.C1.グループ分けまず術翌日,2日目の他覚的屈折における等価球面値(それぞれCSE1,SE2とする)を求め,以下の群に分類した.・A群:SE2-SE1<C.0.25D;術翌日がC2日目よりも遠視寄りだったもの・B群:SE2-SE1>0.25D;術翌日がC2日目よりも近視寄りだったもの(ただし,2日間の差がC0.25D以内のものは,ボーダー群として,以下のCC群に分類する)・C群:C.0.25≦SE2-SE1≦0.25;術翌日とC2日目との差がC±0.25D以内のものC2.群.間.比.較術翌日とC2日目の眼圧の差(眼圧変動),ACDの差(ACD変動),K値の差(K値変動)を群間比較した.C3.相関の検討ACDの変動とCK値の変動について,それぞれの要因を検討するため,ACD変動と眼圧変動の相関,K値変動と術後角膜厚変化の相関を調べた.統計学的解析は,眼圧変動,ACD変動,K値変動は,Bartlett検定にてC3群が等分散であれば一元配置分散分析法でC3群間比較を行い,有意差があった場合は,多重比較検定(Tukey-Kramer法)を行った.分散が等しくなければ,Kruskal-Wallis検定にてC3群間比較を行った.ACD変動と眼圧変動,K値変動と角膜中央厚の各相関はCSpearman順位相関係数検定で行った.統計学的有意水準は5%とした.CII結果200眼中,細隙灯顕微鏡で確認できる術翌日のCDescemet膜皺襞,角膜浮腫,データ取得不完全からC11眼は除外された.組み入れ症例C189眼中,翌日が遠視寄りだったCA群は66眼,近視寄りだったCB群はC38眼,術翌日とC2日目の差が0.25D未満の境界例:C群がC85眼であった.A群の他覚屈折の経時的変化を図1に示す.術後C2日目以降は近視寄りになり,6カ月まで変化はなく,遠視寄りだったのは翌日だけであることが確認できる.眼圧変動(2日目の値C.翌日の値)は,A群CB群CC群の順に,.2.60±3.83,C.2.98±4.81,C.4.52±5.36(mmHg)ですべて翌日が高く,3群間に差はなかった(p=0.28).ACD変動(2日目の値C.翌日の値)は,A群B群C群の順に,C.0.05±0.83,C.0.02±1.05,0.08C±0.97(mm)で,3群間に差はなかった(p=0.90)(図2).さらに,A群C66眼のうちC30眼は,術翌日が遠視寄りであったにもかかわらず,ACDは翌日のほうが浅かった.また,ACD変動はC.1.59.0.30.10.080.20.060.1前房深度の変化(mm)A群B群C群等価球面屈折値(D)0-0.1-0.21日2日1週1カ月6カ月0.040.020-0.02-0.3-0.4図1A群の等価球面値の経時変化他覚屈折値は,術翌日のみ遠視寄りを呈し,2日目以降は変化がみられない.*0.25-0.04-0.06図2術翌日から2日目までの前房深度の変化(2日目の値.翌日の値)3群間に有意な差はみられない.p=0.90(一元配置分散分析法).C44.5術後K値の変化(D)4443.54342.50.2K値の変化(D)0.150.10.054241.5-0.051日2日1週1カ月6カ月-0.1図4A群の角膜屈折力の経時変化図3術翌日から2日目までの角膜屈折力の変動(2A群では術翌日のみ角膜の平坦化が起っていることが日目の値.翌日の値)示唆される.これはC2日目には改善され,それ以降は変K値の変動は,3群間で有意な差がみられた(p=0.02化がみられない.C:一元配置分散分析法).A群はC2日間でのCK値の変動がもっとも大きく,多重比較にてCB群との間に有意差がみられた(*p=0.02:Tukey-Kramer法).角膜中央厚の変化(μm)150100500-50y=-11.441x+0.3426(p=0.01)角膜屈折力の変化(D)-100-2.5-2-1.5-1-0.500.511.522.5図5A群の術翌日から2日目の角膜中央厚の変化と角膜屈折力の変化の相関両者の間には有意な負の相関がみられた(p=0.01:Spearman順位相関係数検定).D:CDioptryC1.36Cmmに分布しており,眼圧の変動と相関はなかった(p=0.51).図3は,A群CB群CC群のCK値変動である.各群順に,0.20C±0.43,C.0.08±0.50,0.04C±0.47(D)で,A群,C群では,術翌日のほうがCK値が小さく,2日間での変動はCA群がもっとも大きかった.3群のCK値変動には有意差があり(p=0.02),多重比較ではA群とB群に有意差を認めた(p=0.02).このことより,A群では術翌日にもっとも角膜の平坦化が起っていることが示唆された.A群における術後CK値の経時変化をみると,術後C2日目以降は最終観察期間まで変化がなく,角膜が平坦化していたのは術翌日だけであることが示された(図4).このCK値変動の因子を検討するために,A群におけるCK値変動と角膜中央厚変化の関係を調べたのが図5である.2日目-翌日におけるCK値変動と角膜中央厚変化の間には,有意な負の相関がみられた(p=0.01).CIII考察白内障眼内レンズ手術後,約C35%の症例で術翌日は屈折が最終安定位よりも遠視化しており,この傾向はC2日目にはなくなり,以後安定した.術翌日遠視寄りだった症例:A群は,その他の症例と比べて,術後C2日間でのCK値変動が有意に大きく,このCK値変動は角膜中央厚の変化と有意に相関した.術翌日の遠視化傾向は,角膜屈折力の変化がおもな要因で,その理由は,術翌日は角膜厚増加により角膜の平坦化が起こっていることが示唆された.一方,ACD変動はC3群の間に差はなく,術後超早期の屈折変化の要因ではなかった.また,眼圧の変動は群間に差はなく,ACD変動とも相関がなかった.つまり,術後超早期の眼圧がCACDに影響し,屈折が変動する,というメカニズムは示唆されなかった.IOL手術後の屈折変化については,過去にもさまざまな報告がある.Behrouzらは,3ピースCIOLは術後前方移動して前房角度,前房容積も浅くなり,術後C1週からC3カ月にかけて約C0.3D近視化したと報告しているが11),Iwaseらは術後C1週からC6カ月にかけて,IOLは前方移動するも屈折は変わらなかったとしている12).一方,シリコーンCIOL挿入眼では,術後C48週の間に,平均C0.53D近視化し,近視化のうちC60%(0.33D)はCIOLの前方移動量で説明できるが,残りの近視化分は原因不明とした報告がある13).これらの報告はすべてC3ピースCIOLでの報告であるが,シングルピースCIOL14),とくに今回使用したCSN60WFは,術後のCELP変化がC3ピースCIOLよりも有意に少ないことが報告されている15).さらに,シングルピースCIOLにおいて,術後C1カ月からC1年の間の屈折変化は,平均C0.25Dの遠視化であったが,IOLの後方偏位は平均0.03mmで,この変化はC0.05Dの屈折変化にしか相当せず,それに対し,角膜曲率の変化は0.17Dであり,術後の屈折変化と相関していたとする報告がある16).しかし,これらの報告は,いずれも術後数週間から数カ月の中長期的な変化を検討したもので,比較的短期の検討では,deJuanらが術翌日から1週間目の間に平均で1.01D近視化したと報告している17)ほか,Koepplらが,3ピースレンズ挿入眼では,術後C1週間でCACDがやや浅くなることを報告している18).しかし,術翌日からC2日目にかけての超早期の屈折変化とその関連因子を調べたものは,本報告が初めてである.一般に,術後視機能は屈折安定期のデータで評価されるが,術後早期の屈折安定が,患者満足度を上げるとする報告もあるとおり19),術者が患者と対面する臨床現場では,翌日の屈折状態は重要である.このようなCIOL手術後の屈折変化の要因については,ACDの変化11),ELPの変化12),角膜屈折力の変化などが予想されるが,すべての症例で,術後超早期に屈折変化をきたすわけではない.Klijnらは,長期の観察であるが,59眼の検討のなかで近視化したものがC19.32%,遠視化したものが28.48%で,術後屈折変化は,個々の症例で異なる特徴を有する可能性があるとしている16).そこで本研究では,まず,術後C2日間での屈折変動変動によってC3グループに分けて,ACD変動とCK値変動の両方に着目した.その結果,術翌日に遠視化傾向がみられた症例では,みられない症例と比べて,K値の変化が大きかったことが示された一方,ACD変動は関与していなかった.さらに本研究では,K値変動の理由として角膜中央厚の変化が示唆されたが,同じく術翌日は,角膜中央厚がC17.3%増加していたとするCdeJuanらの報告17)とも合致する.本論文の限界として,オートレフラクトメータでの球面度数,円柱度数はいずれもC0.25D刻みであるため,各眼の等価球面値はC0.125D刻みの精度である点である.また,角膜曲率の自然な動揺が,術後16,20)あるいは非手術眼21)でもみられるとする報告もあり,さらに詳細な検討が望まれる.以上より,白内障CIOL手術症例の約C35%で術翌日は最終屈折より遠視寄りになり,それは角膜厚の増加に伴う一時的なCK値の減少が因子となっている可能性が示唆された.IOL術後の,より早期の屈折安定に向けて,今後も検討を重ねてゆきたい.文献1)FindlO,DrexlerW,MenapaceRetal:Improvedpredic-tionCofCintraocularClensCpowerCusingCpartialCcoherenceCinterferometry.JCataractRefractSurgC27:861-867,C20012)Retzla.CJA,CSandersCDR,CKra.CMC:DevelopmentCofCtheCSRK/Tintraocularlensimplantpowercalculationformula.CJCataractRefractSurgC16:333-340,C19903)HaigisCW:TheCHaigisCFormula.CIn:IntaocularCLensCPowerCCalculationsCeditedCbyCShammasCHJ.Cp41-57,CSLACK,NJ,20034)OlsenCT:SourcesCofCerrorCinCintraocularClensCpowerCcal-culation.JCataractRefractSurgC18:125-129,C19925)OlsenCT:PredictionCofCtheCe.ectiveCpostoperative(intra-ocularClens)anteriorCchamberCdepth.CJCCataractCRefractCSurgeC32:419-424,C20066)StakheevAA,BalashevichLJ:Cornealpowerdetermina-tionafterpreviouscornealrefractivesurgeryforintraocu-larlenscalculation.CorneaC22:214-220,C20037)MartinCR,CdeCJuanCV,CRodriguezCGCetCal:ContactClens-inducedCcornealCperipheralCswelling:OrbscanCrepeatabili-ty.OptomVisSciC86:340-349,C20098)ChristensenCA,CNarva´ezCJ,CZimmermanCG.CComparisonCofCcentralCcornealCthicknessCmeasurementsCbyCultrasoundCpachymetry,CKonanCnoncontactCopticalCpachymetry,CandCOrbscanpachymetry.CorneaC27:862-865,C20089)Altan-YayciogluCR,CPelitCA,CAkovaCYA:ComparisonCofCultrasonicCpachymetryCwithCOrbscanCinCcornealChaze.CGraefesArchClinExpOphthalmolC245:1759-1763,C200710)FakhryMA,ArtolaA,BeldaJIetal:Comparisonofcor-nealpachymetryusingultrasoundandOrbscanII.JCata-ractRefractSurg28:248-252,C200211)BehrouzCMJ,CKheirkhahCA,CHashemianCHCetCal:AnteriorsegmentCparameters:comparisonCofC1-pieceCandC3-pieceCacrylicfoldableintraocularlenses.JCataractRefractSurgC36:1650-1655,C201012)IwaseCT,CSugiyamaCK:InvestigationCofCtheCstabilityCofCone-pieceCacrylicCintraocularClensesCinCcataractCsurgeryCandCinCcombinedCvitrectomyCsurgery.CBrCJCOphthalmolC90:1519-1523,C200613)IwaseCT,CTanakaCN,CSugiyamaCK:PostoperativeCrefracC-tionchangesinphacoemulsi.cationcataractsurgerywithimplantationCofCdi.erentCtypesCofCintraocularClens.CEurJOphthalmolC18:371-376,C200814)WirtitschMG,FindlO,MenapaceRetal:E.ectofhapticdesignonchangeinaxiallenspositionaftercataractsur-gery.JCataractRefractSurgC30:45-51,C200415)EomY,KangSY,SongJSetal:Comparisonoftheactualamountofaxialmovementof3asphericintraocularlensesusingCanteriorCsegmentCopticalCcoherenceCtomography.CJCataractRefractSurgC39:1528-1533,C201316)KlijnS,SicamVA,ReusNJ:Long-termchangesinintra-ocularClensCpositionCandCcornealCcurvatureCafterCcataractCsurgeryCandCtheirCe.ectConCrefraction.CJCCataractCRefractCSurgC42:35-43,C201617)deJuanV,HerrerasJM,PerezIetal:Refractivestabili-zationandcornealswellingaftercataractsurgery.OptomVisSciC9:31-36,C201318)KoepplCC,CFindlCO,CKriechbaumCKCetCal:PostoperativeCchangeine.ectivelenspositionofa3-pieceacrylicintra-ocularlens.JCataractRefractSurgC29:1974-1979,C200319)RohartC,FajnkuchenF,Nghiem-Bu.etSetal:CataractsurgeryCandCage-relatedCmaculopathy:bene.tsCinCtermsCofvisualacuityandqualityoflife─aprospectivestudy.JFrOphtalmolC31:571-577,C200820)NorrbyS,HirnschallN,NishiYetal:FluctuationsincorC-nealCcurvatureClimitCpredictabilityCofCintraocularClensCpowerCcalculations.CJCCataractCRefractCSurgC39:174-179,C201321)ShammasHJ,Ho.erKJ:Repeatabilityandreproducibilityofbiometryandkeratometrymeasurementsusinganon-contactopticallow-coherencere.ectometerandkeratom-eter.AmJOphthalmolC153:55-61,C2012***

開放隅角緑内障眼における自動静的視野検査前後の眼圧変動と関連因子の検討

2014年3月31日 月曜日

《原著》あたらしい眼科31(3):433.436,2014c開放隅角緑内障眼における自動静的視野検査前後の眼圧変動と関連因子の検討寺尾亮*1平澤裕代*2村田博史*2朝岡亮*2間山千尋*2相原一*3*1東京厚生年金病院眼科*2東京大学医学部附属病院眼科*3四谷しらと眼科ChangeofIntraocularPressureafterVisualFieldExaminationinPrimaryOpen-AngleGlaucomaRyoTerao1),HiroyoHirasawa2),HiroshiMurata2),RyoAsaoka2),ChihiroMayama2)andMakotoAihara3)1)DepartmentofOphthalmology,TokyoKouseinenkinHospital,2)GraduateSchoolofMedicine,3)ShiratoEyeClinicDepartmentofOphthalmology,theUniversityofTokyo開放隅角緑内障眼における自動静的視野検査前後の眼圧変動と,変動量に関連する因子について検討した.正常眼圧緑内障を含む原発性開放隅角緑内障の34例34眼を対象として視野検査の直前および検査後20分以内の眼圧を測定し,眼圧変化量を従属変数,年齢,視野のmeandeviation値,他日に測定した眼軸長,前房深度を説明変数とした重回帰分析を行った.視野検査前の眼圧は14.9±2.7mmHg(平均±標準偏差),検査後の眼圧は15.4±2.9mmHgで0.5±1.4mmHgのわずかな上昇を認め(p=0.049,pairedt-test),眼圧変化量と前房深度の間に有意な正の相関が認められた(偏回帰係数=1.26,p=0.047).Changeofintraocularpressure(IOP)afterautomatedvisualfieldexamination,andthecorrelationsofassociatedfactors,werestudiedin34eyesof34patientswithprimaryopen-angleglaucoma,includingnormal-tensionglaucoma.IOPwasmeasuredbeforeandat≦20minutesaftervisualfieldexamination.Multipleregressionanalysiswasperformedtodeterminetheocularandsystemicfactors(independentvariables:age,meandeviationofvisualfield,anteriorchamberdepthandaxiallength)associatedwithIOPchange(dependentvariable).ResultsshowedthatIOPwas14.9±2.7mmHg(mean±standarddeviation)and15.4±2.9mmHgbeforeandaftervisualfieldexamination,respectively,IOPslightlyincreasingby0.5±1.4mmHg(p=0.049,pairedt-test).AnteriorchamberdepthwassignificantlycorrelatedwiththeextentofIOPincrease(b=1.26,p=0.047).〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(3):433.436,2014〕Keywords:緑内障,眼圧,視野検査,前房深度,眼軸長.glaucoma,intraocularpressure,visualfieldtest,anteriorchamberdepth,axiallength.はじめに緑内障において眼圧変動は視野障害の悪化因子になりうると報告されている1).眼圧には身体的運動,アルコールやカフェインの摂取,喫煙,精神的ストレスなどの生活習慣も影響を与えるが,その変動には季節変動を含む長期的変動と日内変動のような短期的変動の要素が存在する.緑内障の診療においては変動を含めた眼圧の評価が重要になるが,特に長期的眼圧変動の評価には長期間の観察が必要であることに加え,経過観察中の生活習慣や点眼コンプライアンスも含めたさまざまな要素の影響を考慮しなければならないため,正確な評価は容易ではない.一方,短期的眼圧変動は外的影響を受けにくく,評価が比較的容易である.また,開放隅角緑内障眼は正常眼と比較し眼圧の日内変動や体位変換による眼圧の変動量が大きいことが報告されている2,3).開放隅角眼において,いわば狭隅角眼に対する負荷試験のような形で,短時間で特定の条件下での眼圧変動を評価することは,日常生活での眼圧変動を予測し視野障害の進行しやすい症例を短期間にスクリーニングする方法として有用な可能性がある.〔別刷請求先〕寺尾亮:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学医学部附属病院眼科視覚矯正科Reprintrequests:RyoTerao,M.D.,DepartmentofOphthalmology,SchoolofMedicine,UniversityofTokyo,7-3-1Hongo,Bunkyoku,Tokyo113-8655,JAPAN0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(129)433 自動静的視野検査は多くの緑内障患者で定期的に繰り返し実施されるが,原発開放隅角緑内障眼において静的視野検査後に眼圧が有意に上昇したとする報告があり4,5),視野検査後の眼圧上昇の原因としては暗室における散瞳状態や緊張状態の持続が推測されている6,7).これらの要素はいずれも緑内障患者が日常生活で経験しうる生理的なものであり,視野検査後に眼圧が変動する眼は日常生活でも眼圧変動が大きい可能性がある.視野検査は規定された照明条件の下で一定の作業を行うことから負荷試験的要素をもつため,視野検査前後の眼圧変動を評価することで,長期・短期の眼圧変動量と緑内障進行の危険を予測できる可能性があり,臨床上非常に有用な情報になると考えられるが,正常眼圧緑内障が多いなど欧米とは病型構成の異なるわが国での報告はみられない.本研究では,正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障眼を対象として,自動静的視野検査前後の眼圧変動と眼圧変動量に関連する因子について検討した.I対象および方法本研究は東京大学医学部附属病院倫理委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に従い以下のように実施した.平成24年1.3月の間に東京大学医学部附属病院緑内障外来を受診し,自動静的視野計で視野検査を施行した緑内障症例のうち隅角開大度が全周においてShaffer分類3度以上で本研究の趣旨に賛同し検査の同意が得られた原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障患者を対象とした.調査対象日の視野検査が該当患者の1回目または2回目の視野検査である症例,過去3カ月以内に緑内障治療薬の内容を変更した症例,白内障手術や緑内障手術,レーザー手術,屈折矯正手術を含む内眼手術既往例は除外した.両眼とも基準を満たす症例では左右眼を無作為に抽出し1例につき1眼を選択した.視野検査はHumphrey視野計(HFA)を,測定プログラムは24-2SITA-Standardを用いた.眼圧測定はGoldmannapplanationtonometryを使用し,同一検者が同一の診察台にて視野検査の直前5分以内,および検査後20分以内に測定した.測定は続けて2回行い,2回の測定値に3mmHg以上の差を認めた場合は3回目の測定を行い,平均値を算出し表1対象の背景年齢(歳)62.3±11.6男女比(男/女)19/15眼軸長(mm)25.7±1.73前房深度(mm)3.50±0.50MD(dB).8.91±6.09MD:Humphrey視野計24-2SITA-Standardプログラムによるmeandeviation値.値は平均±標準偏差.た.また,他日にIOLMasterR(カールツァイスメディテック株式会社,東京)を用いて,眼軸長および前房深度を明所下にて測定した.視野検査後の眼圧値から視野検査前の眼圧値を差し引いた数値を眼圧変化量と定義した.眼圧変化量を従属変数,視野検査時の年齢,24-2SITA-Standardプログラムでのmeandeviation(MD)値,眼軸長,前房深度を説明変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,統計学的有意水準としてp=0.05を採用した.II結果34例34眼(右眼19眼,左眼15眼)を対象に検討を行った.患者背景因子を表1に示す.視野検査前の眼圧は14.9±2.7mmHg(平均±標準偏差),検査後の眼圧は15.4±2.9mmHgであった.眼圧変化量のヒストグラムを図1に示す.眼圧変化量は.3mmHgから3.5mmHgの範囲で,視野検査後に0.5±1.4mmHgの統計学的に有意な眼圧上昇を認めた(pairedt-test,p=0.049).34眼中14眼(41.2%)で1mmHg以上の眼圧上昇を認め,2mmHg以上の上昇は6眼(17.6%),3mmHg以上の上昇は3眼(8.8%)に認めた.また1眼(2.9%)に3mmHgの下降を認めた.眼圧変化量に寄与する因子に関し重回帰分析を行った結024681012頻度(眼)眼圧変化量(mmHg)図1眼圧変化量のヒストグラム表2眼圧変化量を従属変数としたステップワイズ法による重回帰分析の結果(n=34)説明変数偏回帰係数(95%信頼区間)p値年齢(歳)眼軸(mm)前房深度(mm)MD(dB).0.0047(.0.041:0.050)0.14(.0.21:0.50)1.26(0.0455:2.48)0.0088(.0.077:0.095)0.840.420.042*0.89MD:Humphrey視野計24-2SITA-Standardプログラムによるmeandeviation値.*:p<0.05.434あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(130) 果,前房深度が有意な正の相関をもって選択された(偏回帰係数=1.26,p=0.042)(表2).III考察視野検査による眼圧変化に関する過去の報告において,Niら4)は開放隅角緑内障眼109例109眼(平均年齢75.2歳)を対象に視野検査(HFA24-2または10-2SITA-Standardプログラム)を行い,視野検査後の眼圧を視野検査前の眼圧や次回来院日に測定した眼圧と比較し,視野検査後にはそれぞれ平均1.2,1.1mmHgの有意な眼圧上昇を認めたと報告した.またRecuperoら5)は点眼治療で眼圧21mmHg未満にコントロールされている原発開放隅角緑内障眼12例24眼(平均年齢50.8歳)に対し視野検査(HFA30-2full-thresholdプログラム)を行い,検査前と検査の7.21分後に眼圧測定を施行,検査後には平均約2.3mmHgの眼圧上昇を認め,眼圧変化量は年齢と正の相関を認めたと報告している.一方でMatin8)は緑内障眼40例,高眼圧症または緑内障疑い21例に対し視野検査〔HFASITA-FastまたはSITAStandardプログラムまたはhigh-passresolutionperimeter(HRP)〕直前と直後の眼圧を比較し,61例中14例(23%)は両眼または片眼に2mmHg以上の眼圧上昇を認めたが,全対象眼の平均値には両眼とも有意な変化は認めなかったと報告した.本研究では34例34眼の開放隅角緑内障眼を対象に自動静的視野検査前後の眼圧変化量を検討し,平均0.5mmHgのわずかな眼圧上昇を認めた.平均値としての変化量は既報と比べて小さく,臨床的に有意な眼圧変化とは考えられない.この結果を既報と比較する際には,対象の人種や背景因子の相違,視野検査測定所要時間の違いなどを考慮する必要がある.眼圧上昇の機序については,暗所での持続した散瞳状態による隅角狭小化に伴う房水流出抵抗の上昇や6),視野検査がもたらす精神的ストレスが交感神経系を介して毛様体の房水産生に与える影響が推測されている7).Niら4)は眼圧変化に関連する因子に関し,緑内障術後眼やb遮断薬,a1作動薬点眼症例では眼圧上昇が有意に小さく,眼圧変化量と年齢の有意な相関は認められなかったと報告している.本研究では内眼手術歴のある症例を対象から除外しており,また点眼薬使用の有無やその種類など,緑内障患者の多様な背景因子が眼圧変化量に与える影響を評価するには対象眼数が不十分と考えられた.対象眼のなかで視野検査後に3mmHgの眼圧低下を認めたものが1眼のみあったが,この眼圧下降の機序を推測することは困難である.視野検査後に眼圧測定を行うまでの間,対象患者は座位で安静に待機していたが,検査による眼精疲労のためか自分で眼球周囲を圧迫するようなマッサージを行(131)う患者もみられたため,そのような行為が一時的な眼圧下降を生じさせた可能性も否定できない.本研究では年齢,MD値,眼軸長と眼圧変動量の間に有意な相関がみられなかったものの,前房深度が眼圧変化量と有意な正の相関を示し,前房深度が深い眼ではより眼圧が上昇しやすいことが示唆された.超音波生体顕微鏡(UBM)を用いた検討によれば,明所-暗所間のangleopeningdistance(AOD)やtrabecularirisspaceareaの変化量は前房深度が深いほど大きく9),白内障術後眼ではAODの変化量が大きいほど眼圧の変化量も大きいことが報告されている10).狭隅角眼ではより前房深度が浅く,視野検査後に眼圧が上昇しやすい可能性があるが,本研究の対象は隅角開大度がShaffer分類3度以上の開放隅角緑内障眼であり,狭隅角眼は除外している.本研究の結果は,前房の深い開放隅角緑内障眼において,視野検査後により大きな眼圧上昇が生じる可能性を示唆すると考えられる.本研究では,開放隅角緑内障眼の視野検査後に統計学的には有意な眼圧上昇を認めたが,その変化量は平均0.5mmHgと小さかった.しかし一部の症例では3mmHg以上の眼圧変化を認め,開放隅角緑内障においても視野検査後の眼圧上昇に注意すべき症例のあることが示唆された.文献1)CaprioliJ,ColemanAL:Intraocularpressurefluctuationariskfactorforvisualfieldprogressionatlowintraocularpressuresintheadvancedglaucomainterventionstudy.Ophthalmology115:1123-1129,20082)HirookaK,ShiragaF:Relationshipbetweenposturalchangeoftheintraocularpressureandvisualfieldlossinprimaryopen-angleglaucoma.JGlaucoma12:379-382,20033)DavidR,ZangwillL,BriscoeDetal:Diurnalintraocularpressurevariations:ananalysisof690diurnalcurves.BrJOphthalmol78:280-283,19924)NiN,TsaiJC,ShieldsMB,etal:Elevationofintraocularpressureinglaucomapatientsafterautomatedvisualfieldtesting.JGlaucoma21:590-595,20125)RecuperoSM,ContestabileMT,TavernitiLetal:Openangleglaucoma:variationsintheintraocularpressureaftervisualfieldexamination.JGlaucoma12:114-118,20036)GlosterJ,PoinoosawmyD:Changesinintraocularpressureduringandafterthedark-roomtest.BrJOphthalmol57:170-178,19737)BrodyS,ErbC,VeitR,RauH:Intraocularpressurechanges:theinfluenceofpsychologicalstressandthevalsalvamaneuver.BiolPsychol51:43-57,19998)MartinL:Intraocularpressurebeforeandaftervisualfieldexamination.Eye21:1479-1481,20079)LeungCK,CheungCY,LiHetal:Dynamicanalysisofdark-lightchancesoftheanteriorchamberanglewithあたらしい眼科Vol.31,No.3,2014435 anteriorsegmentOCT.InvestOphthalmolVisSci48:intraocularpressurereductionafteruneventfulpha4116-4122,2007coemulsificationforcataract.JCataractRefractSurg38:10)HuangG,GonzalezE,LeeRetal:Associationofbiomet108-116,2012ricfactorswithanteriorchamberanglewideningand***436あたらしい眼科Vol.31,No.3,2014(132)

光干渉式と超音波眼軸長測定装置による眼球生体計測値の比較検討

2011年12月30日 金曜日

《原著》あたらしい眼科28(12):1758.1764,2011c光干渉式と超音波眼軸長測定装置による眼球生体計測値の比較検討山下力*1,2前田史篤*1,2岡真由美*1,2田淵昭雄*1*1川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科*2川崎医科大学眼科学教室ComparisonofOcularBiometryMeasurementsusingPartialCoherenceInterferometryandUltrasonographyTsutomuYamashita1,2),FumiatsuMaeda1,2),MayumiOka1,2)andAkioTabuchi1)1)DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,2)DepartmentofOphthalmology,KawasakiMedicalSchool目的:光干渉式および超音波眼軸長測定装置を用い,眼球生体計測値を比較検討した.対象および方法:対象は,屈折異常以外に眼科的疾患を有さない健常者101名101眼(平均年齢20±1歳)であり,屈折値は.3.1±3.2Dであった.眼軸長および前房深度,角膜厚の測定にはLENSTARLS900(以下,LS)およびOA-1000(以下,OA)とAL-3000(以下,AL)を用いた.水晶体厚の測定にはLSとALを用いた.結果:眼軸長の平均(mm)はLS24.86,OA(Immersion値)24.78,OA(Contact値)24.61,AL24.65であった.角膜厚(μm)はLS532.90,OA516.38,AL538.58で有意に相関し,OAは低値であった(p=0.0001).前房深度(mm)はLS3.67,OA3.79,AL3.71で有意に相関し,LSは低値であった(p=0.0070).水晶体厚(mm)はLS3.56,AL3.61で相関係数は0.56であり,有意な差を示した(p=0.0007).結論:機器により眼球生体計測値が異なることを認識する必要がある.Purpose:Tocompareocularbiometrymeasurementsusingpartialcoherenceinterferometryandultrasonography.SubjectsandMethods:Wemeasured101eyesof101normalvolunteers(meanage:20±1years)withnooculardiseases.Meanrefractiveerrorwas.3.1±3.2diopters.Axiallength,anteriorchamberdepthandcornealthicknessweremeasuredusingLENSTARLS900,OA-1000andAL-3000.LensthicknesswasmeasuredusingLENSTARLS900andAL-3000.Results:Axislengthaveraged24.86±1.37mmbyLS900,24.78±1.36mmbyOA-1000(Immersionvalue),24.61±1.36mmbyOA-1000(Contactvalue)and24.65±1.36mmbyAL-3000.Cornealthicknessaveraged532.90±28.92μmbyLS900,516.38±28.96μmbyOA-1000and538.58±28.96μmbyAL-3000.Thesethreevaluesweresignificantlycorrelatedwitheachother,buttheOA-1000cornealthicknessvaluesweresignificantlysmallerthanthoseoftheothertwodevices.Anteriorchamberdepthaveraged3.67±0.25mmbyLS900,3.79±0.24mmbyOA-1000and3.71±0.28mmbyAL-3000.Thesethreevaluesweresignificantlycorrelated,buttheLS900anteriorchamberdepthvaluesweresignificantlysmaller.Thecorrelationcoefficientwas0.56,andaveragelensthicknessshowedasignificantdifferencebetweenLS900(3.56±0.18mm)andAL-3000(3.61±0.18mm).Conclusion:Ocularbiometrymeasurementsdifferedamongtheinstruments.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)28(12):1758.1764,2011〕Keywords:生体計測,眼軸長,角膜厚,前房深度,水晶体厚.biometry,axiallength,cornealthickness,anteriorchamberdepth,lensthickness.はじめにに大きく影響を及ぼす.近年,光干渉式を原理とした眼球生白内障手術は,水晶体の混濁を取り除くためだけではな体計測器が続々と開発されており,計測値の評価を行ううえく,屈折矯正手術としての意味をもち,よりよい視機能を獲で各機器の特性を正しく把握する必要がある.得することが要求される.特に,術後屈折度は,患者満足度超音波眼軸長測定機器では眼内レンズ(IOL)度数計算の〔別刷請求先〕山下力:〒701-0193倉敷市松島288川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科Reprintrequests:TsutomuYamashita,DepartmentofSensoryScience,FacultyofHealthScienceandTechnology,KawasakiUniversityofMedicalWelfare,288Matsushima,KurashikiCity701-0193,JAPAN175817581758あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(96)(00)0910-1810/11/\100/頁/JCOPY 誤差要因に関して,眼軸長の測定誤差54%,術後前房深度予測の誤り38%,角膜屈折力の測定誤差8%とされている1,2).一方,光干渉式眼軸長測定装置では,非接触であること,測定時間が短いこと,検者間の測定誤差がなく再現性に優れること,および測定精度が高いことが知られている3.5).また光干渉式眼軸長測定値では,ULIB(UserGroupforLaserInterferenceBiometry)に掲載されているA定数を用いることや,超音波Aモードで計測される値に変換することにより,良好な術後屈折度が得られるようになった6).術後屈折度の誤差を最小限にするため,前房深度をパラメータに加えた新たな計算式を開発してIOL度数計算の精度向上が取り組まれている.超音波式と光干渉式の眼軸長測定装置を比較した論文では眼軸長や測定率,術後屈折値を検討した報告が多く,角膜厚,前房深度などの測定値を比較検討した報告は少ない.眼軸長のみならず眼球生体計測を正確に行ううえで,機器による測定値の違いや各機器との相関性,測定精度を把握しておくことは非常に重要である.そこで今回,光干渉式眼軸長測定装置としてLENSTARLS900RとOA-1000および超音波眼軸長測定装置としてAL-3000の3機種を同一症例に対して用い,正常眼の眼軸長,角膜厚,前房深度,水晶体厚の測定値とその精度を比較検討した.I対象および方法対象は屈折異常以外に眼科的疾患を有さない健常者101名101眼(右眼)である.本研究は川崎医療福祉大学倫理委員会の承認を得て,十分にインフォームド・コンセントを得たうえで行った.年齢は20±1(平均±標準偏差)歳(19.23歳)で,屈折値は.3.1±3.2D(.11.0.+7.5D)であった.眼軸長,角膜厚,前房深度の計測にはLENSTARLS900R(以下,LS900,HAAG-STREIT),OA-1000(TOMEY),AL-3000(TOMEY)を用いた.水晶体厚の計測にはLS900とAL-3000を用いた.LS900は1回の計測で眼軸長,角膜厚,前房深度,水晶体厚の値が算出され,6回計測した平均値を採用した.OA-1000およびAL-3000での眼軸長,角膜厚,前房深度,水晶体厚は,1回の計測で得られる10データの平均値を採用した.OA-1000では,涙液表面から網膜色素上皮までの実測値を計測する「Optical値」,網膜の厚さを補正した「Immersion値」,超音波Aモードと同じ角膜表面から内境界膜までを計測した値に補正する「Contact値」の3種類の異なった計測値が算出される.本研究においてはOA-1000での眼軸長値は,Contact値およびImmersion値を求めた.測定は無散瞳下で行い,1名の検者がすべての測定を行った.各装置の測定時間帯を同一とした.各機器における眼球生体計測値の比較および相関関係は,統計学的に検討した.3機種における眼軸長,角膜厚および前房深度は,Friedman検定を用い比較検討を行った.そこで有意差が得られた場合,Scheffe多重比較法を行った.各機種の水晶体厚は,Wilcoxon符号順位和検定を用いた.相関関係の検討はSpearman順位相関係数を用い,危険率5%未満を統計学的に有意とした.各機種の精度比較はBland-Altmanplotを用い,測定値間の一致の程度を分析した.許容範囲内かどうかの評価や系統誤差は,2機種の測定値の差の平均値±標準偏差の1.96倍を95%LimitsofAgreement(以下,95%LoA)として算出した.II結果1.眼軸長各機種による眼軸長の平均値±標準偏差(括弧内は範囲)はLS90024.86±1.37mm(21.19.28.04),OA-1000(Immersion値)24.78±1.36mm(21.14.27.78),OA-1000(Contact値)24.61±1.36mm(20.98.27.61),AL-300024.65±1.36mm(21.08.27.73)であり,各機種間で有意差はなかった(表1).LS900はAL-3000よりも210μm長く,OA-1000(Immersion値)よりも130μm程度長く測定された.LS900とOA-1000(Immersion値),AL-3000とOA1000(Contact値)の相関係数はそれぞれ0.9991,0.9987であり,有意に高い相関を示した(すべてp=0.0001).Bland-Altmanplotによる分析では,LS900とOA-1000(Immersion値)との差は平均0.08mmであり,95%LoAが0.0.16mm表1各測定装置における眼球生体計測値眼軸長(mm)角膜厚(μm)前房深度(mm)水晶体厚(mm)LS90024.86±1.37(21.19.28.04)532.90±28.92(464.0.597.0)*3.67±0.25(3.17.4.26)**3.56±0.18(3.17.4.01)OA-100024.78±1.36(Immersion値)(21.14.27.78)516.38±28.963.79±0.24***OA-1000(Contact値)24.61±1.36(20.98.27.61)(449.2.581.1)*(3.28.4.43)AL-300024.65±1.36(21.08.27.73)538.58±28.96(467.0.612.0)3.71±0.28(3.04.4.43)3.61±0.18(3.20.4.04)Scheffe多重比較法(*:p=0.0001,**:p=0.0070),Wilcoxon符号順位和検定(***:p=0.0007).(97)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111759 (mm)(mm)LS-OA(Immersion)0.40.30.20.10-0.1-0.2-0.3-0.4mean0.08mean-1.96SDmean+1.96SDAL-OA(Contact)-0.4-0.3-0.2-0.100.10.20.30.4mean0.04mean-1.96SDmean+1.96SD202224262830(mm)202224262830(mm)〔LS+OA(Immersion)〕/2〔AL+OA(Contact)〕/2図1LSとOA(Immersion値),ALとOA(Contact値)の眼軸長のBland.AltmanplotLS:LS900,OA:OA-1000,AL:AL-3000.LSとOA(Immersion値)の差:0.08±0.04mm,95%LoA:0.0.16mm.ALとOA(Contact値)の差:0.04±0.05mm,95%LoA:.0.06.0.14mm.(μm)(μm)(μm)650650650600600600550550550OAOALS500500500450450450400400450LS500550600(μm)650400400450500AL(μm)55060065040040045AL0500550600(μm)650図2LSとOA,ALとLS,ALとOAとの角膜厚の相関LS:LS900,OA:OA-1000,AL:AL-3000.LSとOAの相関では,y=0.9854x.8.7286,R2=0.9680,r=0.9705,p=0.0001.LSとALの相関では,y=0.8779x+59.979,R2=0.9284,r=0.9564,p=0.0001.OAとALの相関では,y=0.8685x+48.529,R2=0.9058,r=0.9405,p=0.0001.と,ばらつきが少なかった.AL-3000とOA-1000(Contact値)との差は平均0.04mmで,95%LoAが.0.06.0.14mmであり,AL-3000とOA-1000(Contact値)との一致の程度が高かった(図1).2.角膜厚各機種による角膜厚の平均値±標準偏差はLS900532.90±28.92μm(464.0.597.0),OA-1000516.38±28.96μm(449.2.581.1),AL-3000538.58±28.96μm(467.0.612.0)であった(表1).OA-1000は,LS900およびAL-3000に比べ有意に薄かった(p=0.0001).AL-3000とLS900の差は5.78μmであり,有意差はなかった.LS900とOA1000,LS900とAL-3000,OA-1000とAL-3000は有意に強く相関していた(相関係数はそれぞれ0.9705,0.9564,0.9405,すべてp=0.0001)(図2).Bland-Altmanplotによる分析では,LS900とOA-1000との測定値差は平均16.52μmで,95%LoAが6.33.26.70μmで,ばらつきが小さかった(図3).LS900とAL-3000およびOA-1000とAL1760あたらしい眼科Vol.28,No.12,20113000の比較検討では,2つの測定値の乖離が増加し比例誤差を生じた.これは,角膜が厚くなるとAL-3000はより角膜が厚く測定される傾向があることを示唆している.3.前房深度各機種による前房深度の平均値±標準偏差はLS9003.14±0.25mm(2.66.3.74),OA-10003.79±0.24mm(3.28.4.43),AL-30003.71±0.28mm(3.04.4.43)であった.LS900とOA-1000,LS900とAL-3000に有意な差を示した(すべてp=0.0001).LS900による前房深度は,角膜後面から水晶体前面までを計測しているため,LS900で計測した角膜厚を加算し求めた.角膜厚を含むLS900の前房深度は3.67±0.25mm(3.17.4.26)であり,OA-1000とは有意な差があった(p=0.0007)(表1).AL-3000とLS900の差は0.03mmであり,有意差はなかった.LS900とOA1000,LS900とAL-3000,OA-1000とAL-3000は有意に強く相関を示した(相関係数はそれぞれ0.9218,0.8118,0.8432,すべてp=0.0001)(図4).Bland-Altmanplotによ(98) (μm)(μm)(μm)60mean16.52mean-1.96SDmean+1.96SD40mean5.68mean-1.96SDmean+1.96SD60503050mean22.19mean-1.96SDmean+1.96SD20403020AL-OALS-OAAL-LS100-1010-200400450500550600650(μm)400450500550600650(μm)400450500550600650(μm)(LS+OA)/2(AL+LS)/2(AL+OA)/2図3LSとOA,ALとLS,ALとOAの角膜厚のBland.AltmanplotLS:LS900,OA:OA-1000,AL:AL-3000.LSとOAの差:16.52±5.20μm,95%LoA:6.33.26.70μm.ALとLSの差:5.68±8.67μm,95%LoA:.11.32.22.68μm,y=0.0934x.44.377,R2=0.1046,r=0.2819,p=0.0017.ALとOAの差:22.19±10.00μm,95%LoA:2.60.41.79μm,y=0.0946x.27.612,R2=0.0833,r=0.2474,p=0.0126.(mm)(mm)(mm)4.54.54.544.04OAOA3.5LS3.53.533.032.52.53.0LS3.54.0(mm)4.52.52.53AL3.54(mm)4.52.52.533.5AL44.5(mm)図4LSとOA,ALとLS,ALとOAの前房深度の相関LS:LS900,OA:OA-1000,AL:AL-3000.LSとOAの相関では,y=0.8514x+0.6605,R2=0.8372,r=0.9218,p=0.0001.LSとALの相関では,y=0.7867x+0.7592,R2=0.6988,r=0.8118,p=0.0001.OAとALの相関では,y=0.7513x+1.005,R2=0.7684,r=0.8432,p=0.0001.(mm)(mm)(mm)0.60.60.6mean-0.12mean-1.96SDmean+1.96SDmean0.03mean-1.96SDmean+1.96SDmean-1.96SDmean+1.96SDmean-0.080.40.40.20.20.2AL-LSAL-OA-0.2-0.2-0.4-0.4LS-OA-0.2-0.400-0.6(mm)(mm)-0.6(mm)図5LSとOA,ALとLS,ALとOAの前房深度のBland.AltmanplotLS:LS900,OA:OA-1000,AL:AL-3000.LSとOAの差:.0.12±0.10mm,95%LoA:.0.31.0.08mm.ALとLSの差:0.03±0.15μm,95%LoA:.0.26.0.31mm.ALとOAの差:.0.08±0.13mm,95%LoA:.0.34.0.18mm,y=0.164x.0.6975,R2=0.0939,r=0.3086,p=0.0017.33.544.55(LS+OA)/233.544.55(AL+LS)/233.544.55(AL+OA)/2(99)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111761 (mm)(mm)4.50.60.44mean-1.96SDmean+1.96SDmean0.06AL-LS9000.20LS3.5-0.23-0.4-0.62.52.533.544.5(mm)2.533.544.5(mm)AL(AL+LS)/2図6ALとLSの水晶体厚の相関およびBland.AltmanplotLS:LS900,AL:AL-3000.ALとLSの相関では,y=0.5633x+1.5229,R2=0.3188,r=0.5578,p=0.0001.ALとLSの差:0.06±0.17mm,95%LoA:.0.27.0.38mm.る分析では,LS900とOA-1000の差は平均.0.12mmで,95%LoAが.0.31.0.08mmでばらつきが小さかった(図5).OA-1000とAL-3000の比較検討では,2つの測定値の乖離が増加し比例誤差が生じた.これは,前房深度が深くなるとAL-3000はより前房深度が深く測定される傾向があることを示唆している.4.水晶体厚各機種による水晶体厚の平均値±標準偏差はLS9003.56±0.18mm(3.17.4.01),AL-30003.61±0.18mm(3.20.4.04)で中程度の相関を示した(相関係数は0.5578,p=0.0001)(図6).AL-3000とLS900の測定値には有意差はあった(p=0.0007).III考按正確な眼球生体計測は,視機能評価,病態把握,白内障に対する術前検査として重要なことである.IOL度数計算の誤差原因としては,眼軸長測定,術後予想前房深度,角膜曲率半径の計測があげられ,眼球生体計測機種の測定精度および他との比較分析をすることが重要である.本研究では,光干渉式眼軸長測定装置としてLS900とOA-1000を対象とし,IOLMasterTMは採用しなかった.その理由は,IOLMasterTMでは角膜厚測定ができないこと,眼軸長測定が光干渉方式であるのに,前房深度に関してはスリット方式であり,眼測定部位により原理が異なることがあげられる.また,IOLMasterTMの測定光源が半導体レーザーであるのに対し,LS900およびOA-1000の測定光源はスーパールミネッセントダイオードレーザーという違いもあり,IOLMasterTMは除外した.光干渉式眼軸長測定は,非接触で圧迫や感染の心配がなく,短時間で測定でき測定精度や再現性が高いことが利点であるが,症例によっては測定限界がある.視軸上に強い混濁のある症例や固視不良例では測定困難となり,測定不能率が1762あたらしい眼科Vol.28,No.12,20118.15%程度認められる7.9).一方,超音波式測定は測定原理や測定部位が光干渉方式と異なり,検者の測定技術習熟度の差に左右されることが報告されている10).したがって,それぞれの測定原理や特徴を理解し,症例に応じた使い分けや測定技術の習得が重要である.本研究の眼軸長測定の結果は,LS900とOA-1000(Immersion値)および,AL-3000とOA-1000(Contact値)の相関が非常に高く,ばらつきも少なかった.OA-1000では,涙液表面から網膜色素上皮までの実測値を計測するOpticalモードでのOptical値,IOLMasterTMと同様に網膜厚を考慮したImmersion値,超音波Aモードと同じ角膜表面から内境界膜まで計測した値に補正するContact値である3種類の測定値を得ることができる.すなわち,実測値はOptical値,Immersion値,Contact値の順で長く,それぞれ150.300μmの差があると報告されている1).白内障眼に対しOA-1000の測定を行い,IOL計算の精度を検討した報告では,超音波式への眼軸長変換式を作成し用いることにより,従来のメーカー推奨A定数を使用し良好な成績を得ることができたとしている6).本研究においても,OA-1000の変換値は光干渉式であるLS900の値および超音波式であるAL-3000の値と相関し一致しており,Optical値からの変換は適切であり臨床上有用であると考えられる.角膜厚の目的は,角膜内皮細胞層の機能評価,角膜屈折矯正手術の適応評価,眼圧測定の誤差評価などである.高眼圧症では角膜厚が厚く,正常眼圧緑内障では角膜厚が薄いと報告されている11).角膜厚の測定は,原理が異なると測定結果に差異があることは知られている12).超音波式では局所麻酔点眼薬の角膜厚への影響13)があることや,超音波の反射面が角膜前面からDescemet膜の近傍となるため,角膜全層を測定していない可能性がある14).光干渉式では涙液層を含むことがその要因として考えられる.山村ら15)はOA-1000で健常者17例34眼の角膜厚を測定(100) し,超音波式やスリットスキャン式など原理の違う機器と比較検討した結果,約20.30μm有意に小さい値であったとしている.本研究でもOA-1000は低値であったことから,OA-1000で測定した角膜厚は補正が必要であると考えられる.Bland-Altmanplotによる精度比較において,超音波式のAL-3000と光干渉式のLS900とOA-1000との間に比例誤差を生じた.このことは,超音波式は角膜厚が厚く(薄く)なると,光干渉式よりも厚く(薄く)測定される傾向が示唆された.前房深度測定は,前房深度をパラメータとして用いるIOL度数計算式において,狭隅角のスクリーニング法や緑内障病態把握,治療方針決定に用いられている.本研究の前房深度測定の結果,各機種の相関は有意に強かったが,LS900とOA-1000の前房深度には0.12mmの有意な差があり,AL-3000とOA-1000には比例誤差を生じた.石塚ら16)は,白内障症例の42例78眼においてLS900とOA-1000の前房深度測定値には相関はなかったと報告している.OA-1000では,固視誘導を行い水晶体前面のピークを検出する方法であり,視軸や光軸での計測ではないことが要因だと考えられる.今回,水晶体混濁のない若年成人では両機器の相関があったが,白内障眼では相関を示さなかった原因としてつぎのことがあげられる.OA-1000の光干渉波は干渉領域が狭いため,水晶体の膨化や水晶体前面に凹凸などがあると,水晶体前面を垂直に捉えて干渉波ピークを得ることができない.そのため,固視方向や注視方向を2.9°.5.7°ずらすことでピークを捉えやすくなるという特徴があり,その固視誘導に伴う波形の検出にばらつきがあると考えられた.これらのことから,ピークを捉えるために症例によって固視方向や注視方向をずらす程度や方向が違うために,ばらつきが生じると考えられた.水晶体は加齢および調節に伴い厚くなり17,18),白内障の有無で水晶体の厚さに差があることが指摘されている19).眼軸長や前房深度を加味したIOL計算式では,加齢に伴い前房が浅くなり水晶体は厚くなることに対応できないことが予想され,水晶体厚も計算要素に加える必要がある.本研究において,LS900とAL-3000で測定された水晶体厚の差は0.06mmであり,原理や測定軸の違いがあり中程度の相関が得られ,ばらつきがあった.水晶体厚の測定には十分な調節麻痺が望ましいが,本研究では調節麻痺薬の点眼が角膜厚や前房深度に影響を及ぼすことを考慮して無散瞳で行った.眼軸長測定において,調節が水晶体厚および眼軸長に影響20.22)を及ぼした可能性が考えられた.本研究で用いた各眼球生体計測器の表示分解能に違いがある.LS900およびOA-1000の眼軸長,前房深度計測の分解能は0.01mmで,AL-3000では0.1mmである.また,角膜厚計測の分解能において,LS900は1μm,OA-1000は(101)10μm,AL-3000は5μmである.水晶体厚計測の分解能において,LS900は0.01mm,AL-3000は0.1mmである.機器の測定精度の違いが,本研究の結果に影響を及ぼしたことも考えられた.本研究では,LS900とOA-1000の角膜厚および前房深度には有意差があり,AL-3000とOA-1000の角膜厚,LS900とAL-3000の水晶体厚には有意差があった.しかし,角膜厚においてはLS900とAL-3000は5.68μmの差が生じ,前房深度においてはAL-3000とLS900およびOA-1000はそれぞれ0.03mm,0.08mmの差が生じたが有意差はなかった.表示分解能の統一が可能であれば,統計学的結果は異なったかもしれない.測定値の精度や誤差の観点から,その差異が臨床的に重要な意味を有するかは,今後において検討すべき点である.測定にあたっては,眼球生体計測法の原理や特徴を理解し,測定値を比較および評価する必要があり,複数の機器による測定が望ましいと考えられる.各施設において使用機器の傾向の把握をしておく必要がある.文献1)NorrbyS:Sourcesoferrorinintraocularlenspowercalculation.JCataractRefractSurg34:368-376,20082)OlsenT:Sourcesoferrorinintraocularlenspowercalculation.JCataractRefractSurg18:125-129,19923)嶺井利沙子,清水公也,魚里博:IOLMasterTM.眼科手術15:49-51,20024)佐藤彩,須藤史子,島村恵美子ほか:眼内レンズ度数算出における非接触式眼軸長測定装置(IOLマスターTM)の有用性.あたらしい眼科22:505-509,20055)須藤史子:光干渉眼軸長測定装置.眼科手術22:197-202,20096)水島由紀子,川名啓介,須藤史子ほか:新しい光干渉式眼軸長測定装置による眼軸長測定の検討.眼科手術23:453457,20107)佐藤千秋,須藤史子,島村恵美子ほか:IOLMasterTMにおける信頼性係数(SNR)別術後成績.日視会誌34:107113,20058)SutoC,SatoC,ShimamuraEetal:Influenceofthesignal-to-noiseratioontheaccuracyofIOLMastermeasurements.JCataractRefractSurg33:2062-2066,20079)NarvaezJ,CherwekDH,StultingRDetal:Comparingimmersionultrasoundwithpartialcoherenceinterferometryforintraocularlenspowercalculation.OphthalmicSurgLasersImaging39:30-34,200810)島村恵美子,須藤史子,菊池理香ほか:眼内レンズ度数予測のための生体計測の検者別精度.日視会誌32:163-168,200311)CoptRP,ThomasR,MermoudA:Cornealthicknessinocularhypertension,primaryopen-angleglaucoma,andnormaltensionglaucoma.ArchOphthalmol117:14-16,199912)SuzukiS,OshikaT,OkiKetal:Cornealthicknessmeasurements:scanning-slitcornealtopographyandnonconあたらしい眼科Vol.28,No.12,20111763 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