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先天性眼瞼下垂に対する前頭筋吊り上げ術のMRD-1,自発性瞬目および涙液貯留量への影響

2019年1月31日 木曜日

先天性眼瞼下垂に対する前頭筋吊り上げ術のMRD-1,自発性瞬目および涙液貯留量への影響古澤裕貴*1渡辺彰英*1横井則彦*1山中行人*1,2中山知倫*1山中亜規子*1外園千恵*1*1京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学*2国立長寿医療研究センター病院眼科CE.ectsofFrontalisSuspensionforCongenitalBlepharoptosisonMRD-1,SpontaneousBlinkFunctionandTearVolumeYukiFurusawa1),AkihideWatanabe1),NorihikoYokoi1),YukitoYamanaka1,2)C,TomonoriNakayama1),AkikoYamanaka1)andChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,NationalCenterforGeriatricsandGerontologyC目的:先天性眼瞼下垂に対する前頭筋吊り上げ術前後のCMRD-1(marginre.exdistance-1),自発性瞬目機能および涙液貯留量の変化について検討すること.方法:前頭筋吊り上げ術を施行した挙筋機能のない先天性眼瞼下垂C10例C12眼を対象に,術前,術後C1.5,術後C3カ月の時点でのCMRD-1,涙液メニスカスの曲率半径CR,自発性瞬目を測定した.また,挙筋短縮術を施行した後天性眼瞼下垂C44例C76側を対照群として曲率半径CRおよび自発性瞬目をそれぞれ比較検討した.結果:先天性眼瞼下垂群では術後CMRD-1が有意に増加したが,術前後の曲率半径CRおよび自発性瞬目に有意差を認めなかった.後天性眼瞼下垂群の比較では,瞬目回数,開閉瞼時の移動距離に有意差を認めた.結論:先天性眼瞼下垂に対する前頭筋吊り上げ術は,自発性瞬目および涙液貯留量に影響を与えず,先天性眼瞼下垂は後天性眼瞼下垂に比べ閉瞼機能においても低下がみられることが示唆された.CPurpose:ToCassessCtheCchangesCinCspontaneousMRD-1(marginCre.exdistance-1)C,blinkCfunctionCandCtearCvolumeCafterCfrontalisCsuspensionCforCcongenitalCblepharoptosis.CMethods:12eyesCofC10congenitalCblepharoptosisCpatientsCwithoutClevatorCfunctionCunderwentCfrontalisCsuspension.CMRD-1,CtearCmeniscusradius(R)C,numberCofCspontaneousblinksanduppereyelidkinematicswereassessedpreoperativelyandat1.5and3monthspostopera-tively.C76eyesCofC44patientsCwithCgoodClevatorCfunctionCwhoCunderwentClevatorCaponeurosisCadvancementCwereCcomparedwithcongenitalblepharoptosispatients.Results:OnlyMRD-1signi.cantlyincreasedafterfrontalissus-pension;RCandCspontaneousCblinkCfunctionCdidCnotCsigni.cantlyCchange.CComparisonCofCcongenitalCandCacquiredCblepharoptosisshowednosigni.cantdi.erencesinclosingandopeningeyeliddistance.Conclusion:Itissuggestedthatperformingfrontalissuspensionforcongenitalblepharoptosisdoesnota.ectblinkfunctionortearvolume,andthatclosingeyelidfunctionincongenitalblepharoptosisissigni.cantlyweakerthaninaqcuiredblepharoptosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C36(1):115.120,C2019〕Keywords:先天性眼瞼下垂,前頭筋吊り上げ術,自発性瞬目,涙液メニスカス.congenitalblepharoptosis,fron-talissuspention,spontaneousblink,tearmeniscus.Cはじめににもかかわらず,たえず繰り返される不随意的な瞬目で,角ヒトの瞬目は随意性瞬目,自発性瞬目,反射性瞬目のC3種膜表面の湿潤化により,良好な視野および実用視力を得るこに分類されるが,もっとも多く行われているのは自発性瞬目とを目的としている1,2).また,正常眼における自発性瞬目である.この瞬目は開瞼を維持している間,外的刺激がない時の上眼瞼の移動距離と最大速度に正の相関があるとされ〔別刷請求先〕渡辺彰英:〒602-8566京都市上京区河原町広小路上ル梶井町C465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学Reprintrequests:AkihideWatanabe,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajii-cho,Kawaramachi,Hirokojiagaru,Kamigyo-ku,Kyoto602-8566,JAPANC代表的な眼瞼疾患の一つとして眼瞼下垂があげられる.眼瞼下垂は上眼瞼縁が挙上不全となり瞳孔領が隠れ,上方の視野が妨げられ,視野狭窄という機能的障害をきたす疾患である.大きく分類すると先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂に分けられ,先天性眼瞼下垂は一部は両側性のものや,瞼裂狭小症候群などの遺伝性疾患から発症するものもあるが,多くは片側性であり,そのほとんどは遺伝と無関係に起こり,おもに上眼瞼挙筋の発育不全が原因とされる5).後天性眼瞼下垂は加齢に伴う退行性眼瞼下垂がもっとも頻度が高く,またハードコンタクトの長期着用により発症する場合もある6).LF(levatorfunction)がC0Cmmであり,挙筋機能がない場合の先天性眼瞼下垂に対する術式は,おもに前頭筋吊り上げ術が選択される.前頭筋吊り上げ術は,ナイロン糸などを埋没して行うものと,EPTFEパッチCII(ゴアテックスCRシート)7)や大腿筋膜などを眉毛上から眼瞼までのトンネルを通して行うものに分けられ,いずれも前頭筋と上眼瞼を繋いで上眼瞼を引き上げる術式である.後天性眼瞼下垂に対しては,Whitnall靭帯より末梢である上眼瞼挙筋腱膜(aponeuro-sis)単独の短縮術か,aponeurosisとCMuller筋の両者の短縮術が選択されることが多い6).これらの眼瞼下垂手術に伴い開瞼時の眼瞼位置が変わることによる瞬目機能および導涙機能の変化について,後天性眼瞼下垂では,上眼瞼の開瞼移動距離,開瞼最大速度は健常者に近づき8),涙液貯留量は術後減少する傾向にあると報告されている9.11).先天性眼瞼下垂の自発性瞬目についても,患者自身の筋膜を用いた吊り上げ術を行った場合,上眼瞼の開閉瞼時移動距離および速度は低下したという報告がある4).筆者らは,本研究と同じ術式であるCEPTFEパッチCII(ゴアテックスCRシート)を用いた前頭筋吊り上げ術後,開瞼時における上眼瞼の移動距離および最大速度は改善し健常者に近づくと過去に報告したが,症例数がC1例C1眼であり,涙液貯留量については触れていなかった12).今回筆者らは,さらに症例数を増やし,瞬目を非侵襲的かつ簡便で詳細に観察することができる瞬目高速解析装置7)を用いて,術前,術後C1.5カ月,術後C3カ月の先天性眼瞼下垂のCMRD-1,自発性瞬目および涙液貯留量の変化について検討したので報告する.CI対象および方法対象は,2013年C1月.2017月C9月に京都府立医科大学附属病院眼科を受診し,先天性眼瞼下垂に対しCEPTFEパッチIIを用いて前頭筋吊り上げ術を施行したC10例C12側(男性C5例,女性C5例,平均年齢C27.1歳,片側C8側,両側C2側)である.また,対照群とした後天性眼瞼下垂は,眼瞼挙筋短縮術を施行したC44例C76側(男性C8例,女性C36例,平均年齢69.2歳,片側C12側,両側C32側)である.眼瞼下垂術前後の上眼瞼位置の評価は,瞳孔角膜反射から上眼瞼縁までの距離であるCmarginre.exdistance-1(MRD-1)を用いた13,14).MRD-1を術前および術後C1.5カ月,3カ月の時点で計測し検討した.先天性眼瞼下垂では上眼瞼挙筋機能CLFがC0Cmmで挙筋機能を有しない患者を,後天性眼瞼下垂ではCLFがC10Cmm以上で挙筋機能が良好である患者を対象とした.計測方法として,LFは細隙灯顕微鏡に患者が顔をのせた状態で上方視と下方視における上眼瞼縁の移動距離を万能瞳孔計で計測した.MRD-1は細隙灯顕微鏡で前眼部を撮影した画像から,角膜反射と上眼瞼縁の距離を解析ソフトで測定した.また,対象は,他の眼瞼疾患やその手術歴がなく,治療中の点眼または軟膏の使用もなく,涙道通過障害のない症例に限定した.対象の患者には京都府立医科大学医学倫理審査委員会の承認を得たうえでインフォーム・ドコンセントを行い,同意を得て測定を行った.自発性瞬目の測定には瞬目高速解析装置2,13)を用いた.この装置はC1CkHzの計測性能をもち,画像の取得から,画像処理,信号出力までをC1Cms単位で行うことが可能なインテリジェントビジョンシステム(IVSカメラ:浜松ホトニクス)を搭載している.装置内の視標には,網膜細胞への障害性が低いとされる緑色CLED(BG1102W:スタンレー電気)を使用している.被験者は顎台の上に顔を乗せるだけで測定が可能であるため,幼児から高齢者まで広範囲な年齢層を対象にすることができる.また,機器が被験者の眼部周辺に直接触れずに計測できる,簡便かつ非侵襲的な測定機器である.また,1CkHzと高精度の瞬目情報を取得できることにより今までとらえられなかった上眼瞼の動きを検討することができる2,14).自発性瞬目では,左右の眼の様子をそれぞれC40秒間ずつ撮影し,得られた合計C8万枚の映像画像を再生した.この際,明らかに随意性瞬目と思われるものを除外した後に自発性瞬目を解析するソフトウェアを用いて解析を行った.このソフトウェアは,上眼瞼位置を画像の輝度情報から算出しており,上眼瞼の速さがC10Cmm/sを上回っている区間を瞬目区間とし,その区間を瞬目時間,その区間中の最大速度をその瞬目の最大速度,その区間の上眼瞼の移動量を瞬目の深さとして抽出している.瞬目判定の閾値については,中村がこれまで瞬目高速解析装置で正常なCLFをもつ被験者から得たデータをもとに,自発性瞬目であると明確に判断できるものを上眼瞼の速度C10Cmm/sであると判断した2).こうして得られた上眼瞼位置のデータをもとに上眼瞼の位置,速度をC±5Csで移動平均化することができる15).データから得られた各瞬目の瞬目回数,閉瞼時,開瞼時それぞれにおける上眼瞼移動距離,上眼瞼移動期間,最大速度と閉瞼から開瞼に移行するまでの閉瞼静止期間の合計C8項目を導き(図1),被験者ごとの各パラメータを平均化し,それを各被験者の代表値とした.上眼瞼の速度上眼瞼縁の位置(mm/sec)(mm)時間(sec)a:閉瞼移動距離(mm),b:閉瞼移動期間(msec),c:閉瞼最大速度(mm/sec),d:静止期間(msec),e:開瞼移動期間(msec),f:開瞼移動距離(mm),g:開瞼最大速度(mm/sec)図1自発性瞬目の測定波形涙液貯留量はCvideo-meniscometer16)を用い涙液メニスカスの曲率半径CRを測定し,定量的評価を行った.涙液貯留量は涙液メニスカスの曲率半径CRと正の相関をもつ.video-meniscometerは,反射性流涙を避けるために照射光が眼球に当たらないように,下方涙液メニスカスに水平縞のターゲットを投影し,得られた涙液メニスカスの像を解析した.基本原理は,水平縞のターゲットを涙液メニスカス表面に投影してその反射像をとらえ,反射像の水平縞の線幅のターゲットの線幅を凹面鏡の光学式に当てはめて,涙液メニスカスの曲率半径を式(1)より算出するものである15).CICR=2W×─T(1)R=涙液メニスカスの曲率半径(mm)W=ワーキング長(mm)I=イメージングサイズ(mm)T=ターゲットサイズ(mm)CII結果1.先天性眼瞼下垂の術前後比較前頭筋吊り上げ術の術前後における平均CMRD-1を比較したところ,術前と術後C1.5カ月,術前と術後C3カ月において,有意に増加していた(p<0.01)(表1).前頭筋吊り上げ術前と術後C1.5カ月時点の自発性瞬目における各パラメータの平均値は,開閉瞼時移動期間は増加傾向にあったが,いずれのパラメータについても有意差は認められず,術前と術後C3カ月も同様であった(表1).また,涙液メニスカスの曲率半径CRの平均値も術前後で有意差は認められなかった(表1).表1先天性眼瞼下垂における術前後のパラメータ各パラメータ術前術後C1.5カ月術後C3カ月MRD-1(mm)C0.02±0.17C3.00±0.36*C3.39±0.34*曲率半径CR(mm)C0.27±0.01C0.26±0.07C0.21±0.02瞬目発生回数(回)C8.86±2.03C8.13±1.68C7.43±1.65閉瞼移動距離(mm)C3.12±0.25C2.85±0.21C3.27±0.13閉瞼移動期間(ms)C75.41±2.73C103.21±12.35C98.32±4.14閉瞼最大速度(mm/s)C72.78±6.67C66.74±23.20C61.14±6.06静止期間(ms)C77.51±46.74C62.73±14.77C63.95±11.81開瞼移動距離(mm)C2.52±0.20C2.71±0.41C2.67±0.32開瞼移動期間(ms)C95.08±8.06C113.46±7.44C106.04±11.17開瞼最大速度(mm/s)C46.22±4.06C35.73±3.15C39.54±1.92C術前を基準として,各期間と比較平均値C±標準誤差.*:p<0.01Friedman検定.表2後天性眼瞼下垂における術前後のパラメータ各パラメータ術前術後C1.5カ月術後C3カ月MRD-1(mm)C0.08±0.19C3.82±0.12*C4.00±0.118*LF(mm)C10.91±0.292C12.53±0.27*C12.94±0.26*曲率半径CR(mm)C0.32±0.02C0.28±0.03**C0.23±0.01*瞬目発生回数(回)C14.54±1.75C14.41±1.52C15.72±1.61閉瞼移動距離(mm)C5.76±0.21C6.13±0.27C6.81±0.284*閉瞼移動期間(ms)C78.84±1.67C86.47±2.62*C90.02±2.68*閉瞼最大速度(mm/s)C129.41±5.57C137.15±5.47C150.75±5.92*静止期間(ms)C16.41±1.72C14.85±3.20**C14.56±10.31**開瞼移動距離(mm)C5.11±0.23C5.26±0.26C5.90±0.30*開瞼移動期間(ms)C175.11±4.14C180.36±5.20C186.53±6.01開瞼最大速度(mm/s)C47.93±2.39C50.58±2.60C52.42±2.53**術前を基準として,各期間と比較平均値C±標準誤差.*:p<0.01,**:p<0.05Friedman検定.C2.後天性眼瞼下垂の術前後比較今回対照群とした後天性眼瞼下垂について,MRD-1は術前と術後C1.5カ月(p<0.01),術前と術後C3カ月(p<0.01)において有意に増加した(表2).LFは術前と術後C1.5カ月(p<0.05),術前と術後C3カ月(p<0.05)において有意に増加した(表2).涙液メニスカスの曲率半径CRは,術前と術後C1.5カ月(p<0.05),術前と術後C3カ月(p<0.01)において有意に減少した(表2).自発性瞬目における各パラメータの平均値において,閉瞼移動距離は,術前と術後C3カ月(p<0.01)において有意に増加した(表2).閉瞼移動期間は,術前と術後C1.5カ月(p<0.01),術前と術後C3カ月(p<0.01)において有意に増加した(表2).閉瞼最大速度は,術前と術後C3カ月(p<0.01)において有意に増加した(表2).閉瞼静止期間は術前と術後C1.5カ月(p<0.05),術前と術後C3カ月(p<0.05)において有意に減少した(表2).*7*8765開瞼移動距離(mm)5432432110(カ月)平均値±標準誤差,*:p<0.01Mann-WhitneyU検定図2先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂における閉瞼移動距離の比較表3片側性の先天性眼瞼下垂における瞬目回数疾患側眼の瞬目回数健常側眼の瞬目回数(回)(回)術前C8.86±2.03C12.73±3.59術後C1.5カ月C8.13±1.68C12.52±2.36術後C3カ月C7.43±1.65C11.89±3.33平均値C±標準誤差.開瞼移動距離は術前と術後C3カ月で有意に増加した(p<0.01)(表2).開瞼移動期間は術前後で有意差は認められなかった(表2).開瞼最大速度は術前と術後C3カ月で有意に増加した(p<0.05)(表2).C3.先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂との術前後比較先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂について,術前後で各パラメータを比較したところ,有意差が認められたのは,瞬目回数(p<0.05),閉瞼時における移動距離(p<0.01),最大速度(p<0.01),開瞼時における移動距離(p<0.01),移動期間(p<0.01)であった.なかでも瞬目機能の評価に重要である上眼瞼移動距離の結果を図2,3に示す.この有意差が認められたパラメータでは,後天性眼瞼下垂の値がすべて先天性眼瞼下垂を上回る結果となった.また,片側性の先天性眼瞼下垂の瞬目回数を疾患側と健常側に分け測定し比較したところ,有意差は認められなかった(表3).CIII考按先天性眼瞼下垂に対する外科的治療である前頭筋吊り上げ術は,EPTFEパッチCII(ゴアテックスCRシート)などを用いて眉毛上の前頭筋と上眼瞼を連結し,眉毛の挙上とともに上眼瞼を開瞼させる術式である.今回,前頭筋吊り上げ術後にMRD-1は有意に増加した.したがって,前頭筋吊り上げ術は視野狭窄の改善に有効であることが示された.0(カ月)平均値±標準誤差,*:p<0.01Mann-WhitneyU検定図3先天性眼瞼下垂と後天性眼瞼下垂における開瞼移動距離の比較自発性瞬目の計測については,これまでさまざまな手法や機械を用いて研究が行われてきた.代表的なものとしてビデオカメラ17,18)による撮影方法や筋電図19),Capacito-Oculog-raphy20)法,サーチコイル法21)が報告されているが,いずれの測定法も長所と短所が存在する.ビデオカメラによる撮影方法の場合,非侵襲的であるがC1秒間に撮像できる枚数が数十枚ほどに制約され,約C100Cmsecで生じる瞬目の上眼瞼を正確に追跡しながら測定することが困難であった.Capaci-to-Oculography法は電極と眼球や眼瞼などの突出部分との距離変化による空間静電容量を記録するため非侵襲であるが,瞬目時における移動距離や移動期間などの詳しいパラメータを得ることができない問題があった.また,筋電図,サーチコイル法では正確な瞬目の動作や移動距離などの各パラメータを得ることができる一方,装置の準備に時間を要することや侵襲的であることが問題となる.今回用いた瞬目高速解析装置は非侵襲の瞬目測定が可能であり,1CkHzの計測性能とインテリジェントビジョンシステムにより,これまで報告になかった眼瞼下垂と自発性瞬目の変化について詳細な測定を可能とした.筆者らは過去に,先天性眼瞼下垂の瞬目機能について,前頭筋吊り上げ術後,開閉瞼時ともに上眼瞼移動距離,最大速度,瞬目期間が増加し12),後天性眼瞼下垂については挙筋短縮術後に開瞼時上眼瞼移動距離が増加し,それに伴って開瞼時最大速度および開瞼時上眼瞼移動期間も増加した8)という報告をした.今回の結果では,先天性眼瞼下垂は術前から術後C1.5カ月,術後C3カ月の各測定時において,閉瞼時および開瞼時のいずれのパラメータにも有意な変化はみられず,既報の結果と異なったが,過去の報告がC1例報告のみであったことが今回の検討結果と異なる原因と考えられる.後天性眼瞼下垂では,閉瞼時における移動距離,移動期間,最大速度,また開瞼時における移動距離,最大速度で術後有意に増加し,閉瞼静止期間で術後有意に減少した.既報とは開瞼時の移動期間の点で異なる結果となったものの,今回の結果に01.5301.53自発性瞬目の原理は,上眼瞼挙筋の伸展性が眼輪筋の収縮に対して柔軟に伸びることを可能にしていることから成り立ち,上眼瞼のさまざまな動きは眼輪筋と上眼瞼挙筋の張力によるバランスによって起こり,眼輪筋の張力が挙筋に勝れば上眼瞼は下降し,釣り合えば停止し,弱まれば上昇するというものである2).後天性眼瞼下垂では,眼瞼挙筋短縮によって上眼瞼挙筋の弛緩が改善され,上眼瞼挙筋の収縮機能が術前に比べて増加し,開瞼時の眼輪筋の張力と上眼瞼挙筋の張力の差が術前より増加したことで,開瞼時のパラメータ数値も増加したとされる.また,閉瞼静止期間の減少の原因として,上眼瞼挙筋の筋張力の増加や,涙液貯留量の減少による開閉瞼方向の涙液張力が弱まったことがあげられる.一方で,先天性眼瞼下垂症例では挙筋機能がないため,上眼瞼挙筋の収縮機能はない.加えて,前頭筋吊り上げ術はこの挙筋機能を改善するものではないことから,術後においても瞬目機能に変化がみられなかったと考えられる.筆者らの過去の報告12)で,術後に自発性瞬目の各パラメータ値が上昇した理由として,症例数がわずかC1例と少なかったこと,そして用いた測定装置および測定条件が本研究と同じであることから,本来行っていた自発性瞬目が設定した測定閾値に達しておらず認識されていないものが多かったことが原因であると考えられる.また,Baccegaらの報告では,自己筋膜移植の吊り上げ術後における自発性瞬目の振幅および最大速度は低下したとしている4).この報告は,計測時間がC5分と本研究に比べて長い測定時間であるなど条件が異なるほか,計測機器もC250CHzと本研究の瞬目高速解析装置のC1CkHzに比べ低い周波数で計測しており,これらが相違の結果に関係していると考えられる.瞬目と涙道のポンプ機能の関係についてはCKakizakiが報告したように,涙道は眼輪筋とCHorner筋(眼輪筋涙.部)が関与する機構で生じる涙道ポンプの作用によって行われる22.24).眼輪筋収縮時(閉瞼時)は,眼輪筋とCHorner筋が収縮する.Horner筋は瞼板と後涙.稜を最短にするよう収縮するため涙.から離れ,涙.はCmedialCcanthalCtendon(MCT)後枝や結合組織に牽引され外側に拡張する.また,このときCHorner筋は上・下涙小管を圧平し,起始方向である後内側に牽引することで涙液を総涙小管方向に排出する.眼輪筋弛緩時(閉瞼時)は,眼輪筋,Horner筋は弛緩するため,Horner筋は元に戻ろうとし,眼窩脂肪に押され前内側方向に凸の弓形になり,MCT後枝,結合組織を介して涙.上部は収縮する.このとき,圧平されていた上・下涙小管は拡張し,涙点から涙液を吸引する.したがって,瞬目時の開瞼・閉瞼程度が大きくなるほど涙道ポンプ機能も大きくなることが推測される9,10).涙液メニスカスの曲率半径CRについて,先天性眼瞼下垂は術前後で有意な変化がなく,涙液貯留量の増減は認められなかったが,後天性眼瞼下垂は術後に涙液貯留量が有意に減少した.後天性下垂については涙液貯留量においても,術後に減少したという報告9.11)と一致する結果となった.後天性眼瞼下垂の術後に涙液貯留量が減少した理由として,自発性瞬目が深くなったこと,つまり眼瞼下垂手術により上眼瞼位置が挙上し,上眼瞼移動距離の増加に伴い開瞼時の眼輪筋の拡張程度が増加したこと,閉瞼時上眼瞼移動距離の増加に伴い閉瞼時の眼輪筋の収縮程度が増加したことが関連していると考えられる.したがって,先天性眼瞼下垂の涙液貯留量が増減しなかったのは,術前後で瞬目機能に変化がなく,眼輪筋の拡張および収縮程度に変化がなかったことが原因であると示唆される.瞬目回数については,後天性眼瞼下垂の数値が先天性眼瞼下垂と比較して有意に大きな値をとった.健常者の加齢性による自発性瞬目の回数については木村が報告しており25),年齢による瞬目回数の変化はないとしているが,眼瞼下垂手術を施行した例に対しての報告はない.自発性瞬目回数は中枢ドーパミン神経系により支配されていると考えられており26),上眼瞼挙筋機能の有無が瞬目回数に影響を与える可能性は低いと推定できる.そこで,片側性の先天性眼瞼下垂患者の疾患眼と健常眼の瞬目回数を比較したところ,疾患眼が健常眼よりも少ない回数となった.また,健常側の眼の瞬目回数と後天性眼瞼下垂の瞬目回数を比べた結果,有意差は認められなかった.したがって,本来は疾患眼の上眼瞼も健常眼と同程度の頻度で瞬目を行っているが,上眼瞼の移動速度が本実験で設定したC10Cmm/sを超えておらず,自発性瞬目として算出されなかったことが後天性下垂と比較して瞬目回数が少なくなった原因と考えられる.この結果は,先天性眼瞼下垂の瞬目が微弱なものであり,後述の先天性眼瞼下垂の上眼瞼最大速度や移動距離が後天性眼瞼下垂に比べ低いことを示唆するものといえる.また,若年層の多い先天性眼瞼下垂と高齢層の多い後天性眼瞼下垂の瞬目回数に変化がみられないことは木村の報告結果25)と一致する.開瞼時の瞬目機能においては,術前後で,移動距離,最大速度で後天性眼瞼下垂の値が先天性眼瞼下垂と比較して有意に大きな値をとった.本研究の先天性眼瞼下垂患者は上眼瞼挙筋機能を有しておらず,十分に収縮できない.上眼瞼挙筋機能は術後においても変化することはないため,術前後で後天性眼瞼下垂に比べて低い数値をとったと考えられる.また,閉瞼時においても,後天性眼瞼下垂の値が移動距離,移動期間で先天性眼瞼下垂と比較して有意に大きな値をとった.閉瞼時に収縮するのは眼輪筋であるが,上眼瞼挙筋が連動的に弛緩して閉瞼が行われる.しかし,先天性眼瞼下垂では眼輪筋の収縮力に異常はないにもかかわらず閉瞼が弱く,閉瞼時の移動距離,最大速度は後天性眼瞼下垂に比べて有意文献1)平岡満里:瞬目の生理と分析法.神経眼科C11:383-390,C19942)中村芳子,松田淳平,鈴木一隆ほか:瞬目高速解析装置を用いた自発性瞬目の測定.日眼会誌C112:1059-1067,C20083)EvingerCC,CManningCKA,CSibonyPA:EyelidCmovements.CMechanismsCandCnormalCdata.CInvestCOphthalmolCVisCSciC32:387-400,C19914)BaccegaA,GarciaDM,CruzAA:SpontaneousblinkingkinematicsCinCpatientsCwhoChaveCundergoneCautogeneousCfasciaCfrontalisCsuspension.CCurrCEyeCResC42:1248-1253,C20175)SamiraY:ApproachCtoCaCpatientCwithCblepharoptosis.CNeuroSciC37:1589-1596,C20166)渡辺彰英,荒木美治:各疾患の手術治療と適応.顕微鏡下眼形成手術,1,20,メディカルビュー社,20137)SteinkoglerFJ,KucherA,HuberEetal:Gore-Texsoft-tissuepatchfrontailstechniqueincongenitalptosisandinblepharophimosis-ptosisCsyndrome.CPlastCReconstrCSurgC92:1057-1067,C19938)大前まどか,渡辺彰英,横井則彦ほか:眼瞼下垂手術前後における自発性瞬目の定量的評価.眼科C54:1197-1201,C20129)WatanabeA,KakizakiH,SelvaDetal:Short-termchang-esCintearvolumeafterblepharoptosisrepair.CorneaC33:C14-17,C201410)WatanabeA,SelvaD,KakizakiHetal:Long-termchang-esCintearvolumeafterblepharoptosissurgeryandbleph-aroplasty.InvestOphthalmolVisSciC56:54-58,C201411)岡雄太郎,渡辺彰英,脇舛耕一ほか:眼瞼下垂手術後における涙液貯留量の変化.眼科手術C28:624-628,C201512)山中行人,渡辺彰英,木村直子ほか:片側性先天性眼瞼下垂における前頭筋吊り上げ術前後での自発性瞬目を検討した1例.日本臨床眼科学会講演集C67:881-885,C201313)MeyerdR,LinbergJV,PowellSRetal:QuantitatingthesuperiorvisualC.eldlossassociatedwithptosis.ArchOph-thalmolC107:840-843,C198914)TakahashiCY,CKakizakiCH,CMitoCHCetal:AssessmentCofCtheCpredictiveCvalueCofCintraoperativeCeyelidCheightCmea-surementsCinCsittingCandCsupineCpositionsCduringCblepha-roptosisCrepair.COphthalmicCPlastCReconstrCSurgC23:119-121,C200715)鈴木一隆,豊田春義,宅見宗則ほか:インテリジェントビジョンセンサを用いた高速瞬目計測装置.信学技報C109:C1-4,C200916)YokoiCN,CBronCA,CTi.anyCJCetal:Re.ectiveCmeniscome-try.anon-invasivemethodtomeasuretearmeniscuscur-vature.BrJOphthalmolC83:92-97,C199917)CasseG,SauvageJP,AdenisJPetal:Videonystagmogra-phytoassessblinking.GraefesArchClinExpOphthalmol245:1789-1796,C200718)WuCZ,CBegleyCC,CPortCNCetal:TheCe.ectsCofCincreasingCocularCsurfaceCstimulationConCblinkingCandCtearCsecretion.CInvestOphthalmolVisSciC56:4211-4220,C201519)SternJA,WalrathLC,GoldsteinR:Theendogenouseye-blink.PsychophysiologyC21:22-23,C198420)保坂良資,渡辺瞭:まばたき発生パターンを指標とした覚醒水準評価の一方法.人間工学C19:161-167,C198321)RobinsonDA:ACmethodCofCmeasuringCeyeCmovemnentCusingascleralsearchcoilinamagneticC.eld.IEEETransBiomedEng10:137-145,C196322)KakizakiH,ZakoM,MiyaishiOetal:Thelacrimalcana-liculusandsacbroderedbytheHorner’smusclefromthefunctionallacrimaldrainagesystem.OphthalmologyC112:C710-716,C200523)柿崎裕彦:内眥部の解剖と導涙機構.日眼会誌C111:857-863,C200724)柿崎裕彦,木下慎介:流涙のメカニズムと眼瞼へのアプローチ.眼科手術C20:347-351,C200725)木村直子,渡辺彰英,鈴木一隆ほか:目高速解析装置を用いた瞬目の加齢性変化の検討.日眼会誌C116:862-868,C201226)CruzAA,GarciaDM,PintoCTetal:SpontaneouseyebC-linkactivity.OculSurfC9:29-41,C2011***

ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene (PTFE):ゴアテックス人工硬膜MVP)シートを用いた前頭筋吊り上げ術施行例における材料の組織学的検討

2017年4月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科34(4):585.588,2017cポリテトラフルオロエチレン(Polytetra.uoroethylene(PTFE):ゴアテックス人工硬膜MVP)シートを用いた前頭筋吊り上げ術施行例における材料の組織学的検討渡邉佳子*1,3林憲吾*2,3水木信久*3*1国際親善総合病院眼科*2横浜桜木町眼科*3横浜市立大学医学部眼科学教室PathologicalFindingofSuspensionMaterialSheetinOperationofFrontalisSuspensionUsingPolytetra.uoroethyleneSheet(Gore-TexMVP)YoshikoWatanabe1,3),KengoHayashi2,3)andNobuhisaMizuki3)1)DepartmentofOphthalmology,InternationalGoodwillGeneralHospital,2)YokohamaSakuragichoEyeClinic,3)DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,YokohamaCityUniversitySchoolofMedicine緒言:重度の眼瞼下垂症に対する前頭筋吊り上げ術に使用する吊り上げ人工素材であるポリテトラフルオロエチレン(polytetra.uoroethylene:PTFE)シート「ゴアテックス人工硬膜MVP」(以下,PTFEシート)は,長期的に下垂の再発がなく良好な成績が報告されている.症例:30歳,男性.1年前に他院にて,両側の先天性眼瞼下垂症に対してPTFEシートを用いた前頭筋吊り上げ術を受けた.術後1年間で下垂の再発はみられなかったが,術直後より軽い開瞼でMRD(marginre.exdistance)-1が約1.2mm程度と若干低矯正であったため,本人の希望により吊り上げ材料の再調整を行った.眉毛上部よりPTFEシートを露出し,3mm短縮して前頭筋へ再固定した.術後,軽い開瞼でMRD-1が約3mm程度と改善し,兎眼や角膜上皮障害もみられず,自覚症状も改善した.術中の所見として,使用されていたPTFEシートは凹凸面と平滑面のある人工硬膜で,表面(凹凸面)は周辺組織と強く癒着しており,.離時に出血が多く,一方で平滑な裏面(平滑面)は周辺組織との癒着はなく,周囲との間にカプセルが形成されており,.離が容易であった.摘出したPTFEシート断端の病理組織を検査したところ,表面のマイクロポア内に線維組織が入り込んでおり,裏面には組織の侵入はみられなかった.結語:PTFEシートの前面のマイクロポア内に線維組織が侵入し癒着することが,長期的な吊り上げ効果の維持に関与している可能性が考えられる.Introduction:Polytetra.uoroethylene(PTFE:Gore-Tex),whenusedasanarti.cialmaterialinfrontalissus-pensionsurgeryforsevereptosis,resultsinnoptosisrecurrencelong-term,andyieldspositivepostoperativeresults.Case:A30-year-oldmalehadreceivedfrontalissuspensionsurgeryusingPTFEsheetsoncongenitalpto-sisinbotheyesayearpreviouslyatanotherhospital.Ptosisdidnotrecurbuttheadjustmentwasinsu.cientimmediatelyfollowingtheoperation,asthemarginre.exdistance(MRD)-1wasonly1-2mm.Thepatientthere-forerequestedthattheprocedurebeperformedagain.AreadjustmentoperationwasperformedattheYokohamaSakuragichoEyeClinic.WeshortenedthePTFEsheetsby3mmandsuturedthemagaintothefrontalismuscle.Afterthesurgery,theMRD-1wasimprovedto3mmandtherewerenosidee.ectssuchaslagophthalmosorcor-nealepithelialinjury.Observingthesurgery,itwasfoundthatthefront(rough)surfaceofthePTFEsheetadheredstronglytothesurroundingtissue.Therewasconsiderablebleedingatthetimeofpeelingthefront(rough)PTFEsheeto.foradjustment.Theback(smooth)surfacedidnotadhere,andwaseasytopeelo..Weinspectedthepathologicaltissueofthesheetsandfoundthat.broustissuepermeatedintothesurfaceofthemicroporesonthefront(rough)sideofthesheets.Atthesametime,tissuedidnotpermeateintothesmoothbacksurfaceofthesheets.Conclusion:Thepermeationof.broustissueintothesurfaceofthePTFEsheetmicroporesmaymaintainthelong-terme.ectofsuspension.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)34(4):585.588,2017〕〔別刷請求先〕渡邉佳子:〒245-0006神奈川県横浜市港南区港南台4-33-11Reprintrequests:YoshikoWatanabe,M.D.,DepartmentofOphthalmology,InternationalGoodwillGeneralHospital,1-28-1,Nishigaoka,IzumiWard,Yokohamacity,KanagawaPrefecture245-0006,JAPANKeywords:眼瞼下垂,先天眼瞼下垂,前頭筋吊り上げ術,ゴアテックス,ポリテトラフルオロエチレン.ptosis,congenitalptosis,frontalissuspension,Gore-tex,polytetra.uoroethylene.はじめに前頭筋吊り上げ術は,挙筋機能不良な重度の眼瞼下垂症に対して施行される手術である.吊り上げ術に使う材料としては,大腿筋膜が一般的である1).移植筋膜は術後6カ月で平均15%収縮すると報告されており,術後吊り上げ量の予測が困難である2).また,長期的に過矯正,兎眼,睫毛内反症となる場合があり,移植筋膜は周辺組織との癒着が強く摘出が困難である3,4).人工材料として,ナイロン糸やシリコーン,ポリテトラフルオロエチレン(polytetra.uoroethylene:PTFE)などが使用されており,PTFE素材による術後の眼瞼下垂の再発率の低さは大腿筋膜に相当するといわれている5,6).筆者らは以前,PTFEシート「ゴアテックス人工硬膜MVP」(以下,PTFEシート)の長期的良好な成績について報告した7).今回,PTFEシートを用いた前頭筋吊り上げ術の術後低矯正症例に対して,矯正量の再調整のため,再手術を施行した.その臨床経過および摘出したPTFEシートの病理組織について報告する.I症例患者:30歳,男性.病名:両側の先天眼瞼下垂.既往歴:とくになし現病歴:幼少時より両側の先天眼瞼下垂で常に顎上げがあったが,視力良好であったため,手術は受けなかった(図1a).1年前に他院にてPTFEシートを用いた前頭筋吊り上a:前医手術前b:前医手術1週間後最大開瞼通常開瞼閉瞼げ術を受けた.術後1年間で下垂の再発はみられなかったが,術直後より軽い開瞼でMRD(marginre.exdistance)-1が約1.2mmと若干低矯正であった(図1b).開瞼幅の改善を希望し,横浜桜木町眼科を受診した.初診時所見:視力は,VD=1.2(1.5×cyl.0.50D),VS=1.2(1.5×cyl.0.50D)と良好であった.軽い開瞼でMRD-1が1.2mm程度のため,上眼瞼が瞳孔にかかり視野障害の自覚があった(図1c).初回前頭筋吊り上げ術直後よりこの状態であり,下垂の再発はみられなかった.しかし,常に眉毛を強く挙上する必要があり,肩こり,頭痛を自覚していた.閉瞼に問題はなく角膜上皮障害は認めなかった.手術所見:眉毛上部の皮膚を切開し,PTFEシートを露出した.シート腹側にあたるに表面は周辺組織との強い癒着を認め,.離時に出血が多くみられた(図2a).一方,シート背側にあたる裏面にはカプセルが形成されており,周辺組織との癒着は認めず,.離は容易であった(図2b).PTFEシートを3mm牽引し再度前頭筋と眉毛下の真皮に固定し,残余部分のPTFEシートの断端を切除し,創部の皮膚を縫合した.術後経過:術後1カ月で軽い開瞼でMRD-1が約2.3mmと改善を認め,また最大開瞼時の前額部の皺も減少しており,頭痛,肩こりは消失した(図1d).閉瞼も良好で角膜上皮障害を認めなかった.病理組織:摘出したPTFEシートを図に示す(図3).上方が頭側,下方が睫毛側である.図3を切断した断面(図4)の顕微鏡像の図(図5a)とその拡大図(図6)を示す.腹側c:再手術前d:再手術後1カ月図1開閉瞼の経過上段:眉毛を拳上した最大開瞼時,中段:通常の軽い開瞼時,下段:閉瞼時.a:前医の初回手術前,b:前医の術後1週間,c:当院での再手術前,d:再手術後1カ月.図2術中所見a:PTFEシートの表面(凹凸面)(細矢印)が周辺組織と癒着している(太矢印).b:PTFEシートの裏面(平滑面)(細矢印)はカプセルが形成されている(太矢印).図3摘出したPTFEシート図4図3を切断した断面図6図5aの拡大図凹凸面のマイクロポア内に組織浸潤を認め(太矢印),平滑面には組織浸潤はみられない(細矢印).にあたる表面は凹凸面であり,そのマイクロポア内には線維組織が侵入していた.背側にあたる裏面は平滑面で組織の侵入は認めなかった.II考按PTFE素材による前頭筋吊り上げ術における再発率の低さは大腿筋膜に相当するといわれている5,6).PTFE素材のなかでも,糸状や紐状のものとシート状のものでは術式が異なる.糸や紐状のPTFE素材を用いる場合,眉毛上から眼瞼をループ状に通して埋没する方法が一般的で,再発率が高いという報告がある8).一方,シート状のPTFE素材を使用する場合は,面状の大腿筋膜と同様に瞼板と前頭筋にシートを直接縫合し,固定する.筆者らは,先天眼瞼下垂の小児31名42眼瞼に対してPTFEシートを用いた前頭筋吊り上げ術を行い,平均観察期間33カ月で,下垂の再発がみられないことを報告した7).同様に小久保らは,成人を含めた重度の先天眼瞼下垂97名130眼瞼に対して同素材を用いた同手術を行い,平均観察期間31カ月で下垂の再発がみられないことを報告している9).本症例で使用したPTFEシートは3層構造で,術中の光の反射による眩しさを軽減するために表面には凹凸が作られており,組織と癒着を生じるため凹凸面を脳脊髄側に向けて使用することは禁忌とされている(図5b).摘出したPTFEシートのマイクロポア内には線維性結合組織が侵入し,一方平滑面には線維性結合組織の侵入はみられなかった(図5a).Neelらは,マイクロポアのあるPTFEは移植後に組織浸潤があり,周辺組織と癒着することを報告している10).マイクロポア内に線維組織が侵入することで,結果的に癒着を生じ,術中定量の開瞼幅が維持し,長期的な吊り上げ効果に繋がっている可能性が考えられる.また,PTFEシートが通過するトンネルは,切開した眼窩隔膜から眼窩脂肪の中を通過して眼窩上縁に達し,眉毛上部へ繋がっているため,PTFEシートは瞼板に縫着し,眼窩隔膜内つまり眼瞼後葉を通過して眉毛上部の前頭筋に連結している.つまり前頭筋吊り上げ術は眼瞼後葉の牽引となる.仮に両面凸凹面のPTFEシートを使用した場合,そのデメリットは,凹凸面を背側にすると再手術時に背側面を.離することが非常に困難になることである.さらにPTFEシートが通過するトンネルの背側には挙筋腱膜があるため,挙筋群との癒着は,筋肉の作用の制限などの合併症が発生する可能性があり好ましくないと考える.2015年,国内で前頭筋吊り上げ術に使用する保険請求可能なPTFE素材のシートとして,サスペンダーが発売された.このシートは両面とも平滑面で,凹凸面はない.そのため,移植後にシート周辺にはカプセルが形成され,再調整や摘出は容易であることが予想される.また,下垂が術前のように著明に再発はしないと予想される.一方,シートと周辺組織との癒着が生じないため,術中定量の開瞼幅の長期的な維持については,今後検討する必要があると思われる.III結論前頭筋吊り上げ術で使用されたPTFEシート,ゴアテックス人工硬膜MVPの凹凸面は周辺組織との癒着が強く,平滑面には癒着がなくカプセルが形成されていた.ゴアテックス人工硬膜MVPのマイクロポア内に線維組織が侵入することが,長期的な吊り上げ効果の維持に関与している可能性が考えられる.文献1)TyersAG,CollinJRO:Browsuspension.ColourAtlasofOphthalmicPlasticSurgery.3rded,p197-207.Butter-worth-Heinemann,Oxford,20082)MatsuoK,YuzurihaS:Frontalissuspensionwithfascialataforseverecongenitalblepharoptosisusingenhancedinvoluntaryre.excontractionofthefrontalismuscle.JPlastReconstrAesthetSurg62:480-487,20093)林憲吾,嘉鳥信忠,笠井健一郎ほか:大腿筋膜による前頭筋吊り上げ術の合併症を来した3例の特徴と治療.日眼会誌117:132-138,20134)YoonJS,LeeSY:Long-termfunctionalandcosmeticout-comesafterfrontalissuspensionusingautogenousfascialataforpediatriccongenitalptosis.Ophthalmology116:1405-1414,20095)WassermanBN,SprungerDT,HelvestonEM:Compari-sonofmaterialsusedinfrontalissuspension.ArchOph-thalmol119:687-691,20016)BenSimonGJ,MacedoAA,SchwarczRMetal:Frontalissuspensionforuppereyelidptosis:evaluationofdi.erentsurgicaldesignsandsuturematerial.AmJOphthalmol140:877-885,20057)HayashiK,KatoriN,KasaiKetal:Comparisonsofnylonmono.lamentsuturetopolytetra.uoroethylenesheetforfrontalissuspensionsurgeryineyeswithcongenitalpto-sis.AmJOphthalmol155:654-663,20138)ZweepHP,SpauwenPH:Evaluationofexpandedpolytet-ra.uoroethylene(e-PTFE)andautogenousfascialatainfrontalissuspension.Acomparativeclinicalstudy.ActaChirPlast34:129-137,19929)KokuboK,KatoriN,HayashiKetal:Frontalissuspen-sionwithanexpandedpolytetra.uoroethylenesheetforcongenitalptosisrepair.JPlastReconstrAesthetSurg69:673-678,201610)NeelHB3rd:ImplantsofGore-tex.ArchOtolaryngol109:427-433,1983***

ゴアテックスR を用いた眼瞼下垂手術(前頭筋吊り上げ術)

2008年4月30日 水曜日

———————————————————————-Page1(123)???0910-181008\100頁JCLS《原著》あたらしい眼科25(4):545~548,2008?はじめに重度の先天眼瞼下垂や,動眼神経麻痺,重症筋無力症などによる眼瞼下垂は眼瞼挙筋機能が不良なため,前頭筋吊り上げ術が行われている.文献的には眼瞼挙筋機能が2~4mm以下の眼瞼下垂が適応とされている1,2).その吊り上げ術の材料としては大腿筋膜や長掌筋腱のような自家組織からナイロン糸,シリコーン,ゴアテックス?のような人工素材が報告されているが,組織親和性の問題,下垂再発,感染などの合併症を総合的に考慮すると自家組織である大腿筋膜が最も良い吊り上げ術の材料であるとされている3~5).前頭筋吊り上げ術における自家大腿筋膜移植の歴史は古く,1909年にPayrが先天眼瞼下垂の治療に用いたことがその始まりである6).実際,大腿筋膜採取に伴う機能的障害はほとんどみられないが,ときに大腿部の採取部位の知覚異常や肥厚性瘢痕を生じることがある4).また,大腿筋膜採取の手技は訓練されていない眼科医にとっては困難な手技であり,そのためにも他の素材の使用が試みられるようになった4).生体組織としては保存大腿筋膜を用いた報告もみられた4)が,自家組織に比べると術後成績が悪く,未知なる感染症の発症の可能性もあり,次第に使用されなくなってきた.その代わり,人工素材としてはナイロン,ポリエステル,ポリプロピレンやシリコーンのようなさまざまなものが報告されるようになってきた2,7).ゴアテックス?は1987年にSteinkoglerらが前頭筋吊り上げ術の材料として初めて用い,良好な術後成績が得られたと報告した8,9).ゴアテックス?は1969年にW.L.ゴア社で開発されたフッ素樹脂であり,正式名はexpandedpolyte-tra?uoroethyleneである.ゴア社の資料10)によると血管外科,胸部心臓外科などさまざまな分野で現在までに1,200万例以上のゴアテックス?製品が臨床使用されている.筆者が使用しているものは1993年に販売が開始されたゴアテックス?人工硬膜である.これは従来の保存硬膜がJakob病の原〔別刷請求先〕兼森良和:〒653-0841神戸市長田区松野通2-2-34カネモリ眼科形成外科クリニックReprintrequests:?????????????????????????????????????????????????-?-??????????-????????????-????????????-???????????ゴアテックス?を用いた眼瞼下垂手術(前頭筋吊り上げ術)兼森良和カネモリ眼科形成外科クリニックFrontalisSuspensionforBlepharoptosiswithPolytetra?uoroethylene(Gore-Tex?)YoshikazuKanemori???????????????????ゴアテックス?人工硬膜を用いて9症例15眼瞼の眼瞼下垂手術(前頭筋吊り上げ術)を行い,その術後成績について検討した.術後,すべての症例において眼瞼下垂は改善した.創傷治癒遅延,感染およびアレルギー反応がみられた症例はなかった.1例2眼瞼のみ術後,眼瞼下垂の再発がみられた.ゴアテックス?人工硬膜は十分な眼瞼の挙上効果が得られたうえ,重大な合併症を生じることもなかったので,眼瞼下垂手術(前頭筋吊り上げ術)時の自家組織の代わりとして有用な医療材料であると考える.Frontalissuspensionsurgerywasperformedon9blepharoptosispatients(15eyes),usingpolytetra?uoro-ethylene(Gore-Tex?).Ineverycase,theblepharoptosisimprovedpostoperatively.Therewerenopostoperativecomplications,suchasdelayedwoundhealing,infectionorrejection.Only1patient(2eyes)su?eredblepharoptosisrecurrence3monthaftersurgery.Polytetra?uoroethylene(Gore-Tex?)isausefulmaterialforfrontalissuspensionsurgery,asitshowshighbiocompatibilityandgoodfunctionalresults.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)25(4):545~548,2008〕Keywords:眼瞼,眼瞼下垂,前頭筋吊り上げ術,ゴアテックス?.eyelid,blepharoptosis,frontalissuspension,Gore-Tex?.———————————————————————-Page2———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008???(125)ゴアテックス?を結ぶ術式では結び目による死腔が感染の原因になり,結び目が眉毛部皮膚への刺激となって露出の原因になる可能性がある.Wassermanら4)の報告でもゴアテックス?の露出は眉毛部で生じている.そのため筆者はゴアテックス?を帯状に用いて瞼板や前頭筋への固定はナイロン糸を用いて縫合する術式を用いている.さらに,上眼瞼を瞼板の1カ所のみで吊り上げた場合,三角形に吊り上がった眼瞼になり整容的に問題を生じることがあるので,筆者はゴアテックス?の下端を松葉状に加工し,2カ所で上眼瞼を挙上することにしている.まだ症例数は9症例15眼瞼と少なく,経過観察期間も平均9.6カ月と短いが,術後の感染や露出を生じた例はなく,安全で整容的にも優れた術式であると考える.さまざまな材料による吊り上げ術後の下垂の再発率についてはすでにいくつかの報告が行われている.Wassermanら4)によると102眼瞼の吊り上げ術後経過において自家大腿筋膜組織を用いた症例群では4%の再発がみられたが,ゴアテックス?を用いた症例群では再発率は0%であったと報告している.BenSimonら7)が164眼瞼の吊り上げ術後経過において自家大腿筋膜組織を用いた症例群の下垂再発率は22%に対してゴアテックス?を用いた症例では再発率は15%であったと報告しており,現在まで報告されたさまざまな吊り上げ術の材料のなかでゴアテックス?が唯一,自家大腿筋膜よりも術後再発が少ないと報告された材料である.筆者の今回の症例では,ゴアテックス?を用いた15眼瞼のうち下垂の再発は2眼瞼でみられた.再発率は13%であり,BenSimonら7)とほぼ同様の結果が得られた.ゴアテックス?は多孔性の組織であるので術後結合組織がゴアテックス?の中に入り込み,周囲の組織と癒着するため下垂の再発が少ない頭筋吊り上げ術の材料として厚さ0.3mmのゴアテックス?人工硬膜を使用した(図2).シート状のゴアテックス?人工硬膜を1×5cm大の帯状に切り出した後,下方は縦に切れ目を入れて松葉状に加工した.2つに分かれた下端を6-0ナイロン糸で瞼板にそれぞれ縫合固定した(図3).上端は?離した眼輪筋下のトンネルを通して眉毛上部の皮下真皮組織に4-0ナイロン糸で縫合固定した.固定の高さは努力開瞼により瞼縁が瞳孔中心より3mm上の高さになる位置とした.仮固定後,患者に閉瞼をしてもらい,角膜が露出する程度の閉瞼障害がみられたときは1mmほど瞼縁の位置を下げて再固定を行った.上端の余ったゴアテックス?人工硬膜は4~5mm程度を残して切除した.6-0ナイロン糸で眉毛上部と眼瞼の皮膚縫合を行い,手術を終了した.術後は創部に抗生物質入り眼軟膏を1日2回塗布し,術7日後に抜糸を行った.II結果すべての症例で術後MRD+2mm以上の開瞼が得られた.術後創傷治癒の経過は治癒遅延,感染およびアレルギー反応を生じた症例はなかった.動眼神経麻痺による眼瞼下垂の1例2眼瞼のみ,術3カ月後,下垂の再発がみられた.代表的症例として片側眼瞼吊り上げ術症例と両側眼瞼吊り上げ術症例を図4と図5に示す.III考按ゴアテックス?を用いた吊り上げ術の術式であるが,今までの海外の報告では紐状のゴアテックス?を用いて眼瞼と前頭筋の間にループ状に通して結ぶ術式が主流である3,7,12).そのループの形状によりsingleloop法7),pentagon法12)およびdoublepentagon法3)が報告されている.しかし,紐状の図4片側眼瞼吊り上げ術症例12歳,女児.右先天眼瞼下垂のため挙筋短縮術とナイロン糸による前頭筋吊り上げ術を受けたが,眼瞼下垂が残存し,術前の右MRDは-1mmであった.ゴアテックス?人工硬膜を用いた吊り上げ術後はMRDが+3mmまで改善した.術後の閉瞼障害は認めない.なお,術前より右内斜視が存在した.左上:術前開瞼,左下:術前閉瞼,右上:術後開瞼,右下:術後閉瞼.図5両側眼瞼吊り上げ術症例15歳,男児.両先天眼瞼下垂のため挙筋短縮術を受けたが,———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.25,No.4,2008(126)あたらしい眼科24:547-555,20072)WagnerRS,MaurielloJAJr,NelsonLBetal:Treatmentofcongenitalptosiswithfrontalissuspension:acompari-sonofsuspensorymaterials.?????????????91:245-248,19843)CrawfordJS:Repairofptosisusingfrontalismuscleandfascialata:a20-yearreview.???????????????8:31-40,19774)WassermanBN,SprungerDT,HelvestonEM:Compari-sonofmaterialsusedinfrontalissuspension.????????????????119:687-691,20015)BajajMS,SastrySS,GhoseSetal:Evaluationofpolyte-tra?uoroethylenesutureforfrontalissuspensionascom-paredtopolybutylate-coatedbraidedpolyester.???????????????????32:415-419,20046)PayrE:PlastikMittelsfreierFaszientransplantationbeiPtosis.????????????????????35:822,19097)BenSimonGJ,MacedoAA,SchwarczRMetal:Frontalissuspensionforuppereyelidptosis:evaluationofdi?erentsurgicaldesignsandsuturematerial.???????????????140:877-885,20058)SteinkoglerFJ:Anewmaterialforfrontalslingoperationincongenitalptosis.?????????????????????????191:361-363,19879)SteinkoglerFJ,KucharA,HuberEetal:Gore-Texsoft-tissuepatchfrontalissuspensiontechniqueincongenitalptosisandinblepharophimosis-ptosissyndrome.???????????????????92:1057-1060,199310)http://www.jgoretex.co.jp/business/medical/index.php11)YamagataS,GotoK,OdaYetal:Clinicalexperiencewithexpandedpolytetra?uoroethylenesheetusedasanarti?-cialduramater.???????????????33:582-585,199312)HelvestonEM,EllisFD:PediatricOphthalmologyPrac-tice.2nded,p204-205,CVMosby,StLouis,198413)野田実香:眼瞼下垂(3)前頭筋吊り上げ術.臨眼60:1134-1140,200614)ZweepHP,SpauwenPH:Evaluationofexpandedpolyte-tra?uoroethylene(e-PTFE)andautogenousfascialatainfrontalissuspension.Acomparativeclinicalstudy.???????????????34:129-137,1992とされている13).しかし,下垂が再発したため取り出したゴアテックス?の組織を調べたところ,結合組織はゴアテックス?の中までは入り込んでいないとする報告もある14).筆者の症例でも同じ手術手技で手術を行ったにもかかわらず,術後下垂