《第28回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科35(7):971.975,2018c多施設による緑内障患者の実態調査2016年版─後発医薬品の使用─川島拓*1井上賢治*1塩川美菜子*1井上順治*2石田恭子*3富田剛司*3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CCurrentStatusofTherapyforGlaucomaatMultipleOphthalmicInstitutionsin2016─UsageofGenericDrugsforGlaucomaPatients─TakuKawashima1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),JunjiInoue2),KyokoIshida3)andGojiTomita3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenter目的:緑内障患者の治療実態を調査し,そのなかから後発医薬品の使用を検討する.対象および方法:57施設に外来受診した緑内障,高眼圧症C4,288例C4,288眼を対象とし,使用薬剤を調査した.単剤例,2剤例での後発医薬品の使用を調査し,2012年の前回調査と比較した.結果:単剤例ではプロスタグランジン(PG)関連薬のC12.3%,Cb遮断薬のC11.3%で後発医薬品を使用していた.2剤例ではCPG関連薬のC8.9%,Cb遮断薬のC1.6%で後発医薬品を使用していた.単剤例ではCPG関連薬,Cb遮断薬ともに前回調査(5.4%とC3.1%)より後発医薬品使用が有意に増加した.2剤例ではCPG関連薬は前回調査(4.6%)より後発医薬品使用が有意に増加し,Cb遮断後医薬発品は前回調査(3.3%)と同様だった.結論:後発医薬品は単剤例のC11.4%,2剤例のC7.5%で使用されていた.後発医薬品の使用は増加傾向にある.CPurpose:WeCinvestigatedCtheCuseCofCgenericCdrugsCinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularChypertension.CMeth-ods:Atotalof4,288eyesof4,288patientsfrom57institutionswereincluded.Theparticipantswhowereadmin-isteredCgenericCdrugsCasCmonotherapyCorCconcomitantlyCwereCinvestigated;resultsCwereCcomparedCtoCaCpreviousCstudyin2012.Results:Genericprostaglandin(PG)analogs(12.3%)andgenericb-blockers(11.3%)wereusedasmonotherapyandconcomitantly(8.9%,1.6%)C.ThenumberofsubjectsusinggenericPGanalogsorb-blockersasmonotherapyincreasedincomparisontothepreviousstudy(5.4%,3.1%)C.ThenumberofsubjectsusinggenericPGCanalogsCconcomitantlyCsurpassedCthatCofCtheCpreviousCstudy(4.6%)C,CwhereasCtheCnumberCusingCgenericCb-blockersCdidCnotCdi.erCsigni.cantlyCfromCtheCpreviousCstudy(3.3%)C.CConclusions:GenericCdrugCuseCasCmono-therapy(11.4%)andconcomitantly(7.5%)indicatesthattheuseofgenericdrugsisincreasing.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(7):971.975,C2018〕Keywords:緑内障,後発医薬品,単剤例,2剤例.glaucoma,genericdrugs,monotherapy,additionaldrugs.はじめに緑内障治療の最終目標は患者の視野障害進行抑制であり,唯一エビデンスが明確に示されている治療方法は眼圧下降で,その第一選択は薬物治療である1.5).緑内障診療ガイドライン1)では,緑内障の点眼薬治療は単剤投与から始めるが,目標眼圧に達しない症例では点眼薬の変更あるいは追加が推奨されている.点眼薬の追加を繰り返すと多剤併用となるが,多剤併用症例ではアドヒアランスの低下が問題となる6).実際に緑内障患者は緑内障点眼治療に対してさまざまな意見を有しており,そのことがアドヒアランス低下を引き起こしていると考えられる7,8).緑内障患者C182例の調査では点眼薬の使用感としてしみるC35例,かすむC34例,点眼手技としてうまく点眼できないC27例,点眼薬の価格が高いC26例などが報告された7).点眼薬がしみる,かすむは点眼薬の新たな開発,あるいは医師が点眼薬を選択する際に考慮することで,また点眼手技は点眼指導の徹底により改善できると考〔別刷請求先〕川島拓:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:TakuKawashima,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,JAPAN0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(121)C971えられる.点眼薬の価格は後発医薬品の使用によりある程度は軽減できる.後発医薬品とは,先発医薬品と同一の有効成分を同一量含む同一投与経路の製剤で,効能・効果,用法・用量が原則的に同一で,先発医薬品と同等の臨床効果が得られる医薬品である.後発医薬品を製造販売するためには,先発医薬品と同様に薬事法に基づいて厚生労働大臣から承認を得ることとなっている.そのために品質,有効性,安全性が先発医薬品と同等であることを証明する必要があり,試験の一つとして生物学的同等性試験が行われる.この試験では血中濃度推移が先発医薬品と同等であれば,同等の臨床効果を発揮するという考えに基づいている.しかし,後発医薬品では先発医薬品と異なり患者に対する治験は行われておらず,臨床現場での眼圧下降効果と安全性が十分に検討されていない.そこで慢性進行性疾患である緑内障患者に長期間使用するのが妥当であるかは不明である.厚生労働省では医療保険財政の改善と患者負担の軽減に資するとして後発医薬品の使用促進を積極的に努めており,今後ますますさまざまな点眼薬の後発医薬品が使用可能になると思われる.今回,後発医薬品の定義として日本眼科学会のホームページの眼科用剤一覧表(先発品・後発品)を用いた.具体的には後発医薬品として区分されているものを後発医薬品とし,配合点眼薬は先発医薬品として解析した.一方,臨床現場で緑内障点眼薬の後発医薬品がどのように使用されているかを調査した報告はない.筆者らは緑内障薬物治療の実態に興味を持ち,2007年より多施設による緑内障患者実態調査を開始した9).2009年に第C2回10),2012年に第C3回11),そしてC2016年に第C4回緑内障患者実態調査を施行した12).今回,第C4回緑内障患者実態調査のなかで後発医薬品に着目して検討を行った.また,後発医薬品の使用について前回調査の結果11)と比較し,経年変化を合わせて検討した.CI対象および方法本調査は,緑内障患者実態調査の趣旨に賛同したC57施設において,2016年C3月C7日.13日に施行した.調査施設を表1に示す.この調査期間内に外来受診した緑内障および高眼圧症患者全例を対象とした.総症例数C4,288例C4,288眼,表1研究協力施設(57施設)北海道札幌市ふじた眼科クリニック板橋区江戸川区世田谷区荒川区世田谷区八王子市葛飾区さわだ眼科クリニック篠崎駅前髙橋眼科社本眼科菅原眼科クリニックそが眼科クリニック多摩眼科クリニックとやま眼科宮城県仙台市鬼怒川眼科医院茨城県ひたちなか市日立市いずみ眼科クリニックサンアイ眼科さいたま市さいたま市石井眼科クリニックさいき眼科埼玉県吉川市幸手市たじま眼科・形成外科ふかさく眼科東京都文京区中央区中沢眼科医院中山眼科医院さいたま市やながわ眼科品川区小金井市荒川区江東区台東区新宿区千代田区江戸川区はしだ眼科クリニック東小金井駅前眼科町屋駅前眼科みやざき眼科もりちか眼科クリニック早稲田眼科診療所お茶の水・井上眼科クリニック西葛西・井上眼科病院千葉県千葉市山武郡船橋市松戸市千葉市船橋市習志野市あおやぎ眼科おおあみ眼科高根台眼科のだ眼科麻酔科医院本郷眼科みやけ眼科谷津駅前あじさい眼科千葉市吉田眼科横浜市鎌倉市眼科中井医院清川病院板橋区赤塚眼科はやし医院杉並区新宿区井荻菊池眼科いなげ眼科神奈川県横浜市大和市さいとう眼科セントルカ眼科・歯科クリニック荒川区うえだ眼科クリニック川崎市だんのうえ眼科クリニック調布市えぎ眼科仙川クリニック横浜市綱島駅前眼科東京都足立区足立区葛飾区国分寺市清瀬市えづれ眼科江本眼科おおはら眼科おがわ眼科清瀬えのき眼科静岡県伊東市ヒルサイド眼科クリニック福岡県遠賀郡福岡市いまこが眼科医院図師眼科医院熊本県宇土市むらかみ眼科クリニック国分寺市後藤眼科沖縄県沖縄市ガキヤ眼科医院文京区駒込みつい眼科(順不同・敬称略)男性C1,839例,女性C2,449例,年齢はC7.102歳,68.1C±13.0歳(平均C±標準偏差)であった.緑内障の診断と治療は,緑内障診療ガイドライン1)に則り,主治医の判断で行った.片眼のみの緑内障または高眼圧症患者では罹患眼を,両眼罹患している患者では右眼を調査対象眼とした.調査方法は調査票(表2)を用いて行った.各施設にあらかじめ調査票を送付し,診療録から診察時の年齢,性別,病型,使用薬剤数および種類,緑内障手術の既往を調査した.集計は井上眼科病院の集計センターで行った.回収した調査票より使用薬剤のうち後発医薬品について解析を行った.さらにC2012年に行った前回調査の結果11)と比較した.具体的には単剤使用例,2剤使用例で,さらに各々でプロスタグランジン(PG)関連点眼薬,Cb遮断点眼薬の後発医薬品の使用を検討した.調査を行ったC2016年C3月に使用可能であった後発医薬品はCPG関連点眼薬ではイソプロピルウノプロストンC4製品,ラタノプロストC24製品,Cb遮断点眼薬ではチモロールマレイン酸塩C20製品,カルテオロール塩酸塩C6製品,ベタキソロール塩酸塩C2製品,ニプラジロールC5製品,レボブノロール塩酸塩C2製品,副交感神経刺激薬ではピロカルピン塩酸塩C2製品だった.配合点眼薬はC2剤として解析した.配合点眼薬はC2剤使用例では各々の成分に分けて検討した.その際に各成分は先発医薬品として解析した.なお,前回調査11)では配合点眼薬をC1剤として解析したので,今回調査と比較するにあたり,配合点眼薬をC2剤として再解析を行い使用した.比較にはCc2検定を用いた.有意水準はCp<0.05とした.CII結果1.使用薬剤数使用薬剤数は平均C1.7C±1.2剤で,その内訳は無投薬がC445例(10.4%),1剤がC1,914例(44.6%),2剤がC929例(21.7%),3剤がC598例(13.9%),4剤がC277例(6.5%),5剤が99例(2.3%),6剤がC24例(0.6%),7剤がC2例(0.05%)だった.点眼薬を使用している症例のうちC1剤でも後発医薬品を使用している症例はC348例(9.1%)だった.C2.後発医薬品の使用状況(単剤使用例)単剤使用例(1,914例)では,PG関連点眼薬がC1,414例(73.9%),b遮断点眼薬がC398例(20.8%),その他がC102例(5.3%)だった.先発医薬品がC1,695例(88.6%),後発医薬品がC219例(11.4%)だった.薬品別では,PG関連点眼薬では先発医薬品がC1,240例(87.7%),後発医薬品がC174例(12.3%),b遮断点眼薬では先発医薬品がC353例(88.7%),後発医薬品がC45例(11.3%)だった(図1).後発医薬品の使用はCPG関連点眼薬とCb遮断点眼薬で同等だった(p=0.6634).C表2調査票緑内障処方薬剤の一般名:<Cb遮断薬>1:水溶性チモロール,2:イオン応答ゲル化チモロール,3:熱応答ゲル化チモロール,4:カルテオロール,5:持続性カルテオロール,6:ベタキソロール,7:レボブノロール.<Cab遮断薬>9:ニプラジロール.<PG(プロスタグランジン)製剤>11:イソプロピルウノプロストン,12:ラタノプロスト,13:トラボプロスト,14:タフルプロスト,15:ビマトプロスト.<配合剤>17:ラタノプロスト/チモロール配合薬,18:トラボプロスト/チモロール配合薬,19:ドルゾラミド/チモロール配合薬,20:ブリンゾラミド/チモロール配合薬,21:タフルプロスト/チモロール配合薬.<点眼CCAI(炭酸脱水酵素阻害薬)>22:ドルゾラミド,23:ブリンゾラミド.<経口CCAI>24:アセタゾラミド.<Ca1遮断薬>25:ブナゾシン.<Ca2刺激薬>26:ブリモニジン.<ROCK阻害薬>27:リパスジル.<その他>28:ピロカルピン,29:ジピベフリン3.後発医薬品の使用状況(2剤使用例)2剤使用例(929例)では,PG/Cb配合点眼薬C267例(28.7%),PG関連点眼薬+b遮断点眼薬がC264例(28.4%),PG関連点眼薬+a2刺激点眼薬C101例(10.9%),炭酸脱水酵素阻害(CAI)/Cb配合点眼薬C93例(10.0%),PG関連点眼薬+CAI点眼薬C92例(9.9%)などだった.1剤でも後発医薬品を使用している症例がC70例(7.5%)先発医薬品のみ使用している症例がC859例(92.5%)だった.,PG関連点眼薬(1,414例)β遮断点眼薬(398例)PG関連点眼薬(768例)b遮断点眼薬(673例)図1後発医薬品の使用状況(単剤使用例)1剤でも後発医薬品を使用している症例のうち,2剤ともに後発医薬品を使用している症例がC12.8%(9例/70例)だった.薬剤別では,PG関連点眼薬(768例)では先発医薬品が700例(91.1%),後発医薬品がC68例(8.9%),b遮断点眼薬(673例)では先発医薬品がC662例(98.4%),後発医薬品が11例(1.6%)だった(図2).後発医薬品はCPG関連点眼薬がCb遮断点眼薬より多く使用されていた(p<0.0001).C4.後発医薬品の使用状況の前回調査との比較(単剤使用例)PG関連点眼薬は前回調査(5.4%)に比べて今回調査(12.3%)で後発医薬品使用が有意に増加した(p<0.0001).b遮断点眼薬は前回調査(3.1%)に比べて今回調査(11.3%)で後発医薬品使用が有意に増加した(p<0.0001).C5.後発医薬品の使用状況の前回調査との比較(2剤使用例)PG関連点眼薬は前回調査(4.6%)に比べて今回調査(8.9%)で後発医薬品使用が有意に増加した(p<0.0001).b遮断点眼薬は前回調査(3.3%)と今回調査(1.6%)で後発医薬品使用は同等だった(p=0.0718).C6.後発医薬品使用量と導入施設の前回調査との比較点眼薬使用症例は前回調査C3,142例,今回調査C3,843例だった.1剤でも後発医薬品を使用している症例は前回調査C4.7%(149例/3,142例)に比べて今回調査C9.1%(348例/3,843例)で有意に増加した(p<0.0001).後発医薬品をC1症例でも使用している施設は前回調査C61.5%(24施設/39施設)と今回調査61.4%(35施設/57施設)で同等だった(p>0.999).前回調査,今回調査ともに参加したのはC37施設だった.37施設のうち点眼薬使用症例は前回調査C3,068例,今回調査C3,115例だった.1剤でも後発医薬品を使用している症例は前回調査C4.8%(148例/3,068例)に比べて今回調査C8.7%(272例/3,115例)で有意に増加した(p<0.0001).後発医薬品をC1症例でも使用している施設は前回調査C62.2%(23施設/37施設)と今回調査C64.9%(24施設/37施設)で同等だった(p>0.999).C図2後発医薬品の使用状況(2剤使用例)III考按後発医薬品は,再審査期間が終了し,特許が切れた先発医薬品に対して発売することができる.後発医薬品のメリットの一つは先発医薬品に比べて薬価が低いので,患者の負担は軽減することである13).そこで患者から後発医薬品を希望する場合や,健康保険組合より後発医薬品への切り替えを依頼してくる場合もある.それらの状況を踏まえて,現在の緑内障に対する後発医薬品の使用状況を調査することにした.薬剤処方に関しては,先発医薬品を必ず使用する場合には医師は処方箋の変更不可欄にチェックする必要がある.一方,チェックがない場合は調剤薬局で薬剤師が後発医薬品に変更することができる.そのため厳密には先発医薬品と後発医薬品のどちらが使用されているかはわからない場合もある.しかし,後発医薬品を使用する場合は,医師は薬剤を一般名で処方することが多いと考えられる.なぜならば一般名で処方することで一般名処方加算としてC2点加算できるからである.今回,単剤使用例とC2剤使用例における後発医薬品(PG関連点眼薬とCb遮断点眼薬)の使用を調査した.2剤使用例では後発医薬品の使用はCPG関連点眼薬がCb遮断点眼薬より有意に多かったが,これはCb遮断薬使用症例における配合点眼薬のC1成分としてのCb遮断点眼薬(先発医薬品として)の割合C53.5%(360例/673例)(内訳はCPG/Cb配合点眼薬39.7%(267例/673例),CAI/Cb配合点眼薬C13.8%(93例/673例))が,PG関連点眼薬使用症例における配合点眼薬のC1成分としてのCPG関連点眼薬(先発医薬品として)の割合C34.8%(267例/768例)(PG/Cb配合点眼薬のみ)より多いことが原因と考えられる(p<0.0001)(図2).つまり配合点眼薬の使用が多いため,配合点眼薬中のCb遮断薬が先発医薬品としてカウントされたことによる.前回調査との比較では単剤使用例ではCPG関連点眼薬,Cb遮断点眼薬ともに今回調査で後発医薬品使用が有意に増加した.経済性を考慮してC1剤目として後発医薬品を選択する症例や先発医薬品から後発医薬品へ変更する症例が増加したと考えられる.一方,2剤使用例では,後発医薬品の使用はPG関連点眼薬では今回調査で有意に増加したが,Cb遮断点眼薬では前回調査と同等だった.実際に今回調査ではCb遮断点眼薬やCPG関連薬が配合点眼薬のC1成分として入っている割合より有意に増加した.そして配合点眼薬のC1成分として入っている割合はCb遮断点眼薬(53.5%)がCPG関連点眼薬(34.8%)より多いことによると考えられる(p<0.0001).後発医薬品使用施設は前回調査と今回調査で同等だったが,使用量は前回調査より今回調査で有意に増加した.しかし,前回調査と今回調査では調査施設が異なるので前回調査,今回調査ともに参加したC37施設でも後発医薬品使用の検討を行った.その結果,後発医薬品を使用している施設数は有意に増加しておらず,増加数もC1施設と微増だった.しかし,後発医薬品の使用症例は増加しており,後発医薬品を使用する医師はその使用を増やしていると考えられる.一方,後発医薬品を使用していない医師が後発医薬品を使用するためには後発医薬品に先発医薬品以上のメリットがあることが重要である.後発医薬品の先発医薬品と比べて劣っている点として,①添加物の種類や添加量,製剤技術などは先発医薬品と後発医薬品,後発医薬品間で異なる.②医薬品卸会社の流通ルートへの整備がやや遅れている.③添付文書の記載内容を含め情報提供量は先発医薬品に比べて劣る.と報告されている14).後発医薬品の先発医薬品と比べて劣っていない点は,薬価が低く,調剤薬局窓口での支払額が減少することである.一方,後発医薬品のなかには,先発医薬品と異なり防腐剤フリーの製品もある.経済性だけでなく,角結膜への安全性を考えて防腐剤フリーの後発医薬品を使用する場合もある.過去に筆者らは防腐剤フリーのラタノプロスト点眼薬(後発医薬品)の良好な眼圧下降効果と安全性を報告した15,16).今後はこのように先発医薬品にはない特徴をもった後発医薬品を開発することで後発医薬品の使用が増加すると期待されている.今回,57施設に外来受診した緑内障,高眼圧症C4,288例の使用薬剤を調査し,そのなかから後発医薬品について検討した.後発医薬品は単剤例ではC11.4%,2剤例ではC7.5%で使用されていた.4年前に行われた前回調査と比較して後発医薬品の使用は増加しており,今後ますます増加が予想される.しかし,今後後発医薬品の眼圧下降効果と安全性を検討する必要がある.謝辞:本調査にご参加いただき,ご多忙にもかかわらず診療録の調査,記載,集計作業にご協力いただいた各施設の先生方に深く感謝いたします.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌C122:5-53,C20182)TheAGISInvestigators:TheAdvancedGlaucomaInter-ventionStudy(AGIS)7.TherelationshipbetweencontrolofCintraocularCpressureCandCvisualC.eldCdeterioration.CAmJOphthalmolC130:429-440,C20003)LichterPR,MuschDC,GillespieBWetal;fortheCIGTSStudyCGroup:InterimCclinicalCoutcomesCinCtheCCollabora-tiveCInitialCGlaucomaCTreatmentCStudyCcomparingCinitialCtreatmentrandomizedtomedicationsorsurgery.Ophthal-mologyC108:1943-1953,C20014)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaCStudyCGroup:CComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreat-edCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpressure.CAmJOphthalmolC126:487-497,C19985)HeijiA,LeskeMC,BengtssonBetal:Reductionofintra-ocularCpressureCandCglaucomaCprogression:resultsCfromCtheCEarlyCManifestCGlaucomaCTrial.CArchCOphthalmolC120:1268-1279,C20026)DjafariCF,CLeskCMR,CHarasymowyczCPJCetCal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20097)末武亜紀,福地健郎,田中隆之ほか:Patient-CenteredCommunication(PCC)Toolとしての緑内障点眼治療アンケート.あたらしい眼科C29:969-974,C20128)生島徹,森和彦,石橋健ほか:アンケート調査による緑内障患者のコンプライアンスと背景因子との関連性の検討.日眼会誌C110:497-503,C20069)中井義幸,井上賢治,森山涼ほか:多施設による緑内障患者の実態調査:薬物治療.あたらしい眼科C25:1581-1585,C200810)井上賢治,塩川美菜子,増本美枝子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2009年度版:薬物治療.あたらしい眼科C28:874-878,C201111)塩川美菜子,井上賢治,富田剛司:多施設における緑内障実態調査C2012年版─薬物治療─.あたらしい眼科C30:C851-856,C201312)永井瑞希,比嘉利沙子,塩川美菜子ほか:多施設による緑内障患者の実態調査C2016年版─薬物治療─.あたらしい眼科34:1035-1041,C201713)冨田隆志,櫻下弘志,池田博昭ほか:緑内障治療用の配合点眼液のC1日薬剤費用評価.あたらしい眼科C29:1405-1409,C201214)池田博昭,塚本秀利:緑内障治療薬─後発品と先発品の比較.あたらしい眼科C25:57-58,C200815)井上賢治,増本美枝子,若倉雅登ほか:防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬の眼圧下降効果と安全性.あたらしい眼科C28:1635-1639,C201116)井上賢治,岩佐真弓,増本美枝子ほか:正常眼圧緑内障に対する防腐剤無添加ラタノプロスト点眼薬の長期投与による効果と安全性.眼臨紀C9:423-427,C2016利益相反:利益相反公表基準に該当なし