1872あたらしい眼科Vol.4102,211,No.3(00)1872(134)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科31(12):1872.1875,2014cはじめに水疱性角膜症に対する外科治療として角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplas-ty:DSAEK)が行われるようになってきている1).DSAEKは従来の全層角膜移植術(penetratingkeratoplasty)に比べ,術後の不正乱視が少なく,眼球強度も保たれ,拒絶反応も起きにくいなどのさまざまなメリットがあるため,ここ数年わが国でも急速に普及が進んでいる.DSAEKの術後成績に関してはすでに多数の報告があるが,わが国では国内ドナー不足から,海外ドナーを輸入して手術を行っている施設が多く2.4),国内ドナーのみの報告は少ない5).今回,筆者らは,東京大学医学部附属病院(以下,当院)において国内ドナーを用いたDSAEKを施行し1年以上経過観察可能であった症例の術後1年までの成績について〔別刷請求先〕清水公子:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学医学部付属病院眼科学教室Reprintrequests:KimikoShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TheUniversityofTokyoHospital,7-3-1Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPAN国内ドナーを用いた角膜内皮移植術の術後短期成績の検討清水公子臼井智彦天野史郎山上聡東京大学医学部附属病院眼科Short-termResultsofDescemet’sStrippingAutomatedEndothelialKeratoplastyUsingDomesticDonorCorneasKimikoShimizu,TomohikoUsui,ShiroAmanoandSatoruYamagamiDepartmentofOphthalmology,TheUniversityofTokyoHospital目的:国内ドナーを用いた,角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)の短期成績を報告する.対象および方法:対象は,水疱性角膜症に対して東京大学医学部附属病院で国内ドナーを用いDSAEKを行い1年以上経過観察可能であった39例40眼で,原疾患,透明治癒率,視力,角膜内皮細胞密度,術後合併症について検討した.結果:患者の手術時平均年齢は72±10歳.術後1年での透明治癒率は92.5%であった.術前の平均小数視力は0.10で,術後12カ月の平均小数視力は0.70であった.術前のドナー角膜内皮細胞密度は2,597±275cells/mm2で,術後12カ月での平均内皮細胞密度は1,622±676cells/mm2,内皮細胞減少率は37%であった.合併症は,眼圧上昇が17眼(43%),.胞様黄斑浮腫が7眼(18%),移植片接着不良が4眼(10%),瞳孔ブロックが2眼(5%),内皮機能不全が2眼(5%),拒絶反応が1眼(2.5%)であった.結論:国内ドナーを用いたDSAEKの術後12カ月における術後成績は概ね良好であった.Purpose:Toinvestigatetheshort-termresultsofDescemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty(DSAEK)usingdomesticdonorcorneas.SubjectsandMethods:Weretrospectivelyanalyzed40eyesof39patientswhounderwentDSAEKforbullouskeratopathyatUniversityofTokyoHospitalusingdomesticdonorcorneas.Allwereallfollowedupfor12months.Primarydisease,visualacuity,endothelialcelldensity(ECD)andpostoperativecomplicationswereinvestigated.Results:Meandecimalvisualacuityat12monthsafterDSAEKwas0.70.MeanECDofthedonorcorneasbeforeDSAEKwas2,597±275cells/mm2;ECDat12monthsafterDSAEKwas1,622±275cells/mm2(37%ECDloss).Themostcommoncomplicationwaselevatedintraocularpressure(43%).Cystoidmacularedema(18%),graftdislocation(10%),transientpupillaryblock(5%)andallograftrejection(2.5%)werealsoobserved.Conclusion:DSAEKusingdomesticcorneasyieldedsatisfactoryoutcomesin12monthsofobservation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(12):1872.1875,2014〕Keywords:DSAEK,角膜内皮移植術,水疱性角膜症,角膜内皮細胞密度,国内ドナー.Descemet’sstrippingau-tomatedendothelialkeratoplasty,endothelialkeratoplasty,bullouskeratopathy,cornealendothelialcelldensity,do-mesticdonor.(00)1872(134)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY《原著》あたらしい眼科31(12):1872.1875,2014cはじめに水疱性角膜症に対する外科治療として角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplas-ty:DSAEK)が行われるようになってきている1).DSAEKは従来の全層角膜移植術(penetratingkeratoplasty)に比べ,術後の不正乱視が少なく,眼球強度も保たれ,拒絶反応も起きにくいなどのさまざまなメリットがあるため,ここ数年わが国でも急速に普及が進んでいる.DSAEKの術後成績に関してはすでに多数の報告があるが,わが国では国内ドナー不足から,海外ドナーを輸入して手術を行っている施設が多く2.4),国内ドナーのみの報告は少ない5).今回,筆者らは,東京大学医学部附属病院(以下,当院)において国内ドナーを用いたDSAEKを施行し1年以上経過観察可能であった症例の術後1年までの成績について〔別刷請求先〕清水公子:〒113-8655東京都文京区本郷7-3-1東京大学医学部付属病院眼科学教室Reprintrequests:KimikoShimizu,M.D.,DepartmentofOphthalmology,TheUniversityofTokyoHospital,7-3-1Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPAN国内ドナーを用いた角膜内皮移植術の術後短期成績の検討清水公子臼井智彦天野史郎山上聡東京大学医学部附属病院眼科Short-termResultsofDescemet’sStrippingAutomatedEndothelialKeratoplastyUsingDomesticDonorCorneasKimikoShimizu,TomohikoUsui,ShiroAmanoandSatoruYamagamiDepartmentofOphthalmology,TheUniversityofTokyoHospital目的:国内ドナーを用いた,角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)の短期成績を報告する.対象および方法:対象は,水疱性角膜症に対して東京大学医学部附属病院で国内ドナーを用いDSAEKを行い1年以上経過観察可能であった39例40眼で,原疾患,透明治癒率,視力,角膜内皮細胞密度,術後合併症について検討した.結果:患者の手術時平均年齢は72±10歳.術後1年での透明治癒率は92.5%であった.術前の平均小数視力は0.10で,術後12カ月の平均小数視力は0.70であった.術前のドナー角膜内皮細胞密度は2,597±275cells/mm2で,術後12カ月での平均内皮細胞密度は1,622±676cells/mm2,内皮細胞減少率は37%であった.合併症は,眼圧上昇が17眼(43%),.胞様黄斑浮腫が7眼(18%),移植片接着不良が4眼(10%),瞳孔ブロックが2眼(5%),内皮機能不全が2眼(5%),拒絶反応が1眼(2.5%)であった.結論:国内ドナーを用いたDSAEKの術後12カ月における術後成績は概ね良好であった.Purpose:Toinvestigatetheshort-termresultsofDescemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty(DSAEK)usingdomesticdonorcorneas.SubjectsandMethods:Weretrospectivelyanalyzed40eyesof39patientswhounderwentDSAEKforbullouskeratopathyatUniversityofTokyoHospitalusingdomesticdonorcorneas.Allwereallfollowedupfor12months.Primarydisease,visualacuity,endothelialcelldensity(ECD)andpostoperativecomplicationswereinvestigated.Results:Meandecimalvisualacuityat12monthsafterDSAEKwas0.70.MeanECDofthedonorcorneasbeforeDSAEKwas2,597±275cells/mm2;ECDat12monthsafterDSAEKwas1,622±275cells/mm2(37%ECDloss).Themostcommoncomplicationwaselevatedintraocularpressure(43%).Cystoidmacularedema(18%),graftdislocation(10%),transientpupillaryblock(5%)andallograftrejection(2.5%)werealsoobserved.Conclusion:DSAEKusingdomesticcorneasyieldedsatisfactoryoutcomesin12monthsofobservation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)31(12):1872.1875,2014〕Keywords:DSAEK,角膜内皮移植術,水疱性角膜症,角膜内皮細胞密度,国内ドナー.Descemet’sstrippingau-tomatedendothelialkeratoplasty,endothelialkeratoplasty,bullouskeratopathy,cornealendothelialcelldensity,do-mesticdonor.検討したので報告する.I対象および方法対象は2010年8月から2012年9月までに当院で国内ドナーを用いてDSAEKを行った39例40眼(男性15例15眼,女性24例25眼).末期緑内障や黄斑変性で中心視力が消失している症例,全層角膜移植後の移植片不全症例,術後観察期間が1年未満の症例13例13眼は除外した.ドナー角膜の摘出時平均年齢は65±25歳(範囲:4.98歳)であった.手術は全例耳側5mmの角膜切開創から,Businグライドと引き込み鑷子を用いる引き込み法(pull-through法)で行った.移植片はマイクロケラトームEvolutino3E(Moria社)とバロン氏真空ドナーパンチ(Katena社)で作製した.マイクロケラトームのヘッド厚は350μm,グラフト径は7.75.8.75mmを使用した.術式の内訳は,DSAEK17例17眼,Descemet膜を.離しないで移植片を接着させるnDSAEK(non-Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty)14例14眼,DSAEKと白内障同時手術が4例4眼,nDSAEKと白内障同時手術が4例4眼であった.術後はリン酸ベタメタゾン4mgを3日間点滴し,その後プレドニゾロンを30mg,20mg,5mgと漸減しながら,それぞれ3日間ずつ投与した.術後点眼は,単独手術のDSAEKとnDSAEKではレボフロキサシンとリン酸ベタメタゾンを1日6回,白内障同時手術の場合は,これにブロムフェナクナトリウムを1日2回投与した.原疾患,術後12カ月までの矯正logMAR視力,角膜内皮細胞密度,術後合併症について,診療録をもとにレトロスペクティブに検討した.合併症の黄斑浮腫の診断は,光干渉断層計を用い,角膜所見に比し術後視力の改善が不十分と判断した症例に対して行った.数値は平均値±標準偏差で記載した.統計学的解析は,2群間の検討にはMann-Whitney’sU-0.2test,相関の検討にはPearson’schi-squaretestを用いた.すべての検定でp<0.05を統計学的に有意とした.II結果1.患者背景患者の手術時平均年齢は72±10歳(平均値±標準偏差,範囲:46.88歳)であった.Fuchs角膜内皮ジストロフィが10例11眼(28%),白内障術後が7例7眼(18%),レーザー虹彩切開術後が4例4眼(10%),DSAEK後の移植片不全が3例3眼(7.5%),虹彩炎後が3例3眼(7.5%),線維柱帯切除後が3例3眼(7.5%)で,その他9例9眼(23%)であった.2.角膜透明治癒率術後1年での透明治癒が得られたのは,40眼中37眼(92.5%)であった.透明化が得られなかった3眼のうち,1眼は術後2カ月後に拒絶反応を起こし,他院で再度DSAEKを行った.残り2眼は内皮機能不全となり,うち1眼はサイトメガロウイルス感染症が原因であり,感染症が落ち着いたら再手術を検討している.3.視力術前の平均logMAR視力は0.99±0.4(平均小数視力:0.10)であった.術後1カ月の平均logMAR値は0.40±0.3(平均小数視力:0.40),術後3カ月は0.24±0.2(平均小数視力:0.60),術後6カ月は0.21±0.2(平均小数視力:0.61)術後12カ月は0.16±0.2(平均小数視力:0.70)であった.(,)術前と比較し,術後1,3,6,12カ月で有意な改善を認めた(図1,2).術後12カ月において,矯正視力0.5以上を占める割合は90%,同様に0.8以上は48%,1.0以上は20%であった.4.角膜内皮細胞密度術前のドナー角膜内皮細胞密度は2,597±275cells/mm2であった.術後1,3,6,12カ月での平均内皮細胞密度はlogMAR00.20.40.60.811.21.4****最終視力(小数視力)10.10.011.6術前術後術後術後術後1カ月3カ月6カ月12カ月術前視力(小数視力)図1術前,術後の平均矯正視力図2術前と最終観察時の矯正視力術前と比較し,術後1,3,6,12カ月で有意に改善を認2眼を除き,38眼で術後の視力向上が得られた.めた.*p<0.05.(135)あたらしい眼科Vol.31,No.12,201418730.010.11それぞれ,2,011±657cells/mm2(n=25),1,799±604cells/mm2(n=29),1,716±657cells/mm2(n=32),1,622±676cells/mm2(n=37)と,術前と比較し,術後1,3,6,12カ月で有意に減少を認めた.内皮細胞減少率は1,3,6,12カ月でそれぞれ,22%,30%,34%,37%であった(図3).5.術後合併症眼圧上昇(瞳孔ブロック以外で,経過中21mmHgを超えた症例)を17眼(43%)に認めた.また,.胞様黄斑浮腫が7眼(18%),移植片接着不良が4眼(10%),瞳孔ブロックが2眼(5%),内皮機能不全が2眼(5%),拒絶反応が1眼(2.5%)であった.駆逐性出血,眼内炎は認めなかった.眼圧上昇は,術翌日から術後10カ月目までに認めた.眼圧上昇をきたした17眼中5眼は無治療で眼圧が正常化したが,11眼は点眼もしくは内服の薬物治療を行い,1眼は線維柱帯切除術を施行した.術前より緑内障は9眼あり,そのうち4眼(44%)に術後高眼圧を認めた.術後1年経過した最終観察時ではすべての症例で眼圧は正常化した..胞様黄斑浮腫は,7眼中6眼はDSAEK単独手術を施行したもので,1眼はDSAEKに白内障同時手術を行ったものであった.全例非ステロイド性抗炎症薬点眼もしくは,トリアムシノロンアセトニドTenon.下注射にて消失した.移植片接着不良眼の内訳は,白内障術後による水疱性角膜症が2眼,Fuchs角膜内皮ジストロフィが1眼,線維柱帯切除術の術後水疱性角膜症が1眼であった.4眼中3眼は,術後前房内空気再注入により接着が得られた.残る1眼は水晶体.内摘出術後眼で,さらに移植片に縫合を追加することで最終的に接着が得られた.術式の内訳は,DSAEKが3眼,nDSAEKと白内障同時手術が1眼であった.拒絶反応は術後2カ月目に発症し,ステロイド内服とリン酸ベタメタゾン点眼の増加により改善し,小数視力0.8まで回復した.瞳孔ブロックを生じた2眼は,ともに術翌日に空気を抜くことで解除可能であった.内皮機能不全となった2眼のうち1眼は,経過中に2回内皮炎を発症,前房水のポリメラーゼ連鎖反応法よりサイトメガロウイルスが検出され,術後約1年で内皮機能不全となった.III考按今回術後12カ月目の平均logMAR値は0.16±0.2(平均小数視力:0.7)であった.他施設の報告でも0.29.0.08(平均小数視力:0.51.0.83)であり3,6,7),既報とほぼ同等の結果であった.初診時と最終観察時の矯正視力を比較すると,術前より視力低下を認めたのは1眼のみであった.この症例はFuchs角膜内皮ジストロフィで,術前小数視力0.9であり,3,5003,0002,5002,0001,5001,0005000角膜内皮細胞密度(cells/mm2)****術前術後術後術後術後1カ月3カ月6カ月12カ月図3平均角膜内皮細胞密度術後3カ月まで内皮細胞密度の減少を認め,その後の減少は緩やかであった.術前と比較し,術後1,3,6,12カ月で有意に減少を認めた(術前ドナーn=40,術後1カ月n=25,術後3カ月n=29,術後6カ月n=32,術後12カ月n=37).*p<0.05.術中・術後とも問題なく,経過良好だが術後12カ月の矯正小数視力は0.8であった.術後12カ月において,矯正視力0.5以上を占める割合は90%,0.8以上は48%,1.0以上は20%であり,これは海外の報告と比べても遜色のない成績であった7).DSAEK術後は時間がたつほど視力の向上がみられることが近年報告されており7),今回も術後経過とともに平均視力の改善がみられた.今後さらに長期視力の成績も注目する必要がある.日本で海外ドナー角膜を用いた既報によれば,術前ドナー角膜内皮細胞密度は2,905.2,946cells/mm2,術後12カ月は1,919.2,064cells/mm2と報告されている2,3).米国で自国のドナー角膜を用いた既報によれば,術前ドナー角膜内皮細胞密度は2,778.3,100cells/mm2,術後12カ月は1,743.1,990cells/mm2と報告されている6,8.10).筆者らの結果では,術前ドナー角膜の内皮細胞密度は2,597cells/mm2,術後12カ月は1,622cells/mm2と,術前および術後12カ月とも既報に比較し少なかった.一方,内皮細胞密度の減少率は,プレカットされていない海外ドナーを用いた施設では,術後12カ月で36.38%と報告しており8,10),筆者らの術後12カ月の内皮細胞密度の減少率の37%とほぼ同等であった.既報における海外および輸入角膜の平均ドナー年齢が44.59歳であるのに対し2,6,8,10),今回,筆者らが用いた平均ドナー年齢は65歳と高かった.筆者らが用いた国内ドナーはドナー年齢が高く,角膜内皮細胞密度は少ない傾向であるが,角膜内皮細胞減少率は既報と大きな違いはなかった.しかし,Priceらは,術後6カ月の内皮細胞密度はドナー年齢が高いほど少なくなると報告しており8),80歳以上の高齢者ドナーも少なくないわが国では,DSAEK術後の角膜内皮細胞密度については,さらに注意深く評価していく必要があると考えられた.今回の結果では,術後眼圧21mmHgを超えた症例が43(136)%(17眼)であり,点眼および手術を要したのは全体の30%(12眼)であった.眼圧上昇した症例のうち29%(5眼)は経過からステロイドレスポンダーが疑われた.既報では眼圧上昇は5.8.17.5%とあるが4,10,11),既報により基準が異なるため,単純に比較し多いとはいえない.ただしDSAEK術後の合併症の頻度としては高く,眼圧上昇には注意する必要がある.筆者らの施設では.胞様黄斑浮腫を7眼(18%)に認め,0.5%とする既報と比較して多かった4,7,13).7眼のうち6眼はDSAEK単独手術後の症例であり,非ステロイド性抗炎症薬の点眼はしていなかった.また,5眼は術後2カ月以内に認めた.DSAEK術後の視力不良例では.胞様黄斑浮腫に注意し,光干渉断層計(OCT)などを用い積極的に精査する必要があると考えられる.また,今回の結果から白内障手術を併用しない単独手術であっても,DSAEK術後では非ステロイド性抗炎症薬の投与を考慮すべきであると筆者らは考えている.今回の検討では術後拒絶反応の発症は1眼(2.5%)のみで,5.2.17.6%とする既報に比べて低かった10,13).当院では全層角膜移植に準じて術後ステロイドの全身投与を実施していることに加え,術後1年では多くの症例でベタメタゾン点眼を継続使用していることも,拒絶反応発生が比較的低く抑えられている原因となっている可能性が考えられた.今回,筆者らは,国内ドナーを用いたDSAEKの術後成績を報告した.多くの症例で術後早期より視力の向上が得られた.拒絶反応は従来の報告どおり低く,感染症や駆逐性出血などの大きな合併症は認めなかった.海外ドナーを用いた他施設での報告と比べ,術後角膜内皮細胞数は少なかったものの,術後視力や内皮細胞密度の減少率は同等で,水疱性角膜症に対する治療として国内ドナーを用いたDSAEKは有用と考えられた.今後はより長期の検討を行うことで,国内ドナーを用いたDSAEKの術後経過を明らかにしていきたい.文献1)PriceFWJr,PriceMO:Descemet’sstrippingwithendothelialkeratoplastyin5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